俺の屍を越えてゆけでエロパロ2at EROPARO
俺の屍を越えてゆけでエロパロ2 - 暇つぶし2ch40:名無しさん@ピンキー
14/07/22 19:44:51.38 0ROZYkA+
一族に性的なご奉仕をするコーちんのSSはいるだろ?
あと御姫様も

41:名無しさん@ピンキー
14/07/22 20:37:40.52 DrZDu89r
>>38-39
サンクス少し救われた
和むわ~

42:名無しさん@ピンキー
14/07/22 21:57:42.03 GGl3Uhnb
リメイクまでの設定で書けばいいんだ…それより後のは何かの悪い夢ということで…

43:名無しさん@ピンキー
14/07/22 22:24:41.39 Cv1PSWQg
>>40
ちっちゃ、と言われるのか

44:名無しさん@ピンキー
14/07/23 00:02:08.24 7itdv7fK
>>42
すべては寝太郎さんが見た悪夢だったんだよ
いや、淫夢かな?

45:名無しさん@ピンキー
14/07/23 18:13:07.14 dbza96Sl
まだ3つ目の祭具取り返した所で途中なんだけど
何で鵺子さんが色んなスレで拒否られてるのか理解した
てか鵺子さんが主役強奪してパッケージ&PV詐欺なんじゃないかっていうくらい展開が変わってしまったw
コーちんも鵺子さん同様駄目なの?駄目になる展開あるの?
毎回ダンジョンで置き去りにして「待って~、待ってよ~」って言ってるコーちんに萌えてる自分には何か辛い・・・

46:名無しさん@ピンキー
14/07/23 20:18:33.48 4uonoJ62
>>45
葬式スレのテンプレ見てきなよ
個人的には幻滅した

47:名無しさん@ピンキー
14/07/23 20:41:46.75 dbza96Sl
見てきた

初代当主の頃から一族達の死を看取ってきたコーちんがちょっと嫌な台詞言っただけで
こんな悪態付くはずがない
こいつは絶対、黒幕鵺子が用意した偽コーちんだ
鵺子と晴明は絶対グルなんだ
そしてコーちんは晴明のキモ野郎に監禁されて雑魚敵を産む道具にされているんだろう
悲惨だ

で何で「晴明と鵺子両方憎い」の選択肢ないんだろう?

48:名無しさん@ピンキー
14/07/24 03:18:26.17 Vk6kbvUo
捨丸株急上昇してるのを見て前スレの神SSを読み返して萌えてた
黒蠅様に関しては世界線が違う、で決着つけたからこれからもうちの娘とイチャコラしてもらうよ(涙)

>>44
寝太郎さんセーフでよかった

49:名無しさん@ピンキー
14/07/24 22:18:13.50 7PxaU0Zz
今になって一族に好意的な神様にこれほど癒されるとは!
前作で「あんたが大好きポヨヨン」と言ってくれた白雪ちゃんもセーフで良かった

50:名無しさん@ピンキー
14/07/25 18:37:33.55 Mxxxh8Vw
白雪ちゃんマジ女神

51:名無しさん@ピンキー
14/07/25 20:06:45.87 x/3xG+Lz
五郎さん達も大好きだったのに謎の設定改変、性格改変されてマジで涙目wwwww
一族の娘を任せられる安牌キャラだと思ってたんだけどなorz

っていうかここの五郎ズ×双子SSが大好きで1で産まれた双子を嫁がせたばっかりだったからなんかダメージががが
夢だ…これは夢なんだ…
もしくは五郎さん達は鵺ノ首輪を付けられて操られて頭がおかしくなってるんだ…

52:名無しさん@ピンキー
14/07/25 21:06:14.27 Mxxxh8Vw
葬式スレの歌○師匠な捨丸さんがツボで萌えが加速して辛い

>>51
分かる…分かるぞ…
でも火を授けてくれた五郎さんズの話が陣内さんにも繋がるのだから、2とは別人なんだよ…
だから双子ちゃんとずっと幸せでいていいんだよ…

53:名無しさん@ピンキー
14/07/25 21:10:03.21 HnrG6vmS
システム的にも最強遺伝子の関係上、一族強化にはほぼ必須な立場なのもなぁ…
イツ花ー、帰ってきておくれぇー、お前じゃなきゃダメなんだー!

54:名無しさん@ピンキー
14/07/25 22:04:28.78 iQN1q7lV
黄川人「一族の所にDQNイタチを世話係と称して送り込んでやったぜ。
今頃「ちっさ」とか言われんだろうな、ざまあwww」

55:名無しさん@ピンキー
14/07/26 00:45:03.83 ae62OzhC
もう2はパラレルとして片付けてるから(白目)
でないと燃え尽きよさんまでアウトとかやってられねえよ

56:名無しさん@ピンキー
14/07/26 01:01:55.05 vBdN5Ef7
>>54
何故だろうその口調すごく安心するよなんでかなぁ(涙)

もうさ、ホント悪い夢だったんだよ
朝ご飯の支度を終えたイツ花が自分を揺さぶり起こす声が聞こえるよ
…自分の好きな作家さん達がそう割り切ってまた創作してくれるのを祈るばかりだ…

57:名無しさん@ピンキー
14/07/26 01:06:45.35 UdnntxeK
お、おい、クリア後にまさにその希望が現れたぞ!
ソースは葬式スレ、やっぱりイツ花は天使だったんや!!

58:名無しさん@ピンキー
14/07/26 14:41:40.97 cvKjK7jZ
保管庫ってどっかの無料サイト使って作ればいいのかね
前スレのSSや昔ゲーパロ保管庫にあった七篠家シリーズやいいものが多かったから好きなんだ俺屍エロパロスレ

59:名無しさん@ピンキー
14/07/26 17:43:56.98 thwiH2dm
>>58
@wiki使ってるのよく見るね、保管庫
あとエロくない作品スレにあったお輪と捨丸の話もすげーエロかった

60:名無しさん@ピンキー
14/07/26 18:09:45.14 thwiH2dm
>>59
お輪じゃなくてお業だったわorz
あのSSがきっかけで俺屍プレイしたんだよなあ

61:名無しさん@ピンキー
14/07/27 14:06:36.74 QxbH030K
さぁ早くぬえ何とかさんに現を抜かしている神様を
倒して屈服させてお仕置き逆レイプして正気に戻すSSを書くんだ!!

62:名無しさん@ピンキー
14/07/27 17:33:42.61 3RMO2dU8
保管庫あったら嬉しいなぁ。クレクレで悪いが

>>60
そっちのスレは知らなかった!サンクス探しに行く

>>61
うちの黒蠅様が現を抜かしているのは一族娘だから(憤怒)
2で純粋に萌えてる人がいたらそこはすまん

63:名無しさん@ピンキー
14/07/27 19:43:02.29 bOmj84zN
伏丸なんかせっかく喋ったと思ったら鵺子の裸の事についてしか語らないしな!
あと寝太郎触手操ってて何かエロい

64:名無しさん@ピンキー
14/07/27 21:57:51.76 lvQWmtLo
葬式スレ見てると

妻「私の事愛してるって言ったわよね? 子供まで作っておいてあなたったら昔気になってた女のことばかり…
こんな節操のない犬チンポは今回の昇天でしっかり躾け直してあげなくちゃ」
娘「じゃあ私はおかあさまと一緒におとうさまが正気に戻るお手伝いするね!」

こんな光景が浮かんできて困る

65:名無しさん@ピンキー
14/07/28 20:46:53.48 vpg0SzNZ
■に女神達をNTRれて悲しい人達もいるはず

66:名無しさん@ピンキー
14/07/28 21:08:25.31 9u22QLOX
さらにそんな女神達NTRしてやったらいい

67:俺屍2・田鶴姫と■■(1/5)
14/07/29 00:17:16.72 BGk3AXil
俺屍2、田鶴姫イベントのネタバレ。改変、痛いの多め、エロは少なめ
救いなんてなかった

*****

 あなた方なら、きっと良い“生餌”になってくれるでしょう。
 朝廷を乱す陰陽師が、あの貼りつけたような笑顔で、粘りつく声で田鶴姫にそれと告げて
から、彼女を従者ともども鬼の棲まう迷宮に閉じ込めてから、一体どれほどの時間が過ぎた
だろうか。数刻か、数日か、或いはもう数年は経ったのか。
 田鶴姫は把握していない。
 結界で時を歪めたのだと、陰陽師―阿部晴明は説明した。
 “生餌”は何時までも新鮮でなければ困りますからね。
 聞かれもしないのに、己れが掛けた術で指ひとつ動かせないどころか意識すら朦朧とした
状態の田鶴姫と力丸に向かって滔々と語りかけては、携えた仮面を揺らして「晴明ってば、
返事の出来ない相手に話しかけるなんて壁に向かって独り言を呟く寂しい人みたいだよ!」
などと声色を変えての独り芝居を行っていた。
 なんと下らないことを、と呆れることも、返事が出来ないのは貴方のせいだろうに、と
怒ることも、彼女には叶わなかった。唯々力丸と並んでぼんやりと助けを待つばかりで
あった。

 助け。
 そう。救出は、来た。
 “晴明、討つべし”の目的のため田鶴姫と協力関係にある一族が。晴明が田鶴姫をエサ
におびき寄せようと画策した、死人返りの一族が。
「皆さま、よくいらっしゃいました」
 晴明がそれはそれは嬉しげに扇子の下の口元を歪ませ、手にする鬼の面をケタケタと
鳴らす。
 迷宮を踏破してきたかの一族は、揃いの装束は血と埃で汚れ、抜き身の武器にもその目
にも晴明への殺気を宿していた。半裸の女陰陽師以外に、一行の中に見知った顔はない。
二年足らずで生まれては死んでしまう呪いつきの一族だ、迷宮の外では彼らが代替わり
するだけの時間が過ぎてしまったのだろう。

 その光景を。晴明と女陰陽師が何やら言い争い、晴明が鬼面の声で茶化しを入れるのを、
田鶴姫はぼんやりとした意識でかろうじて捉えていた。
 小柄な身体は何処にも触れていない。支えるものも無く宙に浮き、長い黒髪は水中に
沈めたそれのように逆巻いてゆらゆらとたなびく。
 息苦しさと、倦怠感。自分の身の内からなにかが少しずつ抜き取られてゆくのも、喧騒
も、遠い。
 落ちそうになるまぶたをこじ開け周囲を見下ろす。
 笑う晴明、顔を嫌悪に歪める女陰陽師、田鶴姫を助け出そうと機を伺う呪われし一族の
面々―探す。何処、だろう。田鶴姫の従者。物心ついたときから傍にいる、田鶴姫を
守ることを己が第一位に据えている、あの、愚直な、忠義心の塊のような男は、何処に。
「……、……」
 自身の耳にすら届かない名前が、風鳴りにかき消される。姫様、と叫んだのは薙刀士の
娘だ。
 田鶴姫の浮くその真下、禍々しい円陣より出現した“手”が爪を振り上げ、長い黒髪の
一房を削ぎ落とすのを、田鶴姫当人は視認できなかった。身体の芯が冷えたのはそれでも
本能が危険を悟ったからか、“手”が動く度に精気がごそりと抜かれてゆくからか。
 苦しい。
 苦しい。

68:俺屍2・田鶴姫と■■(2/5)
14/07/29 00:21:06.22 BGk3AXil
 何処に―身分の差はあれど兄とも慕う―常に田鶴姫を守ってきた、あの男、力丸は、
今、どこに―。
「外道ですか?」
 晴明が。笑う。
 女陰陽師、ただ一人を、見て。
「では外道ついでに、次の趣向も紹介しましょう」
 明るい声の孕む不吉さに、無理やり首をねじ曲げ晴明を見る。
 中黄色の背中の向こうに―探していた誰かが―。
「鬼頭というのは、心の底にある欲望を増幅し、力に変える仮面です。……口で言っても
わかりませんよね? さっそく試してみましょうか」
「テメエ、晴明、」弓を構えた一族が怒声を上げる。「力丸様に何しようって―!」
 かぽり、と。
 なんの躊躇もなく。遅滞もなく。
 晴明が、鬼の面を、縹の衣の誰かに。被せた。

 耳をつんざく悲鳴が。或いは雄叫びが―? 迷宮に響く。
 声の主は、田鶴姫の良く知る誰かのものだった。

 こんな叫びを、田鶴姫は聞いたことがない。幼い頃、彼女を庇って代わりに犬に噛まれた
ときも、暴漢から彼女を守って怪我をしたときにも、力丸は田鶴姫が必要以上に気に病まぬ
よう、悲鳴を殺して堪えていたのに。なにか、力丸ですら耐え難い、何か、おぞましいこと
が。
 ばきばきべきべき。骨の育つ音がする。肉の張り詰める音がする。ヒトの身体がヒトでは
ないモノに置き換わる、外法の音が響く。急激な肉体の変化にのたうち回るソレは、軽々と
晴明の背を追い越し、七尺はあろうかという異形の身をよじらせる。顔は、見えない。
晴明が持っていた、笑う鬼の面がソレの頭部をすっぽりと覆っている。純白の飾り毛を
振り乱し、ソレが吠える。もう、ヒトの声をしていない。
 ふーっ、ふーっと獣じみた呼気を洩らし、四つん這いになったソレが周囲を睥睨する。
盛り上がった筋肉が青い皮膚の下でびくびく脈打つ。
 きろり。きろり。ソレの目が―鬼の面の目が―何かを探す。何かを。誰か、を。
「おやおや、てっきりあなた方に襲いかかると思っていたのですが……これは予想外」
「晴明はめちゃくちゃ恨まれてるからねえ、狙われちゃうんじゃないの? 危なああい」
 被せたはずの鬼の面を手に、晴明は平然としている。
 討伐隊の隊長が、僅かな希望を篭めて一歩を踏み出す。「もしかして、まだ、心が」
 きろ、り。
 つくりものの眼球が、田鶴姫の、目と、合う。
 咆哮。
 異形のモノは逞しい四肢で床を蹴り、ひといきに田鶴姫の浮かぶ円陣へと飛び込む。
そこには正体不明の巨大な“手”が生えており、闖入者に怒りをあらわにし襲いかかる。
禍々しい爪が、二本は青く逞しい腕に掴まれ止められ、止めきれなかった残りが青い皮膚
を切り裂いた。赤い、ヒトと同じ色をした血が飛び散る。
 異形は己が傷を意に介する様子もなく、腕に力を込める。筋肉が膨張し、元の太さの
二倍以上に膨れあがったかと思うと。
 巨大な“手”を、人差し指と中指の間から、真っ二つに引き裂いた。
 ふっ、と。
 田鶴姫の身体が、落ちる。
 突然のことに受け身もとれなかった身体はそのまま床に叩きつけられて背骨が激痛に
軋む。田鶴姫は息を詰まらせ悲鳴を洩らすことも出来ないまま、術を解いた異形の前で
呻く。
 呪われし一族たちの顔が輝く。

69:俺屍2・田鶴姫と■■(3/5)
14/07/29 00:22:28.24 BGk3AXil
 ―晴明が何をしたのかは、分からない。
 ―けれどあの方にはまだ心が残っている。
 ―田鶴姫を守る、という心が―ならば―。
「あれあれ? 晴明ってば、アレ、壊れちゃったよ? いいの?」
「ふむ、所詮唯人の精気では、腕どころか外殻を喚び出すのが精一杯、ということですね」
「―のんびり話してんじゃねェぞオラァ!」
 罵声と共に右目に打ち込まれた矢を、晴明は足をふらつかせながらも平然として引き
抜き、放り捨てる。
「テメエが何したか知らねえが、■■様はなァ―あ?」
 きょとん、と、弓使いが間の抜けた顔で己が喉を押さえる。再び口を開き、誰かの名を
言おうとしたが、洩れたのは奇妙にぼやけた呼気だけだ。
「何だよ、これ」
 晴明が。くく、と、笑った。
 急変する状況で、田鶴姫は呻きながらも身を起こそうとする。打ちつけた背中は痛むが、
動けるということは大した怪我でもないだろう。早く、せめて戦いの邪魔にならぬ場所
へと移らねば。
 ふらつく華奢な身体を。
 青い、太い、異形の腕が、押さえつけた。

「え」
 向こうで、弓使いが呆けた声を洩らす。
「何、してんだよ」

 押さえつけられた田鶴姫も呆然とする。大きな身体に圧し掛かられ、両の腕をがっちり
と捕らわれて、眼前の鬼の面からは生臭い荒い息がふうふうと降りかかる。

「何してんだよ―アンタ―■■様―?!」

 異形が頭を大きく振りかぶる。腕に体重が掛かり、下敷きになった田鶴姫の腕にも加重
が掛かり、折れんばかりに肉が骨が軋む。
「ひ……!」
 田鶴姫の悲鳴は、異形の咆哮にかき消された。“彼”は威嚇するかのように、呪われし
一族へと吼え猛る。太い腕より滴る血が、田鶴姫の上等の装束を汚す。
 その。
 生臭い血に染まった装束が。異形の爪で、引き裂かれた。
 頭が真っ白になる。状況が理解できない。爪の一撃は肌にまでは届かず、薄衣を一枚
残している。その、細帯で留めただけの薄衣も、太い指に引っ掛けられ荒々しくめくり
上げられた。肉付きの薄い下半身が、到底他人に晒すべきではない箇所が、外気に、多く
の視線の前にさらけ出される。
「いっ…きゃあああああッ!」
 羞恥に、恐怖に悲鳴をあげる。隠そうにも再び押さえつけられた腕はびくともしない。
叫ぶ田鶴姫のほっそりとした腹に熱い塊が押しつけられる。
 ソレに目を遣り、心底ぞっとした。
 腹をずりずりと擦るソレは、青黒い筒状の肉だった。先端が膨れ、根元に向かうところ
できゅっとくびれ、そこから先には太い血管が視認可能な勢いで脈打っている。
 異形の纏う衣服を押しのけ突き出されるソレは、つまりは異形の男根だった。七尺の
身の丈からすると控えめにも見えるが、普通の人間の男を思えば充分に巨大だった。小柄
な田鶴姫の腹の上で行き来すれば、その不釣り合いな大きさがますます際立つ。

70:俺屍2・田鶴姫と■■(4/5)
14/07/29 00:23:37.59 BGk3AXil
 田鶴姫も皇族の姫、何時か嫁いだときに備え、床の中の作法については乳母から一通り
のことは習っている。知っていて尚、否、知っているからこそ、今自分が如何なる状況に
あるか、自分がこれからどうなるかが理解できるからこそ、恐怖と嫌悪とがとめどなく
込み上げる。
 腕が軋むのも構わず身をよじり、絶叫する。はしたなくも髪を振り乱し、叫び、探す。
 何時だって傍らにいた男の姿を、助けを求める。
「■■―! 何処なのですか、■■―!」
 泣き叫ぶ。名前が呼べない。そこに確かに在るはずの名は、音にする端からもろもろと
崩れて零れる。
 それでも居るはずだ。さっきまで確かに居たはずだ。田鶴姫と同じく身体と心の自由を
奪われ、晴明に鬼の面を被せられ―そんなはずがない―あの男は居るはずだ、田鶴姫
のほっそりとした脚を割り、煮え立つように熱いものを押し付けてくる異形、その身体に
ぼろくずめいて纏わりつく縹色の衣だとか、その異形が、一丁前の侍の如く太刀を佩いて
いるだとか―あの太刀を、田鶴姫は知ってはいないだろうか―あの男が元服した折、
田鶴姫の父が下賜した太刀と、よく似てはいないだろうか―違う、違う、そんなはずが
ない、そんなはずが、
 脚の間に、巨大なものがめり込む、誰にも開かれたことのない場所がこじ開けられる
激痛が走る。
 “痛い”のは、そこまで。
 あとは単なる衝撃だった。身体の内側が凶悪な質量に埋め尽くされ、どすんと突き上げ
られる。はらわたが揺すぶられ吐き気が昇る。
「あ……ぐ、え……」
 貴族の姫にあるまじきえづきを洩らし、背を反らしてがくがくと震える。全身から一気
に力という力が抜け、蹂躙する他人の肉だけが精気に満ちて脈打っている。
 ずぶり―と。恐ろしいことに、肉が、更に押し込まれた。狭道を裂き、奥より先の臓物
まで歪ませるほどに埋め尽くしておきながら、異形の男根は未だ“余って”いたのだ。
それを全て田鶴姫のなかに収めようと、異形は強く腰を突きだす。一突きごとにごぶり、
ごぶりと音がして、女の内側を己れのかたちへと壊してゆく。
 異形の血に外側を、異形に壊された自らの血で内側を汚しながら、田鶴姫の目は唯虚ろ
だ。一度気を失っても、腹の奥をごりごりと削ぐ感触に意識が引き戻されその度に眼前の
異形の面と対峙することになるのだ。血のにおいが、ひどい。
 何かが激突する音が、派手に響く。
 けたけた笑う晴明と鬼面の前で、結界に弾かれた薙刀士が憤怒の表情で身を起こす。
「いいじゃありませんか、もう少し“彼”の本懐を遂げさせてあげては?」
「“鬼頭は心の底にある欲望を増幅し、力に変える仮面”……大事な主君にこんなこと
したがるなんて、とんでもないムッツリ助平だね、晴明!」
「止めてください、その言い方だと、まるで私が助平みたいじゃないですか」
 結界に次々と薙刀が、刀が、矢が打ち込まれ少しずつ壊れてゆくのを眺めながら、晴明
は笑い続けている。猛る異形の鬼も、犯される田鶴姫も、陰陽師は見てはいない。
「鬼頭は、欲望を増幅し、力に変えるのです」
 その身に迫る刃も、憎悪と憤怒の眼差しも、一顧だにしない。
「私を傷つけた相手も、きっと私を殺したくて殺したくてたまらなかったのでしょうねえ
……ねえ、“誰”だったんでしょう? 教えてくださいよ、母上」
 陰陽師が見るのは。
 黒い髪の。肌の大半を晒しながら尚凛々しい雰囲気の、女陰陽師だけだった。

 己れが呪った一族も、己れを殺そうと刃を振るう一族も、身を裂かれる田鶴姫も、己れ
が生み出した鬼も、帝も、京の都も、そこに住まう民草も、ヒトとしての全てを奪われた
■■も、自分が踏みにじった全てを、まるで、路傍の石ころの如く、無視して。

「晴明……晴明ええええッ!!!」

 ありったけの憎悪を込めて叫んだ名は、陰陽師をこそとも動かせなかった。

71:俺屍2・田鶴姫と■■(5/5)
14/07/29 00:24:41.26 BGk3AXil
 吼えたのは田鶴姫を犯す鬼で、貫く肉が脹れあがり一層激しく突き上げてくる。叫んだ
形のまま口をぱくぱくさせる華奢な身体を、異形の巨体が抱きしめる。長い爪が残った衣
を切り裂きぼろくず同然にしてゆく。
 巨体が覆い被さり、田鶴姫の視界は塞がれる。毒々しく青い肌と、流れる赤い血と、血
の臭いと生臭い荒い息と身を裂く熱と質量だけが全てになる。田鶴姫を周囲全てのもの
から隠し、小さな身体に己が肉全てを収めようと躍起になる、異形の鬼だけが全てになる。
 痛みが痛みとして認識できなくなる程の危険な蹂躙の下、意識がぼやけてゆく。幾度も
呼ぼうとした■■の名は幾度口にしてもかたちを成さない。だかれあの男は此処に居ない。
だから届かない。だから―ああ、でも、あの“腕”から田鶴姫を助けたとき―異形は
確かに彼女を―。
 異形が吼え、田鶴姫を抱え込んでだきしめた。華奢な骨が軋み、細い指先が痙攣する。
注がれる熱い白濁に胎が悲鳴をあげ、傷口から新しい血を滲ませる。白と赤とが混じり、
溢れ、弛緩した太腿を伝い落ちた。

 粘りつく白濁と、吐き出しても未だ不吉に脈打つ男根とを胎に呑み込み、田鶴姫は虚ろ
な目を唯開けていた。開いているだけで、何も見てはいない。呼吸すらもう少し押されれば
止まってしまいそうだ。
 何かの砕ける音がする。
 陰陽師の結界が破れた音だ。次いで、怒声、制止の声、武器を振るう風切り音。
 田鶴姫を抱いたまま、鬼が吼える。
 貫く体勢そのままに鬼は立ち上がり、新しい場所を抉られる衝撃と、重力に引かれ増す
最奥への加重に田鶴姫は微かに喘ぎ。

 霞む視界に映ったのは、怒りと悲しみでぐちゃぐちゃに歪んだ顔で弓を構える、呪いつき
の一族の姿だった。
 鋭い矢は、田鶴姫を犯す、彼女の命を奪いつつある、異形の鬼へと向けられていた。
 ―おやめください、そう、懇願しようと。
 ―■■をころさないで、と。

 大事な誰かの名前は、やはり何処にも無かった。

 なので。矢は放たれ、田鶴姫は無駄と知って残る力を振り絞り、犯す鬼の顔の横へと
かざした。薄い女の手など、何の守りにもならず吹き飛ぶとは分かっていた。
 矢が届く寸前、鬼が田鶴姫ごと身をよじる。華奢な手がふわりと宙を泳ぐ。
 鬼の無防備な頭に渾身の矢が突き刺さり、鬼の面がその中身ごと爆ぜ、田鶴姫の手を
濡らす。
 鬼の血はヒトと同じにおいがした。

72:俺屍2・田鶴姫と■■(5/5)
14/07/29 00:29:48.67 BGk3AXil
田鶴姫かわいいよ力丸一族意識してかわいいよでプレイしてるけど、この二人は昼子の夢でも出てくるんだよね?
夢だし、ちょっとばかり死人が生き返っても不思議じゃないよね? そうだと言ってよバーニィ

73:名無しさん@ピンキー
14/07/29 21:23:11.21 yIxfF2Ki
GJ!御姫様可哀想だけどエロい!

74:名無しさん@ピンキー
14/07/30 00:43:18.68 t/jPXap+
おお…切ない…GJ!
力丸と田鶴姫いいよねー

>>61
狐をしばいて騎乗位で責める一族娘は妄想出来たけど
鳥はやっぱり無理だった…(白目)

75:名無しさん@ピンキー
14/07/30 04:36:51.90 jCdFLx2w
GJGJ切なエロいよー

>>74
嫁「この羽の温もりが懐かしいですね」ブチッ
蝿「イテッ!?」
娘「わたし父上の羽で機を織るね!そしたら暖かいし羽がないなら地上に居ればいいもんね!」
ハッピーエンド
こうですか分かりません

76:名無しさん@ピンキー
14/07/30 08:15:03.51 YWujhQ4Y
神様が天界で家族自慢してたら良いと思う
うちの嫁は下手すると俺より強くて尻に敷かれてるとか
うちの婿は強かったから今度氏神になれるかもしれないとか
生まれたばかりの子供が自分に似てきてかわいくて仕方ないとか
きっと美しく育つだろうが断じてお前に娘はやらん!とか
それぞれの推しメンへの惚気でワイワイしてる中
「どんな汚い手を使って交神したんだ」「うるせェな、恋愛結婚だよ恋愛結婚」
と吐き捨てるように言う人外系男神がいればいい

77:名無しさん@ピンキー
14/07/30 14:02:45.49 Y3+ltWoK
>>76
最後の台詞が捨丸で再生されて萌えた

78:名無しさん@ピンキー
14/07/30 18:31:27.47 RFC7XCEB
■ハーレムの女神達は殆どがもう過去のことは吹っ切ってる面があるのにお夏は未だに執着しているようで
ガックシきてしまったお夏好きの俺・・・
しかしくららちゃんは安全なようで安心した
むしろ■みたいなヤリチンに何故女は惹かれるの?と疑問に思っているようで良かったw

79:名無しさん@ピンキー
14/07/30 20:39:53.25 4+SyC6uR
パラレルワールドだと思えばええねん
リンダキューブだってシナリオごとに人物設定違うし…(震え声)

80:名無しさん@ピンキー
14/07/30 22:41:46.23 pazfduNI
美也好きの俺、特に改悪とかもなくいつもどうりの美也様で大勝利

81:名無しさん@ピンキー
14/07/31 00:22:04.59 gYqs6mov
2は、特徴の遺伝とか良いとこだけ頂いてパラレルワールドで葬っていいと思うんよ…(白目)

交神、結魂相手に獣耳をもふられて恥ずか死にそうになってる一族娘とかいいやん…?

82:名無しさん@ピンキー
14/07/31 03:49:21.01 aPsOsYQ9
ようやくクリア

もう一人作ろうかと思っていた矢先に旦那の男神の堕天&セリフに傷ついた一族女が
別の男神のところへ交神に行って、うっかり泣き崩れるとか
「あなた様はあの方のこと以外どうでもいいのでしょう?なら私に子をお授け下さい」と
父神のところへ交神に行くとか、薄暗い妄想が進んでしまった。

83:名無しさん@ピンキー
14/07/31 06:51:56.69 bm2apDQ1
NTRに失恋、使えば正気を失い誰からも忘れられてしまう鬼頭の存在、堕天して正気を失った男神に獣姦紛いに凌辱されるとか
2は薄暗いネタがやりやすい環境になったイメージ

唯一の明るい話題は神様が転生できるようになった事か?
交神はできなくなるけど一族と同じ立場にいたいと望んだ結果がそれなら良いか…と思ってしまう

84:名無しさん@ピンキー
14/07/31 19:14:52.24 0Rd2etEf
■ヤリチンどころか鵺子と永遠にラブラブするために息子苗床にしようとした外道じゃないですかー
彼と一緒にいると楽しくなると語っていた女神達の話と全然違うじゃないですかー
優しいと思った男が実は外道だったとか現実的すぎて生生しいですよー
そんな奴に女神達が騙されて惚れていたとか悪夢ですよー

あとヌエコヌエコで父性愛とかまったく無しな設定付けられた蠅、狐、犬は哀れとしか・・・

85:名無しさん@ピンキー
14/07/31 20:27:35.68 +WqJ6pQc
お夏ちゃんを■からNTRするしかないな

86:名無しさん@ピンキー
14/07/31 20:47:34.76 PC32dc6h
夜鳥子と■■の話はもうやめよう…
鬱展開のダシに使うなら良いがラブエロを考えてる時に思いだすと憂鬱になるんだ…
以下クリア後ネタバレ



それはそうと晴明が交神時にしゃべる台詞でウルッときた
今までの人生が悲惨だった分一族娘と幸せになって欲しいわ

87:名無しさん@ピンキー
14/07/31 21:41:38.48 +WqJ6pQc
晴明本当に幸せになってくれとしか……。
うちでは死後に氏神になるのが確実な女傑と娶せたので、幸せに暮らしてくれ本当に。

88:名無しさん@ピンキー
14/07/31 21:50:51.55 dMeXG7Ih
晴明にはざぶとんハンバーグのコピペみたいな幸せを味わってほしいな
気持ち悪いとか言ってごめんな、ってあやまりたくなるくらい可哀想だった

89:名無しさん@ピンキー
14/08/01 00:43:54.73 sk5eQlp7
>>84
うちの黒蠅様は父性の塊ですから(半ギレ白目)

90:名無しさん@ピンキー
14/08/01 01:00:04.10 9Qe8m1bd
1Rの最初面倒だったのに徐々にその気になっていく狐次郎と2の発情クソギツネは別人だし
恥ずかしがりで人見知り幼女四夜子様とチンピラじみた理由で襲ってくるスイーツ要員Aは別人だから(レイプ目)

91:名無しさん@ピンキー
14/08/01 04:28:49.89 sk5eQlp7
葬式スレ流し見してたらイラコンのリンクあって久々に見てきたら燃え萌え
選評コメもたまに引っかかるけどまぁ無難?な内容
神様人気把握してなかったんじゃないんかい
そしてあるイラストで「あぁこれは一族と交神相手か」と感じたんだが、
選評は「子供と神様の数が合わないね」だった。■田もスタッフも

なんつーかこの辺が2で感じる齟齬の理由なのかなと
自分がカプ萌え思考なせいかもしれないけど、実際の人気とウリを間違えちゃなぁ

92:名無しさん@ピンキー
14/08/01 14:20:47.53 qKpkqwl6
四夜子とお夏は■に再開できたとしても

四夜子&お夏「会いたかったよ■!」
■「どちらさんですか?ヌエコ知ってる?」
鵺「こんなチンピラ貝とすげーウンチしそうな猫、儂知らん」

になりそうだから会えなくて良かったんだよ
思い出は美しいままで良かったんだよ

93:名無しさん@ピンキー
14/08/01 14:36:11.55 qKpkqwl6
俺もはるあきと一族娘のSS読みたいので待ってる

そしてあんなに死にたがってたのに天界行きでまた死なない存在になったはるあきを
土公ノ八雲さんは憐みの瞳で見ればいい

94:名無しさん@ピンキー
14/08/01 18:49:00.70 dQU67fCB
晴明はアスラとは分離したんかな
蜘蛛足で色々エロい事出来そうなんだが

95:名無しさん@ピンキー
14/08/01 19:50:16.19 NFk5Zca3
>>92
チンピラ貝とすげーウンチしそうな猫に草不可避wwwww

96:名無しさん@ピンキー
14/08/01 23:57:28.29 npOieJBA
晴明がマザーファッカーになるとこを想像したことがある

97:とある一族男子の惚気 1/5
14/08/02 02:58:36.23 71JyG2Ta
流れをぶったぎって投下させていただきまする。
一族男子の一人称SS。ちょっとスイーツ(笑)入っているかも。

++++++++


 記憶がたしかならば、俺が生後2ヶ月ごろのことでした。


 ちょうどその時、交神の儀が行われる月でした。
2ヶ月年上の従兄に「交神の儀がどんなんかこっそり見てみようぜ」と誘われまして。
なんだかよくわからないけど、どういう儀式なのか、どんなことをするのか、
そして相手の神様がどんな方なのか。
子供心に興味と好奇心がわいてきて、従兄の誘いにのって二人で儀式が行われる
特別な部屋にこっそり潜りこんだのです。

 ま、もっとも御簾の陰に隠れて覗いていたところをイツ花に見つかってしまって、
当主様や儀式に臨む一族の方にゲンコツとお説教をくらいましたがね。

 そのときでした。

「どうかしましたの?」

と、お声をかけてくださったのが……そう、貴女でございました。

 当主様とイツ花に促されて謝る俺(と従兄)に、貴女は
「いいえ、私は大丈夫ですわ。お気になさらないで」
とにっこり優しく微笑んでくださりましたね。
その時の微笑みは例えるなら蓮の花のような、とても……清らかで美しいものでした。

 当主様に引っ張られて部屋から閉め出された後も……いや、それからずっといつも、
寝ても醒めても貴女のことだけしか考えられなくなりました。



 やがて、俺も弓使いとして討伐隊に加わって鬼どもと戦うことになりました。
剣士となった従兄やその他の一族のものたちとともに、戦って戦って戦いまくりました。

 何度か死にかけたときもありましたが、そのたびに
「ここで死んだら、あのお方に二度とお会いできなくなってしまう!」
「あの方にお会いになる前にここで死んでたまるかー!!」って
歯を食いしばってふんばって生き延びてきました。
『一族の悲願も大事だけど、もう一度あの美しい女神様に会うんだ』
という貴女への思いを胸にして、文字通りの修羅場を何回か乗り切りましたとも。

98:とある一族男子の惚気 2/5
14/08/02 03:00:49.43 71JyG2Ta
◇◇◇◇◇

 あれから半年と少したち、俺も元服し交神の儀に臨む資格を得まして。
当主様から手渡された交神可能な女神様方の一覧表の中から、貴女の御名を
見つけたときは、嬉しさのあまり心の臓が爆発するかと思いました。

 もちろん、迷わず即効で貴女に決めましたとも。


 俺が貴女の御名を告げたとき、俺以外の一族全員びっくり仰天しました。
「お前……それでいいのか?」「もう一度考え直したほうがいいんじゃないか?」などと
えらい言われようで、従兄に至っては「お前の好みがわからねえ」とまで言われましたよ。


 確かに一度交神経験があるうえ、失礼ながら遺伝情報はそんなに優秀とは
言いがたいのかもしれない。
より上位の女神様を選んで交神すれば、より優秀で強い子供ができるだろう。

 が、それがどうした。そんなの関係ない。
こちとら幼い頃からずっと長い間恋焦がれてきた相手なんだ。
あの方のことを心のよりどころにして、幾多の修羅場をくぐりぬけてきたんだ。
あの方以外の相手なんて、ありえない。ありえないんだ。


 そう力強く反論したら、みんな黙って何も言わなくなりました。
優秀な遺伝子よりも長年(半年と数ヶ月だけど)の恋心を選んだ俺に
呆れただけなのかもしれませんが。

99:とある一族男子の惚気 3/5
14/08/02 03:03:13.77 71JyG2Ta
 
◇◇◇◇◇


 あれから半年と少したち、俺も元服し交神の儀に臨む資格を得まして。
当主様から手渡された交神可能な女神様方の一覧表の中から、貴女の御名を
見つけたときは、嬉しさのあまり心の臓が爆発するかと思いました。

 もちろん、迷わず即効で貴女に決めましたとも。


 俺が貴女の御名を告げたとき、俺以外の一族全員びっくり仰天しました。
「お前……それでいいのか?」「もう一度考え直したほうがいいんじゃないか?」などと
えらい言われようで、従兄に至っては「お前の好みがわからねえ」とまで言われましたよ。


 確かに一度交神経験があるうえ、失礼ながら遺伝情報はそんなに優秀とは
言いがたいのかもしれない。
より上位の女神様を選んで交神すれば、より優秀で強い子供ができるだろう。

 が、それがどうした。そんなの関係ない。
こちとら幼い頃からずっと長い間恋焦がれてきた相手なんだ。
あの方のことを心のよりどころにして、幾多の修羅場をくぐりぬけてきたんだ。
あの方以外の相手なんて、ありえない。ありえないんだ。


 そう力強く反論したら、みんな黙って何も言わなくなりました。
優秀な遺伝子よりも長年(半年と数ヶ月だけど)の恋心を選んだ俺に
呆れただけなのかもしれませんが。

100:とある一族男子の惚気 3/5
14/08/02 03:04:40.52 71JyG2Ta
(申し訳ない、>>99は無視してくださいorz)


◇◇◇◇◇


 いろいろあって待ちに待った念願の交神の儀。
 身を清めてからあの部屋に入り、速鳥の術をかけられたみたいにいつもより
力強く脈うつ胸の鼓動を感じながらも、ご来訪をお待ちしておりました。
緊張する中、イツ花の神楽舞にあわせて下界に舞い降りられた貴女のお姿を
拝見した時は心臓がとまるかと思いました。
あの時と変わらぬ神々しく輝いておられる……これを美しいといわずになんと
言えましょうか。


「あら? あなたはあのときの……?」
「はい、その節はとんだご無礼を」
「あらあらまぁ、ご立派な殿方になられて……」

 なんと、俺のことを覚えていてくださったとは……。
懐かしそうにその大きな眼を細めて微笑んでくださった貴女のお言葉。
俺は猛烈に感動しました。
生きててよかったと、今ほど思ったことはないでしょう。

「……でも、本当に私でよかったの?」

 もちろんですとも。
あの日から貴方のことを忘れたことは一度たりともございませんでした。
今日に至るまで戦って戦って戦って生き延びてまいりました。
すべては、こうして貴女と再びお会いして想いを叶える。
ただそれだけのために…………。

101:とある一族男子の惚気 4/5
14/08/02 03:07:12.06 71JyG2Ta
◇◇◇◇◇

 ああ、なんて素晴らしい。
思っていたとおり……いや、想像していた以上に素晴らしいものでございました。
貴女の『初めて』をいただいた今は亡き一族の先達がうらやましい。


 大きく潤んだ瞳も、瑞々しくつやつやとした柔肌も。
楓の葉のように愛らしい形の掌も、すらりとした指も。
強く抱きしめたら折れそうなくらい細いお体も。
口付けると、ひんやり心地よい感触の唇も。
俺の業物に優しくからみつく舌も。

「あ、あっ、やあ……そ、そこは…………ふあぁっ!」
真心をこめて指や舌で愛撫させていただくたびに、上がるよがり声も。
人間の少女のように恥らう仕草も。
愛蜜があふれてひくついている秘密の花園も。

 ああ、全て愛らしく、美しい。
今こうして俺の腕の中におわす貴女の何もかもが愛おしく感じまする。

「あらあら……お世辞が上手なの……ね」
 いいえ、お世辞ではございませんよ。
誰がなんと言おうとも貴方は本当に美しゅうございます。
「ああ……なんて嬉しい……」


「……ああ、ああ……わた、し、もう……どうにか……なりそ……う」
「私も……です。……………様」
「お願い……あなたの……を、ここに……」

 いいですとも。
では…………本懐を遂げさせていただきます。
半年と少し、ずっと心に温めてきた思いを今ここに…………。

102:とある一族男子の惚気 5/5
14/08/02 03:10:39.78 71JyG2Ta
 
◇◇◇◇◇


 そろそろイツ花が俺と貴女のお子を連れて、天界から戻ってくる頃か。
どんな子なのか見てみなければわかりませんが、きっと貴女に良く似た、姿も心も
よき子でございましょう。
ああ、早くわが子の顔が見てみたい。早くこの手でわが子を抱きしめてやりたい。


 今でもまぶたを閉じれば、貴女と過ごした日々をありありと思い出せます。
思い返せば、実に濃密で幸せな1ヶ月でございました。
1ヶ月続いた、あの交神の儀の日々は生涯忘れることはないでしょう。
あと3、4ヶ月もすればそろそろ寿命がくるだろうと、自分でも薄々感づいております。
が、貴女と添い遂げるためだけに戦ってきた我が生涯に悔いは全くございませぬ。


 初めてお目にかかったあの日からずっとお慕い申し上げておりました。
そして、これからも……この命が尽きるまで、いや燃え尽きてあの世に逝った後も
貴女のことを永久に愛しています。




………………………………………………………………還之皇女様。

<おわり>

++++++++
以上をもって投下終了。
お目汚し&途中コピペミス失礼しました。

1R2週目プレイで弓使い男子のプロフィールが「好き:アマガエル」だったので
カエルちゃんとまぐわらせてやったった。
反省と後悔はしてない。

103:名無しさん@ピンキー
14/08/02 04:49:53.12 xjNuLaHg
GJ!!
一途な一族男子が可愛い!
相手の女神さま誰だろうな、楓…いやまさかと思いつつ読み進めて最後で彼女!?ってなりました。
面白かったです!

104:名無しさん@ピンキー
14/08/02 09:10:45.51 u2cAuvyB
戻ってもカエルだケロね!
でもこの彼は構わないんだろうなw

105:名無しさん@ピンキー
14/08/02 17:11:44.64 f1GrshTw
還之皇女ちゃん可愛いGJ!

106:名無しさん@ピンキー
14/08/02 18:37:46.12 gxmXyWGl
これは良いGJ
2人共可愛いわ

107:名無しさん@ピンキー
14/08/03 14:16:43.55 ZVeziwgB
遺言が「こんな時まで晴明の事考えてる。もしかして、あたし、恋してたのかねぇ…」の女子がいるらしい

108:名無しさん@ピンキー
14/08/03 16:19:36.71 91eKefFQ
>>107
は?清明?
某名前が呼べない人じゃないの?

109:名無しさん@ピンキー
14/08/03 16:37:06.75 w7F/bhoF
やめてくれええええ
娘まで■にNTRたらショックでやってけんんんん
同じ顔でもはるあきのがまだマシやああああ

110:名無しさん@ピンキー
14/08/03 17:19:25.05 SkVPJGdB
>>107
晴明だろ
Twitterの遺言募集で、(晴明と恋云々みたいな遺言作ってもいいですかという質問をした人に対して)
晴明に恋をする一族も出るかもしれませんね、まだボスは未定なので、
晴明のところはこういう風に書いてねとか桝田が言ってたから。

111:名無しさん@ピンキー
14/08/04 00:32:34.34 sTQ/BEKX
保管庫作ろうとしたら昔のあのお銀とかのSSの人に掲載してもいいかどうか連絡を取る手段がなかったでござる
前スレとここのSSだけサルベージしてその他はリンクだけ置いておけばいいんだろうか

112:名無しさん@ピンキー
14/08/04 22:45:10.58 qQzS5Ots
>>111
それがいいんじゃないかな。
保管庫は俺屍スレの保管庫で、別スレ投稿SSはリンクで紹介、がいいと思う

113:名無しさん@ピンキー
14/08/04 23:11:01.62 qQzS5Ots
>>111
2chエロパロ板SS保管庫にある俺屍SS、確認できた分だけ

ゲームの部屋>アルファシステム作品の部屋>【GPO】アルファシステム総合エロその5【式神3】
ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 (2-48th)様:七篠家シリーズ
4-518様: 『虚空坊岩鼻の手記』

その他のジャンル、ノンジャンルの部屋>エロ無し作品の部屋>エロくない作品はこのスレに・10+
1+ -41様: (俺の屍を越えてゆけ)

その他のジャンル、ノンジャンルの部屋>ノンジャンルの部屋>スレが無い作品のエロSSを書くスレ 5
2-531様: 『常夜見・お風の恋』

保管庫にはないけど、2006年に立った『俺の屍を越えてゆけでエロパロ』スレにもSSがあった
URLリンク(mimizun.com)
レス12-51様: 花一輪・おんなの業

既に把握済みだったらすまね。クレクレだけど保管庫楽しみにしてます

114:名無しさん@ピンキー
14/08/06 00:08:05.17 Wwj3U7B0
とある(属性)の神様にご執心のようです というメッセージが出る娘に
あえて全く違う属性の男神を宛がうと興奮する

115:名無しさん@ピンキー
14/08/06 02:52:10.29 eMk6l4dE
稲荷ノ狐次郎を開放した翌月に、元服した娘(出撃隊に居た)が面食いと聞かされて
嬉々として交神させたなあ……。
2なんてものはなかった。なかった。

116:名無しさん@ピンキー
14/08/06 03:55:00.83 ddg9r8Un
>>114
なんて鬼畜な当主様…
でもいいね、最初はちょっと嫌悪感すらあって徐々に乗っちゃう系

117:名無しさん@ピンキー
14/08/06 18:56:51.51 vrEInqfy
石猿とか捨丸に娘を嫁に出す時そういう想像する
初めは嫌がったり泣いたりするんだけど
相手の優しさに触れたり体の相性が最高だったりで絆されて一ヶ月後にはメロメロに…

118:名無しさん@ピンキー
14/08/06 19:58:05.08 SWobFqUy
オイオイ、石猿は男前だろう!?

119:名無しさん@ピンキー
14/08/06 20:00:30.31 4hK6tVld
>>117
捨丸師匠はともかく石猿さんは中身がイケメンだからそういうのありえそうw
人外神だったら河太郎もいいな

120:名無しさん@ピンキー
14/08/06 21:38:30.01 OM9MLIli
石猿さんはリメイクですごく好感度上がった
不器用だけどいい人いやいい猿なんだ

121:名無しさん@ピンキー
14/08/07 03:54:05.79 D9F0r1t2
ここはうぷろだからあげたりとかでも大丈夫かな。少しばかり長くなりそうなんでそこから上げる形にしたいんだけど

122:名無しさん@ピンキー
14/08/07 08:44:52.21 0mjCH7Q/
どっちでもいいんでない?
個人的にスレ投下のがスレが潤うからありがたい

123:名無しさん@ピンキー
14/08/07 17:45:36.09 8to+5L8L
自分もスレ投下で願う

124:名無しさん@ピンキー
14/08/13 02:05:03.40 Bxrofl/Q
大変お待たせいたしました当主様!
>>113様が提供して下さったリンクも追加して、スレ内に投稿されたSS及び絵は全て保管してますヨ

俺の屍を越えてゆけでエロパロ保管庫
URLリンク(seesaawiki.jp)

編集自由のwikiですので自分のSSの誤字を見つけたらこっそり修正してもOKです

125:名無しさん@ピンキー
14/08/13 03:30:17.27 a2b8kgl0
>>124バーンとォ!乙!GJ!
知らなかったSSもあってありがてぇありがてぇ
ほんと神作品だらけだな…

126:名無しさん@ピンキー
14/08/13 10:16:24.76 1rn360GR
>>124
おつおつ。SSからイラストまで保管、眼福です

127:名無しさん@ピンキー
14/08/13 18:04:57.23 FJWvoWp6
>>124
バァーンとォ!乙でございます!!

128:名無しさん@ピンキー
14/08/14 01:31:02.70 5bJD3rfJ
>>122 >>123
規制されてて書き込めなかったけど、解除されたので投下。
葬式スレで盛り上がってたノリから、氷ノ皇子×1一族娘の和姦もの。
流石に二万越えしてる文章を載せるのは引くわ(白目)って事で、
うpろだ利用して投下させてもらいます。意見を貰えたのにすまぬ…

URLリンク(u3.getuploader.com)

>>124
そして、エロパロ保管庫設立乙っす!やっぱり見てて癒されるわー…

129:名無しさん@ピンキー
14/08/14 14:31:03.83 cH+yWbOO
>>128
皇子も一族娘も初々しくかつエロい。素晴らしい
お似合いの二人だわ

130:名無しさん@ピンキー
14/08/17 18:43:15.69 2wKDkv1T
人型の神と交わった後に人外型の神と交わったら
もう人間のモノでは満足できなくならないか気になる
牛頭丸とか凄そうだし

131:名無しさん@ピンキー
14/08/18 22:05:50.94 2aQ+8bn8
一族目線でプレイしてると人間×神様ばかり考えるけど神様×神様も面白そうだよなぁ
子どもこそ生まれないが暇を持て余した神々の遊びはかなり爛れてるだろうよ

132:名無しさん@ピンキー
14/08/18 22:30:03.10 7PkqkauF
狐と桃とかはそういう素材としては良いよね(にっこり)

133:名無しさん@ピンキー
14/08/19 01:06:45.10 5TN+k1Ct
>>128
娘さんかわいくていい子や…そしてエロい
イツ花はどういう風にして張り型でレクチャーしてるのかな?おじさんに教えてくれたまえ
seesaawikiさんがただ今大変込み合っております。ばかりで更新させてくれないので保管庫追加はもうちょいお待ちください

134:名無しさん@ピンキー
14/08/20 02:22:42.73 IFL5TIhi
>>133
いえいえ、こちらこそ保管庫追加作業お疲れ様です。
と、また葬式スレの盛り上がりから書いた最終当主×昼子の話です。
長い癖して、エロまで到達するまでが長い拙作ながら、投下してみたり。


―我ら一族は地獄巡りの最奥、修羅の塔へと到達せり。
   朱点童子討伐の前に、万が一の保険として交神の儀を願いたい。相手は―

 * * * * * * 


「私でお役にたてるなら、喜んで」

彼の一族が交神の儀に選んだ相手は、天界最上位の女神、大照天昼子であった。
長きに渡り一族を支えてきた世話役の娘と瓜二つの顔を持つ女神は、
交神の儀の場へ座する青年を向かい入れ、穏やかな笑みを浮かべる。
昼子が彼とこうして直接対面するのは、青年が少年であった時以来。

万が一の保険、とはいうものの…この青年の代で、一族と朱点
《黄川人》と、そして永きに続いた因縁は幕引きとなろう。
目の前にいる当主の青年は今まで送ってきた一族の中でも、最も心技体共に優れた戦士となりうるだろうと感じていたからだ。
当主襲名の際に彼が選ばれたのは代々の当主の血筋というだけでなく、その脅威的な能力から鑑みても
誰一人反対する意見は挙がらなかったことがその証明といえよう。

―彼ら一族と関わり合える、昼子にとって、心から愛しい時の終焉。
……本心では天界を厭い、憎悪といった感情を持つ昼子からすれば、自身の魂の残り滓となった
イツ花
《本来の身体》を通して、愛おしい生の輝きと触れ合える、時間の終わり。
それを想うと、昼子の胸には複雑に織り重なった感情たちが巡っていく。……本当は、最高神としてでなく。
彼ら一族と笑って、泣いて、怒って、困って。そんな人間としての生を本当は欲している、彼女としては。

巻き込んでおいて何を、と。自分でも理解はしている。けれど、昼子は彼らの輝きが愛しく、眩かったから。

―大照天昼子は、彼の一族を心より愛していた。それこそ、天界の神々たちへと向ける感情とは異なって。
……しかし、そうした自身の考えなどどうでも良い事だと誤魔化そうと。


「ふふ、正直なところ、あなたがたは私はお選びしないだろうと思っておりました」

昼子は柔らかな微笑みを浮かべたまま、目の前の青年へと語りかける。
そう、彼女が口にしたように万が一の保険と称した交神の儀の相手に自分を選ぶとは思っていなかった。
自分が彼らを使って目論んだ事は、もう一族側も察しているだろう。
彼女さ彼らの怨敵たる朱点童子とは異なる形で。しかもそれよりも悪辣ともいえる仇でもある。
当主は昼子へと視線をやった後、今まで黙っていた口を開くと―


「困ったときは、顔で選んでもいい。そういったのは君だろ、イツ花?」

その言葉に昼子は一瞬だけ固まり、焦った。一族は明るくも、健気な世話役の娘、イツ花を可愛がっている。
あの一族の天界への疑心が極致を示した際にも、天界への憎悪を口にする者はいても、
天界最高神である昼子と同じ顔をしている娘に対して、黙っていた事を憤る事はしなかった。

135:最終当主×昼子
14/08/20 02:26:43.23 IFL5TIhi
自身らを献身的に支え、一族の死の度に涙を必死に堪える娘は巻き込まれただけであるのだと、
一族たちは考え、昼子とイツ花を繋げあわせる事を避けたからだ。

けれども、目の前の当主の青年は違うらしい。彼女を―イツ花、と言い切った。

「ふふ、当主様はどうやら勘違いをされているご様子。
 私は大照天昼子。…イツ花ではありません」

微笑みを崩すことなく、当主を見つめると。彼はつまらなさそうにぼそっと言葉をひとつ。

「…ふーん。確かにあんたは、性格ひん曲がってそうだ。それに対し、イツ花は可愛いし」

何だ、こいつ。殴るぞ。当主の言葉に、思わず昼子のこめかみのあたりがぴくりと動きそうになった。
けれども、表情を崩したりはしない。大照天昼子とは、どのような時であろうと笑顔を浮かべ、
相手へと真意を隠しながら、この天の霊廟を総べてきた辣腕の女。……だから。
自身を侮辱し、一族とずっと共に笑える事に嫉妬心を覚える少女を褒める言葉にも、
あら、そのようにお見えでしたかと笑顔を浮かべるだけだった。そうして怒りに堪えた。

天界で初めて顔を見た時や、イツ花を『通して』下界の一族を見ている時は
口数の少ない、気遣い上手な青年だと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。
まぁ、そうして苛立ちを覚えたところでやるころは変わらない。昼子は交神の儀を始めようとしたが―

「確かに、やることやるため来たわけどさ。その前にちょっとばかし、話でもしない?
 君と、黄川人と、『初代当主』。……僕達全部の始まりをだよ、『大照天昼子様?』」

淡々とした口調で、けれどもどこか冷え切った瞳のままに。当主は昼子へと提案をひとつ。
つまり、今回の事件の真相を全て、話せと。彼は、昼子へと語るように無言で強要していた。

「……嫌だ、といったら?」

いまいち、当主の真意が測りかねない。それに、此処で真相をべらべらと語ったところで、
彼らが選ぶ道は変わる訳でもないし、と昼子は微笑みを浮かべたままでいると―

「黄川人につくかな。いわゆる、利害の一致、ってやつ?ほら、あいつ構われたがりだろ。
 僕が「失望しました。昼子の犬やめます」って、そっち側にいきたいとかいったら、
 それこそ嬉しそうに、大盤振る舞いで迎えていれてくれるかもしれないし」

まさか、今まで一族全ての背負ってきたものをぶち壊すような発言を口にした。
それには流石の昼子といえ、表情が消える。当主をじっと見定めるよう、
視線を送っていると、彼は口を歪めながら、おかしそうに言葉を紡いでいく。

「……あいつから受けた『短命の呪い』は解けるだろうねぇ。
 『種絶の呪い』に関しては、まだ下界には『首輪』つきはいるんだから…案外何とかなるかな」
「……一族が今まで背負われてきたものを、あなたは全て放棄されると?」
「生憎、僕にとっては一族の祖が何を思い戦ってきたかとか、正直どうでもいい。
 ……ご先祖様の血ってのは、そんくらい薄れるくらいにあいつと戦ってきたってことだよ。
 そんなのが一族の当主背負ってるとか良い冗談だよねー、ほんと」

けらけらと笑っていたと思えば、一転。青年は見る者がぞっとするような、
殺意と言ってもいいものが籠められた視線で。

「僕はさ、正直、あいつへの殺意とか薄いんだよね。あいつがやってる事はそりゃあ迷惑だけど。
 ……僕達の道化芝居を上から笑いながら見てる天界の奴等のが、憎くて、殺してやりたくて仕方ない」

聞いたものを震わせるほどの怨嗟が籠められた言葉を、昼子へと投げつけた。
その言葉に流石に昼子もぞくりと、自分の中で何かがせりあがってくるのを感じる。
青年の表情、声、雰囲気。かつての自身が抱いたものから来る、それとよく似ていたから。

136:最終当主×昼子
14/08/20 02:27:30.41 IFL5TIhi
「京を守ってきた一族の当主が乱心を起こして、『無辜』の人々を朱点童子と殺し回るなんて、
 なかなかいい『見世物』じゃない?それを止めようにも神々も、流石に朱点ふたりは怖いでしょ?
 何せ、ひとりを鬼の中に封印するので手いっぱいだったみたいだもんね?」

嘲るような笑い声、そして『見世物』という言葉に昼子は徐々に表情は氷のように冷たくなっていく。
……この男の前で、表面を取り繕うなど不要だ。そう考えると、彼女もまたせせら笑うような声で。

「……つまり。ご当主さまは、私が、種絶の呪いを掛けたと。そう、おっしゃりたいのですね?」

当主から目を逸らすことなく、包み込むように柔和な作り笑顔ではなく。
自身が持つ本来の苛烈さからくる、相手を見下すような笑顔で問いかけた。
当主は昼子の本性、ここにみたりと笑みを浮かべると、再び話しはじめた。

「不思議だったんだよねぇ。何で、わざわざご丁寧に種絶の呪いなんてもんを掛けたのか。
 そんなもん掛けなくたって、短命の呪いが掛かってんじゃん。だから、当主はたかだか二年で死ぬし、
 人と子供が出来たとしても、そいつもすぐ死ぬ。脅威でも何でもない。なのに、何で種絶の呪いなんて、
 神が介入出来る『隙』を作った?最初っから、それを一族へと掛ける事。この計画そのものを考えていた奴が、
 図面図に予め織り込んでたとしか思えなかった。そこんところはどう思うよ、現天界最高神サマ?」

視線がぶつかりあう。音の無い火花を立てて、静かな焔が燃えている。
……ここで変に誤魔化したら、逆効果だろう。それに。正直、全部ぶちまけてしまいたいという、
今まで昼子の中で溜めきっていた不満や、心情を吐露したい。目の前の男がムカつくというのもあったが。
はぁ、と小さく溜息を吐くと。昼子は天界最高神の顔ではなく、イツ花本来の顔となると。

「……わかりました。ま、長くなるし、ぱぱっとお話ししましょうか。
 それとも、とびきり脚色したお涙頂戴ものがお好みですかネ?」
「あ、やっぱそっちが地なんだ。流石、『カマトト腹黒女』」
「腹黒のカマトトじゃなきゃ、こーんな馬鹿みたいな退屈な場所と、其処に住んでる
 見下すことしか出来ない道化どもを纏めたりなんて出来ませんよ、性悪当主様?
 …さぁて、何から話しましょうか。どうせ長くなるでしょうし、茶請けでも用意しますか」

よっと、お茶の用意をし始めると、当主は先ほどとは異なる明るい声で。

「あ、じゃあ僕、椿餅がいい。お茶は熱め」
「草団子でいいですよね?…ま、熱いお茶でしたら出しますよ」

 * * * * * * 

「そうですネェ…最初こそ保険だったんですよ、この案。
 ホントは初代当主さまが育ってから朱点と戦って貰う算段だったんですけどォ、
 源太殿はともかく、お輪叔母様まで、やる気だしちゃいまして」

熱めの茶を淹れた湯呑から、湯気が立ち昇る中で昼子は語り始める。
青年は何処か遠くを見つめながら話す昼子の言葉に、黙々と耳を傾けていた。

「……それだけ源太殿や、初代当主さまの事を、愛しちゃったんですかネ。
 新たな朱点の計画をあの子に知られた事を知ると、私たちがまだ早いっ言っても。
 お輪叔母様は源太様に全部事情を口にすると同時に、大江山にふたりで登っちゃったんですヨ」

その行動が浅慮である事を呆れるような。その行動を移した事に対して、わからないでもないような。
それほどまでに彼らは子を愛したという事へと憐み。そして、自身のかつてを懐かしむような何か。
ひとつの感情では表現出来ぬほどに入り混じった、複雑な感情を滲ませたその言葉。
当主は目を細めたが、まぁそれの是非を問うのは良いだろうと、その『先』の疑問を口にした。

137:最終当主×昼子
14/08/20 02:29:07.36 IFL5TIhi
「へー、その割には呪いを掛けられたとき、さっさとこの手管に移せたね。
 神々の中にはさ、人間との交神を嫌がる奴等って、結構いたんじゃないのー?」

神連中をどこか笑うような、その言葉に。昼子もにぃっと口を弧に描きながら、笑った。

「そりゃー、もう、いましたよ!朱点をもうひとりこさえるってぇだけで恐ろしいってのに、
 こんな恐ろしい手段をとるとは、やはり大照天昼子は気狂いだとか、正気の沙汰でないとか。
 私からしてみれば、自分の穴も拭けないヘタレの根性なしが、としかおもえませんでしたけどネ?
 まぁ、私も遣り手の女帝って奴ですから、ちょちょっと指先で、ほいっとっ」

空を軽く指でぴん、と跳ねるような仕草をする。それを見た当主は心底おかしそうな顔をした。

「うわぁ、この子怖い」
「その子のお陰で、今のご自分があるんですから、感謝してくださいヨ」
「はいはい。そいつの勝手な都合にこっちは一族が振り回されてますけどね。
 で、そんな軟弱者どもを丸め込んでからは、女帝サマは今現在どんな按配なわけ?」

天界の神々が聞けば卒倒したり、憤懣したりするような会話を彼らは続ける。
だんだんと彼らの声色は楽しげなものが含まれていて、話は流れるように続いていた。

「これまたびっみょーなとこですかねぇ。元っから私側だったのにしても、反私側だったのも。
 最初の方こそ少なかった、一族派って奴に鞍替え。それもまぁ、結構の数だこと!
 一族派は今現在、この朱点との決戦を終えた後に、私が一族をどう扱うかで反乱してきそうですしぃ。
 その隆盛を上手い事利用してやるか、という奴もそっち側で権力握ろうと企んでるでしょうね。
 でもォ、かといえばやっぱ人との間の子も、それに現を抜かす神が気に食わなーい!って奴等もいるわけです。
 私があなた方に変に関わると天界で大きな戦が起きそうだしで、そっとしておくか、って腹積もりでいますヨ。
 そして、何らかの干渉をしようものなら…まっ、言わなくとも分かりますよネ?

 ……戻ってきてる首輪付きも、あなた側よりばっかな上、上位におわす力の強い神達です。
 あっ、ただし捨丸は除く。あいつは相変わらず歪みない。まッ、だからこそ面倒にならないんですけど。
 あと、あの馬鹿猫は戻さないでくださいヨ、絶対。また余計なことしそうですし。

 ……氏神になった一族の子たちも、そこそこいるのも大きいですね。
 一族の子達には私や神が気に食わないって子も確かにいますけど、大抵は天界での台所事情を理解して
 何も言わなくなったり、逆に神様に絆されたりしてる子もいます。
 ま、基本的に一族派の神々と同じく、一族へ変なことしないな反乱起こしたりしないって約束してくれてますヨ。
 あ、そうそう。最近戻られた氷ノ皇子殿を一族の娘で引き込んでくれたの、助かりました。
 私が出るといろいろメンドーなことも、あの方が大々的に一族の後ろ盾になってくれると楽なんですよネー」

明け透けな天界裏事情を昼子はけらけらと悪口を含めながら暴露していく。
当主もすっかりと相好を崩しながら、さながら世間話でも歓談するかのような体勢だった。

「うちの姉上を君みたいな腹黒扱いしないでくださいー。姉上は底抜けのお人好しなんですー。
 本人は誰にも気付かれてないと思ってるけど、元凶に同情して泣くほどよ? 
 黄川人には遠慮なく助走つけて腹に鳶膝蹴り余裕の気構えでいりゃあいいのに、変に抱え込むといいますか。
 結局、あいつや目の前のカマトト女のせいに振り回された結果なんだからさー。
 ま、だからこそ同じお人好し系の氷ノ皇子を交神相手にしたんだけど。姉上あいつ好きっぽかったし。
 つーかさー、予めそこんとこは下界にも伝えていてよ。付け込みやすそうな奴、表にして出しとけ、コラ」
「変に敵対心強いのの名前出して、傷物にされちゃあたまらないじゃないですかァ!
 そっちこそ、そうしたの御せるような床上手なのを回してくださいナ」
「この男前とかは、どうよ?」

昼子の文句を聴くと、当主はにぃっと笑いながら自分を指差した。
すると昼子の口元の弧はもっと深くなり、おかしそうな声で笑った。

138:最終当主×昼子
14/08/20 02:30:57.19 IFL5TIhi
「確かに顔はいいんですけどォ、失礼な性格じゃないですか」
「相手が相手ですから、失礼なだけですー。普段はあんま喋らないし」
「ホント、そうですよ、もう。天界で初めて顔見たときは喋らずに頭下げるだけだったし。
 イツ花から『見てた』時も、大人しくて無口な方だと思ってたから、驚きましたヨ。
 こーも図太くて、ぺらぺらと喋る性悪男とか知りませんでした」
「僕もここまで大照天昼子様が、粗雑で親しみやすいカマトト女とは思ってなかった。
 その面の厚いことったら、ないわー、本気でひくわー。…ま、そっちのが接しやすいし好きだけど」

その言葉に。昼子は楽しそうだった会話をぴたりと止め、不思議そうな顔で当主を見る。
当主はそうした昼子の様子を気にする様子もなく、団子を頬張っていた。
こうまで言いたい事を言いあえる、毒を吐きあえる相手というのは。昼子にとって初めてだったのだ。
だからこうまで、言わなくてもいいような。普段なら殺してきた感情が露わになる。

「…ホントですか?スッゴく失礼な言いようなうえ、言いたい放題言ってますけど」
「適当な嘘で誤魔化したらこの女、床でひぃひぃ言わせてやろうかってなったけど。
 本当に大事なとこで嘘つかなかったし。一族のこと、思ってくれてた事はちゃんと理解出来たし」

三つ連なった団子のうちの二つ目を口に入れながら、青年は話す。
今まで話してきた中で、一番穏やかで。優しい声色だった。それで気が付く。この、当主は―。

「……嘘なんですか。あっち側につくって」

最初に昼子に切ってみせた啖呵は、ただ相手を揺さぶる為だけの言葉だったと。
昼子の溜息混じりの声に、そりゃそうだよ、と昼子の言葉を肯定した。

「天界には憎い奴等がいるけど、『家族』だっている。何より下界の『家族』を裏切れるわけがない。
 でも、はっきりしときたかった訳ですよ。どんな事情で振り回されたか、改めて知っておきたかった。
 で、その振り回された後に、『家族』が始末されようもんなら、黙ってられないじゃないですか。
 でも、安心した。……君が僕達を守る為にこの手をとってくれたってわかって。
 この手段を君が選んだのは、一族を庇護する神々を増やしたかったのもあった。そうだって、わかったから」

先程からの明るい雰囲気は溶けて、どこか静かな空気が場を満たしていた。

「恨まないんですネ」

ぼそり、と呟かれたその言葉には。なんで、その手段を取った自分を責めないのかという
昼子の心情が滲んでいて。当主は団子全てを食べきると、手を合わせた後、優しい声で続けた。

「恨むもなにも。その女の子のお陰で初代当主は血を繋ぐことが出来た訳だし。
 少なくとも、僕は感謝してるよ。…ありがとう、イツ花」

そうして、笑顔を昼子へと見せた。嘲るものでもなく、悪友と話し合うようなそれでもなくて。
まるで包み込むような、穏やかで柔らかい微笑みを。彼は其処まで理解しているのだ。
自分があの朱点の姉であると同時に。本来の名が、『イツ花』だと、いうことまで。
忘れていた名前。忘却の海へと沈めて、見てみぬふりをして。本当は呼ばれたかった、名前を。

「……それ、ズルいですよ。私の本当の名前、呼ぶとか。その名前、此処来たとき、捨てたのに。
 というかぁ、全体的にズルい。ズルいですよ、当主さま!…私、罵られるのが当たり前なことしてますヨ?
 なのに、納得してありがとう、とか。普通にキレられるより、キツいです」

いっそ、ふざけんなこの野郎、とでも。怒りに任せて、殴りかかってくれた方がずっと良かった。
自分のやっている事の是非なんて、正しい考えであっても、人道からは外れていたものだから。
だから、いつか自分を糾弾して、罵ってくれたらいいのに。そんな風に考えていた昼子にとって、
赦されることの方が、ずきずきと痛みを与える事なのだ。

139:最終当主×昼子
14/08/20 02:31:41.78 IFL5TIhi
「だから、怒んないんですよー。だって、ここであんたを責めたら、あんたはちょっと楽になんじゃん。
 ……あんたはカマトトの腹黒女だけど。本当はここが誰よりもいっちばん嫌いな癖して、
 大事なもん取り戻す為ならどんな泥水だろうと、美味しそうに飲み干して笑う女だよ。
 んで、一度好きになったもんには延々と執着してくる奴。わざわざ、イツ花通してまで
 一族のその後をちゃんと見届ける辺り、あんたも一族大好きだよなー。あの呼んでもないのに、
 わざわざ顔出して裏事情言い出す構って生足野郎といい、ほんーっと、おまえら姉弟だわ。
 ―だから。…ま、他の奴がなんか言っても、僕はあんたを責めないよ。助けもしないけど」

理解している割には、同情はしないとか。思わず、昼子は不貞腐れてしまう。
本当、全体的に狡いのだ。この目の前の男は。責めないで、見てるだけ。だなんて。だって。

「あんたがやったことは確かにこっちからしたら良い迷惑ですし。それに、それ突っぱねるだろ」
「……助けてって、言ったら?」
「なら、そんときはひっぱたいて、てめぇがやったことのツケなんだから甘えんなって、言ってやりますよ」

―本当は、一番欲しかった言葉なんてものをあっさりと口にするのだから。

「さてと。話も終えた事ですし、やりますか」
「この空気の流れでいきます?」
「やる事やる為に来たんですよ、自分。じゃ、脱ぐ?それとも脱がされる方が燃える派?」

目の前の男は、自分やイツ花よりも、ずっと空気が読めないんじゃないだろうか。でも。

「脱ぎます。じゃ、バァーンと、いきましょっか?」

いやじゃ、ない。こうした空気も、彼と肌を重ねるという、行為も。

 * * * * * * 

そうして場を移し、素肌を露わにした男女は閨の布団へなだれ込む。
ふたりの間に流れる空気はというと、それこそ艶やいたものなんてものはなく―

「んー、実はですね。なんと!私、大照天昼子、こうみえても経験がありません!」
「マジか」

なんというか、今から肌を重ね合う空気ではなかった。

「おおマジですよぉ。そうしたことに現を抜かすヨユーなかったですから」
「うわ、重圧だわ」
「やぁですねぇー。自信あるんじゃなかったんですかー?」
「あー、はいはい、善処します」

そうしてけらけらと笑いながら、当主は昼子の唇を軽く自分の唇と重ねた。
啄むような軽く触れ合いではあったけれど。それすら初めてであったことから、
昼子は何度も行われる口づけに、身体を少しばかり強張らせる。

140:最終当主×昼子
14/08/20 02:32:56.30 IFL5TIhi
「怖い?」
「まー、少しだけ。でも、私が怖いから嫌ですなんて、口が避けてもいえませんよ」
「引っ張る約束はしたし、ちゃんと、痛いことは無理にしませんよ。
 途中でむかついたり、乗ってきたら約束は破棄してやりたい放題しますけど」
「あー…それなら、平気です。ほかの神々には内緒にしてますけど、
 交神の儀では、あんま痛みを請じることはないようしてるんです。
 んでぇ、普段よりも感覚を鋭敏にさせて、感じやすくさせてるんですよ。
 そっちの方が多分興も乗るだろうし。…で、最後のほうの言葉で、ん…っ…」

昼子が当主への文句を口にする前に、再び角度を変えて口づけを零される。
少しずつ濃度を増しはじめたそれにより昂揚した当主の舌が、昼子の唇を軽くなぞった。
そしてするりと舌を中に忍び込ませ、軽く彼女の歯茎をなぞった後に引き抜いた。

「でも、こんな風に可愛がられる必要性がなくても、されると嬉しくはない?」
「ふふ、そうですねェ。…うん、結構、好きです。もう一度、してくれます?」
「了解。…舌、出して」
「……ん、はい。…ぅむ…はぁ……っ」

ちらりと現れた昼子の薄紅色の舌へと、当主の真朱色の舌が絡まっていく。
ぴちゃりと音を立てながら、何度も離れては絡まり合う事を繰り返していけば、
互いの熱い吐息が零れ、互いの口元に掛かると気持ちはどんどんと昂揚していくばかりだった。
くちづけを続けながらも、当主の手がするりと昼子の肌を滑り、胸元へといくと。
その双丘の膨らみをやわやわと揉み解し、胸元の頂をぴん、と軽く爪で跳ねた。

「きゃっ…」
「可愛い悲鳴だことで」
「ちょっとっ、油断してましたかね…っ、ふぁ…ん…ぅ…」

徐々に昼子の目が蕩け、ぼんやりとしたものになっていく。
自身の身体の下で息を荒げ、甘い声で鳴きはじめた昼子に、当主は耳元で囁いた。

「……意外と可愛いな、あんた」
「ありきたりなお世辞ですね、それ…というか、意外とか言わないでくれます?
 意外でも何でもなく、ただ可愛いって言ってくださいヨ」
「本当を口にして何が悪い。普段の素行が悪いんだよ…ん…」

耳元で甘い言葉を囁いたと思えば、そのままするりと耳朶へと舌を忍びこませる。
当主は昼子の耳朶で舌を暴れされながらも、指の動きを止めはせず。程よく膨らみを持つ双丘を揉みほぐせば、
指によって双丘は形を変え、柔らかな感触に鍛えられた指はその中へと埋もれていく。
徐々に高揚感を覚え始めた事により、硬さを覚え始めた蕾を軽くきゅと抓んでやれば。
昼子の口からは弦を弾いたような甲高い喘ぎ声と、甘い吐息が零れていくだけだ。
ぬるり、と舌を耳朶から引き抜くと、そのまま首筋へと舌を這わせ、胸元へと辿りつく。
そのまま右胸に咲いた真朱色の蕾を舌で往復させ、硬さが増してくるのを確認しながら。
当主はこりこりと硬さを持ち、屈起した蕾を音を立てながら、吸ったり、甘噛みしたりを繰り返す。

「はぁ…っ、やっ、それ…っ、好きかもしれないです…」

すっかりと蕩けきった声色で、自身のもどかしい情欲に耐え切れずになり始めた事から
昼子はもじもじと股を摺合せはじめようとすると、当主はにぃっと悪ガキのような笑みをして。
待ったをかけるかのように、彼女の足の間に自身の膝を挟んで、それを阻止する。

141:最終当主×昼子
14/08/20 02:33:45.38 IFL5TIhi
「やっ…そのぉ…っ」
「せっかくふたりで神聖な『交神の儀』とやらをやってるんですから。
 ひとりで盛り上がられるってのも、まぁ楽しくないじゃないですか。
 そろそろ、濡れてるか確認するためにも下を触ろうかな…さて、足、開くよ?」
「…ぅん…ほんとう、一言多いですネ…んっ…どうぞ…?」

挟んだ膝を引き抜き、彼女の秘所部を確かめようとして足を開こうとするものの。
当主としては思いっきり開くつもりだというのに、昼子の方はそれは流石に嫌な様子だった。
布団へと視線をやれば、布地は彼女の愛液によって滲みを作っている辺り、ちゃんと濡れてはいるようだ。
が。当主が開こうにも、昼子はこれだけ開けば充分だといわんばかりに、それ以上は阻止してみせる。

「あの、もう少し、開いて欲しいんですが。併せって大事じゃないですか。…コラ、閉じんな」
「や、やですよぅ…自分からとか開くとか、結構恥ずかしい、ですしぃ…」

わざとらしいくらいの恥じらう可愛らしい声…いわゆる猫なで声で昼子がこれ以上は嫌、と言うと。

「はは、こやつめ。まだ余裕あるだろ。…よし、遠慮なく開く」
「えっ、きゃんっ、そ、それ、はんそくっ!無理矢理しないって言ったじゃないですかっ」
「痛い事じゃありません。つーか、これしないとあんたが痛いから、するんです」

昼子の両足を開き、その中心にある花弁からは、たらりと甘い蜜が零れ落ちている。
少しずつ挿入の際に起きる異物感を慣らしていくべきか、と人差し指を花弁へと挿しこんだ。
すっかりと熱い甘露で滴ったそこは、指でかきまぜる度に淫らな音を立て、昼子の蜜は
指を奥深くへと誘うかの如く、ぬるりと深く、深くへと潜り込ませていくのを手伝っていた。

「ん、はぁ…っ」
「……いまで、指一本。どんな感じ?痛くない?」
「は、はい…っ、痛く、ない、ですよ…っ」
「ちょっとずつ、増やしたりしてくから。最初からアレ突っ込むのは辛いでしょ」
「ん、ふふ…っ、たすかり、ます…ん、はぁ…んん…っ」

ひとつの指では物足りなさそうにし始めると、もうひとつの指を咥えさせてやる。
痛くはない、というものの。やはり、初めて―かどうかは当主は知り得ぬところだが―
外から異物が捻じ込まれる感覚と言うのは、どうしたところで快楽よりも不快感が勝る。
昼子の瞳から涙が零れ落ちていくのに対して、当主は彼女の唇へと啄むような口づけをして。
そして首筋に、鎖骨にとところどころに性交の痕を咲かせ始めていた。

「あっ、ん…ずいぶん、可愛がって、くれますね…」
「善処するっつたじゃないですか。僕の可愛い女神さま」
「あ、それ!いま、私の中の当主さまへの好感度すこーしあがりました。…もっと、こうして、くれます?」

昼子が当主へと苦しげな、けれどどこか嬉しそうな微笑みを浮かべると。
当主も彼女のおねだりの通りに口づけを幾度も繰り返し、そっと髪を優しく梳いた。

142:名無しさん@ピンキー
14/08/20 08:52:12.12 IFL5TIhi
と、連投規制入ったっぽいです。また後日改めて投下させて頂いても大丈夫でしょうか

143:名無しさん@ピンキー
14/08/20 11:04:42.82 EQJN2Tb6
な、生殺し…!先が気になる!

144:名無しさん@ピンキー
14/08/20 20:38:55.19 nGadmZAx
昼子様可愛い
続き全裸待機

145:最終当主×昼子
14/08/20 21:54:14.05 IFL5TIhi
>>141からの続きになります。これを含み、6レスほどで終わる筈…!

(……こんなの、だったんですかネ。私がイツ花のままだったら。人、だったら…)

こんな風に男性と肌を重ね合い、子を成して。家族を作ったのだろうか。
もっとも、そうした事は夫婦。つまり心を通じあわせた男女が行うべきものである。
ましてはその間に産まれた子に、お前は怨敵を殺す為の道具だ、とは。決してならなかっただろう。
第一、昼子は目の前の青年を。……どう捉えているか、だなんて。わからないのだ。
昼子にとって、恋愛なんてものは行う前に去っていったもの。泡沫にすらならなかったものだ。
……当主は、青年は、彼は。昼子を、イツ花を、自分を。どんな風に、見ているのだろう。
熱に浮かされた譫言を脳裏で考えながら、すっと彼の頬へと手をやれば。
彼は昼子へと、酷薄な笑みでもなく、悪巧みをしあう時の顔でもなくて。ただ、柔らかに微笑む。
それだけ、なのに。昼子の愛液で熱く滴った蜜壺よりも、心の胸奥の方がずうっと熱くなる。

「……僕のもそろそろ濡らしておかないと、な。よっと」

彼はすっかりといきり立った剛直を、濡れそぼった昼子の蜜壺へと何度も擦りつける。
其の度に彼女の愛液は崛起した彼自身へと絡まり、花弁に隠されていた蕾も擦れて。
昼子の中の高揚感も、肉欲もどんどんと高みを覚え、体中が火照りを隠し切れなくなる。

「ひゃうっ、あっ、やぁ…っ、そこに、こすりつけるんですか…っ?」
「こうやって、濡らしながらいれたほうがいいし。何より、僕も気持ちいい」
「ぅん、そ、ですか…っ、はぁ…っ、ん……っ!」

ぐちゅり、ぐちゅりと何度も淫らな音を立て、男女の情が交わる時、特有の甘い匂いが立ち込めていく。
昼子も、当主も。互いから溢れ出ては、抑えきれない色欲により、思考を支配されていくだけ。

「…それなりには、大丈夫そうになってきた、かな…イツ花…」

彼が、名を呼ぶ。……昼子ではなく、イツ花と。そう、呼んだ。
昼子…イツ花は、それを当たり前のように受け止めて、彼へと微笑みを返す。

「いれるとき。痛いんだった、言ってよ。緩和されるっても、痛いのは痛いかもしんないし。
 ほら、ちゃんともっと引っ付く。首筋か肩辺りにでも抱きついときなさい」
「……ふふ、はぁーい」

これが心を通じあわせた男女同士、という奴なのだろうか。…馬鹿みたいに甘ったるい児戯のよう。
でも、何だかこうして肌を重ねていると、イツ花の鼻の奥がツンとして、泣きたい気持ちでいっぱいになる。
……ずっと、遠い夢見事だと思っていた。他人事だった。自分には、関係のないことだと。

146:最終当主×昼子
14/08/20 21:55:15.76 IFL5TIhi
彼が、イツ花の花弁奥深くへと潜り込んでいく。きりきりと、無理矢理抉じ開けられる痛みがする。
けれども、なぜだろう。痛いことが、とても嬉しくて。イツ花は、涙を一滴零して、それが頬を伝っていく。

「ん…っ、はぁ…っ、なか、はいってきて、ますねぇ…っ…ぅん…」
「だね…っ、結構、キツいかもしんない。きゅうって、中でしまって。きもち、いいや。イツ花は、どう?痛くないの、本当に」
「ふふ、はい…っ、ちょっとばかし、異物感はしますけれど…まぁ、慣れ、ですよ、ね…?ん、はぁ…っ」

涙交じりに微笑むイツ花に、青年は彼女の涙をぺろりと舐めとると、そのまま深く口づける。
何度も角度を変えながら、互いの口内へと舌を忍び込ませあって。情を、交わらせていく。
イツ花は青年の首筋へと甘えるように腕を回せば、青年はイツ花の腰をきゅっと抱きしめた。
人と神との交わりは、まるで男女の交わりような様相を見せていた。イツ花の花芯へと辿りつき、
やがて暫くの時間が経った後―

「……動かすよ」
「……どう、ぞ?」

青年はイツ花の腰を掴み、中へと情欲を辛抱でき切れずに何度も挿入を繰り返す。
そのたびに無理矢理中がこじ開けられていく痛みと、繋がっていく甘い感覚がイツ花を襲う。
そしてやがて、痛みと甘さの天秤は逆転して。破瓜の痛みより、奥深くを突かれる快楽が上回りはじめた。

「あっ、ひゃ…っ、それぇ…んっ…っ!」
「……良い?」
「は、はい…っ、あっ、やっ、あん…っ!あん、なかでごりごり、されると、ん、はぁ…っ!」

ぐちゅりと音を立てながら、自分の中を掻き混ぜられる度に頭がおかしくなりそうだ。
……彼が、見たい。それなのに、視界は自分の涙でぼやけて彼が見えない。
そんなイツ花の心を知ってか、知らずか。青年は、甘い声でイツ花の耳元で囁く。

「イツ花」
「だからぁっ、それ、はんそくですよォ…っ、あふっ、ひっ、んぅっ…!」

本当に、そうして『名前』を呼ばれる度に。日が落ちて、花が咲く。
昼子にとって、天高く地を見降ろし続ける太陽よりも。野に朗らかに咲き、散っていく花の方が。
……ただ、そんな。ありきたりの幸せが、本当は欲しくて。イツ花は、青年の名を呼んだ。
当主ではなく、青年の本当の名前を。久方ぶりに、誰かから名を呼ばれた事に一瞬だけ目をきょとんとさせ。

「……それも反則になりませんかね。……結構、胸に来ましたよ」

青年は嬉しそうな笑みを浮かべると、自身の唇とイツ花の唇とを重ね合わせた。
まるで青年から溢れ出る、ひとりの少女への想いを注ぐように。

147:最終当主×昼子
14/08/20 21:56:24.42 IFL5TIhi
「あっ、そういうのも、だめ、です…っ、ぅん…っ!あっ、やっ…ああっ、ひん…!」
「…っく、なん、で、駄目なわけさ…?」
「…はぁっ、言ったじゃ、ないですかぁ…っ、あんっ!ないん、ですよォ…っ、
 誰かから、こんな…っん、可愛がられる、とかぁ…っ!あっ、やぁ…むぅ…っん…!」
「なんで、だめなのさ…っ、ぐぅ…っ!」

溺れていく。どんどんと奥深くへ。忘却していたのではなくて、忘れたふりをしていた場所。
本当は彼女が一番欲しくて、けれども絶対に手に入る事はないとわかっていた。
父は保守派の神々が唆した者へと殺された。母は自身らを庇って、見世物小屋を辿り、殺された。
本当は助けたい弟。まだ、自分が手に入れる事が出来る、自分にとっての…イツ花に遺されたもの。
その為に、自分は何だってした。それが許されるだなんて、そんな身勝手許されるわけがない。
一族を利用して、それをもう一度手にしようとした罪。それは、一族にとって赦されぬこと。

……もう、自分は大照天昼子になった。『イツ花』では、ないのだ。
だから、一族から愛されているイツ花が羨ましかった。あんな風に、共に生きたかった。

「だ、だってェ…その…恋、したこととか、ないんですよ…っ、
 そんな駆け引きは、なかったんです…っ、あっ、やぁ、んん…っ!」

近所のおばさんやおじさんと他愛無い世間話をしたり、庭先に花を植えてみたり。
朝が来たら大きな声で皆を起こして、自身の作った朝食に舌鼓を打って貰って。
彼らと一緒に、彼らと一緒の時を生きてみたかった。それに、恋だってしたかった。
……『イツ花』が得られなかったものが。大照天昼子は、欲しかった。

この広く乾いた天界という世界で、朱点という異物であり、突如頂へと立った娘へ
馴れ馴れしい言葉を掛けるものなど、いる訳などなく。そうしたものは憧れるだけで、
自分にとって遠い、ただ『見ているだけ』の出来事でしかない彼女からしてみれば、
色恋沙汰なんてものは、遠く懸け離れた。夢のようなものでしか、なかった。
こうして触れ合う事から生じる熱の温もりも、甘い睦言を重ね合うことすらも。
それこそ、さっきのように軽口を叩きあえることすらも。昼子にとって、他人事《あこがれ》だった。
そう、ずっと。天界に昇ってからずっと、欲しかった。こんな風な、何でもない幸せが。

「いい、じゃない、別に、さ。交神の儀を恋人同士の肌の重ね合いっぽくても、さ…っ」
「そう、してる一族と神も、多い、ですけどォ…っ、ん、きゃ、あん…っ!」
「普段はあんな、カマトト腹黒女、してるんだから。こんな、ときくらい…女の子、しときなさい…っ」
「あん、もぅ…っ!ほんと、何なんですかっ、ん、はぁ…っ!あっ、やぁ…っ、ちょっと、
 もう…あつく、なり、すぎてぇ…っ、ん、ぅん、は、やぁ…っ!」

148:最終当主×昼子
14/08/20 21:57:44.33 IFL5TIhi
本当に、自身を抱くこの男は失礼だ。自分の領域に、ずかずかと踏み込んできて。
昼子ではなく、イツ花と。…自分の本当の名前を、優しい声で呼ぶのだから。そのたびに、
イツ花はどれだけ胸が苦しくて、熱くて、痛くて。泣きたくなるのを、わかっているのだろうか。
ずるい。本当に、この男はずるすぎる。出逢ったばかりだというのに、天界に昇ってからは、
見ているだけで何とか我慢できたものを。欲しいと揺さぶって、心の奥底から叫び声をあげさせて。
そして、それをあっさりと叶えてしまうのだから。

「―イツ花、なか、だす、よ…?」
「ん、はい…っ、ください…っ!」

互いの絶頂はもう近く。イツ花は彼の身体へとしっかりと抱き付いて。
そんな華奢な少女の身体を、青年はしっかりと抱きしめて。その奥深くへと熱いものを注いだ。

 * * * * * * 

そうして、交神の儀を終えて。少し気怠い身体の中、微睡んでいると。
腕の中で子供のように笑うイツ花が、青年へと大胆な告白をひとつ。
イツ花が本来持っていた、屈託のない笑みで、弾むような声色で。

「今回のことで、私ぃ、決めちゃいました!当主さまが亡くなったら、一族が全員反対しようと、
 無理矢理氏神にさせちゃいます!でぇ、片棒背負わせちゃいますからネ!」

まさかの、天界最高神からの氏神ご指名。これには、さすがの青年もまじか!と驚きを隠せなかった。

「うわー、強引だ!拒否権与える気ないぞ、これー!」
「勿論拒否権なんてないですよー。あったりまえじゃないですかぁ、アハハ。
 此処を力任せに纏めてきましたからねー。こーみえても、殴り合いとかは大好きです。

 ―それに。初めて『恋』しちゃったんです。したことなかったのに、罪な人ですよネ、ホント。

 …あなたと、女の子みたいなこと、したくなっちゃったんですもん」

たかだか一夜の逢瀬で、そんなことをあっさりと決めるだなんて。でも、昼子にとっては一夜ではない。
天界にとって永遠は刹那と同じであるのなら、その刹那で永遠が決まってもいいじゃないか。
だって、昼子にとって。こうまでざっくばらんに物を言いあえる相手なんて、
これから先の永遠にはきっといないと、イツ花は確信してしまったのだから。

「そっか…。うん、なら、仕方ないな。……恋されたなら、応えなきゃ仕方ない」

なら、青年とて。女の願いに応えるのが、男というものだと悪ガキのような笑みを浮かべた。
恋する女は何よりも強い。そして、恋する女は何よりも愛らしく映った。
一族にとって刹那が全てなら、その刹那に咲き誇る花は何よりも気高く、美しいのだから。
だから、刹那を永遠にしてもいいと。そんな風に思えたのだ。

青年はイツ花を思い切り抱きしめると、そんために一仕事頑張ってきますかね、と軽口ひとつ。
そして額へと口づけをすると、にぃっと満面の笑みを浮かべた。

「ふふ、さっすが当主さま!と、いうわけでェ、こっちに来るときまで、浮気したら…おいたですよー…?
 楽しみですねェ。夫婦ごっこ。……夫婦でやること、どれもしてみたかったから。好きな人と、ネ?」
「……そっか。うん、僕もしてみたいな。イツ花となら、楽しそうだ」

そうしてイツ花は、青年の頬へと軽く口づけ、無垢に笑った。

149:最終当主×昼子
14/08/20 21:58:45.01 IFL5TIhi
そうして、しばらくの『夫婦生活』の後。当主は下界へと降り立ったわけだけれど―

「イツ花。僕と、助平なことしよう」

なんとなく思い付きで。『おいた』をしたらどうなるのかとか、気になってしまい。
目の前で忙しなく働く、彼の神と瓜二つの風貌の少女へとそんな言葉を掛けてみる。

「はっ、はいぃ!?な、なにいってるんですか、当主さまぁ!?もしかしてェ、熱でもあるんですか!?」

顔を赤面させて、正気かどうかを疑われた。……当たり前の反応だった。
彼女はイツ花ではあるけれど、当主にとっての『イツ花』ではないのだから。

「冗談」
「はー、もぅ、焦ったじゃないですかぁ。当主さまは顔色変えずにそうしたこというから恐いですヨ…。
 それに、最近当主さま見てると、変にドキドキしちゃいますし。……何ですかネ」
「風邪じゃない?」

しれっと素知らぬ顔で、当主は空を仰ぎ見る。……ついに明日には、彼女との子が降りたつ。
それを見届けてすぐ、一族の精鋭たちで修羅の塔の最奥へと進む日でもある。
あの朱点童子との長きに渡る因縁は終わるだろう。いや、終わらせる。そう、当主は既に覚悟を決めている。
……一族の祖が両親の仇を取る為に始まった、長きに渡る宿命の終焉。
それに幕を引くのは、彼らの無念、願い、想い、憎悪、悲嘆、憐憫。
それらを背負った、当主である自分の役目だ。

代々、当主筋が受け継いできたとされる刀を鞘から引き抜けば、
白銀の刀身には自身の顔のみならず、始祖から血を継がれてきた一族の顔も垣間見えた気がした。

―復讐を遂げる日まで安らかに眠るなかれ―

刀は、当主へとそうして語り掛ける。刀は代々の当主を、そうして呪いの言の葉で縛り付けてきた。

「……終わりにするさ」

それが『最後の当主』の役目。…当主は継承刀を代毎に替えられてきた鞘へと収め、不敵に笑った。

―呪いを祝いへと転ずる為の決戦は、明日。

おまけ:

そして、決戦の日に―

「みなさま、いってらっしゃいませ!ろーほーを、イツ花とおまちしております!」
「……兄…いや、当主様、その頬どうしたんすか?」
「ほら、下界から降りてきた当主様の子!来るなり、お母様が、おいたは駄目だっていいましたよネ?
 これはその代理です!って、がつん!…いやー、いい右だったわぁ!私の跡継いでくんないかナ」
「当主様、本当に大丈夫ですか?なんなら壱与姫を……」
「……問題ない。行こう」

地獄巡りへと赴く中、頬を赤く腫らした当主は思わず空を仰ぎ見る。
そこには、にっこりと静かな微笑みを浮かべる、可愛い女神さまの姿が見えた気がした。

(終)

以上で投下終了です。投下がぶつ切りになったりで、おめ汚し失礼いたしました。や昼N…!
俺屍スレがこれからももっと、素敵な作品で溢れますように!

150:名無しさん@ピンキー
14/08/20 22:14:04.02 PXd53ZXl
GJ!GJ!
ああ~昼子もイツ花もかわいいんじゃあ~~

151:名無しさん@ピンキー
14/08/21 01:18:22.98 8nERXs0Z
当主様のキャラがいいし昼子も腹黒かわいい
素晴らしいボリュームでした、眼福眼福ゥ

152:名無しさん@ピンキー
14/08/21 19:07:58.19 8QGmd52y
>>130
夷三郎もヤバそうだ

爬虫類系は二本あるらしいし、人外神はなにかと凄そうだよな…


ところで水鳥以外のオス鳥類系はないと聞いたんだが…

153:名無しさん@ピンキー
14/08/21 19:18:10.42 kf59WUIx
>>152
鳥のそれこれ初めて知ったので驚いた。
そして調べてる最中に、梟の求愛の鳴き交わしについて読んでて、神様で想像して萌えた。

猫系の男神に嫁いだ娘は少し可哀想かもしれん。
蛇とかナメクジの類の神はさぞ長いのであろう

154:名無しさん@ピンキー
14/08/21 20:16:00.74 w8s4av2c
伏丸なんか射精後根元の瘤が膨らんで、ずーーーっと繋がりっぱなしだぞ
ドアノブみたいな形に勃起した逸物を見せつけられて
「これ入るんですか…?」って涙目になる一族娘萌え

155:名無しさん@ピンキー
14/08/21 22:08:44.01 YWrGnfXX
>>154
書いてもいいのよ?

156:名無しさん@ピンキー
14/08/21 22:10:48.34 8QGmd52y
>>153
猫のってトゲあるんだっけ?
戦闘脳筋な吠丸や獅子丸がその痛みで一族娘泣かせて、慰めるのに必死になってたりすんのか


鳥関係男神って
黒蠅、あすか、明美、福郎太、赤羽根、星彦、伊勢庭、トキだけど
明美はなくてもおかしくない気がしてきた←

157:名無しさん@ピンキー
14/08/21 22:35:48.85 MgdH3+cn
>>134
GJGJ!!
かわいい夫婦だなー萌えた
どちらも飄々としててイイネ

158:名無しさん@ピンキー
14/08/25 21:53:23.59 RY4Ewm44
最近思ったんだが最強氏神作りってエロい
一族が一丸となって子作りマシーンになってる感じが

159:名無しさん@ピンキー
14/08/26 19:03:27.11 8dcCK7px
保管庫更新遅くなって申し訳ない…
何日経ってもエラー出るからおかしいと思ってたら2万字超えるとエラーになるというだけのことに今やっと気付きました
というわけで2万字を超える文章は分割して更新しておきました

160:名無しさん@ピンキー
14/08/27 01:16:30.59 UY60oAkk
>>159
うわぁ、お手数おかけして大変申し訳ありませんでした…
保管作業、本当にありがとうございます…!

161:名無しさん@ピンキー
14/08/30 21:31:48.29 JbY4BpTJ
交神の時ってやってない家族はひたすら祈ってるのか
シュールだな

162:名無しさん@ピンキー
14/08/31 10:55:46.36 Eimub4ZR
>>161
「今ごろあの清楚な姉さんは武骨な男神に女にされてるんだ・・・」とか考えると
残された男家族は祈りに集中できなくなりそう
交神の期間が一カ月と長いからそういう邪念が湧くのは最初のうちだけだと思うが

163:名無しさん@ピンキー
14/09/02 02:43:28.54 fES++yiW
七枝タケル様の交神想像しにくかったから、鬼神のタケル様見られて嬉しかった。
一族中初めてタケル様のところに交神に行った娘は、帰ってからコトの顛末について質問攻めにされるんだろうなあ。

164:名無しさん@ピンキー
14/09/02 22:27:59.99 g4H2jWBl
タケルさん、スーパーチェンジしてもホホーイしかしゃべらないんか?

交神中もそばに通訳がいて
「『痛くない?』と、タケル様はおっしゃっています」といちいち代弁してたらすごいシュールすぎるw

165:名無しさん@ピンキー
14/09/03 00:55:43.52 U78vOJQv
>>164
すごくシュールwww
……梵ピン将軍は通訳つくのだろうか

166:名無しさん@ピンキー
14/09/04 05:36:06.81 wwqWYS1h
通じ合うんだよ

肉体的にも精神的にも

167:名無しさん@ピンキー
14/09/04 19:30:23.57 ThrYj0Yw
情熱的な呼びかけや甘い囁き声など
様々なトーンでハンダキ?ボボイスタ?って言われるんだな

それで別れ際にやっとたどたどしく名前を呼んでもらえると

168:名無しさん@ピンキー
14/09/05 02:25:43.75 aD5sl7LY
>>167
爆笑したけど最後の行で萌え転がりつつ切なくなった

169:名無しさん@ピンキー
14/09/06 22:40:43.18 MD6n/4X7
神様同士でも良いのだろうか

170:名無しさん@ピンキー
14/09/06 23:13:35.60 /Uq+OhAI
>>164
チェンジ後のあの姿であの声って破壊力が凄いw
まさかタケルを選ぶと通訳ペコもついてくるのか

171:名無しさん@ピンキー
14/09/07 02:10:42.82 HSuWUqd5
2人とも転生後のセリフ見るといい人っぽいから妄想はかどってしまう

172:名無しさん@ピンキー
14/09/07 22:31:15.74 86mWlyuo
大江ノ捨丸×一族娘投下します。

・題名「二回目」

・パスなし、7400字(15KB)程度

・捨丸と一族娘が痴話喧嘩する話

・本番行為がないためエロパロ板うpろだに上げました。

URLリンク(u3.getuploader.com)

以上です
捨丸との交神は、一回目は怖いもの見たさや妥協でやっても
二回目以降は愛がないと出来ないよね

173:名無しさん@ピンキー
14/09/08 22:34:33.03 jwBo2l8h
保管庫更新しました。捨丸人気に嫉妬
作者順まとめは文体などから勝手に同じ人かなと推測してやってるだけなので好きに直してくれてもいいのよ

174:名無しさん@ピンキー
14/09/10 02:04:55.65 hSEicE27
GJ!
二人ともとても可愛いかった

175:名無しさん@ピンキー
14/09/11 01:05:45.14 Kc/vucCP
確かに中身剥き出しだわ…>捨丸

176:名無しさん@ピンキー
14/09/15 21:18:45.62 6DKyc6L8
危険物件かもしれないのでろだを借りました

鷲ノ宮星彦×琴ノ宮織姫
URLリンク(download1.getuploader.com)

中身はごく普通のエロです
それほど抵抗なければ読んでやってください

177:君が為の言葉を
14/09/20 18:17:41.71 TfpRFnu6
通された場所は、京の屋敷とも、迷宮とも違う所だった。
京の屋敷と同じ穏やかな木々の香りが漂う空間。だが、屋敷とは違い、木材がそのままの形で張り巡らされており、ごつごつとした表面が露わになっている。
その無骨な空間に、見た事がない鮮やかな植物が敷物や装飾として飾られている。
何より、所狭しと飾られた武具の数々。そのどれもが意思を持っているかのように存在していた。
その空間に男女が向かい合って座っている。
女の方は、まだ元服をして間もない、幼さを残した少女。だが、煌煌と輝く朱い瞳には鋭い刃のような力強さが宿っていた。

「此度、交神の儀によりこちらに参った火乃(かの)と申す。こういった事は不慣れであるが、どうかよろしく頼む」

娘―火乃は恭しく頭を下げる。その姿は至って平静であり、とても儀式の前とは思えない程普段と変わらない面持ちであった。
もちろん、これから行う事の意味を理解していない訳では無い。だが、火乃の思いはこれから行われる事柄よりも、目の前の相手に集中していた。

「ハンダキ、ボボイスタメーレ!」

火乃の挨拶に、奇抜な被り物を身に付けた男神―梵ピン将軍は歓喜とも狂乱ともつかぬ珍妙な声を上げた。

一族において、交神の儀を行う神は交神を行う本人が選ばなければならないという決まりがある。
元々は親になる者としての決意や自覚を促す為であるが、それは、短命の一族が数少ない我儘を押し通せる場所でもあった。
子孫を残すというただそれだけの制度。だが、その行為によって一族は確かな愛に満たされ、その愛は神の方にも確かに存在していた。
とは言え、普通の男女の付き合いのように相手の人柄で選ぶというのは困難だ。神の情報は世話係であるイツ花か、姿絵屋の絵画でしか確認する事は出来ない。
その為、交神の儀において相手を選ぶ基準は見事にバラバラだった。顔であったり、遺伝情報であったり、時には触り心地が良さそうという理由で選んだ者もいる。
どんな理由があれ、基本的に交神の儀の相手は希望通りになる事が多い。だが、火乃の場合は一族全員に満場一致で難色を示された珍しい例であった。

「その、梵ピン殿とお呼びして良いか?」
「ンダキ」
「……それは肯定の意と捉えてよろしいだろうか?」
「ンダキ、ンダキ!」
「そうか、良かった。私の事は好きに呼んでくれ」

178:君が為の言葉を
14/09/20 18:18:37.58 TfpRFnu6
火乃が反対された理由として、梵ピン将軍の意思疎通の困難さがあった。
イツ花曰く、元々この神は京より遥か遠くの異国の地ににて祀られていた神だったらしい。
だが、それ自体は大して珍しい話ではない。梵ピン将軍のような異国から来た神は決して少なくはないからだ。
しかし、梵ピン将軍はそんな渡来神の中でも新しい時期にやって来た神だった。
八百万の神は言えど、言語の壁というのは厳しい。未だに異国の言葉が抜け切れない彼は、他の神々とも少々壁があるのだとイツ花は苦笑しながら教えてくれた。
梵ピンを見つめる。これからこの神と行うのは男女の営みと何ら変わらないものだ。
だが、今の雰囲気はとてもそうとは思えない。睦言の事など何も知らない生娘とはいえ、どうも今の梵ピンにその意思があるとは思えない。
何故なら、火乃の目の前には香ばしい匂いを漂わせる色とりどりの料理が並んでいたからである。

「キダキ、ボボイスタン!」
「一つ尋ねるが、これはその……食べ物、だよな?」
「ンダーキ」
「……もしかして、馳走にあずかってよろしいのか?」
「ンダキ!」

イツ花は神は食事が必要無い存在だと言っていた。という事は、これは火乃の為に用意してくれたという事になる。
交神に協力をしているとはいえ、すべての神が一族に好意的な訳では無い。もしかしたらと少々身構えていたものの、梵ピン将軍は少なからず友好的ではあるらしい。

「ああ、それはわざわざ……」

ぎゅう。申し訳ない、の言葉は腹から漏れた音によって打ち消されてしまった。

「……あ、え、えっと」

今朝方から禊の為何も口にしていないのを思い出した。天界に到着したのは日没間近であったため、普段なら夕飯の時間である。

「メレ!」

梵ピン将軍が笑いながら食器を手渡す。まるで「気にしてない、遠慮するな」と言っているようで。
恥ずかしさに俯きながら食器を受け取り、料理の一つを口にした。

「……美味しい」

思わず出た言葉に、仮面の下から覗く口元がほころぶ。その言葉が嬉しかったのか、もっと食べろと言わんばかりに次々と火乃の皿に料理を載せていく。
イツ花の料理とは違う、今までに食べた事もない味ばかりであったが、どの料理も美味な物ばかりだった。
一族以外と、それも神と食事をする。思ってもみなかった光景だが、それはいつもの食事と同じように心休まる事であった。
誰かと一緒に食事をする事の楽しさ。それは種族や言葉が違っていても決して変わる事が無い物だった。

179:君が為の言葉を
14/09/20 18:19:10.31 TfpRFnu6
天界での日々は目新しくも穏やかに過ぎていった。
しかし、火乃天界に来た大きな目的である交神の儀は未だには執り行われていなかった。
それどころか、肌に触れる所か、同じ部屋で寝た事すらない状態だった。一応聞いてみたものの、「ボボイスタ、ボボイスタ!」と首を振るだけで。
梵ピンの行動を図りかねるまま、火乃はつかの間の休暇を味わっていた。
火乃の人生において、生きる事とは戦う事だった。来る日も来る日も迷宮へ赴き、鬼を切り、経験を積む事が日常だった。
だからこそ、今の生活はどうにも落ち着かない。天界に来てからも自主的な鍛錬は欠かさず行っているが、それだけではどうにも身体が疼いてしょうがない。
そんな退屈そうにしているのを見かねたのか、梵ピンは外へ連れ出すようになった。他の神々の社や名所、時は最果てまで赴き、日が暮れるまで出歩いた。
そして、天界に来てから三日後。その日は梵ピンに連れられ、天界を散歩していた。
やはり、家でじっとしているよりはこちらの方が性に合っている。火乃は雲が路傍の石のように存在する道を歩きながら、天界の風景を眺めていた。
思えば、普段は景色をじっくりと観察した事は無かった。精々、外の迷宮は季節によって攻略の仕方が変わるから面倒だと思っていたくらいだ。
綺麗だと思った。こんなに美しい物をいつでも見られるのなら、どんなに幸せな事だろうとも。

「ハンダーキ、メレ、メレ、ボボイスタン!」
「ほう、あんな所にも神々は住んでいるのか。洞穴では住みにくいだろうに」

この数日間で火乃は梵ピンの言葉が大分理解出来るようになった。
とは言っても、未だに会話というよりは火乃の方が話してばかりだが、意思疎通が円滑になっていく事に嬉しさを覚えていた。
梵ピンは親切だ。毎食異国の料理を振る舞い、時には散歩に連れ出してくれたりと義務以上の事を果たしてくれている。
だが、だからこそ疑問に思ってしまう。ここまで火乃に良くしてくれる意味を。そして、未だに交神の儀を拒む理由を。

「おう、梵ピンじゃねえか」

振り返ると、隻眼の男神が気さくげに呼びかけていた。
浅黒い肌に大柄な身体。屈強ではあるが、鍛え上げられた名刀のような柔和な雰囲気をも併せ持つ神。それは、火乃にとって馴染みの深い神でもあった。

「どうした、今は交神の儀の最中だろうに? ん、お前は……」
「お初にお目にかかる、タタラ陣内殿。私は火乃と申す。前に一族の者が交神で世話になった」
「―ああ、やはりアイツの子孫か。道理で似ている訳だ」

火乃の曾祖母に当たる女性はタタラ陣内と交神し、祖父を授かっている。何でも、鬼として囚われていたタタラを救ったのが切っ掛けだったらしい。

「メレ?」
「ああ、前にこいつの祖先と交神してな。こうなる事は予想していたが、まさかお前と交神する事になるとはな」
「ンダーキ、ンダーキ、ンダンギギッ!」
「ああ、違いない。顔つき合わせた相手が親戚になるとは、天界もますます狭い世界になったものだ」

言葉の所為で他の神達と距離があると聞いていたが、どうやらタタラとは話が出来るようだ。
梵ピンの方も心なしか楽しそうに話をしており、やはり似たような神だからこそ意思疎通が出来るのだろうか。

180:君が為の言葉を
14/09/20 18:20:54.08 TfpRFnu6
「すごいな、タタラ殿は。やはり、同じ武器の神様だから分かるのだろうか?」
「ん? いや、コイツとはそれなりに長い付き合いだからな。というか、俺は鍛冶錬鉄の象徴だ。梵ピンも武器ではなく戦いそのものの象徴だ」
「む、そうなのか? 梵ピン殿の社に多くの武器が飾られていたのはそういう意味だったのか」

梵ピンの社には原初的な建物には不釣り合いな様々な武具が所狭しと飾ってあった。
剣、槍、槌といった馴染みの深い物から、筒に槍の穂先が付いた大筒や全体が蛇の様に曲がりくねった剣といった京には無い武具の数々に、最初相手も忘れて見入っていたことを思い出す。

「……ああ、お前はあれを見たのか」
「まあ、じっくり見た訳では無いが、あれはすごい! あんな素晴らしい武具は京ですらそうそうお目に掛かれない。機能もそうだが、武具の質自体も良い物ばかりだ。剣福殿でさえ造れるかどうか」

火乃は武器の類が好きだった。剣士としての性もあるが、討伐隊に入る前は蔵にある武器を玩具にして遊んでいた程に筋金入りだ。
そんな火乃は自身の家系に鍛冶神であるタタラ陣内がいると聞いて嬉しくなると同時に、交神をした曾祖母を羨ましがったものだ。
そのタタラに会えた。そして、タタラと同じように武器を愛し、素晴らしい武器の数々を生み出す事が出来る神に会えるなんて。

「やはり、梵ピン殿は良い神様だな」

火乃にとっては何気無い一言だった。
あんなに良い武器を造れるなんてすごい。ただ、それだけの意味で言っただけだったのだが―。

「ハ、ハンダーキィッ……!!」

梵ピンの身体が硬直する。声にならない呻きを上げたかと思うと火乃の方をちらりと見上げて。
あっと思った時にはくるりと背中を向け、走り出してしまった後であった。
一瞬の出来事であった。あっけにとられていた二人だったが、梵ピンの背中が見えなくなってから、ようやく思考が戻って来た。

「タ、タタラ殿! 何かまずい事を言ってしまっただろうか!?」
「いや、そういう訳じゃないな。ただ、間というか、機会というか……まあ、相手がお前だったのが悪いな」
「そ、そんな!? や、やっぱり何か粗相を……っ!」
「いや、何と言って良いのか……」

何かを考えるかのように視線を泳がせる。だが、やがて腹を括った様な面持ちで火乃の瞳を見据えた。

「さっきも話したが、あいつは戦いの神だ。それは分かるよな」
「ああ、戦い自体を司る神様……で合っているか?」
「そうだ。だが、それはただ殺し合うだけではない。人や鬼、武器に思想。梵ピンは戦に関わる物すべてに通じる……謂わば概念そのものだ」

梵ピン将軍という神の役割は戦における「統率」であった。
将軍という名の通り自らが前線に出て戦うのではなく、指揮官として部隊を鼓舞し、率いていたという。

「あいつは多くの物を引き寄せ、多くの物を死なせた。そして、それらが実体を失っても魂は残り続けた。人や、鬼や、武器そのものまでもが、な。あいつの社にある武器はその根源である魂で作られた物だ。戦いで死んだ魂を弔いとして飾っているんだ」
「そうだったのか……なら、梵ピン殿は神としての職務を全うしているだけではないか。どうして逃げるような事を……」
「あいつは悔やんでいる。自分の為に散っていた命を、朱点を止められなかった事を。そして、自分の所為で宿命を背負わせた……お前達の事をだ」
「……私達、を?」
「ああ、いつもお前達の事を気にしていたさ。謝っても償い切れない物を背負わせてしまった。交神の儀の間だけでも出来る限りの事をしたい、とな」

181:君が為の言葉を
14/09/20 18:21:34.67 TfpRFnu6
ああ、ようやく合点がいった。火乃を丁重にもてなし、退屈しないよう外へ連れ、そして、今まで義務を果たさなかった事。
あの献身的な態度はすべては一族を―火乃を思っての行動だった。
天界の真の目的が発覚した時から、一族と天界の間には埋められる事の無い溝が出来上がってしまった。
神々が一族を利用した事は覆す事の無い事実だ。だが、その神々の中にも一族に好意的な者や、同情的な神様も確かに存在したのだ。
やはり思った通りの神様だと思った。だからこそ、そんな神には思いを伝えなければならない。火乃がここへ来た理由を、あの神を選んだ意味を。

「タタラ殿、ご迷惑をお掛けして申し訳ない。だけど、私は……」
「ああ、行ってやれ。おそらく、社に帰っているだろうよ」
「! ああ、かたじけない!」

火乃は駆け出していく。その姿が見えなくなるまで見つめた後、タタラは小さく笑みをこぼした。

「……良い神様か。まったく、血は争えないな」

そう呟いたタタラの瞳は、どこか懐かしそうに空を仰いだ。


「梵ピン殿!」

タタラの言った通り、梵ピンは社に戻っていた。
数多の武具に囲まれた中で、静かに佇んでいた。だが、その背中には拒絶の意思が見え隠れしていた。

「梵ピン殿、私は貴方に伝えたいんだ。貴方を、交神相手として指名した事だ」

一族の為に死ぬ事に悔いも未練もない。だが、火乃という個人として生きている間にやりたい事があった。
あの時からずっと、梵ピンに伝えたい事があった。

「最初に貴方の事を知ったのは術書だった。なんと便利な術があるのだろうと感心したんだ。これならどんな鬼にも太刀打ち出来ると思った」

火乃は体の火が低かった。前線に立つには細く、貧弱な身体。このままでは一族としての責務を果たせないという焦燥感にいつもかられていた。
だが、その術に出会ってから火乃の悩みは消えた。幸いにも、火乃は術の使いに長けていた。誰よりも早くに習得し―今においても、習得しているのは火乃一人だけであった。
嬉しかったのだ。火乃だけではなく、他の皆の助けにもなれるその術を習得出来た事が、本当に嬉しかったのだ。

182:君が為の言葉を
14/09/20 18:22:50.83 TfpRFnu6
「だから、それを作ってくれた人に会いたかったんだ。最初は反対されたけどな。でも、私は会いたかった。生きている間に、貴方にお礼を言いたかったんだ」

一族には関係の無い事であっても、個人の我儘であっても、それだけは火乃が幼少の頃から頑なに抱いていた決心であった。
火乃は何としてでも会いたかった。絶対にこの神様でなければ駄目だと強く思っていたのだ。

「それと、タタラ殿から聞いたのだが……確かにあれは貴方の事を思えば軽はずみな発言だった。でもな……」

周りに飾られた武具の数々を見る。剣、槍、槌に異国の武器。数多の武器が、あるべき物として鎮座している。
武器とは殺生が目的で作られる物だ。その性質上、生物の感情が宿りやすいという。道具と役割を全うした結果、やがては呪物に変貌する物もある。
だが、そこから漂うのは邪悪なものではない。むしろ、神聖といっても過言ではない程に清らかな聖気に満ちていて。

「人々はきっと、貴方を慕っていたんだ。貴方の為なら死んでも良いと思ったから一緒にいたんだ。でなければ、死んでも傍には来ないさ。貴方の元に集まった魂は、幸せではなくとも、不幸でもないはずだ」

戦いは突然訪れる。ある日突然戦わなくてはならない状況になってしまう事は多々あるものだ。
だが、梵ピンに付き従った人達は自ら望んでその道を進んだのではないか。でなければ、このような姿形になるはずはない。
この武具となった魂は、ただ主の傍にいたかっただけなのではないか。

「それは一族だって同じだ。今更どうこう言った所で、何も変わらないしな。貴方のような神様がいるだけで、私は嬉しいよ」

天界を完全に信じる事は出来ない。だが、タタラのような親となった神や、一族の味方である神も確かに存在している。
人が人を愛するように、神にも情愛が芽生えている。その変化を火乃達は確かに認めていた。

「むしろ、そう思ってくれる神様のどこが悪い神様なんだ。十分じゃないか! 他がそう思わなくても、私は思うよ。というか、今確信した! 梵ピン殿は良い神様だ!」

その時、梵ピンが振り返る。
後悔、哀愁、追憶。それらが混ざり合った―今にも泣きだしそうな顔で火乃を見つめていた。
気が付いた時には、火乃の身体は梵ピンを抱きしめていた。
その身体は驚く程儚かった。小柄ながらも引き締まった身体も、今は手のひらにすっぽりと収まってしまいそうな程に小さく見えた。
自分と同じだ。小さな身体で大きな物を溜め込んで、人の為になりたくて。誰かを思いやれる強くて優しい人なのだ。

「ボ、ボボイスタッ、ボボイスタッ、メーレ―!!」

梵ピンの嗚咽が聞こえる。表情は分からない。だが、その様子は何かから解放されたような、そんな声だった。
ああ、これでやっと救われた。そして、繋がる事が出来たのだ。

「梵ピン殿が私を気遣ってくれてすごく嬉しい。でも、これで私の気持ちは分かっただろう。だから……」

やっと、想いを伝えようではないか。

「貴方の事をを教えてくれないか?」


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