【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】at EROPARO
【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】 - 暇つぶし2ch163:ももの花 11
12/05/27 15:10:28.35 cPzDbMVD
「ちょっこし、手伝え・・・。」
しがみついた手を放させ、指をとって花芽に押し当てる。
「ぃや・・・。」
いやがる指を親指で押さえつけ、一番長い指をフミエの奥に挿し入れる。      
「・・・ゃっ・・・ぁあ・・・。」
「離すな・・・よ・・・。」
前の部分はフミエにまかせ、挿入れた指を深める。のけぞったフミエの乳の
先端を口に含んでつよく吸った。
「ひぁ・・・だっ・・・だめっ・・・!」
「自分で、快うしてみい。」
「・・・ぃや・・・おねがい・・・あなたが・・・。」
自分で弄ることには忌避感があるらしく、フミエは泣きそうな声で懇願した。
「しょうがないな・・・。」
茂は深めた指を少し浅くし、フミエの指を親指で押しながら動かした。
「ゃ・・・っ!ぁ・・・ぁあ―――!」
いつしかフミエの指もともに動き、本能のままに腰が揺れた。悲鳴とともに、
フミエの内部が茂の指を断続的にしめつけた。愛らしい反応を楽しんでから
そっと指を抜く。フミエは前を手で覆ったまま、身体を丸めて余韻に震えた。
「ええ匂いだ・・・。」
蜜にまみれた指を、悲鳴の形に開いたままの唇に差し込んで、舌をなぶる。
「女が、ええ匂いをさせとるのは、ええもんだ・・・。」
口づけながら、大きく開かせた両脚の中心をぐいと侵す。
「んぁっ・・・ぁ―――っ!」
フミエは腰を弓なりに反らせ、枕から頭を落として髪を振り乱した。茂が
手を伸ばして枕を拾いあげ、ぐっと突き上げてフミエの腰を上げたままにすると、
その下にあてがった。
「ぃや・・・ぃ、ぃゃあ・・・っ!」
腰が上がったままになり、より茂を受け入れやすくなった蜜壷を、逞しい肉根が
容赦なく出入りする。
 快いところに引っかかるのか、フミエは半狂乱で茂の背に爪を立てた。
「―――!」
名を呼ぶことはおろか、叫ぶことさえ出来ぬほど急激に追い上げられ、フミエは
水を求める魚のように大きく口を開いたまま、ただびくびくと身を震わせた。

164:ももの花 12
12/05/27 15:11:54.14 cPzDbMVD
「・・・ん。」
開けっ放しでカラカラになった口に、濡れた舌がしのびこんで渇きを湿した。
しびれるような絶頂感は少しおさまったが、そのまま唇をむさぼりあっている
と、まだしっかりと楔を打ち込まれたままの結合部からとめどなく快感が
湧き上がってくる。
「んは・・・ぁ・・・はぁ・・・ゃ・・・ぁあっ・・・!」
つながったままの腰を引き上げられ、臀の下には枕の代わりに茂の大腿が差し
込まれた。右手をつかまれ、膝の上に引き起こされる。
「・・・はぁ・・・は・・・ぁ・・・だめ・・・。」
今きざまれたばかりの絶頂が、身体じゅうに鳴り響いている。震えながら涙を
こぼすフミエのおとがいを優しくあげて、唇を重ねた。
「んっ・・・ふ・・・ぁ・・・ぃ、や・・・。」
茂がまた手を取り、ふたりが繋がっている部分に指で触れさせる。張りつめた
雄根に押し広げられた狭い入り口を指でぐるりとなぞらせ、蜜に濡れた真珠を
ぐっと押しつぶす。
「・・・ひゃっ・・・ゃ――っ!」
フミエの内部が茂をきゅううっと締めつける。
「なあ・・・挿入れられるって、どげな感じだ?」
耳に囁かれた唐突な質問にフミエは戸惑った。
「・・・ど、げな・・・って・・・。」
口で言うなんて、出来そうにない。たまらなく埋めてほしくなっている空隙を、
愛する人にすき間なく満たされる瞬間の、たとえようもない幸福・・・。
 黙っているフミエに焦れたように、臀をつかまれて引き寄せられる。より深く
うがたれ、奥を突かれて、もう何も考えられなくなる。
「だめ・・・だめぇっ・・・そんなに、しちゃ・・・。」
ぞくぞくと身体をわななかせ、フミエは必死で茂の肩にすがりついた。
「だけん・・・今、どげなっとるか、聞かせえ・・・。」
「・・・きもち・・・よくて・・・。」
「快えのは、わかっとる。」
フミエの内部のなまめかしい運動が、頂きが近いことを直接教えている。

165:ももの花 13
12/05/27 15:12:42.88 cPzDbMVD
「・・・も・・・いっぱいで・・・しあ・・・わ・・・せ・・・。」
身も心も苦しいほど満たされていることを、フミエはやっとの思いで伝えた。
「そげか・・・。なら、もっといっぱいにしてやる。」
茂は少し微笑んでフミエの唇を唇でふさぐと、つかんだ腰をがしがしと自分に
打ちつけた。
 くぐもった歓喜の叫びが茂の中に吸い取られていく。フミエは自分の中に噴きあがる
熱情の滾りを感じていた。                       

「ぁ・・・。」
強くいだき合っていた腕を解かれ、そっと横たえられる。茂が自分の中から
出て行く感覚に総毛だちながら、たまらなく寂しく思ったとたん、汗ばんだ
胸に抱きこまれる。
「・・・今日は『好きだ。』と言わんのだ、な・・・。」
まだ少し息を切らせながら、茂がそんなことを聞いた。、
「この間は、すき好きと熱に浮かされたように言うとったのに。」
「・・・!」
絶句したフミエの顔が、みるみる紅潮した。
『この間』とは、こみち書房での読者のつどいで茂をなじった父の源兵衛に、
フミエが立ち向かった日のことだ。
 自分の夢に向かって一心不乱に漫画を描いている茂・・・その努力を否定された。
そう思ったとたん、言葉が出ていた。その一喝に家中のものがすくみあがるほど
怖い父に向かって懸命に訴えるうち、自然と身体が動いて茂に並び、守るように
腕を取り寄り添っていた。
 生活の苦しさゆえに見えなくなっていた想いが、源兵衛の来襲によって
鮮明によみがえった。それは台風一過の朝、風雨に洗われた木々の緑が目に
まぶしく輝いているのに似ていた。
 その夜、ふたりは想いを確かめ合うように激しく愛し合った。剥き出しになった
心ごと抱かれ、フミエは涙を流しつづけた。身体の底からこみあげてくる想いを
どうしてよいかわからず、それを『すき』と言う言葉に託さざるを得なかった。
満たされれば満たされるほどせつなくて、フミエは何度も『好き』と繰り返した・・・。

「そ・・・そげに軽々しく言うとっては、真実味がないですけん。」
あまりしょっちゅう口に出しては、意味がうすれるような気がする。まして
情交のさ中の睦言では・・・。
「ほーぉ、真実味、とな・・・。」
「もぉ・・・。あ、あなたこそ・・・そげなこと一度も言うてくれたことないじゃ
 ありませんか!」
「む・・・。」
思わぬ反撃に、茂はたじたじとなった。フミエはなおも言いつのる。
「私にばっかり言わせて・・・。いっぺんくらい言うてくれたって・・・。」         
その時、下の方で間の抜けた音が鳴り響いた。

166:ももの花 14
12/05/27 15:13:37.65 cPzDbMVD
「ま・・・。人が真剣に怒っとるのに・・・!」
フミエは腕の中から抜け出すと、下敷きになった浴衣を引っ張り出して着直し、
自分の布団に戻って掛け布団を引っかぶる。                   
「まあまあ、そげに怒るな・・・。」
茂は悪びれもせずにフミエの布団にもぐり込んだ。フミエが背を向ける。
「・・・匂いが移るけん、こっちに来んでごしない!」
実のところ、茂の屁は音は派手だがあまりくさくはない。
「女房ならこのくらい我慢せえ。」
笑いながら、そっぽを向いたフミエの肩を抱いて振り向かせ、無理やり口づける。
「あんたがいじめるけん、せつのうて屁が出たぞ・・・。」
本当に、このひとは・・・。力が抜けてフミエも笑うしかなかった。茂は絶対に
口に出しては言わないつもりらしい。
(でも、本当は、わかっとるの・・・。)
言葉にせずとも通じ合う気持ち・・・。こうして肌と肌をかさね、唇を合わせるだけで
お互いの想いが流れ込みまじり合う気がする。身体がつながると、快感の大波に
押し流されて、ただ茂を感じること以外どうでもよくなってしまうのはちょっと
問題のような気もするけれど・・・。
(けど、それでもええの・・・。夫婦って、だけんうまくいくんだわ。)
ケンカをしても、仲直りのあと愛される時はすべてを許してしまう。何も問題が
解決したわけではないのだから、そんな茂をちょっとずるいと思うけれど。

 先に眠ってしまった茂に浴衣を着せかけ、掛け布団で肩を包んでやってから、
また腕の中に戻った。ここが自分の居場所だと思える場所があるのは、なんて
素晴らしいことだろう。
(今度もしチヨちゃんに会えたら、本当のこと言おう。・・・貧乏しとることも。
 そして・・・お金はないけど、私しあわせだよって・・・。)
あたたかい腕の中で、そんなことを考えながら、フミエも眠りにおちていった。

167:名無しさん@ピンキー
12/05/28 12:10:32.16 2tpisXCc
>>153
ゲゲさんのSっぷりがたまらんGJ!
ふみちゃんの中の人と握手したけど、あんなに細いのに暖かくて柔らかくて、
それ以来ちょいちょい手に関する妄想してたので個人的にはそれもツボでした
ペアルックカップルとか好きだって言いたい時に屁をするって本スレのネタにニヤリとしたw

168:名無しさん@ピンキー
12/05/29 05:58:18.48 ISRSKCKR
>>153
GJ!
新婚時代はやっぱりたまらん!
100円のクリームを買ったのを謝るフミちゃん、健気で可愛いよー。
Sの茂さん、素敵ー。
最後の屁のくだりは茂さんらしくて、笑ってキュン萌えしました(*´∀`*)


169:名無しさん@ピンキー
12/05/30 23:54:06.09 6sFgf7vZ
>>153
ハンドクリーム謝っちゃうふみちゃんかわいい
『女がええ匂いをさせとるのはええもんだ』からしげーさんらしい愛の告白の雰囲気が漂っててものすごいツボw
GJでしたー

170:名無しさん@ピンキー
12/05/31 23:09:03.67 1VKs3HeV
ふみちゃんのはるこへの嫉妬から安堵
フライング眼鏡w
渋々ながらも信頼して原稿を渡すしげぇさん
悔し泣きといちゃいちゃコーヒーw
もうこの夫婦ほんと神すぎる

171:名無しさん@ピンキー
12/06/01 22:37:18.66 X9qXgbI4
γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ
γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ  γ⌒ヽ γ⌒ヽ
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γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ
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γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ
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l   l γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ  γ⌒ヽ  γ⌒ヽ γ⌒ヽ  l   l
ヽ_,,ノ l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´> l<`Д´>l<`Д´> ヽ_,,ノ
     l   l γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ  l l   l
     ヽ_,,ノ l<`Д´>l<`Д´>l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>ノヽ_,,ノ
         l   l  γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ l   l
         ヽ_,,ノ  l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>_,,ノ
               l   l l   l  l   l
               ヽ_,,ノ γ⌒ヽ  ヽ_,,ノ
                   l <`Д´>
                   l   l
                   ヽ_,,ノ

     な~まぽ~  な~まぽ~  た~っぷり~  な~まぽ~

 な~まぽ~ なま~ぽ たっぷり な~まぽ~が や~ってく~る

172:名無しさん@ピンキー
12/06/02 18:16:58.15 0RvUFpkg
御懐妊キター!
来週は映画デートもあるし楽しみすぎる

173:名無しさん@ピンキー
12/06/03 23:15:07.34 jkjFl93h
>>153
GJ!
新婚はやっぱりええもんだ

174:名無しさん@ピンキー
12/06/04 21:37:01.12 afeuObiS
妊娠がわかった時のふみちゃん、ほんとかわいいんだよなぁ


175:名無しさん@ピンキー
12/06/05 19:11:04.29 FBLEa/Ib
あんなにイヤがってたのに生まれたらデレデレなんだもんなぁ…w
ふみちゃんが嫁に来たときも似たようなもんだったし、マジツンデレ

176:名無しさん@ピンキー
12/06/05 19:58:02.18 HFuB3+Y8
抱っこしてたなあ、あれは良かった。
ええシーンや。

177:奪還 1
12/06/06 10:15:45.75 CELfuUh0
(寒いな・・・。)
フスマを開けると、小さな寝間の空気は、二人の人間が寝ているとは思えないほど
冷え切っていた。薄闇の中、布団に座って藍子に乳をやっているフミエの後ろ姿の
肩の細さに、茂は胸をつかれた。
「・・・藍子、起きたのか。」
生まれたばかりの赤子の泣き声はまだ弱々しく、階下で仕事に没頭していた茂の耳には
届かなかったらしい。
 振り向いたフミエは少し微笑んで、口に人差し指を当てた。茂は入り口に一番近い
自分の布団にそっともぐり込むと、手枕をして母子の姿を眺めた。
 んっく、んっく・・・時おり泣きしゃっくりに身体を震わせながら、赤子は貪欲に乳を
むさぼっている。恐ろしいほど小さな存在でも、その身体は生命そのもののような
エネルギーを発しているようだった。身を刺すように寒く貧しいこの部屋の中で、
つつましい母子のいる場所だけがほんの少し温かだった。
(・・・にしても、寒すぎる・・・。)
茂は手枕をしていた手を引っ込め、肩まで布団にもぐった。藍子を寝かしつける時に
つけてあったストーブの暖気は、年の瀬の冷え込みにとっくに消え去っていた。
 フミエが子供を抱いて退院して来た昨日。茂は、普段は夜しか焚かないストーブを
つけ、部屋をぽかぽかに暖めて母子を迎えてくれた。茂の思いがけない思いやりに、
フミエは驚きながらも幸福そうに微笑んだ。
・・・だが現実は、そんなに毎日灯油を景気良く焚くわけにはいかなかった。

 お腹がいっぱいになった藍子が、乳首から口を離した。小さな頭を肩に乗せて
げっぷをさせてから、フミエは赤ん坊をそっと小さな布団に寝かせ、寝息をたて
始めるのを確認してから静かに自分の布団に戻った。
「・・・!」
眠っているとばかり思った茂がむくりと起き上がってフミエの後ろに入り込み、
自分の掛け布団を合わせ目に重ねた。フミエがちょっとドキッとして身を固くする。

178:奪還 2
12/06/06 10:16:33.10 CELfuUh0
「何をモジモジしとる・・・お前が考えとるようなことはせんぞ。」
後ろからフミエを包み込みながら、脚に脚をからめ、大きな足でフミエの冷えた
足先をこすった。                                  
「こげに冷えて・・・夜中に起きる時はなんぞ羽織っとれ。赤ん坊っちゅうのは
 夜中でも腹を減らすけん、たまったもんではないな。」
「もうちょっこし大きうなったら、夜中もミルクを作ってやらんといけんでしょうね。
 うるさくするかもしれませんが、堪忍してごしない。」
「そげなことはええが・・・台所に立つんなら、なおのこと冷えるな。」
大晦日の冷気は、貧しい家の羽目板の隙間やささくれた畳の間からもしみこんでくる
ようだった。茂はフミエを抱く腕に力をこめた。
「俺がここに寝とる時は、遠慮なく入ってきたらええぞ。」
「え・・・。でも、起こしたら悪いですけん。」
「そげなことで起きる俺ではなーわ。・・・まあ、時々は別の気を起こすかも
 知れんけどな。」
「ぁ・・・。」
茂の手が浴衣の襟の合わせ目からすべりこんで、なめらかな胸肌を温かく包み込んだ。
フミエは小さな声を上げて少し身じろいだが、大きくて温かい手はそれ以上何もせず、
ただフミエの冷えた肌を温めつづけた。
「あったかい・・・だんだん、お父ちゃん。」
フミエは安心したようにその手に自分の手を重ねて、しあわせそうに目を閉じた。

(やっとこれで元通り・・・いや、元通り以上・・・か。)
フミエが赤ん坊を抱いてこの家に帰ってきたのはつい昨日のことだった。茂は腕の中で
やすらぐ妻と、傍らの小さな布団ですやすやと眠る娘をみつめた。
(戻ってきた・・・俺の手の中に。)
半年と少し前、同じようにフミエを腕に抱き、失いかけたものの大きさに慄然とした
夜のことを、茂は思い出していた。

179:奪還 3
12/06/06 10:17:23.83 CELfuUh0
『シバラク コチラデ スゴス』
子供のお祝いに招いてくれた姉の家に出かけたフミエから届いた電報は、角の立たない
表現ながら、当分帰って来ない・・・つまりは『家出します。』という意味だった。
「なんだこれは・・・あいつ・・・帰って来んつもりか?」
茂はいまいましげに舌打ちして、紙片を放り投げた。
「勝手にせえ!」
心あたりがないわけではない。昨日『子供ができました。』と伝えた時の、フミエの
思いつめたような表情・・・。それは、普通の暮らしができている夫婦だったら、妻が
夫に妊娠を告げる時の表情ではなかった。フミエも、今の村井家が子供の誕生を
手放しで祝える状況になどないことは重々わかっているのだろう。
『子供は、大変だぞ・・・。』
それでも、喜んでくれるかもしれないと言う一縷の望みをかけていただろうフミエに、
茂が困惑顔で発した言葉は、あまりに冷たかった。

「あげな身体で家出して・・・どげするつもりだ?」
行き先は姉の家とわかってはいるものの、フミエは普通の身体ではない。その身を
案じると共に、別の不安も頭をもたげてくる。
(まさか・・・ここを出て行くつもりじゃなかろうな?)
フミエは元来、おとなしくて引っ込み思案で、茂には従順な妻だ。けれど、
一年半近く一緒に暮らしてみて、ここぞと言う時には自分の意思をつらぬく強さが
あることに茂は気づいていた。
(あの親父さんに、啖呵きったりしたんだもんなあ・・・。)
今までどんな貧乏暮らしでも、驚くべき忍耐力で茂について来たフミエが、いきなり
家出と言う手段に出たのは、姉にそそのかされたにしても、よほどの覚悟と
思わざるを得なかった。
(あいつは、俺に・・・惚れとる。)
自分で言うのも面映いが、茂にはそう言い切れる自信があった。日々の暮らしの中で、
フミエが捧げてくれる献身、信頼・・・そして夜、ひとつに溶けあうたび、言葉では
言わずともその身体がフミエの深い想いをあますところなく語っていた。

180:奪還 4
12/06/06 10:18:18.67 CELfuUh0
(だが、子供の命のためなら、ためらわず俺を捨てるかもしれん。)
そんな予感があった。茂を愛していないのではない。せっかく授かった命を
殺すようなまねが出来るフミエではないのだ。茂と別れることがどんなに苦しくても、
命がけで子供を守ろうとするに違いない。
(いざとなれば、安来に帰ってでも・・・。)
いったん嫁した女が、実家に帰るのは恥・・・フミエも安来の両親もそう思っているだろう。
だが、孫の命がかかっているとなれば、母親は元より、あの頑固そうな父親も進んで
救いの手を差しのべるだろう。
 故郷を離れる日、茂にすがりつかんばかりにしてフミエのことを頼んだ母親。
こみち書房での読者のつどいで、人気があるように見せかけたと茂をなじる父に
立ち向かってくれたフミエ・・・。あの時、フミエの真剣さに納得し、もう一度茂を
信じてくれた岳父は、身ごもった娘を突き放した自分のことをどう思うだろうか・・・。

「俺は、何をしとるんだ?・・・仕事なぞしとる場合ではないぞ!」
茂はがばと立ち上がると、なけなしの銭を数えた。
「・・・足りん!」
部屋を見回し、目についたものをかき集めて風呂敷に投げ入れた。
 茂は包みを引っつかむと玄関を飛び出した。下駄を鳴らし、商店街のはずれの
質屋を目指して走った。
・・・今にも手からすりぬけようとしている女房を奪還するために。

「はぁい。」
てっきり義姉の暁子が応対に出て来るものと思っていたのに、茂が押した呼び鈴に
応えて玄関のドアを開けたのは、フミエだった。
「あなた・・・・・・。」
フミエはかなり驚いたようで、それ以上言葉も出ずに茂をみつめている。電報を打った
のはつい数時間前・・・文面からただならぬものを感じたとしても、茂のような男がこうも
早く迎えに来るとは、思いも寄らなかったに違いない。

181:奪還 5
12/06/06 10:19:14.63 CELfuUh0
「あら・・・村井さん・・・。」
義姉の暁子が遅れて玄関に出てきた。茂はこのひとが苦手だった。可愛い妹を、
茂があまり大事にしていないと思っているのは明らかで、フミエに代わって村井家の
生活のおかしな点をぐいぐい突っ込んでくる義姉なのだ。
(・・・これじゃあまるで、若気のあやまちとかそげな感じだが。)
茂とフミエはれっきとした夫婦なのに、まるで十代の若者が他家の娘を孕ませて
謝罪に来たかのような後ろめたさだ。 
「どうも・・・お世話になりまして。」
茂は暁子に向かってぼそぼそとつぶやくと、袋にも入れない裸のまま、バナナを
にゅっと突き出した。
「これ、土産です。」
そして、これで用が済んだと言わんばかりにフミエの方に向き直り、
「おい、帰ろう。」
と、言った。
「村井さん、あのねえ・・・。」
暁子が何か言いたげに話しかけてきた。
「帰るぞ。」
暁子に一礼だけして、茂はせつなげな顔で立ちつくしているフミエをうながした。

 フミエが慌ててまとめて来た風呂敷包みを、茂はひったくるように受け取ると、
さっさと歩き出した。
「姉ちゃん、ごめんね。また連絡するけん・・・。」
フミエがすまなそうに姉に謝る声を後ろに聞きながら、茂は振り返りもせずに歩いていく。
フミエが小走りに追いついて、並んで歩き始めた。ふたりとも、何か言わなければと
思いつつ、歩きながらする話題でもない気がしていた。
 子供たちの歓声がにぎやかな公園に入り、すわり心地のよさそうなブランコに
並んで腰かける。先に口を開いたのは、フミエだった。
「勝手して、すんません。・・・迎えに来てくれるとは、思わんだった。」
俺を、どれほど非情な男と思っとるんだ・・・そう思いながら茂は、ただうん、うんと
うなずくばかりだった。

182:奪還 6
12/06/06 10:20:02.28 CELfuUh0
「バナナなんて買う余裕、よくありましたね。」
茂はポケットを探ると質札をつまみ出し、ひらひらと振った。
「一六銀行から借りてきた。つきあいも長いけん、多めに貸してくれたぞ。」
フミエが苦笑する。固かった二人の間の空気が、少しゆるんだ。
「・・・大変なのは、わかっとります。今でも苦しいし・・・不安ですけど。」
フミエが意を決したように話し出した。落ち着いた口調だ。
「なんとかなると思うんです。・・・あなたも私も、遅い結婚でしたけど、こげして
 子供を授かりましたけん・・・せっかく授かったんですけん、大事にしたいんです。」
一呼吸置いて、フミエははっきりと口にした。
「私・・・産みます。」

『産ませてください。』ではなく『産みます。』・・・そう言いきったフミエには、
フレアースカートの細い腰のどこにも、お腹に子供を宿している様子など見えなくても、
もう母親になる女の強さがにじんでいた。
 この女にはかなわない・・・いや、女全般にかなわないというべきか・・・。茂は
思わず微苦笑した。
「・・・映画でも見て帰るか?」
真剣な話をしているのに、またこのひとは・・・強い意志をやどしたフミエの表情が、
少しくもる。
「せっかく二人で出てきたんだけん、まっすぐ帰ったらもったいない。今のうちだけんな。
 ・・・子供が生まれたら、二人で外には出られんぞ。まあ、今までもそろって出かけた
 ことなぞなかったか・・・ははは。」
照れ隠しなのか何なのか、茂の一風変わった表現方法には慣れているはずのフミエが、
あきれ顔で茂を見ていた。

183:奪還 7
12/06/06 10:20:56.22 CELfuUh0
「いきなり聞いたんで、びっくりした・・・子供のこと。男には心の準備がないけんなあ。」
それは、半分本当で、半分言い訳だった。
 茂がいくら変人と言っても、男と女が交われば子が出来ることくらいは承知している。
ましてや二人は夫婦で、一年半にわたって濃密な愛を交わしてきているのだ。
(ありていに言うと、忘れとった・・・。)
手を伸ばせばいつもそこにいるフミエを愛で、悦楽をつくしたのち精を放つ・・・その度に
子供が出来るかもしれない・・・などと考えることはなかった。
(だけどこいつは、ちゃんと子供のことも考えとったんだな・・・。)
生きることに精一杯で、子供のことなど念頭になかった。出版社の倒産に原稿料の不払い、
貸本漫画業界はお先真っ暗という現実が茂の頭上に重くのしかかっていた。
『子供は、大変だぞ・・・。』
だからどうしろ、とまでは言っていない。だが、子供の父親である男からこう言われたら、
それはお腹の子をなきものにしろと言われたのと同じなのではないか。
『心の準備がなかった。』茂はそう言い訳することしかできなかった。

「金がないところに子供が出来て、これからどげなるか俺にもわからんが・・・。」
フミエとちゃんと向き合って話している内に、茂はだんだん本当になんとかなるような
気がしてきていた。
「まあ・・・なんとかなるだろ。」
ちょっと勢いをつけてブランコを後ろへこぐと、子供のように飛び降りた。
「・・・はい!」
フミエが嬉しそうにうなずいた。
「ほれ・・・食うか?」
茂がポケットから、黄色いバナナを取り出した。フミエが微笑んで受け取ると、
魔法のようにもう一本を取り出し、ブランコに二人ならんで座って食べた。暁子に
手渡した土産から、ちゃっかり二人分抜いておいたのだ。

184:奪還 8
12/06/06 10:21:53.24 CELfuUh0
 商店街にある名画座には、男性好みの映画の二本立てがかかっている。
「あっちで、ヘップバーンの映画やっとりますよ。」
恋愛ものを見たいフミエの意見など全く意に介さず、さっさと入っていく茂の後を、
フミエはブツブツ言いながらついて行った。
 ところが『戦争映画なんて、胎教にわるい。』と気乗りしていなかったのに、いったん
見始めるとフミエは、主人公たちが苦境に陥るたび手に汗を握り、ついに任務を遂行する
ラストシーンでは茂の肩を揺すり、拍手せんばかりの熱狂ぶりを見せた。
(こいつが戦争映画でこげにコーフンするとはな・・・。)
茂はあっけにとられ、肝心な場面を見るのも忘れて、となりで画面に見入っている
フミエの生き生きとした顔を眺めた。
(産む、と決まってホッとしたのかもしれんな・・・。)
茂に妊娠を告げた時の、思いつめたような顔・・・投げつけられた冷たい言葉・・・そして家出
・・・妊娠がわかってからのこの数日間、身重の身体でどんなに不安だっただろうか。
 なんとなくいとしい思いで、茂は無邪気に喜ぶフミエの横顔をみつめた。

 その日の夕食。フミエはせめてもの祝いのしるしに赤飯を炊いた。
「・・・なんだこれ?普通の飯じゃなーか。」
「もち米は、ぜいたくですけん。節約お赤飯です。」
「まぁ・・・こういうもんは、祝う気持ちが大事だけんな。」
赤飯まで、節約か・・・。子供を産めることになって心を弾ませているようでも、
やはり締まり屋だ・・・いや、子供を産むからこそ、今まで以上にしっかりしないと
いけないのだろう。経済状況は何も好転したわけではないのだから。
「おい・・・大事にしぇよ。」
フミエが心からうれしそうに微笑んだ。茂はちょっと情けなかった。こんな時男は、
『大事にしろよ。』
と言ってやるくらいしか能がない。
(あとは俺が、どげな仕事でもして稼ぐけんな・・・。)
こみあげるものを紛らすように、茂は赤飯をかきこみ、勢いあまってちょっとこぼした。

185:奪還 9
12/06/06 10:50:47.19 CELfuUh0
 その夜。つわりもひどくないし大丈夫だと遠慮するフミエを早々に寝かせ、茂は
また仕事部屋にこもっていた。ただでさえ〆切りがせまっていたのに、フミエを迎えに
行くために半日つぶしてしまったのだ。
「・・・これからは、今まで以上に働かねばならん!」
生まれてくる子のため、一円でも多く稼ごうと、鬼気迫る勢いでペンをはしらせた。
 描き疲れ、ふと気になって、ポイと捨てたフミエからの電報を拾い上げた。
『シバラク コチラデ スゴス』
『しばらく』という表現に、これを打った時のフミエの逡巡が表れている。茂と暮らす
家を出るなど、今まで考えてみたこともないフミエだろうに、そうせざるを得ないほど
絶望させてしまったのは茂だった。
(もう戻って来んかもしれん・・・。)
そう考えると居ても立ってもいられなくなって、男の沽券も何もなくフミエを取り戻しに
家を飛び出した。そのくせ義姉の家の玄関で『帰るぞ。』と言ったきり、フミエが話し
出すまで黙っていた。本当は、フミエが素直について来なければ、さらってでも連れ戻し
たいほど焦りを感じていたのだが。
 ふと自分の右手を広げて見た。フミエがこの指のすきまからするりと抜け出した気が
したあの時の喪失感・・・。その手をぎゅっと握ると、茂は立ち上がって仕事部屋を出た。

「もう、寝たか・・・?」
うす暗い寝間に敷かれたふた組のせんべい布団のうちひと組に、フミエが眠っている。
その寝顔が少しやつれて見えるのは、つわりのせいか、ここ数日の心労のせいか・・・。
いとおしい思いで乱れた髪をすいてやると、何事かつぶやきながらフミエが横を向いた。
粗末な布団は幅も小さく、現れた背中に茂はそっと身を寄せてかたわらに横になった。
「ん・・・ぁ・・・あ・・・なた?」
フミエが目を覚まして身じろいだ。茂は何も言わず後ろから包み込む。波打つ髪に
顔を差し入れ、首筋に口づける。フミエがすこし身体を固くした。

186:奪還 10
12/06/06 10:51:40.54 CELfuUh0
「わ・・・私・・・あの・・・。」
「わかっとる・・・何にもせんよ。」
ふたりの夜はいつもこんな風にして始まることが多かった。ふかい眠りから起こされ
ても、フミエは嫌な顔をしたことがなかった。はじめの内は夢うつつながら、次第に
とろかされ、たかまり・・・最後は一緒に果て、ともに夢に落ちるしあわせを、これまで
あたり前のように享受してきたのだ。
 だが、今フミエのお腹の中には新しい命がやどっている。今までのように激しく
抱いたり、つよい快感を与えることが母体と胎児にとって好ましいとは思えない。
どんなに欲しくても、フミエの身体が元通りになるまでは我慢しなければなるまい。

 フミエがくるりと寝返って茂の方を向き、くるおしげにしがみついて来た。
たった二日だけれど、ふたりの心が離れ、ひと晩を別々に過ごした。茂がこんなに
早く連れ戻してくれるとは、フミエは予想もしていなかったのだろう。わだかまりは
解け、こうしてフミエはまた茂の腕の中にいる。自分の身体とお腹の子によくないと
理屈ではわかっていても、フミエもひとつになることを求めているのかもしれない。
「・・・そげにしがみついたら、くるしいが・・・。」
「ぁ・・・す、すんません。」
あわてて腕の力をゆるめ、顔をあげたフミエの唇を、茂の唇が求めた。深く口づけて
から唇を離すと、フミエが大きく呼吸をして、身をふるわせた。涙でいっぱいの瞳に
吸い寄せられるように重ねる口づけは、次第に深く激しくなり、フミエが熱っぽい身体を
妖しくこすりつけてくる。
「いけん・・・お腹の子に障る。」
茂もはちきれそうな想いを抑えながら、柔らかいフミエの身体をそっと押しやった。
「でも・・・。」
しなやかな手が、隠しようもなく欲望を顕している前をそっと包み込む。
「う・・・。」
『何もしない。』と言いながら、離れがたく抱擁しあううち、身体は素直にフミエを
つよく求め、硬く張りつめていた。                          
「駄目だ・・・止まらんようになってしまうけん。」
こみあげる欲望を抑えながら、フミエの手をそっとはずさせる。

187:奪還 11
12/06/06 10:52:28.27 CELfuUh0
「でも、私・・・。」
フミエのうるんだ瞳が近づいて、また唇をふさいだ。
「せめて、あなたに・・・ふれたいんです。」
唇を離し、真剣なまなざしで請われると、茂もたじろぎながらもうなずいた。
 フミエは浴衣の襟を割ると、胸に顔をうずめた。そのまま手を下へ伸ばし、下着の
上から怒張をそっと撫でる。
「見んで、ね・・・。」
起き直り、はらりと垂れた長い髪の間から羞ずかしそうにそう言うと、下着に手をかけた。
くっ、と勃ちあがったものを手で包み、いとおしげに口づける。
 根元からはじめて、すみずみまでを唇が這い、時おり舌がちろちろと舐める。
熱い口の中へ呑みこまれ、上下にしごかれる。やわらかく嚢を揉まれると、快感に
腰が自然に突き上がった。
「お・・・まえは・・・感じたらいけんぞ・・・。」
身体を心配する言葉も耳に入らぬように、フミエは夢中で口の運動に集中している。
「もう・・・離せ。・・・射精(で)る・・・っ。」
熱いものがせり上がって来る感覚におそわれ、起き上がってフミエを制した。
「・・・こら・・・はな、せっ・・・。」
これまで、放たれたものを当たり前のように受け入れてきたフミエは、肩を押され、
いぶかしげに口を離した・・・とたん、その顔に白濁がぱっと散った。
「早こと・・・離せと言うたのに!」
茂はあわてて枕紙をひっつかみ、自らの熱情の凝りにまみれたフミエの頬や頤を
ごしごしと拭いた。
「いた・・・そ、そげにこすったら、痛いですが・・・。」
「のんだら、いけん。今は・・・だめだ。」
腹の子を汚してしまうようで、常のようにその口の中に放つことができなかった。
 フミエはゴシゴシこすられて紅くなった頬を手で庇っている。その手をつかみのけて
唇を奪い、めちゃめちゃに貪った。フミエも激しく応えながら、下からぎゅっと抱き
しめてくる。
 月もない夜。今のふたりの暮らしのように先が見えない暗闇の中で、いちどは
失いかけ、やっとの思いで取り戻したぬくもりを、ふたりはいつまでも確かめ
あっていた・・・。

188:奪還 12
12/06/06 10:53:41.57 CELfuUh0
(あれから、半年あまりか・・・。)
あの時と同じようにその腕の中にフミエを抱き、感慨にふけっていた茂は、ふと手の中の
丸みがわずかに変化していることに気づいた。
 赤子を持った今限定なのかもしれないが、フミエの薄い胸もそれなりの量感をたたえ、
乳を与えたあとなので柔らかく、しっとりと茂の手に馴染んでいる。
さわりごこちの良さに、思わず指に力が入った。フミエが身じろぐのがわかる。甘い髪の
匂いに誘われるようにうなじに鼻を寄せて息を吸い込んだ。
「あ・・・あなた・・・あの・・・。」
フミエがもじもじと身をよじり、後ろから抱いている茂の腰から自分の腰を離した。
「こら・・・なして離れる?」
言いながら茂は、自分が極大になった雄根をフミエの腰に押しつけていたことに気づいた。
フミエが妊娠してからは身体を気遣って一度も交合していない。フミエのお腹が大きく
なり始めてからは、口淫もさせなかった。
(相当、たまっとるな・・・。)
ご無沙汰のうえに、フミエを取り戻したという安心感のなせるわざだろう。もちろん、
もっと完全に取り戻したいという欲求もある。                     
 腕の中のフミエも、心なしか熱を帯びたように肌が熱くなり、少し乱れた呼吸を
落ち着かせようと大きな吐息をついた。
「す・・・すみません。私・・・まだ、ちょっこし・・・。」
フミエが、震える声で言った。産後間もない身体で交接することが、産褥婦にとって
とても危険であることは、もちろん茂だって理解している。
「わかっとるよ・・・お産したばっかりだけんな。ここまで我慢したんだけん、あと
 もうちっとぐらい辛抱できーだが。」
フミエはもじもじと向き直り、うるんだ瞳で茂をみつめた。自然に唇がかさなり、
ぎゅっと抱きしめあう。
 ややあって、茂がさも『いいことを教えてやろう。』という感じで言った。
「あのな・・・あんた、ちょっこしだけ、立派になったぞ。」
「え・・・何がですか?」
茂は黙って浴衣の身八ツ口から手を入れ、少し量感を増した乳房を掌でつつんだ。
「まあ、今だけだろうけどな。」
「・・・ぃやだ・・・もぅ!」
ちょっと怒ってにらむ顔に、茂は笑いながらまた口づけた。
「さあ・・・もう寝れ。また藍子に起こされるかもしれんけん、今のうちに寝とけ。」
フミエは微笑んでうなずくと、茂の胸に顔を寄せた。

「ゴーーーーン。」
どこか遠くで、鐘の音がする。新しい年がもうすぐそこまでやって来ていた。
「お・・・除夜の鐘か・・・。」
「ほんと・・・。何もお年とりらしいことできんでも、新しい年は来るんですね・・・。」
「除夜の鐘は、百八の煩悩を払ってくれると言うな・・・。」
フミエが、身体を震わせて笑いをこらえた。今まさに煩悩の塊とも言うべきものを
もてあましている茂の口から『煩悩』と言う言葉を聞こうとは・・・。
「なんだ・・・何がおかしい?・・・・・・ま、ええか。初笑いだ。」
何がツボにはまったのか、腕の中で身体を震わせつづけるフミエがたまらなく
いとおしくて、ギュッと抱きしめながら、なんだか泣きそうになる。
「ええ年になると、ええですねえ・・・。」
ようやく笑いやんだフミエの目にも涙が浮かんでいる。
 年があらたまる時、ひとは新しい年への希望をいだかずにはいられない。新しい
命を迎え、貧しくさむざむしいこの小さな家にも、温かな灯がともったようだった。

189:177
12/06/06 10:55:21.47 CELfuUh0
妊娠を告げられた時の態度には、本放送時も再放送時も『しげるヒドス 』の声多数。
でも、光の速さで迎えに来たのは、フミちゃんに家出されてかなり焦ったんでしょうね。

家出から戻った時と退院した時の2度とも、その夜はフミちゃんを腕の中に取り戻して
茂はさぞかしホッとしたのでは・・・と言うお話ですが、二重構造でわかりにくかったら、
ごめんなさい。

ふたりで見た映画は、ググったら放送当時専スレがあって、
『フミちゃんが大ウケしている場面は、BGMによると主人公側が窮地に陥る場面。』
と言うレスがあって、マニアってすごいと思いました。
でも、DVDだとちゃんと大団円のシーンの効果音になってる・・・補正したのかな?

190:名無しさん@ピンキー
12/06/07 15:41:26.18 bM/8Y1AY
>>177
おお、ナイスタイミング投下乙!GJ!
ご奉仕の後でしげーさんがふみちゃんの顔を力任せに拭くの、萌えましたw
映画デートシーンにそんな裏があったなんて…w

191:名無しさん@ピンキー
12/06/08 09:29:16.52 1bWiEIHE
>>177
GJです!
フミちゃんの身体を思って、我慢する茂さんに萌えました。
勝手にせぇからのバナナまでに至る描写も補完されてて良かった!
あんなに焦って…、フミちゃんの事大好きなんですねw


192:名無しさん@ピンキー
12/06/09 22:21:09.53 2lZz+PwG
集金脱走デートとか青海波を預けるとかクリスマスの朝とか、今週も萌え死ぬと思ったよ…
藍子誕生おめでとう!

>>177
GJ!
我慢するしげぇさんももちろん萌えだけど、我慢できないふみちゃんがエロい!

193:名無しさん@ピンキー
12/06/10 21:15:43.47 yG/miBlr
梅雨入りしたので、ずぶ濡れの綾子さんをタオルでごしごし拭いて身体で暖めるゆうあやを妄想
ずぶ濡れなゲゲさんは来週だっけか

194:名無しさん@ピンキー
12/06/11 19:27:53.43 CZTQEi80
家計簿の方ではふみちゃんがずぶ濡れでした

195:名無しさん@ピンキー
12/06/12 22:39:28.56 7fmijR66
>>194
家計簿、そんなオイシイ出来事があったのか!
ついつい読み逃してしまう…

今日のひなたぼっこは家族萌え的にも夫婦萌え的にも最高だった

196:名無しさん@ピンキー
12/06/13 21:44:07.28 N3L2AJPr
一昨日は帰宅いちゃいちゃ
昨日はひなたぼっこいちゃいちゃ
今日はエアひな祭りで怒涛すぎる

197:名無しさん@ピンキー
12/06/14 00:58:16.66 zIPp2sJE
眠り込んだ布美枝を足元からゆっくり写すカメラワークがエロちっくだった

198:名無しさん@ピンキー
12/06/14 16:26:27.92 oiNFiNtf
>>194
その後コーヒー飲んでシミジミ語り合ったのは本当なのに(原作にあり)
なぜかふみちゃんがおねだり(性的な意味じゃないよw)した話になってて
肩透かしでした。テレ臭いのかな?

199:名無しさん@ピンキー
12/06/14 23:56:44.68 DizxnbMU
会社で「名代ささきのせんべい」と書かれた箱をハケーン!
残念ながら空箱だった…そりゃそうだな、ゴミ箱にあったんだしorz 
けど一瞬でも血が滾った自分はやっぱりゲゲゲ・いちせんにまだどっぷり漬かってるんだと自覚w
ググってみると、東北のほうのせんべい屋さんみたいだた

200:名無しさん@ピンキー
12/06/15 20:29:54.26 tgzMrXMQ
>>199
すごい!同じひらがなで同じせんべい屋なのか!
それは思わず反応してしまうなw

201:名無しさん@ピンキー
12/06/16 18:32:08.18 bPzVyv8R
>>197
あのカメラワークは自分も大好きだw

202:名無しさん@ピンキー
12/06/17 16:36:08.13 o5sHXFAY
ふみちゃんの中の人が某お昼の長寿番組にゲストで出てて
ちょっと天然なドジして顔真っ赤にしてて
ふみちゃんや綾子さんでいろいろ妄想してしまった

203:名無しさん@ピンキー
12/06/19 20:01:59.87 4G3rOlKt
昨日今日と萌え成分低めでおあずけくらってる気分…

204:秘すれば花 1
12/06/20 15:32:46.25 Iy7KiC66
「やれやれ・・・えらい本降りになってきたな・・・。」
梅雨の晴れ間、茂はお気に入りの小さな神社までスケッチに来ていた。ぽつりと落ちて
きた雨は、最初はたいしたことはなかったのに激しくなるばかりで、そろそろ夕暮れ時
というのにいっこうにやむ気配がない。
「おー、いっぱいおるおる・・・。」
座っていた階段から腰をあげ、お堂の下に避難したものの、所在無さにヤツデの葉に
這うカタツムリをみつめて時を過ごしていた。

「ああ良かった・・・おられて。」
聞きなれた声に顔をあげると、そこにはフミエがたたずんでいた。傘の下から微笑んで、
茂に畳んだ傘を差し出す。
(迎えに来てくれたのか・・・。)
茂はちょっと嬉しかったけれど、照れくさくて何も言わずまたヤツデに目を戻した。
「あら・・・でんでん虫。」
フミエはそんな茂に慣れているのか、一緒にうれしそうにカタツムリを眺めた。
「腹へったなぁ。・・・帰るか。」
「はい。・・・あ、あら?」
フミエは茂のために持ってきた傘を差そうとしたが、黒い色も褪せ、骨もまがった傘は
なかなか開こうとしない。
「あ・・・。」
バリッと音がしてやっと開いた傘は、少なくとも三箇所が縦に布が裂け、とても傘の
用を足さないものだった。
「・・・こっちは使い物にならんのだ。」
雨降りに二人で外出したこともないので、もう一本の傘がすっかりダメになっている
ことに、フミエは気づいていなかった。

205:秘すれば花 2
12/06/20 15:33:30.22 Iy7KiC66
「困ったわ・・・。」
途方にくれているフミエが手に持っている傘を、茂がついと手に取った。
「・・・帰るぞ。」
「は・・・はい。」
フミエはあわてて使い物にならない傘をくるくるとまとめると、茂が差す傘に入った。
「ま、待って・・・もうちょっこし、ゆっくり歩いてごしない。」
「お・・・すまんすまん。」
そう言いながらも、すぐまた早足になってしまう茂に、しかたなくフミエはプラプラ
揺れている袖口をつかんで、小走りについていく。

「あ・・・卯の花、咲いとる・・・。」
雨に打たれてしなっている白いつぶつぶの花に、フミエが足を止めた。行き過ぎそうに
なって、茂が歩を止め、傘を差しかける。
「そう言や、おからの炊いたの食いたいな・・・。」
「もぉ・・・食べることばっかり・・・。」
そう言いながら、サンダルばきで出てきてしまったフミエは、足元に目を移した。
「あら・・・夏椿も。」
「ん・・・?どこだ?」
水たまりに、たくさんの白い花が椿と同じように花の形のまま落ちている。フミエは
どこに咲いているのかと上を見上げるが、なかなかみつからない。
「あ・・・あそこ・・・。でも、よう見えませんねえ。」
さまざまな雑木が重なって繁っているなかに、高いところにぽつぽつと白い椿に
似た花が、夢の中のようにけむって見えた。
「シャラの花って、せっかくきれいに咲いとるのに、落ちてみんと咲いとることが
 わからんのですよねえ。」
フミエは地面に落ちている花の中から、まだきれいなものをいくつか拾ってエプロンに
とった。
(落ちてみんと咲いとることがわからん花・・・か。)
普段は花のことなど気にも留めない男だが、雨に濡れた緑一色の中に浮かぶように
咲いている白い花は、明け方の夢のようなさびしさを茂の心にのこした。

206:秘すれば花 3
12/06/20 15:34:13.78 Iy7KiC66
「あの・・・お茶、はいりました。」
夜。仕事をしていると、フスマが開いて浴衣姿のフミエが入ってきた。
「ちょっと蒸し暑いですね・・・窓、開けましょうか?」
茶碗を置いて立ち上がろうとするフミエの手を、茂はつと手をのばしてつかんだ。
「え・・・。」
引っ張られてぐらりと茂の方に傾いた身体を胸で受け止め、首筋に顔を埋める。
湯上りのフミエの匂いと、たちのぼる茶の香り・・・ふたつの異なる香りを鼻腔いっぱいに
吸い込むと、腕の中のフミエがふるっと身体をふるわせた。
「・・・・・・。」
しばらくそのまま香りをたのしんでいた茂は、溶けていいのか固まっていいのか
わからぬというようにすくんでいるフミエに気づいてふっと笑った。
「・・・近所じゅうに聞かせてもええんなら、窓を開けてもええけどな。」
声をあげさせるようなことを、これからあんたにする・・・そう予告されて、フミエの
細い身体がさっと熱を帯びる。はだけた浴衣の襟元を顔で割って、唇を胸肌に
這わせると、肌理のこまかい肌には小さな汗の粒が浮かび始めていた。
「・・・っふ・・・ぁ、あっ・・・。」
脇に手を入れてうながし、膝立ちさせると、目の前にある紅く色づいた実をつよく
吸った。帯を解いて浴衣を剥ぎ、フミエの手を導いて下着を落とさせる。
「・・・んふぅ・・・っあ・・・んん・・・。」
唇を強く吸いあいながら、立てた膝の間を割る。フミエの手をつかんで内腿をつたい
落ちる愛液を自らの手に確かめさせ、指先をつまんでぐっと花蕾を押させた。
「ふぁうっ・・・ん・・・だめっ・・・。」
「手を・・・とったらいけんぞ。」
そう言いおいて、後ろにまわした手で臀をつかみ、いちばん長い指を蜜壷にしずめる。
「んぁぅっ・・・だ、め・・・もぅっ・・・。」
フミエが腰をよじらせてもう片方の手で茂の肩にすがった。荒い息が肩口に当たり、
あふれ出す涙が茂の胸を濡らす。立て膝をしていられないほど感じている女の様子に、
男の中心が痛いほど張りつめた。

207:秘すれば花 4
12/06/20 15:35:04.44 Iy7KiC66
「カチャ・・・カチャ・・・。」
ベルトをはずす音、衣ずれの音・・・やがてフミエは自らの蜜にまみれた手をとられ、
熱く息づく屹立を握らされた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・っは・・・。」
これから迎え入れるものの大きさ、硬さ・・・与えられる狂乱の予感につらぬかれ、
フミエは少し怖じたように腰を引いた。
「んん・・・っふ・・・んむ・・・んぅ・・・。」
口づけながら腰を抱き寄せ、手を添えて定めた目標に、フミエの濡れそぼった秘口を
あてがうように腰を持ち上げさせる。
「・・・っは・・・ぁ・・・はぁ・・・ぃや・・・い、やぁっ・・・。」
切迫した息遣いに、泣きそうな調子が加わり始めた。先端が少しもぐったところで大腿を
つかんだ手がぐっと引き下ろされ、フミエの狭い入り口に漲りきった雄芯がめりこんだ。
「っあ・・・しげ・・・さ・・・ぁ・・・ぁあ―――!」
初めて結ばれてから半年・・・何度受け入れさせたかわからないほどなのに、最初に
挿入れられる時、フミエはいつも少し苦しそうにする。そんなフミエをいたましく思う
気持ちと、欲望のままに突き進みたい気持ちとが相半ばするのもいつものことだった。
「・・・はぁ・・・ぁあ・・・ぅン・・・。」
根元までずっくりと突き入れ、フミエの濡れた貝がぴったりと雄芯を包み込む感触を、
目を閉じて心ゆくまで味わった。あぐらをかいたひざの上に、大きく脚を開いて座る形で
下からつらぬかれているフミエは、茂の肩に顔をうずめて抱きつき、身体を固くして
きつく目を閉じている。
「とって喰われるわけじゃないんだ・・・もうちっと気ぃ楽にしろ。どっちかっつーと、
 あんたの方が喰っとるんだけんな。」
そんな軽口をたたきながら、必要以上に力の入っている指をはがし、顔をあげさせる。
下がり眉になりながら無理して微笑んだ唇に、ふかく口づける。

208:秘すれば花 5
12/06/20 15:35:59.66 Iy7KiC66
「・・・ふぁ・・・ぅ・・・ん・・・。」
緊張していた身体がゆるみ、フミエの舌が甘く応えてきた。羞ずかしそうに茂を
見あげてくる瞳も、とろけそうに甘い。                        
「・・・っん・・・っふ・・・ゃ・・・くすぐっ・・・たいっ・・・!」
茂の大きな手にひざこぞうを撫で回され、フミエが身体を揺らした。
「・・・!・・・ぁあんっ・・・!」
動いた途端に深く感じてしまい、腰を揺らしてまた身悶える・・・快楽の連鎖におちいり、
フミエの腰はわれ知らずみだらな運動に踊った。
「・・・っふ・・・も・・・ぁっ・・・ぁああ―――!」
絶頂につらぬかれるフミエを抱きとめてやると、細い身体は腕の中でゆらりと溶けて
ぐったりとのけぞった。
「・・・っだ・・・め・・・おねがい・・・。」
フミエの脚を肩にかつぐようにしてのしかかり、ぐっと結合を深めなおす。顔の横に
伸びた長い脚がこきざみに震え、その間にあるフミエの顔が涙でぐしゃぐしゃに
なっているのが見える。
「おねがい・・・だめ・・・だめぇっ・・・。」
何がお願いで何が駄目なのか・・・フミエにももうわからないのかもしれない。涙声の
懇願にかまわずさらに深く穿ち、えぐり、奥に叩きつけた。
「・・・ゃっ・・・ぁっ・・・ぁあっ・・・!」
身体の隅々までを侵す快美に、高く掲げられた足の指がなまめかしく折り曲げられる。
やがて解き放たれた二本の脚は茂の脚にからみつき、ゆさゆさと揺さぶりをかける
強腰の動きにみだらに寄り添った。
「・・・っ・・・っぁあ、あ―――!」
耳に注ぎ込まれる啼き声とともに、茂を押しつつむ秘肉もが幻の悲鳴をあげているかの
ようにくるおしく締めつけた。柔らかくきつく、雄をからめ取る花園の中へ思うさま
ぶち撒けると、茂ももろ共に真っ白な陶酔へと堕ちていった。

209:秘すれば花 6
12/06/20 15:36:59.28 Iy7KiC66
 ややあって、茂は身体を起こした。見下ろせば脱がされた浴衣や帯が広がる中に、
フミエの白い身体がぐったりと横たわっている。
(こげな風情を、どっかで見たような・・・?)
茂の脳裡に、水たまりに散らばった白い花の哀しい美しさがふと浮かんだ。
(こいつも・・・こげなとこで咲いとるんで、ええんかな・・・?)
 愛され、満たされることを知って、フミエは娘の頃からは想像もつかないほど
艶冶な表情を見せるようになっていた。人の訪ねてくることもあまりない、この陋屋の
小さな部屋で、愛されるたびつつましい美しさを増していくフミエは、高い木の上に
目立たない清楚な花をつけるあの夏椿に似ていた。             
(俺しか見とらん、こげな寂しい場所で・・・。)
自分だけが知っている、誰にも気づかれぬ場所でひっそりと咲いている花・・・。      
「きれいだ・・・な。」
うす闇の中でぼうと浮かび上がるような白い肌に、思わず口に出ていた。
「・・・?」
フミエがまだ夢うつつのようなまなざしを向けた。茂はあわててつけ加えた。
「・・・花、飾ったんか・・・。」
仕事机の上に、深めの小皿に水を張ってシャラの花がいくつか浮かべてあった。
「ええ・・・。」
フミエが気だるげに起き上がり、ゆっくりとした動作で散らされた浴衣を羽織った。
情交のあとのなまめいた肌にかかる黒髪がぬれぬれとして、精を吐いたばかりの男に
再び息を呑ませるほど艶めかしかった。
「なんだかかわいそうで・・・。せっかく咲いても雨にうたれて散ってしまうなんて。
 他の季節に咲けばええものを。」
雨に落ちたシャラの花を、せめてこうして飾ってやる心根がいじらしい。しどけなく
すそを乱したまま横ずわりに座り、花をみつめるフミエの清艶な美しさが、うす暗い中で
かすかに白い光を放つ花にかさなる。

210:秘すれば花 7
12/06/20 15:37:55.28 Iy7KiC66
「そげかな・・・。」
この花が雨の中咲いていたこと、フミエに拾われて今ここにあること・・・それを
『かわいそう。』と言う言葉でかたづけたくない気持ちが、茂の中に急にわき起こって来た。

「・・・雨の季節に咲く花は、雨の中で咲くようにできとるんだ。だけん、雨の中でも
 あげにきれいに咲ける・・・。」
およそ花などに興味のなさそうな茂が、予想外に熱心に語るのを、フミエは不思議
そうに、でも嬉しそうに聞いていた。
「そげですね・・・。卯の花腐(くた)しの雨と言うけれど・・・ご本人たちは、雨が好き
 なんですよね、きっと・・・。」
花に目を留めたまま、フミエがたった今愉悦をきざまれたばかりの身体をあずけてくる。
茂は背中ごと抱きしめて、幼子をあやすように少し身体を揺すった。浴衣の布いちまいを
通して伝わりあう愛の記憶がふたりを満たした。

 互いのぬくもりを味わいながら、ふたりはしばらく何も言わないでいた。フミエは
身体にまわされた大きな手に自分の手を重ね、幸せそうに瞳を閉じている。
「・・・また降ってきたな・・・。」
重ねた手を弄びながら、耳に囁く。熱い息に身じろぎながら、フミエがつぶやいた。
「でも、誰にも見てもらえんのはやっぱりかわいそうかもしれん・・・雨の中で上を向いて
 歩いとる人はおらんですもん。」
「誰も気づかんからこそ、みつけた人間の心にはつよくのこるんじゃないかな。
 ・・・そげ思わんか?」
ほほえんで半ば身体を返して振り向いてきたフミエの、やわらかい唇をつつみこむ。
次第につよくなる雨の音に閉ざされたこの小さな家で、想いあう二人の小さなしあわせを、
白い花はしずかに見守っていた。

211:名無しさん@ピンキー
12/06/20 21:12:36.82 qPKlpfRJ
素晴らしい…
放送終了して時間が開いてもこんなに良いSSが見られるなんて、
本当にこの作品はみんなに愛されているんだなあ

212:名無しさん@ピンキー
12/06/21 06:39:44.29 rqTLjCTC
>>204
この季節にぴったりな、しっとりして艶かしいSS、GJです!
いつも良質な作品をありがとうございます、職人様。

213:名無しさん@ピンキー
12/06/21 23:36:49.50 a0oDOCu2
黒ずんだバナナを咥えるフミちゃん

214:名無しさん@ピンキー
12/06/22 21:11:06.03 v4ofU0xF
>>204
GJ!
相合い傘に萌え、自慰的な二人の行為に悶えました
得に相合い傘なのにうっかり自分のペースで歩くゲゲさんとそれに小走りについてくふみちゃんがツボでした…

215:名無しさん@ピンキー
12/06/23 23:15:12.85 g6fujO7+
今日はあらゆる方面で神回だった…
自分的に気になるのはあの美尻についてたパーツw

216:名無しさん@ピンキー
12/06/24 00:10:25.32 BIj5gk94
風邪ひいたフミちゃん色っぽい

217:名無しさん@ピンキー
12/06/25 23:38:46.08 DnrmLkjj
境港にはちょっと顔を出せばいいはイカルの性格の強烈さからくるしげーさんの優しさ説が目から鱗ですごいきゅんとした

218:名無しさん@ピンキー
12/06/26 22:58:26.04 j0Ctzp1a
>>215-216
あの色っぽさで尻に触ったんだから、模型の後は間違いなく…だよな!

219:名無しさん@ピンキー
12/06/28 17:56:59.19 V3LeRO2g
本放送のこの頃はやきもきしてた人多かったんだろうなぁ…
自分は見はじめたの遅かったけど、そういう心配をしないで見れて良かったw

220:名無しさん@ピンキー
12/06/29 10:24:30.97 fDQpO/Lf
今日、実家で藍ちゃんに添い寝する姿が無駄に色っぽかった~

221:名無しさん@ピンキー
12/06/30 07:59:56.82 OoPg75jj
フミちゃんて、綺麗な瞳が印象的だけど
あのポッテリした唇が、かなり色っぽい…

本人は全然意識してないところで、ゲゲをムラムラさせてそうw

222:名無しさん@ピンキー
12/07/01 17:49:33.82 7owEaoat
>>221
ゲゲさんは冬に乾燥してるからって理由でちゅーすればいいな!

自分はふみちゃんは脚が好きですw

223:名無しさん@ピンキー
12/07/02 20:21:08.51 gNnsC2KP
ゲゲふみ共に手が好きだ

224:名無しさん@ピンキー
12/07/03 00:40:38.37 i6KoOq8g
うなじペロペロ

225:名無しさん@ピンキー
12/07/04 20:59:29.59 oN9KcMy2
>>221
ゲゲふみだと化粧もあんまりできないけど、
ゆうあやだったらグロスとかつけたらゆうちゃんが大変な事になっちゃうわけですねw

226:名無しさん@ピンキー
12/07/05 00:02:31.57 SFCJ/Lf6
アシスタントの相沢君?の仲人の時だったか
黒い留め袖に髪を結ってお化粧したフミちゃん…
めちゃくちゃ色っぽい~

227:同床異夢 1
12/07/06 10:04:44.58 SH+XQmdz
「お父ちゃん・・・境港から、またお手紙が来とりますよ。」
「また、藍子を見せに来いと矢の催促か・・・。」
フミエが手渡した実家からのハガキをよく読みもせず、茂は机の上に放り投げた。
『藍子の成長はいかがですか?気候も良くなったことだし、一度里帰りして孫の顔を
 見せてください。そちらが来るのが無理ならこちらから行ってもかまいません・・・』

 元々筆マメな絹代だが、藍子がお腹にやどった時からは妊婦の心得、生まれてからは
育児の知恵と、降るようにハガキが来るようになった。
「孫なんぞ兄貴のところにも光男のところにもようけおる。珍しくもないだろうに。」
茂はそんな風に言うが、フミエには義父母の気持ちもわかる。
(しげぇさんのこと、人一倍心配してごしなさるんだわ・・・。)
婚礼の日の夜、酔いつぶれて寝てしまった茂のいない食卓で、義母の絹代は茂が
復員して来た時のハガキを見せてくれた。
『茂を、よろしくたのみますね。あげな息子だけど、仲良くやってごしなさいね。』
姑に深々と頭を下げられて、フミエは恐縮して頭を畳にこすりつけ、絹代はそれを
見てさらに頭を下げ・・・舅の修平に笑われたものだ。
 茂を心配するあまり、絹代が嫁にかけてくる重圧には閉口するが、それだけ情の
深い人なのだと思う。親が子を思う気持ちは、変人ぞろいの茂の両親も、フミエの
実家の両親も同じなのだ。

「俺だって、親に孫の顔くらい見せてやりたいが・・・先立つモノがない。」
本当のことを言うと、フミエだって里帰りしたくてたまらなかった。父の源兵衛には
藍子が出来る前、視察旅行のついでに寄ってくれたので会えたけれど、なつかしい
母や兄弟にはもう三年以上も会っていないのだ。
「それに・・・ヘタにゆっくり話でもして、うちの経済状態がつぶさにわかってみろ。
 とたんに『灯台もりになれ!』が始まるけんな。」
飄々としてひとの思惑など意に介さない風に見える茂だが、こと両親に対してだけは
よく見せようとするところがある。それもこれも、兄弟の中で自分が一番両親に
心配をかけてしまったと言う自覚があるからだろう。『身体髪膚コレヲ父母ニ受ク。
敢ヘテ毀傷セザルハ孝ノ始メナリ』と言う教育を受けてきた世代である。

228:同床異夢 2
12/07/06 10:05:51.41 SH+XQmdz
『灯台もりになれと言われたら困るから、貧乏していることを親に知られては
 ならない。』
結婚以来、茂の口から何度この話を聞かされただろう。境港からの便りに返事を書くのは
フミエの仕事だが、貧窮生活のことは絶対に漏らしてはならないから、当たり障りのない
話題をそのつど搾り出すのに骨が折れることこのうえなかった。
「いつもそう言われますけど、灯台もりってそげに簡単になれるもんなんですか?」
フミエはずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。結婚する前、実在の灯台もりの
妻が書いた手記を元にした映画を見たことがある。
(身体も使う仕事だけど、機械もいっぱい出て来たし、機械オンチのお父ちゃんに
 出来るのかなあ・・・?)
茂の才能と努力を尊敬しているけれど、彼の得意分野は芸術にあり、科学には
ないことくらいフミエにもわかる。茂にベタ惚れのフミエでも、そこらへんの眼は
冷静なのだった。
「・・・わからん。だが、イトツというのは妙に世渡りが上手でな、どこにどういうツテが
あるかわからん。だけん、油断は禁物だ。」
なれるかどうかも何も、なりたくないのだ。
『灯台もりは大変な仕事だぞ。寝たいときに寝ることもできん。』
この世の中、寝たいときに寝ることが出来る仕事の方が少ないのだけれど、茂にとって
睡眠は人生における最重要項目のひとつなのだ。
「とにかく!境港にはいつもどおり適当なことを言ってのらりくらりと逃げておけば
 ええ。くれぐれもよろしくたのんだぞ。」
またしても無事息災のたよりをでっちあげなければならない。出るのはため息ばかりの
フミエだった。

「しげるーーっ!おるか?!邪魔するぞ!」
そんなある日。まだ早朝というのに、茂の兄の雄一が血相を変えて飛び込んできた。
 何度手紙を出してもさっぱり里帰りしてこない茂一家に業を煮やし、境港の義父母が
上京して来るという。茂と雄一は手を取り合わんばかりに嘆きあった。冗談ではなく、
イカルの上京と言うのは、この兄弟にとって会社の倒産よりも恐ろしい災いらしかった。

229:同床異夢 3
12/07/06 10:06:41.58 SH+XQmdz
 どこに泊めるか、誰がもてなすか、芝居くらいは見せなくては・・・突然の襲来の
布告に、兄弟はしぶい顔を寄せ合って頭を抱えた。この義兄も、会社勤めをしている
とはいえ、二人の子を抱えて茂に負けず劣らずいつもピーピーしているのだ。
「二人で出て来られたら、被害は甚大だぞ・・・。」
両親が出て来たら気も遣うし金も使う・・・腕組みして考え込んでいた雄一が、ハタと
ひざをたたいた。
「藍子とフミエさんだけでも、境港に送り込め。・・・ええな!」
雄一はいい厄介払いが出来たとばかりに腰を上げ、さっさと家に帰ってしまった。
あとには、里帰りしようにも旅費の工面などまったくつかない茂とフミエが、困惑顔で
残された。
「お米買うお金にも不自由しとるのに、汽車賃なんて無理だわ・・・。」
またしても米びつの底が見えている。フミエは米に指を入れてのの字を書きながら
ため息をついた。

 数日後。夕暮れ時に帰ってきた茂を、フミエはろうそくの灯りで出迎えた。
「なんだ、また、通電止められたのか?」
「すんません・・・。さっき電気代の集金の人がみえたんです。」
フミエは覚束ない足取りで歩くようになった藍子の手の届かないところにろうそくを
置き、暗い中で夕食の支度をつづけながら話した。
「お米が無うなってしもうて・・・これ以上ツケでは買えんけん、お支払いして帰って
 きたとこで、電気屋さんにバッタリ会ってしもうて・・・。」
「しょうがないな・・・明日一六銀行に行って来るか。」
世間と言う名の荒海をわたるオンボロ船のようなふたりの暮らしは、小さな藍子が
加わった後も相変わらず凪ぐ日の方が少なくて、こんな会話は日常となっていた。

「なあ・・・考えてみるか?灯台もり・・・。」
「ええっ・・・?」
ろうそくの灯りだけで摂る夕食。黒いひじきがますます黒く、うまいまずいどころか
何を食べているのかさえわからなくなりそうな侘しさだった。もそもそと食べていた
茂が、箸を置いて急に意外なことを言い出した。                     
「だ、だって、あなた・・・あげにいやがっておられたのに。」
「だがな・・・このままここで飢え死にすることを考えれば、贅沢は言っとられん。」

230:同床異夢 4
12/07/06 10:07:35.80 SH+XQmdz
(飢え死に・・・。)
フミエはぞっとした。日本はとうに敗戦の痛手から立ち直り、世の中はオリンピック
景気に湧いているというのに、この家では平和な現代にはほとんど聞かれなくなった
この言葉がりっぱに現実感をともなって存在していた。
「・・・俺たちはええ。だが、藍子がかわいそうでな。」
茂の仕事の妨げになるのではと心配していた藍子は、いつも機嫌よくひとりで遊び、
何でも食べ、よく眠る、まったく手のかからない子だった。
『家貧しうして孝子出(い)づ。』とは良く言ったものだ。まだ頑是無い幼子ながら、
(まるで私たちが苦労しとるのを知っとるみたい・・・。)
フミエは嬉しいようなせつないような気持ちで、眠る藍子を見やることもしばしば
だった。
「灯台員ならば、食いっぱぐれることはないだろう。」
「昔、灯台もりの映画がありましたねえ。」
「ああ・・・デコちゃんの出たやつか。俺も見たな。」
茂が主演女優を愛称で呼んだのがちょっと気になり、フミエは目を見張った。
「あら、珍しい・・・あなたが女優さんをアダ名で呼ぶなんて。でも、灯台もり役の
 俳優さんもステキでしたよね・・・。」
「なんだ、あげな長い顔が好きか。」
「あなたこそ・・・本当は、あげな小柄でグラマーな人がええんですね。」
いつも、お前ぐらいがちょうどええ、と言ってくれるのは優しい嘘だったのかしら
・・・フミエはちょっと悲しくなる。
「な、何を言っとる・・・俺は真面目な話をしとるんだぞ。」
生きるか死ぬかの話をしていると言うのに、なんとなくのんきな方向へ話がそれて
いくのはこの夫婦によくあることではあるけれど、『灯台もり』と言う言葉の持つ、
漠然としたロマンチックな響きのせいもあるかもしれなかった。

「そう言えば・・・戦争中でもまったく食べ物には事欠いておらんようでしたね。」
「海のそばで魚には不自由せんし、ましてや今は戦時中ではないけん、給料さえ
 もらえば食うに困ることはないからな。」
「でも・・・漫画はもうええんですか?」
「うむ・・・。」                                     
このひとに漫画をあきらめることなど出来るのだろうか・・・?去年の冬、フミエが風邪を
引いて鼻紙を買うお金さえなかった時、一度だけ『漫画やめて、映画の看板描きにでも
なるか?』と茂が弱音を吐いたことを思い出す。
(あの時のお父ちゃんの寂しそうな顔・・・。)
映画の看板描きならまだしも絵を描く仕事だが、灯台もりは全然お門ちがいではないか。

231:同床異夢 5
12/07/06 10:08:28.17 SH+XQmdz
「ええんだ・・・。非番の日もあるけん、ヒマな時に絵を描けばええ。元々俺は、好きな絵で
 手っ取り早く金になるけん紙芝居や貸本漫画を描くようになったんだからな。」
「あなたがそう言われるんなら、私はどこへでもついて行きますけど・・・。」
「まあもうしばらく食っていく手立てを考えてみて・・・どうにもいけんとなったら、
 イカルに手紙書いてみるか。」
二人はそれぞれ千々に乱れる想いを抱えながらぼそぼそと夕食を終えた。

「おーい、ろうそく持ってきてくれ!」
食後もろうそくの灯で漫画を描いていた茂は、ろうそくが尽きそうになっているのに
気づいて大声でフミエを呼んだ。
「もう、これしかないんです・・・。」
二階で藍子を寝かしつけていたフミエが、燭台を持って仕事部屋のフスマを開けた。
「なして買い置きしておかんのだ・・・。」
不平を言ってはみたけれど、買い置きしてない理由はわかっている。
「しかたない。明日早起きして描くことにして、今夜はもう寝ちまうか・・・。」
最後の灯りが消える前に、ふたりは二階に上がった。

「灯台いうのは、みんな最果てにありますねえ・・・。」
「まあ、灯台が町なかにあっても意味ないからな。」
布団に並んで横たわり、ふたりはまた灯台もりの話をしていた。
「どこへやられるかわからんのは、かなわんなあ・・・。」
映画では、北海道の原野の果てから、九州の離れ小島まで、主人公夫婦は日本中の
辺境をたらいまわしにされていた。過酷な自然と闘いながら灯台を守る暮らしの中で、
台員とその家族たちはさまざまな辛酸を舐める。
 けれど、世間から忘れ去られたような場所だからこそ、そこに暮らす夫婦はみな、
助け合って仲睦まじく暮らしていた。
『世間の人は、私たちがこんな所で苦労をしていることなんか知らないでしょうね。』
『お前の苦労は俺が知っている。俺の苦労はお前が知ってくれているじゃないか。』
病の床に臥し、遠くの町にいる子供のことを思いながら死んでいく妻に、夫がかけた
セリフが印象に残っていた。
(どげな苦労しても、一番近くにいる人がわかってくれたらそれでええんじゃない
 かしら・・・。)
そんなことを考えながら、フミエはいつしか眠りに落ちていった。

232:同床異夢 6
12/07/06 10:09:21.38 SH+XQmdz
(こげなことなら、もっと早ことなっとったらよかったなあ・・・。)
夢の中で、茂は灯台もりになっていた。
 どこか知らないが、温かい南国の海辺の陽光の中で、茂は満ち足りた気分でのびをした。
絶海の孤島に立つ灯台に波しぶきが寄せる風景をキャンバスに描きながら、フミエの作る
夕食を待っているところだ。
(しかし、海と灯台ばっかり描くのにも飽きたなあ・・・。今度本土に帰ったら、
 用紙を買うて、また漫画描いてみるのもええかもしれん。)
趣味で漫画を描こうなどと思えるのも、衣食住ともに足りている余裕からだった。
「お・・・荒れてきたな。」
西の方から黒い雲が湧き出し、ぽつりぽつりと降り出した雨が次第に激しさを増してくる。
茂はあわてて油絵の道具をしまい、官舎へと歩き出した。
(今日の晩メシは何だろうな・・・朝釣った魚かな?)
のんきなことを考えながら官舎の玄関を入って、茂は凍りついた。
「・・・フミエ!おい、どげした?!」
通り土間に、フミエが倒れている。大きなお腹を守るように両手で抱えてぐったりと
横たわる姿に血の気がひいた。
「しっかりせえ・・・産み月はまだ二ヶ月も先でなーか!」
油絵の道具を放り出し、フミエを板の間に担ぎ上げる。
「いた・・・急にお腹が痛うなって・・・。」
風雨が古い官舎の下見板の壁に叩きつけている。無線で助けを呼んだけれど、この嵐
では来てもらえそうにない。
「こうなったら、俺がとりあげてやるけん!」
茂は覚悟を決め、痛みにうめくフミエの腰をさすってやった。ずっとつきっきりで
励まし、陣痛が遠のいた隙に湯を沸かし、出産の準備を整える。
「がんばれよ・・・何も心配せんでええからな。映画でも雪で産婆が間に合わんで、
 ダンナがとりあげとったんだけん。」
 けれど、陣痛は次第に弱まり、いっこうに子供が生まれてくる気配はなかった。
「あなた・・・私、なんだかもうダメなような気がするんです・・・。」
長びくお産に、フミエの体力はもう限界に来ていた。
「何を言うとる?気をしっかり持て!」
手を握ってやったが、痛みの強い時に万力のような力でにぎり返してきたその手には、
もう力がこもっていなかった。

233:同床異夢 7
12/07/06 10:10:22.74 SH+XQmdz
「おい、しっかりしろ!フミエ・・・!」
茂は絶望的な気持ちで、次第に蒼ざめていくフミエの顔をみつめた。
「死んだらいけん!お産で死ぬと産女(うぶめ)という妖怪になるぞ!」
だが、何を言っても、もう冥界のふちに足を踏み入れているようなフミエには届かない。
「・・・藍子は!藍子はどげするんだ?お腹の子は?・・・死ぬな!」
茂は声を嗄らして叫んだ。
「死ぬなーーーーーっ!!」

 とたんに目が覚めた。あまりに現実感を伴う夢に、一瞬今自分がどこにいるかわから
なかった。飛び起きて見回すと、隣りにはフミエ、その向こうには藍子が眠っている。
「夢・・・か。」
大きく安堵のため息をつく。心臓はまだドキドキしていて、いやな汗をかいていた。
 今の大声で起こしてしまったのではと、フミエの寝顔を見る。暗くてよくわからないが、
なんだかうなされているようだった。
「ぃゃ・・・ぅ・・・ぃゃ・・・。」
近づいてよく見ると、フミエは悲しそうに顔をゆがめ、いやいやをするように首を横に
振っている。
(悪い夢でも見とるのか?・・・まさか俺と同じ夢か?)
「おい・・・どげした?おい・・・。」
肩を揺すり、声をかける。フミエがうなされるのをやめ、ゆっくりと目を開けた。
「・・・ぁ・・・あなた・・・タコは?」
「・・・タコぉ?」
意表をつく言葉に、茂はかなりずっこけた。
「どげな夢見とるんだ、お前は・・・。」
あきれている茂の顔を、フミエが下からガッチリと掴んで生存を確かめるように
まじまじと見た。
「な・・・何をそげに見とる?」
「あんまり本当のような夢で・・・あなたがタコに食べられてしまったとばっかり・・・。」
フミエは安心したように、ちゃんと生きている茂の頭を胸に抱きしめた。
「よ、よせ・・・くるしいが。勝手に俺を殺さんでくれ!」
茂は苦しがって、手を放させようとフミエの胸の先端をきゅっとつまんだ。

234:同床異夢 8
12/07/06 10:11:20.51 SH+XQmdz
「ゃ・・・ん。」
甘い声を漏らした唇を奪い、深くむさぼる。口腔内を愛撫しながら乳首をさらに弄ぶと、
鼻にかかった声をあげ、甘く応えてきた。
「・・・目ぇ、覚めたか?」
「・・・はぁ・・・は、はい・・・。」
唇を離すと、フミエはもう少し火が点いた身体を小刻みに震わせながらうなずいた。
「化けダコの夢でも見たか?」
フミエの溶けかけた表情がびくりと締まって、真剣な顔でみつめ返す。
 本人にとっては現実と紛うばかりの恐ろしい夢だったのだろう。茂は笑いをこらえ
ながらフミエの夢の話を聞いた。
「あなたが灯台もりになられて・・・最初はよかったんです。お給料はもらえるし、
 食べるものには事欠かんし・・・。赴任地も暖かい南国の海辺でした・・・。」
俺の夢と同じだ・・・茂は不思議に思い、次第に話に引き込まれていった。

 灯台の灯をまもり、非番の日は絵を描くおだやかな暮らし・・・。茂の釣ってきた魚が
食卓をにぎわし、庭に生えている夏みかんの木にたわわに実がみのる。
「藍子、お手伝いできる?・・・ほぉら。」
フミエがはさみで切り取った夏みかんを渡すと、藍子が真剣な表情で小さな両手に
余る大きな果実を大切そうにかごに入れる。幸せなひととき。ぽつり、と雨のしずくが
小さなほおに落ちた。
「あら、降ってきた・・・大変、シーツ干しっぱなし!藍子、おうちに入ってなさい。」
藍子を官舎の中に入れると、フミエは大急ぎで洗濯物を取り込んだ。大きなシーツを
取り払った向こうに、灯台に迫り来る真っ黒な雨雲が見えた。
 官舎の中では茂がゴム引きの雨合羽を着て出かけようとしている。
「ガイな嵐だ・・・灯を守らんといけん!」
「で、でも・・・大丈夫なんですか?」
「この嵐に灯が見えんだったら船が座礁してしまう。そうしたら俺もクビだ!」
雨が下から降ってくるような暴風雨の中、茂は岬の突端にある灯台に向かった。 

235:同床異夢 9
12/07/06 10:12:33.61 SH+XQmdz
『はははははは・・・。』
フミエは自分の目を疑った。荒れ狂う海の上に、着物姿で背に琵琶の袋を背負い、
杖をついた巨大な座頭が現れたのだ。
「おと、お父ちゃん・・・行っちゃダメ!!」
茂が灯台に向かって走っていく突堤に大波が叩きつける。滝のような雨と波しぶきで、
茂にはこの怪異は見えていないのだろうか。
巨大な座頭はその手を突堤の上の茂に近づけた。どこからともなくべんべんと鳴り出した
琵琶の音が不吉に響いている。
「お父ちゃん!あぶない!!」
座頭の手が一歩及ばないところで、茂は海中から伸びてきた触手に巻き取られて宙に
浮かんだ。
「きゃあああ―――!!」
 嵐の中に走り出て叫び続ける母親の様子のただならなさに恐れて、官舎に取り残された
藍子も泣き叫んでいる。
『あとから来といてなんじゃ・・・その人間はわしのじゃぁ!』
座頭が触手を打とうとして振り下ろした杖に、別の触手が巻きついて引っ張り合いに
なる。座頭は杖を放り出して化け蛸に組みつき、蛸はありったけの触手で座頭を締めつけた。
巨大な怪物二体の組んずほぐれつの格闘に巻き上がる水しぶきは灯台よりも高く、
フミエにはもう何も見えなくなった。
「・・・お父ちゃん?・・・お父ちゃんは?!。」
わずかの間気を失っていたのか、気づけばもう妖怪の姿は無く、波は静かになり、
黒雲さえはるか遠くに去り始めていた。だが、茂の姿はどこにもない。化け蛸に
つかまったまま海底に引きずり込まてしまったのだろう。
 フミエは海に走り込み、何事も無かったかのように青く凪いでいる水面をたたいた。
「・・・いや!・・・いや!・・・いやあああ!!」

236:同床異夢 10
12/07/06 10:13:45.71 SH+XQmdz
そこで茂に揺り起こされたのだ。
「お前、よう海座頭なんぞ知っとるな。」
「・・・海座頭と言うんですか?あれ・・・。」
「俺の本で見たのか?」
「いいえ・・・あなたの本棚にある本は、あなたの漫画しか読んだことありません。
 古い本の妖怪の絵は、おどろおどろしくて怖いんですもの。」
「ふうむ・・・なら、なんで知っとるんだろうな?」
「わかりません・・・昔、おばばに聞いたのかも・・・。」
そう言ったものの、おばばからそんな話を聞いた覚えはなかった。フミエはちょっと
身の毛がよだつような気がして、茂にしがみついた。
「ようわからんが、またおばばがお前を助けてくれたのかも知れんな。いくら貧乏
 しとるからと言って、今更よう知りもせん灯台もりなんぞになってもうまくいかんぞ、
 と教えてくれたのかもしれん。」
腕の中で震えるフミエの細い身体をぎゅっと抱きしめる。抱き返してくるフミエの
唇を舌でなぶりながら浴衣のすそを割り、下着の中に手をしのばせる。
「・・・な・・・なしてそげなるんですか?」
「こわい夢見たと言うけん、慰めてやっとるんじゃないか。」
文句を言いながらも、先ほどの口づけでフミエの花はとうに蜜をたたえていた。
「んは・・・ぁ・・・ゃ・・・。」
蜜にまみれた指をぬるりと前に滑らせる。いたずらな指を核心からずらそうとフミエが
大きく腰をよじった。
「ん・・・?こっちの方がええのか?」
後ろの方にずらされた指を、わざと意地悪く秘裂の中へ挿し入れる。
「ち、ちが・・・ぁあ・・・っや・・・ぁっ・・・だめ―――!」
指をふかめ、他の指を花蕾に押し当てる。特に動かさなくても、責め具を呑みこまされた
腰は勝手に踊り、いとも簡単に達してしまう。
 指を抜き取って弛緩した身体をそっと自分の上に抱き上げる。上になったフミエが、
涙に濡れた目を閉じて唇を重ねてきた。
「んっ・・・ふぅ・・・ん・・・。」
むさぼりあいながら下着を引きおろすと、フミエはもどかしそうにすっかり脱ぎ去った。
手をつかんで硬起した雄芯を握らせ、臀をつかんで引き寄せる。フミエはあえぎながら
握らされたものを自らへと導いた。                             
「見たら、だめ・・・。」
手でつかんで挿入れるさまを見られぬよう、茂の目を片手で覆う。笑ってその手をつかみ
のけ、早くしろと言いたげに腕を引っ張った。
 羞恥と欲望に目のふちを紅く染めながら、自らを責める凶器を迎え入れていくフミエを
見ないでおく手はない。

237:同床異夢 11
12/07/06 10:14:42.18 SH+XQmdz
「は・・・っぁ・・・ん・・・ぁあ――。」
甘くせつなく啼きながらすべてをおさめると、フミエはほぉっとひとつ息をついた。
(熱い・・・な・・・。)
茂を包む肉身も柔肌も、吐息をもらす唇も、全てが熱く息づいている。
(当たり前、か・・・。)
バカな夢を見たものだ、と苦笑しながら、それでも腕の中で刻々と体温を失っていった
身体の感触を思い出して心が冷える。目を閉じて、熱くてきついフミエの内部に自身が
押しつつまれている感覚だけに身をまかせた。

 フミエの手が帯を解いて襟の合わせをくつろげ、素肌に手を滑らせてくる。
「ぁあ・・・しげぇ・・・さん・・・。」
今、自分をつらぬいている器官の力強さを思えば、さっき見た悲劇は悪夢にすぎないと
確信出来そうなものなのに、フミエは裸の胸にほおを押しつけ、体温と鼓動を確かめず
にはいられなかった。
(よかった・・・夢で・・・。)
生命の匂いを嗅ぐようにすうっとふかく息を吸い込み、愛する人のぬくもりを味わう。
「・・・っゃ・・・ぁんっ・・・!」
いつまでたっても動かないフミエに焦れて、茂が下から突き上げた。フミエはびくりと
頭をあげて跳ね起きた。追い討ちをかけるようにいく度か打ち込まれ、走りぬける快感に
身悶える。あえぎながら身体を前に傾け、懸命に茂の上で腰を波打たせ始めた。
「ぁ・・・ぃ・・・っぁ・・・あんっ・・・!」
フミエの動きと絶妙にずらされた突きが下からうねるように加えられる。嵌まりあった
部分が上下するたび導き出されるしたたりが、茂の下腹を濡らした。
「・・・っも・・・だ・・・ぁあ・・・―はぁ―は・・・。」
小さな到達がいくつも訪れながら、全き解放にはいたらず、フミエは広い胸に倒れ込んで
荒い息を吐いた。                              
 ぐんなりと緩んだ身体を抱いたまま、茂が起き上がった。立てた左膝にフミエを
もたせかけると、お互いの脚を交差させ、腰を入れて斜めの結合を深める。
「・・・っ!っ――ぁあ・・・!」
深すぎる繋がりにあえいで、膝にもたれたフミエが身体をよじった。のがさぬように
大腿で押さえこみ、浮かせた腰を何度か突き入れる。

238:同床異夢 12
12/07/06 10:15:49.57 SH+XQmdz
「ぁ・・・ぁっ・・・っあ・・・ぁあ―――!」
茂の膝の上にのけぞり、突き出した腰をけいれんさせてフミエが達した。そっと胸の上に
抱き取って休ませる。ぴったりとくっついた胸の鼓動がじかに伝わってくる。
「・・・ゃ・・・ぁあ・・・。」
つながったまま起き直り、肩につかまらせたフミエを支えながら覆いかぶさる。まだ
脈うっている内部にぐっと深く押し入られて、フミエが弱々しく啼いた。
「・・・ぁっ・・・ゃっ・・・あっ・・・あんっ・・・。」
大きく拡げさせた両腿の中心を穿つ音が深夜の閨にひびき、切迫したフミエの
あえぎがそれに重なった。
「・・・んぁんっ・・・ゃっ・・・それだめっ・・・ぁあっ・・・!」
フミエの片脚をつかんで抱え上げ、松葉が絡んだように脚を組み合わせて腰を入れる。
「だめっ・・・それ・・・ぃっちゃうからっ・・・。」
「・・・イったら、いけんのか・・・?」
苦笑しながら脚を折り曲げてのしかかると、フミエはのたうってシーツをつかみしめた。
「・・・ぃっちゃ・・・ぅうっ―――!」
貞淑なフミエとは別の生き物のように貪婪な肉の襞に吸いつかれ、搾り取られる。
「・・・く・・・っ・・・。」
歯を食いしばって身体を硬直させ、いとしい脈動の中にすべてを注ぎ込んだ。

「・・・ゃ・・・はなれん、で・・・。」
息をおさめ、身体を離そうとした刹那、フミエの両腕がからみついた。
「・・・なんだ、まだ足らんか・・・?」
「ち、ちがいます・・・けど、もう少し・・・。」
フミエが下から柔らかい唇を押しつけてくる。共にのぼりつめた後の、気だるい
しびれの中でつながりあっていると、上も下も溶けていきそうに心地よい。         
「・・・ウチにもタコが一匹おるぞ。」
満ち足りてうっとりと見上げてくるフミエに、わざとそんなことを言ってからかう。
「・・・だ、誰のことですか?」
「さっきは吸い殺されるかと思うた・・・。」
「もぉ・・・いっつも私ばっかり好キモノみたいに言うて・・・・・・んぁん・・・っ!」
ふくれて横を向いた途端、ずるりと引き抜かれ、フミエが大きくあえいだ。
 まだ尖っている乳の先端を挨拶代わりにきゅっと吸ってやり、ごろんと横になると
頭の下に腕をかった。

239:同床異夢 13
12/07/06 10:16:45.03 SH+XQmdz
「ふうむ・・・大ダコと海座頭が、人間を取り合って大たちまわり・・・か。もう少し
 肉づけすれば漫画になるな。食い詰めて灯台もりになった男・・・灯台を仲間だと思って
 年に一度もののけ達が集まってくる・・・いやいや、そげな話は前に本で読んだな・・・。」
今聞いたばかりのフミエの夢の話を、もう漫画に生かそうとブツブツ言い始めた。
「ふ・・・ふふふふ・・・。」
目を閉じて甘だるい余韻の中にたゆたっていたフミエが、おかしそうに笑った。
「なんだ・・・何がおかしい?」
「だって・・・あなた、もう漫画のスジを考えとられる・・・。」
「ああ・・・そげだ。やっぱり漫画はやめられん。」
「・・・よかった・・・。」
フミエは茂の裸の胸に寄り添った。
(私は、漫画描いとるしげぇさんが好き・・・。貧乏してもええの・・・漫画をやめたりして
 ほしくないけん・・・。)
「・・・知っとるか?海の底には化けハマグリがおって、蜃気楼というのはそいつが
 吐き出す怪しの瘴気なんだぞ・・・。」
フミエは幸せそうに目を閉じた。茂が熱心に海の底に住む妖怪について語る声がだんだん
遠くなる。
「・・・おい、聞いとるのか?・・・なんだ、寝てしまいおって。」
返事がないので顔をあげて見ると、フミエはもう眠っていた。茂はちょっと不満げな顔を
したが、寝顔をしばらくみつめた後、やすらかな寝息をたてる唇にそっと口づけた。

 結核で入院していた三海社の深沢が復活してまた出版社を立ち上げ、村井家を訪れて
来たのはそれから間もなくのことだった。
 深沢が払ってくれた原稿料のおかげで、フミエは藍子を連れて里帰り出来ることになった。
未払いの原稿料を払ってくれただけでなく、深沢は新しい仕事をくれ、さらにいずれ
創刊する漫画雑誌の連載をも依頼してくれた。
 先の見えない暗闇のような貧乏生活に、ようやく明るい陽射しが射し込んで来始めた。

「・・・ひさしぶりに安来に帰れる・・・ウチのみんな、元気にしとるかなあ?東京みやげ・・・
 何がええかしら?そうだ、靖代さん達に聞いてみよう!」
三年半ぶりに会う家族の顔が目に浮かぶ。フミエは飛び立つような気持ちで、いそいそと
里帰りの準備をはじめた。

240:名無しさん@ピンキー
12/07/06 19:16:43.16 EmK37dgF
>>227
GJです!
if灯台守ストーリーな夫婦良かったです!
茂さんの見た夢は悲劇的なのに、フミちゃんの見た夢は妖怪VS大怪獣みたいで、可笑しかったw
おばばが見せてくれた夢なら素敵ですね。
エロは相変わらず素晴らしいですわ~。
どっちも好きモ(ry

241:名無しさん@ピンキー
12/07/07 22:23:22.77 rCmQ24k+
>>227
GJ!
夫婦やエロももちろんだけど、藍子とふみちゃんと夏みかんに一番萌えたw

242:名無しさん@ピンキー
12/07/08 11:31:37.91 bKQlYISo
>>227
GJ!
ちなみに、デコちゃんの自伝面白いですよ~
子役の時からの大スターでものすごくひねたガキだったようですね

243:名無しさん@ピンキー
12/07/10 20:30:20.67 3M2Pq1dA
>>227
GJです!
投下された文をざっと見た時にタコの文字にやたら注目してしまって
もしやあの有名な春画から着想を得た触手攻めが!?と思ってしまったw

244:名無しさん@ピンキー
12/07/11 22:53:31.35 iPgetcEg
明日の、風邪ひき以来の寝巻と髪ほどきしたふみちゃんが楽しみすぎる

245:名無しさん@ピンキー
12/07/11 23:02:44.64 X49XeBQE
今日の財布を開いて「( ´゚д゚`)アチャー」って顔が可愛いかった

246:名無しさん@ピンキー
12/07/12 23:29:57.71 vDuz0JVh
>>245
アチャーの顔可愛いよね
しっぱいっとかも可愛い

247:名無しさん@ピンキー
12/07/14 12:40:54.73 20Ur87sq
もう貧乏終わりなんだなぁ…
あっという間すぎる…

248:名無しさん@ピンキー
12/07/14 15:58:31.15 5/g3h28P
あまりいつまでも貧乏してると、そのうちフミちゃんが集金の人に
「もうちょっとだけ待ってください。何でもしますけん…」
とかいって身体で払うはめに……

249:名無しさん@ピンキー
12/07/15 18:36:58.39 vSRaNUlH
今日の東京は蒸し暑かったけど豊川さんもこんな日に来たのかな。
村井家は扇風機もないから、こんな日は行水で涼をとってたんだろうか。
もしも行水中のふみちゃんのところに豊川さんが来たら...

250:名無しさん@ピンキー
12/07/16 10:51:38.65 du+gUSrL
>>249
藍子と行水しますねーとしげーさんに言ったのに生返事されてもうっと思いつつ行水して
出てきたところでしげーさんと鉢合わせてなんてかっこしとるんだ!と言われる展開を妄想
新婚時代にやったらもっと大変な事になっちゃうなw

251:名無しさん@ピンキー
12/07/16 14:30:49.63 1XseAVBZ
外から藍子とふみちゃんのキャッキャッウフフを聴きながら、汗を拭き拭き原稿に向かうシゲーさん。
暫くして部屋に戻って来たびしょ濡れふみちゃん、ブラウスがスケスケ…
其処へ編集者が

252:名無しさん@ピンキー
12/07/16 18:07:13.13 +caRYevP
>>250
生返事したくせに、フミちゃんのせくすぃな姿見て
「なんてかっこしとるんだ!」
ゲゲさん、絶対言いそう!勝手にプンスカしちゃうゲゲが大好きだ~w




253:名無しさん@ピンキー
12/07/17 23:26:48.25 84KeQhe4
>>251
親子のキャッキャウフフいいなぁ
今の藍子もいいけど里帰り藍子と初代布美ちゃん藍子も捨て難い

254:名無しさん@ピンキー
12/07/18 00:15:09.46 OG+hvMwk
>>251
藍子は、行水の姿のまま豊川さんの前に飛び出してくる展開希望

255:名無しさん@ピンキー
12/07/19 15:02:09.50 42XsX/1M
豊川さんに貸本の金回りの話しちゃってる時とか電話番してる時とか
なんであんなかわいいんだ

256:名無しさん@ピンキー
12/07/20 10:11:40.38 MTmywMmF
ひさしぶりにネタをいただきました。
「行水、豊川さん、スケスケ」の三題噺というだけで、皆さんのレスのような
ほのぼの系にはなりませんでしたが・・・。

フミエの着ている『シュミーズ』というのは、キャミソールとペチコートが一体に
なった、昔は一般的だった女性用下着です。昭和っぽいかなと思いまして・・・。

257:遠雷 1
12/07/20 10:12:29.13 MTmywMmF
「おかあちゃん、きんぎょ、きんぎょさん!」
「はいはい。きんぎょさんにお水いれましょうね。」
夏の日の昼下がり。フミエは庭に出したたらいに水を張り、藍子を行水させていた。
 眠いのに暑くて眠れずぐずっていた藍子は、すっかり機嫌が直って大はしゃぎ。
お気に入りの金魚型のブリキのじょうろに水を入れては、たらいに注ぐことを飽くこと
なく繰り返し、きゃっきゃと歓声をあげている。
「ぱしゃーん!ぱしゃーん!!」」
「・・・わっぷ、藍子、やめて!」
思い切り水面をたたくと水が派手に跳ね飛ぶのを発見した藍子は、フミエが止めるのも
聞かず、今度はそれに夢中になった。
「もぉ・・・びしょぬれになってしもうたじゃないの・・・。」
濡れることはわかっていたので、ブラウスは脱いでシュミーズ姿になっている。
姉の暁子にもらったそれは、化繊で胸元に少しだけレースと小さなリボンがついた、
へんてつもないものだが、フミエが以前よく来ていた木綿のものと違って、濡れると
途端に肌にくっつき、中身が透けて見えた。

『ゴロゴロゴロ・・・。』
どこかで雷が鳴り出した。真っ白な入道雲とまぶしい陽射しが、ふいに翳った。
「いけん・・・夕立がくるわ。藍子、おうちに入ろう。」
「いやーーー!もっとあそぶのー!」
バスタオルでくるもうとすると、もっと遊んでいたい藍子は身体を水の中に沈めて
抵抗した。
「藍子・・・。言うこと聞かんと、雷様におへそ取られちゃうよ!」
そういっている間にも、あたりは夏の昼間とは思えないほど暗くなり、冷たい風が
吹き始めた。おへその脅しが効いたのか、しぶしぶ立ち上がった藍子をバスタオルで
くるんで抱き上げ、フミエは縁側へと運んだ。

258:遠雷 2
12/07/20 10:13:19.14 MTmywMmF
「こげに冷えてしもうて・・・さあ、よーく拭かんと。」
「いやーー!」
逃げようとする藍子をつかまえ、縁側に立たせてごしごし拭いてやるうちに、
外は大粒の雨が激しい勢いで地面を叩き始めた。
「・・・いやー、まいった。大変な雨ですね。」
男の声に振り返ると、雄玄社の豊川がかばんを傘代わりに頭の上にかざして縁側に
走り込んできた。
「豊川さん・・・。」
フミエは思わず居ずまいをただして頭を下げたが、自分がどんなかっこうをしている
のかはすっかり忘れていた。
「・・・玄関で声をおかけしたんですが、お返事がないものですから、庭へまわらせて
 いただきました・・・。」
言いながら、豊川の目がフミエの胸元に釘付けになるのを感じ、フミエがあわてて
手で隠そうとしたその時。
『ガラガラガラ・・・バッッシャーーーン!!』
あたりの空気が変わるような衝撃と、夕方のような薄暗さをつん裂く閃光と共に、
明らかに近くに落ちたと思われる雷鳴がとどろいた。
「きゃぁっっっ・・・!!」
恐ろしさに、フミエは思わず豊川の胸に飛び込んでいた。反射的に、その細い身体に
腕をまわしてしまった豊川は、理性では離さなくてはと考えながら、動くことが
できなかった。
(なんて華奢なんだ・・・このひとは。)
腕の中の身体は折れそうに細く、濡れた肌は冷たくしっとりとしてかぐわしかった。
その肌に唇を這わせたい衝動を必死で抑える時間は、ほんの一瞬であるはずなのに
永劫のように長く感じられた。
「あ・・・す、すみません。私、雷がほんに苦手で・・・。」
フミエがハッと我に返って、豊川の胸から顔を離した。豊川も腕を解こうとして
ゆるめた瞬間、うす暗い家の中に立っているこの家の主人と目が合った。

259:遠雷 3
12/07/20 10:14:11.01 MTmywMmF
「・・・何をやっとる。」
静かだが、明らかに不機嫌な声だった。フミエは弾かれたように豊川から身体を離した。
「あ・・・お、お父ちゃん。お帰りなさい。」
茂のシャツが濡れている。散歩に出かけ、帰りがけに夕立にあったものとみえる。
「お留守にあがりこんで失礼しました。玄関でお返事がないので、庭にまわらせて
 いただいたのですが、近くに雷が落ちて・・・。」
豊川は、今の今まで自身を襲っていた妖しい衝動を意識から払い落とし、いつもの
端正な編集者の顔に戻った。あわてる風でもなく、人妻を腕に抱いていたことの言い訳を
さりげなく挨拶に混ぜる豊川を、茂はじろりと睨んだが、後は何も言わなかった。

「あらあら・・・藍子、おねむね。すんません、ちょっこし寝かしつけてきます。」
フミエは縁側に脱ぎ捨ててあったブラウスを羽織ると、バスタオルにくるまって
おとなしく待っていた藍子を抱き上げた。水遊びで疲れたらしく目が閉じそうになって
いる藍子を二階へ連れて行って寝かしつけ、階下へ降りてくると、茂と豊川は何事も
なかったかのように仕事の打ち合わせをしていた。フミエは気まずい思いでお茶を淹れ、
茂の後ろに控えていた。
「それでは、その線でお願いします。何かあったらご連絡ください。」
いつもなら茂の仕事場を興味深く眺めたり、なにかと世間話をしていく豊川だが、
さすがに今日は気が引けるのか、早々に帰って行った。
(お父ちゃん・・・怒っとるのかしら、さっきのこと・・・。)
豊川が帰るやいなや仕事部屋に引っ込み、茂は机に向かって仕事を始めた。
「お父ちゃん・・・お茶淹れかえましたよ。」
茂は豊川のみやげの大判焼きにもお茶にも手をつけていなかった。フミエは香ばしく
淹れかえたお茶と、菓子の皿を持って仕事部屋のフスマを開けた。
「・・・・・・。」
茂は返事をするどころか、こちらを向きもしない。
「あの・・・さっきのこと、ですけど・・・。藍子を行水させとったら、急に豊川さんが
 見えられたけん、服着るヒマも無くて・・・。そしたら近くに雷が落ちて・・・。」
勇気を振り絞って釈明をし始めたのに、茂が何も反応してくれないため、フミエの
声はだんだんと先細りになっていった。

260:遠雷 4
12/07/20 10:15:01.32 MTmywMmF
「す・・・すみません!私・・・子供の頃から、雷様がほんに怖くて・・・。豊川さんにも
 失礼なことしてしもうて・・・。」
必死で声をはげまして謝り、フミエは手をついて頭を下げた。そのままじっとして
いると、目の前にある手をつかまれてぐいと引かれた。
「・・・?」
手をついたまま下から見上げると、茂がブラウスのボタンに手をかけて命じた。
「・・・脱げ。」
「え・・・。」
「さっきと同じようにしてみせえ。」
フミエはしかたなく身体を起こすとブラウスを脱いだ。化繊のシュミーズはとうに
乾いて、透けてはいなかったが薄い生地をとおして乳首のありかはわかる。
 茂は茶碗をとりあげて茶を口に含むと、そのまま口を寄せてフミエの乳首を
包み込んだ。
「・・・ゃ・・・。」
あたたかく、濡れた感触に思わず総毛だつ。もう片方にも同じことをすると、
生地が胸肌に張り付いて、ふたつの尖りはその色さえも生地の表面に表し出した。
「んや・・・な、なにを・・・。」
横座りのまま後ずさりするフミエを本棚まで追い詰め、茂はシュミーズの生地に
透けて見える紅い実を指で弄り、唇で舐め吸って責め始めた。
「・・・っは・・・はぁあっ・・・んんっ・・・。」
いつもなら、肌をかさね、口づけを深め、舌や指が身体をとろかし・・・繋がりあう
前にさまざまにフミエをほぐしてくれるのに、今日は胸の尖りばかりを苛めてくる。
「なし・・・て・・・。」
ふたつの先端からじんじんと伝わってくる快感は、下腹部にたまる一方で、あえぎ
っぱなしのフミエの喉は乾き、目は涙でいっぱいになった。
 罰されている・・・痺れる頭で、そう感じていた。フミエが豊川に見せてしまった、
生地ごしの胸の粒・・・。それは本来、茂のものなのだ。頭のてっぺんから足の先まで、
外からはうかがい知れない内部までも、自分が茂に所有し尽されているという感覚が、
フミエにはあった。茂のものである身体を、他の男に見せてしまったのだから、
こうして罰され、所有者の印を捺しなおされるのも当たり前のような気がしてくる。

261:遠雷 5
12/07/20 10:16:03.46 MTmywMmF
「・・・ぁあ!・・・あっ・・・は・・・。」
でも・・・苦しすぎる。寂しすぎる。フミエはいつまでも胸に顔を埋めて尖りばかりを
責め続ける茂の頭を抱きしめ、腰をあげて茂にすり寄せた。 

 ふっ・・・と茂が唇を離し、起き直った。本棚に寄りかかったまま、フミエは荒い息を
つきながら、涙でにじんだ目で茂を見つめた。
 ずいと近寄られ、口づけを期待したが、脇をかかえて膝立ちにさせられただけだった。
スカートのホックを外して落とし、シュミーズの裾をまくりあげて下着をも下ろした。
くるりと後ろを向かされ、腰をつかんで引き寄せられる。身体を支えるために、
自然と手を前につき、振り返ろうとした瞬間、潤いも確かめずに剛直が突き立てられた。
「・・・ひゃっ・・・ん・・・ゃめっ・・・!!」
執拗に胸をなぶられたせいで、フミエの秘裂は羞ずかしいほど蜜をあふれさせている。
けれど、口づけも甘い触れ合いもなくいきなり挿入れられたことに、フミエの心は
傷ついていた。

(狭い・・・な。)
濡れてはいるけれど、茂の前進を拒むようなフミエの肉襞のきつさは、一方的に乳首
ばかりを責め、口づけも指の戯れとて無い強引な交わりに抵抗を示すフミエの心を
表しているかのようだった。
 何度抱いても、フミエは後ろからの挿入に少し戸惑いを見せる。けれど、いつもなら
肩に口づけたり、不安げに振り返る唇を吸ってやったりして宥めるのが常だった。
「・・・は・・・ぁ・・・ぁ、あ・・・!」
口づけを求めて振り返りもせず、挿入の瞬間に耐えているのは、この仕打ちに対する
ささやかな抗議なのか・・・。挿入れる方も歯を食いしばり、じりじりと進んだ。
(どこまで、我慢できるかな・・・。)
 圧倒的な異物感も、やがては空恐ろしいほどの快感に変わる。数え切れないほど
いとしまれる内に、フミエはそういう身体に作り変えられてしまっているのだ。

262:遠雷 6
12/07/20 10:17:11.25 MTmywMmF
「・・・っく・・・ぁ・・・。」
根元まで押し込んで、やわやわと食い締めてくる内部の感触に身をゆだねる。フミエの
四肢も心なしか緊張がゆるんだけれど、今度は代わりに快感に襲われ始めているらしく、
甘い吐息と共に、妖しくうごめく内部がそれを直接茂に伝えてくる。
「ぁあ・・・ゆるして・・・達かせて・・・。」
身体の中心に、絶えず毒のような快感を注ぎ続ける肉塊を打ち込まれたまま、それ以上
何もしてもらえない苦しさに絶えかねて、フミエが懇願した。
「も・・・もぅ、あげなことせんように・・・気をつけますけん・・・。」
先ほどの失態を謝りながら、フミエは半ば無意識に臀をあげ、結合部をこすりつけて
自ら快感を追い求めはじめた。
「・・・ぁあ・・・っあぅ・・・んぁあっ・・・!」
ずい、と意地悪に引き抜かれて身悶え、次の瞬間また突き入れられて悲鳴をあげる。
抽送はしだいになめらかに、速く激しくなり、フミエもくるおしく腰を揺らして
快感を追った。
「・・・ぁあ・・・ぁ・・・ぁああ―――!」
前に指をからめられることも、胸を揉まれることさえなく、ただ打ち込まれた雄根に
侵されることだけで追い上げられていく。
 豊川が帰った時は少し小止みになっていた雨がまた激しくなっている。屋根のどこかに
打ちつけるうるさいほどの雨だれの音に、フミエの悲鳴がかき消されていった。

 吸いつき、絞りあげようとする性の唇から己が分身を引きはがすようにして抜き取り、
ひくついているフミエの身体を返してまた身を沈めた。
「・・・ぁあ・・・ん。」
さっきのせつないばかりのあえぎよりは随分甘い声でフミエが啼いた。まつげに
いっぱい涙の玉をぶらさげた瞳がゆっくりと開き、茂を見つめてくる。半開きの唇が、
すぐに奪ってほしいと訴えかけてくる。
「・・・ふ・・・んっ・・・ふ・・・。」
艶めいて柔らかく、甘い唇の誘惑に勝てるはずもなく、ふかく奪って存分にむさぼった。

263:遠雷 7
12/07/20 10:18:31.18 MTmywMmF
「まだ・・・怒っとられるの?」
唇を離すと、フミエがこのうえなく甘い瞳で問いかけた。
「さあ、どうかな・・・。」
茂はそらとぼけてシュミーズを胸の上までたくし上げ、乳首に歯をたてた。フミエが
身体を震わせて締めつけて来る。
「・・・ぁあ・・・また、達きそう・・・。」
フミエは組み伏せられた身体を、泳ぐ人のように揺らし始めた。
「ぁあ・・・ぃ・・・く・・・あなたも・・・―――!」
一度目の、苦しいような絶頂と異なり、フミエは溶けきった身体を茂にからみつかせ、
甘く口づけ合いながら幸せそうにのぼりつめた。
「く・・・!」
殺伐とした抱き方をしてやろうと思っていたのに、最後はまたフミエに持っていかれて
しまった。自分で自分を嘲いながら、茂もどこまでも甘いフミエの花の中に放縦にはなった。

「もう・・・怒っとらん?」
つながりあったまま、まだ息も整わぬうちにフミエが聞いた。
「ふ・・・ふふふ・・・。」
茂はおかしくなって笑った。精魂尽き果てるほど愛しあって、苦しい息を整えている
今、まだそれを聞くか・・・?
「別に怒ってなんかおらんぞ・・・俺は。」
「うそ・・・!」
フミエがたちまち目に涙を溜める。自分は茂を怒らせても仕方ないことをしたと
思えばこそ、あのような理不尽な抱き方をされても耐えたというのに・・・。
「あ・・・あなたが許してくれんだったらと思うたら・・・私・・・。」
ぽろり、と涙がこぼれる。
「あー、わかったわかった。もうええけん、泣くな。」
茂があわてて頭を抱きかかえる。フミエは胸に顔を埋めて思う存分泣いた。さっき
後ろから抱かれていた時の寂しさに、今頃になって耐え切れなくなったのだ。
「よしよし・・・わかっとるよ・・・だけん、泣くな。」
茂は困って泣きじゃくるフミエの頭を撫でつづけた。思い切り泣いて、涙が次第に
おさまっても胸に顔をうずめたままのフミエの顔を上げさせ、ゆっくりと口づける。     
 唇が離れ、フミエが愛しさにあふれたまなざしで下から見上げてきた。首筋にも口づけ、
今度は露わになった乳首を口に含んで舐めころがした。

264:遠雷 8
12/07/20 10:28:03.71 OPV73ULy
「ぁあ・・・だめ・・・。」
たった今、激しく愛しあったばかりというのに、またも火を点じられそうになって
フミエは抵抗した。
「き・・・気持ちよく・・・なっちゃうから・・・っ!」
フミエの可愛い狼狽を楽しむように、茂は胸への愛撫をやめない。
「ぁあん・・・く、くすぐったい・・・!」
頭を押し返そうとした腕をつかまれ、二の腕の内側の柔らかい肌をつよく吸われた。
熱い唇がはなれた後には、白い肌に紅い花が散っていた。
「あ・・・藍子が泣いとる・・・目が覚めたんだわ!」
茂が二階の泣き声に耳をすました隙に、フミエは茂の下から滑り出て、はしたなく
まくり上がったシュミーズを整えた。
「ちょっと見てきますけん・・・。」
脱がされたスカートと下着を拾い上げ、手早く身に着けると慌てて階段をあがって
行った。

(・・・見とって飽きん奴だ。)
苦笑しながら起き上がって、茂も身支度を整えた。
 仕事机に向かって、ふと振り返る。古い本棚には、いつもどおり茂が集めた資料や
本が所狭しと並んでいる。ほんの今まで、そこになまめかしい下着姿の女が這わされ、
組み伏せられて責めさいなまれ、快感に啼いていた痕跡の片鱗すらない。
 豊川の腕の中にいるフミエを見た瞬間、茂の中に湧き上がった怒りは、フミエを
奪いつくしてその最奥に自らのしるしを刻み直すことでようやく少しおさまっていた。
(それにしても、あいつは・・・どこまで寛容なんだ・・・。)
そもそもフミエが寛容でなくては、これまでの貧乏暮らしに耐えては来られなかった
だろう。意地悪な抱き方をしても全てを受け入れてくれるフミエ・・・。うぬぼれている
のかもしれないが、それもこれも茂を愛しているからだろうとは思う。           
(だが、ひとが好すぎるというのも考えもんだ・・・。)
相手が豊川だからよかったようなものの、他の男だったら・・・。過ちや災難という
ものは、昔から日常のちょっとした油断をついて起こるものなのだ。・・・フミエが
他の男に穢されることを考えただけで、血が煮える。

265:遠雷 9
12/07/20 10:29:28.98 OPV73ULy
 あの時、下着姿のフミエを腕に抱いていた豊川・・・。胸に飛び込まれて、とっさに
腕をまわしてしまったのだろうが、ひとの女房を、あんなにしっかりと抱かなくても
よさそうなものだ・・・。                                 
(俺なんぞ、あの娘に泣きつかれても、手もまわさんだったのに・・・。)
以前、茂を尊敬していた漫画家の卵の河合はる子が、最後の勝負をかけた漫画の原稿が
雑誌社に受け入れられなかったことを告げに来て、感極まって茂の胸で泣いたことが
あった。茂は慮外のなりゆきに固まってしまい、棒のように抱きつかれるままになっていた。
(女というのは、なんとも思っとらん相手でも、思わず誰かの胸に飛び込んでしまう
 こともあるんだろう・・・それに、フミエはこわがりだけんな。)
フミエが豊川に抱きついてしまったのは、あくまで雷のせい・・・そう信じて疑わない
茂であった。
(だが、あれがイタチだったら胸に飛び込んだりしたかな・・・?)
豊川の顔が浮かぶと、まだ少し胸がざわついた。爽やかで慇懃な態度の陰から、やり手の
編集者らしい野心と頭の良さが隠しようもなく表れてしまう豊川。冷たいエリートではなく、
漫画にかける情熱は深沢や戌井に勝るとも劣らない、魅力のある男だ。茂も好感を
持っているだけに、彼がフミエに時おり向ける好意的な視線が気になった。
(まさか・・・あげな奴がフミエに懸想なんぞ・・・。)
フミエは田舎出の、引っ込み思案のおとなしい女だ。高すぎる背のせいで嫁き遅れ
かけていたのが、縁あって茂に嫁いできた。それから厳しい人生の荒波をかぶりながら
四年の月日を暮らすうち、身も心も深い絆で結ばれてきた二人だった。
(あいつに惚れてやっとるのは、俺ぐらいなもんだと思っとったが・・・。)
他の男から見ても、フミエには意外に魅力があるのかもしれない。夜ごと愛し合うたび、
茂にだけ見せる媚態・・・。あえぎ、表情、肌ざわり・・・茂の名を呼び続け、時には
こみあげる胸の裡をせつなげに告白する声・・・。自分だけがそれらを知っているから
フミエに魅かれるのだと思っていたけれど・・・。
(なんか醸し出しとるもんがあるのかもしれん・・・浦木のような未熟もんにはわからん
 ような何かがな・・・。)
愛されてフミエの魅力が開花したのだとすれば、そうさせたのは自分だと思うとちょっと
嬉しくもあるのだが、複雑な思いで茂はそばにあった大判焼きを取り上げた。

266:遠雷 10
12/07/20 10:30:26.78 OPV73ULy
(とにかく・・・あいつは油断ならん!)
あの傷のある猫に似た、不適な笑いが見えるような気がして、茂は豊川のくれた大判焼きに
がぶりと喰らいついた。
 すっかり雨はあがって、夕暮れの近い空が不思議な蒼色をしている。どこか遠くで
鳴っている雷が、かくされた妬心のようにいつまでも消え残っていた。

 翌日。豊川は何度も躊躇しながらも、村井家を訪れるため再び調布駅に降り立った。
昨日来たばかりで、打ち合わせは済んでいるし、特にこれと言った用事もないのに訪れる
のは、ひとえにフミエのことが心配だからだった。
(先生に誤解されるようなことをしたまま、失礼してしまった・・・。)
いつも冷静沈着な豊川ともあろう者が、あの場面にあってもっと効果的な言い訳を
することはできなかったのだろうか・・・?あの後の打ち合わせの気まずさ、夫人と
抱きあっている自分を見た時の、暗がりで厳しく光っていた茂の目・・・。
(まさか、奥さんに当たったりしてないだろうな・・・?)
茂は、妻に暴力を振るうような男には見えない。彼の作品しか知らなかった頃は、
どんなに暗く不気味な男だろうと思っていたものだが、実際に会ってみると茂は
飄々としておおらかで、妻のフミエと暮らす家は、貧しいながらものんきな明るさに
満ちていた。
(だが、夫婦の間のことは他人にはあずかり知らんことがあるしな・・・。)
はた目には仲睦まじく見える夫婦が、実は妻の忍耐のみのうえに成り立っているなどと
いうことは、よくある話だ。それでも、妻がそれでいいと思っているならば、それで
成り立ってしまうのが夫婦と言うものでもあるのだけれど。
(なんで俺は、あの奥さんのことを、こんなに心配してるんだろう・・・?)
自分が夫婦の間にさざ波を立ててしまったのかもしれない・・・という自責の念だけではない。
豊川は、前からフミエのことが気になっていた。単なる担当漫画家の妻と言う存在を
超えて、フミエというひとりの女性に興味がわいたのだ。

267:遠雷 11
12/07/20 10:31:23.09 OPV73ULy
 赤貧洗うがごとしとはこのことか、と言いたくなるような暮らしの中で、たぶん
生来のものと思われる清潔感と無自覚なユーモアを失っていないフミエ。茂のような
変わった男に寄り添い、身も心も捧げきっている様子は、自分のような部外者にも見て取れた。
(たぶんあのひとは、自分を平凡な女だと思っているだろうが、そうじゃない。)
そもそも夫の茂が非凡な人間なのだが、ひたすら彼を信じ、尽くしているらしいフミエも
また、なんとなく浮世ばなれがしていて、あまりどこにでもいる主婦とは言い切れない。
そんな二人がひっそりと暮らす家を初めて訪ねた時から、豊川はまさに茂の描く不思議な
短編に出てくる、この世ならぬ空間に存在する家に足を踏み入れたような錯覚にとらわれ、
つよく惹きつけられずにはいられなかった。

 かの夫婦について、あれこれ考察しているうちに、いつもは駅からずいぶん遠いと
思っている村井家に着いてしまっていた。
「はぁい。・・・あ・・・豊川さん。」
玄関で声をかけると、出てきたのはフミエだった。昨日の今日なので、豊川の顔を見ると
少し顔を赤らめたが、何事もなかったように中へ招きいれ、茂を呼びに行った。その後ろ姿の、
細すぎる腰からすらりとした脚に向かう曲線が、昨日腕に抱いた身体の感触を思い出させる。
(な・・・俺は何を思い出してるんだ・・・。)
豊川は独り者だが、それは思う存分仕事をしたいからであり、別に女に不自由している
わけでも飢えているわけでもない。自分より年上の人妻に、なぜこうも劣情を
かきたてられるのか、自分にもわからなかった。
(この様子だと、特に波風もたたなかったかな・・・。)
フミエはいつものように明るい声で仕事部屋にいる茂を呼び、茶を淹れてすすめた。
夫婦の間に介在する空気はいつもどおり飄々として明るく、豊川はなんとなく拍子抜けした。
「や・・・先生。たびたびお邪魔してすみません。実は昨日、社に戻ってから先生の漫画に
 参考になるのではないかと思われる資料を手に入れまして・・・。」
茂と目を合わせる時こそ、ひるんではいけない・・・。今日ここに向かう間中考えていた
とおり、豊川はなんら後ろめたいところのなさそうな涼しい顔で茂に対峙した。

268:遠雷 12
12/07/20 10:32:33.94 OPV73ULy
「ほぉ・・・これはどうも・・・わざわざ。」
「それでですね・・・先生が迷っておられた序盤の部分、少し変えられるのではないかと・・・。」
「ふぅむ・・・。これはええ。これで解決できますな。」
最初、何の用だと言わんばかりだった茂が、豊川の適確な提案にたちまち惹きつけられた。
あとはもう、漫画家と編集者に戻って、仕事の話に没頭した。

「それでは、また締め切りの日にうかがいます。長居してすみませんでした、奥さん。」
「少し暗くなってきましたねえ。降らんとええんですけど。」
玄関先まで送ってくれたフミエが、空を見上げて心配そうな顔をした。
「大丈夫です。折りたたみ傘がありますから・・・。おや?」
かばんをポンと叩いて傘の所在を知らせた豊川が、ふと耳をすませた。
「・・・遠くで雷が鳴ってますね。・・・家に入られていた方がいい。」
「え・・・ぁ。」
豊川の言わんとすることを覚って、フミエが真っ赤になった。激しい夕立が叩きつけ、
雷鳴がとどろいたあの時、ほんの一瞬身体を寄せ合った・・・。あの記憶は、ふたり
だけのもの・・・少しぐらいは、フミエにも覚えておいてほしかった。
「それでは、失礼します。」
想いを断ち切るように、豊川は一礼して向きを変え、帰路についた。ついさっき、彼は
気づいてしまった。ブラウスのフレンチスリーブの袖から垣間見えるフミエの二の腕の
内側に、つけられたばかりの鮮やかな紅い花・・・。
(手ひどく奪い返されたな・・・。)
あの後、いつかは知らないがふたりは愛し合い、茂はフミエの肌に所有のしるしを
残したのだろう。フミエの様子が暗くないことから、その交わりが彼女にとって辛いもの
ではなかったことがわかる。
(まあいいか・・・あのひとが幸せなら。)
またこの家を訪れるのが辛いようなたのしみのような・・・自分でもよくわからない感情を
抱えながら、豊川は足早に駅へと向かった。


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