【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】at EROPARO
【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】 - 暇つぶし2ch41:名無しさん@ピンキー
12/03/16 19:57:07.06 ap+dpr53
グレーテルのかまどって見たことないんだが、予約した!
ゲゲゲの一場面とかダイジェスト的に出たりするかなwktk
ぼたもちってあれだよな?緑色の…あれ?ずんだ餅だったか?

42:名無しさん@ピンキー
12/03/17 20:44:14.34 QsgHZ2JI
>>41
普段も見てるけどなかなか面白いよ
ドラマの映像は…どうかなぁ…
ずんだ作ってるシーンが使われるかどうかくらいじゃないかな
予告ではあんこのぼたもちだった気がする

43:名無しさん@ピンキー
12/03/18 17:16:19.82 nZQ8echX
かまど、ドラマの映像は無かったけどリアルおとうちゃんのツンデレっぷりが素晴らしかったw
あとぼたもちに酔った発言で妄想しまくってしまったw

44:名無しさん@ピンキー
12/03/19 23:24:02.06 YFQtQoe2
>>43
リアルおかあちゃんのデレも良かったw

45:名無しさん@ピンキー
12/03/20 18:43:46.88 JBDT2o+X
早海さんのふみちゃんの中の人はもうずっと可愛かったなぁ
特に最初のぬいぐるみ劇場と最後の教会でのほのぼのっぷりったらもう
ゲゲさんの中の人の方は結婚しない?がちょっとゆうちゃん変換に使える!と思ったくらいで
あまり収穫が無かった…

46:名無しさん@ピンキー
12/03/22 17:44:49.80 sRqgD8cv
いちせんのささきのロケ地行ってきた!
ほぼそのままだし写真とか綾のラベルとかあるしでほんと萌えた

47:名無しさん@ピンキー
12/03/23 23:04:38.01 uD9Xmrlq
>>43
再放送見たー
リアル実家が毎年小豆ともち米送ってくれてたって事で
ゲゲさんが口にあんこつけてふみちゃんにとってもらう新婚期や
ゲゲさんと藍子が口に(ry な貧乏期の妄想が捗ったw

48:名無しさん@ピンキー
12/03/24 23:40:53.06 c8jmHPR/
ふみちゃんの中の人の可愛さは大型犬系というのを見てなんか納得

49:名無しさん@ピンキー
12/03/26 01:44:05.92 qC/v9OjZ
ゲゲゲ再放送まであと一週間!

50:名無しさん@ピンキー
12/03/26 02:03:58.41 SChiaRAn
花よりエロパロのまとめサイトなくなった?

51:名無しさん@ピンキー
12/03/26 19:11:54.97 VxEEcYDz
>>50
自分は普通に見れるぞ?一度移転したんじゃなかったっけか
これで行けないか?
URLリンク(uzo.in)


52:名無しさん@ピンキー
12/03/27 23:32:36.80 e3SiupW2
ゲゲさんの中の人のドラマの最終回とその前の回のゲストのキャラの名前、『あやこ』だったんだな
途中までしか見てないけどずっとあんたって呼んでて、せめてさん付けて呼んでくれてたらなぁと思ったw

53:名無しさん@ピンキー
12/03/28 00:55:26.29 BPfIGDSG
>>51
行けた!だんだん!

54:名無しさん@ピンキー
12/03/29 22:38:26.77 WYt/uM88
二年前の今日から放送だったんだねー
自分はこのスレを読んでから見はじめたから二年前はまだ全然見てなかったけど感慨深いなぁ

55:名無しさん@ピンキー
12/03/30 19:21:16.48 TqN/cCIB
自分は当時引越しのバタバタで1ヶ月ぐらい見てなかったんだよね。
ゲゲふみの可愛さにやられて、すぐにスレを探しにきましたw
職人さん、本当にいつもありがとう。
再放送始まったらまたよろしく~。

56:名無しさん@ピンキー
12/03/31 23:22:05.13 CiKU/Vqa
明日エイプリルフールなので
ふみちゃんが冗談で嫌いって言って平静を装ってるのにお茶倒したりしてものすごい動揺するゲゲさんを妄想

57:名無しさん@ピンキー
12/04/01 07:14:13.63 yk/0FBPD
>>56
かわゆすぎて萌えたw

58:名無しさん@ピンキー
12/04/02 11:20:15.86 55Sq8kTz
祝!再放送カキコ!改めて初代布美ちゃんの睫毛の長さに感動
>>56のあと実は四月バカだったと知ったゲゲの倍返しにwktk

59:名無しさん@ピンキー
12/04/03 09:32:01.71 NdLcxY1O
ハイビジョンで見るの初めてなんだけど、今日の蒸し芋二人で食べるときに
ふみちゃんの口にほんのちょっこし芋がついてるんだな…
あれがもっと盛大についててしげさんが口で取ってたらお互いの初キスになったんじゃないだろうか!
と妄想してしまったw

60:名無しさん@ピンキー
12/04/04 23:06:14.54 COVvFCKO
>>58
布団の中からだるい動けないと嘘をついてふみちゃんに心配させて布団にひきこんで…
という仕返しを妄想w
でもゲゲさんならもっといろんな嘘つけそうだよなぁ

61:名無しさん@ピンキー
12/04/06 23:03:31.52 xhq9zQeh
桜の頃になると
自然に近寄ってしげさんの襟を直して鞄に原稿を入れたふみちゃんを思い出してニヤニヤする

62:名無しさん@ピンキー
12/04/07 22:59:53.24 IrmlHhJH
ゆうあやの花見ってどんなだろうな
定休日にお弁当とおせんべもって近所の神社とかかなw

63:名無しさん@ピンキー
12/04/08 23:18:03.97 YihpPfI0
二週の妄想女将が楽しみすぎる!

64:名無しさん@ピンキー
12/04/09 22:05:10.16 RvK7nQ7f
>>63
同意w

65:名無しさん@ピンキー
12/04/10 08:24:40.52 ASfMh1Dr
妄想女将もお見合いにわくわくしてるのもふみちゃん超かわいい!
ゲゲゲは見てると幸せな気分になれるよー

66:名無しさん@ピンキー
12/04/11 23:25:18.25 w4+5jq5+
>>65
貴司にお見合いせんことに~って言ってる時もかわいい

67:名無しさん@ピンキー
12/04/13 09:36:28.81 ZxAPI4JZ
お見合いクル━━(゚∀゚)━━ !

68:名無しさん@ピンキー
12/04/14 23:52:24.37 2w2Wl7yy
妄想女将はやっぱりかわいいねぇ
来週お見合いで物語的にもこのスレ的にもw本格始動だね

69:名無しさん@ピンキー
12/04/16 21:26:19.34 RQE4AiwM
お見合い週ktkr!
自転車乗れますか?が楽しみだ

今更録画したお菓子料理番組見たけどリアルゲゲさんのデレがハンパないな
リアル喜子の解説とそれに照れてるリアルふみちゃんに不覚にも萌えた
ドラマキャストで見たい!

70:名無しさん@ピンキー
12/04/16 22:56:17.83 PYIVdnnu
「俺みたいな男でええんかな」とつぶやいたシーン、
「あんたしかおらんけん!」と画面に向かって突っ込んだw
漫画の知識を少しでも頭に入れておこうと努力するふみちゃんもかわええ。

71:名無しさん@ピンキー
12/04/17 22:47:51.01 PV0fV/Gi
>>70
予備知識を少しでもってあたり同意!
ゲゲゲの物語自体の良さでもありふみちゃんの良さ・かわいさなんだよね

72:名無しさん@ピンキー
12/04/18 23:07:32.68 erpeGzwq
DVDで何回も見てるのになんでゲゲふみはこんなに毎回かわいいんだろう
自転車とかさっきの目玉とかほんとたまらん

73:名無しさん@ピンキー
12/04/20 08:11:38.33 u96rsTZs
娘時代のふみちゃんの声の高さがたまりませんなぁ
吸い物飲むときのしげーさんの手の大きさもたまらん

74:名無しさん@ピンキー
12/04/20 10:33:55.35 U3fPg+zK
あのお椀を上から持つ手ね
ぎちぎちじゃなくある程度余裕があるからさまになる

75:名無しさん@ピンキー
12/04/20 13:03:46.56 lvLMLCVe
本スレ見てたら今回の再放送でゲゲゲ初見って人もまあまあいるようなので、ここの住人が増えることも期待w
個人的には式のあとに村井家に行って、初夜を意識してる布美ちゃんが
どっきどきで階段あがってくとことかもうたまらんw



76:名無しさん@ピンキー
12/04/20 16:31:23.34 OF2sl6Hn
どこまで見せるんだろうと妙に緊張したのを思い出すw
結局なんのスキンシップもなかったが逆にドキドキだったなあ

77:名無しさん@ピンキー
12/04/20 21:18:32.76 IbhByEq+
ずいぶん前に投下した『むすびの神』の続編(と言っても時間的には前)になります。
例によって脇キャラに興味のない方はスルーでお願いします。

再放送に合わせて、横山さん×ユキ姉ちゃんのお話を投下するつもりが、PCの不調と
多忙がかさなり、遅くなってしまいました。
この二人の見合いは、さぞかし源兵衛さんが張り切ったんじゃないか・・・というのが
書きたくなった理由ですw。

ぐぐってみたら、キンモクセイの花言葉は「誠実、初恋、真実の愛」なのだそうで、
この二人にぴったりな感じで、偶然ながらちょっと嬉しかったです。

いよいよゲゲふみのお見合い・・・!で盛り上がってるところ、空気読まずにスミマセン。
今後はタイムリーな投下が出来るとよいのですが・・・。

78:初恋 1
12/04/20 21:19:55.48 IbhByEq+
 月の明るい夜。澄んだ大気の中にキンモクセイの香りがただよっている。
今日嫁いだばかりの家の、中庭をめぐる廊下を、その甘やかな香りに運ばれるような
思いでユキエは歩いていた。

 夫となったひとのことは、初めて出会ってからまだふた月とたたず、実はそれほど
よく知っているわけではない。それがこの時代のお見合い結婚のふつうのありようでは
あるけれど、以前のユキエならそんな結婚は真っ平御免だったはずだ。
 だが、信夫の待つ部屋へ向かうユキエの心はときめき、湯上りの肌や髪をなでる
風にまじる甘い香りは、今夜のユキエの気持ちに似つかわしいものだった。

「あの・・・失礼します。」
フスマを開けると、窓を開けて外を見ていた信夫がこちらを向いた。
とたんに、心臓がのどまで飛び上がり、足元は霞を踏むように覚束なくなった。
「あ・・・あの、つ、つきが・・・きれいですよ。」
信夫も、緊張しているのか、ぎこちなくユキエを窓辺へさそった。
「ほんと、きれい・・・。」
窓辺に並んで、澄んだ月を見上げる。婚約期間があったとは言え、こんなに接近した
のは初めてのふたりだった。
「さ、寒いけん、閉めましょう。」
信夫が障子を閉めて畳の上に座ると、ユキエは両手をついて頭を下げた。
「・・・ふつつかものですが、末永く、よろしくお願いします。」
「あ・・・は、はい。いや・・・こちらこそ。」
信夫はどぎまぎして、ユキエの手をとって頭を上げさせた。
「よう・・・来てごしなさった。」
ぎこちない手つきで抱きしめる。二人とも自分の心臓の音が聞こえるほど緊張していた。
 少し顔を離すと目が合った。信夫が思い切って口づけする。初めての口づけは、
柔らかくてちょっと湿っていて、初めてお互いの内部に触れた気がした。その感覚が
ふたりの間の壁を取り払ったかのように、口づけは深くなり、止まらなくなった。

79:初恋 2
12/04/20 21:20:58.78 IbhByEq+
「は・・・ぁ・・・はぁ・・・ふぅっ・・・。」
繰り返し唇をむすびあわせるうち、慣れないふたりは息をつくことも忘れていて、
部屋に響く荒い息遣いがさらに頭を混乱させる。
 信夫があせるあまり眼鏡をはずすのも忘れているものだから、ユキエの顔に冷たい
感触があたる。けれど、それが何か意識することもできず、ただ受けとめるだけで
精いっぱいのユキエだった。                             
「よ・・・横になってもええかね?」
なんだかとんちんかんな誘いだが、ユキエにはそれをおかしいと思う余裕もない。
「え・・・は、はい・・・。」
信夫はユキエを抱きしめたまま押し倒した。ユキエの小さな悲鳴にふと我にかえり、
バツが悪そうに少し身体を離して大きく吐息をついた。
「ごめんな・・・。こわかっただろ?」
「だ、だいじょうぶ・・・です。」
「あんたがいやだったら、今日でなくてもええんだよ・・・。」
繰り返し口づけされて押し倒された時は、惑乱が最高潮に達していたが、信夫の
やさしい気づかいに、ユキエはすこし平静さを取り戻した。
「あ、あの・・・めがね、が・・・こわれますけん。」
そっと両手を上げて信夫の眼鏡をはずしてやった。
「あ・・・これはいけん。・・・だんだん。」
至近距離にある信夫の顔が、照れくさそうな笑顔になる。その目元は意外に涼しくて
目の奥にある光はやさしく、ユキエの心臓を再び落ち着かなくさせる。
 その目がゆっくりと近づくと、今度は落ち着いてユキエに口づけた。唇が離れ、
うっとりと目を開けたユキエに、信夫が意を決したように確かめた。
「ほんなら・・・ええかね?」
「・・・はい・・・。」
この時代としては大胆にも男友達と逢引したこともあるユキエだったが、せいぜい
隣町に映画を見に行ったくらいのもので、何かがあったというわけではなかった。
祝言の晩に花嫁の身に起こることに関する知識は、他の娘とたいして変わりはない。
つい声が震えてしまうのをどうしようもなかった。

80:初恋 3
12/04/20 21:22:22.64 IbhByEq+
 信夫が、おずおずと帯をとき、浴衣を広げてユキエの肌身をさらした。まっ白な
肌に目を奪われながら、自分もすべてを脱いでユキエの上になった。
 男にしては細すぎることが少し気になっていた信夫の身体は、鍛えぬかれ、鋼のような
筋肉がのって美しかった。すべてにおいて控えめなこの男の、分厚い眼鏡をはずして
裸になった姿は意外に男性的魅力にあふれ、ユキエはさらに心を奪われるのだった。
「ン・・・ふぁ・・・ぅ・・・。」
さくら色の乳首を口に含んで吸うと、ユキエが思わず鼻にかかったあえぎをもらし、
自分の甘い声に驚いて口をおさえた。その可愛さにあおられ、信夫はもう一方の乳首を
指でいじりながらさらに味わい、ユキエのあえかな乱れをたのしんだ。
 ユキエが無意識に秘められた場所を守っている手をとると、自分の肩にまわさせ、
無防備になったそこにそっと指をひそませた。                     
「ぁ・・・。」
とろり、とした感触が、自分を受け入れる準備がすでに出来ていることを教え、信夫は
ぞくぞくするような喜びを覚えた。
 ひざでわずかなすき間を広げながら、少しずつ脚を広げさせる。口づけや、乳房への
愛撫でなだめながら、羞じらいの強い両腿を充分に広げ、つらぬく準備をととのえる。
 身体を硬くしてその瞬間への恐怖と戦っているらしいユキエがいじらしく、攻める手が
鈍りそうな信夫だったが、反面、ひと息につらぬいてしまいたい雄の猛りをも感じていた。
 充分にうるおったそこへ、たかぶったものを押し当て、ぐっと進む。
「・・・・・・ぁあ・・・!」
ユキエが小さく叫んで信夫の肩を手でつかみ、本能的に押し戻そうとした。
「や、やっぱり、痛いかね?・・・今日はもう、やめとくか・・・?」
「・・・い・・・ぃえ・・・やめんで・・・ごしない。」
痛みをこらえ、必死でユキエが口にした受容の言葉は、信夫の心に痺れるような
喜びを与えた。
「ほんなら、こらえてごせ・・・ユキエ・・・さん。」
「・・・ユキエで・・・ええですけん・・・。」
「ユキエ・・・ゆき、え・・・。」
耳元で名前を呼ばれながら、力の入りすぎた両手をやさしく解かれる。指と指を
からませて握り合った手に口づけされると、いとしさに痛みも少しうすれる気がした。

81:初恋 4
12/04/20 21:23:41.25 IbhByEq+
「大丈夫、か・・・?」
「・・・は・・・い。」
 恋した人が今、自分のなかにいる。身体をこじ開けられる痛みすら、このひとと
結ばれたあかしと思えば心地よかった。ユキエの閉じたまぶたから幸せの涙があふれた。
けれどその涙を見て、何も知らない信夫の胸は痛んだ。
(好きでもない男にみさおを奪われるのは、やっぱり悲しいのかもしれんな・・・。)
「痛いか?・・・ごめんな・・・。」
うっすらと汗をかいた額にかかる髪をよけてやり、生え際に小さく口づけながら
信夫はユキエの頭をなでた。
「・・・痛くて泣いとるんじゃないの・・・。あなたが、やさしいけん・・・。」
信夫はその涙を、乙女の時代と訣別し、信夫の妻として生きていく覚悟の涙だと思った。
(少しずつでええ・・・これからわしのことを好きになってくれればええけん。)
涙を唇で吸ってやりながら、信夫はさらに深くユキエの中に入っていった。        

(私は、この人のもの・・・。)
痛みとともに、信夫の存在を全身に刻みつけられる思いで、ユキエは信夫を
受け入れていた。
(ほんのふた月前まで、私はほんとうの恋を知らなかった・・・。)
・・・ユキエの脳裏に、信夫との出会いがうつし出された・・・。

 風に秋の匂いがまじり始めたあの日、ユキエは初めて信夫に会った。それも
最悪の形で。
 父の源兵衛は、見合い話に首を縦に振らないユキエに業を煮やし、無断で勤めを
辞めさせてまで強引に縁談を進めようとした。ユキエは大胆にも妹のフミエを
身代わりに仕立て、夜道を安来の輝子叔母の家まで走った。信夫の写真も釣書も
突っぱねて、見てはいなかった。自分をここまで追い込んだ見合い相手が憎らしくて、
いつしか罪もないその男を、父と同じ敵と見なす幼さだった。
「ユキエ、ユキエ・・・!相手の人、断り入れて来たげな!」
安来で所在無い日々を送っていたユキエは、飯田の家の向いの魚屋がことづかって
来た手紙を読んだ叔母の言葉に、晴れやかな笑顔を見せた。若い娘の現金さで、
翌日さっそく軽い足取りで輝子とともに大塚の家に帰って来た。

82:初恋 5
12/04/20 21:24:57.96 IbhByEq+
 家の店先に入ると、祖母の登志と妹のフミエがみすぼらしい野良着を着た見知らぬ
若い男と話していた。その男が当人とも知らず、ユキエと叔母は見合い相手の悪口を
声高にしゃべった。
 そもそもこんな縁談が持ち込まれなければ自分が騒動を起こすこともなかった
という思いと、自分がいやがっておきながら、相手が断って来ると、それはそれで
プライドを傷つけられたという、身勝手な気持ちがユキエにはあった。
 だが、フミエから聞いた事実は、そんな思い上がった心を一気に引きおろした。
横山はフミエに頼まれ、何も言わず縁談を断ってくれた。そのうえ、そんないきさつにも
かかわらず、ユキエが家を出ている間に倒れた母を助けてくれたのだった。
 泣きながら謝ったフミエの言葉に、横山が少しつらそうな、でも優しい笑顔を見せた
その時、追いついたユキエが妹の肩を抱いて、横山をまっすぐ見つめ、頭を下げた・・・。   

 その夜。ひさしぶりの自分の布団に入ったものの、ユキエはなかなか寝つけなかった。
自分は今、この家で一番年長の娘なのに、母が危険な時に何の役にもたてなかったこと。
いつも恐くて強権的な父が、今日はなんだか縮んで見えたこと・・・。それにもまして、
ユキエの心をかきむしるのは、今日初めて知った横山のことだった。
(私はあのひとを傷つけてしまった。それなのにお母さんを助けてくれたんだ・・・。)
横山がフミエに向けた、優しいけれどつらそうな笑顔が目にやきついて消えない。
(私、ほんとに子供だった・・・。)
消え入りたいような恥ずかしさと、申し訳なさ、それから名状しがたい胸のとどろきを
かかえ、ユキエはすがるようにあるひとつの考えに到達した。

 翌朝。源兵衛はようやくミヤコの病床のそばを離れ、蜂の世話をしていた。
「・・・お父さん。あの・・・お願いがあるんです。」
「なんだ。」
ユキエの問いかけに、源兵衛はふり返りもせず作業を続けた。
「私・・・あのひとに・・・横山さんにもう一度、会わせてほしいんです。」
源兵衛は、少し驚いたようだったが、相変わらず蜂の巣箱を見つめながら言った。
「それは、見合いをする、言うことになるぞ。」
「それで、かまいません。私・・・どうしても、このままじゃすまされん気がして。」
「今度結婚を申し込まれたら、もう断れんのだぞ。」
「もちろん、そのつもりです。」
源兵衛は、ユキエの真剣な顔を見てうなずくと、また作業に戻った。

83:初恋 6
12/04/20 21:26:04.32 IbhByEq+
 その日の午後、仲人の家におわびかたがた改めて縁談をすすめてほしい旨を
伝えに言った源兵衛は、上機嫌で帰ってきた。なんと横山家からも再度の
見合いが申し込まれているという。事情を聞いた仲人は、何事も無かったかの様に
いちから世話をするとうけ合ってくれた。                      

 それから数日後。国民服を着た信夫と仲人の橋本は、飯田家の座敷にあった。
「せんだってはほんにお世話になりまして、お礼の申し上げようもございません。」
まだ床をはらえぬミヤコが挨拶に出てきて、丁重に礼を言って奥へ引っ込んだ。
座敷に残ったのは源兵衛と、一度会ったことのある祖母の登志である。ふたりとも、
心配になるほど相好をくずし、信夫の顔を穴が開くほどみつめるものだから、内気な
信夫は伏目がちになり、身体が硬直するのをどうしようもなかった。
「いらっしゃいませ・・・。」
 そこへユキエが茶菓を運んできて、信夫の前に置いた。編みこんで結い上げた髪に
娘らしい銘仙の着物、モンペや国民服を見慣れた目にはことさら華やかに映った。
 食糧難のなか、心づくしのごちそうと、飯田酒店の酒が出される。運んできたのは
手伝いに来た長女の暁子で、こちらにも礼を言われる。当たり前のことをしだけなのに
・・・こう命の恩人扱いをされては居心地が悪かった。
「えー、本日はお日柄も良く・・・まことにめでたい日であります。こちらの横山君と
 飯田家とは浅からぬえにしのある様にうけたまわっております・・・。」
仲人の紹介は、まるで結婚披露宴のようだ。登志はよほど横山が気に入ったと見え、
ほれぼれと顔を見ているし、源兵衛は終始ニコニコしっ放しで饒舌だった。
 一方、二人にはさまれたユキエはうつむいて黙ったままだ。母親、姉・・・会う人ごとに
礼を言われ、父親と祖母はまるで婿扱い・・・それにひきかえ肝心のユキエは静かなまま。
・・・信夫はいたたまれない気持ちになってきた。
 そこへ、おはぎと食後のお茶を大事そうにささげ、フミエが入ってきた。信夫の前に
茶菓を置くと、恥ずかしそうに目くばせした。信夫は今日はじめてホッとした。
「・・・!こげな甘いもん食べたのは、ひさしぶりです。」
おはぎをひと口食べると、ずっと緊張していた信夫が破顔した。
「うちで作っとる蜂蜜でしてな。砂糖不足のおり、重宝しちょります。これの世話を
 しとって、女房がエライ目に合いましたがな。・・・もっとも、おかげでこちらさんと
 ご縁が出来たんですから、人間万事塞翁が馬と言うことですなあ。わっはっはっは。」 

84:初恋 7
12/04/20 21:27:03.73 IbhByEq+
 上機嫌の源兵衛に、祖母の登志がそちらを見てはしきりに咳ばらいをする。
源兵衛は(わかっとる!)と言うように急に真面目な顔になった。
「あー、おほん。本日は橋本様には仲介のご苦労をいただき、まことに感謝の念に
 たえません。ついては、あちらであらためて一献差しあげたいと思います。えー、
 ・・・若いふたりは、まんざら知らない間柄でもないけん、少し打ち解けて話されたら
 どげですかな?」
何やら段取りが出来ている様子で、仲人をうながして皆いなくなってしまった。      
 ユキエとふたりきりで座敷に残され、どういうことなのか、ますますいたたまれない。
「・・・あのっ!」
ユキエが初めて顔を上げて信夫の顔を正面から見、両手をついて深々と頭を下げた。
「今日は、本当に来てくださるのか、心配しちょーました。あげな失礼なことしといて、
 あのままあなたにお詫びもお礼も言えんだったら、どげしようかと・・・。
 あげなことになるなんて、思ってもみんだった・・・。姉は嫁いで家を出とるし、今、
 私がこの家で一番年長の娘やのに・・・ほんに無責任なことして。妹に恥ずかしいです。
 あなたがおられんだったら、母はどげなっとったか・・・本当にあーがとございました。」
お詫びと、お礼・・・ユキエが自分に会いたかったのは、そのためか・・・。
(わしは、何を期待しちょったんだろう・・・。)
張り詰めていた気持ちがゆるみ、信夫は心の中で苦笑した。

 だが、こうして見合いの場で会ったからには、結論を出さなければならない。
見合いと言うものは、会うまでにほとんど決まってしまっているようなもので、
よほどのことがなければ、見合いのあと男の家が仲人を介して申し込み、女の家が
受けることで結婚まで行ってしまう。当人同士が直接意思を確認しあうことは、
見合いでは許されない。何かあった場合に双方に傷がつくことを避けるためだ。
(このひとは、自分に恩義を感じてその身を差し出そうとしとるのじゃないか?)
外堀を埋められようとしている今、ここで聞かなければ、聞く時がない。
『・・・あんたは、本当にそれでええんですか?このままだと、わしと祝言することに
 なってしまうが・・・?』
全て仲人を通さなければならない作法を破って、ユキエの本当の気持ちを確かめようと
口を開いたその時。

85:初恋 8
12/04/20 21:27:56.01 IbhByEq+
「おほん!・・・話もはずんどるところ、失礼します。」
先ほどよりさらに少しきこしめしたらしい源兵衛と仲人が座敷に入ってきた。
 これでお開きである。ユキエもまさか見合いの席で想いを告白するわけにもいかず、
信夫はそんなユキエのつのる恋心にはまったく気づかず・・・ふたりはともに心を残したまま、
見合いは終わった。                                  

 翌々日。居間に呼ばれたユキエが行ってみると、父母、祖母に叔母までがそろっていた。
「横山家から、ぜひにと申し込みがあったそうだ。」
見合いのあと、当日の信夫の硬い表情を思い出してはあれやこれやと気をもんでいた
ユキエは、朗報に浮き立つような嬉しさを感じた。
「あげなことがあったけん、会っといて断られたらどげしようと、もう心配で心配で。」
いてもたってもいられず駆けつけてきた叔母の輝子が、大げさに胸をなでおろすと、
「あの人はそげな人じゃなーぞ。器の大けな男だ。」
信夫にすっかり惚れこんでいる源兵衛がこわい顔をしてにらんだ。
「ほんとにええの?ユキエ。あんた、私のことで恩に着とるんじゃ・・・。」
「江戸時代じゃあるまいし、そげなことで人身御供になったりせんよ。あのひと、
 本当にええ人だよ。だけん、心配せんで・・・お母さん。」
心配する母に、ほほ笑んで見せ、ユキエは居ずまいを正して父に頭を下げた。
「お受けします、と仲人さんにお返事してください。よろしくお願いします。」

 またたく間に婚約がととのい、結納がかわされ、婚礼の日が近づいてきた。
夜、ユキエが部屋で縫い物をしていると、フミエがおずおずと顔を出した。
「・・・ユキ姉ちゃん。ほんとにお嫁に行っちゃうの?」
「なあに、フミちゃん。あんた、横山さんのこと気に入らんの?」
「ううん、大好き。でも・・・ユキ姉ちゃん、あげにお嫁になんか行かんって言うとったのに。」
「ふふ・・・それは、好きでもない人のところには、だわ。」
「え・・・?」
「フミちゃんにはいろいろ迷惑かけたけん、あんたにだけは教えてあげる。」
ユキエは、フミエのそばに寄ると、耳に口を近づけてささやいた。

86:初恋 9
12/04/20 21:29:08.53 IbhByEq+
「あのな・・・私、あの人のことが好きになってしもうたの。だけん、お嫁に行けるのが
 うれしいんだが。」
「えっ?すき・・・?」
あっけにとられているフミエに、ユキエはちょっと照れくさそうに笑った。
「あげにフミちゃんに迷惑かけたのに、困った姉ちゃんだと思っとるだろうね。
 でもな、恋というのはこげな風に、突然おそって来るもんなんだわ。・・・まあ、
 フミちゃんはまだ小さいからわからんだろうけど。」
ユキエはフミエの小指に自分の小指をからめると、
「・・・このことはお父さんとお母さんには内緒だよ。・・・恥ずかしいけんね。」
指切りをして約束させた。母が用意してくれた反物で嬉々として男物の半纏を縫っている
ユキエは、幸せで輝いて見えた。
(恋・・・って、ようわからん!)
大人になったらわかるようになるのだろうか・・・フミエは混乱しながらも、とりあえず
姉が幸せそうなことに安心して、ユキエの部屋を後にした。               

 秋晴れの日。黒引きの花嫁衣裳に身をつつみ、純白のつの隠しをつけた輝くように
美しいユキエは、生まれ育った家をあとにし、横山信夫のもとに嫁いでいった。
 
(思ったとおり優しい人だわ・・・私、ほんに幸せ・・・。)
信夫の存在感を全身で受け止めながら、ユキエは温かい涙を流しつづけた。
(だけど・・・だけど・・・どげしよう・・・!)
新床の花嫁が、あまりまじまじと男の顔を見つめるのははしたないと思い、ユキエは
自分を散らしている男の姿を時おり遠慮がちに盗み見た。
(このひと、こげにええ男だったっけか・・・?)
 あのようないきさつで出会い、急速に話が進んで、戦時中のこととて二人きりで
逢うこともなく今日を迎えた。時おり野菜などを背負って飯田家を訪ねてくれる
信夫は相変わらず野良着姿に分厚い眼鏡という素朴さ…ユキエはユキエでそんな信夫に
好意を覚えながらも家族の手前恥ずかしくて、それほどまじまじとこの男をみつめた
こともなかった。

87:初恋 10
12/04/20 21:31:06.08 IbhByEq+
『ゲーリー・クーパーみたいにええ男じゃないけどな。』
花嫁姿のユキエは、以前憧れていた映画のパンフレットを妹のフミエに渡し、信夫の
ことをそう言い放った。自分は信夫の人柄を好きになったのだ・・・そう思っていた。
(どげしよう・・・毎日こげにドキドキしとったら、一緒に暮らせんが・・・。)
頬が熱くなり、羞ずかしくてたまらない。祝言もあげ、まさに今自分を貫いている
男の容貌に今さらときめいている自分がおかしくもあり、ユキエはますます
どうしてよいかわからずにいた。                             

 腕の中のユキエが、このように煩悶しているとはまったくあずかり知らぬ信夫は、
初めての痛みにさいなまれるユキエとは逆に、得も言われぬここちよさに我を忘れ
そうだった。
(いけん・・・まだ慣れんもんを・・・。)
欲望のままにユキエをむさぼりたくなる衝動をおさえ、新妻を気づかいながら
快感を追い、終わりに近づいていく。
「ぅ・・・くぅっ・・・ぅ・・・。」
好きな女との情交とはこれほどまでに魂を奪われるものか、と全身が痺れる思いで
咲きそめた花びらのなかにすべてを放った。
 ・・・まっ白な閃光に脳裏を射られる様な絶頂感が次第に去ると、信夫はユキエをいたわる
ようにそっと身体を離した。想いをとげた、という気持ちに満たされ、信夫は荒い息を
ととのえながらユキエの隣りに横たわった。裸身をさらしたままぐったりと動けないでいる
ユキエを見やると、今まで信夫が占めていた部分に、自分の痕跡が残っている。
信夫は枕紙をとって、それをふいてやった。                          
「い、いけん・・・そげなこと・・・自分でやりますけん。」
「いや・・・わしが出したもんだけん、わしがきれいにする。」
できるかぎり優しく指を動かしても、今初めて貫かれたばかりの敏感なそこに触れられ、
恥ずかしさと初めての感覚に、ユキエは耐えかねるように身をよじった。
そんなユキエの様子が、男の本能をあおりたてる。無垢だったユキエに男のしるしを
刻み付けたのは自分だと思うと、やさしい信夫にはそぐわない征服欲がわき起こった。

88:初恋 11
12/04/20 21:32:19.35 IbhByEq+
 ふと見ると、ユキエを清め終わった紙は夜目にも赤く染まっていた。その純潔のあかしを
目にした瞬間、信夫の身の内がカッと熱くなった。
(わしは・・・あんたを、生涯まもり抜くけん・・・!)
めちゃくちゃに抱いてしまいたい衝動をおさえ、再び横になってそっと肩を抱き寄せた。
至近距離にあるユキエの顔が、恥ずかしそうに微笑みかけてくる。
 生気に溢れた双眸、つんと上を向いた鼻、勝気そうな唇・・・結ばれるまで、朴訥な信夫は
ユキエの溌剌とした美貌に、惹かれながらも少し気後れを感じていたのだが・・・。
(なんだか、少しだけこのひとに近づけたような気がする・・・。)
全てを与え合った今、ユキエのぴんと水を弾くような固く張った肌はしっとりと潤いを
帯び、きゅっと結ばれていた唇は、ただ一人身をゆるした男に向って柔らかくほぐれて
いた。誘い込まれるように紅い唇を奪い、夢中でむさぼった。
「・・・んっ・・・んんっ・・・!」
しゃにむに唇をふさがれ、身体の下でユキエが呼吸を求めて身をよじった。
「あ・・・す、すまん。わし・・・いろいろ下手クソで、いけんな・・・。」
唇をはなすと、照れくさそうに告白した。
「嫁をもらう前に、どっかで練習しとけと言われたんだが・・・あんたに悪いような気が
 して、よう行かんだった。」
「ほんなら、私が・・・初めて?」
ユキエは思わず信夫の顔を見た。
「こげな亭主じゃ、頼りないかな。」
信夫は照れかくしに、ユキエの背に手をまわしてきつく抱きしめた。
(このひとは、私のもの・・・。私だけの、もの・・・。)
信夫も初めてだったことを知り、ユキエの心に言いようのないいとおしさがわき起こった。
 結ばれる前よりも、ぎこちなさが少しほぐれ、ふたりは身体を交わした男女だけが知る
口づけを繰り返しながら、夜にのまれていった・・・。

 キンモクセイの香りが、部屋の中にもただよってくる。愛する人と肌をかさねる歓びを
知りそめたふたりを、甘いけれど清楚な香りがつつみこんだ。
 信夫は、ユキエを深く愛しながら、自分はユキエに愛されていないと思い込んでいた。
身体も心も奪われる恋におちたユキエは、そんな信夫の心の内を知るよしもなかった。
 本当はお互いにつよく愛し合っているふたりが、その想いを確かめ合うまでには、
もう少し時間が必要だった。

89:名無しさん@ピンキー
12/04/21 07:34:53.66 bfuLVZao
>>77
GJ!です!!匂い立つような金木犀の(脳内)香りと共に読ませていただきました

自分は少女時代の2代目布美ちゃんのエピソードがどれも大好きです
この週があったから、ゲゲゲの女房をより深く愛したと云っても過言ではないくらいに

中でもユキ姉ちゃんと横山さんの瑞々しい物語は、何度見てもキュンとしてしまいます
その二人のキャラクターが上手に再現されていて、お見合いのシーンまで見事ですね
きっとこんな風に花嫁になったのでしょうね>ユキ姉ちゃん

90:名無しさん@ピンキー
12/04/22 02:52:02.43 V+nkQ7Mz
新作キテターーー!
みんな役者さんでスムーズに再生できる…

第一週から心を掴まれていたことを
あらためて思い出しました
89さんのおっしゃる通り、子供時代がなかったら
こんなにひきこまれなかった
特に横山さんエピは、
2人の麗しさもあいまって本当によかった

さらにこんな素敵に肉付けされて…
情景がリアルに浮かびました
GJです!

91:名無しさん@ピンキー
12/04/23 19:11:04.34 bX92MB5a
>>77
GJ!当然だが美しいほうの横山さんで脳内再生w
あと源兵衛さんの台詞、まんま大杉さんの声で再生された!まさにこんなこと言いそう!
すごすぎです!

本放送のとき、あれは誰だ?と言われてた時間経過著しい横山さんは明日本格的に登場だなw

92:名無しさん@ピンキー
12/04/24 22:45:18.80 PpZBnGCS
>>78
GJ!
横山さんの緊張っぷりがwかわいいww

>>91
自分は源兵衛さんのお葬式まで老け横山さんが横山さんだと認識できてなかったw

93:名無しさん@ピンキー
12/04/25 21:58:18.48 eK4G5kQr
今日の初夜は何度見ても良いなぁ
初々しさとか義手とふみちゃんの絶妙な距離感とか

94:名無しさん@ピンキー
12/04/25 23:23:28.64 CHPzrN5I
>>91
本放送のときは最初のほうは見てなかったが、
91見て「美しい横山さんて何?」と思っていたけど、
昨日の放送でわかった、横山さん。・゚・(ノ∀`)・゚・。
でもユキエが幸せそうだからいいやw

>>78さんもグッジョブ、自分も美しい横山さんでいきましたw

95:名無しさん@ピンキー
12/04/27 22:13:17.93 Chb6rIVj
列車内でみかんを食べるときのハンカチとか車の中でのwktkっぷりとか
ふみちゃんが可愛すぎて毎朝幸せ

96:名無しさん@ピンキー
12/04/27 23:05:38.58 ArJoiCbI
今さらですが、『いちせん』のお花見ネタです。>>62さんネタ提供だんだん。
興味ない方は、例によってスルーでお願いします。

来週はいよいよ『花と自転車』ですね。その後も怒涛のごとく神週が・・・。
遅くなったけどその前に間に合ってよかった。まだ桜の咲いてるところもあるし。

97:花とせんべい 1
12/04/27 23:06:38.43 ArJoiCbI
「『うすずみ』・・・?うーん。聞いたことあるような・・・。」
「・・・小さい蔵元さんなんです・・・。」

 春とは思えない冷え込みが続いたせいか、遅れに遅れた桜もようやく
開き始めたある日。綾子はある銘柄の酒を探して近所の酒店を訪れていた。

 予定よりずいぶん遅くはなったが、今度の定休日にはちょうど見ごろに
なりそうだし、祐一と花見に行く約束を、綾子は心まちにしていた。
(お弁当つくって・・・それから・・・ちょっぴり、お酒・・・。)
綾子は、以前祐一が話していた酒のことを思い出していた。契約している新潟の
米農家の人にもらったもので、とてもおいしかったのだとか。
「なんか・・・近くにある桜の名木にちなんだ名前だったんだよね。本当に、
 満開の桜の下で飲んだら似合いそうな味だったよ。」
名前も定かではないその酒を、桜にちなんだ名の酒と新潟というキーワード
だけで、綾子はネットでつきとめた。
『うすずみ』というその酒は、だが製造元のHPすら無く、取り寄せることは
出来そうになかった。ネットには、酒の好きな人がこの酒を絶賛するブログが
いくつか散見されるだけだった。
「ゆうちゃんに、飲ませてあげたいなあ・・・桜の下で。」
祐一とつきあい始めてからめぐって来たいく度かの春、二人で花見に行ったことは
もちろん何度もあるけれど、去年の花の時期は新婚旅行に行っていて、花見は
できなかった。祐一と結婚してから初めてのお花見・・・夫婦として見る桜は、
果たして今までとひと味違うものかどうか、楽しみだった。

 ダメ元で、綾子は普段前を通るだけのこの店に、思い切って入ってみた。
いろいろな銘柄を書いた紙がガラス戸じゅうに貼られたこの店なら、あの酒の
ことがわかるかもしれないと思ったのだ。
 だが、酒にくわしそうな店主の返事は、芳しいものではなかった。

98:花とせんべい 2
12/04/27 23:07:38.91 ArJoiCbI
「・・・新潟のお酒なんだよね?うちは関西方面のが多くてねえ。よっぽど有名
 じゃないと、わかんないねえ。」
やっぱり、ダメだったか・・・綾子が礼を言って店を出ようとした時、入れ替わる
ようにひとりの初老の男性が狭い店に入って来た。
「あ・・・かがやさん。ちょうどいいとこへ。あんた『うすずみ』ってお酒、
 知ってる?・・・新潟の。」
「・・・ああ、知ってるよ。なに、もしかして入荷したの?それなら是非ウチにも
 まわしてくださいよ。」
「いやいや、そうじゃなくて。こちらのお客さんが探してるって言うんだけど、
 あんたなら知ってるんじゃないかと思ってさ。」
「へえ・・・あなた、渋いのをごぞんじだね。」
「え・・・い、いえ・・・主人が・・・以前にもらっておいしかったと言うもんですから。」
お酒にくわしそうなその人に見つめられ、どぎまぎして答える綾子に、店主が
男性を紹介した。

「奥さん。この人はね、最近この近所に日本じゅうの珍しい酒を集めたバーを
 開店してね。日本酒オタクだから、きっと知ってると思ったんだ。」
「・・・ご近所のひと?お酒が好きなら、ぜひ寄ってやってください。」
男は『銘酒 かがや』と書かれたカードを綾子に手渡した。
「かがやって言っても、別に石川県に関係ないの。加賀谷って苗字なんです。
 ここで生まれ育って、定年後に趣味と実家の建物を生かして、一杯飲み屋を
 始めたってわけ。どうぞ、ごひいきに。」
下町の男性特有の、少し女性的な話し方に嫌味がなく、好感がもてる。綾子は
思い切って聞いてみた。
「・・・今、お店にこのお酒があるんでしょうか?」
「え・・・ああ、ありますよ。」
「あ、あの・・・!お店で飲むのと同じお代を払いますから、少し分けていただけ
 ませんか?・・・どうしても、桜の下で飲んでみたいんです。」
男性はちょっとびっくりしたように綾子の顔を見た。
「あ・・・す、すみません。やっぱり・・・ダメですよね・・・。」
初対面の関係ない人に、図々しいことを言ってしまった・・・綾子は顔から火が出る
ような思いで謝った。

99:花とせんべい 3
12/04/27 23:08:32.41 ArJoiCbI
「ふうん・・・桜の下で・・・ねえ。わかりました。じゃあ、ちょっと着いてきて。」
「え・・・?」
加賀谷は綾子にかまわず、さっさと店を出て行った。綾子は店主に礼を言って
あわててその後を追った。何軒か先の町屋風の小さな家に吸い込まれていった
加賀谷の背をかろうじて目に留め、頭を下げて低いくぐり戸を潜った。

「4合でいいかい?・・・めったに手に入らないから、ちょっと惜しいけど、ウチで
 飲んでくれたと思うことにするよ。」
古い家を上手にリフォームした店内には、綾子が見たこともないほどたくさんの
銘柄の日本酒のびんが立ち並び、やわらかい照明の中で輝いている。
「はい、どうぞ。・・・おまけしとくから、今度はぜひ、ウチで飲んでくださいよ。」
林立する酒びんに圧倒されている綾子に、加賀谷が『うすずみ』を満たした
4合びんを差し出した。
「は・・・はい。ありがとうございます!・・・きっと近いうちに寄らせて頂きます。」
酒びんを入れたエコバッグを大切に胸に抱いて、綾子は帰路に着いた。

「んじゃ、かんぱ~い!」
数日後の夕暮れ時、祐一と綾子は、川沿いの公園のコンクリートの長堤にもたれ、
花見酒としゃれこんでいた。
「予定外の夜桜になっちゃったけど、これはこれで風情あるね・・・。」
本当は、明日の日中に花見をする予定だったのだけれど、明日はほぼ確実に雨と言う
天気予報に、急きょ夜桜見物に変更したのだ。
「昼酒はきついけど、川風に吹かれて飲むとグイグイいけちゃうなあ・・・。あれ?
 この酒・・・。」
竹製のコップに注がれた酒を味わっていた祐一が、ふと考え込んだ。
「これ、飲んだことあるような・・・。どこで買ったの?・・・びんにラベルもないし。」
「おいしいでしょ?・・・手に入れるの苦労したんだから~。」
綾子はちょっと得意げに、この酒を手に入れた経緯を語った。

100:花とせんべい 4
12/04/27 23:09:26.82 ArJoiCbI
「へえ・・・そんな店ができたんだ。」
「うん。すごく素敵なお店なの。ご主人も・・・『粋』って、ああいう人のこと
 言うんじゃないかなあ。今度飲みに行こうよ。加賀谷さんにもそう約束しちゃったし。」
一気に話して、綾子はふと祐一の無表情に気づいた。

(ゆうちゃんの前で、他の男の人ほめたのは失敗だったかな・・・。)
結婚する前は、綾子の周囲の男性にかなり神経をとがらせていた祐一だったが、
最近はそんな様子もないので綾子はついつい注意を怠っていた。
「あのね・・・加賀谷さんって、私のお父さんより年上だよ?」
あわててフォローにかかる綾子に、祐一がプッと吹き出した。
「・・・俺が妬いてると思った?・・・自惚れてるなあ。」
からかわれたのだと知って、ホッとしながらも、綾子はちょっとくやしくなった。
「もぉ・・・せっかくゆうちゃんのために苦労してみつけて来たのに・・・真面目に話聞いて
 くれないんなら、私が全部飲んじゃうんだから!」
綾子がふくれて抱え込んだ4合びんを、祐一が笑いながら押さえた。
「こら!綾子は弱いんだから、そんなに飲んじゃダメだよ。ほら、卵焼きア~ン。」
祐一も少し酔っているのか、普段は家でもやらないことをする。
「・・・ん。おいひい・・・ゆうちゃんのだし巻き。」
綾子がだし巻き卵をほおばりながらぐい呑みの酒をくいっとあおる。
「あ・・・そうだ。これ持ってきたんだった。」
祐一がバッグからわれせんの袋を出した。
「あ・・・おせんべい?」
「うん・・・意外と酒に合うんだよ、これが。」
「わあ。何味にしようかな?」
さすがはせんべい屋の女房、綾子は薄暗い中でも自分の好きなゆず醤油味のわれせんを
一発でみつけ出し、ぽりんとかじって、また酒を飲んだ。
「ほんと、お酒に合うね~。あ~、お花もきれいだし、しあわせ・・・。」

101:花とせんべい 5
12/04/27 23:10:13.18 ArJoiCbI
 まだ茜色をとどめている西の空と、紫色から次第に濃い群青色へと移り変わりつつ
ある東の空の真ん中に、見事に並んだ満開の桜・・・。
「ちょっと酔っちゃったみたい・・・。」
綾子は長堤の上にひらりと腰かけると、川風に顔をさらして涼んだ。地上の灯りを
映して揺れる水面からの光が、綾子の横顔を照らし出す。
(きれいだ・・・な・・・。)
「やだ、なに・・・?」
放心したようにみつめる祐一の視線に、綾子が艶なまなざしを返した。
「や・・・酔っ払ってそんなとこに飛び乗ると、川に落っこちるぞ。」
「だ・・・大丈夫だもん!」
綾子はそれでも少しこわくなったのか、足を伸ばして地面につけた。

「ほら、綾子。帰るぞ・・・歩ける?」
「らいじょぶ・・・。」
せんべいと酒の組み合わせが気に入って、普段より多くきこしめしてしまった綾子は、
長堤からゆらりと降りると、壁にもたれかかった。
「調子にのって飲むからだよ。しょうがないなあ・・・。」
祐一は弁当の容器や酒びんなどをまとめると、綾子に手を貸して歩き始めた。
「ん~ん・・・ゆうひゃん・・・なんかふわふわするよ・・・。」
綾子は雲を踏むような足取りで、祐一が修正してやらなければ、あらぬ方向へ
行ってしまいそうだった。
(まさしく千鳥足ってやつだな。まったく・・・勤め帰りのサラリーマンかよ。)
花見どきとて、そんな人も珍しくはないのだけれど、ゆらゆらと歩く女性とそれを
必死で支える男性の組み合わせで、しかも長身のふたりはかなり目立った。

「綾子、がんばれ!・・・あと少しで我が家だ・・・・・・。」
人通りの少ない夜の商店街まで来たところから、祐一は綾子をほとんど肩にかつぐ
ようにして家までたどり着いた。

102:花とせんべい 6
12/04/27 23:11:06.64 ArJoiCbI
「は~、着いた。着いたぞ~!」
家に入ってからがまたひと苦労で、正体のない綾子をおぶって三階の寝室まで
運ぶのはかなり骨が折れた。
「しょうがないなあ・・・まったく。」
綾子を畳の上に寝かせ、押入れから布団を出して敷きながら、祐一はぼやいた。
「ほら・・・綾子!ちゃんと布団で寝ろよ。」
抱き起こしてパーカを脱がせてやると、下に着ているブラウスは肩紐だけの
ノースリーブで、むき出しの二の腕とデコルテにちょっと目を奪われる。
(ま、またエロい服着て・・・どういうつもりなんだ。)
祐一の中の雄が、ぴくりと反応する。
(酔っ払って寝てるとこ襲うわけにもいかないし・・・あーもーっ・・・フロはいろ!)
祐一はきざしかけた欲望を振り払うように綾子を寝かせると、掛け布団を着せて、
部屋を後にした。

(綾子・・・まだ寝てるかな?)
風呂からあがり、祐一は夫婦の寝室の引き戸をそっと開けた。
 温かな春の宵、ひと一人が眠る部屋にはすこし温気がこもり、綾子の匂いが
たちこめている。
「あーあ、はだけちゃって・・・風邪ひくぞ。」
「ん~・・・っ!」
暑いのか布団をはだけて眠っている綾子に、肌掛けだけを掛けてやったが、綾子は
うっとうしそうな声を出してまたそれをはねのけてしまった。
「あつい~・・・。」
「暑いんなら脱げ!」
目を閉じたまま、綾子がジーンズのボタンに手を掛けるのを見て、祐一はちょっと
驚いた。普段、よほどセクシュアルなシチュエーションでなければ祐一の目の前で
服を脱いだりしない綾子なのだが、今夜はそれだけ酔っているのだろう。
 うす闇の中で、真っ黒に見えるジーンズからむき出された真っ白い脚・・・綾子は
寝たまま臀をあげて足を抜き取った。

103:花とせんべい 7
12/04/27 23:11:58.15 ArJoiCbI
「ほんと・・・暑いな・・・。」
祐一はその脚に口づけしたい衝動をこらえて窓際まで歩き、窓を開けて新鮮な空気を
取り込んでやった。
「のど・・・カラカラ・・・おみず・・・。」
綾子の子供のような訴えに、祐一はやれやれと思いながら階下のキッチンに水を
取りに行った。                                    

「・・・綾子、水・・・。なんだ、また寝ちゃったのか。」
綾子はまた肌掛けをはだけ、チュニックブラウス一枚で長い脚をさらして横たわって
いた。白地に黒い水玉模様で、バストの周りと肩紐と裾に黒いレースをあしらい、
胸の真ん中に黒いリボンのついたチュニックは、パーカを着ている時は別にどうという
こともなかったのに、こうして一枚だけで着ていると、まるで男を誘う娼婦の装いの
ように扇情的だった。
(なんつーエロい服・・・綾子ってなんかちょっとセンスずれてるんだよな。)
デキる女風の外見なのに、中身は乙女で可愛いものが好きな綾子は、祐一とのデート
など、ここぞと言う時にリボンやレースのついた服や下着を身に着けることが多い。
それは時に似合っていないこともあるのだけれど、そのアンバランスな組み合わせが
妙にそそるのだった。
(ま・・・そこがエロくていいんだけどさ。)
「綾子・・・ホラ、みず・・・。」
なんとしても綾子に起きてほしくなった祐一は、冷たいペットボトルを綾子のほおに
押し当てたが、綾子は顔をしかめるだけでいっこうに目を覚まさない。
「しょうがないな・・・。」
祐一はペットボトルの水を口にふくむと、綾子の頭の後ろに手を入れて少し起こし、
口うつしに水を飲ませた。
 こくん、と音がして綾子が水を飲みくだした。・・・けれど、綾子は満足そうな
顔をしただけで、また寝入ってしまった。
「寝るなよ~・・・!」
ここまで来て、祐一はもう引き返せないほど綾子が欲しくなっていた。幻想的な
夜桜の下で、川面にうつる灯に照らされていた綾子のうつくしい横顔がよみがえり、
祐一の胸を妖しくざわめかせる。

104:花とせんべい 8
12/04/27 23:12:59.48 ArJoiCbI
 祐一は立って行ってさっき開け放った窓を閉めた。綾子の上にそっとかがみこみ、
少し透け感のある水玉模様のチュニックの裾をまくりあげる。ブラのホックを外して
やると、綾子が気持ちよさそうに大きな吐息をついた。                 
「ふうぅ・・・ん・・・んん・・・。」
あらわになった胸乳を大きな手で包み込み、円を描くように揉みはじめると、綾子は
目を閉じたまま、甘えるような鼻声を出した。
「んん・・・んぅ・・・ふぁ・・・ん。」
とがり始めた先端を口に含んで舐めころがすと、両腕を顔の高さに上げて枕をつかみ、
腰をくねらせる。明らかに感じている様子なのに、綾子はまだ目を覚まさない。
 淫らによじれた腰からショーツを抜きとる。シャンパンイエローに黒い小花模様の
小さなそれは、汗で少し湿って、綾子の太腿でくるくると丸くなってしまい、祐一は
脱がせるのに苦労した。
(可愛いんだか、エロいんだか、わかんねえよ・・・!)
酔っ払って正体のない女の下着を一枚一枚脱がしている自分が、相手は妻とはいえ、
なんだか犯罪者のようで、祐一は自嘲的な気分になりつつも、後戻りはできない。
 
(目を覚まさせてやる・・・!)
両足首をつかみ上へと持ち上げる。Mの字型に開かされた脚の中心部は、とろりと
潤んで光っていた。
「ふぁ・・・?」
熱くとろけるそこに口づけると、綾子がぴくりと震えた。両腿を肩にかつぎあげる
ようにして秘部の全容をあらわにし、襞の谷間を舌がさまよい始める。
「ふっ・・・ぅうん・・・ぁ・・・ふ・・・。」
手で押さえている太腿に力が入り、空中に突き出された足がびくびくと震えた。
「・・・ゃっ・・・ぁ・・・あっ・・・んっ・・・。」
腕の中で暴れる綾子の両脚にかまわず、祐一は舌で花芽を吸いたてた。
「・・・ゃあ・・・んっ・・・んやぁあっ―――!」
ぴんと突っ張った四肢から力が抜け、ぐったりとなった両脚を、祐一はゆっくりと
下ろしてやった。                                  
「え・・・。やっ・・・あっ・・・やだ、ゆうちゃん・・・!」
夢うつつの中で絶頂をきざみ込まれ、朦朧とした綾子の瞳に、自分の下腹部から
顔を上げた祐一が映った。

105:花とせんべい 9
12/04/27 23:13:55.74 ArJoiCbI
「・・・ごめん。ガマンできなくてさ・・・。」
祐一に組み敷かれている身体をよじり、丸くなって祐一を避けようとしている綾子の
顔を唇で追い、頬に口づけながらささやいた。
「・・・ひどい・・・わたし・・・わからなくなってたのに・・・。」
意識のないまま、素裸に剥かれ、達かされてしまった・・・綾子は羞ずかしさで
混乱し、祐一を責めた。
「だって・・・あやが、あんまり可愛いから・・・。」
「そっ・・・!」
綾子が何か言いたげに開いた唇を奪う。綾子自身の蜜を残す舌に舌をとらわれ、
強く吸われると、先ほどの絶頂感がよみがえって綾子の身体をつらぬいた。
「――っ!」
声も出せず身体を震わせる綾子の手に、祐一が張りつめた剛直を握らせた。
「今日の綾子・・・きれいだし・・・エロいし・・・。」
「あ・・・。」
「綾子のせいなんだからな・・・責任とってよ・・・。」
痺れるような絶頂感で無理やり目覚めさせられて混濁した頭がようやく覚めると、
綾子は、今手の中にあるこの充実に満たされたいと強く求めている自分に気づいた。
「キス・・・して・・・・・・ゆう、ちゃ・・・――っ!」
大きな瞳に吸い込まれるように口づけながら、祐一は綾子のなかに押し入った。
あまりにも性急な挿入に、綾子が小さな悲鳴をあげる。
「・・・んぁっ・・・ぁっ・・・ゃ・・・ま・・・って・・・!」
綾子を隙間なくいっぱいに埋めつくした祐一の分身が、激しく主張し始める。
 さっき、うつつないまま口淫をほどこされた羞ずかしい姿勢のまま、曲げられ、
大きく広げられた両脚の間に迎え入れられた祐一の腰が、うねるように上下した。      
「・・・ぁっ・・・ゃっ・・・まっ・・・ゆ・・・ちゃ・・・。」
完全にペースについて行けず、きれぎれにあえぎながら祐一の激しい動きに
揺さぶられるばかりの綾子は、それでも足を立て、祐一に合わせようと腰を上げた。
「ぁあっ・・・っや・・・だっ・・・ぁああっ・・・!」
膝の裏を祐一の両手につかまれ、身体を折り畳まれるようにしてさらに深く抉られる。
「だめっ・・・だっ・・・ゅ・・・う、ちゃ・・・ぁああ――っ!」
脚を拘束されたまま絶頂を刻み込まれ、綾子の宙に浮いた両足がびくびくと痙攣した。

106:花とせんべい 10
12/04/27 23:15:12.50 ArJoiCbI
・・・強くつかまれていた両脚がそっと下ろされる。綾子は次の瞬間、祐一の少し汗ばんだ
逞しい胸がゆっくりと覆いかぶさってくるのを待った。だが・・・。
「・・・ぁ・・・んっ!」
祐一のかたちにぴったりと密着していた肉の襞から、羞ずかしい音とともに剛直が
引き抜かれ、綾子は思わず声を上げて腰をふるわせた。
「・・・ゃ・・・んゃぁあっ・・・。」
身体をひっくり返され、腰を持ち上げられて背後からまたつらぬかれる。酔いと
快感が腕の力を奪い、上体を起こしていられなくなって、綾子は枕に突っ伏した。
「あや・・・このカッコ・・・無理?」
顔を枕に押しつけたままの綾子を心配し、祐一は背後からしっかりと綾子を抱き
かかえると、そのままゆっくりと後ろへ倒れた。
「・・・ゃ・・・ぁ・・・。」
後ろから貫かれながらも自分が上になるという変則的な体勢に、綾子があえいだ。
祐一は上体を起こして半開きの唇を舐め、舌を吸いながら、今度はゆっくりとした
テンポで責めはじめる。
「・・・ぁ・・・ゆ・・・ちゃ・・・ぁっ・・・あ・・・。」
綾子が伸ばした手に指をからめ、祐一がしっかりと握ってやる。
「・・・ぃ・・・くっ・・・ぃき・・・そ・・・ぁあ!」
快を訴えながら必死で祐一を振り返る綾子の可愛い舌を甘噛みしてやりながら、
上になった大腿をつかんで挿入をめ、下から激しく揺すぶりたてる。
「・・・達け・・・達けよ・・・!」
祐一に命じられるまでもなく、綾子は啼きながら激しく身体を痙攣させた。
その収縮のなかに、祐一も全てをそそぎ込んだ。                     

 まだ時おりひくついている身体からゆっくりと引き抜くと、綾子がひときわ大きく
息をついた。大切に横たえてやってから、そっと抱きしめる。小さく開いた唇に唇を
重ねる。同じ恍惚を共にした後の口づけはことさらに甘く、やわらかだった。
「・・・綾子・・・大丈夫か?」
唇が離れたあとも、まぶたを開けない綾子のほおを祐一は小さくたたいた。
「・・・快すぎ、た・・・?」
だが、快感のあまり気を失ったのでもなく、綾子は早くもすうすうと寝息を立てて
眠っているのだった。

107:花とせんべい 11
12/04/27 23:16:02.66 ArJoiCbI
「なんだ・・・。」
事後、女は相手と触れ合いたがり、男はさっさと離れたがる・・・とはよく言われる
ことである。もちろん甘えたがりな綾子は、愛し合った後何度もキスしたり、
抱きしめられることをのぞむのが常だが、祐一もそんな綾子を甘やかしてやることが
嫌ではなかった。触れ合ううちに、エロティックな記憶を反芻し、相手を心底
満足させてやれたという達成感に浸るのも悪い気分ではないと思う。

「・・・明日、何にも覚えてなかったりしてな・・・。」
ちょっと拍子抜けして、祐一はつぶやいた。自分を拭くついでに、綾子もきれいに
してやって、ふとその紙を見たりしてみる。
「俺は何をやってんだ・・・。」
すやすやと眠る綾子をしっかりとタオルケットでくるんでやり、上掛け布団を
かけてから、眠る子供にするように額にキスした。
 祐一にすべてを奪いつくされ、眠りにおちた綾子の無邪気な寝顔を見ていると、
この女を誰にも会わせず閉じ込めておきたいような、危ない独占欲にかられる。
「惚れてるから・・・さ。」
自分で自分の台詞に照れて、祐一も綾子の隣にもぐり込むと、目を閉じて眠りについた。  

 数日後。店番をしていた綾子がふと通りを見ると、見たことのある男性と
目があった。
「あ・・・。」
「おや・・・これは。」
それは『うすずみ』を分けてくれた加賀谷だった。綾子はカウンターの後ろから
走り出てきて、先日のお礼を言った。
「どうでした・・・もう飲まれましたか?」
「はい!・・・ちゃんと桜の下で・・・。すごく、おいしかったです。」
美味ゆえに飲み過ぎてしまって、その後のことは・・・とても他人には言えない。        
「・・・おせんべい屋さん、なんですか。」
「はい・・・あ、これをおつまみにして飲んだんです。・・・すごく合うんですよ。」
綾子は自分のお気に入りのゆず醤油味のせんべいを手にとって加賀谷に示した。
「へえ、おいしそうだな。・・・いろんな味があるんですね。」
加賀谷は、綾子お手製の商品の説明書きに目を走らせた。
「あ・・・これなら、いろいろ味見できますよ。・・・どうぞお持ちください。
 この間のお礼です。」
綾子はいろいろな味のわれせんの入った袋を手早く包み、遠慮する加賀谷に渡した。

108:花とせんべい 12
12/04/27 23:17:00.20 ArJoiCbI
 次の定休日の前日。
「ねえ・・・今夜は外で食べない?」
「ん・・・いいよ。どこ行く?明日なら遠くへ行けるけど、今日は近場だぞ。」
「うん。近場も近場。この近所だよ。」
綾子に引っ張られて向かった先は、近所ではあるがあまり馴染みのない一角にある、
よく手入れされた古い町屋ふうの店だった。
「『銘酒 かがや』・・・これって、もしかして・・・。」
「へへ・・・私が開拓したお店だよ。」
普段ふたりが行く店は、ほとんど地元っ子の祐一が知っている店なので、今日は
自分が先に知っている店に案内できて、綾子はちょっと得意げだった。          

「いらっしゃい・・・おや、これはようこそ。」
「こんばんは。今日は主人を連れてきました。」
「どうぞどうぞ・・・あのおいしいおせんべいを焼いてる方ですね。」
白木が清潔なカウンターに案内され、冷酒とつきだしが置かれる。
「あ・・・。」
竹で編んだ小さな箕に乗っているのは、『ささき』で売っているわれせん・・・。
「おっしゃるとおり酒によく合うんで、かわきものに使ってみたら、評判が
 良くってね。・・・今度から卸してもらえませんかね?」
「・・・ほんとですか?」
綾子は思わず祐一と顔を見合わせた。思わぬところで商談成立である。         

 加賀谷の妻という穏やかそうな女性がおいしそうな酒肴を運んでくれる。
自分が商売の役に立ったという嬉しさもあり、綾子は性懲りもなく杯をかさねた。
「おい・・・そのくらいにしとけよ。また歩けなくなるぞ。」
「だって・・・おいしいんだもん・・・お酒もお肴も。」
「・・・ふうん・・・でも、俺はもう嫌だからな・・・。」
「え・・・何が?」  

109:花とせんべい 13
12/04/27 23:21:29.52 ArJoiCbI
「・・・前の晩のこと覚えてない奴とスるのは・・・。」
「え・・・ちょ・・・ゆうちゃん!」
綾子があわてて声をひそめて祐一をたしなめた。
「こ・・・こんな所でそんな話・・・。」
「じゃあ、酒はそのくらいにして、腹減ったからラーメン食いに行こ。」
「もお~。せっかくいい雰囲気なのに・・・。」
カウンターの上の大きな花瓶に無造作に投げ入れられた桜の下で、ほろ酔い加減の
綾子が恨めしそうに祐一をにらんだ。

「おや・・・もうお帰りですか?」
「楽しかったです・・・また寄らせていただきますね。」
「・・・せんべいの件は、またお店にうかがった時に・・・。」
「はい。ありがとうございます。お待ちしてます。」
涼しい顔で加賀谷と挨拶を交わしている祐一の横で、綾子は顔が火照るのを
どうしようもなかった。

「もぉ・・・ゆうちゃんて意外と根に持つんだから。ちゃんと・・・覚えてるもん。」
店を出て歩き出してから、綾子が小声で言った。
「へえ・・・じゃあ、どんな順番だったか言ってみ?」
「じゅ・・・そんなこと、言えないよ!」
「ほら、やっぱり覚えてない。・・・やっぱり俺ってそれくらいのもん?」
「ち・・・違うって!」
「じゃあ、明日ちゃんと順番覚えてて報告しろよ?」
「え・・・。」
綾子が真っ赤になってうつむいた。祐一はラーメン屋の灯りを目指してさっさと
歩いていく。
「ま、待ってよ・・・ゆうちゃん。」
綾子があわてて後を追う。もうすっかり散ってしまった花びらが道路に散り敷き、
温かい風に舞っている、しあわせな夜だった。

110:名無しさん@ピンキー
12/04/28 06:34:44.58 rTFb+5Uw
>>97
GJ!
綾ちゃんの寝姿にモンモンするゆうちゃんがいいw!
綾ちゃんも旦那様の為に奔走して健気で可愛い。
今回もいい味のオリキャラが花を添えて楽しかったです(*´∀`*)


111:名無しさん@ピンキー
12/04/29 20:25:42.95 KKsj05Vt
>>97
あーんしてもらったり酔ったりして甘える綾子さんの可愛らしさとか
一回思い止まったのに結局襲わずにいられなかったゆうちゃんとかw
萌えましたわーGJ!

112:名無しさん@ピンキー
12/04/30 09:30:55.65 jLb+pI2f
グッジョブグッジョブ!!
綾ちゃんの寝姿にムラムラして襲う祐ちゃん最高w「可愛いんだか、エロいんだかわかんねーよ!」って本当に言いそうだあ
貴方の作品では、綾ちゃん23歳誕生日のお話も大好き!(もし違っていたら、ごめんなさい)


ふと思ったんだけど、
ゲゲも幾度となくフミちゃんの無邪気に眠る顔みて襲っていたんじゃないかなー

113:名無しさん@ピンキー
12/05/01 23:53:23.15 d043QW5q
>>96
62ですがネタ拾ってくれてだんだん!
おせんべいとお酒の組み合わせとは思いつかなかった…
お酒によってもたらされるエロス最高でした!

114:名無しさん@ピンキー
12/05/02 22:48:41.44 wXsctqKq
>>112
寝込みを襲っても仕方ないですねぇって受け入れてくれそうでそんなふみちゃんに萌えるし
そのへんに甘えまくるだろうゲゲさんにも萌えるw

115:名無しさん@ピンキー
12/05/04 08:41:16.33 EJptB3Xe
掃除して怒られて初めて意見してからの仲直りの自転車…やっぱたまらん!

116:名無しさん@ピンキー
12/05/05 11:43:25.06 UnUCn9bo
今日も朝からごろごろしまくったぜ…
自分この時期はリアルタイムで見てなかったし、見はじめた後もずっと昼ので見てたから
朝からこんな萌えを補給できる偉大さを初めて知ったよ!

117:名無しさん@ピンキー
12/05/06 20:41:29.83 F7b49vrd
「ハートですなあ」とかナニどこの学生カップルですかとw
墓場でまったりデートとか意表ついててたまらんわ。

118:名無しさん@ピンキー
12/05/07 13:05:40.90 m9/3dJQ/
すいません、綾子さんと祐一さんて誰ですか?

119:名無しさん@ピンキー
12/05/07 14:49:51.88 mvR4XfAP
「いちごとせんべい」でググれ

120:名無しさん@ピンキー
12/05/09 09:09:29.63 1SOPIVso
割れたせんべいも見るといいよ!

衿直しとか今日の「ないーっ!」とかのイチャイチャがもうほんとたまらん!

121:名無しさん@ピンキー
12/05/09 09:28:25.86 GdWHLjEv
奥さんに原稿料とりに行かせたというのは実話なんだけど、
「払い渋る出版社に、新妻を行かせればガードがゆるむかも。」
と言う作戦だったらしい。お嫁さんもらって嬉しかったんだね。
昔の自伝では奥さんに関しては実にそっけないんだけど、わりと最近の本には
空き瓶に野の花や百面相など、「これも実話?!」なエピが多くてほのぼの。
そしてそれをうま~く組み合わせる脚本の妙技に脱帽です。

122:名無しさん@ピンキー
12/05/10 09:56:45.67 RfdoJevu
>>121
「これも実話!?」ってほんと多いよね
本当に丁寧に聞き取って脚本作ったんだろうなぁと思う
ゲゲゲの丁寧さが本当に好きだ

そして今日の手先が器用なんだなぁイチャイチャはやはり至宝w

123:名無しさん@ピンキー
12/05/10 21:29:05.00 7Al0mO4M
>>122
ゲゲに手を取られただけで恥ずかしそうなふみちゃんはかわいいよねぇ。
やっちまってから「あ」と手を離すゲゲもどんだけ照れ屋なのかw

124:名無しさん@ピンキー
12/05/11 19:59:26.73 vZs0bol2
>>123
他意はなかったんだから堂々としてそうなもんなのに、照れちゃうあたり
いくらゲゲさんでもやっぱり普通に新婚さんなんだなぁと思ってニヤニヤしてしまうw

125:名無しさん@ピンキー
12/05/12 19:03:44.89 lz+cHhIP
あのものすごい喜びようのふみちゃんの頭を撫でてるしげーさんが素晴らしすぎて

126:名無しさん@ピンキー
12/05/12 22:05:49.77 fWBLChlM
ヤッターダンスのあと「あなた、すごいです!」ってゲゲもちょっと回らされてるなw
あの涙のあと、ぎゅっと抱きしめないのが本編の素晴らしさ
抱きしめたり、そのあともあんなことやこんなこと…と妄想して楽しむのがこのスレの素晴らしさ



127:名無しさん@ピンキー
12/05/12 22:30:19.50 av0oOMud
あんな奥さんいたら可愛くて可愛くてしかたないだろうな。

128:名無しさん@ピンキー
12/05/13 21:51:46.35 r4kL2FKG
生姜すりおろす姿とか褒めてるのが聞こえないくらいの集中っぷりとか
アシスタントしてるときもキレイかわいい

129:名無しさん@ピンキー
12/05/14 23:02:15.69 mv2JtJSA
今日イタチが風呂の後着てたのってきっとしげーさんの服だよね
あれ着てた時ってあったっけ?境港の時だっけ?
どれにしろあれもっと着てほしかったなー

130:名無しさん@ピンキー
12/05/16 17:37:56.79 DQzE8XIx
どんどん夫婦になってくなー
あー、ほんと良いなぁゲゲゲは
見てて心地好いし、そして何より萌えるw

131:名無しさん@ピンキー
12/05/17 11:05:43.25 9wWRTxCZ
いちせんパロです。
興味のない方はスルーでお願いします。

本編はいよいよ萌えがふかまるばかりなのですが、この辺りはちょっと
書き尽くしてしまっていて・・・。ゲゲふみはもう少しあとになります。
あ、もちろん新しい視点で新婚時代を書いてくださる方があれば大歓迎です。

自分は正直、いちせんは最初なんだか恥ずかしくて書けない!と思っていた
のですが、書いてみたら意外と書けるんですなこれがww
最初に書いたのが綾ちゃん23才の誕生日のお話なんです。
お褒めのレスをくださった方、どうもありがとうございます。

われせんでゆうちゃんが企画していた南国リゾートを実現させてみました。
この二人には、ゲゲふみが出来ないこと(デート、旅行、おしゃれ等)を
存分にしてもらえるので書いてて楽しいです。一方、ゲゲふみには
ゲゲふみにしか醸し出せないせつなさや萌えがあるわけですが・・・。

132:セント・オブ・ラヴ 1
12/05/17 11:06:46.74 9wWRTxCZ
「綾子、ちょっと盛り過ぎじゃない?」
「え・・・こ、これは元々こうなってる水着なんだよ!」
ちょっとシーズンオフのビーチリゾート。パラソルの下でサンドレスを脱いだ
綾子の水着姿は、小さなフリルがいっぱいついたフランボワーズ色のトップスと、
白い胸元の対比がまるでおいしそうなお菓子を思わせる。思わず釘付けになった
目をそらし、祐一は照れ隠しに綾子の胸をいつもよりちょっと豊かに見せる
水着に文句を言ってみた。
「・・・俺は内実を知ってるんだから、盛る必要なんかないのにな。」
「な・・・内実ってなによ!」
たしかに、ちょっと寄せて上げる効果のあるものを選んだのは事実だけれど、
お世辞でも少しはほめてくれたっていいのに・・・綾子は少しふくれっ面になる。
「怒るなよ・・・美味そうだなって思っただけだよ。」
「・・・うん。へへ・・・いい色でしょ?マカロンみたいで・・・。」
綾子がすぐ機嫌をなおして微笑んだ。
(そういう意味じゃ、ないんだけどな・・・。)
半年前にハネムーンに行ったきり、せんべい屋を切り盛りする生活に追われ、
結婚してから旅行らしい旅行に行くは今回が初めて・・・。リゾートで着る
新しい水着に心弾ませている綾子を、祐一はほほえましく見つめた。

 祐一と綾子が結婚して二ヶ月ほど経った頃、結婚後初めての夫婦げんかをした。
綾子の父の機転もあって仲直りしたのだけれど、その時、祐一が提案したのが、
この南の島への旅だった。ずっと前から考えてくれていたらしいこの旅行を実現
できたのは、それからまた三ヶ月以上経った今なのだ。
「はあ・・・やっぱり海はいいなあ・・・。」
祐一がデッキチェアに寝転がって気持ちよさそうにのびをした。
「うん・・・新婚旅行は雪国だったもんね・・・。」
「ま~だ恨んでんの・・・?新婚旅行は海外のスキーリゾート行こうねって言って
 猛練習してたの綾子じゃん。」
「う・・・だって、まさか4月にスキー出来るとこあるなんて思わないし・・・。」
「ところがどっこい、あるんだな~、これが。」 

133:セント・オブ・ラヴ 2
12/05/17 11:16:34.64 9wWRTxCZ
日本とは比べ物にならないくらい広大なゲレンデに『自己責任で』と看板が
立っているカナダのスキーリゾートは、猛練習したとは言えまだまだ初心者の
綾子には厳しいものがあった。
「で・・・でも、カナダも楽しかったよ。景色もきれいだったし・・・。」
スキーはハードだったけれど、大自然の中で思い切りあそぶ昼、雪をかぶった
お城のようなホテルで過ごす温かい夜・・・ハネムーンはやはり甘くしあわせな
思い出だった。
「あ~・・・でも、こうやって何にもしないでいるのが本当のバカンスだよね~。」
綾子も祐一の真似をして隣に寝そべる。
「あ・・・そうだ、サンオイル塗ってあげようか?」
「ん~。サンオイルってか・・・日焼け止めにして。」
「え~?せっかく南の島なのに、灼かないの?」
「だって、帰ってから真っ黒な顔して店に出らんないだろ?やっぱあんまり
 感じよくないよ。」
「そっか・・・。」
地域社会で商売をしていくというのは、なかなか気を遣うことなのだった。
(大人だなあ・・・ゆうちゃん。)
ちょっとしょぼんとした綾子に、祐一が笑ってサンオイルのびんを手にした。
「綾子はちょっと灼けばいいじゃん。小麦色の綾子ってのも見てみたいよ。」
「い・・・いい!私も日焼け止めにする。・・・もうじきお肌の曲がり角だもん。」
「いいから、塗らせろよ。」
「・・・きゃ・・・やめて、くすぐったいっ!」
大量のサンオイルを垂らされ、祐一の大きな手が背中と言わず二の腕と言わず
這い回る。
「もぉ・・・わざとくすぐったくさせてるでしょ?」
綾子もお返しとばかり日焼け止めを手に逆襲にかかる。・・・いい年をした社会人の
ふたりが、こんなくだらない行為に没頭できると言うのも、南の島の解放感の
なせるわざかもしれなかった。

134:セント・オブ・ラヴ 3
12/05/17 11:17:33.70 9wWRTxCZ
「うわー。やっぱり降ってきたね。」
「うん・・・すごい水けむり。スコールってやっぱ迫力が違うね。」
あれから数時間後。ビーチで楽しく過ごすうちに、雲行きが怪しくなってきて、
ふたりは早々にホテル内に引き上げ、早めのランチをとっていた。
「あ・・・いたいた!佐々木サン、さがしましたヨ~。」
声をかけてきたのは、現地のツアーコンダクターのチャンさんだった。中国系
マレー人の彼女は、小柄だがエネルギーに満ち、常にセカセカしている。
「アナタたち、ハネムーナーなんですネ?なぜ早く言わないカ?」
祐一と綾子は唐突な質問と彼女の迫力に押され、エスニック料理を食べていた
フォークを宙に浮かせたままぽかんと聞いていた。

「ツアーの小林さんから聞いたヨ。そういうことは早く言わなきゃだめヨ!」
綾子たちのツアーの他の参加者は中高年の夫婦や女性のグループが多かったが、
みんな旅慣れているらしく、お互いにプライバシーに踏み込んでくることはなかった。
ツアーとは言ってもフリータイムだけのこの旅行で、他の参加者と接触したのは
空港からホテルまでと、今朝の朝食の時あいさつをしたくらいだった。
「あ・・・そう言えば。あの女の人に『新婚さんですか?』って聞かれたんで
 『いえいえ、もう半年も経ってますから~。』って答えたんだけど、それかな?」
「一年以内なら、新婚ですヨ!ホテルに言って、ハネムーナー用のお部屋に
 替えてもらいましたからネ!・・・あ、それから、花嫁にはスパのサービスが
 ありますから、後でドウゾ!」
「はあ・・・花嫁・・・。」
チャン嬢は言うだけのことを言って、嵐のように去っていった。後に残された二人は、
半信半疑ながらフロントで聞いてみた。ハネムーナー用の部屋と言っても、静かな
環境にあるだけで別料金ではないと言う。鍵をもらって祐一は新しい部屋へ、
綾子はサービスを受けにスパのある棟へと向かった。

「と・・・遠いな・・・。」
綾子はスパを受けたヴィラを出て、教えてもらった新しい部屋を目指して歩いて
いた。スコールは勢いは弱まったもののまだ止まず、コテージとコテージの間の
回廊に屋根はあっても、水しぶきの飛んでくる道を歩き続けるのはけっこう
大変だった。

135:セント・オブ・ラヴ 4
12/05/17 11:18:41.68 9wWRTxCZ
「え・・・ここ?」
替えてもらった部屋は、宿泊エリアの最果てにあるのではないかと思わせるほど
中心部から離れた、入り組んだ入り江の突端に一室だけ設けられたコテージで、
鬱蒼とした木々に囲まれ、ベランダの下はもう海だった。
 鋳鉄の門扉を開け、さらに重厚なマホガニーの扉を開けると、ほんのりイスラム
調のインテリアの室内は白い壁とこげ茶色の木材で統一された落ち着いた色調で、
ベランダへと続く窓からは青い海が望まれた。
 
「わあ・・・素敵。」
ベランダに出て行くと、デッキにしつらえられたソファに祐一が寝ている。
「あ・・・おかえり。スパどうだった?」
「何これ?・・・うわー、動く・・・これ、ブランコになってるの?」
長さは少し足りないが、小さめのシングルベッドほどあるソファと思ったものは、
頑丈な鎖に支えられ、押すと静かにゆらゆら揺れた。厚いマットレスに大小様々の
クッションが置かれ、小さなジャグジープールから涼しい風が吹いてくる、こんな
ブランコでお昼寝したら、最高の夢が見られそうだった。
「ここ、いいねー。ちょっと遠いけど、部屋も広いし、こんなのまであって。」
「まあね・・・ちょっと隔離されてる感じもするけど。」
確かに、孤立した立地、鬱蒼と繁る熱帯の木々に囲まれ中が窺えない建物、扉が
二重になって一戸建てのような玄関・・・ここだけが別世界の趣きだった。

「あ・・・これ、アロマランプなんだ・・・いいにおい。」
テーブルに置かれた素焼きのランプには複雑な透かし彫りが刻まれ、芳香とともに
幻想的な模様を映し出している。部屋の真ん中には天蓋のついた巨大なベッドが
あり、紗のカーテンに覆われている。
「天蓋つきのベッドって、あこがれてたんだよねー。」
部屋中を撮影していた綾子が、紗のカーテンを開けてベッドの端に腰かけた。

136:セント・オブ・ラヴ 5
12/05/17 11:22:05.85 9wWRTxCZ
「でも・・・これはこっ恥ずかしいかも・・・。」
キングサイズのダブルベッドには、白やピンクの熱帯の花々でつくった巨大な
ハートマークが描かれている。
「うん・・・俺もちょっと正視できなくて、あそこに避難してた。」
祐一も部屋に入ってきて、シックな部屋でひときわ異彩を放つ花飾りを見下ろした。
「綺麗は綺麗だけど・・・寝たら、こわれちゃうよね?」
綾子がハートマークを写真におさめながら言った。
「きゃ・・・なにす・・・!」
祐一がいきなり綾子を花で出来たハートの上に押し倒してくすぐった。
「ゃめ・・・やめて・・・きゃ・・・ゃめっ・・・!!」
くすぐっていた指が止まり、綾子の腕を押さえつけて唇をかさねる。このまま
行為に雪崩れ込みそうな激しい口づけ・・・綾子はあせった。
「ん・・・ゅう、ちゃん・・・ったら。ま、まだ早いよ・・・。」
じたばたする綾子から祐一が手を離すと、あわてて起き直ってベッドから下りた。

「ウ・・・ウェルカムドリンクあるよ。せっかくだから飲も?」
汗をかいたシャンパンバケットの中のハーフボトルを綾子が取り出すと、ベッドを
出た祐一がそれを受け取って手際よく開けてくれる。酒を満たした細長いグラスを
手に、ふたりは籐のデイベッドに腰かけた。
「乾杯!・・・ハネムーンに。」
泡立つ黄金色の液体は、飲む者を特別な気分にさせてくれる。
「昼間からシャンパンなんか飲んで・・・バカンスっていいよね。」
綾子はすっかりくつろいで、サンダルを脱いで幅広いデイベッドの上に上がり、
クッションにもたれた。バティック柄のマキシドレスの深く切れ込んだスリットから
のぞく長い脚に、祐一の目が吸い寄せられる。

「・・・昼間から、他のこともしよっか?」
祐一はグラスからひと口ぐいと口に含むと、また綾子に口づけた。シュワシュワと
した口あたりと少しの酔い心地が、綾子の官能を呼び覚ます。             
「ど・・・したの?・・・ゆうちゃん。」
「外は雨だし・・・午後はここに籠ろ?」
バカンスのせいなのか、この環境のせいなのか・・・なんだかどんどんエロチックな
方向へ流されていってしまう。綾子も観念して羞ずかしそうにうなずいた。         
目を伏せた綾子の剥き出しの肩に口づけると、エキゾチックな花の香りがした。

137:セント・オブ・ラヴ 6
12/05/17 11:23:19.59 9wWRTxCZ
「いい匂いだ・・・。」
「ぁ・・・スパで・・・アロママッサージしてもらったから・・・。」
首筋に顔を埋めて香りを楽しみながら、脚に手を滑らせる。綾子があわててグラスを
テーブルに置いた。  」
「・・・まーたこんなケシカラン服着て・・・。」
身体に布を巻きつけただけのような構造のドレスを剥ぎ取って素裸にする。スパを
受けてきたばかりの肌はいつもにも増してなめらかで艶やかだった。
「・・・ゃ・・・私だけ・・・。」
祐一は笑いながら綾子を抱き上げ、花のしとねの上に下ろすと、自分も服を脱いだ。
「これ・・・一度やってみたかった・・・ような気がしてきた・・・。」
ハートマークを形作っていた花をすくいあげると、綾子の上に降らせる。
「ゃだ・・・はずかし・・・ん・・・。」
照れる綾子を花ごと抱き込んで、深いキス・・・。綾子も甘く応え、ふたりは官能的な
キスを繰り返しながら裸の身体をからみあわせた。
 滝のようなスコールはおさまったが、雨はしとしととした降りに変わっている。
雨に降り込められた二人だけの静かな部屋に、次第にたかまる綾子のあえぎが溶けて
いった。

「あや・・・もうこんなにして・・・。」
「ぁ・・・ゃぁあっ・・・!」
細い足首をつかんで広げ、蜜をこぼす花の中心に口づける。いつもなら焦らすところ
なのに、今日の祐一はなんだか性急だった。
「だめ・・・も・・・きちゃ・・・来ちゃぅうっ・・・。」
花芯を吸いたてると、綾子があっけなく達した。つかんでいた脚を離してやると、
綾子は無意識に背中を丸め、自分の腕で震える身体を抱きしめていた。まだ余韻の
覚めやらぬ身体を抱き起こして這わせ、いきなり後ろから侵入する。
「ぁ・・・あ――!」
綾子が悲鳴をあげてシーツをつかみ、、かろうじてハート形を保っていた花々を
撒き散らした。祐一は凶暴な衝動にかられ、綾子の腰をつかんで振りまわした。
「・・・ひぁっ・・・ぁあっ!」
啼き声をあげる綾子の汗ばんだ背中におおいかぶさり、花芽に指をあてがう。
「ぃやっ・・・いや・・・あ―。」
わざと指は動かさずに、腰をつよく振りたてる。綾子のなかが祐一を烈しく絞り
あげた。

138:セント・オブ・ラヴ 7
12/05/17 11:29:24.53 9wWRTxCZ
「・・・ぁっ・・・あ・・・っ。」
つよく吸着していた肉根を引き抜かれ、綾子が達したばかりの身体をびくびくと
震わせた。腰をつかんで引き寄せられ、熱帯の花々をつかみしめた綾子の指が
それに引きずられた。
「・・・ゃっ・・・まっ・・・て・・・。」
そのままベッドの端まで引きずられ、抱き上げられる。身体中に絶頂感がどよもし
ていて、どこへ運ばれるともわからぬまま、リネンの冷やりとした感覚に気づくと、
そこはあのブランコの上だった。
「・・・やってみたかったこと、その2・・・かな・・・。」
綾子を抱き下ろすと、片方の脚を背もたれに引っかけ、大きく開かれた中心部に
身を沈める。
「だっ・・・だめっ・・・・・・ぁ――!」
休む間もない攻撃に、綾子は戸外で抱かれる羞ずかしさを感じる暇もなかった。
「ぁっ・・・あっ・・・ふぁっ・・・ちゃ・・・ゅうちゃ・・・ん。」
突き上げられるたび、涙でぼやける視界にうつるプルメリアの白い花が、ゆらゆらと
揺れる。祐一は片足を地面に着け、綾子を責めるリズムに合わせてブランコを
揺らしていた。
「・・・キス・・・して・・・ゆうちゃ・・・。」
祐一が綾子を抱き起こし、ふたりはぴったりと抱きあってキスを深めた。
「・・・ぁあっ・・・・・・また・・・っちゃ・・・。」
あえいで唇を離した綾子が泣きそうな声で再びの到達を告げる。祐一は地面に
つけた足を離した。揺れるブランコの上で、ふたりの激しい動きが早まり、やがて
がくりと止まった。
 愛しいリズムを刻みつづける綾子のなかへ、祐一は永遠とも思えるエクスタシー
の証しを注ぎつづけた。

139:セント・オブ・ラヴ 8
12/05/17 11:30:07.20 9wWRTxCZ
「・・・なんか、ダメになっちゃいそう・・・。」
紗のとばり越しに、もの憂げにまわるシーリングファンをみつめながら、綾子が
つぶやいた。この甘い香りの垂れ込める部屋で、午後じゅうを祐一と裸で過ごした。
こんな自堕落な一日の過ごし方はバカンスでなければできないだろう。          
「このカーテンに籠ってると、際限なく出来ちゃいそうな気がするんだよな・・・。」
「・・・ぁん。」
祐一の指が、弄られつくして過敏になっているピンク色の突起をつまむと、綾子が
甘い鼻声をあげた。
 あれからシャワーを浴びて、ベッドで惰眠をむさぼった後、目覚めたふたりは
またどちらからともなく求めあい、悦楽のかぎりをつくした。
「で、でも、もう夜だよ?・・・ご飯食べに行こ!」
甘い余韻を振り払うように、綾子がいたずらなゆびを払いのけた。
「うん・・・何か食べないと死にそうだ。・・・綾子に全部吸い取られちゃったからな。」
「もぉ~・・・すぐそういうこと言う・・・。」
激しく愛された後の気だるい身体を引き起こして、綾子が身支度を始めた。さっき
剥ぎ落とされたドレスを身に着ける綾子を、祐一は寝たまま見守っている。
「・・・あやこ・・・。」
「・・・ん?」
目顔で呼ばれ、綾子が祐一の上にかがみ込んだ。目と目があってキス・・・。
「・・・愛してる。」
唇が離れた後、じっと目を見ながら祐一が言った。突然の告白に、綾子は胸が
苦しくなってただ大きな瞳で祐一をみつめた。祐一は真剣な表情だ。
「うん・・・私も・・・愛してる・・・。」
やっとそれだけ言うと、綾子はまた口づけた。日はとっぷりと暮れ、空には
満点の星がまたたいている。ふたりは空腹も忘れ、長いこと唇を重ねたまま
お互いの鼓動を感じていた。

140:セント・オブ・ラヴ 9
12/05/17 11:30:58.12 9wWRTxCZ
「ふたりっきりで南の島かぁ・・・いいなぁ~。」
綾子に見せられた旅行の写真に、遥香がため息をついた。
「いいっすよねぇ~。」
紗絵も、ほおづえをついて遠くを見るような瞳をした。
 旅行から帰って来てしばらく経ったある夜。綾子はアルバイト時代の友達ふたりと
居酒屋で会っていた。
「ふ・・・ふたりっきりって言っても、パックツアーだよ。」
「でも、オプショナルツアーとか取らなきゃ、ずっとフリーで、団体行動なんて
 しなくていいんでしょ?」
「うん・・・クルーズで小島に行ったくらいで、あとは基本ビーチやホテルで
 まったりしてたね。」
「うわ~、素敵・・・これならどこへも行かずにずっとホテルにいてもいいよね。」
青い海、松明に照らされたテラスレストラン、シックでエキゾチックな客室・・・。
「ん・・・何これ?」
小さなフォトアルバムのページをめくっていた遥香が、素っ頓狂な声をあげる。
「え・・・どれ?・・・う・・・。」
天蓋から垂れる透けるカーテンに囲まれたベッドの上に、ピンクと白の花で描かれた
大きなハートの写真。
「こ・・・これは照れるっす・・・佐々木さんからのプレゼントっすか?」
「ち・・・違うよ・・・。ツアーの人たちに、結婚半年だって言ったら、ガイドさんが
 『ハネムーンならそう言ってくれなきゃ困る!』って、部屋替えられちゃって・・・。」
「で、行ってみたらこうなってた、と・・・。」
「き・・・きれいだから撮っといたんだけど、写真抜いとくの忘れた・・・。」
「乱しちゃう前に、写真に撮っておいた、と・・・。」
「もぉ~・・・すぐそっちに持ってくんだから・・・。」
実際、これらの花々はその後すぐ祐一と綾子のしとねとなってしまったわけだから、
このふたりの言うことは図星なわけだけれど、図星なだけに羞ずかしくてたまらない
綾子だった。

141:セント・オブ・ラヴ 10
12/05/17 14:21:23.12 28DGmkLW
「あ・・・お、お土産あるよ、おみやげ!」
綾子は、慌ててバッグから小さな精油のびんを二つ取り出してふたりに渡した。
「『セント・オブ・ラブ』・・・これ、アロマオイル?」
「うん・・・お部屋に焚いてあったの。すごくいい香りなんだよ。」
「・・・へえ・・・なんか癒されるっす・・・。」
さっそくフタを開けて匂いをかいでみた紗絵が、うっとりと目を閉じた。
「ふうん・・・イランイラン、ベルガモット、ローズ、ネロリ・・・ね。」
難しい顔をして成分表を読んでいた遥香が、ちょっと意地悪な顔で聞いた。
「綾子・・・さあ、これ他にも誰かにあげた?」
「え?あ・・・うん、ルームメイトだった子と・・・会社の子達と・・・。」
「・・・そんなに?」
「ごめん・・・でも、本当にいい香りだからみんなにも、と思って・・・。」
みんな同じお土産と言うのが気に入らなかったのかと、綾子はあせった。
「あ・・・そういう意味じゃなくって・・・ただこれ・・・。」
遥香が瓶に貼られた花の絵を指さしてニヤリとする。
「媚薬っていうか・・・催淫効果のあるアロマなんだよね・・・。」
「・・・え!?」
「インドネシアじゃ、これの花びらを新婚カップルのベッドに撒くそうだよ。
 ハネムーナー用の部屋に焚いてあったんでしょ?。」
「・・・うん。」
「綾子ったら、毎日この香りぷんぷんさせて歩いてたわけだ。・・・わかる人には
 わかったと思うよ~。」
「うわ~ん、どうしよう・・・これ、親にもあげちゃったよ。」
そう言えば、あの時のふたりはちょっと異常だった・・・。思い当たることが
あり過ぎて、綾子は顔から火が出る思いだった。

142:セント・オブ・ラヴ 11
12/05/17 14:22:25.60 28DGmkLW
「・・・そう言われてみると、なんかエロい気分になってきたっす。」
紗絵がほんのり上気した頬を両手ではさんだ。
 綾子は真っ赤になってしょげている。遥香はちょっと気の毒になって
フォローにまわった。
「ま、まあ・・・便利だよね。これ寝室に焚いとけば、サインになるもんね。」
「イエスorノー 枕っすか?」
「・・・サエ、あんたオヤジすぎ・・・。」
どんどん下世話になる話題に、綾子はますますいたたまれない。
「あたし・・・今、あんま彼氏と会えなくて・・・。」
いつも独特の世界を生きている紗絵が、ちょっとしみじみ言い出した。
「ウチの彼、今長野なんすよ・・・農業やりたいって言い出して。」
「あのマジシャンの彼?」
「遥香さん・・・ミュージシャンっす・・・。いや、それはやめて、逆にやたらと
 地に足が着いたこと言い出して・・・。アイツが落ち着いたら、あたしも
 いずれ田舎暮らししようかなと思って、製パン習い始めたんすけど。」
「へえ~・・・えらいねえ。」
「めったに会えないんでつらいんすけど・・・今度会う時、コレ使ってみるっす。
 お土産ありがとう、綾子さん。」
とぼけた紗絵の口から出たド直球の発言に、年嵩のふたりはなんだか毒気を
抜かれてしまった。

「・・・はぁあ・・・いいなあ、二人とも。使うアテがあってさ。」
前の彼氏と別れて一年以上相手がいない遥香が、大きなため息をついた。
「あ・・・ごめんごめん、綾子。別にそーいう目的ばっかりじゃなくて、リラックス
 するのにもいいみたいだし、私も使ってみるよ。」
「そうっすね・・・他にもらった人たちも、そんなに深く考えないっすよ、きっと。」
「そうそう。いい雰囲気になるくらいで、それ以上の効果なんて、ねぇ。」
二人は綾子を慰めようと、かわるがわるフォローした。しかしそれはそれで、
綾子を凹ませた。
(でも・・・すっごい効いちゃった人たちもいるんですけど・・・。)
綾子は複雑な気持ちが顔に出ないよう、努力して微笑をうかべた。
「・・・飲み物、空になってるよ。たのもっか?」
次々に脳裏によみがえってくる官能の記憶を必死で封じ込めながら、綾子は
冷静さをよそおってドリンクメニューを開いた。

143:名無しさん@ピンキー
12/05/18 08:59:03.77 dNs7BRjJ
>>132
ハート形の花びらとかブランコとか新婚が過ぎる!w
だがそれがいいww
媚薬に南の島の開放感で大胆な二人に萌えでGJでした

144:名無しさん@ピンキー
12/05/18 16:40:46.73 JdRBlei6
>>132
夏の島ktkr!GJです!
リゾートの開放感いっぱいのHにドッキドキでした♡
ハネムーンベビー出来ちゃうんじゃないのか、これはw

145:名無しさん@ピンキー
12/05/19 10:49:39.53 LPt2b8rH
>>132
愛する二人のリゾートGJ!
シャワーもいちゃいちゃしながら浴びたんだろうなぁ…w
内実に不覚にもワロタw

今日のゲゲゲはえいやっがかわいすぎた…
狐耳狐しっぽふみちゃんハァハァ

146:名無しさん@ピンキー
12/05/21 15:33:49.23 SnRq+XpH
132です。
われせん見直してきたら・・・orz orz orz
南国リゾートは結婚一周年の旅行だったのですね・・・。
いちせんとわれせん、服装や、短い期間に放送されたので
一ヵ月後くらいに思ってました。
保存とかしてなくてウロで書いたもので、大間違いしてしまいました。
申し訳ありません。

147:名無しさん@ピンキー
12/05/22 10:40:27.36 5nGr+i3C
われせんはウェブで見れるんだね、今日オープンのスカイツリーもまだ建設中だ(懐)
ドンマイ!>>146


148:名無しさん@ピンキー
12/05/23 23:12:16.20 YXllx6qP
小判に変えてください!ケンカとキャンディーなんて!ケンカの翌日の違いを見ると
小判のあとは本当に二人の間に特殊な交渉があったんだろうなぁと思えてしまう…w

149:名無しさん@ピンキー
12/05/24 20:49:49.69 zQqzUVN+
ガリ版いちゃいちゃと爪切りいちゃいちゃが同居してる今日は神回でしたな…

150:名無しさん@ピンキー
12/05/24 23:57:36.88 g1tqMzRl
ガリ版の原稿を取ろうとしたゲゲの長い腕が
ふみちゃんに伸びたときはドキムネでした。
そうはならないとわかってるけど、あそこで二人して倒れこまないかとか・・・。

151:名無しさん@ピンキー
12/05/25 21:00:53.77 hITy/x0i
今更、店に入り損ねたペアルックのカップルが気になったw
同じ毛糸とか布を使ったペアルックなゲゲふみとかあっても良かったんじゃないかな!w

152:名無しさん@ピンキー
12/05/26 08:40:06.53 YQGbqOO7
「結婚して一年になります」な二人がまぶしすぎる…

153:ももの花 1
12/05/27 15:00:03.11 cPzDbMVD
「うーーーーん・・・。」
薬局の店頭でクリームのびんを手にとって、フミエは考え込んでいた。
(100円あれば・・・。ちくわがいっぱい買えるなあ・・・お肉だって・・・。)
このクリームの値段で買える食品が次々と頭に浮かんでフミエを悩ませる。

 フミエは安来の実家で暮らしていた独身時代も、そんなに贅沢な暮らしを
していたわけではなかった。酒屋の商売はうまくいっていても、父の源兵衛の
市会議員選挙にお金もかかる。何より戦争中のことをよく覚えている人々の
暮らしは、戦後十何年経った今も質素だった。
 それでも娘時代は化粧水や口紅くらいはつけたものだ。けれど、茂と結婚して
東京に来てから、フミエは化粧品と言うものをいっさい買ったことがなかった。
 月に一本漫画を描いて出版社に持って行けば三万円、大卒のサラリーマンより
恵まれた収入・・・それが見合いの時の触れ込みだった。けれど現実はそれとは
ほど遠く、原稿料は時に半額になったり、一円ももらえなかったり・・・。
『金が入ったときくらいはぜいたくをせんといかん。』
いくら爪に火をともすように倹約しても、フミエと全く経済観念がちがう茂は
せっかくもらった原稿料で嗜好品を買ってしまったりする。
 貯金というものは一切なく、フミエが嫁入り道具を揃えるために実家から
持たせてもらった金もみんな生活費に消えた。米屋や公共料金の支払いもたまり、
その日その日をどう食べていくかで精一杯の暮らしでは、化粧品など買う余裕は
とてもなかった。

(チヨちゃん・・・私が100円のクリームひとつ買うのにさえ、こげに悩むなんて
 思っとらんのだろうなあ・・・。)
つい先日、懐かしい人がフミエを訪ねて来てくれた。幼馴染のチヨ子に会うのは
結婚式の前日に、大塚の尼子姫のお堂で別れて以来だった。

154:ももの花 2
12/05/27 15:01:05.05 cPzDbMVD
「フミちゃん、いつもこげに洒落た店でコーヒー飲んどるの?一月に三万円も
 収入があって夫婦二人なら、ようけお金貯まるねえ。」
フミエはすずらん商店街にある喫茶『再会』にチヨ子を案内し、コーヒーを
飲みながらおしゃべりをした。喫茶店でコーヒーを飲むなど、今のフミエにとっては
とんでもない贅沢で、この店に入るのも初めてだった。
「私なんか世間並みの年齢で結婚したのはいいけど、結局平凡な勤め人の
 おかみさん・・・はずれくじ引いたかなぁ。」
仲良し4人組みのひとり、節子が未来の大学教授夫人、フミエだって売れっ子
漫画家と結婚して花の東京暮らし・・・羨ましそうに語るチヨ子を、フミエは
複雑な思いでみつめた。
 フミエは結婚する前、チヨ子の夫が勤める会社の新製品の販促会の手伝いを
したことがあった。チヨ子の夫は優しそうだったし、縁談もダメ、仕事もダメで
行き詰っていたフミエには、夫の役に立てるチヨ子が心底うらやましかった。
「よく言う・・・。でも、ええだんな様じゃないの。東京にも連れて来てくれて。」
まあね・・・と苦笑いしたチヨ子は、多少垢抜けない感じではあるけれど、きれいに
パーマをかけ、精一杯おしゃれをしている。フミエも一張羅のワンピースを着て
髪を巻いているけれど、これは昨夜カーラーで巻いたもので、パーマをかける
お金などなかった。

(毎月決まった日に決まったお給料をもらえる生活って、どげな感じなんだろう?)
三海社と言う出版社の社長が茂の漫画を気に入り、本を出してくれることになった。
だが、せっかく前借りできた原稿料の内かなりの額を、茂は高価なカレーの缶詰や
チョコレートなどに使ってしまった。骨身を削って漫画を描き、お金を稼いでいる
のは茂なのだから、好きなものくらい食べてほしいとは思うけれど・・・。

155:ももの花 3
12/05/27 15:02:15.32 cPzDbMVD
「・・・なあ、そろそろ行こうや。」
チヨ子が急にそう言ってバッグを取り上げた。フミエは何のことやらわからなかった。
「・・・どこに?」
「お宅拝見だが。フミちゃんの新居。新居も見んで帰っては、松ちゃんにも節子にも
 怒られるわ。」
ウチに来る・・・?あのボロ家に?フミエはパニックになった。考えてみればチヨ子が
そう考えるのは当たり前のことなのだが、フミエはとっさに嘘をついて断った。
「ご・・・ごめん。今日は、ちょっと・・・。うちのひとが、家で仕事しとるの。い、今
 ようけ注文が来とって、大忙しなのよ。人が来たら集中できんて、嫌がるけん。」
茂が家で仕事をしているのは本当だが、彼は別に神経質ではない。仕事に没頭すると
話しかけても気づかないほどなのだ。
「ふうん・・・残念だなあ。」
チヨ子は少々不満そうだったが、納得したようだ。主婦歴も長くなると、亭主にも
いろいろなのがいるということを知っているからだろうか。
 はるばる安来から出て来て、せっかくの旅行中、時間を割いて来てくれたのに、
家にも寄ってもらえなかった・・・。フミエは申し訳なさでいっぱいだった。        

「コーヒーおごってもらった上に、お土産までいただいて、悪かったね。」
「・・・そのケーキすっごくおいしいけん、早めに食べてね。」
せめてものお詫びに、フミエは自分では食べたこともない洋菓子を買ってチヨ子に
持たせた。コーヒーにケーキ・・・痛い出費だ。
 駅まで来ると、チヨ子は向き直って礼を言った。
「ほんなら帰るわ。・・・今日は忙しいとこ、あーがとね。」
「チヨちゃんこそ・・・遠いとこわざわざ来てくれて・・・だんだん。」
チヨ子はフミエの手をとって握手しようとして、その荒れ加減にちょっと驚いた。
「あれ・・・フミちゃん、こげに手ぇ荒らして。」
フミエがびくりとして引っ込めようとした手を、チヨ子はやさしく包んだ。

156:ももの花 4
12/05/27 15:03:10.45 cPzDbMVD
「だんな様においしい物いっぱい作っとるけんでしょう?・・・尽くすのもええけど、
 おさんどんばっかりしとらんで、ちっとはおしゃれもせんといけんよ。」
「え・・・う、うん。」
フミエはちょっとホッとした。同い年でももう子供のいるチヨ子の手は柔らかくて
あったかく、実家の母を思い出して涙が出そうになる。
「ほれ・・・ささくれが引っかかって伝線しとる・・・。」
チヨ子が目ざとくフミエのストッキングの伝線を見つけた。
「あら・・・いやだ。」
今気づいたように言ったが、フミエは本当は家を出る前から知っていた。伝線して
いても、これしか履いていけるものがなかったのだ。
「そうだ、ええものがあるよ・・・ももの花、言うハンドクリーム。昔から、桃の葉が
 おむつかぶれやあせもにええと言うでしょう?そのエキスが入っとるけん、
 お肌にええのよ。薬屋さんで売っとるけん、そげに高いもんでもないし。」
「へえ・・・ももの花・・・。」
フミエはなぜだか、チヨ子がフミエの嘘を見抜いているような気がした。

「安来に帰った時は、連絡してね。・・・赤ちゃんできたら、なかなか来られんよ。」
なぜわかってしまったのだろう・・・そればかりを考えていたフミエは、急に出て来た
『赤ちゃん』という言葉に、過剰反応してしまった。                 
「ぅ・・・わ、私、まだそげなこと・・・。」
言葉につまって真っ赤になったフミエを、チヨ子はあきれて見つめている。
 ひとつに溶けあい、気が遠くなるほど愛されるたび、フミエの中に残される痕跡。
注がれているのを感じながら(いつ実を結んでもおかしくないなあ・・・。)と、
まだしびれている意識の中でフミエは時おりぼんやりと考えていた。
 世間の人が気やすく口にする『赤ちゃん』という言葉に、あの甘く激しい秘め事が
直結しているなど、結婚前はあまり考えたこともなかった。

157:ももの花 5
12/05/27 15:04:00.23 cPzDbMVD
「やぁだ、フミちゃん!そげに赤うなって・・・こっちまで恥ずかしくなるが。」
チヨ子に思い切り背中をどつかれ、フミエはたたらを踏んだ。
「可愛いねー、新婚さんは。そうかそうか、そげにだんな様のこと好きなんだね。
 フミちゃんはオクテだけん心配しとったけど、良かったわ・・・。」
しどろもどろに言い訳するフミエを後に、チヨ子は手を振って改札口に消えて行った。

(チヨちゃん、相変わらずぽんぽん言うけど、私のこと心配してくれとる・・・。)
小学生時代、ろくに言い返すことも出来ないフミエに代わっていじめっ子に
立ち向かってくれた頃と、チヨ子は全く変わっていない。
(それなのに、私・・・嘘言うてしもうて・・・。)
悄然と歩く姿を、こみち書房のキヨに呼び止められ、入ってお茶をごちそうになる。
「なんだい・・・女ってのはね、昔の友達に会ったら誰だってちょっとは見栄を張る
 もんだよ。」
キヨのいつもながら歯切れのいい言い切りに、少しは救われたものの、フミエの
後悔はそれだけではなかった。
(遠いところ来てくれたチヨちゃんに、家にも寄ってもらえんだった。それに・・・。)
フミエの胸がチクリと痛んだ。
(私・・・はずれくじ引いたと思っとるんだろうか?)
ふと思い出したチヨ子の言葉を振り払うように、フミエは頭をふるふると振った。
汗だくで漫画を描く茂の鬼気迫る背中にうたれ、声もかけられなかったあの暑い日。
あの時、フミエはちょうど訪れた戌井に
『あげに精魂込めて描いたものが、人の心を打たんはずないんです。売れても売れん
 でも、もうかまわんような気がします。』
そうしみじみと語った。しかし、貧乏のふた文字は、時として人を迷わせる。
フミエは、お金がないばかりに茂への想いすら揺れ動く自分が情けなかった。      

 ・・・だが、その後フミエを待ち受けていた嵐は、フミエのそんな小さな感傷をふき
飛ばすくらい激しいものだった。

158:ももの花 6
12/05/27 15:04:59.54 cPzDbMVD
「この家はどげなっとるーーーっ!!」
フミエが家に戻ると、小さなボロ家の中には、突如襲来した人間の形をした台風が
吹き荒れていた。酒屋組合の視察旅行で上京した父の源兵衛が、何の予告もなく
調布の村井家を急襲したのだ。
 貧しい家、下宿人、風呂を借りに来る兄一家・・・それに質屋通い。フミエが手紙では
おくびにも出さなかった夫婦の暮らしぶりに、源兵衛は驚愕した。
「手紙には体裁のええことばっかり書いてよこしおって・・・。」
父の怒りの前に、フミエは源兵衛の上京を知らせに来てくれた姉の暁子とふたり、
ただただ縮こまって頭を下げるのみだった。
「土曜日、帰る前にもういっぺん来るけんな。お前やちがどげな考えでやっとるのか、
 本当のところをちゃんと聞かせてもらう。村井さんにも家にいてもらえ。ええな?」
三日後の再来襲を予告し、源兵衛は去って行った。

「土曜日の再上陸に向けて、万全の備えをせねばならんな。」
茂は新しく三海社から出た新刊を前に上機嫌で、今日の源兵衛の怒りっぷりを
聞かされても、くよくよと嘆くフミエと違ってどこかのんきだった。
「始めのうちにみっともないとこ見られたら、それ以上印象悪くはならん。
 ありのままを見てもらえばええ。」
「・・・ほんなら、境港のご両親にも、ホントのところを話してくださいね。」
自分がどんな気持ちでやりくりし、実家への手紙に愚痴さえ書かないでいるか・・・
この人は全然わかってくれとらん・・・。フミエは腹が立ってきた。
「キャンディーなんか送って。よっぽど儲かっとるみたいに・・・。」
「たかがキャンディーで、何言っちょる!」
やっと前借りできた原稿料で高価な食品を買い込み、あまつさえその一部を
境港に送れと言った茂。・・・先日の憤りがよみがえり、フミエはつい言わなくて
いいことまで言ってしまった。

159:ももの花 7
12/05/27 15:06:11.50 cPzDbMVD
 次の朝。昨夜のいさかいが尾を引いて、二人の間にはぎこちない空気が流れていた。
そこへ戌井に連れられてこみち書房のみち子が村井家を訪れた。
 手ひどい失恋以来、全く来なくなってしまった太一を呼ぶために、茂に店に来て
会ってやってほしい、と言う。戌井の提案で、それなら読者のつどいとしてサイン会を
開こうと言う話になった。
「お父さんに、水木さんの活躍ぶりをアピールできる、太一君も無理なく来られる、
 しかも、新刊の宣伝にもなって・・・一石二鳥どころか、一石三鳥ですよ!」
土曜日は父が来るから・・・と言う夫婦に、戌井は読者に囲まれた茂を見せれば
源兵衛も安心するからと力説した。茂もフミエも半信半疑ながら賛成し、それぞれが
準備にかかった。
 サイン会開催のビラを茂がガリ版できり、フミエが印刷し・・・源兵衛再上陸への
備えという共通目標のためにに忙殺されるうち、いつの間にか気まずい空気は消え、
ふたりはいつものように笑い合っていた。

 サイン会当日。茂の前に行列が出来るほど人が集まり、フミエもビラ配りや甘酒の
サービスなどに奮闘し、会は大成功に思えた。しかし・・・。
「さっきの客の行列は、サクラでなーか!つまらん小細工しおって。」
客を集めようと、みち子が景品の貸本の無料券を配ったことがばれ、源兵衛は怒りを
爆発させた。
「一生懸命働いて、それでも貧乏なら、堂々と貧乏しとったらええんだ。それを
 まわりの人まで巻き込んで、ええ風に見せようとする、お前やちの考えが
 わしは気にいらん!」
茂夫婦のせいではないと、口ぐちに謝るみち子や戌井にかまわず、源兵衛は婿に
矛先を向けた。
「茂さん・・・あんたはもっと堂々とした男だと思っとった。娘が何を頼んだかしらんが、
 こげな小細工に手を貸すとは・・・。」
それまで黙っていた茂はなんの言い訳もせず、頭を下げた。
「どうも、すまんことしまして・・・。」
源兵衛は、それでもまだ茂をなじり続けた。
「ええ男に嫁がせたと思っとったが、わしの間違いだったかのう。」
シンとしずまり返る店内。さっき無料券を手に店を訪れたアベックも、ただならぬ
雰囲気に恐れをなして帰って行った。

160:ももの花 8
12/05/27 15:07:02.77 cPzDbMVD
「・・・そげなこと、言わんで。」
皆が押し黙る中、フミエの静かな声がひびいた。
「お父さんは何も知らんけん、そげな風に思うんだわ。うちの人は小細工なんか
 せんですよ・・・。」
茂のマンガは、確かに売れない。恐ろしすぎて子供が熱を出すと苦情が来るし、
版元も原稿料の支払いを渋る。おかげで夫婦の生活は、いつも風前のともしびだ。
けれど、フミエは知っている。左肩で原稿を押さえ身体を曲げて、熱気がたち
のぼって見えるほど集中して漫画を描いている茂の背中・・・。
「夫婦ですけん。うちの人が精魂込めて描いとるとこ、一番近くで見とるけん。」
フミエはいつしか、父から守るように茂に寄り添っていた。
「・・・うちのひとは、本物の漫画家ですけん!」
おとなしくて言いたいこともろくに言えなかった娘の、思いがけない反撃・・・。
夫の腕を取って父と対峙したフミエの顔は、悲壮でありながらも美しかった。

 季節外れの台風は小さな見栄や思惑を吹き飛ばし、あとにはすべての枯葉を
落としてすっくりと立った大木のような真実だけが残った。

 貧乏ではあるけれど、精一杯生きていて、周囲の人々にも恵まれている娘夫婦の
暮らしぶりに得心し、源兵衛は帰途についた。フミエは久しぶりに父と連れ立って
駅まで歩いた。
「化粧品でも、買えやい。」
源兵衛が、ちり紙に包んだ小さな四角いものを渡した。紙幣が透けて見えている。
「・・・だんだん。」
フミエはじんわりと嬉しかった。あの厳格な父が『お母さんには内緒だぞ。』
と言ってこづかいをくれるなんて・・・。
「なあお父さん・・・お金はないけど、私、毎日笑って暮らしとるよ。」
「・・・そげか。」
台風一過の晴天のような静かな晴れやかさで、源兵衛は安来に帰って行った・・・。

161:ももの花 9
12/05/27 15:08:15.68 cPzDbMVD
(エイッ・・・買おう!)
フミエはがま口を開いて百円札を取り出した。
 父がくれた小遣いは、千円札が二枚・・・。けれど、それは公共料金の支払いや
食費にたちまち消えるだろう。
「これ・・・ください。」
「はいよ・・・ああ、ももの花。これ、発売以来すごい人気でねえ。これからの季節、
 乾燥するから、手荒れにゃもってこいですよ。」
薬局の主人は、愛想よく笑いながら商品を紙袋に入れた。

 数日経ったある夜。
「・・・ん?なんか、手がスベスベしとる・・・。」
口づけられ、ゆかたの襟元から肌をさぐられ・・・これから二人たかまっていこうと
しているさ中にふと手を取られ、フミエはドキリとした。
「気持ち、ええな・・・。」
その手をほおにこすりつけ、唇を這わせる。くすぐったく、もどかしく、フミエは
火がつき始めたのに放ったらかされた身体をもじもじと悶えさせた。
「ええ匂いもするな・・・。」
こうなっては、しかたもない。フミエは少し息をはずませながら謝罪した。
「・・・すんません。あの・・・私、いらんもの買うてしもうて・・・。」
「ん・・・なんだ?出し抜けに。」
茂は何事かと手を離した。フミエは乱れた襟元を直しながら立ち上がると、
姫鏡台の引き出しに入れてあった白いガラスびんを取り出した。
「これ・・・です。」
女の化粧品などに全く興味のない茂は、けげんな顔でフミエを見ている。
「父が・・・この間、帰り際に、その・・・お小遣いをくれまして・・・。」
父から小遣いをもらって、それを黙っていたのもちょっと心ぐるしい。
「『化粧品でも買え。』と言うて・・・。それであの・・・生活費に使わんといけんと
 思いながら、手が荒れとったもんで、これ買うてしもうたんです。」        
なんでもよく観察する茂は、白いびんにピンクのふたの容器をためつすがめつ
見ている。

162:ももの花 10
12/05/27 15:09:32.00 cPzDbMVD
「ふうん・・・いくらするもんだ?」
「・・・百円、です。」
「・・・ひゃくえん?」
茂は拍子抜けしたように素っ頓狂な声で聞き返した。                
「仰々しく謝るけん、どげに高価いもんかと身構えとったら・・・たった百円か?」
「あ・・・あなたは、二百円もするカレーやお菓子平気で買うけんそう言われるけど、
 百円あったら豚コマがいっぱい買えるんですよ!ちくわだって・・・。」
謝っていたはずなのに、なぜか矛先は茂に向かっていた。
「またそれか・・・。なしてそげにみみっちいことばっかり言うんだ!」
これではこの間のけんかの続きになってしまう。茂は黙ってフミエを抱き寄せた。

「・・・続きをしてほしいのか、してほしくないのか、どっちだ?」
「・・・っ・・・つづき、って・・・んん・・・。」
返事を待たず唇を奪い、前で結んだ帯を解く。首筋を舌でなぶりながら手を取り、
てのひらを指でくすぐる。
「親父さんがくれた小遣いなら、あんたが好きに使ったらええ。」
「・・・んは・・・ぁ・・・ん」
くすぐったさと快感に身をよじるフミエの裸身が、脱げかけの浴衣の上で踊った。
「俺も、使ってみてもええか?」
茂はびんのふたを器用に片手で開けると、白いクリームを指先に取った。
「・・・ひゃっ・・・!」
冷たい感触にフミエは思わず小さく叫んだ。下着の前からしのび込んだ指が、
熱くうずき始めた花芽にひたりとクリームをなすりつけたのだ。
「脱げ。」
手を差し入れられたまま、フミエは下着に手をかけた。脱ごうとするたび
腰が動いて、ぴっとりと指を当てられた部分が勝手に感じてしまう。フミエは
快感に耐えながら、腰をよじってなんとか下着を脱ぎ終えた。                   
「こげに熱くしとるけん、溶けてしもうたな・・・。」 
「・・・ぁあっ!」
ぬるり、と指が動かされ、フミエが声をあげて腕にしがみついた。

163:ももの花 11
12/05/27 15:10:28.35 cPzDbMVD
「ちょっこし、手伝え・・・。」
しがみついた手を放させ、指をとって花芽に押し当てる。
「ぃや・・・。」
いやがる指を親指で押さえつけ、一番長い指をフミエの奥に挿し入れる。      
「・・・ゃっ・・・ぁあ・・・。」
「離すな・・・よ・・・。」
前の部分はフミエにまかせ、挿入れた指を深める。のけぞったフミエの乳の
先端を口に含んでつよく吸った。
「ひぁ・・・だっ・・・だめっ・・・!」
「自分で、快うしてみい。」
「・・・ぃや・・・おねがい・・・あなたが・・・。」
自分で弄ることには忌避感があるらしく、フミエは泣きそうな声で懇願した。
「しょうがないな・・・。」
茂は深めた指を少し浅くし、フミエの指を親指で押しながら動かした。
「ゃ・・・っ!ぁ・・・ぁあ―――!」
いつしかフミエの指もともに動き、本能のままに腰が揺れた。悲鳴とともに、
フミエの内部が茂の指を断続的にしめつけた。愛らしい反応を楽しんでから
そっと指を抜く。フミエは前を手で覆ったまま、身体を丸めて余韻に震えた。
「ええ匂いだ・・・。」
蜜にまみれた指を、悲鳴の形に開いたままの唇に差し込んで、舌をなぶる。
「女が、ええ匂いをさせとるのは、ええもんだ・・・。」
口づけながら、大きく開かせた両脚の中心をぐいと侵す。
「んぁっ・・・ぁ―――っ!」
フミエは腰を弓なりに反らせ、枕から頭を落として髪を振り乱した。茂が
手を伸ばして枕を拾いあげ、ぐっと突き上げてフミエの腰を上げたままにすると、
その下にあてがった。
「ぃや・・・ぃ、ぃゃあ・・・っ!」
腰が上がったままになり、より茂を受け入れやすくなった蜜壷を、逞しい肉根が
容赦なく出入りする。
 快いところに引っかかるのか、フミエは半狂乱で茂の背に爪を立てた。
「―――!」
名を呼ぶことはおろか、叫ぶことさえ出来ぬほど急激に追い上げられ、フミエは
水を求める魚のように大きく口を開いたまま、ただびくびくと身を震わせた。


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