ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α11at EROPARO
ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α11 - 暇つぶし2ch700: 忍法帖【Lv=7,xxxP】(1+0:8)
13/11/19 21:10:21.40 2mQuZfvZ
-rほす

701:名無しさん@ピンキー
13/12/01 01:49:54.71 jjYOCbBD
ロボット、アンドロイド12月、月次保守
消耗品交換
冷却・潤滑油補充

702:名無しさん@ピンキー
13/12/01 07:35:43.62 dG1TS9Mb
書き手を消耗品とか交換とかって失礼すぎ
そりゃ書き手に飛ばれる訳だわ

703:名無しさん@ピンキー
14/01/12 01:52:14.45 mXW9wjWv
そんなわけで、1月保守

>>705
おまえもチェンジだ

704:名無しさん@ピンキー
14/01/13 17:31:15.20 Uo0PtEtw
投下します

705:雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk
14/01/13 17:32:15.31 Uo0PtEtw
 どこをどうやって逃げてきたのか、自分でもよく覚えていない。
 気がつけば森の中で仰向けに倒れていた。
 完全に息が上がり、カラカラに乾いた喉の奥から苦いものが込み上げてくる。
「ゴホッ、ゴホッ……」
 胃液にむせて咳き込んでしまう。
 呼吸が止まり、余りの苦しさに涙が滲んでくる。

 しばらく耐えていると、荒かった息もようやく鎮まってきた。
 だが、涙は止まるどころか、かえって溢れてくる。
 落ち着くにつれて、悔しさが蘇ってきたのだ。
 目の前で相棒が陵辱されているのに、何もできなかった自分が不甲斐ない。
 それどころか、触手に犯されているシズカを見てカチンカチンにさせるなんて、ぶざますぎて死にたくなるくらいだ。
 いや、当のシズカもアヌスを責められて、いやらしく腰をくねらせていたから、少しは相殺されるかもしれないが。

 それはそうと、今頃シズカはどんな目にあっているのか。
 どうやって彼女を連中の手から救出するか。
 今後の傾向と対策のため、僕が逃げてくるまでの状況を反芻してみる。



 活動に必要なエネルギーを吸い取られたシズカは、完全に沈黙して行動不能に陥った。
 もはや彼女の戦闘力を頼ることはできない。
 今のシズカは自力で直立できない分、人形としてはマネキンにも劣るだろう。
 旧型のダッチワイフとしてなら機能するだろうけど、電源が落ちているから安物のオナホにも劣る。
 役立たずになったその部分を見て、ヒゲネズミはマーサに向かって言った。
「これ、まだ使えるぜ。なあ、俺っちが貰っていいだろ?」
 どれだけ好きなんだ、あのオッサンは。

 マーサは夫の無思慮な発言に対し、あからさまに不快感を示した。
「何を言っているのです。そんなことをしたらウーシュタイプは再起動して、我々の手に負えなくなるでしょうに」
 アウトプットディバイスの件もそうだったけど、マーサはウーシュ型バトルドロイドについて詳しいらしい。
 精漿に含まれるプロスタグランジンが、シズカの添加剤であることをよく知っている。

「けどよぉ……」
 ヒゲネズミは諦めきれずに物欲しそうな視線をシズカに送った。
「お黙りなさいっ。あなたという人は、まだ懲りていないのですか」
 どうやらヒゲネズミは無類の女好きで、前にも女で失敗したことがあるようだ。
「まったく、油断や隙だけでなく見境もないのだから。いつものようにこうしておきます」
 マーサは用具庫から革と鎖でできた貞操帯を取り出すと、転がっているシズカの股間に装着してしまった。

 察するに、どうやらこのスケベオヤジは、捕虜にした女に手を出す癖があるらしい。
 妻としては貞操帯の一つも着けたくなるのだろう。
 しかし、これでシズカを再起動させ、スーパーパワーを回復させるのが一段と困難になった。

「あぁ~ああ、勿体ねぇの」
 ヒゲネズミは未練たらしそうにシズカを見下ろしていたが、その視線を僕の方に向けてきた。
 背筋に悪寒が走った僕は、思わず両手でお尻を覆い隠していた。

706:雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk
14/01/13 17:32:59.39 Uo0PtEtw
 そこから先はよく覚えていない。
 とにかく無我夢中で教会を飛び出し、森の中を全力で走った。
 背後を確認する余裕などなかった。
 警察学校の教練の時間でも、ここまで頑張った記憶はない。
 限界を遥かに超えた、我ながら見事な走りっぷりだった。
 そしてとうとう力尽き、この場所に倒れ込んでしまったというわけだ。



 さて、泣いていても事態は改善されない。
 シズカを取り戻すため、僕は反撃に転じなければならないのだ。
 だが、どうやって戦うのか。
 僕個人の戦闘力などたかが知れている。
 手持ちの武器もないし、助けてくれる味方もいない。
 それに、どう考えてもあの触手武器には勝てそうにない。
 やはり無線を使って、警視庁に助けを求めるしか手はなさそうだ。

 この島で無線機がある場所となれば、教会を除けばあのフェリーだけだろう。
 と言って、ホルジオーネの手下が、自由に無線を使わせてくれるとは思えない。
 もう僕のことは手配されてるだろうし。
 こっそり忍び込んで無断拝借しようにも、無線室には交替勤務の当番が詰めている。
 となれば、やはり色仕掛けしかない。
 僕は男なのに、女の武器を使わなければならないのか。
 屈辱的だが、シズカは僕を逃がすために、もっと恥ずかしい責めを受けたんだ。
 彼女を救い出すためなら、少しくらいの恥は我慢しなければならない。

 しかし色仕掛けって言ったって、何をどうすればいいのか。
 僕が使える武器は、ウッフンポーズとパンチラくらいしかないのだ。
 漫画じゃあるまいし、そんなもので大の男をどうにかできるものでもないだろう。
 手コキはまだしも、リップサービスなど死んでも御免だ。
 つか、死ぬ気になったとしても、する方は勿論、される方も未経験の僕には技術的な問題もあるし。

 ひとり悶々としながら森の道を歩いていると、次なる不幸が襲いかかってきた。
 こんな時に、よりによって一番会いたくなかった相手とバッタリ出くわしたのだ。
「片割れでゴザルッ」
「ゴザルッ」
 茂みを掻き分けて現れたのは、シズカに半殺しにされたサイボーグのクノイチ姉妹だった。
 その時の記憶が蘇ったのか、シュガー姉妹は驚愕の表情を浮かべて固まった。
 そして、我に返るや10メートルを一気に飛び下がる。
 ねじりフンドシが食い込んだヒップが丸見えになるのもお構いなしだ。

 なるほど、女の武器ってのは、こういう風に使うのか。
 さり気なく、かつ大胆に。
 大ピンチを迎えているにも関わらず、僕の目はかくも見事に釘付けにされている。

 踵を返して逃げかけたシュガー姉妹だったが、はたとある事実に気付いて立ち止まった。
「メイドがロボットだということは……」
「……スクールガールは生身でゴザル」
 いったん顔を見合わせてから、再度僕の方に向き直る。
 その動作がピッタリとシンクロしているのが、双子のアイドルタレントっぽい。
 ああ、一番気づいてもらいたくなかったことに気づかれてしまった。

707:雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk
14/01/13 17:33:36.20 Uo0PtEtw
 僕が扮している“マリオネット”は、殺人ロボットを操る幻の暗殺者として、この世界で名を馳せているのだ。
 余りにも有名な事実らしくて、既に幻でも秘密でもなくなっているような気もするが。
 ともかく僕が生身の人間であることが、姉妹にバレてしまったようだ。
「今のうちにマスターを始末してしまえば……」
「残るメイドは人形も同じでゴザル」
 そこに勝機を見出したシュガー姉妹は、目を爛々と輝かせて僕に近寄ってきた。
 そして太ももに巻いた革ベルトから、鉛筆みたいな棒手裏剣を何本も抜き取る。

「ちょっと待って、もうこの勝負は終わったんだ。誰が勝とうが意味はないんだ」
 僕は両手を振ってシュガー姉妹を止めにかかる。
 理由は知らないが、雇い主様は都知事の暗殺を中止したらしい。
 だから募集していた殺し屋は、もう間に合ってらっしゃるようなのだ。
 それどころか、僕たちが黒幕から消されそうになったことを伝え、なんとかシュガー姉妹を止めようとした。

「それは、単にお前たちが先方の意にそぐわなかっただけでゴザル」
「実力不足の未熟者にゴザル」
 せっかく忠告してあげているのに、自信過剰な若い暗殺者たちは聞く耳を持たない。
 シズカが失格だと言うのなら、彼女に負けた自分たちの評価はどんなものか。
 少し考えれば分かりそうなものなのに。
 こいつらって、かなり自己中な性格らしい。
 って、これが中華思想というものか。

「うひゃっ」
 銀色の輝きが光の筋と化して飛んできた。
 反射的に身を投げ出すと、今まで背もたれにしていた木の幹にドス、ドス、ドスっと棒手裏剣が食い込んだ。
 鉛筆ほどもある手裏剣の、根元近くまでが幹にめり込んでいる。
 冗談ではない、こんなもの喰らったら確実にあの世行きだ。
 僕は脱兎の如く逃げ出した。
 もうこれ以上は走りたくないと思っていたところだったが、これは嫌でも走らざるを得ない。

「我らからは逃げられぬでゴザルッ」
「あきらめて待つでゴザルッ」
 死にたくないから嫌でゴザル。
 必死で逃げる僕の耳元を、風切り音をたてて手裏剣が掠めていく。
 恐ろしさ満点だが、それでもギリギリで当たらない。
 僕の姿が茂みに見え隠れして、シュガー姉妹は照準を付けきれないでいるようだ。

 そのうち手裏剣が切れてくれるのを祈りたいが、こういう場面では何故か弾切れは望めない。
 太もものベルトに差し込まれていたのは、左右それぞれ5本ずつだったように見えたが─。
 理不尽にも、もうその倍は体を掠めている。
 いったいどこに隠し持っているのか尋ねてみたいが、今はそんな雰囲気ではない。
 などと余計なことを考えているうちに、僕はとうとう追い込まれてしまった。
 目の前に切り立った崖が立ち塞がったのだ。

708:雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk
14/01/13 17:34:18.27 Uo0PtEtw
 高さは約10メートル。
 ゴツゴツとした岩肌が剥き出しになっているから、頑張ればよじ登ることは可能だ。
 その間、シュガー姉妹が待っていてくれればの話であるが。
 おそらく半ばまで登らないうちに、僕の背中はハリネズミみたいになってしまうだろう。
「観念するでゴザルッ」
「ゴザルッ」
 僕が躊躇している間に、茂みを掻き分けてシュガー姉妹が姿を現せた。
 いよいよ絶体絶命だ。
 逃げようにも足がすくんで動かず、助けを乞おうにも声が出ない。
 悔しいが、奇跡でも起きない限りどうにもならないようだ。
 シュガー姉妹は棒手裏剣を構え直すと、勝ち誇ったように満面の笑みを浮かべる。
 そして右腕をしならせて必殺の一撃を放った。

「死んだぁっ」
 僕は身をすくめて目を固く閉じる。
 ほぼ同時に鼻先でカキンという鋭い金属音が─。
「痛ぅっ」
 頬にチクッとする傷みが走った。
 痛いことは痛いが、想像していたより遥かに弱い、というか比べものにならない程度のものだった。
「あれっ……もしかして死んでない……?」
 どういうわけか、シュガー姉妹の手裏剣は僕に当たらなかったのだ。

 おそるおそる目を開けてみると、クノイチ姉妹が防御を固めるように身構えていた。
 その顔からは最前までの笑みは消えている。
 そして、彼女らの視線は僕の頭上に向けられていた。
 誰かいるのか?
 と思うや否や、崖の上から直径1メートルはあろうかというボールが落ちてきた。
 続いて、ボヨヨンと弾むボールの上に、持ち主と思われる人物が降り立った。

 ピエロだ。
 僕たちと一緒にフェリーに乗ってきた、あの殺人ピエロだ。
 原色に彩られた衣装を着たピエロが、玉乗りをしながらナイフをジャグリングしている。
 目にも止まらない速さで、ナイフが何本あるのかすら分からない。
 シュールといえばあまりにシュールな光景だった。

「何者でゴザルッ」
「ゴザルッ」
 シュガー姉妹は正体不明の敵を前にし、慎重に距離を取る。
 その距離、20メートルほど。
「邪魔するなでゴザルッ」
 クノイチたちはシンクロした動きで、手にした棒手裏剣を投擲する。
 と、ピエロは宙に浮いていたナイフ2本を無造作に摘み、両手のスナップを利かせて投げつけた。
 カキンという金属音が連続し、虚空の2箇所で激しい火花が散る。
 ピエロはクノイチ姉妹が放った手裏剣を、投げナイフで叩き落としたのだ。

 同時に、僕が先ほど頬に感じた痛みは、あの火花を浴びたものだったと理解する。
 察するに、あの一投目はギリギリのタイミングだったのだろう。
 今更ながらにヒヤッとする。
 人間業とは思えない妙技を見せたのにも関わらず、ピエロはニコニコ微笑んだままジャグリングを続けていた。

 どれだけ凄いんだ。
 シュガー姉妹の手裏剣ですら、僕の目には捉えられない。
 その手裏剣が投げられた一瞬の間に、弾道を見切った上で正確にナイフを投げて迎撃する。
 それも、同時に2本を。
 シズカが見切った通り、やはりこのピエロも生身の人間じゃなかったのだ。

709:雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk
14/01/13 17:34:52.72 Uo0PtEtw
 しかし分からないことが一つ。
 なんだってこのピエロは僕を助けてくれるんだ。
 僕はサーカスに知り合いはいないし、スカウトされるほど運動神経もよくない。
 そんなことを考えている間にも鋭い金属音が連続し、虚空に幾つもの火花が散る。
 クノイチたちが手裏剣を投げるたび、ピエロは投げナイフで迎撃してしまうのだ。
 パーフェクトなディフェンスに、シュガー姉妹は焦れ始めた。

「なんで邪魔するでゴザルかっ」
 リンかレイか分からないが、クノイチが激怒する。
 無理もあるまい。
 必殺のはずの手裏剣を、あたかもゲームの道具であるように利用されているのだ。
 そう、ピエロにとって、これは自分の能力を誇示するためのゲームなのだ。
 クノイチを倒すのが目的なら、手裏剣を打ち落とす必要などあるまい。
 その技量をもって、投げてる本人を狙えば事足りる。
 相手の技量を無効化してみせることで、ピエロは自分の能力を誇っているのである。
 余裕というか、稚気というか、敵をおちょくってキレさせるのも計算の内なのかも知れない。

 コケにされて激昂するクノイチであったが、そこはさすが忍びの者。
 怒りが自分のスペックを低下させることを思い出した。
 冷静さを取り戻した姉妹がとった手段は─。
「これでも迎撃できるでゴザルかな?」
 姉妹はそれぞれ両手に手裏剣を持ち、見せつけるように高々と掲げた。
 ピエロがしてる両手投げを、自分たちも採用したのである。
「都合4本でゴザル。2本は防げても……」
「残る2本が、背後のスクールガールを貫くでゴザル」
 シュガー姉妹が僕の方を一瞥し、にっこりと笑う。

 4-2=2って単純な引き算ならその通りなんだけど─大丈夫っすよね、ピエロの旦那。
 手裏剣の4本程度、迎撃するのは朝飯前でござんしょ?
 頼まれもしないのに、他人のピンチに駆け付けるような奇特なお方なんだし。
 余程の自信がなければ、こういう場面でしゃしゃり出て来やしないだろう。
 僕はそう信じて疑わなかった。
 しかし、ピエロはずっと続けていた玉乗りを止めて、地面に降り立ったではないか。
 えぇっ、これって遊んでる余裕がなくなったって解釈でよろしいのですか?
 さっきからニコニコ笑ってらっしゃるように見えるのは、単にメイクによる目の錯覚だったんでしょうか?

 ピエロは宙を舞っていたナイフから4本を選び取り、両手の人差し指、中指、そして薬指の間に刃体を挟み込む。
 彼は一度に4本のナイフを投げて、同数の手裏剣を弾き落とそうというのだ。
 確かに数では同じだが、果たしてそんな離れ業が可能なのか。
 シュガー姉妹も半信半疑なのか、なかなか投擲のタイミングを掴めないでいる。
 初めて会うピエロの技量を図りきれないのだ。

 それに、もしピエロが赤の他人の僕を見捨て、狙いをクノイチたちに変えるとしたら。
 ピエロのナイフが手裏剣を迎撃せず、クノイチたちの心臓に向かうとしたら。
 姉妹にすれば、ピエロが僕を助ける動機が分からない。
 ピエロの次の行動を保証するものは何もないのだ。
 それが分かっているからシュガー姉妹は両手を振りかぶったまま、次の行動に移れないでいた。

710:雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk
14/01/13 17:36:01.52 Uo0PtEtw
 膠着状態を破ったのは一発の銃声だった。
 同時に金属音がして、クノイチの手から棒手裏剣が弾き飛ばされる。
「何奴でゴザルッ」
 返事の代わりに銃声が続けざまに上がり、残る3本の棒手裏剣が宙を舞う。
「飛び道具とは卑怯でゴザル」
 シュガー姉妹が非難の声を上げる。
「いやぁ、手裏剣も立派な飛び道具だと思うぜ」
 もっともな正論を吐きながら薮を割って現れたのは─。

「ダブルオー」
 それは僕たちと同じくバトルロイヤルに参加した、元英国情報部員の肩書きを持つスパイ崩れだった。
 如何にも軽薄そうな男は、ワルターの銃口から立ち上る煙をフッと吹き飛ばして見せた。
「投げた後ならともかく、手にあるうちなら僕にでもどうにかなるからね」
 いやいや、大したものだ。
 50メートル離れたところから、鉛筆大の的を連続で撃ち抜くなんてのは人間業じゃない。

「やっぱりバカでゴザル」
「我らを撃てる唯一のチャンスでゴザったのに」
 シュガー姉妹が憎まれ口を叩く。
 いや、むしろダブルオーは、君たちに当たらないよう細心の注意を払ったと思うのだが。
 それを理解しているからか、シュガー姉妹も毒気を抜かれたようになった。
「こんなバカを相手にしている暇はないでゴザル」
「我らの優勢勝ちにゴザル」
 姉妹は自分勝手な判定を下すと、煙玉の炸裂に紛れて姿を消した。
 多分、バトルロイヤル優勝者を自認して、あの教会に向かうのだろう。
 マーサに対面してどんな結果になるか知らないが、僕は一応忠告しておいたから。

「遅くなって申し訳ない」
 いつの間にか近づいてきてきたダブルオーが、僕の手を取って甲にキスをする。
 こいつはいつだってこの調子なんだ。
「言っとくけど……」
「全て承知のことさ」
 ダブルオーがさわやかにウインクしてみせる。
「相手が他人からレディとして見られることを望んでいる限り、レディとして扱うのが僕の流儀なんでね」
 いや、僕はそんなことこれっぽっちも望んでいない。
 しかし、この格好でそんなこと言ってみても、まったくもって説得力ないなあ。
 まあ、レディとして扱われている限りは安全、と考えれば得しているのかもしれないが。

「えっと、クロー様……ですよね?」
 そんなタイミングで、いきなり本名を呼ばれたんで、僕はびびって飛び上がった。
 ピエロがニコニコ顔で僕を見ている。
 メイクと衣装のせいで素顔もボディラインも分からないが、声は若い女のものだ。
「ど、どうして……」
 僕の上擦った声が、自動的に相手の質問を肯定していた。
「あなたのことはコリーン様から……私、ティラーノ宗家の総本部に所属する親衛隊員なんです」
 ピエロは自分の身分を明かし、ジィナ・アノワールと名乗った。
「そんな扮装をしてらっしゃるからクロー様とは気付きませんでしたが、お連れ様に覚えがありましたので」

 ああ、シズカのことか。
 そういやシズカには変装させていなかったが、ちょっと迂闊だったかも。
 彼女は警視庁初のロボコップだし、そこそこ顔が売れてても不思議じゃない。
 ちょくちょく市街戦をやらかして、新聞ネタにもなってるし。

711:雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk
14/01/13 17:36:57.04 Uo0PtEtw
「いえ、私はコリーン様から直接お聞きしていましたから。私はお嬢さまのボディーガードと侍女を兼任していますの」
 ならば、ティラーノ版のシズカってところか。
 あのクノイチ姉妹を一人であしらうくらいだから、戦闘サイボーグとしても一級品なんだろうな。
 もしかしてシズカみたいに超高性能アンドロイドなのかも。
 いや待てっ、侍女兼任ってことは、コリーン嬢のそばにあって、話し相手にもなるのか。
 改めて自分がミニスカ女学生になっていることを思い出す。

「お願いだから、コリーンには黙っててっ」
 僕は両手を合わせて拝みこんだ。
 ただでさえロリコン容疑が掛かってるんだから、これ以上嫌われるネタを与えたくない。
「い、言えるわけないでしょうがっ。こんなこと知ったら、コリーン様が悲しまれますっ」
 ジィナ嬢は白い目で僕を見て、厳しい口調で非難した。
「あぁ、嘆かわしい。これと見込んだ男友達が、実は女装癖の持ち主だったなんて……コリーン様が余りにも不憫です。
あなたに危害が及べば、お嬢さまがお嘆きになると思えばこそ助けたのですよっ。ああもうっ、止めておけばよかった」
 ジィナ嬢は好き勝手に僕を罵った。
 散々な言われようだけど、嘆きたいのはこっちだって。
 こんな情けない目にあったと知れば、あの嘘つき都知事もさぞかし大満足するだろう。

「助けてもらっておいてなんだけど、これってティラーノの計画に対する造反じゃないの?」
 僕は非力だが、一応は全力で都知事暗殺計画を阻止するために派遣されてるんだから。
 後でジィナ嬢が上役から怒られることになったら気まずくなる。
「計画って? ティラーノグループはそんな計画など立てていませんよ」
 ジィナ嬢は何を言ってるんだと訝しがった。
「首謀者のホルジオーネ一家って、ティラーノの戦闘部隊なんでしょ? 宗家が考えた計画を奴らが実行してるんじゃ?」
 そのくらいの知識は僕にだってある。

「いや、それは違うな」
 黙って成り行きを見守っていたダブルオーが割り込んできた。
「ホルジオーネは確かにティラーノ一族の傍流だけど、宗家から独立しているマフィア集団だからね」
 そういえば、コリーン嬢もそんなこと言ってたかも。
 既に両者は袂を分かち、何の友誼もないとか。
 今をときめく国際貴族がマフィアと同根なんてのは、確かに洒落にもならないだろう。
「今じゃ、むしろ敵対関係に近くなってるんじゃないかな。ねぇ、君」
 ダブルオーに尋ねられ、ジィナ嬢は頷いた。
 それを見て、僕は少しホッとした。
 今回の任務が元で、コリーン嬢と敵味方の関係になってしまうことを危惧していたのだ。
 どうやら、それは避けられたようだ。

「実は先だって、うちの情報部が白河都知事の暗殺計画を掴んだのです」
 そりゃ大々的に殺し屋を募集していたのだから、噂として情報も入ってくるだろう。
「その計画を主導しているのが、どうもホルジオーネらしいということで、現地調査のため私が派遣されたのです」
 バトルロイヤルの時、ジィナ嬢の姿が見えなかったのは、その任務があったからなのか。
 僕たちの戦闘を尻目に、彼女はあの教会に向かっていたのだ。

712:雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk
14/01/13 17:40:09.20 Uo0PtEtw
「あなたがマーサから都知事暗殺を請け負うところをこの目で確認しました。彼女は“有罪”です」
 マーサの名を口にする時、ジィナ嬢の表情がはっきりと険しくなった。
「僕は当の都知事の命令で動いてるんだからね。本当に暗殺を引き受けたわけじゃない」
 こんなことで僕まで有罪にされたらたまったもんじゃない。
 つか、このピエロはあの時、教会のどこかに潜んで僕たちを監視していたのか。
 邪魔が入らなければ、ロボメイドとやってるところを見られているところだった。
 ああ、今回はどれだけ恥ずかしい目をすれば許してもらえるんだ。

「ともかく、我々としてはホルジオーネに都知事を殺させるわけにはいかないのです。直ぐに情報を送らないと」
 帝都の覇権を狙うティラーノにしても、白河都知事の圧倒的な支持率は無視できない。
 手早く帝都をものにするには、むしろ都知事の人気を利用した方がいいに決まってる。
 連中は彼女の地位はそのままにして、実権だけを奪ってしまおうという腹なのだ。
 だからホルジオーネがやろうとしていることは、ティラーノにとって許し難い敵対行為に他ならない。
 事実確認が済めば、直ぐにでも強烈な鉄槌を下してやろうと準備していたのだろう。
 これは、近くに機動歩兵の大部隊を待機させていると考えた方がいいかもしれない。

「けど、どんな法的根拠で? ここはお嬢さんの本国じゃないんだぜ」
 ダブルオーがいいことを言った。
 この島でティラーノの私設軍隊が武力行使をすれば、間違いなく国際法規違反になる。
 コリーン嬢が町中で二丁拳銃をぶっ放すのとは規模が違いすぎて、幾ら彼らでも誤魔化しようがない。
「それより、僕に協力してシズカを奪還する方が上策だよ。警視庁職員の僕に協力することで大義名分も立つし」
 僕はシズカを取り返せるし、ジィナ嬢は暗殺計画阻止の手柄を独り占めできる。
 双方にとって悪い話じゃないだろう。
 だが、予想に反してジィナ嬢は賛同してくれなかった。
 ただ、フッと唇の端を歪めただけであったのだ。
「クロー様。お嬢さまのためにも、死なないよう努力してくださいね」
 それだけ言うと、ジィナ嬢はくるりと踵を返した。

「連中にとっては、むしろこの国に兵力を持ち込む絶好の機会だってことじゃないのかな」
 ダブルオーは、去っていくジィナ嬢の背中に向けてそっと呟いた。
「天下御免のティラーノグループなんだし。人道上の理由とかなんとか理屈をこねて、自分たちを正当化してしまうよ」
 確かにそうだ。
 都知事の暗殺計画を未然に防ぎました、時間的余裕がなかったので自分たちが直接やりました、なんて言われれば─。
 都民から感謝されることはあっても、非難されることはないだろう。

「それを機に、帝都にある支局防衛のためとか理由をつけて、都内に兵力を常駐させるつもりなのかもしれないね」
 しかも、自作自演の爆破テロを行って、どんどん兵力を増強させるつもりだとすれば。
 そんなことを許せば、都知事や議会の発言権は低下し、帝都はティラーノグループに乗っ取られてしまう。

 相手の狙いが分かった以上、好きにさせとくわけにはいかない。
 なんとかジィナ嬢が仲間を連れて戻ってくる前にシズカを取り戻し、黒幕たちを逮捕するのだ。
 もはや援軍を待っている時間はない。
 今から応援要請しても、ティラーノの私設軍隊が先に上陸してしまう。

 果たして、僕はこの未曾有の危機をどうやって乗り越えればいいのか。      

713:名無しさん@ピンキー
14/01/13 17:44:07.68 Uo0PtEtw
投下終了
構想は最終回まで出来ているのですが、休みが全く取れなくて書く暇がありませんでした
ようやく正月休みを貰えたので、どうにか続きを書けました
またよろしくお願いします

714:名無しさん@ピンキー
14/01/13 20:29:41.92 jE+PYHGY
キテタ━━(゚∀゚)━━!!!!

毎度乙です

715:名無しさん@ピンキー
14/01/13 22:16:37.39 lDDkj0Di
毎度ながら乙です。
ところで登場人物には全部元ネタというかモデルがあるんでしょうか?
古典とか詳しくないので弁慶や静御前くらいしか分かりません。

716:名無しさん@ピンキー
14/01/13 23:25:55.43 9LgB3/ye
乙ざんす
今回も面白い…けどスレ的にはシズカの復活が待たれます

717:名無しさん@ピンキー
14/01/13 23:39:45.08 alfCzeWd
シズカのエッチなシーンを期待してたのに残念すぎる!!


続き楽しみ

718:名無しさん@ピンキー
14/01/14 00:25:29.35 ls879JYv
乙ですッ!
タメが長いほどカタルシスも増すってもんよ皆さん、お待ちしてます!

719:名無しさん@ピンキー
14/01/14 02:57:57.10 ydkdZpB2
ピエロさん(ジィナ嬢)、かっこい~♪
シズカさんが他人(マーサ夫)に使われなくてよかった
あとは、がんばってプロスタグランジンをたっぷり注入して大活躍ですね♪

720:名無しさん@ピンキー
14/01/26 06:50:26.65 OGJlAOgZ
ファービー処刑リンクタグを見ながらファービーをロボ娘だと脳内変換すれば萌える

721:名無しさん@ピンキー
14/01/30 23:10:59.17 sov7bI1N
スマートフォンやPCの不具合にもときめくようになってしまった

このスレでもメカバレ不足が深刻な問題となっている

722:名無しさん@ピンキー
14/01/31 00:28:28.27 OwakCDVk
マジで飢えてんなww

723:名無しさん@ピンキー
14/01/31 01:17:16.42 zQNZbe6o
>>724
先日愛車のカーナビがバグって
「300m先右方向です」
「300m先右方向です」
「300m先(ry」と繰り返していた。
その時の俺の興奮を、お前にも分けてやりたい。残念だ。

724:名無しさん@ピンキー
14/04/13 11:08:29.95 WLUyUUPw
保守

725:名無しさん@ピンキー
14/04/13 20:51:05.61 kRs45Fet
俺のは高速を走ってるといきなり側道に降りてICに乗り直す道を探してくれる
その仕事は早いんだがなあ

726:名無しさん@ピンキー
14/04/14 08:19:56.46 yZcpqghP
こんなかんじ?
JR北海道の車内放送が狂った!?: URLリンク(youtu.be)

727:名無しさん@ピンキー
14/04/14 09:22:17.74 ew/luE2i
>>729
すごくいい!
女性だったらもっと良かったけど

728:名無しさん@ピンキー
14/04/22 21:16:42.52 9t1YT/tw
キューティーハニーもこのスレいいか?
wikiを見て女性型半生体アンドロイドと知ったんだが

729:名無しさん@ピンキー
14/04/23 13:06:47.19 pVPGd7DW
あの頃の永井豪って『何処までが人間か?』って部分を楽しんでたよなw

730:Ms. 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) さん@ピンキー
14/04/26 15:33:08.99 D/DAq/cT
この子はどうですか?
http:/
/togetter.com/li/607736

731:名無しさん@ピンキー
14/04/29 15:21:34.60 s6QqhGsU
最初のキューティーハニー最終回、内部透視図は完全にメカだったんだぜ。

732:名無しさん@ピンキー
14/04/29 17:04:26.87 +O6f5dMB
新キューティーハニーとハニーTheLiveも
完全機械式だよ
あと基本、豪ちゃんとケンイシカワが描くハニーも少なくとも中身は機械
逆に生身確定はFとRe:

733:名無しさん@ピンキー
14/04/29 23:15:20.90 PvwYZu2h
女性型アンドロイド(?)が自分自身をAIじゃないか?
と疑って掛かるのは様式美だからなぁ
ちょっと自暴自棄気味なのがまた良いんだよな

734:名無しさん@ピンキー
14/04/30 11:15:26.69 0MKXuu+/
最終兵器彼女 の ちせ
はどの扱い?

ガンスリンガーガール
はどの辺り?

人間に機械を入れてますが?
ちせの場合、多分、機械が肉体を、内側から削って機械に置き換えていっているみたいでしたけど?テレビアニメでは

735:名無しさん@ピンキー
14/04/30 13:44:37.46 pS6eiCRT
アンドロイドとサイボーグの区別くらいつけような

736:名無しさん@ピンキー
14/04/30 14:07:57.20 5GJI/zeq
>>737
その辺りは本人の意思と関係なく改造された系統の女版でしかないでしょ
本家は仮面ライダーだったりハカイダーだったりして国産の始祖はエイトマン辺りか?

いずれにせよ、強制改造はちょっと違う

737:名無しさん@ピンキー
14/04/30 23:59:37.66 FdVeOID4
アニメの生体アンドロイドのはしりは妖怪人間ベムか
薬品を混ぜてベラそっくりのホムンクルスを作るエピソードがあったな
オリジナルの妖怪人間もああやって作られたのかも

738:名無しさん@ピンキー
14/05/01 01:53:06.62 5Pis/wcQ
えーと
安藤まほろ や 流河 濤 はこのスレ対象だけど
安藤ななみ や 安藤みなわ は対象外
って事ですか?

739:名無しさん@ピンキー
14/05/18 19:15:46.74 fdR6GpMF
性格はどんなのが受ける?
文字通り論理的で疲れ知らずで的確なのかむしろプログラムのせいで逆に芝居がかってるようなタイプか

740:名無しさん@ピンキー
14/05/19 00:16:18.17 psSRNx88
その二択だと後者だな

個性的に見せながらも三原則でガッチガチに縛られてたり管理者権限で突然機能停止したりすると尚良し

741:名無しさん@ピンキー
14/05/19 15:11:05.51 J3b/EFph
境ホラの自動人形 「浅草さん」を題材にしたSS
完全な機械人形なんでサイボーグSSスレではなくこちらに投稿。
アンドロイド&サイボーグスレでネタで書いた奴を
テキトーに加筆したやつなんで酷い文章ですがご容赦くださいましー
原作知らない人はチンプンカンプンかも。

忍者レベル足りて無いのでPDFで貼っておきます。
URLリンク(ux.getuploader.com)

742:名無しさん@ピンキー
14/05/20 07:29:09.47 FvRvVuIz
PDFの表示がおかしかったので修正
URLリンク(ux.getuploader.com)

743:名無しさん@ピンキー
14/05/21 02:31:14.70 2Qz9mDW1
なかなか良かったでござるよ

744:名無しさん@ピンキー
14/05/21 19:31:53.82 EbZRPhGE
>>746
ありがとう
忍者もげろ

745:名無しさん@ピンキー
14/05/26 00:03:51.74 rXJOGTkB
久々に投下します

746:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:05:22.15 rXJOGTkB
 教会を見下ろす丘の上で、僕は腹這いになって偵察をしていた。
 僕を取り逃がしたのにも関わらず、ホルジオーネ側に動きはないようだ。
 普通なら歩哨を立てたりして、少しは警戒するだろうに。
 僕一人くらい、取るに足りない存在だと思われてるってことか。
 当たっているだけに腹は立たないが、男として少し複雑な気分にもなる。
「相手の姿が見えないからって、監視を怠ってると決めて掛からない方がいいな」
 同じく腹這いになったダブルオーが、自然な動きで僕の肩を抱いてきた。
 その手の甲をピシャリと平手打ちしてやる。
 くっ、今の動きはちょっと女の子っぽくなってしまったかも。
「ごめん、ごめん。つい、いつもの癖で」
 ダブルオーは嬉しそうにニヤニヤ笑いながら、はたかれた手の甲をさする。
 僕はムッとした顔でスパイ崩れを睨み、距離を取るため肘と膝を使って横移動する。

「で、どうして僕を助けてくれるの?」
 僕を助けることで、ダブルオーに何のメリットがあるのか。
 彼は国際手配されている殺し屋で、僕は官憲側の人間である。
 本来なら、僕は彼に助けてもらうどころか、とっくに消されてても不思議ではない。
 まさか本当に僕の体が目的じゃないだろうな。
 そりゃ、絶体絶命のピンチを助けてもらった時、ちょっとだけ胸がキュンとしたのは事実だけど。
 だからと言って、抱かれてもいいなんて思ったわけじゃない。
 ああ、こんなナリをしているのが全ての元凶だ。
 早くケリをつけて男の格好に戻らないと、このままじゃ本当におかしくなってしまう。

「言っとくけど、『君みたいなレディが困っているのを……』なんてのは要らないから」
 できるだけ冷たく、かつツンデレっぽくならないように努力する。
「うん、それもあるんだけど。このままだと帰りの足がないからねぇ。雇用主はあてにできなくなったようだし」
 確かに、マーサのところに出向いて、「用がないなら帰る。家まで送ってくれ」と言ったところで無駄だろう。
 バトルロイヤルを制し、契約寸前までいってた僕とシズカでさえ、理由もなく殺されかけたんだ。
 予選敗退した連中なんかは、問答無用で口封じされるに決まってる。
「生きて帰るには君のメイドを取り返し、島にいる敵を一掃しなくちゃ。あの娘の戦闘力、なかなか強烈だからなあ」
 性格はもっと強烈だけどね。

 ところでホルジオーネは、どの程度の戦力を島内に備蓄しているのか。
 この島が帝都を占領するための秘密基地だとすると、相当の戦力を隠していると考えられる。
「とにかく戦力を大幅にアップさせないと、この島に永住することになっちゃうぜ。まあ……」
「『君となら、それも悪くないかも』とかのお上手は、聞く耳もたないから」
 機先を制してやると、ダブルオーはやれやれという風に首を振って見せた。
「さて、そろそろ行くか。あのピエロちゃんに戻ってこられたらまずいんだろ」
 確かに、彼の言うとおりなのだ。
 このまま無駄に時間を費やせば、ジィナ嬢がティラーノの私設軍隊を率いて攻め込んでくる。
 そして、連中にホルジオーネ討伐の手柄を立てさせれば、帝都にティラーノの軍勢を常駐させる口実を与えてしまう。
 それを回避するためにも、どうしてもシズカに再起動してもらわねばならない。

「じゃあ、僕が正面から陽動を仕掛けるから、クーちゃんは搦め手から侵入して、メイドを奪い返してくれ」
 ダブルオーはタキシードの内ポケットから、銀色に輝くシガーケースを取り出した。
 蓋を開くと、時限信管と強烈な威力を秘めた爆薬がぎっしりと詰まっていた。
「こいつで大騒ぎを起こすから、その間にメイドの方を頼むよ」
 スパイ崩れはさわやかに笑うと、身を屈めた姿勢で丘を降りていった。
 どんな魂胆があるのか本音は分からないけど、助けてくれるってのなら利用させてもらおう。
 借りるとなれば、猫の手よりは遥かに頼りになるのは確かだし。

747:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:05:59.71 rXJOGTkB
 僕はダブルオーとは逆方向に丘を駆け下りた。
 教会の裏手へ迂回して、侵入口を見つけるのだ。
 途中から鬱蒼とした茂みをかき分けて先へ進む。
 教会の裏手はほとんど手入れが行き届いておらず、原生林並みに草木が茂っている。
 周囲からの目隠しにはなるが、進行速度は極端に遅くなった。
 足元が全く見えないので、ブービートラップでも仕掛けられてたら一巻の終わりだ。
 おそるおそる進むものだから、歩みは更に遅くなる。

 小枝とかに引っ掻き傷をつけられながら前進していると、ようやく教会の勝手口に辿り着いた。
 頑丈そうなオーク材のドアは、体当たりしようものならこっちがぶっ壊れそうだ。
 鍵が掛かっていたなら、そこでゲームセットになってしまう。
 そっとドアノブを回してみると、幸いなことに施錠はされていなかった。
 直ぐにでも忍び込みたいが、ここはダブルオーの支援を待つのが得策だ。

 待つことしばし、もの凄い轟音と共に地響きが伝わってきた。
 ダブルオーの陽動作戦が開始されたのだ。
 地響きが静まると、今度は腹に響くマシンガンの銃声が聞こえてきた。
 続いて、聞き覚えのあるワルターの甲高い銃声が交錯する。
 どうしたものかと躊躇していると、やがて銃声がボリュームダウンしてきた。
 射手たちが遠くへ移動を開始したのだ。
 僕が潜入しやすくなるよう、ダブルオーは敵を教会から引き離してくれている。
 今がチャンスとばかり、僕は教会内部へと突入した。

 食器や調理器具が散乱する厨房を駆け抜け、照明の落ちた廊下を突っ切る。
 再奥のドアを開けると、見覚えのある階段が目に入った。
 ここは礼拝堂の裏に当たる。
 僕はマーサとシズカが戦ったホールへと戻ってきたのだ。
 さて、シズカはどこに囚われているのか。
 マーサたちが戻ってくるまでに探し出し、蛋白燃料を注入してあげなければ。

 まずは2階からガサを掛けることにして、ギシギシ鳴る階段を駆け上がる。
 突き当たりにある客室のドアを開けるが、そこには誰もいなかった。
 それは想定内のことであり、ここへ来たのはシズカのメイド服を回収するのが目的だ。
 これを着用させれば、彼女の防御力は格段に向上する。
 たとえ戦車砲の直撃を喰らっても、へっちゃらなんだから。
 ちょっと着てみたい誘惑に駆られるが、僕の体では着弾の衝撃までは受けきれないから無意味だろう。
 仕方なく、メイド服を手にしたまま、廊下に面したドアを次々に開けていく。
 だが、全ての部屋を回っても、シズカの姿はなかった。

 もしかして屋根の十字架に磔にされているのではと窓から身を乗り出すが、残念ながらそんな嬉しい光景は見られなかった。
 やはり一階なのかと思って隈なく確かめるが、厨房とホールの他はフロアの全てが礼拝堂になっている。
 となると、どこかに地下へと続く通路があるはずだ。
 焦りながら隠し扉を捜していると、天井からいきなり声が降ってきた。

『ウォーニング……ウォーニング……』
 飛び上がるほど驚いたが、それはスピーカーから流れ出た合成音声だった。
 嫌がらせのようなタイミングに憤ってみたが、本当に驚くのはここからだった。
『処理モードへ移行。地下処理施設は10分後に作動します……作業員は速やかに退去してください……』
 抑揚のない警告音声が、僕を死ぬほど驚かせた。
 続いて足元から微かな振動が伝わってくる。
 地下施設があるという僕の予測は的中したのだが、それを喜んでいる場合ではない。
 奴らは地下の処理施設で何かを処分しようとしている。
 どう考えても嫌な予感しかしない。

748:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:06:57.89 rXJOGTkB
 鳴り続けている警告ブザーが耳障りで、危機感は嫌でも盛り上がる。
「ちくしょう、どこだっ。どこかに地下への入り口があるはずだ」
 頭をフル回転させて考えてみるが、僕の頭に詰まっているのはコミックとかサブカルとかのくだらない知識だけだ。
 その中から教会に関する知識、しかもシリアスな傾向に絞って思考を巡らせる。
 すると今まで見えなかったものが見えてきた。
 こういうときに怪しいのは懺悔室だ。
 外部から隔絶された密室性は、秘密を隠匿するにはもってこいなのだ。

 僕は懺悔室のドアを蹴り開け、中へと飛び込んだ。
 怪しげなカーテンを剥ぎ取ると、そこに通信機が隠されていた。
 マーサはこれを通じてスポンサーたちと話をしていたのだ。
 こうなったら誰でもいいから、助けてくれる人にすがるしかない。
 助力を得られるのなら、先っぽくらいは入れさせてあげても─よくないっ。
「誰かっ、誰か聞こえますかっ?」
 僕は無線機のスイッチを入れ、取り敢えず誰でもいいから助けを呼ぶことにした。
 すると、当たり前だがホルジオーネ側に傍受されてしまった。
 連中の使ってる周波数に固定したままだったのだから、これは当然の失態だわ。

『あら、あなたなの?』
 モニターに写ったのは、醒めた目をしたマーサの顔だった。
『そんなところにいたのね。別に捜してたわけじゃないけど』
 やっぱり、僕なんかヤブ蚊ほどにも危険視されてなかったんだ。
 分かってたけど傷つくなあ。
『この島に向かってくる飛行物体をレーダーが捉えたの。そちらの対応が優先事項だから』
 それはジィナ嬢が率いる、ティラーノの空挺部隊に違いない。
 マーサは僕よりも、そちらを危険と判断したのだ。
 教会がこうも見事に無人なのは、ダブルオーの陽動のお陰だけじゃなかったんだ。

「シズカはどこだ。彼女を返せっ」
 僕はビビりそうになるのを必死でこらえ、モニターの中のマーサを睨み付けた。
『残念だけど、あなたのお友達は処分させてもらうわ』
 じゃあねと無線を切ろうとするマーサに必死で食い下がる。
「どうしてそんなことを。シズカが何をしたっての? こっちはアンタに望まれてやって来たんじゃないか」
 都知事を暗殺する殺し屋を募集しておいて、応募したら処刑するなんてのは納得できない。
 辻褄の合う理由を聞かないことには、報告書も書けないじゃないか。
『都知事を殺せと言われ、軽々しく請け負うような手合いは危険なの。そういう危険因子は排除しておくに限るわ』
 そりゃ確かにおっしゃるとおりなんだけど、それは僕みたいな官憲側の台詞だろ。
 都知事を殺せって、軽々しく命じるような危険人物には使ってもらいたくない。

『どうでもいいわ、そろそろ処理施設が稼働するころだから。煮えたぎる超酸のプールに浸かればウーシュだってお終いよ』
 なんだって。
『あなたもこれで目が覚めるでしょうから、普通の女の子として生きることね。素敵な恋をしなさい』
「おいっ、ちょっと待てぃ」
 いろいろ突っ込みを入れようとした途端、モニターは途切れてしまった。
 同時に鳴り続けている警告ブザーがオクターブを上げ、僕の焦燥感を煽り立てる。

 強烈な酸に漬け込まれたら、さすがにシズカも無事では済まない。
 生体表皮はアッと言う間に溶け落ち、剥き出しになった装甲とて耐え切れまい。
 シズカは溶けて、この世から完全に消滅してしまうのだ。
 ダメだ、画を想像するだけでトラウマになりそうだ。
 一刻の猶予もなくなったので、手当たり次第にその辺のスイッチを押しまくる。
 すると、どれが当たりだったのか分からないが、大きなオルガンがスライドを始めた。
 ぽっかり空いた空洞に飛び込むと、地下へと続く階段があった。
「シズカ、待ってろよ」

749:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:07:43.35 rXJOGTkB
 転げるように駆け下りると、そこはディスポーザーの制御室になっていた。
 メーカーの開発部なんかが使っている、大型廃棄物を処理する施設だ。
 新製品の機密を産業スパイから守るため、試作品とかを処分するのに用いられている。
 おそらく、この床の下に処理プールがあるのだろう。
 そこに廃棄物を収容し、高温のフッ酸を満たして撹拌するのだ。
 メーカーの処理施設は、大型のエアカーすら数十分で跡形もなく消し去ることができるという。
 シズカ程度の大きさなら、アッと言う間に溶けきってしまうだろう。
 とにかく、急いで酸の注入を止めなければならない。

 制御板を出鱈目に押してみるが、2度目のラッキーはなかった。
 産業スパイ対策で、一度スタートすると強制終了できない仕様になっているのかもしれない。
「そうだ、フッ酸の注入用パイプを……」
 タンクから通じているパイプのバルブを閉めれば、手動で止められるかもしれない。
 そこらのパネルとか、開きそうなところは片っ端から開けてみる。
 だが、それっぽいバルブやスイッチは見つからない。
 続いて床を這いずり回り、継ぎ目らしいものを捜す。
 すると、埋め込み式の取っ手が見つかった。
「これだっ」
 ボタンを押すと取っ手がせり上がり、それを握って力一杯持ち上げる。
 僕がそこに見たものは─

「シズカァーっ」
 僕の眼下、5メートルほど下の床に、貞操帯のみを身につけたシズカが横たわっていた。
 直ぐに飛び降りようとしたが、無情にも3本の鉄格子が邪魔して抜けられない。
 太さ3センチはあろうかという鉄格子は、腐食防止のテフロン加工が施されている。
 もちろん僕の力ではどうにもならない。
「シズカっ、起きろっ」
 僕の呼びかけにも、シズカは反応を示さない。
 硬直してピクリとも動かないその姿は、輪姦の挙げ句に惨殺された死体を思い起こさせた。
 お尻にねじ込まれたコードが、傍らに置かれたコンデンサに繋がっている。
 アレのせいで、シズカは活動に必要なエネルギーを蓄えることができないのだ。

「頼むっ、シズカ。頼むから目を醒ましてくれっ。もう時間がないんだっ」
 僕にできることは必死で呼び掛けることだけだ。
 鉄格子を握り締め、力一杯揺すってみる。
 この時ほど、自分の非力を恨めしく思ったことはない。
 警告ブザーのトーンが今一度変わり、絶望感がのし掛かってくる。
 同時にツンとした臭いが、鼻孔の奥を刺激し始めた。
 プールの四隅に開けられた注入口から、フッ化水素酸の溶液が噴き出してきたのだ。
 このままではシズカが溶けてしまう。

 幾度となく僕の窮地を救ってくれた命の恩人。
 押し付けられた無理難題を、一緒になって遂行する、頼りになる相棒。
 そして、肉親がいない僕にとって、この世でたった1人の家族。
 そんな大事な存在が、目の前で消え去ろうとしている。
 手を伸ばせば届きそうなところにいるのに。

 フッ化水素が眼球の水分と結合し、僕の目を灼く。
 涙が溢れかえり、前が見えなくなった。
 自分が非力なため、掛け替えのないパートナーを失ってしまうのだ。
 鉄格子を握り締め、今一度渾身の力を込めた。
「こんなの嫌だぁーっ」
 僕が絶叫した時だった、奇跡が起きたのは。

750:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:09:11.20 rXJOGTkB
 たった今までビクともしなかった鉄格子が、熱せられた飴細工のようにひん曲がった。
「…………?」
 僕は自分の両手を目の前にかざして凝視した。
 自分の起こした奇跡が信じられず、僕はしばし思考停止した。
 嘘みたいなできごとであるが、これは紛れもない現実だ。
「そうだ……シズカっ」
 火事場の馬鹿力でも、夢でも嘘でも構わない。
 たとえ何かの罠であっても関係ない。
 僕はねじ曲がった鉄格子の隙間から、処理プールへ向かって身を躍らせた。

 5メートルの落差があったのにも関わらず、足首と膝の関節が上手く機能してほとんどショックを感じない。
 シズカに駆け寄り、貞操帯の鎖を引きちぎる。
 そして、電気エネルギーを横領しているコードをアヌスから引き抜いてやる。
 ボディを抱き上げると、間一髪でフッ酸の溶液がテフロン製の床を舐め埋め尽くした。
 僕が履いているシンセレザーのローファーがブスブスと煙を上げる。
 この靴ではそう長いこと保たないようだ。

「ふぅ……」
 深い溜息をついて首を振ったら、嫌なものが視界に入ってきた。
 壁に埋め込み式の檻があり、中に双子のチャイニーズニンジャが囚われていたのだ。
 だから言わんこっちゃない。
 彼女たちはマーサの触手に敗北し、シズカと一緒に処分されることになったのだろう。
 姉妹は無言のまま、恐れと憎しみと、そして期待の籠もった目で僕を凝視している。
 助けを乞わないところを見ると、自分たちが僕に何をしたのかくらいは覚えているようだ。
 こんな連中を助ける謂われはないし、助けてもまた襲ってくるおそれがある。
 けど─やっぱり、女の子がこんな残酷な方法で殺されるのを黙って見逃すわけにはいかない。

 気が付くと、僕はコンパネをぶん殴り、分厚い水密扉ごと中にある開閉ボタンを押していた。
 鉄格子がせり上がったが、シュガー姉妹は信じられないものを見たように硬直していた。
 驚いたのはハンマーパンチにか、お人好しな行為の方にか。
 それとも両方になのか。
「来いっ」
 僕が身を屈めて急かしてやると、シュガー姉妹はようやく我に返った。
 2人は檻から飛び出すと、僕の肩をジャンプ台にして天井の穴から脱出する。
 さすがはクノイチ、鮮やかな身のこなしだった。

 僕はシズカを背中に担ぎ直すと、膝を畳んで天井を睨み付ける。
 何故だか知らないが、今の僕ならあそこまで飛べると確信していた。
 理屈じゃない、体そのものがそう語っていた。
「タッ」
 掛け声とともに膝のバネを開放した次の瞬間、僕はシズカを背負ったまま制御室に飛び込んでいた。

 薄情にもシュガー姉妹の姿は既に消えていた。
 否、最大のチャンスにも関わらず、襲ってこなかっただけでもよしとするか。
「よし。シズカ、逃げるぞ」
 僕はシズカを横抱きにしたまま階段を駆け上がった。
 一階へと戻った僕は礼拝堂から厨房へ抜け、そのまま教会裏の茂みへと飛び込んだ。
 茂みを突っ切り、ダブルオーと別れた丘の上まで一気に走る。
 ここまで来れば取り敢えず安心だろう。

 何とか助かったらしい。
 ホッと溜息を漏らした途端、急にシズカが重くなってきた。
 これは、こなきじじいにおぶさられた気分だ。
 いや、シズカが重くなったんじゃなく、僕の力がなくなってきたのだ。
 たまらず、その場につんのめってしまう。
「なんて重いんだ、君は」
 大の字になってハァハァ言ってると、ジワジワと笑いが込み上げてきた。
 安堵感と達成感が混じり合い、僕の感情は笑いの形を取るしかなかったのだろう。
 他に選択肢があるものか。

751:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:12:04.84 rXJOGTkB
 しばらくゲラゲラ笑っていると、ようやく気持ちが落ち着いてきた。
 さあ、そろそろお待ちかね、蛋白燃料の補給シークェンスに移行するか。
 ジィナ嬢が率いる空挺部隊が到着する前に、ホルジオーネの兵力を壊滅させておかないと。
 ティラーノに帝都防衛の手柄を与えてなるものか。
「シズカ、するぞ」
 シズカはまだ起動していないが、蛋白燃料を先行補給することにより再起動と同時にフルパワーを発揮することができる。
 紳士としては不当な振る舞いになるが、今は不必要な感情移入をしている場合ではない。
 ただ彼女の中に放出すればいいという、準強姦に相当する睡姦プレイになるのも仕方がない。

 僕はスカートの裾をたくし上げ、パンティをずり下げて男の証を露出させた。
 次いでシズカの両足首を持ち、左右に大きく広げさせる。
 無抵抗の関節がグニャリとした感触を伝えてくる。
 うわ、検死で遺体を取り扱ってる時の気分だわ。
 シズカがピクリとも反応してくれないのもよくない。

「た……勃起たない……?」
 こんな肝心なときに、補給ホースが言うことを聞いてくれない。
 まさか女装が過ぎて、ナニが役に立たなくなったんじゃないだろうな。
「冗談じゃない」
 必死で扱いてみるが、分身はウンともスンとも反応しない。
 シズカの股間に顔を寄せ、蛋白燃料の補給口をVの字にした指で割ってみる。
 まじまじとガン見してやるが、如何にも作り物じみた感じがして余計に萎えてきた。
 ウーシュタイプのそこは、グロさを軽減するためディフォルメを施されている。
 そんなファンタジー設計が、今は仇になっている。

 くっ、こうなったらとにかく突っ込んで、無理やりにでも発射するしかない。
「シズカ、ゴメンな」
 僕はシズカの股の間に割り込み、萎えたホースを注入口にあてがう。
 そして柳腰に手を回し、強引に貫こうと抱きしめる。
 ダメだ、血の通っていないヤワなモノじゃどうにもならない。
「おいっ、シズカ。いい加減で起きてくれ」
 僕は必死で呼び掛けてみるが、シズカは薄目を開けたまま無表情で硬直している。
 こりゃ、いよいよ変死体だ。

「くそっ、これは死体なんかじゃない、ただのダッチワイフと思えばいいんだ」
 自分に言い聞かせようとした途端、僕は気付いてしまった。
 あまりにもシズカを人間として見てきたせいで、彼女を物として扱うことに心理的な抵抗を感じているのだ。
 彼女に対してダッチワイフじみた行為をすることに、自然にストップが掛けられているのだ。
 なんてデリケートにできてるんだ、僕のハートは。

 頭を抱えて自己嫌悪する僕を我に返らせたのは、いきなり轟いた爆発音だった。
 僕はパンティをはき直し、身を屈めたまま丘の頂へと這い寄る。
 慎重に向こう側を見下ろすと、とんでもない光景が目に飛び込んできた。
 無骨な二足歩行型の自動歩兵が20体、整然と隊列をなして行進している。
 見たことのない機種だが、あれはホルジオーネのオリジナルマシンなのだろうか。
 体高は5メートルほどで、右手にガトリングガン、左手にミニカノン砲を装備している。
 先程の爆発音は、あのカノン砲の炸裂音だったようだ。
 今まさに先頭の1体が、左腕を振りかざして砲撃態勢に入っている。
 その砲身の先には、必死で逃げていくダブルオーの後ろ姿があった。

752:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:13:00.79 rXJOGTkB
 あの人は律儀にも、まだ囮の役目を果たしてくれているんだ。
 僕がシズカを助け出し、再起動させると信じて。
 なのに、僕ときたらこの体たらくだ。
 ついさっき、火事場の馬鹿力を出したせいなのか、むしろ普段より体に力が入らない。
 情けないが、いっそ本当に男の娘になって、ダブルオーに抱かれてやるくらいしか、彼に報いる手段はないのか。
 ああ神様、僕に彼を救う力をお与えください。
 今一度、先程のように奇跡を─。
 敬虔な信者でもない僕が祈ったところでどうにもなるまい。
 けど、履いてるパンティは、ガチガチのクリスチャンのサトコから借りてるものなんだ。
 せめてパンティ分くらいの奇跡を─。

 パンティの御利益があったかどうかは知らないが、僕の祈りは通じた。
 奇跡は真っ青な空の片隅に、一点の染みとなって現れたのだ。

 最初、ゴマ粒ほどだった染みは、見る間に小豆へと膨らむ。
 それが大豆になるころには、けたたましいローター音が響き始めた。
 ヘリだ、しかもティラーノの空挺輸送ヘリじゃない。
 見覚えのあるあの青い機体は、警視庁航空隊が所有する『はやぶさⅡ』だ。
 どういうわけか、夢にまで見た援軍がやってきたのだ。
 僕がこの秘密任務に就いていることは、都知事と側近しか知らない。
 おそらく、白川都知事は僕達を遠巻きに監視させていたのだろう。
 そして頃合いよしとして、蒔いた種の収穫にきたのだ。

 援軍の登場は嬉しいが、タイミングが遅いし、規模が小さすぎる。
 どうせなら武装機動隊の2、3個大隊を送ってくれないと、自動歩兵軍団に返り討ちされてしまう。
 あんな6人しか乗れない小型ヘリを派遣して、この状況をどうにかできるとでも思っているのか。
 だが、僕の心配は杞憂だった。
 たとえ乗員が少数でも、総合戦力では全然負けていなかったのだ。

 地上50メートルでホバリングを始めたヘリから、何かが投げ落とされた。
 小型の高性能爆弾だと思って逃げかけたが、それ自体は爆発物ではなかった。
 やけにヒラヒラした布きれに包まれたその物体は、僕もよく見知った存在である。
 トモエ01型、戦闘支援バトルドロイドの1号機。
 ポンタ技研が開発した最新鋭のロボコップだ。
 見た目には10代前半のゴスロリ少女だが、侮ってはいけない。
 あのちっちゃなボディには、ロボット先進国の最先端テクノロジーが惜しげもなく注ぎ込まれている。
 おそらく、戦闘用としては世界で最も優れたアンドロイドなのだ。

 トモエは降下しながら、フリルが目いっぱい付いた日傘を開いた。
 もちろん、彼女は日傘にパラシュートの役目を期待したのではない。
 自動歩兵が撃ち掛けてきたガトリングガンを遮るため、補助装甲を展開させたのだ。
 トモエのパラソルは、高速徹甲弾をことごとく弾き返してしまった。
 シズカのメイド服にも劣らぬ、素晴らしい防御力だ。
 そのまま自由落下したトモエは、地面に激突する寸前に特殊装備を始動させた。
 厚底ブーツに組み込まれた、熱核ジェットホバーを噴射したのだ。
 見えないトランポリンに着地したように、トモエの体が空中で柔らかく上下する。
 地上10センチのところで落ち着いたトモエは、日傘を投げ捨てて、背中に背負っていたM66機関砲を腰溜めに構えた。
 そして、軽い前傾姿勢を取ると、地面を滑るようにダッシュを開始した。

 目の覚めるような猛烈な加速力だ。
 ガトリングガンの自動照準が追いつかず、トモエのかなり後ろで着弾の砂煙が上がる。
 照準システムが誤差を修正したころには、彼女は鋭いターンでコースを変えてしまっている。
 エアスケートのスピード競技を見ているような、鮮やかなコーナリングだ。
 トモエは自動歩兵の背後に回り込むと、高速で横滑りしながらM66をぶっ放した。
 ドムドムドムッという重低音が響き渡り、自動歩兵たちの背中に小爆発が連続する。
 20ミリ弾が薄い背面装甲を貫通し、ボディの内部で炸裂しているのだ。
 たちまち3台が前のめりになって機能を停止する。

753:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:15:39.66 rXJOGTkB
 のろまなロボットたちが振り返ったときには、トモエの姿は既に消えていた。
 片足を後方に高々と上げたアラベスクスパイラルで、再び連中の背後に滑り込んでいたのだ。
 火力だけじゃなく、芸術点も素晴らしく高い。
 ドムドムドムッとM66が火を噴き、今度は5台のロボットが黒煙に包まれた。
 さすがは戦車に搭載し、装甲車や軍用ヘリを攻撃するサブウェポンだけのことはある。
 威力は凄いが反動のきついその重機関砲を、トモエは完全にコントロールしていた。
 この重火力と高機動力の両立こそが、ポンタ技研が彼女に求めたものだっだのだろう。

 ホルジオーネの大仰な自動歩兵どもは完全に翻弄され、なす術もなく片っ端から葬られていく。
 完全なワンサイドゲームじゃないか。
 トモエは時折ジャンプをしたり、スピンを入れたりする余裕さえある。
 あれは“特定の誰か”に対して行っている、精一杯の自己アピールなんだろうな。
 なんにしても、トモエ01型が従来のロボット兵器20台以上の戦闘力を持っていることはよく解った。

 トモエがすべての自動歩兵を屠り去るのを待って、上空に待機していた『はやぶさⅡ』が降下してきた。
 ローターが止まりきる前に、紺色の出動服を着た男が飛び降りてくる。
 第0機動隊の隊長、ナショーカ・キッソ警視正だ。
 トモエはマスターである彼に褒めて貰いたくて頑張ったのだろう。
 両手を大きく広げてニコニコ顔で滑り込んできた彼女を、ナショーカは一顧だにしなかったのだが。
 彼はヘリの中から呼び掛けられ、そちらへ向き直ることを優先したのだ。

 昇降口に立っているのは、なんとあの女都知事だった。
 彼女は自分を暗殺しようという犯人の顔を一目見てやろうと、野次馬根性から御出座してきたのだ。
 警視庁で最も頼りになる、最強のボディガードたちを引き連れて。
 白河法子は右手を差し出して、エヘンエヘンと咳払いを繰り返す。
 ようやく気付いたナショーカがその手を取り、心底から不本意そうにエスコートする。
 この人は、ホントに女嫌いというか、女のあしらいに疎いんだ。
 イケズな女都知事は、わざとらしく「きゃっ」と黄色い声を上げながら地面に飛び降りた。
 それを見ているトモエは完全に膨れっ面で、今一人の乗員、ナースのジョオ・ウィッチは苦笑いするしかないようだ。

 どうやら無事に大団円を迎えることができるらしい。
 ホルジオーネの自動歩兵軍団は壊滅し、都知事の暗殺計画は未然に潰せた。
 ジィナ嬢の到来は間に合わず、ティラーノの私設軍隊は出番を奪われた形になった。
 連中は帝都に兵を入れる口実を失ったのだ。
 そして、この僕は大事なシズカを取り戻すことができた。
 そのシズカを振り返ると、まだ再起動を果たしていなかった。
 今回は随分と無理をさせたから、ゆっくり休ませてあげよう。

 さて、白河都知事に任務終了の報告でもするか。
 都知事暗殺は未然に防げたが、肝心のホルジオーネには逃げられてしまった。
 ミッション達成率は50パーセントだが、連中がお天道様の下に現れることは二度とないだろうから、それでよしとするか。
 僕は丘を下りながらそんなことを考えていた。
 しかし、現実というものは、いつだって僕の思考を遥かに超えている。
 逃げ去ったはずのマーサ・ホルジオーネが、白河都知事の目の前に現れたのだ。
 夫のヒゲネズミを従者のように伴い、いけしゃあしゃあと、悪びれもせず。

 トモエとジョオ・ウィッチが、サッと都知事の前に立ちはだかる。
 ナショーカも2人を見て、憎々しげに顔を歪ませた。
「あら、何かご用かしら?」
 警視庁警備部でも指折りの強者たちに囲まれて、都知事は余裕満々だ。
 けど、トモエたちはマーサの奥の手を知らない。
 あのメカ触手で奇襲されれば、トモエだって後れを取るかもしれないのだ。
「ヤバいっ」
 僕がダッシュしようとしたときであった。

754:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:16:21.12 rXJOGTkB
「初めまして、都知事閣下」
 マーサが修道服の裾をつまんで、深々とお辞儀をしてみせた。
 どうなってるのかさっぱり分からない。
 この女は都知事を暗殺するため、殺し屋を雇おうとまでしたんじゃないか。
「あなたが今回の黒幕かしら? あたしの暗殺は失敗しちゃったようだけどぉ」
 都知事は愉快そうにクスクス笑い声を立てる。
「いえ、ミッションはすべて順調の内に完了しましたわ」
 マーサは悪びれもせず胸を張った。
 都知事は「どういうことかしら」という風に小首を傾げ、マーサに先を促した。
「これをお見せしたかったのですわ、親愛なる都知事閣下」
 マーサは手にしていた報告用紙を都知事に向かって突き出す。
 トモエが反射的に飛び掛かろうとするのを制し、都知事はA4サイズの印刷物を受け取った。

 都知事が紙面に目を通し、ウンウン頷くようにして内容を確認する。
「閣下を暗殺するための出資を募ったところ、議会と財界からかなりの賛同を得られましたわ。これはそのリストです」
 マーサが口頭で補足説明する。
「次の選挙で閣下に敵対するつもりの造反者です。通話の交信データと、指定口座への振込み記録も押さえております」
 マーサに「ほらっ」と急かされて、ヒゲネズミがメモリーチップを差し出す。
 その中には、マーサと依頼者たちの会話の全てと、振込みに至る金の流れが克明に記録されているのだろう。
「お好きなように使ってもらって構いませんぜ」
 ヒゲネズミが卑屈な笑顔を見せる。
「ついでに、金次第で姐さんを狙おうっていう不届きな連中も、この際まとめて始末しときやしたから」
 僕たちがマーサに殺されかけた訳が、これでよく理解できた。
 マーサは最初から都知事の味方をするつもりで、僕たちはその都知事の敵たる存在だったのだ。

「わぁ~、サンキュウ」
 白河法子はネズ公からチップを受け取ると、満足そうに笑みを浮かべた。
 アレが表に出りゃ、政敵たちの政治生命は絶たれたも同然だ。
 私欲から、現役の都知事を亡き者にしようと企んだ、何より明白な証拠なんだから。
 アレが公表されずに済むのなら、連中は都知事のどんな要求だって無条件で飲むだろう。
 これで議会における都知事の権力が、より盤石なものになるのは疑いようがない。

「あたしにとっては何よりのプレゼントだわ。で、何がお望みなのかしら?」
 都知事はホクホク気分を隠そうともせず、マーサに問い掛けた。
「今度の件であなた様の足下に隙間が生じましたなら、ぜひ私の亭主をお引き立ていただきたくお願い申し上げます」
 つまり、裏切り者の側近を一人切り捨て、空いたポストにヒゲネズミを付けてくれって頼んでるんだ。
「う~ん、どうしよっかなあ」
 都知事は値踏みするように、ヒゲネズミの貧相な顔を睨め回す。
「こう見えても結構お役に立ちますぜ。肩揉みでも乳揉みでも、何なりとお申し付けを」
 ヒゲネズミが誇らしげに身を反らし、マーサが彼の緩んだ頬を思い切り引っぱたく。
 都知事はたまらず噴き出した。

「まあ、考えておくわ。あなた、お名前は?」
 名を問う都知事に対し、本人より先に答えた者がいた。
「モトリオ・ミナモンテス……我がミナモンテス家の当主にして、一族の面汚しだ」
 ナショーカ警視正がこめかみをピクつかせながら吐き捨てた。

755:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:17:36.56 rXJOGTkB
 こんなに驚いたことはなかった。
 この面倒臭がりの薄汚れた男が、こともあろうにティラーノ一族と世の覇権を競い合う、ミナモンテス家の当主だというのだ。
 こりゃ、ティラーノにやられて没落するわけだわ。
 あのキーヨやコリーン嬢に比べて覇気がなさ過ぎる。
 従兄弟のナショーカ警視正に軽蔑の眼差しを向けられても、「よぉっ」と手を挙げて全く意に介さない。
 何を勘違いして大物気取りしてるんだ、と思った瞬間、僕ははたとあることに気付いた。

 あの当時、ミナモンテス家の主立った者は、不慮の事故や急病で次々と倒れていった。
 アルファケンタウリへの移住を目的に計画された、ミナモンテスの宇宙開発事業も相次ぐ事故で頓挫した。
 これにより、ミナモンテスは世界政経の中枢から完全に一掃されることになった。
 一連の事件が政敵ティラーノによる破壊工作だとすれば、次期当主のモトリオも間違いなく殺されていただろう。

 あの時、モトリオが難を逃れるため、敢えて取るに足りないクズを演じていたとすれば─。
 全てがティラーノに逆襲する機会を待つための、巧妙な芝居だったとすれば─。
 そう言えば、僕は初対面のときからヒゲネズミに得体の知れない大物感を抱いていた。
 それに、マーサみたいな女性を妻として娶っている、奇跡のような事実がある。
 あの他人を惹き付けるカリスマ性にマーサの冷徹な頭脳が加われば、ティラーノにとって脅威になるかもしれない。
 それに、極東八家たるホルジオーネは、この土地にそれなりの勢力を持っている。
 仮に残る七家を全部味方に付けたなら、ネズミは強力な後ろ盾を得ることになるのだ。
 僕はその場を辞して去っていく夫妻の後ろ姿を見送りながら、慄然としたものを感じていた。

 危険が完全に去ったのを見届けてから、僕は都知事のところへ歩いていった。
「あら、無事だったの?」
 白河都知事は僕に気付くと、満面の笑みを浮かべて迎えてくれた。
 そりゃ嬉しいだろう。
 自分を狙った暗殺事件の黒幕を燻り出そうとして、思いも掛けなかった大漁にありついたのだから。
 こっちはあんまり無事って訳じゃないけど。
 顔中煤だらけだし、わざわざ仕入れた制服もあちこちボロボロだ。

 ここで予想外の緊急事態が発生した。
 ナショーカ警視正が近寄ってきたと思ったら、僕にハンカチを差し出したのだ。
「お、お怪我はありませんか?」
 ぎこちなく尋ねるその声は、精一杯のいたわりと誠意に溢れていた。
 嘘だろ、頬もほんのり赤く染まっているじゃないか。
 僕はこのとき、全身の肌に寒イボが立つのを感じていた。
 ナショーカは女嫌いで有名だが、軟弱な男はもっと嫌いなのだ。
 目の前にいるのが女装した僕だと知ったなら、彼は恥ずかしさのあまり憤慨するだろう。
 そして、怒りにまかせて僕を八つ裂きにしてしまうに決まってる。
 だから僕は俯いたまま、小さく頷くしかなかった。

 気が付くと、トモエが敵愾心剥き出しの表情で僕を睨んでいた。
 マスターに好意を寄せられている僕に、猛烈な嫉妬を感じているのだろう。
 憎々しげに僕の顔を覗き込んだトモエが、目と口を大きく開けたまま硬直した。
 そして僕を指差してプルプル震えている。
 やっぱり気付いてくれちゃいましたか。
 僕は胸の前で小さく手を合わせ、トモエとの友誼におすがりするしかなかった。

「見た? 見たぁ? あのナショーカがほっぺた赤くしてたわよ、あのナショーカがぁ」
 糞都知事が僕の肩にすがり付き、耳元でキャハキャハと笑う。
 ナショーカが何も知らず僕に一目惚れしたらしいことも、僕がそれに困惑してることも、この女は楽しくてならないのだ。
「だ、黙ってて……くれますよね……」
 僕はとうとう生殺与奪権まで、この悪徳都知事に握られてしまったのだった。

756:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:18:20.78 rXJOGTkB
 悪夢のような潜入捜査はこれで終わりを告げた。
「女装だけは二度とするまい」
 そう心に誓う僕だったが、この特技がずっと後になって僕の命を守ることになろうとは─。
 さすがにこのとき気付くはずもなかった。

                               * * *

 島から帰った僕は、パンティ泥棒の罪でサトコから死ぬほどボコられた。
 無事に再起動を果たしたシズカが、助け船を出してくれなかったのは言うまでもない。

 そのシズカだが、胸元の肌があちこち痣になっただけで、機能に障害は出なかった。
 焼け爛れた人工皮膚だが、これは思いも掛けぬ大漁に気をよくした都知事が修理を約束してくれた。
 今回のことで彼女の懐に幾ら入ることになるのか、僕なんかには想像も付かない。
 人工皮膚の張り替えにはとんでもない修理費が掛かるのとのことで、警視庁の予算は付かなかった。
 それを都知事が私財をなげうって直してくれるって、美談の図式になっている。
 これにより不人情な警視庁の株は下がり、都知事はまた人気を上げた。
 本当に、どう転んでもタダでは起きない女だよ。
 まあ、今回のシズカはそれだけの活躍をしたのだから、遠慮せずにご褒美を受け取るといい。
 ドイツ本社から修理キットが送られてくるまでは、痣をファンデーションで隠してもらわなくてはならないが。

 僕はシズカの様子を見ようと部屋のドアを開けた。
 すると、座って何やら作業をしていたシズカは、慌てたように向こうを向いてしまった。
 そして、何かを僕の目から隠すように、床に身を伏せる。
 前をはだけさせていたことからして、ちょうど痣を隠す作業をしていたのか。
「どうしたんだよ、シズカ。ちょっと具合を見てあげよう」
 気にすることはないと、僕はファンデーションの乗りを確認しようとした。
「いい……なんでもないから……」
 シズカは珍しく気まずそうに、身を小さくして屈み込んだ。
 何を今さら恥ずかしがってるんだ。
 そうまで拒絶されると、こっちも意地でも見てやろうという気になる。
「遠慮するなって。見せてみろよ」
 僕はシズカの肩を持って身を起こさせようとするが、彼女は頑なに拒み、僕の手を振り払おうと肩を揺すった。
 その途端、シズカが隠していたものが、身の下から転がり出てしまった。

「えっ、練乳?」
 それを拾ってみると、市販されている缶入りの練乳だった。
「返してっ……」
 シズカが身を起こした拍子に、身を挺して隠していた残りのものが全部転げ出る。
 クリームのパックにロングライフミルク、それに計量カップに攪拌機─。
「お、おい……シズカ……」
 よほど見られたくなかったのか、シズカは真っ赤になって涙ぐんでいるようだ。
 シズカは使い切ってしまったアシッド・ストームのタンクに、甘くて美味しい合成ミルクを補充していたのだ。
 こっそり準備しておいて、後で僕に飲ませて驚かせるために。
 それが、恥ずかしくも仕込みの段階でばれてしまったのだ。

「とんだ変態野郎ですね……この糞ご主人様……」
 うわ、悔し紛れに毒舌メイド属性が出たよ。
 そんなのプログラムされてないのに。
「いい……クローには飲ませてあげない……から……」
 シズカは怒ったようにそっぽを向いてしまった。
「いや、飲みたいよ。ちょっと飲ませて」
「絶対に……いや……」
 僕はプルンと飛び出したおっぱいに口を近づけるが、シズカは身をよじって拒絶する。
「いいじゃん。ちょっとだけ」
 なんてイチャイチャして、なし崩しにエッチなことにもつれ込もうと企んでいると─。

「奥方さま。ちちくりあってるでゴザルっ」
「ゴザルっ」
 ミニの着物を着たクノイチが天井から飛び降りてきた。
 しまった、こいつらがいるのをすっかり忘れていた。

757:雲流れる果てに…18 ◆lK4rtSVAfk
14/05/26 00:19:02.38 rXJOGTkB
 シュガー姉妹は僕たちが島から帰ってきて直ぐ、この独身寮に姿を現せた。
 都知事は僕と停止中のシズカ、それに僕の協力者たるダブルオーを回収した後、帝都に向けてヘリを発進させた。
 シュガー姉妹はヘリが離陸する隙を狙い、ランディングギアに飛び移ったという。
 そうやって島を脱出した姉妹は、僕をストーキングして寮に忍び入ったってわけだ。

 最初2人を見たとき、しつこく決着をつけにやって来たのかと思った。
 しかし事情は少し違っていた。
 彼女たちは僕が垣間見せた体術や女装を、本場のニンポーだと勘違いしていたのである。
 戦わずに逃げ回っていたのも彼女たちを油断させるための演技で、殺人ピエロも勿論、僕の配下ということになっている。
 挙げ句、僕をニンジャマスターだと誤解するに至ったのだ。

「我ら、真に忠節を尽くすに値する主君を捜していたでゴザルっ」
「是非とも殿の元で、忍び働きいたしとうゴザルっ」
 このまがいもんのクノイチたちは、なんと僕の手下として働きたいと申し出たのだ。
 これに対するサトコの回答は明解だった。
「捨ててらっしゃい、今すぐにっ」
 姉妹を野良猫みたく扱うサトコもどうかと思うが、2人の無神経さはそれを上回っていた。
「なれば奥方さまの配下として忠節を尽くしとうゴザル」
「いやん、奥方さまなんて……そんなんじゃぁ……」
 たった一言で陥落したサトコは、身をクネクネとよじらせてOKしてしまった。

 というわけで、リンとレイのシュガー姉妹は、僕の部屋の屋根裏に住み着くことになった。
 そして僕がこっそりシズカとイチャつこうとすると、即座にサトコへ通報してくれる。
 まったく、ありがたい同居人が増えたもんだと悲しくなる。
 そんなこんなで一段と騒がしくなった僕の周辺だが、もっと気が重たくなる懸案事項が残っている。
 シズカを助け出すときに発揮された、あの火事場の馬鹿力のことだ。

 あんな常軌を逸した力を生身の人間が出せるわけがない。
 それに、火事場の馬鹿力なんてのは、気がついたら信じられない結果が出てたって類のものだ。
 決して、自分の意思でコントロールできるような代物じゃないのだ。
 どう考えても不自然である。
 考えられるヒントは、一度死んだ僕が蘇るのに、特殊な移植手術を受けたという事実だ。
 きっと、そこら辺に隠された秘密があるのだろう。

 執刀医は死んだ実父の助手だった、クローン技術の権威と言われる博士だ。
 ちょうど来週の公休は、定期的に受けている検診の予定日に当たっている。
 それとなく尋ねてみて、疑念を晴らしてみることにしようか。
 もしかすると「訊かなかったらよかった」なんてことになるかもしれないけど。


 そして─その嫌な予感は見事に的中することになる。  

758:名無しさん@ピンキー
14/05/26 00:20:38.54 rXJOGTkB
投下終了です

759:名無しさん@ピンキー
14/05/26 01:03:52.83 G1I4RBMh
乙!

760:名無しさん@ピンキー
14/05/26 01:13:41.23 oPxxRq07
トモエ大活躍が嬉しい乙
しかしどうせなら二三発被弾して露出(肌&メカ)サービスもあれば…!

761:名無しさん@ピンキー
14/05/26 21:50:10.31 DNnQ1gtn
シズカの皮膚が剥がれ、外骨格が溶け落ち、剥き出しになった内部メカが泡まみれになって消滅するシーンを想像したら





不謹慎にも興奮した

762:名無しさん@ピンキー
14/05/26 22:43:59.98 Ae5Ez4/W
誰か描いてくれないかな?チラチラ

763:名無しさん@ピンキー
14/05/26 23:25:55.17 08a/EQ0e
無敵のシズカのアナルがまさかの泣き所とは
次回急展開の予想?

764:名無しさん@ピンキー
14/05/27 09:23:46.89 M1/QZH7f
シズカのアナルを思い切り拡張して
襞肉の奥のメカ部分をいじり倒したい

765:名無しさん@ピンキー
14/05/27 12:43:32.64 Fy8F0Wfb
乙です~^^
シズカさん、溶かされなくてよかった^^
フッ酸は人間の皮膚につくとカルシウムが抜けて死ぬ奴ですよね。やばいやばい

くノ一が仲間になりましたね。楽しそう^^

766:名無しさん@ピンキー
14/05/27 18:41:43.47 8V3145BF
シュガー姉妹は佐藤兄弟なんだから仲間になるのは予定通りなんだろう
次回には主人公が出自の秘密を知るのかな

767:名無しさん@ピンキー
14/05/31 23:48:07.05 vWgqMEcE
ヒゲネズミがいい味だしてる
各キャラがしっかり作り込まれているから、場面が容易に画として浮かぶよ
ストーリーも毎回よく練られていて、読み物としても楽しい

768:名無しさん@ピンキー
14/06/06 00:20:46.40 pKjk3CuC
ここの住民的にドロッセルお嬢様はどうなの?
無印、チャーミングとあるけど

769:名無しさん@ピンキー
14/06/06 07:55:47.09 VBl/Nw2D
ゲドさんの単眼かわいいよね

770:名無しさん@ピンキー
14/06/07 17:27:13.52 WJ1JJLB/
お嬢様が動くときのわずかな駆動音がいい

771:名無しさん@ピンキー
14/06/22 12:36:11.84 AE+Zg/pM
ボカロ型メダロットだよね。

772:名無しさん@ピンキー
14/06/22 22:10:06.01 BkoGRPPQ
現代のテクノロジーでロボ感を出すにはやはりサーボモーターだよな

773:名無しさん@ピンキー
14/06/24 02:04:44.90 LLTRQZW4
サスペンションに見られる金属音もいいな。

774:名無しさん@ピンキー
14/06/26 13:26:27.63 kiAE/Vsj
ステッピングモーターの駆動音も音階ちっくな音で味があるよ

775:名無しさん@ピンキー
14/06/30 02:15:03.12 IORNDNBr
何処からか聞こえる CPUやGPUなどのクーラーの風きり音とか?

・・・・・・
どみゅん どみゅん
とか

776:名無しさん@ピンキー
14/07/07 22:56:40.56 bv15dUUe
歌うハードディスクとか?
カリッ カリカリカリカリカリッ カリカリカリカリカリカリカリカリ…

ブラウン管モニタの高周波も併せて

777:名無しさん@ピンキー
14/07/07 23:47:22.19 ZiUUz0Zr
おいおい、HDDの鳴き声はニャーニャーだろ?

778:名無しさん@ピンキー
14/07/08 20:46:34.92 LvVUEchi
それはビデオテープのイジェクト音か?
ニャーーーーーー、カチャ(ペッ

779:名無しさん@ピンキー
14/07/08 21:33:17.91 ps74yhvo
日立のハードディスクには猫が住んでるってのは
それほど有名な話ではなかったのか

780:名無しさん@ピンキー
14/07/15 17:52:12.56 ESBDJ3F3
>>782
日立?GSTの事?聴いてみたいな
最近はSSDやSDなどが利用される事が多めな気がする。

781:名無しさん@ピンキー
14/07/16 22:41:25.56 LZG++fEI
鳴いたのはもう10年近く前の頃までのモデルだな。容量最大が250GBだったりの。500GBくらいになったら猫は引っ越したw

782:名無しさん@ピンキー
14/07/24 15:25:32.53 PKQc6zrJ
保管庫が機能停止中

783:名無しさん@ピンキー
14/07/24 18:02:30.12 AEeWIpAa
かなり前から放置されてるな

784:エミちゃんはロボねーちゃん1/2
14/08/18 01:31:15.18 3dxvJDXv
「ロボねーちゃん、中身見せてよ」
「え?」
「明日技術でロボットの構造のテストがあって全然分かんないんだよね……」
「私、かなり旧式ですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思う。基本の基本らしいから」
「分かりました。用事済ませますからちょっと待ってて下さいね」
エミちゃんはトタトタとベランダに走って行った。

エミちゃんは僕がチビの時に買ったロボットだ。
共働きの両親に変わって家事をずっとやってくれている。なんでもできるおねーちゃんみたいな感じで高校生になった今もロボねーちゃんと呼んでいる。

「じゃあ開けますね」
上の服で胸を隠したエミちゃん。背中がぱかっと開いて機械の部分が覗く。
普段人間にしか見えないのに、やっぱりロボねーちゃんはロボットなんだ。
「どうですか? 参考になります?」
エミちゃんの中身は教科書とほとんど同じに見えた。
「うん、多分」
僕はノートにメモしていく。
「この緑の配線はどこに繋がってるの?」
「それはバッテリーですね」
「なるほど」

僕はもっと中が見たくなっていった。

785:エミちゃんはロボねーちゃん2/2
14/08/18 01:31:32.59 3dxvJDXv
「ロボねーちゃん、もっと奥も見たいんだけどいいかな?」
「ちょっと危ないですね、電源を落とさないと」
「分かった」
僕は普段見ないロボットのロボねーちゃんに少しドキドキしながらうなじの辺りを3秒間押した。
ひゅーんと電源が落ちる音が鳴る。いつも鳴っていた音が聞こえてこない。
「ロボねーちゃん?」
なぜか声をかけてみたくなった。返事をするわけないのに。
顔を見ると目と口を少し開けうつむいて動かない。服は床に落ちていておっぱいが丸見えだ。
でもエミちゃんのおっぱいには乳房がない。そう言う用途じゃないからだ。同様にまんこも付いてない。毛も穴もないツルツルな股があるだけだ。
着替えていた時にたまたま覗いてしまって後でかーさんに怒られたのを覚えている。

僕は何も反応しないエミちゃんにキスしてしまった。
エッチな部分がない代わりにエミちゃんのぷっくりとした唇はそういった部分を凝縮したようなエッチさを持っている。
最近ムラムラしていたのを思い出した。
僕はエミちゃんを押し倒して、何回も何回もキスをした。抱きしめて、手を握って、何回も何回も。
僕はエミちゃんに見て欲しかったので無理やり瞼を開けた、光の無い瞳がどこか宙を見ていた。眼球をグリグリ動かして視線を合わせた。
もう止まらなかった。
エミちゃんのスカート脱がしたあとに僕もズボンを脱いで、エミちゃんの何も無い股にちんこを擦り付けた。
「ねーちゃん……」
キスをして、擦り付けて、舐めて、抱きしめて。
エミちゃんの手を使ってちんこをしごいた。すごく気持ちいい。

精液が出た。
しまった。やってしまった。汚してしまった。どうしよう。
急いでティッシュでエミちゃんから拭き取った後、最後にもう一回だけキスをした。

×   ×   ×

「ロボねーちゃん、これ」
僕は自慢気に答案を見せつけた。
「すごいですね!」
エミちゃんはとても笑顔で喜んでくれた。
「これもロボねーちゃんのおかげだわ」
「よかった……。次も頑張ってくださいね!」
エミちゃんはまたトタトタとベランダへ行った。
僕はエミちゃんのことがもっと好きになって、知りたくなった。
エミちゃんをちゃんとセックスできるようにしよう。僕はそう思った。

おわり

786:名無しさん@ピンキー
14/08/18 01:32:57.40 3dxvJDXv
こんなの見たいと思って書いてしまった
もっと上手くかける人文字でも絵でもなんでも大丈夫なので頼みましたよ!

787:名無しさん@ピンキー
14/08/18 03:00:27.67 y8lf309P
いいんじゃないかしら
ただもっと奥が見たいからと電源落とした流れなのに
それ以上内部の描写が無いのはメカバレ的にはガッカリだわ
続きもお願いね

788:名無しさん@ピンキー
14/08/20 01:45:05.74 H5G+CGHP
うん、すごくいい。
ですので次はロボねーちゃんを合意の上でお小遣いためてちょっとずつ
改造していくところを濃厚に……。

789:名無しさん@ピンキー
14/08/20 15:05:03.38 292vPbLh
>>790
単純に内部構造が書けなかったってのもあるけど
俺はメカバレよりも行動とか仕草で「あ、こいつ機械なんだな」ということが分かる方が興奮するんだよね

勢いで中が見たくなったって書いたのはちょっとミスったかも

790:名無しさん@ピンキー
14/08/23 03:01:11.44 +rSGtF/u
モンスターハンター4というゲームに出てくる防具にアーティアSシリーズというものがある
男性用と女性用の2つがあるが
女性用の見た目だけならロボットっぽい
まあ中身は人間だから関係ないなスマソ

791:名無しさん@ピンキー
14/09/03 21:21:10.74 7VMHOumt
<<787
<<788
普段は人間なのに実はロボット、というのがいいですね!
渋で書いてもいいでしょうか?

792:名無しさん@ピンキー
14/09/03 21:37:42.37 HTJ/SX1o
>>794
ありがたい
お願いします!

793:名無しさん@ピンキー
14/09/04 00:37:58.72 +8jPLgKf
>>795

※原作者様、すみません。文章が完全にツボだったものですから、勢いで描いてPixivに上げさせていただきました。
『ロボねーちゃん1/2』です。
ご批評、ご意見、ご批判、覚悟の上でございます。

794:名無しさん@ピンキー
14/09/04 12:00:13.93 iVa7IrFo
見ました!
ありがとうございます!

795:名無しさん@ピンキー
14/09/04 19:52:13.30 7mUHfi9E
もっと若いというか、子供の遊び相手として14~17くらいの見た目かと思った
月日は流れ子供は成長するが、ロボねーちゃんはあの日から、そしてこの先もずっとこのまま


今ではその少年もおじいちゃん、孫にあげるのはもちろんロボねーちゃん。なぜなら彼もまた特別な存在だからです

796:名無しさん@ピンキー
14/09/05 22:30:32.21 +vZBEWnV
眼球をグリグリ無理やり動かして見てもらうってところなんか歪んだ愛情でとても良いと思った。
続き期待してる!

797:名無しさん@ピンキー
14/10/29 23:38:45.67 BqZVse0c
保管庫って完全に沈黙してるけど、管理人さんはもう放棄するの?

798:名無しさん@ピンキー
14/11/08 17:51:09.08 /YHwQGJl
本当に停止してる
保管庫がなくなるとスレがなくなるって言うけど
このスレもいよいよお終いなのか

799:名無しさん@ピンキー
14/11/14 20:34:42.50 /6KlZD6N
こうなったのも全てロボ作のせいだな

800:名無しさん@ピンキー
14/11/30 23:26:56.58 UYEV+57d
保管庫や書き手どころか住民までいなくなってしまったか
みんな支部とかに移っちゃったのかな


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