06/11/14 22:45:59 TASSwnrU0
GJGJー
頑張って雄真君。学校生活も魔法の勉強もついでに春姫の嫉妬も!
|。・ω・)ところで少し前にリクエストしてもらった杏璃ルート後すももSS、プロットで見て半分まで出来たのですが
|。・ω・)難産で遅くなってるので半分の時点ででも投下したりしてもいいかな だめかな
51:名無しさん@初回限定
06/11/14 22:55:42 rYVBZJzn0
>>50
ぜひ投稿きぼんぬ!
52:名無しさん@初回限定
06/11/14 23:07:13 jHozmkun0
GJ
>>50
よろ
53:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 1/10
06/11/14 23:34:48 TASSwnrU0
大好きな人の一番になりたい。女の子はいつだってそれを夢見ている。
本当は彼を独占したい。自分だけの彼で居て欲しい。
私の事だけを考えて、私だけに特別に優しくて、他の女の子には見向きもしない。
自分以外の何も彼には必要じゃないと、そう思える程に愛して欲しい。
でも、それはきっと無理な望みだから。
だからせめて一番に。比べられないくらいに、彼の一番になる。
幼い私はそれを願って、そしてその思いは叶った。
私は大好きな人の一番になった。
比べられない特別 彼の一番の―妹に。
54:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 2/10
06/11/14 23:35:56 TASSwnrU0
「……うぅ」
落ち込んだ時には軽やかな油の音だって恨めしく思える。誰だってそうに違いない。
そんな言い訳を考えながら手の甲を冷水にさらし、しばらくは火脹れが続くのを覚悟した。
―3分前。自分の気持ちとは裏腹に楽しそうに歌うフライヤーの中身に、ちょっとした意趣返しを目論んだのがいけなかったらしい。
普段より少しだけ力を込めて押し込んだコロッケ。彼は律儀にその意思を伝え、素直な油さんは元気に飛び跳ねた。
無意味に力を込めていた右手は見事に着地点になって―直後、痛みに飛び跳ねたのは自分だった。
以前に火傷したときは兄さんがすぐに氷を用意してくれたのに、今は……
「……これもやっぱり、自業自得って言うんでしょうか……」
最愛の兄から今日も外食をするとの連絡を受けたのは夕食を作り始める前のこと。
なのに、自分の作ったコロッケを格別に好んでくれる兄さんの笑顔を思い出しながら作ったタネは―何故か三人前あって
そして今、私に反旗を翻したこの子からが丁度彼の分になる。
余分に作られた一人分のコロッケ達は食卓に残り、帰宅した兄さんはそれを見て何を思うのだろう。
それがわかっていて自分はこのコロッケをテーブルに載せ、きっと部屋まで謝りに来る彼に不満を言うのだ。
―惨めな抵抗
「ごめんなさい……」
つぶやいた言葉ですら、兄ではなく―これから冷めていくコロッケに向けられていたのだから
きっと私にはもう、一番の妹を名乗る資格すらないのだろう。
55:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 3/10
06/11/14 23:36:53 TASSwnrU0
「おはよう、すもも。 ……本当にごめんな、昨日」
「もういいです。でも、夕食ぐらいは家族で食べたいですから」
「ああ、わかってる。今日はちゃんと帰るから……ごめん」
本当は謝るのは私の方。でもこれできっと、数日の間は早く帰ってきてくれる。
「じゃあ、先行くな。遅刻するなよ?」
「は~い。行ってらっしゃい、兄さん」
自己嫌悪と歪んだ喜びを整理する前に、兄さんは家を出てしまった。
週に3日は柊さんの早朝特訓に付き合っている兄さん。私が起こす機会も、一緒の登校も少なくなってしまった。
その上夕方はOasisでバイトを手伝い、彼女の仕事が終わるのを待っているのだから一緒には帰れない。
さらに外食の日には帰り着くのは日付も変わる時間になっていて……週末は勿論デート。
これだけすれ違いが続けば文句を言いたくなるのも当然の事に違いない。
そもそも学生の身で午前様だなんて……お母さんが何も言わないからって許していいものじゃない。
「そうそう、兄さんの為なんですから」
少し無理やりに自分を納得させ、調理の手を進める。
兄さんは頑張ってくれたようだけど、結局残ってしまったコロッケが今日のお弁当のメイン。
朝食のパンを焼き、自分とクラスメイト二人分のお弁当を包みながら
お弁当と朝食も一人分置いたままにしてみようか、なんて考えたけれど、流石にそれは辞めておいた。
なのに
何軒か店をまわって材料を買い集め、気合を入れて作った渾身のシーフードシチュー。
それは昨日のコロッケよりも絶対に満足してもらえるに違いなかった。
なのに
『ごめん、今夜は帰れそうにない』
鍋をかき混ぜながらメールを見た私は、明日は二日分の朝食とお弁当に夕食を並べて帰宅を待とうと決心した。
56:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 4/10
06/11/14 23:37:42 TASSwnrU0
「う~ん、雄真くんもちょっとだらしなくなってるとは思うんだけど~、今が一番楽しい時期だから。
もう少しすれば周りが見えるようになってくるから、すももちゃんも少し我慢しようね」
「それにしたってあんまりです~! 今朝、今朝ですよ! 今朝約束したんですよ!」
「気持ちはすご~くわかるんだけど、でも杏璃ちゃんも色々大変みたいだから。あんまり強く言わないで上げよう、ね?」
帰宅して早速シチューに手をつけるお母さんに詰め寄ってはみたけれど、やっぱり強く言ってはくれない。
年頃の女性の部屋に息子が泊まろうというのに、妹がこんなに心配しているのに、深刻に受け止めようとしない母に
そして妹としたささいな約束も守ってくれない兄に、苛立ちがつのる。
なんで、どうして、わかってくれないの。ほん少しだけ、少しだけでも、兄さんとの時間が欲しい。ただそれだけなのに。
どうして、どうして。
「すももちゃんもそろそろ兄離れの時期ってことなのかも~?」
シチューは本当に美味しい。まさに会心の出来。その美味しさが本当に悔しくて。
「ず~っとお兄ちゃんっ子だったもんね~。やっぱり寂しいとは思うんだけど~」
お昼のコロッケは冷めていたけれど、兄さんを想って揚げたコロッケは味が違う気がして。それがどうしても悔しくて。
「お母さんも寂しいんだよ、大事な息子が取られるのは。本当よ?」
目の前のお母さんは何もわかっていない。それなのに勝手なことばかり言われるのが悔しくてたまらなくて。
「杏璃ちゃんと雄真くんはお似合いだし、応援してあげたいと思わない?」
目の前に、全ての元凶が居るのに
だから
だから
57:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 5/10
06/11/14 23:38:47 TASSwnrU0
「……お似合いって、何ですか」
「……すももちゃん?」
心の奥に仕舞っていた事を、絶対に言わないつもりだった言葉を
全部、叩き付けていた
「お似合いだって言うなら、私と兄さんはもっとずっとお似合いなんですっ!」
「元は他人なのに兄妹になって、それでもこんなに仲良しなんですよ?」
「悪いところも全部見せ合って、でも全然嫌いになんてならなくて」
「もし兄妹になったりしなければ、絶対に私と兄さんは上手くいっていたんです!」
「お母さんが再婚なんてしなかったら……しなかったら、絶対……っ」
「なんでですか、なんで私と兄さんを兄妹にしちゃったんですかっ!」
「言ったのに、あの日! 好きだって、そう言ったのに!」
「なんで……っ!」
知らぬ間に濡れた視界。目の前の女性の傷ついた表情に、私が今の幸せの全てを否定したことに気づいて
「……っ!」
ダイニングを走り出た私は自分の部屋に逃げ込んで―きっと部屋まで来る母に聞かせない為に、声を殺して、泣いた。
58:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 6/10
06/11/14 23:39:33 TASSwnrU0
「すもも? 聞こえてるか、すもも?」
私との約束は守ってくれないのに、お母さんに言われたら帰ってくるんですね
「俺のせいでかーさんと喧嘩したって聞いたけど……ごめん、かーさんの説明じゃ要領を得なくて……。
今日のことも含めて、最近わがままばかりしてるのはわかってる。杏璃とも話して、ちゃんとするから。
俺に出来ることなら直すし、謝る。だから……話、出来ないか……?」
柊さんと別れて下さいって言ったら別れてくれるんですか?
出来ませんよね、出来っこないです。
「すもも……聞こえてるんだろう? すもも……」
聞きたくない。聞きたくないんです。
「すもも……返事をしてくれ、頼む……」
私の傍に居てくれるわけじゃないのに、私を一番になんて見てくれないのに
「……聞きたくないですっ! 一人にしてください!」
優しい言葉なんて、かけないで……っ!
「……わかった、話せるようになったらいつでも聞くから。もしも寝てたら叩き起こしてくれていい」
なんで優しくするんですか……
「俺はいつでもお前の味方だからな、一人で抱え込むなよ。頼れないかもしれないけど、お前の兄貴なんだ」
なんでそんなに優しいのに……なんで『兄さん』なんですか……兄さん……
59:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 7.5/10
06/11/14 23:41:19 TASSwnrU0
「……俺、どうすればいいんだろう。もし俺が家を出たらお前のところ置いてくれるか、準?」
「それは歓迎だけど……うーん、一晩閉じこもったぐらいなら思春期ならあることだとは思うわ。でも……あのすももちゃんだものね。
原因は雄真の自堕落について音羽さんと意見が合わなかったから……って完璧に雄真のせいよね~」
「そうなんだよ……。何かよくわかんないけど、かーさんは再婚なんてするんじゃなかったとか言い出してるし。
よっぽど俺が気に入らないのかな……。今まで結構仲良くやってたと思ってたんだけどな、はぁ……」
「……それは……えっと……うん、わかったわ。お昼にでも音羽さんに詳しく聞いてくるから、雄真は余計なことしないようにして。」
すももがかーさんと喧嘩をして部屋に閉じこもった翌朝。
すももの部屋の前で持久戦の用意をしていた俺はかーさんに無理やり学校に行かされた。
少しでも話が出来ればきっとわかってくれる、そう思ったんだけど……。
「悪いけどこの話、杏璃には伏せておいてくれるか? あいつきっと気にするだろうから」
「はいはい、わかってるわ。全部雄真のせいだもの、杏璃ちゃんが落ち込むのは可哀想よね~」
「……そう、だけど、な、おまえ……」
60:名無しさん@初回限定
06/11/14 23:44:08 uNm7TqWJ0
私怨
61:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 7.5/10
06/11/14 23:44:45 TASSwnrU0
俺の作戦はとりあえずなんとかして話をする、のみ。
別アプローチは準に任せておくことにした―結果。
「聞いてきたわよ、雄真。予想通りと言えば予想通りで……まあ、私なら話しくらいは聞けると思う」
「本当か? 何でもいい、わかったんなら教えてくれっ!」
「う~ん、とりあえずあたしがすももちゃんと話してからね」
あっさりと情報を持って帰ってくるこいつは本当に男の俺とは別の種類の生き物かもしれない。
「雄真、それって、昨日慌てて帰ってった件よね? 何それ、たいしたことなかったって言ってたの、嘘なの?
も~、ちゃんと全部話しなさい! そういう隠し事が一番嫌いなのよあたしはっ」
怒る杏璃を必死になだめ、しばらく一緒に帰れないと言ってさらに機嫌をそこねたが、なんとかバイトに行ってもらった。
春姫はすももの事だと察しているらしく、どう見ても一緒に行きたそうだったけれど……見なかったことにして。
俺と準は出来る限り急いで、すももが待っている家に帰った。
そう、きっとすももは待っているはずなんだ。そんなに抱え込むようなこと、話したいに決まってる。
準でも俺でもいい、とにかく話してくれ。一人で背負い込まないでくれ、すもも……。
62:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 8/10
06/11/14 23:45:15 TASSwnrU0
「悪いけど雄真はリビングか……そうね、この際家の外に居て。絶対に何話してるか聞こえない場所。絶対よ」
「……わかった、外に居るよ。ごめんな、すもも。俺じゃ力になれなくて……」
眠ったのは朝になってからで、目が覚めたらもうお昼を過ぎていた。
二日分の朝食とお弁当、それに沢山の夕食を並べて兄さんを待てば、またいつものように戻れる。そう思って、でも体は動かなくて。
私は何も出来なかったのに、すぐ帰ってきてくれた兄さんは準さんも一緒で……でも、こんなに早く帰って、柊さんはいいんですか?
私が原因で二人が喧嘩して、もしも別れたりしたら、そんなの……
「すももちゃん、聞こえる?」
最低な想像をしてしまう前に、準さんの声が私を現実に帰してくれた。
誰とも話したくない。私みたいな間違った子、誰かに話しを聞いてもらう価値もない。そう、思ったけれど。
「……はい……」
準さんなら、私の最低な想いも受け止めてくれるんじゃないか。そう思って……ゆっくりと、ノブを引いた。
「良かったわ。開けてくれるまで恥ずかしい身の上話をするつもりだったから……。
聞きたいなら話すけど、すももちゃん、聞きたい?」
「いえ……いいです」
何を話すつもりだったのか。そんなの決まってる。
「準さんも私と同じなんですよね」
「……すももちゃんも、私と同じなのよね」
わざわざ言い直した準さんがおかしくて―ほんの少しだけ、一日振りに、笑えたと思う。
63:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 9.2/10
06/11/14 23:46:13 TASSwnrU0
「音羽さんから、大体話は聞いたわ。急に雄真と接点がなくなっちゃって……破裂、しちゃったのよね。
こんな事言われたら嫌かもしれないけど、凄く気持ちはわかるわ。 本当よ?」
「そんな、全然嫌じゃないです……。でも私、自分でもどうしたのか……。
何ていうか、自分でも理解出来ない気持ちなのに、わかって欲しくて、わかってもらえなくて……」
64:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 9.8/10
06/11/14 23:47:15 TASSwnrU0
要領を得ない私の話を、準さんはずっと聞いてくれた。
兄さんになる前から兄さんの事が好きで。
再婚する母さんに今まで通り仲良く出来るか聞かれて、大好きだから大丈夫って、そう答えた。
幼いころからずっと兄さんが好きだったから、それが当たり前で。
その気持ちが恋だと気づいたのは、兄さんが中学生になって初めて学校が別になった時。
兄さんが高校生になってまた学校が別になったけれど、その時は兄さんも家で勉強を見てくれて、一緒に居る時間もあった。
でも同じ高校に入学して、しかも魔法科とクラスが一緒になって……兄さんに美人の知り合いが沢山出来て。
特に再会して凄く綺麗になった姫ちゃんが、兄さんに何かしら好意を持っているのはすぐにわかった。
焦って、でも何も出来なくて……伊吹ちゃんにはそんなもやもやした気持ちも一緒にぶつけていた様な気がする。
だからかもしれない。伊吹ちゃんと本当に仲良くなれたのは、兄さんが柊さんに惹かれていることに気づいた後だったのは。
そして兄さんはすぐに柊さんと仲良くなってしまって、付き合い始めて。びっくりするぐらいに早くて、気持ちの整理なんて出来なかった。
妹としてでいい、少しでも兄さんの傍にいたい。でもそんな願いも叶わなくて。
あの頃に戻れたら、兄妹じゃなかったら……そんな事ばかり考えて、お母さんにあんな事を。
「あんな事言うつもりじゃなかったんです。お母さんが悪いなんて、全然思ってないのに……」
「うん、わかるわ。どこかに吐き出さないと耐えられなくて、一番近い人に向けちゃっただけよ。
……私も同じように、両親に言ったこと、あるのよ。『どうして私を男に産んだの』……って』
驚いて顔を上げた私の目に映る準さんは、いつもの準さんだったけれど。ほんの少しだけ、瞳が濡れていた。
「二人とも泣きながら謝るのよ、ごめんね、ごめんね……って。謝るのは私の方なのに……こんな失敗作の男で」
「そんなっ!準さんは失敗作なんかじゃないです、悪いのは準さんじゃないっ!」
「ありがとう……。でもそう言えるなら、すももちゃんはもう、大丈夫よね?」
―私みたいな間違った子、誰かに話しを聞いてもらう価値も……
「あっ……はい。頑張って、みますっ」
65:はぴねす!杏璃ルート/すもも 前編 10/10
06/11/14 23:49:28 TASSwnrU0
自分で自分を肯定、なんてあっさり割り切ることは出来なかったけれど
私は準さんみたいに真っ直ぐで綺麗じゃない。でも、ほんの少しだけ、自分が認められる気がした。
「すももちゃんはね、雄真と過ごす時間がなくなって、破裂しちゃったけど……
幸いにも! 雄真はしばらくはすももちゃんの事凄く気にするでしょうから。
その間に、すももちゃんなりに雄真への気持ちに折り合いをつけたらどう?」
「忘れるとか、諦めるとかするんですか……?」
忘れたくない。本当は、諦めたくもない。
そんなに必死な表情をしたつもりはなかったんだけれど、準さんはとっても慌てて手を振った。
「違うの、そうじゃなくて……もちろん忘れてもいいの、でもそうじゃなくてもいいの。
私は雄真の事、ずっとずっと好きでいると思うから……耐えられなくなったらスキンシップして我慢してる。
雄真はちょっと迷惑そうだけどね?」
わかってやってるの、秘密ね? なんてウインクする準さんはどうみても理想の女の子。
私なんかよりずっと辛い気持ちを抱えて、それなのにこんなに綺麗。
私もこんな風に。大事な兄さんへの気持ちをしっかり持って、そして兄さんの前で綺麗に笑えたら。
あの日の気持ちも、今の気持ちも、全部抱きしめて笑いたい。
浮かんだ光景は、夕焼けのショーケースと……
「準さん……手伝って欲しいことがあるんです」
「なになに? 何でも言って。今なら何でも手伝っちゃうから」
私の為に本当に嬉しそうに笑ってくれる準さんに、今の私に出来る精一杯の笑顔を返して。
「兄さんが今まで残してきた分のお夕飯、全部食べてもらうんです。
一緒に作るの、手伝ってくださいっ!」
66:650の人
06/11/14 23:54:44 TASSwnrU0
>>53-65
投げないでぇ、石を投げないでぇぇぇぇぇぇ。
私は一体誰の喜ぶSSを書いたんでしょう、暗いし寒いよう。すもも可哀想だよう。杏璃出番ないよう。すももなのに伊吹出てないよう。
ここからの展開も極平凡な感じなので後は皆様のご想像に、ぐらいの気分でお願いします。
ああ、本当にもうなんでこう暗いんだろう。明るい話書けないのかな私。
今回もお付き合いありがとうございました。
67:名無しさん@初回限定
06/11/15 00:05:59 u6mcbxBs0
>>66
いえいえ、GJですよ。暗い部分もあってこそキャラも引き立つというもの。
平凡な展開にしても、ぶっ飛んだ展開が苦手な自分としてはむしろそっちの方が楽しい。
続きを楽しみにしてます。
68:名無しさん@初回限定
06/11/15 02:54:28 2RFqLORCO
グッジョブ!
しかし黒すももですな…何故か空鍋の人を思い出した俺は最早ダメだなw
暗いのも一つの物語を作るには必要な要素ですよ。続きが楽しみです。
俺も春姫SS早く書き上げないとな…。
69:名無しさん@初回限定
06/11/15 06:55:53 50GlJIzp0
>66
GJ!
番号がなんかワロタ
あと準も出てキター!!
>68
はぴねすスレでは、黒すもも=しももです。経緯は省略。
70:『世の中甘くない』の者です
06/11/15 10:48:29 78eql8HN0
投稿乙です。
黒いすもも……いいですねえ。
しかし、前話とリンクしてたら杏璃ヤバイですね。
『次回、黒い方々に囲まれた杏璃の運命は!?』なんて。
71:名無しさん@初回限定
06/11/15 11:37:00 bq/OY1GaO
>>69
しもも≠黒すもも
しももはしももであってしももw
72:名無しさん@初回限定
06/11/15 11:37:51 bq/OY1GaO
ageスマン
73:温泉の人
06/11/15 20:10:51 DgC9sDFf0
>>66
いやいやGJ!
思えば何気にこの2人って重いもの抱えてるよね・・・<準にすもも
この後すももがどんな攻勢に出るのか・・・楽しみに待ってます。
おいらもそろそろ何か投稿したいなぁ・・・
いろいろとネタは考えてるんだけど、なかなか話としてまとまんないです。
しかも8割方春姫ネタばっか・・・もうダメだ自分w
甘くない方の許可さえいただければ、甘くないお話のパラレルシナリオとして
春姫・杏璃サイドのお話書けたらなぁ・・・って思ってます(つかもう書き始めてるw)
他の方のふんどしで相撲取るような形になっちゃって少し申し訳ないのですが、
そのかわり精一杯甘くない方の物語を尊重しつつ、かつ書きたいものもしっかり書く方向でw
少々長くなりましたがではではノシ
74:名無しさん@初回限定
06/11/15 23:06:38 iPc+VFqi0
>73
そこで敢えて、砂糖が泣いてワビ入れるくらい甘い話を。
75:名無しさん@初回限定
06/11/15 23:10:25 y9LwjH8r0
でも思ったんだけどさ、別に杏璃END後である必要ってあるのかな?
別に文句ってわけじゃなくてね?ふっと思っただけなんで他意はないです。
76:650の人
06/11/15 23:47:37 oVg+Fp+/0
|。TωT)GJのお言葉ありがとうございます とっても励まされます
杏璃エンド後の必要って本当にさっぱりないです。何となく杏璃ルート後の春姫話を書いたらすももverのリクエストを頂いたのでっ
一応、再会した時からどことなく雄真を気にしていた幼馴染の春姫なら二人なりに折り合いつけそうで
すもも自身が入学する前から雄真と親しかったらしくて、付き合うまで間があった小雪さんならそれなりに諦めもつくんだろうけど
すももから見ればそんな雰囲気は全然なかったのに突然付き合い始めた杏璃だと整理する時間がなさそうかなーとか想像したりしました。
杏璃ルートでは、すももは実際に交際が始まるかなり前から二人が付き合っていると勘違いしていた台詞があったので……内心は大混乱じゃないかなって。
甘いの甘いの読みたいですっ ……甘いの甘いの書いて見たいです ぅぅぅ
77:名無しさん@初回限定
06/11/16 00:00:05 XXypuQig0
今気付いたんだが
はぴSSスレになってね?w
78:名無しさん@初回限定
06/11/16 00:02:16 BSJ7I0pV0
確かにw
まぁ荒れてるわけでも無いからいいけど気になる人がいるようだったらエロパロにでもはぴねすスレ立てた方がいいかもな
79:名無しさん@初回限定
06/11/16 00:09:52 gDzPCrNR0
>>77
たまたま今続いているだけでそのうち他の作品が来るでしょ。
80:名無しさん@初回限定
06/11/16 00:33:38 8oSAMo5d0
このスレが活気付く時は何故か一つの作品のSSが続く事が多いからな。
デモベとかあやかしびとなんかでも起こった現象。
81:名無しさん@初回限定
06/11/16 02:16:46 O70aRzW80
そう考えるとスレ初期の流れは色んな元ネタの作品が投下されて混沌としてたよな
面白かったからいいけど
82:『世の中甘くない』の者です
06/11/16 02:19:24 WOVJyjgH0
>>73
>甘くない方の許可さえいただければ、甘くないお話のパラレルシナリオとして
春姫・杏璃サイドのお話書けたらなぁ・・・って思ってます
構いませんよ。むしろ楽しみにお待ちしています。
>そのかわり精一杯甘くない方の物語を尊重しつつ、かつ書きたいものもしっかり書く方向でw
作者様によりそれぞれ解釈の違いがあると思いますので、アレンジして頂いて結構ですよ~
83:『世の中甘くない』の者です
06/11/16 02:23:01 WOVJyjgH0
>甘くない方
今ふと思ったけど、これ自分のことですよね?
違ってたら御免なさい。
84:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 12:55:57 MKIl5ueV0
――高等部魔法科二年教室。
「雄真はおるか!」
その言葉と共に勢い良くドアが開き、高等部一年の式守伊吹が顔を出す。
上級生の教室だというのに、遠慮も気後れも全く無い。
「これは伊吹様。一体何用でしょう?」
伊吹の来訪に気付き、信哉と沙耶が慌てて出迎えた。
が、伊吹は辺りをキョロキョロと見渡し、それどころではないご様子だ。
「ああ、信哉か。何、転科してきた雄真の様子を、な?」
そう言いつつも、目はせわしくあちこちに動いている。
「……小日向殿ですか」
途端に、信哉は顔を曇らせる。
「? 信哉、如何した?」
不信に思った伊吹が問うと、信哉は顔を伏せ、耐え難きを耐える、といった風情で話し出した。
「……惜しい人物を無くしました」
「! おいっ! 一体、雄真の身に何が!?」
その徒ならぬ様子に、伊吹は顔を真っ青にして信哉を問い詰める。
85:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 12:57:03 MKIl5ueV0
「小日向殿は……うおうっ!?」
尚も続けようとする信哉の脳天に、椅子が叩きつけられた。
流石の信哉も効いた様で、蹲って呻いている。
……が、叩きつけた当人は気にも留めず、返って信哉を窘めた。
「兄様、物事は簡潔明瞭にお伝えすべきです。伊吹様が混乱なさっているではありませんか」
「し、しかし…… (高等部二年が)惜しい人物を無くしたことに変わりあるまい?」
蹲ていたのもつかの間、直ぐに復活し、信哉は何も無かったかの様に振舞う。
「その様な、誤解を招くような伝え方は問題です」
「うむ…… 言葉とは奥の深いものよ……」
「……では、別に雄真の身に、何かあった訳では無いのだな?」
伊吹は、怒りに振るえながら信哉に問う。
「はい。至って健康かと」
「そうか……」
伊吹はにっこり笑うと魔法を発動する。
と、途端に信哉に10Gを越える重力が圧し掛かった。
「ぶろっ!?」
86:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 13:00:46 MKIl5ueV0
「己はそこで反省しておれ! 全く、人騒がせな! ……で、雄真は何処に?」
「雄真様は、高等部二年ではなく中等部一年に転科なされました」
「は!?」
「……何でも、単位が足りないからだそうです」
「な、なんだって~!?」
想像外の答えに、伊吹は混乱した。
―雄真が中等部一年!? 後輩? ……う、悪くないかもしれない。
そのシチュエーションを想像してみると、結構ドキドキものだ。
……それに良く考えてみれば、宿敵である神坂春姫と柊杏璃も、自分と同条件―別学年―になるということでもある。
そこまで考えると、自然と頬が緩んできた。
なんかもー、盆と正月が一度にやって来た様な目出度さである。
―中一の小娘共なら敵ではないし、良いこと尽くしだな。 ……ん、中一?
はて。何か大事なことを忘れている様な気がする。
「はっ! いかん!」
中等部一年といえば、明日香がいる学年ではないか!?
何故だかしらないが、明日香は異常なほど雄真を敵視している。
その雄真を目の前にして、あの明日香が何もしない筈がない。筈が無いのだ。
87:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 13:14:00 MKIl5ueV0
―拙い。非常に拙いぞ!
流石の伊吹も真っ青である。
「こうしてはおれん!」
伊吹は中等部一年の教室目指して駆け出した。
――高等部校舎、廊下。
「そこをどかぬか! 高峰小雪!」
「いいえ。どきませんよ、伊吹さん」
中等部校舎に向かおうと急ぐ伊吹の行く手を、真正面から阻む者がいた。
高等部三年、高峰小雪である。
「雄真の危機だぞ!?」
切羽詰った伊吹の怒鳴り声。
だが小雪には柳に風、である。
「雄真さんなら、大丈夫ですよ。きっと無事です」
……などと宣い、取り付く島も無い。
「憶測で物を言うな! お主は知らぬかもしれぬが、明日香は思い込んだら一直線。猪突猛進で他の意見は耳に入らぬぞ!?」
88:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 13:16:23 MKIl5ueV0
「まあ。誰かさんみたいですね」
伊吹必死の説得にクスクスと笑う。
「き、貴様!……い、いや、今はそれどころでは無い」
湧き上がる怒りを『雄真のため』と驚異的な自制心で押さえつけた伊吹は、再度説得を試みる。
……これで駄目ならば、力尽くで突破する腹積もりで。
(こうしてる間にも……と思うと、気が気でないのだ)
「高峰小雪! 正真正銘、雄真の危機だぞ!?」
伊吹、誠心誠意の説得。
「……今から10日間、雄真さんは私達と会ってはいけないのです。それが雄真さんのためなのですよ」
と、急に小雪は真面目な顔、真面目な口調で話し出した。
……先程までとはまるで別人の様に。
「雄真のため、だと?」
故に伊吹も気勢を殺がれ、思わず問い返してしまう。
「そうです。貴方も式守の次期当主なら分かるでしょう? ……何故雄真さんが、私達友人から切り離されたのか、を」
小雪はそう言うと、じっと伊吹を見つめる。
「う……」
89:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 13:20:04 MKIl5ueV0
分かる。何故、雄真が自分達と会ってはいけないのかが。
雄真は、これから現中等部一年の級友達と、大学卒業までの長い時間を過ごすことになる。
いや。その繋がりは大学卒業後も続き、絶える事は無いだろう。
……ならば邪魔をすべきではない。少なくとも、今は。
自分達が介入すれば、必死で溶け込もうとしている雄真の努力に水をさすことになりかねない。
「し、しかし……」
だが、伊吹は明日香の暴走を心配し、尚も躊躇する。
「大丈夫です。何しろ私達の雄真さんですから! ……あの秘宝事件の時だってそうだったでしょう?」
「…………」
確かに、雄真は強い。自分などより遥かに。
「……それとも、伊吹さんは雄真さんを信じられませんか?」
「そっそんなことは!?」
慌てて否定する伊吹。
「ですよね。『愛する雄真さん』のことですものね」
「う、う~」
伊吹は顔を真っ赤にして頭を抱える。
最早、否定をする余裕も無い様だ。
90:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 13:25:19 MKIl5ueV0
後もう一押しである。が……
「小雪姉さん! 上手くいったな~」
「タマちゃん! シッ!」
タマちゃんの余計な一言に、小雪は慌て口止めする。
「おおっ! そうやったなあ! かんにんや~」
「……?」
そんな会話に不審を抱いた伊吹は、タマちゃんが手(?)にしていた書類に目を付けた。
「見せろ!」
「あ! 駄目や~!!」
タマちゃんから取り上げた書類。
それは、占い研究会に関するものだった。
現在の占い研究会は、部長の高峰小雪以下、小日向すもも、式守伊吹、小日向雄真(名誉部員)の4人―幽霊部員は数に入らない―しかいない。
が、部は5人以上が原則であり、それ以下の場合は同好会に格下げされる。
占い研究会の場合は、その長い歴史と小雪の占い師としての優秀さのため、今まで見て見ぬ振りをされてきた。
が、そのためには毎年生徒会と学園に提出する申請書類に、主だった教員のサインが必要である。
91:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 13:26:15 MKIl5ueV0
……これでもうお分かりだろう。
書類の正体は契約書である。
『もし伊吹を10日間雄真に近づけねば、サインを集めてやる』という、実にアレな。
「……これは何だ、高峰小雪?」
震える声で尋ねる伊吹。
気のせいか、契約書を持つ手も震えている。
「……残念、ばれちゃいました。あと少しだったのに」
「ふざけるな! 私を止めようとしたのは私利私欲か!?」
口をバッテンにしてすねる小雪に、伊吹の怒りが爆発した。
雄真のこともあるが、今回は『自分がおちょくられたこと』も含まれるので、先程以上にお怒りである。
「部長として、当然のことです。伊吹さんも部員として協力して下さい」
「できるか!」
「ちぇっ」
「……私をおちょくるのも大概にしろよ? 高峰小雪?」
「雄真さんも名誉部員です。だから占い研究会のために、喜んで犠牲になってくれる筈です」
92:名無しさん@初回限定
06/11/17 13:30:34 qWe3QMLy0
支援、足りてる?
93:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 13:31:16 MKIl5ueV0
「貴様は鬼か!?」
「それに雄真さんは、すももさんと伊吹さんという二人の部員をゲットしてきてくれました。
新しいクラスでも、きっと沢山の部員をゲットしてくれるでしょう」
そうなれば、面倒なサインを集めずとも部室を維持できます、と目を輝かせる小雪。
「……言いたいことはそれだけか?」
伊吹の手には、いつの間にかビサイムが握られていた。
……気のせいか、魔方陣もあちこちに展開している。
「あらあら、タマちゃん。もしかして私ピンチですか?」
が、普通ならば絶体絶命のピンチであるにも関わらず、小雪は平然―少なくとも表面上は―としたものだ。
暢気にタマちゃんと会話などしている。
「いかんな~式守の嬢ちゃん。怒ると美容に差し障るで~」
「ふ、ふふふ…… そう言えば、貴様との決着は有耶無耶になっていたなあ?」
―もう会話は終わりだ。
ドッゴ~ン!
甲種特待生二人による、実に傍迷惑な魔法合戦が始まった。
94:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/17 13:33:01 MKIl5ueV0
SS投下終了。
今回は前半だけなので短いです。
……でも投稿に30分。
95:名無しさん@初回限定
06/11/17 13:43:27 8aq8HmMv0
GJ
ところでこのUMAは伊吹と沙耶に手を出してるの?
96:名無しさん@初回限定
06/11/17 17:54:58 pgnpv/g40
投下乙です
でも占い研究会って、小雪さんが入学する条件として理事に作らせた部なのよね。
97:名無しさん@初回限定
06/11/17 20:06:19 svuWPXcT0
>95
むしろ出してない理由が見つかりません。
98:温泉の人
06/11/17 20:21:56 5sWubv340
相変わらず小雪さんはステキだwwwwwww乙です!
それと>>82
遅ればせながら、寛大なるお心遣い感謝いたします。
完成までまだかかりそうですが、今しばらくお待ち下さいませ。
99:はぴねす!SS『世の中やっぱり甘くない』第5話-1
06/11/19 11:45:45 R4RiR/5K0
皆様、有難う御座います。
>ところでこのUMAは伊吹と沙耶に手を出してるの?
>むしろ出してない理由が見つかりません。
御想像にお任せしますよ~
>でも占い研究会って、小雪さんが入学する条件として理事に作らせた部なのよね。
やっちまった…… 後で訂正せねば……
(御指摘感謝です)
>相変わらず小雪さんはステキだwwwwwww乙です!
未だ勝敗は不明なるも、既に精神的に優位に立っています。
100:名無しさん@初回限定
06/11/19 20:56:43 oYQ5hb/i0
乙です
しかし校内で攻撃魔法を堂々と・・・校舎と周囲の学生は無事か!?
まあ、この二人なら何かあっても理事長なり鈴莉さんなりがもみ消すだろうけど・・・
101:温泉の人
06/11/20 21:22:48 LIyohTDp0
では予告どおり、「世の中やっぱり甘くない」の続きで書いてみるテスト。
こっからの話はあくまで私、温泉の人が独自に妄想を働かせたものであり、
「世の中・・・」の作品世界を否定する目的のものではないことを先に申し上げておきます。
あくまで「世の中・・・」のパラレルとして捉えていただけたら幸い。
・・・あと「世の中・・・」は3人称視点でしたが、
こっちは適宜作中の様々な登場人物の視点を交えつつ物語を進めていきたいと思います。
理由? そっちのが俺が書き慣れてるからw
(繰り返しますが「世の中・・・」の作品否定が目的ではありません)
ではどぞ↓
102:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(1/24)
06/11/20 21:23:27 LIyohTDp0
「~~~っ」
机に伏せ、何やら不満気にうなり声を上げている杏璃ちゃん。
私が話しかけても、先生に指名を受けても、その反応は一貫して変わることはない。
……ここ数日、杏璃ちゃんはずっとこうだ。
終始思い詰めるように唸っては、はぁっと諦めたかのように溜め息をつくのを繰り返す有様。
「……」
無論、この私……神坂春姫も例外ではなかった。
非情なまでに唐突に告げられた、雄真くんの中等部編入事件。
これからもうずっと、雄真くんといっしょに魔法を勉強することができない……
たったそれだけのことなのに、私の心は暗く、深く……沈みこんで浮上しない。
(でも駄目。これは雄真くん自身のためなの)
(今まで10年以上、魔法から離れていたのよ? そんな状態では、たちまち落ちこぼれるわね)
(もし破ったら、『雄真くんの母』として考えがあるわよ?)
狭い暗室で鐘が鳴り響くかのように、先生の言葉ががんがんと頭の中を駆け巡る。
何を話しても、先生の態度は変わることはなかった。
いや……私たちのような若輩者の意見で簡単に意見を覆すような人間ではないことくらい、
長いこと先生の下直属で魔法を学んできた私にはわかってる。
だけど、だけど……
こんな仕打ちって、ないよ……先生……!!
103:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(2/24)
06/11/20 21:24:14 LIyohTDp0
「……私の授業中に考え事なんて、いい身分ね。ふたりとも」
「「!!?」」
私たちはほぼ同時に顔を上げ……
そして一瞬だけ……目の前にいる人物を、きっと睨みつけていた。
「……そんな目でいくら見つめても、雄真くんは帰って来ないわよ?」
「……」
「本当にあの子のことを考えるなら、それぞれが与えられたフィールドの中で、
精一杯自分の為すべきことをすべきじゃないかしら?
貴方達がそれじゃ、あの子もこっちの世界に帰ってきた甲斐がないじゃない」
「……」
あくまで毅然とした態度を崩さない先生の姿勢に……
私はそのまま、力なく視線を横に反らすしかできなかった。
「まぁ貴方達はまだ若いから、まだまだ納得するには時間がかかるでしょうけど……
いずれわかるわ。あの時のあの子の決断が、決して間違ってはなかったって……」
「……」
「それと、今の態度はペナルティ1ね。ふたりとも放課後、私の研究室まで来なさい」
「……わかりました」
おなかの中をじんわり締めつけるおのが無力感に。
私は力なく、先生の言葉に従うのだった。
104:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(3/24)
06/11/20 21:25:18 LIyohTDp0
「……本当に、このままでいいの? 春姫……」
放課後……御薙先生の教室へ向かう道中、杏璃ちゃんが私に問いかける。
「そりゃまぁ、先生の言いたいことも理解できなくはないけどさ……
いくら何でもあれじゃ、雄真がちょっとかわいそうじゃない……」
「……うん……」
杏璃ちゃんの言葉に、力なく頷く私。
……本当はできることなら、雄真くんを力づくでもこっちに引き戻したい。
それこそ、今すぐ……中等部の校舎の中に忍び込んででも。
だけどそれが、今の雄真くんにとって……邪魔でしかないのだとしたら……
私にできることなんて、きっと何もない……
「……ちょっと、しっかりしてよね春姫……
あんたがそんなんじゃ、こっちも張り合いないじゃない……」
「……うん……ごめんね、杏璃ちゃん」
私はわずかに顔を上げ、作り笑いを浮かべてみる。
「……」
杏璃ちゃんはそんな私を見て、少しだけ考え込んでいたが。
「……決めた。行くわよ、春姫!!」
「え? 行くって、どこへ……」
「決まってるじゃない。雄真を力づくで取り返しに行くのよ!!」
「え!? でも今から、御薙先生との約束が……」
「あんなわからず屋のことなんか無視無視!! さ、早く行くわよ!!」
「え、ちょ、ちょっと待っ……ひゃあっ!?」
杏璃ちゃんに無理矢理パエリアにまたがらされ、私たちは夕暮れの大空に飛び立って行った。
105:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(4/24)
06/11/20 21:25:59 LIyohTDp0
「うぅ……まだ体いたぁい……」
「もぉ、杏璃ちゃんったら……無茶するんだから……」
杏璃ちゃんの部屋に戻り、擦りむいた杏璃ちゃんの膝の手当てをする私。
いくら何でも、空から無理矢理中等部の校舎に突撃するなんて……
校舎には強力な人よけ結界が張られてるんだから、無理に決まってるじゃない……ι
「あーあ……あたし的にはもうちょっとうまく行くと思ったんだけどなー……」
あの結界を前にそんなことが言えるなんて……やっぱり杏璃ちゃんってすごいのかも。
「こうなったら仕方ないわ。春姫、作戦その2で行くわよ!!」
「作戦……その2?」
きょとんと首を傾ける私に、杏璃ちゃんは意気揚々立ち上がり、クローゼットを開いた。
106:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(5/24)
06/11/20 21:27:32 LIyohTDp0
「さぁて、これで準備完了っ☆」
「あ、杏璃ちゃん……やっぱり無理があるよ……これ……ι」
使い古した中等部の制服に身を包み、中等部の校門の前に立つ私たち。
それもすぐに私たちとバレないよう、微妙にヘアスタイルなど変えながら。
(ちなみに私がツインテールとメガネ、杏璃ちゃんがヘアーバレッタとリボンをつけたロングスタイル)
「だぁいじょうぶだって! これだけきっちり変装してたら、誰もあたしたちだってバレないって。
……まぁ唯一バレる危険があるとすれば、あんたのその中学生離れした胸だけど」
「ちょ、ちょっと……無理言わないでよ杏璃ちゃん……ι」
私だって、好きでおっきくなったわけじゃないもん……ι
「とにかく! 事は一刻を争うんだから、さっそく侵入開始よ!!」
「うん……行こ、杏璃ちゃん……」
杏璃ちゃんの言葉に、私も返事を返した。
手段はどうあれ……雄真くんに会いたいのは、私もいっしょだったから。
あくまで平静を装いつつ、私たちは徐々に校舎の玄関へと近づいてゆく。
「……何だね、キミ達は。下校時間はとうに過ぎとるだろうが」
……当然のことながら、私たちの存在に気づいた中等部の先生が声をかけてきた。
幸いなことに、こちらの素性はまだ割れていないみたいだ。
「え、えっと……あの……その……」
「中等部1年の小日向雄真は、今こちらにおりますか?」
突発的な事態に慌てふためく杏璃ちゃんをかばうように、私は冷静かつはっきりと問いかける。
「あぁ、今月頭からうちに来た、御薙教授のご子息のことか……
して……その小日向くんとキミと、一体何の関係があるのかね?」
「申し遅れてすみません。私……普通科1年の小日向すももと言います。
今日は兄の雄真に……ちょっと、忘れ物を届けに来まして……」
勝手に名前を使っちゃったすももちゃんに、少しだけ心の中で謝る私。
107:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(6/24)
06/11/20 21:29:08 LIyohTDp0
「何と……キミがあの小日向くんの妹さんかね。
噂は聞いておるぞ。御薙教授がご子息を預けた先の娘さんだとか」
「はい……兄がいつもお世話になっております」
「そういうことなら話が早い。さ、こちらに来たまえ。もうすぐ補習も終わるところだろう」
どうやら先生は、私の話をうまく信じてくれたようだ。
こちらに手招きなどしつつ、私たちを校舎の奥へと案内してゆく先生。
(……うまく行ったじゃない、春姫……よくそこまで口が回るものね……)
後ろから杏璃ちゃんが、そっと私に耳打ちする。
(えっと……実はちょっとだけ……ホントにそうだったらいいのにって思ってたんだ)
(なぁるほどねぇ……んふふ……何かもうすっかり恋しちゃってるって感じ?)
(ちょ、ちょっと杏璃ちゃん……こんなトコロでからかうのはやめてよぉ……///)
何やらこぼしつつ、先生の後をついて行こうとしたその時。
「あら、雄真くんにこんな大きな妹さんがいたなんて……初耳だわね」
「!!!!」
後ろから聞こえた嫌に聞き覚えのある声に、私たちは思わず振り返った。
「み……御薙……先生……」
「そもそも雄真くんの妹さんは、今高等部1年だったと記憶してるんだけど……
私の記憶違いだったかしら?」
「……」
御薙先生の言葉に何も返せず、ただ冷や水を浴びせかけられたかの如く凍りつく私たち。
108:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(7/24)
06/11/20 21:29:58 LIyohTDp0
「み、御薙教授? まさかこやつらは……ご子息の妹さんではないと……」
「二宮教授……あなたはまず自身の術師としての観察眼を養うべきね。
これだけの魔力を秘めた人間が普通科を名乗り侵入している地点で、何かおかしいと考えないと」
「はっ……し、失礼致しました……」
御薙先生の凛とした忠告に、二宮教授と呼ばれたその人もまた私たちと同じように凍りつく。
「で? 自覚はしているはずよね……
私との約束を無断で断った挙句、本来立ち入りを制限されているはずの中等部への侵入を図る。
それがどれほど重い罪なのかを」
「……」
言葉こそ穏やかだが、体は明らかに殺気を放っていた。
抗えば、例え教え子とて容赦はしない……
先生の火をも凍てつかさんばかりの威圧に、胸の奥底が徐々に凍りついてゆくのがわかる。
「そもそも私は約束したはずだけど? 転校初日から10日間は会ったらだめだって……
これでも私は精一杯、貴方達の心情を汲んであげたつもりなんだけど……」
「ふぅっ……っ……」
杏璃ちゃんががたがたと震えながら、必死に私の肩にすがりつくのがわかる。
人の奥底に眠る原初の恐怖をおびき出す、先生の冷たい殺気。
並の人間ならその場にいるだけで、我を失い狂ってしまわんばかりの気力……
(これが……御薙先生……)
……今まで私は、先生の実力を侮っていたのかも知れない……
彼女は……初めから……私たちが抗うべき存在ではなかったのだ……!!
こんなこと……もっと早くに知れていたら……どんなにかよかったか……
109:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(8/24)
06/11/20 21:31:34 LIyohTDp0
「仕方ないわね……私もこればっかりは、あまり使いたくなかったんだけど……」
御薙先生は目を閉じ、私の前に陣を展開する。
「エル・アムダルト・リ・エルス……」
涼風が、私たちの全身を吹きぬけた。
よく晴れた冬の朝にも似た、すがすがしくも冷たい風……
「ディジーノ・ラ・アグノシス」
「!!!」
世界が、ぴんと光を放つのを感じた。
一瞬の魔力の奔流の後、あたりは水を打ったように静かになった。
「先生……今一体、何を……」
「簡単な認識阻害魔法よ。たった今から雄真くんは、貴方達のことを一切認識できなくなったわ」
「!!??」
私は頭の中が、さっと白くなるのを感じた。
「これから雄真くんは貴方と会っても、貴方のことを同級生の神坂春姫とは認識できない。
そう……たった今会ったばかりの、どこかの赤の他人としか認識しないでしょうね」
「そんな……先生……嘘……」
「貴方達が悪いのよ? 貴方達が私の言うことをちゃんと聞いてくれないから……
我慢してちょうだい。これも雄真くんと、貴方達のためなのだから」
「嘘……だよね……先生……雄真くん……」
口角が、引きつって動かない。
頭がふらふらして、まともに前に進むことすらままならない……
それでも……それでも。
私は一縷の望みをかけて……雄真くんを求め校舎内を徘徊する。
……やがて私は廊下の向こうに、今しがた教室から出たばかりの雄真くんを発見した。
「雄真……くん……っ!!!」
数日ぶりに会えた、愛しいその姿……
顔も、体も、服装も……全てが大好きな雄真くんの姿……
110:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(9/24)
06/11/20 21:32:15 LIyohTDp0
「久しぶり……だね……雄真くん……」
引きつった笑顔のまま、私は何とか平静を保って雄真くんに挨拶する。
「……?」
「覚えて……る? 私だよ……同じクラスの、神坂春姫だよ……?」
精一杯、雄真くんの声が聞きたくて。
時折遠のきそうになる意識を必死につなぎとめつつ、私は雄真くんに問いかける。
……だけど。
「……キミ、誰……?」
「!!!!!」
……世界が崩れるって、きっとこんな感じなんだろう。
あまりに非情な雄真くんの一言に、私はがくっと力なく膝を落とす。
「悪いけど、俺……急いでるから……じゃ」
廊下を駆け抜けてゆく雄真くんの音すらも、どこか遠く聞こえて……
そこからもう、何も見えなかった。
何も……考えたくなかった。
ただ今は……拭いようのない喪失感に……ひたすら、涙を流すほかなかった。
「……ひどすぎる」
隣に立った杏璃ちゃんが、唇を噛みしめながら言葉をこぼす。
「春姫が一体先生に何をしたって言うのよ!!!
春姫は……春姫はただ……大好きな友達に会いに来ただけじゃない!!!
それなのに……こんな仕打ちって……ひどすぎるよ……あんまりだよっ!!!!」
「……『友達』と思ってるのは、果たしてどっちの方かしら」
「!!!!」
先生の冷徹な一言に、思わず言葉を詰まらせる杏璃ちゃん。
111:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(10/24)
06/11/20 21:33:04 LIyohTDp0
「今はそれでもいいかも知れない……
だけど時が経てば……彼女はきっと、雄真くんなしでは生きていけなくなる……
それはきっと……互いのために、悪影響しか及ぼさなくなる」
「だけど……だけど……だからって!!!」
「勘違いしないで……私だって本当は、こんな魔法なんて使いたくない……
だけど……仕方ないのよ。これも全部……雄真くんの……みんなのためだから……」
「っ……!!!!」
杏璃ちゃんは一瞬だけ、御薙先生をぎらりと睨みつけ。
未だ自我の戻らない私を肩に抱え、その場を駆け出して行った。
「あたしたちは……絶対……諦めないから!!!
雄真はいつまでも……あたしたちの……友達なんだから!!!!」
「……」
先生は、止めなかった。
ただ……先程までの冷たい空気とは違う……寂しさと憂いを秘めた空気。
先生のその表情が、何を意味しているのか……私たちには、わからなかった。
112:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(11/24)
06/11/20 21:35:59 LIyohTDp0
「……ふぅ」
本日分の文献調査を終え、コーヒーで一服入れる私。
……正直、私は迷っていた。
本来ならば私は親として、息子たちの作るコミュニティを尊重してやるのが理想なのだろう。
そういう意味では、彼女達の意見もあながち間違ってはいないのかも知れない。
第一彼らの年代にとって、4年という月日がどれほど重いものであるかは……
私が一番、よく理解している。
だけど……
(それじゃきっと……雄真は……迫り来る荒波には決して勝てない)
自身、よく知っていた。
魔法学は、ここ数十年の間でにわかに進化を遂げた全く新しい学問体系である。
魔法についてはまだまだ解明されていない部分も多く、教育体系もまだまだ整っていないのが現状だ。
当然……世間の理解も昔よりはよくなっているとはいえ……まだまだその存在を疎んじる声も多い。
中には魔法使いと言うだけで忌み嫌う人間も少なくはないだろう。
そんな中……今のなあなあな人間関係をだらだらと繰り返せば、
いざという時誰も身を護ってはくれなくなる。
そしていずれは……社会から孤立し、切り離され……今よりもっと辛い人生を歩むことになる。
「……」
私は、そうやって何人もの同僚が社会の軋轢に潰されていく様を、ずっと身近で見守ってきた。
いつまでも、ずっと一緒にいたい……
そんな淡い恋心で切り抜けられるほど、ここは甘い世界じゃないのだ……
(そう……全ては雄真のため……雄真をこの世界で立派に生き延びさせるため……)
半ば自分に言い聞かせつつ、私は明日の分の教育カリキュラムに手を伸ばした。
そこへ。
113:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(12/24)
06/11/20 21:36:45 LIyohTDp0
「あらぁすーちゃん……こんな遅くまでお仕事なのぉ?」
凛と静まった空気とは明らかにちぐはぐな声が、扉から聞こえてきた。
「理事長……って、そう呼ぶのも野暮な話ね。どうしたのかしら? ゆずは」
顔を出したのは、学園の理事長にして世界最高の予言術の使い手……高峰ゆずはだった。
「どーもこーもないわよぉ! すーちゃんここんところずーっと難しい顔してるもん」
「ゆずはは相変わらずよね。今日はもう何杯飲んだのかしら?」
「えっと、ひとーつ……ふたーつ……うふっ、たーくさん♪」
「その分だと、さしずめスコッチ1本まるごとってとこかしら?
あなたその調子だと、いつか本当に破産するわよ」
「だーいじょうぶよぉ! その時はまたすーちゃんにおごってもらうから♪」
ほろ酔い気分で底抜けに明るい、ゆずはの表情。
そんな彼女の笑顔を見るにつけ、少しずつ心の中がほぐれてゆくのがわかる。
「……ところでさぁ、すーちゃん……」
「何かしら? ゆずは」
やがてゆずはが私の隣に座り、話題をふり始めた。
「すーちゃんの息子……ほら、ゆーまくん……だっけ?」
「あぁ、雄真のことね……それがどうかしたのかしら?」
「ひどいよねーすーちゃんも。あんなかわいい子を、千尋の谷に突き落とすようなことして」
「あら、人聞きが悪いわねゆずは。あれはちゃんと雄真のことを思って」
「本当に、そうなのかしら?」
「……」
ゆずはの核心に触れるような一言に、私は一瞬黙りこんでしまう。
114:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(13/24)
06/11/20 21:37:23 LIyohTDp0
「すーちゃんたらいっつもそーなんだから。
いっつも二言目には雄真くんのため、雄真くんのためーって……
まるで何だかそう言ってないと、自分のやってることに自信が持てないみたい」
……見透かされてる。
私が雄真に密かに寄せている、様々な野望の数々……
「そもそも中等部に移ったからって、何もかもうまく行くとは限らないんじゃないかなー?
早くも不穏な影が3つも、雄真くんの周りに忍び寄ってるし」
「……多少の障壁は覚悟の上よ。このくらいの試練、彼にもちゃんと超えてもらわなきゃ」
「すーちゃん、また雄真くんって言ってるー」
「……」
私は肩をすくめ、大げさに溜め息をついてみせた。
「……確かにあなたの言うとおりだわ。
私はあの子を、世界に名を残す偉大な魔術師に育て上げたい……
その為になら、あの子たちに一時的に疎まれようがさしたる問題じゃないわ」
「……ふーん」
未だ納得いかないといった目つきで、私のことを見つめるゆずは。
……相変わらず、妙に引っかかるものの言い方するのね……
彼女が半ば私の考えを的確に見透かしてるだけに、私もあまり大きな声が出せない。
115:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(14/24)
06/11/20 21:38:31 LIyohTDp0
「……そーんな顔しないでったらぁ!! ほら、せっかくの美人が台無し!!」
「生憎と私もいろいろと問題抱えていてね。あなたほど気楽には生きられないの」
「こーんな時間までお仕事してるからよぉ! たまにはぱーっと遊ばなきゃ」
そう言いつつ、彼女が袖の下から取り出したのは。
「……雀卓?」
出てきたのは、ごくありふれた携行用麻雀セットだった。
随分使い古されているのか、牌の角などあちこちすり減っている。
「呆れたわね……学校の研究室で雀卓広げる教師なんて、初めて見たわ」
「別に生徒を巻き込んでるわけじゃないんだからいーでしょ?
ほら、私とすーちゃんの仲じゃない」
こんな歳になっても相変わらず天真爛漫な彼女の態度に、ふと私は心の奥がほぐれてゆくのを感じた。
思えば、昔からそうだったわね。
肩肘張って生きようとする私の横を、いつも音羽とゆずはの2人がうまくかき乱してくれて……
「……わかったわ。しかしお互い立場もあるから、掛け金はなしよ」
「わーい☆ じゃあさっそく……」
私はしばし教諭としての立場を捨て置き、ゆずはとの真剣勝負に臨むのだった。
「……それで、ええん? ロンやな~♪」
「……時々あなたが本気で何者なのか、わかんなくなるわ……ι」
116:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(15/24)
06/11/20 21:39:34 LIyohTDp0
トゥルルルルル……トゥルルルルル……
あたしの耳の中で規則的な音を響かせる、あたしの携帯。
彼女の携帯に電話をかけてから、もう20回は響く電子音……
(今日は……)
だがあたしはそれでも、辛抱強く待ち続ける。
(今日こそは……出てくれるわよね……春姫……)
祈るような、すがるような気持ちで……ただひたすら、彼女の応答を待つあたし……
30回……40回……50回……
だがそれでも、彼女からの応答はなく……
「……」
ピッ
あたしは力なしに、その携帯を切る他なかった。
(大丈夫なの……? 春姫……)
嫌な予感が、あたしの胸を支配していた。
あれからもう3日だ。
あれからずっと、あたしは彼女……春姫の声を聞いていない……
……そりゃそうだ。
自分の人生を賭すまでに愛した男の子に、きっぱりと自分の存在を否定されたのだ。
それこそ……今までの普通科での生活など一切なかったかのように。
あたしは初恋もまだまだだから、その気持ちを察するには経験が足りないけど……
それでも……それが彼女にとってどれだけ大きな意味を持つのか……
今の春姫を見れば、嫌というくらいわかる。
(……言わないわよね……)
彼女にとって、あたしにとって……一番最悪なケース……
(魔法、やめるなんて……言わないわよね……)
嫌な胸騒ぎを覚えつつ、あたしは学校へ行く準備を整えるのだった。
117:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(16/24)
06/11/20 21:40:31 LIyohTDp0
(……あれ……)
目を開ける。
早朝にしては妙に明るい光が、カーテン越しに降り注いでくる。
(今、何時……)
私はふと、傍らに置いていた目覚まし時計に目を向けた。
―10時15分。
普通ならば、とっくに2時限目が始まっている時間である。
(……また……寝過ごしちゃったんだ……私……)
別段、後悔もない。
ただ……こんな時間まで無為に寝過ごしてしまった自分に……少しだけ、嫌悪感を覚える。
「……」
私はふと、その携帯を開いて中を検めてみる。
『不在着信 10件』
その内訳は、学校からの連絡が数件と……あとは全部、杏璃ちゃんからのだ。
(杏璃ちゃん……)
杏璃ちゃんが私を気遣って、いっぱい連絡をくれていることは明白だった。
だけど……
それに答える気力は、私には残ってなかった。
118:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(17/24)
06/11/20 21:41:18 LIyohTDp0
「……」
体中、いやにだるい。
胃がめくれて……むかむかと焼けつくような痛みをくれる。
肩も……手足も……まるで自分のものじゃないみたいに、言うことを聞いてくれない……
(何だったんだろう……私って……)
いつもいつも、私は頑張ってきた。
思い出のあの男の子に、少しでも近づきたくて……
私の胸に眠るいっぱいの宝物を、いつまでも大切に輝かせておきたくて……
来る日も来る日も休むことなく、あの呪文を唱え続けた……
「……」
こうなるために、私は頑張ってきたのかな……?
私の追いかけてきた夢って……こんなにも簡単に崩れ去っちゃうものだったのかな……?
「……雄真くん……」
取り出したのは、いつか行ったお花見の時の写真。
ちょっと戸惑いながらもカメラに笑顔を向ける雄真くんと、その隣で微笑む自分自身の絵。
それは本当に穏やかで、胸を締めつけるくらいいっぱいの幸せに満ちていて……
「……ゅぅま……くん……っ」
遠ざかってゆく幸せと、失ったもののあまりの大きさに……
私はまた、ぐっと体を縮こませるのだった。
119:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(18/24)
06/11/20 21:43:43 LIyohTDp0
「……で、神坂は今日も欠席……か」
心底心配そうに溜め息をつく先生。
春姫の欠席騒ぎは、思いの外回りに衝撃を与えたみたいだ。
……無理もない。
瑞穂坂始まって以来の才媛と呼ばれた彼女の、突然の無断欠勤だ。
それも……既に3日も連続で。
これまで風邪だろうが体調不良だろうが1日たりとも遅刻せず出席を続けてた春姫が
これだけ長い間無断で休むのは、さすがに学園側にとっても憂慮すべき事態なのだ。
既に職員室では、連日連夜春姫とその両親にしきりに連絡をとり、
現状把握に勤しむ先生たちの姿が見受けられる。
そして、春姫の一番の親友だったあたしも……何度か先生に事情を尋ねられていた。
……無論、答えられるわけなんてない。
彼女が……春姫が……たったひとりの男の子のせいで再起不能なまでに落ち込んでるって……
言いたくなんてないし、認めたくなんてない。
……そう。彼女はこんなことで負けるような弱い女じゃない。
いつかきっと実習の席に現れて、ムカツクくらい立派な魔法を披露してくれる……
そうでしょ? 春姫?
今のあんたを実力で打ち負かしたって、何の得にもならないじゃない……!!
(……早く帰って来てよ……春姫……!!)
春姫の無事を祈るがあまり、その日の授業は全然耳に入らなかった。
120:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(19/24)
06/11/20 21:44:42 LIyohTDp0
春姫の無断欠席の報は、生徒達の間にも波紋を広げていた。
常に自分たちの先をリードしてきた春姫の突然の欠席に、ある者は失望し、ある者は心配に胸を痛め……
またある者は、この隙に瑞穂坂一の座を我がものにせんと胸を躍らせていた。
(……)
あたしも端から見れば、その胸を躍らす一員に映るのだろう。
そりゃそうだ。
実質実力No.1だった彼女がいなくなれば、
それまで2番手に甘んじてたあたしがトップに躍り出るのは至極自明の理だ。
今まで何度も春姫を打ち破ってトップに躍り出んと公言してたあたしにとって、これ以上のチャンスはない。
……だけど……
あたしはそんなことを望んだんじゃない!!!
いつかちゃんと正々堂々勝負して……そして春姫の実力を認めた上で、あたしがトップに立つの。
それまで……あたしがちゃんと春姫を打ち負かすまで……
春姫は絶対、誰にも負けちゃいけないんだから……!!!!
「……しかし意外だよねー……あの神坂さんでも無断欠席とかするんだ」
「まぁ神坂さんも、所詮ひとりの学生だしね……
何だか神坂さんもあたしたちとあんまり変わんないんだって、ちょっと安心したかも」
折りしもあたしの後ろから、同級生の子たちが春姫のことを噂する声が聞こえてくる。
聞き飽きるくらい聞いてきた、自分勝手に捏造された春姫の噂。
今回の話も、どうせろくな話じゃないだろう……
あたしはその話を回避すべく、その場を立ち去ろうとした。
が。
「でもここだけの話……神坂さんの無断欠席って、とある大失恋がきっかけなんだって!」
ピクッ
その言葉に、思わず耳を傾けるあたし。
121:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(20/24)
06/11/20 21:46:25 LIyohTDp0
「えーウソー! あの神坂さんが失恋!? その話すっごく聞きたい!!」
「何でも神坂さんには、子供の時から心に決めてた男の子がいて……
その男の子に巡り会えたのも束の間、その運命の彼には既に好きな人がいたんだって!!」
「それってさー……ひょっとして、こないだひーちゃん達が噂してたあの人のことじゃない?」
「すごいよねー!! あの神坂さんを振れる男の子って、きっとすごいお坊ちゃんだよ」
まるでワイドショーの芸能人でも語るかの如く、好き勝手に噂話にふける彼女たち。
……何も知らないくせに……
春姫の気持ちなんて……これっぽっちもわかってないくせに……
「それにしても、今回ので一番得したのって……やっぱ柊さんじゃない?」
(っ……!!!)
一番聞きたくない言葉が、彼女たちの口から発せられた。
「そーだよねー……ひーちゃんずっと、神坂さんに勝ちたい勝ちたいって言ってたもんねー。
神坂さんが無断欠席になって、今頃飛び跳ねて喜んでたりして!」
違う……
「そーだよねー……柊さん、こんなことでもなきゃなかなかトップに立つなんてできないし」
そんなこと……あたしは……望んでなんか……!!!
「……馬鹿にしないでくれる?」
「!!?」
あたしは思わず、彼女たちにパエリアを突きつけていた。
意外な珍客の登場に、彼女たちも思わず泡を食ったような表情になる。
「ひ、柊さん……聞いてたの? 今の……」
「や、やだぁひーちゃん……今のは冗談に決まってるじゃん……」
122:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(21/24)
06/11/20 21:47:28 LIyohTDp0
……最初は、抑えるつもりだった。
春姫が学校に戻るまで、精一杯大人でいるつもりだった。
だけど……やっぱりダメだった。
春姫のことを……自分自身のことを……ここまで馬鹿にされて黙っていられるほど、私は大人じゃなかった。
「悪いけど……春姫はそこまでプライドのない女じゃないわ。
春姫の永遠のライバルであるあたしが言ってるんだから、間違いないわよ」
「ひ、ひーちゃん……今のはただの噂話じゃん……
神坂さんの本当の欠席の理由なんて、あたしたちじゃわかんないよ」
「だったら憶測でとやかく言わないでくれる?
どうせ春姫の気持ちなんて……あんたたちにはわかんないんだから」
「……柊さん……」「ひーちゃん……」
あたしのあまりに必死な態度に、2人がさっと引いてゆくのがわかる。
……当たり前だ。
彼女の言うとおり、これはただの噂話じゃん……
なのにあたし……何でこんなに必死になってんのよ……
何でこんなに……腹が立って仕方ないのよ……!!
「とにかく……春姫は戻ってくるわ。絶対。
そして帰ってきたら改めて……あたしの実力を証明してやるんだから!!!」
「あ、柊さん……」「ひーちゃん……!!」
2人の制止する声も聞かず、あたしはその場を駆け出して行った。
嘘だよね……春姫……
この程度で魔法諦めちゃうような、弱い女じゃないわよね……!!!
123:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(22/24)
06/11/20 21:48:38 LIyohTDp0
「……オーフェンダムっ!!!!」
高く、あたしの詠唱が響く。
同時に生み出された魔力の弾が、森の地面をえぐって駆け抜ける。
「オーフェンダム……オーフェンダム……オーフェンダムっっ!!!!」
やり切れない気持ちを、何かにぶつけずにはいられずに。
低下する魔力も気にせず、あたしは無我夢中で魔法弾をぶっ放してゆく。
「あぁっ……ぁぁ……はぁ……っ」
やがて一度に出せる魔力の限界を超え、息つくあたし。
森の一部が……見る影もないくらい、無残に破壊しつくされている。
(……春姫……)
あたしはふと、春姫の唱える再生魔法をその光景に重ねていた。
攻撃魔法や戦術の組み立てなど、基礎戦闘能力についても彼女は相応のものを持ってるけど……
一番凄いのは……やっぱり再生魔法だった。
どんなに無残に崩されたものでも、春姫がソプラノを一振りすれば……たちまち元の姿を取り戻しちゃうのだ。
春姫のライバルであるあたしでも……その実力だけは、素直に凄いと思える。
(春姫だったら、きっとこのくらい……簡単に直しちゃうよね)
あたしはその光景に向かって、パエリアを構え……
「オン・エルメサス・ルク・アルサス……」
淡く、青白色に輝く眼前の光景。
「アスターシア・アウク・エル・アムンマルサス……!!」
その光は薄く辺りを覆い、無残にぶち折れた木の幹をふわっと浮き上がらせ……
「!!!」
そのまま、力なくかき消えた。
残ったのは、魔法をかける前と何ら変わらない瓦礫の山……
124:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(23/24)
06/11/20 21:49:24 LIyohTDp0
「……っ……!!!!」
あたしはやるせなくなり、思わず両手で地面を殴りつけていた。
「何で……何でできないのよ……あたし……!!!!」
……自分の無力感が、ひどく悔しかった。
春姫の窮地に何もしてやれない自分が……ひどく腹立たしかった。
このまま……あたしは春姫を失うの……?
そしてあたしは目標を失ったまま、のうのうと瑞穂坂No.1の座に居座ることになるの……!?
(……そして瑞穂坂学園魔法科は、史上屈指の魔力の持ち主だけでなく、才媛二人までも失う訳ね)
脳内に響き渡る先生の言葉。
何が学園側の損失よ……
もう既に嫌って程、損失は被ってるじゃない……!!!!
「……どうすんのよ……これ……」
完膚なきまでに打ち崩された、森の一角……
それがまるで、あたし自身の心をも表してるようで……
切なかった。苦しかった。
自分の力をどこにぶつければいいのか、全然……わからなかった。
と、そこへ。
「……ここにいたか、柊杏璃……!!!」
妙に聞き覚えのある声に、あたしはふと振り返った。
125:名無しさん@初回限定
06/11/20 21:50:12 3BM9wjB50
今更だが支援
126:「世の中やっぱり甘くない」Parallel(24/24)
06/11/20 21:50:50 LIyohTDp0
「式守……伊吹……!?」
「見つけたぞ……柊杏璃……では、さっそく行くぞ!!!」
「え? ちょ、ちょっと待ちなさいよ伊吹!!!」
あの小生意気な伊吹がここまで狼狽してるなんて……一体何があったって言うの?
「てゆーか、いきなりついて来いって言われてもわけわかんないわよ!!!
連れてくならせめて理由くらい言いなさいっての!!!!」
「話は後だ……とにかく、中等部……あそこは危険だ!!!」
「中……等部……?」
伊吹の言葉に、あたしは一瞬戸惑いを隠せなかった。
中等部って……雄真が編入された、あの中等部……?
「まさか……あんたの用事って、雄真のこと?」
「まぁそんなところだ……とにかく行くぞ柊!!!
あの女……明日香の奴を、このまま野放しにしておくわけにはいかぬ!!!」
未だに話は見えてこないけど……
とりあえずわかったことは……今まさに雄真に危機が迫ってるってこと……
「……それなら話は早いわ。どこへ行けばいいの、伊吹!!!」
「中等部の教室だ!!! とにかく、ついて来い柊!!!!」
あたしたちは高まる緊張感を胸に、中等部へと向かうのだった。
127:温泉の人
06/11/20 21:51:34 LIyohTDp0
まず最初に。ごめんなさい皆さんorz
本編がせっかくコメディ路線でやってるのに、何でこんな鬱展開にしてんだ自分;
最近こちらにもすごくレベルの高いはぴねすSS書きが増えて嬉しい限り。
皆さんからのバラエティ溢れるSSの数々、すごく刺激になります!!
私もまだまだ負けてはいられませんねw
てなわけで今回ちょっと鬱ネタに走っちゃったんで、次回はあまあまな話で。
今のところ春姫とUMAとの魔法稽古で、勝った方が負けた方を好きに・・・って話考えてます。
もちろんむふふな展開もあるかも?なので、今しばらくお待ちくださいねノシ
128:名無しさん@初回限定
06/11/20 22:08:34 AaV+EiiG0
乙ですー
うーむ、これはまた鬱シリアスに方向展開しましたな。読む方は結構戸惑ったり。
春姫がえらい目に。
つか、事情はあるにしろ、鈴莉って外から見たら「子供を捨てた親」と言う立場なので
なんかUMAと周辺の対応がちとやりすぎと言うか、がんじがらめと言うか……下手したら
メチャクチャ身勝手な措置では?
人物認識阻害なんて、音羽さんが聞いたらぷんぷん怒りそうな感じ。
129:名無しさん@初回限定
06/11/20 22:26:50 bsSKhXeV0
>温泉の人
>>本編がせっかくコメディ路線でやってるのに、何でこんな鬱展開にしてんだ自分;
てか、麻雀のシーンで何気にネタしてるやんwwww
130:名無しさん@初回限定
06/11/20 23:57:14 Pajlidb+0
GJ。
・・・暗っ!(w そして、御薙先生酷っ!(ww 伊吹相手だったらどうなっていた事やら。
でも、UMAの今回の動機って人を傷付けない為の制御が第一目的で、
追加で人助けが出来たらいいなあぐらいじゃなかったっけ。
進路まで決めているおかーさま空回りしているような。
131:世の中甘くないno
06/11/21 22:02:53 XnjYFwu50
投稿乙です。
上手いです。上手すぎますよ温泉の方。
特に不幸展開がいいですねえ。春姫と杏璃の不幸っぷりに背筋がゾクゾクしますよ。
……でもこれ、やけに気になるところで切れてますね。
続きが気になる。
>>100
100様、有難う御座います。
>校舎と周囲の学生は無事か!?
学生は兎も角、校舎は無事ではありません。秘宝事件冒頭以上の大破壊です。
132:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:04:44 XnjYFwu50
……さて、伊吹と小雪が遭遇する少し前、高等部二年の教室を訪れようとする二つの影があった。
「御免ね、葵ちゃん。わざわざ案内してもらっちゃって」
「いえ、不慣れな方を案内するのは当然のことですから」
雄真と葵である。
実は春姫に会う為に彼女のクラスへ行こうとしたのだが、勝手が分からない為、こうして葵に案内して貰っているのだ。
「雄真さんは、神坂先輩とお知り合いなのですか?」
と、葵。
中等部一年の葵ですらその名を知るほど、春姫は有名人らしい。
「そうだよ。散々お世話になっておきながら、こんなことになっちゃったからね。これから謝りに行くんだ」
雄真は、頭をかきつつ何所かぼやく様な口調で答えた。
とはいえ、一体どんな顔をして会ったら良いものやら見当もつかない。
―取りあえず、謝って謝って謝まりまくるしかないだろうな~
転科前の夏休み、雄真は春姫にさんざんお世話になった。
……そりゃあもう、頭が上がらないほどに。
夏休みの間、春姫は三日とおかず雄真に会い、魔法科での注意事項やら何やら色々教えてくれたものだ。
133:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:06:21 XnjYFwu50
が、貴重な夏休みを割いてまでして教えてくれた情報、その大半は高等部ではなく中等部に転科したことにより、無駄となってしまった。
……本当に、春姫には悪いことをしたと思う。
何しろ、結果として春姫に無駄骨を折らせた上、騙したことにもなるのだから。
故に、お詫びの意味も込め、こうして態々やって来たのである。
「こんにちは~ 春……神坂さんいますか?」
教室の生徒達は、見知らぬ者―それも中等部生―の突然の訪問に一瞬不審の目を向けるが、直ぐに男子生徒の一人がやって来て応対してくれた。
「君達は?」
「あ、中等部一年の小日向雄真と御門葵です。
神坂さんに用事があって」
「ああ、君が小日向雄真くんか」
雄真が名乗った途端、最初の事務的な口調が柔らかく友好的なものへと変化する。
「?」
初対面の相手にやけに親しげな態度を示され、雄真は首を傾げた。
それを察し、男子生徒は苦笑しつつ訳を教えてくれる。
「ああ、失礼。君の話は神坂さんと柊さんから良く聞いてるよ。
だから不思議と初対面の気がしなくてね。
……何せ、クラス中に触れ回っていたからねえ」
134:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:08:38 XnjYFwu50
「はあ……」
雄真も男子生徒同様、苦笑いで応じる。
春姫は兎も角、杏璃はどんな噂を流していたものやら……
「しかし、うちのクラスにこれなくて残念だね。
二人とも、君が来ないと知って大層落ち込んでいたよ?」
「仕方ないですよ。それに、正直中等部でもついていけるかどうか」
雄真は彼の言葉を社交辞令と受け取り、軽く返す。
(実際、葵の魔法を見て早くも先行きを不安視してもいるのだ)
「そんなことないさ! だって君は天才なのだろう?」
「は? 違いますよ!?」
相手の『天才』発言に、雄真は目を白黒させて慌てて否定する。
……本当、魔法科に来てからというもの、今まで縁も縁も無かった称号のオンパレードである。
「しかし、あの二人に認められるとは大したものだよ?
特に柊さんからのライバル認定は優秀さの証、勲章みたいなものさ」
が、男子生徒は大真面目だ。
まあ無理も無い。
春姫は魔法科全体で見ても群を抜く実力者であるし、杏璃とて三位以下をぶっちぎりで引き離して次席の地位を不動のものとしている。
要するに彼女達は、学年では飛びぬけた存在、ということだ。
その二人がああまで褒めるというならば、誰しも『小日向雄真は天才だ』と思うだろう。
135:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:10:36 XnjYFwu50
雄真は、魔法科における二人の存在の大きさをあらためて実感した。
「買い被りですよ。俺にそんな才能は無いです」
が、それとこれとは話が別である。
後で『期待外れ』なんて陰口叩かれたら敵わない。
雄真は、後で二人を小一時間程問い詰めようと心に決めつつ、あらためて自分の才能を否定した。
「それに、君は御薙教授の息子さんなのだろう?」
「! 何故それを!?」
何故だ? 何故ばれた!?
秘密にしておこと決めていたことをあっさり暴露され、雄真は狼狽する。
「……いや、柊さんがクラス中に吹聴して回っていたよ?」
「杏璃~!!」
口止め料、とかいって夏休み散々荷物持ちとして連れまわした挙句、ジャンボパフェまで奢らせた癖に!
「今、杏璃は何処に!?」
直ぐに制裁を与えなければならない、と杏璃を探す。
「柊さんなら、君達より前に訪ねて来た中等部の子を、神坂さんと一緒に何処かに『連行』して行ったよ。
確か、君達と同じ一年だと思ったが……」
136:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:12:30 XnjYFwu50
「……『連行』ですか?」
随分穏やかでない表現に、首を傾げる。
「そう表現したほうが、その時の状況を良く表していると思うね」
額に汗を流しつつ男子生徒は答えた。
「杏璃なら分かるけど、春姫が?」
そんな状態の春姫が想像出来ず、さかんに首を捻る。
「……いや、君が驚くのも無理は無い。
僕達もあんな神坂さんは始めて見た」
「…………」
見てはいけないものを見た、という様な表情で話す男子生徒だが、どうも雄真には今ひとつ信じられない。
故に、話半分で聞く。
そして誰か他に知り合いは……と教室を目だけ動かして見渡した。
が、誰も見知った顔がいない。
「そういえば、信哉と沙耶さんは?」
偶然か? と流石に疑問を抱きつつ、取りあえず聞くだけ聞いてみる。
「あれ? そういえば、さっきまでここにいたのだけれど……
おかしいなあ、特に上条くんの方は、とても動ける様な状態じゃあなかったのだが」
……雄真の接近を感知し、慌てて逃げ出したのだ。
137:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:14:16 XnjYFwu50
「? 信哉、どうかしたのですか?」
「一年の式守さんに、重力魔法を喰らったのさ。
……しかし、流石甲種特待生だね。
マジックワンドも使わずに、あれ程の短詠唱であんな高度な魔法を発動するなんて」
感に堪えない、といった表情で話す。
彼は、魔法式理論に優れており、そこを見込まれて一芸入試で入学したのだ。
その彼から見ても、伊吹の魔法式は素晴しく美しいものだった。
「はあ……って! 伊吹も来たのですか!?」
「ああ、君に合いに来たらしい。彼女からも注目されているなんて、凄いな。
君が中等部に転科したと聞いて慌てて駆け出していったから、君のクラスに行けば会えるのではないかな?」
「……そうですね」
もし明日香と一緒になったら……と想像し、背中に冷たいものが流れる。
―あの二人、如何考えても『混ぜるな! 危険!』だよなあ。
巻き込まれたら敵わないので、なるべくギリギリに帰ろうと心に決める。
―クイクイ。
「有難う御座いました。では」
―クイクイ。
「ああ、君も大変だろうが、頑張ってくれ」
138:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:16:33 XnjYFwu50
そう言って、彼は手を差し伸べる。
「貴方も」
雄真と彼は固く握手を交す。
……もし高等部二年に転科していれば、彼とは友情を分かち合えたかもしれないな、と思いながら。
―クイクイ。
「……何かな? 葵ちゃん?」
先程から、何やら盛んに自分の服を引っ張る葵に、雄真は不思議そうに尋ねる。
「ははは、仲が良いなあ」
そんな二人を見て、男子生徒は微笑ましそうに笑った。
「いやあ、クラスメートですから」
「ははは、隠さなくても良いさ! 君は同志なのだろう?」
「……は?」
いきなりの同志認定に首を捻る。
「いやいやいや、言わずとも良いさ。僕にも、普通科に初等部生の恋人がいるからねえ」
「…………」
前言撤回。
139:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:18:19 XnjYFwu50
……どうやら、彼とは永遠に友情を分かち合えそうに無かった。分かち合えてたまるか。
「あの!」
「!? ……ああ、御免御免。で、なんだい?」
思わぬ葵の大声に、雄真は些か驚きながら尋ねる。
「先程から、とても凄い魔力がこの校舎内で連続して発生しています」
「?」
「誰か凄く強力な魔法使いが、校舎内で戦ってるみたいです」
その性質上、魔法科校舎は強力な結界で覆われている。
進入防止、防音、対魔力……様々な結界が幾重にも張り巡らされているのだ。
故に、大概の魔法使いはこの校舎内では手も足も出ない。
が、その強力な結界をもってしても尚、抑えきれない程の魔力が発生している、と葵は訴える。
「逃げないと危険です!」
明日香の暴走時とは比べ物にならない程、緊張した声。
が、男子生徒は『何を馬鹿な』と言った風情で、端から信じていない様だ。
「気のせいじゃあないかい? 僕には何も感じないし、クラスの皆も何も感じていない様だよ?」
「でもっ!」
140:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:20:15 XnjYFwu50
「……俺は葵ちゃんを信じるよ」
この子がこんなに必死になるのだから、本当だろう―雄真はそう判断した。
「雄真さん……」
「いやあ、お熱いなあ。しかし仮に彼女が正しいとしても、大丈夫だよ。
この校舎の魔法結界は相当な強度だからね……おや? まさか!?」
どうやら、他にも異様な魔力に気付く者が出始めた様だ。
彼女達が騒ぎ出したことにより、彼も漸く葵の言葉が真実だということに気付く。
(つまり、葵はこのクラスにいる誰よりも早く察知したことになる。
……主席と次席が不在とはいえ、高等部二年の誰よりも、だ)
「こっちに近づいてきます」
「マジですか!?」
何故、こうもピンポイントで不幸が!?
そう己の不幸を呪った瞬間、目の前の壁が崩れ出した。
「! 危ない、葵ちゃん!」
とっさに葵を抱えて跳躍する。
―ドサッ
141:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:22:30 XnjYFwu50
「あいたた……ん?」
二人分の衝撃に軽く顔を顰めるも、ふと自分の前に人が立っていることに気付き、顔を上げる。
……そこには、険しい顔をした伊吹が立っていた。
「伊吹! もしかして、これはお前がやったのか!?」
「……小日向雄真、貴様何をしている」
―え~と、小日向雄真→小日向の兄→雄真……って感じで友好度アップしてきたのに、いきなり初期状態に逆戻りですか?
どうやら豪くお怒りの様だ。
が、伊吹が何故ここまで怒っているのか、てんで見当がつかない。
……そこに何所からかひょっこり小雪が現れ、一言。
「流石は雄真さんですね~ 転科初日から、もう女の子一人ゲットですか?」
「? ……げっ!?」
指摘されて、初めて雄真は気付いた。
自分が、まるで葵を押し倒しているような体勢であることに。
「ごっごめん!」
「いえ……」
流石の葵も、顔が真っ赤である。
「……貴様には、節操というものがないのか?」
142:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:25:04 XnjYFwu50
「伊吹! それはお前の誤解だ! 葵ちゃんとは別に……」
地獄の底から響く様な伊吹の声に、慌てて雄真は弁解する。
「え~ありますよ~ だってこの子可愛いですもの。ほらっ!」
「御願い、小雪さん黙って!?」
小雪の余計な一言一言に、雄真は寿命が縮む思いだ。
が、彼の必死の願いも小雪には届かず、更なる爆弾が投下される。
「でも良かったですね~伊吹さん?」
「へ?」
一瞬、小雪が援護してくれるのか、と思ってしまった。
……所詮儚い期待に過ぎなかったが。
「だって、雄真さんに『そっちの気』があるなら、伊吹さんにも充分チャンスがある、ってことですよ~」
―ブチッ!
あ、切れた。
その一言が止めとなり、伊吹から溢れんばかりの怒りのオーラが発生する。
そのプレッシャーは、明日香とは比べ物にならない
「貴様等全員……」
「い、伊吹? 話し合おう。暴力からは何も生まれないぞ?」
143:支援
06/11/21 22:26:28 0OeML/hI0
144:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:27:10 XnjYFwu50
多分無理だろうな~と思いつつも、何とか説得を試みる。
……だって、死にたく無いから。
(明日香の時は、流石に死にはしないだろうと踏んでいた)
「問答無用!」
その言葉と共に、魔方陣が空中に出現する。
……それを見て、雄真は葵を抱えて逃げ出した。
「小雪さん! 何とかして下さいよ!?」
雄真は、自分の前を飛んでいる小雪に向かって叫んだ。
が、小雪は膠無く答える。
「無理です」
「何で!? 伊吹に対抗できる人なんて、小雪さん位のものですよ!?」
が、雄真の必死の頼みにも関わらず、小雪は首を縦に振らない。
加えて、どことなく拗ねている様にも見える。
「……雄真さんのせいです」
「?」
「雄真さんが伊吹さんに力を与えちゃったから、私一人では対抗するのが難しいのですよ」
「そんなこと知りませんよ!?」
145:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:29:29 XnjYFwu50
全く身に覚えの無い言葉に、雄真は堪らず悲鳴を上げる。
正直、小雪の冗談に付き合っている様な余力は無いのだ。
「雄真さんは嘘つきです。 ……伊吹さんに、魔力をあげたじゃないですか」
が、小雪は頬を膨らませ、やはり拗ねた様な口調で尚も雄真を責める。
「意地悪しないで下さいよ、小雪さん! 俺、このままじゃあ本気で死にます!」
「……秘宝事件」
「へ……あ!? もしかして!!」
雄真の何かを思い出した様な口調に、小雪は初めて首を縦に振った。
秘宝事件の最終局面において、雄真は魔力回路が焼き付く寸前の伊吹に対し、自分の魔力を大量供給することによりその命を救った。
が、これには伊吹に思わぬ副産物を与えていたのだ。
「その雄真さんの魔力が、伊吹さんの魔力を増幅・補強しているんですよ。
……ほんと、雄真さんは規格外です」
呆れた様に、小雪は解説する。
……いや実際、とんでもないことなのだ。
秘宝事件で雄真が使った魔法は、『一人で大量の魔力供給をしなければならない』こともさることながら、『自分の魔力を相手の魔力と近いものに変換しながら供給しなければならない』というとんでもない神技を要求する。
これだけでも超高難易度魔法だというのに、その上対象者の魔力回路まで強化するとは……
146:名無しさん@初回限定
06/11/21 22:30:45 jhlR2u570
支援
147:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:31:09 XnjYFwu50
「ああ、だから式守先輩の魔法に、別の方の魔力を感じるのですか」
先程から黙りこくっていた葵が、会話に加わる。
葵は、先程から伊吹の発する魔力と魔法に疑問を感じていたのだ。
伊吹の魔力には、『本人以外の魔力』が混ざり合っていた。
その『本人以外の魔力』は、伊吹の魔力の中にまるで血管の様に張り巡らされ、伊吹の魔力を増幅し、おまけに魔法式の穴まで塞ぎ、補強している。
……こんな現象、今まで見たことも聞いたことも無い。
いや、御伽話でならば似たような話しを聞いたことがあるが、しかしそれは……
「良く分かりましたね? 将来有望ですよ」
葵の言葉を小雪は賞賛する。
伊吹の魔力に雄真の魔力を感じたのは、一流の才能であることの証。
そしてただ漠然と感じるのではなく、雄真の魔力が伊吹の魔力に血管の様に張り巡らされていることがはっきり『見える』のは、超一流の証だ。
「さすがは雄真さんです。目が高いですね?」
「って、何故そこで俺の名が!? ……いやそれより今の話が本当だとすれば、今の伊吹は以前の伊吹では無いと?」
例えて言うならば、伊吹・改かはたまた真・伊吹か……
「今の伊吹さんは、エンジンにターボチャージャーを付けた様なものです。
ザクだと思って攻撃したら、緑色のグフB3だった様なものです。騙されました」
「……エンジンは兎も角、最後はいまいち意味不明なのですが」
148:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:33:08 XnjYFwu50
て言うか、ザクって何?
「ぶっちゃけてしまえば、『こんな筈じゃあ無かった』ってことですよ」
「……それって、もしかして『ピンチ』ってことですか?」
「正解です」
魔法攻撃に対抗するには、大きく分けて三つの方法がある。
一つは、相手の魔法の綻び―必ずある―を突いて魔法式を破壊、魔法を無力化する。
一つは、相手の魔法を相殺する。
一つは、相手の魔法を防御魔法で防御する。
今までならば、魔力的にはやや劣っていたものの、小雪は技術的・精神的優越から互角以上に伊吹と渡り合えた。
が、現在の伊吹は雄真によって飛躍的にレベルアップしている。
故に、
魔力の綻びを突こうにも、雄真の魔力が伊吹の魔法を補強することにより難易度が増し、
魔法を相殺したり防ごうとしようにも、雄真の魔力が伊吹の魔力を増強することにより魔力差が広がっている。
……早い話が、『お手上げ』状態なのだ。
故に、こうして防御しつつ逃げている。
「だから、全部雄真さんが悪いのです」
149:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:35:05 XnjYFwu50
「……小雪さん。もしかして、凄く怒ってます?」
さっきから気になっていたことを、恐る恐るぶつけてみる。
「そんなこと無いですよ? 伊吹さんに負けたり、契約がパーになったりしたことなんて、全然全く気にしてません。へっちゃらです。
だから雄真さんは、遠慮なく中等部で女の子を侍らせていてください」
「やっぱり怒ってるじゃないですか! 別に俺は、女の子を侍らせてなんかいないですよ! それに契約って!?」
「知りません。意地悪で嘘つきな雄真さんなんて、伊吹さんにやられちゃえばいいんです」
「死にますって!?」
さり気無くトンデモナイことを仰る小雪さん。
……どうやら伊吹だけでなく、彼女も相当怒っている様だ。
「では雄真さん、さようなら~ もし生きていたら、また御会いしましょう」
「あっ卑怯者! 全てを俺に押し付けて逃げる気ですか!?」
別れを告げると、小雪はスピードを上げて飛んでいってしまった。
後に残るは、雄真と葵の二人だけ。
……そして、後ろからは雨霰と飛んでくる魔法攻撃と、鬼の形相の伊吹。
「待て~!!」
とりあえず雄真に残された手段は、逃げて逃げて逃げまくることだけだった。
150:温泉の人
06/11/21 22:36:39 KPBH67Ua0
私怨ノシ
151:はぴねす!SS06『世の中やっぱり甘くない』その6
06/11/21 22:37:33 XnjYFwu50
「畜生! 何で俺ばっかりこんな目に!?」
その後、葵をお姫様抱っこで抱き抱えながら、伊吹の魔法攻撃から必死に逃げ回る雄真の姿が高等部中で目撃された。
……まあ多くの人間は、とてもそれ所じゃあなかったが。
SS投下終了。
御支援感謝です。ではまた。
152:温泉の人
06/11/21 22:49:49 KPBH67Ua0
つかもうこれ勝てる奴いねーだろwwwwwwww乙です!
こんな洒落にならん事態においてもなおいじらしい乙女心発揮する先輩(;´Д`)ハァハァ
遅ればせながらレス↓
>>128 >>130
実際「やっぱり甘くない」第1話の冒頭で感じたのがそういう鈴莉の身勝手さでしたね。
口ではもっともなこと言って春姫や杏璃説き伏せてるけど、じゃあ自分は何なのかって。
ただ認識阻害はやりすぎたかなとw まぁ後悔はしてません。
>>129
ちゃんと気づいてくれた人がいたとはwwwwwwww
これだけのためにわざわざまつりさん使って積み込みロンで台詞確認しましたw
>>131(「甘くない」の方)
「甘くない」の方こそ、毎回話への引き込み方がうまくてびっくりですよーw
何か気になる展開で切っちゃいましたが、この話は続き書くつもりはないです。
放置するなり続き補完するなり、そこは読者の皆様にお任せするってことで。
ではではノシ
153:名無しさん@初回限定
06/11/21 22:53:23 Umhx8QWo0
GJ
>そういえば、信哉と沙耶さんは?
ヤる前は上条さん、ヤった後は沙耶ちゃん、FDで沙耶ちゃん→沙耶
154:名無しさん@初回限定
06/11/21 23:11:05 8P2Zrovh0
乙~
パラレルが混じって、シリアスやらコメディやら何が何やら(笑
いやもう、伊吹にUMAの魔力加わってしまったら誰にも止められんでしょ。校舎穴だらけ(w
>その後、葵をお姫様抱っこで抱き抱えながら、伊吹の魔法攻撃から必死に
>逃げ回る雄真の姿が高等部中で目撃された。
ただでさえ有名だったUMAが、自分の知らないところでどんどん有名人に。しかも、ロリ付き(w
にしても、緑色のグフってまた分かり難い例えを(ww
155:ポレ
06/11/21 23:39:33 /cl+sY6q0
流れぶった切ってスマソがパルフェとショコラを一気にクリアした
勢いでSS書いてみた。話やネタがガイシュツだったらスマソ
パルフェの玲愛Trueエンディングの話からです
156:パルフェSS「或る夜の出来事」その1
06/11/21 23:42:22 /cl+sY6q0
火曜の夜、翌日はファミーユの定休日。本来ならかりそめの開放感に包まれるはずのこの日、
高村 仁は甚だ憂鬱であった―そう、今宵は悪夢の饗宴が待ち受けているから・・・
電車をおり目的地へと急ぐ二人、高村 仁と花鳥 玲愛はやや憂鬱そうに寄り添い歩いている。
どちらかというと仁のほうがより憂鬱な表情で玲愛のほうはそれほどでもない。
玲愛が何かと話しかけてくるが、仁はうわの空な返事ばかり返してきた。
「・・・仁、ねぇ聞いてる?」
「あ、ああ・・・」
「もうすぐキュリオに着くわね・・・」
「な、なぁ・・やっぱ俺は部外者みたいなもんだし参加しないという方向で・・・」
「 な ん か 言 っ た ??」
有無を言わさぬ玲愛の口調に圧倒される。
「まさか今更関係ないとか言わないわよね・・・まさかあの野獣の群れに私を一人置き去りにして
自分は一人のうのうと惰眠をむさぼるとか、わ・た・しの仁はそんなこと考えないわよね」
「は、はい・・・」
「 よ ろ し い 」と玲愛が小悪魔のような視線を向ける。
結局逆らえそうもない。もはやこの過酷な運命を受け入れるしかないと仁は悟った。
157:パルフェSS「或る夜の出来事」その2
06/11/21 23:43:59 /cl+sY6q0
「お帰りなさいませ、旦那様、奥様・・・お待ちしてたんですよ、フフフフ♪」
彼ら二人の処刑場、キュリオ本店。意を決し扉を開いた仁たちを待ち受けていたのは、玲愛とは
一味違ったツインテールが印象的なメイドさんであった。
「こ、こんばんは・・・」
「ご、ご無沙汰してます・・・美里さん」
「やだ~玲愛ちゃん、そんな他人行儀な~。あっ、高村さん、遠路はるばるお越しいただき
ありがとうございます。今夜は楽しんでいってくださいね♪」
「は、はぁ・・・」
向こうは楽しめるだろうが、こちらは楽しめそうもないよなぁと仁はまたもや暗澹たる気持ちに
させられた。そもそも送別会なのに楽しめというのも変な話ではあるが・・・
「あーっ、やっときたか~早く中に入りなよ」
活発できびきびとした動作が印象的な女性が声をかける。彼女は以前見覚えがある。
いつもの彼女には似合わず、今日はにやけ顔がとまらない様子だ。
―それも無理はない。仁は先日この女性の前でとんでもない失態を演じてしまったのだ。
(帰ろっかな・・・)
仁はますます憂鬱になってきたが、ここまできたからには覚悟を決めるしかない。
158:パルフェSS「或る夜の出来事」その3
06/11/21 23:44:59 /cl+sY6q0
「あっ、玲愛、高村さん、お疲れ様~」
今日の最大の要注意人物、川端 瑞菜。ここに来るまでにどうやって彼女を押さえ込むか玲愛と
何度も話し合ったものだ。そして出た結論―いちおう釘は刺しておくが最終的にはあきらめるしかない。
彼女の性格からあることないこといろいろと吹聴しそうだが、今更どうしようもない。
ただ、二人は瑞奈という名の北風から身を守り続けるしかない哀れな旅人でしかないのだ。
それはまるで禅の修業かと思われるような苦行となることは目に見えていた・・・
「あっ、瑞奈お疲れ。・・・ちょ、ちょっと話があるんだけどいい?」
「はいはい、お二人様ごあんな~い♪さぁとっとと行った行った!」
瑞奈に釘を刺そうとした玲愛であったが、その企みは目の前の女性 ― 大村 翠にあっさりと
阻まれる。
「あっ、ちょ、ちょっと大村さん・・・」
仁は無駄な抵抗を試みる傍らの愛しき女性を見ながらため息をついた。
さあ地獄の饗宴の始まりだ。長い長い夜になりそうだ・・・
「みなさん、たいへん長らくおまたせいたしました!それではこれから花鳥 玲愛ちゃんの送別会を
はじめまーす」
そう、今日は玲愛の送別会。高村 仁とかいうどこぞの馬の骨に無理やり?引き抜かれた玲愛
との別れを惜しむ・・・という大義名分とはうらはらに実態は楽しく熱々のカップルを冷やかす会である。
ただでさえキュリオの老練な先輩方からみるといじりやすいキャラの玲愛に加え、キュリオ本店に
殴りこんで「玲愛をください!」となぜかバラさんに宣言してしまった伝説を持つ高村 仁との
黄金コンビは端からみるにあまりにもおいしすぎた。二人をからかうのが楽しみで仕方がないらしく、
キュリオ本店の精鋭スタッフ達はこの集まりに異様なまでの情熱と期待を傾けているようだった。
159:パルフェSS「或る夜の出来事」その4
06/11/21 23:45:44 /cl+sY6q0
最初、仁はなぜ自分まで招待されたのかわからず、当然ながら一応部外者ということで固辞した。
しかし、百戦錬磨のキュリオ本店スタッフが獲物を逃すはずなどない。キュリオ2号店の結城 大介
とかいう店長から「どういう形であれ、うちのファミリーを引き抜くんだからきっちり落とし前つけにこいや!
来ないと認めん!!」
などという有難い手紙を受け取り(なぜか女性が書いたような字だったのが気にかかるが)、これまでの
経緯上出席せざるを得ないような雰囲気になってしまった。
また玲愛からも 「はぁ・・・どうせ散々からかわれるんだろうなぁ・・・。まさか私がこんなことになるだ
なんて誰も思ってもみなかっただろうから・・・あっ、そうだ!私一人よりも二人でからかわれるほうが
対象が分散していいわよね♪せっかくだし一緒に行きましょうよ。それとも、まさか私一人を生贄に
する気?仁はそんな事しないわよね?ちゃんと責任とってくれるよね」
などと脅しをかけられ、身から出た錆とはいえ「行かない」という選択肢を選ぶことはもはや不可能な
状況に陥ってしまったのだった。
さて、そんなこんなで無事始まった玲愛の送別会だが、こうしたことには驚異的なまでの情熱を
傾けるキュリオ本店の精鋭スタッフがよりによりをかけてセッティングしただけあって、本来しめやかな
はずの送別会にしては妙に華やかで、奇妙な会場となっている。正面の垂れ幕には
「高村 仁さん 花鳥 玲愛さん お幸せに」
などとまるで結婚式場みたいな文言が掲げられており、ますます異空間の装いを深めている。
160:パルフェSS「或る夜の出来事」その5
06/11/21 23:46:48 /cl+sY6q0
そして当然ながら、宴?の主賓たる二人に対し、強豪店キュリオの猛攻はとどまるところをしらない―
「くーーっ、昔はあんなにツンツンしてた朴念仁の玲愛がまさかこんなことになるとはね・・・
かわいい顔してあ・な・た、やるもんだねと♪このこの~♪」
いつもは頼れる先輩の大村 翠が激しく絡んでくる。今日は彼女にしては珍しく相当酒のまわりが早い。
採用時から何かと目をかけてきて自分の後継者(いろんな意味で)と見込んできた玲愛の門出(しかも自分よりも早く)
ということで感慨もひとしおなのだろう。
「お、大村さん・・・ペース早いですね・・・」
さっきから玲愛と仁は圧倒されっぱなしだ。
「玲愛さんには先をこされちゃいましたねぇ~。一番意外な人に先を越されちゃいました」
とおっとり刀で桜井 真子が言う。なんだか彼女と話しているとこちらまでほんわかした気分に
なってくる。
「ほんとだよ・・・あ~あ、うちも向かいにライバル店でもできないかなぁ。そうすればあたしにもなんか
ロマンスでも起きるかもしれないのになぁ」
と翠がニヤニヤと2人を横目でみながらからかう。
「あーあ、大介さんも高村さんみたいに私のこと奪いに来てくれないかなぁ・・・玲愛ちゃんいいなぁ」
などと真名井 美里もからかってるんだか本気なんだかよくわからないことを言い出し、玲愛はまるで
熟したトマトの様に真っ赤な顔であれこれと抗弁する。一方仁の方といえばハハハ・・・と乾いた笑いを
浮かべるしかできないでいた。
キュリオの女性陣の直接攻撃にたじたじの仁であったが、間接攻撃もまた油断のならないものがあった。
最大の要注意人物、川端瑞奈が仁たちとは少し離れた席で酔った勢いも手伝い、あることないこと
流言飛語を放つからだ。同じく要注意人物である3号店店長、板橋氏が多忙のため来られなかったのは
不幸中の幸いではあったのだが・・・
161:パルフェSS「或る夜の出来事」その6
06/11/21 23:47:46 /cl+sY6q0
「それで~、イブの夜、チャイムの音やら物音やらうるさくて廊下にでてみたらですね」
「わくわく」
「そわそわ」
瑞奈の話に、他の店員よりはかなり幼く見える女性と眼鏡がチャーミングな女性が熱心に聞き入る。
結城 すずと橘 さやかだ。
「玲愛と高村さんが廊下でチューしててですね。私もうホント困りました。しかも玲愛ったら私に気づいても
やめようとしないんです♪まるで見せ付けるかのように」
「はぁ。玲愛ちゃん大胆です・・・お、同い年なのに・・・」
「は、はわわ・・・そ、それからそれから?」
「ちょ、ちょっと瑞奈(///) な、何あることないこと言ってるのよ!す、すずさんも橘さんも鵜呑みにしない!」
「あっ、玲愛・・・ごめん、つい口が滑って・・・でも安心して。私は事実しか言ってないわよ~」
「うむ、誠に興味深い話だな。川端君続けてくれたまえ」
女性陣の中にグループの総帥、結城 誠介氏もにこやかに交じる。
「ゆ、結城店長!か、勘弁してください・・・ちょ、ちょっと瑞奈~」
「瑞奈~、玲愛はあたしが抑えとくから、早く続き続き~♪」
「ちょ・・大村さん、離して~~~~」
玲愛の悲鳴が響き、夜は更けていく・・・
162:パルフェSS「或る夜の出来事」その7
06/11/21 23:48:45 /cl+sY6q0
玲愛の悲鳴をよそに、新郎こと高村 仁は一応安息の場所を見つけていた。
それは壁際。大介店長、榊原ら男性陣の集まり。そこでは驚くほど穏やかに時が進行している。
最初は例の手紙の文面などからキュリオ2号店の大介店長を怖い人だと思っておっかなびっくり
だった仁であるが、実際話してみると気さくで何でも話せる頼れる兄貴のような人だった。
今は亡き仁の実兄とは全然ちがったタイプではあるが。
「うーん、そんな手紙出した覚えないんだけどな・・・おおかた翠の仕業かな。もしかしてこんな字
じゃなかったか?」
「あっ、そうそうそんな字です!」
「やっぱ翠の字だな。あいつ昔俺の筆跡をまねて俺名義の手紙を偽造したことがあってな。
あいつの字も特徴的だからすぐわかる。まったくあの野郎・・・」
「なんだ、偽物ですか・・・とほほ」
「ははは、それにしてもバラさんから聞いたよ。玲愛ちゃんのためにうちに殴りこみに来たときの話。
いいなぁ、俺そういうの大好きだよ。まるで映画みたいだな」
「う、うう・・・ち、違うんです。ちょっとセリフを間違えただけなんです・・・」
「私の人生でも3番目に驚いた出来事でしたな。よもや店長に間違えられるとは・・・」
バラさんこと榊原氏がぼそりと語る。今日のご馳走は彼が腕によりをかけて作ったものだという。
以前義姉と食べに行ったトリトンホテルのディナーを凌駕するその味に、彼の凄みを感じる。
そして、なぜこんな人が、最近有名になったとはいえ、街の一喫茶店で働いているのか仁には
不思議でならなかった。
163:パルフェSS「或る夜の出来事」その8
06/11/21 23:49:42 /cl+sY6q0
「まぁバラさんならここの店長みたいなもんだ。あながち間違いでもない」
「ぼっちゃん、何をおっしゃいますやら・・」
「ははは、それより、高村さん。あんたは確か大学休学中の21歳と聞いたが。」
「ええ、そうですが・・・」
「凄いな・・俺なんかそれぐらいの年のころはせいぜい親父のスネかじってたのが関のヤマ
だったのに、あんたはその年で起業し、自分の店を繁盛させてるんだからな。」
「いえ、そんな・・・皆ファミーユの仲間達のおかげです。俺一人では全然だめでした」
「いえ、そんなに謙遜しなくてもいいと思いますよ。人徳もまた店長の資質の一つですからな。
それよりも、高村さんはまだ大学生だそうですが、ファミーユも軌道に乗った今、これからどうする
おつもりですか。また大学生活に戻るのですかな?」
「・・・俺にはまだ夢がありまして」
玲愛以外には照れくさくてあまり話しにくい夢だが、なぜかこの二人の前では素直に話す
ことができた。玲愛と共に焼け落ちてしまったかってのファミーユを取り戻す夢を。
これからの彼の行き先を。
「そうか、高村さんもいろいろ苦労してるんだな・・・だからそんなにも強いのか。うん、俺は
応援するぜ!なんか困ったことがあったらいつでも俺に相談してくれ。できるだけ協力するぜ。
それと、玲愛ちゃんの事よろしく頼むわ。俺たちのファミリーだからな。
ま、あんたならきっと幸せにしてくれると思うけどな」
「結城さん・・・ありがとうございます」
「う、ううっ、お兄ちゃんと高村さんがなんか熱い会話を交わしてる。なんだか近寄れない・・・
高村さんと話したことないから話してみたかったのにな・・・」
「ううっ、からかいたいのにからかえない・・・く、悔しい・・・」
男たちの真剣な会話にいつもと違った壁を感じるすずと瑞奈であったとさ。
164:名無しさん@初回限定
06/11/21 23:50:19 2NPeDbpr0
sien
165:パルフェSS「或る夜の出来事」その9(一応完結)
06/11/21 23:52:37 /cl+sY6q0
そして、夜も更けていき・・・永遠かと思える宴もいつかは終焉のときを迎えるわけで・・・
なんだかんだいって今日は来てよかったなぁと仁が思っていると、そのときは唐突にやってきた。
「さて、宴もたけなわですが」
司会進行役の美里が、もはや当初の目的から激しく逸脱したこの送別会の終焉を伝える。
微妙どころじゃなく言葉の使いどころを間違えているのも天然ボケの美里らしい。
「そろそろ時間も時間ですので最後に新郎新婦に誓いのキスをしていただいて、お開きに
させていただきたいと思います。それでは高村さん、玲愛ちゃんよろしくお願いしまーす♪」
美里が悪戯っぽく非情なる宣告を行う。場は大いに盛り上がり、「キ・ー・ス!、キ・-・ス!」
などと大合唱が沸き起こり、キュリオの組織力の強固さをみせつける。
「ちょ、ちょっとみんな冗談でしょ・・・ね、ねぇ大村さん目が座ってるんですけど・・・あっ、板垣店長!
なぜここに・・」
「フフ・・・期待しているよ。君達の絆を見せてくれたまえ」
なぜか板垣店長も輪に加わり包囲を強める。仁と玲愛は完全に罠にはめられたことを悟った。
もはやこの場から無傷で逃れることは不可能。
「こ、これがキュリオ本店の真の恐ろしさか・・・」
仁はつぶやく。もはや退路はなく、道は前方にあるのみ・・・
「やっぱ・・来るんじゃなかったかな・・・」
後日、「ねぇねぇ、仁さん玲愛ちゃんの送別会どうだった?キュリオの人とうまくやれた?」と無邪気に
聞いてくる悠飛の言葉に何も答えず、黙々と半熟オムライスを作り続ける仁の姿があったのは
言うまでもない。
~Fin~
166:名無しさん@初回限定
06/11/22 00:49:08 42MVx6ht0
神降臨レベルでGJ!!!!
だっただけに最後の「悠飛」が惜しまれる……
167:名無しさん@初回限定
06/11/22 17:30:48 ixcUqne50
つか「悠飛」って誰の事を言おうとしたんだ
家庭用のオリキャラかと思ったけどそれも違うみたいだし
仁をさん付けで呼ぶのっていたっけ?
168:『世の中甘くない』の者です
06/11/22 17:32:46 TsH5xpf00
ポレ様、投稿乙です。
思わず本編やりたくなりましたよ。
>>162
温泉の人様、有難う御座います。
>実際「やっぱり甘くない」第1話の冒頭で感じたのがそういう鈴莉の身勝手さでしたね。
この世界の鈴莉さんにとって、雄真は未だ10年以上も昔の子供のままなのですよ。
この鈴莉さんの思考(妄執とも言う)と、雄真の『力』がこのお話の柱です。多分、きっと。
……けど、シリアス路線やると話が暗くなり過ぎるので、コメディにしました。
>>163
163様、有難う御座います。
>ヤる前は上条さん、ヤった後は沙耶ちゃん、FDで沙耶ちゃん→沙耶
情報有難う御座います。呼び方は難しい。
この世界の沙耶は雄真を『小日向様』と呼んでいます。
ちなみに以前は『小日向さん』でした。何故かと言えば……
>>164
164様、有難う御座います。
>いやもう、伊吹にUMAの魔力加わってしまったら誰にも止められんでしょ。校舎穴だらけ(w
伊吹は沸騰し易い上、沸騰すると魔法式が荒くなりますから、そこを他ヒロイン三人がかりで突けばなんとかなる……かな?
>校舎穴だらけ
ニヤリ(意味不明)
169:名無しさん@初回限定
06/11/22 20:42:55 7Lus39P50
>>155
GJ!
大介も仁も熱い男だよなー
>>167
由飛じゃね?
ルート外の時ってこの呼び方じゃなかったっけ?覚えていないが