14/04/20 22:58:51.59 oXzJ7cj9
「……ぅんっ……」
上から落ちてくる水滴によって、リラは目を覚ました。
(……ここは、どこだろう?)
仰向けの体制のまま、目を開けて辺りを見回すと、薄暗い洞窟の中のようだった。上を見れば、自分が落ちてきたらしい穴が、おそらくずっと高いところから覗いている。
あんな高いところから落ちたのに、傷一つないのはこの柔らかい『地面』のおかげらしい。
けれど、さすがに登ることはできなさそうだ。
(確か、ゲームか何かって言ってたような……)
ゲームと言って連想するものといえば、ポーカーやらスポーツやらそんなところ。もちろん、金持ちの言うゲームがそんなもので無いことは大体想像はつく。
(まずは、ここから動かないと……)
ここにいていいことは多分ないはずだ。それにあの領主曰く、これはゲームらしい。それなら、何かあるはずだ。危険なものなんかも、ざらに。
四肢に力を込めて、立ち上がろうとして、リラは違和感に気がついた。
(動けないっ……)
どんなに力を込めても、リラの体はうんともすんとも言わなかった。何かに引っかかっているらしい。自分の長い髪の毛も絡まってしまっているようで、くんと引っ張られる感触がする。
しばらくして、暗闇に目が慣れた時、ようやくその全貌が伺えた。
「――蜘蛛の、巣」
いや、これを蜘蛛の巣と言って語弊がないのか、リラは一瞬だけ迷った。それを迷うほどに、この巣は巨大なのだ。嫌な予感に、背中を冷たい汗が伝う。
「――目覚めたかしら?」
突然の声に、リラは鳥肌を立てた。さっきまで気配の一つもなかったのに、いきなり声がしたのだ。
仰向けのまま、声の方に目を向けると、一人の黒髪を三つ編みにした少女が糸の上に立っていた。年齢は14歳程度か、ヘタをすればそれよりも下なのかもしれない。とにかくこんなところにいるのは非常に異常である。
しかし、それ以上にその服装はあまりにも不釣合いだ。
一見、薄手のキャミソールか何かに見えるが、腹の部分で上下に別れ、へそを見せるようなデザインは、おおよそあの年頃の少女が身につけるものではない。
あまりにも奇天烈な格好に、リラは困惑していると、少女はくすくすと笑い出した。