07/10/03 22:52:24 dVatFDxQ0
AQUAPLUS『To Heart2』公式サイト
URLリンク(www.aquaplus.co.jp)
Leaf『ToHeart2 XRATED』公式サイト
URLリンク(leaf.aquaplus.co.jp)
Leaf『ToHeart2 AnotherDays』公式サイト
URLリンク(leaf.aquaplus.co.jp)
ToHeart2 スレッド 過去ログ置き場(仮)
URLリンク(f55.aaa.livedoor.jp)
本スレや各キャラスレはこちらから。
ToHeart2 SideStory Links
URLリンク(toheart2.ss-links.net)
各キャラの呼称相関図は
URLリンク(botan.sakura.ne.jp)
内のToHeart2呼び方相関図を参照。
ToHeart2 SS の書庫 (スレの全作品保管)
URLリンク(th2ss.hp.infoseek.co.jp)
3:名無しさんだよもん
07/10/03 23:25:56 f7pMcEIh0
>>1
スレ立て乙
4:名無しさんだよもん
07/10/04 07:37:15 biIMOaKm0
乙
5:名無しさんだよもん
07/10/04 09:23:28 6DqS90MI0
>>1
乙です
6:名無しさんだよもん
07/10/04 19:00:20 Udgf1a+E0
ほし
7:名無しさんだよもん
07/10/04 19:53:44 ABspNvE80
>1乙~
しかし、日常的に投下してくれる人が複数いると賑やかでいいねえ
8:見習い氷
07/10/05 07:16:14 3fRBtlTeO
>>1
乙であります
次からこっち利用でいいんですかね?
9:名無しさんだよもん
07/10/05 12:59:02 0PZxgc1O0
おk
前スレはもう埋めてあるからね
10:名無しさんだよもん
07/10/06 09:58:48 yyXYIYtQO
まーりゃん先輩のギャグじゃない純愛モノが読みたいなぁ…
もうADが待ちきれん
11:名無しさんだよもん
07/10/06 14:46:03 l2Pj36570
ADが純愛じゃないギャグものになる可能性もまだまだ捨てきれんがな…
12:名無しさんだよもん
07/10/06 14:52:32 Wk5SR2Oa0
まーりゃんシナリオはネタシナリオと言ってた。
13:名無しさんだよもん
07/10/06 15:38:25 3zGg8gsF0
ソースは?とか訊かずに信じられるのがまーりゃんマジックか
14:名無しさんだよもん
07/10/06 15:59:30 yyXYIYtQO
ADは純愛でもギャグでもいいんだけどさ…
まーりゃんメインのSSをもっと読みたいと思う今日この頃。
でも、ちょっと読みたくなってまーりゃんのSS探すとほとんどささら絡みなんだよなこれが。
まぁ書けない俺には言う資格がないのかもしれんが。
15:名無しさんだよもん
07/10/06 19:17:48 Aoa+mjnK0
まーりゃんは謎キャラすぎるから単体でSS書こうとすると
これでもかってくらいオリジナル設定ばっかになって何この厨SSってなるんだよなぁ
16:名無しさんだよもん
07/10/06 20:00:11 yN8aJ7ff0
まーりゃん先輩は、あくまでささらルートでのサブキャラ扱いだから
どうしてもささら絡みになってしまうのは仕方ないかも。
まあ、まーりゃん先輩を含めADのヒロインに関しては、今は書くの控えている人が
多いんじゃないかな。現状では如何せん情報が少ない。
はるみやシルファに至っては一人称すら不明だからな。
……逆にそれを逆手にとってやりたい放題できるのも今のうちなんだけど。
17:物書き修行中
07/10/06 21:32:32 xDG7AP/G0
まーりゃん先輩の恋愛もの(純愛かどうかはわからんけど)は一度書いてみたい
ネタではありますね。ADが出るまでの勝負って感じではありますが。
ただ、ギャグと傍若無人を抜いたまーりゃん先輩でどうやって話を構成するかが
大問題なんで、今のところネタが思いつかないんですよね。
ゲームの場合は立ち絵があるので結構何とかなるんですけどね。
18:名無しさんだよもん
07/10/07 16:15:34 pnpm81U00
ギャグと傍若無人と恋愛は両立すると思うのですよ。
純愛でギャグやるか、ギャグで純愛やるか
どっちにせよものすごい展開になるだろうけど、
うまく書けば神話になれる予感。
19:物書き修行中
07/10/07 21:21:47 jE47mJf20
神話以前にねたが出なけりゃかけませんw
まあ、締め切りがあるわけでなし、気が向いたら書くだけですが。
それよりも、筆が乗って同盟の6話を結構書いたのですが、すでに10レス分超えてるのに
いまだに最初の目的地に着いてないってどんだけ orz
いや、元々内容から言って長くなるのは予想の範疇なんですが、どう考えても余裕で
50k超えそうなんですが…ちなみに前回のが前後あわせて42kほど o......rz だめぽ
20:名無しさんだよもん
07/10/08 04:19:21 lJ2LNEjN0
>>19
>>18は「キャラを変えなくても出来る」っていってるんだろ
ネタ云々の前にキャラの基本部分変えるなよって話じゃないのか?
21:物書き修行中
07/10/08 08:21:31 DEDJzLP50
キャラ変造しちゃったらSSとはいえないじゃんw
俺はネタと称しているけど、実際はどんな話の構成にするかという話で、
恋愛話(特に純愛話)にいつものまーりゃん先輩のノリを組み合わせて話をまとめる
のが難しいから、出来るだけ控えた構成にしたいって話をしてるんだけど。
まーりゃん先輩は傍若無人だけの痛い人じゃないし、歳相応のまじめなものの
考え方も出来る人なので不可能じゃないと思うんだけど。
>>18氏はそうじゃなく正攻法でも書けないわけじゃないといっている訳だけど
>>18氏自身が言うとおり、全てを成立させてまとめるのが難しいと思う訳で。
22:物書き修行中
07/10/08 08:28:57 DEDJzLP50
うお…
自分にアンカーしてどうするよ orz
>>18 ぢゃなくて >>19 でつ…
23:物書き修行中
07/10/08 08:30:10 DEDJzLP50
うわ、恥の上塗り
>>18 で良かった
吊ってくる
24:名無しさんだよもん
07/10/08 12:33:23 xHqBy4410
ゞ;ゞヾ.: ヾ:ヾゞヾ., .ゞヾゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ ` ``
ヾ ノノ ゞヾ . ゞヾ ゞヾ .ゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ `
ゞ:.y.ノヾゞ..ヾ .ゞ,'ヾ ゞヾゞ ;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞ;ゞゞヾゞ; `
iiii;;;;::::: イ.ヾゞ, .,; ゞヾゞ_lll__ ;ゞ ゞヾゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ `
iii;;;;;::::: :);; /ヽ,.ゞ:,,ヾゞヾゞ|| \ ゞヾゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ
iii;;;::::: :|;:/ ゞゞ;.ゞ ||. \ , ピ────ン
ii;;;;::: : |/ ((( ||)) \
;;;;::::: ::|. ( / ⌒ヽ . \ ` `
i..;;;;::: :| ` | |>>23| . ` \
::;;;;;::: :| ∪ / ノ \` `
;;;;;;::: ::| | ||. \ _
;;:;_ _: :| ∪∪ \ .'´ M ヽ.
((,,,)::.::| \ ! ノ从 リ))〉
;;;;;~~~:| . , | lゝ´ヮノ! +ではお手伝いを
;i;;:: :: ::|. ノ∩)l死つミ
:;:;;;;::: :::| ` く/_l_,〈__」
i;;:;i:i;;:;ヘヘ ,.,.. ,...... ,...,,,.,,,.,..,,,.,.. ,.. ,,,.,..,,.,....,,,.. ,,.,..,.,.. ,...,...,....,,.,..,,,,,と_)_)... ,,,.,.
25:名無しさんだよもん
07/10/08 16:32:28 Kggt2keB0
ひんぬー出張乙
26:「あと5分だけ…」 1/6
07/10/08 22:29:16 9WiHju2f0
「バスの時間、まだ?」
俺に問いかけに、
「……5分くらいで来ますよ、きっと」
優季は腕時計をちらりと眺めてから、嬉しそうに笑った。
小さなバス停のベンチ。
満天の星空の下、優季とバスを待つ。
こうして二人で居られる時間もあとわずか。
五分後には次のバスが来て、優季はそれに乗って帰ってしまう。
長いようで短い五分……そういえば今日一日、優季と過ごした時間はどれくらいだったのだろう。
朝教室で挨拶を交わしたところから始まり、昼食は優季お手製のお弁当を一緒に食べて、
それから放課後は俺の家で二人の時間を過ごした。
考えてみれば一日中、優季と一緒だったんだな。
「何考えてるんです?」
真っ直ぐな黒髪を夜風になびかせ、上目遣いでこちらをうかがう優季。
その姿はどこまでも幻想的で……
「貴明さん?」
「……」
「貴明さんったら!」
やば、思わず見とれてたらしい。
「あ、えっーと、ホラ!今日は優季とどれくらい一緒に居たのかなーって計算してて」
顔が赤くなるのを感じながら慌てて優季に返す。
優季と付き合う様になってしばらく経つけど、未だにこうやって目を奪われることがある……
なんて、人に話したら間違いなくバカップル扱いされるんだろうな。
「それで、どのくらいの時間だったんです?」
「うん、正確なことはわかんないけど、十時間は越えると思うよ」
頭の中ではじき出したあいまいな計算結果を伝えた。
27:「あと5分だけ…」 2/6
07/10/08 22:32:27 9WiHju2f0
「十時間もですか。でも私にはとっても早く感じました」
―楽しい時間は過ぎるのが早い。
世界中の誰もが認める法則。
感受性が実際に時間の感覚を短くさせてる、とかなんとか聞いたことがある。
確かこの法則って正式な名前があったような……
「貴明さん」
不意に名前を呼ばれて優季のほうに向き直った。
「どうしたの?」
「あの、貴明さんは私と居て、その……」
もじもじしながら何かを聞きたそうなそぶり。
「何?言ってみてよ」
大丈夫だから、と微笑んで催促すると、優季はしばらく考えてから意を決したように口を開いた。
「貴明さんはずっと私と一緒に居て……楽しいのかなって」
膝の上できゅっと両手を結び俺の返事を待っている。
……なんだそんな事か。そんなの聞くまでも無いのに。
「楽しいし、幸せだよ。ずっとこの時間が続けばいいのにって考えてた」
照れ隠しに鼻の頭をぽりぽりと掻いてみせる俺に、
「私もおんなじです。ずっと、ずっとこのままなら……」
優季もうつむきながら小さく呟いた。
自分の一番大切な人が、自分と同じ事を想ってくれている。
そう考えると胸の中に暖かいものが広がっていくような、心地よい安心感に包まれた。
28:「あと5分だけ…」 3/6
07/10/08 22:35:23 9WiHju2f0
「あ、流れ星ですよ!」
幸せ気分に浸っている俺の隣で、優季は少し大きな声を出して空を指差した。
「え?」
ぼんやりしたまま優季の指差した方に目を向けてみる。
しかしそこに拡がっていたのは先ほどまでと変わらない一面の星空。
「ごめん、ちょっと遅かったみたい」
いつか優季と二人、屋上で流星群を見たことがあったけど、
あの時とは違って今日は特別な天体ショーが予定されているわけではない。
……次のバスが来るまでに、もう一度流れ星を見つけられるかな。
「大丈夫ですよ?また流れますから」
それでも優季は微笑んで、自信たっぷりなご様子。
「ん?どうしてわかるの?」
「えーっとそれは、もう一度流れたら運命的かなって」
なんだ、そういうことか。
優季の大好きワードの一つである「運命」
でもどうせならもっとこう、運命的に……
「そうだ、次に流れ星見つけたら願い事してみない?」
流れ星といえば願い事、というありきたりな提案。
言った後、余りにも子供っぽい自分の提案に少し後悔もしたが、
「星に願いを……ですね。それってとっても素敵です!」
優季は目をキラキラと輝かせて、すんなり俺の提案を受け入れてくれた。
どうやら優季のロマンチスト魂に火がついたらしい。
「あ、でも三回心の中で唱えなきゃいけないんだからね」
メラメラと燃え上がるロマンチスト魂に水を差すかのように俺が口にしたのは、
これもありきたりな定番のルール。
考えてみれば何でこんなルールが決められたんだろう。
願いを叶えたければそれなりに難しいことをやってみせろ、って事なのかな?
29:「あと5分だけ…」 4/6
07/10/08 22:37:49 9WiHju2f0
「あんな早い間に三回なんて、大丈夫でしょうか?」
確かに優季の言うとおり、あの一瞬の間に三回なんて無謀といえば無謀だ。
普通にやってたんじゃまず無理。
となれば……
「それじゃ、俺はこう願うよ。『優季の願い事が叶いますように』って」
「え?でも貴明さんのお願い事が……」
「だから俺の願い事は、優季の願い事が叶う事なの。二人で協力すれば三回いけるかもしれないでしょ?」
少しズルい気もするけれど、きっとお星様もコレくらい多めに見てくれるだろう。
そう信じたい。
「貴明さん、そんなの優しすぎます」
少し困ったように優季は笑顔を浮かべる。
「まぁまぁ、俺の事はいいから優季は願い事を考えるの!」
正直な話、俺が考えたところで、金だのなんだの即物的なものしか浮かんできそうにないわけで……
それならやっぱり優季に願い事を考えてもらうのが一番だろう、うん。
俺に譲る気が無いと悟ったのか、
もぅ、とため息混じりに呟いてから優季はうんうんと首を傾け始めた。
そうしてしばらく考えた後、
「はい、決まりました」
ぽんと手を叩く。
「ん?なになに?」
「ダメです。コレは秘密のお願い事なんですから」
秘密っていうのはもしかして……
「女の子には秘密がいっぱいってやつ?」
「はい、もちろん。」
やっぱり。
気になる気持ちは多少、というかかなりあったが、無理矢理聞くのもなんだか無粋な気がしたので、
それ以上の詮索をやめて再び流れ星を探すために視線を星空に泳がせた。
30:「あと5分だけ…」 5/6
07/10/08 22:45:31 9WiHju2f0
真っ黒い空の中では、星一つ一つがキラキラと瞬いて自分の存在を主張している。
この星たちは一体いつからこうやって輝いているんだろう。
それはきっと俺が生きているよりもずっと前からで、そして俺が死んでしまった後もずっと続いて……
もしかしたら永遠なのかも知れない。そしてその永遠に自分も今参加しているのだ。
こんなちっぽけな俺だって永遠の一部であり、つまり宇宙なのだ!そう、俺の名前は宇宙!
……って、いかんいかん、考えが飛躍しすぎた。
いつの間にかプチ哲学を始めていた頭をぶんぶん振り、星空に再び意識を集中した、
正にその時だった。
夜空を駆ける一筋の光。
「優季!」
「貴明さん!」
すぐに俺と優季は目を閉じて心の中で願い事を言葉にした。
二人で一つの願いを。
……。
静寂が辺りを包む。
時間が止まったかのような、それでいてとても心地良い時間。
「お星様に届いたでしょうか?」
優季の声にゆっくりと目を開いた。
俺の隣で優季は両手の指を組んで祈るようなしぐさをしている。
月明かりに照らされた彼女の横顔はとても綺麗で、無意識のうちに吸い込まれていく。
なんだろう、体が勝手に……
だんだんと近づく顔に優季も気付いたのか、少しだけ顎を上げて目を閉じた。
唇と唇が触れるのと同時に伝わる暖かな体温とやわらかい感触。
……って、いきなり何をやってるんだ俺は。
31:名無しさんだよもん
07/10/08 22:48:11 wpDNOA4u0
支援……って、いきなり何をやってるんだ俺は。
32:「あと5分だけ…」 6/6
07/10/08 22:49:56 9WiHju2f0
「ご、ごめん。なんか体が勝手に動いちゃったというか、なんというか」
慌てて優季から離れ、わたわたとおかしな身振り手振りを踏まえて説明する。
我ながら何とも情け無い言い訳だけど、本当にそんな気がしたのだから仕方ない。
しかしそんな俺の様子に優季はといえば、
「大丈夫ですよ、貴明さん。私こうなるって分かってましたから」
え?
分かってた?
ってことはもしかして……
「あのさぁ、さっきの優季のお願い事って、そのき、き、キ……」
「さて、どうでしょう」
俺の言葉を遮って、優季は澄ました表情をつくってみせた。
……やれやれ。
正直、外でこういう事をするのはちょっと恥ずかしかったりするんだけど、
でもまぁいいか。もう少ししたら二人はしばらくの間お別れだし。
そう、あと少しで……
ってあれ?
ちょっと待てよ。
そういえばバスは……
「バスの時間、まだ?」
俺に問いかけに、
「……5分くらいで来ますよ、きっと」
優季は腕時計をちらりと眺めてから、嬉しそうに笑った。
33:↑の作者
07/10/08 22:52:34 9WiHju2f0
ふとネタが浮かんだので久しぶりに書いてみた。って言ってもほとんど初心者なんですけどね。
ちょっと改行多かったかも。他にも読みにくいとこがあったらすまん。
やっぱり、読むは易し書くは難し。長編書いてる職人の方々おつかれすー
>>31
支援ありが㌧w
34:名無しさんだよもん
07/10/09 00:31:44 XImgmQODO
GJGJ!!
35:名無しさんだよもん
07/10/09 00:54:40 eIgHe32s0
やっぱり草壁さんはいいなぁ
36:名無しさんだよもん
07/10/09 02:24:11 xFhpxLFTO
乙。
草壁さんの単発SSも久しぶりな気がするな。やっぱ草壁さん良いわぁ
それにしてもなんという無限ループ
タイトルもなるほどそういう事か
37:見習い氷
07/10/09 12:34:04 xLD2nxVTO
GJ&乙です。
まーりゃんSSを考えてましたが挫折してます。
イメージぶち壊しの可能性も多々ありますし…。
まぁADでる前なので勝手にやらせてもらいますw
38:名無しさんだよもん
07/10/09 19:15:29 OyTHRZU/O
GJ!
草壁さんはホント和むなぁ
39:名無しさんだよもん
07/10/09 20:03:48 XImgmQODO
>>37
頑張れ~!
少なくとも俺は待ってるぜ
40:物書き修行中(吊られ中)
07/10/09 21:31:36 WxfyDdKt0
草壁さんかわいいよ草壁さん
ちょっと詩的な感じの文章ともあいまってすごく良い雰囲気の話でした
次にも期待しちまいますよ
41:名無しさんだよもん
07/10/09 23:16:18 ykdXWNzb0
延々と5分とキスを繰り返すだけの世界に囚われたとしても、草壁さんと一緒ならそれでもいい
42:~かしまし~ 霞の場合 1/4
07/10/12 00:09:51 q0mUSEnc0
「きりーつぅ、れーい」
小牧さんの少々気の抜ける号令と共に礼をする。そして、頭を上げるとクラスメイト達
はめいめいに帰り支度を始めた。
今日もこれで終わり。俺もかばんに教科書を詰め込むとマフラーを巻いて席を立った。
「おう、貴明。ゲーセン寄っていかねぇか?」
雄二が声をかけてきたが今日は大事な用事があった
「悪い雄二。今日は大事な用があるんだ。」
「あん?…ああ、あの子とデートか。ちっ、この恋愛帝国主義者め。」
「この埋め合わせはそのうちするから。じゃ。」
「おう。楽しんでこいよ。」
文句を言いながらも笑って送り出してくれる雄二に感謝しながら急いで登校口へと
向かう。下駄箱から下足を取り出してそそくさとはき替えると急いで玄関から飛び出した。
外に出ると秋風が吹きつけてきて思わず首をすくめた。首に巻いた手編みのマフラーの
暖かさがありがたかった。
校門の横にもう見慣れた小さな後姿を見つけて駆け寄った。
「お待たせ。じゃ、行こうか。」
その子-霞は俺の声に振り向くと、こぼれるような笑みでにっこりと笑った。
~かしまし~ 霞の場合
霞と俺が付き合い始めたのはいつのことだったろうか、と時々思い返すことがある。
出会いは最悪。タマ姉の追っかけとして出会った九条院3人娘の一人として出会い、
そのときは愛しのおねえさまをたぶらかす不埒な男というのが俺の役回りだったわけで、
とても今のような状態は思いも付かなかった。
43:~かしまし~ 霞の場合 2/4
07/10/12 00:10:30 q0mUSEnc0
ぎゅぅぅぅぅ。
「わっ、いてててて。」
手の甲をつねり上げられて俺は回想から復帰した。
向かいの席では霞が少し膨れた顔で俺を睨んでいた。
「ごめんごめん。いまちょっと霞たちと初めて会ったころのことを思い出してたんだ。」
「……」
霞は赤くなってうつむいてしまった。
「あの頃はこんな風に付き合うなんて考えられなかったと思ってさ。」
コクコク
俺達は学校を出た後、二人で映画を見て、その後二人でゆっくり話をするために喫茶店
に入っていた。もうかなり日が短くなっているせいか、窓の外はすでに夜の風景だった。
「そういえば、玲於奈さんと薫子さんたちは元気でやってるのかな。」
コクコク
「そっか、今でも連絡取ってるのか。たまには会ったりしてるの?」
コクコク
頷きながら、霞はかばんの中からかわいらしい便箋を取り出した。
「そっか、文通してたんだっけ。俺はついつい携帯のメールとかで済ましちゃうから
なぁ。」
ぶんぶん
駄目駄目、というふうに霞が首を振った。
44:~かしまし~ 霞の場合 3/4
07/10/12 00:11:17 q0mUSEnc0
「たまには手紙を書けって?…まあ、そうだなぁ。たまにタマ姉にでも書いてみよう
かな。」
ぎゅぅぅぅ。
「いたたたた。な、なんだよ。」
ぷうっ。
ふくれっつらの霞が俺を責めるような目で見ている。
「…ははぁ。タマ姉にやきもち焼いてるのか。」
はっ。
ぶんぶん。
必死に否定しているけど、霞は俺がタマ姉に手紙を書こうとしたからやきもちを焼いた
のに間違いない。
「そんなやきもちなんか焼かなくても俺が好きなのは霞だけだから。」
ぶんぶんぶ…ぼぼっ!
必死に首を振っていた霞の顔が俺の一言で真っ赤に染まった
-
「寒いな…霞に貰った手編みのマフラーがありがたいよ。」
口元まで巻いたマフラーに隠れて見えないけど、霞が少し赤くなったように見えた。
俺達は喫茶店を出た。俺の右腕に霞が抱きついて、寄り添うように歩いていると、
少しだけ寒さを忘れられた。
「さて、そろそろ帰らないと…送るよ。」
俺がそう言うと、霞は、帰りたくない、といわんばかりにぎゅっと俺の右腕に抱き
ついてきた。
45:~かしまし~ 霞の場合 4/4
07/10/12 00:11:54 q0mUSEnc0
「帰りたくないかもしれないけど、プレゼントをあげるから我慢してくれよ。」
少し歩いて人波が途切れたところで、俺は立ち止まる。
「じゃ、手を出して。」
コクコク
霞が物を受け取るように胸の前で手のひらを上に向けて両手を出した。
俺は小さな左手を取ると、手を返して手袋を脱がせ、小箱から取り出したものを薬指に
通した。
「…!」
薬指にはめられたものを見て、霞が驚いた表情をした。
「誕生日おめでとう。安物で悪いけど、俺が霞のことをこれからずっと大事にするって
言う証明。」
霞の瞳からぽろぽろと涙が零れた。その涙を指で拭ってやりながら、俺は霞に告白した。
「これからも、ずっと一緒にいて欲しい。」
コクコク
霞が顔を上げて、涙に濡れたまぶたを閉じた。
俺は霞の体を抱きしめながら、そっと顔を寄せた。
言葉はなくても、見つめていれば言葉よりも解る事だってある。
だから、これからもずっと見つめていこう。
46:物書き修行中(絶賛腐敗中)
07/10/12 00:19:32 q0mUSEnc0
霞誕生日SSです…
ええ、
す っ か り 忘 れ て ま し た と も !
完全制覇を標榜してたのに、舌の根も乾かんうちに…困ったもんだ。
で、1週間も過ぎてから気が付いて、あわてて突貫で2~3時間で書きました。
霞といえば無口、ということで、極力擬音?だけで会話を構成する様な書き方にしてみました。
が、いかんせん本編での扱いが薄すぎるのでキャラクターがわかんないっす。
多少の人格ギゾウには目をつぶっていただきたく…
ついでにヤマなしオチなしイミなしのも目をつぶっていただきたく…w
47:名無しさんだよもん
07/10/12 03:18:58 Dg7W+TrTO
ぐっしょぶ。短時間での執筆ご苦労さまです
プレゼントに指輪っていうSSは個人的にあんまり好きじゃないんだけど、
なんか楽しく読めました。カスミSSが珍しかったせいかな
つーか考えてみたら、草壁さん→カスミって面白い流れだな、スレ的に
48:見習い氷
07/10/12 07:34:42 Mrwsc9AMO
乙です。
カスミ…いましたねそんなの。ってぐらい脇役の誕生日ssまで補完する作者さんにGJw
まーりゃん先輩ss執筆中ですが、地獄見てます。
話の作りにくさに地獄見てます。
本編やって見直したり、設定確認している最中なんですが、見落としてるのかなぁ…。
さーりゃんとまーりゃんの出会い方がわからない…。
>>47
じゃあ次はこのみママ(ry
49:名無しさんだよもん
07/10/12 08:20:58 F7ZX7jNt0
>>48
ささらは根暗な同級生として有名だった→(ささらとは無関係な理由で)まーりゃんが生徒会長になる→ささらの態度にムカついたので、生徒会に入れて強引に性格矯正
という流れ。
ファーストコンタクトについては特に触れられてなかった筈。
50:名無しさんだよもん
07/10/12 10:42:45 nyiGGMpV0
カスミって漢字で表記されたことあったっけ?
51:名無しさんだよもん
07/10/12 10:54:25 BoEv8NCx0
ないようだな。
今「霞」でテキスト検索してみたが、一件もでなかった。
ただしタカ坊がどう呼ぶかは分からん。
作中では心の中でさえ一度も呼んでない。
52:名無しさんだよもん
07/10/12 10:59:35 3fmQSS1u0
まあ呼ぶとしたら「”苗字”さん」じゃなかろうか
53:名無しさんだよもん
07/10/12 11:08:48 BoEv8NCx0
……あれ、もしかしてあの三人、名字設定されてない?
ついでに聞くが、あいつらタカ坊と同学年か? 一つ下の可能性もあるよな?
54:名無しさんだよもん
07/10/12 11:43:20 1ZBS68UG0
>>46
乙。初代東鳩で魔女っ子好きだった俺としては「コクコク」は結構アリだな
>>53
苗字は設定されてなかったはず。学年も、まぁ下にも考えられるけど、
同学年ってのがやっぱ一番しっくりくるな
55:この幸せ者め 1/2
07/10/12 18:54:57 1ZBS68UG0
「ねぇねぇ、良い天気だよ!早く行こうよー」
気持ちよく惰眠を貪っていると、聞き慣れた声がキンキンと耳元で響いた。
……やれやれ、またか。
隣の家に住む、チビッ子元気印こと柚原このみ。
毎日毎日、我が家にずけずけと踏みこんで来ては、こうやって遊ぼう遊ぼうとせがんでくる。
いつまで経っても変わることの無いこの関係。
きっと周りから見たら、仲の良い兄妹のように思われてるんだろうな。
眩しい太陽に目を細めながら、再びやれやれ、と呟いてみた。
「もぅ、いつまでもごろごろしてぇ!置いて行っちゃうよ!?」
あぁめんどくさい。
良い天気だからこそ昼寝をしたいというこの気持ちが分らないのだろうか?
生きる事はつまり寝る事といっても過言ではない。
そう、この眠気は自然の摂理なのだ。だからこそもうちょっとごろごろと……
「ほらほら早く早くぅ!」
しかしそんなこちらの考えなど知る由もなく、このみはぐいぐいと両手を引っ張ってくる。
眠いからまた今度、と言って引き下がる相手じゃないことは、長年の付き合いからも承知しているわけで……
しょうがねぇなぁ、と小さくため息をついてから、引っ張られるまま家を後にした。
56:この幸せ者め 2/2
07/10/12 18:56:45 1ZBS68UG0
河原の道を、相変わらず引っ張られるがままに歩く。
春の陽気がぽかぽかとして、なかなかどうして気持ちが良い。
このぽかぽか陽気の中、昼寝したらものすごく幸せなんだろうな。
「こんなところで寝たらダメだからね」
……さすが長年の付き合いというべきか。
ぴしゃりと注意され、“河原に思いっ切り寝転がる”という夢は儚く散った。
そうしてまた、河原道をてくてくと歩いていると、
「実はね、私……好きな人が出来たんだ」
ん?何だ藪から棒に。
「ううん、本当はずーっと前から好きだったんだけど、最近になって気付いたっていうか……」
このみは少しだけ照れくさそうにえへへ、と笑って見せる。
……ふーん、ついに恋を知る歳になりましたか。まぁ幼く見えても年頃の女の子だからな。
恋の一つや二つしたって当然といえば当然なんだけど、なんだか少しだけ複雑な気分なのはなぜだろう。
「ねぇねぇ、私の好きな人って誰だかわかる?」
そう言って真剣な表情でこちらを覗き込んできた。
好きな人……そんなのもちろんわかってる。
だってそれは……
「おーい、このみぃ!」
不意に後ろから、タッタッタと響く足音と共に聞きなれた声。
……そして嗅ぎなれた匂い。
「あ、タカくーん!どうしたの?」
隣を歩いていたこのみは、ぱぁっと花が咲くように笑顔になってそちらに手を振る。
「今買い物から帰るとこ。そしたらこのみとゲンジ丸のうしろ姿が見えたからさ。一緒に帰ろうと思って」
がしがしと頭を撫でてくるその男に、
「ばうっ!」
この幸せ者め!と、思いっきり言ってやった。
57:↑の作者
07/10/12 18:57:26 1ZBS68UG0
草壁さん→カスミ→ゲンジ丸、この流れを誰が想像しただろうか
…うん、>>47の予想の斜め上を行くSSを書きたかっただけなんだ
突っ込みどころ満載だけど、まぁ気にしない気にしない
58:名無しさんだよもん
07/10/12 20:09:28 asvh33qQ0
GJww
最初雄二かと思ったが、最後の最後でどんでん返しがあって、なかなか面白かったw
ゲンジ丸とこのみ、兄弟に見られるのか?w
59:名無しさんだよもん
07/10/12 20:27:20 y/fpL1b90
このみは犬チックだしな
犬が欲しいなとタカ坊が言えば、タカくんの犬になるよって勘違い甚だしく喜んで言いそうだし
60:物書き修行中(ゾンビにクラスチェンジ申請中)
07/10/12 21:24:10 q0mUSEnc0
>>50-51
霞は完全に漏れの勘違いです。カスミが正しい。
他の二人は漢字表記なので漏れの脳内のどこかで漢字変換されてたっぽいです。orz
(だから霞じゃなくて香澄とか佳澄とかの可能性もある)
カタカナ名なのか本当は漢字なのかは不明ですね。
>>52-54
苗字は少なくとも本編では明かされてないので、不明ですな。
よそで読んだSSでは3人とも向坂の分家ということにして向坂の苗字つけてる作家の人も居ましたね。
今回書いたSS中で貴明がカスミ以外の二人を馴れ馴れしくも「玲於奈さん」「薫子さん」 呼ばわり
してるのは苗字不明のためです。
学年に関してはタマ姉の下ということでどうとでも取れますが、今回は貴明と同学年という想定で
書いてます。
>>57
乙です
貴明にしちゃキャラ可笑しくね?と思って読んでたらゲンジ丸w
騙された~~~~~~見事です。
61:名無しさんだよもん
07/10/12 22:30:41 xRspmcqo0
>>57
このゲンジ丸の設定でタマ姉との絡みが見てみたいと思った
62:名無しさんだよもん
07/10/12 23:29:34 Dg7W+TrTO
>>57
47だが、コレは斜め上すぐるw 別に予想はしてなかったけど、なんかありがとう
草壁さんSSの時も思ったんだが話の落とし方が巧いな。次回作にも期待
63:名無しさんだよもん
07/10/13 17:37:40 qYJbSyp00
話としては面白いけど、俺の理解力が足らないのかな?ゲンジ丸の語りとしては矛盾している部分もあるような・・・
64:名無しさんだよもん
07/10/13 17:45:44 2fSSLFYR0
>57
GJ。やられてみればありそうなネタだが参ったw
>63
どの辺? 前半部分なら、俺はこのみがゲンジ丸の犬小屋に頭を突っ込んで、
寝ている彼の前足をグイグイ引っ張ってる光景が目に浮かんで微笑ましかったぜ
その後の「引っ張る」に引っ張られる場所の説明がないのが上手いと思った
65:名無しさんだよもん
07/10/13 17:55:21 qYJbSyp00
>隣の家に住む、チビッ子元気印こと柚原このみ。
>毎日毎日、我が家にずけずけと踏みこんで来ては、こうやって遊ぼう遊ぼうとせがんでくる。
ん~このあたり。ゲンジ丸ってこのみの家にいるんだよね・・・
・・・そうか!ゲンジ丸の家はこのみの家の「中」という考えではなくあくまでも「隣」なのか!!
ごめん、俺の理解力不足だった。
作者様すみません。俺の頭が悪かったですorz
66:見習い氷
07/10/14 00:13:25 jl1dxQ6xO
>>57
乙&GJ。
まさかゲンジ丸とはwww
この展開は誰も読めなかったなwww
まーりゃんSS一応完成。
読み返せば読み返すほど…酷い内容w
本来無い話を作るのも大変だけど、無い関係、無いキャラも作るのはホント大変でした。
そこがSSや小説執筆の楽しさでもあるんですがね。
引き出しがないと難しいです。
後は手直ししてからそのうち投稿する予定です。
いやぁ…時間掛かったなぁ…。
67:名無しさんだよもん
07/10/14 01:55:25 xZwMDQkx0
お疲れさん。
全裸で待ってるぜ!
68:CHE.R.RY 1/8
07/10/14 20:28:09 +8yQfn2y0
いつからだっただろうか?
私は彼に、密かに好意を抱いていたのかもしれない。
少なくとも、他の男子よりは好意を持っていた。
そして、私は彼に積極的に接触していた。
けれど、その行為は最初は彼を自分のものにしたい、というわけではなかった。
しかし、彼と時間を共にするにつれて、私は彼に惹かれていた。
それに気づくのが遅れていたら、私は手遅れだったかもしれない。
69:CHE.R.RY 2/8
07/10/14 20:28:49 +8yQfn2y0
私は朝霧 麻亜子。
私は恋をしていた。
1つ学年が上で、生徒会長をしていた先輩である。
生徒会長は誠実で、周りの面倒見がよく、イベントや行事にも積極的に参加する良き生徒会長であった。
顔立ちも悪くなく、学園内の女子生徒からの人気は高く、毎日のように告白される噂もあるほど。
私は副会長を務めていた。
主に生徒会長の補佐をするわけだが、特段なにかするわけでもなく、表舞台には出てこない黒子みたいな役職である。
副会長という役職に就いたのも、生徒会長に接することが多いから。
しかし、それも、なにもしないまま終わってしまった。
生徒会長は引退し、私は新生徒会長に就任。
そして最後のチャンスとなる卒業式の日に、私は思いきって屋上に呼び出して告白をした。
私は無理だとわかっていた。
ただ、私の思いを伝えたかっただけ。
「ずっと前から好きでした。つき合ってください」
生徒会長は、君とはつき合えない、とはっきり言い、去っていった。
私の恋は叶わなかった。
わかっていけど悲しかった。
涙が止まらなかった。
その日の夕飯もろくに食べず、部屋で泣いた。
そして心に決めた。
――恋をしない、と
70:CHE.R.RY 3/8
07/10/14 20:30:26 +8yQfn2y0
それから私は変わった。
まーりゃんとして生まれ変わり、予算関係なしにどんどんイベントや行事をやってきた。
運動会や文化祭のみに限らず、始業式や終業式にも手を加えた。
あんな辛い思い出は消え去ってしまえばいい。
私は忘れることを選んだ。
とにかく楽しいことをして忘れよう。
私だけでなく、生徒や教員、学園も巻き込んで。
どんな壁が立ちはだかろうとも、手段は選ばない。
私のために。みんなも楽しめるように。
とにかく楽しいことばかりをやった。
しかし、ある日1人の少女と出会う。
私がこんなにも楽しく、盛り上げているのに。
なぜ彼女は笑わないのか。
まるで世界の全てがおもしろくない、と思っているような。
そんな彼女の顔が嫌いだった。
でも私は敢えてぶつかってみることにした。
私の近くに置いて、私の力で必ず笑わせてやろうと。
「そこのキミ。生徒会…やらないか?」
71:CHE.R.RY 4/8
07/10/14 20:31:41 +8yQfn2y0
しかし、それも叶わなかった。
近くに置いたせいで、逆に彼女を苦しめる結果になってしまった。
終業式兼卒業式のこと。
彼女は涙を見せて卒業するな、と訴えた。
つまり、私が生徒会に入れたのは逆効果だった。
笑わせるつもりが、彼女に涙を流させてしまった。
でも、私は諦めない。
私が無理なら別の人に。
ちょうど適役がいた。
河野貴明。
彼女とは学年が違うが、いつからか彼女と共に生徒会を運営していた。
私は見かけるようになってから、2人がくっつくように色々とけしかけてきた。
私が叶えられなかった2つの願いは、きっとこの2人が代わりに叶えてくれる。
「さーりゃんをたかりゃん好みに調教したまへ」
彼はその言葉に戸惑いを感じつつも、その意を察して頷いてくれた。
しかし、最近私は気づいたのだ。
彼が好きであることに。
彼と時間を共にするにつれて、彼に惹かれていた。
彼のやさしさに。
彼のかっこよさに。
恋をしないと決めておきながら、確実に彼に好意を寄せていた。
でもそれに気づくには遅すぎた。
彼は着実と彼女に好意を寄せているだろう。
でなければ、彼女の生徒会の手伝いもしないだろうし、他人にセットされたデートとはいえ、行くはずがない。
私が思うに手遅れなのである。
以上。回想すること約10秒。
72:CHE.R.RY 5/8
07/10/14 20:33:00 +8yQfn2y0
「まーりゃん先輩には好きな人はいないんですか?」
彼の口から出たその言葉について色々と考えていた。
偶然校門で会い、帰り道を共にしていた。
時刻は夕方。太陽の光が昼とは違ってまた眩しかった。
「…いないと言ったら嘘になるかな」
答えたくなかった。
また叶わない恋をするのは辛いから。
「でも、何でそんなこと聞くのかい、たかりゃん?」
「いや、その…先輩のことが気になってですね…」
「ははーん。もしや私の魅力に気づいたか、たかりゃん。そうだろう。はっはっは」
いつもの調子で言った冗談。
しかし、彼の様子がおかしい。
顔を真っ赤にしている。
そして彼は答える。
「…はは、そうなるんですかね」
「え?」
その時の私の顔はマヌケな顔をしていただろう。
彼の言葉の真意にすぐに気づかなかった。
「まーりゃん先輩は、俺と久寿川先輩をくっつけようと色々してますよね?」
「あ、うん」
「俺はですね、そんな風に誰かに決められた恋に意味はないと思うんですよ」
それもごもっともである。
「久寿川先輩はどう思っているかわかりません。しかし、俺はそんなのは嫌です。それに…」
「……」
「少なくとも、俺は久寿川先輩と付き合いたいとは今は思っていません」
73:CHE.R.RY 6/8
07/10/14 20:34:05 +8yQfn2y0
「そう…だったんだ…」
「…はい」
彼にとって、私は迷惑だったのかもしれない。
その事実を知らされた。
その知らせは私にとっては吉報であったのか、違うのか。
なんとも判断しにくかった。
「でも、さーりゃんは私なんかよりも頭はいいし、胸もあるし、たかりゃんはさーりゃんに興味ないの?」
そうだ。彼女は恵まれている。
それがすぐに近くにあって、手に入るかもしれないというのに。
なぜ彼は彼女を選ばないのか?
彼に聞く。
「まぁ、確かに興味無いと言ったら嘘になります。でも俺は一緒に居て楽しい方がいいんです。
あ、久寿川先輩がつまらないってわけじゃないです」
「楽しい…ねぇ…」
「俺は少なくとも…そのですね…」
なにやら言い倦ねている。
「ほら、男ならドーン言っちゃいなよ」
「…言いふらしたりしません?」
「なになに~?」
「俺は…まーりゃん先輩が好きなんですよ」
「……え?」
「す、好きです、好きなんです!」
「え?ちょっ、ちょっと待って、あれ?」
混乱する私。
落ち着け。落ち着くんだ私。
「えっと…たかりゃんが私のこと」
「好きです」
74:CHE.R.RY 7/8
07/10/14 20:35:17 +8yQfn2y0
目の前に広がっていた夕焼けが彼の体によって遮られる。
私の顔は彼の胸のあたりにあった。
「あの…たかりゃん?冗談だよね?」
そうだ、きっとこれは私を騙して驚かせようとしているんだと思った。
「冗談でこんなことしませんよ!」
目があった。
彼の顔は真剣そのものだった。
私は目を逸らせなかった。
「私なんかで…」
「……」
「私なんかでいいの?」
「はい」
「頭悪いし、うるさいし、それでもいいの?」
「はい」
「ホ、ホントに?」
「まーりゃん先輩じゃなきゃダメなんです!」
彼の抱く腕に力がこもる。
私はそれに答えるかのように、後ろに手を回し、抱き返す。
彼の体は私よりも大きく、硬く、とても頼もしいように感じた。
「後悔しても知らないんだからね」
「まーりゃん先輩となら大丈夫な気がします」
笑顔で答える彼の顔がとてもかっこよかった。
彼の体が少し私の顔から離れ、見えた夕焼けが眩しかった。
地面には2人の影が映っている。
私は彼にいきなりキスしてしまった。
2人の影は重なる。
彼とキスしたい衝動に駆り立てられた。
先に惚れたら負けってよくいうけど。
彼を想う気持ちがここにきて止まらなかった。
75:CHE.R.RY 8/8
07/10/14 20:36:54 +8yQfn2y0
「ま、まーりゃん先輩…」
彼も恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしてこちらを見ている。
キスしたのはいいものの、私は気恥ずかしくて彼を見れなかった。
…まだ青い、な私って。
その気恥ずかしさを隠すかのように、背を向けて私は言った。
「彼は大変なものを盗んでいきました…」
「…?」
「あなたのファーストキスです!」
「…はい!」
やっぱりこういうやりとりが出来るのって、やっぱり楽しいと感じた。
私も彼とならどこまでも行けそうな気がする。
「ふふっ」
つい、笑みがこぼれて、声に出して笑っていた
「どうかしました?」
「たかりゃん…」
「はい?」
「好きだよ」
どこまでいけるかはわからない。
でも彼と一緒に未来を歩いていきたいと思う。
彼となら明るくて、楽しい未来を築ける気がする。
76:名無しさんだよもん
07/10/14 20:37:05 rDxrJ8VC0
支援
77:見習い氷
07/10/14 20:39:04 +8yQfn2y0
投稿してあれですが…正直、この投稿無かったことに(ry
そう思いたいくらいこの作品怖いですw
えっと、まずは一つお詫びを。
これ読んで気分を害した人がいたらすみません。
また突っ走ってしまいました。ごめんなさい。
まだ未熟なうえに、まーりゃん先輩SSとなるとどうも難しくて…。
相変わらず話の展開を作り、それを繋げるのがまだいまいちなので。
まーりゃん先輩のキャラもどこまで破天荒なキャラにすればいいかもわからず。
状況の描写も下手ですので…。
今回の件はいつも以上に大目に見てくださいw
SSタイトルのCHE.R.RYはYUIの曲の題名から。
なんとなくこの曲が似合いそうだと思っておりました。
べ、別にタイトル思いつかなかったわけじゃないんだからねw
誤字・脱字・指摘等ありましたら、いつものようにお願いします。
さて…次は誰書こうかなぁ。
78:名無しさんだよもん
07/10/14 20:47:01 Ytp+MIts0
>>77
まーりゃんの妄想オチかと思ってたので、真面目にちょっとビックリです。
でもまーりゃんSSぽくなくて逆に新鮮でした。
まーりゃんが真面目に恋するのもありですね。
面白かったですよ。
79:名無しさんだよもん
07/10/14 23:29:14 UjRkh8L70
>>77
乙
こういうサブキャラとの恋愛話は、過程が重要なんだよね
着眼点は悪くないんで、勿体ない気がする
まーりゃん先輩が貴明を気に入ってて、貴明もまーりゃん先輩のこと悪く思ってないってのは原作からしてわかる
けど、それが恋愛感情に発展するかどうかってのが微妙(原作だとまーりゃん先輩を女と思ってない節があるし)
たとえば『桜の群像』だと雄二と玲於奈がくっついてるけど、あれって割と長い過程があるから納得出来るじゃん?
あれみたいに、少なくとも三話か四話くらいかけて、貴明がまーりゃん先輩に惹かれてく過程が見たかったかも
原作と同じシーンでも、貴明の心証をちょっといじってやるだけで(ささらを心配する優しさに心打たれるとか)変わってくるだろうし
そういう部分を書いて、前半貴明、後半まーりゃん先輩って感じで、前後編くらいでもいいからじっくり読んでみたかった
80:名無しさんだよもん
07/10/15 17:22:41 72WGnqJX0
乙&GJ
>79の言う通り、肝心の‘貴明が何で好きになったか’が抜けてるからもったいない
偉そうな事は言えないが、見直すときに話の構成を重点的に見直したらいいんじゃないかな?
やっぱり回想が長すぎてその後の展開との繋がりがちょっと強引なように感じる
個人的には最後までま―りゃん語りで突っ走っても良かったのでは?とオモタ
でも、純なまーりゃんってのも新鮮だったのだったし、そもそもまーりゃん一人称ってのが
ありそうでなかったから、その発想には乾杯。
年上の生徒会長に恋をしていたって言うオリジナル設定もなかなかいいと思う。これからも期待してます
そういえば、『桜の群像』マダカナ…
81:見習い氷
07/10/15 19:36:12 2PgysHnEO
>>76
支援どうもです。
>>78
そういってもらうと多少助かりますw
まだ未熟なんで、これからもガンガリます。
>>79
その理由作りがどうにもまとまらなくて、あいまいにしたまま投稿してしまったんでw
煮詰めて、ある程度の量を準備できればよかったのですがね…。
まーりゃん先輩は特殊すぎましたw
長編や連載的感じのSSも書けるよう、力つけたいと思います。
>>80
回想と本編(?)のバランスってどれくらいがベストなんですかね?
私的には回想は少な目と考えてますが…本編と相談って感じなんですかね。
そこら辺も気をつけて次作に取り組みたいと思います。
82:名無しさんだよもん
07/10/15 20:20:12 lqoeFlOy0
SSならばストーリーより萌え要素を見たい
83:名無しさんだよもん
07/10/15 20:33:54 KFcsaGmn0
>>81
まーりゃんみたいに情報が少ないサブキャラだと、長編にしない限りお互いの気持ちが通じ合う
過程を書くのは難しいから、こんな感じでいいんだと私は思います。
久しぶりに来て盛り上がってるのを見て、長らく書いていない長編の続きを書こうとしたはいいけれど、
久しぶり過ぎて話の方向からして見失ってて茫然自失な私。
84:名無しさんだよもん
07/10/15 22:38:36 eXWJ7bHS0
>>81
まあ、確かにまーりゃん先輩で中編~長編は難しいかも
それでもやっぱり、貴明がまーりゃん先輩を好きになった理由とか過程が抜けてるんで、「あれ?」って思っちゃうんだよね
貴明から告白してるから余計に
それならいっそ、まーりゃん先輩が貴明に告白して押せ押せで行く内に貴明が折れる、みたいな方がまーりゃん先輩っぽくていいかも
……いや、これだけ考えてるなら自分が書けって言われるかもだが
一次創作畑の人間なんで、二次創作はうまく出来ないんだよ
85:クッキーを食べさせて 1/14
07/10/16 02:11:17 xQSQJVYM0
『そういち君、ふぁい、めひあはれ』
『いやいやいや、ここ、公園だし。パブリックな場所でビスケット口移しというのはちょ
っと、どうかと思うんですよ』
『ふぁい』
『そんな悲しそうな顔されてもですねダメなものは・・・・・・一回、だけだぞ?』
『ふん』
『けっして俺がやりたいんじゃなくて、あくまでこれはそっちの意思を尊重してだな』
『ん~ん~』
『じゃ、じゃあいくぞ!?』
86:クッキーを食べさせて 2/14
07/10/16 02:14:39 xQSQJVYM0
その後はもう、二人がキスするまであっというまだった。
男の方が女の子の咥えるビスケットに噛り付いたかと思ったら、一気に口元まで食べき
って。
ちゅ~~~っ・・・・・・
・・・・・・す、すごい物をみてしまった。
思わず出る溜息。買い物途中で休憩に寄っただけの公園で、まさかこんな物に遭遇する
なんて。
日曜の公園は、俺たちの他にも家族連れや子供、それにカップルで賑わっていて。
そんな中で、あそこまで堂々と、あんなことが出来るなんて。見ていてこっちが照れく
さくなる。気のせいか、あたりもなんだか暑くなったような。
火照った顔で横を向くと、隣に座るイルファさんも、顔を真っ赤にしてカップルのこと
に見入っている。試しにイルファさんの顔の前で手を振ってみても、全く反応が返って
こない。
やっぱり、刺激が強いよなあ、あれは。
見れば二人とも、俺とそんなに変わらない歳に見えるのに。とてもじゃないけど、俺に
は真似できない。と言うか、真似しろと言われても必死で断る。
たまに珊瑚ちゃんがやってくる「貴明、あーんして」でさえ、照れくさいのを全身の勇
気とか忍耐を総動員して何とかこなしているって言うのに。
87:クッキーを食べさせて 3/14
07/10/16 02:19:24 xQSQJVYM0
あの二人は外の公園で、しかも何人もの人間に注目を浴びつつしているんだから。俺な
らきっと、恥ずかしさと照れくささでこの場から走って逃げ出してるんじゃないだろうか。
さすがに全く平気と言うわけではないらしく、まるで悶えるように体をくねらせるカッ
プル。
これだけ周囲から注目を浴びていて全く気が付かないのは、もう完全に自分たちだけの
世界に入ってしまって─な、ま、また口にビスケットをっ!?
俺だけじゃない、周りでカップルに注目をしている何人かの口からも、どよめきの声が
あがる。イルファさんなんて口に手を当てて「まあ、まあ」なんてうろたえた声をあげて。
再度口にビスケットを咥える女の子。
男の方、一応嫌がっているようなそぶりは見せるけど。でも両手はいつの間にか女の子
の肩へ。やる気満々じゃないか。
「いやー困ったな、俺は恥ずかしいから嫌なんだけどこいつがどうしてもって言っても
聞かないから仕方なく」とか何とか心の中で思ったりしているに違いない顔つきで、女の
子の唇に顔を近づけて行く。
そして咥えられるビスケット。
もうちょっとで唇と唇が触れそうだ、と言う瞬間に割れたビスケットからは、まるでそ
の音がここまで聞こえてきそうなくらいで。それだけ、俺もカップルのことを注目してし
まっていると言うことなんだろう。
88:クッキーを食べさせて 4/15
07/10/16 02:23:47 xQSQJVYM0
向こうが見られていることに全く気が付いていないようで本当によかった。
そして更に、今度は男の方がビスケットを口に・・・
もうお互いのことしか見えていないモードのカップルに、怖い物など何も無いらしい。
恐るべし、バカップルパワー。
とうとう二人を見続けることに耐え切れず空を仰ぐ。完璧に向こうの雰囲気に中てられ
て、体が熱い。思わず出る今日2回目の溜息。
ふと視線を横にずらしてみると、イルファさんはまだカップルのことをじっと見つめて
いて。
真剣な表情で、カップルを見るイルファさんの横顔。
あんな物を見たせいだ。どうしても、イルファさんのその、さくらんぼ色した唇に目が
行ってしまう。止めよう止めようと思うのに、ほんの少し視線をそらすだけでいいのに、
頭の中では今のカップルの様子が思い浮かんで。
いくらなんでも、あんな恥ずかしいこと出来ないって。頭の中で、誰かが言った。
でも、あのカップルの嬉しそうな顔、見ただろ? 耳元で誰かが囁いた。
思い出すのは、イルファさんとキスした時の、イルファさんの唇の柔らかい感触。
視線を下ろすと、買い物袋の中には今日の晩御飯の材料と、クッキーの箱。
な、何でこんな物がっ・・・・・・ああ、さっき買ってきたんだ。
89:クッキーを食べさせて 5/15
07/10/16 02:26:32 xQSQJVYM0
そもそも俺もイルファさんも、この公園には買い物帰りにたまたま休憩に寄っただけで
早く帰らないと珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんも心配するし─
・・・でも、イルファさんの口がクッキー咥えてるのも可愛らしいだろうなぁ今だってほら、
何か喋っているのも
「貴明さん、貴明さん? どうなさいました、私の顔、じっと見つめて」
「うん、イルファさんの唇が、柔らかそうで可愛いなあって」
「ま、まあ」
思わず丸くなるイルファさんの唇。やっぱり可愛らしいっ・・・っておれは一体何を
「う、うぁわぁぁっ!? ご、ごめん? 変なこと言っちゃって!」
い、一体俺は何を言ってるんだ!?
思わず上げた視線の先には、赤くしたイルファさんの顔。そんなに目を丸くして、俺の
ことを見ないでください。
90:クッキーを食べさせて 6/15
07/10/16 02:32:15 xQSQJVYM0
慌てて周囲を見渡すけど、今の俺の叫び声に気が付いた人はいなかったみたいだ。とり
あえず一安心。あ、向こうのカップルも、片付け準備に入ってる。
もう一度イルファさんの方を見る。
もしかしたらイルファさん、聞かなかったことにしてくれているかもなんて期待したん
だけど。やっぱりこっちを見たまま。そう上手くはいかないらしい。
は、恥ずかしい。
「あの、貴明さん」
「な、なんでしょう!?」
声が裏返ってる。更に恥ずかしい。
でもイルファさんが次に言ってきたことは、そんな恥ずかしさも一瞬で吹き飛ばすくら
い衝撃的で。
「貴明さんも・・・その、なさりたいんですか?」
いくら俺でも、そこで「何を?」と聞くほど察しが悪くはない。それに、イルファさん
が顔を赤くしたまま視線を泳がせる先は、さっきのカップルの座っていた場所。
91:名無しさんだよもん
07/10/16 02:35:34 jVnUTqqK0
支援?
92:クッキーを食べさせて 7/15
07/10/16 02:35:36 xQSQJVYM0
いいい、いやいやいや、誰がそんなやりたいって、俺が?
そりゃあ、イルファさんの唇眺めてはいたけど、あのカップル見てたら誰だって、ねえ?
確かにイルファさんの唇は柔らかくて気持ちが良いだとか、イルファさんとこんなこと
出来たら凄い幸せな気持ちになれるだろうって思ったりなんかはするけどさ。
「ですが貴明さん、その」
イルファさんの視線が、俺の膝の上に落ちる。
つられて俺も下を向くと、何故か手に持っていたのはさっきまで買い物袋の中に入って
いたはずの、クッキーの箱。
「何で!?」
何でこれがここにある? 誰の陰謀!? これじゃあまるで、俺がイルファさんとあん
なことしたくて無意識のうちに袋から出したみたいじゃないか。
「た、貴明さんがそうご希望なのでしたら・・・」
93:クッキーを食べさせて 8/15
07/10/16 02:39:44 xQSQJVYM0
ま、待ってくださいイルファさん、落ち着いて。
さっきのカップルを見たでしょ? あんな恥ずかしいこと、絶対に
「貴明さんは、私とクッキーを食べたくは無いとおっしゃるんですか」
「いや、だからそんな悲しそうな顔されても。別に、イルファさんとそうするのが嫌だっ
ていうんじゃなくて」
「では、食べてくださるんですね?」
なんだかもう、クッキーを食べなきゃいけないようになってしまったような。
だってほら、イルファさん。俺の手からクッキーの箱を受け取ると、嬉しそうに袋を開
け始めて。ここまでイルファさんがやる気なのに、これをどうやって断れと?
「それでは貴明さん、ふぁい、めひあがれ」
イルファさん、箱からクッキーを一枚取り出すと、躊躇いもせず口に咥えて。
イルファさんの口元で、揺れるクッキー。バニラクッキーだ。
それを「ん~」なんて俺の方に突き出して。
94:クッキーを食べさせて 9/15
07/10/16 02:44:09 xQSQJVYM0
お、落ち着け? そうだ、いつもしているちゅーだと思えばいいんだ。それならいつも
挨拶代わりにしてるんだし、何を恥ずかしがることがあるでもイルファさんの唇、なんだ
かいつもよりも色っぽく見えるような・・・・・・
え、ええいぃっ!!
イルファさんの肩を抱くと、そのままクッキーの端を齧る。気合を入れた割には、俺の
口を付けたのは縁の部分だったみたいで。
粉っぽい音を立ててクッキーは、俺とイルファさんの唇の真ん中で割れてしまう。
「あ」なんて間抜けな声をあげて、気が付いたときにはクッキーの半分は俺の口の中。
俺とイルファさんの唇が触れる前にクッキーは割れてしまって、俺もイルファさんの唇
から離れてしまう。
なんだか、凄く寂しいような、勿体無いような気持ちになった。
口の中で租借するクッキーに、俺とイルファさんとの間を邪魔されたような。
「なんだか、残念だったねイルファさ、ん?」
けれどイルファさんはそのまま、半分になったクッキーを咥え続けていて。ちょっと困
った顔。
そんなイルファさんに俺が混乱していると、自分が咥えているクッキーをちょんちょん、
と指差して。
95:クッキーを食べさせて 10/15
07/10/16 02:49:38 xQSQJVYM0
もしかして、そっちも?
満足そうに頷くイルファさん。よくよく考えてみれば、イルファさん物を食べられない
んだから、結局全部俺が食べなきゃいけない訳で。
イルファさんが咥えるクッキー。今度は大きさも、さっきの半分。齧れば、すぐにでも
イルファさんの唇に触れるだろう。
「じゃ、じゃあ、いくよ?」
あらためて声をかける。そういえば、さっきこれを言うのを忘れてたな。
「いただきます」
イルファさんの咥えるクッキーを齧る。
そのまま口の中に含んで行くと、俺の唇に触れた柔らかい感触。
俺はイルファさんの肩を抱く腕に力を込めて。イルファさんも、俺のことを強く抱きし
めてくれた。
クッキーが全部、口の中に入っても。二人とも唇を離そうとはしないで。
むしろ口の中のクッキーのせいで、これよりもイルファさんとキスできないことのほう
が勿体無くなる。
96:クッキーを食べさせて 11/15
07/10/16 02:53:53 xQSQJVYM0
そのまま、どれくらいの間イルファさんとキスし続けていたんだろう。俺の方から唇を
離したのは、単に口の中のビスケットがふやけてきてしまったからで。
そのまま噛んで飲み込んでしまう。
あ、イルファさんもクッキーを咥えていたんだから、これも一種の間接キスになるんだ
ろうか。そう考えたら、とたんに照れくさくなってきた。
「あの、いかがでしたか?」
「う、うん、美味しかった・・・・・・それに、柔らかかったし」
真っ赤になるイルファさん。きっと俺も似たようなものだろう。
しかしこれは、ヤバイな、はまってしまいそうだ。口移しで物を食べるのが、こんなに
気持ちが良いなんて。あのカップルの気持ちも、これならわかる。
するとイルファさん、箱からもう一枚クッキーを取り出して。今度は、俺が?
ま、まあ、さっきのカップルもやってたしね。仕方ないよな。
イルファさんからクッキーを受け取って、それを口に咥える・・・前にちょっと考え込む。
「あの・・・どうかなさいました?」
97:名無しさんだよもん
07/10/16 02:56:09 Wh1othSaO
支援。そしてお休み、皆様
98:クッキーを食べさせて 12/15
07/10/16 02:58:42 xQSQJVYM0
あ、いや、したくなくなったわけじゃないんだけど。
ただ、ちょっとさ。
手に持ったクッキー。それを半分に割って。更に半分にして。それを口に咥える。ほと
んど唇の先に乗っているような感じで。
目を丸くするイルファさん。だってこうすれば、その、すぐちゅーが出来るし。それに、
クッキーに邪魔されずにイルファさんとし続けられる、からさ。
俺が何をしたいのか、イルファさんもわかってくれたみたいで。
クスクスと笑いながら、俺の方へ顔を近づけて来てくれる。
お互いに目を瞑っているせいで顔は見えないけど、見えないからこそ、唇同士が触れて
いるのを強く感じることができる。
試しに、舌でイルファさんの口の中にクッキーを押し込んでみた。
イルファさん、それをまるでイヤイヤするみたいにまた舌で俺の口の中に戻してきて。
それが楽しくてまた意地悪しようとすると、今度はクッキーじゃなくて、イルファさんの
舌に触ってしまう。
耳に響くお互いの舌を舐めあう音が、ちょっとだけいやらしい。
クッキーはもう、とっくに口の中でふやけてポロポロに崩れてしまったけど。お互い、
十分満足するくらいそれぞれの唇を味わって、ようやく体を離すことにした。
「え、えーと、なんて言うか・・・ごちそうさま」
99:クッキーを食べさせて 13/15
07/10/16 03:02:57 xQSQJVYM0
「お粗末さまでした。貴明さん、私の唇、美味しかったですか?」
そ、それはもう。美味しすぎてお腹一杯で。
「ありがとうございます。私も貴明さんの、堪能させていただきました。これがいわゆる、
舌の上でとろける、と言うのでしょうか」
それはちょっと違うと思うけど、イルファさんが喜んでくれたのならまあいいか。いい
ことにしよう。
それで、イルファさん。何を、してるの?
「貴明さん。デザートに、もう一つクッキーをいかがですか」
・・・ま、まあ、折角イルファさんが咥えているクッキー、無駄にしちゃ悪いし。
イルファさんの肩に手を置く。目の前にはもう、目を瞑って俺のことを舞ってくれてい
るイルファさんの顔。
デザートのクッキーも、やっぱり溶けてしまいそうなくらい甘かった。
100:クッキーを食べさせて 14/15
07/10/16 03:07:23 xQSQJVYM0
「買い物、時間かかっちゃったね。珊瑚ちゃんたち心配してなきゃいいけど」
公園からの帰り道。
でもイルファさんは、俺が声をかけてもどこか上の空で。
俺の手には晩御飯の材料の入った買い物袋と、それに中身が半分くらい無くなったクッ
キーの箱。
二人とももう止まんなくなっちゃって、気が付いた時には・・・・・・う、うぅぅぅ。
気が付いた時には、俺たちの周りに出来ている人だかり。その中にはさっきのカップル
まで混じっていて。
思い出すだけで恥ずかしさで死にたくなる。まさか、あんなに人に見られていたなんて。
逃げるように公園から飛び出して。イルファさんなんか半分ブレーカーが落ちかけてち
ゃって、手をつないでなかったら、今頃公園でフリーズしてたんじゃないだろうか。
今も、まるでのぼせたみたいに焦点の合わない目をして
「貴明さん」
急に名前を呼ばれて、慌てて視線をそらす。顔を見てたこと、わかったかな。
101:クッキーを食べさせて 15/15
07/10/16 03:11:18 xQSQJVYM0
「貴明さんは、さっきの・・・その、どうでしたか? クッキーのお味は」
「え!? あー、うん。とっても美味しかったよ・・・・・・柔らかくて」
自分でも一体何を言っているのかわからなくなってきた。イルファさんなんて顔を真っ
赤にしちゃって。
「あの、ではよろしければ、マンションに帰りましたらまた、クッキーの方ご用意させて
いただきたいのですが」
イルファさんのその一言で、我慢の限界はあっさりと超えてしまう。
慌ててあたりを見回しても、人影は、ない。
「い、イルファさん!」
俺はイルファさんに向き合うと。
何も咥えていないイルファさんの唇から、クッキーを一枚、口移しで食べさせてもらう。
終
102:クッキーを食べさせて あとがき
07/10/16 03:14:40 xQSQJVYM0
こんな遅くに支援くださった方、ありがとうございます。
久しぶりに書いたらすげぇ時間かかった。
俺はただ、イルファさんとちゅっちゅできればそれでよかったのに。
103:名無しさんだよもん
07/10/16 04:16:14 G6EBYyEw0
>>102
久しぶりにスレを覗いたら、支援しようかどうか悩む状況で
結局漏れは支援しなかったわけだがw、代わりに
全部読んでしまったw
おっきしましたw
イルファさんエロす。
つうか、貴明の我慢の限界値低すぎだろうw
GJです!
104:名無しさんだよもん
07/10/16 05:50:05 8IzRfNUN0
>102
おおGJ! あと「いつものイルファさんSSの人」なら、お帰りなさい!
「ブレーカーが落ちかけて」ってのはいい表現だなぁ
最後は単にちゅーしたってこと? それとも全咥えでクッキー? それともイルファさんの舌(ry
105:見習い氷
07/10/16 05:56:28 4LGgbUlsO
>>102
乙&GJ!
エロイ…エロイよイルファさんw
106:名無しさんだよもん
07/10/16 09:58:52 6mv0WUkp0
>102
あまーい!ただただ甘くて良かった。やっぱり甘いのが一番だね
そして後半はもはやノリノリな貴明も面白い
最後の含みを持たせた終わり方もいいと思うな。ご馳走様です
107:名無しさんだよもん
07/10/16 16:35:24 RkFmdVdYP
ちょっとクッキー買ってくるわ
108:名無しさんだよもん
07/10/16 19:43:07 JjIYGzcj0
最初のRoutesネタに過剰反応したのは俺だけでいい。
109:名無しさんだよもん
07/10/16 20:27:35 XPjVcvGr0
誰が大関伏見山ですかっ!
・・・スレ違いになるな。
とりあえずGJ
110:名無しさんだよもん
07/10/16 20:58:57 idlX4q1G0
もうイルファさんクッキー発売してくれ
111:名無しさんだよもん
07/10/16 21:25:11 cwqbEhWi0
イルファさんの個人情報が詰まってるんだな<イルファさんcookie
112:物書き修行中(ゾンビ仮免)
07/10/16 21:45:27 lAvfvZ/C0
>>102
乙です
この後もちろんふたご姫のクッキーも増量されてでざーととして出て来るんですよねw
>>110
イルファさんが漏れなく付いてくるなら俺も欲しいおw
113:犬と遊ぼう 1/6
07/10/17 02:06:02 xvDFAkU70
さんさんと輝く太陽の下、柚原家の庭で俺はもう何度目になるかわからない台詞を繰り返していた。
「お手っ!」
「……」
……しかし返ってくるのは相変わらずの無反応。いや、無反応だから何も返ってこないのか。
ともかくゲンジ丸はといえば、訝しげに俺の顔を見つめるだけで一向に動こうとしない。
相変わらずのぐうたらっぷりだ。
「やっぱりコイツに芸を仕込もうなんて、無理な話なんだよなぁ」
虚しく差し出しされた右手を下ろしながら、ため息混じりに呟いた。
「えぇ!?諦めないでよ、タカくーん!」
そんな俺の右手を、ぐうたら犬の飼い主であるこのみが、がしがしと引っ張ってくる。
「わ、わかったから、そんな引っ張るなって」
恋人の“諦めないで”の言葉にもう一度だけやる気を振り絞り、再びゲンジ丸に視線を戻してみるが、
視界に写ったのは、庭の真ん中でぐてーっと大の字に寝転っている毛玉木っ葉。
ぷしゅー……一気にやる気が抜けていった。
―ゲンジ丸を鍛え直そう!
突然言い出したのはもちろんこのみ。よくわからないが、ぐうたらな性格を直す=芸を身に着けさせる、
と、このみの中で結論付けたらしく、その結論に今俺はこうやって付き合わされていた。
まぁ言いたいことはわからないでもないが……
「今更無理なんじゃないか?」
うん、やっぱり今更すぎる。こういうしつけは子犬の頃からやっておけってんだ。
「でもでもぉ、ゲンジ丸ってば子犬の頃からこうだったんだもん」
「ん?そうだっけ?」
ぶーぶーと口を尖らせるこのみの言葉に、ちょっと頭の中からゲンジ丸に関する記憶を引っ張り出してみた。
……犬小屋で昼寝するゲンジ丸。
……公園で昼寝するゲンジ丸。
……川に流されながら昼寝するゲンジ丸。
「このみ、コイツはダメだ。諦めよう」
親指をびしっと突き立てて、飛び切りの笑顔で俺は言った。やっぱり人間、諦めが肝心だよな、うん。
114:犬と遊ぼう 2/6
07/10/17 02:07:39 xvDFAkU70
「ダメー!タカくんもゲンジ丸も諦めちゃダメー!」
しかしこのみはと言えば、ほっぺをまん丸にして俺とゲンジ丸に檄を飛ばしてくる。
「……やれやれ」
何となくだけど、ゲンジ丸とため息が重なったような気がした。犬がため息をつくのかどうかは知らないけど。
そんなため息二重奏の中、
「あ、そうだ。良い事思いついたよ!」
突然このみはピコーンと何かが閃いたらしく、ぽんと手を叩きながら満面の笑みを浮かべた。
「どうしたの?」
一応聞いてみる。だってこのみの顔が“聞いて聞いて!”ってアピールしてるんだもの。
「実際にやって見せればいいんだよっ!」
「ん?実際に?」
「そうそう、私が犬役やるから、タカくんはご主人様役ね」
あぁなるほど、俺たちでお手本をみせるって事か。しかしなぜ“飼い主役”じゃなくて“ご主人様役”なんだ?
……まぁいいや。なんとなくそっちの方がロマンを感じる気がするし、なんとなく。
「んじゃ、やってみますか」
「わん!」
俺の言葉に、さっそく元気よく犬マネをして答えるこのみ。
……。
やばい、これはちょっと可愛い。
「……」
「あれ?どしたの、タカくん?」
「わひゃ!?」
いつの間にか近づいていたこのみの顔に、思わず素っ頓狂な声を上げて後ずさってしまった。
……いかんいかん、これはあくまでゲンジ丸の為にやる事なんだ。俺が鼻の下伸ばしてどうする。
なんだかゲンジ丸から冷ややかな視線を感じるけど、きっと気のせいだろう。気のせい気のせい。
115:犬と遊ぼう 3/6
07/10/17 02:09:13 xvDFAkU70
……よし、気を取り直してっと。
「ゲンジ丸、よく見てろよ?」
毛玉木っ葉の方に目線をちらりと向けてから、
「お手っ!」
気合一発、その言葉と共にこのみの目の前に右手を差し出す。すると……
ぽんっ。
その上に乗っかるこのみのグー。
……。
……なんだろう、
とっても照れくさくてむずがゆい。もしかして俺たちものすごい恥ずかしいことしてるんじゃ……
いや、先も述べた通りこれはゲンジ丸の為にやってるんだ。そうそう、決してやましい気持ちなんかじゃない。
頭をぶんぶん振って雑念を消してから、
「おい、見てたかゲンジ丸!」
このみと一緒にゲンジ丸の方へと目を向けてみる。
「ヲフゥ?」
気の抜けるような鳴き声……おいおい、頼むよゲンジ丸。
「俺たちがお手本を見せてるって、わかってんのかなぁ」
もしかして犬にとってみれば、俺たちのやってることなんて茶番にしか見えてないのかも。
そう思うとちょっぴり虚しくなってきた。いや、かなり。
「タカくんタカくん、大事なこと忘れてない?」
がくんと肩を落とす俺に、相変わらずグーを乗っけたままのこのみが上目遣いで尋ねてくる。
「忘れてるって、なにを?」
「えっとね、“お手”が出来たご褒美」
……あのなぁ。
116:犬と遊ぼう 4/6
07/10/17 02:10:11 xvDFAkU70
「そこまでやる必要……」
「あるよぉ!」
俺の言葉を遮る力強い声。そして思いがけない真剣な表情と、その気迫に押されてしまって……
「これでいいだろ?」
よしよし、と頭を撫でてやる事にした。
「えへへ~、くぅ~んくぅ~ん」
すると、このみは気持ち良さそうに目を細めて喉を鳴らす。
……。
これは、ちょっと……楽しいかもしんない。
「このみ、おかわり!」
「わんっ!」
ぽん。
「よしよし」
なでなで。
「えへ~」
「このみ、おすわり!」
「わんわんっ!」
ぺたん。
「よしよしよし」
なでなで
「えへへ~」
「このみぃ!」
「わんわんわんわんっ!わぉーーん!」
……。
117:犬と遊ぼう 5/6
07/10/17 02:10:48 xvDFAkU70
……。
夕焼け小焼けで日が暮れて……
「このみ!そら、取ってこーい!」
俺が投げたフリスビーは、綺麗なカーブを描きつつ、家の裏側に入っていった。
「きゃんきゃんっ!」
そしてそれを無邪気に追いかけて行くこのみ犬。
……うずうずうずうず。
早く戻って来い。そしたらまた頭をぐしゃぐしゃとかき回してやろうぞ、ふっふっふ。
湧き上がる笑みを必死に抑えながらこのみを待つ。早く、早く……
するとその時、
「あら、タカくん来てたの」
背後から声をかけられて思わずビクっと体が強張る。この声は……
ギギギギーっとロボットのように首を回してみると、
「は、は、はっ春夏さんっ!?」
「あら、どうしたの?そんなに慌てて」
真っ赤な夕焼けの中、買い物袋を抱えながら不思議そうな顔をして首をかしげる春夏さん。
……慌てもしますよ、だって今俺たちのやってる事といったら、
「わんわんわんっ!」
素晴らしいタイミングで庭中に響く鳴き声。
そしてその鳴き声が近づくにつれ、だらだらと背中をつたう冷や汗。
ま、まずい!
「ん?何かしら、この鳴きご……」
春夏さん言葉はそこで止まり、その手からは買い物袋がどさりと落ちた。
ころころと転がるじゃがいもが、こてんと俺の足にぶつかる。
……そりゃそうだ、高校生にもなる自分の愛娘が、フリスビーくわえながらきゃんきゃんと走ってくれば、
どこの母親だって皆同じような反応をするだろう。
118:犬と遊ぼう 6/6
07/10/17 02:18:01 xvDFAkU70
そうやって春夏さんと二人でフリーズしている間にも、泣き声の主はどんどん近づいてくるわけで…
「はっはっはっはっ!」
このみは呼吸を乱しながら俺の前で膝を着き、口にくわえたフリスビーを差し出してきた。
そしてご褒美ご褒美、とせがんでくる上目遣い……うん、それはとっても可愛らしいんだけどさ……
どうたら完全に犬化したこのみは、春夏さんの存在に気がついていないらしい。
「こ、このみ。そ、そこ……」
顔をピキピキと引きつらせながら春夏さんをそーっと指差すと、
「あっ……」
このみの口からフリスビーがぽとりと落ちた。
「二人とも、な、何してるのかしら?」
口元をぴくぴくさせながら聞いてくる春夏さん。
……そういえば俺たちなんでこんな事やってたんだっけ。
「あのー、これはですね、そ、そうだ!ゲンジ丸のしつけの為に仕方なくっ!」
「そうそう、仕方なく実演してたであります、わんっ!」
あわてて言った俺の言葉に、このみもフリスビーを背中に隠しながら続いた……って口調おかしいから。
「へぇ、あのゲンジ丸にねぇ」
春夏さんはイタズラっぽく笑った後、クイっと顎で何かを指す。このみと揃ってその方向を見てみると、
犬小屋から飛び出したふわふわ尻尾。……いつの間にあいつ昼寝なんか始めやがって。
こうして、完全に次の言い訳を失ってしまった俺たち。
「ど、どおしよぉ、タカくん」
「どうするもこうするも……」
どうしようもない。そう、どうしようもないくらい気まずい。そして恥ずかしい。
しかしそんな俺たちを尻目に、春夏さんはふふっと一瞥してから一つ二つとじゃがいもを拾い始める。そして、
「タカくん、私これから晩御飯作ってくるから、このみのお散歩お願いして良いかしら?」
ニンマリと笑ってから、鼻歌交じりに玄関をくぐっていった。
夕焼けに負けないくらい顔を真っ赤にして立ち尽くす俺とこのみ傍らでは、
ゲンジ丸の気持ち良さそうな寝息だけが小さく響いていた。
119:↑の作者
07/10/17 02:21:17 xvDFAkU70
>>59
犬チックってこうですか?わかりません><
>>61
そのネタ…いいかも。ちょっとゲンジ丸ルートやり直してくる
…ってどっちも微妙に亀レスですまん
120:見習い氷
07/10/17 07:06:54 Nz48jRzOO
>>119
乙です。
最近はゲンジ丸SSが流行なんですか?w
とってもサブキャラすぎてネタ思いつかないんですがw
121:名無しさんだよもん
07/10/17 07:53:44 Jc2NRC4P0
春夏さんが・・・怖いです。笑顔が・・・
122:名無しさんだよもん
07/10/17 22:35:38 YFeTRUB40
GJ
123:59
07/10/17 22:44:22 lSBPMXAk0
>>119
うはwwありがと
これはいい
124:名無しさんだよもん
07/10/18 19:32:28 j7Y5Yhb60
Hできるかどうかはまだ分からないが、ADでは春夏さんの個別ルートが
あるらしいので春夏さんSSを誰かお願いします。
当然エロありで。
125:Time of Drug 第1話 1/6
07/10/19 17:09:57 4lbYHO4B0
「おーい?いないのか?」
誰もいないようだ。
「珍しいな…花梨がいないなんて」
ミステリ研の部室。
といっても、そこまで立派な部室ではなく、体育館の使われてない用具室を部室として使っている。
昼にはクラブ活動についての話し合いをし、放課後に実施というミステリ研究会。
どうやら会長である花梨は来ていないようだ。
「どうしたんだろう?…UFOについてったとか?」
ミステリ研究会は会長曰く「アウトドア系で不思議系!」とか。
つまり、推理小説なんかじゃなく、UFOやツチノコみたいなUMAについて研究するのだ。
「いないのか。なら、教室戻るか…ん?」
部室から出ようとしたとき、扉の近くの机の上に何か乗っているのに気づく。
透明で、かっこいいデザインの瓶。
FFなんちゃらのポー○ョンとかいう回復アイテムみたいなデザインの瓶。
その瓶を手に取り軽く振ってみる。
「なんか液体が入ってるな…」
蓋を開けてみる。
ほのかにハチミツというか、市販の栄養ドリンクのような匂いがした。
飲んでもマズくはなさそうだな…。
いや、でも中身がわかんないしな…もしかしたらへんな薬だったり。
…さすがに、変な薬ってのはないだろう。
好奇心で、一口だけ口にしてみることにした。
瓶は小さかったため、一口といっても、瓶の五分の一はなくなっていた。
「甘いというだけで、なんともないな…中身はなんだったんだろう?」
味は少し甘すぎるというくらい。
蓋を閉じ、部室からでようとした。
そのとき。突然、俺の体が、全身が熱くなりはじめた。
「ぐっ!な、なんなんだよこれ!…うっ!?」
急な出来事に体が反応せず、その場に倒れ込む。
全身が燃えるように熱く、まるで焼かれているような感じだった。
あまりの熱さに耐えきれず、俺はそこで意識を失った。
126:Time of Drug 第1話 2/6
07/10/19 17:11:29 4lbYHO4B0
「う~ん…あ」
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
暗闇の中、俺の意識は戻っていた。
でも、なんとなく違和感があった。
自分の体のはずなのに、自分の体じゃない感覚。
無かった物があって、あった物が無い感覚。
そんなことを考えていたとき、なんとなく胸を揉まれた感じがした。
触られたのではなく、揉まれた感じ。
さらに、声が聞こえる。
「…か…ゃん……ど…し…」
次第にはっきり聞こえてくる。
「…たか…ゃん…どうし…の!」
やがて、俺の意識は暗闇だった世界から、現実世界に戻された。
「たかちゃん!どうしたの!大丈夫?」
声の主は花梨だった。
俺の手を取り、心配しているようだった。
「たかちゃん!大丈夫?」
「花梨…あれ?」
変化に気づく。
俺の声は、まるで女の子の声のように変わっていた。
127:Time of Drug 第1話 3/6
07/10/19 17:12:32 4lbYHO4B0
「たかちゃん…もしかして、あの瓶の中身飲んだ?」
…瓶?
ああ、そういえばあったな。
たしか、あれを飲んだら急に体が熱くなって…。
「か、花梨…あれはなんだったの?」
戸惑いながら、女の子のような声に変わってしまっていた声で、花梨に尋ねる。
「この間、家の押入で見つけたやつなんよ」
「うん」
「その液体の中身はね、な、なんと!飲んだ人の性別を逆転させる、不思議な液体なんよ!」
「はあ?」
「ほら!たかちゃんだって、すっかり女の子なんよ」
花梨の言葉を受け、自分の体を確認してみる。
起きあがって、目線を下に移すと、平たかった胸に二つの膨らみが。
「な、なんだってー!」
男の俺の胸は、並の女子生徒に負けないくらいふくよかな胸に成長していた。
自分で胸を触ってみる。
や、やわらかい…。
触った感触はもちろん、触られた感触も感じた。
「ほ、ほんもの!?」
「そうなんよ!自分もさわって確認したけど、本物だよ!」
それで胸揉んでたのか。というか、揉むなよ。
128:Time of Drug 第1話 4/6
07/10/19 17:13:57 4lbYHO4B0
「お、俺は…女の子になったのか?」
「そうだよ?」
ということは…。
そういって立ち上がって、花梨に背を向ける。
スカッ
な、ない!
股間にあるはずの男の勲章、マグナムがない!
「えええええぇぇぇ!」
あまりの衝撃に、変わってしまった声で叫ぶ。
飲んだ薬のせいで、俺の体と声は、女の子の体と声に変化していたのだ。
「ち、ちょっと花梨!なんで?どうして?」
「瓶の中身がそういうのなんよ!」
「なんでそんなのがこんなところに!」
「私が持ってきてたんよ!」
あの瓶の中身の液体は、飲んだ人の性別を逆転させる液体で、飲んでしまった俺は女の子になってしまっていた!
ま、まさか…世の中にこんな恐ろしい薬があるとは思いもしていなかった。
129:Time of Drug 第1話 5/6
07/10/19 17:16:24 4lbYHO4B0
「花梨…これ、元に戻るよな!」
「えっと~」
紙を取り出して、ふむふむ、とかいいながら読んでいる。
「戻りはするみたい」
「そうか」
とりあえず一安心する俺。
「ただ」
「ただ?」
「飲んだ量が多いから、戻るには一日かかるっぽい!」
「一日!?う、嘘だろ…」
説明によると、本来は一滴程度舐める程度で効果はあるようだ。
効果は短いものの、俺のように苦しむこともなく、割と簡単に変化するとか。
ただ、俺の場合は飲んだ量が多いために、戻るまでの時間が長いとのこと。
それにこの薬も、性交に飽きた人が性を逆転させて、楽しむ為のものらしい。
何故、花梨の家にあったのかは敢えて問わないことにしておこう。
「とにかく、元に戻るなら一日我慢しなくちゃな」
「そうだね」
自業自得でもあるので、俺は元に戻るまでの24時間を戦い抜くことを決意した。
「そういえば、さっきから苦しいんだよな」
制服のボタンを外す。
圧迫されてさっきから苦しかったのである。
しかし、外したことによって、胸の谷間が露わになる。
「ホントに…女なのか…」
元に戻るまでの24時間。
なにもなく過ごせるといいのだが…。
130:Time of Drug 第1話 6/6
07/10/19 17:18:40 4lbYHO4B0
「もしかして、花梨も飲んだことあるのか?」
「さすがに飲むまでは。舐める程度はやったんよ」
軽い口調で、大胆発言をする花梨。
…薬舐めたのか。
「でも…男の子の体って…ホント…大変だね。キャッ」
顔を赤らめながら話す花梨。
この薬のおかげで花梨の中の男のイメージが変わったのだろう。
「だって触っただけで、あの大きいうまい棒が(以下略)」
「ああ、そんなことまで話さなくていいから、はいはい。」
話が変な方向に向くと、自分の身が危ないので、出る杭は早めに打っておかねば。
「とりあえず、教室戻ってカバンとってさっさと帰るか」
きっとそれがいいのだろう。
下手に学校に長くいては危険だ。
「あ、たかちゃん!」
「どうした?」
「…くれぐれも、女の子には気をつけてね」
「え?…あ、ああ」
…普通、女の体だから男に気をつけなきゃマズいと思うのだが。
肝心の薬の情報は花梨しか持ってないのだから、ここは信じるしかないか。
しかし、その花梨の言葉を信じるのに、そう時間は必要としなかった。
※男に戻るまで…残り24時間。
131:見習い氷
07/10/19 17:25:26 4lbYHO4B0
新作投下です。
今回は1人ではなく、ある程度の人数(とはいっても3~4人の予定)
を登場させるので、長編を書いてみることに。
ある程度の話の構成は出来ているので、割と早めに完結できそうです。
すでに2話目は短いながらも、大部分は完成しているので、夜には投稿できそうです。
誤字・脱字・指摘等ありましたら、いつものとおりお願いいたします。
>>124
このSSに組み込もうと思えば組み込めますが…。
エロありとなるとちょっと厳しくなるかもしれません。
132:名無しさんだよもん
07/10/19 18:02:38 wY5NH5o50
>>131
スレチ
葉鍵キャラを性別反転させてみよう!その24
スレリンク(leaf板)
いってらっさい
133:名無しさんだよもん
07/10/19 18:16:20 MBHPebr60
>>131
当然チンポはついたままなんだよな?
な?
134:見習い氷
07/10/19 19:12:59 qZXUrIBWO
>>132
マズいですか…どうしよう。
>>133
…ごめんなさい。
135:物書き修行中
07/10/19 19:29:07 2NvEhsJa0
書く側の立場の人間から言うと角が立つかもしれんが、
>>132の誘導スレはあくまでTS物が好きな人間が集ってTS妄想作品UPしたりそれ読んで萌えたおしたりして
楽しむスレであって、見習い氏がUPしたものは多分貴明が一時的に性転換することによって巻き起こされる
どたばたが主題のものだと思うので(TSが目的ではない)、別にスレチではないと思う。
ここはやはり雄二の暴走に期待したいw
136:名無しさんだよもん
07/10/19 19:33:41 wY5NH5o50
どうして書く側の人間が言うと角が立つのか分からんが、俺も一応書く側なんだ
ちょっと書き方というか誘導がとげとげしくなってすまんかったね
別に責める気とかはないから誤解なきよう
てか既にこのスレって書き手以外いない気がするんだが…w
137:見習い氷
07/10/19 19:50:10 4lbYHO4B0
>>135
中途半端に終わらせちゃったから、誤解を招いたのかも知れませんね。
とりあえず今から2話目投稿して、様子みたいと思います。
雄二…どうしようw
>>136
とりあえず2話目投稿しときますので。
ネタがちょっとあれだったかな…。
私の表現の実力不足でもあるのでお気になさらずに。
ちなみにスレみましたが、ハイテンションで凄かったですw
確かに書き手以外って少ない気がしますね。
138:名無しさんだよもん
07/10/19 19:55:27 qjvf0Bl90
ここ2年ほどずっとROMってますが何か
139:Time of Drug 第二話 1/5
07/10/19 19:58:05 4lbYHO4B0
「…はあ」
ため息が漏れる。
これからのことを考えると、ため息しか出なかった。
「それにしても、誰も気にかけなかったのね」
花梨が部室に来たのは放課後だった。
つまり、俺が昼に意識を無くしたわけだから、すでに3時間経過していた。
というか、クラスのやつらは誰も俺を心配しようとは思わなかったのか。
もしかしたら、雄二が「今頃、貴明は女の子とあんなことやこんなことを…」みたいなことをクラスメイトに言っているのかも知れない。
…ホントに言っていたら、タマ姉に頼んで再起不能にしてもらう必要があるな、うん。
140:物書き修行中
07/10/19 19:58:15 2NvEhsJa0
>>136
別に変な意味じゃなくて、
お前が言うな、的な反応する人間も居るので…
私も結構とげのある書き方してますな
スマソ
141:Time of Drug 第二話 2/5
07/10/19 19:59:11 4lbYHO4B0
そんなことを考えているうちに教室に到着。
教室には誰もいなかった。
雄二が待っていそうだったが、居なかった。
俺は安心して自分の席に行き、カバンを取りに行った。
「あ、貴明くん」
不意に後ろから声を掛けられる。
俺は慌ててボタンを締めて、胸元を隠す。
「もう、どこにいってたの?何かあったんじゃないかと心配してたんだからね?」
委員長である小牧 愛佳だった。
「じ、実は…あ、」
俺は声が女の子の声だったのすっかり忘れていた。
「?…どうしかしたの?」
言いあぐねたのが不審に思ったのか、小牧がこちらに近づきながら、尋ねてくる。
俺は、できる限り声を低く、かつ男の声に聞こえるようにしゃべった。
「ぐ、具合悪くて保健室行ってたんだよ」
「そっか。そうだったんだ」
どうやらバレていないようだ。
見つけられたのが小牧で良かったと安堵した。
142:Time of Drug 第二話 3/5
07/10/19 20:00:03 4lbYHO4B0
「悪いね、心配かけて」
「ううん。元気ならいいよ」
なんとか無事にやりすごせそうだ…と思ったのも束の間。
「そうそう、連絡だけど、来週から体育は…」
ポスッ
「あれ?」
突然、小牧が俺の体に倒れ込んでくる。
その勢いで、俺も壁にもたれ掛かる形で倒れ、倒れてきた小牧の体を支えた。
「お、おい?小牧?」
支えたまま、小牧をよく見ると、様子が一変していた。
声に反応し見上げた顔は赤みを帯び、息も荒く、虚ろな目をしていた。
「…はぁ…た、たかあき、く…ん…」
切なそうに俺の名前を呼び、息を荒くしながら顔をこちらに近づいてくる。
息が顔に当たる。
そのままの勢いで小牧にキスをされた。
俺は驚きで目を丸くするしか出来なかった。
とっさのことで抵抗も出来なかった。
「あむ……あ…はぁ…ちゅぱっ…」
小牧は唇を甘噛みしたり、舌を入れてきたりと次第に激しく俺の唇を求めてきた。
「ちゅぱ…はぁ……んぅ…ん」
舌を貪る音が教室に響く。
「…はぁ…ん……あん……ちゅぱ…はぁ…はぁ…」
143:Time of Drug 第二話 4/5
07/10/19 20:01:30 4lbYHO4B0
苦しくなり、俺は渾身の力で愛佳の肩を押し、無理やり唇を離す。
依然、虚ろな目のまま、息を荒くして、こちらを見つめる小牧。
「…はぁ……はぁ…小牧?」
いったいどうして、普段おとなしい小牧がこんな行動をとったのか、理解できなかった。
小牧に疑問を投げかけるも、反応はなく、小牧は無言でこちらに手を差し出してくる。
すると、その手はそのまま俺の制服のボタンに伸び、ボタンを外そうとしていた。
「ちょ、ちょっと待って!」
ま、まずい。このままだと女の体になっているのがバレる。
「小牧!ストップ!ストップ!」
再びの注意にも、小牧は反応せず、制服のボタンを1つ外す。
それによって、俺の胸の谷間が露わになる。
まずいまずいまずいまずいまずい。
心でそう叫びながら、抵抗を試みようとするも、何故か体が上手く動かない。
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。
もし、小牧に女の体になっているのがばれたら…きっと口下手な小牧なら、ぽろっと言いかねない。
そうなったら…例えもとに戻ったとしても、当分の間は笑いものの扱いにされるだろう。
考えている内に小牧が俺の制服の2つ目のボタンに手をかけた。
144:Time of Drug 第二話 5/5
07/10/19 20:02:42 4lbYHO4B0
「……あ、あれ?」
突然、小牧のいつもの口調に戻る。
本人も何が起こったのかわからないのか、あたりをキョロキョロしている。
どうやら、さっきの記憶は無いようだ。
そして、自分が俺の体の上に乗っていて、顔が近いことに気づいたのか。
瞬く間に顔を赤くした小牧は
「ごごごご、ごごめんなさあいいい」
と叫んで、猛スピードでダッシュしてカバンを取り、そのまま教室を出ていった。
「い、いったい何だったんだ?」
いまだに小牧の行動の理由がわからないし、花梨の言葉も引っかかった。
――「女の子には気をつけてね」
あの薬には男女逆転の他に、どんな効果があるのか。
少し知る必要があると感じながら、帰り支度を再開していた。
※男に戻るまで…あと20時間。
145:名無しさんだよもん
07/10/19 20:04:15 W2cPOMUt0
貴明くんって呼ばれてるのに、小牧呼ばわりかよ
つれないな
146:見習い氷
07/10/19 20:07:25 4lbYHO4B0
最悪だ…タイトルの数字、「1話」と「二話」になってる…OTL
とりあえず2話目投稿しました。
ちょっとだけエロイです。
あ、皆さんからしたらエロくないですか、そうですか。
147:見習い氷
07/10/19 20:11:28 4lbYHO4B0
>>145
あんまり親密すぎる関係を持たせないように、「小牧」と呼ばせてましたが。
「河野くん」じゃないと釣り合わないな…。
ごめんなさい。
ダメだ…きっと今日は厄日なんだ。
148:名無しさんだよもん
07/10/19 20:35:29 PreBjt2+0
厄日とかじゃなくて推敲が足りないだけでしょ
149:名無しさんだよもん
07/10/19 20:58:58 VsgWoFuy0
違うと思う。それだけいいんちょLoveなんだよ。・・・たぶん。
150:物書き修行中
07/10/19 21:11:13 2NvEhsJa0
>>146-147
ああ、良くあるよくあr… orz
151:名無しさんだよもん
07/10/19 21:47:00 wY5NH5o50
>>150
んな同調する前に、中身についての感想書いてあげればいいのに
152:名無しさんだよもん
07/10/19 22:03:17 MBHPebr60
以前TSモノを書いたことがあるが、女からはヒロインはどういう風に見えるのか、とか
女になってからの苦労話とかを書いてみると面白くなるんじゃないかな
153:名無しさんだよもん
07/10/19 22:04:48 WjBg863i0
>>131
人の物(おそらく花梨の私物)を勝手に飲むとか普通しなくない?
154:名無しさんだよもん
07/10/19 22:12:37 MBHPebr60
喉が渇いてたんじゃね?
俺だったら「ゼッタイ飲んじゃダメだよ、たかちゃん♥」って貼り紙をつけておくけどw
155:名無しさんだよもん
07/10/19 22:25:52 wY5NH5o50
>>154
思わず膝を打った
それくっちゃくちゃ花梨っぽいなw
156:物書き修行中
07/10/19 23:33:32 2NvEhsJa0
>>151
そいつは失礼
でも体裁として1話ごとに一区切りと言うかんじではなさそうなので感想は最後まで読んでからにしとこうかと
すでに構成も考えて早めに完結しそうということですし
157:見習い氷
07/10/19 23:48:23 qZXUrIBWO
仰るとおりであります。
すべては私の実力不足です。
皆様に多大なご迷惑をおかけしたことに関して、深くお詫び申し上げます。
その代わりというのもあれですが、改めて今回の1、2話のほうを修正し、再び投稿したいと考えている次第であります。
投稿までに日数も掛かると思いますが、必ず、前SSよりも向上している新SSを完成させ、投稿できるよう努めようと考えております。
未熟なために、この先も皆様にはご迷惑をお掛けすることもあるとは思いますが、どうかこれからも変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
とまぁ、堅苦しいのはここまでにして。
いや、ホントにご迷惑ばかりかけて申し訳ないです。
まだ半人前にすらなっていない私如きが…と今回の件で改めて痛感。
最初は暇つぶしで書いたSSも、今では熱も入り、良いSSを!と奮起してましたが。
…センス無い。うん。
きっと文章作るの向いてないんだな。
158:名無しさんだよもん
07/10/19 23:53:38 MBHPebr60
スレへの再投稿とかは別にいらないんじゃない?
HTMLにしてリンクでも貼っておけば十分よ
まぁあれだ、小難しい事は考えずに気楽に書けばいいんじゃね?
159:名無しさんだよもん
07/10/20 00:03:24 RugINQf50
>157
>158の言う通りだよ。前回のまーりゃんSSの時も書こうかと思ったけど、
キャラのイメージなんて人それぞれなんだし、
他人になにを言われたって、自分でも内心マズったと思ったとしたって、
「俺は良かれと思って書いたんだ文句あるかゴルァ! ……失敗してるけどなw」
くらいの態度でいりゃあいいと思う。その方が書かれたキャラも喜ぶって
SS投下で誰も迷惑なんてしない(嫌なら読まないだけだから)。悩むな悩むな
160:名無しさんだよもん
07/10/20 00:17:23 55X62yh20
投下乙。面白そうだからぜひ続けてくれ
あと呼称ミス ×花梨
○笹森さん
161:名無しさんだよもん
07/10/20 03:53:16 WZVq9mly0
>>157
取り敢えず推敲はちゃんとしよう。キャラの呼称とかは一覧表作って(どっかに転がってるかもだけど)確認すべし
にしても、TSか。さっきまで瀬戸の花嫁読んでた所為で、そのキャラはいいんちょのイメージ定着してるわ、俺
なんにせよドタバタ劇として面白くなりそうなんで頑張れ
>>160
貴明は花梨って呼ぶこと多いぞ。特に面と向かってじゃないときは(内心での呼称含む)
OVA3巻でも花梨って呼んでたし、花梨に関してはどっちでも問題ないかと
162:桜の群像 第24話「天使の通る12月」 1/23
07/10/20 09:23:32 +gK0IU870
小テストが、返された。
「おーい、どうだった?」
「あれ? ここFじゃなかったっけ? 見せて見せて」
休み時間に入って、各所で仲良しグループが答え合わせ。
「雄二、何問当たった?」
「そっちは?」
「2問」
「勝ったぜ、3問だ」
「ちぇっ」
ここにも、レベルの低い見せ合いっこをする馬鹿二人。
「そういうところで張り合わないでくださいな」
「お? 玲於奈?」
貴明と机で答案を広げていた雄二が降ってきた声に顔を上げると、
赤髪の少女が、腰に手を当てた呆れ顔で二枚の答案を眺め下ろしていた。
「なんだよ。わざわざ笑いに来たの?」
声を掛けたのは貴明。
環絡みで対立して以来、玲於奈を敬遠してきた彼だが、
ここのところ、日常会話程度のコミュニケーションは取るようになっている。
「まさか。小牧さん、お出かけです?」
玲於奈の口調にも、かつての棘はない。愛佳とも、ちょくちょく話をしているようだ。
「あー、一分前に出て行った」
雄二が返す。
「そうですか。相変わらずお忙しいみたいですね」
ふう、と肩で息をついて、出直しますと玲於奈。
「そうだ、雄二さん」
机から離れ際、立ち止まってふと首を傾げ、雄二を振り返る。
「よろしければお教えしましょうか、勉強?」
163:桜の群像 第24話「天使の通る12月」 2/23
07/10/20 09:26:11 +gK0IU870
放課後。12月の図書室。長机は、受験勉強の三年生を中心に賑わう。
中に混じって、雄二と玲於奈。
「だから、ここは角ACBと同じになりますから」
「なんで?」
「定理、一年生で習いませんでした?」
「覚えてねーや」
「もう、仕方ありませんね」
玲於奈が口を尖らせて腰を曲げ、足元に置いた鞄に手を伸ばす。
「なにやってんだ?」
雄二が覗き込む。
「確かこちらの参考書に解説が……っ!」
目線を鞄に向けたまま答えた少女は、ちらっと隣を見て口篭もる。
机の下まで覗き込んできた雄二の顔が、かなり近い。
「あ」
雄二も無意識だったようで、慌てて顔をあげ、
ごん。
「いてっ」
ようとして、机に頭をぶつける。
左手でぶつけた箇所を押さえて、再び頭を下げる雄二、と。
「大丈夫ですか?」
驚いて玲於奈が顔を雄二に向けるタイミング。
つん。
鼻の頭同士がくっついた。
「「~っ!」」
二人揃って、赤い顔を机から引っ張り出す。
照れ照れと場の空気を緩ませる二年生に、周囲の受験生が迷惑そうな目を向けた。
164:桜の群像 第24話「天使の通る12月」 3/23
07/10/20 09:29:06 +gK0IU870
「まったく、これでは勉強になりませんわ」
バス停まで一緒に帰る道で、玲於奈がぼやいた。
図書室では、結局いちゃいちゃしていただけだったような気がする。
「ま、俺の頭で勉強したってたかが知れてるって」
「お姉様の弟君が、頭が悪いわけがありません」
雄二はたいしたことないと笑ったが、玲於奈は不服そうに話題を続ける。
「姉貴は姉貴、俺は俺」
「いつぞやだって、私が解けなかった問題を解いたじゃありませんか」
「あれは教科書を」
「見たらできる、というものではないのですよ」
「だって、現に成績悪いぜ」
「勉強なさらないからです」
断言。まあ、誰も否定はすまい。
「少し努力されたら、すぐ伸びますよ、雄二さんは」
「そんなもんかねえ」
言われても、雄二は気乗りのしない顔。
「別に点数取ったっていいことないしなぁ」
「できないよりは、できた方が良いでしょう? 進学先の選択肢だって広がりますし」
「あー、それはいいや。俺、進学する気ねーから」
ぱたぱたと手を振った雄二の口調は至って軽い。
「そう、なのですか?」
一方、玲於奈は少し戸惑った顔をする。
「それならそれで、そういうのもありだとは思いますけど……」
なにやら考えながら独り言。
「そうそう。だからさ、お前が俺の分までいい学校に行ってくれよ」
我が意を得たりと雄二。
だが、玲於奈。
「いえ。雄二さんが進学なさらないのでしたら、私も上の学校には進みません」
断固、というよりむしろ当然という口調で、そう宣言した。
165:桜の群像 第24話「天使の通る12月」 4/23
07/10/20 09:31:57 +gK0IU870
これには雄二の方が慌てる。
「おいおい、なんでそうなるんだ」
「なんでって、その」
少女は、何故か下を向く。
「その、あの、あくまで仮に、ですよ?」
「あ、ああ?」
「ゆ、雄二さんと、わ、私が、その、め、夫婦になったとしてですね」
「あ、ああ」
いきなり怪しい方向に話が振れて、雄二も彼女の顔から視線を外す。
「妻の方が学歴が高いのは、体面上好ましくないと思うのです」
「へ?」
続く玲於奈の言葉は、雄二には想定の範囲外だった。
「そんなことかよ」
思わず、呆れたような声が出る。
「そんなことですけど、そんなことですわ」
玲於奈としては、この手の論法を雄二が嫌うであろうことは分かっているし、
言い回しで自身の価値観ではない事を注釈したが、撤回はしない。
「しかし、なあ」
「私の勝手ですから、雄二さんがお気になさる必要はありません」
議論をする気もないようだ。
(気にするな、ったってなぁ)
二人でいる事が、お互いの価値観に束縛される事だと、
それを知らぬほど雄二は子供ではないつもりだったが、
自分の行動が、こんな形で玲於奈の可能性を否定し得るとは。
「ま、まあ進路の事は来年考えたらよろしいとしてですね」
雄二の沈黙を不機嫌と受け取ったのか、玲於奈が努めて明るい声を出す。
「試しに期末まで頑張ってみませんか?」
「あ、ああ」
雄二は生返事だったので、玲於奈が恥じらいながら続けた言葉は聞いていなかった。
「成果が出たら、なにか"いい事”を考えますよ」
166:桜の群像 第24話「天使の通る12月」 5/23
07/10/20 09:34:06 +gK0IU870
そんなわけで、雄二と玲於奈の動機づけは、実は若干異なっていたのだけれども。
「げ。裏切ったな雄二」
期末試験。向坂雄二の成績は、盟友が驚愕するくらい、なかなか立派なものだった。
「ふっ。俺は先に行く、お前は一生吹き溜まりで生きろ」
「そこまで言う程ではないのでは?」
玲於奈-今回は本当に結果を見に来たらしい-が突っ込む。
「いや、まあ、な」
頭を掻く雄二。
立派といって、まあ平均点どっこいくらいだが、これまでを考えれば飛躍的でもある。
「うーん、なんだか差がついたなぁ」
その横で、貴明がちょっと複雑そうな顔。
カップル二組、どっちも彼女が成績優秀、男が丸出駄目、というバランスが崩れて、
基本的には成績なんか気にしない貴明でも、若干の引け目なり感じているよう。
「でもこんなに伸びるなんて凄いよぉ。がんばったんだね向坂くん」
しかし、愛佳はニコニコ。
「玲於奈のさんの教え方も上手かったんだねえ」
全然、気にしてない感じ。なお、彼女自身の進路希望が一貫して就職なのは、学園内では有名な話。
「もう少し範囲が絞れればよかったのですけれど」
一方、はにかんで話す玲於奈の方には、多少は明るい対抗意識があったようだ。
「いや、十分御指導いただきました、だ」
この辺の感情をどう考えるかは、人それぞれに属する話としても、
恋人の自尊心に貢献できたのなら、それは素直に嬉しく思う雄二だった。
「それで、ですね。その、例の話なんですが」
急に小声で、雄二にだけ話しかける玲於奈。頬がちらっと赤い。
「ん?」
「今週の日曜日、そちらにお邪魔してもよろしいですか?」
167:名無しさんだよもん
07/10/20 09:40:18 UnlK+pxcO
自己支援
168:桜の群像 第24話「天使の通る12月」 6/23
07/10/20 09:42:36 +gK0IU870
「いいけど、日曜日は、午前中は石崎さんがいるぜ」
石崎さんというのは、雄二の家で雇っている家政婦さんの名前。
環が居る間は頼んでいなかったが、独り暮らしになって、またお願いするようになった。
半ば両親がくっつけた監視役でもあり、雄二の部屋を勝手に掃除しようとする危険人物でもあり。
「あ、はい、わかりました」
小テストの日からこっち、平日は図書室、週末は向坂邸が二人の勉強場所だったから、
玲於奈が雄二の家に来るのは、環を説得するために来訪した時を除いて、
雄二に会いに来るのが、という意味でも既に初めてではない。
玲於奈の言葉を、午後から来る、という意味に受け取ってin日曜の朝。
雄二は惰眠を貪っていた。
ガラガラガラ。
寝耳に玄関扉の開く音。
(……ああ、石崎ババァが来やがったな)
雄二にとっては油断のならないことに、彼女は屋敷の合鍵を与えられている。
がさごそ。がたごと。
居間の片付けが始まったのだろうか。
(寝てるの分かってるったって、いつもは大声で挨拶してくるのに……)
思う途中でまた微睡みに吸い込まれる。
ぐぉーん。
どげん、がごん。がさごそ。
掃除機の音とか。片づけの音とか。なんだかわからない音とか。
(なんか、いつもより騒がしいような)
夢うつつに、そんな事を思う。
やがて、たぶんもういい加減お昼に近い頃。
つつーっ。
やけにそうっと、雄二の部屋の扉が開いた。
169:桜の群像 第24話「天使の通る12月」 7/23
07/10/20 09:45:28 +gK0IU870
(う……部屋の検閲かよ……)
起きなければという意識に反して、目は開かない。
が、侵入してきた気配も妙に静か。
(石崎さんじゃ……ない……?)
すっ。そっ。
抜き足差し足で、ベッドに近づいてくる足音。
ふわっと肩に手が置かれる感触。
微かに聞こえる息づかい。
ぱちり。
そこまで来てようやく、雄二の目が開く。
視界一杯に、玲於奈の顔があった。
「え?」
「きゃ!」
雄二が驚く実感が湧かないうちに、姿が眼前から消える。
「う、あー」
まだ、よく目が覚めてない。
その耳に、第二声。
間違いなく玲於奈の声、しかし。
「お、お目覚めですか……えーと……ごしゅじん、さま」
「な、なんだと?」
眠気と、台詞の衝撃によろめきつつ、雄二はなんとか身を起こしかけたが。
「お前は一体っぅううお!?」
質問も起床も途中で停止。
聞きたい事は幾つかあったが、全部ふっとぶ。
「あ、あはは、はは」
ベッドの脇にぺたんと座り込んで、漫画なら顔が斜線で潰れそうなほど赤くなって、
自分で言った台詞に耐えきれないようにはにかむ、
玲於奈のメイド服姿を見たら。
170:桜の群像 第24話「天使の通る12月」 8/23
07/10/20 09:48:25 +gK0IU870
黒地に白のメイド服は、学園祭で2-Aが使っていたのと同じもの。
セットのニーソックスとスカート裾の間から、ちらっと覗く太股の肌色。
んくっ。
息を飲んで固まる雄二。
その様子に、玲於奈の表情が不安げに変わる。
ややあって、肌色の面積がちょっと小さくなって、続いてさっきよりも広くなる。
理由は、少女が膝立ちになったから。
「お、お気に召しませんでしたでしょうか?」
上半身だけ起こして横を向く雄二を、覗き込むように玲於奈が膝歩きで寄ってくると、
少年の視界一杯に少女のディテールがはっきりして意識に滑り込む。
曰く、カチューシャを被った赤い髪の柔らかさとか、ちょっと傾げた白いうなじのきめ細かさとか。
曰く、両腕を身体の前に下ろして腰の前で手を組んだ姿勢の、腕の間で少し寄った膨らみとか。
曰く、伸ばした腕の先、腰の前で組んだ両手がモジモジと動く度に発生するスカートの皺とか。
かなり凶悪。まして、世界一好きな相手だし。
「いや、えーっと、お気には召したけど」
「ありがとうございます!」
呆れるくらい無邪気な笑顔が、また眩しい。
「なにを、やってるんだお前は」
手を伸ばして抱き寄せたくなる衝動を、抱き寄せたら抱き寄せるではすまないだろうから、
雄二は抑えて、玲於奈に問う。
「あの、前に言っていたではありませんか、試験の結果が良かったらって」
なにか“いい事”を。
「それで、考えたんですけど、前にメイド服姿が見たいとおっしゃっていましたよね」
学園祭の後、雄二は貴重な機会を逃したことを嘆いていた。
「ですから、今日一日、こちらでメイドさんをさせていただきたいな、と」
171:桜の群像 第24話「天使の通る12月」 9/23
07/10/20 09:51:00 +gK0IU870
「鍵はどうした。ってか、今日は石崎さんが」
「あっ、私が秋子おばさんに頼んだんです。鍵もお借りしました」
「知り合いなのか!?」
「秋子おばさんは、私が子供の頃にうちでまかないさんをしていましたの」
よく叱られました、と舌を出す玲於奈。
「なんてこった」
雄二は、広いようで狭すぎる世間に唖然。
監視役でもある彼女に玲於奈の存在がバレたのはマズイような気もするのだが、
どうしようもないのでそれに関しては思考を停止することにする。
「ですので、朝のうちに入らせていただきまして、着替えて、お掃除などを」
メイド服ルックで街を闊歩してきたわけではないようだ。
「あっ、お食事の用意ができてます。家で作ってきたお弁当ですが……」
不安と期待が半々くらいの口調。
「わかった。悪いな。そろそろ起きる」
雄二の方は、まだ混乱しているのか、定型的な反応を返す。
「はい」
ニコニコしながら、ベッドの横にちょこんと座り直す玲於奈。
雄二はなんとなく布団を除けかけて、止まる。
「どうしました?」
「あのさ」
「はい?」
「着替えるから、さ」
「あっ!」
玲於奈は口元を手で押さえ、慌てて立ち上がる。スカートの裾がふわっと跳ねた。
ぱたぱたと部屋を出て行きかけて、出口で振り返る赤い顔。
「あ、あの、よろしければ、お着替えお手伝い……」
「いらないって」