08/08/23 23:25:10 90zfmKgd0
『Bed-wetting blues』 vol.1
「酔った・・・」
ふらつきながら俺は立ち上がった。ここは居酒屋。
会社帰りに課長に誘われ、一杯付き合うことになった。
「おいっ。 どこに行くんだ?」よたよたと歩く俺の後ろから、同僚の高田が声をかける。
「トイレだよ」 ろれつが回らない口調で言いながら歩いた。
俺はそんなに酒が強いわけではなく、付き合い程度で飲むくらいなのだが、
酒嫌いではなかった。 暗い照明のトイレに入り、便器の前でスーツのチャックを下ろした。
さっき飲んだばかりのビールが勢いを立てて流れていく。
言いようのない解放感に覆われた瞬間、ふと不安がよぎった。
「これって・・・夢じゃないよな・・・」 俺は頬をつねってみた。
大丈夫だこれは現実だ・・・ 何回か俺はこの手の夢を見て失敗したことがある。
何をかって? これは誰にも言えない秘密だが、実は今でもオネショが治らないのだ・・・
俺はメーカーに勤める入社2年目のサラリーマンだ。
エリートというわけじゃないが、 そこそこの成績で国立大を卒業後、
今の職場に入社した。 スポーツはある程度こなすし、マスクだってそう悪くはない。
なのに、たった一つだけ『オネショ』という子供のような悩みを抱えていた。
こんな悩みを抱えている奴なんて周りにはいない。
殆どの奴が小学校までに卒業してしまうオネショに俺はずっと苦しめられてきた。
もう23歳になるというのに、オネショが治る気配はなく、今でも週に2~3回は失敗していた。
「いつまでも何してるんだ?」 ふと我に返ると、吉田課長の姿があった。
「あ・・・いえ・・・なんでも・・・ただぼーっとしてただけです」 俺はそそくさとトイレから出ようとした。
「河瀬・・・今度出張に行ってみんか?」 「えっ!!」 「君も2年目だしそろそろ出張させてみたいと思っているんだ・・・
なーに心配せんでもいい。北沢も一緒に行かせるつもりだから」
「でも・・・俺は・・・まだ・・・」
冗談じゃない!! 俺の体を熱いものが走っていく。 いつ出張に行かされるかびくびくしていたが、こんなにも早く訪れるとは・・・
オネショが治らない俺にとって、泊まりのあるものは全て恐怖だった・・・北沢は俺の1年先輩で穏やかな面倒見のいい人だ。
俺も最初の頃はよく世話になったけど、もし出張先でオネショしてしまったら・・・
「ま、考えておいてくれ」 吉田課長は顔を赤くしたまま、上機嫌でふらふらと出て行った。 酒の席での冗談だろ?あれは・・・
あの言葉で酔いも一気に覚めてしまい、その後は飲む気にならなかった。