14/06/23 18:09:07.47 N/Rgn2ec
最近やたらと前の席の女が話かけてくる。
高校に入学して最初の定期考査が終わり席替えがあった。
僕の席は教室の一番奥、一番後ろの席。
生徒からは目立たないと思われがちで人気の席だが、教師が言うには生徒を見回す際に一番見る位置らしい。
だが僕にはその心配は必要なかった、前の席の女の背が高く普通にしていても教師からは僕が見えない、僕からも教師が見えない。黒板も見えない。
この女が休み時間の度に話かけてくる、昨日読んだ漫画やゲームの話、街で起きた事件、くだらない話ばかりだ。
僕はこの女が嫌いだ。
この国でもトップの大学進学率を誇るこの学校の伝統として、初回の定期考査は教師も力を入れる。
広めの試験範囲から入試本番を想定した難度の問題を中心に赤点を平均点に定めた問題が作成される。
生徒に低めの点数を取らせて落ち込んだ所をコーチングし、基礎問題中心の期末考査で救済し自信を持たせ教師との信頼関係を育成する伝統らしい。
彼女は全教科で満点だった、3位と80点以上の差をつけて2位だった僕よりも60点以上も差がある。
僕にはそんな伝統も自分より上位に居る彼女も許せなかった、だから休み時間返上で勉強しているが、そんなことなんてお構いなしに彼女は話しかけてくる。
「ねぇ佐藤くん、最近私達ぶつからなくなったね」
入学してからこの席になるまで、僕と彼女はずっとぶつかってきた。何も意見が対立したり喧嘩してたわけじゃない。物理的にぶつかってた。
ちょうど彼女の胸が僕の顔の位置にあり、入学式の日何気なく振り向いた彼女の胸にふっ飛ばされ入学式に出れなかった。
それからは彼女が居ない事を採算注意しながら学校生活を送るようになった、なのに毎日ぶつかってた。
背が高く細い見た目からは考えられない程体幹が強いのか、僕が弱いだけなのか、ぶつかる度に毎回僕がふっ飛ばされてた。
服の上からでも大きいことがわかり柔らかそうな彼女の胸だが、ぶつかるととても痛い、何度かは鼻血も出た。
通学中、彼女と満員電車に乗りあわせ20分近くドアと彼女の胸とに挟まれ窒息しかけた事もあった。思春期の巨乳への憧憬も彼女が植え付けられた数々のトラウマにより憎悪の対象になった。貧乳は正義。
彼女も学習したのか、最近はぶつかりそうになると優しく抱きしめられるようになった、その技術身に付けるならぶつからないように気を付けてくれればいいのに……
うちのクラスで一番背の高いバスケ部員より背が高い彼女は、クラスで一番背の低い女子と対して身長が変わらない僕の事が見えにくいらしい、その理屈なら女子にもぶつかれよ。
「昨日牛丼屋さんにまた強盗が入ったんだって!」
治安の悪いこの街で深夜にアルバイト1人で営業している店なんて襲ってくれと言ってるようなもんだ。ってそんなことはどうでもいい僕は早くこの問題集を終わらせてしまいたい。
「あ、佐藤くんそこ間違ってるよ。あとここ分数間違ってる、これだからゆとりは……」
お前も同い年だろ、それよりこの問題まだ習ってないんだが……
「佐藤くん、女の子みたいな顔で女の子よりちっちゃいから帰り道とか気をつけないよー、最近物騒だから。男の人に襲われちゃうかもよぉ~」
僕の顔を覗き込みながら、屈託のない笑顔でとんでもない事を言われた。シャンプーの臭いかな?とてもいい匂いがした。