みつどもえで百合 【2卵性】at LESBIAN
みつどもえで百合 【2卵性】 - 暇つぶし2ch186:青天白日の贈り物-⑰
11/07/16 01:16:41.01 2JsTocfO
~ 蛇足(ひとは視点) ~

お父さんとふたばが風呂に入ってる今しかない。

隠してあったクッキーらしきものを取り出して、一口食べてみる。

ひとは「ぶっ!」

……塩辛い。絶対清めの塩だよ、コレ……。

みつば「ああ、松岡が砂糖足してるのかと思ってたけど、アレ、塩だったのね」

おわり

~~~以上本編~~~

言い忘れてました。長くてすいませんorz
それとコレ、何がメインなんでしょう? ひとみつ? 松ひと? まさかの松みつ?
書いた私も良くわかりません。
そして、今になって松岡さんっぽさに些か問題ありな気がしてきましたが……細かいことは(ry

こんな駄文ですが感想とか書いていただけると助かります。

187:名無しさん@秘密の花園
11/07/16 09:47:10.68 fP+CyoT9
何このSSラッシュ久々にみつどもえ成分が補給されてテカテカなんですけど


188:名無しさん@秘密の花園
11/07/17 04:20:19.66 8fdcu59y
>>168
なんという嫁自慢wwwwwwwwww
可愛いすぎるだろこの二人wwwwwww
乙でした

>>186
いつもながら長い・・・・だが、それがいい!
駄文なんてとんでもない!
いままででないパターンで面白かったです
乙でした

189:名無しさん@秘密の花園
11/07/17 05:02:28.80 Bn7h2DMu
ホワイトデーSSキテター?
毎度乙です!

190:名無しさん@秘密の花園
11/07/17 06:27:27.10 1Gd2nLMl
2作とも最高だ


191:名無しさん@秘密の花園
11/07/21 10:09:17.12 chPnUdmE
最近アニメ化したゆるゆりの櫻子と向日葵のツンツンカップルは杉みつに通じる所がある
あの二人の喧嘩ップルっぷりを見てると杉みつを思い出すよ…

192:名無しさん@秘密の花園
11/07/21 20:47:36.41 ldSiJGu7
一気に過疎ったな

193:名無しさん@秘密の花園
11/07/21 21:14:44.56 fqF8sNVO
>過疎
悲しいけどいつもの事ですね。

186です。感想ありがとう御座います。
まとめwiki編集者様にお願いなのですが、どこかに
「バレンタインに如何して嫉妬?」の続き的な記述書いていただけると助かります。

ところで、ショートショートくらいの書いてみたんだけど
誰得のメグみつ、メグちゃん視点で未来話です。
需要あれば投下しますが……みつどもえっぽさが薄いです。百合も薄いです。
需要ありますか?


194:名無しさん@秘密の花園
11/07/21 21:19:27.30 ldSiJGu7
無いワケが無いだろ
さぁどうぞ

195:名無しさん@秘密の花園
11/07/21 22:16:50.86 Y/P+RX5Q
メグちゃんって誰だ?って思ったら下級生の娘なのね

196:憧れる少女-①
11/07/21 23:11:50.02 fqF8sNVO
反応早すぎるw
とりあえず注意事項まとめ
・誰得カップリング、メグみつ
・メグちゃんがキャラ変わりすぎ
・7年くらい未来の話
・地の文多めで、台本書き部分を今回に限り撤廃
・みつどもえ成分補給には不向き
・百合スレなのに百合濃度が低い
・軽い鬱展開から始まる
ひとつでも不快感あるようならスルーしちゃって下さいね!

~~~以下本編~~~

タイトル:憧れる少女

“気品ただよう高貴な身分のことよ!! 私みたいにね!!”

ん……もう朝だ。
まだ覚醒できずに目を寝巻きの袖で擦る。

今のは……みつば先輩の夢―
痴女の意味を中学上がるまであの台詞通りの意味だと思ってた私はきっと馬鹿なのだろう。

みつば先輩にあの時厳しく突き放された意味を理解してから、私は自分の馬鹿さ加減に呆れも通り越してしまっている。

一度ベットから体を起こした私だったのだが、そのまま<バタン>とベットに倒れる。

あの言葉は、私達を思っての言葉だった。私達が嫌いになったわけではなかった。
私達を避けるためではなかった。……みつば先輩の優しさ…だった。

今は大学生、もしくは社会人だろうか?
行動力のない私は何も知らない。
小学校の時から一緒だった杉崎君には確か姉が居て、みつば先輩と仲が良かったのを覚えているが、
杉崎君の連絡先は愚か、小学高学年あたりからまともに会話することもなくなった。
今更、話掛けることなんて出来るわけがなかった。

そんな自分が嫌いだ。自己嫌悪して、そして自己嫌悪してる自分にも嫌悪感があって……憂鬱なのだ。
今は梅雨時であり空気はジメジメしていて……元気に振舞うって言うのが無理な話なのかもしれない。
違う……それはただの言い訳でしかない。

197:憧れる少女-②
11/07/21 23:13:33.52 fqF8sNVO
……。

……。

綺麗な金髪……元気が良くて…大胆で……とってもお洒落で……。

……。

「ん……あれ?」

いつの間にか二度寝してしまっていた様だ。
蘇ってきたみつば先輩の姿。
私の憧れだった。私は彼女のようになりたかった。

時計を見る。短い針は10を指している。
今日は日曜日―なのだが、友達と近所のデパートで待ち合わせしていたのを思い出した。

約束の時間は10時半……そう思い出した時にはベットから跳ね起きて着替え始めていた。



「ごめん! 待った?」

「遅いよメグ! 3分遅刻!」

30分で着替えから用意まですべて終わらせてここまで来るのに3分しか遅れなかったことを褒めてくれてもいいのに……。
そんなこと相手は理解してくれない。当たり前だ。私から言わなきゃそんな事伝わらないに決まってる。

でも、説明しようにも、ただの寝坊と言うべきか、本当のことを言うべきか。
当然、夢の内容とか考えてたこととか言えるわけが無い。
結果、ただの寝坊として「ごめん、ごめん」とだけ言って置く。

「そんじゃ、服買いにに行こうよ」

「うん」

彼女は中学で出来た友達。今のところ一番の仲良しなのだが、彼女には沢山友達が居て、私より仲の良い人だって居るだろう。
それでも一応、ちょっとした憂鬱な人生を歩んでる私が今一番楽しんで過ごせる友達だ。



デパートの洋服売り場に移動している時だった。

198:憧れる少女-③
11/07/21 23:14:49.63 fqF8sNVO
……。

今、綺麗な金髪の、お洒落な人とすれ違った。
そして、聞き覚えのある声……今日も夢で聞いたことのある声だった。

振り向くとそこには昔と変わらない私の憧れの人の後姿があった。

「み、みつば先輩!」

振り向いた金髪の女性は驚いていた。でも、驚いたのは彼女だけでなく、私の友達も、そして私も驚いた。
行動力なんてない私が……考えるよりも早く行動していた。

そして私の声で振り向いたことで金髪の女性が本当にみつば先輩であることがわかった。

でも、先輩は私のことを憶えていない……そんな顔をしていた。

「え、ちょっとメグ? 知り合い?」

友達が話しかけてくる。でもその言葉は右耳を通り左耳から抜けていく。私は初めて彼女の言葉を無視した。
今の私の居場所よりも、大切なものに出会ってしまったから。

「メグ? ……もしかして、杉崎弟と同じクラスだった……」



憶えていないと思っていた。私のことなんてもう、記憶の彼方にすら残っていないと思っていた。
でも、名前を聞いて、たったそれだけで、数日間しかまともに言葉を交わさなかった私を覚えていてくれた。

「……わ、私は今でも、貴方に憧れて居ます! あんな突き放され方されたけど……アレが優しさだったって知ってから、もっと…もっと憧れました」

もう、こんなチャンスはないかも知れない。そう思ったら口が勝手に動いてた。

「こ、これからも憧れ続けます! 先輩! 貴方を目標にしてもいいですか?」

しばらく呆気に取られていたのだろうけど―

「いいわよ! 気品ただよう高貴な身分に惹かれるのは当然よ!」

そういって、まぶしい笑顔を見せてくれた。
すぐに隣に居た黒髪を後頭部あたりで束ねている子に脛を蹴られて引っ張っていかれたけど……。

今まで憂鬱な感情が光が差した。
ただ、一言、言葉を交わしただけなのに……蟠りと言うのだろうか? それが消えて行くのが感じられた。

私の心は梅雨時だというのに雲ひとつ無い快晴になれた。
違う……これからは嵐が来ても雲なんて作らない。そうなれる、信じる目標に再開できたから。

おわり。

~~~以上本編~~~

続きません。
仕事の気晴らしに、思いついたこと書き殴った物なので微妙かと思います。
色々破綻してるかも。脳内行間補間推薦です。スイマセンorz

199:名無しさん@秘密の花園
11/07/21 23:47:09.34 YjA64TzS
>>198
乙!
ちじょ回の子か~。これからも何か思い付いたら書き込んでくれよ!宮下さんとの約束だぞ☆

200:名無しさん@秘密の花園
11/07/22 00:55:46.34 DcIS5kGO
>>199
感想ありがとー。私の短編は大抵宮野さんの扱い酷いですが、みつどもえには無くてはならない存在です。
キャラ単体としては結構好きなほうに入ります。
これからも弄らせてもらうからな☆
それと、基本的に思いついたネタは長いのにに入れちゃってます。今回のようなケースは除きますけどね。

まとめwiki編集者様、いつもながら早い反応感謝です。先の件有難う御座います。

201:名無しさん@秘密の花園
11/07/22 02:19:05.63 9a9JgHw1
いつもの小ネタ垂れ流しです

放課後 教室

松岡「三女さーん」ガラッ

三女「スースー」

松岡「なんだ寝てるんだ」

三女「スースー」

松岡「・・・・・・三女さん」

松岡(教室には私と三女さんだけ・・・か)

松岡「フフ、可愛い寝顔だなあ」

三女「・・・・スースー」

松岡「って何言ってるんだろ私、起こしちゃ悪いしry」


みつば「ひとはー帰るわよー」ガラッ

三女「ああ、みっちゃん」

みつば「あれ、何でアンタそんなに顔赤いのよ」

202:名無しさん@秘密の花園
11/07/22 02:21:08.86 9a9JgHw1
以上、私の妄想でしたー
読んでいただければ幸いです

>>200
いつもながら素晴らしい、乙です!
あなたのその文才が妬ましい

203:名無しさん@秘密の花園
11/07/22 07:42:27.09 MtQBHr1b
>>200->>201
どちらも乙です!ニヤニヤさせて頂きました

204:名無しさん@秘密の花園
11/07/25 04:06:48.92 SdwQJZek
ひとはと杉ちゃんはみっちゃん好きすぎだろう
特にひとはがw

205:名無しさん@秘密の花園
11/07/25 20:18:25.96 VzNO+tGx
>>204
判ってるじゃないか!
杉ちゃんの大胆な行動で騙されがちだが
ひとはのみっちゃんへの愛は後戻り出来ないところまできてるよなw

206:名無しさん@秘密の花園
11/07/26 16:23:08.80 8uMt3Uu4
杉ちゃん・・・・みっちゃんの盗撮写真多数所持
ひとは・・・・・夏休みの日記はほぼみっちゃんのこと、みっちゃん型弁当を作るetc

愛されすぎだろう・・・・
ふたばが可愛そうだな

207:名無しさん@秘密の花園
11/07/26 17:52:38.98 d2+nd2BQ
げきも

208:名無しさん@秘密の花園
11/07/28 18:46:24.78 vsncA6Vb
初期頃からみっちゃんの監視を何度もしてたひとは……
適当な理由つけて、みっちゃんの傍に居たかっただけってことだよね?
ひとははみっちゃんを愛しすぎだわ

209:名無しさん@秘密の花園
11/07/28 18:58:51.93 t2/yN5iq
密かにカロリーゼロのアイス買ってきてたりな

210:名無しさん@秘密の花園
11/08/09 20:18:56.46 MFalDUq+
やっぱり過疎が続きますね……原作休載中ですし仕方がないといえばそうなんですが……。
200です。
出来れば今月中に、遅くても来月中に投下予定です。
前作終わってから、行き詰って途中で投げた作品が2つもあるけど
今書いてるのは何とかなりそうです。

>>202-203
読んで頂き、ありがとうございます。文才あるように見えますか?
まさか……絶対気のせいですよw
一人称視点だと割りと書き易いと思いますし
「登場キャラが低年齢なのであまり難しい言い回しを使わないほういい」
ってところに助けられてばかりですよ

211:名無しさん@秘密の花園
11/08/09 21:05:20.72 86tDu/Fw
お~新作書いてるのか
楽しみに待っとりますね~

それにしてものりおちゃん復活はまだなのか~

212:名無しさん@秘密の花園
11/08/09 21:42:18.74 LgxRa77e
待ってる

213:名無しさん@秘密の花園
11/08/10 08:12:59.53 7xkgAYUF
>>210
もはやこのスレの唯一の希望

214:名無しさん@秘密の花園
11/08/13 19:58:15.59 xexxoJ5B
結局杉みつ同人でお前らのベストって何よ
死ぬ気で探しに行くから

215:名無しさん@秘密の花園
11/08/26 23:51:52.40 FpVtXSrv
ゆるゆりにハマってからみつどもえ成分がだいぶ弱ってるわ…
早く原作再開してくれ
もちろん杉みつ度満載でな

216:名無しさん@秘密の花園
11/08/27 08:32:18.44 oKO18/MN
>>215
同意。
杉みつ好きなお前らの事だ。どうせひまさくのツンツンカップルに萌えてんだろ?

217:名無しさん@秘密の花園
11/08/27 09:15:31.95 1i6gYLQ7
過疎だからってあんまり脱線せんようにな


218:名無しさん@秘密の花園
11/08/27 14:03:17.35 kkFWBqsL
悪かった。つい動きがあったもんで嬉しくてね

お詫びに中学生になった松ひとの妄想晒す



松岡「三女さーん!」

ひとは「…どうしたの」

松岡「この学校オカルト研究部がないよー!泣」

ひとは「それは残念だったね」

松岡「うー…中学生になったら部活で霊的な物の探検とか増えると思ったのにー」

ひとは「相変わらずだね松岡さんは…」

松岡「はぁ…どうする三女さん?当てが外れちゃったね」

ひとは「え、ちょっと待って何で私も一緒に入る事になってるの?」

松岡「え?だって三女さんが一緒じゃないと意味がないよ」

ひとは「なっ!?さっちゃん…そ、それって…」

松岡「やっぱり美少女霊媒師の三女さんがいないと面白くないし!霊媒師さんは霊を引き寄せるって言うしね!」

ひとは「……はぁ…そうだね。で、どうするの?部活は」

松岡「うーんそうだね…何でもいいよ!三女さんと一緒なら!」

ひとは「…やっぱりそこは私も一緒なんだ…」

松岡「何だかんだ言ってこんな事に付き合ってくれるの三女さんだけだもんね。ずっと友達でいてね!三女さん!」

ひとは「う…うん…///」

219:名無しさん@秘密の花園
11/08/27 17:47:04.42 1i6gYLQ7
乙!
松岡「私、最近三女さんとずっと一緒だな~」
松岡「はっ! もしかして私既に死んでて、三女さんに憑いちゃってるじゃ……」
こんな光景が浮かんだ

220:名無しさん@秘密の花園
11/08/27 22:57:16.25 Q4htNflx
松岡「おっ!おじさんのオチンポすごいのっ!私の膣内に射精してえええぇぇええ////」 グッポ!グッポ!
おれ「さっちゃん!なかに出すぞ!」 


      ドピュ!ドピュドピュ!ビュルルルルルル!!!・・・・・ビュッ

221:名無しさん@秘密の花園
11/08/28 05:44:40.09 aJICd3dA
>>218
GJ
松ひとはいいものだな

222:名無しさん@秘密の花園
11/08/29 07:20:24.01 PJEulEYu
ひとは「せっ!先生のオチンポすごいのっ!私の膣内に射精してください////」 グッポ!グッポ!
矢部 「ひとはちゃん!なかに出すよ!」 


      ドピュ!ドピュドピュ!ビュルルルルルル!!!・・・・・ビュッ


223:名無しさん@秘密の花園
11/08/29 17:12:26.98 PJEulEYu
伊藤「おっ!おじさんのオチンポすごいのっ!私の膣内に射精してえええぇぇええ////」 グッポ!グッポ!
おれ「詩織ちゃん!なかに出すぞ!」 


      ドピュ!ドピュドピュ!ビュルルルルルル!!!・・・・・ビュッ


224: 忍法帖【Lv=28,xxxPT】
11/09/21 16:23:00.92 rBYak1Gc
最終書き込みから一ヶ月経つのを阻止!

210です。
一応書けました。ひとみつ、百合濃度低。遅くなってスイマセン。
書けたけど……ちょっとまって下さい。
いつもgdgdなんだが今回特にgdgdなんです(汗
今更全体的な流れを書き直す気は無いけど、細かい点だけでも修正して置きたいので……

と言うわけで投下は「遅くても9月中」って言っちゃってるので9月末日までには投下します。
gdgdで長くて百合濃度低くても問題ないって人居たら読んでください。
っと言うか、スレ住民まだ居るんでしょうか?

早く原作再開して~、みつどもえ分が足りない!

225:名無しさん@秘密の花園
11/09/21 17:27:12.62 /NRAA+ez
ここにいるぞー

226:名無しさん@秘密の花園
11/09/21 18:38:28.09 EwQIMoyv
俺もいるぞ~
期待して待ってます!

227:名無しさん@秘密の花園
11/09/22 15:31:45.10 tLHWqoUA
ぐぴっw フヒョほほwww レズ萌へ~www 百合最高にゃんりしwwww
オワコンみつどもえはボクリンたちがゆりゆり妄想を炸裂させ真・みつどもえとして新たに築きあげるのでぷよwwwwwwwww ブッヒイィィィィィイイィィィィ!!!!!!!!!!!

ぶひゃw

228:長女三女の事情-前書き
11/09/30 23:29:10.34 2M7tUV86
9月末日ギリギリになったが一応ちょこちょこ修正完了。
注意事項まとめ
・百合濃度低
・長い
・gdgd
数分~十数分後に本編投下開始予定です。

229:長女三女の事情-①
11/09/30 23:49:48.84 2M7tUV86
~~~以下本編~~~

タイトル:長女三女の事情

~ 喧嘩(みつば視点) ~

ひとは「……もういいよ! 二度と話しかけないで!」

みつば「―っ!」

私は言い返そうとして口を閉じた。
上等よ! 絶対話しかけてやらない!

……そうやって意地を張ったが、この時は「明日になればいつも通り」……そう思っていた。



―取っ組み合いにまでは発展しなかった何時もの喧嘩。
でも何かが少し違った。

喧嘩をしたのは昨日の夜。喧嘩の理由は些細なこと……だったと思う。
と言うのも何が原因か良くわからない状態から喧嘩がヒートアップして行って、関係ない不満とか色々ぶつけ合ったからであって。
そして、最後は内容の無い悪口の言い合い――今思えば言い過ぎなところも多々あったがお互い様よ!――だった。

で、ひとはのあの台詞で締められた訳だ。
何時もの喧嘩と違うと感じたのは……そう、今も尚、あの台詞通り会話をしていないから。
後を引く喧嘩なんて滅多にしないのに……。



今は学校の給食時。
私は杉崎たちと一緒に給食を食べている。

ふと、ひとはに視線を向けると自分の席で松岡と一緒に給食を食べていた。

……正直安心した。松岡には心の中だけで感謝しておいた。
でも……雲で覆われた私の心は、さらに酷くなっただけ……。つい先日梅雨明けしたはずなのに……。

松岡と給食を食べるひとはの背中を見ながら、喧嘩をしたことを後悔する気持ちと私と喧嘩しているというのに松岡と会話するひとはの姿が憎くも見えた。

そんな矛盾した感情が頭の中に溢れ返っていると、会話に参加していなかった私に話しかけてくる物好きな盗撮女が居た。

230:長女三女の事情-②
11/09/30 23:52:02.61 2M7tUV86
杉崎「なに、変な顔して……給食前に拾い食いでもしたの?」<ピロリロリーン♪>

いつもならその喧嘩買ってあげるんだけど……昨日のこと…いや現在進行中の喧嘩のことがあってそんな気分にはなれなかった。
無視して給食を食べることにした。―って言うか撮るな!

宮下「なんだ? いつもの長女らしくないな」

……長女らしくない……私は不意に“私らしくない”と言う意味でなくそのままの、言葉通りの意味で捉えていた。
確かにその通りだろう。意地になって馬鹿みたいだ。長女なら長女らしくすべきだ。私から仲直りを持ちかけるべきだ。

そう思ってはいても、私にはそれが素直に出来ない。
意地になってる……というのはもちろん、私から折れたら、ひとはと会話がしたくて仕方がないみたいじゃない。

吉岡「ど……どうしたのかな? みっちゃん……」

宮下の言葉も無視してしまったため、吉岡を初めとして杉崎、宮下も本格的に困惑し始めてしまった。

みつば「別に……なんでもないわよ」

仕方が無く場の収束を図るために出した声は、実に素っ気無い答えだった。



松岡「! 三女さんはどこ!?」

放課後、ひとははどうやら先に帰ったらしい。松岡はひとはがいつの間にか居なくなってるのに気が付き、周りを見渡した後は意気消沈していた。

私も杉崎たちと帰っても碌に会話もしないだろうし……そう思って一人で帰ろうとしていると、またしても杉崎が話しかけてきた。

杉崎「ちょっと、みつば! 何一人で帰ろうとしてるのよ!」

……正直、一緒に帰ることに誘ってもらえて嬉しくはある。

でも、ひとはは一人で帰ったのだと知ってしまっては、杉崎たちと帰ることが何となく後ろめたく感じてしまう。
断ってでも一人で帰ろうと思っていると―

吉岡「咲ちゃんも、一緒に帰ろうよ。ちょっと三女さんの話聞きたいし」

みつば「……へ?」

どうして、いきなりひとはの話? それに何で松岡に訊くのかが理解できない。

231:長女三女の事情-③
11/09/30 23:53:49.37 2M7tUV86
宮下「ふたばだよ。三女と喧嘩したんだって聞いたぞ。口も聞いて無いそうじゃないか」

不思議そうな顔をしていたであろう私に宮下が答える。
そして、私が宮下の言葉の意味を理解するより早く杉崎がさらに追加で説明する。

杉崎「そういうことだから、給食が三女と一緒だった松岡を交えて作戦会議よ! それで、さっさと仲直りしなさいよ!」

え…っと?
つまり、仲直りに協力してくれるってことなのだろうか?
そう考えて、確かめるべく口を開こうとした時、慌てたように杉崎が割り込んできた。

杉崎「か、勘違いしないでよ! あんたが元気無いと張り合いが無くて詰まらないからで……」

腕を組んで私に対して横を向いた杉崎はなぜかムスッとした顔で私をチラ見する。

杉崎「で、何があって喧嘩になったのよ」

みつば「あ、あんたらには関係ないでしょ!」

私の口から出た台詞は、杉崎を突っぱねる言葉。
作戦や相談なんて必要ない。
私がひとはに謝れば済むだけのことなのだから。

杉崎「っ! か、関係ないって……そ、そうかもしれないけど……」

宮下「おい! そんな言い方は無いだろ! 私も杉崎も心配して言ってるんだ!」

余計なお世話だ……。
それに杉崎は心配なんてしていない。その証拠に今現在、宮下に向かって「は、張り合いが無いだけよ! 別に心配なんてしてないんだから!」と言ってる。
自分に都合の良い私に戻れ……そう言ってるのだ。

宮下もきっと、心配してるように言ってるだけで、自分が良い格好したいだけで―

……そこまで考えて自己嫌悪した。
そんなわけ無いってわかってるのに。……最低だ。

私、イライラしてる。きっと……ひとはと仲直り出来てないから。
それで皆に八つ当たりして―

松岡「みっちゃん……三女さん今日元気なかったよ」

不意に松岡からの台詞。
ひとはが元気が無い……私と喧嘩してるから?

232:長女三女の事情-④
11/09/30 23:55:00.82 2M7tUV86
……。

私だけの問題じゃない。ひとはもこんな関係、望んで言った訳じゃないはず。

改めて杉崎の顔を見る。すぐ視線を逸らされたが、心配してくれてるのが丸判り。
他の皆も心配してくれてるようだった。この場にはいないが、きっとふたばも……。

みつば「明日には……仲直りできてるわよ! だから心配する必要なんてないわよ!」

そう言って私は皆を置いて先頭を歩く。
やっぱり、ちゃんと私から謝ろう。帰ったらすぐに謝ろう。

杉崎「ち、ちょっと! 心配なんてしてないって言ってるじゃない!」

宮下「面倒くさい姉妹だよな」

杉崎「(あんたも十分面倒くさいと思うけどね……)」

宮下「え? ちょ…聞こえてるぞ! 私が何したって言うんだよ!?」

一番離れてる私にも聞こえるほど杉崎の小声は大きかった……ワザと聞こえるように言ったわね。
宮下も聞こえなかったことにしてスルーして置けばいいのに。

吉岡「もぉう! 違うよ杉ちゃん! 宮ちゃんはちょっと空気が読めなくて鬱陶しいだけだよ!」><

宮下「吉岡……フォローになってないぞ」

233:長女三女の事情-⑤
11/09/30 23:55:49.88 2M7tUV86
~ 失敗(ひとは視点) ~

ひとは「はぁー」

今日は一人で下校。
別に仲間外れにされたとかじゃなく私が故意に行なった事。
……って言うか、一人で下校することなんて珍しいことじゃないし!

ひとは「みっちゃん……本当に話しかけてこないのかな……」

そんな訳ない。みっちゃんは優しいから……きっと……。

……本当は待ってる事なんてない。私から話しかければ済む話。
じゃあ、如何して私から話しかけないのだろう?

……。

私も頑固なところがある。意地になってるから……それだけが理由なのだと思っていたのだけど……。
本当はこれ以外にも理由がある事に気が付いてる。

……きっと……みっちゃんから話しかけてくるのを待ってる。それはつまり、勇気が無い私のみっちゃんへの甘えだと思う。



“ちょっと私のお洒落な服、洗濯し忘れるとかどういうことよ! あんたらしくもないミスしないでよね!”

喧嘩の発端となったみっちゃんの何気ない台詞。
忘れた私が悪い。でも、私らしく無いミス……この言葉に何だか苛立ってしまった。
私だって、ミスすることだってある。完璧な人間なんかじゃない。

なのに……私はミスが許されない。そう言われてる気がして。
その後、口喧嘩になってあんなこと言って……。

確り者の私以外も……私なのだと認めて欲しかったのかも知れない。

……。

本当、ただの被害妄想だよ。

みっちゃんから話しかけて来たら、私も謝らないと。
意地になってた事や酷いことを言った――何言ったか覚えてないけど――事を。
そして、私から謝らなかったことを。




234:長女三女の事情-⑥
11/09/30 23:57:50.43 2M7tUV86
ひとは「ただい…ま……」

みっちゃんと会話しないことになってるのを一瞬忘れてた。
幸い、まだ家には誰も居なかった。いや、むしろ居てくれた方が早く解決できたかもしれない。

まぁ、でもみっちゃんがいないのは当たり前。私のが早く学校出たんだから。
でも、ふたばまで居ない。私より早く――出た時間は一緒くらいだったけど圧倒的に足が速かった――学校を出て行ったのに。
どこかで道草か、しんちゃんと遊んでいるのかも知れない。

さて、どうしよう。夕飯の支度には少し早いし……。

ふと、外を見ると雨が降り出していた。
私が帰ってくるまで雨なんて降ってなかったから今降り出したのだろう。
梅雨明けだと言うのにまったく―!

ひとは「っ! 洗濯物しまわないと」

私は慌てて外に出た。
昨夜洗った洗濯物以外にも、朝急いで洗ったみっちゃんの服も干してある。

雨で濡らしてしまっては、私の責任ではないにしろ、より気まずくなる原因になる気がした。
でも。そう思って急いで洗濯物を取り込もうとしたのがいけなかった。

<ビリッ>

ひとは「あ……」

洗濯物が物干台の竿を引っ掛ける部分に……。

そして、破れたのは……みっちゃんの服だった。

最悪も最悪だ……なんて言えば許してもらえるんだろう。
この服は本当にみっちゃんが気に入ってた服だったのに。

みつば「た、ただいま……ひとは帰ってる?」

っ―!

み、みっちゃん!

みつば「あ、洗濯物取り込んで……え?」

ひとは「え、あ……」

見つかった。もとより黙ってるつもりは無かった……けど、タイミングってものがある。
最悪のタイミングといってもいいかも知れない。

235:長女三女の事情-⑦
11/09/30 23:59:18.54 2M7tUV86
みつば「……」

みっちゃんは何も言わなかった。
そしてそのまま背を向けて二階へ行ってしまった。

私はと言うと、気まずくて視線を向けられずにいた為、みっちゃんの表情を見ることが出来なかった。

……怒ってるよね。ただでさえ喧嘩中―

そこまで考えて、みっちゃんが話掛けて来ていたことに気が付いた。
きっと仲直りするつもりで……。

そして、このタイミングでの私の失敗……みっちゃんはどんな気持ちだったのだろう……。

部屋に戻りテーブルに突っ伏す。
あのタイミングで失敗した自分を恨んだ。



時間にして数分くらいだと思う。
とりあえず、顔を上げ破れた服を手に取り見てみる。

ひとは「……この破れ方は……直すの難しいかな……」

そして嘆息。でも、時間は掛かるかも知れないけど何とか着れる程度には直せそうだ。
“善は急げ”と言うが、そろそろ夕飯を作らなければいけない。
そうしなければより一層みっちゃんの機嫌を損ねるかも知れない。
だからここは、“急がば回れ”こっちの言葉に従っておくことにして、夕飯の準備をはじめた。

236:長女三女の事情-⑧
11/10/01 00:00:36.99 2M7tUV86
~ 次女(みつば視点) ~

逃げ出した。
せっかく謝るつもりだったのに……。

今は私達姉妹の部屋に入って扉に凭れ掛かるように座り込んでいる。

一階で見た光景……それは私のお気に入りの服の見るも無残な姿。
ひとはの奴、このタイミングであんなことをやらかしてくるなんて……。

……判ってる。ひとははワザとそんなことしないって。
視線を私に向けようとしないひとはの態度、何かの事故でこういうことになってしまったのだと理解は出来た。

実際怒ってるわけじゃない。
服の一つや二つ……いいじゃないの……。
ひとはと仲直りできないことの方が私には問題だから。

でも、とっさのことで謝ることを忘れて唖然となったし、完全に頭の中真っ白になったわけで……。
唯でさえどう謝ろうか、考えて、考えて……若干混乱気味だったし……。

みつば「すー、はぁー」

深呼吸して気持ちを入れ替える。
さっきのこと許してやって、それで私から謝ってコレで解決だ!

そう思って立ち上がる。そして、扉を開け―

<ガチャ>

みつば「え…ちょ!」

<ゴンッ>

開けようとした扉が開いて額にクリティカルヒット! ……超痛い。

みつば「っ……!」

額を押さえてしゃがみ込む。

237:長女三女の事情-⑨
11/10/01 00:03:31.59 R8ykBa72
ふたば「みっ、みっちゃん! 大丈夫っスか?」

みつば「ふ、ふたば? 痛っ……」

これで、ふたばじゃなくてひとはだったらどうしようかと思ったわよ!

ふたば「ち、血が出てるっスよ! みっちゃんが死んじゃうっス!」

え? 血? 本当で?

みつば「ちょ! あんた、どんな勢いで扉開けたのよ!」

ふたば「意外と元気そうっスね、よかったっス」

みつば「良くないわよ!」

あぁ、頭に響く……。大きな声出すんじゃなかった。

って言うか、さっきから血が止まらない。額切ると大量に血出るらしいけど大丈夫なんだろうか?
まぁ、クリスマスにひとはがサンタ役した時――アレは額ではなかったけど――は今の私の比じゃなかった気がするし大丈夫……たぶん。

みつば「とりあえず、タオル持ってきなさいよ!」

ふたば「わかったっス!」とてちてとてちて

そういえば、ふたば先に帰ってると思ったんだけど……今帰ってきたのかしら?
よくよく思い出せば、服も若干濡れてたし、どこかで変体パンツとでも遊んでたのかも知れない。

そんなことを考えて座り込んだまま額を押さえて下を向いている、扉を開けてすぐのところに紙袋が二つあるのが視界の端に入った。
何かしら? ―と疑問に思うまもなく、階段を上がる音が聞こえてきて、すぐに―

ふたば「タオルもって来たっス!」

―と、ふたばの声が―

ひとは「み、みっちゃん……氷、持ってきたから……冷やして」

! ひとはまで来るなんて予想外……いや、ふたばが大げさに言えば来る可能性の方が高いはず。
予想していなかった方がどうかしてる。

ひとは「……大丈夫?」

恐る恐るって感じで聞いてくる。
きっと私が怒ってるものだと思ってるに違いないだろう。

下を向いたままだった私は視線を上げる。心配そうに覗き込む二人の姿が写る。

みつば「あ、ありがと」

238:長女三女の事情-⑩
11/10/01 00:05:20.96 2M7tUV86
ひとは「……ま、まったく、世話掛けないで。……私料理中だから戻るよ」

そう言って背を向けて部屋から出て行く。

……精一杯普段通りを演じているように……そんな感じに見えた。
って言うかひとはから会話してきたってことは……。

みつば「ちょ! ひとは!」

そう考えた時、私は部屋を出てひとはを呼び止めた。

みつば「昨日……私、その…悪かったわ……だから―」
ひとは「ちょっとまって! みっちゃん、昨日私が何に腹立てたかわかる?」

みつば「え……」

意外な返しに戸惑った。……そして、ひとはの問の答えもすぐには出てこなかった。
ただ、ひとはの機嫌を損ねる何かを言ったのだから謝るのは当然……そう思って言ったのだけど……。

理由もわからずに謝ってしまったことはやっぱり失敗だったのだろうか……そう感じ始めたときひとはが口をあけた。

ひとは「はぁ……別にいいけど」

呆れたように嘆息する。
結局理由は判らず仕舞い。気にはなるが、触れないほうがうまく治まる気がしたので触れないで置く。

ひとは「それより謝るのは私のほうだよ。……今日のことも、昨日“話しかけないで”って言ったことも……」

視線は私に向けていない。だけど、その声はいつもより一回り弱々しいもので印象深かった。

ひとは「それに……謝るのが遅くなったことも、……意地になっててごめん」

なんというか、素直に謝られてちょっと居心地が悪い……。

ふたば「仲直りっスね!」

ふたばが間に割って入る。この自由な行動が居心地の悪さを壊してくれて助かる。
……って、あれ? これってさっき部屋で見た紙袋?

ふたば「これ! 二人に買って来たっス! 本当は仲直り出来るようかったんスけど……
仲直りしちゃったっスから、そのお祝いっス!」

私達に袋を差し出してきたので反射的に受け取った。
えっと、中身は……服?

239:長女三女の事情-⑪
11/10/01 00:06:53.10 2M7tUV86
<バサッ>

前を見るとひとはが袋から服を出し広げていた。

ひとは「え、何これ……」

何これって服だろう。いや……言いたいことは判る。
なんというか、服のデザインが……つまり、おばあちゃん級のセンスなのだ。

そして、嫌な予感を感じつつ私も紙袋から服を取り出し広げた。

みつば「げ……」

ひとは「……ペ…ペアルック」

ふたば「どうっスか! どうっスか!」

満面の笑みを浮かべ私達に感想を聞く。

ひとは「どうって……いらな―」
みつば「わ、わー可愛いじゃない! ふ、ふたば気が効くわね。ありがとね!」

ひとはが本音を言いそうだったのでフォローした。
っていうか、ひとはってそういうとこ気が効かなすぎよ!

ふたば「ほんとっスか! じゃ明日、二人ともそれを着て登校っス!」

みつば&ひとは「「え゛……」」

衝撃の一言。
このダサい服を着て……しかもひとはとペアルック?
ふたばは私達に死ねと言ってるのだろうか?

ふたば「ほへ? なんか問題あるっスか?」

私達の反応に不安げな顔を見せる……こんなのって反則じゃない!?

ひとは「問題って……こんな服着れる訳―」
みつば「(ちょっと! ふたばがわざわざ、私らのために買って着てくれたのよ!)」

ひとはがまた気を効かす気ゼロなので慌てて制止に掛かる。

240:長女三女の事情-⑫
11/10/01 00:09:09.40 R8ykBa72
ひとは「(じゃあ、着るの?)」

みつば「(……)」

ひとは「(あの服を……しかも、ペ、ペアルックで登校って人類に出来るの? 雌豚なら出来るの?)」

私は、何も答えずふたばに少しだけ視線を向ける。
まだ先ほどと変わらない不安げな顔。

みつば「(ひとは……人を捨てる時が来たようね)」

ひとは「(ちょ! みっちゃん! 早まらないで、私が何とかするから!)」

そう言うと、ひとははふたばの前に立ち「コホン」と咳払いをして口を開いた。

ひとは「この服、ふたばのお金で買ったの?」

え! そこなの!? いや、確かに気にはなってたけど、そこから明日、着ない方向に?

ふたば「ん、箪笥の中でお札を小生が見つけたっス!」

ひとは「っ! それ今月分の食費だよ!」

衝撃の事実! その後有耶無耶になったお陰で助かった。





……。

……気になる。ひとはの怒った理由。

ふたばの服の件で喧嘩の発端となった言葉は思い出せた。

“ちょっと私のお洒落な服、洗濯し忘れるとかどういうことよ! あんたらしくもないミスしないでよね!”

何気なく言ったこの台詞から機嫌が悪くなったのは確かだった……やっぱりこの台詞がいけなかったのだろう。

241:長女三女の事情-⑬
11/10/01 00:11:29.40 R8ykBa72
杉崎「そんなの、あんたが三女を過大評価してるから、へそ曲げたんじゃないの?」

みつば「へ?」

杉崎「だって、“あんたらしくもないミスしないでよね”って言ってから怒ってたんでしょ?
その台詞が理由っていうなら、怒る要素ってそれくらいじゃない?」

みつば「???」

杉崎「何? 意味わかってないの? あんな言い方だと三女が失敗しない完璧超人みたいって言ってるのよ!」

仲直りを経て、ペアルックを着ずに済んだ翌日の事。
気になりすぎて、つい杉崎に聞いてみた。まともな答えなんて返ってこないと思っていた結果がこれ。

なるほど……たしかにそうかも知れない。

私はひとはのことを運動と社交性以外は完璧な妹だと思っていたかも知れない。

宮下「そういうの、変にプレッシャーになっちゃんだよな」

空気を読まずに宮下が登場。……盗み聞きとは性格悪い奴!

と、思ったが、実際そうなのかも知れない。
ひとはは、家事を当たり前のようにしていて、私達はそれに甘えていたのかも……。

ひとはは何でも出来て当たり前……そんな空気を作ってしまっていたのかもしれない。

宮下「それより、三女が完璧超人? 何言ってるんだ! 三女ほど私の助けが必要な奴なんていないぞ!」

……ひとは、本当苦労してるわね……。
私のこと言われてる訳じゃないけどじゃないけど、張り倒してやりたい。

杉崎「そ、それより……ぷっ、何その額?」<ピロリロリーン>

あからさまな話題転換は有り難いのだけど……。
私の額にはでっかい絆創膏。それを見て吹き出す杉崎。だ、か、ら! 撮るな!

額を手で隠してもなお鳴り止まないシャッター音。最悪……。

242:長女三女の事情-⑭
11/10/01 00:12:54.03 R8ykBa72
~ 愚妹(ひとは視点) ~

なんとか、みっちゃんと仲直りは出来た。
でも、流石にみっちゃんの服をあのままにして置いて良いわけが無い。
出来れば直して、喜んでもらいたい。
家に帰ったら修繕しないと。

松岡「ねぇねぇ三女さん、みっちゃんと仲直りできた?」

ひとは「っ! な、何でそのこと……」

みっちゃん? いやふたばだろうか?

松岡「あ! こっくりさんが……えっと“て”……に濁点に……“き”…“た”……“よ”! 仲直りできたのね!」

何これ怖い。

ひとは「だ、誰に聞いたかしらないけど……大した喧嘩じゃなかったし」

松岡「でも昨日は随分落ち込んでたよね」

え……わ、私そんな風に見えてたの?
……ここはこっくりさんの力で乗り切ろう!

そう思って指先に力を入れて“そんなことない”って動か―って動かないし!

松岡「昨日ずっと上の空だったし、いつのまにか先に帰っちゃうし―」

うう……恥ずかしい、顔が熱いし真っ赤なのだろう。

そして十円が全然動かない! ダメだ、とりあえずこの場から逃げよう! そう思って指を離そうとした時―

松岡「ダメよ! 指を離せば祟りがあるわ!」

逃げれないし……何この拷問。もうしばらく松岡さんとはこっくりさんはしないで置こう。

243:長女三女の事情-⑮
11/10/01 00:14:28.29 R8ykBa72
みつば「ただいまー…ひとは? あんたなんで先に帰―? 何やってんの?」

家に帰ってから修繕作業に四苦八苦していた時、みっちゃんが帰ってきた。
本当はみっちゃんが帰ってくる前に何とかして置きたかったんだけど、やっぱり十分足らずじゃ無謀だったかな?
まだ、全然掛かりそうだ。

ひとは「……昨日の服の修繕」

みっちゃんの問いに私は端的に答える。

みつば「え……わざわざ直してくれてるの? べ、別にいいわよそんなの捨てちゃいなさいよ」

……気を使ってるんだろう。本当、なんで日頃は鬱陶しい行動が目立つのに、こんなにも優しい所があるんだろう?

だからってお言葉に甘えて、服をゴミ箱に捨てるなんて酷いことしないけど。

ひとは「……新しいの買えばお金掛かるし……それに私がしたくてやってるだけだから」

当たり障りの無い適当な理由と、小さな声で私の本音を言って作業を続ける。

みつば「そ、そう?」

態度から見るに本音の方も聞こえたかな……別にいいけどね。

ひとは「ちょっと変な破れ方だから、上手く直らないかもしれないし、着たくないなら捨てちゃって」

みつば「せっかくあんたが直したもの捨てないわよ!」

……。

あー、もう。なんでこう素直じゃない癖に良くわからないタイミングで……。
不意打ち気味にそういう事言うの止めて欲しい。

私は作業の手を止め、みっちゃんに言ってやる。

ひとは「じゃあ、雌豚の刺繍も付けてあげるよ」

みつば「余計なもの付けなくていいわよ!」

「まったく……」と言いながら私の座る炬燵テーブル――別に炬燵を付けてるわけじゃないけど――を挟んだ向かい側に座る。
何か話でもあるのだろうか?

作業を再開せずにみっちゃんのほうを見ていると、落ち着きが無いというか、何か躊躇っているような様子。言っちゃ悪いが気持ち悪い。
しばらくして、急に覚悟を決めた様に顔を上げ、意外な事を言ってきた。

244:長女三女の事情-⑯
11/10/01 00:16:28.17 R8ykBa72
みつば「きょ、今日は私が夕飯作るわ!」

……。

ひとは「何言ってんの?」

みつば「だから、今日の夕飯は―」
ひとは「もう献立決まってるから、邪魔しないで」

みつば「邪魔って何―」
ひとは「邪魔は邪魔だよ」

みつば「……」

黙ってしまった。

何がしたいのか良くわからないが、ふたばの買ってきた服の件で今月の食費は厳しいのだ。
みっちゃんに自由に料理させるわけには行かない。

みつば「じゃあ…………夕飯の準備手伝うわ」

ひとは「それは、助かるけど……いったい何が狙い?」

みつば「……」

またも、黙ってしまった。意味がわからない。

私は何も言わずに修繕作業を再開した。
言いたくないなら別に言わなくていい。
それに、せっかく手伝ってくれるのに、下手に言及して手伝わないとか言われたら勿体無いし……。

……も、勿体無いって言うのは別にみっちゃんと料理できるとかそういうことじゃなくて……えっと、
そ、そう、人手が減ったら勿体無いって意味だ。うん、それ以外に無い……絶対に無い。

そんな無駄な考えに自分で無駄な突っ込みを心の中で入れるという、無意味だし不必要な思考をしている時、
みっちゃんが、頬杖して横を向きながら、少し言いにくそうに口を開いた。

みつば「あ、あんたに甘えすぎてたかな……ってちょっと思ったから今日だけ特別に手伝って上げようかと思っただけよ」

私に甘える……?
少し疑問に思ったが、すぐ、料理や、洗濯、家事全般を私が担当している事を言ってるのだと気が付いた。
確かに、そうかも知れないけど、今更な気がする。

その疑問が顔に現れて居たかどうか判らないが、みっちゃんはその答えに近いのかどうなのか良くわからない答えを口にする。

みつば「あんたも、人間。一昨日や昨日で、あんたもミスするんだって判ったわ」

そして、その台詞は、私が聞きたかった言葉でもあった。

みつば「そ、そうそう! あんたは完璧な“丸井ひとは”じゃなくて優秀な私の愚妹ってことよね!」

その後続けたみっちゃんの言葉は、一言多くて台無しだ。
でも―

ひとは「ありがと……」

―私の口から自然に出た言葉は、自分でも驚く素直な感謝の言葉だった。

245:長女三女の事情-⑰
11/10/01 00:23:32.88 R8ykBa72
~ 蛇足(みつば視点) ~

みつば「ちょ! なんで雌豚の刺繍入れたのよ!」

ひとは「名前入れておかないと、誰のか判らなくなると思って」

みつば「そうそう、この、雌豚のマークが“私の”ってひと目で判る……ってだったら“みつば様”って入れなさいよ!」

ひとは「のり突っ込み下手だね。あ、“みつば様”って入れるから貸して」

みつば「……やっぱり恥ずかしいから名前は入れないでくださいひとは様」

ひとは「だが、断る」

本当、こんなにひとはと馬鹿みたいなやり取りするのが楽しいのに、会話をしてなかったのが勿体無い。
と言っても、実際一日くらい会話しなかっただけなんだけど……私、どんだけひとはとの会話が好きなのよ……。
夕飯の準備の時も楽しかった。あれなら毎日……いや、それは何だがひとはと料理するのが楽しみにしてる様で恥ずかしい。

ひとは「ねぇ、みっちゃん。結局上手く直ってないし、雌豚と入れちゃったしいらなかったら本当にすてちゃっていいよ?」

さっき渡した服を広げながら、結局は刺繍をし直さずに聞いて来た。

みつば「す、捨てないわよ! 外に着てくのはアレだけど、ちゃんと部屋着として使ってあげるわよ!」

そういって広げていた服を取り返す。

捨てるわけ無い。その服は破れる前の時よりも、大事なお気に入りの服だから。

……絶対外じゃ着ないけど。

おわり

~~~以上本編~~~

毎度長い文章読んで頂きありがとうございます。
本当は前半で終了予定でもう少しふたばを絡ませる予定でした
タイトルの「事情」=「次女」を指してたんだけど、全然そんなこと無かったorz
前半部分で納得できず後半部分の流れに方向転換(全体的にも多少修正)した為
いつにも増してgdgdです……。
感想などあればお願い致します。

246:名無しさん@秘密の花園
11/10/01 01:37:06.92 DQJiXpLi
GJ!
みつばより杉崎より,だれよりひとはがツンデレという罠

247:名無しさん@秘密の花園
11/10/01 01:41:14.83 YTtY+dAg
乙乙

248:名無しさん@秘密の花園
11/10/01 04:55:41.63 KtfiAHyA
乙です。力作ですねー。世話焼きなサブキャラ達がいい
杉崎×ひとはって需要あるかな。プール迷子回とか乳パッド回とか見るに
何かと気の合う良いパートナーっぽい感じがする。喧嘩とかしないだろうし。

249:名無しさん@秘密の花園
11/10/01 09:05:04.20 lY9I8nAk
みつどもえ分補給完了…っと
正直もうカラカラです

250:名無しさん@秘密の花園
11/10/01 10:26:18.83 iu8wOSpI
>>228
乙!よかったよ

>>248
俺的にストライク。書いてくれ

251:名無しさん@秘密の花園
11/10/01 21:36:09.07 R8ykBa72
245です
>>246-250
感想ありがとう御座います!
>>248
猫の名前付ける回なんてのも良かったなー

252:名無しさん@秘密の花園
11/10/01 23:34:54.60 n9+HyOcY
うわぁ・・・

253:名無しさん@秘密の花園
11/10/18 23:39:44.40 3FU6u5KG
上質の杉みつ急募

254:名無しさん@秘密の花園
11/10/20 23:59:08.48 cUils2fS
>>253
上質+急募には答えられないけど、最近ひとみつばかり書いてるから
杉みつを書いてみようと思ってたところだった。
処女作の別視点(色々ひどいので少々修正予定)と新作を何か考えてみる。

あと、私の書いてるひとみつに杉みつが入ってくるように、杉みつにもひとみつが、きっと入ってしまうので
そこのところは多めに見て下さい。
一応今年までに書き上げる予定……予定は未定。

255:名無しさん@秘密の花園
11/10/23 01:38:27.52 1oBzk7YL
>>254に期待

256:名無しさん@秘密の花園
11/10/23 05:24:06.19 9CQVWD/N
俺も期待

257:名無しさん@秘密の花園
11/10/23 11:59:41.55 uiqZUx57
じゃ俺も

258:名無しさん@秘密の花園
11/11/06 18:02:06.59 uYMn7PN0
254です。
期待ありがとー頑張ります。

そういえば
杉崎「みつば、アンタ熱でもあるんじゃないの?」
って言う杉みつSSがあったみたいだけど皆さん読みました?
ちょっとエロいけど、私が書いてる奴より良作なので杉みつ好きの方必見かと思いますよ。

みつどもえSSもっと増えるんだ!

259:名無しさん@秘密の花園
11/11/20 23:06:33.82 CXVPXo8U
258です
こんなに期間開いてるのに連投になっちゃうのか……
今月中に新作の方は投下出来そうです。

ところで、もう終わってるけど、アニメイトチャンピオンフェア、クリアしおりシートにみつどもえ絵描き下ろしだったそうで
のりお氏元気なようで何よりです。

260:名無しさん@秘密の花園
11/11/20 23:10:32.64 eRdzfV5p
のりおちゃんの連載再開、このスレ唯一の希望>>259さんの新作
どちらも期待して待ってます

261:名無しさん@秘密の花園
11/11/23 23:41:54.67 RVqRYuKj
期待せざるを得ない

262: 忍法帖【Lv=31,xxxPT】
11/11/29 18:31:29.88 rGY+ZfRc
259です。忍法帖確認。
忍法帖に問題なければもうすぐ投下します。

263:名無しさん@秘密の花園
11/11/29 18:46:30.41 K6/rqtEE
待ってたぞ

264:名無しさん@秘密の花園
11/11/29 19:07:42.61 lMWLA5Fl
期待

265:これはデートですか? 前編-①
11/11/29 19:13:47.81 rGY+ZfRc
ageちゃうのか!
お待たせして申し訳ないです。
主成分は予定通り杉みつです。
いつもの注意事項。長い、百合濃度低い。
長いので前半後半で分けます。

~~~以下本編~~~

タイトル:これはデートですか?

~ 発端(杉崎視点) ~

杉崎「な、もう一度言ってみなさいよ!」

みつば「金に物を言わせただけの、センスの無い女って言ったのよ!」

一度ならず二度までも……って私が言わせた様なものだけど。
でも! だけど! だからって酷すぎる! 私は私なりに可愛くて綺麗な服を選んでいるのだ。
素材が良い物や有名ブランド品から選んではいるが、見た目だってちゃんと気にしてるし、着こなしだって悪くないはずだ。

杉崎「あんたのセンスこそどうかしてるわよ! そんな雌豚体系でよくミニが履けるわね! 極めつけは下着よ、し・た・ぎ!」

口が勝手に動いていた。
……でもこの言葉は…本心ではない。

みつば「なっ! す、杉崎ぃ~!」

杉崎「…な、なによ? 全部事実を言ったまでの事じゃない?」

流石に今のは言い過ぎた……そうは思っても引くに引けない。

吉岡「ふ、ふたりとも、いつもすごくお洒落だと思うなぁ」><

杉崎&みつば「「あんたは黙ってなさい!」」

266:これはデートですか? 前編-②
11/11/29 19:17:23.83 rGY+ZfRc
……と言いつつも、正直感謝してる。吉岡に限らず、私達の喧嘩にはストッパーは必要だと思う。
二人だけで喧嘩してたら一日中怒鳴ってばかりで、喉が痛くなること間違いなしだ。

吉岡の台詞はみつばにも届いたみたいで、大きく嘆息して、今までの怒ったトーンの声は出さずに提案してきた。

みつば「それじゃ、今からデパートで私の服のセンスを見せてあげるわ」

杉崎「臨むところよ! 私のコーディネート力に恐れ戦く事ね」

私への挑戦と受け取った私は間髪入れずに受けてたった。
周りから見た時、きっと私とみつばの間には火花が散っているのだろう。

ちなみに今は下校中。
松岡に三女が拉致されたことでいつもの面子より少ない。
と、いっても松岡がいない時なんて珍しくもなく、三女もいない時良くある話だ。
ふたばだってそうだ。私達と違って、佐藤君や千葉君と一緒に帰ることや遊ぶことも多い。

だから今の状況は然程珍しくはないのだが……次の宮下の台詞で珍しい事態となる。

宮下「あ、悪い……今日さ吉岡と明日提出の宿題やろうと思っててさ……」

どうやら宿題が終わってないらしい。私は既に終わってる。
勝負は中止かな? この流れならみつばだって終わって―

みつば「ああ、アレね、昨日ひとはの写したし問題ないわね」

―いた様だけど……ひどい話だ。勝手に鞄とか漁られたに違いない。

みつば「ほら、杉崎、どうせあんたも終わってるんでしょ!? さっさと服見に行くわよ!」

杉崎「わかったわよ」

そういうわけで、さらに面子が少なくなり―

267:これはデートですか? 前編-③
11/11/29 19:19:31.34 rGY+ZfRc
―あれ?

みつばに返事を返して宮下たちと別れ、しばらく歩いてから気が付いた。
これって……もしかして、みつばと二人で行くことになるの?

杉崎「っ!」

もしかしなくても、ここにいるのは私とみつばだけなんだから当たり前のことだ。
……珍しい。みつばといることは然程珍しいことではないけど……二人っきりって状況は今までに数える程しか無かった。

変に緊張してきた……なんでみつば相手に緊張なんて……。
二人っきりって言っても……ただ二人で服を見に行くだけで……二人で服を……二人……。

みつば「杉崎? なによ変な顔して」

いつの間にかみつばの少し後ろを歩いていた私。
それを心配したのか遅くてイライラしたのかわからないが、みつばは声を掛けてきた。
なぜだか二人と言う言葉が頭から外れずにいた私は考えが纏まらずに口を開いた訳だけど……。

杉崎「へ? あ……み、みつばと二人だけって、状況、あんまり無かったなって……思って」

……失敗した。なに正直な感想言ってるのよ!
私が変に意識してるみたいじゃない! ……してるけど。

みつばは、私の台詞から少しの間を置いてから、口を開いた。

みつば「だ、だからなんなのよ! ……さっさといくわよ!」

そう言って、なんでもないように前を向き歩き出す。

意識してるのは私だけ?
……若干さっきのみつばの反応に違和感を感じはしたが、それが何なのか判断できるほど大きな仕草とかはなかった。
っというより、さっきの混乱してた私が気が付ける訳がない。

結果、みつばの真意はどうであれ、私は出来る限り平静を装っていつもの反応を心掛けることにした。





268:これはデートですか? 前編-④
11/11/29 19:21:19.65 rGY+ZfRc
~ 美服(みつば視点) ~

宮下たちと別れてから、杉崎とデパートに向かって歩いていた時だった。
杉崎がいつの間にか隣ではなく、少し遅れた後方にいることに気が付いた。

振り向いて杉崎を見ると何か考え込むような……いや、緊張している時のような、硬い顔をしていた。

みつば「杉崎? なによ変な顔して」

とりあえず聞いてみる。
私には心当たりがない。もしかしたら、なにか大事な用事でも思い出したのかも知れない。
だとすると、この勝負はお預けかな……ちょっと残念だけど仕方がない。

なんて思っていたんだけど。

杉崎「へ? あ……み、みつばと二人だけって、状況、あんまり無かったなって……思って」

……え?

帰った来たのは全然想定外で物で、そして理解するのに少し時間がかかった。

えっと、二人っきり? 誰が? だって私たちは……えっと、私と、杉崎と……あれ?

うん。二人だ。…………ちょ、ちょっと二人だけじゃない!
馬鹿なの私! 今までなぜ気が付いてなかったのよ!

……。
いやいや、冷静になろう。二人っきりだからと言って何も問題はない。
喧嘩を止める面子がいないだけだ。だったら喧嘩がエスカレートしないように注意していればそれも心配する必要はない。

みつば「だ、だからなんなのよ! ……さっさといくわよ!」

私は杉崎から視線を外し、再び前を向いて歩き出す。
……問題なんて無いはずだ。



みつば「さ、さぁ! 着いたわよ!」

杉崎「そ、そうね! 庶民の貴方に私のコーディネイトを見せてあげるわ」

ほら! いつもの会話じゃない!
二人っきりだからて気にすることじゃないわよ!

―と“表面だけ”いつも通りの会話を交わして気にしないようにした。
……なんで杉崎相手にこんな気を使わないといけないのよ……馬鹿馬鹿しい。

269:これはデートですか? 前編-⑤
11/11/29 19:23:47.79 rGY+ZfRc
そう思ってしまったのがいけなかったのだろう。
ついつい悪態が出てしまう。

みつば「あんたこそ、覚悟してなさい! あなたは今日その庶民に完全なる敗北をして私の下僕に成り下がるんだからね」

杉崎「な! げ、下僕ですって! 庶民風情が生意気よ!」

と、言われても貴方の母親である変態ドMは既に私の下僕になってる訳だけど……まぁ、出来ればアレに下僕になってほしくはなかった。

そんな杉崎を無視して“いい感じな服”を探すことにする。
その様子を見た杉崎も、服を探しにその場から移動したようだ。

それにしても、服のセンス……ねぇ…。
正直そこそこ自信はある。下級生にもお洒落なんていわれたこともあるわけだし。
……けど、杉崎に勝ててるかどうかなんて……悔しいけど庶民の私では、杉崎の着てる服がどれくらいお洒落なのか良くわからない。
きっと、普通の小学生なんてまったく知らないブランド物の服とか選んでるんだろうしね。

すると、私が言えるのは見た目での勝負で勝てるかどうかって話。
杉崎はどういう基準なのかは知らないけど。

と、言うかそもそも誰が勝者を決める?
当事者二人だけじゃ勝負がつかないのは目に見えてるし……。

270:これはデートですか? 前編-⑥
11/11/29 19:25:27.50 rGY+ZfRc
杉崎「み、みつば! これが今年のトレンドよ!」

服を探し始めて十分と経たないうちに着替えて登場した杉崎は、手を腰に当て、控えめに胸を張ってポーズを取っている。

正直最初に浮かんだ印象は“高そうな服”だけど、まぁ良く見れば杉崎らしいと言うかなんと言うか、可愛い系の服だ。
まず私には似合わない、そういった感じの服。

杉崎「なに? 私に見惚れて声も出ないわけ? だったらこの勝負私の勝ちのようね!」

しばらく何も言わずに眺めていたためか杉崎が調子に乗りだす。

みつば「だ、誰が! 見惚れるわけないわよ! バァーカ!」

ってなに動揺してるのよ! これじゃ図星突かれた見たいじゃない。
誤魔化すために話を進めることにした。

みつば「トレンドとかに影響されないで、自分で納得いく服を選ぶのが本物なのよ!」

杉崎「それは、みつばがトレンドに疎いだけでしょ!」

みつば「っ! 待ってなさい! 今私がセンスの塊であることを証明してあげる!」

そういって私は服選びを再開した。

……そういえば意外にいつも通り、会話出来てる。
気にしすぎだったかな。





271:これはデートですか? 前編-⑦
11/11/29 19:27:32.85 rGY+ZfRc
~ 緊張(杉崎視点) ~

服を選びに私の前からいなくなったみつば。

杉崎「はぁー」

大きく嘆息して緊張を解く。
よくまぁ、アレだけ饒舌に挑発できたものだ。
……みつば相手にこんなに緊張して馬鹿みたい……。

それにしても、なにやらさっきから視線を感じる。
……いや、女二人で買い物なんて良くあることだ。
きっと、気にしすぎなのだろう。

話の流れで、二人だけのお洒落対決をする展開となったが、正直勝敗を決することはないだろう。
みつばも判っていそうなものだけど……。

ふと、目の前に鏡があることに気が付く。

杉崎「……」

私はみつばが来るまでの間、自分の服を鏡で見て悩む。
大きな口を叩いたが、実際これどうなんだろう?
私はそれなりにお洒落だと思うしトレンドにも沿ってはいるけど……。

……問題はみつばがどう感じたか……なのよね。
しばらく眺めていたから「見惚れてた」とか挑発したけど、本当はどう感じていたのだろう。

再び鏡の前で軽くポーズを取ったりスカートを少し吊り上げたりしてみる。

杉崎「……はぁー」

何やってるんだろ、私。
別にみつばに気に入られたいとか、何か言われたいとかそんなことないはずなのに……。

そうなはずなのに……こんなにも気にしてる。

272:これはデートですか? 前編-⑧
11/11/29 19:30:04.53 rGY+ZfRc
みつば「杉崎!」

っ!

いきなりの声に心臓吐き出しそうになった。
……絶対、寿命が縮んだわ……。

一息ついて振り向くと自信たっぷりにポーズを決め、ありもしない胸を張ってみつばが立っていた。

みつば「この勝負、私の勝ちよ! トレンドなんかに私は惑わされないのよ!」

みつばは、そう高らかに宣言した。

感想から言って、いつものみつばの強化バージョンと言えばいいのだろうか?
ただし普通のミニスカートではなくデニムスカートになっていたりして、少し大人っぽさもある。
ブランドものではないが、上手く着こなしてるわね……普通に可愛いしお洒落だ。

みつば「……あんたも見惚れてるわけ?」

しまった! つい服を見るのに夢中で……あ、とりあえず写真撮らないと。<ピロリロリーン♪>

みつば「っていきなり写真撮るってなんなのよ!」

いや、だってみつばが新しい服を着てるんだがら撮るのは当たり前だ。
と、思いつつみつばを無視して話を進める。

杉崎「ま、まぁまぁね。でも私達だけじゃ勝敗決めれないし買って帰って、明日学校で決めましょう」

みつば「え……」

? なんだか不服……というより「それは無理」みたいな反応。

杉崎「……さては、自信ないのね?」

違うと思うがとりあえず挑発ついでに言っておく。

みつば「え、いや……無いのはお金なんだけど」

……ああ、そりゃそうよね。
私も手持ち無かった。

杉ママ「あら? 二人とも可愛い格好してるのね」

杉崎&みつば「「っ!」」

なんてタイミングのよさ! ママはやっぱり凄いわ!

杉ママ「みつば様もいつにもましてお洒落ね。買い物? ……鞭や蝋燭は……そうよね、なくても大丈夫だったのよね」

ママ……お願いだから、みつばの前では喋らないでください。

とりあえず、くだらない話に割り込むように事情を話すことにした。

273:これはデートですか? 前編-⑨
11/11/29 19:31:38.27 rGY+ZfRc




杉ママ「なるほどね、どっちがお洒落か勝負してたのね。二人とも可愛くて私じゃ判断できないし……良いわよ二人とも買ってあげるわ」

みつば「さすが、変態財布ドM女!」

杉ママ「~~っ! もっと罵倒していいのよぉ!」

みつばもママに話しかけないであげて……。

みつば「……」

みつばは喜んでいるものの若干複雑な顔をしているのが目にとまった。
理由は何となく判った。ママは残念ならが悶えていたので放って置いて、私はみつばに問いかけた。

杉崎「何? あんたらしくもない。買って貰える事気にしてるの? まったく口だけよねぇ」

そう、それにみつばのパパだって、気を使ってしまうだろう。

みつば「! ち、違―」
杉崎「(出世払いよみつば! これは貸したんだからね。あんたのパパにもそう言っておいたらどう?)」

みつば「え、あ……」

杉崎「……って言ってもみつばは出世魚のように脂が乗るだけでしょうね」

そう言って私はみつばから距離を取る

みつば「な! あんたねぇ~! 待ちなさい!」

杉ママ「あらあら、仲いいのね二人とも」

杉崎&みつば「「よくないわよ!」」

杉ママ「ふふふ」





274:これはデートですか? 前編-⑩
11/11/29 19:34:14.59 rGY+ZfRc
~ 視線(ひとは視点) ~

松岡「なになに? やっぱりあの二人に悪霊が憑いてるのね♪」

そう言って上機嫌に私の後ろから肩を持ち、そして私の視線の先……みっちゃんと杉ちゃんを見る松岡さん。

ひとは「そうだよ、危険な霊だと思うから絶対に二人に気付かれちゃダメだから」

そういって、突入しそうな松岡さんを宥める。

当たり前なことだけど別に霊が憑いてるわけじゃない。
松岡さんの突入を止めているのは、もしみっちゃん達と合流してしまえば私達が隠れて付いて来てたことがバレてしまうから。
杉ちゃんじゃあるまいし、こんな事すべきじゃないと思ったが、デパートに“二人だけ”で向かうみっちゃん達を見て、
そして、偶然にも松岡さんが「二人だけで? 妙ね……は! もしかして霊の仕業!」とか言い出すものだから私も
「そうかも知れないね……後を付けよう」なんて口走ったせいだ。

それにしても……なんとかさん達と一緒に帰ってたと思ったのに、いつの間に二人に?
なんとかさん達には帰ってもらって、二人で買い物なんて…………ど、どっちから誘ったんだろう?

う~ん、遠くて会話が聞こえない。杉ちゃんが試着した服をみっちゃんの前で自慢してるのはわかるんだけど……。

みつば「~! ~~~~~~! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」

えっと、何叫んで―ってこっち来た!

ひとは「松岡さん! こっち!」

そういって松岡さんの手を引いて隠れる。

松岡「あ、ちょ、三女さん!?」

ひとは「(いいから静かにして)」

松岡さんに小声で話す。
それと同時にみっちゃんが先ほどまで私達が居た場所あたりに移動した。
……危なかった。雌豚の癖に急に走ってくるから驚いたよ!

275:これはデートですか? 前編-⑪
11/11/29 19:35:56.06 rGY+ZfRc
みつば「―ったく、誰が見惚れたりなんか……まぁ、でも可愛い服が似合うってのは羨ましいわね……」

なるほど……試着して自慢大会か何かしてるのだろう。服を探してるところを見るに、今度はみっちゃんのターンと言うわけか。

服選びなんて見てて面白くなさそうなので、みっちゃんが可愛いと評した、杉ちゃんの服をもう一度見に行こう。
少し移動して杉ちゃんが見える位置から監視をする。

松岡「(さ、三女さん? もう手、離してもいいんじゃないかな……)」

ひとは「(あ……、ごめん)」

そのまま手を握ったままだった。……失敗した、恥ずかしい。

若干気まずい空気になったが、松岡さんは場の空気を変えるためなのか、すぐに言葉を発した。

松岡「(……なるほどね、みっちゃんが言ってた服、確かに可愛いし杉ちゃんに似合ってるね……)」

私もそう思う。みっちゃんに言わせたことだけはある。
みっちゃんもたまにはあんな格好したらいいのに。

でも、やっぱり二人だけでこんなことしてるなんて、……デ、デートしてるみたいな感じだ。
本人達に自覚があるのかどうかは、知らない……いや、杉ちゃんはなんだかありそうだ……。

そう思ったのは、杉ちゃんが鏡の前で先ほどみっちゃんに自慢してた服を不安そうに何度も見直していたからだ。
……周りからみるとポーズを一人で取ったりしてちょっと滑稽だけど口にはしないで置こう。

松岡「杉ちゃん……あんなに気にして可笑しいよね」

口にしないでおこうよ! 松岡さん。

みつば「んー、これでいいわね」

! 後ろから声! 不味い! ここ更衣室前だ!
そして近くに隠れるところ―更衣室しかない!

松岡さんを押して二人で二つあるうち一つの更衣室に飛び込む。

間一髪! 危ないところだった。杉ちゃんに気を取られすぎた。

状況を飲み込めていない松岡さんの口を押さえて喋らない様に……ってなんで私松岡さん押し倒してるの!

布擦れの音が隣の更衣室から聞こえる。
私は松岡さんが暴れないようにアイコンタクトで会話を試みる。
すると、状況を理解できたようで頷いて返してきた。

その後、しばらくするとみっちゃんは出て行った。

二人して息を殺して、どうにかその場をやり過ごすことに成功。

ひとは「ま、松岡さん、その……ごめん」

松岡「え、あ、……さっきのはしょうがないと思う。うん」

オカルトモード解除の随分しおらしい松岡さん……いつもこんな感じでいて欲しい。

276:これはデートですか? 前編-⑫
11/11/29 19:37:52.81 rGY+ZfRc
気まずいので更衣室のカーテンを少し開けて、再び二人の監視をする。

うーん、やっぱり遠くて会話までは聞き取れない。
さっきとは違いみっちゃんが杉ちゃんに服の自慢をしてるだけだとは思うけど。

松岡「……えっと、三女さん……帰らない?」

ひとは「え?」

突然、松岡さんが問いかける。

松岡「二人とも普通に買い物っぽいし、なんかストーカーみたいで悪いよ」

ス、ストーカー!?
……薄々気が付いてたけど実際言われることになるとは……。

そして、さっきまでオカルトモードだった松岡さんが、急に普通に戻ったことになんだか腹が立ってきた。

ひとは「ま、松岡さんも共犯だよね?」

松岡さんの方には向かずに言う。

松岡「わ、私も!?」

何を今更、当たり前だ。
さて、口止めしておかないとね。

ひとは「共犯者としてこのことは他言無用ということで……」

松岡「……二人だけの秘密って…ことね?」

ひとは「そう、二人だけの……」

……なんだか言い方が引っかかるが気にしないでおこう。

仕方がない、ストーカーみたいと言われてまで付いて回るのも嫌だし……帰ろう。

更衣室から出て、見つからないようにデパートを後にする……はずだった。





277:これはデートですか? 中書き
11/11/29 19:41:41.63 rGY+ZfRc
~~~以上本編~~~

とりあえず前編終了。
何か規制来るかもなので続きは夕飯後

278:これはデートですか? 後編-①
11/11/29 20:44:19.15 rGY+ZfRc
再開します。

~~~以下本編~~~

~ 相互(みつば視点) ~

みつば「……」

杉崎「……」

どうしてこうなったのよ!
折角ドMが来て二人っきりじゃなくなったって言うのに、またすぐに二人っきりだなんて……。
ドMの奴なにが「ちょっとママ、デパートに寄る所があるの、みくちゃんちょっと待ってて」よ!

というか、さっきまで二人で普通に話しできてたのに……あー、もういいや!

みつば「わ、私もう帰るわね!」

そう言って私はさっさと帰ることにする。
もとより私がドMを待つ理由なんてないわけだし。
それにもう5時半を過ぎだ。季節は秋、外はもう夕方とは言い辛い暗さ。

杉崎「え……あ、そう…ね」

そう杉崎が曖昧な反応を返す。
ちょっとは普通に反応してきなさいよ、まったく……。

そして私は帰るために足を踏み出した時。

杉崎「み、みつば、きょ、今日は楽しかったわね!」

みつば「ば、ばかじゃないの! デ、デート終わった後みたいな台詞いわないでよ!」

言葉の選択肢どう考えても間違ってるじゃない!
そんなこと急に言ったら、間違いでも恥ずかしいし、周りが勘違いしたらどうするのよ!

杉崎「あ……」

杉崎は自分の台詞を思い出してか下を向いた。

279:これはデートですか? 後編-②
11/11/29 20:45:58.42 rGY+ZfRc
みつば「あんたは……楽しかったのね」

空気を変えようと、挑発しようと思って言うはずだったが、なんだか言うのが恥ずかしくて声のトーンを落としすぎた。
でも、挑発だと解釈できたのか、恥ずかしく思っただけなのか杉崎は反論してきた。

杉崎「っ! 楽しい訳ないでしょ! あんたと二人っきりだなんて疲れるだけよ!」

けど―

杉崎「さっきのは、言葉の誤なんだから本気にしないでよ!」

―そういわれるとなんだか腹が立つし……寂しかった。

みつば「そう……そんじゃ帰るわね」

特に反論する気もなく帰るために後ろを向く。

杉崎「っ! ま、待って!」<ガシッ>

そういって私をまた引き止める。そして杉崎の手は私の腕を掴んでいた。
振り向くと、そこには下を向いた杉崎。そのまますぐに口を開いた。

杉崎「嘘よ……確かに疲れはしたけど……それ以上に楽しかったわ」

みつば「す、杉崎?」

私は急な杉崎の言葉に混乱する。

杉崎は、バッと顔を上げて私を見て言った。

杉崎「私は楽しかったわ! ……あんたは! あんたは楽しかったの!?」

デパートの光で照らされた杉崎の顔は真っ赤で、そして真剣な顔だった。

杉崎「どうなのよ!」

私は言い淀む。実際どうなんだろう。
楽しかった? 楽しくなかった? 疲れた?
沢山の答えが浮かんだが、判らなかった。
適当なことをいうのは簡単だけど……でも、真剣にされた質問には、真剣に答えたかった。

最初は楽しみだった。皆でわいわい騒いでどっちがセンスがいいのか決めて、勝敗なんて関係なく楽しめる、そう思っていた。
でも、結局、勝負の当事者二人だけでデパートに行き、気を使いながら、無駄に緊張をしながら―

杉崎「……楽しくなかったのね……あんたは」

280:これはデートですか? 後編-③
11/11/29 20:47:31.97 rGY+ZfRc
私が答えを整理し終わる前に口を挟む。

みつば「あ、ちょっ……」

杉崎は私の腕を乱暴に放して、私が何か言う暇を与えずに携帯で電話を掛けた。

杉崎「あ、ママ、私先にかえる…………うん、大丈夫……それじゃ」<ピッ>

みつば「ちょっと! 杉崎!」

電話を終えた杉崎に、そう呼びかけてもまるで聞こえてないように立ち止まることもせず去っていった。


……。

???「今のはみっちゃんが悪いわね」

っ! だ、誰!? 振り向くとそこには―

松岡「すぐ追いかけるべきだよ……ね、三女さん!」

ひとは「なんで、急に飛び出すかな……松岡さん」

―ま、松岡とひとは!?

ひとは「っていうか、手、放して!」

松岡「あ、ごめん。でも共犯だから出頭した時も一緒じゃないとね!」

281:これはデートですか? 後編-④
11/11/29 20:49:29.73 rGY+ZfRc
みつば「なんで、あんた達……っていうか共犯ってなによ?」

松岡「それは私達が―むぐぅ」
ひとは「ちょ! 他言無用って言ったよ!」

そういって松岡の口を押さえながらひとはは言った。
良くわからないが二人の秘密らしい……仲いいわね。

ひとはが松岡の口を押さえたままで続けて言う。

ひとは「みっちゃん……追いかけなくていいの? 杉ちゃん、きっと悲しんでるよ?」

みつば「な、なんでそんなこと判るのよ!」

そう答えると、ひとはは大きく嘆息してから答えた。

ひとは「みっちゃんも杉ちゃんに楽しくないって否定された時、悲しくなかった?」

……わかってる。わかってるわよそんなこと。
私からも言わなくちゃいけないって、そうしないときっと、私が悲しんだように杉崎も悲しむって。

杉崎も私がそう感じたからこそ、引き止めて、恥ずかしいのを我慢して本音で言ってくれた。

ひとは「杉ちゃんも、きっと一緒だよ」

そう、一緒なのだ。自惚れかも知れない。そう思ってた時もあったし、私自身杉崎なんて嫌いなはずだと思い込んでいたこともあった。
でも、一緒に下校するようになってから……いや…もっと前から、杉崎を案じてる私が居て……私を案じてくれてる杉崎が居た。
今日だって、私が洋服代を気にしてるとき気を使ってくれてた。

だったら、追うしかないじゃない!

みつば「……ひとは、私の分の夕飯ちゃんと残しておきなさいよ!」

そういって私は二人を置いて走った。
まだ答えなんて見つかっていないが、今からでも…会ってからでも考えればいい。





282:これはデートですか? 後編-⑤
11/11/29 20:50:54.37 rGY+ZfRc
~ 電話(杉崎視点) ~

私は、デパート出てまっすぐ帰らずに、誰も居ない脇道に入ってしゃがみこんでいた。

馬鹿だな……私。
急にあんなこといって……。

みつばは何だかんだ言っても、私のこと心配してくれたりするけど……その優しさは、私にだけ向けられてるわけじゃない。
あんな性格だけど皆に優しい。別に勘違いしてたわけでもなくわかっていた事。
それなのに……。

今日は一人で舞い上がってたのかな……私。
全然そんなつもりなかったのに。

実際、みつばに言った通り気を張りっぱなしで疲れはしたけど、本当に……本当に楽しかった。
いつも皆と一緒の時も楽しいけど……それとは違う、なにか新鮮味のある特別な時間だった。

携帯を取り出し、今日撮ったデニムスカート姿のみつばの写真を見る。
今日のことを思い出し唇が軽くつり上がるのが判った。でも―

杉崎「私は……楽しかったのに……どうして? ううぅ……―」

―それは同時に悲しいことだった。
そして、悔しかった。……私だけが楽しんでたということがどうしようもなく、悔しかった。
私は声を必死に押し殺して……それでも目から溢れる涙は止められなかった。

283:これはデートですか? 後編-⑥
11/11/29 20:53:06.58 rGY+ZfRc


しばらく泣いて落ち着いた。

あー……なんでみつばの為にこんなにも辛い思いしなきゃいけないのよ……。
って言うか、みつばから言い出した勝負よ!
私はそれに付き合っただけじゃない! なんで私のほうがこんな辛い目に会わなきゃいけないのよ……。

……この感情が開き直りってことは自覚してる。
人間の本能と言うか性質というか……そういうのには本当に驚かされる。
開き直りってこんなにも便利なものか。

開いたままだった携帯を操作してバックライトをつける。液晶に現れた数字は18:55、もうすぐ7時……どんだけ泣いてるのよ私。

メールが一通来ていた。差出人はママ。内容は少し遅くなるというものだった。
まだ、私がこんなところに居るなんて思っても見ないだろう。

とりあえず帰るために立ち上がる。
長い間しゃがみ込んでいたためか膝が少し痛かった。

杉崎「っと……はぁ…さっさと帰って寝ようかしら」

なにも悩むことない。明日からいつも通りにしていればいい。
それが私の望む形であり、みつばの望む形のはずだから……。

脇道から本来通る道に戻った。

外はいつの間にか完全に夜となっていて、風も肌寒い。

私は俯いたまま、帰路に着く。
足取りは重くて……荷物は多くて嫌になる。

そう思ってしまうのはやっぱり無理してるってことなのだろう……。
あんなことさえなければ、こんな気持ちで帰ることもなかったはずだから。

284:これはデートですか? 後編-⑦
11/11/29 20:54:39.49 rGY+ZfRc
<♪~~>

携帯の着信音……ママだろうか?
携帯を取り出して確認すると……丸井家……。

十中八九みつばだろう。……応答すべきだろうか?

私は迷った挙句、約10秒着信が続いた時に応答した。

杉崎「もしも―」
みつば『ちょっと! あんた今どこに居るわけ!』

あまりの大声に携帯を耳から離す。
まったく、いったいなんなのよ……。

杉崎「別に……どこだっていいでしょ?」

みつば『よくないわよ! 家に行ってもドMもあんたも帰ってないって言うし、どこほっつき歩いてんのよ!』

だからそういうことじゃなくて。

杉崎「なんで、みつばにどこにいるか言わなきゃならないのかって言ってるのよ、この雌豚!」

みつば『っ! なんです―』ひとは『(ちょっとみっちゃん、冷静に話すって言ってたでしょ? って言うかさっきからうるさい)』

私の悪態に反応したが、途中で受話器の向こう側からひとはの声で制止が掛かったようだ。

みつば『ど、怒鳴って悪かったわね……とりあえず、あんたと直接会って話がしたい訳よ。どこにいるか教えてくれない?』

あまりに急すぎる態度の変化に笑いそうになる。なに? 私に気でも使ってるのだろうか?
でも……やっぱりみつばと話すのは、本当楽しいわね。

杉崎「別に電話でも話くらいできるじゃないの?」

みつば『そ、それはそうだけど……』

言い淀むみつば。
はぁ……。直接会って話したいこと……か。

285:これはデートですか? 後編-⑧
11/11/29 20:55:38.34 rGY+ZfRc
杉崎「……デパートを出てすぐの通りよ」

大体何を話しに来るかなんて想像は付いてる。

みつば『あんた、なんでまだそんな所にいるわけ?』

杉崎「さぁーね。忘れたわそんなこと」

みつば『何によそれ……とりあえずそこで待ってなさい今から行くから!』

杉崎「嫌よ。帰ってる途中なんだから」

みつば『っ! い、いいわよ! あんたの家の方からそっちに向かうから! 絶対回り道とかするんじゃないわよ!』<ガチャ!>

そういって、私の返答を待たずに切られた。

……私に答えを返すつもりよね?
だとしたら、答えは「私も楽しかった」だろう。
誰にでも気を使えるみつばだ。この答えで決まりだ。

それは私の求めていた答え。でも……気を使ってのその答えは、惨めなだけだ。

杉崎「まぁ……別にいいけど」

もう、惨めでもなんでもいい。
さっさとこんなこと忘れて、いつも通りに話がしたい。
とりあえず今はどんな顔して聞けばいいか考えておこう。





みつば「こっ、今度、もう一度二人でどこか行くわよ!」

杉崎「……へ?」





286:これはデートですか? 後編-⑨
11/11/29 20:57:23.53 rGY+ZfRc
~ 返答(みつば視点) ~

私の非常に恥ずかしい台詞を聞いて、杉崎は予想外の答えに驚いてるようだった。

あー、私、顔から火が出てるんじゃないかしら?
湯気くらいなら当然出てるだろう。

―って、自分のことで精一杯で気が付いてなかったが杉崎の目元……赤くない?

みつば「あ、ちょっと、今の話は置いといて―」
杉崎「え? な、なんで置いておくのよ!」

いや、そんな身を乗り出してまで突っ込み入れなくても……。

みつば「そんなことより、あんた……泣いてたの?」

杉崎「ふぇっ!」

私がそう言うと、杉崎は間抜けな声を上げた後、私から距離を取って――というより私を突き放して――顔を隠すため慌てて後ろを向いた。
今更隠したところで意味ないわよ……。

みつば「……なにかあったの?」

杉崎「な、なんでもないわよ!!」

そのことに触れるなと言わんばかりの態度。
なんだか知らないが勢いに圧倒された。

……まぁ、見た所暴力とかされたようにも見えないし、此処まで嫌がってるんだから追求はしない方がいいかも知れない。
なんたって態々質問に答えに来た理由の半分以上は、杉崎のご機嫌を取りに来たようなものだし……何してるんだろ私。

でも、べつに杉崎が喜びそうな答えを選んできたわけじゃない。

杉崎「それより、……置いておいた話に戻しなさいよ」

後ろを向いたまま杉崎が言う。
その言葉に私は考え事を中断した。

……杉崎が後ろ向いてるっていうのは、正直私もやり易い。
それでも恥ずかしいけど……仕方がない。

287:これはデートですか? 後編-⑩
11/11/29 20:59:45.33 rGY+ZfRc
みつば「も、もう一度言うわよ? 今度もう一度二人でどこか行かない?」

杉崎「……」

みつば「……」

訂正。全然やり易くない……。

みつば「……な、何か言いなさいよ! あんたの問いに対して考えた答えなのよ!」

杉崎「どういう、考え方すれば、そんな答えになるのよ! っていうか答えになってないじゃない!」

な! ちゃんと真剣に考えた答えを……答えになってないですって!
……。

問い:楽しかったですか?
答え:もう一度二人でどこか行きませんか?

……なってなかった。
って違う!

みつば「だから! 私は楽しかったかどうか良くわからなかったのよ!」

そう、だから考えた答えが―

みつば「もう一度二人でどこか行くことで、ハッキリさせたかったのよ!」

杉崎に答える暇を与えず、私はさらに続ける。

みつば「あんたが真剣にしてきた質問でしょ! ……た、たまにはちゃんと考えて答えてあげようって思ったのよ……」

288:これはデートですか? 後編-⑪
11/11/29 21:01:06.29 rGY+ZfRc
杉崎「……へ、へー、そう…なの……」

みつば「……」

杉崎「……」

なんでまた沈黙なのよ……。
超が付くほど恥ずかしいのに!

しびれを切らして私は声を発する。

みつば「……さ、さっさと質問に答えなさいよ! まったく使えないわね!」

でもその声は、恥ずかしさを紛らわすために一言余計な事まで付け足してしまった。

杉崎「な! ……わかった、答えてあげるわ……行かないわよ!」

みつば「はぁ!? なんでよ、あんた楽しかったんでしょ? だったら―」
杉崎「ええ、そうよ! でも行かない!」

きっぱりとそう告げられる。
そして、私が切り返す前に更に付け加える。

杉崎「あんたなんか今日楽しかったのか、楽しくなかったのか一生悩んでればいいのよ!」

こ、この女~~~!
私に蟠りが残るのと、自分が楽しめるのを天秤にかけてその答えに行き着くとか……最低ね!

……と行っても私が余計な一言つけたからこんな事になったのかも知れないけど。
だから杉崎が怒るのは当然。
そして、私も―

みつば「どうしても行かないって訳ね。この性悪女……意地だけは一人前なんだから……」

―一言どころか二言も多い発言……やっぱりこうなる。
わかってはいるのに、口が勝手に動いてしまうから。

289:これはデートですか? 後編-⑫
11/11/29 21:02:03.88 rGY+ZfRc
杉崎「! あんたに言われたくないわよ! 体重だけは二人前の癖に!」

みつば「そ、そんなに重くないわよ! パッとボロ雑巾のように捻じ切れてしまえ!」

まぁ、こうやって喧嘩するのも悪くないと思ってるのが一番の原因な気がする。
いや、むしろこれが自然体と言うべきだ。
……でも二人だけだと、この喧嘩終わらないだろうな。



いや……これならいける!

そう思いついたのは、杉崎も私も息切れを起こし始めた時。
一息ついたタイミングを見計らって提案する。

みつば「なら、これでどう? 明日のお洒落勝負、私が勝ったらどこか行くわよ!」

杉崎「ふん! 臨むところよ! 庶民の選んだ服なんかに私が負けるわけないわ!」

もう、私も杉崎も恥ずかしいとか無くなって、いつもの喧嘩だ。
いやまぁ、よくよく考えればきっと恥ずかしいこと言ってるんだけど、よくよく考えてないので大丈夫だ。

勝負の約束を再度取り付けたところで、丁度杉崎の家……今更ながら付いてき過ぎた、これじゃ少し遠回りだ。
そんなことを考えていると、杉崎が突然、突拍子もないことを言う。

杉崎「みつば……ありがと」





290:これはデートですか? 後編-⑬
11/11/29 21:08:08.36 rGY+ZfRc
~ 二人(杉崎視点) ~

そう、それは些細な問題でしかなかった。

私がみつばの気持ちに、一喜一憂しなければならないことなんてない。
だって、私はこうやってみつばと会話――と言うより喧嘩なんだけど――しているだけでこんなにも楽しいのだ。

少し前までなら、無理してるって言える発言だと思う。
今も気にしてないわけじゃない。でも……あの時の自分に言ってやりたい、「みつばが楽しくないなんて、喜ばしいことでしょ!」って。
雰囲気に流されただけだ。いつもならそんなに落ち込むようなことじゃない。

杉崎「みつば……ありがと」

私は自分の家を目の前にして、みつばを見ずに呟く。
みつばに、無性に発したかった言葉。

―それは、態々私に真剣に答えを言いに来てくれたみつばに言いたかった言葉。
―それは、私達の関係になんら変化がないってことを教えてくれたみつばに伝えたかった言葉。
―それは、……傍にいてくれて嬉しかった私からの気持ちだった。

みつば「な、何よいきなり……何に対しての感謝なのよ!」

杉崎「……さぁ? その空っぽの……いえ、脂肪の詰まった重い頭で考えて見たらどう?」

後ろを向いていても、みつばの悔しがる顔が容易に想像が付く。
そのまま家に中に入っても良かったのだが、その顔見たさに私は振り向く。
物のついでに此処まで付いてきてくれたみつばに、“みつばに取って大事なこと”を教えてあげることにした。

杉崎「あんたも、さっさと家に帰りなさいよ……“夕飯”、まだなんでしょ?」

悔しがっている表情を一変させる。
流石みつばね。期待を裏切らない反応。それっ! <ピロリロリーン♪>

そんな、みつばの表情の変化を、私は携帯に閉じ込める。

291:これはデートですか? 後編-⑭
11/11/29 21:10:20.07 rGY+ZfRc
これも同じだ、私だけ楽しんで、みつばは楽しんでなどいない。
でも、問題ないじゃない。それが辛いだなんて思ったこともない。

逆もそうだ。みつばが楽しんでる状況があったとしても、私も共に楽しめるとは限らない。
つまり、お互い様って事。
私達二人は、お互い捻くれ者同士なのだ。

だからこそ、私はみつばの誘いを一度突っ撥ねた訳だし。

でもね……明日の勝負に貴方が勝った時の約束……二人でどこかに行く時は、貴方にも楽しんでもらうんだから。
もし貴方の出した答えが“楽しくない”だとしてもどこか一点でも楽しんでもらうわ。
そして、私は貴方が悔しがるほどに楽しんでやるから。

みつばは私に文句を言いたそうな顔をしながらも、私から背を向けた。

はぁー、まったく……私への文句より夕飯のが大事とは妬ける(?)話だ。
そう思いながらも私は笑っていた。

おわり

~~~以上本編~~~

長々とお付き合い頂いた方ありがとうございます。

続きは……書く可能性はありますが、皆さんの想像してる続きとは違う物になりそうです。
書かずに終わる可能性も十分ありますが。

さて、どうでしょう……今回時間はそれなりに取れたのですが
最近、最初考えてた話からズレちゃうんです。
プロットが甘いのかな?
途中から会話の流れで展開を決めちゃってます(汗

とりあえず次作は処女作別視点リメイク、現在鋭意製作、修正中です。
……が、最近忙しくなってきてるので時間がorz

感想あれば書き込みお願います。

292:名無しさん@秘密の花園
11/11/29 23:34:41.94 wAIl55za
面白かった!乙です!
なんだか前回より文章が上手くなってる気が…

次回はリメイクということでそちらも楽しみに待っていますね
それと今回の続きも書いてくれると嬉しいな…

293:名無しさん@秘密の花園
11/12/01 02:02:05.49 ochBz4IB
乙!いつもの人来てたのか!くぅ…レスが遅れたぜ…
やはり杉みつはいいものですねぇ…そしてなんとも破壊力のある松ひとまでねじ込むとは恐れ入った…
しかも弱冠ひとみつ要素が入っている
これだけ詰め込めてしっかりとまとまり、ちゃんとオチている
いつもの人着実にレベルが上がってきているな…w

294:名無しさん@秘密の花園
11/12/24 00:01:28.54 ih8plmTu
DLSiteのみつどもえ同人まとめ
URLリンク(doujinlist.info)

295:名無しさん@秘密の花園
11/12/24 07:44:07.61 ShIsKCot
杉みつってやたら濃厚でハードな絡みが多いよな

296:コレクター・みく 前書き
12/01/01 01:46:17.72 c4+zJ8zr
明けましておめでとう御座います。
今年もこのスレでよろしくしたいと思ってます。

>>292-293
感想ありがとうございます。

今回の続きは一応書く予定となりました。
まだ書き始めても居ないのでいつになるかわからないですが、さすがに新年度までには……

それと……上達してますか?
自分だと全然わからないものですね……。
こういう自分じゃわからない事の感想とか非常にありがたいです。


突然だが、お年玉SSだ! 有難く受け取るんだ!

……スイマセン新年早々調子乗りました。
前回の予告の処女作リメイク別視点版まだ調整不足です。
平行してて書いてたショートショートの方が先に出来たのでこちらを投下させていただきます。

以下注意事項まとめ
・今回SSなので短いです。
・主にひとみつ、杉みつですが肝心のみつばは出てきません。
・登場人物が少ないので地の文多めで、台本書き部分を今回に限り撤廃
・百合濃度低いのは相変わらず。
・元旦投稿だけど作中の時期は一切関係ないです。

297:コレクター・みく-①
12/01/01 01:52:55.65 c4+zJ8zr
~~~以下本編~~~

タイトル:コレクター・みく

これが杉ちゃんのパソコンにある、みっちゃんコレクションか……。
みっちゃんの下着姿、着替え中、などなど酷いものを見た。

ここは杉ちゃんの家。
非常に珍しいことに部屋には私と杉ちゃんしかいない。

「ちょっと、これ……すごいわね! いくら払えば私にくれるの?」

杉ちゃんが興奮気味に私に話しかける。
私はみっちゃんの生着替え動画――動画まであるとはほんとただの犯罪者だよ――を見ながら杉ちゃんの方に振り向きもせずに答える。

「見てもいいって言ったけど、売るなんていってないんだけど」

そう言い終わるタイミングで生着替え動画も終わる。さて、次はフォルダー“みつばパンツコレクション”を開いてみようかな。

「うぅ、欲しいわ~」

あぁ、うるさいな。
後ろからねだるように杉ちゃんの声が非常に耳障りだった。

「みっちゃんの写真を2度と取らないって覚悟があるならタダであ―」
「見るだけにしておくわね!」

そんな約束してもらってもあげるつもりなんて無いが、狙い通り静かになった。

ちなみに杉ちゃんが見てるのは、私の日記、別名『雌豚飼育日記』だ。
少し前に家に来た時に日記の存在に気が付かれてしまったので、この際見せてあげる代わりに、杉ちゃんのコレクションを見せて貰っているわけだけど。
うん、どれもこれも酷い。そんな日記売らなくても、訴えて賠償金請求するだけで家族全員遊んで暮らせるくらいには酷い。

「それにしても、ほんとみつばのことばっかりね……」

日記を見ながら杉ちゃんが言う。
そっくりそのまま台詞を返してやりたいが、きっとそれは蝸牛角上の争い。
その言葉を自分の中に留めておいて、普通に質問に返す。

「……みっちゃんにもそれ言われた…それからはところどころ私のこと書いてあるはずだけど?」

そう、過去の日記は8割くらいみっちゃんのことばっかりだった気がする。

「まぁ、そうだけど……それでも7割くらはみつばこのことじゃない?」

え……そうだったっけ?
せめて5割くらいじゃないの?

日記を奪ってざっと見る。……7割から8割くらいだった。
なんてことだろう、みっちゃんに指摘されてから然程変わっていなかったとは……。

298:コレクター・みく-②
12/01/01 01:53:58.53 c4+zJ8zr
「う、うるさいな……みっちゃんが一番面白いネタになるんだから仕方が無いんだよ」

そう言って日記を杉ちゃんに返す。
実際そうだ。トラブル持ってくるのは大抵みっちゃんであり当事者もみっちゃん。
みっちゃん以外書くことが無いからこうなってるだけだ。……たぶん。

それから日記を一通り読み終わった杉ちゃんが私に質問を投げかける。

「で、私のコレクションの方はどう? “凄い”でしょ?」

「うん、とっても“凄い”変態画像集だね」

「でしょー……って変態って何よ!」

「私今“凄い”引いてるよ」

「そこなの!? “凄い”をつける所!」

「杉ちゃんって“凄い”よね、いろんな意味で」

「さっきの台詞聞いてからだと悪意たっぷりにしか聞こえないわよ!」

「え? “凄い”悪意たっぷりだよ?」

「っ! いいわよ、もう見せないから!」

怒らせてしまった。どうやらからかい過ぎたようだ。
杉ちゃんもみっちゃんに似てる部分があるからついついからかってしまう。

それにしても、盗撮しておいて、独り占めとは……。
みっちゃんを独り占めしてるようで、妙に腹立たしい。
ということで―

「別に下着姿も大抵家で見えるし。……お風呂も水道代節約で一緒に入ってるし」

―杉ちゃんが羨ましがるようなことを言ってみる。
……正直、言ってから気が付いたが、私も結構恥ずかしい。

すると私の台詞を聞いて、案の定悔しがる表情を見せてから噛み付いてくる。

「っ! なんであんた、コレクション見たいだなんて言ったのよ!」

「今の杉ちゃんの変態っぷりを調査するためだけど……私“凄い”引いてるよ」

「もう“凄い”はいいわよ!」

ああ、しまった。またからかってしまった。

その会話が終わると杉ちゃんはまた私の日記を開いて読み始めた。
私も杉ちゃんのコレクションの続きでも調査しよう。

と言ってもさっき言ったとおり大抵は家でも見れる光景が多い。
……それなのに、なぜだろう? 私は調査という名目の割りに楽しんでいる気がする。
みっちゃんの走っているところ、食べてるところ、頑張ってるところ、高笑いしてるところ……何気ない一枚一枚なのにだ。

家でも、学校でもいつでも会えるのにどうしてだろう……。

私は別段珍しくも無い画像を見て自然と口元が緩む。

「なによ、興味津々じゃない?」

299:コレクター・みく-③
12/01/01 01:55:06.49 c4+zJ8zr
「っ!」

いつの間にか後ろに居た杉ちゃん……趣味悪い―のはこのパソコンを見ればわかりきった事か。

「なになに? 何に興味示してたの?」

「え、ぁ……えっと」

私は顔が熱くなるのを感じた。
口篭る私。興味ない振りしてて一生懸命みっちゃんの画像を眺めてるところを見られたからって言うのもある。
でも、それを抜いても私は答えをすぐに言い出せなかっただろう。

どうして私は、何時も見てるはずのみっちゃんを見て楽しめていたのだろう?

「ちょっと、なに黙ってるのよ。教えなさいよ!」

そう杉ちゃんに言われて、とりあえず今開いているフォルダーの中で、なんとなく一番気に入った一枚を指差すことにした。

「んー? あぁ、これね。いい顔―じゃなかった、面白い顔してるでしょ? これはね―……」

杉ちゃんが写真の説明を饒舌にし始める。
私はと言うと、聞いてなかった。それはただ単に興味が無いとかじゃなく疑問が解消され、説明が耳に届いていなかったから。

杉ちゃんの言ったように、今パソコンに写っている画像には、いい表情の―何かに胸を躍らされているような……そんな表情のみっちゃんがいた。

そう……私はみっちゃんの表情を見てたんだ。

時折見せる悲しい表情、失敗してばつが悪そうな表情、本気で心配してる時の表情。
このパソコンの中には沢山のみっちゃんの感情があった。

それは、普段一瞬しか見せない表情も沢山あって……見ようと思っても見えないものであって。
だから私は、見てて楽しかったんだ。

300:コレクター・みく-④
12/01/01 01:57:22.08 c4+zJ8zr
「―ってわけなのよ。ほんとみつばって、馬鹿よねー♪」

杉ちゃんが満面の笑みで嬉しそうに、まるで自分の出来事を自慢するかように話を終え、同意を求めてくる。

「え、あ、うん、そうだね」

とりあえず、適当に相槌をしておく。
そして、杉ちゃんの説明が終わり一息ついたとき私が話しかける。

「杉ちゃん、何となくわかったよ。杉ちゃんのコレクションの“凄さ”」

沢山の表情を閉じ込めてる杉ちゃんのみっちゃんへの愛……と言うより執念。
正直、かなわないと思った。
一番近くに居るはずの家族である私ですら、こんなに沢山の表情を知らなかった。

「また“凄さ”って、それはもいいって言ったじゃない……」

「違うよ、本当の真面目な意味で“凄い”って思ったんだよ」

そういうと「そ、そう?」と照れながら顔を背けた。
褒めて欲しかった、もしくは自慢したかったはずなのにいざ褒めるとこれだ。
本当、どこぞの雌豚にそっくりなところ。

すると「こ、これなんてどう! 私の一番のお気に入りなんだから!」
そう言って“お気に入りのみつば”のフォルダーを開いてみせる……フォルダー名には突っ込まないでおこう。
私は、今度はどんな表情のみっちゃんがいるか期待していた。

……あ、うん、期待して“いた”。過去形。

そこには卑猥な画像ばかり……物によっては顔も写ってないものもあった。
……やっぱりただの変質者だったよこの人。

「さて、松岡さん呼んで供養しようか」

「ど、どうしてそうなるのよ!」

その後、松岡さんが来て供養を全力で阻止しようとする杉ちゃんを見て今更ながら思う。

みっちゃん……大変だな……。

おわり

~~~以下本編~~~

お付き合い頂いた方ありがとうございます。
今後も鈍筆ではありますが暇を見つけては書いていくので今年もよろしくお願いします。

感想とかあればお願いします。


301:名無しさん@秘密の花園
12/01/01 01:59:19.10 c4+zJ8zr
スイマセン。
最後の
>~~~以下本編~~~
は、
~~~以上本編~~~
の間違いです。
書き込みボタン押した瞬間に気が付くとか……厄年かなorz




302:名無しさん@秘密の花園
12/01/02 00:34:20.32 vQb8lbLz
これはまた素敵なお年玉をありがとうございますw
みっちゃん愛されてるな~w
次作も楽しみに待ってますよ~


303:名無しさん@秘密の花園
12/01/28 19:30:10.77 YynenIDq
流石に再開がないとヤバイね過疎りっぷりが…寂しいなぁ

304:名無しさん@秘密の花園
12/01/31 18:44:28.27 wNYXNh1d
俺はここにいるぞ

305:名無しさん@秘密の花園
12/01/31 22:55:13.25 9pNjC+AG
俺もいるぞ
のりおちゃんまだか!復活はまだなのか!

306:名無しさん@秘密の花園
12/02/10 07:13:29.64 Bqok6u07
みっちゃんとおがちんの絡みが好きなんだ

307:名無しさん@秘密の花園
12/02/12 21:22:15.23 Nblygyna
みつおが・・・いやおがみつ? 違うなやっぱりみつおがか?
205卵生の二人三脚回は良かったが掘り下げるとなると難しいな
素直にSMプレイさせるのが無難だろうけど、おがちんがみっちゃんLoveにはならんだろうな

俺は松みつが大好きだ……松岡さんもっと家出して丸井家に泊まるんだ!


308:名無しさん@秘密の花園
12/02/16 16:39:18.71 xy92AY71
>>300
乙。
やっぱこの二人は一緒に何かしてる時の息の合いっぷりが異常だな

309:名無しさん@秘密の花園
12/02/18 12:54:16.86 JJLYA/ld
>>307
松みつとは盲点だったな。言われてみれは松みつはお互い普通に友達をしてる仲だな
何気にみっちゃんが松岡さんを普通に認めてるってのがいい

310:名無しさん@秘密の花園
12/04/10 13:51:04.77 6YfO4Rn1
おがちんにみっちゃんのファーストキス奪われればよかったのに・・・

311: 忍法帖【Lv=34,xxxPT】
12/05/18 01:04:57.79 cqjKZRHh
忍法帖確認テスト~
301です。
忍法帖に異常なければ近いうちに「これは、デートですか?」の続編投下予定
リメイクの方は……モチベが続かずやめにしました! スイマセン!
前回が正月投稿とか……私、半年もサボってたんですね(汗

それとまだここにスレ住民います? 居なかったら寂しいですね……一応投下はしますけど

312:名無しさん@秘密の花園
12/05/18 22:39:43.57 bpeFsPp0
ちゃんとチェックしてるぜ
ここの住人を甘く見ない方がいい


313:名無しさん@秘密の花園
12/05/18 23:08:43.36 q2ClO4/3
いるに決まってるだろ

314:名無しさん@秘密の花園
12/05/22 17:23:53.43 t4TuFAXr
誰も居ない


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