06/12/19 08:01:24 DbYICpea0
新しい出会いや恋、そして友情に笑い、悲しみ。
すべてが始まり、終わるかもしれない季節。
季節といっしょに何かがやって来る、そんな気がする――。
ToHeart2のSS専用スレです。
新人作家もどしどし募集中。
※SS投入は割り込み防止の為、出来るだけメモ帳等に書いてから一括投入。
※名前欄には作家名か作品名、もしくは通し番号、また投入が一旦終わるときは分かるように。
※書き込む前にはリロードを。
※割り込まれても泣かない。
※容量が480kを越えたあたりで次スレ立てを。
※一定のレス数を書き込むと投稿規制がかかるので、レス数の多いSSの投下に気づいた人は
支援してあげて下さい。
※コテハン・作家及び作家の運営するサイトの叩きは禁止。見かけてもスルー。
前スレ
ToHeart2 SS専用スレ 17
スレリンク(leaf板)
関連サイト等は>>2
2:名無しさんだよもん
06/12/19 08:02:30 DbYICpea0
AQUAPLUS『To Heart2』公式サイト
URLリンク(www.aquaplus.co.jp)
ToHeart2 スレッド 過去ログ置き場(仮)
URLリンク(f55.aaa.livedoor.jp)
本スレや各キャラスレはこちらから。
ToHeart2 SideStory Links
URLリンク(toheart2.ss-links.net)
各キャラの呼称相関図は
URLリンク(botan.sakura.ne.jp)
内のToHeart2呼び方相関図を参照。
ToHeart2 SS の書庫 (スレの全作品保管)
URLリンク(th2ss.hp.infoseek.co.jp)
3:名無しさんだよもん
06/12/19 08:04:11 DbYICpea0
カーテンが開けられて、朝の日差しがまだ眠っていた俺の目に飛び込んでくる。
思わず布団を被ろうとすると、誰かの手でそれを押さえられてしまった。
「貴明さん、もう朝ですよ。早く起きてご飯を食べてください。学校に遅れてしまいますよ」
そう言いながら、軽く体を揺さぶられる。
「イルファ、もう後10分、いや5分でいいから。もうちょっとだけ、寝かせて」
イルファの手の動きが止む。
ああ、きっとこれは、イルファが俺のお願いを聞いてくれたんだ。じゃあ、お言葉に甘えて、
あと、10分。
けれどベッドの傍らの、イルファの気配はそこから離れようとはしない。それどころかます
ますこちらに近づいて来て。
「朝ですよ、起きてください。私の旦那様」
耳元で囁くイルファさんに、俺は慌てて跳び起きる。
終
4:私の旦那様 あとがき
06/12/19 08:06:15 DbYICpea0
前スレの容量考えず書き込んで大変失礼しました。
新しくスレ立てましたが、何分初めてのことでこれで間違いないかどうか。
リアルタイムで読んでくださってた方、申し訳ありませんでした。
あ、前レスにタイトル付いてない。
5:名無しさんだよもん
06/12/19 09:50:00 v1fCD+ei0
>>4
乙&GJ!
6:名無しさんだよもん
06/12/19 11:17:56 Xr7nB/iW0
>1乙&>4GJ
この後二人きりの時だけ呼び捨て&旦那様になったり、なんて妄想が広がるSSですな
そうでなくとも当分は旦那様ネタで躾けられそうな貴明デラウラヤマシス
7:名無しさんだよもん
06/12/19 12:47:37 Dx4I6CPy0
>>1乙!
>>4GJGJ!!
あーこんなに悶えるのも久々だ(*´Д`)
8:名無しさんだよもん
06/12/19 15:03:18 RAtVM56Y0
最高だった
でもでもでも、俺はイルファさんにはさん付けし続けたい
草壁さんにも
9:名無しさんだよもん
06/12/19 21:57:28 lUNZ3I8e0
>7
ひょっとしてアンタいつも「久々だ」とか「いつ以来だろう」とか言ってないか?w
10:名無しさんだよもん
06/12/20 01:11:57 G8QOjP4y0
しばらく来てなかったから
河野家20話近く進んでるぜ
追いつくのが大変・・・
11:名無しさんだよもん
06/12/20 03:36:04 gLR97WH+0
>>9
んな事はないよ
12:名無しさんだよもん
06/12/22 13:01:09 //OKQONV0
保守
13:名無しさんだよもん
06/12/24 08:19:04 KS10cNvq0
保守
14:名無しさんだよもん
06/12/25 21:08:23 wbtSGghO0
河野家、鬱展開にもっていって虹の欠片みたくなったらオワリダナ
河野家は明るく閉めたほうがヨサゲ
15:河野家にようこそ 第85話(1/9)
06/12/25 21:57:04 t3zBKSBK0
日曜日の朝。熱も下がって気分爽快! 念のためとタマ姉にちゃんちゃんこを着せられたけど、
まぁそのくらいは我慢するさ。あと、ちゃんちゃんこ持ってきた雄二、ご苦労さん。
優季の作ったフレンチトーストはすっげえ美味くて、おかわりせずにはいられない。食欲がある
ってことは健康ってことだよな、うん。
だけど、そんな俺の浮かれ気分は、その後の出来事ですっかり吹っ飛んだ。
唐突に現れた、由真のじいさん。そしてじいさんはいきなり由真に土下座をし、家に戻ってきて
くれと由真に懇願する。未だによく分からない由真の家出の理由、それは全て自分が悪かったと言い、
由真のいなくなった家の寂しさを訴え、ひたすら家に帰ってきてくれと頭を下げるじいさん。けれど
由真は、自分はずっとここにいるんだと言い、そんなじいさんに帰れと叫ぶのだった。
「……済みませぬが、もうしばらく孫のことをお願いしますじゃ」
玄関。由真のじいさんが力の抜けた声でタマ姉に言う。
じいさんに「帰って!」と叫んだあと、由真は二階に上がり、自分の部屋に閉じこもってしまった。
そんな由真を説得するのは今は無理だと悟ったのだろう。じいさんは諦めて帰ることにしたのだ。
しゃがんで靴を履くじいさん。その背中がやけに痛々しく見えて、俺は―
「なぁ、じいさん、あのさ……」
けれど、その後の言葉が続かない。今のじいさんにかける言葉が見つからない。
そうこうしているうちにじいさんは靴を履き終え、すっくと立ち上がってこちらに振り返って、
「小僧、お主にも頼むぞ。由真のこと」
そう言うじいさんは何故か笑顔で、けれど余計にその辛さが伝わってきて……
「あ、ああ……」
「では」
俺たちに一礼し、じいさんは我が家を後にした。
16:河野家にようこそ 第85話(2/9)
06/12/25 21:57:39 t3zBKSBK0
「どうしたものかなぁ……」
それまでの楽しい雰囲気から一転、居間は緊急会議の場と化した。議題は勿論、由真のこと。
「由真ちゃん、お爺ちゃんが帰ったって言っても部屋から出てこないね」
テーブルに頬杖をつく花梨。
「どうするの、たかちゃん?」
「どうする、って言われてもなぁ……」
考えてみる。ここは優しく接するべきか、それとも……
「って言うか、貴明センパイはどうしたいんスか?」
「どうしたい、って?」
「決まってるじゃないッスか。由真先輩を家に帰したいのか、それとも帰したくないのかッスよ」
「俺は―」
帰したいに決まってるじゃないか。そう言おうとして、だけど俺は言葉を途切れさせる。
俺は、本当に、由真を、帰したいのだろうか……?
「―帰したいに決まってるじゃないか」
疑問は残ったままなのに、やっぱり俺はそう答えてしまった。
「あいつはここに家出して来たんだ。その原因が自分だってあのじいさんは認めて、土下座までした
んだぜ。なら、あとは由真がじいさんを許してやれば万事解決だろ。
それに、みんなだって聞いたろ、じいさんや由真の両親が寂しい思いをしてるって。そんなの聞い
てさ、由真を帰さないワケにはいかないじゃないか。由真はもう、自分の家に帰るべきなんだよ」
……よくもまぁ、思ってもいないことをこれだけ言えたものだ。我ながら感心するよ。
いや、全く思っていないってワケじゃない。じいさんや由真の両親が可哀想だって思ったのは本心
だし、由真が家族と別れたままなのは良くないとも思っている。
けど……
17:河野家にようこそ 第85話(3/9)
06/12/25 21:58:16 t3zBKSBK0
「―ならタカ坊、あなたが説得しなさい」
そんな俺の迷いを見透かしたのか、タマ姉の俺を見つめる視線はやけに厳しい。
「け、けどさタマ姉、俺なんかが説得したって、あいつきっと言うこと聞かない―」
「家に帰してあげたいんでしょ、由真のこと。なら、ちゃんと説得してあげなさい。
大丈夫、タカ坊が本気でそう思っているなら、きっと伝わるわ」
―逃げ出したいとすら、思ってしまう。でも、逃げ場なんてない。
それに、タマ姉のその言葉にほんの少しだけ心が動く。俺が本気で思っている、か……。
こんこん。
「由真、いいか?」
ドアをノックしてそう尋ねても、由真から返事はない。
「いいか? いいな? 入るからな」
散々念を押し、ドアをゆっくり開ける。
由真は―ベッドの上に座り、ぼんやり窓の方を向いている。
「あ、あのさ、由真―」
「何しに来たのよ?」
う、やっぱ機嫌悪そう。でもここで負けてはいかん、負けては。
俺はわざとらしくハァとため息をつき、
「お前だって分かってるだろ、俺の言いたいこと」
「何それ? 全然分かんないんだけど」
「そうかい、なら言ってやる。
お前、何ムキになってんだよ。せっかくじいさんが自分の方から謝りに来てくれたのにさ。
お前はあのじいさんとケンカして家出したんだろ。だったら、向こうが謝ってきたんだからそれで
いいじゃないか。だろ?
18:河野家にようこそ 第85話(4/9)
06/12/25 21:58:54 t3zBKSBK0
なぁ由真、お前もう家に帰ったほうがいいって。お前のお父さんやお母さんも相当心配してるよう
だし、いい加減に―」
途端、由真が振り向き、
「いいって、言ったじゃない!!」
「え?」
由真の言ってる意味がよく分からない。いいって、何が?
「あの晩、あたしたかあきに聞いたよね。あたし、ここにいてもいいよねって!
そしたらたかあき言ってくれたじゃない、好きなだけいろよってさ!」
……思い出した。確かあれは、このみがちゃるとよっちにこの生活のことをバラして、どうしよう
かって相談した日の晩のことだ。由真がやってきて俺に肩もみさせて、そして―
『まだ……、ダメみたいなんだ。あたし、まだ逃げたままだから。
もう少し、このままでいいよね、たかあき? あたし、ここにいてもいいよね?』
『……ああ、いいよ。好きなだけいろよ』
言った。確かに俺はそう言った。好きなだけいろって。
「あれウソだったの!? たかあき、あたしにウソついたの!?」
「い、いや、ウソだなんてつもりは……」
「だったらさ」
それまで怒っていた由真。なのに、無理矢理それを押し込め、笑顔、のようなものを浮かべ、
「もう一度聞くね、たかあき。
あたし、ここにいてもいいよね。いいんだよね?」
―俺は、由真のこの顔がとてもイヤに思えた。由真にこんな顔、似合わない。
いや、こんな顔をさせているのは俺なんだ。由真だってきっとこんなのはイヤなはず。だから、
19:河野家にようこそ 第85話(5/9)
06/12/25 21:59:37 t3zBKSBK0
「……ああ、いいよ」
そう、答えてしまった。その言葉を聞いた由真は、喜びに顔をほころばせ、
「たかあき!」
俺の胸に飛び込んできた。その意外な行動に頭が混乱し、どうしていいか分からなくなる。
そんな俺に由真はぎゅっと強く抱きつき、
「あのねたかあき。―あたし、たかあきのこと好きよ」
それは、唐突な告白。
けれど何故だろう? 俺はその言葉がちっとも嬉しくなく―いや、由真のことは嫌いじゃない。
だけど今は、こんな言葉を由真から聞きたくないと思ったんだ。
その日から、由真の俺への態度が変わった。
朝は由真が優しく起こしてくれて、朝食も弁当も夕食も由真がキッチンを独占し、そして何より、
由真はいつも俺の側にいるようになった。例え優季が「由真さん、貴明さんにくっつき過ぎです!」
と怒っても、「別にいいじゃない、ねぇ」と俺に笑顔。そして俺も、それを許してしまっていた。
正直に言う。俺は、そんな由真がイヤでたまらなかった。
けれども、それを言ったらきっと由真は悲しむ。ただでさえじいさんのことで心が不安定になって
いる由真なんだ。多分由真は俺に甘えて、いや、俺に助けて欲しいんだ。だから俺も、由真に優しく
してあげなければならない。そんな風に考えていた。
けれど、心の片隅にはいつも「これでいいのだろうか?」と言う疑問があって……
それから、数日後のこと。
由真と俺は部屋で二人きり、対戦ゲームで盛り上がっていた。ちなみにゲームは、最近発売された
ロボットものの対戦アクション。
「―あ、たかあき避けるな!」
20:河野家にようこそ 第85話(6/9)
06/12/25 22:00:12 t3zBKSBK0
「知るか、っての!」
サーベル攻撃してきたところを回り込み、
「うりゃ!」
逆にこっちがサーベルでめった切り。由真の機体の耐久度がゼロになり、爆発。
「うわ~ん、たかあき酷いよ~!」
コントローラから手を放し、ポカポカ俺の肩を叩く由真。
「おいおい由真、まだゲーム続いてるって」
このゲームは相手の機体を撃墜するだけでは勝利にはならない。双方決められたポイントがあって、
機体が撃墜されるとポイントは減少し、しかしそれがゼロになるまでは機体は何度でも復活するのだ。
既に由真の機体は復活している。
「えへへ、いけないいけない☆
よ~し、今度こそ本気出しちゃうからね。覚悟しなさい、たかあき!」
コントローラを再び手に、由真が画面に集中。由真の機体がブーストで俺に急接近。
また格闘戦かよ。ったく、ワンパターンなんだっての。まずは由真が斬りかかってくるのを―
「そこっ!」
「え?」
真後ろから攻撃!? しまった、由真の味方機が後ろに回ってたのか!
「とどめっ!!」
そこに由真のサーベル攻撃。俺の機体は爆発。
『ごめんね。でも君なんかが僕にかなうわけないだろ』
由真が選んだパイロットの台詞。む、ムカつく……!
「こっちはまだ一回しかやられてないんだ。調子に乗るなよ!」
俺の機体が復活。よし、仕切り直しといきますか!
21:河野家にようこそ 第85話(7/9)
06/12/25 22:00:56 t3zBKSBK0
「あ~面白かった! ね、もう一回やろうか?」
「望むところだ」
再戦決定、機体選択画面へ。さて、どうするか? どうせ由真はさっきと同じ高性能な機体を選ぶ
だろうし、こっちもそれに対抗して高性能なのを選ぶか、それとも―
その時、不意に、
「あたし、さ」
由真の呟き。見ると由真は画面を眺めたまま、
「あんなおじいちゃん、初めて見た」
じいさんのことを、語りだした。
「え……?」
「おじいちゃん、来栖川家の執事なの。だからおじいちゃんが頭を下げるところなんて何度も見たわ。
けど、あんな下げ方なんてしたことない。少なくともあたしは見たことなかった。
なのに……あたしがさせちゃったんだね」
「由真……」
「子供のクセに、って言われたの」
「え?」
子供? 何の話だ?
「あたしね、小さい頃おじいちゃんに約束したのよ。おじいちゃんの後を継いで、執事になるって。
あたし自身も結構乗り気だったのよ。つい最近までは、ね。でも」
そこでばたんと床に寝転がる由真。
「なんか最近になって、それに疑問を感じだしたのよね。あたしはホントにそれでいいのかって、ね。
もっと他にやりたいこと、やれること、あるんじゃないかって。でもさ」
寝転がったまま、由真は俺を見て苦笑いし、
「なーんにも思い浮かばないのよ、実際のところ。
22:河野家にようこそ 第85話(8/9)
06/12/25 22:01:28 t3zBKSBK0
執事になるのは気が進まない。けれど、なりたいものが分からない。
そんなの言われたら、おじいちゃんじゃなくたってワケ分かんないよね。だけど、それが今思って
いることなんだって分かって欲しくて、おじいちゃんにそう打ち明けたの。
おじいちゃんもね、きっとあたしのこと真剣に考えてくれたんだと思う。次の日からおじいちゃん、
大学のパンフとか、いろんな資格のガイドブックとかをあたしに持ってきてくれるようになったの。
だけどあたしにはそれが何か鬱陶しくてさ。おまけに」
由真はそこで吹き出し、
「見合い写真まで持ってきたのよ。相手はええと……どっかの医者の息子だったかな?
で、その見合い写真がトドメだったのよね。あたし、キレちゃったのよ。
『いい加減にしてよおじいちゃん! あたしの将来はあたし自身で決めたいの、おじいちゃんは余計
な口出ししないで!』って。そしたらさ、それまでニコニコしてたおじいちゃんも流石に堪忍袋の緒
が切れたのかなぁ」
由真は眉をつり上げ、じいさんの口マネっぽい低い声で、
「『ロクに世間も知らぬ子供のクセに、偉そうな口を叩くでない! わしがお前のためを思って路を
示そうとしているのが分からんのか、この馬鹿者が!!』
そんな風に怒鳴られたら、あたしも頭に血が上っちゃってさ、勢いで家を飛び出しちゃったワケ」
……成る程、そう言うことだったのか。由真が家を出た理由。
「けどまさか、おじいちゃんの方から謝りに来るだなんて思ってもいなかったなぁ。だって」
由真はごろりと寝転がり、こっちに背を向け、
「悪いのはあたしだもんね、どう考えたって。
いくらおじいちゃんがお節介でも、余計な口出しするなだなんて言い過ぎだものね。しかもあたし
は、子供の口約束とは言え、おじいちゃんの後を継ぐって約束してたのに、さ」
「由真、じゃあお前―」
「ホントはね、ずっと前からそれに気付いてた。いつか折を見て、おじいちゃんに謝りに行こう。
23:河野家にようこそ 第85話(9/9)
06/12/25 22:02:16 t3zBKSBK0
そして許してもらえたら、家に帰ろう。そう思ってたんだ。だけど―」
「ここの生活が楽しかったから」
唐突に、背後から声がした。
振り返ると、そこには―
「る、瑠璃ちゃん!?」
いつの間にか、瑠璃ちゃんがいた。瑠璃ちゃんは由真を見つめ、
「ここの生活が楽しくて、貴明や環たち、このみや郁乃たちと一緒にいる時間が楽しくて……
そうなんやろ、由真も、そうなんやろ?」
「瑠璃ちゃん……」
由真が驚いた顔をしているのは、瑠璃ちゃんが突然現れたからだろうか、それとも、瑠璃ちゃんの
言葉に対してだろうか?
少し間をおき、由真は、
「……そうだよ」
ポツリと、そう答える。
「その通りだよ。瑠璃ちゃんの言うとおり。
瑠璃ちゃんや環さんたち、それに愛佳や郁乃ちゃんたちとも一緒で、とても楽しいよ。
それに今は」
不意に、由真が俺の腕に抱きついて、
「たかあきが好きだから。たかあきと一緒にいられて、とても楽しいの」
はにかむ由真。それを見た瑠璃ちゃんは―
つづく。
24:河野家にようこそ の作者
06/12/25 22:03:42 t3zBKSBK0
帰宅が遅れたせいで、投稿が遅れました。
どうもです。第85話です。
この間アク禁で休んだばかりですが、また次週もお休みします。
こんな中途半端で一週休みというのもなんですが……そう言えば去年もそんな感じだったような(^^;
それではみなさん、良いお年を。ノシ
25:名無しさんだよもん
06/12/25 22:27:25 Z3hhEk6h0
>>24
乙
思ったより欝ってほどじゃないな
むしろ、ちょっとハートフルではないか
26:名無しさんだよもん
06/12/25 22:47:39 HnW3cqSq0
>>24乙。
失敬ながら深く考えることなく読んできたけど河野家が俺の生活に結構深く入り込んでいたな
休みになったときなんか一週間が長くなったような感覚に襲われていたよ
職人方も住人もよいお年を。
27:名無しさんだよもん
06/12/25 22:51:27 BwZUnM6o0
>>24
乙
デレ期?なんだろうか
鬱というよりシリアスなんじゃ
なんにしろ楽しみ
28:名無しさんだよもん
06/12/25 23:51:04 asLsKiL50
乙。
これは次回鬱展開の予感・・・
29:名無しさんだよもん
06/12/25 23:55:59 /rBeTkCH0
こういうの、鬱とは言わないねえ
そもそも鬱ってのは読み手の受ける感触なわけでね
30:名無しさんだよもん
06/12/26 01:08:55 YvV0g6yX0
河野家氏乙。
由真と貴明がやってるこれは連ザIIPlusかな?
こっちは今現在黙々とミッションモード進行中だったり。
31:名無しさんだよもん
06/12/26 22:28:19 XdLUhpNN0
河野家乙です
由真に萌えました
32:名無しさんだよもん
06/12/27 22:57:13 5moD+d3T0
河野家さん乙!
…これは瑠璃ちゃんとの勝負フラグだろうか?
出来る限りは穏便に済んでほしいところだが
33:名無しさんだよもん
06/12/29 14:21:05 r6+JPTYP0
河野家乙。
キラ様キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
34:名無しさんだよもん
06/12/29 14:24:41 +RYWDjxG0
河野孝之に改名汁
35:ヤクソク(1/9)
06/12/29 18:02:05 DLSNik2F0
あの日、夜の校舎で出会ってから早数年が過ぎた。
その月日は、初めて出会ってからは十数年になる。
俺は今でも彼女と一緒にいる。
共に就職先も決まり、卒論等の諸々も終わって後は卒業を待つのみだった。
そんな状況なので、毎日が日曜日な俺達は、平日の昼という人通りの少なめの商店街を歩いていた。
「ところで、優季」
「どうしたんですか、貴明さん」
正式に付き合い始めてから、草壁さんはやめて下さいと言われ、意識して優季と呼ぶようにした俺。
いつの間にか意識しないで呼ぶようになっていた。
何でダメなの?なんて野暮な質問はしない。
優季は草壁さんだけど、草壁さんじゃないから。もちろん高城さんでもない。
「貴明さん、どうかしました…?」
「ああ、ごめん、ちょっと考え事してた」
「もう、しっかりしてくださいね?」
「うい。で、ホント家で良いの?遠慮しなくていいよ?」
「ええ、久しぶりに二人きりのお茶会でもしましょう」
「まぁ優季が良いなら」
今のは、今日の目的地の話だ。
俺は、ポケットに入ってるものを確認する。
「貴明さん、さっきからどうしたんです?」
「いや、なんでもないよ」
「ウソはよくないです。もしかして…浮気ですか?」
俺は、まさか勘づかれたのかと思い、ヒヤヒヤしたが、違うとわかり、少し安堵の息。
しかし、間もなく明らかに厄介な勘違いをされている事に気付き、慌てて否定する。
36:ヤクソク(2/9)
06/12/29 18:02:37 DLSNik2F0
「違うって。そんな、裏切るような事はしないよ」
「本当に?」
「うん」
だからこれを用意したわけだし……。
♪♪
色々話しているうちに、我が家に到着。
先にも出たが、家には誰もいない。つまり邪魔もないが、逃げ場もないってわけだ。
余談ながら、両親は今度は海外旅行。数日後には帰って来る予定だ。
「お邪魔します」
律義にもそんなことを言う優季に、俺は苦笑混じりに言う。
「別にいいよ、そんなこと言わなくて」
そんな俺に対し、優季は、
「人に対してだけでなく、その家にあるものに対しても言う言葉だと、私は思うんです」
なんて大まじめに返答。
「そんなもん…?」
俺は、思わず聞いてしまう。
「ほら、貴明さんだって学生時代、誰もいない家に帰って来て、ただいまって言いませんでした?」
俺は昔のときのことを思い出す。
「ん…あぁ、確かに、言っていたかな…」
「それは、家にある物に向かっての言葉なんですよ」
優季の言葉に、俺はひとつの素朴な疑問が浮かぶ。
「それって、癖で思わず、とかじゃなくて?」
「ええ、違います♪」
優季は微笑みながら言った。
37:ヤクソク(3/9)
06/12/29 18:04:39 DLSNik2F0
なんだかなぁ、とも思ったけれど、優季のそういう発想は、素直にすごいと思った俺だった。
「少し待ってくださいね、今淹れますので」
リビングに着くと、勝手しったる人の家と言わんばかりに、ティーセットの用意をし始める優季。
何度も家に来て、しかもお茶会をやっているため、母さんだけでなく、時々父さんとも一緒にやるときもあった。
両親共に大好評なのは言うまでもない。
なので、優季は俺以上にカップ等の置き場所を知っているだろう。
「なんか手伝えること、ある?」
「大丈夫です、いつも通り座っててください」
「りょーかい」
優季は柔らかな笑みで言ったので、俺は素直に従った。
「♪♪♪~♪♪♪~」
優季は鼻歌を歌いながら用意を進めていく。
紅茶の、良い匂いが漂ってくる。
この匂いは……たしか。
「アールグレイ…かな?」
「わあ、よくわかりましたね」
優季がティーカップとティーポットをお盆に載せて、やってきた。
「ん?俺、今、口に出してた?」
「ええ」
「そりゃ恥ずかしいな」
俺は、照れ隠しで笑いながら長柄言う。
「ふふ、貴明さん、可愛いですよ」
その言葉に俺は、優季の額に、こつん、とデコピンをする。
「きゃっ……もう、貴明さん、ヒドイですよ」
「ごめんごめん、つい…」
そういって謝る俺の目の前に、優季の手。
38:ヤクソク(4/9)
06/12/29 18:05:15 DLSNik2F0
それは、親指と中指で輪を作り、俺の額をこつん、とはじく。
「いつっ」
「ふふ、どうですか?貴明さん」
「やったなー!」
俺は、両手でデコピンの構え。そして、乱れ撃ち。
「きゃ、いや、貴明さん、やめてください」
う、今度はホントにやりすぎたかも…。
「ご、ごめん」
草壁さんは、デコピンを止めた俺を、少し膨れた顔で見つめてくる。
「ほんとにそう思ってるんですか…?」
「う、うん、そりゃもう…」
「では、紅茶が少し冷めるまで、一緒に待ってくださいね♪」
「え゛……」
猫舌の優季にあわせると、俺にはぬるいんだよなぁ……。
「反省、してくれてるんですよね♪」
笑顔で言う優季。
「で、でも、これとそれは話が……」
「反省、してくれてるんですよね♪」
もう一度、同じ笑顔で言う優季。
「はい……」
優季の策略に俺が従う以外に術を持ち合わせていなかったのは、言うまでもない。
♪♪
「もうこんな時間か……」
電気をつけるときにやっと時計を見てみると、もう18時を指していた。
「楽しい間は、時間の進みが早いですよね」
「本当にそうだね」
39:ヤクソク(5/9)
06/12/29 18:05:46 DLSNik2F0
窓越しに、飲み込まれそうな漆黒の空と、街の明るさに負けじと光っている星が見えた。
「暗くなってきたし、そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」
俺から切り出したのには意味があった。
「そう……ですね」
俺の言葉を聞き、少し残念そうな顔の優季。
「片付けは後で俺がやっとくから、いいよ」
「戻す場所、わかりますか?」
えーっと…いつも優季が置いてるのは……と。
「ちょっと自信ないけど、多分大丈夫だと思う」
「変な場所におかないでくださいよ?」
優季はさっきの顔のままいたずらっぽく笑う。俺は苦笑でそれに応える。
「さてと、暗いし家まで送っていくよ」
「まだ18時ですし、大丈夫ですよ」
ここは何としても首を縦にふらせないと。
「俺が、優季と少しでも長く一緒にいたいんだ。ダメかな?」
決して嘘ではないけど、真の目的は別にある。
「わかりました、お願いします♪」
残念そうな顔から、一気に綻んだ顔になった優季。
やっぱり優季は笑顔のほうが良いよな……ってなに惚けてるんだ、俺は。
俺は急いでコートを取り優季の方を見ると、既に準備完了だった。
「電気、消しますね」
「ごめん、お願い」
明かりが消えて、暗くなった部屋を後にした俺達は、限界を経由して外に出た。
「んじゃ、行こうか」
「はい♪」
施錠をし、二人一緒に並んで歩き始める。
40:ヤクソク(6/9)
06/12/29 18:22:43 DLSNik2F0
底なしかと思わせる闇のなか、輝く星の存在で初めて夜空という事が認識出来る。
「そういえば、こんな日の夜の学校で、優季とあったんだよな…」
「そうですね……」
「今思えば、本当に『運命的』……だね」
結局、なんで優季があの日あの場所にいたのかは未だにわからない。
でも、理由が分からないからこそ、『運命的』なんだと思う。
「偶然に偶然が重なった、奇跡に近い確率。
そんな中で出会った私達は、『運命的』としかいいようがないですよ」
同じように夜空を見上げながら言う優季。
「私がが新聞の記事を見なたから。
貴明さんがあの日学校にレポートを取りに行ったから。
雨が降って、誰かがアメオニをやろうと言ったから。
もしこのひとつでも欠けてたら、前に話した昔話の海底にあった都市のように、
私達がこうして一緒にいることはなかっただでしょうね…」
前に話した昔話ってのは多分、漁師の話だろう。いつかに優季が話してくれた昔話。
「あの時優季は、違った未来も見たいって言ってたけど、今回も?」
俺はさりげなく聞く。
「そんなの…」
優季はこっちに向き直る。
「見たいわけないじゃないですか」
「そういってくれて、よかったよ」
笑顔で言ったその言葉を聞き、密かに安堵の息をつく。
そして、それと同時に俺は決心した。
「ねぇ優季、ちょっと時間ある?」
「大丈夫ですよ」
「んじゃ、ちょっと付き合ってくれる?」
41:ヤクソク(7/9)
06/12/29 18:24:03 DLSNik2F0
「良いですけど、何にです?」
不思議そうな顔で聞く優季に俺は一言。
「秘密」
「言えないようなことなんですか?」
暗くてよく見えないが、優季の顔が少し赤くなった気がした。
「多分想像してるのとは違うよ」
「そ、そうですか…」
そして少し残念そうな顔。
いやいや、そんな顔されても、場所が場所ですし期待されましても…。
♪♪
灯の少ない公園のベンチは、やはり暗い。
でも、星がよく見える。
あの日…優季の事を思い出したあの日の学校の屋上のように。
「優季、あのさ…」
「はい?」
俺は軽い深呼吸を一つ、心拍数の上昇を抑える。
「ヤクソク、覚えてる?」
優季はうーん、と考えて言う。
「遊びに行く約束ですか?」
「いや、違う。すごい昔……十数年前のヤクソク」
「それって……」
優季は、思い当たるものがあったのか、少し驚いている。
「覚えててくれてた?」
「はい…」
――それは、優季が「高城さん」じゃなくなる前にした、ヤクソク。
42:ヤクソク(8/9)
06/12/29 18:24:34 DLSNik2F0
『……わ、私……どうなってしまうのかな?
何もかも変わっちゃうし……無くしちゃうし……。
河野くんがいつも呼んでくれた高城さんじゃなくなってしまったら…。
私は……誰になってしまうのかな?
変わってしまった私を、きっと河野くんもわからなくなってしまうんじゃないかな?』
『だったら!
僕の河野って名前をあげるよ、高城さん。
ほら、新しい名字が、気に入らなかったりなじまなかったりした時は、いつだってかえられるよ、これで』
『河野くん!
そ、それって……』
自分はどうなってしまうんだろう、と不安に怯えていた優季に俺がしてあげれた、ただ一つのヤクソク。
そんな大事なヤクソクを、俺はまだ履行していない。
だが時が満ちた今、その履行をするべき時だ。
「これからは俺の名字、使ってもらえないかな…?」
そう言って、ポケットに忍ばせておいた夜空に輝く星と同じ色をした宝石のついた指輪を差し出す。
頭を下げながら差し出しているため、優季の表情はわからない。
時が止まったのかと錯覚するほど長い時間と静寂。
ただ一つわかるのは、優季がまだそこにいるということだけだ。
何も動きがない。静止画をみているような視界。
そこに、初めて現象が起きた。上から、水滴が落ちて来たのだ。
雨か…?と思ってあげた顔にうつる優季の顔。
呆然としていて、頬には涙が伝って落ちた後がある。
「ゆ、優季、大丈夫…?」
「は、はい!」
俺が声をかけて、ようやく我に帰ったような優季。
「すいません、びっくりしちゃって…」
43:ヤクソク(9/9)
06/12/29 18:25:31 DLSNik2F0
そう言いながら、コートの袖で、涙を拭く。
「本当に、私で良いんですか?」
優季は、俺の目を真っ直ぐに見つめて、言う。
だから俺も、同じように真っ直ぐに見つめ返し、答えた。
「優季以外にはいないよ」
そして俺も、もう一度問い掛ける。
「俺と、結婚してくれないか?」
優季は、俺が今までみたことない程の笑みを浮かべて言った。
「はい」
「ありがとう」
俺は優季を抱きしめた。優季も応えるように返してくる。
突然の別離。そして再会。
数多の偶然が織り成した運命的な出会い。そしてたった1つのヤクソク。
遠くの灯りと月明かりが照らす静寂の中、ヤクソクの履行は、確かに行われた。
44:↑の作者
06/12/29 18:33:10 DLSNik2F0
こんばんは。今年最後は、初の草壁さんでいかさせていただきました。
去年の冬のNY書いていた時期と被ったためか、似たような感じになったような気がします。
後、知ってる方は知ってると思いますが、冬のNY意外にも個々の単語が、
あれに影響されているのに多分気づくかと^^;
草壁さん発挑戦ということで、今まで以上にキャラが違ってるかもしれません。
もし、気に食わなかったりしたらスイマセンです(´・ω・`)
河野家さんの流れの中、失礼しましたー。
45:名無しさんだよもん
06/12/29 18:40:21 /nISZi+D0
一瞬ヤケクソに見えたとか言うのはすごいどうでもいい話だよね
ともあれ乙
46:名無しさんだよもん
06/12/29 18:57:18 EuWcQr8e0
>>45
俺もw
>>44
乙です
47:名無しさんだよもん
06/12/29 19:41:01 5IjJxWQ+0
>>45-46
アレ俺が二人もいる??
>>44
GJ!
48:名無しさんだよもん
06/12/29 20:04:34 DLSNik2F0
>>45-47
紛らわしくて申し訳ないです(´・ω・`)
49:名無しさんだよもん
06/12/29 23:25:31 dFTV0hAd0
>>45-47
お前らは俺かw
50:名無しさんだよもん
06/12/30 02:26:50 DtnnK4MZ0
だがそれがいい。
51:名無しさんだよもん
06/12/30 03:55:48 Rg/NdIYk0
限界を経由して?
52:名無しさんだよもん
06/12/30 09:27:02 +8W059uZ0
君達が何を言っているのか解らないよ
53:名無しさんだよもん
06/12/30 20:00:58 y4i3bgTm0
クソミソ乙。
54:名無しさんだよもん
06/12/31 01:29:02 jT5STd3D0
結構良い雰囲気の話だったな。
ただ、草壁さんと優季が一部ごっちゃになってる。ま、本編ではずっと草壁さん
だったから仕方ないかもしれないけど。
55:名無しさんだよもん
07/01/02 02:39:28 EYLvfElB0
今週は河野家休みだったのか
56:ジャンク(1/2)
07/01/02 03:51:21 UC8N6DYZ0
「無かったことにして欲しいの」
ささらの最後の言葉はそれだった。
クリスマスまであと1週間、NY行きの準備は万端、後は冬休みを待つだけになっていたあ
る日のことだった。
NYのささらとのコミュニケーションが滞りがちになったのは10月の終わり頃からだった。
それまではお互いにメールや電話でほぼ毎日連絡を取り合っていた。
それがだんだんとささらからメールの返信が遅れるようになり、電話しても留守だったり
時間がないとかですぐに切られたりするようになった。
最近は全くメールの返事は来ず、ようやく電話で捕まえたと思ったらささらの口から飛び
出したのは別れ話だった。
何を言っても返ってくる答えは「わかれて欲しい。貴明さんは悪くない。悪いのは自分」
の一点張り。
せめて理由を説明して欲しかったがそれもかなわず、最後の言葉を残して一方的に電話は
切れた。
冬休みまで待つなんて出来なかった。その足で空港に行きキャンセル待ちをしてNY行きの
便に飛び乗りJFK空港に降り立った。
飛行機の中では一睡も出来なかった。いったいささらに何があったのだろう。単に心変わ
りして他に好きな人が出来たというならそれでいい。
ささらが幸せならそれでいいんだ。でも、もしささらの身に何か良くないことが起きたの
だとしたら、俺は絶対にささらを諦めたりしない。
たとえ何があってもささらの手を離したりはしない。ずっとそんなことばかり考えていた。
57:ジャンク(2/2)
07/01/02 03:52:25 UC8N6DYZ0
>>56
冬休みまで待つなんて出来なかった。その足で空港に行きキャンセル待ちをしてNY行きの
便に飛び乗りJFK空港に降り立った。
飛行機の中では一睡も出来なかった。いったいささらに何があったのだろう。単に心変わ
りして他に好きな人が出来たというならそれでいい。
ささらが幸せならそれでいいんだ。でも、もしささらの身に何か良くないことが起きたの
だとしたら、俺は絶対にささらを諦めたりしない。
たとえ何があってもささらの手を離したりはしない。ずっとそんなことばかり考えていた。
右も左も判らず、言葉も通じない異国の土地、普段の俺ならどうして良いか判らずおろお
ろするだけだったろう。
でも今の俺の心を占めるのはささらに会いたいという強い気持ちだけ。
その気持ちだけででたらめな英語と身振り手振りでタクシーを捕まえてささらの家にまで
たどり着いた。
玄関の前に立ったとたん弱気の虫が起きてきたが意を決してインターホンを押すとささら
の母親が出てきた。
驚いていたが訳を話すとささらの部屋へ案内してくれた。
そこで見たのは変わり果てたささらの姿だった。
どうやらアメリカのヤックはささらには量が多すぎたようだ。
ちゃんちゃん。
58:名無しさんだよもん
07/01/02 03:54:25 UC8N6DYZ0
>>57
いや、ささらってジャンクフードしか食べられなくてもアメリカでは食べ物に困らないなーとか思ったり
したもんで。
59:名無しさんだよもん
07/01/02 03:56:28 UC8N6DYZ0
はわわ、コピペミスってる。
一発ネタでこんなミスしてちゃ駄目だろ>自分
60:名無しさんだよもん
07/01/02 15:42:06 sV/ya5RXO
>>59
巣におかえり。
ここはあなたが居るべき場所ではないの
61:名無しさんだよもん
07/01/02 19:20:03 0RY6ESD70
>>58
うまい!って言うか途中で止めてやれよささらママ。
62:名無しさんだよもん
07/01/02 20:58:22 f08GY6id0
そこでささらに合うような筋肉隆々とした男になると決意しなければ
63:名無しさんだよもん
07/01/06 23:59:59 kz3fj/pa0
ほしゅ
64:名無しさんだよもん
07/01/08 00:26:00 J9p7VqVrO
ほす
65:名無しさんだよもん
07/01/08 00:27:29 J9p7VqVrO
sage忘れたorz
66:名無しさんだよもん
07/01/08 19:54:43 aqaKWPbeO
河野家マダー?
67:名無しさんだよもん
07/01/08 20:28:50 bD+vukZu0
そろそろ河野家来る頃か?
68:河野家にようこそ 第86話(1/10)
07/01/08 20:41:54 B7FRmEPw0
二階の部屋に籠もってしまった由真。じいさんは説得を諦め、帰っていった。
このままではいけない。そう思いつつも俺の心には迷いもあって……。けれど俺は結局、由真を
説得するために部屋に行った。
けれど、俺は由真を説得どころか、過去の言葉を引き合いに出され、由真がこのままいてもいいと
認めてしまう。その言葉を聞くなり由真は俺に抱きつき、「好き」と俺に告げる。だけど……
それから数日後。俺と二人でゲームをしていた由真はポツリと語り出す。じいさんの後を継いで
執事になることに疑問を覚え、だけど他にやりたいことも見つからず、ならばとじいさんが色々な路
を示してくれるのにもウンザリで、しまいにはじいさんに子供が生意気な口を叩くなと怒鳴られ、
勢いで家を飛び出してしまった。―それが、由真の家出の理由。
そして由真は、自分が間違っていることもちゃんと分かっていて、いつか折を見てじいさんに謝り、
家に帰るつもりだったと打ち明ける。けれど、ここでの生活が楽しくて、いつしかそれを忘れていた
ことも……。そんな由真の気持ちを言い当て、そして瑠璃ちゃんは―
「ホンマにそれでええの、由真?」
真剣な目で瑠璃ちゃんがそう尋ねる。
「え……、どうして?」
聞き返す由真は、どこかとぼけてる感じ。
「おじいちゃんもお父さんもお母さんも、みんな由真がいなくて寂しい言うとるんやで。
それ放っといて、由真、ホンマにええの?
自分だけ楽しい思いして、家族のことはどうでもええなんて、そんな―」
「じゃあ、あんたはどうなのよ?」
由真の口調が変わった。見ると由真の顔が険しい。
「人のこと偉そうに言うけどさ、あんたはどうなのよ?
大好きなお姉ちゃんと別れて最初はわんわん泣いてたクセに、今じゃすっかりここに馴染んでる
69:河野家にようこそ 第86話(2/10)
07/01/08 20:42:36 B7FRmEPw0
じゃない。あんただってここの生活が楽しんでるんでしょ。たかあきたちと一緒で楽しいんでしょ。
そんなあんたが、あたしのこと言えるワケ!?」
「おい由真! その言い方は―」
「ウチはちゃうもん!」
真っ赤な顔で叫ぶ瑠璃ちゃん。
「う、ウチはちゃうもん! 今かてさんちゃんトコ帰りたい思てるもん!
せやけど、せやけど、ウチらケンカ中やから、だから―」
「ウソ」
「!?」
瑠璃ちゃんの言葉を一言で切り捨てる由真。
「ホントに帰りたいなら帰ればいいじゃない。あの珊瑚ちゃんだもの、きっとすんなり家に入れて
くれるわよ。それで一件落着、何もかも元通りってね。
ケンカとか言ってるけど、それって瑠璃ちゃんが謝っちゃえば済むことじゃないの? ゴメンね、
やっぱり私が悪かったです。これからはイルファも一緒に仲良く暮らしましょ。そう言っちゃえば
済むことじゃない。何がケンカよ、大げさな」
「おい由真!」
違う、それは絶対に違う! そんな簡単な話なら、そもそも瑠璃ちゃんが珊瑚ちゃんと離れる意味
なんてない! そんなことくらい由真だって分かってたんじゃなかったのかよ!?
さすがに頭に来たので、俺は由真を怒鳴りつけようと―
パンッ!
「……え?」
それよりも早く、瑠璃ちゃんが由真の頬を叩いていた。
70:河野家にようこそ 第86話(3/10)
07/01/08 20:43:18 B7FRmEPw0
叩かれ、呆然とする由真。だけどたちまちその顔が怒りに染まり、
「何するのよ!」
「バカにするなぁ!!」
パンッ!
二発目のビンタ。それも、さっき叩いた左頬をもう一度。
この時、きっと由真の中で何かがプチンとキレたのだろう。それまでずっと俺のとなりで座って
いた由真はすっくと立ち上がり、そして、
パンッ!
お返しのビンタを瑠璃ちゃんの左頬に見舞う。それも本気で。
その強さに瑠璃ちゃんはよろけ、倒れそうになる。
「瑠璃ちゃん!」
慌てて立ち上がった俺だが、瑠璃ちゃんは倒れなかった。
叩かれた左頬を痛そうに手で押さえ、たちまちその目に涙が浮かぶ。そして―
「う、うわああああああああああああ!!」
由真に飛びかかる瑠璃ちゃん。その勢いで二人とも床に倒れる。
「こ、この!」
「由真のアホ! 由真のアホぉ!」
由真の上に乗り、泣きながらポカポカ殴りまくる瑠璃ちゃん。
下になってる由真も負けじと殴り返すが、どっちもデタラメに腕を振ってるだけであまり当たって
はいない。その内にバランスを崩したのか瑠璃ちゃんが横に倒れ、二人とも寝転がった状態に。だが
71:河野家にようこそ 第86話(4/10)
07/01/08 20:44:37 B7FRmEPw0
二人はその状態で、今度は、
「うわーっ!」
「このーっ!」
由真の腹や脚を蹴りまくる瑠璃ちゃんと、瑠璃ちゃんのお団子髪を掴んで引っ張る由真。現在の
ところは双方互角といったところ―って、なに呑気に実況してんだよ俺は!?
「お、おい二人とも―」
慌てて止めようとする俺だったが、
ゲスッ!
「ぐえっ!?」
る、瑠璃ちゃん、なんてところを蹴ってくれますか……バタン。
バンッ!
「ど、どうしたのタカ坊!?」
騒ぎを聞きつけたのか、タマ姉たちが駆けつけた。
「わ! 由真ちゃんと瑠璃ちゃんがケンカしてる!」
寝ころんだままで取っ組み合ってる二人を見て驚く花梨。
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて―」
慌てて駆け寄ろうとする優季の腕を何とか掴む。ダメだ、優季じゃ止められない。
「た、タマ姉……」
深刻なダメージによる呼吸困難の中、何とか声を絞り出してタマ姉に助けを乞う。
するとタマ姉、しばしじーっと二人を見つめ、そして、
「このまま、やらせましょう」
は?
「な、何言ってんだよタマ姉、止めないとダメだろ……」
72:河野家にようこそ 第86話(5/10)
07/01/08 20:45:31 B7FRmEPw0
そう訴えるが、タマ姉はやけに落ち着き、微笑みさえ浮かべ、
「いいからいいから」
タマ姉に言われ、二人のケンカを止められず、見ているしかない俺たち。
二人のケンカは激しさを増していく。由真が引っ張るうちに瑠璃ちゃんのお団子髪はほどけ、その
逆に瑠璃ちゃんも由真の髪を引っ張り、お互い相手を叩いたり蹴ったり。ほ、ホントに止めなくても
いいのかよ? とタマ姉を見るも、タマ姉はじっと見守るばかり。
けれど、二人のケンカはそんなに長くは続かなかった。
いくら普段俺を殴ったり蹴ったりしてると言っても、由真も瑠璃ちゃんも普通の女の子。ケンカ
慣れなどしてないのだから、体力が長く保つはずもなかったのだ。二人はみるみる体力を失い、段々
と手数脚数が少なくなり、そして二人、手や脚が止まったかと思ったらバタリと倒れ込んだ。
「……はぁ……はぁ」
「……はひ……ふぅ」
息も絶え絶えな由真と瑠璃ちゃん。
「お、終わったみたい、ですね」
「ああ、そうだな」
優季にそう答え、改めて二人を見る。
二人ともボロボロだ。瑠璃ちゃんのお団子髪はほどけ、由真の髪もボサボサ。おまけに二人とも服
がメチャメチャに乱れまくっており、由真に至ってはスカートがめくれてパンツ丸見え(勿論俺は
気付かぬ振りをしてる)。けれど、あれだけ派手に暴れた割には、見る限り外傷はなさそうだ。せい
ぜいお互いの頬が赤くなってる程度。不幸中の幸いと言ったところか。
「ねぇねぇ、たかちゃん」
花梨が小声で話しかけてくる。
「ん、何だ花梨?」
73:河野家にようこそ 第86話(6/10)
07/01/08 20:46:16 B7FRmEPw0
「これって、あのパターンかな?」
「あのパターンって?」
「ホラ、ドラマや漫画なんかであるじゃない。ケンカが終わって大の字に寝転がってと来たら、次は
アレだよアレ!」
『……はぁ……はぁ、や、やるわね、瑠璃ちゃん』
『……はぁ、……はぁ、ゆ、由真も、な……』
『……はぁ、……はぁ、……ふ、ふふふっ』
『……ぷ、くす、くすくすっ』
『『あははははははははははははははは!』』
「いや、ないない」
「ええ~?」
不満そうな花梨。けどそれはすぐに証明された。
「……も、もう終わり? た、大したことないわね」
「……ゆ、由真こそ、弱っちくて話にならんわ」
「ウソつき。もうヘロヘロで立てないじゃない」
「そっちだって立てないやんか。由真のウソつき」
「別にウソなんかついてないわよ。今は立ちたくないから寝てるだけだもの」
「ホラ、やっぱウソつきやん。ホントに立てないクセに」
「じゃあ、あんたはどうなのよ? 立てるの?」
「……う、ウチは、その……、き、休憩中や」
「何よ、そっちだってウソつきじゃないの」
「ウソつきにウソつき呼ばわりされたない」
74:河野家にようこそ 第86話(7/10)
07/01/08 20:47:06 B7FRmEPw0
「やーい、ウソつきウソつき」
「な!? う、ウチがウソつきなら、ゆ、由真は大ウソつきや!」
「お、大ウソつき!? な、ならそっちは大大ウソつきよ!」
「そ、そんならそっちは大大大ウソつきや!」
「だったらそっちは大大大大ウソつきよ!」
「大大大大大ウソつき!」
「大大大大大大ウソつき!」
……小学生、いや、それ以下だな。
さすがにここまでの低レベルな展開は予測していなかったのか、タマ姉も呆れ気味。
「……ま、放っておきましょ」
その言葉に従い、俺たちは部屋を後にした。
とは言え、やっぱり二人のことが気になって仕方がない俺。
少し時間をおいた後、こっそりと二階の部屋を覗いてみる。すると―
「―あ~あ、なんかバカみたいだね、あたしたち」
「……うん、せやな」
怒りが収まったのか、それとも単に疲れただけか。相変わらず寝転がったままの二人は口ゲンカを
止めていた。
「瑠璃ちゃん、大丈夫? 血が出てたりとかしてない? 一応、引っ掻いたりはしなかったつもり
だけど……」
「うん、大丈夫。ちょっとほっぺたが熱いだけ。そっちこそ大丈夫なん?」
「顔は……うん、こっちもほっぺたが熱いや。あと脚も痛いかな。散々蹴られたからね」
「あ……、そ、その……」
「ああ大丈夫大丈夫。せいぜい青あざ出来てる程度よ。謝らなくていいってば」
75:河野家にようこそ 第86話(8/10)
07/01/08 20:48:37 B7FRmEPw0
「う、うん……」
……仲直り、してるっぽいな。さっきの花梨じゃないけど、ちょっとベタかも。
「……瑠璃ちゃんには、見破られてたんだね」
ん、見破られてた?
「……うん」
「ま、無理もないか。このあたしがたかあきにベタベタするなんておかしいもんね」
ほんの少し間をおいて、由真はよいしょと身を起こし、
「そう。瑠璃ちゃんの言うとおり。
ホントはさ、お父さんやお母さん、それにおじいちゃんのことが気になって仕方なかった。でも、
みんなと離れるのがすっごくイヤで、それで、自分の気持ちを誤魔化そう誤魔化そうって……
たかあきに甘えるのがさ、一番誤魔化しやすかったんだよね。なんかこう、気持ち的に」
由真、お前……
「でも、もうダメだね。あ~あ、仕方がないか。こうなったら覚悟決めて―」
「う、ウチも!」
瑠璃ちゃんもガバッと身を起こす。
「ウチも、ウソつきや! 由真のこと偉そうに言えないんや!
ウチ、最初の頃はどうやってさんちゃんと仲直りしよって、そればっか考えてた。けど、ここで
貴明たちと一緒に暮らしてるうちに、いつの間にかそれ考えるのやめてた……
ううん、やめたんやない。考える必要なんてなかったんや。
ウチは今でもさんちゃんが好きや。けど」
瑠璃ちゃんは一呼吸置いて、
「由真も、このみも、郁乃も、えっと……みんなも好き。どっちかだけじゃなくて、どっちも。
きっと、これが答えなんやと思う。みんなみたいにイルファのことも、きっと……」
「そっかぁ……。なら、きっと姉妹ケンカも終わりだね」
76:河野家にようこそ 第86話(9/10)
07/01/08 20:49:29 B7FRmEPw0
由真は天井を見上げ、そして、
「お互い、そろそろ潮時、か……」
そう呟き、瑠璃ちゃんはコクリと肯いた。けど、
「で、でも……ウチ、不安やねん」
「不安? 何が?」
「う、ウチ……、ウチがこの家から出たら、由真たち、ウチのこと……」
「え……?」
瑠璃ちゃんの言葉の意味が分からず、ポカンとする由真。けどすぐに気付いて、
「大丈夫だよ瑠璃ちゃん。うん、あたしと瑠璃ちゃんはずっと友達だよ。
ううん、あたしだけじゃない。このみちゃんも郁乃ちゃんも、それに他のみんなだって、ずっと
瑠璃ちゃんの友達だよ。瑠璃ちゃんさえ迷惑じゃなければ、ね。
あ、あたしは例え瑠璃ちゃんが迷惑がってもしつこくつきまとうかも。何せ瑠璃ちゃんはあたしの
料理のお師匠様だもの。これからも色々と教わりたいし」
「由真……ひっく……」
その言葉を聞いた途端、瑠璃ちゃんが泣き出す。
「ああもう泣かないでよ瑠璃ちゃん」
そんな瑠璃ちゃんを、そっと抱き寄せる由真。
「……うん、でも、ちょっぴり寂しいね。この家を離れるのは」
由真の言葉にコクリと肯く瑠璃ちゃん。
「環さんや花梨、るーこ、優季と離れるのが寂しいのであって、決してどっかのバカが理由なんか
じゃないけど、ね」
再びコクリ。
「でも、学校に行けばまた会えるし、放課後だって休みの日だって会いたければ会えるし。
だから、きっと大丈夫だよ」
77:名無しさんだよもん
07/01/08 20:50:11 +H2TxP440
4円
78:河野家にようこそ 第86話(10/10)
07/01/08 20:50:53 B7FRmEPw0
コクリ。
「うん、そっかそっか、よしよし」
由真は瑠璃ちゃんの頭をくしゃくしゃとなで、そして、何かを堪えるように上を向く。
なんか……、覗いちゃいけなかったのかもな。
そう反省し、こっそり下へ降りようと―
「たかあき、どこ行くのよ?」
ドキッ!
「な、何故俺がいると!?」
ドアを開けて由真に尋ねると、由真はハァとため息をつきながら目元を手で拭いて、
「さっきからドアが開いてるの分かってたもの。全く、覗きなんてサイテー」
「……ぐずっ、た、貴明のヘンタイ~」
泣きながら俺を睨む瑠璃ちゃん。
「ご、ゴメン瑠璃ちゃん、由真」
「謝ればいいってもんじゃないわよ。たかあきのバーカ」
「バーカ」
由真の後に瑠璃ちゃんも続き、その後二人はクスクスと笑う。そして、
「たかあき」
とても穏やかな声で、由真は、
「あたしたち、自分の家に帰るね」
そう、俺に告げた。
つづく。
79:河野家にようこそ の作者
07/01/08 20:52:05 B7FRmEPw0
どうもです。第86話です。
>>77さん、支援ありがとうございました。m(_ _)m
新年明けましておめでとうございます。
残り少しではありますが、本年も河野家をよろしくお願いいたします。m(_ _)m
去年に引き続き、新春特別で1ページ増でお送りしました。
それでも予定より話が先に進まなかったりして(^^;
80:名無しさんだよもん
07/01/08 21:29:31 IZJ5nRbo0
>>79
乙&GJ
河野家が終わったら『小牧家へようこそ』でも・・・(ry
81:名無しさんだよもん
07/01/08 23:11:58 e4w4cC8L0
>>79
乙
いやいや、向坂家にウェルカムだろ
82:名無しさんだよもん
07/01/08 23:27:11 v7L70Dh90
>>79
お疲れ様
ここはドロドロな久寿川家へカモーンで
83:名無しさんだよもん
07/01/08 23:36:16 QLbQjKQM0
>>79
乙
『ミソラ家へ、るー』はどうだろう。
スペオペですよ。
84:名無しさんだよもん
07/01/10 07:53:21 sgqf4Uj8O
>>79
GJ!
完結したら雄二×イルファのも補完して欲しいなと思ってたり…
85:名無しさんだよもん
07/01/12 21:11:14 eQAyiASG0
雄二はイルファに捨てられor貴明に奪われ終了~
86:名無しさんだよもん
07/01/12 21:14:37 ZDyIRNT90
作者的に最初からくっつけるつもりだったっぽいしそういう意味ではあまり妙な展開は期待してないな
87:名無しさんだよもん
07/01/13 23:21:52 DvRzts2Z0
同人作者スレが落ちたね
もはや語ることもないし、仕方ないか
88:Toheart2 るーこSSSS(1/2)
07/01/14 01:31:27 +3shey7+0
るーこが逮捕された。『保護責任者遺棄致死』という長ったらしい容疑で、だ。
どうやらこないだ出てきたミイラ化した男性の遺体にるーこが深くかかわっているらしい。
るーこのやつ、最近学校に来ないと思っていたら人の頭をぽんぽんたたいて
(彼女曰く『シャクティパッド』というらしい)高額な報酬を得ていたようだ。
そんなこんなで最近はテレビでるーこを見ない日はない。テレ東ですら
連日るーこ逮捕の瞬間を流してたりするからことの重大さがわかる人にはわかるだろう。
「はなせ。るーは末期癌患者だぞ。丁重に扱え」
もはや誰もが知ってるこの発言はるーこが逮捕時にした物だ。他にも
「るーはトマト、えび、そば。これ以外には何も食べない。」
「るーはそら豆オンリーしか食べない。」 - 差し入れの「ハンバーグ弁当」を食べながら。
「るーは歯を磨かない、なぜなら口臭がしない。臭くない。」
「るーは風呂に入らない、なぜなら汚くならない。自浄作用がある。」
「るーは24時間、365日起きている。」
「るーは大熊座41番星から光よりはやい光に乗ってやってきた」
89:Toheart2 るーこSSSS(2/2)
07/01/14 01:33:10 +3shey7+0
等等の各種電波発言は「るー」とよばれ本人いわく宇宙に二億存在する「るー」の中のごく一部に過ぎないとのこと。
『女子高生がカルト!!』という題材もさることながらるーこの凛とした顔立ち、そしてその美貌に似合わぬ電波発言に
マスコミが喰らいついた形で報道は加熱の一途をたどりネット上ではファンクラブもできているらしい。
いや、今テレビでやってたんだけどね。
そういえばサイババに指名された「シャクティパット・グル」であると自称するるーこが記者会見で
「サイババはあなたを知らないと言っています」
と記者に追及された時の「それはサイババの勝手であろう?」という返答は
(殺人事件と疑われているなかで不謹慎ながら)記者から笑いが起こっていた。
裁判では『「るー」によるとミイラ化した男性は発見された時点では生きていた。
被害者はドイツ最高裁の判決文に生きていると記載されており、
これが今では「るー」』だと主張するらしい。
るーこ……何があったんだ?
すみません、初めての書き込みです。るーこショート・ショートSS(略してSSSS)、少しでも面白いと思ったら心に留め、
「あそこが悪いここが悪い」といった意見をお願いします。
もれなく作者鬱の特典がつきます。
っていうかこれが処女作って……(つД`)
90:名無しさんだよもん
07/01/14 04:54:17 jBoi1oft0
とりあえず、るーこでやる意味無いね。
せめて本編中のイベントと絡めて欲しかった。(エイプリルフールとか首チョンパとか)
このショート・ショートなら貴明視点である意味もないね。
内容は全部伝聞なんだし。
91:名無しさんだよもん
07/01/14 05:22:22 abKWvau00
原作に対する愛が感じられない…
92:名無しさんだよもん
07/01/14 07:06:34 ioQS0iTJ0
ID:+3shey7+0が悪い
としか
最初コピペ改変かと思った
93:名無しさんだよもん
07/01/14 18:36:55 0yJTPB0Q0
つーか何が何だか判らんぞ。
ミイラは貴明じゃなかったのか。
94:名無しさんだよもん
07/01/14 19:01:26 rXGw760rO
無理に短くする必要ないな
95:河野家にようこそ の作者
07/01/14 19:15:27 hQIEBnXT0
どうもです。只今、第87話を書いてる最中の河野家です。
明日の投稿ですが、都合によりいつもより遅れます。
多分、23時頃になると思います。
96:名無しさんだよもん
07/01/14 21:43:41 +3shey7+0
わーいいっぱい批判が来たぞおーしくしく。
今更言うと昔「ライフスペース」という宗教団体がありました。
そこの高橋グルの言ってた「定説」が結構「るー」っぽい所があり書き始めたものです。
まずはマイナーすぎるといってもいいネタを使った上に
短すぎて何がなんだかわからないと言うのはネタのみに走った自分の公開オ(以下自粛)でしたね。
>>91さん、手厳しい意見ありがとうございます。確かに「愛」を忘れていました。
>>92さん、ごめんなさい。クオリティ低すぎですね。
これに懲りてこれを元にした話は取りやめます。
次以降はネタに走らずまじめに愛を込めて書こうと思いますのでそのときはどうかよろしく。
97:名無しさんだよもん
07/01/14 22:19:44 nmdjEV2c0
話自体が面白ければ、まだ救いがあったが…
例えば、るーこが花梨にインチキ宗教の教祖に祭り上げられて
ドタバタ劇を繰り広げるとかさ
ネタに走るなら、徹底的にやってほしいのです
98:名無しさんだよもん
07/01/14 22:42:56 ly5pFT+L0
>97
よし、書くんだ
99:名無しさんだよもん
07/01/14 23:25:23 nmdjEV2c0
考えてみる
100:名無しさんだよもん
07/01/14 23:40:36 +3shey7+0
どうも、>>97さんの情け容赦の無い愛の言葉に何かに目覚めそうな駆け出しSS作家です。
とりあえず今からるーこへの愛の再確認、ブラインドタッチの練習、
そしてなにより文章力の鍛錬のためToheart2るーこルートを
共通部分からメモ帳に書き写してみようと思います。
と言うわけで百ゲトー?
101:名無しさんだよもん
07/01/15 22:00:10 smSxfrHI0
元ネタ知ってるがだから何?というような意味不明さだな
何がしたかったのかすらわからん
102:名無しさんだよもん
07/01/15 23:08:42 jYdiPH5j0
あれ?今日って月曜だよな?
103:河野家にようこそ 第87話(1/9)
07/01/15 23:09:58 7DB19YY90
由真の心の迷いは、瑠璃ちゃんにはお見通しだった。だけど、迷いがあるのは瑠璃ちゃんも一緒
だったらしい。そんな二人は口論の末、取っ組み合いのケンカを始めてしまった。
騒ぎを聞いて駆けつけるタマ姉たち。重要な部分を瑠璃ちゃんに蹴られて動けない俺の代わりに
二人を止めてくれるのかと思いきや、タマ姉は静観を決め込む。けどそれは正解だったようで、二人
が体力切れで倒れるまで大して時間はかからなかった。ここで仲直りなら花梨の言うとおり一昔前の
熱血スポ根漫画だったのだが、由真も瑠璃ちゃんも生憎そういうノリではない。身体が動かなければ
次はまた口ゲンカ。けどあまりにそれが低レベルで、呆れた俺たちは放っておくことにした。
少ししてから様子を見に行くと、互いに鬱憤を晴らしきったのか、二人は仲直り。そして、由真と
瑠璃ちゃんは自分の気持ちと正直に向き合う。それはつまり、二人の問題はもう解決の一歩前まで
達したということ。けれど瑠璃ちゃんは、この家を出ると由真たちと疎遠になってしまうかと心配
する。そんな瑠璃ちゃんを由真は優しく抱き寄せ、大丈夫だよと励ました。
覗いていたのが由真にばれた俺。由真は俺に、自分たちがこの家から出ることを告げた。
「そう。決心したのね、二人とも」
俺と一緒に居間に行き、由真と瑠璃ちゃんはタマ姉たちにも家に帰ることを告げる。
「由真ちゃんと瑠璃ちゃん、二人が帰っちゃうんだ。寂しいなぁ」
「そんなこと言っちゃダメですよ、花梨さん」
そう花梨をたしなめる優季も、寂しげな顔。
「それであなたたち、いつ帰るの?」
タマ姉に尋ねられ、だけど二人ともそこまでは決めていなかったようで、うーんと考え込む。
「荷物は大した量じゃないからいつでもいいんだけど……」
―ん? 一瞬由真がチラッとこっちを見たような?
「……やっぱ、今すぐ帰ります」
何故か苦笑いの由真。
104:河野家にようこそ 第87話(2/9)
07/01/15 23:10:31 7DB19YY90
「う、うん。ウチも」
瑠璃ちゃんも決心したようだ。
「ええっ、もう帰っちゃうのぉ!? そんな急がなくても、明日でもいいじゃない」
「引き留めるようなことを言うな、うーかり。これは二人の門出だぞ。笑って見送るべきだ」
今度はるーこにたしなめられる花梨。
「分かったわ。ならとりあえず、お家にはあらかじめ電話で知らせておきなさい」
タマ姉に言われ、二人はコクリと肯いた。
由真と瑠璃ちゃん、それぞれ自分の家に電話を掛け、帰ることを知らせる。
由真の場合、
「……あ、おじいちゃん? うん、あたし。
あのさおじいちゃん。あたし、そっちに帰ることにしたから。
……うん、あたしもゴメンね、おじいちゃん。変な意地張っちゃって。……うん、それは会って
から話すよ。
……え、迎えに? い、いいっておじいちゃん! 一人で帰れるから!」
などと断ろうとしたが断り切れなかったようで、結局じいさんが迎えに来ることになった。一方、
瑠璃ちゃんも、
「……あ、さんちゃん? うん、ウチ。
あ、あのなさんちゃん。う、ウチ、えっと……、そ、そっちに帰ることにした。
……うん、え? え、ええって! わざわざ迎えに来んでも……あ、あうぅ」
と、由真同様、珊瑚ちゃんとイルファさんが迎えに来ることになったようだ。
それからしばらくして、夕方。まず迎えに来たのは珊瑚ちゃんとイルファさん。それと、
「何でお前が一緒にいるんだよ?」
105:河野家にようこそ 第87話(3/9)
07/01/15 23:11:13 7DB19YY90
イルファさんのとなりには雄二。別に連絡したワケでもないのに、なにゆえ?
「決まってるだろ、瑠璃ちゃんの荷物を運ぶためだよ。こういうことは男手が必要だからな」
などと格好いい台詞を言いつつイルファさんの方をチラチラと。
何となく事情が掴めてきた。雄二のヤツ、夕飯を食わせてもらおうとまた珊瑚ちゃんの家に行って
たな。で、珊瑚ちゃんたちが瑠璃ちゃんを迎えに行くことになって、イルファさんへの点数稼ぎに
自分も手伝うと言ってついてきた、と。
「雄二様には、その、大丈夫ですからと……」
困り顔のイルファさん。けれど雄二は気にすることなく、瑠璃ちゃんの荷物が入ったバッグ二つを
よいしょと抱える。
「なあ、瑠璃ちゃん」
珊瑚ちゃんは瑠璃ちゃんを見つめ、
「どうして、帰る気になったん?」
すると、瑠璃ちゃんは珊瑚ちゃんから目を逸らさず、
「答え、分かったから」
「答え?」
「うん。―ウチな、ここのみんなのこと、好きや。好きに……なれたんや。
それが答えやと思う。ウチとさんちゃんと、それに、イルファ」
「え!? 瑠璃、様……」
不意に名を呼ばれ、驚くイルファさん。瑠璃ちゃんは穏やかな笑みでイルファさんに、
「イルファのことも、きっと好きになれる。今のウチなら、きっと―」
「瑠璃様!」
―驚いた。それがまず、最初に思ったこと。
いきなり瑠璃ちゃんに抱きついた、イルファさん。
「い、イルファ!?」
106:河野家にようこそ 第87話(4/9)
07/01/15 23:11:47 7DB19YY90
「る、瑠璃様……、瑠璃様……」
「ちょ、ちょお、イルファ恥ずかしいって! みんな見てるやんか!」
顔を真っ赤にする瑠璃ちゃんだが、イルファさんはイヤイヤと離れようとしない。
「あ~、いっちゃんに先越されたわ~」
悔しいな~、などと言うものの、ちっとも悔しそうに見えない珊瑚ちゃんの笑顔。
「瑠璃様、私、私、頑張ります! 頑張って、頑張って、瑠璃様に―」
「あうぅ~、が、頑張らんでええから。そのまんまでええから、そのまんまで、な」
「は、はい、私、そのままで頑張ります!」
「あ、あうぅ~」
ははは、打つ手なしって感じだな。けどなんか、見ているこっちまで嬉しい。
「な、なぁ、貴明」
「ん、どうした雄二?」
見ると、雄二は不安げに、
「もしかして、俺の最大のライバルって……」
雄二の視線の先には、抱きついたまま離れないイルファさんと、お手上げ状態の瑠璃ちゃん。
……案外、そうかもな。
「ま、頑張れ、雄二」
肩をポンと叩く。今の俺にはそのくらいしか出来ないのさ。
「ほな、ウチら帰るな」
玄関の前。みんなで瑠璃ちゃんたちを見送る。
「瑠璃ちゃん」
「貴明、なに?」
ありったけの気持ちを込めて、俺は、
107:河野家にようこそ 第87話(5/9)
07/01/15 23:12:24 7DB19YY90
「おめでとう」
「う、うん」
その言葉に瑠璃ちゃんは少し顔を赤くして、コクリと肯く。
「あ、あのな貴明」
「ん、なに、瑠璃ちゃん?」
「その……、お粥また作るって約束……」
「ん? ―あ、ああ、あれ。
いやいや、そんなの全然気にしなくていいって」
空笑いで手を振る俺。すると瑠璃ちゃん、ずいっと近づき、真っ赤な顔で、
「か、風邪ひいたらウチに電話しいや! ちゃんとお粥作りに来たるから!」
る、瑠璃ちゃん……
込み上げる嬉しさ。そして、ちょっぴりの寂しさ―胸が痛い。でも、
「うん」
「瑠璃ちゃん、もうカンペキに貴明のことすきすきすき~なんやね☆」
「ちゃ、ちゃうもん! そんなんちゃうもん!
さ、さっさと帰るでさんちゃん! ほなみんな、また学校でな!」
慌ただしくそう言い残し、瑠璃ちゃんは珊瑚ちゃんの手を引き、飛び出していった。
―うん、大丈夫。俺はそう確信した。
それから程なく、由真のじいさんもやってきた。
すると由真、じいさんを居間に招き入れ、ソファーに座らせた。そして、
「おじいちゃん、どうぞ」
自分で淹れたお茶をじいさんに勧める。
「う、うむ」
108:河野家にようこそ 第87話(6/9)
07/01/15 23:13:02 7DB19YY90
面食らいつつも、茶碗を手に取るじいさん。そして、一口。
「―ほう」
「どう、おじいちゃん?」
少し不安げにそう尋ねる由真。すると、
「まだまだじゃな」
「え、ウソ? ちゃんと淹れたんだけどなぁ」
その評価にやや不満そうな由真。
「茶の湯が熱すぎる。それに、味が薄い。
沸騰した湯を急須に入れ、すぐに茶碗に注いだな。これではせっかくの茶葉が台無しじゃ」
おお、さすがじいさん。執事だけあってお茶にはうるさいな。
「お茶の淹れ方はちゃんと教えていなかったわね。
申し訳ありません長瀬さん。私の監督不行届です」
そう言ってタマ姉が頭を下げる。
「ああいやいや、向坂さんが頭を下げることではありません。単に孫が不勉強なだけですじゃ」
「あ、その言い方ひどーい。
あたし、これでも色々と勉強したんだよ。料理とか洗濯とか掃除とか」
「ほっ、どの程度のものやら」
馬鹿にしたような笑みのじいさん。すると由真、
「むむむ……なら、証明してやるわよ! ちょっと待ってなさい!」
と、息巻いてキッチンへ。何か料理を作るつもりらしい。
「な、なんかおかしな展開になってきたな。
俺、てっきり由真とじいさん、すんなり仲良く家に帰るって思ってたんだけど」
「お茶がいけなかったんでしょう。多分由真、自分の成長を見てもらいたくてお茶を淹れたんだろう
けど、相手が執事じゃ、ねえ」
109:河野家にようこそ 第87話(7/9)
07/01/15 23:13:43 7DB19YY90
苦笑いのタマ姉。
「ヤヲイさんにフェルミのパラドックスについて語るようなもんだよね」
全く意味不明な花梨のたとえ話。
「優季のお茶なら満足してもらえるでしょうけど、ね」
「え!? わ、私、そんな、執事さんにお茶だなんてとても!」
慌てまくりの優季。
「茶なら、るーも得意だぞ」
胸を張るるーこ、だが……
以前見た、るーこのパフォーマンス的なお茶淹れ。執事さん相手にあれは、どうよ?
「はい、お待たせ!」
それから約10分後。由真がじいさんに差し出したのは―卵焼きだった。
「ほほう。では」
箸を取り、一口。―じいさんは目を閉じ、モグモグと咀嚼し、飲み込んだ。
「ど、どう、おじいちゃん?」
おずおずと尋ねる由真。だがじいさんは何も答えず、二切れ目の卵焼きを取り、食べる。
そのまま何も言わず、次々と卵焼きを口に運ぶじいさん。そして全て食べ終え、箸を置き、心配
そうな由真の顔を見て、
「由真」
「な、なに?」
「わしはな、塩味の方が、好みじゃぞ」
……全部食っておいて、それかよ。思わず笑いそうになる。
「な、な、なによ! と、年寄りは塩分控えなきゃダメじゃない!」
「糖分の摂りすぎも、な」
110:河野家にようこそ 第87話(8/9)
07/01/15 23:14:22 7DB19YY90
「な、なら、全部食べてんじゃないわよ!」
「ふむ」
するとじいさん、顔を横に向け、あごひげをいじりながら、
「いや、なかなかじゃったから、つい、の」
「え……」
呆然とする由真。でも、
「―うん!」
最高の笑顔。―よかったな、由真。
家に帰る由真とじいさんを、玄関まで見送る。
「じゃあみんな、今までありがとう」
「うん、元気でね、由真ちゃん」
花梨の目がウルウル。
「いやだな花梨。明日学校で会えるじゃない」
「う、うん。そうだね」
「向坂さん、それに皆さん。今まで孫の面倒を見てくださって、本当に、有り難うございました」
改まって頭を下げるじいさん。つられて俺たちも「いえいえ」などと言いつつ頭を下げる。
「環さん、これからも色々教わってもいいですか?」
「ええ」
「るーこ、勝負はまだついちゃいないからね」
「無論だぞうーゆま。るーはいつでも勝負に応じるぞ。家に帰ったからと言って怠けるな」
るーこの言葉に不敵な笑顔で肯く由真。
「花梨、あんたもさ、料理とか頑張んなよ」
「うん」
111:河野家にようこそ 第87話(9/9)
07/01/15 23:14:59 7DB19YY90
「それから―優季。えっと……、今のうちに謝っておく。ゴメン」
「え?」
「たかあき」
「ん?」
「あたしがいなくなって、寂しくなるだろうけど、我慢しなさいよね。
環さんや優季たちに甘えるくらいなら許してあげるから。それからさ」
何か言い返そうとする前に由真は俺に近づき、耳元に、
「もう分かってると思うけど、あたしがあの時貴明に告白したの、あれはナシにして」
「ああ、分かってるよ」
「その代わり―」
ちゅっ。
頬への、軽いキス。
「これ、お詫び」
そう言ってすぐ離れる由真。
「な!? ちょ、由真さん!?」
優季が驚きの声を上げる。って言うか俺もビックリだよ!?
「あははっ、だからさっき謝ったじゃない、ゴメンって。
じゃ、たかあき、みんな、また明日、学校でね!!」
愕然とするじいさんの手を引き、由真は振り向かず、家を飛び出していった。
俺は―胸がドキドキして、何も言えなかった。
つづく。
112:河野家にようこそ の作者
07/01/15 23:15:41 7DB19YY90
どうもです。第87話です。
今回、投稿の時間がいつもより遅れてしまいましたが、もしかしたら今後も時間が遅れる、
あるいは次の日に投稿、なんてことになるかもしれません。
その時はゴメンなさい。m(_ _)m
113:名無しさんだよもん
07/01/15 23:57:21 /FevqWb40
>>112
乙
114:名無しさんだよもん
07/01/15 23:58:11 AYbF3Qgb0
>>112
乙です。
115:名無しさんだよもん
07/01/16 01:13:47 szz+4TOw0
>>112
乙でした
個人的には良い占め方でホッとしました♪
116:名無しさんだよもん
07/01/16 18:49:22 Gyl81lzW0
>>112乙
草壁さん…先越されてばっかだな。一番に本格的なアタックをかましてきたはずだったのに
117:名無しさんだよもん
07/01/16 22:00:55 9UqTP+FjO
>>112
乙
他の人はどうするんかな
そういやるーこって何で貴明の家に来たんだっけ?
118:名無しさんだよもん
07/01/16 22:30:33 G+KvMFiF0
>>117
住処だった公園が閉鎖され、行き場がなくなったから。
119:名無しさんだよもん
07/01/16 22:31:43 T17AU6bQ0
>>117
るーこが根城にしてた公園が工事中のため。
由真と瑠璃が帰ったいま、よんどころない理由で
河野家にいるのはるーこだけなんだよな。
120:名無しさんだよもん
07/01/17 02:07:42 vr/BhSdx0
ここで作者の人が「…そうでしたっけ?」
121:お風呂の中で温めて 1/10
07/01/18 20:45:14 lcizrTqr0
「だぁぁぁぁーっ!!」
季節外れのにわか雨に、俺は慌ててマンションに駆け込む。
学校を出た時には晴れていたのに、ちょっと曇ってきたかなと思っていると、駅前に出
る頃にはバケツをひっくり返したような雨になっていた。
もちろん傘なんて持っていなかったし、お陰で靴も制服もびしょ濡れだ。こんなことな
らコンビニにでも寄って、傘を買えばよかった。
けれど後悔は先に立たず、エレベーターに乗っている間もぽたぽたと床に水が滴り落ち
ていくのを我慢する羽目になっている。
体なんかもう冷え切ってしまって、空調のきいているマンションの中に居るはずなのに
震えが停まらない。腕を組んで、足踏みをしながら何とか体を温めようとしていると、よ
うやくエレベーターが珊瑚ちゃんの部屋のある階に着いてくれた。
扉の鍵を開けようとするんだけど、手が震えてなかなか開いてくれない。ロックが外れ
る音がした時には、本気で救われたような気持ちになった。
「た、ただいま!!」
122:お風呂の中で温めて 2/10
07/01/18 20:46:18 lcizrTqr0
挨拶もそこそこに、家の中に入る。まずはこの濡れた服を着替えようと部屋に入ろうと
して、自分がずぶ濡れで、今だって廊下に水溜りを作りながら歩いていることを思い出し
た。
「ま、まずい」
慌てて洗面所に向かうと、とりあえず上着もズボンも脱いで下着だけになる。下着も完
全に濡れてしまっているけど、服のまま家の中を歩き回るよりはマシだろう。ちょっと恥
ずかしい気もするけど、家の中、今誰もいないみたいだし・・・・・・そういえば、イル
ファさんどうしたんだろう。いつもなら、玄関まで出迎えにきてくれるのに。
どこかに買い物にでも行ったのかな? この雨に濡れてなきゃいいんだけど。
「へっくしゅん!」
123:お風呂の中で温めて 3/10
07/01/18 20:47:36 lcizrTqr0
ううぅっ、さむっ。このままじゃ風邪をひいちゃいそうだ。
部屋にもどると、急いで服を着替える。下着も乾いた物に取り替えると、ようやく一息
つけた気がする。リビングも暖房のお陰で、大分暖かくなっていて。
あれ、俺、いつの間にエアコン付けていたっけ?
けれど服を着替えて落ち着くことが出来たのも、ほんの一瞬のことで。一度冷え切って
しまった体はなかなか温まってくれない。温風の前に立っていても、歯の根がかみ合わな
い。
牛乳でも温めて飲もうか、それともベッドの中に入ってしまおうか。問題は、どちらも
今すぐに体が温まるわけじゃないんだよなぁ。
「あ、そうだ。お風呂」
なんで思いつかなかったのか。シャワーを浴びよう。お湯をうんと熱くして。
そうと決まれば善は急げだ。
一緒にお風呂も沸かしておいてあげよう。イルファさんや珊瑚ちゃんが帰ってきたら、
すぐに入れるように。
雨はまだ降り止まないようで、脱衣所にいても激しい雨音が聞こえてくる。後で、迎え
に行ってあげた方が良いかもしれない。多分、イルファさんは商店街だろうし、二人も今頃、研究所からバスに乗って帰ってきている途中だろう。
ただその前に、自分のことを何とかしなきゃ。このままじゃ3人を迎えに行くどころか、
俺が風邪で倒れてしまう。
124:お風呂の中で温めて 4/10
07/01/18 20:48:36 lcizrTqr0
でも、本当にすごい雨だな。雨音なんて、まるで隣の部屋に雨が降ってるみたいだ。
「え・・・・・・?」
「あ・・・・・・ひゃ─ぁぁぁぁ」
お風呂場の扉を開けると、なぜかイルファさんがシャワーを浴びていた。なんで? ど
うして?
とりあえず
「ご、ごめん」
慌てて扉を閉める。
そうすると、とりあえずシャワーの音だけは小さくなって。ああ、雨音だと思っていた
の、シャワーの音だったんだ。イルファさんの。
イルファさん、驚いた顔してたなぁ。ばっちり、目が合っちゃったし。
何も、服来てなかったし。当然だけど。
前にもこんなこと、あったよなぁ。
125:お風呂の中で温めて 5/10
07/01/18 20:50:13 lcizrTqr0
「あの・・・・・・」
「あ、その、イルファさん、ごめん。イルファさんが先に入ってたの、気が付かなくて」
お風呂場の扉の陰から、イルファさんの顔が覗いている。曇りガラスの向こうにイル
ファさんのシルエットが浮かんでいて、いけないとはわかっているのに、どうしても今
さっきうっかり見てしまったイルファさんの裸を思い浮かべてしまう。
シルエットだけ、っていうのが、かえってこう想像を掻き立ててしまうと言うか。
「いえ、それは構わない、訳ではないですけれど。貴明さんになら。で、でも見て良いと
は言ってませんからね。次からはちゃんと、確認してください」
「うん、ごめん。気をつけるよ」
ほんと、気をつけないとなぁ。
「ところで。貴明さん、お風呂、入りに来たのではないんですか?」
「あ、うん。そのつもりだったけど、イルファさんが入ってるのなら後にするよ」
126:名無しさんだよもん
07/01/18 20:53:32 FVjOioll0
支援?
127:お風呂の中で温めて 6/10
07/01/18 20:56:54 lcizrTqr0
そう言ったとたん、大きなくしゃみが出た。
そう言えば、シャワーを浴びるのに裸になってるし、今だって無意識のうちに足を動
かしてしまっている。
「もう。それでは風邪を引いてしまいますよ。さぁ、どうぞ入ってください」
イルファさんがお風呂場の扉を引いてくれる。
確かにこのままリビングに戻っても、寒いままだし。申し訳ないような気もするし、
ちょっと恥ずかしいんだけど、ここは素直に行為に甘えさせてもらおう。
お風呂場の中に入ると、もう既に湯船にはお湯が張られていた。
「ひどい雨でしたし、貴明さんたちがお帰りになられたら入られると思いまして」
そう言うと、イルファさんは腕をお湯の中に入れて温度を測っている。
いつもだったらその背中だとか、あといろいろ。後姿を目で追ってしまっていたかも
しれないけれど、今日はそれどころじゃない。湯気の立つ湯船の中に、早く飛び込んで
しまいたくて。
「ちょうど良いみたいですね」
128:お風呂の中で温めて 7/10
07/01/18 20:57:48 lcizrTqr0
洗面器にお湯を汲んで体に掛けると、体が冷えている分、まるで焼けどでもしてしま
いそうなくらい熱かった。
ただ、湯船の中に浸かっても、体の表面はそれこそ痛いくらい熱いのに、なかなか体
の中の方まで温まってくれない。ちょっと、体が冷えすぎたみたいだ。
「お湯の温度、もう少し上げた方がよろしいでしょうか?」
「いや、これくらいでちょうど良いよ。もう少し入ってたら、温まると思うし」
お陰でイルファさんにまで心配されてしまって。本当に、傘くらい買えばよかったな。
と、イルファさんも湯船の中に入ってくる。
上がった水面に、俺はちょっとだけ体を引いた。
イルファさんと一緒にお風呂に入ることなんて、別に今回が初めてって訳じゃないけ
ど。でもいつもだったら珊瑚ちゃんたちも一緒にいたし。それに、あらためて、恥ずか
しそうに前を隠してお風呂に入ろうとするイルファさんなんかを見てしまうと、どうに
も今、自分が照れくさいことをしているんだって言う気分になってしまう。
「イルファさん、どうかした?」
129:名無しさんだよもん
07/01/18 20:59:10 OxKMCbNs0
紫煙
130:お風呂の中で温めて 8/10
07/01/18 21:00:08 lcizrTqr0
しかも、イルファさんは俺のすぐ隣に座って。それどころか、水面に立った波はだん
だんと俺の方に近づいてきて。
「もう、こんなに体を冷やしてしまって。風邪を引かれたらどうするんです」
お湯の中にいても、肌に触れるイルファさんの体温が気持ちいい。
「貴明さんが風邪を引いてしまったら、私だけではなく、瑠璃様も、珊瑚様も。とても
心配するんですから」
「えっと、うん、ゴメン。次からはちゃんと傘、買うことにするよ」
怒ったように言われてしまって。どうもイルファさんを心配させてしまったみたいだ。
よっぽど、俺は寒そうにしているらしい。
それでもようやく、お風呂に入って、それにイルファさんから伝わってくる温もりの
お陰だろう。体の震えも収まってくれた。
「貴明さん。お願いが、あるのですけれど」
「何?」
131:お風呂の中で温めて 9/10
07/01/18 21:01:06 lcizrTqr0
「あの、実は私も、この雨に当たってしまっていて。それだけなら良かったのですが、
帰る途中に、トラックに水をかけられてしまって。それでさっきも、シャワーを浴びて
いて」
そうして、ちょっと恥ずかしそうに俺のことを見て。
「私のことも、温めていただけますか?」
俺がイルファさんの肩に腕を回すと、イルファさんも、俺の胸の方に体を寄せてくれ
た。
『ただいまー。あ、瑠璃ちゃん、貴明もいっちゃんももう帰っとるよ』
『さんちゃん、そんなことよりも早く服着替えな。風邪引いてまうよ』
132:お風呂の中で温めて 10/10
07/01/18 21:02:21 lcizrTqr0
玄関のドアが開いて、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんの賑やかな声が聞こえてきた。お風呂
に入ってるだけなお陰で、二人の声がここまで聞こえてくる。
この様子だと、二人もにわか雨に濡れてしまったようだ。
俺はイルファさんと顔を見合わせると。イルファさんも、同じことを考えたらしい。
二人で声をひそめて笑いあうと、お互いの体から離れる。もう、十分暖めてもらった
から。
イルファさんは湯船から上がると、お風呂場の扉を開けて。
「瑠璃様、珊瑚様。お風呂が沸いていますよ。一緒に、温まりませんか?」
終
133:お風呂の中で温めて あとがき
07/01/18 21:05:40 lcizrTqr0
支援ありがとうございました。
また風呂ネタで、よほど僕はイルファさんとお風呂に入りたいらしい。
134:名無しさんだよもん
07/01/18 22:29:35 FVjOioll0
>>133
乙乙
お風呂の中で暖めあうって何をする気だったんだ(*゚∀゚)=3
135:名無しさんだよもん
07/01/19 00:37:31 yzGqtxx20
>>133
乙
俺も温まった
136:名無しさんだよもん
07/01/19 13:55:52 l8QlgVcC0
>>133
乙
このあと四人であったまるワケか
……個人的な意見なんだが、「・」を幾つも並べるんじゃなくて、「…」使ってくれた方が読みやすいかも
中黒だとそこだけ太字にしたみたいに見える
勿論スルーしてくれておkだが
137:河野家にようこそ 第88話(1/9)
07/01/22 20:47:11 Yf/CvhT30
自分の家に帰ることを決めた由真と瑠璃ちゃん。それぞれ家に電話をし、由真はじいさんが、瑠璃
ちゃんは珊瑚ちゃんとイルファさんが迎えに来ることになった。
先に来たのは珊瑚ちゃんたち。瑠璃ちゃんは珊瑚ちゃんに、自分は河野家メンバーズのみんなが
好きなこと。そしてそれが答えなんだと告げる。珊瑚ちゃん以外を好きになれた瑠璃ちゃんなら、
イルファさんとだってきっとうまくいく。ここに、姫百合姉妹のケンカは無事終結した。
帰り際、瑠璃ちゃんは俺に、また風邪を引いたらお粥を作りに来ると約束してくれた。―俺には、
その気持ちだけでも充分嬉しくて、だから、ほんの少しの寂しさは押し殺した。
続いて由真を迎えに来たじいさん。そのじいさんにお茶を勧める由真。だが相手は執事。じいさん
から容赦ないお茶のダメ出しを食らい、ならばと由真は、卵焼きを作ってみせる。それを食べたじい
さん、塩味の方が好みだとか言いながらもキッチリ残さず食べ、由真は大喜びだった。
玄関前で由真を見送る俺たち。タマ姉たちと別れの言葉を交わし、けど何故か優季にはいきなり
ゴメンと謝る由真。すると由真、俺に告白したことはナシにしてくれと言い、それに同意した途端、
俺の頬にキスしやがった! あ、あいつ、何て置きみやげを……
由真と瑠璃ちゃんがいなくなったことで、部屋割りを変えることとなった。
今まで由真と一緒に俺の部屋を使っていた優季が、瑠璃ちゃんの代わりにタマ姉との相部屋になり、
結果、俺はやっと自分の部屋を取り戻せたのだ。
「ああ……またベッドで寝られる……」
「なんだか凄く嬉しそうね」
感慨に耽る俺にタマ姉が苦笑する。
「やっぱさぁ、この間の風邪のときに思ったんだけど、人間寝るときはベッドか布団だよ。
ソファーも慣れると寝られないこともないけど、寝心地が違うんだよね、うん」
その寝心地を確かめようと、俺はベッドへと―
「まだダメよ」
138:河野家にようこそ 第88話(2/9)
07/01/22 20:47:46 Yf/CvhT30
タマ姉に首根っこを掴まれた。なにゆえですか?
「シーツと枕カバーを取り替えるから、その後でね」
「いや、別にそのままでも」
「それはダメ。私が由真に怒られるわ」
何故そこで由真の名が? ―ああ、由真が今までこのベッド使ってたってことか。
そして、真夜中。俺は今、自分の部屋のベッドに横になっている。
けれど、なかなか寝付けない俺。自分の部屋なのに、妙に落ち着かない感じがするのだ。
由真と優季が長らく使っていたせいだろうか。この部屋、妙に女の子っぽい匂いが……
特にベッド。シーツとかは新しいのに変えてもらったけど、それでも何となく由真の匂いが……
って、俺、なんかヘンタイっぽいな。いかんいかん。
そう言えば由真と瑠璃ちゃん、今頃どうしているかなぁ。瑠璃ちゃんは珊瑚ちゃんと一緒に寝る
だろうからいいとして、由真、自分の部屋に独りぼっちで、寂しくて泣いてたりしてな。で、あまり
に寂しくて思わず、お父さんとお母さんの部屋に一緒に寝ようって行ってたりして。ププッ。
などと色々考えているうち、いつの間にか寝付いていた俺だった。
翌日。月曜日の朝。校門の前で―
「おっはよ~!」
「どわっ!?」
ザザーッ!
目の前にいきなり、MTBに乗った由真が急ターンで止まる。
「あ、危ないだろうが!」
「大丈夫よ、ちゃんと計算通りだから」
それはつまり、俺を脅かすのも計算の内ってことか。
139:河野家にようこそ 第88話(3/9)
07/01/22 20:48:27 Yf/CvhT30
「おはよう由真」
「あ、おはようございます環さん! みんなもおはよう!」
朝っぱらからやけにハイテンションだな、由真。
「うわ~っ! 由真ちゃんその自転車格好いいね!」
「MTBって呼んでよ。どう、花梨も乗ってみる?」
「うん!」
意気揚々と由真と交代し、MTBにまたがる花梨。
「わ、わ、何コレ、ふにゃふにゃするよ!?」
「前後サス付きだからね~」
「わ、何か面白いかも! よ~し」
すると花梨、いきなりペダルをこぎ出し、
「笹森花梨、いっきまーす!」
「ってドコ行くのよ花梨~!?」
何故か校庭に向かって走り出す花梨と、慌てて追いかける由真。
「とりあえず元気そうね、由真」
タマ姉が微笑む。
「ああ」
じいさんと仲直りしたし、あの様子だと両親にもキチンと謝って許してもらえたのだろう。
「ま、よかったよかったってトコだな」
「……あまりよくありません」
不機嫌そうにこっちを見る優季。あの不意打ちキスのせいで昨日からこっち、優季はずっと不機嫌
だったりする。―正直、困ってます。
「おはようございます」
「おはよ」
140:河野家にようこそ 第88話(4/9)
07/01/22 20:49:31 Yf/CvhT30
「おはよーさん」
「おはよう」
「はよーっす」
愛佳、郁乃と、珊瑚ちゃんに瑠璃ちゃん、それと雄二。
「おはよう瑠璃ちゃん。久しぶりの我が家はどうだった?」
俺がそう尋ねると、
「……」
瑠璃ちゃんは何故かむくれ顔で俺を睨む。……え、俺、ヘンなこと聞いちゃった?
「瑠璃ちゃん、ヤキモチ妬いてるねん」
「な!? 何言い出すのさんちゃん!!」
姉の爆弾発言に驚く妹。や、ヤキモチ?
「ヤキモチって、どうかしたの、瑠璃ちゃん?」
「あ、あうぅ……」
このみの質問に、真っ赤な顔で頭を抱える瑠璃ちゃん。
「ヤキモチ、ねぇ」
郁乃、何故ニヤニヤ笑いながら俺を見る?
「ちゃ、ちゃうもん! 貴明関係ないもーん!」
瑠璃ちゃんの大声にみんなが振り返り、たちまち俺たちは注目の的。……いや、もう慣れたけどさ。
「あんな、昨日、花梨から電話あったんや」
「電話?」
と、見るも花梨は未だ校庭をMTBで暴走中。―おいおい、由真のヤツ、止めるどころか後ろに
乗っかって、何やら花梨を煽ってるぞ。
「由真と貴明がちゅーしたって。それ聞いて瑠璃ちゃんカンカンに怒ってるんや~☆」
「お、お、怒ってなんかないもーんっ!!」
141:河野家にようこそ 第88話(5/9)
07/01/22 20:50:20 Yf/CvhT30
げ、花梨のヤツそんなこと密告しやがったのか!? って言うか微妙に間違ってるぞ、由真と俺
じゃなくて由真が俺の頬に―
「あ、あの、あたしの家にも連絡ありました、それ……」
ま、愛佳の家にも!? って言うか何故それを連絡しまくるのかなあのミステリさんは!?
「あ、いや、その……な。ま、愛佳も珊瑚ちゃんも誤解しないでほしいんだけど、ちゅーをしてきた
のは由真の方で―」
「うわ、格好悪。言い訳してるし」
郁乃の視線がマジで冷たい。
「―ねぇ、タカくん」
「ん?」
背後からこのみの声、それに振り返るより早く、
ぎゅ~っ!
「ぐえぇ!? ぐ、ぐるじい……」
俺の首にしがみつき、このみは、
「わたし、そんな話、聞いてないよ」
な、何か声が怖いんですけど!?
「そう言えば花梨さん、このみちゃんには連絡してなかったですよね」
「多分、今朝伝えるつもりだったのを忘れてしまったんじゃないかしら。昨日、その方がサプライズ
性が高くて面白いとか言ってた気がするわ」
ちゅ、中途半端に忘れやがって、花梨のヤツ……!
キーンコーンカーンコーン。
「あ、予鈴」
142:河野家にようこそ 第88話(6/9)
07/01/22 20:51:03 Yf/CvhT30
その音でパッと手を放すこのみ。
「タカくん、さっきの話、後でちゃんと聞かせてね。
さ、行こ、郁乃ちゃん、瑠璃ちゃん、珊瑚ちゃん」
郁乃の車椅子を愛佳の代わりに押し、先に歩いていくこのみ。あ、後で、ね……
「たかあきくん、あたしたちも」
愛佳に急かされたので俺たちも校舎に―って、
「……」
一人、その場に立ちつくするーこ。空を―いや、校舎の一角を見上げている。
「るーこ、どうした?」
だけど、るーこは何も答えない。じっと、同じ所を見たままだ。
気になったので俺もるーこの見ている方向を目で追う。……ええと、よく分からないなぁ。一体
るーこは何を見て―
キーンコーンカーンコー……ザザッ。
ん、予鈴にノイズが混じったぞ。スピーカーの故障か? まぁそんな大して気にすることじゃ―
「―来た」
るーこの、呟き。
思わず振り返る。そして、
「るーこ、どうした?」
もう一度、同じことを尋ねる。すると今度は、
「―何でもないぞ、うー」
そう答えるが、るーこの表情からは何かに驚いてるような感じを受ける。
「本当に何でもないのか? さっきお前、確か『来た』って―」
143:河野家にようこそ 第88話(7/9)
07/01/22 20:51:50 Yf/CvhT30
「本当に何でもないぞ。
それより急げ、うー。このままだと授業に遅れるぞ」
俺から目をそらし、るーこは駆けだした。
ちなみに、校庭を暴走していた花梨と由真だが、その後駆けつけた先生たちに捕まり、散々お説教
された挙げ句、罰として一週間、学校中の草むしりを命じられたそうな。
その夜。
しつこいけどソファーなんかより寝心地満点なベッドでウトウトしかけた時、
「起きろ、うー」
「……ん?」
いつの間にか、俺の部屋にるーこがいた。
「話し相手になれ、うー」
俺の目の前にぺたんと座るるーこ。
「ん~、話なら明日でもいいだろ。もう寝かせてくれよ」
「ダメだ。今、話し相手になれ」
なんだ? るーこのヤツ、いやに強情だな。
……ま、少しの時間なら、いいか。
「分かったよ。けど、長話は勘弁だからな」
ベッドから身を起こすと、るーこは何故かまた立ち上がり、
すとん。
俺の横に腰掛けた。―やけに距離が近いんですけど。肩密着してるし。
「で、何を話そうか?」
俺がそう尋ねると、るーこは、
144:河野家にようこそ 第88話(8/9)
07/01/22 20:52:40 Yf/CvhT30
「うーは今、寂しいか?」
「寂しい?」
「そうだ。うーゆまとうーるりがこの家からいなくなって、寂しいか?」
寂しい、かぁ。うーん……
「まぁ、なぁ」
頭をポリポリかきながら、俺は、
「朝はそんなでもなかったけど、夕飯のとき、いつもより人数が少ないのはちょっと静かだなって
思ったかな。今日はこのみも来なかったし。でも」
夕食の光景を思い出し、俺は、
「その分花梨が賑やかだったし、うちにはまだるーこたちもいるからなぁ」
特に花梨はいつも異常にうるさかったな。自分たちが草むしりしてるのに先に帰るなんて薄情だ
とか何とか。自業自得でしょうが。
「それに、由真も瑠璃ちゃんも、学校で会えるしな。あまり寂しいって気がしないんだよ」
「そうか」
るーこは足下を見ながら、
「るーは、……寂しいぞ」
「るーこ?」
その声は、本当に、寂しげで。
……思えば、故郷の家族と会うことすら出来ないるーこにとって、我が家で一緒に暮らしてきた
由真や瑠璃ちゃんは、るーこにとって家族の代わり、いや、家族そのものだったのかもしれない。
その家族が家から去っていったのだ。どれほど喜ばしいことであろうとも、それはるーこにとっては
寂しい以外の何者でもない、と言うこと、か……。
るーこを何とか励ましてやりたい。……意を決し俺は、るーこの肩に手を置いて、
「うー?」
145:河野家にようこそ 第88話(9/9)
07/01/22 20:53:20 Yf/CvhT30
驚き、こっちを見るるーこ。顔が熱くなるのを自覚しつつ、俺は、
「あ、あのなるーこ、その、上手く言えないんだけどさ、この家にはまだ花梨だって、優季だって、
タマ姉だって」
肩に置いた手に少しだけ力を入れ、
「俺だって、いるんだから、な」
「うー……」
じっと、俺を見つめるるーこ。―な、なんか凄い心臓がドキドキしてる。
「うー、それなら」
るーこは、
「もし、るーがこの家を離れたら、うーは寂しいか?」
―え?
「る、るーこ、それってもしかして」
朝のことと関係あるのか? そう言いかけ、けれど、不安で言葉に詰まる。まさか、るーこ……
「―冗談だ」
「は?」
「うーをからかっただけだ。気にするな」
「じょ、冗談? な、なぁるーこ、それって本当に冗談なのか?」
するとるーこはすっくと立ち上がり、そのままてくてくとドアの方へ、そしてくるりと振り返ると、
「大丈夫だ、うーは寂しがりやだな。心配するな」
優しい笑みを浮かべた。
つづく。
146:河野家にようこそ の作者
07/01/22 20:53:57 Yf/CvhT30
どうもです。第88話です。
るーこの番です。
多分、るーこ編は次回で終わると思います。
147:名無しさんだよもん
07/01/22 21:39:03 W5bzAH500
乙です><
148:名無しさんだよもん
07/01/22 21:52:05 dIsUHi3V0
Zです><
149:名無しさんだよもん
07/01/23 00:32:46 epX+bP4d0
2です><
じゃない。 久しぶりに、河野家喜多ーーー!!!
しばらく忙しくて読めなかった間に、シリアスにまとめに入ってますね^^;
しかも、この流れだと、るーこは、、、
なんか、来週はお涙頂戴の展開になりそうな悪寒。
せめて、公園の改修工事が終わるぐらいで済めばいいのですが。
150:名無しさんだよもん
07/01/23 02:26:37 C+azj+S2O
Ζです。
るーこが出ていくと、るーこの調査目的?で住み着いた黄色の人も出ていきそう。
151:名無しさんだよもん
07/01/23 15:27:48 yGNs/erVO
閉鎖されたら河野家の続きが…
葉鍵は大丈夫なんだっけ?
152:名無しさんだよもん
07/01/23 16:58:18 jj/9gHNx0
>>150
というか他の方の理由を思い出してみよう。
もう雪崩れ式に・・
153:名無しさんだよもん
07/01/23 18:08:36 epX+bP4d0
第88話の時点で残っているキャラだと、古い順に
・タマ姉…元々は由真への対抗のため、転じて保護者役
・るーこ…寝泊りしていた公園が改修工事(?)
・花梨…るーこの監視役
・優季…貴明が好きなので
でしたっけ? うろ覚えですけど。
るーこ&花梨が河野家を出れば、実質的に優季も
河野家に残る理由がなくなりますね。
タマ姉は最後の一人と一緒に河野家を出るはずだし。
ということは、最後の勝者は、一番近くに住んでるこのみか。
154:名無しさんだよもん
07/01/24 01:08:53 zk83vB660
いや、そこで伏兵よっち&ちゃるの出番ですよ?
155:名無しさんだよもん
07/01/24 16:38:36 WUKv4//F0
春夏さんを忘れちゃ困るんだぜ?
156:名無しさんだよもん
07/01/24 18:30:01 NZYFsMoKO
大穴で菜々子ちゃんに一票
157:名無しさんだよもん
07/01/24 19:46:24 UzfAOGK80
誰か一人忘れているような気がする
158:153
07/01/24 20:59:26 um2L3Qrs0
>>157
そこで、ゲンジマルだっ!
というか、何?この流れ?w
159:名無しさんだよもん
07/01/25 07:48:50 xHFzWJb40
>>157にすら忘れられた郁乃に幸あれ。
160:名無しさんだよもん
07/01/25 07:52:50 SuG/XC6ZO
お前らささらを忘れるなw
161:名無しさんだよもん
07/01/25 14:11:50 z/U63FG10
まーりゃん先輩が乱入じゃないのか?
162:名無しさんだよもん
07/01/25 20:35:37 kLWyGEgR0
PS2準拠だからささらとまーりゃん先輩は最初からいないだろ。
163:名無しさんだよもん
07/01/25 20:45:26 PNC0gd700
全員還ってふと見たらベッドにクマ吉が置いてあるんですよ
164:名無しさんだよもん
07/01/27 02:17:58 IqmpDtHnO
なんだその大穴エンド
165:名無しさんだよもん
07/01/27 15:35:25 pWJEdz//0
桜の群像マダー??
166:名無しさんだよもん
07/01/28 15:47:09 RulPm5H20
書庫で桜の群像読んでたらいきなりダニエルが出てきて吹いたw
167:名無しさんだよもん
07/01/28 22:42:40 1r6Mj+0N0
>165
また停まってました(汗)。とりあえず第12話は来週の今頃くらいまでには投下したいです
全22話くらいになりそうで、AD発売前に終わ…延期しまくりそうだから大丈夫かなw
168:名無しさんだよもん
07/01/29 01:18:55 Q3W0ORzvO
>>167
のんびり待ってますー
最近SSめっきり減ってるから尚更楽しみにしてます
玲於奈かわいいよ玲於奈
169:名無しさんだよもん
07/01/29 06:11:44 zGCCEb6J0
んじゃ便乗して、やゆよマダー??
170:河野家にようこそ 第89話(1/9)
07/01/29 20:49:02 POkEAnfY0
由真と瑠璃ちゃんが我が家を去ったのは、正直言うと寂しい。けどそのおかげで俺は自分の部屋を
取り戻せたワケで。けれどベッドからは由真の残り香が……こう言うと何かエッチっぽいな。
翌朝。MTBに乗って現れた由真はやけにハイテンション。家族と仲直り出来たようでよかったね、
などと思っていたら、逆に朝から不機嫌な瑠璃ちゃん。昨日、俺が由真に不意打ちキスをされたこと
は、花梨によって瑠璃ちゃんや愛佳たちにも伝わっていたのだ! しかも花梨ときたら、このみに
だけは伝え忘れてて、それでこのみ、怒って俺の首を絞めやがるし。
などとやってる内に予鈴が鳴り、さて校舎へ。だけどるーこは何故か立ち止まり、その時俺は予鈴
にノイズが入ったこと、そしてその直後、るーこが「来た」と呟いたのに気付く。
その日の夜。部屋にやってきたるーこは俺に、由真たちがいなくなって寂しいと漏らす。そんな
るーこの肩を抱き、励ます俺。するとるーこは俺に、もし自分がいなくなったら寂しいかと尋ねて
くる。それってるーこ、もしかして……
「冗談だ」と否定したるーこ。
実際、それから数日経ってもるーこは今まで通り俺の家にいて、特に変わった出来事もなく、日々
騒がしくも穏やかな時間が流れた。そして俺はいつしか、不安どころかその台詞すら忘れていた。
だけど。
「明日の朝、この家を出ることにしたぞ」
いきなりるーこがそう告げたのは、土曜日の夕食時。
「る、るーこ!?」
思わず声がひっくり返る。
「いきなりどうしたの、るーこ?」
「そ、そうですよ! いきなり過ぎますよ!」
タマ姉と優季も驚いている。
171:河野家にようこそ 第89話(2/9)
07/01/29 20:50:03 POkEAnfY0
「急に決まったことだ。仕方がない」
「きゅ、急に決まった? 決まったって、どういうことなんだ?」
るーこの言葉が引っかかり、尋ねずにいられなかった。”決めた”のではなく”決まった”と言う、
その理由が知りたい。
けれど、るーこは何も答えようとはしない。だが俺は諦めず、
「な、なぁるーこ、黙ってないで教えてくれよ。決まったってどういう―」
「言えない」
きっぱりとるーこ。
あまりにもあっさりとした返事。―俺は怒りが込み上げ、
「何だよそれ!? いきなり出ていく、しかも理由が言えないって、そんなのアリかよ!?」
「タカ坊、落ち着きなさい」
思わず怒鳴ってしまったのをタマ姉に咎められる。
そ、そうだな。とりあえず落ち着いて……落ち着いて……
「あ、ああ。るーこ、怒鳴ってゴメンな。
けど、この家を出て、どこに行くんだ? 行くあて、あるのか?」
するとるーこ、何故か黙ってしまう。―何だ?
「るーこ、本当に大丈夫なのか?
俺の家ならいつまでだっていてもいいんだぞ。お前が故郷に帰れる日まで、ずっとここにいていい
んだからな」
「―それは、出来ない」
出来ない? 出来ないって、一体どういう意味……?
そこでふと、あの、ノイズ混じりの予鈴のことを思い出す。そして、その直後にるーこが呟いた、
「来た」という言葉。
「る、るーこ、お前、もしかして……」
172:河野家にようこそ 第89話(3/9)
07/01/29 20:51:20 POkEAnfY0
「たかちゃん」
それまで無言だった花梨が突然席を立ち、俺の手を掴むと、
「ちょっと、こっち来て」
俺をキッチンから連れ出した。
連れられてきたのは、花梨とるーこの部屋。
花梨はビデオカメラを手に取り、
「たかちゃん、コレ見て」
カメラの液晶画面を俺に向ける。画面に映っているのは、布団を並べて寝ている花梨とるーこ。
「花梨、コレは?」
「昨日の晩の分なんだけど、おかしいんよ」
昨日の晩の分? ……忘れてた、花梨はるーこを監視してたんだっけ。寝てるときもビデオカメラ
で録画してたのか。
「おかしいって、どこが?」
「もう少し、したらね……来た!」
画面を見ると、それまで寝ていたるーこが突然ムクリと立ち上がり、そして、
ザーッ……
「―え?」
突然、画面が砂嵐になる。
「花梨、コレって……」
すると花梨、カメラの早送りボタンを押して、
「この後、ずっと砂嵐のままなんよ。こんなこと、初めてだよ」
確かに早送りの画面を見ても、ずっと砂嵐のままだ。
「寝ちゃってたから何も気付かなかったし……。たかちゃん、夕べ、何か気付いた?」
173:河野家にようこそ 第89話(4/9)
07/01/29 20:53:28 POkEAnfY0
「いや、何も」
「そう……」
花梨を見ると、真剣な表情で、
「あるいは私たち、”眠ったままにされていた”のかもしれないね」
眠ったままに……つまり、るーこか、他の”誰か”の仕業ってことか。
そして、その”誰か”とは―るーこの、仲間か。
もう、るーこに聞く必要はなかった。
予鈴に混じったノイズは恐らく、るーこの仲間からの最初の連絡。
そして、昨日の夜中。るーこの仲間からの二度目の連絡、あるいは、仲間が直接やって来たのか。
とにかくそこで、るーこが明日の朝、俺の家、いや、地球を去ることが決まったのだ。
……喜ばしいことなのだろう。
元々るーこはこの星の人間ではないのだ。いつかは故郷の”るー”に帰るのだと、るーこ本人が
何度も言ってたじゃないか。ようやくそれが叶う時が来たんだ。
よかったなと、一緒に喜ばなきゃ。笑って見送ってやらなくちゃ。
なのに……
「たかちゃん」
肩に置かれた花梨の手のひらが、やけに暖かく感じられる。―それは多分、俺が今、見た目にも
落ち込んでいるからだろう。
「……参ったな」
「え?」
「いつかはこういう日が来るって、分かってたつもりなんだけどな」
「たかちゃん……」
「でも」
174:河野家にようこそ 第89話(5/9)
07/01/29 20:54:21 POkEAnfY0
顔を上げ、俺は、
「いいこと、だものな」
笑顔を作る。ちょっと心が痛むけど、笑顔でなきゃ、な。
ぎゅっ。
「―え?」
途端、視界が真っ暗になり、顔には柔らかい感触。―俺は花梨に抱きしめられ、花梨の胸に顔を
埋めていた。
「我慢、しなくていいよ」
「が、ま、ん……?」
「るーこがいなくなるの、辛いんでしょ? だったら、無理して笑わなくたって……!」
そっか……花梨、俺のこと心配してくれて……
俺の頭を抱きしめてくれている、その両腕をそっと離して、
「……大丈夫」
「たかちゃん、でも……」
花梨の顔を見上げて、
「ありがとう花梨、心配してくれて。でも、ホントに大丈夫だからさ。
って言うか、むしろ花梨の方が辛そうな顔してるぞ」
花梨から少し離れ、立ち上がって俺は、
「花梨も俺に抱きついておくか? 俺の方は胸ないから固くて心地悪いかもしれないけどな」
ハハハと笑う。すると、
ぎゅっ。
わ、花梨、ホントに抱きついてきた。
「―ううん、そんなことない。たかちゃんの胸の中、とっても気持ちいい」
「そ、そっか」
175:河野家にようこそ 第89話(6/9)
07/01/29 20:55:08 POkEAnfY0
驚きと、またも花梨の柔らかさにドキドキする。
「……ふふっ」
「な、なんだよ?」
「たかちゃん、すごいドキドキしてるね」
俺の胸に耳を当てている花梨。
「もしかして今、エッチな気分?」
「ば、バカ!」
慌てて花梨を引き剥がし、
「と、とにかく! これはるーこにとってはめでたいことなんだから、喜んでやらないとな」
「……うん、そうだね」
俺と花梨は居間に戻り、夕食の残りを平らげた。そしてみんなで食後のお茶を飲みながら、
「なぁるーこ、明日の朝だけど、みんなを呼ぼうか?」
るーこにそう尋ねる。
「みんな?」
「このみや愛佳たちだよ。明日の朝、みんなで見送ろうかってこと。
今から電話すれば、きっとみんな来てくれるから―」
「その必要はない」
またも、あっさりとした返事。
「るーこ……」
「うーたちも、見送る必要などないぞ。
いや、見送ることは出来ない。るーは明日、この家からいなくなる。それだけだ」
見送ることが出来ない? いなくなる? どういうことなんだ? ―いや、それ以上に、何故
るーこはこんなにも淡々としていられるのだろうか?
176:河野家にようこそ 第89話(7/9)
07/01/29 20:56:43 POkEAnfY0
唐突に、しかも一方的に家を出ると告げ、見送りも要らないと言う。まるで他人じゃないか。
俺たちとるーこって、そんな寂しい関係だったのか?
―でも、それでも、
「……そっか。分かったよ」
笑って、見送ってあげなくちゃ、な。
「タカ坊……」
「貴明さん……」
悲しげに俺を見るタマ姉と優季。―参ったな、ちゃんと笑顔を作れてないのかな、俺?
「きっとコレが、るーこたちの流儀なんだよ。正直寂しいけど、るーこがようやく故郷に帰れるん
だから、一緒に喜んでやらないと、な。
るーこ、さっき”見送ることは出来ない”って言ってたけど、それって俺たちが寝ている間に
るーこはいなくなるってことなのか?」
「そうだ」
「そっか。……なら、今のうちに言っておかないとな。
るーこ、おめでとう。それから、今まで美味い飯作ってくれて、ありがとうな」
「タカ坊……、うん、そうね。
おめでとうるーこ。元気でね」
「るーこさん―おめでとうございます。私、るーこさんのこと、忘れませんから」
俺の後にタマ姉と優季も別れの言葉を。花梨は感極まっているのか、何も言わない。
そして、るーこは、
「今まで世話になった。礼を言うぞ」
穏やかな笑顔で、そう答えた。
明日の朝になったら、るーこは、もういない。