13/04/20 08:12:57.99 xhF7YcO4
>>422
「ゼノォ、ゼノォ……」
日が傾きはじめた深林のなか、差し込んでくる僅かな明かりは徐々に消え入りつつあった。ぬかるんだ土を踏み歩くエコーにとって、オラクルで夜を迎えるのは、はじめてのことだ。
冷たさを運ぶ風に枝葉揺れ、独りでいる心細さからエコーは肩を震わせる。相棒のゼノとはぐれ、通信も取れない。
先刻にあった、ダーカー反応の影響だろうか。できればダーカーとの接触は避けたい、と思考しながらエコーは足を止めた。
上体を前のめりにし、手を膝の皿に置くエコーは、肩を上下させてなんども息を吐いた。
体内に蓄積されるフォトンが尽きることはない。しかし体力は別だ。法撃が使えてもエコーには、戦闘を行えるだけの体力が最早残されてはいない。
舌に溜まった唾液を飲み込み、渇いた喉へ注ぎ落とす。疲れた。思うエコーは視線を辺りに振り、腰を下ろせそうな場所がないかと探した。
雨でぬかるんだ地面に尻をつけるのは、エコーには耐えられなかった。
腰かけるのに丁度いい岩を、視界の先に見つけた。歩み寄ると、大木が傘になっていたようで岩の表面は濡れていなかった。
やっと腰を下ろせる。息をついて座るエコーの鼓膜に、茂みを揺らす音が聞こえ、そこから黒い影が出てきた。
「ひぃ!?」 思わず悲鳴を上げるエコーの声に驚いたのか、大きな影も声を漏らした。影は、人間だった。「あ……アークスだ、おう!」 反射的にロッドを構えたエコーに、アークスと名乗る男は左手をエコーに向けた。
制止するように手を突き出す男に「わ、わたしもアークスだよおぅ」 と、言葉尻を震わせてエコーも名乗る。
「こんな可愛い子に会えるなんて……生きててよかった!」
男の発言にエコーは訝しん面を浮かべ、いつでも反撃ができるようロッドを握りしめた。
「あんたも本船と通信が取れないのか?」訊ねられたらエコーは頷いてみせ、「そうか、テレポーターもきのうしねぇし一体どうなってやがんだ」男は肩に担いでいた大剣を地面へ突き立て、大木の根に腰かけた。
「テレポーター、使えないの?」
男の言葉を拾い、エコーが訊ね返す。「ああ、俺達を転送したテレポーターはぶっ壊されて使いもんにならなねぇ状態だったぜ。クソったれのダーカー共がっ」
幹にこぶしを打ちつける男に、恐る恐ると、エコーは訊ねる。「あなたの、仲間は?」口元を結び、歪ませる男は顔をうつむけた。
「生きてたのは、俺だけだ」