06/12/06 12:42:20 XUE6phuc0
あくまで使用人としての一線を崩さない、崩せないリーダとは、そこが大きく違うのだ。
が、みやびがそんなことを素直に聞ける筈も無い。
故に、みやびは湧き上がってくる自分の感情を理解できず、困惑することしか出来なかったのだ。
「最早、理事長として、雇用者として御嬢様がすべき義務は御座いません。
司様は、越えてはならない一線を踏み越えられました。
一教師を助けるにしては、『コスト』が……」
「司は一教師なんかじゃないっ! あたしのっ!」
あたしはその言葉に激しく反発し、机を叩いた。
「御嬢様の、何で御座いましょうか?」
「あたしの…… あたしの……」
そこから先の言葉は、幾ら考えても出てこなかった。
司は……あたしの、何?
わからなかった。直ぐそこまで出てきているのに、わからない。
……でも、これだけはわかる。
司がいなくなるのは『嫌だ』。
だからあたしは、こう答えた。
251:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:44:12 XUE6phuc0
「司はあたしの労働者だ! 相沢にも仁礼にもやらん!」
それを聞くと、今まで信じられない程素っ気無かったリーダが、微笑みながら聞いた。
「では、どうなされますか? 幸い、両家共に本家は動いていないようです。
分家か取り巻きの独断先行ですね」
「ふんっ! なら話は早い!」
あたしはリーダに命じ、外をうろついている連中の黒幕と連絡をとった。
『……これはこれは、まさか風祭の末姫様直々に電話を下さるとは』
『うちの司に何の用だ!』
『ああ、あの男ですか。いやなに、少々調子に乗り過ぎた様ですので、少し……ね』
その言葉にカッとなり、あたしは思わず叫んだ。
『司はあたしの、風祭みやびの個人秘書だ! 司に対する攻撃はあたしへの攻撃……ひいては風祭に対する攻撃と心得よ!』
『! ……まさか! あんな何所の馬の骨ともわからぬ男が!?』
『え~い、うるさい! あたしが誰を秘書にしようが、そんなのはあたしの勝手だっ!』
『くっ! ですが、それでは風祭が我が家の内情を探っている、ともとれますぞ!』
252:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:46:09 XUE6phuc0
『それ以上の文句は、お前の所の本家とその娘達に言え! うちの司は巻き込まれただけだっ!』
そう言い捨て、あたしは電話を叩き切った。
電話の男は、明らかに驚愕している様だった。
まあ、無理も無い。あたしだってびっくりだ。
理事長のではなく、あたし個人の秘書―それは、司があたしの側近であることを意味する。
司が……あたしの側近?
そうなれば、ずっと司と一緒にいられる。
たとえ、あたしが『理事長』でなくなっても。『生徒』でなくなっても。
それは、とても良い考えの様に思えた。
「リーダ、そんな訳で、司は今からあたしの個人秘書になったから。手続き御願い」
「はあ……宜しいので御座いますか?」
流石にそこまでは考えていなかったのか、リーダは目をパチクリさせている。
「かまわない」
「このことは司様には?」
「必要ない。司は知る必要の無いこと」
そうだ。自分は当たり前のことをしただけ。
『―』を守るのは当然のこと。
253:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:51:46 XUE6phuc0
「ですが……」
「いいんだ…… ちょっとでかけてくる」
あたしは司に無性に会いたくなり、外に出た。
……司は栖香と美綺、それに奏の四人で、楽しそうに笑ってお弁当を食べてました。
―こ、こいつ…… 人に散々心配させといて、これかっ!? これなのかっ!!
その暢気そうな顔を見ていると、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
「何を暢気に笑ってるっ!」
「ふごおっ!?」
気がつくと、あたしは司にドロップキックを喰らわせていた。
「な、何すんですか、理事長!?」
「うるさい! 何もかもお前が悪い! そう決めた!」
その言葉と同時に、あたしは司に踊りかかった。
……そうしたら、胸の奥のもやもやがすっと消えてなくなった。
254:『世の中甘くない』の者です
06/12/06 12:56:26 XUE6phuc0
投下終了。
え~、ここまで書いて流石にアレ過ぎることに気付き、没となりました。
でも、そのまま消去も勿体無いので……
>>224
224様、有難う御座います。
>このSSって、生徒達の問題は解決した後の話ですよね?
そうです。姉妹双方のルートを辿りつつ、みやびーとも……という漢の浪漫的な設定です。
>みやびーの乙女ゴコロにも期待してます(ry
この没版は流石に重過ぎますね~
255:名無しさん@初回限定
06/12/06 15:21:29 DpEZHvcC0
>>254
乙。
うわぃ、みやびー様が暗いっ(笑 と思ったら、没案でしたか。
こう言うシリアス駆け引きも実は結構好きですが、やっぱりこの面々だったら明るいのをキボン。
あーでも、嫉妬でドロップキックはイイです。その理不尽さが(w
仁礼家とかは司が動いてもスルーしそうですが、相沢家は父親が暴走すると危険ですな(ww
256:名無しさん@初回限定
06/12/06 18:52:34 3Mauynh40
>254
没SS、乙。
個人的に重くないくらいの痴話喧嘩の方が大好きですが、ちょっと思ったのが、
あそこの子女って頑固で独占欲強い人多いからイザと言う時は恐い状況になりそう。
司が二股なんてした日には、普通に死ねますね。ええ。
257:名無しさん@初回限定
06/12/06 19:42:32 CjdpSEUb0
GJ。
正規版のヤキモチみやびーを楽しみにしているぜっ!
……ところで、攻略前と後とで印象が180度変わるしのしのの出番はないのかなー……
258:『世の中甘くない』の者です
06/12/07 14:59:09 T378y3wF0
皆様、有難う御座います。
後編もようやくUPしました。どうか見てやって下さい。
>>255
>やっぱりこの面々だったら明るいのをキボン。
ですね。全く状況説明が無いのもアレですが、暗すぎるのも……
PULLTOPのゲームはほのぼのが売りらしいですし。
>>256
>あそこの子女って頑固で独占欲強い人多い
あ~、確かに。
一番心が広いのがみやび~かも……
>司が二股なんてした日には、普通に死ねますね。ええ。
と、言うより只の勘違いで暴走しそうな方々もちらほら……
>>257
>正規版のヤキモチみやびーを楽しみにしているぜっ!
ごめんなさい。焼きもち出てきませんでしたよ。
次回以降に何とか……
>……ところで、攻略前と後とで印象が180度変わるしのしのの出番はないのかなー……
う~ん、実はまだ未プレイなんですよ(爆)
259:名無しさん@初回限定
06/12/07 16:07:55 e9Mz7sJL0
>>258
かにしのSS楽しく読ませてもらってます。
しのしのをクリアした時、もうしのしのしか考えられなくなること請け合いだぞ。
260:『世の中甘くない』の者です
06/12/08 12:18:59 ayB0Q/1F0
>>259
有難う御座います。
すっかり嵌ってしまい、次作もかにしのSSですよ……
>しのしのをクリアした時、もうしのしのしか考えられなくなること請け合いだぞ。
現在プレイ中ですが、本当に印象変わるなあ~
例のSS後編ですが、メールやコメント等で『すみすみの出番少なっ!』との御指摘が幾つかありました。
……いえ、あったのですよ? 本当は。
けど、削除したのですよ。内容的に合わないので。
御要望があれば公開します。
261:名無しさん@初回限定
06/12/08 13:29:17 uUCouaqG0
>>260
公開して欲しいです。
あと、個人的には彼女達個々の司に対する心理描写とか大好きなので、
あちらの方で公開されているSSはより良かったです。
262:名無しさん@初回限定
06/12/10 02:06:46 aOQZ5/qKO
それより甘くないの続きマダー?
263:名無しさん@初回限定
06/12/10 22:55:51 /LOpDY3k0
>>260
待ってるぞ!
264:名無しさん@初回限定
06/12/17 13:35:10 rt7Kb9OhO
すみすみのエロ書いてくれませんかぁ?
265:名無しさん@初回限定
06/12/19 01:18:40 lhv3To4v0
トワイライトデュアルとか侵蝕とかの?
266:『世の中甘くない』の者です
06/12/19 14:41:19 t4T9SCPn0
そろそろ大丈夫かな?
267:名無しさん@初回限定
06/12/20 19:58:09 1jIMLHwP0
なにが?
268:名無しさん@初回限定
06/12/21 00:12:40 mXs6qTiO0
規制でも食らってた?
269:『世の中甘くない』の者です
06/12/21 11:02:49 VwM8tr6Z0
あ~、やっと規制が解除された。
長かったよホント……
>>261
>公開
一応、HPの方にアドレス載せていますが念のため……
p://www.geocities.jp/wrb429kmf065/harukaniaogi02botu1.htm
p://www.geocities.jp/wrb429kmf065/harukaniaogi02botu2.htm
>あと、個人的には彼女達個々の司に対する心理描写とか大好きなので、
>あちらの方で公開されているSSはより良かったです。
有難う御座います。投稿版に投稿して、その後多少手を加えてHPに掲載する手法が身についちゃったからなあ……
>>262
>それより甘くないの続きマダー?
あー、解除あまりにも遅いので、最新話はHPに直接UPしちゃいました。
だから「その8」は欠番です。
270:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:04:15 VwM8tr6Z0
―疲れた、本当に疲れた……
雄真は足取りも重く、鈴莉の研究室へと向かう。
これから10日間の間、雄真は実母である鈴莉と共に暮らすことになっていた。
名目は『魔法学基礎の集中講義』。
魔法学のまの字も知らぬ雄真に対し、魔法学教育の権威である鈴莉が付きっ切りで補習授業を行うことになっているのだ。
―鈴莉先生、今日は補習勘弁してくれるかなあ?
が、流石に今日は勘弁してもらいたかった。
熱い風呂に入り、暖かい布団に包まってゆっくりと眠りたかったのだ。
「鈴莉先生、只今戻りました」
そんなことを考えながら、雄真は研究室のドアを開いた。
――ドアを開けると、そこは玄関でした。
「へ? ……何で?」
ドアの向こうはいつもの研究室ではなく、どこかの家の玄関だった。
やたら立派な玄関で、その向こうは延々と廊下が続いている。
雄真が一人首を捻っていると、スリッパでパタパタと足音を立てながら、鈴莉が弾んだ声で出迎えた。
271:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:06:35 VwM8tr6Z0
「雄真く~ん、お帰りなさ~い♪」
「……鈴莉先生?」
胸にエプロン&手にはおたまという『新妻ルック』の鈴莉に、流石の雄真もどこから突っ込んで良いやらわからず、目を白黒させる。
……そんな雄真に、鈴莉は実に意味ありげな質問をした。
「雄真くん、直ぐご飯にする? それともお風呂? それとも……」
選択肢が現れた!
1、ご飯にしようかな
2、お風呂に入りたいです
3、漢なら敢えて『それとも……』をっ!!
「ご飯にします、サー」
雄真は最敬礼で応じた。
勿論、選択は1だ。他にありえない。
2は何となく危険な匂いがするし、3に至っては問題外である。
(まあ、『それとも……』が何か気にならないではなかったが、雄真も敢えて地雷―それも恐らく核地雷級の―を踏む程馬鹿では無い。
好奇心は猫をも殺すのだ)
「あの~鈴莉先生? その格好は?」
が、それでもこれだけは聞かずにいられなかった。
何を企んでいるかは知らないが、今日の鈴莉先生は幾らなんでもおかし過ぎる。
272:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:18:03 VwM8tr6Z0
「う~ん、似合わないかしら?」
「いえ、凶悪な位似合っています」
というか、若くて美人な新妻そのものです。
―どうして、うちのかーさんズはこんなにも若いのだろうか?
思わず雄真は天を仰ぐ。
音羽かーさんはまるで年下の様―お肌なんかプニプニのツルツル―だし、鈴莉母さんもせいぜい20代半ばの容姿である。
これは世間的に見て明らかにおかしかった、異常だった。
……まあ、それに気付いたのはつい最近なのだが。
そういえば、魔法使いの女の子は皆美人、というのもおかしい。
確率論的に考えて、有り得る筈が無い。
が、魔法使いといえば美人揃い、と昔から相場が決まっていた。
そして不思議なことに、数少ない男の魔法使いは別に美男揃い、という訳でもない。
これについては、以下の様な俗説が存在する。
女性の魔法使いは、無意識の内にその魔力で自らの容姿を自分の理想に近づけていく、と。
だから女性の魔法使いは、皆あの様に若々しく見目麗しいのだ、と。
俗説とは言え中々説得力を持ち、それ故に広く知れ渡っている説である。
が、これを聞いた時、雄真は真っ向から異議を唱えた。
何故なら、雄真はその反例を知っていたからだ。
273:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:20:04 VwM8tr6Z0
誰もが御存知の通り、伊吹はちみっちゃい。加えて胸は洗濯板である。
そして、彼女はそのことに対して強いコンプレックスを持っていた。
つまり、『伊吹ほどの魔力の持ち主ですら、自分の背や胸の無さをどうにも出来ないでいる』ということになる。
―魔法で背や胸がどうにかなるのなら、とっくにやっておるわッ!!
以前、雄真は腰の入ったパンチと共にこのお答えを受け取っていた。
……半泣きの表情とその悲痛なまでの叫びを、雄真は生涯忘れないだろう。
だからこの説は却下である。でなければ、伊吹が余りにも哀れ過ぎた。
(第一、この説では音羽かーさんの若さを説明出来ない)
「そう、嬉しいわ。
じゃあ雄真くんの御要望どおり、まずはご飯にしましょう」
鈴莉は雄真の答えに満足そうに頷くと、とりとめも無くそんなことを考えている雄真を促し、家に上げた。
「成る程、空間を捻じ曲げて鈴莉先生のマンションと繋げたんですか……」
「そうよ。雄真くんだって、10日も研究室住まいは嫌でしょう?」
鈴莉は簡単に言うが、大抵のマンションには進入防止用の対魔法防御がされている。
ましてや鈴莉の部屋がある超高級マンションともなれば、相当強力な防御が施されている筈だ。
274:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:22:08 VwM8tr6Z0
……まあ、鈴莉の前では屁の突っ張りにもならなかった訳だが。
「でも、悪いですね。こんなことまでしてもらっちゃって」
「何を言っているの。当然よ、当然」
鈴莉はそう言うが、春姫の話では鈴莉は多忙の身の筈だ。
にも関わらず、鈴莉は雄真の為に10日も割き、挙句の果てには身の回りの世話までしてくれている。
―やっぱり、俺のことを気にしているのだろうか?
10年前に自分を小日向家に預けたことを、もしかしたら鈴莉は気にしているのかも知れない。
だから、こうして色々世話を焼いてくれるのだろうか、とも思う。
……ならば、『気にしないでいい』と言ってあげた方が良いのだろうか?
(雄真は、何故自分が小日向家に預けられたのか今ひとつ把握していない)
そんなことを考えながら鈴莉を見ると、鈴莉はじっと雄真を嬉しそうに見つめていた。
その姿が、ふと葵と被る。
「そう言えば、鈴莉先生に聞きたいことがあるのですが」
「なあに?」
真剣な表情の雄真を、鈴莉は眩しそうに見る。
「俺に兄弟姉妹っています? あ、もちろんすももは除外で」
「雄真くんは一人っ子よ? ……もしかして、兄弟が欲しいの?」
275:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:24:29 VwM8tr6Z0
「ちっ、違いますよ!」
兄弟姉妹はすもも一人で充分である。
「ん~?」
「……じゃあ、御門葵って生徒を知ってます?」
「知ってるわよ? 優秀な子だし」
無論、それだけではないが。
「彼女が……葵ちゃんが俺の従妹って、本当ですか?」
「あら? もしかして、御門さん本人から聞いたの?」
「はい。『自分には従兄がいた』と」
「凄いわね、もう御門……葵さんから聞きだせたなんて。
彼女は常に受身だから、自分から言い出すなんて余程のことよ?」
それとも、彼女はもう雄真くんが私の息子だと知っていたのかしら、と鈴莉。
「じゃあ!」
「本当よ。葵さんの父親が私の弟なの。
だから、雄真くんと葵さんは血の繋がった従兄妹同士」
姓が違うのは、婿養子に行ったからだ。
「鈴莉先生に弟さんがいたんですか」
276:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:28:05 VwM8tr6Z0
ならば自分の叔父、という訳か。
「不肖の、ね。見た目も中身も私と似てないけど、娘の葵さんを見ると血の繋がりを自覚せずにはいられないわ」
「はあ、色々あるんですね」
「まあ、何れ雄真くんも会うと思うわ。
……そういえば昔、葵さんは雄真くんに懐いていたけど、今もそう?」
「いえ、まあ親しくはして貰っていますが、葵ちゃんは俺が従兄だとまだ知らないもので」
「へえー、じゃあ知らないのに聞き出せたのね。
流石は雄真くん、といった所かしら」
「茶化さないで下さいよ。只、従兄に似ているから、というだけです」
「あの子は、その程度で動じないと思うわよ?」
「そうですか?」
中々、積極的な子だと思うけど……
自分が知る葵像とは余りに異なる評価に、雄真は首を傾げる。
「―で、どうするの?」
自分がその従兄だ、と教えるのか? ということだろう。
「言えませんよ…… 今の俺じゃあ」
277:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:37:27 VwM8tr6Z0
雄真は自嘲気味に答えた。
魔法から逃げて、逃げて―結局逃げ切れずに舞い戻ってきた今の自分では、葵の思い出を汚すだけだ。
……第一、自分は未だに彼女のことすら思い出せないでいるのだから。
なのに、何と言って葵に告げる? どんな顔をして葵に告げると言うのだ?
雄真は、それ程厚顔では無かった。
「そう。でも何れ、そう遠くない内にばれるわよ?」
が、それは逃げているだけ、目先の問題を先送りしているだけに過ぎない。
鈴莉は、それをさり気無く指摘する。
「その時は……その時です」
「そう」
それ以上、鈴莉は追求しなかった。
雄真は鈴莉と二人だけの食事を続ける。
たった一人少ないだけなのに、小日向家からは想像もつかない程の静けさだ。
―そう言えばすももとかーさん、今頃どうしてるだろう?
二人とも、自分が10日間泊まるというだけで不満たらたらだった。
何とか宥めすかして来たのだが……
278:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:45:35 VwM8tr6Z0
「小日向家がそんなに気になる?」
「へ? いえ、そんなっ!」
図星を突かれ、雄真は慌てて否定する。
「隠しても、顔に出てるわよ?」
「うそっ!?」
必死で顔を弄る雄真を見てくすくす笑う鈴莉に、ようやく雄真はからかわれたことを理解した。
「酷いなあ……」
「ごめんなさい。あんまり必死なものだから、ね?」
「いや、まあ…… あの二人だけ残すと、何しでかすか心配で……」
とくにかーさんとかかーさんとか。
「いいお兄ちゃん、息子ね?」
「そんなのじゃあ無いですよ……うぐっ!!」
と、その時、急に体に熱いものが込み上げ、雄真は思わず蹲る。
それを見て鈴莉はニヤリと笑った。
「……どうやら、効いてきたようね?」
「鈴莉……先生……?」
279:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:49:05 VwM8tr6Z0
雄真は呻く様に呟いた。
体が軋み、まるで自分のものでは無い様だ。
目もかすみ、自分の手があんなに小さく、遠く見え……「ほんとにちっちゃっ!?」
込み上げてくる熱さも、体の軋みも直ぐに収まった。
が、それどころでは無い。
何と、自分の体が小さくなっていたのだから。
……年の頃、6歳程だろうか?
「ふふふ…… 凄いわ……『あの頃』の雄真くんそのものよ」
「すっ、鈴莉先生?」
雄真はやっと理解した。
食事に一服盛られていたことを。
それが効いて、幼児化してしまったことを。
……幸いなことに、幼児化は肉体のみであり、精神は元のままだった。
(流石の鈴莉も、そこまでは憚られたのだろう)
が、そんなことは何の慰めにもならない。
何せ、目を血走らせた鈴莉が、直ぐそこにいるのだから。
「さあ雄真くん、ご飯も食べたことだし、お母さんと一緒にお風呂に入りましょうね~♪」
どうやら先程の選択肢、2は『鈴莉先生とお風呂』、3は『幼児化』だった様だ。
(ついでにどれを選ぼうが、結局最後はこうなるらしい)
280:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:51:47 VwM8tr6Z0
鈴莉の様子から考えて、只風呂に入るだけでは済まない―そう判断した雄真は必死で抵抗する。
が、所詮は子供の肉体、簡単に押さえつけられてしまう
……嗚呼、小日向雄真絶体絶命の危機である。
「ほらほら、親子何だから恥ずかしがらないの!」
「神さま――っ!?」
雄真は必死で天に祈った。
その祈りが通じたのか、はたまた変な電波を受信したのか、雄真の頭に起死回生の策が浮かぶ。
……しかしそれは、雄真にとって余りに過酷な策だった。
が、背に腹は代えられない。
雄真は腹を括り、策を実行に移すことを決めた。
「……お母さん、お母さん」
「へ? ゆ、雄真くん……今、何て……」
「僕、お母さんにお願いがあるの」
「何っ! 何でも叶えてあげるわよっ!!」
上目遣いでおねだり口調の雄真に、鈴莉はすっかりメロメロである。
「僕、ひとりでお風呂に入りたいな。お母さんに僕が一人で出来るところを見せたいよ……」
281:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:58:49 VwM8tr6Z0
「く……その手で来るとは……」
鈴莉は歯噛みする。
騙されていることはわかっている……わかっているのだが……
「だめ……?」
「くはっ!」
それが止めだった。
鈴莉は両手を地に付け、血の涙を流しながら頷いた。
「……わかったわ」
「ありがとう! お母さん!」
これが、雄真起死回生の策だった。
ただ、鈴莉の魔手から逃れる為に己の羞恥心すらも捨てるという、正に『肉を切らせて骨を断つ』もので、効果はあるが自分のダメージも大きいのが欠点だ。
が、背に腹は代えられない。
明日のために、今日という日の屈辱に耐えたのである。
(もしあのまま一緒に風呂に入っていたら、きっと雄真は落ちるところまで落ちていただろう)
「……しかし鈴莉先生、本当にどうしたんだろう?」
雄真は、風呂に入りながら一人呟いた。
正直、雄真は鈴莉が何を考えているのか、全くわからなかったのだ。
282:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 12:00:18 VwM8tr6Z0
雄真は、鈴莉が音羽と同じ人種だということに、未だ気がついていなかった。
恐らく、普段の鈴莉の理知的な振る舞いが、音羽のそれとは余りに対照的だからだろう。
……いや、もしかしたら気付かない振りをしているだけなのかもしれない。
小日向雄真16歳、結構傷つき易いお年頃なのだから。
―その頃、夢破れた鈴莉はリベンジを誓っていた。
「明日こそはっ!」
まあそんなこんなで、どうにか今日という日が終わったのである。
ちなみに幼児化は朝になれば解け、日が沈むと再び幼児化するらしい。効果は10日間だ。
実にタチの悪い呪いであった。
SS投下終了。次は「甘くない」の第10話か、それとも「遥かに仰ぎ、麗しの」か?
283:名無しさん@初回限定
06/12/21 18:56:45 GEZGwEUW0
UMAのアホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、
そこは2を選ぶのが漢として当然の選択だろ。
3のそれとも・・・を18禁だと思ったのはここだけの秘密だぜ
284:温泉の人
06/12/21 20:24:18 VE7+s93R0
鈴莉かーさん怖すぎ・・・((((゚Д゚;)))乙です。
しかし第8話も読んだけど本編を遥かに凌駕するドタバタぶりですなぁw
とりあえず幼児化したUMAをはるひめさんがお持ち帰りして
いろんなとこお世話しちゃう展開キボン
285:名無しさん@初回限定
06/12/21 20:40:14 uiSJwGyO0
>284
> とりあえず幼児化したUMAをはるひめさんがお持ち帰りして
> いろんなとこお世話しちゃう展開キボン
それを、パラレルとして藻前さんが書くって方法も……
(以前に、おとボクとはぴねす!のクロス物書き始めたが、挫折したウチ……)
286:温泉の人
06/12/21 21:16:37 VE7+s93R0
>それを、パラレルとして藻前さんが書くって方法も……
あ、あたし別に・・・そんな話書きたくなんか・・・
で、でも・・・みんなが読みたいって言うなら・・・あたし・・・///
(結論:男がツンデレ演じると非常にキモイ)
冗談はともかく、最近ちょっと書くためのモチベーションが不足気味だったり。
以前予告してた春姫とのえろSSも、いまいち筆が停滞気味・・・
何つーか、未だ飽きずに春姫エロ書いてハァハァしてる自分を
時折妙に冷静に見ちゃってそこで冷めちゃうって言うか。
こういう業界で長年やってる方々ってマジ尊敬します・・・
287:名無しさん@初回限定
06/12/21 22:45:06 YuiN6MRP0
「世の中甘くない」ってもう半ばオリ化しちゃってるじゃん……
エロでもなければパロでもない。スルーしろとか言うレベルじゃないと思う。
批判とかじゃなくて趣旨違いの作品は載せないほうがいいと思うんだけど……
自分のホームページで掲載しているならアドレスだけ載せて読みたい人はそっちに行けば
いいんじゃね?
正直スルーの限界だよ……
288:名無しさん@初回限定
06/12/21 23:35:05 nmoMBqRU0
> エロでもなければパロでもない
ここエロパロ板じゃないし。
>>282
かにしのに一票!
289:名無しさん@初回限定
06/12/22 13:06:10 zDfMTDBM0
>>287
ここはエロゲネタ板のSSスレですよ?
290:『甘くない』の者です。
06/12/22 13:58:16 jd12nYrq0
>>283
……だって、選択のやり直しは不可ですから(笑)
>>284
温泉の人様、有難う御座います。
>しかし第8話も読んだけど本編を遥かに凌駕するドタバタぶりですなぁw
いやあ、そうしないと話が暗くシリアスになり過ぎるので。
オリでシリアス書いてるから、二次ではお馬鹿にいこうかと。
>とりあえず幼児化したUMAをはるひめさんがお持ち帰りして
やりそうで怖い……
>>285
あー、確かにオリ設定多すぎですね、申し訳ない。
291:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:00:58 jd12nYrq0
実に唐突だが、分校の教師は僅か20人足らずである。
故に、全ての教員は教科の担当は勿論、他にも何らかの役職を複数兼任しなければならない。
その役職は生徒の担任や生活指導、学年主任―態の良い雑用係―に工作員(?)等、実に様々だ。
我等が滝沢司も、当然幾つかの役職を兼任している。
本職である歴史教科全般の担当教諭職の他に、司はクラス担任と理事長連絡係という二つの役職を兼任していた。
……ちなみに『理事長連絡係』とはつい最近出来たばかりの役職であり、読んで字の如く『教員が提出する書類を集めて理事長に届ける係』である。
表向きは『今までバラバラに提出していた書類をまとめて提出しましょう』という趣旨で出来た役職なのだが、
要は『司に理事長への説明役を押し付けよう』ということで、書類提出時に提出者から事情を聞き、それを理事長に伝えて了解を得なければならないという実に損な役回りなのである。
まあ司は基本的に理事長側の人間であるため、あくまで理事長の立場に立って双方の妥協点を探るのだが、
それでも今までより遙かにスムーズに物事が進む為、最近では教員だけでなく分校全職員からの書類も受け付ける様になっていた。
……しかし、これはもう一教員の仕事では無いのではないだろうか?
「では今回の書類の件に関しては、そういった方向で宜しいですね、理事長?」
292:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:01:47 jd12nYrq0
「ああ、構わない」
司の最終確認を、みやびは実に鷹揚に応じた。
司は週に一度、理事長への書類を提出する。
司はあくまで教員が本職であるため、通常の特に問題の無い書類は事務の方で処理するのだが、理事長がへそを曲げそうな、或いは怒りそうな書類は全て司に回される。
そういった書類をその一週間の間に処理するのだ。
そして週末、こうして最終的な調整と確認を行う、という訳だ。
(ここから後は単なる事務手続きであるため、事務の仕事だ)
「……ところで司? これから夕食なのだが、お前も食べるか?」
仕事が終わった後、みやびはいつもの様に司を食事に誘う。
ここ最近、みやびは何故かこうして、よく司に食事を振舞ってくれる。
言葉だけなら『別に食べようが食べまいがどうでもいい』ともとれる何気無いものだが、その上目使いの表情と口調から考えて、どちらかと言えば『一緒に食べよう』というおねだりの類だろう。
……そんな風におねだりされて、司に断ることが出来るだろうか?
、みやびの願いとついでに自分の欲望―みやびの所で出される食事はとても美味いのだ―を叶えるべく、やはりいつもの様に、司は最敬礼で応じた。
「御相伴に預からせて頂きます」
293:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:10:01 jd12nYrq0
「うむっ! 素直でよろしい!」
司の態度に、みやびは実に満足そうに頷いた。
「で、今日の夕食は何ですか?」
司は期待満々でリーダに尋ねる。
そんな司に彼女は微笑みながら答えた。
「お寿司ですよ」
「おおっ! そいつは豪勢なっ!」
―そういえば、最後に鮨喰ったの何時だろう?
司はふと考える。
ここ凰華女学院分校の食堂では、実に多彩な高級料理が楽しめるが、何故か洋食中心であり和食は少ない。
ましてや生の刺身など、まず出ないのだ。
……こんなに海岸に近いのに、実に勿体無いことである。
故に司は、和食に飢えていた。
そんな様子を見て、リーダはくすりと笑う。
「では司様、最初は『おまかせ』、その後に『お好み』でよろしいでしょうか?」
294:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:12:00 jd12nYrq0
「へ? ……もしかして、鮨職人が来てるんですか!?」
「はい。『栄鮨』の御主人が」
「げっ! わざわざ『栄鮨』の当主が握りに来てるのですかっ!?」
―余りにもさらっとリーダさんは言うが、とんでもなく凄い事だぞ、それっ!
『栄鮨』は江戸時代から続く超高級寿司店で、老舗中の老舗、名店中の名店である。
特に当代当主は、その技術の素晴しさから人間国宝に叙された程であり、彼が握る鮨目当てに全国から客が『栄鮨』訪れる程だ。
が、彼の握った鮨を味わえるのはその極一部に過ぎない。正に、選ばれた者のみが味わうことを許される至高の鮨なのだ。
それが向こうから出向くとは……
風祭の力は本当に恐ろしい。
「はい。でも、ヘリと飛行機ですから直ぐですよ?」
「…………」
リーダさん、正直その思考にはついていけません。
この学園のバブリーさにも大分慣れたと思っていた司ではあるが、どうやらまだまだの様だった。
……まあ慣れたら慣れたで、後々大変だろうが。
295:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:14:01 jd12nYrq0
隣室で握られた鮨を、メイド達が理事長室へと運んで来る。
それを給仕役のリーダさんが受け取り、みやびと司の前に運ぶ。
「御待たせいたしました」
食べるのはみやびと司の二人だけだ。
いつもそうなのだが、リーダは決して司達と……いや、みやびと一緒に食事をとることはしない。
彼女は決して、使用人としての立場を崩さないのだ。
……故に司がいる時以外、みやびはいつも一人で食事をとっていた。
(まあ会食とかでみやびも他人と食事をとる機会はあるが、これは少々意味が違うだろう)
司としては何とかしたいと思うのだが、これがなかなか上手くいかなかった。
彼女にとり、それは神聖な義務であり誇りでもあったのだから。
「御嬢様、どうぞ」
「うむ」
鮨は出来た順に運ばれてくる。
最初に来たのは、みやびの分だった。
が、みやびは箸を取ろうとはしない。
恐らく、司のことを待っていてくれているのだろう。
……しかし、そんなみやびを見ていると、司の心にむくむくと悪戯心が湧き上がる。
「理事長、折角の鮨が乾いてしまいます。勿体無いですよ?」
296:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:16:08 jd12nYrq0
「あっ!?」
そう言うが早いか、司はみやびの桶から鮨を一つ摘み出し、口の中へと放り込んだ。
その一部始終を、みやびは呆気にとられて見守ることしか出来ない。
やがて、深い溜息と共にお決まりの台詞が吐き出された。
「……お前なあ、もう少し我慢できないのか?
親しき仲にも礼儀あり、と言ってだなあ……」
『親しき仲にも礼儀あり』。
みやびが司に対して説教をする際、良く出る言葉だ。無論、対司専用である。
……しかし、彼女は気付いているだろうか?
その言葉は、自分と司の仲を認めている証拠だ、ということを。
(リーダなど、そんなみやびを嬉しそうに見守っている)
が、我等が司にその様な言葉の機微はわからない。みやびも、である。
故に、それで仲が発展して……などということは起きない。
精々、仲の良い兄妹がじゃれ合うレベルに過ぎないのだ。
「いいじゃあないですか、代わりに僕の分が来たら、お返ししますから」
「そういう問題じゃあないんだ…… 本当に、お前という奴は……」
みやびは諦めたのか、次々と鮨をくすねていく司を黙認する。
別に本気で腹を立てているわけでも呆れている訳でも無いし、注意する気もない。
余程気を許せる相手でも無い限り、司がこんな無作法な真似はしないことを知っているからだ。
297:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:20:40 jd12nYrq0
そして司がそれを自分に対して行うということは、自分はそれだけ司に心を許されている、ということになる。
……そう考えると、みやびは不思議と悪い気がしなかった。
そんなみやびの感傷を他所に、司は鮨をほおばる。
どうやら、さっきの1個で食欲に火がついたらしい。
「いや、しかし美味いですよこれは!」
こんな鮨、今まで食べたことが無い、と司は感嘆する。
(実際、もしこれが本当の鮨だとしたら、今まで司が食べていたものは鮨以外のナニかだろう)
「そうか~♪ じゃあ存分に食べろ~♪」
何故だか知らないが、その言葉を聞いたみやびは益々機嫌が良くなった。
そして気前良く、自分の桶を司の方へ押し出す。
……実の所、みやびは和食があまり好きではないのだ。
まして生の刺身など興味も無い。
何が悲しくて、魚を生のまま食べねばならんのだ!?
食堂に和食が無いのも、まあそんな理由からだ。
自分が好きなものは皆も好き、自分が嫌いなものは皆も嫌い、という実にジャィアニズム的な発想である。
にも関わらず、みやびは夕食に鮨を選んだ。
不思議、と言う他ないだろう。
「……みやびは食べないのか?」
298:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:24:23 jd12nYrq0
ふと、みやびが全く箸を付けないのに気付き、司が心配そうに尋ねた。
が、自分に向けられるその言葉と表情に内心嬉しく思いつつも、彼女は澄まして答えた。
「馬鹿者。あたしはお前と違うから、次が来るまで待てる」
「……そりゃあご立派なことで」
「当たり前だ」
「じゃあこうしましょう。二人で一つの桶を食べるのです。
それならば、一緒に食べられるじゃあないですか」
「食べる? ……二人で一つの桶を?」
みやびは首を捻った。
彼女からは絶対出てこない発想である。
そもそも風祭の家では、複数の人間で同じ器に箸を入れるなどという真似は決してしない。
まあパーティーの際には大皿から小皿に料理を盛り取るが、これは少々意味合いが異なるだろう。第一、その場合はメイドたちが盛り分ける。
以前司が鍋料理とやらを作って振舞ってくれた際、大鍋に盛られてそれを皆でつつくと知り、大層驚いたものだ。
(風祭では、鍋料理も各人毎に小鍋で作られるのだ)
―しかし、流石に二人で一つの桶を食べるのは如何なものだろう?
丼物を『犬の餌』と揶揄する名門風祭家に生まれたみやびにとり、それはかなり躊躇する行為であった。
彼女の頭の中で、様々な考えがぐるぐると駆け巡る。
299:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:28:21 jd12nYrq0
やはり鍋の時と同様に、互いに親睦を深める為に行う料理作法なのだろうか?
それとも、親しい人間同士が親愛の意味をこめて行う愛情行為なのだろうか?
……そう考えると、悪くないように思える。
何れにせよ折角の司の申し出、みやびを『親しい人間』と認めてくれた上での誘いである。無下には出来ない。
みやびは恐る恐る、桶の中に箸を入れた。
「うんうん、やはり食事は一緒にとらないとなあ」
「……お前が待っていれば、こんなややこしい真似をしないで済んだんだぞ?」
満足気に頷く司を、みやびがジト目で突っ込む。
が、司は澄ましたものだ。
「いいじゃあないですか、理事長。僕等は他人じゃあ無いんだし」
「へっ!?」
その爆弾発言に、みやびは思わず箸から鮨を落とした。
―他人じゃないって、もしかして、もしかして……司は……
心臓はバクバク、顔も真っ赤にして、みやびは司の次の言葉を待った。
……何故か、目まで瞑っている。
「何たって、僕と理事長は何度も拳で語り合った強敵(とも)ですからねっ!」
300:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:30:05 jd12nYrq0
「はあっ!?」
思いがけない言葉に、みやびは目をまんまるに見開いた。
「あれっ? 理事長は知りません? 『強敵』と書いて『とも』と読むのですよ?」
「知るかっ!?」
漢と漢の熱い魂の交流ですよ? とのたまう司に、みやびはふるふると震えながら叫ぶ。
「じゃあ理事長に貸してあげますよ『北東の剣』、僕のバイブルなんです」
「いらんわっ!?」
「……何怒ってるんですか、理事長?」
首を捻る司に、みやびは目に涙を一杯浮かべながら飛び掛かる。
「あたしだってわかんないわよっ!? あーもー何だかとってもちくしょうっ!!」
「理不尽なっ!?」
……こうして、いつものケンカという名のスキンシップが始まった。
――30分後。
301:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:31:37 jd12nYrq0
「お二人共、お食事を再開してもよろしいでしょうか?」
精魂尽き果てて突っ伏す二人に、リーダの容赦ない言葉がかけられた。
笑顔だが迫力があり、とっても怖い。
……要は、『お残しは許しませんよ?』と言っているのだ。
「も、もちろんですよっ! なあ、みやび!」
「あっ、ああ! 当然だ!」
その言葉に、二人は慌てて席に戻る。
(こういう時のリーダは怖いのだ)
そんな訳で、食事は再開された。
……ちなみにリーダさん、食事中のケンカはスルーですか?
「馬に蹴られたくないですから」
……ご尤も。
食事中、ふとみやびは気になったことを司に尋ねた。
「……お前は、いつもこんな食べ方をしているのか?」
二人で一つの桶をつつくのか、ということだろう。
「まさかあ。当然、相手を見ますよ」
家族や余程親しい友人くらいかなあ、と司。
302:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:36:01 jd12nYrq0
「そ、そうか! ……じゃあ、相沢や仁礼とも?」
みやびは一瞬喜ぶが、あの二人……特に司と親しい二人組のことが頭に過ぎり、思わず睨みながら尋ねる。
「あ~、あいつらはちょっと、流石に問題が……」
まあ個人的には構わないが、色々ややこしいことになりそうだ。
栖香の場合、はしたない、と説教されそうだし、
美綺の場合は調子に乗り、『あ~ん』なんてされかねない。
……折角の食事に、精神的に疲れる行為はやりたくなかった。
「では、あたしが初めてか!」
「まあ、ここではそうなりますかねえ……」
「『ここでは』っ!? お前、分校以外では、他の女とこんなことをやっているのか!?」
みやびは興奮の余り、再び司に掴みかかる。
慌てた司は、必死で否定した。
(もう体力の限界である。これ以上戦えば明日は全身筋肉痛、シップ臭で教え子達からブーイングものだ)
「まっ、まさか! 男の友人とだけですよ! 流石に女性とはっ!?」
「なら、よろしい♪」
いつもなら『じゃあ、あたしは女じゃない、ということかっ!?』と激怒するところだが、今日は幸せ回路が働いているため、そこで矛を収める。
303:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:40:41 jd12nYrq0
ぶっちゃけ『栖香と美綺にもしていない』という事実が、『自分は特別』と脳内変換されているのだ。
要は気持ちの持ちよう、ということだろう。
……女心とは、実に複雑だ。
そんなこんなで、食事は賑やかながらも比較的平穏―あくまでこの二人の基準―に進んでいく。
司は黙々と鮨を食べ、そんな様子をみやびは御機嫌で眺めている。
一緒に食事をとる様になって知ったのだが、司は中々の健啖家だ。
食べるぺースも中々早い。男と女、という差を考えてもかなり早い方だろう。
……要するに、早喰い大喰らい、の類である。
にもかかわらず、その食べ方は不思議と人に不快感を与えない。
まるで、そういう作法でもあるのか、とでも思える様な綺麗で系統だった食べ方である。
みやびをしてそう思わせるのだから、ひいきを差し引いても中々のものだろう。
と、司の箸が急に止まった。
そして、不思議そうに首を捻る。
「司、どうした?」
みやびは心配になり、尋ねた。
304:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:46:06 jd12nYrq0
「?」
幾つか食べて、司はふと気付いた。気付いてしまった。
美味い、凄く美味い。
……けど、何か違うような気がする。
そう、何か一味足りないのだ。
もし、分校での食生活の大幅向上により、舌の経験値が大幅向上していなければ、気にもならなかっただろう、
もし、こうして幾つも食べていなければわからなかっただろう、
が、気付いてしまった。
「司、どうした?」
みやびの心配そうな声が聞こえる。
だから、司は思い切って尋ねた。
「理事長、もしかして…… これ、さびぬきですか?」
「うっ、うるさいっ! 別にいいだろう!」
図星をつかれ、みやびはうろたえる。
……実は今まで運ばれた鮨は、全て『さびぬき』だったのだ。
「いやまあ、そうなんですけどね」
まあ美味いからいいか、と考え直す司。
だがみやびにとり、その指摘は中々のダメージだった様だ。
顔を真っ赤にして反論をする。
305:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:50:18 jd12nYrq0
「おっお前っ! まさか、『さびぬきなんてお子様だなあ』なんて思ってるんじゃあないだろうなっ!?
違うぞ! 断じて違うっ! ああいう刺激物を食べると、繊細な味覚が破壊されるんだ! 脳細胞が破壊されるんだっ!」
だからわざと食べないんだ、と強硬に主張するみやび。
「いや…… だから別に気にしてませんよ……
僕だって、未だに苦手なものありますし……」
「嘘じゃない! その証拠を今から見せてやるっ!
リーダ! わさび特盛で御願いっ!」
聞いちゃいなかった。
「宜しいのですか?」
リーダは眉を顰めて否定的に確認する。
が、にも関わらず、みやびは強硬だった。
「あたしの誇りがかかっているのよっ!?」
みやびは、司に子ども扱いをされるのが我慢出来なかったのだ。
だから、運ばれたわさびを鮨に塗りたくり、それを一気に口に入れた。
「まてみやびっ! それは危険だ!」
危険なブツを口に放り込もうとするを見て、司は慌てて止める。
……が、遅かった。
306:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:53:05 jd12nYrq0
「――!? ~~~~!!!!!!」
辛さのあまり、みやびは理事長室中を転げまわる。
ゴロゴロ
ゴロゴロ
ゴロゴロ
そして途中で柱に頭を思いっきりぶつけ、停止した。
……正に踏んだり蹴ったりである。
「! 御嬢様!」
「みやびっ!?」
司は慌ててみやびを抱き起こす。
「どうですか、司様?」
「大きなたんこぶが……」
目を回すみやびの頭には、実に立派なたんこぶが出来ていた。
「……だから申し上げましたのに」
「しかし…… 負けず嫌いというか何と言うか……」
こうなること位わかるだろうに、と呆れた様に言う司。
307:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:56:24 jd12nYrq0
「そう仰らないで下さい。良い所を司様にお見せしようと、御嬢様も必死だったのですから」
「良い所、ねえ……」
自爆し、気絶したみやびを見て苦笑する。
本当に、努力が空回りする子なのだ。
「司様…… 実は御嬢様、和食はあまりお好きではないのです」
ですから食堂にも、殆ど和食が御座いませんでしょう、とリーダ。
「へ? じゃあなんで……」
「……そういえば司様、この間談話室のTVでお鮨の特集をじっと眺めて、溜息吐いてらしたそうですね?」
見られていたようだ……
「じゃあ、もしかして……」
「さあ? 流石にそれ以上はお答えしかねます。
ただ、御嬢様が別に好きでも無い物をわざわざ都内から取り寄せた、ということだけは御心にお留め下さいませ」
「…………」
司は黙って目を回すみやびを眺め続ける。
……本当、不器用な子だ。
「ありがとう、みやび」
308:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 14:59:26 jd12nYrq0
司は、やさしくみやびの頭を撫でた。
「……先生、理事長とお楽しみでしたか?」
「うおっ!?」
理事長室を失礼した途端に背後から声をかけられ、司は思わず驚きの声を上げる。
「……(ぺこり)」
「……なんだ、小曽川か脅かすなよ」
何時の間にか、傍らにハムスターを思わせる小柄な少女が立っていた。
彼女は気配も無く現れるので、実に心臓に悪い。
「何か勘違いしている様だが……
みや……理事長に御馳走になっだんだよ」
「……理事長をご馳走に?」
「違うっ!」
と、彼女は急に司に近づき、何やら盛んに鼻をクンクンさせる。
……そして、にやりと笑って指摘した。
「……先生、理事長の匂いが上着に染み付いてる」
309:名無しさん@初回限定
06/12/22 15:01:43 HG2INEWj0
支援。
310:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 15:03:19 jd12nYrq0
「げっ!」
慌てて司は上着の匂いを嗅ぐ。
……確かに、みやびの匂いがした。
どうやら取っ組み合いや抱き抱えたことで、匂いが移ったらしい。
「……(ぺこり)」
が、彼女はそれ以上追求せず、もう一度お辞儀をして去っていく。
「心臓に悪いなあ……」
そんな彼女を、司は呆然と見送った。
「あれ? センセ、何で上着脱いでるの?」
談話室を通りかかると美綺と栖香、そして奏といういつもの三人組がいた。
「いや、ちょっと暑くてな…… 時に、仁礼はどうしたんだ?」
栖香は呆然と立ち尽くしている。
その視線は、自分の右手―何故か『じゃんけんのちょき』を形作っている―に注がれていた。
そしてやたら嬉しそうな美綺に、そんな二人をオロオロと見比べる奏……
まあなんというか、三者三様だ。
「ああ、勝負の世界の厳しさを思い知ったんだよ」
311:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 15:08:26 jd12nYrq0
と美綺は何故か拳を握り、『じゃんけんのグー』を形作る。
「?」
今ひとつよくわからないが、どうやら栖香は美綺とじゃんけんをして負けたらしい。
が、如何に負けず嫌いの栖香とはいえ、幾らなんでもそれだけであそこまでの反応は示さないだろう。
……何か賭けていたのだろうか?
「それよりセンセっ! 今度の外出日、一緒にお鮨食べに行こうよっ!」
「急に、どうしたんだ?」
「ん~、急に食べたくなっちゃってね~ センセも食べたいでしょ?」
ここじゃあ食べられないからね、と美綺。
「まあ構わんが……」
「やった! 久し振りだよね~ センセもそうでしょ?」
思わずガッツポーズをとる美綺。
が、司の次の言葉に、思わず唖然としてしまう。
「つい昨日までは、な? けど鮨なら今さっき、理事長からご馳走になったぞ」
「え、みやびーがっ!? ……くっ、職権乱用だよっ!」
折角の『計画』を潰されて、美綺は思わず拳を握り締めた。
312:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 15:10:12 jd12nYrq0
美綺(と栖香)もみやびと同様に、司に鮨を食べさせてあげようと考えていたのだ。
で、どちらが行くかを巡り、じゃんけんで決着をつけた、という訳である。
……しかし一歩遅かった。これでは折角の計画も効果半減どころの騒ぎでは無い。
故に美綺は、特権をフルに利用してフライングしたみやびを思わず罵ったのだ。
……が、朴念仁な司にそんな事情を汲み取れるはずも無い。
司は、美綺の反応をただ『自分達だけ鮨を食べてずるい』と考えているのだろう、と実に安直に考え、美綺を諭す。
「お前、そんなに鮨が食べたかったのか?
でもな、あれで理事長と言う仕事は結構大変なんだ。それ位大目に見てやれよ」
「センセって、みやびーに甘いよね」
しかし司の言葉は逆効果だった。
美綺から見て、最近の司はみやびに構ってばっかりいる。
もう少し位、自分達に時間を割いてくれても罰は当たらないだろう。
無論、みやびが飛び抜けて司を独占している、という訳では無い。実際には美綺と栖香の方が多い位だ。
が、彼女達から言わせれば、自分達は司と過ごす時間の大半を複数で過ごしているため、二人きっりになっている時間はみやびと比べ余りに少ない、という不満があった。
……まあそれを言うならばみやびとて大概リーダと一緒なのだが、そんな理由は恋する乙女には通用しないものなのだ。
「そうか? お前等にも結構甘いと思うが……」
313:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 15:15:59 jd12nYrq0
司は美綺の言い分に首を捻る。
流石にみやびは、美綺や栖香の様に夜間部屋に押しかける様な真似はしない。
外出日の相手だって美綺か栖香のどちらかだ。
そんな司を、美綺は実に冷やかに見る。
「……センセは最近、随分みやびーと一緒に食事するよね……」
「まあ仕事上、よく会うからな」
けど一緒にとるのは仕事の日だけであり、それ以外は昼夜はこの三人、朝は栖香とが大半だ。
「何か、いつも凄く高いものばかり御馳走されてるよね……」
「まあそうだかもしれんな。しかし、さすが理事長はいいもの食べてるよなあ」
ここの食堂で出される食事も美味いが、みやびの所の食事はその更に上を行っている。
ああいうものが食べられるなら、また是非御相伴に預かりたいものだ、と呟く司を、美綺はジト目で睨みつける。
そして、言った。
「……センセのヒモ」
「ぐぅあっ!」
314:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 15:19:06 jd12nYrq0
美綺にとっては、その場限りの思いつきに過ぎない悪口だったかもしれない。
が、その言葉は司にとり、まさに痛恨の一撃だった。
自分でも何となく感じていた漠然とした不安を、一言で言い表されてしまったからだ。
……自覚、あったんですね。
そんな司の様子を見て、美綺は溜息を吐きいた。
「センセ、『タダより高いものは無い』って言葉、知ってる?」
みやびに借りを作り過ぎ、ということだろう。
「むむう……」
思わず考え込んでしまう。
……考えてみれば、僕は近頃随分みやびに御馳走になってるじゃあないか!
気分はすっかり飼い犬である。
―司よっ! お前は、身も心も堕落してしまったのかっ!?
どこからか、そんな声が聞こえた様な気がした。
(*気のせいです)
315:かにしのSS『野生を取り戻せっ!』前編
06/12/22 15:22:02 jd12nYrq0
―飼い慣らされ、野生を、牙を失ってしまったのかっ!?
(*始めから持っていません)
ふと空を見ると、大空に虎頭の男が、マントを翻して浮かんでいた。
司の心の師、タイガー○スク(漫画版)である。
(*絶対気のせいです。第一、今は夜だし、ここは部屋の中です)
「あっ、貴方はっ!?」
―司よっ! 虎だっ! お前は虎になるのだっ!
その言葉が胸を打つ。
「……確かに、堕落してしまっていたかもしれない」
「うんうん、そうだよ! だから、みやびーにもっと毅然とした態度を……」
我が意を得たり、と頷く美綺。
が、司は聞いちゃあいなかった。
(まあそれは美綺も同様なので、お互い様ではあるが)
―何としても、赴任前のワイルドな僕に戻らねばっ!
こうしてすっかりその気になった司は、『野生を取り戻す』為の特訓を開始することとなった。
……実にノリ易い男である。
316:『甘くない』の者です
06/12/22 15:30:44 jd12nYrq0
SS投下終了です。
しかし、何かスレ独占し過ぎてるような気がする。
すこし自重した方が良いだろうか?
317:名無しさん@初回限定
06/12/22 16:01:58 DlYV7xvf0
まあ読みたい人がいるんならそれで良いんじゃないの?
初期の段階でオリ設定多すぎで俺は読むのやめたし。
2chで気に入らん物にいちいち文句付けてたらきりないでしょ
過疎化するよりは定期的に投下があった方が新規の人とかも書きやすいだろうし
318:名無しさん@初回限定
06/12/22 17:27:01 HG2INEWj0
>>316
乙です~
どちらも読んでいるので、個人的にはどんどん投下して欲しい。
と言うか、ここは過疎る時は思いっきりそうなってしまうので、独占とかは気にしなくてもいいのでは。
しかし、ヒモの自覚があったのか、司(w
その自覚があるのにほいほい誘いに乗ってしまうのはもう末期かも。一番経済力ないからなー
319:285
06/12/22 17:51:18 igi509Ac0
>290 アンカー一つ間違ってますねwwww……
>285 → >287ですねぇ……
「甘くない」さんのSS楽しく呼んでますのでウチ
てか自分、クロス物を書く時は設定キチンとせぇへんかったから、途中で止まっちゃったorz
320:名無しさん@初回限定
06/12/22 19:53:08 YhGAPAE+0
>>316
独占なぞ気にせずばんばん貼っちゃいなYO!
とかつて今以上の独占状態にしてた俺が一言
321:温泉の人
06/12/22 19:53:40 YhGAPAE+0
すまん。>>320は俺
322:名無しさん@初回限定
06/12/23 11:27:10 HvchRoxC0
はぴねすSSはゲーム本編でもハーレム?ルートがあったから気にならんけど
かにしので意味もなく本校分校まとめてゴー的ハーレム状態は勘弁シテクレ
オリ設定は別に気にしない
でも御薙はどこの恥女だ?ってのが正直な感想
投下するなってわけじゃないので誤解しないでくれ
こーいう意見もあるんだ程度で
でも三次創作はさすがにスレ違いだと思うんだけどな
323:名無しさん@初回限定
06/12/23 11:59:57 nP9Inv6E0
>316
時々そう言う心配をする書き手さんがいるけど、気にしなくていいでしょ。
ここはたまーに突発的に人が増える以外は、大抵こんな感じ。
はぴねすの方は原作未プレイだからよく分からないけど、麗しのの方は好きだし。
>322
>かにしので意味もなく本校分校まとめてゴー的ハーレム状態は勘弁シテクレ
原作完全準拠とか言ったら、倉庫にあるSSの半分以上否定していると思う。
324:名無しさん@初回限定
06/12/23 17:03:18 XrAKYdqd0
俺はむしろ本校、分校キャラが絡む話がみたいから全然おkだな。
325:名無しさん@初回限定
06/12/23 18:16:21 5UaP9+pO0
リーダさんと鏡花を出してくれれば俺が喜びます
326:名無しさん@初回限定
06/12/23 20:14:20 u70d3zxc0
>325
俺も喜びます。未プレイですが。
327:名無しさん@初回限定
06/12/24 01:33:57 Q0NtIZCu0
分校組と本校組が絡むのはみさきちルートなんか見ても楽しそうだけど
全員が全員「司(先生)スキスキー」ってゆーのは食傷気味だけどね。
鍵系のSSにそーいうの多かったし。ヒロイン全員が理由もなく主人公好き好き大好きで
主人公は何でもできるし気配りもしっかりしてるけど、なぜか女心にのみ疎いwっていう
U-1だっけ、そんなハーレムもの。
「甘くない」はまさにそのものに見えるけど、はぴねす!の伊吹ルートの終わり方はまさに
ハーレムENDだったからなあwある意味原作完全準拠?
>>323
ハーレムものと、ALLキャラ出演SSは別物じゃない?
328:名無しさん@初回限定
06/12/24 03:46:05 VkIVJnZf0
既に既出の意見だが分校キャラと本校キャラの絡みは興味深い。
ようするにおもしろければなんでもいいんじゃないかなぁ?
(人それを、『思考停止』と呼ぶ!)
いや、正直かにしのSS職人には是非とも頑張ってもらいたいのだよ。
329:『甘くない』の者です
06/12/24 10:25:29 dSjgh+Lm0
>>317、322~328
様々な御意見、御感想有難う御座いました。
何だか御迷惑をおかけしたようで申し訳ありません。
厳しい御意見に関しては、要は自分の修行が足りない、ということでしょう。
(実際、修行が足りないことは自覚していますし……)
これらの御意見は有り難く頂戴させて頂きます。
>>318
318様、有難う御座います。
>ほいほい誘いに乗ってしまう
食器の値段は未だに気になります(だって落としたら割れるから)が、食事に関してはもうすっかり慣れたようです。
>>319
285様、有難う御座います。
>「甘くない」さんのSS楽しく呼んでますのでウチ
有難う御座います。そう言って頂けて何よりですよ。
>>320、321
>独占なぞ気にせずばんばん貼っちゃいなYO!
有難う御座います。気が楽になりましたよ。
330:へたれSS書き@保管サイト”管理”人
06/12/24 12:01:09 SCcIt7/30
このスレの趣旨って「SSを書きたくなったら書き捨てられる場所」でいいんじゃないかなー
って、昔からスレに関わってる爺は思いますですはい。
だからま、難しい事とかつまんない事は抜きにして、書きたい人が書きたいように書ければ
他はどうでもいいんじゃね?
個人的にスレ埋め立て用に鬼哭街設定使った99%オリジナル話とかちまちま書いてたり
するしなー
331:名無しさん@初回限定
06/12/24 12:03:07 bdAze08C0
書き捨てられるとか言うなよ
332:名無しさん@初回限定
06/12/24 16:14:44 nWIwkOWj0
拾う(三次創作する)人もいるかもしれないしw
333:温泉の人
06/12/24 22:06:58 pZbWcNEB0
はぴねす方程式があまりによすぎてmp3で1日中かけてた俺が来ましたよノシ
聴いてるとはぴねすなイメージがこの上なく膨らむ膨らむw
さて前回予告かけてからもう1ヶ月は経とうとしてるところなんで、
自分に発破かけるためにも出だしだけ先にうpしとこうと思います。
毎度おなじみ、雄真×春姫のラブエロなお話です。
ではでは。
「はぴねす!」より「Active?/Passive?(プロローグ)」
334:Active?/Passive?(プロローグ)(1/6)
06/12/24 22:08:05 pZbWcNEB0
「……そう。そのまま……気を杖(ワンド)に集中させて……」
「……こうか? 春姫……」
ぴんと張り詰めた森の空気。
春姫の指導に従い、先生から借りた練習用の杖にじっと魔力を集中させる俺。
「……うん。それじゃ今度は……集まった光を、ぎゅっと収縮させて……」
「ん……わかった……春姫……」
俺はじっと目を閉じ、イメージを集中させる。
俺の力がまばゆい光の塊となって、俺の杖の先に収束するイメージ……
「エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ……」
杖の先に集まったそれを、俺はじわじわと拡大させ……
「カルティエ・エル……アダファルス」
……詠唱は終わった。
ゆっくりと目を開け、光が澱みなくそこに集まっていることを確認する俺。
「うゎ……」
美しい光だった。
春姫が初めて見たという魔法の光を形容するなら、きっとこんな感じなのだろう。
「……もういいよ、雄真くん。力、抜いても」
「あぁ」
すっと力を抜き、全身に溜まった緊張をときほぐす俺。
それと同時に、杖の先に集まった光も拡散してかき消えてゆく。
335:Active?/Passive?(プロローグ)(2/6)
06/12/24 22:09:09 pZbWcNEB0
「雄真くん!」
やがて春姫が、嬉しそうに俺の元へと駆け寄ってきた。
「すごいよ雄真くん! こんな短期間で、もうこんなに魔力制御できてる」
「そ、そっか……?」
今俺がやってたのは、光の魔法の制御特訓。
魔力で生み出した光の粒子を自在に操るという、魔法使いにとって初歩の初歩とも言える訓練。
ぶっちゃけると……春姫ならきっと寝てても使えるレベルの魔法なのだ。
それができたくらいで、何もこんなに喜ばなくっても……
「うぅん。雄真くんはやっぱりすごいよ!
ここまできっちり制御できるようになるまで、ホントならあと数週間くらいはかかるもん」
「そ、そんなすげぇものなのか? これって」
「あーあ、このまんまじゃいつか雄真くんに追い抜かされちゃうなぁ……
私も、もっと頑張んなきゃ」
春姫といっしょに魔法の特訓を始めてはや数ヶ月。
その間中、春姫はいつもこんなだった。
俺が何か魔法を成功させる度、まるで自分のことのように喜んでくれる春姫。
まるで……初めて魔法に出会った時のように、目をきらきらと輝かせながら。
そしてそんな春姫を見る度、俺は何だかちょっとむず痒い気分になって……
そんな春姫の喜ぶ顔を何度でも見たくて、俺はより一層頑張ろうって気分になるんだ。
「それじゃ、準備はこのくらいにして……そろそろ始めよっか、雄真くん」
「あ、あぁ……春姫」
春姫は俺から少し距離をとると、ソプラノを構え静かに詠唱を始めた。
今の俺には詠唱することすらままならない、高度なフィールド魔法。
(やっぱ……すげぇサマになってるよな……春姫……)
春姫はさっき、いつか俺に追い抜かされちゃうかもって言ってたけど……
こんな複雑な魔法を事もなく操ってしまうところを見せられると、
こっちこそ追いつけるのはいつになるんだろうって思わされてしまう。
336:Active?/Passive?(プロローグ)(3/6)
06/12/24 22:10:20 pZbWcNEB0
「……ふぅ」
春姫が詠唱を終わらせると、辺りは凛と静まり返った空気で満たされた。
まるで清浄な無菌ルームに入ったような、とても静かで清潔な空間。
「これでよし……と。さ、始めよっか。雄真くん」
「あ、あぁ……春姫」
返事をしたものの、どうも気持ちが傾かない。
数日前から特訓メニューに加えられた、春姫との実戦形式の訓練。
しかしこれは、言い換えれば……恋人でもある春姫に向かって魔法を繰り出す特訓なわけで……
いくら何でも春姫相手に本気で魔法を撃つのは……どうにも気が引けるわけで……
……いや。俺は決して春姫の実力を侮っているわけではない。
むしろ今の俺が全力で挑んだところで、春姫にはかすり傷ひとつ負わせることはできないだろう。
だけど……こういうのって何つーか……理屈でどうこうできる問題じゃないんだよな……
「……やっぱり気が進まないかな? 雄真くん」
そんな俺の心情を察してか、春姫がうつむきながらつぶやく。
「まぁ……ね。頭ではわかってるんだけど……
俺がもしヘマして、春姫のことを傷つけてしまったらって……少し恐怖はある」
「私なら大丈夫だから……ほら。早く始めよ? 雄真くん……」
「……あぁ……」
なおも気が進まない俺を前に春姫はしばらく考え込んでいたが、やがて顔を赤らめつつ提案した。
「だったら……もし雄真くんが勝ったら……私のこと、好きにして……いいよ」
「えっ……!?」
小さな声だったが、俺にははっきりと聞き取れた。
もし俺が勝ったら……春姫のことを……好きに……!?
それって……つまり……その……そういうことだよな……
337:Active?/Passive?(プロローグ)(4/6)
06/12/24 22:11:41 pZbWcNEB0
ぽわ~ん……
思わず俺は、敗北して俺にあんなことやこんなことまでされちゃってる春姫の姿を想像してしまう。
(何かそれって……すげぇ……魅力的かも)
って、ダメだろ俺!!!
いくら何でもそんな不純な動機じゃ、春姫に申し訳なさすぎる……
「ダメだ春姫……いくら何でも、そんな条件は飲めない」
「だったら、もし私が勝ったら……私が雄真くんのこと好きにするってことで……
それじゃ、ダメかな?」
「……」
つまり……俺が勝ったら、俺が春姫のことを好きにできて……
俺が負けたら……逆に春姫が俺のことを好きにできて……
(何かどっちにしても……俺がおいしい目に遭うだけのような気が……)
しかしさすがにここまでくれば、俺にも春姫の気持ちは理解できた。
春姫はきっと、俺に一刻も早く立派な魔法使いになってほしいという思いがあるんだろう。
そうでもなきゃ、御薙先生の頼みとはいえ……こう毎日毎日俺に付き合ってくれるわけがない。
それなのに……ただ傷つけるのが怖いだなんて情けない理由でその想いを無碍にしちゃ、
さすがにカッコ悪くて、春姫に顔向けできないよな。
「わかったよ春姫……その条件、飲むことにする」
「うん! じゃあ、よろしく頼むね……雄真くん」
「あぁ……行くぜ、春姫」
先程までの和やかな空気を捨て去り、凛とした覚悟で互いの杖を構える俺達。
たった今、この瞬間から……俺達は恋人じゃなく、ひとりの戦士となる。
338:Active?/Passive?(プロローグ)(5/6)
06/12/24 22:12:55 pZbWcNEB0
「ソプラノ……」
「はい、春姫……」
春姫の念に呼応し、ソプラノの先端が紅い輝きに包まれる。
(来る……)
その動きに反応して、俺は静かに詠唱を始めた。
「エル・アムスティア・ラル・セイレス……」
春姫の攻撃に備えるべく、少し前に教わったばかりの抵抗(レジスト)魔法を詠唱する。
本来なら春姫の詠唱が終わるより先に機先を制し、流れを引き寄せておくのが筋なのだろう。
だが……彼女の戦法は、恵まれた防御魔法を軸に置いた攻防一体の型……
俺程度の魔力で下手に先んじようとすれば、その攻撃は全て無効化されるばかりか、
かえって彼女に攻撃の隙を与える結果となる。
だが逆に言えば戦法の軸を守りに置いてる分、一撃一撃の威力は大したことはない。
(いやそれでも、本格的に魔法を学び始めたばかりの俺よりは強力な一撃を放てるのだが)
それを抵抗によってうまく受け流すことができれば、流れを一気に引き寄せることができる……
だからこそ俺は下手に先んずることなく、相手の攻撃を受け止める手を選んだのだ。
「あくまで守りに徹するのね……なかなか利口な方法だと思うよ」
「あぁ……悪いが、春姫の実力を甘く見る気は一切ないからな」
「だけど……それだけで、私に勝てるのかな?」
「え……?」
ぽわっ……
「!!?」
刹那、青白い光の柱が何本も俺の周りに発生し……
光の出力が終わると、あたり一面にいくつもの魔法陣が俺を取り囲む形で出現していた。
339:Active?/Passive?(プロローグ)(6/6)
06/12/24 22:14:48 pZbWcNEB0
「これは……」
「言い忘れてたけど、この森にはいくつもの魔力蓄積ポイントが設置されてあるの。
それらは私の一声で、あなたを縛る鎖にも、あなたを傷つける地雷にもなりうる」
「そんな……まさか……」
「……裕著に守りに徹してる余裕なんて、ないんじゃない?」
「くっ……」
……俺はどうやら勘違いしていたみたいだ。
確かに守りに徹していれば、負けることはないが……
こちらから果敢に攻め込まない限り、絶対に勝つこともできない……
もともとこの試合、俺には負けて当然の戦なのだ。
だとしたら……今更当たって砕けることを恐れていても仕方がない。
今はただ、真っ直ぐ勝利へ向け突き進むのみ……!!!
「エル・アフラシア・ラル・セイレス……」
つぶやき、一気に間合いを詰める……!!
「……させないわよ、雄真くん!! エル・アムダルト・リ・エルス……」
こちらに向けられたソプラノの先端が、鮮やかな紅蓮の閃光を放つ。
真っ直ぐ俺に向けられた、明確な攻撃の意思。
刹那、俺は……
にア 危険を顧みず、そのまま飛び込んだ
危険を察知し、横へと回避した
340:温泉の人
06/12/24 22:15:42 pZbWcNEB0
とまぁ、ここから選んだ選択肢に従って互いの勝敗が決まり、
攻め役の異なる2種類のHシーンに分岐するって感じ。
で、現在の進捗はと言うと・・・
前者:オチまで執筆完了、細かいとこいくつか修正終わったら投稿可能
後者:ようやく執筆開始、全体の3~4割まで執筆完了(構想自体はもう出来上がってる)
てなわけで、とりあえず次回前者から投稿していきたいと思います・・・
後者もできれば年内に公開できるよう頑張りますので、どうかお楽しみにノシ
341:名無しさん@初回限定
06/12/26 00:23:41 K87YVZpQ0
楽しみです
342:名無しさん@初回限定
06/12/26 01:42:36 VJ9DvX5w0
「退かぬ、媚びぬ、顧みぬ!我が魔に防御の構え無し」の選択はー?
343:『甘くない』の者です
06/12/26 12:47:57 y+b++8il0
投稿乙です。
自分は1で。男らしく(?)玉砕覚悟の突撃を!
344:名無しさん@初回限定
06/12/26 22:25:11 fz9jHxbd0
>>342
それって結局1にならね?
345:温泉の人
06/12/28 22:41:37 SH/0ZrqR0
ようやく明日から冬期休暇( ´Д)=3
てなわけで早速1つ目の選択肢から投稿していこうかと思います。
今回の話は、今まで以上に人を選ぶ部分があるかも・・・;
てなわけで、読み進めていてちょっとでもヤな予感を感じた方は速やかにNG推奨です。
(一応読んでて後味悪くない話には仕上げてるつもりですが)
では早速参りましょう・・・
ピッ
にア 危険を顧みず、そのまま飛び込んだ
346:Active?/Passive?(UMA○○編)(1/24)
06/12/28 22:42:52 SH/0ZrqR0
「……ディ・ルテ・エル……アダファルス!!!」
ボウッ!!!
俺の目前に、おびただしい炎の帯が迫り来る。
俺は指輪をはめた左手を、ぐっと前に押し出し……
「ディ・ラティル・アムレスト!!!」
ガキィン!!!
即席のバリアで、春姫の攻撃魔法をそのまま押し返す!!!
「え……」
眼前の展開に驚く隙も与えず、俺は一気に春姫の懐へと詰め寄った。
「!!! エル・アムダルト・リ・エルス……」
(!?)
俺はその言葉に一瞬違和感を感じつつも、杖を構えた右手を突き出し、
そのまま一気に呪文を唱えた……!!
「ディア・ダ・オル・アムギア!!!!」
「!!?」
しゅるるるる……
春姫の足元から、鈍色の蔦が幾筋も伸びてくる。
「まさか……こんな短い詠唱時間で……!?」
それらは確実に彼女の全身を取り囲み、動きを拘束させる……!!
「あ……」
勝負は終わった。
俺の拘束魔法に絡め取られ、ぺたんと力なく地面に座り込む春姫。
347:Active?/Passive?(UMA勝利編)(2/24)
06/12/28 22:43:50 SH/0ZrqR0
「まさか……両手別々に魔法を準備してたなんて……」
「あぁ。片手で魔法準備してた時、空いてるもう片方の手が気になってさ……
ひょっとしたらこれ、2つ同時に魔法準備できるんじゃないかなって」
「そんなこと、私思いつきもしなかったな……私の負けだよ、雄真くん」
「へへっ。こう見えても俺、発想力には自信あるからな」
負けたというのに妙に嬉しそうな春姫に、俺もおどけて返してみたが。
やっぱり気になるのは……さっき感じた違和感……
本当にこれで、勝ったと言えるのか……? 俺……
パチパチパチ……
「なかなかいい勝負だったわ、雄真くん」
折りしも後ろから、御薙先生が拍手などしながらこちらに近づいてきた。
「神坂さんの言うとおりね。この短い教育期間で、まさか二元同時詠唱までやってのけるなんて……
さすがは私の息子といったところかしら?」
「ありがとうございます……先生」
先生の賞賛の一言に、俺も素直に頭を下げるが。
「だけど……浮かれているところ悪いけど、これで神坂さんに勝てたとは思わない方がいいわよ」
「え……」
先程とはうって変わった先生の言葉に、俺は思わず呆気に取られる。
「それって、どういう……」
「せ、先生!! あのことは、雄真くんには秘密にしてって」
「神坂さん。わざわざ隠さなくても、遅かれ早かれ彼は知ることになるわ……
それに今目先の勝利に浮かれていては、これ以上の成長なんて見込めないわよ」
「先生……」
348:Active?/Passive?(UMA勝利編)(3/24)
06/12/28 22:44:47 SH/0ZrqR0
先生の言葉に一喝される春姫を見て、俺の違和感は最高潮に達した。
やっぱり春姫は……俺に何か隠している……
「どういうことですか? 先生」
「あなたも漠然と感づいてるはずよ……彼女が何故、あなたの攻撃に即座に反応しなかったのか」
「あ……!!」
そこまで言われて、ようやく俺は気づいた。
「春姫は、あの時……わざわざ初めから詠唱を始めてた……
本来ならそこまでしなくても、ほんの2言で済む詠唱のはずなのに……」
「ご名答。さすがは私の息子ね」
先生は嬉しそうに肩をすくめ、解説を始める。
「魔法はそもそも、術師の内外に存在する魔力を言霊により制御する技術……
詠唱とは、その魔力制御のために言霊を紡ぐ行為を指す。これはもう随分前に習ったわね」
「はい……」
習ったも何も、英語で言えばABCに匹敵するくらい基本的な概念だ。
「そしてこの詠唱の流れは、大きく分けて3段階に分かれる……それは何だかわかる? 神坂さん」
「はい……えっと、始動・命令・制御です」
「そのとおり。魔力を制御するには、まずその魔力を制御できる状態に整えてあげなければならない……
その為に紡がれる言霊が、いわゆる『始動キー』よ。
あなたたちが何気なく紡いでいる『エル・アムダルト・リ・エルス』の文も、この始動キーの一種」
「……」
俺は黙って、先生の言葉に集中している。
「だけど一度始動の完了した魔力は、しばらくの間始動をかける必要はない……
そう。始動キーを外していきなり命令→制御のプロセスに移行することが可能なの。
このプロセスを、俗に『詠唱短縮』と呼ぶわ」
「ということは……つまり……」
「察してのとおり、彼女は始動キーの必要ないタイミングでわざわざ始動キーを入力していた……
あなたの言うとおり、本来ならほんの2言で詠唱が済むところをね」
「そう……だったのか……」
おかしいと思ったんだ。
あの春姫が……にわか仕込みの俺に、こうもあっさり敗北を許すなんて……
349:Active?/Passive?(UMA勝利編)(4/24)
06/12/28 22:46:00 SH/0ZrqR0
「ということは……あの時もし春姫が詠唱短縮を行ってたら……」
「まぁ遅くても、あなたが神坂さんに攻撃を仕掛けた地点で終わってたわね」
「……やっぱり……」
にわかにうつむき考え込む俺に、先生が励ましの言葉をくれる。
「そんなにしょげることはないわ。むしろあなたはすごく健闘した方だと思うけど?
二元同時詠唱なんて、並みの魔法使いでもなかなか使いこなせないというのに」
「……そう言っていただけると、俺も救われますよ」
半ば自嘲気味に笑みをこぼし、俺は先生にお礼を言った。
「ご指導ありがとうございます!! さっそく帰って、今日の復習に取り掛かりますね」
「まぁ、勉強熱心なのね♪ それくらいの真剣さが、他の生徒達にもあるといいんだけど」
「ハハハ……今日は本当にありがとうございました!!」
そのまま嬉しそうに退場してゆく先生。
やがて先生の気配も消えると、辺りに少し気まずい空気が流れる。
「……ごめんね、雄真くん……わざわざ、手加減するようなことして……」
未だ拘束から抜けずにいる春姫が、心底申し訳なさそうに言葉を投げかける。
「……まぁ、ショックじゃないといえば嘘じゃないけど……
変だとは思ってたよ。春姫が俺なんかに、こんなあっさり負けるわけないだろって」
「うん……ホントにごめんね、雄真くん」
「気にすんなって。春姫はきっと、俺に花を持たせてくれるつもりだったんだろ?
その気持ちだけで、俺は十分だって」
「うん……確かに、それもあるけど……」
そこまで言った後、春姫は何か気恥ずかしそうに顔を逸らす。
350:Active?/Passive?(UMA勝利編)(5/24)
06/12/28 22:47:00 SH/0ZrqR0
「……物足りなかったの……雄真くん最近、あんまり積極的じゃないし……
たまにはその……雄真くんに……いろいろ、してほしいなぁって///」
「あ……///」
思い出した。
思えば俺、春姫に勝てば春姫のこと好きに出来るって約束してたんだっけ……
(ぁ……うぁ……)
急に心臓がどきどきしてきた。
脳内にどんどん広がってゆく、果てのない妄想の数々……
まじかよ……
今から俺、春姫に……そんなことまでしちゃっていいのか……?
「……雄真くん?」
「あ……」
視線が、重なり合う。
ただそれだけのことで、俺の心はぴくんと激しく飛び跳ねる。
顔中に血が上ってきて……あまりの熱さに、頭がくらくらしてくる。
「……いいよ……雄真くん……私のこと……好きに、して……」
狂おしく俺を誘う、春姫の甘い一言。
その誘惑に逆らうことは、到底出来そうになかった。
「春姫……」
「雄真くん……んっ」
半ば奪うかのような、強引なキス。
唇を離せば、そこには熱く潤んだ春姫の瞳……
そこから、俺はもう何も考えられなかった。
ただひたすら、欲望に溺れてゆく……
351:Active?/Passive?(UMA勝利編)(6/24)
06/12/28 22:50:40 SH/0ZrqR0
「こう、で……いいかな……雄真くん……」
「あぁ……そんな感じ」
女の子座りの格好で、幹のふもとに腰掛ける春姫。
そのまま春姫の両手を後ろに回し、そこで固定する。
「んじゃ、行くぞ……春姫……」
「うん……」
「エル・アフラシア・ラル・セイレス……」
たった今決め手で使った、俺の拘束魔法……
それをあえて使うことで、春姫の被虐心を何倍にも高める作戦だ。
「ディア・ダ・オル・アムギア」
「!!」
詠唱と共に、先程よりも小さめの蔦蔓が春姫の手首を取り巻いた。
これでしばらく、春姫は身動きはとれない。
張りのある乳房を無防備に曝け出してる春姫の様……
彼女のエロティックな魔法服姿もあいまって、否が応にも興奮が高まってくる。
「それじゃ、改めて……」
「ん! あんっ……」
俺はそっと、春姫の豊満な胸に手をかけた。
そのまま彼女の性感をおびき出すが如く、ゆっくりと揉みしだいてやる。
「あぁっ……雄真くん……それじゃ、いつもと同じ……ぁ、やぁっ」
「同じじゃねーって……こうやって縛られながらやるのも、悪かねーだろ?」
「うぅ……雄真くん、何だか目がきらきらしてる……」
春姫が顔を赤く染めながら、不貞腐れるように頬をふくらませる。
「やっぱり雄真くん……こういうの……好きなんだ……」
「……好きにしていいって言ったのは、春姫の方だろ?」
「うぅ……だけど……だからって……んっ!? ふぁぁ……っ」
俺は春姫の言葉を遮るように、胸を揉む手に力を入れた。
352:Active?/Passive?(UMA勝利編)(7/24)
06/12/28 22:53:49 SH/0ZrqR0
「んぁ……雄真く……それ、強すぎるよ……んん、はぅ……っ」
「いいから黙ってろって……悪いようにはしねーからさ」
「はぁぁ……ぁっ、ふぁ……っ、ぁっ、あぁ……っ」
いつもよりも意識的に、揉む力を強めて。
春姫の被虐心を存分に引き出すべく、俺は胸への愛撫を続ける。
「ぁあっ、はぁ、やぁぁ……ぁん、はぁ、あ、はぁ……」
必死に身をよじらせるも、両腕を縛られているため満足に動くこともできず。
結局春姫は為す術もないまま、俺に胸を揉まれたい放題になっている。
「はぁ……はぁ……春姫……」
「んんっ、ぁぁ……はぁ……あぁ……っ、んぁ……ふぁぁ……」
瞳に涙を溜め、顔を紅潮させながら、胸への愛撫に耐える春姫。
その様は……とてつもなく扇情的で……エロい。
この感じやすい胸を直接触ってやったら、一体どうなっちまうんだろう……
俺は春姫のしどけなく喘ぐ様を一刻も早く見たくて、仕方のない気持ちになる。
「春姫……」
「あ……」
俺は胸を揉む手をしばし止め、春姫の前合わせのボタンに手をかけた。
そのまま次々ボタンが外されてゆくのを、呆然とした表情で眺める春姫。
やがて俺の目の前に、薄いピンク色の下着に包まれた春姫の双丘が顔を見せた。
こないだいっしょにランジェリーショップに行ったときに買った、桃っぽいデザインの下着。
「春姫……それ、つけてくれてたんだな」
「うん……だってこれ……雄真くんがかわいいって言ってくれたから……///」
「……春姫……」
まったく……この愛(う)い奴め。
それだけ気に入ってくれれば、こっちも脱がし甲斐があるってもんさ。
353:Active?/Passive?(UMA勝利編)(8/24)
06/12/28 22:54:53 SH/0ZrqR0
「それじゃ、さっそく……」
「あ……雄真くん……」
俺は静かに春姫のブラホックに手を伸ばし、ブラを外しにかかった。
ぱちん☆
「あ……///」
小気味のいい音と共に、春姫の乳肉がぷるんと外へ押し出される。
うーむ……相変わらず活きのいい奴。
春姫の見事なまでの胸に、毎度の事ながらついつい見惚れてしまう。
(……)
俺は春姫の胸からブラを取り除き、改めて春姫の胸に見入った。
真っ白な山の頂で所在なげに震えている、春姫のピンク色の突起。
まるで親とはぐれた子供のようなその様に、俺は妙な興奮を覚え……
「ゆ……雄真くん……そんなに、見ちゃダメだよ……///」
「すごく綺麗だな……春姫のおっぱい」
「だ……だから……恥ずかしいよ、雄真くん……///」
本来なら今すぐにでも、その恥ずかしいところを隠したい気持ちでいっぱいだろうに。
なまじ後ろ手に縛られてるせいで、隠すどころかむしろあられもなく突き出されて……
やばい。すごくいい、これ。
ちょっと軽く緊縛してやるだけで、こんなにえっちな絵が拝めるなんて。
「それじゃ、さっきの続き……」
「あ……ひゃあっ」
素肌に直接触れる手の感触に、思わず声を漏らしてしまう春姫。
驚くほど感触のいい、春姫の両の乳房。
俺は夢中になりながら、春姫の裸の胸を捏ねくり始めた。
「あっ、あ……ゆぅま……くん……はぁ、ぁぁ……」
時折ぎゅっと押し付けたり、左右で動かす方向を変えてみたりして。
俺は春姫の胸に絶え間ない刺激を与え続ける。
354:Active?/Passive?(UMA勝利編)(9/24)
06/12/28 22:57:17 SH/0ZrqR0
「んんっ、ん、ふぁ……っ、ぁぁ……ぁ……はぁ……っ」
徐々に指の方に、やわらかくもこりこりとした感触が伝わってきた。
乳輪の方までぷっくりふくれ上がった、春姫の敏感な乳首。
指で輪を作り、その乳首の根元のところをきゅっと絞り上げてみると、
乳房のやわらかさとはまた違った心地よい弾力が指に伝わってくる。
「はぁぁ……雄真くん……そこ、絞っちゃ……ん、あぁ……っ」
俺はその弾力をもっと味わいたくなり、指先で春姫の乳首を弄り始めた。
つややかで張りのある乳首を欲望の赴くままに擦り、引っ張り、揉みしだいてゆく。
「あ、あっ、あぁっ……それ、いい……いいよぉ……ひゃ、あっ、あぁっ」
ちょっと力を入れるだけで、ぴくぴくと可愛らしい反応を返してくれる春姫の乳首。
……ふと俺はその乳首に、とんでもなくサディスティックな思いが湧き上るのを感じた。
(……まさか……)
そんなことまでしちゃっていいのか、俺……?
いや……いくら何でもそれは、ちょっと変態っぽくないか……?
いくら何でも……あんなところで、春姫を……
(……)
俺はぼうっと霞む視界で、春姫の表情を眺める。
「んっ、ん……ぁ、はぁ……ん、ぁっ、はぁぁっ……」
先端に伝わる心地よさに、瞳を閉じながら喘ぐ春姫。
……何かもう、抑えきれないかも。俺。
どうせ言いだしっぺは、春姫の方なんだ。
今更春姫に何を言われようが、構うものか……!!
すっ……
俺は春姫の胸をいじる手を止め、そっと手を離した。
355:Active?/Passive?(UMA勝利編)(10/24)
06/12/28 22:58:11 SH/0ZrqR0
「……雄真……くん……?」
胸への快感が止まったことに、思わず目を見開きこっちを眺める春姫。
「やめ……ちゃうの……? もう……」
切なげに、訴えかけるように……春姫が虚ろな視線を向ける。
吐息の度に、春姫の乳房が余韻に浸るかの如くひくひくと揺れ動く。
「……やだよ……雄真くん……もっと……もっと、してほしいのぉ……」
あまりの虚しさに耐え切れなくなった春姫が、涙声で俺に懇願してきた。
さっきまであれだけ胸を見られるのを恥ずかしがってたのも忘れ、
俺の愛撫を求めてもどかしげにぐいっ、ぐいっと乳房を突き出してくる。
「……春姫……」
まったく……どこまでもエッチな奴。
そんなに胸をいじられるのがいいものなのかねぇ……
「……じゃ、お望みどおりいじってやるとするか」
「……雄真……くん……っ」
「あぁ……但し、今度はこっちで……な」
俺はそうつぶやくと、そっと自分のズボンのチャックに手をかけた。
「え……?」
予想外の俺の動きに、春姫が一瞬呆気に取られた表情になる。
俺はそんな春姫の心情も気にかけず、そのままチャックを下ろし……
「雄真……くん……?」
やがて俺は春姫に見せつけるように、期待に張り詰めたおのが逸物を取り出した。
おもむろに取り出された暴君のさまに、春姫は一瞬恐れおののくような表情をするものの、
まるで魅入られたかのようにそこから視線を反らそうとしない。
「なに……する……気なの……?」
俺はそんな春姫の視線に絶え間ない快感を覚えつつ、そっとそれを春姫に近づけ……
356:支援
06/12/28 22:59:31 srRwPB7z0
支援
357:Active?/Passive?(UMA勝利編)(11/24)
06/12/28 23:01:28 SH/0ZrqR0
「こうするんだよ……それっ!!」
「!!? ひゃぁっ……」
俺は膨張する自身の先端を、一気に春姫の乳首に押し当てた。
乳首を襲う予想外の刺激に、春姫が思わず悲鳴を上げる。
「あ、あぁぁあっ……雄真くん……そんな、ところで……あ、ひゃああっ」
俺はそれを春姫の乳首に押し付けたまま、先端をぐるぐると回し始めた。
自身の醜い肉棒の動きに合わせ、春姫の繊細な乳首がくるくると踊る。
固くなった先端が尿道口に入り込んで……すごく、気持ちがいい。
「ぁぅっ……ゃだ……雄真くんの、が……
私の……ちくびに……噛み、ついてるぅ……っ、ゃあぁっ」
先端を伝う淫(みだ)れた熱に、涙を溜め、涎を垂らしながら喘ぐ春姫。
「あぁっ、ぁあ、はぁぁ……ぁっ……気持ち、いいよぉ……ゅうま……くぅ……ん」
亀頭の先端が、じりじりと痺れてくる。
尿道を襲うぐりぐりした刺激に、俺も段々と我慢がきかなくなってくる。
俺は乳首を転がす動きを止め、まるで春姫の乳房に挿れるかのように自身を前後に動かし始めた。
「ん、あっ、あっ、あぁっ……だめ……雄真……くん……」
俺の動きに合わせ、乳肉に埋まり、突き出しを繰り返す春姫の乳首。
春姫の昂りに合わせ、俺の射精欲もぐんぐん募ってゆく……
「やぁ……ぁぁ……ぁぅ、はぁぅう……っ……ぁ、や、はうぅぅっ……!!!」
春姫がにわかに、全身をびくりと仰け反らせた。
俺はその動きを合図に、自身を春姫の乳首から離し……
358:Active?/Passive?(UMA勝利編)(12/24)
06/12/28 23:03:08 SH/0ZrqR0
びゅくっ、びゅくっ……!!
俺は春姫の乳房目がけ、一気に精を放っていた。
「ぁ、ぅぅっ、ゆぅま……くん……っ、ぁ、ぁあっ……」
熱を持った粘液が肌に飛びつく度に、春姫の体がびくびくといやらしく痙攣する。
びゅるっ、ぶちゅ、ぴゅるるる……っ
俺はそのまま春姫の体を自身の精液便所に見立て、最後の一滴まで春姫に浴びせかけるのだった。
「ぁっ……ぁ……はぁぁ……」
全身白濁まみれになりながら、全身をぴくぴく震わせ快楽の余韻に浸る春姫。
あまりに無残なその姿に、俺は一瞬我に返る。
(……やりすぎたかな……俺……)
いくら何でも、身動きできない女の子に好き放題白濁液ぶちまけるなんて……
いくら春姫が言い出したこととはいえ、調子に乗りすぎたかも。
「……大丈夫、か……? 春姫……」
俺はさすがに心配になって、春姫の様子をうかがってみる。
「んっ、ん……雄真……くん……」
春姫がそっと、虚ろな目をこじ開ける。
「悪ぃ……俺……ちょっと、調子に乗りすぎた……」
「雄真くん……」
だが春姫は嫌がるどころか、潤んだ瞳でひたすらこちらに訴えかけてくる。
まだまだ、こんなんじゃ物足りない……
そんな春姫の飽くなき欲望が、虹彩を通してぎらぎらと伝わってくるのがわかる。
「お願い……雄真くん……体、むずむずして……止まらないの……」
「春姫……」
……いらぬ取り越し苦労だったかな。
これだけエロい春姫を前に少しでも戸惑ってしまった自分が、少しだけ腹立たしく思える。
「……じゃ、そろそろ……いくぞ。春姫……」
「うん……お願い、雄真くん……」
359:Active?/Passive?(UMA勝利編)(13/24)
06/12/28 23:04:59 SH/0ZrqR0
「……雄真くん……」
俺は春姫の束縛魔法を解いてやると、木の幹にしがみつかせ、こちらにお尻を向けさせた。
不安げにこちらを振り向く、春姫の湿った視線。
その肉食獣に睨まれたウサギのような仕草に、俺の征服欲もじわじわ膨らんでゆく。
「……相変わらず、えっちな腰つきしてるよな……お前」
「あ……」
俺はスカート越しに、春姫の腰にそっと触れた。
そのまま俺は腰からお尻までのラインを確かめるが如く、掌をすっと滑らせてゆく。
「ん、はぁぁ……それ、えっちだよぉ……雄真くん……」
お尻に伝わる感触を味わうかのように、目を閉じながら甘く吐息する春姫。
……春姫の魅力を、あたかも胸だけのように語る人がいるけど。
長いこと春姫と触れ合ってきた俺から言わせれば、それははっきり違うと断言できる。
驚くほどに均整の取れた、春姫の見事な肢体。
おなかも、腰も、お尻も……全てが女の子らしく、丸くてえっちな稜線を描いているのだ。
「……手、入れるぞ……春姫……」
「んっ……雄真くん……」
俺はその曲線をもっと味わいたくなり、そっと春姫のスカートの中に手を差し入れた。
たくし上がったスカートから覗く、純白のガーターと火照った肌色とのアンバランス。
それを視覚で味わいながら、つやつやとやわらかな布の感触と
ぷりっと弾むようなお尻の弾力とのコントラストを楽しむ。
「……こうやってると何だか、痴漢にでもなったような気分だな」
「そんな……もんなのかな? これ……」
「あぁ……何つーか、ええケツしてるじゃねーか姐ちゃん、って感じ?」
俺はそう言いながら、わざとふざけて指先をいやらしく動かしてみる。
「ふふっ……雄真くん、それもしかして痴漢のつもり?」
俺のちょっとしたおどけに、からからと楽しそうな笑みをこぼす春姫。
360:Active?/Passive?(UMA勝利編)(14/24)
06/12/28 23:06:40 SH/0ZrqR0
「んー……違ったかなぁ? 今のは俺的にはオスカーもびっくりなくらいの好演技だったんだが」
「ふふっ、だって……ホントの痴漢だったらそんなこと言わないよ……あははっ」
ちょうどツボに入っちゃったのか、おかしそうに笑い声を上げる春姫。
「何だよ、そんなに笑うなよな……さすがの俺もちょっと傷つくぞ?」
「うん……ごめんね、雄真くん……あははっ」
ひとしきり笑った後、春姫はふと顔を赤らめつぶやきだした。
「……でも……雄真くんだったら」
「?」
「雄真くんにだったら……痴漢されちゃっても……いいかな」
「……っ」
……ったく……春姫のヤツ……
毎度毎度、俺をそそるようなことばかり言いやがって……
「……んなこと言うなら、もう止めてやんねー」
「え……ゆ、雄真くん……?」
俺は春姫のスカートの奥深くに手を突っ込み、春姫の下着をじらすようにゆっくり下ろしだした。
薄桃色の暗幕からじわじわと覗く、春姫の形のいいお尻。
白桃の如き表面は木漏れ日を反射してやわらかな産毛をふわふわと浮かび上がらせ、
くっきりと浮き立つ割れ目は、まるで何かを必死で護るかのようにきゅっと閉じられている。
「……好きにしていいって約束だったよな……だったら、もう遠慮なんかしねーぞ」
「雄真……くん……んっ、はぅっ……」
俺はそっとその表皮に触れ、やや乱暴にそのお尻を撫で始めた。
掌の上で尻肉が躍る度、春姫が湿っぽい溜め息を上げる。
「ん、んんっ……はぁ……お尻……ん、はぁ……っ」
ゆっくりと、それでいて激しく。
目前に投げ出されたそれの全てを感じたくて、俺は無心に愛撫を続ける。
361:Active?/Passive?(UMA勝利編)(15/24)
06/12/28 23:07:42 SH/0ZrqR0
「んんっ、んっ……やぁ……ゆぅま……くぅ……ん」
お尻に伝わる快感に、だんだんともどかしさが募ってきたのだろう。
俺の手の動きに合わせ、春姫がやるせなさそうにお尻を動かしてくる。
「……相変わらず行儀の悪い尻だな……そんな悪い尻には、こうだ」
そのえっちな動きに止め処ない欲望を感じつつ、俺は両手で春姫の尻肉をがしっと鷲掴みにした。
「え……」
春姫が戸惑いこちらを振り返るのも気にせず、俺は春姫の尻肉をぐにぐに揉み始めた。
そのままじわじわと親指を動かし、春姫の割れ目の方へとスライドさせてゆく。
「あ……」
その指の動きに、春姫も全てを察したのだろう。
「そんな……やだ……雄真くん……」
春姫がこちらを振り返り、目に涙をいっぱい溜めながら懇願してくる。
だが……ここまできて、今更止めるなんて真似が俺にできるわけもない。
俺は春姫の悲痛な訴えを無視し、ぐいっとその親指を外側へと引っ張った。
「~~~っっ!!!」
おもむろにこじ開けられたそこへの感触に、思わず顔をしかめ声にならぬ悲鳴を上げる春姫。
「……」
俺は改めて、春姫のそこに目を向けた。
真っ赤に腫れ上がり欲望の涎を滴らせる割れ目の上に、きゅっとすぼまった秘密の入り口がひとつ。
わずかに暗くくすんだその色に、俺は彼女の恥部を全て暴いてやった悦びでいっぱいになる。
「雄真くん……お願い……見ないで……」
もはや恥ずかしさも限界に達した春姫が、泣きながら俺に嘆願してくる。
そりゃ、そうだろう。
こんなところを他人に見られて、正気でいられる人間がそう何人もいるはずがない。
362:支援
06/12/28 23:11:13 srRwPB7z0
Active?/Passive? (UMA勝利編) をまだまだお楽しみください。
363:Active?/Passive?(UMA勝利編)(16/24)
06/12/28 23:11:22 SH/0ZrqR0
「ここもよくしてやるからな……春姫」
俺はその様にぞくぞくするような征服欲を感じつつ、春姫の割れ目に顔を近づけ深く息を吸った。
つんと刺し込む刺激臭の中にむわっと漂う、春姫の湿った女の子の匂い。
その卑猥な空気をたっぷり胸に吸い込みつつ、俺はそっと春姫のそこに舌を這わせた。
「ひゃっ!? ゆ、雄真くん……?」
お尻に伝う慣れぬ感触に、思わず可愛い悲鳴を上げる春姫。
俺はそのまま、夢中になって春姫のそこを味わい始めた。
穴の周囲を舌でなぞったり、しわの1本1本を舌先で丹念にいじってみたり……
ひくひく動くそこの反応を確かめながら、俺はただひたすらに愛撫を続ける。
「ふぁ……ぁ……はぁぁ……お願い……やめてよぉ……ゅぅま……くぅ……ん」
その倒錯的な快楽を、未だ受け入れられないのだろう。
その場所を愛でる度、春姫は喘ぎながらも悲痛な訴えを繰り返す。
「すぐによくなるって……春姫」
「ひゃあっ!?」
俺は欲望に任せ、尖らせた舌先を春姫の入り口に差し込んでみた。
そのまま舌をくりくり回し、春姫のそこに更なる刺激を加える。
「ひゃあっ、あっ、あぁ……そんな……舌、入れちゃ……」
入り口を舌で弄る度、可愛らしい鳴き声を上げる春姫。
もっともっと、彼女の中を知りたい……
俺は舌での愛撫をやめ、今度は指先で春姫の入り口を愛でてあげた。
「ん、んんっ……気持ち……悪いよぉ……雄真くん……
おしり……んっ、むずむず……して……」
切なそうに哀願する春姫の声を無視し、俺はその指を中へと沈め始めた。
「ひゃ、あ、あっ、あぁあ……指……入って……くるぅ……」
じっくり入り口を湿らせたおかげで、俺の指はいとも簡単に中へと吸い込まれてゆく。
膣内とはまた違った独特な生温かさと強烈な圧迫感に、俺は奇妙な心地よさを感じていた。
364:Active?/Passive?(UMA勝利編)(17/24)
06/12/28 23:13:20 SH/0ZrqR0
「これは……どうだ? 春姫……」
俺はゆっくり指の抽送を繰り返しながら、そっと春姫に尋ねかけてみる。
「そんな、言われても……んっ、わかんないよ……私……」
涙を流し、唇をきゅっと閉じながら、お尻に伝わる快感に耐える春姫。
俺は春姫の感覚を確かめるが如く、今度は奥でゆっくりと指を回し始めた。
「ん、ぁふっ……そんな、しちゃ……ぁっ、んぅぅっ」
抽送の動きとかき回す動きを適度に織り交ぜつつ、
俺はその指をじわじわと、だが確実に奥へと差し込んでゆく。
「んぅぅっ、ぅっ、ふぅ……ん……ぁ、ふぁ、はぁぁっ」
やがて第2関節のあたりまで指を沈めたところで、春姫がぴくりと体をのけぞらせた。
中で指を鉤爪の如くくいくいと動かしてやる度、可愛らしく悶える春姫の肢体。
「だんだん……よくなってきたみたいだな、春姫」
「そんな、よくなって、なんか……ひゃ、あぁ……っ」
俺は春姫の声を遮るべく、指先をぴくっと動かしてみせた。
「こんなにいっぱい、反応してくれてるくせに……まだ、そんなこと言うんだ?」
「それは、雄真くんが、その……するから……あっ!? ひゃああっ」
春姫にもっともっと、この異常な快感を味わってほしくて。
俺は差し込んだ指の側から、もう1本指をねじ込み始めた。
「そんな……やぁ、それ……入らないよ……ひゃ、あ、あぁあっ!?」
初めて俺を受け入れるとは思えないほど、柔軟に俺を飲み込んでゆく春姫のお尻。
きついながらも温かな春姫の直腸の感触に、俺はすっかり酔いしれていた。
「や、あぁ……ぃや、それ、きつ……苦し……ぃいっ……!!!」
肛門を無理矢理拡張させられる感覚に、思わず悲鳴を上げる春姫。
全身はまるで電気を流されたかのようにびくびくと激しく痙攣し、
ぎゅっと固く締め付けられた眉間から、脂汗がたらりと流れ落ちてゆく。
365:Active?/Passive?(UMA勝利編)(18/24)
06/12/28 23:14:23 SH/0ZrqR0
「……かわいいよ……春姫……」
もっともっと、春姫を壊してやりたい……
俺は欲望に取り付かれたまま、その指をゆっくりと、だが乱暴にかき回しだした。
時折2本の指を広げ、彼女の穴をみりみりと押し広げてみたりして……
絶え間ない彼女の悲鳴に心まで浸りながら、俺はただ無心に愛撫を続ける。
「んっ、んんっ、あっ、あ、ひゃぅうっ……や、だ……私……ぁたし……っっ!!!」
春姫がびくびくと、体を激しく揺らしだした。
俺の指の動きに合わせ、春姫の体がまるで水上の魚のごとく激しく暴れまわる。
「だめ……ぁたし……体、遠く……なって……ゃあ、はぁぁっ……!!!」
激しい悲鳴と共に、差し込んだ指がぎゅうっとちぎれんばかりに締め付けられるのがわかった。
その強烈な圧迫に屈することなく、俺は更にぐいぐいと指を押しつける。
「はぁ、ぁ、はぁ……はぁ……」
やがて春姫の息が整うのを待って、俺はそこからずるっと指を引き抜いた。
赤黒く変色した春姫のそこが、ひくひくと物欲しそうに動くのがわかる。
「春姫……もしかして、お尻で……イッてくれた……?」
「ぁあ……あたし……今……おしりで……」
自分の身にたった今起こったことが信じられず、戸惑いを隠せない春姫の表情。
そんな彼女の様子を無視し、俺は再び彼女の腰を掴んだ。
「え? 雄真くん……」
「今度は……こっちも……咥えてくれよ……春姫」
そう言いながら、俺は自身の先端を春姫のお尻にあてがった。
お尻に伝う淫猥な熱に、春姫が軽く体を震わせる。
366:Active?/Passive?(UMA勝利編)(19/24)
06/12/28 23:15:28 SH/0ZrqR0
「そっちで……するの? 雄真くん……」
「あぁ……ダメか? 春姫……」
俺の声に、春姫がおそるおそるこちらを振り向く。
かつて俺に純潔を捧げてくれたときと同じ、不安と恐怖に彩られた表情。
「……大丈夫。無理はしないからさ」
「ん……でも……雄真くん……」
「もし痛かったり苦しかったりしたら、遠慮なく言ってくれよ。
こういうのは、どっちも気持ちよくなんなきゃ意味ないんだからな」
そう言いながら、俺は春姫の緊張をほぐしてやるべく、お尻を優しく撫でてあげる。
「うん……いいよ、雄真くん……」
「春姫……」
「で、でも……優しく、してね……
あんまり激しいと……私、壊れちゃいそうだから……」
「あぁ……わかってるって」
言いながら俺は、自身の先端をじわじわとそこへ埋めだした。
「ん、ん……入って……きてる……雄真くんの……」
指で十分慣らしたとはいえ、春姫のそこはまだきゅっと締まりあがり、
なかなか俺の侵入を許そうとしない。
それでも俺は慎重に狙いを定め、ゆっくりと俺のそこを中へと押し込んでゆく。
「や……ぁふ……お尻……広がって……ぁ……」
やがて亀頭が半分くらい収まったところで、俺の先端が不意にすっと飲み込まれていった。
窮屈だった入り口の感触と違って、中はねっとりと柔らかな感触に包まれている。
「ゃぁ……熱いの……入ってる……よぉ……雄真くん……」
「大丈夫か? 春姫……」
「う……うん……動かさなきゃ……まだ、平気……」
緊張で固くなった春姫のお尻をやわらかく揉みほぐしながら、
俺は春姫が慣れるまで、先端にじんわり伝わる腸内の温もりを楽しむ。
367:Active?/Passive?(UMA勝利編)(20/24)
06/12/28 23:16:29 SH/0ZrqR0
「あったかくて気持ちいい……春姫の中……」
「そ、そうかな……何だか、素直に喜べないけど……ι」
春姫はわずかに複雑な表情を見せるも、この行為自体に不快感を持っている様子はない。
そうして動かさぬよう待っているうちに、春姫の固さが徐々に解けてくるのを感じた。
未だ締め付けはきついけど、まったく動かせないほどではなくなってくる。
「そろそろ……落ち着いてきた? 春姫」
「うん……ごめんね、雄真くん……」
「気にすんなって……俺が無理言ってさせてもらってるんだし」
「雄真くん……」
春姫がおずおずとこちらを振り向き、顔を紅く染めながら口をもごもごさせる。
「どうした? 春姫」
「あの……雄真くん……そろそろ……いいかも」
「ホントか? 別に無理しなくてもいいんだぞ?」
「ううん……無理なんか、してないよ……
それに、私も……雄真くんに……ちゃんと、してほしい……」
「春姫……」
確かに春姫の言うとおり、春姫の体はすっかり落ち着きを取り戻し、
俺の侵入を受け入れる準備が整っているようだ。
これなら……いつもみたくやっても、大丈夫そうだな。
「じゃ……いくな。春姫」
「うん、来て……雄真くん……」
俺は春姫の腰をがっちり掴み、俺のそこをじわじわと春姫の中へ押し込んで行った。
「ひゃ、あぁっ……また、来る……雄真くんの……」
更に深く押し分けられる感覚に、声を上ずらせ喘ぐ春姫。
俺はそのまま、ひとつゆっくりと腰を往復させ……
368:支援
06/12/28 23:17:03 srRwPB7z0
Active?/Passive? (UMA勝利編) をもう少しお楽しみください。
369:Active?/Passive?(UMA勝利編)(21/24)
06/12/28 23:18:28 SH/0ZrqR0
「ひゃ……ぁっ、あぅっ!?」
春姫がふと、全身をぶるっと振るわせた。
「春姫?」
まさか……
俺はその反応をもっと確かめたくなり、更に早く腰を動かしてみる。
「あ、あっ、あぁ……はぁ……あっ! はぁぁっ……」
春姫の口から、絶え間ない喘ぎが漏れるのが聞こえた。
それも……始めて俺の指を受け入れた時とは違う、明らかな快楽の叫び。
(やっぱり……)
春姫が……お尻で……感じてくれてる……!!
狂おしく俺を求める彼女の尻の動きに、これまでない感動が全身を駆け巡るのがわかった。
「春姫……好きだよ……春姫ぃ……っ!!!」
俺の可愛い春姫。
俺にここまでされながら、なお俺のことを健気に慕ってくれる春姫。
誰にも……手放しやしない。
そう……彼女を汚していいのは、この俺だけなんだから……!!
「はぁ……ぁあ……春姫……春姫……」
浮かされたかのように春姫を求め、俺はただ無心に腰を進める。
「雄真く……っあ、はぁぁ……ひゃ、ぁぅ、はっ、あぁああぁ……っ……」
尻穴に伝わる刺激に、春姫もまた狂ったように鳴き声を上げる。
腰をぶつける度、ぱんぱんと小気味よく響く春姫の尻肉。
俺と春姫……ふたりして、快楽を貪る淫乱な獣となってゆく……
「春姫……っぁ……俺、そろそろ……イク……!!!」
「ゆぅま、くん……ぁぁ……来て……ぁたしの、おしりで……イッて……!!!」
俺はその声を機に、俺のものを奥深くにねじ込んだ。
そのまま先端に溜まったものを押し出すべく、ぐいぐいとあそこを押し込んでゆく……
「ひゃ、あぁあっ……雄真く……奥、来て……いっぱい……出して……!!!」
「春姫……あぁ……春姫……!!!」
そして俺はとどめとばかりに、おのが怒張を根元までずぶりと突き刺し……
370:Active?/Passive?(UMA勝利編)(22/24)
06/12/28 23:20:58 SH/0ZrqR0
どくっ、どくっ……!!!
「ぁっ、ひあぁっ、あぅあぁあああああああっっっ!!!!!」
俺たちはほぼ同時に、絶頂を迎えていた。
春姫の尻穴は吸いつかんばかりに俺のものをがっちり咥え込み、
煮えたぎった腸内を、俺の飽くなき欲望がいっぱいに満たしてゆく。
びく、びゅく、びゅくっ……
まだ射精は止まらない。
俺の種が春姫に全て吸い尽くされるまで……びくびくと激しい収縮を繰り返す。
「ぁっ、ぁぅっ、はぁぁぅっ……おしり……熱いの……ぃっぱい……出てる……ぅ」
俺はそのまま灼熱の海で尽き果てるまで、春姫の中を存分に楽しむのだった。
「ん、ぅぅ……ゆぅま……くん……」
やがて俺のものを引き抜くと、春姫の穴から真っ白な泡がこぽこぽ湧き出てきた。
尻穴の痙攣に合わせ、白濁した泡が生まれ、弾けるのを繰り返す。
その様がまるで、彼女の侵してはならぬ禁断の域を確かに侵した証に思えて……
「好きだよ……春姫……誰にも、渡しやしねぇ……」
「雄真……くん……」
そのまま俺は後ろから春姫を抱きしめ、彼女の息が整うまでその温もりをじっくり味わうのだった。
371:Active?/Passive?(UMA勝利編)(23/24)
06/12/28 23:22:24 SH/0ZrqR0
「体……もう大丈夫か? 春姫」
「まだ……ちょっとだけ……ひりひりしてる……」
着衣の乱れを整え、森の一角で静かにたたずむ俺たち。
春姫がふわりと、優しい笑顔を俺にくれる。
「何か……すげぇ無理させちゃったみたいで……ごめんな。春姫……」
「ホントだよ……雄真くん……おかげで私のお尻……雄真くんのでいっぱい……」
苦笑しながらも、どことなく幸せそうな春姫の表情。
そんな春姫の表情に、俺の心がほっと安らいでゆくのがわかる。
「……しかし春姫も変わってるよなぁ……
あんな条件出して、もし負けたら何されるかわからないってのに……
春姫、何か妙に嬉しそうにするんだもんな……」
いやまぁ、たった今いろいろしちゃったばかりの俺が言っても説得力ないけどι
「でも雄真くん、私の嫌がるようなことは絶対しないでしょ?
私、ちゃんとわかってるもん」
「……ι」
ちょっと前まであれだけ好き放題されてた方の台詞ではないと思います。俺。
「……それに……」
そこまで言うと春姫はふと顔を赤らめ、視点を足元へと落としだした。
「それに……何だ? 春姫」
「やっぱり……雄真くんには……いつまでも私より強くあってほしいもん……
……わがままだよね……私……
雄真くんが一度魔法を捨てた理由……ちゃんと理解してるはずなのに……」
「あ……」
372:Active?/Passive?(UMA勝利編)(24/24)
06/12/28 23:23:26 SH/0ZrqR0
その台詞で、俺はようやく思い当たった。
俺との勝負に負けたのに、何故だか妙に嬉しそうにしてた理由。
そして……春姫がいつでも、俺の稽古に精一杯付き合ってくれる理由……
……きっと春姫は、俺にいつまでも思い出の男の子でいてほしいのだ。
春姫に人生を変えるきっかけをくれたその男の子の面影を、俺に見続けていたいのだ……
だからこそ春姫は……俺の成長を、まるで自分のことのように喜んでくれて……
あんなに一生懸命、俺の成長に付き合ってくれて……
(……かなわないよな……春姫には)
春姫がこんなにも俺のことを慕ってくれてるというのに……
いつまでも俺がこんな弱いままじゃ、春姫にカッコつかないよな。
「……よし、決めた」
「雄真くん?」
俺は立ち上がり、春姫に向け宣言する。
「俺……もっともっと強くなるよ。
そしていつか……春姫の隣に並んでも恥ずかしくない、立派な魔法使いになってみせる」
「うん……楽しみにしてるね、雄真くん」
春姫がぽわっと、花のような微笑みを俺にくれる。
「だけど……私ももっと頑張らなくっちゃ。
いつもいつも負け通しじゃ……いつかここ、使い物にならなくなっちゃう」
「そんなに毎回毎回求めたりしないってι」
「どーだか。フフ」
春姫の微笑みに連れられ、俺もまた心からの笑みで返すのだった。
<終わっとけ>