06/10/26 22:52:13 ZRfR7CGL0
「兄さん…」
言いかけて、寛子も言葉に詰まらせた。続く言葉が浮かばない。
緊張の時間が流れ、沈黙だけがその中を通り過ぎる。
じきに我に返った兄は、慌てて寛子に背を向けた。
「な、何て格好をしているんだ。早く服着ろ」
背中越しによる冷たい態度に、寛子も我に返る。
恥ずかしさと後悔の入り混じった、今まで経験したことのない羞恥心。
カラダの中が熱くなるのを、彼女は静かに感じていた。
心臓の鼓動は跳ねるように激しくなり、フラフラと、寛子は兄の方へと足を踏み出す。
一歩、一歩、ゆっくりと近づく兄の背中。
寛子は今、自分がどんな顔をしているのかすら見当もつかなくなっていた。