俺の屍を越えてゆけでエロパロ2at EROPARO
俺の屍を越えてゆけでエロパロ2 - 暇つぶし2ch92:名無しさん@ピンキー
14/08/01 14:20:47.53 qKpkqwl6
四夜子とお夏は■に再開できたとしても

四夜子&お夏「会いたかったよ■!」
■「どちらさんですか?ヌエコ知ってる?」
鵺「こんなチンピラ貝とすげーウンチしそうな猫、儂知らん」

になりそうだから会えなくて良かったんだよ
思い出は美しいままで良かったんだよ

93:名無しさん@ピンキー
14/08/01 14:36:11.55 qKpkqwl6
俺もはるあきと一族娘のSS読みたいので待ってる

そしてあんなに死にたがってたのに天界行きでまた死なない存在になったはるあきを
土公ノ八雲さんは憐みの瞳で見ればいい

94:名無しさん@ピンキー
14/08/01 18:49:00.70 dQU67fCB
晴明はアスラとは分離したんかな
蜘蛛足で色々エロい事出来そうなんだが

95:名無しさん@ピンキー
14/08/01 19:50:16.19 NFk5Zca3
>>92
チンピラ貝とすげーウンチしそうな猫に草不可避wwwww

96:名無しさん@ピンキー
14/08/01 23:57:28.29 npOieJBA
晴明がマザーファッカーになるとこを想像したことがある

97:とある一族男子の惚気 1/5
14/08/02 02:58:36.23 71JyG2Ta
流れをぶったぎって投下させていただきまする。
一族男子の一人称SS。ちょっとスイーツ(笑)入っているかも。

++++++++


 記憶がたしかならば、俺が生後2ヶ月ごろのことでした。


 ちょうどその時、交神の儀が行われる月でした。
2ヶ月年上の従兄に「交神の儀がどんなんかこっそり見てみようぜ」と誘われまして。
なんだかよくわからないけど、どういう儀式なのか、どんなことをするのか、
そして相手の神様がどんな方なのか。
子供心に興味と好奇心がわいてきて、従兄の誘いにのって二人で儀式が行われる
特別な部屋にこっそり潜りこんだのです。

 ま、もっとも御簾の陰に隠れて覗いていたところをイツ花に見つかってしまって、
当主様や儀式に臨む一族の方にゲンコツとお説教をくらいましたがね。

 そのときでした。

「どうかしましたの?」

と、お声をかけてくださったのが……そう、貴女でございました。

 当主様とイツ花に促されて謝る俺(と従兄)に、貴女は
「いいえ、私は大丈夫ですわ。お気になさらないで」
とにっこり優しく微笑んでくださりましたね。
その時の微笑みは例えるなら蓮の花のような、とても……清らかで美しいものでした。

 当主様に引っ張られて部屋から閉め出された後も……いや、それからずっといつも、
寝ても醒めても貴女のことだけしか考えられなくなりました。



 やがて、俺も弓使いとして討伐隊に加わって鬼どもと戦うことになりました。
剣士となった従兄やその他の一族のものたちとともに、戦って戦って戦いまくりました。

 何度か死にかけたときもありましたが、そのたびに
「ここで死んだら、あのお方に二度とお会いできなくなってしまう!」
「あの方にお会いになる前にここで死んでたまるかー!!」って
歯を食いしばってふんばって生き延びてきました。
『一族の悲願も大事だけど、もう一度あの美しい女神様に会うんだ』
という貴女への思いを胸にして、文字通りの修羅場を何回か乗り切りましたとも。

98:とある一族男子の惚気 2/5
14/08/02 03:00:49.43 71JyG2Ta
◇◇◇◇◇

 あれから半年と少したち、俺も元服し交神の儀に臨む資格を得まして。
当主様から手渡された交神可能な女神様方の一覧表の中から、貴女の御名を
見つけたときは、嬉しさのあまり心の臓が爆発するかと思いました。

 もちろん、迷わず即効で貴女に決めましたとも。


 俺が貴女の御名を告げたとき、俺以外の一族全員びっくり仰天しました。
「お前……それでいいのか?」「もう一度考え直したほうがいいんじゃないか?」などと
えらい言われようで、従兄に至っては「お前の好みがわからねえ」とまで言われましたよ。


 確かに一度交神経験があるうえ、失礼ながら遺伝情報はそんなに優秀とは
言いがたいのかもしれない。
より上位の女神様を選んで交神すれば、より優秀で強い子供ができるだろう。

 が、それがどうした。そんなの関係ない。
こちとら幼い頃からずっと長い間恋焦がれてきた相手なんだ。
あの方のことを心のよりどころにして、幾多の修羅場をくぐりぬけてきたんだ。
あの方以外の相手なんて、ありえない。ありえないんだ。


 そう力強く反論したら、みんな黙って何も言わなくなりました。
優秀な遺伝子よりも長年(半年と数ヶ月だけど)の恋心を選んだ俺に
呆れただけなのかもしれませんが。

99:とある一族男子の惚気 3/5
14/08/02 03:03:13.77 71JyG2Ta
 
◇◇◇◇◇


 あれから半年と少したち、俺も元服し交神の儀に臨む資格を得まして。
当主様から手渡された交神可能な女神様方の一覧表の中から、貴女の御名を
見つけたときは、嬉しさのあまり心の臓が爆発するかと思いました。

 もちろん、迷わず即効で貴女に決めましたとも。


 俺が貴女の御名を告げたとき、俺以外の一族全員びっくり仰天しました。
「お前……それでいいのか?」「もう一度考え直したほうがいいんじゃないか?」などと
えらい言われようで、従兄に至っては「お前の好みがわからねえ」とまで言われましたよ。


 確かに一度交神経験があるうえ、失礼ながら遺伝情報はそんなに優秀とは
言いがたいのかもしれない。
より上位の女神様を選んで交神すれば、より優秀で強い子供ができるだろう。

 が、それがどうした。そんなの関係ない。
こちとら幼い頃からずっと長い間恋焦がれてきた相手なんだ。
あの方のことを心のよりどころにして、幾多の修羅場をくぐりぬけてきたんだ。
あの方以外の相手なんて、ありえない。ありえないんだ。


 そう力強く反論したら、みんな黙って何も言わなくなりました。
優秀な遺伝子よりも長年(半年と数ヶ月だけど)の恋心を選んだ俺に
呆れただけなのかもしれませんが。

100:とある一族男子の惚気 3/5
14/08/02 03:04:40.52 71JyG2Ta
(申し訳ない、>>99は無視してくださいorz)


◇◇◇◇◇


 いろいろあって待ちに待った念願の交神の儀。
 身を清めてからあの部屋に入り、速鳥の術をかけられたみたいにいつもより
力強く脈うつ胸の鼓動を感じながらも、ご来訪をお待ちしておりました。
緊張する中、イツ花の神楽舞にあわせて下界に舞い降りられた貴女のお姿を
拝見した時は心臓がとまるかと思いました。
あの時と変わらぬ神々しく輝いておられる……これを美しいといわずになんと
言えましょうか。


「あら? あなたはあのときの……?」
「はい、その節はとんだご無礼を」
「あらあらまぁ、ご立派な殿方になられて……」

 なんと、俺のことを覚えていてくださったとは……。
懐かしそうにその大きな眼を細めて微笑んでくださった貴女のお言葉。
俺は猛烈に感動しました。
生きててよかったと、今ほど思ったことはないでしょう。

「……でも、本当に私でよかったの?」

 もちろんですとも。
あの日から貴方のことを忘れたことは一度たりともございませんでした。
今日に至るまで戦って戦って戦って生き延びてまいりました。
すべては、こうして貴女と再びお会いして想いを叶える。
ただそれだけのために…………。

101:とある一族男子の惚気 4/5
14/08/02 03:07:12.06 71JyG2Ta
◇◇◇◇◇

 ああ、なんて素晴らしい。
思っていたとおり……いや、想像していた以上に素晴らしいものでございました。
貴女の『初めて』をいただいた今は亡き一族の先達がうらやましい。


 大きく潤んだ瞳も、瑞々しくつやつやとした柔肌も。
楓の葉のように愛らしい形の掌も、すらりとした指も。
強く抱きしめたら折れそうなくらい細いお体も。
口付けると、ひんやり心地よい感触の唇も。
俺の業物に優しくからみつく舌も。

「あ、あっ、やあ……そ、そこは…………ふあぁっ!」
真心をこめて指や舌で愛撫させていただくたびに、上がるよがり声も。
人間の少女のように恥らう仕草も。
愛蜜があふれてひくついている秘密の花園も。

 ああ、全て愛らしく、美しい。
今こうして俺の腕の中におわす貴女の何もかもが愛おしく感じまする。

「あらあら……お世辞が上手なの……ね」
 いいえ、お世辞ではございませんよ。
誰がなんと言おうとも貴方は本当に美しゅうございます。
「ああ……なんて嬉しい……」


「……ああ、ああ……わた、し、もう……どうにか……なりそ……う」
「私も……です。……………様」
「お願い……あなたの……を、ここに……」

 いいですとも。
では…………本懐を遂げさせていただきます。
半年と少し、ずっと心に温めてきた思いを今ここに…………。

102:とある一族男子の惚気 5/5
14/08/02 03:10:39.78 71JyG2Ta
 
◇◇◇◇◇


 そろそろイツ花が俺と貴女のお子を連れて、天界から戻ってくる頃か。
どんな子なのか見てみなければわかりませんが、きっと貴女に良く似た、姿も心も
よき子でございましょう。
ああ、早くわが子の顔が見てみたい。早くこの手でわが子を抱きしめてやりたい。


 今でもまぶたを閉じれば、貴女と過ごした日々をありありと思い出せます。
思い返せば、実に濃密で幸せな1ヶ月でございました。
1ヶ月続いた、あの交神の儀の日々は生涯忘れることはないでしょう。
あと3、4ヶ月もすればそろそろ寿命がくるだろうと、自分でも薄々感づいております。
が、貴女と添い遂げるためだけに戦ってきた我が生涯に悔いは全くございませぬ。


 初めてお目にかかったあの日からずっとお慕い申し上げておりました。
そして、これからも……この命が尽きるまで、いや燃え尽きてあの世に逝った後も
貴女のことを永久に愛しています。




………………………………………………………………還之皇女様。

<おわり>

++++++++
以上をもって投下終了。
お目汚し&途中コピペミス失礼しました。

1R2週目プレイで弓使い男子のプロフィールが「好き:アマガエル」だったので
カエルちゃんとまぐわらせてやったった。
反省と後悔はしてない。

103:名無しさん@ピンキー
14/08/02 04:49:53.12 xjNuLaHg
GJ!!
一途な一族男子が可愛い!
相手の女神さま誰だろうな、楓…いやまさかと思いつつ読み進めて最後で彼女!?ってなりました。
面白かったです!

104:名無しさん@ピンキー
14/08/02 09:10:45.51 u2cAuvyB
戻ってもカエルだケロね!
でもこの彼は構わないんだろうなw

105:名無しさん@ピンキー
14/08/02 17:11:44.64 f1GrshTw
還之皇女ちゃん可愛いGJ!

106:名無しさん@ピンキー
14/08/02 18:37:46.12 gxmXyWGl
これは良いGJ
2人共可愛いわ

107:名無しさん@ピンキー
14/08/03 14:16:43.55 ZVeziwgB
遺言が「こんな時まで晴明の事考えてる。もしかして、あたし、恋してたのかねぇ…」の女子がいるらしい

108:名無しさん@ピンキー
14/08/03 16:19:36.71 91eKefFQ
>>107
は?清明?
某名前が呼べない人じゃないの?

109:名無しさん@ピンキー
14/08/03 16:37:06.75 w7F/bhoF
やめてくれええええ
娘まで■にNTRたらショックでやってけんんんん
同じ顔でもはるあきのがまだマシやああああ

110:名無しさん@ピンキー
14/08/03 17:19:25.05 SkVPJGdB
>>107
晴明だろ
Twitterの遺言募集で、(晴明と恋云々みたいな遺言作ってもいいですかという質問をした人に対して)
晴明に恋をする一族も出るかもしれませんね、まだボスは未定なので、
晴明のところはこういう風に書いてねとか桝田が言ってたから。

111:名無しさん@ピンキー
14/08/04 00:32:34.34 sTQ/BEKX
保管庫作ろうとしたら昔のあのお銀とかのSSの人に掲載してもいいかどうか連絡を取る手段がなかったでござる
前スレとここのSSだけサルベージしてその他はリンクだけ置いておけばいいんだろうか

112:名無しさん@ピンキー
14/08/04 22:45:10.58 qQzS5Ots
>>111
それがいいんじゃないかな。
保管庫は俺屍スレの保管庫で、別スレ投稿SSはリンクで紹介、がいいと思う

113:名無しさん@ピンキー
14/08/04 23:11:01.62 qQzS5Ots
>>111
2chエロパロ板SS保管庫にある俺屍SS、確認できた分だけ

ゲームの部屋>アルファシステム作品の部屋>【GPO】アルファシステム総合エロその5【式神3】
ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 (2-48th)様:七篠家シリーズ
4-518様: 『虚空坊岩鼻の手記』

その他のジャンル、ノンジャンルの部屋>エロ無し作品の部屋>エロくない作品はこのスレに・10+
1+ -41様: (俺の屍を越えてゆけ)

その他のジャンル、ノンジャンルの部屋>ノンジャンルの部屋>スレが無い作品のエロSSを書くスレ 5
2-531様: 『常夜見・お風の恋』

保管庫にはないけど、2006年に立った『俺の屍を越えてゆけでエロパロ』スレにもSSがあった
URLリンク(mimizun.com)
レス12-51様: 花一輪・おんなの業

既に把握済みだったらすまね。クレクレだけど保管庫楽しみにしてます

114:名無しさん@ピンキー
14/08/06 00:08:05.17 Wwj3U7B0
とある(属性)の神様にご執心のようです というメッセージが出る娘に
あえて全く違う属性の男神を宛がうと興奮する

115:名無しさん@ピンキー
14/08/06 02:52:10.29 eMk6l4dE
稲荷ノ狐次郎を開放した翌月に、元服した娘(出撃隊に居た)が面食いと聞かされて
嬉々として交神させたなあ……。
2なんてものはなかった。なかった。

116:名無しさん@ピンキー
14/08/06 03:55:00.83 ddg9r8Un
>>114
なんて鬼畜な当主様…
でもいいね、最初はちょっと嫌悪感すらあって徐々に乗っちゃう系

117:名無しさん@ピンキー
14/08/06 18:56:51.51 vrEInqfy
石猿とか捨丸に娘を嫁に出す時そういう想像する
初めは嫌がったり泣いたりするんだけど
相手の優しさに触れたり体の相性が最高だったりで絆されて一ヶ月後にはメロメロに…

118:名無しさん@ピンキー
14/08/06 19:58:05.08 SWobFqUy
オイオイ、石猿は男前だろう!?

119:名無しさん@ピンキー
14/08/06 20:00:30.31 4hK6tVld
>>117
捨丸師匠はともかく石猿さんは中身がイケメンだからそういうのありえそうw
人外神だったら河太郎もいいな

120:名無しさん@ピンキー
14/08/06 21:38:30.01 OM9MLIli
石猿さんはリメイクですごく好感度上がった
不器用だけどいい人いやいい猿なんだ

121:名無しさん@ピンキー
14/08/07 03:54:05.79 D9F0r1t2
ここはうぷろだからあげたりとかでも大丈夫かな。少しばかり長くなりそうなんでそこから上げる形にしたいんだけど

122:名無しさん@ピンキー
14/08/07 08:44:52.21 0mjCH7Q/
どっちでもいいんでない?
個人的にスレ投下のがスレが潤うからありがたい

123:名無しさん@ピンキー
14/08/07 17:45:36.09 8to+5L8L
自分もスレ投下で願う

124:名無しさん@ピンキー
14/08/13 02:05:03.40 Bxrofl/Q
大変お待たせいたしました当主様!
>>113様が提供して下さったリンクも追加して、スレ内に投稿されたSS及び絵は全て保管してますヨ

俺の屍を越えてゆけでエロパロ保管庫
URLリンク(seesaawiki.jp)

編集自由のwikiですので自分のSSの誤字を見つけたらこっそり修正してもOKです

125:名無しさん@ピンキー
14/08/13 03:30:17.27 a2b8kgl0
>>124バーンとォ!乙!GJ!
知らなかったSSもあってありがてぇありがてぇ
ほんと神作品だらけだな…

126:名無しさん@ピンキー
14/08/13 10:16:24.76 1rn360GR
>>124
おつおつ。SSからイラストまで保管、眼福です

127:名無しさん@ピンキー
14/08/13 18:04:57.23 FJWvoWp6
>>124
バァーンとォ!乙でございます!!

128:名無しさん@ピンキー
14/08/14 01:31:02.70 5bJD3rfJ
>>122 >>123
規制されてて書き込めなかったけど、解除されたので投下。
葬式スレで盛り上がってたノリから、氷ノ皇子×1一族娘の和姦もの。
流石に二万越えしてる文章を載せるのは引くわ(白目)って事で、
うpろだ利用して投下させてもらいます。意見を貰えたのにすまぬ…

URLリンク(u3.getuploader.com)

>>124
そして、エロパロ保管庫設立乙っす!やっぱり見てて癒されるわー…

129:名無しさん@ピンキー
14/08/14 14:31:03.83 cH+yWbOO
>>128
皇子も一族娘も初々しくかつエロい。素晴らしい
お似合いの二人だわ

130:名無しさん@ピンキー
14/08/17 18:43:15.69 2wKDkv1T
人型の神と交わった後に人外型の神と交わったら
もう人間のモノでは満足できなくならないか気になる
牛頭丸とか凄そうだし

131:名無しさん@ピンキー
14/08/18 22:05:50.94 2aQ+8bn8
一族目線でプレイしてると人間×神様ばかり考えるけど神様×神様も面白そうだよなぁ
子どもこそ生まれないが暇を持て余した神々の遊びはかなり爛れてるだろうよ

132:名無しさん@ピンキー
14/08/18 22:30:03.10 7PkqkauF
狐と桃とかはそういう素材としては良いよね(にっこり)

133:名無しさん@ピンキー
14/08/19 01:06:45.10 5TN+k1Ct
>>128
娘さんかわいくていい子や…そしてエロい
イツ花はどういう風にして張り型でレクチャーしてるのかな?おじさんに教えてくれたまえ
seesaawikiさんがただ今大変込み合っております。ばかりで更新させてくれないので保管庫追加はもうちょいお待ちください

134:名無しさん@ピンキー
14/08/20 02:22:42.73 IFL5TIhi
>>133
いえいえ、こちらこそ保管庫追加作業お疲れ様です。
と、また葬式スレの盛り上がりから書いた最終当主×昼子の話です。
長い癖して、エロまで到達するまでが長い拙作ながら、投下してみたり。


―我ら一族は地獄巡りの最奥、修羅の塔へと到達せり。
   朱点童子討伐の前に、万が一の保険として交神の儀を願いたい。相手は―

 * * * * * * 


「私でお役にたてるなら、喜んで」

彼の一族が交神の儀に選んだ相手は、天界最上位の女神、大照天昼子であった。
長きに渡り一族を支えてきた世話役の娘と瓜二つの顔を持つ女神は、
交神の儀の場へ座する青年を向かい入れ、穏やかな笑みを浮かべる。
昼子が彼とこうして直接対面するのは、青年が少年であった時以来。

万が一の保険、とはいうものの…この青年の代で、一族と朱点
《黄川人》と、そして永きに続いた因縁は幕引きとなろう。
目の前にいる当主の青年は今まで送ってきた一族の中でも、最も心技体共に優れた戦士となりうるだろうと感じていたからだ。
当主襲名の際に彼が選ばれたのは代々の当主の血筋というだけでなく、その脅威的な能力から鑑みても
誰一人反対する意見は挙がらなかったことがその証明といえよう。

―彼ら一族と関わり合える、昼子にとって、心から愛しい時の終焉。
……本心では天界を厭い、憎悪といった感情を持つ昼子からすれば、自身の魂の残り滓となった
イツ花
《本来の身体》を通して、愛おしい生の輝きと触れ合える、時間の終わり。
それを想うと、昼子の胸には複雑に織り重なった感情たちが巡っていく。……本当は、最高神としてでなく。
彼ら一族と笑って、泣いて、怒って、困って。そんな人間としての生を本当は欲している、彼女としては。

巻き込んでおいて何を、と。自分でも理解はしている。けれど、昼子は彼らの輝きが愛しく、眩かったから。

―大照天昼子は、彼の一族を心より愛していた。それこそ、天界の神々たちへと向ける感情とは異なって。
……しかし、そうした自身の考えなどどうでも良い事だと誤魔化そうと。


「ふふ、正直なところ、あなたがたは私はお選びしないだろうと思っておりました」

昼子は柔らかな微笑みを浮かべたまま、目の前の青年へと語りかける。
そう、彼女が口にしたように万が一の保険と称した交神の儀の相手に自分を選ぶとは思っていなかった。
自分が彼らを使って目論んだ事は、もう一族側も察しているだろう。
彼女さ彼らの怨敵たる朱点童子とは異なる形で。しかもそれよりも悪辣ともいえる仇でもある。
当主は昼子へと視線をやった後、今まで黙っていた口を開くと―


「困ったときは、顔で選んでもいい。そういったのは君だろ、イツ花?」

その言葉に昼子は一瞬だけ固まり、焦った。一族は明るくも、健気な世話役の娘、イツ花を可愛がっている。
あの一族の天界への疑心が極致を示した際にも、天界への憎悪を口にする者はいても、
天界最高神である昼子と同じ顔をしている娘に対して、黙っていた事を憤る事はしなかった。

135:最終当主×昼子
14/08/20 02:26:43.23 IFL5TIhi
自身らを献身的に支え、一族の死の度に涙を必死に堪える娘は巻き込まれただけであるのだと、
一族たちは考え、昼子とイツ花を繋げあわせる事を避けたからだ。

けれども、目の前の当主の青年は違うらしい。彼女を―イツ花、と言い切った。

「ふふ、当主様はどうやら勘違いをされているご様子。
 私は大照天昼子。…イツ花ではありません」

微笑みを崩すことなく、当主を見つめると。彼はつまらなさそうにぼそっと言葉をひとつ。

「…ふーん。確かにあんたは、性格ひん曲がってそうだ。それに対し、イツ花は可愛いし」

何だ、こいつ。殴るぞ。当主の言葉に、思わず昼子のこめかみのあたりがぴくりと動きそうになった。
けれども、表情を崩したりはしない。大照天昼子とは、どのような時であろうと笑顔を浮かべ、
相手へと真意を隠しながら、この天の霊廟を総べてきた辣腕の女。……だから。
自身を侮辱し、一族とずっと共に笑える事に嫉妬心を覚える少女を褒める言葉にも、
あら、そのようにお見えでしたかと笑顔を浮かべるだけだった。そうして怒りに堪えた。

天界で初めて顔を見た時や、イツ花を『通して』下界の一族を見ている時は
口数の少ない、気遣い上手な青年だと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。
まぁ、そうして苛立ちを覚えたところでやるころは変わらない。昼子は交神の儀を始めようとしたが―

「確かに、やることやるため来たわけどさ。その前にちょっとばかし、話でもしない?
 君と、黄川人と、『初代当主』。……僕達全部の始まりをだよ、『大照天昼子様?』」

淡々とした口調で、けれどもどこか冷え切った瞳のままに。当主は昼子へと提案をひとつ。
つまり、今回の事件の真相を全て、話せと。彼は、昼子へと語るように無言で強要していた。

「……嫌だ、といったら?」

いまいち、当主の真意が測りかねない。それに、此処で真相をべらべらと語ったところで、
彼らが選ぶ道は変わる訳でもないし、と昼子は微笑みを浮かべたままでいると―

「黄川人につくかな。いわゆる、利害の一致、ってやつ?ほら、あいつ構われたがりだろ。
 僕が「失望しました。昼子の犬やめます」って、そっち側にいきたいとかいったら、
 それこそ嬉しそうに、大盤振る舞いで迎えていれてくれるかもしれないし」

まさか、今まで一族全ての背負ってきたものをぶち壊すような発言を口にした。
それには流石の昼子といえ、表情が消える。当主をじっと見定めるよう、
視線を送っていると、彼は口を歪めながら、おかしそうに言葉を紡いでいく。

「……あいつから受けた『短命の呪い』は解けるだろうねぇ。
 『種絶の呪い』に関しては、まだ下界には『首輪』つきはいるんだから…案外何とかなるかな」
「……一族が今まで背負われてきたものを、あなたは全て放棄されると?」
「生憎、僕にとっては一族の祖が何を思い戦ってきたかとか、正直どうでもいい。
 ……ご先祖様の血ってのは、そんくらい薄れるくらいにあいつと戦ってきたってことだよ。
 そんなのが一族の当主背負ってるとか良い冗談だよねー、ほんと」

けらけらと笑っていたと思えば、一転。青年は見る者がぞっとするような、
殺意と言ってもいいものが籠められた視線で。

「僕はさ、正直、あいつへの殺意とか薄いんだよね。あいつがやってる事はそりゃあ迷惑だけど。
 ……僕達の道化芝居を上から笑いながら見てる天界の奴等のが、憎くて、殺してやりたくて仕方ない」

聞いたものを震わせるほどの怨嗟が籠められた言葉を、昼子へと投げつけた。
その言葉に流石に昼子もぞくりと、自分の中で何かがせりあがってくるのを感じる。
青年の表情、声、雰囲気。かつての自身が抱いたものから来る、それとよく似ていたから。

136:最終当主×昼子
14/08/20 02:27:30.41 IFL5TIhi
「京を守ってきた一族の当主が乱心を起こして、『無辜』の人々を朱点童子と殺し回るなんて、
 なかなかいい『見世物』じゃない?それを止めようにも神々も、流石に朱点ふたりは怖いでしょ?
 何せ、ひとりを鬼の中に封印するので手いっぱいだったみたいだもんね?」

嘲るような笑い声、そして『見世物』という言葉に昼子は徐々に表情は氷のように冷たくなっていく。
……この男の前で、表面を取り繕うなど不要だ。そう考えると、彼女もまたせせら笑うような声で。

「……つまり。ご当主さまは、私が、種絶の呪いを掛けたと。そう、おっしゃりたいのですね?」

当主から目を逸らすことなく、包み込むように柔和な作り笑顔ではなく。
自身が持つ本来の苛烈さからくる、相手を見下すような笑顔で問いかけた。
当主は昼子の本性、ここにみたりと笑みを浮かべると、再び話しはじめた。

「不思議だったんだよねぇ。何で、わざわざご丁寧に種絶の呪いなんてもんを掛けたのか。
 そんなもん掛けなくたって、短命の呪いが掛かってんじゃん。だから、当主はたかだか二年で死ぬし、
 人と子供が出来たとしても、そいつもすぐ死ぬ。脅威でも何でもない。なのに、何で種絶の呪いなんて、
 神が介入出来る『隙』を作った?最初っから、それを一族へと掛ける事。この計画そのものを考えていた奴が、
 図面図に予め織り込んでたとしか思えなかった。そこんところはどう思うよ、現天界最高神サマ?」

視線がぶつかりあう。音の無い火花を立てて、静かな焔が燃えている。
……ここで変に誤魔化したら、逆効果だろう。それに。正直、全部ぶちまけてしまいたいという、
今まで昼子の中で溜めきっていた不満や、心情を吐露したい。目の前の男がムカつくというのもあったが。
はぁ、と小さく溜息を吐くと。昼子は天界最高神の顔ではなく、イツ花本来の顔となると。

「……わかりました。ま、長くなるし、ぱぱっとお話ししましょうか。
 それとも、とびきり脚色したお涙頂戴ものがお好みですかネ?」
「あ、やっぱそっちが地なんだ。流石、『カマトト腹黒女』」
「腹黒のカマトトじゃなきゃ、こーんな馬鹿みたいな退屈な場所と、其処に住んでる
 見下すことしか出来ない道化どもを纏めたりなんて出来ませんよ、性悪当主様?
 …さぁて、何から話しましょうか。どうせ長くなるでしょうし、茶請けでも用意しますか」

よっと、お茶の用意をし始めると、当主は先ほどとは異なる明るい声で。

「あ、じゃあ僕、椿餅がいい。お茶は熱め」
「草団子でいいですよね?…ま、熱いお茶でしたら出しますよ」

 * * * * * * 

「そうですネェ…最初こそ保険だったんですよ、この案。
 ホントは初代当主さまが育ってから朱点と戦って貰う算段だったんですけどォ、
 源太殿はともかく、お輪叔母様まで、やる気だしちゃいまして」

熱めの茶を淹れた湯呑から、湯気が立ち昇る中で昼子は語り始める。
青年は何処か遠くを見つめながら話す昼子の言葉に、黙々と耳を傾けていた。

「……それだけ源太殿や、初代当主さまの事を、愛しちゃったんですかネ。
 新たな朱点の計画をあの子に知られた事を知ると、私たちがまだ早いっ言っても。
 お輪叔母様は源太様に全部事情を口にすると同時に、大江山にふたりで登っちゃったんですヨ」

その行動が浅慮である事を呆れるような。その行動を移した事に対して、わからないでもないような。
それほどまでに彼らは子を愛したという事へと憐み。そして、自身のかつてを懐かしむような何か。
ひとつの感情では表現出来ぬほどに入り混じった、複雑な感情を滲ませたその言葉。
当主は目を細めたが、まぁそれの是非を問うのは良いだろうと、その『先』の疑問を口にした。

137:最終当主×昼子
14/08/20 02:29:07.36 IFL5TIhi
「へー、その割には呪いを掛けられたとき、さっさとこの手管に移せたね。
 神々の中にはさ、人間との交神を嫌がる奴等って、結構いたんじゃないのー?」

神連中をどこか笑うような、その言葉に。昼子もにぃっと口を弧に描きながら、笑った。

「そりゃー、もう、いましたよ!朱点をもうひとりこさえるってぇだけで恐ろしいってのに、
 こんな恐ろしい手段をとるとは、やはり大照天昼子は気狂いだとか、正気の沙汰でないとか。
 私からしてみれば、自分の穴も拭けないヘタレの根性なしが、としかおもえませんでしたけどネ?
 まぁ、私も遣り手の女帝って奴ですから、ちょちょっと指先で、ほいっとっ」

空を軽く指でぴん、と跳ねるような仕草をする。それを見た当主は心底おかしそうな顔をした。

「うわぁ、この子怖い」
「その子のお陰で、今のご自分があるんですから、感謝してくださいヨ」
「はいはい。そいつの勝手な都合にこっちは一族が振り回されてますけどね。
 で、そんな軟弱者どもを丸め込んでからは、女帝サマは今現在どんな按配なわけ?」

天界の神々が聞けば卒倒したり、憤懣したりするような会話を彼らは続ける。
だんだんと彼らの声色は楽しげなものが含まれていて、話は流れるように続いていた。

「これまたびっみょーなとこですかねぇ。元っから私側だったのにしても、反私側だったのも。
 最初の方こそ少なかった、一族派って奴に鞍替え。それもまぁ、結構の数だこと!
 一族派は今現在、この朱点との決戦を終えた後に、私が一族をどう扱うかで反乱してきそうですしぃ。
 その隆盛を上手い事利用してやるか、という奴もそっち側で権力握ろうと企んでるでしょうね。
 でもォ、かといえばやっぱ人との間の子も、それに現を抜かす神が気に食わなーい!って奴等もいるわけです。
 私があなた方に変に関わると天界で大きな戦が起きそうだしで、そっとしておくか、って腹積もりでいますヨ。
 そして、何らかの干渉をしようものなら…まっ、言わなくとも分かりますよネ?

 ……戻ってきてる首輪付きも、あなた側よりばっかな上、上位におわす力の強い神達です。
 あっ、ただし捨丸は除く。あいつは相変わらず歪みない。まッ、だからこそ面倒にならないんですけど。
 あと、あの馬鹿猫は戻さないでくださいヨ、絶対。また余計なことしそうですし。

 ……氏神になった一族の子たちも、そこそこいるのも大きいですね。
 一族の子達には私や神が気に食わないって子も確かにいますけど、大抵は天界での台所事情を理解して
 何も言わなくなったり、逆に神様に絆されたりしてる子もいます。
 ま、基本的に一族派の神々と同じく、一族へ変なことしないな反乱起こしたりしないって約束してくれてますヨ。
 あ、そうそう。最近戻られた氷ノ皇子殿を一族の娘で引き込んでくれたの、助かりました。
 私が出るといろいろメンドーなことも、あの方が大々的に一族の後ろ盾になってくれると楽なんですよネー」

明け透けな天界裏事情を昼子はけらけらと悪口を含めながら暴露していく。
当主もすっかりと相好を崩しながら、さながら世間話でも歓談するかのような体勢だった。

「うちの姉上を君みたいな腹黒扱いしないでくださいー。姉上は底抜けのお人好しなんですー。
 本人は誰にも気付かれてないと思ってるけど、元凶に同情して泣くほどよ? 
 黄川人には遠慮なく助走つけて腹に鳶膝蹴り余裕の気構えでいりゃあいいのに、変に抱え込むといいますか。
 結局、あいつや目の前のカマトト女のせいに振り回された結果なんだからさー。
 ま、だからこそ同じお人好し系の氷ノ皇子を交神相手にしたんだけど。姉上あいつ好きっぽかったし。
 つーかさー、予めそこんとこは下界にも伝えていてよ。付け込みやすそうな奴、表にして出しとけ、コラ」
「変に敵対心強いのの名前出して、傷物にされちゃあたまらないじゃないですかァ!
 そっちこそ、そうしたの御せるような床上手なのを回してくださいナ」
「この男前とかは、どうよ?」

昼子の文句を聴くと、当主はにぃっと笑いながら自分を指差した。
すると昼子の口元の弧はもっと深くなり、おかしそうな声で笑った。

138:最終当主×昼子
14/08/20 02:30:57.19 IFL5TIhi
「確かに顔はいいんですけどォ、失礼な性格じゃないですか」
「相手が相手ですから、失礼なだけですー。普段はあんま喋らないし」
「ホント、そうですよ、もう。天界で初めて顔見たときは喋らずに頭下げるだけだったし。
 イツ花から『見てた』時も、大人しくて無口な方だと思ってたから、驚きましたヨ。
 こーも図太くて、ぺらぺらと喋る性悪男とか知りませんでした」
「僕もここまで大照天昼子様が、粗雑で親しみやすいカマトト女とは思ってなかった。
 その面の厚いことったら、ないわー、本気でひくわー。…ま、そっちのが接しやすいし好きだけど」

その言葉に。昼子は楽しそうだった会話をぴたりと止め、不思議そうな顔で当主を見る。
当主はそうした昼子の様子を気にする様子もなく、団子を頬張っていた。
こうまで言いたい事を言いあえる、毒を吐きあえる相手というのは。昼子にとって初めてだったのだ。
だからこうまで、言わなくてもいいような。普段なら殺してきた感情が露わになる。

「…ホントですか?スッゴく失礼な言いようなうえ、言いたい放題言ってますけど」
「適当な嘘で誤魔化したらこの女、床でひぃひぃ言わせてやろうかってなったけど。
 本当に大事なとこで嘘つかなかったし。一族のこと、思ってくれてた事はちゃんと理解出来たし」

三つ連なった団子のうちの二つ目を口に入れながら、青年は話す。
今まで話してきた中で、一番穏やかで。優しい声色だった。それで気が付く。この、当主は―。

「……嘘なんですか。あっち側につくって」

最初に昼子に切ってみせた啖呵は、ただ相手を揺さぶる為だけの言葉だったと。
昼子の溜息混じりの声に、そりゃそうだよ、と昼子の言葉を肯定した。

「天界には憎い奴等がいるけど、『家族』だっている。何より下界の『家族』を裏切れるわけがない。
 でも、はっきりしときたかった訳ですよ。どんな事情で振り回されたか、改めて知っておきたかった。
 で、その振り回された後に、『家族』が始末されようもんなら、黙ってられないじゃないですか。
 でも、安心した。……君が僕達を守る為にこの手をとってくれたってわかって。
 この手段を君が選んだのは、一族を庇護する神々を増やしたかったのもあった。そうだって、わかったから」

先程からの明るい雰囲気は溶けて、どこか静かな空気が場を満たしていた。

「恨まないんですネ」

ぼそり、と呟かれたその言葉には。なんで、その手段を取った自分を責めないのかという
昼子の心情が滲んでいて。当主は団子全てを食べきると、手を合わせた後、優しい声で続けた。

「恨むもなにも。その女の子のお陰で初代当主は血を繋ぐことが出来た訳だし。
 少なくとも、僕は感謝してるよ。…ありがとう、イツ花」

そうして、笑顔を昼子へと見せた。嘲るものでもなく、悪友と話し合うようなそれでもなくて。
まるで包み込むような、穏やかで柔らかい微笑みを。彼は其処まで理解しているのだ。
自分があの朱点の姉であると同時に。本来の名が、『イツ花』だと、いうことまで。
忘れていた名前。忘却の海へと沈めて、見てみぬふりをして。本当は呼ばれたかった、名前を。

「……それ、ズルいですよ。私の本当の名前、呼ぶとか。その名前、此処来たとき、捨てたのに。
 というかぁ、全体的にズルい。ズルいですよ、当主さま!…私、罵られるのが当たり前なことしてますヨ?
 なのに、納得してありがとう、とか。普通にキレられるより、キツいです」

いっそ、ふざけんなこの野郎、とでも。怒りに任せて、殴りかかってくれた方がずっと良かった。
自分のやっている事の是非なんて、正しい考えであっても、人道からは外れていたものだから。
だから、いつか自分を糾弾して、罵ってくれたらいいのに。そんな風に考えていた昼子にとって、
赦されることの方が、ずきずきと痛みを与える事なのだ。

139:最終当主×昼子
14/08/20 02:31:41.78 IFL5TIhi
「だから、怒んないんですよー。だって、ここであんたを責めたら、あんたはちょっと楽になんじゃん。
 ……あんたはカマトトの腹黒女だけど。本当はここが誰よりもいっちばん嫌いな癖して、
 大事なもん取り戻す為ならどんな泥水だろうと、美味しそうに飲み干して笑う女だよ。
 んで、一度好きになったもんには延々と執着してくる奴。わざわざ、イツ花通してまで
 一族のその後をちゃんと見届ける辺り、あんたも一族大好きだよなー。あの呼んでもないのに、
 わざわざ顔出して裏事情言い出す構って生足野郎といい、ほんーっと、おまえら姉弟だわ。
 ―だから。…ま、他の奴がなんか言っても、僕はあんたを責めないよ。助けもしないけど」

理解している割には、同情はしないとか。思わず、昼子は不貞腐れてしまう。
本当、全体的に狡いのだ。この目の前の男は。責めないで、見てるだけ。だなんて。だって。

「あんたがやったことは確かにこっちからしたら良い迷惑ですし。それに、それ突っぱねるだろ」
「……助けてって、言ったら?」
「なら、そんときはひっぱたいて、てめぇがやったことのツケなんだから甘えんなって、言ってやりますよ」

―本当は、一番欲しかった言葉なんてものをあっさりと口にするのだから。

「さてと。話も終えた事ですし、やりますか」
「この空気の流れでいきます?」
「やる事やる為に来たんですよ、自分。じゃ、脱ぐ?それとも脱がされる方が燃える派?」

目の前の男は、自分やイツ花よりも、ずっと空気が読めないんじゃないだろうか。でも。

「脱ぎます。じゃ、バァーンと、いきましょっか?」

いやじゃ、ない。こうした空気も、彼と肌を重ねるという、行為も。

 * * * * * * 

そうして場を移し、素肌を露わにした男女は閨の布団へなだれ込む。
ふたりの間に流れる空気はというと、それこそ艶やいたものなんてものはなく―

「んー、実はですね。なんと!私、大照天昼子、こうみえても経験がありません!」
「マジか」

なんというか、今から肌を重ね合う空気ではなかった。

「おおマジですよぉ。そうしたことに現を抜かすヨユーなかったですから」
「うわ、重圧だわ」
「やぁですねぇー。自信あるんじゃなかったんですかー?」
「あー、はいはい、善処します」

そうしてけらけらと笑いながら、当主は昼子の唇を軽く自分の唇と重ねた。
啄むような軽く触れ合いではあったけれど。それすら初めてであったことから、
昼子は何度も行われる口づけに、身体を少しばかり強張らせる。

140:最終当主×昼子
14/08/20 02:32:56.30 IFL5TIhi
「怖い?」
「まー、少しだけ。でも、私が怖いから嫌ですなんて、口が避けてもいえませんよ」
「引っ張る約束はしたし、ちゃんと、痛いことは無理にしませんよ。
 途中でむかついたり、乗ってきたら約束は破棄してやりたい放題しますけど」
「あー…それなら、平気です。ほかの神々には内緒にしてますけど、
 交神の儀では、あんま痛みを請じることはないようしてるんです。
 んでぇ、普段よりも感覚を鋭敏にさせて、感じやすくさせてるんですよ。
 そっちの方が多分興も乗るだろうし。…で、最後のほうの言葉で、ん…っ…」

昼子が当主への文句を口にする前に、再び角度を変えて口づけを零される。
少しずつ濃度を増しはじめたそれにより昂揚した当主の舌が、昼子の唇を軽くなぞった。
そしてするりと舌を中に忍び込ませ、軽く彼女の歯茎をなぞった後に引き抜いた。

「でも、こんな風に可愛がられる必要性がなくても、されると嬉しくはない?」
「ふふ、そうですねェ。…うん、結構、好きです。もう一度、してくれます?」
「了解。…舌、出して」
「……ん、はい。…ぅむ…はぁ……っ」

ちらりと現れた昼子の薄紅色の舌へと、当主の真朱色の舌が絡まっていく。
ぴちゃりと音を立てながら、何度も離れては絡まり合う事を繰り返していけば、
互いの熱い吐息が零れ、互いの口元に掛かると気持ちはどんどんと昂揚していくばかりだった。
くちづけを続けながらも、当主の手がするりと昼子の肌を滑り、胸元へといくと。
その双丘の膨らみをやわやわと揉み解し、胸元の頂をぴん、と軽く爪で跳ねた。

「きゃっ…」
「可愛い悲鳴だことで」
「ちょっとっ、油断してましたかね…っ、ふぁ…ん…ぅ…」

徐々に昼子の目が蕩け、ぼんやりとしたものになっていく。
自身の身体の下で息を荒げ、甘い声で鳴きはじめた昼子に、当主は耳元で囁いた。

「……意外と可愛いな、あんた」
「ありきたりなお世辞ですね、それ…というか、意外とか言わないでくれます?
 意外でも何でもなく、ただ可愛いって言ってくださいヨ」
「本当を口にして何が悪い。普段の素行が悪いんだよ…ん…」

耳元で甘い言葉を囁いたと思えば、そのままするりと耳朶へと舌を忍びこませる。
当主は昼子の耳朶で舌を暴れされながらも、指の動きを止めはせず。程よく膨らみを持つ双丘を揉みほぐせば、
指によって双丘は形を変え、柔らかな感触に鍛えられた指はその中へと埋もれていく。
徐々に高揚感を覚え始めた事により、硬さを覚え始めた蕾を軽くきゅと抓んでやれば。
昼子の口からは弦を弾いたような甲高い喘ぎ声と、甘い吐息が零れていくだけだ。
ぬるり、と舌を耳朶から引き抜くと、そのまま首筋へと舌を這わせ、胸元へと辿りつく。
そのまま右胸に咲いた真朱色の蕾を舌で往復させ、硬さが増してくるのを確認しながら。
当主はこりこりと硬さを持ち、屈起した蕾を音を立てながら、吸ったり、甘噛みしたりを繰り返す。

「はぁ…っ、やっ、それ…っ、好きかもしれないです…」

すっかりと蕩けきった声色で、自身のもどかしい情欲に耐え切れずになり始めた事から
昼子はもじもじと股を摺合せはじめようとすると、当主はにぃっと悪ガキのような笑みをして。
待ったをかけるかのように、彼女の足の間に自身の膝を挟んで、それを阻止する。

141:最終当主×昼子
14/08/20 02:33:45.38 IFL5TIhi
「やっ…そのぉ…っ」
「せっかくふたりで神聖な『交神の儀』とやらをやってるんですから。
 ひとりで盛り上がられるってのも、まぁ楽しくないじゃないですか。
 そろそろ、濡れてるか確認するためにも下を触ろうかな…さて、足、開くよ?」
「…ぅん…ほんとう、一言多いですネ…んっ…どうぞ…?」

挟んだ膝を引き抜き、彼女の秘所部を確かめようとして足を開こうとするものの。
当主としては思いっきり開くつもりだというのに、昼子の方はそれは流石に嫌な様子だった。
布団へと視線をやれば、布地は彼女の愛液によって滲みを作っている辺り、ちゃんと濡れてはいるようだ。
が。当主が開こうにも、昼子はこれだけ開けば充分だといわんばかりに、それ以上は阻止してみせる。

「あの、もう少し、開いて欲しいんですが。併せって大事じゃないですか。…コラ、閉じんな」
「や、やですよぅ…自分からとか開くとか、結構恥ずかしい、ですしぃ…」

わざとらしいくらいの恥じらう可愛らしい声…いわゆる猫なで声で昼子がこれ以上は嫌、と言うと。

「はは、こやつめ。まだ余裕あるだろ。…よし、遠慮なく開く」
「えっ、きゃんっ、そ、それ、はんそくっ!無理矢理しないって言ったじゃないですかっ」
「痛い事じゃありません。つーか、これしないとあんたが痛いから、するんです」

昼子の両足を開き、その中心にある花弁からは、たらりと甘い蜜が零れ落ちている。
少しずつ挿入の際に起きる異物感を慣らしていくべきか、と人差し指を花弁へと挿しこんだ。
すっかりと熱い甘露で滴ったそこは、指でかきまぜる度に淫らな音を立て、昼子の蜜は
指を奥深くへと誘うかの如く、ぬるりと深く、深くへと潜り込ませていくのを手伝っていた。

「ん、はぁ…っ」
「……いまで、指一本。どんな感じ?痛くない?」
「は、はい…っ、痛く、ない、ですよ…っ」
「ちょっとずつ、増やしたりしてくから。最初からアレ突っ込むのは辛いでしょ」
「ん、ふふ…っ、たすかり、ます…ん、はぁ…んん…っ」

ひとつの指では物足りなさそうにし始めると、もうひとつの指を咥えさせてやる。
痛くはない、というものの。やはり、初めて―かどうかは当主は知り得ぬところだが―
外から異物が捻じ込まれる感覚と言うのは、どうしたところで快楽よりも不快感が勝る。
昼子の瞳から涙が零れ落ちていくのに対して、当主は彼女の唇へと啄むような口づけをして。
そして首筋に、鎖骨にとところどころに性交の痕を咲かせ始めていた。

「あっ、ん…ずいぶん、可愛がって、くれますね…」
「善処するっつたじゃないですか。僕の可愛い女神さま」
「あ、それ!いま、私の中の当主さまへの好感度すこーしあがりました。…もっと、こうして、くれます?」

昼子が当主へと苦しげな、けれどどこか嬉しそうな微笑みを浮かべると。
当主も彼女のおねだりの通りに口づけを幾度も繰り返し、そっと髪を優しく梳いた。

142:名無しさん@ピンキー
14/08/20 08:52:12.12 IFL5TIhi
と、連投規制入ったっぽいです。また後日改めて投下させて頂いても大丈夫でしょうか

143:名無しさん@ピンキー
14/08/20 11:04:42.82 EQJN2Tb6
な、生殺し…!先が気になる!

144:名無しさん@ピンキー
14/08/20 20:38:55.19 nGadmZAx
昼子様可愛い
続き全裸待機

145:最終当主×昼子
14/08/20 21:54:14.05 IFL5TIhi
>>141からの続きになります。これを含み、6レスほどで終わる筈…!

(……こんなの、だったんですかネ。私がイツ花のままだったら。人、だったら…)

こんな風に男性と肌を重ね合い、子を成して。家族を作ったのだろうか。
もっとも、そうした事は夫婦。つまり心を通じあわせた男女が行うべきものである。
ましてはその間に産まれた子に、お前は怨敵を殺す為の道具だ、とは。決してならなかっただろう。
第一、昼子は目の前の青年を。……どう捉えているか、だなんて。わからないのだ。
昼子にとって、恋愛なんてものは行う前に去っていったもの。泡沫にすらならなかったものだ。
……当主は、青年は、彼は。昼子を、イツ花を、自分を。どんな風に、見ているのだろう。
熱に浮かされた譫言を脳裏で考えながら、すっと彼の頬へと手をやれば。
彼は昼子へと、酷薄な笑みでもなく、悪巧みをしあう時の顔でもなくて。ただ、柔らかに微笑む。
それだけ、なのに。昼子の愛液で熱く滴った蜜壺よりも、心の胸奥の方がずうっと熱くなる。

「……僕のもそろそろ濡らしておかないと、な。よっと」

彼はすっかりといきり立った剛直を、濡れそぼった昼子の蜜壺へと何度も擦りつける。
其の度に彼女の愛液は崛起した彼自身へと絡まり、花弁に隠されていた蕾も擦れて。
昼子の中の高揚感も、肉欲もどんどんと高みを覚え、体中が火照りを隠し切れなくなる。

「ひゃうっ、あっ、やぁ…っ、そこに、こすりつけるんですか…っ?」
「こうやって、濡らしながらいれたほうがいいし。何より、僕も気持ちいい」
「ぅん、そ、ですか…っ、はぁ…っ、ん……っ!」

ぐちゅり、ぐちゅりと何度も淫らな音を立て、男女の情が交わる時、特有の甘い匂いが立ち込めていく。
昼子も、当主も。互いから溢れ出ては、抑えきれない色欲により、思考を支配されていくだけ。

「…それなりには、大丈夫そうになってきた、かな…イツ花…」

彼が、名を呼ぶ。……昼子ではなく、イツ花と。そう、呼んだ。
昼子…イツ花は、それを当たり前のように受け止めて、彼へと微笑みを返す。

「いれるとき。痛いんだった、言ってよ。緩和されるっても、痛いのは痛いかもしんないし。
 ほら、ちゃんともっと引っ付く。首筋か肩辺りにでも抱きついときなさい」
「……ふふ、はぁーい」

これが心を通じあわせた男女同士、という奴なのだろうか。…馬鹿みたいに甘ったるい児戯のよう。
でも、何だかこうして肌を重ねていると、イツ花の鼻の奥がツンとして、泣きたい気持ちでいっぱいになる。
……ずっと、遠い夢見事だと思っていた。他人事だった。自分には、関係のないことだと。

146:最終当主×昼子
14/08/20 21:55:15.76 IFL5TIhi
彼が、イツ花の花弁奥深くへと潜り込んでいく。きりきりと、無理矢理抉じ開けられる痛みがする。
けれども、なぜだろう。痛いことが、とても嬉しくて。イツ花は、涙を一滴零して、それが頬を伝っていく。

「ん…っ、はぁ…っ、なか、はいってきて、ますねぇ…っ…ぅん…」
「だね…っ、結構、キツいかもしんない。きゅうって、中でしまって。きもち、いいや。イツ花は、どう?痛くないの、本当に」
「ふふ、はい…っ、ちょっとばかし、異物感はしますけれど…まぁ、慣れ、ですよ、ね…?ん、はぁ…っ」

涙交じりに微笑むイツ花に、青年は彼女の涙をぺろりと舐めとると、そのまま深く口づける。
何度も角度を変えながら、互いの口内へと舌を忍び込ませあって。情を、交わらせていく。
イツ花は青年の首筋へと甘えるように腕を回せば、青年はイツ花の腰をきゅっと抱きしめた。
人と神との交わりは、まるで男女の交わりような様相を見せていた。イツ花の花芯へと辿りつき、
やがて暫くの時間が経った後―

「……動かすよ」
「……どう、ぞ?」

青年はイツ花の腰を掴み、中へと情欲を辛抱でき切れずに何度も挿入を繰り返す。
そのたびに無理矢理中がこじ開けられていく痛みと、繋がっていく甘い感覚がイツ花を襲う。
そしてやがて、痛みと甘さの天秤は逆転して。破瓜の痛みより、奥深くを突かれる快楽が上回りはじめた。

「あっ、ひゃ…っ、それぇ…んっ…っ!」
「……良い?」
「は、はい…っ、あっ、やっ、あん…っ!あん、なかでごりごり、されると、ん、はぁ…っ!」

ぐちゅりと音を立てながら、自分の中を掻き混ぜられる度に頭がおかしくなりそうだ。
……彼が、見たい。それなのに、視界は自分の涙でぼやけて彼が見えない。
そんなイツ花の心を知ってか、知らずか。青年は、甘い声でイツ花の耳元で囁く。

「イツ花」
「だからぁっ、それ、はんそくですよォ…っ、あふっ、ひっ、んぅっ…!」

本当に、そうして『名前』を呼ばれる度に。日が落ちて、花が咲く。
昼子にとって、天高く地を見降ろし続ける太陽よりも。野に朗らかに咲き、散っていく花の方が。
……ただ、そんな。ありきたりの幸せが、本当は欲しくて。イツ花は、青年の名を呼んだ。
当主ではなく、青年の本当の名前を。久方ぶりに、誰かから名を呼ばれた事に一瞬だけ目をきょとんとさせ。

「……それも反則になりませんかね。……結構、胸に来ましたよ」

青年は嬉しそうな笑みを浮かべると、自身の唇とイツ花の唇とを重ね合わせた。
まるで青年から溢れ出る、ひとりの少女への想いを注ぐように。

147:最終当主×昼子
14/08/20 21:56:24.42 IFL5TIhi
「あっ、そういうのも、だめ、です…っ、ぅん…っ!あっ、やっ…ああっ、ひん…!」
「…っく、なん、で、駄目なわけさ…?」
「…はぁっ、言ったじゃ、ないですかぁ…っ、あんっ!ないん、ですよォ…っ、
 誰かから、こんな…っん、可愛がられる、とかぁ…っ!あっ、やぁ…むぅ…っん…!」
「なんで、だめなのさ…っ、ぐぅ…っ!」

溺れていく。どんどんと奥深くへ。忘却していたのではなくて、忘れたふりをしていた場所。
本当は彼女が一番欲しくて、けれども絶対に手に入る事はないとわかっていた。
父は保守派の神々が唆した者へと殺された。母は自身らを庇って、見世物小屋を辿り、殺された。
本当は助けたい弟。まだ、自分が手に入れる事が出来る、自分にとっての…イツ花に遺されたもの。
その為に、自分は何だってした。それが許されるだなんて、そんな身勝手許されるわけがない。
一族を利用して、それをもう一度手にしようとした罪。それは、一族にとって赦されぬこと。

……もう、自分は大照天昼子になった。『イツ花』では、ないのだ。
だから、一族から愛されているイツ花が羨ましかった。あんな風に、共に生きたかった。

「だ、だってェ…その…恋、したこととか、ないんですよ…っ、
 そんな駆け引きは、なかったんです…っ、あっ、やぁ、んん…っ!」

近所のおばさんやおじさんと他愛無い世間話をしたり、庭先に花を植えてみたり。
朝が来たら大きな声で皆を起こして、自身の作った朝食に舌鼓を打って貰って。
彼らと一緒に、彼らと一緒の時を生きてみたかった。それに、恋だってしたかった。
……『イツ花』が得られなかったものが。大照天昼子は、欲しかった。

この広く乾いた天界という世界で、朱点という異物であり、突如頂へと立った娘へ
馴れ馴れしい言葉を掛けるものなど、いる訳などなく。そうしたものは憧れるだけで、
自分にとって遠い、ただ『見ているだけ』の出来事でしかない彼女からしてみれば、
色恋沙汰なんてものは、遠く懸け離れた。夢のようなものでしか、なかった。
こうして触れ合う事から生じる熱の温もりも、甘い睦言を重ね合うことすらも。
それこそ、さっきのように軽口を叩きあえることすらも。昼子にとって、他人事《あこがれ》だった。
そう、ずっと。天界に昇ってからずっと、欲しかった。こんな風な、何でもない幸せが。

「いい、じゃない、別に、さ。交神の儀を恋人同士の肌の重ね合いっぽくても、さ…っ」
「そう、してる一族と神も、多い、ですけどォ…っ、ん、きゃ、あん…っ!」
「普段はあんな、カマトト腹黒女、してるんだから。こんな、ときくらい…女の子、しときなさい…っ」
「あん、もぅ…っ!ほんと、何なんですかっ、ん、はぁ…っ!あっ、やぁ…っ、ちょっと、
 もう…あつく、なり、すぎてぇ…っ、ん、ぅん、は、やぁ…っ!」

148:最終当主×昼子
14/08/20 21:57:44.33 IFL5TIhi
本当に、自身を抱くこの男は失礼だ。自分の領域に、ずかずかと踏み込んできて。
昼子ではなく、イツ花と。…自分の本当の名前を、優しい声で呼ぶのだから。そのたびに、
イツ花はどれだけ胸が苦しくて、熱くて、痛くて。泣きたくなるのを、わかっているのだろうか。
ずるい。本当に、この男はずるすぎる。出逢ったばかりだというのに、天界に昇ってからは、
見ているだけで何とか我慢できたものを。欲しいと揺さぶって、心の奥底から叫び声をあげさせて。
そして、それをあっさりと叶えてしまうのだから。

「―イツ花、なか、だす、よ…?」
「ん、はい…っ、ください…っ!」

互いの絶頂はもう近く。イツ花は彼の身体へとしっかりと抱き付いて。
そんな華奢な少女の身体を、青年はしっかりと抱きしめて。その奥深くへと熱いものを注いだ。

 * * * * * * 

そうして、交神の儀を終えて。少し気怠い身体の中、微睡んでいると。
腕の中で子供のように笑うイツ花が、青年へと大胆な告白をひとつ。
イツ花が本来持っていた、屈託のない笑みで、弾むような声色で。

「今回のことで、私ぃ、決めちゃいました!当主さまが亡くなったら、一族が全員反対しようと、
 無理矢理氏神にさせちゃいます!でぇ、片棒背負わせちゃいますからネ!」

まさかの、天界最高神からの氏神ご指名。これには、さすがの青年もまじか!と驚きを隠せなかった。

「うわー、強引だ!拒否権与える気ないぞ、これー!」
「勿論拒否権なんてないですよー。あったりまえじゃないですかぁ、アハハ。
 此処を力任せに纏めてきましたからねー。こーみえても、殴り合いとかは大好きです。

 ―それに。初めて『恋』しちゃったんです。したことなかったのに、罪な人ですよネ、ホント。

 …あなたと、女の子みたいなこと、したくなっちゃったんですもん」

たかだか一夜の逢瀬で、そんなことをあっさりと決めるだなんて。でも、昼子にとっては一夜ではない。
天界にとって永遠は刹那と同じであるのなら、その刹那で永遠が決まってもいいじゃないか。
だって、昼子にとって。こうまでざっくばらんに物を言いあえる相手なんて、
これから先の永遠にはきっといないと、イツ花は確信してしまったのだから。

「そっか…。うん、なら、仕方ないな。……恋されたなら、応えなきゃ仕方ない」

なら、青年とて。女の願いに応えるのが、男というものだと悪ガキのような笑みを浮かべた。
恋する女は何よりも強い。そして、恋する女は何よりも愛らしく映った。
一族にとって刹那が全てなら、その刹那に咲き誇る花は何よりも気高く、美しいのだから。
だから、刹那を永遠にしてもいいと。そんな風に思えたのだ。

青年はイツ花を思い切り抱きしめると、そんために一仕事頑張ってきますかね、と軽口ひとつ。
そして額へと口づけをすると、にぃっと満面の笑みを浮かべた。

「ふふ、さっすが当主さま!と、いうわけでェ、こっちに来るときまで、浮気したら…おいたですよー…?
 楽しみですねェ。夫婦ごっこ。……夫婦でやること、どれもしてみたかったから。好きな人と、ネ?」
「……そっか。うん、僕もしてみたいな。イツ花となら、楽しそうだ」

そうしてイツ花は、青年の頬へと軽く口づけ、無垢に笑った。

149:最終当主×昼子
14/08/20 21:58:45.01 IFL5TIhi
そうして、しばらくの『夫婦生活』の後。当主は下界へと降り立ったわけだけれど―

「イツ花。僕と、助平なことしよう」

なんとなく思い付きで。『おいた』をしたらどうなるのかとか、気になってしまい。
目の前で忙しなく働く、彼の神と瓜二つの風貌の少女へとそんな言葉を掛けてみる。

「はっ、はいぃ!?な、なにいってるんですか、当主さまぁ!?もしかしてェ、熱でもあるんですか!?」

顔を赤面させて、正気かどうかを疑われた。……当たり前の反応だった。
彼女はイツ花ではあるけれど、当主にとっての『イツ花』ではないのだから。

「冗談」
「はー、もぅ、焦ったじゃないですかぁ。当主さまは顔色変えずにそうしたこというから恐いですヨ…。
 それに、最近当主さま見てると、変にドキドキしちゃいますし。……何ですかネ」
「風邪じゃない?」

しれっと素知らぬ顔で、当主は空を仰ぎ見る。……ついに明日には、彼女との子が降りたつ。
それを見届けてすぐ、一族の精鋭たちで修羅の塔の最奥へと進む日でもある。
あの朱点童子との長きに渡る因縁は終わるだろう。いや、終わらせる。そう、当主は既に覚悟を決めている。
……一族の祖が両親の仇を取る為に始まった、長きに渡る宿命の終焉。
それに幕を引くのは、彼らの無念、願い、想い、憎悪、悲嘆、憐憫。
それらを背負った、当主である自分の役目だ。

代々、当主筋が受け継いできたとされる刀を鞘から引き抜けば、
白銀の刀身には自身の顔のみならず、始祖から血を継がれてきた一族の顔も垣間見えた気がした。

―復讐を遂げる日まで安らかに眠るなかれ―

刀は、当主へとそうして語り掛ける。刀は代々の当主を、そうして呪いの言の葉で縛り付けてきた。

「……終わりにするさ」

それが『最後の当主』の役目。…当主は継承刀を代毎に替えられてきた鞘へと収め、不敵に笑った。

―呪いを祝いへと転ずる為の決戦は、明日。

おまけ:

そして、決戦の日に―

「みなさま、いってらっしゃいませ!ろーほーを、イツ花とおまちしております!」
「……兄…いや、当主様、その頬どうしたんすか?」
「ほら、下界から降りてきた当主様の子!来るなり、お母様が、おいたは駄目だっていいましたよネ?
 これはその代理です!って、がつん!…いやー、いい右だったわぁ!私の跡継いでくんないかナ」
「当主様、本当に大丈夫ですか?なんなら壱与姫を……」
「……問題ない。行こう」

地獄巡りへと赴く中、頬を赤く腫らした当主は思わず空を仰ぎ見る。
そこには、にっこりと静かな微笑みを浮かべる、可愛い女神さまの姿が見えた気がした。

(終)

以上で投下終了です。投下がぶつ切りになったりで、おめ汚し失礼いたしました。や昼N…!
俺屍スレがこれからももっと、素敵な作品で溢れますように!

150:名無しさん@ピンキー
14/08/20 22:14:04.02 PXd53ZXl
GJ!GJ!
ああ~昼子もイツ花もかわいいんじゃあ~~

151:名無しさん@ピンキー
14/08/21 01:18:22.98 8nERXs0Z
当主様のキャラがいいし昼子も腹黒かわいい
素晴らしいボリュームでした、眼福眼福ゥ

152:名無しさん@ピンキー
14/08/21 19:07:58.19 8QGmd52y
>>130
夷三郎もヤバそうだ

爬虫類系は二本あるらしいし、人外神はなにかと凄そうだよな…


ところで水鳥以外のオス鳥類系はないと聞いたんだが…

153:名無しさん@ピンキー
14/08/21 19:18:10.42 kf59WUIx
>>152
鳥のそれこれ初めて知ったので驚いた。
そして調べてる最中に、梟の求愛の鳴き交わしについて読んでて、神様で想像して萌えた。

猫系の男神に嫁いだ娘は少し可哀想かもしれん。
蛇とかナメクジの類の神はさぞ長いのであろう

154:名無しさん@ピンキー
14/08/21 20:16:00.74 w8s4av2c
伏丸なんか射精後根元の瘤が膨らんで、ずーーーっと繋がりっぱなしだぞ
ドアノブみたいな形に勃起した逸物を見せつけられて
「これ入るんですか…?」って涙目になる一族娘萌え

155:名無しさん@ピンキー
14/08/21 22:08:44.01 YWrGnfXX
>>154
書いてもいいのよ?

156:名無しさん@ピンキー
14/08/21 22:10:48.34 8QGmd52y
>>153
猫のってトゲあるんだっけ?
戦闘脳筋な吠丸や獅子丸がその痛みで一族娘泣かせて、慰めるのに必死になってたりすんのか


鳥関係男神って
黒蠅、あすか、明美、福郎太、赤羽根、星彦、伊勢庭、トキだけど
明美はなくてもおかしくない気がしてきた←

157:名無しさん@ピンキー
14/08/21 22:35:48.85 MgdH3+cn
>>134
GJGJ!!
かわいい夫婦だなー萌えた
どちらも飄々としててイイネ

158:名無しさん@ピンキー
14/08/25 21:53:23.59 RY4Ewm44
最近思ったんだが最強氏神作りってエロい
一族が一丸となって子作りマシーンになってる感じが

159:名無しさん@ピンキー
14/08/26 19:03:27.11 8dcCK7px
保管庫更新遅くなって申し訳ない…
何日経ってもエラー出るからおかしいと思ってたら2万字超えるとエラーになるというだけのことに今やっと気付きました
というわけで2万字を超える文章は分割して更新しておきました

160:名無しさん@ピンキー
14/08/27 01:16:30.59 UY60oAkk
>>159
うわぁ、お手数おかけして大変申し訳ありませんでした…
保管作業、本当にありがとうございます…!

161:名無しさん@ピンキー
14/08/30 21:31:48.29 JbY4BpTJ
交神の時ってやってない家族はひたすら祈ってるのか
シュールだな

162:名無しさん@ピンキー
14/08/31 10:55:46.36 Eimub4ZR
>>161
「今ごろあの清楚な姉さんは武骨な男神に女にされてるんだ・・・」とか考えると
残された男家族は祈りに集中できなくなりそう
交神の期間が一カ月と長いからそういう邪念が湧くのは最初のうちだけだと思うが

163:名無しさん@ピンキー
14/09/02 02:43:28.54 fES++yiW
七枝タケル様の交神想像しにくかったから、鬼神のタケル様見られて嬉しかった。
一族中初めてタケル様のところに交神に行った娘は、帰ってからコトの顛末について質問攻めにされるんだろうなあ。

164:名無しさん@ピンキー
14/09/02 22:27:59.99 g4H2jWBl
タケルさん、スーパーチェンジしてもホホーイしかしゃべらないんか?

交神中もそばに通訳がいて
「『痛くない?』と、タケル様はおっしゃっています」といちいち代弁してたらすごいシュールすぎるw

165:名無しさん@ピンキー
14/09/03 00:55:43.52 U78vOJQv
>>164
すごくシュールwww
……梵ピン将軍は通訳つくのだろうか

166:名無しさん@ピンキー
14/09/04 05:36:06.81 wwqWYS1h
通じ合うんだよ

肉体的にも精神的にも

167:名無しさん@ピンキー
14/09/04 19:30:23.57 ThrYj0Yw
情熱的な呼びかけや甘い囁き声など
様々なトーンでハンダキ?ボボイスタ?って言われるんだな

それで別れ際にやっとたどたどしく名前を呼んでもらえると

168:名無しさん@ピンキー
14/09/05 02:25:43.75 aD5sl7LY
>>167
爆笑したけど最後の行で萌え転がりつつ切なくなった

169:名無しさん@ピンキー
14/09/06 22:40:43.18 MD6n/4X7
神様同士でも良いのだろうか

170:名無しさん@ピンキー
14/09/06 23:13:35.60 /Uq+OhAI
>>164
チェンジ後のあの姿であの声って破壊力が凄いw
まさかタケルを選ぶと通訳ペコもついてくるのか

171:名無しさん@ピンキー
14/09/07 02:10:42.82 HSuWUqd5
2人とも転生後のセリフ見るといい人っぽいから妄想はかどってしまう

172:名無しさん@ピンキー
14/09/07 22:31:15.74 86mWlyuo
大江ノ捨丸×一族娘投下します。

・題名「二回目」

・パスなし、7400字(15KB)程度

・捨丸と一族娘が痴話喧嘩する話

・本番行為がないためエロパロ板うpろだに上げました。

URLリンク(u3.getuploader.com)

以上です
捨丸との交神は、一回目は怖いもの見たさや妥協でやっても
二回目以降は愛がないと出来ないよね

173:名無しさん@ピンキー
14/09/08 22:34:33.03 jwBo2l8h
保管庫更新しました。捨丸人気に嫉妬
作者順まとめは文体などから勝手に同じ人かなと推測してやってるだけなので好きに直してくれてもいいのよ

174:名無しさん@ピンキー
14/09/10 02:04:55.65 hSEicE27
GJ!
二人ともとても可愛いかった

175:名無しさん@ピンキー
14/09/11 01:05:45.14 Kc/vucCP
確かに中身剥き出しだわ…>捨丸

176:名無しさん@ピンキー
14/09/15 21:18:45.62 6DKyc6L8
危険物件かもしれないのでろだを借りました

鷲ノ宮星彦×琴ノ宮織姫
URLリンク(download1.getuploader.com)

中身はごく普通のエロです
それほど抵抗なければ読んでやってください

177:君が為の言葉を
14/09/20 18:17:41.71 TfpRFnu6
通された場所は、京の屋敷とも、迷宮とも違う所だった。
京の屋敷と同じ穏やかな木々の香りが漂う空間。だが、屋敷とは違い、木材がそのままの形で張り巡らされており、ごつごつとした表面が露わになっている。
その無骨な空間に、見た事がない鮮やかな植物が敷物や装飾として飾られている。
何より、所狭しと飾られた武具の数々。そのどれもが意思を持っているかのように存在していた。
その空間に男女が向かい合って座っている。
女の方は、まだ元服をして間もない、幼さを残した少女。だが、煌煌と輝く朱い瞳には鋭い刃のような力強さが宿っていた。

「此度、交神の儀によりこちらに参った火乃(かの)と申す。こういった事は不慣れであるが、どうかよろしく頼む」

娘―火乃は恭しく頭を下げる。その姿は至って平静であり、とても儀式の前とは思えない程普段と変わらない面持ちであった。
もちろん、これから行う事の意味を理解していない訳では無い。だが、火乃の思いはこれから行われる事柄よりも、目の前の相手に集中していた。

「ハンダキ、ボボイスタメーレ!」

火乃の挨拶に、奇抜な被り物を身に付けた男神―梵ピン将軍は歓喜とも狂乱ともつかぬ珍妙な声を上げた。

一族において、交神の儀を行う神は交神を行う本人が選ばなければならないという決まりがある。
元々は親になる者としての決意や自覚を促す為であるが、それは、短命の一族が数少ない我儘を押し通せる場所でもあった。
子孫を残すというただそれだけの制度。だが、その行為によって一族は確かな愛に満たされ、その愛は神の方にも確かに存在していた。
とは言え、普通の男女の付き合いのように相手の人柄で選ぶというのは困難だ。神の情報は世話係であるイツ花か、姿絵屋の絵画でしか確認する事は出来ない。
その為、交神の儀において相手を選ぶ基準は見事にバラバラだった。顔であったり、遺伝情報であったり、時には触り心地が良さそうという理由で選んだ者もいる。
どんな理由があれ、基本的に交神の儀の相手は希望通りになる事が多い。だが、火乃の場合は一族全員に満場一致で難色を示された珍しい例であった。

「その、梵ピン殿とお呼びして良いか?」
「ンダキ」
「……それは肯定の意と捉えてよろしいだろうか?」
「ンダキ、ンダキ!」
「そうか、良かった。私の事は好きに呼んでくれ」

178:君が為の言葉を
14/09/20 18:18:37.58 TfpRFnu6
火乃が反対された理由として、梵ピン将軍の意思疎通の困難さがあった。
イツ花曰く、元々この神は京より遥か遠くの異国の地ににて祀られていた神だったらしい。
だが、それ自体は大して珍しい話ではない。梵ピン将軍のような異国から来た神は決して少なくはないからだ。
しかし、梵ピン将軍はそんな渡来神の中でも新しい時期にやって来た神だった。
八百万の神は言えど、言語の壁というのは厳しい。未だに異国の言葉が抜け切れない彼は、他の神々とも少々壁があるのだとイツ花は苦笑しながら教えてくれた。
梵ピンを見つめる。これからこの神と行うのは男女の営みと何ら変わらないものだ。
だが、今の雰囲気はとてもそうとは思えない。睦言の事など何も知らない生娘とはいえ、どうも今の梵ピンにその意思があるとは思えない。
何故なら、火乃の目の前には香ばしい匂いを漂わせる色とりどりの料理が並んでいたからである。

「キダキ、ボボイスタン!」
「一つ尋ねるが、これはその……食べ物、だよな?」
「ンダーキ」
「……もしかして、馳走にあずかってよろしいのか?」
「ンダキ!」

イツ花は神は食事が必要無い存在だと言っていた。という事は、これは火乃の為に用意してくれたという事になる。
交神に協力をしているとはいえ、すべての神が一族に好意的な訳では無い。もしかしたらと少々身構えていたものの、梵ピン将軍は少なからず友好的ではあるらしい。

「ああ、それはわざわざ……」

ぎゅう。申し訳ない、の言葉は腹から漏れた音によって打ち消されてしまった。

「……あ、え、えっと」

今朝方から禊の為何も口にしていないのを思い出した。天界に到着したのは日没間近であったため、普段なら夕飯の時間である。

「メレ!」

梵ピン将軍が笑いながら食器を手渡す。まるで「気にしてない、遠慮するな」と言っているようで。
恥ずかしさに俯きながら食器を受け取り、料理の一つを口にした。

「……美味しい」

思わず出た言葉に、仮面の下から覗く口元がほころぶ。その言葉が嬉しかったのか、もっと食べろと言わんばかりに次々と火乃の皿に料理を載せていく。
イツ花の料理とは違う、今までに食べた事もない味ばかりであったが、どの料理も美味な物ばかりだった。
一族以外と、それも神と食事をする。思ってもみなかった光景だが、それはいつもの食事と同じように心休まる事であった。
誰かと一緒に食事をする事の楽しさ。それは種族や言葉が違っていても決して変わる事が無い物だった。

179:君が為の言葉を
14/09/20 18:19:10.31 TfpRFnu6
天界での日々は目新しくも穏やかに過ぎていった。
しかし、火乃天界に来た大きな目的である交神の儀は未だには執り行われていなかった。
それどころか、肌に触れる所か、同じ部屋で寝た事すらない状態だった。一応聞いてみたものの、「ボボイスタ、ボボイスタ!」と首を振るだけで。
梵ピンの行動を図りかねるまま、火乃はつかの間の休暇を味わっていた。
火乃の人生において、生きる事とは戦う事だった。来る日も来る日も迷宮へ赴き、鬼を切り、経験を積む事が日常だった。
だからこそ、今の生活はどうにも落ち着かない。天界に来てからも自主的な鍛錬は欠かさず行っているが、それだけではどうにも身体が疼いてしょうがない。
そんな退屈そうにしているのを見かねたのか、梵ピンは外へ連れ出すようになった。他の神々の社や名所、時は最果てまで赴き、日が暮れるまで出歩いた。
そして、天界に来てから三日後。その日は梵ピンに連れられ、天界を散歩していた。
やはり、家でじっとしているよりはこちらの方が性に合っている。火乃は雲が路傍の石のように存在する道を歩きながら、天界の風景を眺めていた。
思えば、普段は景色をじっくりと観察した事は無かった。精々、外の迷宮は季節によって攻略の仕方が変わるから面倒だと思っていたくらいだ。
綺麗だと思った。こんなに美しい物をいつでも見られるのなら、どんなに幸せな事だろうとも。

「ハンダーキ、メレ、メレ、ボボイスタン!」
「ほう、あんな所にも神々は住んでいるのか。洞穴では住みにくいだろうに」

この数日間で火乃は梵ピンの言葉が大分理解出来るようになった。
とは言っても、未だに会話というよりは火乃の方が話してばかりだが、意思疎通が円滑になっていく事に嬉しさを覚えていた。
梵ピンは親切だ。毎食異国の料理を振る舞い、時には散歩に連れ出してくれたりと義務以上の事を果たしてくれている。
だが、だからこそ疑問に思ってしまう。ここまで火乃に良くしてくれる意味を。そして、未だに交神の儀を拒む理由を。

「おう、梵ピンじゃねえか」

振り返ると、隻眼の男神が気さくげに呼びかけていた。
浅黒い肌に大柄な身体。屈強ではあるが、鍛え上げられた名刀のような柔和な雰囲気をも併せ持つ神。それは、火乃にとって馴染みの深い神でもあった。

「どうした、今は交神の儀の最中だろうに? ん、お前は……」
「お初にお目にかかる、タタラ陣内殿。私は火乃と申す。前に一族の者が交神で世話になった」
「―ああ、やはりアイツの子孫か。道理で似ている訳だ」

火乃の曾祖母に当たる女性はタタラ陣内と交神し、祖父を授かっている。何でも、鬼として囚われていたタタラを救ったのが切っ掛けだったらしい。

「メレ?」
「ああ、前にこいつの祖先と交神してな。こうなる事は予想していたが、まさかお前と交神する事になるとはな」
「ンダーキ、ンダーキ、ンダンギギッ!」
「ああ、違いない。顔つき合わせた相手が親戚になるとは、天界もますます狭い世界になったものだ」

言葉の所為で他の神達と距離があると聞いていたが、どうやらタタラとは話が出来るようだ。
梵ピンの方も心なしか楽しそうに話をしており、やはり似たような神だからこそ意思疎通が出来るのだろうか。

180:君が為の言葉を
14/09/20 18:20:54.08 TfpRFnu6
「すごいな、タタラ殿は。やはり、同じ武器の神様だから分かるのだろうか?」
「ん? いや、コイツとはそれなりに長い付き合いだからな。というか、俺は鍛冶錬鉄の象徴だ。梵ピンも武器ではなく戦いそのものの象徴だ」
「む、そうなのか? 梵ピン殿の社に多くの武器が飾られていたのはそういう意味だったのか」

梵ピンの社には原初的な建物には不釣り合いな様々な武具が所狭しと飾ってあった。
剣、槍、槌といった馴染みの深い物から、筒に槍の穂先が付いた大筒や全体が蛇の様に曲がりくねった剣といった京には無い武具の数々に、最初相手も忘れて見入っていたことを思い出す。

「……ああ、お前はあれを見たのか」
「まあ、じっくり見た訳では無いが、あれはすごい! あんな素晴らしい武具は京ですらそうそうお目に掛かれない。機能もそうだが、武具の質自体も良い物ばかりだ。剣福殿でさえ造れるかどうか」

火乃は武器の類が好きだった。剣士としての性もあるが、討伐隊に入る前は蔵にある武器を玩具にして遊んでいた程に筋金入りだ。
そんな火乃は自身の家系に鍛冶神であるタタラ陣内がいると聞いて嬉しくなると同時に、交神をした曾祖母を羨ましがったものだ。
そのタタラに会えた。そして、タタラと同じように武器を愛し、素晴らしい武器の数々を生み出す事が出来る神に会えるなんて。

「やはり、梵ピン殿は良い神様だな」

火乃にとっては何気無い一言だった。
あんなに良い武器を造れるなんてすごい。ただ、それだけの意味で言っただけだったのだが―。

「ハ、ハンダーキィッ……!!」

梵ピンの身体が硬直する。声にならない呻きを上げたかと思うと火乃の方をちらりと見上げて。
あっと思った時にはくるりと背中を向け、走り出してしまった後であった。
一瞬の出来事であった。あっけにとられていた二人だったが、梵ピンの背中が見えなくなってから、ようやく思考が戻って来た。

「タ、タタラ殿! 何かまずい事を言ってしまっただろうか!?」
「いや、そういう訳じゃないな。ただ、間というか、機会というか……まあ、相手がお前だったのが悪いな」
「そ、そんな!? や、やっぱり何か粗相を……っ!」
「いや、何と言って良いのか……」

何かを考えるかのように視線を泳がせる。だが、やがて腹を括った様な面持ちで火乃の瞳を見据えた。

「さっきも話したが、あいつは戦いの神だ。それは分かるよな」
「ああ、戦い自体を司る神様……で合っているか?」
「そうだ。だが、それはただ殺し合うだけではない。人や鬼、武器に思想。梵ピンは戦に関わる物すべてに通じる……謂わば概念そのものだ」

梵ピン将軍という神の役割は戦における「統率」であった。
将軍という名の通り自らが前線に出て戦うのではなく、指揮官として部隊を鼓舞し、率いていたという。

「あいつは多くの物を引き寄せ、多くの物を死なせた。そして、それらが実体を失っても魂は残り続けた。人や、鬼や、武器そのものまでもが、な。あいつの社にある武器はその根源である魂で作られた物だ。戦いで死んだ魂を弔いとして飾っているんだ」
「そうだったのか……なら、梵ピン殿は神としての職務を全うしているだけではないか。どうして逃げるような事を……」
「あいつは悔やんでいる。自分の為に散っていた命を、朱点を止められなかった事を。そして、自分の所為で宿命を背負わせた……お前達の事をだ」
「……私達、を?」
「ああ、いつもお前達の事を気にしていたさ。謝っても償い切れない物を背負わせてしまった。交神の儀の間だけでも出来る限りの事をしたい、とな」

181:君が為の言葉を
14/09/20 18:21:34.67 TfpRFnu6
ああ、ようやく合点がいった。火乃を丁重にもてなし、退屈しないよう外へ連れ、そして、今まで義務を果たさなかった事。
あの献身的な態度はすべては一族を―火乃を思っての行動だった。
天界の真の目的が発覚した時から、一族と天界の間には埋められる事の無い溝が出来上がってしまった。
神々が一族を利用した事は覆す事の無い事実だ。だが、その神々の中にも一族に好意的な者や、同情的な神様も確かに存在したのだ。
やはり思った通りの神様だと思った。だからこそ、そんな神には思いを伝えなければならない。火乃がここへ来た理由を、あの神を選んだ意味を。

「タタラ殿、ご迷惑をお掛けして申し訳ない。だけど、私は……」
「ああ、行ってやれ。おそらく、社に帰っているだろうよ」
「! ああ、かたじけない!」

火乃は駆け出していく。その姿が見えなくなるまで見つめた後、タタラは小さく笑みをこぼした。

「……良い神様か。まったく、血は争えないな」

そう呟いたタタラの瞳は、どこか懐かしそうに空を仰いだ。


「梵ピン殿!」

タタラの言った通り、梵ピンは社に戻っていた。
数多の武具に囲まれた中で、静かに佇んでいた。だが、その背中には拒絶の意思が見え隠れしていた。

「梵ピン殿、私は貴方に伝えたいんだ。貴方を、交神相手として指名した事だ」

一族の為に死ぬ事に悔いも未練もない。だが、火乃という個人として生きている間にやりたい事があった。
あの時からずっと、梵ピンに伝えたい事があった。

「最初に貴方の事を知ったのは術書だった。なんと便利な術があるのだろうと感心したんだ。これならどんな鬼にも太刀打ち出来ると思った」

火乃は体の火が低かった。前線に立つには細く、貧弱な身体。このままでは一族としての責務を果たせないという焦燥感にいつもかられていた。
だが、その術に出会ってから火乃の悩みは消えた。幸いにも、火乃は術の使いに長けていた。誰よりも早くに習得し―今においても、習得しているのは火乃一人だけであった。
嬉しかったのだ。火乃だけではなく、他の皆の助けにもなれるその術を習得出来た事が、本当に嬉しかったのだ。

182:君が為の言葉を
14/09/20 18:22:50.83 TfpRFnu6
「だから、それを作ってくれた人に会いたかったんだ。最初は反対されたけどな。でも、私は会いたかった。生きている間に、貴方にお礼を言いたかったんだ」

一族には関係の無い事であっても、個人の我儘であっても、それだけは火乃が幼少の頃から頑なに抱いていた決心であった。
火乃は何としてでも会いたかった。絶対にこの神様でなければ駄目だと強く思っていたのだ。

「それと、タタラ殿から聞いたのだが……確かにあれは貴方の事を思えば軽はずみな発言だった。でもな……」

周りに飾られた武具の数々を見る。剣、槍、槌に異国の武器。数多の武器が、あるべき物として鎮座している。
武器とは殺生が目的で作られる物だ。その性質上、生物の感情が宿りやすいという。道具と役割を全うした結果、やがては呪物に変貌する物もある。
だが、そこから漂うのは邪悪なものではない。むしろ、神聖といっても過言ではない程に清らかな聖気に満ちていて。

「人々はきっと、貴方を慕っていたんだ。貴方の為なら死んでも良いと思ったから一緒にいたんだ。でなければ、死んでも傍には来ないさ。貴方の元に集まった魂は、幸せではなくとも、不幸でもないはずだ」

戦いは突然訪れる。ある日突然戦わなくてはならない状況になってしまう事は多々あるものだ。
だが、梵ピンに付き従った人達は自ら望んでその道を進んだのではないか。でなければ、このような姿形になるはずはない。
この武具となった魂は、ただ主の傍にいたかっただけなのではないか。

「それは一族だって同じだ。今更どうこう言った所で、何も変わらないしな。貴方のような神様がいるだけで、私は嬉しいよ」

天界を完全に信じる事は出来ない。だが、タタラのような親となった神や、一族の味方である神も確かに存在している。
人が人を愛するように、神にも情愛が芽生えている。その変化を火乃達は確かに認めていた。

「むしろ、そう思ってくれる神様のどこが悪い神様なんだ。十分じゃないか! 他がそう思わなくても、私は思うよ。というか、今確信した! 梵ピン殿は良い神様だ!」

その時、梵ピンが振り返る。
後悔、哀愁、追憶。それらが混ざり合った―今にも泣きだしそうな顔で火乃を見つめていた。
気が付いた時には、火乃の身体は梵ピンを抱きしめていた。
その身体は驚く程儚かった。小柄ながらも引き締まった身体も、今は手のひらにすっぽりと収まってしまいそうな程に小さく見えた。
自分と同じだ。小さな身体で大きな物を溜め込んで、人の為になりたくて。誰かを思いやれる強くて優しい人なのだ。

「ボ、ボボイスタッ、ボボイスタッ、メーレ―!!」

梵ピンの嗚咽が聞こえる。表情は分からない。だが、その様子は何かから解放されたような、そんな声だった。
ああ、これでやっと救われた。そして、繋がる事が出来たのだ。

「梵ピン殿が私を気遣ってくれてすごく嬉しい。でも、これで私の気持ちは分かっただろう。だから……」

やっと、想いを伝えようではないか。

「貴方の事をを教えてくれないか?」

183:君が為の言葉を
14/09/20 18:23:56.46 TfpRFnu6
梵ピンの寝所は、やはり京の屋敷とは大分異なる様相だった。
色鮮やかな植物や奇抜な被り物が所狭しと並べられており、寝具の周りを松明の炎が照らしている。
無秩序な寝所の所為か、これから行われる事への不安なのか。火乃はどことなく落ち着かない様子で梵ピンを見つめていた。

「その、こういった事は初めてだから勝手が分からないんだ。私は何をすれば……」

言いかけた言葉は、梵ピンの行為によって遮られた。

「ぼ、梵ピン殿?」

火乃の腕が引き寄せられ、梵ピンに身体を預けるような形になる。
梵ピンの腕が優しく身体を包む。突然の出来事に一瞬身構えたものの、火乃の方もおずおずと背中に手を回した。

「あ、よ、良い身体だな、うん。無駄も無く、引き締まっていて」

思わず頓珍漢な事を口走ってしまったが、梵ピンは可笑しそうな吐息を漏らしただけだった。
懐かしくもくすぐったい感触。だが、このままこうして身を委ねていたいと思ってしまう程に心地良いものだった。

「あ……」

触れ合った身体が一瞬離れ、再び向かい合うような姿になる。視線が交差した―そう認識した時には、既に相手の領域に踏み入れていた。
唇が重ねられる。挨拶のように軽く、一瞬のもの。ただ少し触れただけだったが、身体の奥底から何かが滲み出て来るのを感じた。
どちらともなくもう一度口付ける。今度は長く、味わうように。互いの存在を確かめるように強く押し付けて、吸い付いて。
ぽすん、と軽快な音が閨に吸い込まれる。
布団に倒された火乃の身体は、その事を気にも留めない程に目の前の行為に夢中になっていた。

「ん、うっ……!」

舌が入り込んでくる。ぬるりとした生温かい物が火乃の口腔を舐め取るよう弄っていく。
ぐちゅりという水音が聞こえる。気が付くと、火乃の方も自身の舌を絡め合わせていて。
身体が熱い。思考が沈んでいく。これだけで熱に浮かされてしまっているのに、これ以上の事をされたらどうなってしまうのだろう。

「っ!」

火乃の身体がビクリと波打つ。
梵ピンの手が双丘に触れていた。酩酊しかけた意識が引き戻される。ただ触れているだけなのに、火乃には鬼の攻撃以上に残酷で理不尽に思えた。
火乃の気持ちを知ってか知らずか、梵ピンは動かない。それは遠慮か、配慮か。だがやがて、その掌に力が込められたのを感じた。

184:君が為の言葉を
14/09/20 18:25:02.27 TfpRFnu6
「あ、っはぁ……」

枯れ木のような硬い手指がゆっくりと二つの膨らみをほぐしていく。
布切れごしであるにも関わらず、梵ピンを直に感じる。指先が動く度、火乃の奥底に疼く何かがさらけ出てしまいそうで。
脳天に悪寒にも似た震えが走る。その悪寒が全身を駆け巡り、より一層身体が火照っていく。
柔軟な感触を味わうかのように張り巡らされた指先が、もどかしそうに布地に食いこんだ。
持て余した梵ピンの左手が火乃の着物の帯を掴む。脆くも隔てる砦をするりと解き、胸元をはだけさせ―突然、その動きが止まった。

「梵ピン殿……? どうかしたか?」

視線を辿る。その動きで火乃はすべてを理解した。
梵ピンが梵ピンが見つめる先にあった物。それは、火乃の無数に散らばる傷の数々だった。
傷があるのは鎖骨の下から爪先にかけてのすべて。どの傷も薄皮一枚残している程度だが、幾重にも連なったそれはまるで鎖のように絡みついていた。

剣士という役割柄、火乃は誰よりも率先して鬼の攻撃を受け止めなくてはならない。
堅牢な防具に守られているとはいえ、鬼の攻撃は多種多様である。鋭い爪に貫かれ、 鉛武器に打ち付けられ、灼熱の炎や凍てつく水に嬲られ。
その常人ならざる治癒力を持ってしても、初陣から今まで火乃の身体から戦いの後が消える事はなかった。

「……済まない。あまり見ていて気持ちが良いものではなかったな」

傷を負うのは当たり前だった。むしろ、誇りにさえ思っていた。
後衛の者達が耐えられないような攻撃も防ぐ事が出来る。それが一族としての役目だと、火乃はその在り方を享受していた。
だが、急にそれが情けなくなった。その価値など何の意味があるのだろう。弓や扇で戦う者なら、ここまで傷が付くことはなかっただろうにとさえ思ってしまう程に。
一族の皆は感謝してくれる。火乃のおかげだと労わってくれる。だから、そんな皆の為なら痛くても、苦しくても平気だった―平気だったのに。

「ひ、ひゃあっ!」

突如、梵ピンの指が傷口に触れる。胸元ある大きな痕を―先日弓使いの少女をかばって貫かれた傷跡を沿いながら、ゆっくりと指を滑らせていく。
その動きは先程のような情欲ではない。それはとても丁寧で、優しいもので。

「あ、あの、何をして―」
「ハンダキ、ボボイスタ、ママレ。キダキ、キダキ!」

傷口を撫でていた。我が子を撫でる母のように、愛する者への抱擁のように、身体に刻まれた火乃の証を慈しんでいた。
指先で傷を撫でながら、梵ピンは火乃を見つめる。その声はとても明るく、そして、とても暖かいものだった。

―ああ、この神は褒めてくれているのだ。今までの戦いを、火乃の生き様を―火乃の身体を愛しんでいるのだ。

「き、傷だらけぞ、私。怪我をしてない所なんて一つもないんだ。……それでも、良いのか?」
「ンダキ!」

火乃は梵ピンと交神が出来て―出会えて良かったと、心の底から思ったのだ。

185:君が為の言葉を
14/09/20 18:25:54.78 TfpRFnu6
あれ程明るかった外が、既に闇色に塗り替えられようとしていた。
重なり合う一組の男女。だが、その変化に彼らは気が付かない。煌煌と燃え上がる炎に照らされ、互いは獣のように相手を求め合っていた。

「う、あっ……!」

ぐちゅりという音と共に、打ち込まれた楔が蠢く。
普段はきつく閉ざされた場所。だが、秘所から溢れ出す潤滑油によって、指は易々と侵入を許していた。

「あ、ああっ! ん、くぅ……!」

頂にそびえ立つ突起物が舌で転がされる。ぴちゃりぴちゃりと唾液が混ざり、絡み合う。それは火乃から流れ出たものか、梵ピンの舌が舐めずる音か。今となっては分からない。
世の中の女性がこんな風に赤子に吸われるのだとしたら、火乃はきっと耐えられないだろう。
―こんなにも心が溶けてしまうのだから。

「―ああうっ!」

埋め込まれた指の腹が、ある一点に触れた。
それだけで、首切り大将に殴られたような、いや、それよりももっと理不尽で強烈な感触が火乃を襲った。

「い、いやっ! そこは止めて、止めてくれっ! へんに、なるっ……!」

それは未知の経験だった。欲に未成熟な火乃にとって生まれて初めての感覚だった。
火乃の身体は痛みしか知らない。火乃に触れる者は、負の感情に駆られるがままに欲をぶつけていた。
だが、これは違う。梵ピンの手付きは優しくて、火乃を汲み取る物で。なのに、鬼の攻撃よりも強い衝動に恐怖を覚えていた。

「―っ!!」

一瞬だった。脳天へ駆け上がった何かが霧散する。
下腹部から生温かい分泌物が股の間を流れていく。上り詰めた感覚が、全身に充満していって。
身体に力が入らない。肩で息をするのがやっとだった。

「メ、メレ?」
「ああ……大丈夫。何だか、すごく変な感じ、だな。だが……」

嬉しい。どうしてそう思ったのか。だが、その充足感が火乃の心を占めていた。
戦いの中だけで生きてきた火乃が、女として目覚めた時であった。

186:君が為の言葉を
14/09/20 18:27:33.59 TfpRFnu6
―ようやく、準備が整った。
白い布切れの海に転がされた身体に梵ピンが覆いかぶさる。薄紅色に充血した這入口に楔を密着させ、僅かに開いた扉に宛がう。
梵ピンが何かを求めるように火乃を瞳を見つめる。それは、これから行う事の最終確認だった。
無言の問いに頷き返す。ついに本当の意味で神と交わる。だが、火乃の心は不思議と落ち着いていた。
その答えにう梵ピンは安心させるように火乃の髪を撫でると、ゆっくりと秘部へ侵入を開始した。

「ぐ、うぅっ……」

固く閉ざされていたがこじ開けられる。あれだけ密に塗れていた筈なのに、指よりもはるかに太く硬い異物を排除しようと締め上げる。
拒絶の動きに抗いながら粘膜の間を縫うように食いこませていく。隙を突く精密な動作によって、それは徐々に奥へと進んでいく。
断続的に伝わる鈍痛。思考が奪われないよう歯を食いしばる。辛いのは梵ピンも同じなのだから。
そうして時間は流れ。長い間続いた攻防戦だったが、やがて、その動きがついに止まった。

「は、入った……のか?」

少し身動きするだけでぐちゅりと奥底に先端が当たり、鈍い痛みが走る。
股をするりと伝わる感触と微かに感じる血の匂いから、無事に受け入れたのだと理解した。

「ン、ンダーキ? ハンダキ?」
「ん……痛くない、と言えば嘘になるが、これくらいは平気だよ。すまない、気を遣わせてしまって」 
「ボボイース、ボンボイース」

梵ピンはふるふると首を振り、安堵の吐息を漏らす。
出来るだけ痛みを感じないよう、慎重に事を進めてくれた。その気遣いに心が満たされていくのを感じた。

「……梵ピン殿。もう私の方は大丈夫だから、貴方の好きにしてくれ」
「ハ、ハンダーキ……」
「大分慣れてきたからな。……それに、そのままだとその、辛いのだろう?」

火乃には分かっていた。笑みの中に何かに耐えるような表情をを浮かべている事に。
天界に来てからずっと、梵ピンは常に火乃の事を優先していた。言葉が通じない相手であっても、一族の事情を知っていても、丁重に扱ってくれた。
だからこそ、この時くらいは好きにして欲しかった。

「ん、あうっ!」

脈動を続けていた肉棒が蠢き、遠慮がちに粘膜へ擦り付けていく。
打ち付けた所から粘ついた糸が引き、がむしゃらに締め付けていた内膜が緩急をつけ、まるで誘うような動きへ変化していく。
突き上げられる度に刺すような痛みが走る。だが、痛みの中からぞくりと湧き出す疼きに身を委ねる。

「も、もっと、強くこすってっ……! 貴方を刻み、つけてくれっ……!」

肉と肉とがぶつかり合う。痛みと快楽と混ぜ返り、火乃の意識を侵食する。
想いも、つながりも、そこにある全てを火乃は己に刻み付ける。梵ピンもまた、それに応えるように欲を打ち付けていた。
相手のすべてを焼き尽くすかのような、荒々しさ。それは、梵ピンが苛烈な火の神だと如実に証明していて。

187:君が為の言葉を
14/09/20 18:28:14.65 TfpRFnu6
「んああくうっ! い、いああっ……いいっ! そこ、そこがいいのぉ!」

もう既に、お互いを思いやる理性は残っていなかった。
支配された思考は、更なる高みへ行き着きたいという願いを叶えるだけだった。
そこにいるのは神と人ではない。欲望をぶつけ、互いを喰らい尽くす男と女だった。

「あ、んああああっ……!」
「……ッ!」

甲高い嬌声が響き渡る。同時に一際粘膜が激しく収縮し、埋め込まれた楔を縛り付ける。
そして、それに呼応するように楔が痙攣し、吐き出された欲が肉壺に注ぎ込まれていく。
互いが絶頂を迎えたのは、ほぼ同時の事だった。

「ふ、あぁ……んんっ……」

どくどくと流れ込む子種を一滴たりとも逃さないように受け止める。そこは、一度の射精とは思えない程に絶えず注がれ続けていた。

その全てを出し切った後も、二人は離れようとしなかった。
火乃は腕を回す。離離れないようにしっかりとしがみ付い
神と人の間に生まれた子供。その半生は呪いを解く礎として育ち、鬼切りの一族として、常に戦いの中で生きてきた女剣士。
だが、その時だけは恋する少女として愛する者の腕の中に包まれていた。



そして、義務は果たされた。だが、火乃は天界に留まり続け、ピンの元で来る日も来る日も言葉を交わした。
多くの事を知り、多くの経験を学んだ。戦神と一族の少女は、最後の瞬間まで心も体も繋がろうとしていた。
そして、月日が流れ、長くも短い一月が終わりを迎えようとしていた。

「梵ピン殿、今日まで色々世話になった。感謝する」

火乃が下界へ降りる日。別れのその時、二人は最初に出会った時と同じようにお互いを見つめていた。

「子どもの事を、よろしく頼む。どうか健やかに育ててほしい」

梵ピンは何も喋らない。昨日までは手に取るように分かっていた気持ちも、窺い知ることが出来ない。
もう会う事は無いだろう。火乃にとっての一生は、永遠を生きる神には瞬き程度の事柄でしかない。
そして、火乃も何も言えなかった。これ以上言葉を発してしまうと、その気持ちが鈍ってしまいそうな気がした。
幸せはいつかは終わる。未練を残さない為にも、一族の火乃として別れる事が最善なのだ。
梵ピンに背を向け、イツ花の待つ場所へ歩みを進める。もう二度と会えない身でも、最後に見せる姿は潔く在りたかった。
―それで終わりのはずだった。

188:君が為の言葉を
14/09/20 18:37:33.06 TfpRFnu6
「―カ、ノ」

火乃。それは、焔のように煌煌とした瞳の色を讃えて付けられた名前。
生まれ持った瞳は火乃の密かな自慢であり、瞳を模した名前もまた、火乃には同じように自慢であって。
その名前を確かに呼ぶ者がいた。

「カノ。アリガ、ト。イッショニ過ゴセテ、楽シ、カッタ」

振り返ると、一月を共に過ごした神がいた。
異国の言葉を話すその口で、火乃の名前を、感謝の言葉を伝えながら照れくさそうに笑っていた。

「わ、私も……私も貴方と共にいられて良かった! 貴方に会えて、良かった! 本当に良かった!!」

そう叫んだ時には、火乃の足は駆け出していた。
何かを伝えようとして、頬を伝わるものに気が付く。それに意味に気が付いた瞬間、堰を切ったようにとめどなくこぼれ落ちていて。
梵ピンの気持ちが分かるようになっても、夜を共にしても消える事の無かった不安。
だが、火乃の言葉は、想いは確かに届いていた。
そして―あの日交わした約束がようやく果たされた瞬間でもあった。


それから二月後、呪われた一族の元に新たな家族が送り届けられた。
唯(ゆい)と名付けられた少年は、時には率先して鬼に切り込み、時には皆を守る荒々しくも心優しい剣士へと成長する。
高い素養に加え、剣士でありながら術の扱い―特に補助術においても抜きん出ており、一族の中でも傑物として後世にも語り継がれる事になる。
そして、時を同じくして、不変の天界に小さな異変が起こる。
天界に渡来して数千年が経とうと頑なに異国の様相を崩さなかった戦神が、なんと共通の言葉を話し始めたのだ。
最初はたどたどしかったものの、他の神々の助力もあってか、いつしか謙遜無い程度にまで上達していった。
そして、孤立しがちだったその神は、次第に輪の中へ入るようになり、天界のみならず下界の出来事にも積極的に関わるようになる。
永遠の存在である神の変化。それは、最高神でさえ為し得なかった奇跡とも呼ぶべき出来事であった。
ある時、劇的な変貌の理由を聞かれた神は笑いながらこう答えたのだ。

―愛しい人の名前を呼びたかったんだ、と。

(完)

189:君が為の言葉を
14/09/20 18:44:51.92 TfpRFnu6
以上、>>177から>>188まで梵ピン×女剣士でした。
本当はこういった注意書きやらを冒頭に書くつもりだったのですが、すっかり抜けていました。本当に申し訳ありません。
>>167のおかげでSSネタと新たな萌えに目覚めました。ちなみに、梵ピン言語は俺屍2のセリフを参考にしていますが、話の設定は初代です。

190:名無しさん@ピンキー
14/09/21 09:40:50.66 v2L73blg
梵ピン将軍についてこんなに深く掘り下げて書かれた話って初めて読んだ、これだからエロパロ板はやめられねえ
火乃ちゃんと同じくこれからいっそう梵ピンの術への有り難味が増しそう
もしやタタラ様の言うあいつとは、前スレのSSに出てきた女剣士…?

191:名無しさん@ピンキー
14/09/21 12:20:57.58 kvU6fdSY
正直泣いた

192:名無しさん@ピンキー
14/09/21 15:08:36.92 alhzLGAL
梵ピン将軍でここまで書けるとかすげえよすげえよ…七夕夫婦のSSと一緒にこれから保管庫更新します
火乃ちゃんとうちの娘の名前の字が一部一致してて同じ剣士で勝手に親近感

193:名無しさん@ピンキー
14/09/21 15:16:12.92 alhzLGAL
すみません七夕夫婦のがロダから消えてました…もしよろしければ再うpお願いします

194:名無しさん@ピンキー
14/09/21 18:00:53.03 bd5cr+jf
星彦×織姫消えちゃったのか…
一度ざっと目を通していて、後からじっくり読んで感想書こうと思ったのに残念です
新しい生き方ができない神々が、刹那的に生きる一族を愛おしいと思う気持ちが切なかったよ

195:名無しさん@ピンキー
14/09/21 19:07:00.12 obLFryV9
>>192
梵ピンの者です。保管庫更新ありがとうございました。
ここに投稿するのは初めてなので、前スレの方とは関係ありません。なので、作者順ページを訂正させていただきました。
タタラさんのSSがすげー好きだったのと、どっちも戦いに関する神様だからからめやすかったというだけで勝手にクロスオーバーさせてしまいました……。作者さんすみません。

196:名無しさん@ピンキー
14/09/22 18:14:11.52 60uGSmOt
>>193
星彦×織姫なのですが、よろしければこちらのスレに投下したいのですが可能でしょうか?
NGに入れられるように先に注意喚起しますので

197:名無しさん@ピンキー
14/09/22 19:36:49.47 n6pF8TGK
宜しくお願いします
元々保管庫更新が遅かったせいもあるので…

198:名無しさん@ピンキー
14/09/22 20:33:16.29 60uGSmOt
>>197
いえとんでもないです
精神的お焚き上げのつもりで書いたので
もし誰かに読んでもらえたら有り難いという心境でしたから

199:名無しさん@ピンキー
14/09/22 20:34:27.30 60uGSmOt
次のレスからNGワード(名前欄)

「鷲ノ宮星彦×琴ノ宮織姫」

では改めてよろしくお願いします

200:鷲ノ宮星彦×琴ノ宮織姫
14/09/22 20:37:53.15 60uGSmOt
開け放たれた窓から、天の川の星々が光を投げかけている。
ほんのりと桃色に染まったなめらかな肌が、星影を受けて艶やかな光と影を作り出す。
琴ノ宮織姫は両の腕を重ねて頭を預け、寝台にうつぶせたまま行為の余韻に身を任せている。
汗が引き、少しずつ体が冷めていく。同時に本能が理性に覆われていく。
気づけば部屋は深い夜気に満たされている。今年の逢瀬も、あと数時間だ。
夜明けになれば、白無垢を模した着物を纏って、織姫は夫である鷲ノ宮星彦の元から去る。
次に逢うのは来年の七夕。毎年のことだ。

心地よい微睡みをもう少し味わっていたかった。
だが、そろそろ体を清めなければ、と思いつつ、顔を上げる。
寝台に身を起こして背を向けたまま、星彦が溜息をついたからだ。
「どうしたの?」
肢体を反転させて上体を起こし、織姫は星彦に寄り添う。
星彦はひどくばつの悪そうな顔をしている。追及してくれと言わんばかりに。
「もしかして、浮気でもしたの?」
織姫はわざと嫌味に響く声音を作った。星彦が一瞬固まる。
「―違う、あれは、そういうわけじゃ」
「『あれ』って、何かしら?」
顔を上げかけた星彦が、織姫の視線を掻い潜るように首を背ける。
言い訳をするつもりで墓穴を掘る、という悪循環に陥ったようだ。
くすくすと織姫は笑う。

面白いように顔に出る男だ。
いや、長い年月で織姫が夫の顔を読む術を身に着けたのか。
今となってはどちらが真実なのかわからない。だが、どちらでも構わないのだ。
答えを必要としない問いなのだから。
骨ばった星彦の右肩に、織姫は左の頬を押し当てる。
「別にいいじゃない。朱点打倒を悲願とする一族と交わって子を授ける。
天界の頂点たる太照天昼子の判断に従っているわけでしょ。気に病むことはないわ」
「…すまん、おまえがいるのに…」
「気に病むことはないって言っているじゃない。怒ってないわよ。
だって、昼子の判断に従っているのは、あなただけじゃないもの」

201:鷲ノ宮星彦×琴ノ宮織姫
14/09/22 20:39:38.64 60uGSmOt
刹那、星彦が弾かれたように顔を上げる。
「―おまえも子を成したのか、一族と」
織姫は笑顔を浮かべたまま答えない。
星彦は織姫の二の腕を掴み、そのまま寝台に押し倒した。
ふたりぶんの重みを勢いよく受けて、寝台が軋む。
「痛いわ、星彦」
「答えてくれ、織姫」
両の二の腕に食いこむ指が熱い。
草色の双眸が覗きこむ。織姫の表情から真意を捕えようとでもするかのように。
整った顔に険が入っている。星彦がこんな顔をするのは珍しい。
本当に怒っているのか、演技なのか。
本当に怒っているとしたら、嫉妬なのか、自尊心を傷つけられたからなのか。
そんなふうに穿った見方をしてしまう自分を、織姫は鬱陶しくさえ思う。

「…子供って、生まれてみると可愛いものね。片羽ノお業の気持ちが少しわかったわ。
私はお腹を痛めたわけではないけれど」
「おまえ―」
「あなただって、子供は可愛いでしょう?」
「それは…確かに」
「一族を、いいえ、もう片方の親を、多少なりとも愛しいと思うわよね?」
「それは―…」
「私を不貞だと詰る権利は、あなたにはない。だってこれは不貞行為じゃないもの。
だから私もあなたの詮索はしないわ。だって、これは不貞行為なんかじゃないんだもの」

「織姫…」
「私たち、『神』でしょう? 二柱で一対の、ね」
星彦が奥歯を噛む。
「人でいれば良かったのか」
「どうかしら、わからないわ」
「くそっ…」
星彦がかぶりを振る。さらさらと、髪が音を立てる。
本当に、織姫にはわからなかった。表情を窺うに、星彦にもわからないのだろう。
もう判断がつきかねるほど、すべては遠い過去になってしまっている。
もしあのとき、永遠にならなかったら。
いつかは父も織姫を許してくれただろう。星彦と共に暮らすことができただろう。
真面目に機を織って日々働き、子供を産み、育て、星彦と共に老いていっただろうか。
だが、未だに青臭さの残る星彦が老人になった姿を織姫には想像できない。
選択肢は最初からひとつしかなかったように思えてならないのだ。

202:鷲ノ宮星彦×琴ノ宮織姫
14/09/22 21:03:09.66 60uGSmOt
「俺は別れるつもりはない」
「私もないわ」
こんなに体が馴染む相手はもう見つからないだろうし、という言葉は呑みこんだ。
これ以上嫌味な女を演じても、余興にはならない。
別れるも何もないのだ。嫌なら逢わなければいい。
夫婦という関係など、永遠の前には取るに足らない括りだ。
ただ一対をなす夫婦神という形になっている、それだけのこと。
星彦の挙動や反応ひとつひとつに一喜一憂し、胸をときめかせていた織姫はもういない。
七夕の翌日にはもう来年の七夕を思い、機を織りながら涙を流した織姫はもういない。
今は駆け引きばかりだ。『神』になったことで、すべては遊戯になった。
遊戯―いや、暇潰し、だろうか。
『神』になってでも欲しかった永遠の愛は、どこに行ってしまったのだろう。

ひとりの青年の姿が織姫の脳裏を掠めた。
夫と床にあって別の男の姿を思い浮かべる。
いかにも『不貞』な行為だが、織姫には初めてのことだった。
駆け引きを許さないまっすぐな瞳の青年との、たった一度の逢瀬。
女と唇を合わせるのさえ初めてだと青年は言った。
確かに、帯を解く仕草にさえもどかしさを覚えた。
乳房に触れんとする手が震えていた。
こちらから快楽を積極的に探さねばならないほどたどたどしい行為。
ただ初々しかった。それでいて、眩しかった。
最初から最後まで真摯だった。―愛しかった。
彼はもう、この世にはいないはずだ。
永遠と対極にある彼の寿命は、二年もないのだから。
逢瀬の後、織姫は青年と何の関わりも持たなかった。
神は地上に対して不干渉であるべきという暗黙の了解があるから?
いや、違う。怖かったのだ、きっと。
もう一度逢えばもっと愛しくなる。それが怖かった。
地上へ降りた子供に対しても、同じことだ。

不意に星彦が覆いかぶさって来る。
唇を奪われ、気を取られた瞬間に腿を割られる。
「ちょっと、星彦、ん…」
唇を離す。また塞がれる。舌が絡んできて、軽い気持ちで織姫も応える。
貪るように唇を合わせていると、引いたはずの熱が戻ってきそうだ。
織姫は星彦の首に手を回しかけて、ふと冷静さを取り戻し、唇を離した。
唾液が口の端から零れそうになる。
「星彦、朝になるわ」
「…そうやって逃げるのか?」
苛立ちを孕んだ声。
星彦が親指で唾液を塗りたくるように織姫の唇をなぞる。

203:鷲ノ宮星彦×琴ノ宮織姫
14/09/22 21:05:25.42 60uGSmOt
言葉の真意をはかりかねていると、まるで心臓を鷲掴まれるように左の膨らみを掴まれた。
痛みに顔をしかめると、星彦は力を緩め、まるで捏ねるように撫でまわす。
ふつ、と桜色の先端が尖ると、今度はやわやわと指先で先端だけを弄って来る。
「…は…」
「弱いよな、こうされるの」
星彦は張りのある膨らみに唇を押し当てながら、両の尖りを触れるか触れないかのところで刺激する。
触れられてもいないというのに、花芯が疼く。一年分愛された後だというのに。
足を閉じたくても、星彦の身体がのしかかっていてどうにもならない。
「朝が、来るわ、星彦…」
「日が昇った後も一緒にいたって、誰にも咎められたりしない」
乳房に口を軽く押し当てたまま、星彦は言った。
「…永遠になったって、そういうことだろ」
「…そうね。でも…」
言葉は続かなかった。星彦の指が陰核を掠め、織姫はびくんと縮こまる。
自然、余計に受け入れやすくする姿勢となり、難なく指が秘所に入って来た。

星彦がさっき放ったものは織姫の中に残っていて、普段よりずっと淫猥な音を立てる。
「うんっ、あ、あっ…そこ…」
びくびくと体が跳ねる。二本の指の腹がちょうど弱い部分を内側から擦りあげる。
星彦は織姫以上に織姫の体をよく知っている。
奥から蜜が溢れてくる、身を捩りたくなるような悦楽。
音は水気と粘性を増していく。耳から犯されているような羞恥。
「そこ、駄目よ、あ…っ」
織姫はうっかりと理性を手放した。
充分に夜を堪能したはずなのに、あっと言う間に渦に呑まれる。
興奮しているのか星彦の息が荒い。
普段は涼しげな顔をしているのに、やはりこういうところは男ということか。
「…挿れるぞ」
「ん…うん…」
織姫が答えるでもなく答えると、指が襞を強く擦りながら引き抜かれる。
ひくん、と織姫は白い喉を鳴らした。
出ていく指さえ締め上げてしまう。

204:鷲ノ宮星彦×琴ノ宮織姫
14/09/22 21:08:57.01 60uGSmOt
膣内のじんわりとしたこそばゆさに無意識に身を捩ったが、力ずくで戻されて屹立したものが花唇に宛がわれる。
息をつく間もないほど、熱が一気に織姫の内襞を押し広げた。
「あ、あ…っ!」
悲鳴を上げずにはいられなかった。織姫は星彦の背中を掻き抱く。
「ふ、あう、うぅ…ん」
喘ぎとも吐息ともつかない声が漏れる。まるで楔を穿たれたようだ。
だが、唐突に突き入れられた熱い異物を、織姫の襞は受け入れんと絡みつく。
臍の下あたりがじんじんと疼いてたまらない。
「悪い、きつかったか」
「へ、平気よ…生娘じゃあるまいし…」
強がりを言ってみせたが、腕の力が緩んでしまった。
両腕が力なく寝台に投げ出される。
星彦が繋がったまま織姫の目尻に唇を押し当てた。
瞬きするとこめかみに涙が伝う。
「…すまん、妬いたんだ」
苦い顔で星彦が言う。目と目が合う。とくん、と胸が鳴った。
快楽と同居するには、あまりにも青い感情だ。
だが、昔、まだ『人』であった頃の星彦に対する恋心は、まだ織姫の中に残っていたらしい。
その証拠に、高鳴る胸の奥底で、昏いものがじりじりと焦げ始める。
この感情は、嫉妬だ。星彦が抱いたのは、どんな娘だったのだろう。
たった二年で散る命を宿した娘―恐らくは、星彦にも眩しく映っただろう。
織姫が永遠に失った、命の揺らめき、そして煌めき。

星彦の頬に触れ、首にしがみつく。
「私を女にしたのはあなたでしょ。動いて。…ね?」
耳元で囁くと、織姫は星彦の耳朶を甘噛みした。星彦がぶるっと震えて息を漏らす。
織姫に弱い部分があるように、星彦にも弱いところがあるのだ。
星彦が織姫の腿を抱え、抽送を始める。
体の中が擦られるたび、体が痙攣する。
もっと、もっとと体が痛切に訴えているのだ。
あられもない声を上げ続けている自覚は、もう織姫にはない。
「織姫っ…」
動きが激しくなってきて、抉られるような錯覚に、織姫は首を振る。
もはや快楽に身を任せるだけだ。絶頂を予感させる痙攣が、織姫を襲う。
無意識に内襞が星彦の熱にまとわりつき、締め上げる。
「あ、あう、ん…も、だめ、いく…!」
「…つっ!」
頭が真っ白に弾けた瞬間に、最奥で熱いものが迸るのを感じた。
星彦はすぐには抜かない。いつか織姫が頼んだからだ。
もしかしたら子供ができるかもしれない、という流れ星より儚い願いのために。
充分に精を吐き出して、息をつくと星彦が出ていく。
どちらのものか区別のつけようのない粘液が、とろりと花唇から零れる。
ほう、と溜息。また、獣のような熱が引いてゆく。
だが、まだ恋心の欠片は織姫の胸に残っていた。
星彦は自分のものであり自分は星彦のものである、と確認できる方法は体を合わせること。
子は成せないというのに、その本能的な行為しかない。


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