14/09/25 01:55:09.95 myspOmKU
賑やかしに拙作ながら投下。
氷ノ皇子×一族娘(R版)
近親相姦ですので苦手な方はご注意下さい。
天界第一位の男神、という肩書きを持つ氷ノ皇子と相対し座しているのは年若の少女であった。
名を皇夜(こうや)という。年若、に見えるが娘は短命と種絶の呪を受けた一族の者であり、一
族の年齢からすれば晩年、とはいわずとも、壮年といって差し支えない。
氏神でもない皇夜が天界とも地上ともいえぬこの場所、しかも褥の敷かれた部屋に居る理由は
ひとつしかない。交神のため、つまり身も蓋もなくいえば、交わりを行って子を成すため。
皇夜が氷ノ皇子との交神に臨むのはこれが三度目になる。同じ神とそれほどの数交わるのは少々
珍しいことではあったが、それでも奇異というほどではない。それなのに、皇子の表情はどこか
冴えない。愁いを帯びている、といってもよかった。向かって皇夜は笑顔である。気負ったところも、
気まずいふうも全くない、自然な笑顔―ではあるのだが、皇夜の「笑顔」は見るものに少々の
恐怖を感じさせる。本人は普通に笑っているつもりであるのだが、生まれつき、そういったものを
滲ませた表情になってしまうのだ。
その笑顔が皇子の表情を冴えないものにしているわけではない。目の前の少女を嫌っているわけでもない。
むしろ、好いている。愛している―娘として。そう、まごうことなく血を分けた己の娘である皇夜が、
父である自分と繰り返し交神を望むことに対して、皇子は戸惑いを覚えていた。
娘の、腰まで伸ばされた軽く波打つ髪は氷にも似た藍白で、肌は病でも得ているのかと紛うほどに白い。
笑みを湛えてすらまとう冷たい雰囲気は、氷室の奥に篭っていたときの氷ノ皇子に酷似していた。そんな、
色に乏しいつくりの体の中で、眼だけが瑠璃とも紺ともいえるような強い色をたたえている。まるで、
身に宿る意志の強さをすべて集めて凝固させたかのように、深く濃い輝きをもつ一対の玉(ぎょく)
めいた眼が何を映しているのか、父神は知らない。
知らない。知らなかった。
今日まで知らなかった。純粋に、強さがほしくて自分を求めるのだと思っていた。
そう思っていたから訊いたことはなかったが、やはり娘を抱くことに後ろめたさを感じないわけでは
なくて、訊いてしまった。
「嫌がらせ、ですよ、父上。父上の大事な養い子、黄川人さんへの。黄川人さんは父上の血を飲んで
育ったのでしょう? つまり、血を継いだも同然。同じく父上の血を継いだ私と娘達とは兄妹と言っても
いいでしょう? 黄川人さんは実のお姉さまと戦ったことがあるそうではないですか。苦い思い出だと
仰っていました。その、苦い思いをもう一度して頂こうと、そういう趣向なのです。黄川人さんが
しているのは私達を巻き込んだお遊び……一方的に遊ばれるのは、私の趣味ではありませんので」
答えられて、初めて知った。娘が、自分を、自分の息子と言っても過言ではない黄川人を、恨んで
いるのだということを。
娘―皇夜に言わせれば、それは恨みなどではない。妬み、なのだ。自分達一族より宿敵である
黄川人を可愛がるような素振りを見せる父親への。暇潰しのように短命の一族を玩具の如く扱う、
長い生を持つ黄川人への。自分達の持ち得ないものをもつ、神とその子への。妬み。
皇夜は抱いた感情は語らず、ただ嫌がらせとだけ、父に伝えた。父上の大事な黄川人への嫌がらせの
ため、自分と父との交神は必要なのだと。氷ノ皇子が、父親である己と黄川人を恨んでいると思い込んだ
のを否定はしなかった。恨みが微塵もないわけでも、ないのだ。