【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】at EROPARO
【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】 - 暇つぶし2ch230:同床異夢 4
12/07/06 10:07:35.80 SH+XQmdz
(飢え死に・・・。)
フミエはぞっとした。日本はとうに敗戦の痛手から立ち直り、世の中はオリンピック
景気に湧いているというのに、この家では平和な現代にはほとんど聞かれなくなった
この言葉がりっぱに現実感をともなって存在していた。
「・・・俺たちはええ。だが、藍子がかわいそうでな。」
茂の仕事の妨げになるのではと心配していた藍子は、いつも機嫌よくひとりで遊び、
何でも食べ、よく眠る、まったく手のかからない子だった。
『家貧しうして孝子出(い)づ。』とは良く言ったものだ。まだ頑是無い幼子ながら、
(まるで私たちが苦労しとるのを知っとるみたい・・・。)
フミエは嬉しいようなせつないような気持ちで、眠る藍子を見やることもしばしば
だった。
「灯台員ならば、食いっぱぐれることはないだろう。」
「昔、灯台もりの映画がありましたねえ。」
「ああ・・・デコちゃんの出たやつか。俺も見たな。」
茂が主演女優を愛称で呼んだのがちょっと気になり、フミエは目を見張った。
「あら、珍しい・・・あなたが女優さんをアダ名で呼ぶなんて。でも、灯台もり役の
 俳優さんもステキでしたよね・・・。」
「なんだ、あげな長い顔が好きか。」
「あなたこそ・・・本当は、あげな小柄でグラマーな人がええんですね。」
いつも、お前ぐらいがちょうどええ、と言ってくれるのは優しい嘘だったのかしら
・・・フミエはちょっと悲しくなる。
「な、何を言っとる・・・俺は真面目な話をしとるんだぞ。」
生きるか死ぬかの話をしていると言うのに、なんとなくのんきな方向へ話がそれて
いくのはこの夫婦によくあることではあるけれど、『灯台もり』と言う言葉の持つ、
漠然としたロマンチックな響きのせいもあるかもしれなかった。

「そう言えば・・・戦争中でもまったく食べ物には事欠いておらんようでしたね。」
「海のそばで魚には不自由せんし、ましてや今は戦時中ではないけん、給料さえ
 もらえば食うに困ることはないからな。」
「でも・・・漫画はもうええんですか?」
「うむ・・・。」                                     
このひとに漫画をあきらめることなど出来るのだろうか・・・?去年の冬、フミエが風邪を
引いて鼻紙を買うお金さえなかった時、一度だけ『漫画やめて、映画の看板描きにでも
なるか?』と茂が弱音を吐いたことを思い出す。
(あの時のお父ちゃんの寂しそうな顔・・・。)
映画の看板描きならまだしも絵を描く仕事だが、灯台もりは全然お門ちがいではないか。

231:同床異夢 5
12/07/06 10:08:28.17 SH+XQmdz
「ええんだ・・・。非番の日もあるけん、ヒマな時に絵を描けばええ。元々俺は、好きな絵で
 手っ取り早く金になるけん紙芝居や貸本漫画を描くようになったんだからな。」
「あなたがそう言われるんなら、私はどこへでもついて行きますけど・・・。」
「まあもうしばらく食っていく手立てを考えてみて・・・どうにもいけんとなったら、
 イカルに手紙書いてみるか。」
二人はそれぞれ千々に乱れる想いを抱えながらぼそぼそと夕食を終えた。

「おーい、ろうそく持ってきてくれ!」
食後もろうそくの灯で漫画を描いていた茂は、ろうそくが尽きそうになっているのに
気づいて大声でフミエを呼んだ。
「もう、これしかないんです・・・。」
二階で藍子を寝かしつけていたフミエが、燭台を持って仕事部屋のフスマを開けた。
「なして買い置きしておかんのだ・・・。」
不平を言ってはみたけれど、買い置きしてない理由はわかっている。
「しかたない。明日早起きして描くことにして、今夜はもう寝ちまうか・・・。」
最後の灯りが消える前に、ふたりは二階に上がった。

「灯台いうのは、みんな最果てにありますねえ・・・。」
「まあ、灯台が町なかにあっても意味ないからな。」
布団に並んで横たわり、ふたりはまた灯台もりの話をしていた。
「どこへやられるかわからんのは、かなわんなあ・・・。」
映画では、北海道の原野の果てから、九州の離れ小島まで、主人公夫婦は日本中の
辺境をたらいまわしにされていた。過酷な自然と闘いながら灯台を守る暮らしの中で、
台員とその家族たちはさまざまな辛酸を舐める。
 けれど、世間から忘れ去られたような場所だからこそ、そこに暮らす夫婦はみな、
助け合って仲睦まじく暮らしていた。
『世間の人は、私たちがこんな所で苦労をしていることなんか知らないでしょうね。』
『お前の苦労は俺が知っている。俺の苦労はお前が知ってくれているじゃないか。』
病の床に臥し、遠くの町にいる子供のことを思いながら死んでいく妻に、夫がかけた
セリフが印象に残っていた。
(どげな苦労しても、一番近くにいる人がわかってくれたらそれでええんじゃない
 かしら・・・。)
そんなことを考えながら、フミエはいつしか眠りに落ちていった。

232:同床異夢 6
12/07/06 10:09:21.38 SH+XQmdz
(こげなことなら、もっと早ことなっとったらよかったなあ・・・。)
夢の中で、茂は灯台もりになっていた。
 どこか知らないが、温かい南国の海辺の陽光の中で、茂は満ち足りた気分でのびをした。
絶海の孤島に立つ灯台に波しぶきが寄せる風景をキャンバスに描きながら、フミエの作る
夕食を待っているところだ。
(しかし、海と灯台ばっかり描くのにも飽きたなあ・・・。今度本土に帰ったら、
 用紙を買うて、また漫画描いてみるのもええかもしれん。)
趣味で漫画を描こうなどと思えるのも、衣食住ともに足りている余裕からだった。
「お・・・荒れてきたな。」
西の方から黒い雲が湧き出し、ぽつりぽつりと降り出した雨が次第に激しさを増してくる。
茂はあわてて油絵の道具をしまい、官舎へと歩き出した。
(今日の晩メシは何だろうな・・・朝釣った魚かな?)
のんきなことを考えながら官舎の玄関を入って、茂は凍りついた。
「・・・フミエ!おい、どげした?!」
通り土間に、フミエが倒れている。大きなお腹を守るように両手で抱えてぐったりと
横たわる姿に血の気がひいた。
「しっかりせえ・・・産み月はまだ二ヶ月も先でなーか!」
油絵の道具を放り出し、フミエを板の間に担ぎ上げる。
「いた・・・急にお腹が痛うなって・・・。」
風雨が古い官舎の下見板の壁に叩きつけている。無線で助けを呼んだけれど、この嵐
では来てもらえそうにない。
「こうなったら、俺がとりあげてやるけん!」
茂は覚悟を決め、痛みにうめくフミエの腰をさすってやった。ずっとつきっきりで
励まし、陣痛が遠のいた隙に湯を沸かし、出産の準備を整える。
「がんばれよ・・・何も心配せんでええからな。映画でも雪で産婆が間に合わんで、
 ダンナがとりあげとったんだけん。」
 けれど、陣痛は次第に弱まり、いっこうに子供が生まれてくる気配はなかった。
「あなた・・・私、なんだかもうダメなような気がするんです・・・。」
長びくお産に、フミエの体力はもう限界に来ていた。
「何を言うとる?気をしっかり持て!」
手を握ってやったが、痛みの強い時に万力のような力でにぎり返してきたその手には、
もう力がこもっていなかった。

233:同床異夢 7
12/07/06 10:10:22.74 SH+XQmdz
「おい、しっかりしろ!フミエ・・・!」
茂は絶望的な気持ちで、次第に蒼ざめていくフミエの顔をみつめた。
「死んだらいけん!お産で死ぬと産女(うぶめ)という妖怪になるぞ!」
だが、何を言っても、もう冥界のふちに足を踏み入れているようなフミエには届かない。
「・・・藍子は!藍子はどげするんだ?お腹の子は?・・・死ぬな!」
茂は声を嗄らして叫んだ。
「死ぬなーーーーーっ!!」

 とたんに目が覚めた。あまりに現実感を伴う夢に、一瞬今自分がどこにいるかわから
なかった。飛び起きて見回すと、隣りにはフミエ、その向こうには藍子が眠っている。
「夢・・・か。」
大きく安堵のため息をつく。心臓はまだドキドキしていて、いやな汗をかいていた。
 今の大声で起こしてしまったのではと、フミエの寝顔を見る。暗くてよくわからないが、
なんだかうなされているようだった。
「ぃゃ・・・ぅ・・・ぃゃ・・・。」
近づいてよく見ると、フミエは悲しそうに顔をゆがめ、いやいやをするように首を横に
振っている。
(悪い夢でも見とるのか?・・・まさか俺と同じ夢か?)
「おい・・・どげした?おい・・・。」
肩を揺すり、声をかける。フミエがうなされるのをやめ、ゆっくりと目を開けた。
「・・・ぁ・・・あなた・・・タコは?」
「・・・タコぉ?」
意表をつく言葉に、茂はかなりずっこけた。
「どげな夢見とるんだ、お前は・・・。」
あきれている茂の顔を、フミエが下からガッチリと掴んで生存を確かめるように
まじまじと見た。
「な・・・何をそげに見とる?」
「あんまり本当のような夢で・・・あなたがタコに食べられてしまったとばっかり・・・。」
フミエは安心したように、ちゃんと生きている茂の頭を胸に抱きしめた。
「よ、よせ・・・くるしいが。勝手に俺を殺さんでくれ!」
茂は苦しがって、手を放させようとフミエの胸の先端をきゅっとつまんだ。

234:同床異夢 8
12/07/06 10:11:20.51 SH+XQmdz
「ゃ・・・ん。」
甘い声を漏らした唇を奪い、深くむさぼる。口腔内を愛撫しながら乳首をさらに弄ぶと、
鼻にかかった声をあげ、甘く応えてきた。
「・・・目ぇ、覚めたか?」
「・・・はぁ・・・は、はい・・・。」
唇を離すと、フミエはもう少し火が点いた身体を小刻みに震わせながらうなずいた。
「化けダコの夢でも見たか?」
フミエの溶けかけた表情がびくりと締まって、真剣な顔でみつめ返す。
 本人にとっては現実と紛うばかりの恐ろしい夢だったのだろう。茂は笑いをこらえ
ながらフミエの夢の話を聞いた。
「あなたが灯台もりになられて・・・最初はよかったんです。お給料はもらえるし、
 食べるものには事欠かんし・・・。赴任地も暖かい南国の海辺でした・・・。」
俺の夢と同じだ・・・茂は不思議に思い、次第に話に引き込まれていった。

 灯台の灯をまもり、非番の日は絵を描くおだやかな暮らし・・・。茂の釣ってきた魚が
食卓をにぎわし、庭に生えている夏みかんの木にたわわに実がみのる。
「藍子、お手伝いできる?・・・ほぉら。」
フミエがはさみで切り取った夏みかんを渡すと、藍子が真剣な表情で小さな両手に
余る大きな果実を大切そうにかごに入れる。幸せなひととき。ぽつり、と雨のしずくが
小さなほおに落ちた。
「あら、降ってきた・・・大変、シーツ干しっぱなし!藍子、おうちに入ってなさい。」
藍子を官舎の中に入れると、フミエは大急ぎで洗濯物を取り込んだ。大きなシーツを
取り払った向こうに、灯台に迫り来る真っ黒な雨雲が見えた。
 官舎の中では茂がゴム引きの雨合羽を着て出かけようとしている。
「ガイな嵐だ・・・灯を守らんといけん!」
「で、でも・・・大丈夫なんですか?」
「この嵐に灯が見えんだったら船が座礁してしまう。そうしたら俺もクビだ!」
雨が下から降ってくるような暴風雨の中、茂は岬の突端にある灯台に向かった。 

235:同床異夢 9
12/07/06 10:12:33.61 SH+XQmdz
『はははははは・・・。』
フミエは自分の目を疑った。荒れ狂う海の上に、着物姿で背に琵琶の袋を背負い、
杖をついた巨大な座頭が現れたのだ。
「おと、お父ちゃん・・・行っちゃダメ!!」
茂が灯台に向かって走っていく突堤に大波が叩きつける。滝のような雨と波しぶきで、
茂にはこの怪異は見えていないのだろうか。
巨大な座頭はその手を突堤の上の茂に近づけた。どこからともなくべんべんと鳴り出した
琵琶の音が不吉に響いている。
「お父ちゃん!あぶない!!」
座頭の手が一歩及ばないところで、茂は海中から伸びてきた触手に巻き取られて宙に
浮かんだ。
「きゃあああ―――!!」
 嵐の中に走り出て叫び続ける母親の様子のただならなさに恐れて、官舎に取り残された
藍子も泣き叫んでいる。
『あとから来といてなんじゃ・・・その人間はわしのじゃぁ!』
座頭が触手を打とうとして振り下ろした杖に、別の触手が巻きついて引っ張り合いに
なる。座頭は杖を放り出して化け蛸に組みつき、蛸はありったけの触手で座頭を締めつけた。
巨大な怪物二体の組んずほぐれつの格闘に巻き上がる水しぶきは灯台よりも高く、
フミエにはもう何も見えなくなった。
「・・・お父ちゃん?・・・お父ちゃんは?!。」
わずかの間気を失っていたのか、気づけばもう妖怪の姿は無く、波は静かになり、
黒雲さえはるか遠くに去り始めていた。だが、茂の姿はどこにもない。化け蛸に
つかまったまま海底に引きずり込まてしまったのだろう。
 フミエは海に走り込み、何事も無かったかのように青く凪いでいる水面をたたいた。
「・・・いや!・・・いや!・・・いやあああ!!」

236:同床異夢 10
12/07/06 10:13:45.71 SH+XQmdz
そこで茂に揺り起こされたのだ。
「お前、よう海座頭なんぞ知っとるな。」
「・・・海座頭と言うんですか?あれ・・・。」
「俺の本で見たのか?」
「いいえ・・・あなたの本棚にある本は、あなたの漫画しか読んだことありません。
 古い本の妖怪の絵は、おどろおどろしくて怖いんですもの。」
「ふうむ・・・なら、なんで知っとるんだろうな?」
「わかりません・・・昔、おばばに聞いたのかも・・・。」
そう言ったものの、おばばからそんな話を聞いた覚えはなかった。フミエはちょっと
身の毛がよだつような気がして、茂にしがみついた。
「ようわからんが、またおばばがお前を助けてくれたのかも知れんな。いくら貧乏
 しとるからと言って、今更よう知りもせん灯台もりなんぞになってもうまくいかんぞ、
 と教えてくれたのかもしれん。」
腕の中で震えるフミエの細い身体をぎゅっと抱きしめる。抱き返してくるフミエの
唇を舌でなぶりながら浴衣のすそを割り、下着の中に手をしのばせる。
「・・・な・・・なしてそげなるんですか?」
「こわい夢見たと言うけん、慰めてやっとるんじゃないか。」
文句を言いながらも、先ほどの口づけでフミエの花はとうに蜜をたたえていた。
「んは・・・ぁ・・・ゃ・・・。」
蜜にまみれた指をぬるりと前に滑らせる。いたずらな指を核心からずらそうとフミエが
大きく腰をよじった。
「ん・・・?こっちの方がええのか?」
後ろの方にずらされた指を、わざと意地悪く秘裂の中へ挿し入れる。
「ち、ちが・・・ぁあ・・・っや・・・ぁっ・・・だめ―――!」
指をふかめ、他の指を花蕾に押し当てる。特に動かさなくても、責め具を呑みこまされた
腰は勝手に踊り、いとも簡単に達してしまう。
 指を抜き取って弛緩した身体をそっと自分の上に抱き上げる。上になったフミエが、
涙に濡れた目を閉じて唇を重ねてきた。
「んっ・・・ふぅ・・・ん・・・。」
むさぼりあいながら下着を引きおろすと、フミエはもどかしそうにすっかり脱ぎ去った。
手をつかんで硬起した雄芯を握らせ、臀をつかんで引き寄せる。フミエはあえぎながら
握らされたものを自らへと導いた。                             
「見たら、だめ・・・。」
手でつかんで挿入れるさまを見られぬよう、茂の目を片手で覆う。笑ってその手をつかみ
のけ、早くしろと言いたげに腕を引っ張った。
 羞恥と欲望に目のふちを紅く染めながら、自らを責める凶器を迎え入れていくフミエを
見ないでおく手はない。

237:同床異夢 11
12/07/06 10:14:42.18 SH+XQmdz
「は・・・っぁ・・・ん・・・ぁあ――。」
甘くせつなく啼きながらすべてをおさめると、フミエはほぉっとひとつ息をついた。
(熱い・・・な・・・。)
茂を包む肉身も柔肌も、吐息をもらす唇も、全てが熱く息づいている。
(当たり前、か・・・。)
バカな夢を見たものだ、と苦笑しながら、それでも腕の中で刻々と体温を失っていった
身体の感触を思い出して心が冷える。目を閉じて、熱くてきついフミエの内部に自身が
押しつつまれている感覚だけに身をまかせた。

 フミエの手が帯を解いて襟の合わせをくつろげ、素肌に手を滑らせてくる。
「ぁあ・・・しげぇ・・・さん・・・。」
今、自分をつらぬいている器官の力強さを思えば、さっき見た悲劇は悪夢にすぎないと
確信出来そうなものなのに、フミエは裸の胸にほおを押しつけ、体温と鼓動を確かめず
にはいられなかった。
(よかった・・・夢で・・・。)
生命の匂いを嗅ぐようにすうっとふかく息を吸い込み、愛する人のぬくもりを味わう。
「・・・っゃ・・・ぁんっ・・・!」
いつまでたっても動かないフミエに焦れて、茂が下から突き上げた。フミエはびくりと
頭をあげて跳ね起きた。追い討ちをかけるようにいく度か打ち込まれ、走りぬける快感に
身悶える。あえぎながら身体を前に傾け、懸命に茂の上で腰を波打たせ始めた。
「ぁ・・・ぃ・・・っぁ・・・あんっ・・・!」
フミエの動きと絶妙にずらされた突きが下からうねるように加えられる。嵌まりあった
部分が上下するたび導き出されるしたたりが、茂の下腹を濡らした。
「・・・っも・・・だ・・・ぁあ・・・―はぁ―は・・・。」
小さな到達がいくつも訪れながら、全き解放にはいたらず、フミエは広い胸に倒れ込んで
荒い息を吐いた。                              
 ぐんなりと緩んだ身体を抱いたまま、茂が起き上がった。立てた左膝にフミエを
もたせかけると、お互いの脚を交差させ、腰を入れて斜めの結合を深める。
「・・・っ!っ――ぁあ・・・!」
深すぎる繋がりにあえいで、膝にもたれたフミエが身体をよじった。のがさぬように
大腿で押さえこみ、浮かせた腰を何度か突き入れる。

238:同床異夢 12
12/07/06 10:15:49.57 SH+XQmdz
「ぁ・・・ぁっ・・・っあ・・・ぁあ―――!」
茂の膝の上にのけぞり、突き出した腰をけいれんさせてフミエが達した。そっと胸の上に
抱き取って休ませる。ぴったりとくっついた胸の鼓動がじかに伝わってくる。
「・・・ゃ・・・ぁあ・・・。」
つながったまま起き直り、肩につかまらせたフミエを支えながら覆いかぶさる。まだ
脈うっている内部にぐっと深く押し入られて、フミエが弱々しく啼いた。
「・・・ぁっ・・・ゃっ・・・あっ・・・あんっ・・・。」
大きく拡げさせた両腿の中心を穿つ音が深夜の閨にひびき、切迫したフミエの
あえぎがそれに重なった。
「・・・んぁんっ・・・ゃっ・・・それだめっ・・・ぁあっ・・・!」
フミエの片脚をつかんで抱え上げ、松葉が絡んだように脚を組み合わせて腰を入れる。
「だめっ・・・それ・・・ぃっちゃうからっ・・・。」
「・・・イったら、いけんのか・・・?」
苦笑しながら脚を折り曲げてのしかかると、フミエはのたうってシーツをつかみしめた。
「・・・ぃっちゃ・・・ぅうっ―――!」
貞淑なフミエとは別の生き物のように貪婪な肉の襞に吸いつかれ、搾り取られる。
「・・・く・・・っ・・・。」
歯を食いしばって身体を硬直させ、いとしい脈動の中にすべてを注ぎ込んだ。

「・・・ゃ・・・はなれん、で・・・。」
息をおさめ、身体を離そうとした刹那、フミエの両腕がからみついた。
「・・・なんだ、まだ足らんか・・・?」
「ち、ちがいます・・・けど、もう少し・・・。」
フミエが下から柔らかい唇を押しつけてくる。共にのぼりつめた後の、気だるい
しびれの中でつながりあっていると、上も下も溶けていきそうに心地よい。         
「・・・ウチにもタコが一匹おるぞ。」
満ち足りてうっとりと見上げてくるフミエに、わざとそんなことを言ってからかう。
「・・・だ、誰のことですか?」
「さっきは吸い殺されるかと思うた・・・。」
「もぉ・・・いっつも私ばっかり好キモノみたいに言うて・・・・・・んぁん・・・っ!」
ふくれて横を向いた途端、ずるりと引き抜かれ、フミエが大きくあえいだ。
 まだ尖っている乳の先端を挨拶代わりにきゅっと吸ってやり、ごろんと横になると
頭の下に腕をかった。

239:同床異夢 13
12/07/06 10:16:45.03 SH+XQmdz
「ふうむ・・・大ダコと海座頭が、人間を取り合って大たちまわり・・・か。もう少し
 肉づけすれば漫画になるな。食い詰めて灯台もりになった男・・・灯台を仲間だと思って
 年に一度もののけ達が集まってくる・・・いやいや、そげな話は前に本で読んだな・・・。」
今聞いたばかりのフミエの夢の話を、もう漫画に生かそうとブツブツ言い始めた。
「ふ・・・ふふふふ・・・。」
目を閉じて甘だるい余韻の中にたゆたっていたフミエが、おかしそうに笑った。
「なんだ・・・何がおかしい?」
「だって・・・あなた、もう漫画のスジを考えとられる・・・。」
「ああ・・・そげだ。やっぱり漫画はやめられん。」
「・・・よかった・・・。」
フミエは茂の裸の胸に寄り添った。
(私は、漫画描いとるしげぇさんが好き・・・。貧乏してもええの・・・漫画をやめたりして
 ほしくないけん・・・。)
「・・・知っとるか?海の底には化けハマグリがおって、蜃気楼というのはそいつが
 吐き出す怪しの瘴気なんだぞ・・・。」
フミエは幸せそうに目を閉じた。茂が熱心に海の底に住む妖怪について語る声がだんだん
遠くなる。
「・・・おい、聞いとるのか?・・・なんだ、寝てしまいおって。」
返事がないので顔をあげて見ると、フミエはもう眠っていた。茂はちょっと不満げな顔を
したが、寝顔をしばらくみつめた後、やすらかな寝息をたてる唇にそっと口づけた。

 結核で入院していた三海社の深沢が復活してまた出版社を立ち上げ、村井家を訪れて
来たのはそれから間もなくのことだった。
 深沢が払ってくれた原稿料のおかげで、フミエは藍子を連れて里帰り出来ることになった。
未払いの原稿料を払ってくれただけでなく、深沢は新しい仕事をくれ、さらにいずれ
創刊する漫画雑誌の連載をも依頼してくれた。
 先の見えない暗闇のような貧乏生活に、ようやく明るい陽射しが射し込んで来始めた。

「・・・ひさしぶりに安来に帰れる・・・ウチのみんな、元気にしとるかなあ?東京みやげ・・・
 何がええかしら?そうだ、靖代さん達に聞いてみよう!」
三年半ぶりに会う家族の顔が目に浮かぶ。フミエは飛び立つような気持ちで、いそいそと
里帰りの準備をはじめた。

240:名無しさん@ピンキー
12/07/06 19:16:43.16 EmK37dgF
>>227
GJです!
if灯台守ストーリーな夫婦良かったです!
茂さんの見た夢は悲劇的なのに、フミちゃんの見た夢は妖怪VS大怪獣みたいで、可笑しかったw
おばばが見せてくれた夢なら素敵ですね。
エロは相変わらず素晴らしいですわ~。
どっちも好きモ(ry

241:名無しさん@ピンキー
12/07/07 22:23:22.77 rCmQ24k+
>>227
GJ!
夫婦やエロももちろんだけど、藍子とふみちゃんと夏みかんに一番萌えたw

242:名無しさん@ピンキー
12/07/08 11:31:37.91 bKQlYISo
>>227
GJ!
ちなみに、デコちゃんの自伝面白いですよ~
子役の時からの大スターでものすごくひねたガキだったようですね

243:名無しさん@ピンキー
12/07/10 20:30:20.67 3M2Pq1dA
>>227
GJです!
投下された文をざっと見た時にタコの文字にやたら注目してしまって
もしやあの有名な春画から着想を得た触手攻めが!?と思ってしまったw

244:名無しさん@ピンキー
12/07/11 22:53:31.35 iPgetcEg
明日の、風邪ひき以来の寝巻と髪ほどきしたふみちゃんが楽しみすぎる

245:名無しさん@ピンキー
12/07/11 23:02:44.64 X49XeBQE
今日の財布を開いて「( ´゚д゚`)アチャー」って顔が可愛いかった

246:名無しさん@ピンキー
12/07/12 23:29:57.71 vDuz0JVh
>>245
アチャーの顔可愛いよね
しっぱいっとかも可愛い

247:名無しさん@ピンキー
12/07/14 12:40:54.73 20Ur87sq
もう貧乏終わりなんだなぁ…
あっという間すぎる…

248:名無しさん@ピンキー
12/07/14 15:58:31.15 5/g3h28P
あまりいつまでも貧乏してると、そのうちフミちゃんが集金の人に
「もうちょっとだけ待ってください。何でもしますけん…」
とかいって身体で払うはめに……

249:名無しさん@ピンキー
12/07/15 18:36:58.39 vSRaNUlH
今日の東京は蒸し暑かったけど豊川さんもこんな日に来たのかな。
村井家は扇風機もないから、こんな日は行水で涼をとってたんだろうか。
もしも行水中のふみちゃんのところに豊川さんが来たら...

250:名無しさん@ピンキー
12/07/16 10:51:38.65 du+gUSrL
>>249
藍子と行水しますねーとしげーさんに言ったのに生返事されてもうっと思いつつ行水して
出てきたところでしげーさんと鉢合わせてなんてかっこしとるんだ!と言われる展開を妄想
新婚時代にやったらもっと大変な事になっちゃうなw

251:名無しさん@ピンキー
12/07/16 14:30:49.63 1XseAVBZ
外から藍子とふみちゃんのキャッキャッウフフを聴きながら、汗を拭き拭き原稿に向かうシゲーさん。
暫くして部屋に戻って来たびしょ濡れふみちゃん、ブラウスがスケスケ…
其処へ編集者が

252:名無しさん@ピンキー
12/07/16 18:07:13.13 +caRYevP
>>250
生返事したくせに、フミちゃんのせくすぃな姿見て
「なんてかっこしとるんだ!」
ゲゲさん、絶対言いそう!勝手にプンスカしちゃうゲゲが大好きだ~w




253:名無しさん@ピンキー
12/07/17 23:26:48.25 84KeQhe4
>>251
親子のキャッキャウフフいいなぁ
今の藍子もいいけど里帰り藍子と初代布美ちゃん藍子も捨て難い

254:名無しさん@ピンキー
12/07/18 00:15:09.46 OG+hvMwk
>>251
藍子は、行水の姿のまま豊川さんの前に飛び出してくる展開希望

255:名無しさん@ピンキー
12/07/19 15:02:09.50 42XsX/1M
豊川さんに貸本の金回りの話しちゃってる時とか電話番してる時とか
なんであんなかわいいんだ

256:名無しさん@ピンキー
12/07/20 10:11:40.38 MTmywMmF
ひさしぶりにネタをいただきました。
「行水、豊川さん、スケスケ」の三題噺というだけで、皆さんのレスのような
ほのぼの系にはなりませんでしたが・・・。

フミエの着ている『シュミーズ』というのは、キャミソールとペチコートが一体に
なった、昔は一般的だった女性用下着です。昭和っぽいかなと思いまして・・・。

257:遠雷 1
12/07/20 10:12:29.13 MTmywMmF
「おかあちゃん、きんぎょ、きんぎょさん!」
「はいはい。きんぎょさんにお水いれましょうね。」
夏の日の昼下がり。フミエは庭に出したたらいに水を張り、藍子を行水させていた。
 眠いのに暑くて眠れずぐずっていた藍子は、すっかり機嫌が直って大はしゃぎ。
お気に入りの金魚型のブリキのじょうろに水を入れては、たらいに注ぐことを飽くこと
なく繰り返し、きゃっきゃと歓声をあげている。
「ぱしゃーん!ぱしゃーん!!」」
「・・・わっぷ、藍子、やめて!」
思い切り水面をたたくと水が派手に跳ね飛ぶのを発見した藍子は、フミエが止めるのも
聞かず、今度はそれに夢中になった。
「もぉ・・・びしょぬれになってしもうたじゃないの・・・。」
濡れることはわかっていたので、ブラウスは脱いでシュミーズ姿になっている。
姉の暁子にもらったそれは、化繊で胸元に少しだけレースと小さなリボンがついた、
へんてつもないものだが、フミエが以前よく来ていた木綿のものと違って、濡れると
途端に肌にくっつき、中身が透けて見えた。

『ゴロゴロゴロ・・・。』
どこかで雷が鳴り出した。真っ白な入道雲とまぶしい陽射しが、ふいに翳った。
「いけん・・・夕立がくるわ。藍子、おうちに入ろう。」
「いやーーー!もっとあそぶのー!」
バスタオルでくるもうとすると、もっと遊んでいたい藍子は身体を水の中に沈めて
抵抗した。
「藍子・・・。言うこと聞かんと、雷様におへそ取られちゃうよ!」
そういっている間にも、あたりは夏の昼間とは思えないほど暗くなり、冷たい風が
吹き始めた。おへその脅しが効いたのか、しぶしぶ立ち上がった藍子をバスタオルで
くるんで抱き上げ、フミエは縁側へと運んだ。

258:遠雷 2
12/07/20 10:13:19.14 MTmywMmF
「こげに冷えてしもうて・・・さあ、よーく拭かんと。」
「いやーー!」
逃げようとする藍子をつかまえ、縁側に立たせてごしごし拭いてやるうちに、
外は大粒の雨が激しい勢いで地面を叩き始めた。
「・・・いやー、まいった。大変な雨ですね。」
男の声に振り返ると、雄玄社の豊川がかばんを傘代わりに頭の上にかざして縁側に
走り込んできた。
「豊川さん・・・。」
フミエは思わず居ずまいをただして頭を下げたが、自分がどんなかっこうをしている
のかはすっかり忘れていた。
「・・・玄関で声をおかけしたんですが、お返事がないものですから、庭へまわらせて
 いただきました・・・。」
言いながら、豊川の目がフミエの胸元に釘付けになるのを感じ、フミエがあわてて
手で隠そうとしたその時。
『ガラガラガラ・・・バッッシャーーーン!!』
あたりの空気が変わるような衝撃と、夕方のような薄暗さをつん裂く閃光と共に、
明らかに近くに落ちたと思われる雷鳴がとどろいた。
「きゃぁっっっ・・・!!」
恐ろしさに、フミエは思わず豊川の胸に飛び込んでいた。反射的に、その細い身体に
腕をまわしてしまった豊川は、理性では離さなくてはと考えながら、動くことが
できなかった。
(なんて華奢なんだ・・・このひとは。)
腕の中の身体は折れそうに細く、濡れた肌は冷たくしっとりとしてかぐわしかった。
その肌に唇を這わせたい衝動を必死で抑える時間は、ほんの一瞬であるはずなのに
永劫のように長く感じられた。
「あ・・・す、すみません。私、雷がほんに苦手で・・・。」
フミエがハッと我に返って、豊川の胸から顔を離した。豊川も腕を解こうとして
ゆるめた瞬間、うす暗い家の中に立っているこの家の主人と目が合った。

259:遠雷 3
12/07/20 10:14:11.01 MTmywMmF
「・・・何をやっとる。」
静かだが、明らかに不機嫌な声だった。フミエは弾かれたように豊川から身体を離した。
「あ・・・お、お父ちゃん。お帰りなさい。」
茂のシャツが濡れている。散歩に出かけ、帰りがけに夕立にあったものとみえる。
「お留守にあがりこんで失礼しました。玄関でお返事がないので、庭にまわらせて
 いただいたのですが、近くに雷が落ちて・・・。」
豊川は、今の今まで自身を襲っていた妖しい衝動を意識から払い落とし、いつもの
端正な編集者の顔に戻った。あわてる風でもなく、人妻を腕に抱いていたことの言い訳を
さりげなく挨拶に混ぜる豊川を、茂はじろりと睨んだが、後は何も言わなかった。

「あらあら・・・藍子、おねむね。すんません、ちょっこし寝かしつけてきます。」
フミエは縁側に脱ぎ捨ててあったブラウスを羽織ると、バスタオルにくるまって
おとなしく待っていた藍子を抱き上げた。水遊びで疲れたらしく目が閉じそうになって
いる藍子を二階へ連れて行って寝かしつけ、階下へ降りてくると、茂と豊川は何事も
なかったかのように仕事の打ち合わせをしていた。フミエは気まずい思いでお茶を淹れ、
茂の後ろに控えていた。
「それでは、その線でお願いします。何かあったらご連絡ください。」
いつもなら茂の仕事場を興味深く眺めたり、なにかと世間話をしていく豊川だが、
さすがに今日は気が引けるのか、早々に帰って行った。
(お父ちゃん・・・怒っとるのかしら、さっきのこと・・・。)
豊川が帰るやいなや仕事部屋に引っ込み、茂は机に向かって仕事を始めた。
「お父ちゃん・・・お茶淹れかえましたよ。」
茂は豊川のみやげの大判焼きにもお茶にも手をつけていなかった。フミエは香ばしく
淹れかえたお茶と、菓子の皿を持って仕事部屋のフスマを開けた。
「・・・・・・。」
茂は返事をするどころか、こちらを向きもしない。
「あの・・・さっきのこと、ですけど・・・。藍子を行水させとったら、急に豊川さんが
 見えられたけん、服着るヒマも無くて・・・。そしたら近くに雷が落ちて・・・。」
勇気を振り絞って釈明をし始めたのに、茂が何も反応してくれないため、フミエの
声はだんだんと先細りになっていった。

260:遠雷 4
12/07/20 10:15:01.32 MTmywMmF
「す・・・すみません!私・・・子供の頃から、雷様がほんに怖くて・・・。豊川さんにも
 失礼なことしてしもうて・・・。」
必死で声をはげまして謝り、フミエは手をついて頭を下げた。そのままじっとして
いると、目の前にある手をつかまれてぐいと引かれた。
「・・・?」
手をついたまま下から見上げると、茂がブラウスのボタンに手をかけて命じた。
「・・・脱げ。」
「え・・・。」
「さっきと同じようにしてみせえ。」
フミエはしかたなく身体を起こすとブラウスを脱いだ。化繊のシュミーズはとうに
乾いて、透けてはいなかったが薄い生地をとおして乳首のありかはわかる。
 茂は茶碗をとりあげて茶を口に含むと、そのまま口を寄せてフミエの乳首を
包み込んだ。
「・・・ゃ・・・。」
あたたかく、濡れた感触に思わず総毛だつ。もう片方にも同じことをすると、
生地が胸肌に張り付いて、ふたつの尖りはその色さえも生地の表面に表し出した。
「んや・・・な、なにを・・・。」
横座りのまま後ずさりするフミエを本棚まで追い詰め、茂はシュミーズの生地に
透けて見える紅い実を指で弄り、唇で舐め吸って責め始めた。
「・・・っは・・・はぁあっ・・・んんっ・・・。」
いつもなら、肌をかさね、口づけを深め、舌や指が身体をとろかし・・・繋がりあう
前にさまざまにフミエをほぐしてくれるのに、今日は胸の尖りばかりを苛めてくる。
「なし・・・て・・・。」
ふたつの先端からじんじんと伝わってくる快感は、下腹部にたまる一方で、あえぎ
っぱなしのフミエの喉は乾き、目は涙でいっぱいになった。
 罰されている・・・痺れる頭で、そう感じていた。フミエが豊川に見せてしまった、
生地ごしの胸の粒・・・。それは本来、茂のものなのだ。頭のてっぺんから足の先まで、
外からはうかがい知れない内部までも、自分が茂に所有し尽されているという感覚が、
フミエにはあった。茂のものである身体を、他の男に見せてしまったのだから、
こうして罰され、所有者の印を捺しなおされるのも当たり前のような気がしてくる。

261:遠雷 5
12/07/20 10:16:03.46 MTmywMmF
「・・・ぁあ!・・・あっ・・・は・・・。」
でも・・・苦しすぎる。寂しすぎる。フミエはいつまでも胸に顔を埋めて尖りばかりを
責め続ける茂の頭を抱きしめ、腰をあげて茂にすり寄せた。 

 ふっ・・・と茂が唇を離し、起き直った。本棚に寄りかかったまま、フミエは荒い息を
つきながら、涙でにじんだ目で茂を見つめた。
 ずいと近寄られ、口づけを期待したが、脇をかかえて膝立ちにさせられただけだった。
スカートのホックを外して落とし、シュミーズの裾をまくりあげて下着をも下ろした。
くるりと後ろを向かされ、腰をつかんで引き寄せられる。身体を支えるために、
自然と手を前につき、振り返ろうとした瞬間、潤いも確かめずに剛直が突き立てられた。
「・・・ひゃっ・・・ん・・・ゃめっ・・・!!」
執拗に胸をなぶられたせいで、フミエの秘裂は羞ずかしいほど蜜をあふれさせている。
けれど、口づけも甘い触れ合いもなくいきなり挿入れられたことに、フミエの心は
傷ついていた。

(狭い・・・な。)
濡れてはいるけれど、茂の前進を拒むようなフミエの肉襞のきつさは、一方的に乳首
ばかりを責め、口づけも指の戯れとて無い強引な交わりに抵抗を示すフミエの心を
表しているかのようだった。
 何度抱いても、フミエは後ろからの挿入に少し戸惑いを見せる。けれど、いつもなら
肩に口づけたり、不安げに振り返る唇を吸ってやったりして宥めるのが常だった。
「・・・は・・・ぁ・・・ぁ、あ・・・!」
口づけを求めて振り返りもせず、挿入の瞬間に耐えているのは、この仕打ちに対する
ささやかな抗議なのか・・・。挿入れる方も歯を食いしばり、じりじりと進んだ。
(どこまで、我慢できるかな・・・。)
 圧倒的な異物感も、やがては空恐ろしいほどの快感に変わる。数え切れないほど
いとしまれる内に、フミエはそういう身体に作り変えられてしまっているのだ。

262:遠雷 6
12/07/20 10:17:11.25 MTmywMmF
「・・・っく・・・ぁ・・・。」
根元まで押し込んで、やわやわと食い締めてくる内部の感触に身をゆだねる。フミエの
四肢も心なしか緊張がゆるんだけれど、今度は代わりに快感に襲われ始めているらしく、
甘い吐息と共に、妖しくうごめく内部がそれを直接茂に伝えてくる。
「ぁあ・・・ゆるして・・・達かせて・・・。」
身体の中心に、絶えず毒のような快感を注ぎ続ける肉塊を打ち込まれたまま、それ以上
何もしてもらえない苦しさに絶えかねて、フミエが懇願した。
「も・・・もぅ、あげなことせんように・・・気をつけますけん・・・。」
先ほどの失態を謝りながら、フミエは半ば無意識に臀をあげ、結合部をこすりつけて
自ら快感を追い求めはじめた。
「・・・ぁあ・・・っあぅ・・・んぁあっ・・・!」
ずい、と意地悪に引き抜かれて身悶え、次の瞬間また突き入れられて悲鳴をあげる。
抽送はしだいになめらかに、速く激しくなり、フミエもくるおしく腰を揺らして
快感を追った。
「・・・ぁあ・・・ぁ・・・ぁああ―――!」
前に指をからめられることも、胸を揉まれることさえなく、ただ打ち込まれた雄根に
侵されることだけで追い上げられていく。
 豊川が帰った時は少し小止みになっていた雨がまた激しくなっている。屋根のどこかに
打ちつけるうるさいほどの雨だれの音に、フミエの悲鳴がかき消されていった。

 吸いつき、絞りあげようとする性の唇から己が分身を引きはがすようにして抜き取り、
ひくついているフミエの身体を返してまた身を沈めた。
「・・・ぁあ・・・ん。」
さっきのせつないばかりのあえぎよりは随分甘い声でフミエが啼いた。まつげに
いっぱい涙の玉をぶらさげた瞳がゆっくりと開き、茂を見つめてくる。半開きの唇が、
すぐに奪ってほしいと訴えかけてくる。
「・・・ふ・・・んっ・・・ふ・・・。」
艶めいて柔らかく、甘い唇の誘惑に勝てるはずもなく、ふかく奪って存分にむさぼった。

263:遠雷 7
12/07/20 10:18:31.18 MTmywMmF
「まだ・・・怒っとられるの?」
唇を離すと、フミエがこのうえなく甘い瞳で問いかけた。
「さあ、どうかな・・・。」
茂はそらとぼけてシュミーズを胸の上までたくし上げ、乳首に歯をたてた。フミエが
身体を震わせて締めつけて来る。
「・・・ぁあ・・・また、達きそう・・・。」
フミエは組み伏せられた身体を、泳ぐ人のように揺らし始めた。
「ぁあ・・・ぃ・・・く・・・あなたも・・・―――!」
一度目の、苦しいような絶頂と異なり、フミエは溶けきった身体を茂にからみつかせ、
甘く口づけ合いながら幸せそうにのぼりつめた。
「く・・・!」
殺伐とした抱き方をしてやろうと思っていたのに、最後はまたフミエに持っていかれて
しまった。自分で自分を嘲いながら、茂もどこまでも甘いフミエの花の中に放縦にはなった。

「もう・・・怒っとらん?」
つながりあったまま、まだ息も整わぬうちにフミエが聞いた。
「ふ・・・ふふふ・・・。」
茂はおかしくなって笑った。精魂尽き果てるほど愛しあって、苦しい息を整えている
今、まだそれを聞くか・・・?
「別に怒ってなんかおらんぞ・・・俺は。」
「うそ・・・!」
フミエがたちまち目に涙を溜める。自分は茂を怒らせても仕方ないことをしたと
思えばこそ、あのような理不尽な抱き方をされても耐えたというのに・・・。
「あ・・・あなたが許してくれんだったらと思うたら・・・私・・・。」
ぽろり、と涙がこぼれる。
「あー、わかったわかった。もうええけん、泣くな。」
茂があわてて頭を抱きかかえる。フミエは胸に顔を埋めて思う存分泣いた。さっき
後ろから抱かれていた時の寂しさに、今頃になって耐え切れなくなったのだ。
「よしよし・・・わかっとるよ・・・だけん、泣くな。」
茂は困って泣きじゃくるフミエの頭を撫でつづけた。思い切り泣いて、涙が次第に
おさまっても胸に顔をうずめたままのフミエの顔を上げさせ、ゆっくりと口づける。     
 唇が離れ、フミエが愛しさにあふれたまなざしで下から見上げてきた。首筋にも口づけ、
今度は露わになった乳首を口に含んで舐めころがした。

264:遠雷 8
12/07/20 10:28:03.71 OPV73ULy
「ぁあ・・・だめ・・・。」
たった今、激しく愛しあったばかりというのに、またも火を点じられそうになって
フミエは抵抗した。
「き・・・気持ちよく・・・なっちゃうから・・・っ!」
フミエの可愛い狼狽を楽しむように、茂は胸への愛撫をやめない。
「ぁあん・・・く、くすぐったい・・・!」
頭を押し返そうとした腕をつかまれ、二の腕の内側の柔らかい肌をつよく吸われた。
熱い唇がはなれた後には、白い肌に紅い花が散っていた。
「あ・・・藍子が泣いとる・・・目が覚めたんだわ!」
茂が二階の泣き声に耳をすました隙に、フミエは茂の下から滑り出て、はしたなく
まくり上がったシュミーズを整えた。
「ちょっと見てきますけん・・・。」
脱がされたスカートと下着を拾い上げ、手早く身に着けると慌てて階段をあがって
行った。

(・・・見とって飽きん奴だ。)
苦笑しながら起き上がって、茂も身支度を整えた。
 仕事机に向かって、ふと振り返る。古い本棚には、いつもどおり茂が集めた資料や
本が所狭しと並んでいる。ほんの今まで、そこになまめかしい下着姿の女が這わされ、
組み伏せられて責めさいなまれ、快感に啼いていた痕跡の片鱗すらない。
 豊川の腕の中にいるフミエを見た瞬間、茂の中に湧き上がった怒りは、フミエを
奪いつくしてその最奥に自らのしるしを刻み直すことでようやく少しおさまっていた。
(それにしても、あいつは・・・どこまで寛容なんだ・・・。)
そもそもフミエが寛容でなくては、これまでの貧乏暮らしに耐えては来られなかった
だろう。意地悪な抱き方をしても全てを受け入れてくれるフミエ・・・。うぬぼれている
のかもしれないが、それもこれも茂を愛しているからだろうとは思う。           
(だが、ひとが好すぎるというのも考えもんだ・・・。)
相手が豊川だからよかったようなものの、他の男だったら・・・。過ちや災難という
ものは、昔から日常のちょっとした油断をついて起こるものなのだ。・・・フミエが
他の男に穢されることを考えただけで、血が煮える。

265:遠雷 9
12/07/20 10:29:28.98 OPV73ULy
 あの時、下着姿のフミエを腕に抱いていた豊川・・・。胸に飛び込まれて、とっさに
腕をまわしてしまったのだろうが、ひとの女房を、あんなにしっかりと抱かなくても
よさそうなものだ・・・。                                 
(俺なんぞ、あの娘に泣きつかれても、手もまわさんだったのに・・・。)
以前、茂を尊敬していた漫画家の卵の河合はる子が、最後の勝負をかけた漫画の原稿が
雑誌社に受け入れられなかったことを告げに来て、感極まって茂の胸で泣いたことが
あった。茂は慮外のなりゆきに固まってしまい、棒のように抱きつかれるままになっていた。
(女というのは、なんとも思っとらん相手でも、思わず誰かの胸に飛び込んでしまう
 こともあるんだろう・・・それに、フミエはこわがりだけんな。)
フミエが豊川に抱きついてしまったのは、あくまで雷のせい・・・そう信じて疑わない
茂であった。
(だが、あれがイタチだったら胸に飛び込んだりしたかな・・・?)
豊川の顔が浮かぶと、まだ少し胸がざわついた。爽やかで慇懃な態度の陰から、やり手の
編集者らしい野心と頭の良さが隠しようもなく表れてしまう豊川。冷たいエリートではなく、
漫画にかける情熱は深沢や戌井に勝るとも劣らない、魅力のある男だ。茂も好感を
持っているだけに、彼がフミエに時おり向ける好意的な視線が気になった。
(まさか・・・あげな奴がフミエに懸想なんぞ・・・。)
フミエは田舎出の、引っ込み思案のおとなしい女だ。高すぎる背のせいで嫁き遅れ
かけていたのが、縁あって茂に嫁いできた。それから厳しい人生の荒波をかぶりながら
四年の月日を暮らすうち、身も心も深い絆で結ばれてきた二人だった。
(あいつに惚れてやっとるのは、俺ぐらいなもんだと思っとったが・・・。)
他の男から見ても、フミエには意外に魅力があるのかもしれない。夜ごと愛し合うたび、
茂にだけ見せる媚態・・・。あえぎ、表情、肌ざわり・・・茂の名を呼び続け、時には
こみあげる胸の裡をせつなげに告白する声・・・。自分だけがそれらを知っているから
フミエに魅かれるのだと思っていたけれど・・・。
(なんか醸し出しとるもんがあるのかもしれん・・・浦木のような未熟もんにはわからん
 ような何かがな・・・。)
愛されてフミエの魅力が開花したのだとすれば、そうさせたのは自分だと思うとちょっと
嬉しくもあるのだが、複雑な思いで茂はそばにあった大判焼きを取り上げた。

266:遠雷 10
12/07/20 10:30:26.78 OPV73ULy
(とにかく・・・あいつは油断ならん!)
あの傷のある猫に似た、不適な笑いが見えるような気がして、茂は豊川のくれた大判焼きに
がぶりと喰らいついた。
 すっかり雨はあがって、夕暮れの近い空が不思議な蒼色をしている。どこか遠くで
鳴っている雷が、かくされた妬心のようにいつまでも消え残っていた。

 翌日。豊川は何度も躊躇しながらも、村井家を訪れるため再び調布駅に降り立った。
昨日来たばかりで、打ち合わせは済んでいるし、特にこれと言った用事もないのに訪れる
のは、ひとえにフミエのことが心配だからだった。
(先生に誤解されるようなことをしたまま、失礼してしまった・・・。)
いつも冷静沈着な豊川ともあろう者が、あの場面にあってもっと効果的な言い訳を
することはできなかったのだろうか・・・?あの後の打ち合わせの気まずさ、夫人と
抱きあっている自分を見た時の、暗がりで厳しく光っていた茂の目・・・。
(まさか、奥さんに当たったりしてないだろうな・・・?)
茂は、妻に暴力を振るうような男には見えない。彼の作品しか知らなかった頃は、
どんなに暗く不気味な男だろうと思っていたものだが、実際に会ってみると茂は
飄々としておおらかで、妻のフミエと暮らす家は、貧しいながらものんきな明るさに
満ちていた。
(だが、夫婦の間のことは他人にはあずかり知らんことがあるしな・・・。)
はた目には仲睦まじく見える夫婦が、実は妻の忍耐のみのうえに成り立っているなどと
いうことは、よくある話だ。それでも、妻がそれでいいと思っているならば、それで
成り立ってしまうのが夫婦と言うものでもあるのだけれど。
(なんで俺は、あの奥さんのことを、こんなに心配してるんだろう・・・?)
自分が夫婦の間にさざ波を立ててしまったのかもしれない・・・という自責の念だけではない。
豊川は、前からフミエのことが気になっていた。単なる担当漫画家の妻と言う存在を
超えて、フミエというひとりの女性に興味がわいたのだ。

267:遠雷 11
12/07/20 10:31:23.09 OPV73ULy
 赤貧洗うがごとしとはこのことか、と言いたくなるような暮らしの中で、たぶん
生来のものと思われる清潔感と無自覚なユーモアを失っていないフミエ。茂のような
変わった男に寄り添い、身も心も捧げきっている様子は、自分のような部外者にも見て取れた。
(たぶんあのひとは、自分を平凡な女だと思っているだろうが、そうじゃない。)
そもそも夫の茂が非凡な人間なのだが、ひたすら彼を信じ、尽くしているらしいフミエも
また、なんとなく浮世ばなれがしていて、あまりどこにでもいる主婦とは言い切れない。
そんな二人がひっそりと暮らす家を初めて訪ねた時から、豊川はまさに茂の描く不思議な
短編に出てくる、この世ならぬ空間に存在する家に足を踏み入れたような錯覚にとらわれ、
つよく惹きつけられずにはいられなかった。

 かの夫婦について、あれこれ考察しているうちに、いつもは駅からずいぶん遠いと
思っている村井家に着いてしまっていた。
「はぁい。・・・あ・・・豊川さん。」
玄関で声をかけると、出てきたのはフミエだった。昨日の今日なので、豊川の顔を見ると
少し顔を赤らめたが、何事もなかったように中へ招きいれ、茂を呼びに行った。その後ろ姿の、
細すぎる腰からすらりとした脚に向かう曲線が、昨日腕に抱いた身体の感触を思い出させる。
(な・・・俺は何を思い出してるんだ・・・。)
豊川は独り者だが、それは思う存分仕事をしたいからであり、別に女に不自由している
わけでも飢えているわけでもない。自分より年上の人妻に、なぜこうも劣情を
かきたてられるのか、自分にもわからなかった。
(この様子だと、特に波風もたたなかったかな・・・。)
フミエはいつものように明るい声で仕事部屋にいる茂を呼び、茶を淹れてすすめた。
夫婦の間に介在する空気はいつもどおり飄々として明るく、豊川はなんとなく拍子抜けした。
「や・・・先生。たびたびお邪魔してすみません。実は昨日、社に戻ってから先生の漫画に
 参考になるのではないかと思われる資料を手に入れまして・・・。」
茂と目を合わせる時こそ、ひるんではいけない・・・。今日ここに向かう間中考えていた
とおり、豊川はなんら後ろめたいところのなさそうな涼しい顔で茂に対峙した。

268:遠雷 12
12/07/20 10:32:33.94 OPV73ULy
「ほぉ・・・これはどうも・・・わざわざ。」
「それでですね・・・先生が迷っておられた序盤の部分、少し変えられるのではないかと・・・。」
「ふぅむ・・・。これはええ。これで解決できますな。」
最初、何の用だと言わんばかりだった茂が、豊川の適確な提案にたちまち惹きつけられた。
あとはもう、漫画家と編集者に戻って、仕事の話に没頭した。

「それでは、また締め切りの日にうかがいます。長居してすみませんでした、奥さん。」
「少し暗くなってきましたねえ。降らんとええんですけど。」
玄関先まで送ってくれたフミエが、空を見上げて心配そうな顔をした。
「大丈夫です。折りたたみ傘がありますから・・・。おや?」
かばんをポンと叩いて傘の所在を知らせた豊川が、ふと耳をすませた。
「・・・遠くで雷が鳴ってますね。・・・家に入られていた方がいい。」
「え・・・ぁ。」
豊川の言わんとすることを覚って、フミエが真っ赤になった。激しい夕立が叩きつけ、
雷鳴がとどろいたあの時、ほんの一瞬身体を寄せ合った・・・。あの記憶は、ふたり
だけのもの・・・少しぐらいは、フミエにも覚えておいてほしかった。
「それでは、失礼します。」
想いを断ち切るように、豊川は一礼して向きを変え、帰路についた。ついさっき、彼は
気づいてしまった。ブラウスのフレンチスリーブの袖から垣間見えるフミエの二の腕の
内側に、つけられたばかりの鮮やかな紅い花・・・。
(手ひどく奪い返されたな・・・。)
あの後、いつかは知らないがふたりは愛し合い、茂はフミエの肌に所有のしるしを
残したのだろう。フミエの様子が暗くないことから、その交わりが彼女にとって辛いもの
ではなかったことがわかる。
(まあいいか・・・あのひとが幸せなら。)
またこの家を訪れるのが辛いようなたのしみのような・・・自分でもよくわからない感情を
抱えながら、豊川は足早に駅へと向かった。

269:名無しさん@ピンキー
12/07/20 18:57:08.27 EI90Fbr1
>>257
豊×フミ×ゲゲktkr!
GJです!
皆の萌え語りを素晴らしいSSにしてくれる職人様、大好きです!!


270:名無しさん@ピンキー
12/07/20 19:02:21.26 omZW1sv8
おお!凄いわ、GJ!

271:名無しさん@ピンキー
12/07/20 20:24:41.05 VbLOJqTP
豊川イイネー
それ以上にドSゲゲイイネイイネー!

272:名無しさん@ピンキー
12/07/20 21:11:25.79 JdtHl7i9
いつも投下だんだん!

ゲゲの嫉妬からSモードにスイッチ入ってお仕置き
この流れ大好きですw
貴方の描くフミちゃんは本当に可愛い~

273:名無しさん@ピンキー
12/07/21 22:36:00.43 NHuSyaCF
>>257
GJでした!
大好物にすら手を付けないしげさんの怒りに萌えましたw

274:名無しさん@ピンキー
12/07/23 20:56:36.47 G6pPcuEb
>>257
GJ!
ドSなゲゲさん最高だ

今日の放送分くらいにはもうよっちゃんがお腹に居たんだろうか…

275:名無しさん@ピンキー
12/07/24 12:39:50.65 3jmYj4DN
今日のふみちゃんの「…だれ?」が超可愛かった
ほんっとにふみちゃんはデカ可愛い

276:名無しさん@ピンキー
12/07/25 22:11:17.98 Bttlpv7H
よっちゃん発覚キター!

277:名無しさん@ピンキー
12/07/26 00:26:22.06 JbyQmZn9
アシスタントの若い男たちがひしめき合う前に仕込んでおいて良かったね
あんな環境では子作りできん

278:名無しさん@ピンキー
12/07/26 10:40:24.55 3t01JTRt
フミちゃんは「器量はソコソコ」ってイカルに言われたけど
いかんせん、松下奈緒だし
実際の水木夫人も、とても可愛くて上品、女性としての魅力たっぷりな方なのになあ
あの台詞は今でも疑問だわあw

279:名無しさん@ピンキー
12/07/26 22:18:23.77 I4Rz4RtW
「人並みの容姿」って設定でも実際には美男美女なのは創作物での定番でしょw

280:名無しさん@ピンキー
12/07/27 21:53:33.16 uzwD1LPK
ふみちゃんの妊娠のタイミングは絶妙だなぁ

281:まぼろしの窓 1
12/07/28 15:49:14.30 D41qHWP4
「山茱萸・・・今年も咲いとる。」
ある夜。二階の手洗い所の窓から外を見て、フミエは思わず微笑んだ。
 まだ時おり肌さむい日もある春三月。隣りの空き地の山茱萸(さんしゅゆ)の木が
今年もまた黄色い小さな花をいっぱいつけている。フミエが子供の頃からおなじみの
この木は、春もまだ浅いうちから黄色いほわほわとした花を咲かせ、花の後には真っ赤な
実をいっぱいにつける。
 嫁いで来て間もない春。見知らぬ土地の殺風景な早春の風景の中で、この花が咲いて
いるのを見つけた時の嬉しさを思い出し、なんだかせつなくなる。
 結婚してふた月と経たなかったあの頃。まだケンカするほど打ち解けてさえいなくて、
よくわからない中、手さぐりで心も身体も少しずつ馴染んでいった日々・・・。
 葉を落とした木々の中に、春を待ちきれぬ山茱萸が花をつけるたび、フミエはあの
淡い日々を懐かしく思い出すのだった。

(あれから・・・いろんなことがあった・・・。)
この先食べていけるのかいつも不安につきまとわれていた日々。月賦が払えず家を
追い出される危機にみまわれたことも、せっかく藍子がお腹にやどっても手放しで
喜べなかったつらい思い出もあった。そんな中で、フミエは茂の努力を信じ、ふたりは
様々な出来事の中で絆を深めてきた。
(今は、お仕事にも恵まれて、貧乏とは縁が切れたけど・・・。)
雄玄社から振り込まれた『人並みの』金額の原稿料に驚いた日を皮切りに、漫画賞の
受賞、少年ランドでの連載開始、プロダクションの旗揚げ・・・。あれよあれよと言う間に、
貧乏だけれど静かでのんびりしていたふたりの生活は、たくさんの人と、途切れなく
迫り来る締め切りの山によって、忙殺されるようになっていった。
(これから、どげなってしまうんだろう・・・?)
仕事が大きくなればなるほど、雇用主としても作家としてもいろいろな人に対する茂の
責任は重くなるばかりだ。夫の成功を心から喜んでいるけれど、以前とはまったく
違ってしまった生活に戸惑いを覚えずにはいられないフミエだった。
 心細い思いを、ふるさとの花に慰められていた頃とはまた違った寂しさを抱きながら、
フミエは黄色い花をみつめた。

282:まぼろしの窓 2
12/07/28 15:50:11.28 D41qHWP4
「・・・あら?あげな所に窓があったかしら?」
山茱萸から横に目を転じたところ、我が家の二階の壁にある窓を、なぜだかフミエは
初めて見た気がした。
 漫画の仕事が増えて手狭になった家を改築したのを皮切りに、何度も増改築を
繰り返し、この家は原型をとどめないほど変貌を遂げている。茂の改築熱が生み出した
謎の扉、不思議な階段・・・家の者でさえ全容がつかめない魔改築の家となりはてたのだ。
 フミエは精一杯顔を近づけて見たが、窓の外につけられた格子のせいで、斜め横に
位置する窓は、格子のすき間に切れ切れにしか見えない。
「うーん・・・よう見えんけど・・・。」
あそこは、納戸じゃなかったかしら・・・?そう思った時、窓が開いた。
「・・・・・・私?!」
窓から顔を出したのは、フミエ自身だった。浴衣を着て長い髪を下ろしているところを
見ると、寝るところだろうか。
(わた、わたし・・・死ぬんだろうか?)
もうひとりの自分の姿を見た者は近いうちに死ぬ・・・ドッペルゲンガーと言う言葉を、
以前茂に教えられてフミエも知っていた。洋の東西を問わずこの伝承は伝えられていて、
日本の怪異をおさめた本にも載っていると言う。
(そんな・・・まだ子供たちも小さいのに・・・。)
脚がガクガクと震え、心臓がのどから飛び出しそうになる。必死で恐怖と闘いながら、
幻の自分をもっとよく見ようと格子に顔を押しつけた。
(でも・・・なんか違う・・・。)
勇気を振り絞って観察したおかげで、フミエはあることに気づいた。あそこいにる
フミエは、わずかだけれど今のフミエと違う感じがする。髪型、浴衣の柄・・・。それに、
よく見るとその窓は、枠が木製でガラスも傷んだ、改築前の古いものだった。
(あれは、ちょっと昔の私なんじゃ・・・?)
窓辺に寄ったフミエは、よく見ると浴衣を羽織っただけらしくて、あらわになった胸肌が
瑞々しく、遠目にも白く光っている。髪はほつれ、頬は紅潮して、双眸は情事の余韻に
ぼうと霞んでいる。首もとに紅い痕さえ散見されるその姿は、どう見てもさんざん茂に
愛しぬかれた直後である。

283:まぼろしの窓 3
12/07/28 15:50:53.01 D41qHWP4
(や、やだ・・・なして・・・。)
初めて見る事後の自分のしどけない姿に、カッと頬が熱くなる。死の予兆と言われる
怪現象なのに、なぜこの姿なのか・・・。
(あれ、何か話しとる・・・お父ちゃんと?)
あちらのフミエが振り返って後ろ、おそらくは茂に話しかけている。茂まで出て来るの
ではないかと身構えたが、フミエはそれからまた外に顔を向けた。そしてふと夜空を見上げ
たかと思うとパッと顔を輝かせ、両手を組み合わせて何事かを祈った。
(・・・知っとる・・・私・・・あれがいつのことか、覚えとる・・・。)
 後ろから大きな手が伸びて来て、浴衣のフミエの肩を抱いた。暗くて家の中までは
よく見えないが、手の持ち主はもちろん茂だろう。フミエが微笑みながら後ろを
振り返ると、大きな手が背を抱きしめた。フミエの後頭部が少し後ろに反っている。
ふたりは唇を合わせ、情交の後の幸福感に身を委ねているのだろう・・・。
(あれは・・・3年前の今ごろ・・・。)
仲睦まじいふたりの姿が、涙でぼやけた。

「藍子、寝とるか・・・?」
暗くした寝室のフスマを開け、茂が小声でささやいた。
「ええ。いつも布団に入るとすぐですけん・・・。」
フミエは起き上がって浴衣の乱れを直した。茂は中へ入ってきて藍子の布団の
そばに座ると、寝顔をのぞきこんでにっこり笑った。
「昼間は編集者が見張っとるけん、ロクに子供の顔見ることも出来ん。」
昨年の暮れに雄玄社の漫画賞を受賞して以来、茂のもとには漫画誌からの仕事の依頼が
引きもきらなくなった。その全てを引き受けた茂は、まだアシスタントも確保できないため、
孤軍奮闘を続けている。
 茂は藍子の上にかがみこんで顔を鼻を近づけ、鼻いっぱいにその匂いを嗅いだ。
「・・・まだ赤ん坊の匂いがするな、よしよし・・・。」
フミエはそんな茂の子煩悩ぶりをうれしげに見守っていた。

284:まぼろしの窓 4
12/07/28 15:51:37.25 D41qHWP4
「・・・ン・・・ふっ・・・。」
身体を起こした茂が、振り向きざまにいきなりフミエを抱きすくめ、唇を奪った。
舌を深められ、歯列をなぞられ・・・むさぼられる内にたちまち硬く尖った乳首に指を
這わされ、フミエは羞ずかしげに身をよじった。
「ゃ・・・まっ・・・て。おと・・・ちゃ・・・。」
「おかあちゃんは、反応が早くてええ。」
二指でつまんでこりこりと揉まれ、フミエはその手を押さえながら背を丸めて必死で
快感に耐えようとする。
「藍子の寝顔も見たかったんだが、ホントのところは・・・。」
うつむいて身をこわばらせるフミエの耳に熱くささやいた。
「こっちが欲しくて来た・・・脱げ。」
直截なもの言いに、腰が砕ける。興奮に震える指でのろのろと帯を解き、下着をとる。
とうに衣服を脱ぎ捨てた茂が、細い裸身を拉するように抱きすくめ、唇を奪った。
 手をとって早くも天を衝いている男性を握らせながら口中を責めていく。手指に、
反り返る分身のたしかな質感と角度を感じて、フミエは茂の口の中で引き攣るような
呼吸をした。
 唇を離すと、懇願するような瞳で見あげてくる。フミエはそのまま手にした屹立へと
口唇を寄せて、下腹部に顔を埋めた。咥えやすいように膝立ちしてやると、フミエは
両手をついて身体を支え、口唇だけで中心にそそり立つものをほお張った。
 讃美するかのように、角度に沿ってゆっくりとしごきあげる。再び呑みこんで、
唾液にまみれた刀身を、唇をすぼめながらまた吐き出す・・・。数回繰り返したところで、
茂が額に手を当てて押しとどめた。
「もうええけん・・・来い。」
フミエは惜しむようにゆっくりと口から出すと、手の甲で口の端をぬぐった。そのしぐさが
妖婦のようで、早くつらぬきたくてたまらなくなる。
 同じように膝立ちさせて向かい合ったフミエをくるりと回転させ、後ろから伸ばした
指で秘部をひらいた。                                 
「・・・ぁ・・・っゃ・・・。」
とろける裂け目に挿し入れられた指が前後にすべり、フミエが四肢を震わせる。
「・・・おねが・・・い・・・はやく・・・。」
フミエが情欲に濡れた目で見返りながら懇願する。立てた片足でフミエの膝を割って
開かせ、待ち焦がれる秘裂に亀頭を突き立てた。

285:まぼろしの窓 5
12/07/28 15:52:36.88 D41qHWP4
「ひぁっ・・・ぁ・・・ぅ・・・。」
膝立ちしていることで、いつもより硬く、抵抗感のつよい肉の扉を、男根でじりじりと
こじ開けていく。
「きついな・・・。」
半分ほどめり込ませたところで、フミエの手をとって結合部に導いた。手指にぬめりを
とらせ、おさまりきっていない肉の柱に塗りつけさせる。
「・・・っや・・・ぁあ・・・!」
指で触れたことで、自分が今呑みこみかけているものの量感と硬度を思い知らされ、
フミエは羞恥と恍惚の入り混じった悲鳴をあげた。
「・・・は・・・ぁあ――!」
いっきに引き下ろされ、奥までつらぬかれる。震える肩に口づけ、唇を首筋にまで
這わせると、フミエが甘い吐息をはいた。大腿を大きく拡げ、茂の両腿の上にぺたりと
くずれた正座をしたかっこうのフミエはなぜか童女のように頑是無く見える。
(可愛い、な・・・。)
思い切り感じさせたくて、すっかり剥きだされたさねに指を押し当てる。
「・・・ゃんっ・・・ぃやっ・・・!」
残酷な指を、なんとかして少しでも核心からずらそうとフミエは身をよじったが、硬い
芯棒を埋め込まれた腰はさほど動かすことができない。
「だめ・・・だっ・・・ぁ・・・んぁあ―――!」
つらぬいたものを動かされもしないのに、フミエはあっけなく達かされてしまった。
ひくひくと自身を締めつける運動から気をそらすように、茂はしなだれる女体を
前に押しやった。                                   
「・・・ふ・・・ぁ・・・まっ・・・。」         
とろとろに溶けた蜜の孔を、剛直が勢いよく出入りする。ずるりと引き抜くと、複雑な
襞が逃さぬようにまとわりつき、再び押し入ると肉の壁がきつく押し包んでくる。      
「ひぁ・・・ぁ・・・だめっ・・・また・・・。」
「また・・・なんだ?」
フミエに再び襲い来るものを、わかっているくせに茂は言葉にさせようとする。

286:まぼろしの窓 6
12/07/28 15:54:37.80 D41qHWP4
「言えよ・・・ほら。」
フミエの内部が雄弁に物語っているだけでは足りない、とばかりに茂は深くつらぬいて
容赦なく揺すぶった。
「・・・ぃ・・・く・・・ぃくぅぅっ―――!」
身も世もなく到達を訴える声は、鷲づかみにした敷布に吸い込まれ、眼前の白い背中と
臀はしっとりと汗ばんで絶頂に震えていた。

「・・・ぁ・・・。」
真っ白な世界からふと戻ると、いつの間にか仰向けに寝かされていた。やさしく髪を
撫でられ、なんだか泣きそうになる。絶頂をきざまれて、少しの間気を失っていたらしい。
茂の顔が近づいて、唇がかさなる。フミエは両手で茂の頭を抱いて甘く口づけを返した。
「・・・ん・・・っふ・・・。」
ゆっくりと、もう自分のものとも思えないほど痺れている中心をまた満たされる。
 フミエは腰を突き上げ、より深い接合をのぞむように茂の臀を両手でつかんで自らに
押しつけた。くるおしげに自らを求めてくれるフミエの、ひとつひとつの仕草が
たまらなくそそる。
「そげに、欲しいか・・・。」
囁かれてフミエは、ぞくぞくと総毛だちながら何度もうなずいた。
「まぁ・・・今度は、ゆっくり達け。」
ねっとりと口づけられ、下唇を噛まれ・・・上から差し出された舌を吸う。舌を吸いあい、
しずかに身体を繋げているだけで、叫びだしたいほど気持ちがいい。            
「すごく・・・快いの・・・ぁ・・・。」
下へとおりていった唇が、紅い実をつまんだ。舌で舐めころがされ、唇で吸われ・・・
ふたつの突起から沁みてゆく快楽が、加速度的に下腹にたまっていく。
「も・・・きて・・・あなたも・・・。」
「言われんでも、もう限界だ・・・。」
ゆっくりとうねるような腰使いが、フミエを再びの頂きへと押し上げていった。フミエの
耳元にせつなげな息を吐きながら、茂も種子を爆ぜさせた。

287:まぼろしの窓 7
12/07/28 15:55:29.83 D41qHWP4
 ぐったりと折り重なり、息を整えていた茂が身体を離した。今まで密着していた部分が、
汗と体液にまみれて冷やりとする。まだ動けないでいるフミエを満足げに見やり、どさりと
布団の上に大の字になった。
「暑いな・・・。」
「・・・ちょっこし・・・窓、開けましょうか。」
フミエはようやっと起き上がって身をぬぐい、素肌の上に浴衣を羽織った。ゆっくりと
立っていって窓辺に膝をつくと、ぎしぎしときしむ古い窓枠をすべらせた。
「・・・ええ風。」
窓辺に寄りかかり、春の夜風を胸いっぱいに吸いこむ。すみずみまで愉悦をきざまれた身体が
浴衣の中でふわふわと浮かぶような心地で、フミエは窓べりに肘をついて、隣りの
空き地の木に咲く黄色い花に目をやった。
「あ・・・山茱萸咲いとる。・・・また春が来たんですねえ。」
フミエは嬉しそうに後ろを振り返って茂に話しかけた。
「今に紅い実がいっぱい生って・・・鳥が食べに来ますけん。」
その光景を思い浮かべるようにほおづえをついて、フミエはまた窓の外をながめた。
 その時、花の向こうの夜空に、星がひとつ流れた。
「あ・・・ながれ星!」
思わず目を閉じて手を合わせ、願いをかける。
「・・・何を祈ったんだ?」
声といっしょに手が伸びて来て、後ろから抱きすくめた。しどけなく乱れた襟の間から
まだ尖っている乳首を圧され、ふたつの突起からはしる刺激に、少し身を震わせながら
振り返る。
「・・・ないしょ、です。」
茂はそれ以上聞かずに唇をかさねた。裸の胸に両の尖りがぶつかり、まだ昂ぶっている
フミエの興奮が感じられる。茂はいっそう力を込めて柔らかい身体を抱きしめた。
(赤ちゃんが、出来ますように・・・って。)
口づけを深めながら、フミエは願い事を思い浮かべていた。種子をそそがれた身体が、
茂の腕の中であたたかく息づくのを感じながら、やがて全てを奪い去られていった。 

288:まぼろしの窓 8
12/07/28 15:56:23.72 D41qHWP4
 時は経って五月のある日。アシスタント志望者に編集者、果てはテレビプロデューサー
まで、このところ千客万来の村井家に、おいしい匂いを嗅ぎつけたのか浦木までがやって
来ていた。自分もおこぼれに預かろうとしているのに、まずは茂のマンガをくさす、
相変わらずの浦木にうんざりしながら聞いていたフミエは、急にのどにすっぱいものが
こみあげ、必要以上に迫ってきた浦木の顔に向かって、思わず言ってしまった。
「き・・・気持ちわるい!!」
固まる浦木にかまわず、フミエは手で口を押さえて洗面所に駆け込んだ。
「えっ・・・?この顔の・・・ど、どこが気持ち悪いと言うんだ?」
いつも人のことはボロクソに言うくせに、浦木は少し傷ついたような表情で手鏡を
のぞきこんだ。
 フミエは洗面所で口をすすぎ、手の甲で濡れた唇をぬぐった。鏡の中に、後を追って
きた茂の心配そうな顔が映っている。
「どげした?・・・なんか悪いもんでも食ったか?」
「・・・もしかして、出来とるのかもしれん・・・。」
「出来とるって・・・えっ!赤ん坊?」
予期せぬ答えに、茂は驚いたが、藍子のときのような悲壮感はなかった。
(きっとそう・・・流れ星にお願いした、あの時の・・・。)
女にしかわからない身体のうつろい・・・そして漠然とではあるが、あの時種子を受け取った
と言う予感のようなものを感じていた。まだふくらんでもいないお腹を撫で、フミエは
幸福な想いを噛みしめた。

(あれから、喜子が生まれて・・・。)
家はすっかりきれいに改築され、今フミエが見ている幻の窓が、あそこのみすぼらしい
小さな寝間にあったことすら忘れ去られていた。茂は自らのプロダクションを立ち上げ、
相変わらず仕事の依頼はいっさい断らず、あの頃より更に忙しく働いている。
(でもこのごろは、お父ちゃんとゆっくり話すこともできんようになってしまった・・・。)
この春小学校へあがる藍子と2才の喜子、境港から引き取った茂の父母の家族六人に加え、
朝早くから夜遅くまで仕事場に詰めているアシスタント達、ひっきりなしに出入りする
編集者や関係者・・・増築したとは言えさほど広くない家の中はいつも人の気配に満ちている。
(思えば、しげぇさんと心からゆっくり出来たのって、あの頃が最後だったかも・・・。)
幻の窓に見えた昔の自分の姿に、幸せな記憶がよみがえり、ちょっと悲しくなる。

289:まぼろしの窓 9
12/07/28 16:04:10.23 yJun0Qp/
「・・・おい!さっさと出てくれ。」
そんな感慨を打ち破るような大声とノックの音。フミエは慌ててドアを開けた。
「なんだ、もう済んどるんなら、早こと出んか!」
「・・・お父ちゃん、なしてわざわざ二階のトイレに?」
「今日はスガちゃんが腹具合が悪いとかで、便所を独占してちっとも出てこんのだ。」
きれいとは言えない話に、フミエは甘い記憶もどこかへ消し飛んでしまったが、ふと
思いついて茂に聞いてみた。
「あなた、あそこ見てください。・・・あの山茱萸のこっち側・・・窓が見えますか?」
「ん・・・なんだ藪から棒に。」
茂はここへ来た目的を忘れたかのように、窓の格子に顔を押しつけて熱心にフミエの
言うとおりの場所を見た。
「・・・ん~?・・・ああ、あの窓か。あれは嵌めごろしだな。」
「はめごろし、ですか?」
「ああ・・・あそこは今納戸になっとるけん、タンスが置いてあって、窓はあっても
 開けられん。」
「・・・あそこに、何か見えませんか?」
「・・・?なんにも見えんぞ。見えるわけもないしな。」
自分だけに見えるのだろうか・・・フミエは茂とくっつくようにして窓を覗き込んだ。
「あ・・・もうおらん。」
そこにはもうあの浴衣姿のフミエはいなかった。ばかりか、窓はすっかり近代的な
サッシに変わっていた。
「お前・・・何かあやかしの者でも見たのか?」
「ちょ、ちょっこし・・・女のひとの姿が、あの窓に・・・。」
もうひとりの自分の姿を見た、とは何故か言えなかった。過去の姿、というところが
死の予兆と言われるドッペルゲンガーとは違う気がするし、なぜ過去とわかったか、
と説明しようとすればあの夜のことを話さないわけにはいかないからだ。

290:まぼろしの窓 10
12/07/28 16:04:58.56 yJun0Qp/
「・・・『影女』か!物の怪のおる家には、月夜に障子に女の影が映ると言う・・・。
 迷路のような家だけん、そげな怪しの者も出るのかも知れん。こげな風に、見えにくい
 ところをわざわざ透かして見ると、この世ならぬものが見えるとか言うしな・・・。」
家に妖怪が出たというのに、茂はなんだか嬉しそうである。
「・・・ン・・・。」
いつになく接近していた顔を寄せて、茂が口づけた。不意討ちをくらって、フミエの
無防備な官能が直撃される。
「ふぁ・・・ん・・・ぅ・・・。」
ただの口づけではない、行為の始まりのような口唇への愛撫・・・。まさかこんな所で
始めるつもりなのかと、じたばたするフミエを壁に押しつけてさらに奪いながら、茂は
パジャマの上からもわかる尖りをつまんでこすった。
「・・・ぁ・・・ゃぁ・・・っは・・・。」
「・・・とかなんとか言って、チューしてほしかっただけじゃないのか?」
たったこれだけのことで、たちまち官能にからめとらてしまうフミエの感じやすさ・・・
わかっていながら茂はわざとそんなことを言ってからかった。
「ち、ちが・・・!」
ふかい口づけと、胸の一点からはしった快感が身体をつらぬき、茂が抱いていて
くれなければ膝がくず折れそうだった。フミエは茂にしがみついて身をふるわせた。
「なんだ・・・怖いのか?・・・本当に何か見たのか?」
フミエは何も言わず胸に顔をうずめた。
「部屋までついてってやるけん・・・用を足す間ちょっこし待っとれよ。」
フミエはあわててドアを閉めて廊下で茂を待った。

「おお、よう寝とる・・・。」
茂は本当に寝室までついて来てくれて、フミエが布団に入るのを見守ってくれた。
それから子供部屋の二段ベッドですやすやと眠る藍子と喜子に目を細め、夫婦の寝室に
戻ってくる。 

291:まぼろしの窓 11
12/07/28 16:06:04.55 yJun0Qp/
「お前もええ年齢してこわがりだなあ・・・。」
誤解にしろ、茂がやさしいのが嬉しくて、フミエは布団から手を伸ばして茂の手を
握った。
「いっしょに寝てやりたいけど、今日は仕事せんと間に合わん・・・。」
握ったフミエの手を布団の中に入れると、子供にするように額に口づけた。
「早こと寝ろよ・・・。」
茂はそう言い残し、部屋を出てフスマを閉め、行ってしまった。その姿をすがるように
目で追ったフミエは、力なく目を伏せ、掛け布団を引きかぶった。

(もう・・・どげしてくれるの・・・。)
さっきの口づけで呼び覚まされた官能に、フミエの身体はとろりと内側からとろけている。
フミエの快いところを知り尽くしている指の動きがよみがえり、勃ったままの乳首が
じんじんと疼いた。
「・・・はぁ・・・。」
せつなさに、指を噛んで太いため息を吐いた。寝返りをうって脚を曲げると、女の部分が
熱くぬめっているのがわかる。たったあれだけの愛撫でこうまで高まってしまう自分が
情けない。
(お父ちゃんの、いじわる・・・!)
意地悪なのか鈍感なのか、フミエを昂らせておきながら放ったらかし、さっさと仕事に
戻ってしまった茂がうらめしい。けれど、フミエが怖がっているのだと勘違いして部屋まで
送ってくれた優しさは、ちょっと寂しいこのごろのフミエの心をじんわりと温めてくれた。
(・・・まぁ、ええか・・・。)
こんな時、自分で自分を慰めるのも羞ずかしい。フミエは冷たいシーツに頬をあてた。
中途半端な刺激でかきたてられた熾き火のような欲望は、こんなことで鎮まるようなもの
ではないけれど、今夜はこの火を抱えて寝よう、そう思っていた。この身体に刻まれた、
さまざまな幸せの記憶を思い出しながら・・・。

292:名無しさん@ピンキー
12/07/28 22:42:05.28 Oz5PwQvR
GJ!
火照った体を持て余すふみちゃんがエロいです

293:名無しさん@ピンキー
12/07/29 19:57:19.86 TY5BDA5E
GJ!
ゲゲの優しい所、フミちゃんの健気な所、良かったです~

294:名無しさん@ピンキー
12/07/30 23:16:19.38 KlbFSnWs
>>281
窓のふしぎな感じも致してるエロさも持て余してるふみちゃんのエロさもGJでした!


295:名無しさん@ピンキー
12/07/31 23:35:26.99 bXlBEILU
「しげぇさん」とノロケキタ━━(゚∀゚)━━ !!

296:名無しさん@ピンキー
12/08/01 08:22:15.85 Gbu5xEMT
頭におむねのあたりそうな肩もみムッハー(;°∀°)=3
ナチュラルないちゃいちゃが多い週でたまりませんな

297:名無しさん@ピンキー
12/08/02 21:46:17.86 pgLZBHrB
今日は良い話だった
肩ポンは燃え的にも萌え的にも最高だった

298:名無しさん@ピンキー
12/08/04 11:15:10.65 myJ8rpKG
車が来るときのゲゲさんがかわいすぎる
火傷した藍子の手を包むふみちゃんの手と動作が美しすぎる

299:名無しさん@ピンキー
12/08/05 17:27:47.41 3ITkmdSm
超暑い中原稿頑張って手が離せないゲゲさんに氷を口移しするふみちゃんを妄想

300:名無しさん@ピンキー
12/08/06 12:17:17.01 CXqH9MnE
鍋蓋で練習をゲゲに見られたふみちゃんかわいい

>>299
せんべい焼く機械の前もきっとすごく暑いと思うんだ


301:名無しさん@ピンキー
12/08/08 08:26:58.00 D8rX2HFW
この時期の夫婦ももちろんたまらんのですけど、回想で新婚時代見るとやっぱり別格だなー
貧乏なのに二人ともキラキラしてる

302:名無しさん@ピンキー
12/08/09 21:11:23.07 DYvgiGKC
「そのつもりですっ」のふみちゃんかわいすぎる

303:名無しさん@ピンキー
12/08/10 23:51:53.41 NeFX5R/I
来週から萌えが減って辛いな…

304:名無しさん@ピンキー
12/08/11 10:06:00.61 0JWqMbdP
>>303
いやいや、冷た~い茂とか、山小屋でキャッキャウフフとか、おかゆアーンとか、
おやおやあららとか、よっちゃんとかよっちゃんとか・・・まだまだ萌えどころ
いっぱいですぞ。
唐突に出てくる新婚時代の回想がすごく輝いて見えるし。
イトツイカルの若い頃も好き。

305:名無しさん@ピンキー
12/08/11 22:18:27.74 kmzhqTmb
>>304
山小屋はロケ記念写真もいいよ

306:名無しさん@ピンキー
12/08/12 00:50:10.30 3hdNUiv7
自分は藍子の就職問題でのゲゲが大好き!
フミパパの案に乗って、勝手に見合い話を進めたり
あれだけ変人なくせに、ただの娘手放したくない父親なところとか

板挟みになって、でもやっぱりゲゲの言いなりになっちゃうフミちゃんも好き


307:名無しさん@ピンキー
12/08/12 18:23:38.26 +0mQ8CHh
冷たいしげーさん良いよねー
藍子にあの手この手で妨害しようとするのもヒドイけどかわいいしw

308:名無しさん@ピンキー
12/08/13 19:13:56.04 YVWWRgvf
書き込みがちょっこし遅くなったけど、
倉田さんといずみも萌えたーw
結末知ってても「再放送では結ばれないか?」と思ってしまう倉田好きであります

309:名無しさん@ピンキー
12/08/14 23:59:29.30 5k+fyESf
今週はまだよっちゃんいじったりおかあちゃんと会話したり余裕があるな
冷たいゲゲさんは萌えるけどやっぱり切ない

310:名無しさん@ピンキー
12/08/16 17:11:44.12 c7Kt0y5b
>>308
くっつかないからこそ切なくて美しい青春萌えなカップルだよね
実話の、何年も後に会った時に抱擁したって話が大好きだ
見たかったなぁ

311:名無しさん@ピンキー
12/08/18 10:52:41.98 VJNGJ2cA
一家で別荘は何度見ても萌え死ねる
姉妹も夫婦も超かわいい

312:名無しさん@ピンキー
12/08/20 11:39:49.73 xlCKXSHv
藍子がおとうちゃんに同意しそうな喜子に何回もしーっ ってやってるのがかわいい
よっちゃんにコロッケ?をあげるおとうちゃんとか、必死で止めようとするふみちゃんとか
村井家が憩いすぎる

313:名無しさん@ピンキー
12/08/21 19:11:15.41 x6ALYS/5
南方ボケでイッちゃってるゲゲさんが好きだ

314:名無しさん@ピンキー
12/08/23 16:46:59.72 beamErJl
南方に行った事で左腕が生き霊としてついてきちゃって
ふみちゃんを誘惑したら萌える

315:名無しさん@ピンキー
12/08/24 21:22:47.61 VQsZGxkE
>>314
ゲゲふみゲゲ…だと…!?

316:名無しさん@ピンキー
12/08/25 23:35:36.84 d6P1BRMA
親子四人線香花火に癒され、予告のお粥で悶えた
お粥楽しみすぎる!

317:名無しさん@ピンキー
12/08/26 19:37:25.50 myEK3D8M
お粥シーンでのフミちゃんのゲゲを見つめる目が
恋する少女のように初々しいー

318:名無しさん@ピンキー
12/08/27 20:18:06.76 DNClNtNF
作中最もドSな時期キター!

319:名無しさん@ピンキー
12/08/29 07:55:26.80 EBmVHJKr
お粥たまらんかった…
萌え死ぬ

320:名無しさん@ピンキー
12/08/30 23:04:22.75 KcshxO8L
>>319
おかゆはほんと、何度見てもすごい萌える!

たかし…。・°・(ノд`)・°・。

321:帰宅 1
12/08/31 21:33:19.93 5ScGMKx4
「・・・私にだって、気持ちはあるんですよ!」
ある夜。とうとう心の中の何かがぷつりと切れて、フミエは夕食後の洗い物を
そのままに、エプロンを外し、つっかけを引っかけて外に飛び出した。

「あ・・・ここ・・・。」
夢中で歩きつづけ、ふと気がつくと深大寺のそばのお堂まで来ていた。ここは、
昔こみち書房のみち子が、店のことも夫婦のことももう終わりだと言って家を出て、
とぼとぼと歩いていたのをみつけた所だった。
 お堂の軒下に腰を下ろした時、自転車のライトが近づいて来た。茂が迎えに来て
くれたのかと一瞬だけ思ったけれど、まったく知らない人の乗った自転車は、フミエの
前をすうっと通り過ぎて行った。
(迎えに来てくれるわけない・・・か・・・。)
フミエは膝をかかえてため息をついた。

 最近の茂の言動は、フミエには理解できないことだらけだった。ふたことめには
『引っ込んどれ。』『お前は家の事だけやっとればええ。』・・・。
茂は家と仕事場を切り離し、フミエが仕事に関係することを極度に嫌うようになった。
経営上の危機すらもフミエの耳にだけ入れようとしない。心配で聞き出そうとすると
『仕事のことに口をはさむな!』
(なして・・・?ずっと一緒にやってきたのに。今までどおり、少しでもお父ちゃんの
 役に立ちたいだけなのに・・・。)
夜、布団の中でふと気がつくと、今日いちにち、一度も茂と視線をかわしていない
という日も少なくなかった。
(いつからこげな風になってしまったんだろう・・・?)
茂の亭主関白は今に始まったことではない。苦しい生活の中で、理不尽なことで
怒鳴られたり、ケンカだっていっぱいした。けれど、あの頃はそれを上回る数の笑いと
温かい気持ちの通いあいがあった。
(前はお父ちゃん、よう笑っとったなぁ。私も楽しいこといっぱい教えてもらった・・・。)
 茂が売れっ子になり、仕事漬けの日々を送るようになっても、喜子が生まれた頃くらい
まではまだよかった。茂はテレビ番組の主題歌の歌詞を真っ先にフミエに見せてくれたし、
漫画の手伝いをすることはなくなった代わりに、若いアシスタント達の世話をやくことで
茂の仕事に貢献することもできた。
 けれど最近では、アシスタント達の顔ぶれも変わり、以前のように家庭的な雰囲気
ではなくなってきた。お茶も夜食もいらないと言われては、後はもう仕事部屋のそうじ
くらいしかフミエにできることはなかった。

322:帰宅 2
12/08/31 21:34:27.97 5ScGMKx4
 あの頃みたいにいつも一緒に笑っていたい。なんとかして茂の役に立ちたい・・・。
(そげ思ったらいけんの・・・?お父ちゃんにはうっとうしいだけなの・・・?)
今の成功は、全て茂自身の努力によるものだ。自分はただそれを側で見て来ただけ。
・・・支えたなんておこがましい事は夢にも思っていない。
 茂にはもう、自分なんて必要ないのかもしれない・・・そう考えると、抑えようもない
虚しさと悲しみが湧き上がり、頬を涙がつたった。月のない夜で、街灯の灯すら届かない
小さなお堂の軒下は真っ暗だった。フミエは声を押し殺して泣いた。涙は強い鎮痛薬の
ように憤りや悲しみを痺れさせ、やがてフミエは賽銭箱にもたれて眠り込んでしまった。

「・・・お米は買ってあるし、乾物や缶詰は流しの下に入っとります。あと下着はタンスの
 ひきだしの下から二番めです。くつしたは・・・。」
「あーあーあー、もうわかっとる!それより早こと行かんと、汽車に乗り遅れーぞ。」
夢の中で、フミエは初めての里帰りに出発するところだった。藍子を背負い、玄関の
三和土におり立ってもまだ、後に残していく茂の暮らしに心配がつきないフミエを、
茂は笑ってせきたてた。

 東京駅から一昼夜の列車の旅。
 陽はとっぷりと暮れ、車窓からの景色を珍しそうに見ていた藍子は、今はフミエの
膝を枕にすやすやと眠っている。
「・・・よう寝とる。」
三年半前、この列車に乗った時は、茂と二人きりだった。出会ってからわずか五日で
祝言を挙げたばかりの二人はまだぎこちなかった。なんとか話題をみつけて話をしても
すぐ途切れ、気まずい思いのうちにいつしか眠りに落ちた。ふと目覚めて隣に眠る
ひとに気づき、生涯の伴侶となった男の寝顔を不思議な思いで見つめたあの夜・・・。
 そんな二人が東京の片隅で一緒に暮らし始め、厳しい人生の雨風に立ち向かう内、
身も心も深い絆で結ばれていった。・・・そして今、膝に伝わってくるこの小さな
ぬくもりがある。
(お父さん、お母さん・・・私、しげぇさんと二人で、なんとかやっとるよ。
 こげに遅うなってしまったけど、もうじき会えるね・・・。)
特急列車は闇を裂いて西へ西へと走って行く。三年半の時を遡るような気持ちで
そんなことを想いながら、フミエもいつしか眠りに落ちて行った。

323:帰宅 3
12/08/31 21:35:41.42 5ScGMKx4
 ひさしぶりの実家は、子供たちが少し大きくなったこと以外はそれほど
変わりもなく、昔のままに磨きぬかれた店、にぎやかな食卓・・・調布の我が家とは
まるで違う時間が流れているような大塚の暮らしが繰り返されていた。
 だが、変わっていないように見えて、やはり人々の暮らしにはそれぞれ転機が
訪れているものだ。
 なかでも一番大きな変化は、弟の貴史に訪れていた。父の源兵衛は、三十歳になる
貴史に、縁談と支店を出すという二つの大きな進路を、家族にも本人にも何の相談もなく
すすめようとしていた。だが、貴史には相愛の恋人がいる。ひとり娘である彼女と結婚
するためには、貴史が婿に行かなければならない。父と恋人の板ばさみとなって、気のいい
弟は家業のために自らの幸せをあきらめようとしていた。
 貴史が恋人に別れを告げる場面を見てしまったフミエは、その夜、遅くまで店にいる
弟としみじみと話をした。ふたりで店を手伝っていた頃の思い出話から、今の自分の
暮らしのこと、貧乏しても漫画にうちこんでいる茂のこと、自分も茂には好きな漫画を
描き続けてほしいと思っていること・・・。
「何があっても、いちばん大事と思っとることはあきらめたらいけんよ。」
苦労して続けてきた店を放り出すわけにはいかないと言っていた貴史だが、それを聞いて
何か思うことがあるようだった。
 貴史の結婚問題は、一世一代の勇気を振り絞って父の源兵衛と対峙した事で急転直下の
解決を見ることになった。源兵衛が、子供たちもいつまでも子供ではないという、
当たり前のことを悟り、とにもかくにも相手に会ってみると言い出したのには、藍子の
ビー玉事件もひと役かっていた。

(・・・あの時は肝が冷えたけど、お父さんが貴史の話を聞く気になってごしなって
 よかった・・・。怪我の功名ってこのことやね。)
調布の家を離れて五日目の夜。藍子を寝かしつけながらフミエはあらためて今度の里帰り
のことを振り返っていた。
(この部屋で寝るのも今夜で最後か・・・。)
娘時代を過ごした部屋は、婚礼の前の晩とほとんど変わらずフミエを迎えてくれた。
姉たちからフミエへと使い継いだ机、ランプ、たんす・・・。とりわけ懐かしいのは、
得意な裁縫で家族じゅうの服を縫ったミシンだった。

324:帰宅 4
12/08/31 21:36:56.10 5ScGMKx4
(ここに住んどった頃は、東京にお嫁に行くなんて思ってもみんだった・・・。)
少女時代の夢、あこがれ、劣等感・・・嫁きおくれと言われる年齢になってからの
(自分は将来、どうなってしまうのか・・・?)と言う焦り、不安・・・。この部屋は
嫁ぐ前のフミエの全てを見て来たと言っても過言ではない。
 隣の布団では、小さな藍子がすやすやと眠っている。
(あの頃は、とても思えんだった・・・こげな日が来るなんて。)
女性にしては高過ぎる身長が災いして、最初の縁談を断られてから、なにかケチが
ついたかのようにご縁に恵まれなかった。家業や家事の手伝いにやりがいを見出して
はいたけれど、適齢期はとうに過ぎ、そろそろ限界を感じていた。そんな時、父が
不思議と気に入って勧めてくれたのが茂との縁談だったのだ。
(よかったのかな・・・やっぱり・・・しげぇさんと結婚して。)
初めて会った時の第一印象は、健康そうで、健啖家で、気さくな感じのひと。
ストーブがつかない騒ぎで、うっかり立ち上がって背の高いところを露見させて
しまったフミエに皆が驚く中、茂は泰然自若とストーブをつけてくれた。
 結婚してからわかったことだが、茂はおおらかで独創的な言動で、時にその場の
空気を救うことがよくある。本人にそんなつもりはないのかもしれないが、フミエは
茂のそんなところがとても好ましいと思っているのだ。
(会いたいな・・・しげぇさんに。)
ふいに茂の笑顔が浮かんできて、さびしくてたまらなくなる。たった五日、それも
嬉しい里帰りで離れているだけだというのに、もう茂が恋しいなんて、いい年齢して
恥ずかしくなる。

 人は誰かを好きになって、その人を守りたいと思った時大人になるのかもしれない。
・・・おとなしい男と思われていた弟の貴史が、好きな女性を守るため、初めて父に
刃向かった。その姿は、二年前の秋、茂をなじった父に立ち向かっていった自分の姿に
重なった。
『何があっても、いちばん大事と思っとることはあきらめたらいけん。』
貴史に諭しながら、図らずも自分の想いを吐露することになったその言葉・・・。いちばん
大事と思っていること、フミエにとってそれは、漫画にうちこんでいる茂のそばに、
ずっと寄り添って生きていきたいということだった。

325:帰宅 5
12/08/31 21:38:20.36 5ScGMKx4
(私も、もう昔の私と違うけん・・・。)
いっしょに生きたい人がいる・・・身も心もひとつに・・・。
 娘時代に使っていた、紅い銘仙の布団の下で、女の身体が息づいている。太い吐息を
ついて自分の身体を抱きしめると、浴衣の下で乳首が硬くなり始めているのがわかる。
 えりの合わせ目から手を差し入れて、そっと尖りをこする。じわじわと沁みてくる
痺れに、いとしいひとの指の感触を重ねる。快感は電流のような速さで中心へと奔り、
熱と潤いを呼び覚ました。 
 合わせ目がとろりと割れて、たたえられたぬめりがフミエの指を濡らす。わずかな
刺激にこれほどまで溢れさせている自分に驚きながら、指はさらに奥をさぐっていった。
(知らんだった・・・こげに、きついなんて・・・。)
茂を受け入れる場所に指を沈ませて、押し返してくる肉の壁の圧迫感に驚く。初めて
ここを開かれてから、数え切れないほど挿入れられ、馴染まされてきた。子供もひとり
産んでいるというのに、フミエは女体の柔軟さ、不思議さに今さらながら感心した。
 熱く柔らかく、それでいてきつく、侵入者を締めつける性の唇・・・。自分の肉体が
いつもこんな感触で茂をもてなしているのかと思うと、たまらなくなって、フミエは
もう片方の手を下着にすべりこませ、花芽に指をからめた。
「・・・ん、ふっ・・・。」
自分でも驚くほどの快感がはしり、思わず唇を噛みしめた。隣りには幼な子が寝ている。
親兄弟の住む家で自らを涜(けが)すことに罪悪感を覚えながら、指を抜くことができない。
「・・・は・・・ぁあ・・・。」
細い指では比べ物にならないけれど、いつもここを満たしてくれる充実を思い浮かべる
だけでまた身体が燃える。いつからだろう・・・自分が心にも身体にも、茂でなければ
満たせない空隙を抱いて生きている、と自覚するようになったのは。娘の頃は小さかった
隙間にいつしか茂が住み着いて、その居場所はずいぶん大きくなってしまった。
 いつも与えられる責めに似せて、花蕾をいたぶる指の動きが速まった。
「・・・ァッ・・・・・・!」
来る・・・と思った次の瞬間、しなやかな肉身が断続的に脈打ちながらフミエの指を
食い締めた。ときん、ときん・・・指に刻まれる脈動に、自分の身体がいつもこうして
絶頂の瞬間を、声や表情だけでなく、つながった部分でも茂に直接伝えていることを知った。
(気持ちええと、思ってくれとるのかな・・・。)
ゆっくりと指を抜き去り、やるせない身体を投げ出す。愛し合った後と違って、口づけも
抱擁もない。当たり前のことがたまらなくさびしかった。

326:帰宅 6
12/08/31 21:39:17.99 5ScGMKx4
「ただいま戻りましたー!」
明るい声で帰りを告げると、待ち構えた茂が玄関先で迎えてくれた。一週間たらずの
留守で、これほどこの家が懐かしく感じるとは思ってもみなかった。
「・・・それほど散らかっとりませんねえ。」
脱ぎ散らかした衣類や、溜まりに溜まった皿や茶碗・・・そんなものを想像していた
フミエは、意外とこざっぱりと片付いている室内に、ちょっと拍子抜けしていた。
「留守にしたら、少しは困るかと心配しとったのに・・・。」
心配していたと言いながら、フミエは茂が留守中特に困りもしなかったことに、むしろ
がっかりした様子だった。
「何を言っとる。炊事でも洗濯でも、その気になれば俺は何でもできるんだ。・・・けどな、
 ひとりではあんまり笑えんな。せっかくええ音を響かせても、聞く者がおらんでは
 おかしくもなんともないわ。」
長いこと独りで暮らしてきて完結していただろう茂の暮らしも、いつしかフミエという
伴侶がいないでは成り立たなくなっていたのだ。茂らしく屁にかこつけてそんな想いを
伝えた後、照れ隠しのように茂は実際にひとつ放ってみせた。
「うーん・・・空に輪をえがく、トンビの声でしょうか?」
「うん、そのとおり!」
フミエの風流な見立てに、茂が満足そうに笑った。
「あ~、やっぱりうちはええなあ・・・の~んびりする・・・。」
「なんだ、実家でのんびりしたんじゃなかったのか?」
「それはそうですけど・・・私のうちは、ここですけん。」
フミエは大きくひとつ伸びをした。フミエにとっても、茂がいるこの家が、今や他の
どこでも代えようがない自分の居場所なのだと改めてつよく感じていた。

「風呂入って早こと寝え。・・・汽車に乗りっぱなしで鼻の穴まで真っ黒だぞ。」
夕食の後、茂はいつものように仕事部屋に引き上げながらそう言った。
「や・・・やだ。本当ですか?」
フミエは思わず鼻を押さえた。茂がしてやったりと言う顔で吹き出す。
「もぉ・・・そげなことばっかり言って。」
かつがれたことに怒ってみせながら、フミエも笑っていた。けれど、胸の中では
『早こと寝え。』という言葉がひっかかっていた。

327:帰宅 7
12/08/31 21:40:44.76 5ScGMKx4
「藍子、寝たか・・・?」
風呂上りのフミエが、藍子を布団に入れて寝かしつけていると、茂がフスマをそっと
開けて部屋に入ってきた。
「ちょっこし見んうちにも大きうなったような気がするなあ・・・。」
見る者の心をひきつけずにはおかない幼子の寝顔・・・ましてやそれがわが娘であって
みれば、茂の視線が一週間ぶりで会う藍子にばかりそそがれるのも無理はない。
「イカルもイトツも骨抜きだったろう・・・?」
「はい・・・それはもう、可愛がってごしなさって。お義父さんが抱こうとされても、
 お義母さんが離されんだったんですよ。」
茂は満足げにうなずくと、藍子の額に口づけた。
「さてと・・・。お前も疲れただろう。早よう寝えよ。」
茂は立ち上がってフスマを開けかけた。行ってしまう・・・!平静を装おうとしたのに、
フミエの視線はすがるようにその姿を追ってしまった。
「・・・ん?なんか用か?」
「ぇ・・・い、いえ・・・何でも。」
フミエはハッとして座りなおした。茂のような男が、たとえ『屁を聞かせる相手が
いなくてつまらなかった。』と言う表現にせよフミエの不在を惜しんだ・・・それだけでも
十分なはずなのに、自分はこれ以上何を求めているのだろう?そう思ってもフミエには
もう自分の心がこう叫ぶのを止められなかった。
(離れとる間、自分で自分を慰めるほど寂しかったのは、私だけだったの・・・?)と。

「なんだ・・・?言いたいことがあるんならはっきりせえ。」
茂は戸口に立ったまま、じれたように聞いた。
「・・・あなたは・・・その・・・。」
この場面でこんなことを言ったら、誘っていると思われてもしかたない。頬が燃える
ように熱くなるのが自分でもわかったが、フミエは声を振りしぼった。

328:帰宅 8
12/08/31 21:42:22.99 5ScGMKx4
「・・・さびしく・・・なかったんですか・・・私が、おらんでも・・・?」
茂が口をポカンと開けている。その口が閉じ、いつもの少し意地悪な笑いが浮かんだ。    
「シてほしいなら欲しいと、はっきり言うたらええのに。」
相変わらずの身もふたもない言い方に、フミエは真っ赤になった。            
「ち、ちがいます・・・ただ・・・。」
「ただ・・・なんだ?」
「あの・・・ちょっこし、くらい・・・。」
「ちょっこしって、どげなことして欲しいんだ?」
茂はいつの間にか布団に戻ってきて、フミエの顔をのぞきこんでいる。
「・・・ンッ・・・は・・・。」
困り果てて横を向いたフミエを抱きすくめて、いきなり唇を奪う。
「・・・ふぅ・・・こげなもんでええか?」
舌と舌が出会い、フミエの細い身体が腕の中で力を失いかける・・・だが茂は絶妙な
間合いで唇を離し、涼しい顔で聞いた。
 ちがう・・・そんな風にしてほしいわけじゃないのに・・・。抱きしめられ、口内を舌で
探られただけで早くも身体の芯が溶けかけていても、フミエの心は焦燥にかられた。
「・・・いかないで・・・ここに・・・いてほしいんです・・・。」
茂が破顔し、よく言ったとばかりに今度は息がつまるほど強く抱きしめた。
「疲れとるだろうから、寝かしてやろうと思ったけど・・・。」
身体を離すと、身八ツ口から差し入れた指で乳首をきゅっとつまんだ。
「・・・!」
「・・・覚悟せえよ。」
その言葉と、乳首からはしる電流のような快感が、フミエの身体をつらぬいた。
 掛け布団を剥いで表れた真っ白なしとねの上を示されるままに、フミエは全てを
脱いでそこに横たわった。目を閉じて待っていると、茂が衣服を脱ぐ音がする。
無防備な肌に視線を感じてうっすらと目を開けると、猛々しく反り返る男性が目に
入った。解き放たれた雄は茂の中心で揺れながら、フミエを食い尽くす瞬間を
待っている。ふたつの目が欲望に煮えるような心地がして目を閉じると、熱い身体が
覆いかぶさってきた。

329:帰宅 9
12/08/31 21:43:40.22 5ScGMKx4
「・・・ん・・・ふっ・・・。」
唇を結び合わせ、肌を重ねる。腰に押しつけられた硬い感触をいやがうえにも
意識させられざるを得ない。閉じたまぶたの下で、さっき目に焼きついた獰猛な生き物の
残像が熱を発し、早くフミエを食べたいと訴えかけてくる。                 
「・・・っは・・・ぁあ!」
身の内から煎られるような欲望が、フミエの肌をいつにも増して過敏にさせている。
口づけを解いて下がり始めた唇が首筋を這っただけで、自分でも驚くような色めかしい
声が洩れ、フミエは必死で両手で口をおさえた。
「んふぅ・・・ぁ・・・っや・・・。」
左の乳輪にさわさわと指を這わせながら、右の尖りをやさしく舐める。右手は
次第に乳房全体を揉みしだき、口に含まれた乳首は強く吸われてフミエの下腹部に
叫びだしたいほどの快感を送り込んだ。フミエは瘧(おこり)のように震え、声を
押さえようと口に当てた手の甲を思い切り噛んだ。

「んゃ・・・だめ・・・っっ!!」
胸をなぶっていた舌がだんだんと下がっていき、臍を舐め、腰骨の上の薄い皮膚に
歯をあてた。フミエはぞくぞくと身を震わせ、腰を波打たせた。自然と広がった膝を
つかんで脚を拡げ、濡れそぼつ中心部に口づける。
「・・・はぁっっ・・・や、やめ・・・ぁ・・・やっ・・・。」
狭い口にすべり込ませた指で性の花の全容をあばき出すように持ち上げ、露わになった
襞のあいだを舌が動きまわる。
 顔を横に傾けて、感じすぎる核をそっと歯ではさむ。跳ね上がった足が、思わずこの
狼藉者を蹴りそうになり、フミエは必死で手で押さえた。                 
「我慢できんだったら、そのまんま押さえとけ。」
そう命じると、再び股間に顔を埋めた。さっき歯ではさんだ花芽を、今度は同じ角度で
唇ではさみ込み、つよく吸った。

330:帰宅 10
12/08/31 21:45:17.45 5ScGMKx4
「・・・だめっ・・・だめぇぇ・・・っ!」
両腿を押さえるフミエの指が、白くなるほどつかみしめる。秘裂に沈めた指でなかを
解すようにかき混ぜ、舌で上下左右自在に蕾を舐めてやると、喉から漏れる嬌声は
啜り泣くように尾を引いた。
「・・・っひ・・・あ・・・ぁ・・・ああ―――っ!」
なおも容赦なく責めると、フミエは狂ったように腰をうごめかせ、茂の指を締めつけて
果てた。                                      

 指を抜き取って起き直り、ひくひくと震える身体を見下ろす。脚を閉じる気力もない
フミエの膝の裏に手を入れて片脚を寄せてやると、フミエは力の入らない手で身体を
庇いながら横向きになった。その上にかがみ込んで腰の下に手を入れ、身体を返す。
「・・・ゃっ・・・!」
腰を持ち上げられ、足で膝を割られて、フミエはあわてて手で身体を支えた。
「・・・まっ・・・て、まだ・・・ぁあ――!」
休む間もあたえず、すっかりほとびた裂け目を肉塊が埋めていく。
「ぁ・・・っぅ・・・ぅうん・・・。」
繋がった部分を小刻みに揺すぶりながら、二指で乳首をつまんで弄る。甘だるい波が
胸からじわりと拡がり、雄根を呑みこまされた中心と呼応してフミエの全身をつらぬいた。
背で茂を押し返すようにのけぞり、いたずらな手を払いのけようとして、逆に手首を
つかまれる。振り返った唇を食まれ、夢中で舌をからみあわせた。
「・・・んは・・・ん・・・ぁう・・・っ!」
無理な姿勢で少し浅くなった繋がりをぐいっと深められ、フミエは悲鳴をあげて
口づけを振り切った。腰をつかんで引き寄せられ、激しい抽送がはじまる。
「・・・っは・・・ぅ・・・っぁ・・・ぁっ・・・。」
責める腰が、臀の肉にぶつかる音に合わせるように切れぎれの啼き声があがる。より深く
沈め、抉り、揺すぶると、その声はせつなげにかすれ、次第に切迫していった。         
「・・・ぁっ・・・ぁーっ・・・ぁぐぅうっ―――!」
腰を抱きしめ、全存在を埋め込むようにひときわ深く突き入れる。鷲づかみにした
敷布に吸われた悲鳴の代わりに、フミエのきつい肉の花が茂自身を絞りあげて到達を
伝えた。

331:帰宅 11
12/08/31 21:46:23.55 5ScGMKx4
 引き抜かれ、余韻に震えている身体を返される。やさしい口づけが落ちてくるのと
同時に、また満たされる――。
「ぁあ・・・。」
思わず満足のため息を漏らしてしまう。しがみつく背が汗に濡れているのすら愛しくて、
唇を寄せて肩の汗を吸った。温かい唇の感触に、茂が少し笑ってその唇を奪った。
「一週間離れただけで、そげに寂しかったか?」
夢見るような瞳で、フミエは汗に濡れた茂の髪をかき上げ、いとしげに頬を包んだ。    
「・・・ひとりで寂しくて、こげなことでもしたか?」
頬を包む手をとられ、繋がっている場所へと導かれる。
「・・・ぇ・・・。」
何故わかってしまったのだろう・・・茂の言わんとすることを覚って、フミエは真っ赤に
なった。
 図星のようだ。カマをかけただけなのに、閨のこととなると相変わらず初心の妻に、
茂は思わず会心の笑みをもらした。覆いかぶさった身体を少し空けて、敏感になりっぱなし
の芽にフミエの指を置く。その手を下腹で押さえつけ、フミエの脚を閉じさせて、膝立ち
した両脚で挟み込んだ。
「・・・ぁン・・・だ・・・め・・・。」
「・・・したのか、せんのか、白状せえ。」
フミエの指をはさんだまま、狭い入り口を剛直が出入りする。
「ぁあっ・・・ゃっ・・・だめ・・・だっ・・・!」
茂に嘘をつくことなんて出来ない。ましてや身体をつなげている時には・・・。
「・・・しま・・・した・・・っあ・・・おねが・・・ぁ・・・!」
身も世もなく悶えながらフミエが告白した。二人の間に挟みこまれたフミエの手が
引き抜かれ、蜜にほとびた指が茂の口に含まれる。

332:帰宅 12
12/08/31 21:48:02.37 5ScGMKx4
「ぁあ・・・っぁ・・・く・・・あ―――!!」
口から指を抜き、口づけを降らせながら茂がのしかかってくる。後はもう、気がとおく
なるほど突かれ、こすられ・・・フミエはまっすぐに伸びた脚をぴんと突っ張らせ、閉じ合わ
された唇の中に何度も甘い絶叫を吐いた。うすれゆく意識の中で、身体の奥にあたたかく
注がれる生の証を感じていた。

「・・・少し間が空いただけで、そげに寂しくなるとは・・・。」
ぐったりと横たわるフミエの胸の尖りを口に含んで舐め転がしながら、茂が言葉で弄る。
「ずいぶんと欲しがりになったもんだな・・・。」
「ゃ・・・めて・・・ちがっ・・・ぁあ・・・っ!」
もう片方の乳首をぎゅっとひねられ、まだ脈打っているような核心まで衝撃がはしる。
フミエはびくびくとと身をよじって嗄れた悲鳴をあげた。                 
「はぁ~・・・さて・・・これで当分保(も)つか?」
嬲られても、奪いつくされて動けないフミエを満足げに見やると、茂は唇を離し、傍らに
ごろんとひっくり返って大げさにため息をついた。
「・・・また・・・そげなこと言って・・・。」
(私ばっかり欲しがっとるみたいに・・・。)
フミエはにらむ気力さえなくて、涙にうるんだ目でただぼんやりと茂を見ていた。

「腕をなくした後・・・重心がとれんでうまく歩けんようになってな。何度も転びながら
 練習して、やっとまっすぐ歩けるようになったんだ。」
茂が唐突な話題をふるのはいつものこと・・・フミエは気怠げに脱ぎ捨てた浴衣を拾い上げ、
裸の身体に引きかけながら聞いていた。
「脚じゃのうて腕なのに歩けんとはおかしな話だと思うだろ?人間は自分じゃ気づかんが、
 絶妙なバランスのうえに生きとるんだなあ・・・。」
初めて聞く話に、フミエは思わず茂の顔をみつめた。
「家族いうもんも、独り身の時は別におらんでも構わんと思っとっても、出来てみると
 自分の手や足と同じで、あるのが当たり前になる。それがおらんようになると、
 やっぱりなんかこう、調子が狂う、言うかな・・・。」

333:帰宅 13
12/08/31 21:49:09.58 5ScGMKx4
茂はそれだけ言うとう~んとひとつ伸びをして、起き上がって服を着はじめた。フミエも
起き直ってそれを手伝ったが、いつもはいやがる茂が今日はされるがままになっていた。
「・・・ほんなら、よう休めよ。」
茂はなぜかそっぽを向いてそう言い残すと、仕事部屋に戻っていった。

 フミエはしばらくポカンとしていたが、浴衣をきちんと着なおして布団に横になり、
茂の言葉を反芻してみた。
(い、今・・・わかりにくいけど、なんか私が必要みたいなこと言うたよね・・・?)
『俺にはお前が必要だ。』なんて間違っても言う男ではないことは、重々承知している
フミエだった。けれど今の唐突な話は、簡潔にまとめるとそういうことではないのか?
こみあげる笑みを抑えるように両手で顔を押し包むと、頬が熱い。
「もっとわかりやすく言うてほしいなあ・・・。けど、ええか・・・。」
腕をのばして茂の布団を撫でる。そっと掛け布団をあげて彼の布団にもぐり込んだ。
(しげぇさん・・・。)
火照った肌にひんやりと冷たい布団に顔を埋め、茂の匂いに包まれる。一昼夜藍子の
守りをしながら汽車に揺られてきた疲れに、愛された後の気だるさと幸福感が加わって、
たちまちまぶたが重くなる。
(なして俺の布団で寝とる・・・って言われるかなあ・・・。)
そう思いながらも、もう眠くて身動きもとれず、フミエは幸せそうに夢の中へと落ちて
いった・・・。                                     

「ぇ~ん・・・ゃだよ~・・・。」
どこかで子供の泣く声がする。フミエはハッと目を覚まして顔をあげた。
「言うこと聞かないと、置いていきますよ。」
「まってぇ・・・おかあちゃ~ん・・・。」
ぐずる幼い女の子と、怒りながら先へ歩いていく母親・・・それはよくある風景だったけれど、
泣いている女の子の姿に喜子がかさなった。

334:帰宅 14
12/08/31 21:50:11.04 5ScGMKx4
「喜子、泣いとるだろうな・・・。藍子も困っとるかもしれん。ふたりの目の前でケンカして
 飛び出してきてしもうたりして、どげに心細い思いでいるか・・・。」
フミエは矢も盾もたまらずお堂を出て家の方向へ歩き出した。
(私ったらあげな所で寝込んでしまうなんて・・・。でも、なんかええ夢を見とったような
 気がするんだけど・・・。)
子供の泣き声で目を覚ましたため、夢の内容はすっかり忘れてしまっていた。けれど、
フミエの心の中は、何か温かい思いで満たされていた。
「帰ろう・・・私の大切なものは、みんなあの家にあるんだから・・・。」
思い切り泣いてぐっすり眠ったせいか、頭も心もスッキリとして、フミエは夜気の中を
足早に家路をたどった。

「・・・行きましたね。」
さっき泣きながらフミエの前を通り過ぎていった女の子が、物陰でぽん、と男の子の
姿に変じてお堂に戻って来た。一緒に歩いていた母親はどこにもいない。男の子は
祭りでもないのに狐の面をかぶっている。彼は遠ざかってゆくフミエの後ろ姿を見送り
ながら、誰もいないはずのお堂の中に呼びかけた。
「ああ・・・あんなものでよかったのか?あの女の無意識の底に沈んどる記憶のひとつを
 適当に選んで見せてやったんだが・・・。」
男の子が話しかけた相手の姿は見えない。ただ厳かな声だけが堂内にひびいた。
「はい・・・。人間なんて気の毒なもんですね。やっと貧乏から抜け出したと思ったら、
 忙しすぎて今度は心が離れちまうなんて。いつだってとばっちり喰らうのは子供なのに。
 あのひとも、昔のこと思い出して自信を取り戻してくれるといいけど。」」 
「ふん・・・親切なことだな。放っておいても、あの女に他に行く所などないだろうに。」
「それでも、早く帰ってやってほしかったんです。あのひとの娘たちがどんなに心細い
思いをしてるかと思うと・・・。」
「ほほぉ・・・。」
「や・・・やだな、そんなんじゃありませんよ。ただ・・・あの娘たちのことは、赤ん坊の頃
 から見て来たから・・・。」
もう家に着いただろうか・・・小さな妹をなだめながら、母の帰りを信じて精一杯気づよく
待っているだろう小さな姉娘のことを思いながら、狐面の男の子はいつまでも暗い夜道を
見透かすように目をこらして立ちつくしていた。

335:名無しさん@ピンキー
12/09/01 22:39:39.34 QFmGf1Ww
>>321
GJ!
実家で一人でしちゃうふみちゃんかわいい
最後の不思議な感じもすきです

336:名無しさん@ピンキー
12/09/01 22:42:47.59 jZZ5/GTy
超大作キタ―(゚∀゚)―!!
リアルタイム(再放送だけど)なネタで良いですな

337:名無しさん@ピンキー
12/09/02 06:13:23.30 YpZPoZu9
>>321
茂さんの最後の告白がすっごく素敵~。
GJです!

338:名無しさん@ピンキー
12/09/03 23:01:51.57 Uxi+ydrx
>>321
GJ!

339:名無しさん@ピンキー
12/09/05 23:31:34.79 rheSeq/J
>>321
ふみちゃんは実家でひとりなぐさめちゃうくらい、
ゲゲさんも着替えの手伝いを受け入れちゃうくらい寂しかったのか…!
濃密でかわいい夫婦GJでした!

340:名無しさん@ピンキー
12/09/07 17:08:45.62 1HIWLfFm
熟年ゲゲふみもたまらん
イカルのくれた鰻で…って本スレの書き込みにニヤニヤしてしまったw

341:名無しさん@ピンキー
12/09/08 20:30:16.79 R7kN2lsV
今日の最後の楽園の間でのいちゃつきっぷりがもう
かわいすぎる

342:名無しさん@ピンキー
12/09/09 19:58:43.30 +GdE0RKT
今週のイチャイチャは質の高いイチャイチャだったよね
かわいいけど、かわいいだけじゃない深いものだったと思う

343:名無しさん@ピンキー
12/09/09 22:14:40.37 K/u1luir
前にも書いたかもだけど
(お互いが)結婚した相手に初恋するって凄いな
しかも一途だし


344:名無しさん@ピンキー
12/09/11 17:06:48.39 kqsMFXlU
今朝のイタチの「俺が信用できんのか?(ウロ)」に
ゲゲが「信用できん!」と答えた後ろで大きくうなずくフミちゃんワロタw
かわいいったらないわw

345:名無しさん@ピンキー
12/09/12 17:53:55.03 u+QIoruP
>>344
あれ即答っぷりに笑えるし、頷くふみちゃんかわいいし、良いシーンだよね

今日のおやおやあららとかその後の知らんよとか、夫婦っぷりがたまらん

346:名無しさん@ピンキー
12/09/13 23:08:58.21 MreR01Op
新婚のどぎまぎも熟年の安定感も楽しめる
ゲゲふみは本当に神夫婦だわ

347:名無しさん@ピンキー
12/09/14 23:05:14.70 hwiB+zas
>>345
夫婦っぷりといえば今日の仲人に行く前の二人は最高だった!
ふみちゃんが和服なのもポイント高い


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