12/08/25 15:01:23.82 2pw0Wa9I
「よう、ラヴェール。依頼通りだ、ダーカー共狩りまくってきたぜー。」
アークスシップのロビー。
窓の外に広がる漆黒の宇宙を、遠い眼差しで見つめるニューマンの女性。
アークスの一員である“男”は、何とも軽々しい口調で、彼女の浅黒い背中に声をかけた。
「……。」
彼女は無言で“男”の声に振り返る。
首まで伸ばした、綺麗な銀髪が、その動作に合わせて、柳の葉の様に揺れた。
「なんだよー、全然うれしそうじゃねえなぁ……結構苦労したんだぜ?超硬ぇカルターゴだろぉ?ぶんぶんうっせぇプリアーダにエルアーダ……どいつもこいつも醜い野郎だったなぁ。」
「余計な話に興味はない」
あいも変わらず軽口を叩く“男”の言葉をさえぎる様に、彼女はようやく言葉を発した。
その声は「余計な事に興味はない」を地で行く、何とも冷たく無愛想な声色だった。
「私が興味あるのは……」
「分かってるってぇ、『ダーカーの殲滅』だろ?」
そして、今度はお返しとばかり、逆に彼女の言葉を“男”が遮った。
「俺も、余計な事に興味はねぇ……俺が欲しいのは、あんたからの報酬だぜ、ラヴェール」
「……結構」
ラヴェールという名の彼女は、アークスの間でも有名な人物だった。
割と容姿は良く、豊満で扇情的なボディスタイルから、言い寄る男は少なくは無かった。
しかし彼女の方はと言えば、自分の素性を語る事無く、口にするのは「ダーカー殲滅」の話題ばかり。
彼女の依頼を遂行すれば、相応の報酬が用意されている為、そんな彼女の元を訪れるアークス達は多かったが、深い関係を期待する者は、ずっと少なかった。
「約束通りの報酬だ」
ラヴェールはPDA端末から自身の講座にアクセスし、アークス・フォトン強化経験地と呼ばれるポイントを表示した。
このポイントは、アークスが何らかの戦果を上げる際に発生する、アークス専用の報酬の様な物だが、このように他のアークス同士で交換する事も可能な、メセタとは違うもう一つの通貨ともなっている。
ラヴェールが今回用意した報酬は、かなりの高得点であったが……
「そいつは、もういらねぇや」
“男”は硬く筋張った手で、彼女の手にするPDAを押し下げた。
そして、口元を卑猥に歪めて、何とも感じの悪いにやけ面を浮かべると、更に続けた。
「俺よ、もうフォトン強化レベル、限界地イッちゃってんの……だからそんなもん、いらないわけ……それよりさ」
“男”の歪んだ口元に白い歯が鈍く光り、ラヴェールの尖った大きな耳に、生暖かい吐息がかかる距離まで、それを近づけ、いやらしく囁いた。
「俺はよ、興味あんの……あんたともっとイイことしたいわけよ……二人っきりでょぉ……」