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「はい、それじゃあ二人組作ってー」
「(…強制イベントキタコレ)」
こういうのがある度に猫田はそれを強く想う。
体育やその他の授業では誰かと組むのが日常ではあるが、その都度余る身の気持ちを考えた事があるのかと、猫田は体育教師に小一時間問い詰めたかった。
「(…それとも、実はコレ矯正イベントだったりするのかな……)」
猫田は考える。
現実逃避以外の何物でもないが、ともあれ、そうしている間は嫌な物を視なくて済むのだ。
そして皆がペアを組み終わった後に先生が声を掛けてくるのがゴールデンパターン。
そういえば、数える程しか通わなかった中等部の頃も……。
いやいや、結局嫌な事をフラッシュバックさせていると、改めて昨日観たアニメのオープニングを脳内再生させようとしたところで、声が掛けられた。
「あ…あの……猫田さん?」
はいはい、呼ばれて飛び出てねこにゃーでっす。
テンションとは真逆にいっそ楽しげに返事をする。内心でだが。
そして振り向こうとして、違和感に気がつく。
あれ…?体育の先生ってこんな声してたっけ……?
その疑問に対する答えは、猫田が振り向く事によって、すぐに目の前に提示された。
「も、もし…良かったらなんだけど、私と組んで貰っても…いいかな?」
「西…住さん……?」
声の主は教師ではなく、同級生の西住みほだった。
しかし、彼女がどうして…?
罰ゲーム?
そうでもなければ、とても自主的に自分とペアを組もうだなんて人は……。
自分を卑下する余り、みほの事を疑ってかかる猫田。
しかし、違うのだ。
「あ、嫌だったらいいんです!ごめんなさい!」
「え、あ、うぅん…」
一礼して去って行った彼女の背中は途方に暮れていた。
そう、彼女もまた、いわゆるぼっちだったのだ。
春先に転校してきて以来、既にクラス内で出来上がっているどの仲良しグループにも入れず、孤立していたのだ。
きっと、生来気の弱い子なのかもしれない。
そして、そんな子が今何をした?