15/01/04 14:40:45.97 +y+ps5uD
風呂から上がったあと、バスタオル(?)みたいな大判の手ぬぐいで髪や体を拭いてもらい、ドライヤー代わりの“微風”の魔法で乾かしてもらう。
たぶんスパイダーシルク製とおぼしき白いナイトドレスを着せてもらい、その上にミスコン優勝者みたいな真紅のガウンを羽織らされた状態で、さっきこの部屋─寝室にまで戻ってきた、ってワケ。
ちなみに、ナイトドレスの下には下着は何も着けてない、すっぽんぽん状態。最初はどうかと思ったけど、解放感があって意外に悪くない感じだった。元に戻ったらパジャマの下はノーパンにしてみようかな。
「ん~、でも男物のパジャマだと、ごわごわしてあんまり気持ちよくないと思うわよ~」
ああ、そういう問題もあったか。
でも、さすがに女物の寝間着を買うのは抵抗感あるしなぁ……って!
「い、いきなり声をかけないでくださいよ、コロナさん!」
そう、いつの間にか、部屋の片隅に本物の王女の親友の魔物娘、コロナさんが立っていた。
「て言うか、なんで警戒が厳重なはずのこの魔王の城の最深部に、あっさり忍び込んでるんスか!?」
王女としての知識によれば、この城全体に転移(テレポート)を始めとする移動系魔術を阻止する結界が張られているはずなのに。
「ああ、あたし、この部屋に直接転移するために裏コードを教えてもらってるの」
それでいいのか、魔王城のセキュリティ!?
「大丈夫よぉ、今時、魔王城に忍び込もうなんて不逞の輩が、そこらに転がってるワケないし~」
いや、ほら、たとえば……勇者パーティとか。
「くすくす……RPGのやり過ぎよぉ」
─うん、自分でも「それはない」と思った。
「簡単に言うと、魔界(ウチ)は地上界─あなたたちの住むのとは別の人間界と、休戦条約を結んでるの。休戦って言っても、もう500年以上続いているから、実質平和条約と変わらないわね~。国家使節の交換や民間商人の行き来も普通にあるし」
へぇ、そんなことが……って、意識を向けたら、確かにそういう知識が流れ込んできた。王女だけあって、さすがにケイト姫はよく勉強してるな。
「その顔は、王女としての知識が補填されたみたいね♪ ま、そういうことだから、魔王討伐の勇者が突貫してくるなんて事態の心配は無用よ~」
へぇ、道理で第一王女であるはずのケイト姫の身辺警護とかが緩いような気がしたんだ。
「とは言っても、やっぱり一国の王族ともなると、色々窮屈なコトも多いのよ~」
で、羽を伸ばすために、異世界の庶民と立場を交換するって?
「あはは~、だいたい合ってる、かな?」
ま、そのおかげで命が助かったんだから、文句は言うまい。
「寝る時に痛まないよう髪の毛編んであげるね~」とベッドに並んで腰掛けたコロナさんが、お尻近くまである黒髪を、ざっくりとひとつに編んでリボンで束ねてくれる。
こんなグラマラスな美人さんがすぐそばにいるのに、まるでセクシャルな気分にならないのは、オレ─ワタクシが「魔界の王女」で彼女の親友という立場になっているからなのだろう。
99:『魔王代理は素敵な職業(たちば)!?』(後編)
15/01/04 14:42:21.13 +y+ps5uD
あ、そう言えば……。
「ケイト王女を始め今の王家は双角鬼(デーモン)族みたいスけど、コロナさんの種族って何ですか?」
「ん? あたしは小翼鬼(インプ)よん。祖母が吸精女(サキュバス)で、その血が結構濃く出てるけどね~」
ああ、なるほど。確かにインプなら、成人しても身長はせいぜい小学生並で、体型もツルペタなはず─って王族の知識が教えてくれた。逆にサキュバスは、長身でグラマーな女性種族だから、いい感じにブレンドされてるのね。
「で、あたしのことはともかく、計都くん─ううん、「ケイト」ちゃんの方は困ってることはない?」
って言っても、今日は公休日で、しかも入れ替わったのが夕方でしたし、お夕飯いただいて、お風呂に入っただけですからね。取り立ててトラブルとかは……。あ、そうだわ!
「立場交換の期限は魔王夫妻が戻られるまでってことですけど、それっておおよそどれくらいなんでしょうか?」
魔界(こっち)の暦は一月が30日かつ一年は2カ月、さらに一日も地球とほとんど大差ない約24時間(もっとも、こっちは12等分して表してるけど)だから、時間感覚的には人間界にいたころとほぼ変わらない感じで過ごせる。
ただ、いつ頃までこの暮らしが続くのか知っておかないと、公務への対応も色々変わってくると思いますしね。
「うーーん、ごく一般的な魔界の貴族の新婚旅行なら、普通は1ヵ月弱くらいなんだけど……」
そうですね。ワタクシの知識にも、そうあります。
「前も言ったと思うけど、魔王様って、ここ数年色々お忙しくて、あまり十分な休暇もとられてなかったみたいなのよね~。王妃様は、そんな魔王様のご様子を心配してらしたみたいだし、いい機会だから結構長めに休養とられるんじゃないかしら?」
と言うことは、つまり……。
「短くても2カ月、長いと下手したら季節が変わる頃まで帰って来られないってこともあり得るかも~」
!
「そ、そんなに長くですか?」
「オレ」としては、せいぜい2、3週間だと思ってましたから、最長3ヵ月というのはさすがに予想外でした。
「“下手したら”、よぉ。気まぐれな方だから、逆にひと月そこそこで旅行を切り上げて帰って来られることもあり得るわけだし~」
た、確かに、魔王(おとう)様は、公務面はともかくプライベートでは結構気分屋な面のある方でしたね。
「はぁ……わかりました。いずれにせよ、最長それくらいはかかるという覚悟で魔王代理の役目をしっかり務めさせていただきます。その代わり、「計都」さんの方も、高校生として恥ずかしくない日常を過ごすよう、伝えておいてください」
「うんうん、りょーかい。あたしは星野家の隣りの天川さん家に娘として住み込んで、幼馴染としてお目付け役することになったから、安心してね~」
あまり安心できない気が……いえ、よしましょう。どの道、賽は投げられたのですから。
「じゃ、次は来週末、人間界が土曜日の夜になったら、様子見にくるわね~、チャオ♪」
「あ……」
投げキスひとつ投げて、転移呪文で出て行こうとするコロナを、思わず引き止めるように手を伸ばしかけて、かろうじて思いとどまる。
(何を言うつもりだったんだ、オレは……)
「いつも」みたいに朝まで一緒ーのベッドに並んで寝て、眠くなるまでおしゃべりする?
─それはオレじゃなくワタクシ、いや「本物のケイト王女」の「日常(いつも)」だ。
(大丈夫だと思ってたけど、意外と今の立場に付随する思考習慣に流されてるみたいね……じゃなくて、みたいだな)
この術のおかげで今の立場を大過なく務められるのだろうけど、お父様達が戻って来られるまで、「魔王女」としての立場に染まりきらずに、ワタクシは「オレ」としての自我を保てるのでしょうか?
一抹の不安を覚えつつ、ワタクシはベッドに入ったのでした。
-つづく-
#重複しちゃった>>98は飛ばして読んでください
100:名無しさん@ピンキー
15/01/04 20:52:41.99 DBth3Chm
ろくでなし子は置いといて↓
あけおめ!お正月早々にとんでもないことやらかした結果
奇跡が起きた!
ワイルドだろぉ
dakk(感&&激)un.ne★t/c11/0104yukari.jpg
(感&&激)と★をワイルドに消し去る
101:名無しさん@ピンキー
15/01/05 01:28:42.52 eGjQTIzB
GJ
>「魔王女」としての立場に染まりきらずに、ワタクシは「オレ」としての自我を保てるのでしょうか?
もうコロナの会話前後だけで侵食が進んじゃってるくらいだし無理じゃないか?www
頑張って抗って欲しいなあ(棒
102:名無しさん@ピンキー
15/01/05 02:45:55.10 RXFDPtiq
続き期待