14/07/13 18:01:39.88 giucjey7
先輩は赤くなりながら叫ぶ。死ぬって窒息とか呼吸困難とかそういう事だけじゃないんでしょう先輩、といつもならからかう所だけど今はちょっと自重せざるを得ない。
うー、と唸っていた先輩が、ややあって顔を上げた。
「……分割で」
「はい?」
「分割で手を打ちましょう、と言ったんです。1日で50分もキスをするわけには参りませんから……い、1ヶ月で使い切ることを目標に、1日2分のキスを要求します」
……なんだろう、それもちょっと違うと思うのだけれども。
それでもそっぽを向いて髪をくるくる弄りながら、やっとこさ搾り出しましたといった様子の先輩を見てしまうと、こくこくと頷かざるを得ない。
まぁ、何だ。
建前というのは、いつだって必要なものなのだろう。多分。
「……それであの静流さん、なぜ唇を突き出すのですか?」
「いえ、今日の分を忘れないうちに済ませておこうと思いまして」
「わ、私からするのですか!?」
「キスをするのは私じゃなくて先輩の権利ですから」
ちょっと意地悪かなぁ、なんて思いながらも。
瞑った目を片方だけ開けて、ダメ押しの一言。
「……しないんですか?」
「~~~~っ」
先輩は煩悶すると、やがて観念したかのように息をつき、赤い顔のまま私の前に身を乗り出して一言、とても恥ずかしそうに言った。
「―いただきます」
「はい、召し上がれ」
―なお。
初日からノルマの倍近くをクリアした私たちのキス契約は半月足らずで終了し、めでたく再契約の形とあいなった事を、ここに付け加えておく。
<了>
159:名無しさん@ピンキー
14/07/13 18:04:41.85 giucjey7
投稿完了です。エロって難しいなー。
それでは、お粗末さまでした。
160:名無しさん@ピンキー
14/07/14 02:13:50.46 RgrsN7m0
おお…おおGJ…
何から何まで好みで悶えた、訴訟は取り下げる
161:名無しさん@ピンキー
14/07/17 19:43:02.02 2wv9i0pQ
押しに弱い年上、いいねえ
それにきっちりえろいじゃない
素敵
162:名無しさん@ピンキー
14/07/20 07:30:02.46 y8/YHRcW
いいねぇいいねぇ
163:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:14:41.41 ZFjuYUOq
自作を投下です。
舞台は一緒だけどキャラは一新。
何かオムニバスっぽいことやりたいなぁなんて思いつつ。
164:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:16:30.57 ZFjuYUOq
『撫子寮にて。~ふたりの温度~』
―ごめんなさい、お姉さま。志乃は、悪い子です。
零れる吐息が、次第に乱れていく。
胸がどきどきして、苦しくて、切ない。
それでも―止まらない。止められない。
咎める心とは裏腹に狂おしい衝動に突き動かされて、私の肉体はどんどん加速している。
あぁ、どうしてなんだろう。
こんなにも熱くて、汗だくなのに。目の前がちかちかして、意識などすぐに飛んでしまいそうなのに―
―私はまた、罪を重ねようとしている。
忌むべき行為と引き換えにして、刹那の悦びを得ることにだけ夢中になっていく。
……時々こんな瞬間が、ある。
突然体が熱くなって、疼いてしまって。泣き出してしまいそうな、叫びたくなるような激情に駆られて……そして結局、私はまた自分を慰めてしまう。
―でも。鎮める方法なんて、一つしかないことは分かっていて。
「んっ……んぅ……んん……っ」
自らの手の甲を軽く噛んで、甘い喘ぎを、その衝動を必死に噛み殺そうとする。けれどもまるで体がその努力を嘲笑っているかのように、吐息は熱を帯びてゆくばかりだ。
あぁ、もしも―
ぬるついた糸を手繰り寄せながら、ぼんやりと考える。
これが私じゃなくて……『お姉さま』の指だったら……
「……ひぁっ!?」
突然、弾けた。
頭が真っ白になるほどに巨大な快楽。
背徳的な想像が引き金となって、さらに私の指先は加速していく。こうなってしまえばもう止まらない。黒々とした炎が残っていた理性をあぶり溶かしていく。
「あ……やんっ……や、あ、あぁ……っ!」
たまらなく―気持ちいい。
もう、何も考えられない。
だけどコールタールのように黒々とした炎は私の心にへばりついて、もっと、もっととせがむ。私一人じゃ止められない。だから……
胡乱な思考の中で、私は思う。ごめんなさい。ごめんなさい。志乃は悪い子です。
でもきっと、そんな私でもお姉さまは受け入れてくれるだろう。仕方ない子ねと笑って、私の汚れた体も抱きしめてくれるだろう。
けれどその優しさが、私には、泣きたくなるくらい切なかった―
165:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:19:03.16 ZFjuYUOq
.
/1.
「もしもし―志乃ちゃん?
……そう。もう、我慢できなくなっちゃったのね?
いいのよ、謝らなくて。……そうね、ここまで来れる? 私が迎えに行った方が良い?
あぁ、そうね。そうだったわね……ごめんなさい。じゃぁ、私の部屋……撫子寮の302号室で、待ってるわ」
そう言って、私―香坂雪深は携帯の通話を切った。
窓から外を見れば、ちょうどチラチラと雪が降り始めていた所だった。予報ではこれから降り始め、明日の朝まで積もるらしい。きっと今日一日冷え込むだろう。
あの子が道中、震えていなければ良いのだけど。そんな事を思いながら、暖房の温度を少し上げることにする。この部屋はもう十分暖かいのだけど、服を脱いでしまえばそうも言ってられなくなるだろうから。
私は既に撫子女学園の制服から、厚手のセーターとフレアスカートといった出で立ちに着替えていた。
あの子が来るまで、あと10分足らずといったところだろう。読みかけの小説を読みたかった所だけど、もうそんな時間はない。紅茶を淹れて、時間を潰すことにする。
あの子を待つのは嫌いではなかった。
学園ではなかなか会う事が出来なかった彼女に会えるのはここくらいのものだったし、それを嬉しく思わないと言ったら嘘になる。それが彼女のために必要な行為を行うためであったとしても。
期待。そう、私は多分、期待してしまっている。あの子が来る事、あの子とする事に。
そんなどこか暗い期待を、アールグレイの香りで落ち着けた。……私は彼女にとって頼れる先輩で、何より『お姉さま』なのだから、と。
166:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:20:59.65 ZFjuYUOq
……ややあって。
こんこんこん、と控えめなノックの音。どなた、と問うまでもなく、私にはそのノックの主が分かる。
……とっくにそれ所ではないんだろうに、それでも謙虚さを忘れない彼女の所作が私は好きだ。はい、と返事をして、扉を開ける。
その瞬間。
「お姉さまっ!」
叫んだ少女が、私の胸に飛び込んだ。
黒髪をボブカットに揃えた、撫子女学園の制服を着た彼女。着替えていないということはやはり、学校が終わってからそのまま来たのだろう。
『彼女』の身長は私よりも幾分低く、抱きつかれると私の胸に顔を埋めることとなる。セーター越しに彼女の荒い吐息を感じ、今日のそれはいつもより重症であることを悟った。
「お姉さま、お姉さま、お姉さまぁ……っ!」
見上げる瞳は熱く潤み、火照った頬を紅に染めている。わずかに爪先をあげるその仕草は、まるで飼い主にじゃれつく犬のようでいて、実際はもっと深刻だ。
きっとこの子は、ここに来るまでずっとこの状態だったのだろう。私は彼女を抱き寄せ、その労を労う。
「よくがんばったわね、志乃ちゃん。……偉いわ」
微笑みとともに、少し屈んで、彼女の唇にキスを落とす。
その可愛い唇を舌先で割って奥に侵入させると、彼女の舌が熱く迎え入れた。
「んっ……ちゅるっ、あむっ……」
「はぅっ……んぅっ、んっ、んんんーっ!」
ぬるついた部分を味わい、唾液を流し込み、掻き回す。
それだけで彼女の小さな体はぴくん、ぴくんと震える。今のこの子はすさまじく感じやすい状態で、恐らくは何回か軽くイッているのだろう。
けれど、それではダメだ。全然足りない。
いつもより少し長いキスの後、私はゆっくりと顔を離した。まるで泣きそうな、切なそうな顔。罪悪感と自己嫌悪と、それよりももっと大きな情欲の入り混じった顔だ。
「大丈夫よ」
私はそれを安心させてあげたくて、もう一度顔を近づけて、優しく囁いた。
「今日も壊れちゃうくらい、イかせてあげるから」
私の可愛い恋人、秋月志乃は―月に一度、こうやって発情する。
167:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:22:30.74 ZFjuYUOq
.
/2.
志乃ちゃんが私にその体質を打ち明けたのは、付き合い始めて二ヶ月ほど経った頃だった。
おかしいと思い始めたのは、その更に一ヶ月前だ。
一年後輩の彼女に告白された形で付き合い始めた私たちだったが、その頃は日に日に会える時間が少なくなっていって。遂には、一緒に並んで歩くことすら拒否され始めた。
その時の私の狼狽といったらなかった。だって志乃ちゃんはどんどん私と一緒の時間を切り捨てていって、私にはその理由が分からなくて。
―どうして私を避けるの。私のことが、嫌いになったの?
とうとう我慢できなくなって問い詰めた私に、志乃ちゃんは涙を流しながら言った。
―違うんです。お姉さまは全然、悪くなんかないんです……
その理由が、志乃ちゃんの体質。
彼女は月に一度のペースで、強烈な性衝動に襲われる。
今までは自慰で抑えていた。体を壊しかねない激しい自慰で。それでも恋愛と肉欲は別だと彼女は信じていたし、私とはプラトニックな関係でいようと努力もしていた。
―抑えられると思っていたんです。お姉さまのこと本当に好きだから、想っているだけでいいって。でも……
それでも、何とかできなかった。日に日に私を想って自慰をするようになり、やがて実際に一緒にいるときですらも、私を汚している妄想が頭を離れなくなったという。
だから。
別れて下さい、と言った。私のことを下卑た欲望で汚してしまう前に。
この一ヶ月間は本当に幸せだったから―それだけで十分すぎるほどに幸せだと、彼女は泣き笑いの表情で言った。
そして、私は―
「やぁっ、ぁっ、んあぁぁっ!」
―私は今、志乃ちゃんを抱いている。
ベッドに場所を移し、セミロングの黒髪の間から、彼女のうなじに口付けて。ちゅう、ちゅうと激しく吸い立てながら、制服の隙間から膨らみかけの乳房を摘んだり、弄ったりしている。
うなじは志乃ちゃんの弱点の一つであり、髪で隠れるために大っぴらにキスマークをつけてもいい数少ない場所でもある。厳格な家族の待つ家に帰る彼女のために、逢瀬ではよくこの場所を選んで証を付けていた。
「相変わらず、感じやすいのね……」
「んぅ、は、はい。そこは……ひぃんっ!」
「そこは、じゃなくてそこも、でしょう?」
そう言って、ぴんと自己主張している乳首を軽くつねる。小さな体がびくんと震え、彼女の眉根が切なげに寄せられた。
168:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:26:25.14 ZFjuYUOq
「悪い子ね。ここに来るまでに、もうこんなにしちゃったの?」
からかうような、咎めるような声音。
Mというより被罰願望があることは、これまでの逢瀬で分かっていた。そうやって耳元で囁くと、ぶるりと身を震わせて涙目になる。
「やぁ……っ、ごめんなさい……お姉さま、ごめんなさい……」
けれど、決して虐めたいわけじゃない。私は綺麗な黒髪を梳いて、頭を撫でてやる。なるべく優しく、心が落ち着くように。
「大丈夫よ、悪い子でも。もっと感じてもいいの……私になら、見せてもいいのよ」
言いながら、制服のブラウスのボタンを外していった。桜色のブラのフロントホックを開けば、発達途中といった小ぶりな胸が顔を出す。
「可愛い……」
控えめな胸に口付けをすると、あ、と志乃ちゃんは頤を逸らした。
腰まで髪を伸ばしていると、こういう時に邪魔だ。私は栗色の髪をかき上げると、ちゅ、ちゅ、ちゅぅと吸い付き、キスの雨を降らせていく。
乳房から臍へ。そして……
「あっ、ひゃぁんっ!」
唇より先に、指先をショーツに潜り込ませた。そこは既に滲み出した愛液を吸って、ぐっしょりと濡れている。
「……我慢、できなかったのね?」
私の問いに、志乃ちゃんはなるべく声を上げないように口を抑えながら、こくこくと頷いた。それは私の愛撫の事じゃなくて、もっと以前のことを聞いているのだと二人とも分かっている。
―我慢できなくて、学園でも一人でしちゃったのね?
そういう肯定を、この子はしたのだ。
「二回……それとも三回かしら。北棟奥のトイレで?」
「はいっ……あそこ、ぁん、人っ、来ないから……っ」
「そう。……今日は誰を想ってしたの?」
彼女の幼い秘裂に指を差し入れる。二本、いや、三本。すでに濡れそぼっていたそこはすんなりと私を迎え入れ、温かく締め付けた。
「あんっ! お姉さまっ! お姉さまですっ! お姉さま以外でこんなこと、しない……!」
「私を想って、しちゃったのね?」
「はい……あ、あぁっ! くぅんっ!」
169:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:30:02.87 ZFjuYUOq
いい子、と耳元で囁いた。
子犬のような鳴き声をあげる志乃ちゃんをもっと鳴かせてあげたくて、昂ぶっていく自分に気づく。これは嫉妬かしら。想像の中で志乃ちゃんを玩んだ私への。
「じゃぁ、想像よりももっと凄いこと、してあげないとね……?」
片足を上げさせて用を成さなくなったショーツを抜き取り、志乃ちゃんの秘部を露にした。発達途中な彼女らしく茂みはまだ生え揃わず、その先にはピンク色の花びら。
甘い香りに誘われるミツバチのように、私はその花弁の中心に舌を伸ばした。
「あんっ……! お姉さまっ、そこ、汚い……ぃんっ!」
「大丈夫よ。志乃ちゃん、とっても綺麗……ちゅっ」
膣内に分け入った舌が、熱くて柔らかい感触を私に伝える。奥からは泉のようにとろとろと液体が流れ出てきて、ふやけてしまいそう。
「ちゅるっ、じゅずっ、んちゅぅっ」
その少ししょっぱくて甘い液体を、なるべくいやらしい音を立ててすする。志乃ちゃんが頬を押さえ、むずがるように身をよじる、その可愛らしい姿を見たくて。
「お姉さま、やだっ、吸っちゃダメです……んっ、恥ずかしいぃ……っ!」
「どうして? あなたのジュース、とっても熱くて美味しいわ。ずっと飲んでいたいくらい……ちゅっ」
その言葉に嘘はない。けれど志乃ちゃんの愛液は魔性の媚薬のようで、飲んでいるうちに私の方がたまらなくなってしまった。
だから、と私は彼女に呼びかける。
「ごめんなさい。一度、イかせるわね」
「ぇ……あぁぁぁっ!?」
その言葉を、彼女は理解する間があったかどうか。
秘裂の少し上に濡れ光るピンク色の蕾。その花弁を唇で剥くと、思い切り吸い上げた。
「ひにゅぅぅっ!? んぃぃっ、おね、さまぁぁっ! そこはダメ、ダメ、ダメぇぇっ!」
懇願を無視して、私はその蕾を舌先で転がし、唇で挟み、甘噛みする。志乃ちゃんが確実に絶頂へと上り詰められるように。
志乃ちゃんはいつの間にかシーツをぎゅぅっと握り締めると、ぴんと背筋を伸ばしブリッジのような体勢になっていた。
無意識のうちに口元に押し付けられる腰元を羽交い絞めにしながら、私は一層愛撫を強くする。
170:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:32:47.55 ZFjuYUOq
「あぁぁぁっ! イくぅっ! わたっ、私っ、イっちゃいますぅっ!」
「いい子ね。志乃ちゃんがはしたなくイくところ、私に見せて……っ」
「やぁっ、あはぁぁっ、ダメ、もう………ん、んんんんんーーーっ!!」
達した。
びくん、びくんと痙攣すると同時、透明な飛沫が秘部から飛び散る。顔で受け止めたそれはとても熱くて、興奮してしまう。
「あ、あぁ……ぅ」
力が抜けたように落ちる彼女の腰を、ベッドが柔らかく受け止めた。紅く染まった肌が上下し、口から熱く湿った吐息がもれ出ている。
その様子を見下ろしながら、私は顔中に飛び散った潮を手で拭い、ぺろりと舐めた。
―あぁ、ダメ、ね。
どうにも熱気に当てられてしまった。志乃ちゃんの性衝動が治まればいい、なんてやっぱり甘い考えだった。
私も、気持ちよくなりたい。
この衝動を、この子と分かち合いたい……。
「志乃ちゃん」
呼びかけに、彼女は胡乱な表情で私を見上げる。
その視線を感じながら私は―ゆっくりと、見せつけるようにセーターの裾をたくし上げた。
「お願い。私のことも……気持ちよくして?」
それから―どのくらい時間が経っただろう。
「お姉さまっ、お姉さまっ、お姉さまぁ……っ!」
「志乃ちゃん……んっ、あぁっ!」
舌を絡ませ、吸い付いて、嘗め回して。
撫でて、挿れて、擦り合わせて。
汗で、涎で、愛液で私たちは体中じっとりと濡れ、シーツはその水分でぐっしょりと重くなっていた。暖房の温度を間違えたのか、熱気と疲労で頭は痺れたようぼやけていく。
それでも止まらない。止まれない。
私たちは足を絡めあって互いの秘部をこすり合わせては、ただただ貪欲に快感をむさぼり続けていた。
「気持ちっ、いいっ! お姉さまぁ、気持ちいい! 気持ちいのぉ!」
「私もよっ……志乃ちゃん、おかしくなりそう……!」
互いを求め合う指先が絡まり、舌先が絡まって、ぐちゅぐちゅという粘液の擦れあう音を聞く。世界が遠くなり、ただ目の前の少女の事だけを強く感じる。
でも、もっと感じたい。もっと、もっと。
「んちゅっ、ちゅっ、ちゅぱっ、お姉さま、お姉さま……っ」
「ちゅるっ、志乃ちゃん、志乃ちゃ……っ!」
やがて、それは訪れる。頭の中が真っ白になっていく感覚。全身が溶けて志乃ちゃんと一つになっていくような、それは多分今までで一番大きな絶頂の予感。
それさえあれば、もう何もいらないような、強烈な多幸間の中で―
「お姉、さま……ぁっ!」
志乃ちゃんは顔をくしゃくしゃにして、泣きそうな顔で、でも私を正面から見つめて、叫んだ。
「私……っ、お姉さまのこと好きですよねっ? ちゃんと、ちゃんとっ、好きですよねぇ……っ!?」
―どうして、そんなこと。
問おうとする声も、意志さえも、強烈な光に吹き飛ばされて―
「ひんっ!? あっ、あぁ、イくっ! 私、イっちゃ……うぅぅぅっ!!」
「私もっ……志乃ちゃ、ひぐっ、あ、あぁぁぁっ!」
互いの体をきつくきつく抱きしめあいながら、私たちは長くて深い絶頂の海に沈んでいった。
171:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:35:36.28 ZFjuYUOq
.
/3.
どんなにぐちょぐちょに溶け合っても一つになれないことを私たちが知ったのは、それから随分と時が経って、長い長い絶頂の余韻から目覚めてからだった。
身支度を整えて外へ出ると、既に雪は積もり始めていた。
志乃ちゃんは傘を持っておらず、帰りは学園まで家のものを寄越してもらう、という彼女に、それなら正門まで送ろうと私は傘を広げる。
「寒くない?」
「いいえ、私は……」
否定しようとする志乃ちゃんの手を、ぎゅっと握る。やはりというか、手袋をしていない手は早くも外気に晒され、冷たくなっていた。
「嘘ばっかり。……手を繋いでいきましょうか。その方が温かいわ」
「はい。……ありがとうございます」
はにかんだように彼女は微笑む。私は改めて手をしっかりと握りなおすと、正門に向かって歩き始めた。
一つの傘に、並ぶ二人の肩。相合傘なんて恋人らしいことは、初めての経験。
そういえば、外で手を握ったこともあまり無かったかもしれない、と思う。世間体が気になったのもそうだし、性衝動のことを気にして出来るだけ外では肉体的な接触をとらなかったのもそうだ。
思えば撫子寮での逢瀬ばかりで、恋人らしいことはあまりしてこなかった。その事は私も、素直に反省すべきだろう。
そうじゃなければ、だって……
―私、お姉さまのこと―
「お姉さまは、お優しいですよね」
不意にかけられた志乃ちゃんの言葉で、思考は途切れてしまう。集中してなかったせいで前後の文脈が分からず、返した言葉は当たり障りのないものになった。
「えぇと、そんなつもりはないのだけど……」
172:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:37:47.65 ZFjuYUOq
「いいえ、そんなことないです」
くすり、と彼女は笑う。けれどそれは、どこか陰のある笑みで。
「お姉さまは、お優しいから……」
言いかけて、志乃ちゃんはしかし、言いよどんだ。
「……志乃ちゃん?」
その様子に私は思わず立ち止まる。
けれど志乃ちゃんは少し考え、それさえもなかったことにして。
「やっぱり、何でもないですっ」
そう言って笑い、傘の外へと一歩踏み出した。
「あ……」
繋いでいた手が外れる。追わなければならないはずなのに、足が動かなかった。
―お姉さまは、お優しいから……
分かった。
分かってしまった。その先に続く言葉と、情事の最後に感じた違和感。
―お姉さまは、お優しいから。
私のことを放っておけなくて、だから今も一緒にいてくださるんじゃないんですか?
人目を憚った逢瀬。強く結びつけるのは、撫子寮で行われる情事だけ。けれどそれすらも欺瞞だったとしたら。
そんな、疑問。だけど問えるはずもない。肯定でも否定でも、疑った瞬間に私との関係は崩れてしまう。
きっと、そう思ってる。だから無かったことにした。疑うのは悪いことだ。悪いことは、してはいけない。
でも―
―私、お姉さまのこと好きですよねっ?
ちゃんと、ちゃんとっ、好きですよねぇ……っ!?
彼女の鳴き声交じりの声が、リフレインする。
肉欲と純愛がどろどろに溶け合って、彼女にはもう訳が分からなくなってしまったのだろう。自分が何のために香坂雪深という人間を求めているのか。何が愛で愛じゃないのか。それはただの性衝動じゃないのか。
そして香坂雪深という人間は、優しさゆえに、それに応えているだけじゃないのか―
173:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:39:55.15 ZFjuYUOq
「……志乃、ちゃん」
違う、のに。
そんなことないのに。
けれど何も気の利いたことを言うことが出来ない間に、彼女との距離は少しずつ遠ざかっていく。志乃ちゃんの髪にはうっすらと雪が積もり始めていて、温かいからと握ったはずの手さえ今は離れたままで……
「………ぁ」
瞬間。
志乃ちゃんがちらりと、私の方を振り向いた。
いや、私じゃなくて、ただ単に後ろを振り返っただけかもしれない。
一人の夜道につい、そうしてしまうような、不安で心細くて泣き出してしまいそうな表情―
「志乃ちゃんっ!!」
いつの間にか、傘は投げ捨てていた。
その表情が、私に志乃ちゃんまでの距離を飛び越えさせた。
私の声に今度こそ後ろを向き直った志乃ちゃんを、私は彼女がやって来た時と同じように、力いっぱいに抱きしめた。
「……っ、お姉、さ」
目をまん丸に開く志乃ちゃん。彼女に何を言うべきなのか、何を言ったら伝わるのか、正直な所私には見当もつかない。
「私は」
だから私は、私の言いたい事を言う。きっとそれで伝わるはずだと信じて。
「あなたのことが、好き」
―あぁ、そうだった。
「あなたの柔らかい黒髪が好き。あなたの感じやすいうなじが好き。慎ましい胸が、可愛らしい声が好き」
別れを切り出されたとき、今までの一ヶ月だけで十分すぎるくらい幸せだったと言われたとき。無性に悔しくて、私はこの子に一生付きまとうことに決めた。
『だった』だなんて言ってほしくなくて。この子にとっての私を、勝手に過去のものにされたくなくて。
「はにかむように笑うあなたが好き。決して驕らないあなたが好き。いつも誰かの代わりに傷つく繊細なあなたが好き」
だから、そうだ。
決して『してあげている』なんてご立派な慈善の心じゃない。そんなものじゃ断じてない。私は、香坂雪深は、あなたと一緒にいるときが一番幸せなんだと。
そう、伝えよう。
174:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:40:59.99 ZFjuYUOq
「あなたが好きよ。ベッドの上のあなたも、それ以外のあなたも、全部まとめてあなたが好き」
迷って不安でたまらないことなら、私がその不安を分かち合おう。
何かが私たちを引き剥がそうとするなら、その何かに最後まで全力で抗おう。
何があろうと無力な私の全力でもって、この子の手を掴まえて離さない。
そう、今決めた。
だから私は、多分言っていい。
そんなどうしようもない意地と誇りと所有欲と、ありったけの愛しさを込めて。
「あなたを、愛してる」
唇を寄せて、そう、呟いた。
志乃ちゃんの瞳が揺れて―そして彼女は、私の胸に顔を押し付ける。その感触は、いつだって私に彼女のありのままの気持ちを教えてくれるはずだ。
「……お姉さま」
「うん」
「お姉さま……」
「うん」
「おねえ、さ……っ!」
「……うん」
私の胸の中で、志乃ちゃんは微かに震えていた。
押しつけられる額が少しだけ苦しくて―構うもんか。
頭に積もっていく雪が冷たくて―構うもんか。
このまま抱き合っていたら誰かに見られてしまう―構うもんか。
どんなに溶け合っても一つになれない私たちは、だからこそお互いの体を抱きしめ合う。感覚を刻み付けるように。逢瀬の記憶を惜しむように。
一人きりの夜、凍えるこの子の胸に、少しでも私の温かさが残っているように。
<了>
175:名無しさん@ピンキー
14/07/21 20:43:21.86 ZFjuYUOq
投稿完了です。
今回はエロ多め。だけどキャラが立ってるかちょっと心配だったり。
それでは、お粗末さまでした。
176:名無しさん@ピンキー
14/07/25 21:06:49.54 NvfTBpDe
おう、なんかきてた
えろーい
あと最後の好き攻勢いいね
177:名無しさん@ピンキー
14/07/26 01:12:08.88 A9p7OqBh
おおう、なんか気付かぬ内にまたすっごい好みなのが来てた、あなたが神か…!
自分が愛されてるのか不安な子ってほんとにいいものですね
178:名無しさん@ピンキー
14/08/09 22:11:34.14 20WbGrGF
すげぇ…スゲェ…耽美エロい…!