SS投稿スレッド@エロネギ板 #11at EROG
SS投稿スレッド@エロネギ板 #11 - 暇つぶし2ch150:温泉の人
06/11/21 22:36:39 KPBH67Ua0
私怨ノシ

151:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:37:33 XnjYFwu50
「畜生! 何で俺ばっかりこんな目に!?」


 その後、葵をお姫様抱っこで抱き抱えながら、伊吹の魔法攻撃から必死に逃げ回る雄真の姿が高等部中で目撃された。
 ……まあ多くの人間は、とてもそれ所じゃあなかったが。





 SS投下終了。
 御支援感謝です。ではまた。

152:温泉の人
06/11/21 22:49:49 KPBH67Ua0
つかもうこれ勝てる奴いねーだろwwwwwwww乙です!
こんな洒落にならん事態においてもなおいじらしい乙女心発揮する先輩(;´Д`)ハァハァ

遅ればせながらレス↓

>>128 >>130
実際「やっぱり甘くない」第1話の冒頭で感じたのがそういう鈴莉の身勝手さでしたね。
口ではもっともなこと言って春姫や杏璃説き伏せてるけど、じゃあ自分は何なのかって。
ただ認識阻害はやりすぎたかなとw まぁ後悔はしてません。

>>129
ちゃんと気づいてくれた人がいたとはwwwwwwww
これだけのためにわざわざまつりさん使って積み込みロンで台詞確認しましたw

>>131(「甘くない」の方)
「甘くない」の方こそ、毎回話への引き込み方がうまくてびっくりですよーw
何か気になる展開で切っちゃいましたが、この話は続き書くつもりはないです。
放置するなり続き補完するなり、そこは読者の皆様にお任せするってことで。

ではではノシ

153:名無しさん@初回限定
06/11/21 22:53:23 Umhx8QWo0
GJ

>そういえば、信哉と沙耶さんは?
ヤる前は上条さん、ヤった後は沙耶ちゃん、FDで沙耶ちゃん→沙耶

154:名無しさん@初回限定
06/11/21 23:11:05 8P2Zrovh0
乙~
パラレルが混じって、シリアスやらコメディやら何が何やら(笑
いやもう、伊吹にUMAの魔力加わってしまったら誰にも止められんでしょ。校舎穴だらけ(w

>その後、葵をお姫様抱っこで抱き抱えながら、伊吹の魔法攻撃から必死に
>逃げ回る雄真の姿が高等部中で目撃された。
ただでさえ有名だったUMAが、自分の知らないところでどんどん有名人に。しかも、ロリ付き(w
にしても、緑色のグフってまた分かり難い例えを(ww

155:ポレ
06/11/21 23:39:33 /cl+sY6q0
流れぶった切ってスマソがパルフェとショコラを一気にクリアした
勢いでSS書いてみた。話やネタがガイシュツだったらスマソ
パルフェの玲愛Trueエンディングの話からです

156:パルフェSS「或る夜の出来事」その1
06/11/21 23:42:22 /cl+sY6q0
 火曜の夜、翌日はファミーユの定休日。本来ならかりそめの開放感に包まれるはずのこの日、
高村 仁は甚だ憂鬱であった―そう、今宵は悪夢の饗宴が待ち受けているから・・・

 電車をおり目的地へと急ぐ二人、高村 仁と花鳥 玲愛はやや憂鬱そうに寄り添い歩いている。
どちらかというと仁のほうがより憂鬱な表情で玲愛のほうはそれほどでもない。
玲愛が何かと話しかけてくるが、仁はうわの空な返事ばかり返してきた。
「・・・仁、ねぇ聞いてる?」
「あ、ああ・・・」
「もうすぐキュリオに着くわね・・・」
「な、なぁ・・やっぱ俺は部外者みたいなもんだし参加しないという方向で・・・」
「 な ん か 言 っ た ??」

有無を言わさぬ玲愛の口調に圧倒される。

「まさか今更関係ないとか言わないわよね・・・まさかあの野獣の群れに私を一人置き去りにして
自分は一人のうのうと惰眠をむさぼるとか、わ・た・しの仁はそんなこと考えないわよね」
「は、はい・・・」
「 よ ろ し い 」と玲愛が小悪魔のような視線を向ける。
結局逆らえそうもない。もはやこの過酷な運命を受け入れるしかないと仁は悟った。


157:パルフェSS「或る夜の出来事」その2
06/11/21 23:43:59 /cl+sY6q0

「お帰りなさいませ、旦那様、奥様・・・お待ちしてたんですよ、フフフフ♪」
彼ら二人の処刑場、キュリオ本店。意を決し扉を開いた仁たちを待ち受けていたのは、玲愛とは
一味違ったツインテールが印象的なメイドさんであった。

「こ、こんばんは・・・」
「ご、ご無沙汰してます・・・美里さん」
「やだ~玲愛ちゃん、そんな他人行儀な~。あっ、高村さん、遠路はるばるお越しいただき
ありがとうございます。今夜は楽しんでいってくださいね♪」
「は、はぁ・・・」
向こうは楽しめるだろうが、こちらは楽しめそうもないよなぁと仁はまたもや暗澹たる気持ちに
させられた。そもそも送別会なのに楽しめというのも変な話ではあるが・・・

「あーっ、やっときたか~早く中に入りなよ」
活発できびきびとした動作が印象的な女性が声をかける。彼女は以前見覚えがある。
いつもの彼女には似合わず、今日はにやけ顔がとまらない様子だ。
―それも無理はない。仁は先日この女性の前でとんでもない失態を演じてしまったのだ。
(帰ろっかな・・・)
仁はますます憂鬱になってきたが、ここまできたからには覚悟を決めるしかない。



158:パルフェSS「或る夜の出来事」その3
06/11/21 23:44:59 /cl+sY6q0

「あっ、玲愛、高村さん、お疲れ様~」
今日の最大の要注意人物、川端 瑞菜。ここに来るまでにどうやって彼女を押さえ込むか玲愛と
何度も話し合ったものだ。そして出た結論―いちおう釘は刺しておくが最終的にはあきらめるしかない。
彼女の性格からあることないこといろいろと吹聴しそうだが、今更どうしようもない。
ただ、二人は瑞奈という名の北風から身を守り続けるしかない哀れな旅人でしかないのだ。
それはまるで禅の修業かと思われるような苦行となることは目に見えていた・・・

「あっ、瑞奈お疲れ。・・・ちょ、ちょっと話があるんだけどいい?」
「はいはい、お二人様ごあんな~い♪さぁとっとと行った行った!」
瑞奈に釘を刺そうとした玲愛であったが、その企みは目の前の女性 ― 大村 翠にあっさりと
阻まれる。
「あっ、ちょ、ちょっと大村さん・・・」
仁は無駄な抵抗を試みる傍らの愛しき女性を見ながらため息をついた。
さあ地獄の饗宴の始まりだ。長い長い夜になりそうだ・・・


「みなさん、たいへん長らくおまたせいたしました!それではこれから花鳥 玲愛ちゃんの送別会を
はじめまーす」


そう、今日は玲愛の送別会。高村 仁とかいうどこぞの馬の骨に無理やり?引き抜かれた玲愛
との別れを惜しむ・・・という大義名分とはうらはらに実態は楽しく熱々のカップルを冷やかす会である。
 ただでさえキュリオの老練な先輩方からみるといじりやすいキャラの玲愛に加え、キュリオ本店に
殴りこんで「玲愛をください!」となぜかバラさんに宣言してしまった伝説を持つ高村 仁との
黄金コンビは端からみるにあまりにもおいしすぎた。二人をからかうのが楽しみで仕方がないらしく、
キュリオ本店の精鋭スタッフ達はこの集まりに異様なまでの情熱と期待を傾けているようだった。



159:パルフェSS「或る夜の出来事」その4
06/11/21 23:45:44 /cl+sY6q0

最初、仁はなぜ自分まで招待されたのかわからず、当然ながら一応部外者ということで固辞した。
しかし、百戦錬磨のキュリオ本店スタッフが獲物を逃すはずなどない。キュリオ2号店の結城 大介
とかいう店長から「どういう形であれ、うちのファミリーを引き抜くんだからきっちり落とし前つけにこいや!
来ないと認めん!!」
などという有難い手紙を受け取り(なぜか女性が書いたような字だったのが気にかかるが)、これまでの
経緯上出席せざるを得ないような雰囲気になってしまった。
 また玲愛からも 「はぁ・・・どうせ散々からかわれるんだろうなぁ・・・。まさか私がこんなことになるだ
なんて誰も思ってもみなかっただろうから・・・あっ、そうだ!私一人よりも二人でからかわれるほうが
対象が分散していいわよね♪せっかくだし一緒に行きましょうよ。それとも、まさか私一人を生贄に
する気?仁はそんな事しないわよね?ちゃんと責任とってくれるよね」
などと脅しをかけられ、身から出た錆とはいえ「行かない」という選択肢を選ぶことはもはや不可能な
状況に陥ってしまったのだった。

 さて、そんなこんなで無事始まった玲愛の送別会だが、こうしたことには驚異的なまでの情熱を
傾けるキュリオ本店の精鋭スタッフがよりによりをかけてセッティングしただけあって、本来しめやかな
はずの送別会にしては妙に華やかで、奇妙な会場となっている。正面の垂れ幕には
「高村 仁さん 花鳥 玲愛さん お幸せに」
などとまるで結婚式場みたいな文言が掲げられており、ますます異空間の装いを深めている。


160:パルフェSS「或る夜の出来事」その5
06/11/21 23:46:48 /cl+sY6q0

 そして当然ながら、宴?の主賓たる二人に対し、強豪店キュリオの猛攻はとどまるところをしらない―
「くーーっ、昔はあんなにツンツンしてた朴念仁の玲愛がまさかこんなことになるとはね・・・
かわいい顔してあ・な・た、やるもんだねと♪このこの~♪」
いつもは頼れる先輩の大村 翠が激しく絡んでくる。今日は彼女にしては珍しく相当酒のまわりが早い。
採用時から何かと目をかけてきて自分の後継者(いろんな意味で)と見込んできた玲愛の門出(しかも自分よりも早く)
ということで感慨もひとしおなのだろう。

「お、大村さん・・・ペース早いですね・・・」
さっきから玲愛と仁は圧倒されっぱなしだ。

「玲愛さんには先をこされちゃいましたねぇ~。一番意外な人に先を越されちゃいました」
とおっとり刀で桜井 真子が言う。なんだか彼女と話しているとこちらまでほんわかした気分に
なってくる。

「ほんとだよ・・・あ~あ、うちも向かいにライバル店でもできないかなぁ。そうすればあたしにもなんか
ロマンスでも起きるかもしれないのになぁ」
と翠がニヤニヤと2人を横目でみながらからかう。
「あーあ、大介さんも高村さんみたいに私のこと奪いに来てくれないかなぁ・・・玲愛ちゃんいいなぁ」
などと真名井 美里もからかってるんだか本気なんだかよくわからないことを言い出し、玲愛はまるで
熟したトマトの様に真っ赤な顔であれこれと抗弁する。一方仁の方といえばハハハ・・・と乾いた笑いを
浮かべるしかできないでいた。

 キュリオの女性陣の直接攻撃にたじたじの仁であったが、間接攻撃もまた油断のならないものがあった。
最大の要注意人物、川端瑞奈が仁たちとは少し離れた席で酔った勢いも手伝い、あることないこと
流言飛語を放つからだ。同じく要注意人物である3号店店長、板橋氏が多忙のため来られなかったのは
不幸中の幸いではあったのだが・・・


161:パルフェSS「或る夜の出来事」その6
06/11/21 23:47:46 /cl+sY6q0

「それで~、イブの夜、チャイムの音やら物音やらうるさくて廊下にでてみたらですね」
「わくわく」
「そわそわ」
 瑞奈の話に、他の店員よりはかなり幼く見える女性と眼鏡がチャーミングな女性が熱心に聞き入る。
結城 すずと橘 さやかだ。

「玲愛と高村さんが廊下でチューしててですね。私もうホント困りました。しかも玲愛ったら私に気づいても
やめようとしないんです♪まるで見せ付けるかのように」
「はぁ。玲愛ちゃん大胆です・・・お、同い年なのに・・・」
「は、はわわ・・・そ、それからそれから?」

「ちょ、ちょっと瑞奈(///) な、何あることないこと言ってるのよ!す、すずさんも橘さんも鵜呑みにしない!」
「あっ、玲愛・・・ごめん、つい口が滑って・・・でも安心して。私は事実しか言ってないわよ~」
「うむ、誠に興味深い話だな。川端君続けてくれたまえ」
 女性陣の中にグループの総帥、結城 誠介氏もにこやかに交じる。

「ゆ、結城店長!か、勘弁してください・・・ちょ、ちょっと瑞奈~」
「瑞奈~、玲愛はあたしが抑えとくから、早く続き続き~♪」
「ちょ・・大村さん、離して~~~~」
玲愛の悲鳴が響き、夜は更けていく・・・


162:パルフェSS「或る夜の出来事」その7
06/11/21 23:48:45 /cl+sY6q0

 玲愛の悲鳴をよそに、新郎こと高村 仁は一応安息の場所を見つけていた。
それは壁際。大介店長、榊原ら男性陣の集まり。そこでは驚くほど穏やかに時が進行している。
最初は例の手紙の文面などからキュリオ2号店の大介店長を怖い人だと思っておっかなびっくり
だった仁であるが、実際話してみると気さくで何でも話せる頼れる兄貴のような人だった。
今は亡き仁の実兄とは全然ちがったタイプではあるが。

「うーん、そんな手紙出した覚えないんだけどな・・・おおかた翠の仕業かな。もしかしてこんな字
じゃなかったか?」
「あっ、そうそうそんな字です!」
「やっぱ翠の字だな。あいつ昔俺の筆跡をまねて俺名義の手紙を偽造したことがあってな。
あいつの字も特徴的だからすぐわかる。まったくあの野郎・・・」
「なんだ、偽物ですか・・・とほほ」

「ははは、それにしてもバラさんから聞いたよ。玲愛ちゃんのためにうちに殴りこみに来たときの話。
いいなぁ、俺そういうの大好きだよ。まるで映画みたいだな」
「う、うう・・・ち、違うんです。ちょっとセリフを間違えただけなんです・・・」

「私の人生でも3番目に驚いた出来事でしたな。よもや店長に間違えられるとは・・・」
バラさんこと榊原氏がぼそりと語る。今日のご馳走は彼が腕によりをかけて作ったものだという。
以前義姉と食べに行ったトリトンホテルのディナーを凌駕するその味に、彼の凄みを感じる。
 そして、なぜこんな人が、最近有名になったとはいえ、街の一喫茶店で働いているのか仁には
不思議でならなかった。


163:パルフェSS「或る夜の出来事」その8
06/11/21 23:49:42 /cl+sY6q0

「まぁバラさんならここの店長みたいなもんだ。あながち間違いでもない」
「ぼっちゃん、何をおっしゃいますやら・・」
「ははは、それより、高村さん。あんたは確か大学休学中の21歳と聞いたが。」
「ええ、そうですが・・・」
「凄いな・・俺なんかそれぐらいの年のころはせいぜい親父のスネかじってたのが関のヤマ
だったのに、あんたはその年で起業し、自分の店を繁盛させてるんだからな。」
「いえ、そんな・・・皆ファミーユの仲間達のおかげです。俺一人では全然だめでした」
「いえ、そんなに謙遜しなくてもいいと思いますよ。人徳もまた店長の資質の一つですからな。
それよりも、高村さんはまだ大学生だそうですが、ファミーユも軌道に乗った今、これからどうする
おつもりですか。また大学生活に戻るのですかな?」

「・・・俺にはまだ夢がありまして」
玲愛以外には照れくさくてあまり話しにくい夢だが、なぜかこの二人の前では素直に話す
ことができた。玲愛と共に焼け落ちてしまったかってのファミーユを取り戻す夢を。
これからの彼の行き先を。

「そうか、高村さんもいろいろ苦労してるんだな・・・だからそんなにも強いのか。うん、俺は
応援するぜ!なんか困ったことがあったらいつでも俺に相談してくれ。できるだけ協力するぜ。
それと、玲愛ちゃんの事よろしく頼むわ。俺たちのファミリーだからな。
ま、あんたならきっと幸せにしてくれると思うけどな」
「結城さん・・・ありがとうございます」

「う、ううっ、お兄ちゃんと高村さんがなんか熱い会話を交わしてる。なんだか近寄れない・・・
高村さんと話したことないから話してみたかったのにな・・・」
「ううっ、からかいたいのにからかえない・・・く、悔しい・・・」
男たちの真剣な会話にいつもと違った壁を感じるすずと瑞奈であったとさ。


164:名無しさん@初回限定
06/11/21 23:50:19 2NPeDbpr0
sien

165:パルフェSS「或る夜の出来事」その9(一応完結)
06/11/21 23:52:37 /cl+sY6q0

 そして、夜も更けていき・・・永遠かと思える宴もいつかは終焉のときを迎えるわけで・・・
なんだかんだいって今日は来てよかったなぁと仁が思っていると、そのときは唐突にやってきた。

「さて、宴もたけなわですが」
司会進行役の美里が、もはや当初の目的から激しく逸脱したこの送別会の終焉を伝える。
微妙どころじゃなく言葉の使いどころを間違えているのも天然ボケの美里らしい。

「そろそろ時間も時間ですので最後に新郎新婦に誓いのキスをしていただいて、お開きに
させていただきたいと思います。それでは高村さん、玲愛ちゃんよろしくお願いしまーす♪」
美里が悪戯っぽく非情なる宣告を行う。場は大いに盛り上がり、「キ・ー・ス!、キ・-・ス!」
などと大合唱が沸き起こり、キュリオの組織力の強固さをみせつける。

「ちょ、ちょっとみんな冗談でしょ・・・ね、ねぇ大村さん目が座ってるんですけど・・・あっ、板垣店長!
なぜここに・・」
「フフ・・・期待しているよ。君達の絆を見せてくれたまえ」
なぜか板垣店長も輪に加わり包囲を強める。仁と玲愛は完全に罠にはめられたことを悟った。
もはやこの場から無傷で逃れることは不可能。

「こ、これがキュリオ本店の真の恐ろしさか・・・」
仁はつぶやく。もはや退路はなく、道は前方にあるのみ・・・
「やっぱ・・来るんじゃなかったかな・・・」

 後日、「ねぇねぇ、仁さん玲愛ちゃんの送別会どうだった?キュリオの人とうまくやれた?」と無邪気に
聞いてくる悠飛の言葉に何も答えず、黙々と半熟オムライスを作り続ける仁の姿があったのは
言うまでもない。

                           ~Fin~

166:名無しさん@初回限定
06/11/22 00:49:08 42MVx6ht0
神降臨レベルでGJ!!!!




だっただけに最後の「悠飛」が惜しまれる……

167:名無しさん@初回限定
06/11/22 17:30:48 ixcUqne50
つか「悠飛」って誰の事を言おうとしたんだ
家庭用のオリキャラかと思ったけどそれも違うみたいだし
仁をさん付けで呼ぶのっていたっけ?

168:『世の中甘くない』の者です
06/11/22 17:32:46 TsH5xpf00
 ポレ様、投稿乙です。
 思わず本編やりたくなりましたよ。

>>162
 温泉の人様、有難う御座います。

>実際「やっぱり甘くない」第1話の冒頭で感じたのがそういう鈴莉の身勝手さでしたね。
 この世界の鈴莉さんにとって、雄真は未だ10年以上も昔の子供のままなのですよ。
 この鈴莉さんの思考(妄執とも言う)と、雄真の『力』がこのお話の柱です。多分、きっと。
 ……けど、シリアス路線やると話が暗くなり過ぎるので、コメディにしました。

>>163
 163様、有難う御座います。

>ヤる前は上条さん、ヤった後は沙耶ちゃん、FDで沙耶ちゃん→沙耶
 情報有難う御座います。呼び方は難しい。
 この世界の沙耶は雄真を『小日向様』と呼んでいます。
 ちなみに以前は『小日向さん』でした。何故かと言えば……

>>164
 164様、有難う御座います。

>いやもう、伊吹にUMAの魔力加わってしまったら誰にも止められんでしょ。校舎穴だらけ(w
 伊吹は沸騰し易い上、沸騰すると魔法式が荒くなりますから、そこを他ヒロイン三人がかりで突けばなんとかなる……かな?

>校舎穴だらけ
 ニヤリ(意味不明)

169:名無しさん@初回限定
06/11/22 20:42:55 7Lus39P50
>>155
GJ!
大介も仁も熱い男だよなー

>>167
由飛じゃね?
ルート外の時ってこの呼び方じゃなかったっけ?覚えていないが

170:ポレ
06/11/23 22:22:23 jG1TDxKh0
>>166>>167

うはwwwヤバスwwwwと思って調べてみたら由飛の間違えですた_| ̄|○
勢いで書いてすぐ投稿したからその辺爪が甘かったかもしれない

>>168
出来の良さの割にはそれほど売れてない作品なのでぜひともやってみてくださいな

>>169
よく考えたら玲愛trueだと由飛は「仁~」って呼び捨てになってるんだよな・・・(´・ω・`)ショボーン


それはさておきみなさん愚作にわざわざレスありが㌧

171:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:26:53 rteN4Azm0
 崩壊寸前の魔法科高等部校舎の前で、御薙鈴莉は呆然としていた。

「これは……夢? ……そうよ、これはきっと悪い夢……目が覚めればきっと……」

「すーちゃん、現実逃避はよくないわよー」

 鈴莉に突っ込みを入れたのは『高峰ゆずは』だ。
 瑞穂坂学園の理事長にして魔法使いの名門高峰家の当主であり、当代随一の予言術の使い手としても名高い。
 ……傍目には、とてもそうは見えなかったが。

(ちなみに鈴莉の学園における立場は、学園理事兼大学部魔法科学部長である。
 要するに、全魔法科の総元締めであり経営陣の一員でもあるということだ。
 ゆずはも同様だが、鈴莉はこの他にも幾つもの肩書きを持つ魔法使い界の重鎮なのだ)

「でも、見事に壊れちゃったわねー。伊吹ちゃん凄~い」

 前回―秘宝事件における損傷―の反省から、高等部校舎は改装時に結界を格段に強化している。
 ……にも関わらず、このざまである。
 しかも損害は前回の比ではない。

「本当にパワーアップしたのねー。小雪ちゃんから聞いたときは半信半疑だったけど、ゆーまくんの魔法は凄いわねー」

 ゆずはしきりに感心する。
 ……が、鈴莉は全く聞いちゃあいなかった。

 ―そんな……これから10日間、母子水入らずの生活だったのに。

 この10日間、雄真は鈴莉の研究室に泊まり、鈴莉の集中講義を受けることになっている。

172:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:28:06 rteN4Azm0
 無論、これはあくまで口実であり、これを機会に雄真との親密度をUPしようという魂胆だ。

 ―この10日間、雄真くんと少しでも長く過ごすために、一生懸命仕事を片付けたのに。

 全てパー、である。
 鈴莉は魔法科の最高責任者として、高等部校舎復旧の指揮に当たらねばならないのだ。

「くっ! 雄真くんと一緒に御飯を食べて、雄真くんと一緒にお風呂に入って、雄真くんを抱き枕にして寝るという私の計画が!?」

「それ、後半の二つはどの未来軸でも適わないから、安心していいわよー?」

「『未来は無限の可能性を秘めている』って言ったのは、ゆずはでしょう!?」

「……そーだっけ? でも、年頃の男の子は、母親とそんなことしないと思うわよー?」

「ふっ」

 突然、鈴莉は勝ち誇るかの様に笑う。

「ゆずはは知らないかも知れないけどね、雄真くんは本当はとっても寂しがり屋さんなのよ」

 そう言うと、得意気に話し出した。

 曰く、雄真はとても寂しがり屋のお母さんっ子であり、自分がいなくなると直ぐベソをかいた。
 曰く、雄真は鈴莉がいない間、鈴莉の毛布を被って震えていた。

173:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:30:07 rteN4Azm0
「雄真くんはとっても良い子だから、私がどうしても出かけなければいけない時は、ちゃんと笑って見送ってくれたのよ?
 でも、私が帰るまで私の毛布を頭から被って震えているの。でも泣かないのよ? 偉いでしょう!
 ……で、私が帰ると『お母さ~ん』って飛びつくのよ♪」

 何て可愛いでしょう! と胸を張る鈴莉。

「……それ、他の人には言わない方が良いと思うわよー?」

 今の本人が知れば、七転八倒ものだろう。

 ……が、これで納得がいった。
 鈴莉にとって、雄真は未だ毛布を被って泣く幼子なのだ。
 彼女の余りに強引な手法は、全てはそのためだろう。

 ゆずはは、内心溜息を吐いた。

 ―妄執……ね。でも、多分言っても聞き入れないでしょう。

 現在の鈴莉を否定することは、彼女の10年以上の歳月を否定することでもあるのだ。
 友人として、それは出来ない。
 自分が出来ることは、彼女の傍にいて助けること位だ。

「へへー」

「……ゆずは、どうしたの?」

 突然ニヤニヤと笑い出したゆずはに、鈴莉は幾分引き気味だ。

「わたし、もしかしてとっても格好良いー?」

174:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:36:02 rteN4Azm0
「はあ?」

 持つべきものは友達―全くの打算抜きの―である、ということだ。




「でも、伊吹ちゃんの魔力回路を修復しただけでも凄いのに、魔力強化までしちゃうなんてー
 ゆーまくん、一体どんな魔法使ったのー?」

 ゆずはは首を捻る。

 そんな大魔法、少なくとも現代魔術では聞いたことが無い。
 ……やはり古代魔術の類だろうか?

 が、素人の雄真に、そんな代物を本当に使いこなせるのだろうか?

「私も迂闊だったわ…… 魔力回路を修復しただけと思って、魔力強化までしてたなんて考えてもいなかったわよ……」

「それはしょうがないと思うわよー 魔力回路の修復だけでも神業なのよー?
 ましてや魔力回路そのものを『強化する』なんて……」

 ―不可能よ。

 口にこそ出さなかったが、表情が雄弁に物語っていた。

 魔力を強化すること自体は、不可能なことではない。
 例えば、周りの人間や物質から魔力を借りたり、魔法具による魔力を増幅したりすることにより、魔力を強化することが出来る。
 が、これ等は外部から力を借りる一時的な魔力上昇に過ぎず、本人そのものの魔力が上がる訳では無い。

175:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:38:03 rteN4Azm0
 伊吹の場合とは、根本的に異なるのだ。

「冷静に考えてみれば、その可能性についても充分ありえることだったのに…… 本当、迂闊だったわ……」

「すーちゃんが、魔法式を解読しきれなかったなんてねー」

 魔法式とは、魔力を魔法に返還する術式のことである。
 魔力は不安定かつ無属性のため、魔法式により己が望む現象を引き出せる様に再構成しなければならない。
 故に魔法式を理解する能力は、魔法使いにとって必要不可欠なのだ
(魔法式には様々な系統―流派のようなもの―がある)

「魔法式? ……そんなものは必要ないわよ。雄真くんには、ね」

 鈴莉は苦笑しつつ、『あの時のこと』を回想した。




 伊吹の魔力回路はズタズタだった。
 出力以上の魔力を、秘宝によって大量に引き出されたためだ。

 そして壊れかけた魔力回路からは、秘宝が鎮まっても尚魔力を垂れ流し続け、傷を広げていく。
 ……このままでいけば、伊吹は死んでしまうだろう。

「雄真くんの魔力を伊吹さんに分け与えれば、助かるはずよ」

 この時点で、鈴莉は伊吹が助かる可能性は五分五分と見ていた。
 また、仮に助かったとしても、とても以前のようには魔力を発揮できないだろうとも。

176:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:40:06 rteN4Azm0
 伊吹と同じ魔力を大量に与えれば、確かに魔力の放出は止まり、伊吹は助かるだろう。
 が、壊れた魔力回路については、基本的に自然回復を待つしか無い。
 が、ここまで破壊された魔力回路が、一体どの程度回復することやら……

 ―まあいいとこ半分以下ね…… でも、自業自得よ。


「……シアン・セム!」

 呪文と共に、雄真が魔力を放出させる。
 魔法式こそ唱えているが、そんなものはまやかしだ。
 そんなもの、雄真には必要無い。

 放出された魔力は、伊吹の体内へと入り込んでいく。
 その瞬間、雄真と伊吹の意識が繋がった。
 雄真の魔力が、『雄真が望んだ様に』伊吹と同じ魔力に変化したのだ。
 大量の魔力が投与されたことにより飽和状態になったため、伊吹の魔力回路からの魔力流失は停止した。
 伊吹は助かったのだ。

 が、それで終わりではない。
 伊吹の魔力回路を満たした雄真の魔力は、『雄真が望んだ様に』伊吹の魔力回路を修復する。
 瞬く間に、伊吹の魔力回路は修復されていく。


 ―そんな! まさか完全修復を!?

 鈴莉は、目の前で起きている現象が信じられなかった。
 彼女の『眼』は、雄真の魔力が伊吹の魔力回路を恐ろしい勢いで修復しているのが見て取れたのだ。


177:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:46:04 rteN4Azm0
 確かに鈴莉は、雄真ならば魔力回路をある程度直せるだろう―それだって法外だ―と踏んでいた。
 が、まさか…… これ程とは…… 

 ―結界を張っておいて、正解だったわ。

 そう心底ほっとする。

 予め張った眼晦ましの結界により、雄真の魔力展開は自分以外には『見えない』。
 彼女達には、雄真が魔力を大量放出したこと位しか分からないだろう。
 外部の人間には尚更、だ。


 ……が、鈴莉は見落としていた。

 伊吹の魔力回路を修復した雄真の魔力は、未だ雄真から供給され続けている魔力を使い、今度は『雄真が望んだ様に』伊吹の魔力回路を強化し始めたのだ。
(おそらく、雄真が『伊吹は秘宝に負けない位強い』と強く念じたのが原因だろう。雄真の魔力は、雄真の意思を忠実に実行しただけだ)




「雄真くんの魔法は、魔法であって魔法ではないわ。
 私達の様に、理論立てられた術式によって発動される魔法とは根本的に違う。
 いわば、『意志の力』によって発動されるものよ」

 まあ術式でも発動するでしょうけどね、と鈴莉。

「凄いわねー ……でも、そんな大事なこと、わたしに教えちゃってよかったのー?」


178:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:48:25 rteN4Azm0
 そんな重要なこと教えてもらって、友達冥利に尽きるけど~ とゆずはは首を傾げる。

「……もう、大体は見当つけていたでしょう?」

「小雪ちゃんが、だけどねー?」

「まああの子なら、遅かれ早かれ気付いたでしょうね」

 小雪は、魔法科では一番の実力者だ。
 ……前回、伊吹との戦いで『戦略的転進』を行ったが。

「小雪ちゃん、拗ねてたわよー? 『雄真さんが伊吹さんに力を貸したせいで、負けちゃいました』って~」

 どうやら、雄真がそこまで伊吹のことを大事に思っていたらしいことがショックだったらしい。
 故に、現在まんじゅうの自棄食い中である。

 乙女心は繊細なのだ。

「でもー 修復・再構成から一ヶ月やそこらで、ここまで出力を発揮できるかしらー?」

 ゆずはは崩壊寸前の校舎を横目で見ながら、意味ありげに問う。

「……何を言いたいのかしら? ゆずは?」

「もしかしたらーだけど、ゆーまくんと伊吹ちゃん『雄真くんは清純派よ』……そんなすーちゃん、今時清純派なんて言葉……」

 尚も何か言いかけるが、鈴莉の顔を見て沈黙する。
 ……実に賢明な選択である。

179:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:50:22 rteN4Azm0
「で、校舎の再建のことだけどー」

 ゆずはは、賢明にも話題を元に戻した。

「……分かってるわよ。ちゃんと再建の指揮は執ります」

 ふてくされた様に答える鈴莉。

「校舎の再建は、例の10日過ぎからで良いわよー」

「本当!?」

「どうせ一から建て直すのだものー 10日やそこら遅れたって構わないわよー
 けど、崩壊した校舎に対する対応はやってねー?」

「有難う、ゆずは! この恩は忘れないわ!」

 ゆずはの手を取り、心底感謝する。

「やあねえー わたし達は友達じゃあないのー
 ……でもどうしてもというなら、うちの小雪ちゃんにゆーまくん頂戴ー」

「雄真くんに、そういう話はまだ早いわ」

 高峰雄真って、式守雄真より響きが良いと思わないー? と笑うゆずはに、鈴莉は真っ向から拒否した。

「でもー、ゆーまくんももう17『中一よ』……いじわるー!?」

 …………

 …………

180:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 14:53:06 rteN4Azm0
 …………

「はあー、はあー、今日はー、この位で退いてあげるわー」

「な、何度でも、お、同じ、ことよ……」

 暫し壮絶な議論―議題は敢えて伏せるが―が続いたが、最終的には両者引き分けで幕を閉じるで合意した。
 そして、何事も無かったかの様に本題に入る。


「あと、肝心の再建費用なんだけどー」

「考えたくないわね……」

 鈴莉は顔を顰める。

 校舎そのものを建て直す上、魔法関連の書物や道具まで買い直さなければならない。
 その額たるや……
(とはいえ不幸中の幸いにも、以前の秘宝事件の際に改修したため、書物や道具の大部分は中等部や初等部校舎に移動したままになっており、高等部校舎にあるのは必要最低限に過ぎない)

「うち(高峰家)とー、伊吹ちゃんとこ(式守家)とー」

「まあ、妥当ね」

 壊した張本人とその原因なのだから。

「あと、すーちゃん」


181:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 15:00:26 rteN4Azm0
「何でよ!?」

「だってー 二人が争った原因は『ゆーまくん』よー
 ……嫌なら、小日向家に請求するけどー」

「払う、払うわよ!!」

 ウン十億も払う羽目になり、鈴莉は半泣きだ。
 ……とはいえ、心の中に『母親として雄真くんの不始末の責任をとらされている』と喜ぶ自分がいるのが、ちょっぴり悲しい。

「でねー 御門さんちも『払う』ってー」

「はあ? 何故、御門家が?」

 雄真くんの話では、葵さんはたまたま傍にいて巻き込まれただけだと……

「一応、『娘の不始末だから』だそうよー?」

 ……魔法科では、一部の生徒達の間で以下のような噂が流れている。

『雄真を巡って小雪と伊吹が大喧嘩。が、当の雄真は葵とよろしくやっていた。それを見た伊吹が大激怒……』―というものだ。

「馬鹿馬鹿しい。噂を肯定する様なものよ?」

 鈴莉は、吐き捨てる様に言う。

「それが目的かもよー?」

「まさか! 彼女はまだ子供よ? 第一、雄真くんと彼女は……」

 ありえない、と鈴莉。

182:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 15:02:36 rteN4Azm0
「うーん、じゃあ『全くの善意』とか」

「……『全くの善意』で、こんな大金払う物好きがいると思う?」

「まあ、『全く無い』とは言えないのじゃないかなー?
 それにすーちゃんと、御門さんちは……」

「何れにせよ駄目よ。お断りしなさい」

「うーん、流石に寄付を断るのはねー 理事長としてはー」

 ピシャリと撥ね付ける鈴莉に対し、ゆずは未練がありありだった。

「……その分は私が払うから」

「すーちゃん、お金持ちー」

 おお、と拍手するゆずは。
 それに対し、鈴莉は渋い顔だ。
(そりゃあそうだ)

「……ゆずはの方が、お金持ちでしょう」

「わたしはねー あんまりお金使わせて貰えないのよー?
 死んだおとーさんやおかーさんが、『お前はアレだから』うちの人にお金の管理を任せるってー」

「賢明な判断ね」

「……わたしたち、友達よねー?」

 あまりにもあっさりと亡き父母の言葉を肯定され、ゆずははちょっぴり友情に疑問を抱いてしまった。

183:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』その7
06/11/24 15:04:47 rteN4Azm0
「事実を言ったまでよ。ゆずはにお金の管理を任せたら、全部酒になっちゃうじゃない」

 大学時代のこと、忘れたとは言わせないわよ? と鈴莉。

「ははは…… あー、もう放課後ねー ゆーまくんが帰ってくるわよー?」

「わざとらしい。 ……でもまあ良いわ。乗せられてあげる」

「うんうん、今日は私がやっておくからー 今夜は母子水入らずでー」

「じゃあ、お言葉に甘えるわね?」


 翌日、余計ややこしくなった後始末の前に、鈴莉は頭を抱えることになる。
 ……が、たとえこの未来を予知していたとしても、鈴莉は帰宅を選択した筈だ。

 この10日間は、鈴莉にとって宝石の如く貴重な時間なのだから。







SS投下終了


184:名無しさん@初回限定
06/11/24 15:19:12 +BynkeT40
         / ̄ ̄ ̄フ\               _       ノ^)
       // ̄フ /   \            .//\     ./ /
      //  ∠/  ___\___  __//   \   / (___
    // ̄ ̄ ̄フ /_ .//_  //_  /      \./ (_(__)
   // ̄フ / ̄////////////         |  (_(__)
 /∠_/./ ./∠///∠///∠//      ∧ ∧ /) (_(__)
∠___,,,__/ .∠__/∠__/∠__/       (´ー` ( ( (_(___)
\    \ \/ ̄ ̄ ̄フ\ \ \_ \  _   /⌒ `´  人___ソ
  \    \ \フ / ̄\ \ .//\  //\ / 人 l  彡ノ     \
   \ _  \//___\/∠_  //   < Y ヽ ヽ (.       \
    //\///_  //_  ///     人├'"    ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   //  //.////////∠/      ヽ-i ヽ__  ヽ
 /∠_//./∠///∠// .\\       `リノ ヽ |\  ヽ
∠____/.∠__/∠__/∠フ\.\\      c;_,;....ノ ヾノヽ__ノ


やっぱり伊吹とやってたのかw
それにしても鈴莉がいい具合に壊れてるな、いっその事FDみたいに親子で犯(ry

185:温泉の人
06/11/24 20:43:50 Z9Af+Xh30
あのEDでそんなすげぇことやってたのかUMAw<伊吹の魔力回路完全修復&強化
しかしまぁ壊れまくってますな鈴莉さん。
これはもしやぱちねすWかーさん丼の再来なるか? なんてw

ともあれ、毎度乙です~

186:名無しさん@初回限定
06/11/26 12:28:21 j5+KAVGX0
gj

187:『世の中甘くない』の者です
06/11/26 12:53:47 XJlYDBPn0
 >>184>>185>>186
 皆様、有難う御座います。
 もはや『どの辺がはぴねす?』と化したSS書いてる者です。

「なあKUROさんや、雄真の実の父親って不明じゃないよ?」
「へ? 誰?」
「小日向の父さん」
「はあ? 雄真は貰われっ子だろ?」
「ちゃうちゃう。小日向の父さんは鈴莉さんと雄真こさえた後、音羽さんと結婚したの」
「へ? じゃあすももは腹違いの妹?」
「んにゃ、音羽さんの連れ子」
「……そんな設定、本編中にあったっけ?」
「TV」
「知るかアッ!?」

 ということで、ますますオリ設定となりましたorz

>やっぱり伊吹とやってたのかw
 それについては否定も肯定もしません。皆様の解釈にお任せいたします。
 ……いえ、そうすれば話が二通りになり、SS書く上で選択肢が広がりますから。

>あのEDでそんなすげぇことやってたのかUMAw<伊吹の魔力回路完全修復&強化
 まあ独自解釈であります。
 ただ、うちの雄真はへたれ気味なので、肝心の意志力が……

>しかしまぁ壊れまくってますな鈴莉さん。
 こうしないとブラックなので(笑)

188:名無しさん@初回限定
06/11/26 18:44:46 3PRzN5Zi0 BE:178308454-2BP(512)
>187 UMAの親子関係設定はほぼそれで公式だったはず……。

189:名無しさん@初回限定
06/11/26 21:27:08 S+mRQfK50
>>187
SSGJですよ。原作設定との違いについては、特に気にしないでも良いかと。

自分も二次創作SSにトライしてみたいが、ここまで作り込まれてるのを見て
レベルの違いに愕然。

190:温泉の人
06/11/26 21:30:43 ul1cDgSF0
何気にしももの実父(=音羽の前夫)って詳細一切不明なんだよね。
どんだけ複雑なんだよあの家庭はwwwwwww

191:名無しさん@初回限定
06/11/27 18:16:40 gkHxCFm10
>>187
小日向一家の家族構成関連(雄真の父親とか)については、TVじゃなくてVFBが初出。
公式設定のはずだよ。

消息不明というか、名前など詳細不明なのは音羽の前夫(すももの実父)だね。
雄真の父はたしか小日向大義(たいぎ)って名前。


でもまあゲーム本編じゃ一切出てこないし、そんな設定無視してもオッケーだと思うけどw

192:名無しさん@初回限定
06/11/27 18:19:39 gkHxCFm10
追記。
大義はゲーム期間中は長期出張中で不在、って設定だったかと。

193:『世の中甘くない』の者です
06/11/29 20:10:49 rsQR+vY10
>>188、191、192
 情報提供有難う御座います。
 しかし……豪く複雑な家庭だよなあ……
 凄いよ、親父さん。

>>189
 有難う御座います。

>ここまで作り込まれてる
 設定厨とも言えます(笑)
 最初に有る程度核となる世界観を造らないと、自分の場合書けないのですよ。
 どうでもよい所が気になっちゃって……

>>190
>何気にしももの実父(=音羽の前夫)って詳細一切不明
 何か怖い想像してしまった。

194:名無しさん@初回限定
06/11/30 00:00:15 O0HI1/eK0
本スレでも書いたたけど、UMA父は鈴莉かーさん(最低でも一回はしてる)
と音羽かーさん(まさか手付かずってことはないよね…)との味比べが出来る
今のところ唯一の人

凄いというか、かーさん’Sスキーな漏れにとっては一番はぴねす!な人だと思ってます
>>UMA父

しもも父…確かに謎ですね…

195:名無しさん@初回限定
06/11/30 09:02:15 +p131Tss0
夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』

明け瑠璃の麻衣ED後日談SSです。
一応、主人公視点となっております。初投稿で色々稚拙な部分も
あるかと思われますが、何とぞご容赦を。

196:夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』(1/6)
06/11/30 09:04:01 +p131Tss0
8月下旬のある日。
懸案の王立博物館の展示会も無事終わり、片付けや後始末も一段落したので、
今日は左門で久しぶりにみんな揃っての夕食会にしよう、ということになった。

夏いっぱいで月へ戻ってしまうフィーナやミアとの一緒に食事をできる貴重な時間でもある。
俺自身、準備に参加するつもりだったが、なぜか菜月から「7時になるまで来ちゃダメ」と
釘をさされてしまった。

姉さん、フィーナ、ミアは博物館に行っていたので今、家にいるのは俺と麻衣の2人きり。
「ふ~ん、来ちゃダメって言われてるんだ」
俺の隣に座っている麻衣がちょっと難しそうな顔で考え込んでいた。
「え、お兄ちゃん?何でこっちをじっと見てるの?」
気がつくと、俺は麻衣の顔をじっと見ていた。
「うん、考え込んでる麻衣の顔も悪くないなって、ね」
夏の麻衣とのあの出来事以来、俺はすっかり麻衣に魅了されてしまった。
麻衣の一挙一動全てが可愛らしく見えてしまう。恋は盲目ってやつかな?
「もう…/// 恥ずかしくなるからやめてよ…」
「はは、ますます可愛くなった」
「うう…ほ、ほら話を戻すよ。さっきの話の続きなんだけど…」
あんまりイジめるのも麻衣がかわいそうなのでこの辺で切り上げておくか。
「それって、サプライズパーティーみたいだよね」
「でも、サプライズされるのはパーティーの主賓のはずだろ?
今日は姉さんの慰労会も兼ねてるんだから、主役は姉さんのはずなんだけど…」
「それじゃ、わたしたちが主役ってことなのかな?」
そう言われると何か嫌な予感がした。

197:夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』(2/6)
06/11/30 09:05:23 +p131Tss0
夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』(2/6)

7時になった。姉さんたちはまだ帰ってこない。どうしよう、と2人で悩んでいると
携帯電話のバイブが振動した。菜月からのメールだった。
「さやかさんたちを含めてみんな来てるよ。準備も完了したから早く来てね」
微妙に解説チックな文章。
「そうなんだ。もうみんな来てるんだ」
メールを見せると麻衣も少しばかり訝った。何かあると思いつつも2人で左門に向かう。

左門はこれまたなぜか真っ暗で中が見えなかった。
「お兄ちゃん、不気味な感じがするよ」
そう言って腕に絡み付いてくる。もう店の前まで来てしまった。引き返すのも後味が悪い。
「早く入ってきて」
またメールが来た。こうなったら行くしかない。
「よ、よし行くぞ」
麻衣を半ば引っ張るようにして中へ入っていくと…

198:夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』(3/6)
06/11/30 09:09:33 +p131Tss0
ピカッ
パァ~ン!
中の照明がついたと思う間もなく、クラッカーの音が鳴り響く。
「2人とも、カップル公認おめでと~!」
クラッカーを片手に、菜月が声をかけてきた。いや、菜月だけじゃなく
みんなが勢ぞろいして俺たちを迎えてくれていた。しかもカレンさんまで…
「で、これってどういうことですか?」
「決まってるでしょ。あんたたちが公認カップルになったんだから、そのお祝いよ」
菜月が楽しそうに答える。首謀者はコイツだな。
「結婚…おめでとう…お幸せに…」
リースまで来ていた。しかも微妙に勘違いしてるぞ。
「はぅぅぅ…恥ずかしいよぅ…」
すっかり顔を真っ赤にした麻衣が俺の背中で小さくなっている。
「あらぁ、恋人同士になるんだったら、これくらいのことは覚悟しなきゃ。
そんなことも考えないで付き合ってたのかな~?」
菜月は俺たちをイジめる気満々だ。
こうして、ある意味、悪夢のような夕食が始まった…


199:夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』(4/6)
06/11/30 09:12:50 +p131Tss0
30分後…
夕食会のはずが、祝い酒としてビールが出てきて、そこから恐ろしい方向へと進みだした。
食事の最中はまだ大丈夫だったのに、どうやら食後になってアルコールが回ってきたらしい。
「でさぁ、2人ともすごいのよ」
お酒の入った菜月が話を明らかにアブナイ方向へと持っていっていた。
とはいえ、おやっさんと仁さんが後始末に厨房へ戻っていったのを見て切り出すなど
微妙に心配りを忘れていない。
「私の部屋って達哉のと隣みたいなもんでしょ。だからさぁ、聞こえちゃうのよね~」
「…///」
何のことかすぐに分かった俺と麻衣は二人して真っ赤になる。
「お、お願いだから止めてくれ」
「だ~め。確か1週間くらい前のことかしらねぇ。達哉の部屋のカーテンが少し開いてたから、
声をかけようとしたら、何と二人が抱き合ってたのよ。それでね、こうやって…」
ま、待てよ。その先って…
菜月がどこからともなく、バナナを取り出すとじっとそれを見つめる。
『お兄ちゃんの…おっきい…』
『麻衣のそういう顔もすごく可愛いよ』
あの時の麻衣と俺の声を忠実に再現している。
「わぁーっ、わぁーっ!」
何とか妨害しようとするも間に合わない。
「全くアツアツよねぇ。困ったものだわ」
姉さんは酔いながらも、そっち系の話題にはあまり触れないでくれている。本当にありがとう。
「それが男女の営みというのね。随分と激しそう」
お酒が入っているせいか、フィーナは対照的に興味津々といった様子だ。
頼む、酔いが覚めるとともに忘れて欲しい。
「??男の人の何を舐めてるんでしょうか?…ってええっそんなのを舐めるんですかぁ?」
ミアはまだそういったことの知識がないらしい。リースも何だか分からないといった表情。助かった。
「ふむふむ、そのようにすると男性に喜んでもらえるのですね」
カレンさんはこの聴衆の中で一番熱心に聴いていた。うわ、メモまでとってるよ。
お酒が入ると人はここまで変わってしまうものなのだろうか。


200:夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』(5/6)
06/11/30 09:16:36 +p131Tss0
一方、麻衣はというと…
お酒はほとんど飲んでいないが顔を俯けたまま、動こうとしない。何とかしてあげたいんだけど…
「ほら、麻衣。あなたも飲みなさい。主役がしょぼんとしてるとつまらないぞ~」
「ちょ、ちょっと待ってよ~」
麻衣の制止も聞かず、余っていたビールを麻衣のコップに入れる。
「お、おい」
「まぁまぁ、達哉くん。女の子はこうやってお酒に強くなっていくものなのよ~」
姉さんが俺に絡みついて、俺の動きを阻止した。
「う、うぃ~~」
菜月の強気に押され、飲んでしまったたしい。あ、二杯目まで…
「達哉も飲みなさいよ~」
菜月がこちらにやってきた。強引にビールを注がれ、飲まされる羽目になる。
「飲まないと。もっと話を続けるぞ~」
飲むしかない。何とか飲み干すと二杯目、そして三杯目まで来た。
「ほらほら、麻衣は二杯飲んだんだから達哉はその倍は飲みなさいよ~」
もうダメだ。こっちの意識が飛ぶまで飲まされるだろう…と絶望していると。
「こらぁ~~菜月ちゃん、何してるの~」
真っ赤な顔にしかめっ面の麻衣が、こちらに割り込んできた。
「お兄ちゃんに手を出しちゃ、だ~め~」
「あ~、麻衣ったらヤキモチ妬いてる~。かわいい~」
全くその通りだ。酔っ払ってしかもヤキモチまで妬いてくれてる麻衣は可愛いぞ。
菜月と麻衣が乱闘(?)を始めたスキを突いて姉さんが隣にやってきた。
「そういえば、達哉くんと飲んだことってなかったわよねぇ~」
姉さんがこちらに身体を預けてくる。何だかすごく色っぽい。ドキドキしてきた。
「あ~っ、お姉ちゃんまで~!お兄ちゃんも嬉しそうな顔しないの!」
姉さんの身体を強引に引き離そうとする。
「もう~、私たち家族なんだからこのくらいいいじゃな~い?」
姉さん、性格が豹変してるよ。
「でもこういうのが認められるのは恋人同士だけなんだからぁ~」
もうどうしようもないな。酔いが覚めるのを待つしかない…

201:夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』(6/6)
06/11/30 09:19:53 +p131Tss0
こうして、地球側女性陣がすっかり酔っ払っている様子を、フィーナ、ミア、カレンら
月側女性陣は苦笑しながら見ている。リースは初めてのお酒で寝てしまったみたいだ。
1時間後、男性陣と月側女性陣が協力して、眠り込んでしまった女性陣と会場の後片付けを行い、
ようやくお開きになった。

その後、俺が夜は必ず、部屋の窓とカーテンをきっちり閉めるようになったのはいうまでも無い。
(続く?)

初投稿であります。グダグダな展開の上、ストーリー性も無いに等しいですが、
勢いだけで書いてしまいました。何とかシリーズものにしてきたいところです。
しかし、改めて見返してみると、このスレのSS職人さんたちのレベルの高いこと高いこと。
そして、何て初心者な自分の文章…

202:名無しさん@初回限定
06/11/30 14:40:12 rgjdqah80
>>195
乙!

余計なお世話かも知れないが、専用スレに投下した方が受けは良いぞw
スレリンク(eroparo板)
スレリンク(eroparo板)

203:温泉の人
06/12/01 20:32:50 UCGpg3s+0
>>195

>『お兄ちゃんの…おっきい…』
>『麻衣のそういう顔もすごく可愛いよ』

ちょっくら光速で原作確認してくる(と言いつつ原作まだ1周もしてない私)

204:195
06/12/01 21:35:15 lQ+pficq0
>>203
すんません、そんなシーンは原作にはなく、自分の妄想です(ォィ

>>202
八月系SSスレの存在自体は知ってたけど、両スレに投下されるSSはエロエロな
ものばかりだったんで、非エロ路線な自分のSSはここが適所かと思ってました。

…が、しかし。>>1を見たらこのスレ自体18禁モノOKなんですね。
このスレの雰囲気が好きなんで、後ろ髪引かれるけど明け瑠璃SSスレに行こうと思います。

205:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 10:52:39 PTJ95yR50
遥かに仰ぎ、麗しのSS『凰華女学院分校の日常』

「だりゃぁぁぁっ!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 静まり返った凰華女学院分校の敷地に、掛け声と悲鳴が一組になって響き渡る。
 掛け声は兎も角、悲鳴の方は切羽詰ったかの様な悲痛な声だ。

 ……が、誰も気に留める者はいない。

 用のある者は仕事を続け、用の無い者も、『ああ今日もか』とばかりに無関心を決め込んでいる。

 この悲鳴、どうやら凰華女学院分校の『日常の一部』と化しつつある様だった。




「おおっと!? みやび選手のパロ・スペシャルが華麗に決まった!
 司選手、堪らず悲鳴を上げています!!」

「あわわ…… 先生、がんばってがんばって」

 ここ校庭では現在、風祭みやび vs. 滝沢司の無制限一本勝負が行われていた。

 両者の戦いは、時と場所を選ばず行われる正に『なんでもアリ』の勝負である。
 ……まあ大概は、司がみやびにいらんこと言って襲いかかられる、といったパターンが大半だが。

「ほらほら! 止めて欲しかったら、大人しく『申し訳ありませんでしたみやび様』と言うんだあ!」

206:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 10:54:19 PTJ95yR50
「うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 みやびがギブアップを要求するが、司はとてもそれどころではない。
 先程から、両腕両足の間接が何かミシミシと嫌な音を立てっぱなしだ。おまけに滅茶苦茶痛い。

 司は風祭の権力にも財力にも屈しない馬鹿……もとい漢である。
 が、所詮は貧弱な坊やであるため、みやび個人の暴力の前に屈する羽目になっていた。

「……きゅう」

 暫し司はじたばたと暴れていたが、やがて失神、勝負はみやびの勝利で幕を閉じた。

「見たか! これが風祭の力だっ!」

「お見事で御座いました、御嬢様」

 勝ち誇るみやびを、侍女のリーダが称える。

「うむ、これで99戦全勝だな!」

「その通りで御座います、御嬢様」

「勝負の内容は、しっかり記録してあるな?」

「もちろんでございます、御嬢様」

 と、リーダは片手に持ったハンディカムをポンと叩いた。
 ……どうやら、一部始終が撮影されているらしかった。

207:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 10:56:24 PTJ95yR50
「よし! 100戦全焼したら、その記念に今までの全試合の記録を編集し、校内で放映しよう! もちろん全員参加だ!」

 良い思いつきだ、と言わんばかりにはしゃぐみやび。
 その顔は実にさっぱりとしており、司がちょっかいを出す直前のピリピリした様な雰囲気は霧散していた。
(司でストレス発散したのだろう)

 リーダは、そんな彼女に微笑みながら一礼する。

「かしこまりました、御嬢様」

「ではいくぞ!」

「はい、御嬢様。それでは皆様失礼します。
 司様も、これにこりず御嬢様の御相手を御願いいたしますね」

 意気揚々とみやびは去っていった。

 ……しかし、全試合撮影してたんですか……




「先生! 無事です……きゃああっ! せっ先生!?」

 みやびとリーダが去って直ぐ、今度は仁礼栖香がやって来た。
 どうやら司とみやびの対潜を聞きつけ、慌ててやって来たらしい。

 で、ぐったりしている司に驚いた、という訳だ。

208:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:01:03 PTJ95yR50
「せっ先生! しっかりして下さい! ……って、何か口から白いものがっ!?」

「あ~、かなりやられたからね~」

「何かミシミシっていやな音が、いっぱいいっぱい……」

「なら、止めなさい!」

 先程からリーダと共に一部始終を見ていた相沢美綺と上原奏の言葉に、栖香はこめかみをひくひくさせながら叱責する。

「ごめん、それ無理」

「理事長は、私達の言うことなんか聞かない聞かないですよ……」

「貴方達は…… まあいいでしょう、とりあえずは先生を保健室にお連れするのが先決です」

 そう言うと、栖香は司の下にもぐりこみ、何とか背負おうと試みる。

 が……

「きゃあ」

 司の重みを支えきれず、たちまち司に押しつぶされる。

「おおっ!? バックから襲うとは! センセ大胆!!」

 良い被写体、とばかりに美綺はその様子を激写する。

「あわわっ! 美綺、やめようよ~」

209:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:03:17 PTJ95yR50
「止めてくれるなおっかさん。おいらがやらねば、一体誰がやるんだい!?」

「み~さ~き~ち~」

 一向に聞き入れない美綺に、流石の奏もお怒りの様だった。

「ちぇ~、わかったよ。 ……折角のネタだったんだけどなあ~」

 美綺はぼやきながらも、奏と共に栖香を助け出し、今度は三人がかりで司を保健室まで運んでいった。
 ……実はこれが、ここ数ヶ月の彼女達の日課であったのだ。




「いてて……」

「先生、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ…… いつも済まんな、仁礼」

 司は、保健室まで連れてきてくれた挙句、手当てまでしてくれる栖香に礼を言った。
(ちなみに、みやびを怒らす遠因になった二人については無視)

「いえ、クラス委員ですから」

「そ~れ~だ~け~?」

「下衆の勘繰りは止めてください」

「酷っ!?」

210:名無しさん@初回限定
06/12/02 11:04:21 ABITwjCF0
支援。

211:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:05:38 PTJ95yR50
 ニヒヒと笑いながら尋ねる美綺を、栖香はばっさりと切り捨てる。
 美綺は一瞬ショックを受けるが直ぐに復活、今度は司にちょっかいを出してきた。

「でもセンセ、弱すぎるよ。99戦全敗じゃあ、凰華ジャーナルのネタにならないじゃない」

「そうは言うがな相沢、あれで理事長は中々のグラップラーだぞ? あの技のキレは相当のものだ」

 特に関節技とか関節技とか関節技とか……

「そういえば、今度先生が負けたら、私達全員強制で今までの記録を見なきゃいけないんですよねですよね……」

 奏はうんざり気味だ。
 ……まあ、理事長主演の格闘映画を長時間見させられる様なもの、或る意味拷問だから、当然といえば当然の反応だが。

「センセ、男ならもっとしっかりしろ!」

「……先生」

「何だ、仁礼?」

 先程から何か考え込んでいた栖香が、真剣な口調で司に語りかけてきた。

「今度の勝負なのですが、心苦しいとは思われますが、どうか本気を出して頂けないでしょうか?」




「……仁礼、すまないが、僕には君が何を言っているのか……」

212:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:09:14 PTJ95yR50
 司は、栖香が何を言っているのか分からず、怪訝そうに答える。

「先生のお考えもごもっともではありますが、今は非常事態です。
 このままでは、先生に不名誉な映像が公開されてしまいます」

「え~と、もしかしてスミスミ、センセが手加減してると思ってる?」

「当然です! 大人の男の方に、私達が敵う筈無いじゃありませんか!」

 何を馬鹿なことを、と栖香。

「いやあ~ でも、センセだしね~?」

「先生、弱弱だし……」

「お前ら……」

 教え子達の駄目駄目な評価に、司はちょっぴり凹み気味だ。
 ……まあ、彼女達の言葉はかなりの部分で真実を突いているのだが。

 正直、みやびは手強い。
 あのちんまい体を見て侮ったら、トンデモナイ目に逢うだろう。
 何せ、自分よりも遙かに大きく重い司を軽々と投げ飛ばす位なのだ。
 ……仮にも、柔道有段者である司を、だ。

 が、栖香は真剣だった。
 彼女は、司が本気を出せば負ける筈が無い、と信じ込んでいるのだ。

 本音としては、暫く理事長から遠ざかって間をおき、近づくのは理事長が映画のことを忘れてからにしたい(←チキンである)が……

 ―こりゃあ、やるしかないな。

213:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:11:18 PTJ95yR50
 そう腹を括る。

 何より、可愛い教え子の信頼と期待には、答えない訳にはいかないのだ。
(みやびも一応司の教え子なのだが、そんなことは遙か衛星軌道上まで棚上げした)

「ふっ」

「? どしたの、センセ?」

「仕方が無い。一度だけ、一度だけ本気を出そう」

「先生!」

「……いや、本気って…… 何か、今までも結構いっぱいいっぱいだった様な……」

「えっ? まさか…… でもでも!?」

 目を輝かせる栖香と半目で突っ込みを入れる美綺、そして司の様子に『もしかしたら?』とオロオロ気味の奏……三者三様である。
 が、司は自信たっぷりに言い放った。

「心配するな。こう見えても、僕は高校時代に柔道の県大会で準優勝したこともあるのだ。
 本気を出せば理事長もイチコロさ!」

「凄いです!」

「本当!? こりゃあ、明日の凰華ジャーナルのネタになるぞ~」

「県大会準優勝って…… 本気って…… 凄いけど、何だか何だかとってもおとなげないよ……」

214:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:14:07 PTJ95yR50
 ……やはり三者三様の彼女達。

「あれ? でもセンセ、高校時代は野球部で、県大会準優勝も野球のことじゃあ?」

 ふと思いつき、美綺があれ~と尋ねる。

「掛け持ちしてたんだ」

「……どっちか一つに絞れば、全国大会出場だって出来ただろうに……」

「うるさいぞ相沢」

 野球部ではレギュラーで県大会準優勝、柔道部でもレギュラーで県大会準優勝……
 こう聞けば、司はスポーツ万能とも取れるだろう。

 が……
 
 野球部でレギュラー云々に関して言えば、丁度野球部は9人しかいなく、全員レギュラーだったのだ。
 加えて言えば、当時野球部は清原君(キャッチャー)と桑田君(ピッチャー)という野球の天才二人が作ったばかりであり、彼等二人の活躍のお蔭で県大会準優勝まで進んだ、というまるでどこぞの野球漫画の様な展開が真相だった。
 ちなみに、清原君と桑田君はその後プロ野球に進み、現在1億円プレイヤー目前だそうだ。

 柔道で県大会準優勝云々に関しても、偶々相手が三人ほど怪我や何やらで棄権した、というまるで何かが乗り移ったかの様な悪運によるもので、実際は県大会でベスト16に進めるかどうかも怪しい。
 まあそれでも凄いのではあるが……

 ……本当、額面だけでは物事はわからないものである。

215:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:16:34 PTJ95yR50
 とはいえ、こうして賽は投げられたのだった。




「くくく、まさかお前から挑戦して来るとはな、滝沢司」

 負け過ぎで脳に回ったか? とみやび。

「ふふふ、理事長こそ年貢の納め時ですよ?」

 わざわざ実家から送ってきてもらった柔道着に身を包んだ司。
 今までは背広で戦っていたということから考えて、今回はいつもと違う様だ。
(ちなみにみやびはジャージ)

「家柄の差が絶対的な差であることを教えてやる」

「家柄なんて飾りです。御偉いさんにはそれがわからんのですよ」

「ふ、ふ、ふ」

「く、く、く」

 もはや司とみやびは、互いしか見ていなかった。

 ―泣かしちゃる!

 二人の心は、その一点でシンクロしていたのだ。

216:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:18:42 PTJ95yR50
「さあっ! いよいよ運命の決戦が始まろうとしています!
 今回は運命の第100戦!
 風祭みやび選手(総合格闘家)が100勝目をあげ、完全勝利を達成するか!?
 それとも滝沢司選手(講道館二段)が一矢報いるか!?
 ここ武道館は緊張に包まれています!」

 司会の美綺もノリノリである。
 何せ、凰華ジャーナルの総力を挙げて宣伝したお蔭で、観客も多い。
 相乗効果を考えれば、凰華ジャーナルの良い宣伝にもなるだろう。
 美綺は内心、笑いが止まらなかった。

「さすが天下の凰華女学院。畳のクッションが効いてるな」

 これなら、全力でいけそうである。

「さあ来い! 滝沢司!」

「おうさ!」

 試合が始まった。




「くそっ! ちょこまかと!」

 司は内心焦りまくりだ。
 先程から、みやびのスピードに付いていけないからだ。
 ……加えて身長差が有り過ぎるため、転がし難くて敵わない。
 
 ―払い腰……いや、内股で決める。

217:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:26:39 PTJ95yR50
 司は高校時代の得意技で決めることにし、機会を待つ。
 おとなげないと言われようが、栖香の信頼と期待を裏切る訳にはいかないのだ。

 ―今だ!

 それは絶好のタイミングの様に思われた。

 が……

 視界が反転する。
 一拍子置いて、畳みに叩きつけられた音。

「まさか…… 内股すかし!?」

「ふふふ! まんまと罠に嵌ったわね! お前が内股で勝負に出ることなどお見通しよ!」

「な、何だって!?」

 確かに小さな相手を投げるには、かなり技が制限される。
 が、それにしても―

「お前の得意技が内股だということ位、先刻承知の上だ!」

「!?」

 リーダが高校時代の司の記録を、公式・非公式を問わず調べ上げ、得意技等をはじめ、何から何まで調べ上げたのだ。
 その報告を受けたみやびは、司が内股で勝負に出るだろうと確信し、司と同様に機会を伺っていたのだ。
 ……要するに、司はまんまと罠に嵌った、というのが真相だろう。

218:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:28:12 PTJ95yR50
「卑怯ですよ!?」

「卑怯などという言葉は、負け犬の遠吠えだ~♪」

 抗議する司に、みやびはいかにも嬉しそうに言い放った。
 が、次の瞬間には司にかにばさみをかけられ、みやびは顔面から畳みに叩きつけられた。

「負け犬は負け犬らしく……ぷぎゃ!? 何するのよ!? もう勝負は終わったのよ!」

「はあ? 理事長、何を言うんですか? 柔道じゃあ無いんだから、『一本で終わり』な訳無いでしょう?」

 果たし状に、柔道ルールで決着をつける、なんて書いてなかったでしょう? と司。

「え…… し、しまったあ!?」

「ふっ、見事にひっかかりましたね?」

 嘘である。
 本当は、柔道勝負の積りだったのだが、『そっちがその気なら……』と方針を転換したのだ。
 ……本当、おとなげがない大人である。

「ひ、卑怯者~!」

「はて? 『卑怯などという言葉は、負け犬の遠吠えだ~♪』と仰ったのは理事長御本人では?」

219:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:30:32 PTJ95yR50
 ニタニタ笑いながら、司は余裕の表情で返す。

「く~や~し~、司なんかにひっかけられるなんて~」

「く、く、く、僕の勝ちですね、理事長。大人しく負けを認めて下さい。
 ついでに、今までの映像記録も全部破棄して下さいね?」

 馬乗りになり、悪人のように笑う司。
 ……傍から見れば、まるで犯罪者である。

「そっそんなこと出来るか! 末娘とはいえ、我が名は風祭ぞ!?」

「理事長、御立派です。けど、そんなことを言っていられるのも、今の内だけですよ?」

 司は手をワキワキさせながら、楽しそうに囁く。

「ま、まさか!? やめろ!」

 みやびは司の意図を察し、怯えて後ずさる。

「やめろ~!!」




「きゃははっ! やめろ! 死ぬ~!?」

 司のくすぐり攻撃にあい、みやびは息も絶え絶えだ。

「降参したら、すぐ止めて差し上げますが?」

220:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:37:17 PTJ95yR50
「だっ誰が、降参など、するか!」

「今まで99戦、僕がただやられていただけとでもお思いで?
 理事長の弱い所は既に把握済みです。このまま笑い死にしたくなければ『先生?』……へ?」

 ……振り向くと、冷やかな目をした栖香さんが立っていらっしゃいました。

「え~と、仁礼?」

「理事長と何をしていらっしゃているのですか? 皆の目の前で……不潔です!」

「待て、誤解だ! これは真剣な勝負……」

「それの何所が真剣勝負ですか!?」

 確かに、説得力皆無である。

「『殿方のプライドがかかっている』と今まで考えていましたが、違った様ですね。
 理事長とお楽しみの所、申し訳ありませんでした。では」

 そう言い捨てると、栖香は武道館を後にする。

「仁礼、待て! 勘違いだ! こんな貧弱な体でお楽しみも何も……うぎゃあっ!?」

「ふぁふぇふぁふぃふふゃふふぁ(誰が貧弱だ!?)」

 理事長に噛み付かれ、司は堪らず悲鳴を上げた。

「何をするんですか!?」


221:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:39:11 PTJ95yR50
 司も対抗して、みやびの頬を思いっきり引っ張る。

「ふぁふぁふぇ(放せ!)」

「そっちが先です!」

 傍からは、みやびが何を言っているか分からないが、司には分かるらしい。
 二人は喰いつき&引っ張り攻撃を与えつつ、口撃も行っている。
 ……もはや、子供のけんかである。


「あ~」

「最初は、とってもとっても真面目な勝負だったのに……」

「司様も御嬢様も、やんちゃで御座いますから」

 流石に肩を落とす美綺と奏。
 が、リーダは何所を見ているのか、二人の取っ組み合いを微笑ましそうに見ている。

 観客の生徒達は、呆れ果てたのか次々に武道館を出て行ってしまった。
 現在残っているのは、司の担当している生徒達(除く栖香)と、リーダ位のものだ。
 
「あの二人が私達の理事長と担任だと思うと、何か泣きたくなるよね……」

「同感」

 智代美の呟きに、誰ともなしに同意の声が湧き上がった。
 いや実際、見てて何だか泣けてくるのだ。

222:名無しさん@初回限定
06/12/02 11:39:20 ABITwjCF0
支援。精神年齢が近くなっている司ワロス(w

223:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:41:39 PTJ95yR50
「リーダさんは、このけんかを最後まで見届けるのですか?」

「はい、もちろんです。相沢様は?」

「……明日の凰華ジャーナルに載せなきゃいけないんで」

 こりゃあ、一面には載せられないなあ~、とぼやく。

「わたし、もう帰りたい帰りたいよ~」

 そんな会話の合間にも、両者の死闘は続いていた

「ふぁふぁふぇ~!(放せ~!)」

「断る!」




 凰華ジャーナル

 風祭みやび vs. 滝沢司の無制限一本勝負 第100回戦
 57分24秒 両者ダブルノックアウト

 添えられた写真には、力尽きて折り重なる様に突っ伏す二人の姿が写っていた。

224:『世の中甘くない』の者です
06/12/02 11:46:49 PTJ95yR50
 投下終了。
 『甘くない』シリーズではなく、他作品の短編です。
 連載も書きたいけど、これ以上連載を抱え込む訳にもいかないのですよねえ。
 でも、書きたいなあ……
 ついでに言えば、この作品はKUROが初めて自分で買った記念すべきエロゲーでもあります。
 衝動買いしてしてしまいましたが、とても面白かったです。
 うう、でも黄金三笠山30個分以上のお値段は痛い~

>>204
 投稿乙です。
 無理に移動することないと思いますよ?

225:名無しさん@初回限定
06/12/02 16:24:49 3U7KcKMy0
>>224
GJJJ!!
甘くないの続きかと思ったら何と意外なw
かなっぺ口調の再現が上手いなぁー

226:新東雲学園都市の狂乱の一日
06/12/02 23:08:16 zclMWaJh0
--朝:教室--

信綱:ペトレーションの脅威も去って世は泰平、事もなし、か。何かつまらんね。
蔵人:いいじゃないか。悪いことじゃないだろ。
信綱:悪いとは言わんさ。だが退屈であることも事実だ。お前は違うのか、蔵人?
蔵人:俺は田舎育ちだからな。ようやくこっちの生活に慣れてきたところだしそうでもない。
圭 :その割には、未だに一人では都心に出れないようですが?
蔵人:い、いいじゃないか。どうせ出掛けるなら一人で行くより誰かと行ったほうが楽しいだろ?

小夜音:おはようございます。皆様。
六花:おっふぁよーごらいまーふ!!

小夜音とりっちゃんが登校してきた。
小夜音はいつも通りドレスを纏い凛とした姿で。りっちゃんは相変わらず何か食べながら。


227:新東雲学園都市の狂乱の一日
06/12/02 23:08:32 zclMWaJh0
信綱:はいはい。おはようさんっと。(適当に手をひらひらさせて応じる)
小夜音:信綱さん、だらけきっていますわね。
六花:ほうだほうだ。
蔵人:…りっちゃん…行儀悪いから喋るか食べるかどっちかにしてくれ。っていうか十分君もだらけてるぞ。
六花:えええ!?私のどこがだらけてるっていうんですか!?
圭 :そうですね…。食べながら歩くのは元からだとしても、
圭 :最近部屋は散らかし放題ですし、夜更かししてまで怪しげな本を読みふけっていたり、それから…
六花:わー!わー!わー!私そんな事してませんー!っていうかどこまで知ってるんですかー!?圭さん!?
蔵人:りっちゃん…墓穴掘ってるぞ…。それに圭は階も違うし部屋に入ったことも無いのに何でそんな事知ってるんだ…。
圭 :僕はこれでも魔術師ですからね。色々あるんです(にっこり)。
六花:説明になってないよぅ…。
小夜音:六花さん、私生活には余り口を出したくはありませんが、婦人がそれではいけませんよ?
六花:ぅぅぅ…。
信綱:まぁ、りっちゃんらしいと言えばりっちゃんらしいけどな。
六花:フォローになってないよぅ…。(泣き崩れる六花。教室の隅で何かブツブツ言っている。いじけてしまったようだ)
小夜音:さあ、そろそろ始業ですわ。席に着きましょう。(小夜音、自席へ移動)

信綱:しっかし、小夜音は相変わらず隙が無いな。可愛げが無いって言うか。
蔵人:そんなことないぞ。小夜音だって照れたり慌てふためいたりした時は…はっ!?
圭 :へええ。それは興味深いですね。で、蔵人君は一体どこでそれを?
蔵人:ど、どこだっていいじゃないか。それより御影先生が来たぞ。

御影:席に着けー!出席を取る。

何でもない日常の何でもない一幕。
これがあの狂乱の日の幕開けだとは、このときの俺には全く思いもつかなかった。


228:新東雲学園都市の狂乱の一日
06/12/02 23:08:48 zclMWaJh0
--昼休み:学食--

小夜音:お茶会…ですの?
圭 :そうです。いつも小夜音さんには美味しいお茶を振舞って頂いてますから、
圭 :今度は僕がドイツ流のもてなしを小夜音さんに受けていただこうと思いまして。
小夜音:圭さんのおもてなしですか…。それは楽しみですね。是非行かせて頂きますわ。
圭 :ありがとうございます。信綱、蔵人、君たちも来てくれるよね?
蔵人:お、俺たちもか?
圭 :そうです。明日はデミウルゴス解体から丁度一ヶ月ですし、
圭 :ちょっとしたパーティも兼ねようかと思いまして。それに…
蔵人:それに?
圭 :来なければあの事とかこの事とかバラしちゃいますよ?(にっこり)
蔵人:あの事とかこの事って何の事だ!?
圭 :おや?言ってしまってもいいんですか。あの事とは…
蔵人:ま、待て圭。全く身に覚えは無いが、お前だけは計り知れん…。
蔵人:分かったよ、俺たちも行く。どうせ暇だしな。
六花:じーっ………。
圭 :ありがとう。では準備もありますし明日の夕食後にお待ちしています。
圭 :伊織先輩には僕から伝えましょう。丁度図書館に行く用もありますから。
六花:じーっ…………。
小夜音:分かりましたわ。中条さんたちと冬芽さんには私が伝言しましょう。
六花:じーっ……………。
圭 :お願いします。……どうしました、りっちゃん?
六花:な!ん!で!私を誘ってくれないのぉーっ!(ドゴーン!)
圭 :…だって六花さんをお誘いすると…
圭:部屋散らかされそうですから。 蔵人&信綱:食べ物全部食べられちゃうからじゃないか?
六花:むっきぃー!私そんなことしないもんっ!……………多分(ぼそっ
圭 :あはは。冗談ですよ。では明日楽しみにしていてください。ほら、りっちゃんも機嫌直して下さい。


229:新東雲学園都市の狂乱の一日
06/12/02 23:09:02 zclMWaJh0
--翌日:寮--

蔵人:そういえば圭の部屋に入るのは初めてだな。
信綱:そうなのか?まぁまがりなりにもあいつは魔術師だし、お前とは違う意味で風情に欠ける部屋だがな。
蔵人:お前は入ったことがあるのか?
信綱:まぁな。お前らがこっち来る前に何回かはな。

コンコン

圭 :どうぞ。いらっしゃい。
蔵人:お邪魔します。……うわぁ……。
圭 :?どうかしましたか?
蔵人:…いや、見るからに怪しそうな壷とか本とかあるけど…聞いちゃいけないんだろうな…。
小夜音:そんなことありませんわよ?この壷はいい壷です!(やや興奮気味)
信綱:だから言ったろ。風情に欠けるって。ついでに女の子らしくもない。
蔵人:それにしてもあの小夜音の様子は一体…?何か興奮してるようだが…。
信綱:ほっとけよ。スイッチ入っちまったんだろ。ま、壷の良し悪しなんて俺にゃ分からんがな。
圭 :あはは。どうやらそのようですね。でも良い品物であることも確かなんですよ?
圭 :もっとも、ここにあるのは魔術用の物ばかりですから無名の工芸師の手によるものが多く、
圭 :芸術的・史学的な価値はありませんけどね。
蔵人:はぁ……。
圭 :兎に角座っていて下さい。じきに皆さんも来るでしょう。
小夜音:圭さん!この壷は何ですの?この壷もいい壷です!(大興奮)
圭 :はいはい、その壷はですね…(苦笑交じりに小夜音に駆け寄る)
蔵人:……ま、いいけどな……。

六花:おっ邪魔っしまーっす!
冬芽&白衣&黒衣&伊織:お邪魔します…。

230:新東雲学園都市の狂乱の一日
06/12/02 23:09:15 zclMWaJh0
--同日:圭の部屋--

圭 :それでは皆さん揃ったようですね。
圭 :ほら、小夜音さんも一旦壷の鑑賞は中断して席について下さい。
小夜音:そ、そうですわね。私としたことがつい…。(正気に戻りちょっとバツが悪そうに着席する)

と。

「ブリッ」

一同:………。(沈黙)
一同:……………。(かなり気まずい沈黙)

圭 :……今のおなら……小夜音さん……?
小夜音:ちちちちちち、違いますわよ!?決して私ではありませんっ!(席を立って猛講義の構え)
蔵人:で、でもだな。今のはどう考えても小夜音の方から音が…
小夜音:違うと言っているでしょう!?それに私はレディとしての…
圭 :はいはい。分かりました。今のは「無し」にしましょう。折角のパーティを台無しにしたくありませんからね。
圭 :小夜音さんも皆さんもそれでいいですね?(ざっと見渡す)
圭 :では、小夜音さん、改めて席に座ってください。乾杯の音頭は僭越ながら僕が務めましょう。
小夜音:……色々言いたいことはありますが…分かりましたわ。(納得いかない表情ながら渋々再び着席)

「ブリブリブリッ」

一同:…………………。(とても気まずい沈黙)
一同:………………………。(どうしようもなく気まずい沈黙)


231:新東雲学園都市の狂乱の一日
06/12/02 23:09:29 zclMWaJh0
蔵人:小夜…
小夜音:私じゃありませんわよ!?ほ、ほほほ本当です!?
圭 :小夜音さん……。(何とはなしに同情の眼差し)
白衣:……。(赤面している)
黒衣:小夜音でもおならするんだ。そりゃそうよね。おならしない人間なんて居ないし。
黒衣:でも人前でやって欲しくないな。(何とか平静を保ちつつも、どこか冷めた表情)
冬芽:あ、あああああ、あのですね。放屁というのは生理現象の一つですから、
冬芽:そんなに恥ずかしがらなくても、いえ、でも…あわわわ…(錯乱して何を言ってるか分からない)
蔵人:お、落ち着け冬芽!あ、あれ?何か異臭が…。
小夜音:ちちちちち、ち、違うと言ってるでしょう!?な、何ですの、この臭い!?
圭 :小夜音さん……。(物凄く同情の眼差し)
伊織:……小夜音のおならは臭い……。……覚えたわ。
蔵人:さ、小夜音も落ち着けって!伊織先輩も焚きつけるような事言わないで下さい!?
伊織:?(何が?と言いたげな表情。心底分かってないらしい)
蔵人:ああ、もう!信綱、お前も黙ってないで何とかフォローしてくれよ!おい、信綱?

信綱:………くくく………
信綱:どわぁーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!!!!!

信綱:いやー、あの小夜音がこんな臭いおならを二連発ねぇ…ひーっひーっ、腹痛ぇー!
小夜音:だ!か!ら!私ではないと何度も言っているでしょう!?
信綱:照れるな照れるな。冬芽も言ってるじゃないか、誰にでもあるただの生理現象だって。……くっくくくっ
小夜音:ちょっ……
信綱:しかし凄い臭いだな。ぷっくくくっ…。レディともあろう御方が。おい、圭、窓開けろ窓!
信綱:あ、いやこの臭いを外に撒き散らしたら不審がって人が集まってきちゃうか?
信綱:「どうしたんですかー?」って。そしたら小夜音、お前が答えるんだ。「私のおならですわ」ってな。

信綱:どわぁーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!!!!!


232:新東雲学園都市の狂乱の一日
06/12/02 23:09:43 zclMWaJh0
小夜音:これだけ否定していますのに……!(肩を震わせ俯く。その肩は怒りと恥辱でプルプル震えている)
蔵人:小夜音…。(その肩を蔵人がそっと抱く)
小夜音:蔵人…。
蔵人:いいんだ。小夜音。顔を上げるんだ。そんな小夜音は見たくない。
小夜音:蔵人……!

救われた!蔵人にだけは信じてもらえた! そんな思いで顔を上げた小夜音の視線の先には……!


や た ら 生 暖 か い 視 線 の 蔵 人 が 居 た 。


蔵人:誰にでも失敗の一つや二つはある。だから小夜音、そう落ち込むな……。

「ブチブチブチッ」

小夜音:どうあっても信じてもらえないようですわね…。(何か覚悟を決めた表情。ちょっと笑っている。が、怖い)
信綱:ひーっ、ひーっ。あ?何だって?
小夜音:いいですわ。おならは私がした。それで満足かしら?
信綱:お、ついに罪を認めたか!
冬芽:スサノオ様…その様な言い方は可哀想です…。
小夜音:結構ですわ。おならは私がした。それで結構です。
信綱:自首すれば罪は軽くしないでもない…くくっくくく…。それにしても凄い音と臭いだったな!(まだ悪ふざけモード)
小夜音:そうですわね。……でもご存知かしら?
信綱:あ?何がだよ?

小夜音:どのような罪も、露見しなければ良いのですわよ?(背後から黒いオーラが沸き出ている…ように見える)

信綱:つ…つまり…?(ゴクリ)
小夜音:あ な た 方 を 殺 し て 私 も 死 に ま す ! ! ! !


233:新東雲学園都市の狂乱の一日
06/12/02 23:10:00 zclMWaJh0

…それから後の事は覚えていない……。
いや、正確には覚えているのだろうが、記憶を辿ろうとすると言い知れぬ悪寒と共に冷や汗が噴出するのだ。

きっと、思い出さないほうが良いのだろう。
小夜音のためにも、何より自分のためにも。

それにしても、おならくらいであんなに激昂しなくても良いと思うのだが…。
そういう考え方だから、皆に「朴念仁」と揶揄されてしまうのだろうか。


--狂乱後:圭の部屋--

圭 :やれやれ。小夜音さんの恥ずかしがる姿と、慌てふためく姿を見る為に企画したのはいいけど…
圭 :ちょっとやりすぎちゃったかな。僕の仕業だって言い出すタイミングも逃しちゃったし。
圭 :このブーブークッションと、悪臭の出る香炉は秘密裏に処分してしまおう。
圭 :さもないと…。(あの日の記憶と共に悪寒が走る)
圭 :……でも楽しい一日でした。(にっこり)



234:新東雲学園都市の狂乱の一日 あとがき
06/12/02 23:10:23 zclMWaJh0
投下終了。
エロゲでSS書くのは初めてで不慣れな点も多く、
他の投稿者の方とスタイルも違うようですが、如何だったでしょうか?

他にもネタはいくつかは思いついてますので、時間と要望がありましたらまた。
…要望なくても勝手に投下しちゃうかもですが。

235:新東雲学園都市の狂乱の一日
06/12/03 00:06:31 tE2HBLCs0
書き忘れてましたが、「終末少女幻想アリスマチック」より。orz

236:名無しさん@初回限定
06/12/03 12:55:51 ngMMSB+j0
原作未プレイなのですまんが、台本形式なのは原作のとおりなのかな?
スタイルがSSで一般的な形式無いということは判ってやってるみたいだけど。

237:名無しさん@初回限定
06/12/03 17:33:51 3yt+Wlxr0
下手糞すぎ

238:『世の中甘くない』の者です
06/12/04 13:43:03 cwAJGYvk0
 皆様、有難う御座います。

>>222
>精神年齢が近くなっている司ワロス(w
 分校系へたれ(?)主人公ですから。
 実際は分校でもへたれと言う程ではないのですが、まあ本校系を書く時の差別化の意味もありまして。

>>225
>甘くないの続きかと思ったら何と意外なw
 いやあ、中々面白かったもので。
 三日間ほどやりこんでしまいましたよ。
 まだ全クリしてませんが。


 HP転載の際に改訂したら思いのほか大改訂(ボリューム倍)となり、雰囲気が大分変わってしまいました…… orz


239:名無しさん@初回限定
06/12/05 00:22:09 eNIRQCX50
甘くないの人のHPってドコー?

240:名無しさん@初回限定
06/12/05 01:45:46 P8q6SyH80
>>238
改定後の雰囲気がイイ感じです。特にすみすみとかみさきちとか。
司も今のような感じが好きかな。
実際、社会人一年目の司とヒロインたちはそんなに年は離れていないと思うのでー

個人的に分校側を選んで姉妹の問題を解決しつつ、みやびーやとのこと仲良くなるのが理想ルート。
八方美人って良い言葉ですよね!(w


241:名無しさん@初回限定
06/12/05 06:37:37 3C0GD+7t0
>>239
二次創作データベースから行ける

242:名無しさん@初回限定
06/12/05 06:41:28 mk1w5x3m0
こじろう死ねorzバシバシ
URLリンク(www.livly.com)
URLリンク(mixi.jp)

● 名 前 ふ み (女性)
URLリンク(mixi.jp)
● 名 前 なんちゃって 美弥 (女性)
現住所 宮崎県
URLリンク(mixi.jp)
● 名 前 ☆ どさ兄 ☆ (男性)
現住所 北海道上川郡
誕生日 10月11日
URLリンク(mixi.jp)
● 名 前 田頭 隆司 (男性)
現住所 大阪府大阪市
誕生日 10月13日
URLリンク(mixi.jp)
● 名 前 ゆに☆彡 多代 (女性)
現住所 大阪府大阪市
URLリンク(mixi.jp)
● 名 前 こ じろう (男性)
URLリンク(mixi.jp)
● 名 前 にこ りん坊 (女性)
現住所 埼玉県
URLリンク(mixi.jp)
● 名 前 とう ちゃん (男性)
URLリンク(mixi.jp)

243:『世の中甘くない』の者です
06/12/05 08:23:40 sTS2yF0s0
 >>240様、有難う御座います。

>改定後の雰囲気がイイ感じです。
 始めは純粋なギャグのつもりでした。
 けど、改訂作業の際に読み直してみると、かなりの説明不足を痛感せざるをえませんでした。
 これじゃあみやびーは手のつけられない只の暴れ者ですし、みさきちと司も何だか……
 そんな訳で、急遽心理描写等を大幅加筆したのですよ。
 そうしたら、もはや元の作品とは全く別物になってしまいました。

 一見、お馬鹿な話ではありますが、一皮剥けば『男と女はどっろどろ♪ ねっちょねちょ♪』の世界ともとれます。すでに泥沼かも。
 ……自分で書いててなんですが、読んで『怖っ!』と思いましたよ、はい。

>司も今のような感じが好きかな。
>実際、社会人一年目の司とヒロインたちはそんなに年は離れていないと思うのでー
 本校系の場合、司はかなりの完璧超人ですからね。考え方も大人だし。
 本校系のネタも考えたのですが、みやびの片腕……ていうか黒幕として風祭・志藤・八乙女(←司が勧誘)連合を差配とか、仁礼・三嶋財閥を建て直して滝沢財閥に再編とかアレなネタばかりですよ。

>個人的に分校側を選んで姉妹の問題を解決しつつ、みやびーやとのこと仲良くなるのが理想ルート。
 後編にはみやびーの心情も……

244:名無しさん@初回限定
06/12/05 20:57:27 2N26Je2R0
>238
GJ。はぴねすも良いけど、これもいいなあ。
昨日全てのキャラを終わらせたばっかりだけど、良いゲームだった…… > 遥かに
このSSって、生徒達の問題は解決した後の話ですよね?
ホームページの方の美綺や栖香の嫉妬がツボ(笑 みやびーの乙女ゴコロにも期待してます(ry

245:名無しさん@初回限定
06/12/05 21:05:28 ktJPTGm20
三島財閥の方思い出してしまったじゃないか。
なんか崖から這い上がってくる鏡花を想像してしまった。

246:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:23:45 XUE6phuc0

――理事長室。

「果たし状? 司から?」

「はい、御嬢様」

「へえ? 余程、100敗目をきっしたいと見えるなあ?」

 みやびは、獲物を前にした仔猫の様な表情で果たし状を開く。

 果たし状は和紙に毛筆で認められていた。
 その古めかしくも流麗な文字からは、書いた本人の意気込みが伝わってくる。
 ……尤も、書いたのは司ではなく栖香だったりするのだが。

「……また、あいつらだ」

 と、急にみやびは拗ねた様な口調で呟いた。
 その手には、果たし状が固く握り締められている。

「御嬢様?」

「これは司の字じゃない! あいつらの仕業だ! そうに決まってる!」

 ―あいつら、また司を利用しようとしているのか!

 みやびは内心で歯軋りする。
 そして、思い返すも忌々しい事件が頭を過ぎった。


247:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:25:08 XUE6phuc0

 以前、司が相沢家と仁礼家の問題に首を突っ込んでいる、と聞いた時、みやびは心臓が止まりそうになるほど驚いたものだ。

 ―あの大馬鹿! 本気で東京湾に沈められたいのか!?

 比喩でも何でも無い。文字通りの意味である。

 名門権門の家の内部事情に首を突っ込むということは、そういうことなのだ。
 何所の家も多かれ少なかれ暗部を抱え込んでいるし、それを表沙汰にしない為ならばどんな手段でも用いるだろう。
 仮に宗家にその気が無くとも、分家や取り巻きが実行する筈だ。
 ……みやびは、そんな実例を多く見聞きしていた。

 なのに司は栖香と美綺の問題に深入りし、あろうことか相沢家と仁礼家までも巻き込もうとしていたのだ。

 生徒間のみの問題ならば兎も角、それ以上のことは教師の出る幕では無い……いや、出てはいけないのだ。
 少なくとも、凰華女学院の教師ならばそれを心得ているし、そうでなければやっていけない。

 が、司は違った。

 彼は、その信念と持ち前の行動力により、どんどん両家に関わっていく。
 それは、みやびから見ればあまりにも危険な行為だった。

 そして、みやびが状況を把握した時には、既に事態は抜き差しならぬまでに発展していた。
 ……最早忠告しても遅過ぎる程に。


248:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:27:04 XUE6phuc0

「御嬢様、相沢と仁礼の手の者が分校の周囲をうろついております」

「はあ? もしかして娘の警備か? ……全く、過保護な奴等だ。
 少しはうちを信頼して欲しいものだな」

 あたしはリーダの報告を聞き、呆れた様に呟いた。
 ……しかし、あの過保護な相沢ならやりかねないが、仁礼までとは意外だった。

「いえ、彼等の狙いは司様だと思われます」

「へ…… どういうことだ……?」

 訳が分からなかった。
 何故、滝沢司を両家が狙う?
 そりゃあ、確かに両家の娘達とは親しい様だが……

「実は……」

 リーダから聞いた話は、あたしを驚愕させるのに充分な話だった。

「あの大馬鹿! 本気で東京湾に沈められたいのか!?」

 あたしは机を叩き、思わず叫んだ。
 それを気にせず、リーダは淡々と報告を続ける。

「今更、司様が両家から手を退かれても遅過ぎます。
 ですから、せめて司様には分校から出ない様、忠告された方がよろしいかと」

 ―分校内では、さすがに彼等も自重するでしょうから。

249:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:40:34 XUE6phuc0

 そんな言葉が、どこかで遠くで聞こえた様な気がした。
 が、あたしはそれ所ではなかった。

 事態は最悪だった。
 このままでは、そう遠くないうちに司は『いなくなる』だろう。
 知り過ぎた者が消される―そんな話は、耳が腐るほど良く聞いている。

 ―司が……いなくなる? ……あたしの前から?

 何故か、あたしは激しい喪失感に襲われた。


 司という男は、まったくの大馬鹿者だった。

 あの風祭、それも宗家の娘であるみやびを全くの打算無しで受け入れ、みやびの我儘にも嫌な顔一つ見せない。
 仮に嫌な顔を見せたとしても、それは心からのものではなく、どこか楽しんでいる様にも見えた。

 みやびは反発しつつも、そんな状況を徐々に受け入れていった。
 悔しいが、それは確かに心地の良いものだったから。暖かかったから。
 リーダからだって、こんな心地の良さと暖かみを感じたことは無かったから。

 ……みやびは、そんな自分の感情が信じられなかった。


 もし素直にリーダに聞けば、こう教えてくれただろう。

 ―それは司様が、御嬢様を本当の御家族の様に接していらっしゃるからですよ。

250:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:42:20 XUE6phuc0

 あくまで使用人としての一線を崩さない、崩せないリーダとは、そこが大きく違うのだ。
 が、みやびがそんなことを素直に聞ける筈も無い。
 故に、みやびは湧き上がってくる自分の感情を理解できず、困惑することしか出来なかったのだ。


「最早、理事長として、雇用者として御嬢様がすべき義務は御座いません。
 司様は、越えてはならない一線を踏み越えられました。
 一教師を助けるにしては、『コスト』が……」

「司は一教師なんかじゃないっ! あたしのっ!」

 あたしはその言葉に激しく反発し、机を叩いた。

「御嬢様の、何で御座いましょうか?」

「あたしの…… あたしの……」

 そこから先の言葉は、幾ら考えても出てこなかった。

 司は……あたしの、何?

 わからなかった。直ぐそこまで出てきているのに、わからない。
 ……でも、これだけはわかる。

 司がいなくなるのは『嫌だ』。

 だからあたしは、こう答えた。

251:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:44:12 XUE6phuc0

「司はあたしの労働者だ! 相沢にも仁礼にもやらん!」

 それを聞くと、今まで信じられない程素っ気無かったリーダが、微笑みながら聞いた。

「では、どうなされますか? 幸い、両家共に本家は動いていないようです。
 分家か取り巻きの独断先行ですね」

「ふんっ! なら話は早い!」

 あたしはリーダに命じ、外をうろついている連中の黒幕と連絡をとった。


『……これはこれは、まさか風祭の末姫様直々に電話を下さるとは』

『うちの司に何の用だ!』

『ああ、あの男ですか。いやなに、少々調子に乗り過ぎた様ですので、少し……ね』

 その言葉にカッとなり、あたしは思わず叫んだ。

『司はあたしの、風祭みやびの個人秘書だ! 司に対する攻撃はあたしへの攻撃……ひいては風祭に対する攻撃と心得よ!』
 
『! ……まさか! あんな何所の馬の骨ともわからぬ男が!?』

『え~い、うるさい! あたしが誰を秘書にしようが、そんなのはあたしの勝手だっ!』

『くっ! ですが、それでは風祭が我が家の内情を探っている、ともとれますぞ!』

252:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:46:09 XUE6phuc0

『それ以上の文句は、お前の所の本家とその娘達に言え! うちの司は巻き込まれただけだっ!』

 そう言い捨て、あたしは電話を叩き切った。

 電話の男は、明らかに驚愕している様だった。
 まあ、無理も無い。あたしだってびっくりだ。
 理事長のではなく、あたし個人の秘書―それは、司があたしの側近であることを意味する。

 司が……あたしの側近?

 そうなれば、ずっと司と一緒にいられる。
 たとえ、あたしが『理事長』でなくなっても。『生徒』でなくなっても。
 それは、とても良い考えの様に思えた。

「リーダ、そんな訳で、司は今からあたしの個人秘書になったから。手続き御願い」

「はあ……宜しいので御座いますか?」

 流石にそこまでは考えていなかったのか、リーダは目をパチクリさせている。

「かまわない」

「このことは司様には?」

「必要ない。司は知る必要の無いこと」

 そうだ。自分は当たり前のことをしただけ。
 『―』を守るのは当然のこと。

253:『凰華女学院分校の日常』後編(没版)
06/12/06 12:51:46 XUE6phuc0

「ですが……」

「いいんだ…… ちょっとでかけてくる」

 あたしは司に無性に会いたくなり、外に出た。


 ……司は栖香と美綺、それに奏の四人で、楽しそうに笑ってお弁当を食べてました。

 ―こ、こいつ…… 人に散々心配させといて、これかっ!? これなのかっ!!

 その暢気そうな顔を見ていると、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。

「何を暢気に笑ってるっ!」

「ふごおっ!?」

 気がつくと、あたしは司にドロップキックを喰らわせていた。

「な、何すんですか、理事長!?」

「うるさい! 何もかもお前が悪い! そう決めた!」

 その言葉と同時に、あたしは司に踊りかかった。
 ……そうしたら、胸の奥のもやもやがすっと消えてなくなった。

254:『世の中甘くない』の者です
06/12/06 12:56:26 XUE6phuc0
 投下終了。
 え~、ここまで書いて流石にアレ過ぎることに気付き、没となりました。
 でも、そのまま消去も勿体無いので……


>>224
224様、有難う御座います。

>このSSって、生徒達の問題は解決した後の話ですよね?
 そうです。姉妹双方のルートを辿りつつ、みやびーとも……という漢の浪漫的な設定です。

>みやびーの乙女ゴコロにも期待してます(ry
 この没版は流石に重過ぎますね~

255:名無しさん@初回限定
06/12/06 15:21:29 DpEZHvcC0
>>254
乙。
うわぃ、みやびー様が暗いっ(笑 と思ったら、没案でしたか。
こう言うシリアス駆け引きも実は結構好きですが、やっぱりこの面々だったら明るいのをキボン。
あーでも、嫉妬でドロップキックはイイです。その理不尽さが(w
仁礼家とかは司が動いてもスルーしそうですが、相沢家は父親が暴走すると危険ですな(ww

256:名無しさん@初回限定
06/12/06 18:52:34 3Mauynh40
>254
没SS、乙。
個人的に重くないくらいの痴話喧嘩の方が大好きですが、ちょっと思ったのが、
あそこの子女って頑固で独占欲強い人多いからイザと言う時は恐い状況になりそう。
司が二股なんてした日には、普通に死ねますね。ええ。

257:名無しさん@初回限定
06/12/06 19:42:32 CjdpSEUb0
GJ。
正規版のヤキモチみやびーを楽しみにしているぜっ!


……ところで、攻略前と後とで印象が180度変わるしのしのの出番はないのかなー……

258:『世の中甘くない』の者です
06/12/07 14:59:09 T378y3wF0
 皆様、有難う御座います。
 後編もようやくUPしました。どうか見てやって下さい。

>>255
>やっぱりこの面々だったら明るいのをキボン。
 ですね。全く状況説明が無いのもアレですが、暗すぎるのも……
 PULLTOPのゲームはほのぼのが売りらしいですし。

>>256
>あそこの子女って頑固で独占欲強い人多い
 あ~、確かに。
 一番心が広いのがみやび~かも……

>司が二股なんてした日には、普通に死ねますね。ええ。
 と、言うより只の勘違いで暴走しそうな方々もちらほら……

>>257
>正規版のヤキモチみやびーを楽しみにしているぜっ!
 ごめんなさい。焼きもち出てきませんでしたよ。
 次回以降に何とか……

>……ところで、攻略前と後とで印象が180度変わるしのしのの出番はないのかなー……
 う~ん、実はまだ未プレイなんですよ(爆)

259:名無しさん@初回限定
06/12/07 16:07:55 e9Mz7sJL0
>>258
かにしのSS楽しく読ませてもらってます。
しのしのをクリアした時、もうしのしのしか考えられなくなること請け合いだぞ。

260:『世の中甘くない』の者です
06/12/08 12:18:59 ayB0Q/1F0
>>259
 有難う御座います。
 すっかり嵌ってしまい、次作もかにしのSSですよ……
 
>しのしのをクリアした時、もうしのしのしか考えられなくなること請け合いだぞ。
 現在プレイ中ですが、本当に印象変わるなあ~


 例のSS後編ですが、メールやコメント等で『すみすみの出番少なっ!』との御指摘が幾つかありました。
 ……いえ、あったのですよ? 本当は。
 けど、削除したのですよ。内容的に合わないので。
 御要望があれば公開します。

261:名無しさん@初回限定
06/12/08 13:29:17 uUCouaqG0
>>260
公開して欲しいです。
あと、個人的には彼女達個々の司に対する心理描写とか大好きなので、
あちらの方で公開されているSSはより良かったです。

262:名無しさん@初回限定
06/12/10 02:06:46 aOQZ5/qKO
それより甘くないの続きマダー?

263:名無しさん@初回限定
06/12/10 22:55:51 /LOpDY3k0
>>260
待ってるぞ!

264:名無しさん@初回限定
06/12/17 13:35:10 rt7Kb9OhO
すみすみのエロ書いてくれませんかぁ?

265:名無しさん@初回限定
06/12/19 01:18:40 lhv3To4v0
トワイライトデュアルとか侵蝕とかの?

266:『世の中甘くない』の者です
06/12/19 14:41:19 t4T9SCPn0
 そろそろ大丈夫かな?

267:名無しさん@初回限定
06/12/20 19:58:09 1jIMLHwP0
なにが?

268:名無しさん@初回限定
06/12/21 00:12:40 mXs6qTiO0
規制でも食らってた?

269:『世の中甘くない』の者です
06/12/21 11:02:49 VwM8tr6Z0
 あ~、やっと規制が解除された。
 長かったよホント……

>>261
>公開
 一応、HPの方にアドレス載せていますが念のため……
 p://www.geocities.jp/wrb429kmf065/harukaniaogi02botu1.htm
 p://www.geocities.jp/wrb429kmf065/harukaniaogi02botu2.htm

>あと、個人的には彼女達個々の司に対する心理描写とか大好きなので、
>あちらの方で公開されているSSはより良かったです。
 有難う御座います。投稿版に投稿して、その後多少手を加えてHPに掲載する手法が身についちゃったからなあ……

>>262
>それより甘くないの続きマダー?
 あー、解除あまりにも遅いので、最新話はHPに直接UPしちゃいました。
 だから「その8」は欠番です。


270:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:04:15 VwM8tr6Z0
 ―疲れた、本当に疲れた……

 雄真は足取りも重く、鈴莉の研究室へと向かう。

 これから10日間の間、雄真は実母である鈴莉と共に暮らすことになっていた。
 名目は『魔法学基礎の集中講義』。
 魔法学のまの字も知らぬ雄真に対し、魔法学教育の権威である鈴莉が付きっ切りで補習授業を行うことになっているのだ。

 ―鈴莉先生、今日は補習勘弁してくれるかなあ?

 が、流石に今日は勘弁してもらいたかった。
 熱い風呂に入り、暖かい布団に包まってゆっくりと眠りたかったのだ。

「鈴莉先生、只今戻りました」

 そんなことを考えながら、雄真は研究室のドアを開いた。




――ドアを開けると、そこは玄関でした。

「へ? ……何で?」

 ドアの向こうはいつもの研究室ではなく、どこかの家の玄関だった。
 やたら立派な玄関で、その向こうは延々と廊下が続いている。

 雄真が一人首を捻っていると、スリッパでパタパタと足音を立てながら、鈴莉が弾んだ声で出迎えた。


271:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:06:35 VwM8tr6Z0
「雄真く~ん、お帰りなさ~い♪」

「……鈴莉先生?」

 胸にエプロン&手にはおたまという『新妻ルック』の鈴莉に、流石の雄真もどこから突っ込んで良いやらわからず、目を白黒させる。
 ……そんな雄真に、鈴莉は実に意味ありげな質問をした。

「雄真くん、直ぐご飯にする? それともお風呂? それとも……」

 選択肢が現れた!

 1、ご飯にしようかな
 2、お風呂に入りたいです
 3、漢なら敢えて『それとも……』をっ!!


「ご飯にします、サー」

 雄真は最敬礼で応じた。

 勿論、選択は1だ。他にありえない。
 2は何となく危険な匂いがするし、3に至っては問題外である。
(まあ、『それとも……』が何か気にならないではなかったが、雄真も敢えて地雷―それも恐らく核地雷級の―を踏む程馬鹿では無い。
 好奇心は猫をも殺すのだ)

「あの~鈴莉先生? その格好は?」

 が、それでもこれだけは聞かずにいられなかった。
 何を企んでいるかは知らないが、今日の鈴莉先生は幾らなんでもおかし過ぎる。

272:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:18:03 VwM8tr6Z0
「う~ん、似合わないかしら?」

「いえ、凶悪な位似合っています」

 というか、若くて美人な新妻そのものです。

 ―どうして、うちのかーさんズはこんなにも若いのだろうか?

 思わず雄真は天を仰ぐ。

 音羽かーさんはまるで年下の様―お肌なんかプニプニのツルツル―だし、鈴莉母さんもせいぜい20代半ばの容姿である。
 これは世間的に見て明らかにおかしかった、異常だった。
 ……まあ、それに気付いたのはつい最近なのだが。


 そういえば、魔法使いの女の子は皆美人、というのもおかしい。
 確率論的に考えて、有り得る筈が無い。
 が、魔法使いといえば美人揃い、と昔から相場が決まっていた。
 そして不思議なことに、数少ない男の魔法使いは別に美男揃い、という訳でもない。

 これについては、以下の様な俗説が存在する。

 女性の魔法使いは、無意識の内にその魔力で自らの容姿を自分の理想に近づけていく、と。
 だから女性の魔法使いは、皆あの様に若々しく見目麗しいのだ、と。

 俗説とは言え中々説得力を持ち、それ故に広く知れ渡っている説である。

 が、これを聞いた時、雄真は真っ向から異議を唱えた。
 何故なら、雄真はその反例を知っていたからだ。

273:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:20:04 VwM8tr6Z0
 誰もが御存知の通り、伊吹はちみっちゃい。加えて胸は洗濯板である。
 そして、彼女はそのことに対して強いコンプレックスを持っていた。
 つまり、『伊吹ほどの魔力の持ち主ですら、自分の背や胸の無さをどうにも出来ないでいる』ということになる。

 ―魔法で背や胸がどうにかなるのなら、とっくにやっておるわッ!! 

 以前、雄真は腰の入ったパンチと共にこのお答えを受け取っていた。
 ……半泣きの表情とその悲痛なまでの叫びを、雄真は生涯忘れないだろう。

 だからこの説は却下である。でなければ、伊吹が余りにも哀れ過ぎた。
(第一、この説では音羽かーさんの若さを説明出来ない)


「そう、嬉しいわ。
 じゃあ雄真くんの御要望どおり、まずはご飯にしましょう」

 鈴莉は雄真の答えに満足そうに頷くと、とりとめも無くそんなことを考えている雄真を促し、家に上げた。




「成る程、空間を捻じ曲げて鈴莉先生のマンションと繋げたんですか……」

「そうよ。雄真くんだって、10日も研究室住まいは嫌でしょう?」

 鈴莉は簡単に言うが、大抵のマンションには進入防止用の対魔法防御がされている。
 ましてや鈴莉の部屋がある超高級マンションともなれば、相当強力な防御が施されている筈だ。

274:はぴねす!『世の中やっぱり甘くない』その9
06/12/21 11:22:08 VwM8tr6Z0
 ……まあ、鈴莉の前では屁の突っ張りにもならなかった訳だが。
 
「でも、悪いですね。こんなことまでしてもらっちゃって」

「何を言っているの。当然よ、当然」

 鈴莉はそう言うが、春姫の話では鈴莉は多忙の身の筈だ。
 にも関わらず、鈴莉は雄真の為に10日も割き、挙句の果てには身の回りの世話までしてくれている。

 ―やっぱり、俺のことを気にしているのだろうか?

 10年前に自分を小日向家に預けたことを、もしかしたら鈴莉は気にしているのかも知れない。
 だから、こうして色々世話を焼いてくれるのだろうか、とも思う。
 ……ならば、『気にしないでいい』と言ってあげた方が良いのだろうか?
(雄真は、何故自分が小日向家に預けられたのか今ひとつ把握していない)

 そんなことを考えながら鈴莉を見ると、鈴莉はじっと雄真を嬉しそうに見つめていた。
 その姿が、ふと葵と被る。

「そう言えば、鈴莉先生に聞きたいことがあるのですが」

「なあに?」

 真剣な表情の雄真を、鈴莉は眩しそうに見る。

「俺に兄弟姉妹っています? あ、もちろんすももは除外で」

「雄真くんは一人っ子よ? ……もしかして、兄弟が欲しいの?」


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