【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】at EROPARO
【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ6【再放送】 - 暇つぶし2ch137:セント・オブ・ラヴ 6
12/05/17 11:23:19.59 9wWRTxCZ
「いい匂いだ・・・。」
「ぁ・・・スパで・・・アロママッサージしてもらったから・・・。」
首筋に顔を埋めて香りを楽しみながら、脚に手を滑らせる。綾子があわててグラスを
テーブルに置いた。  」
「・・・まーたこんなケシカラン服着て・・・。」
身体に布を巻きつけただけのような構造のドレスを剥ぎ取って素裸にする。スパを
受けてきたばかりの肌はいつもにも増してなめらかで艶やかだった。
「・・・ゃ・・・私だけ・・・。」
祐一は笑いながら綾子を抱き上げ、花のしとねの上に下ろすと、自分も服を脱いだ。
「これ・・・一度やってみたかった・・・ような気がしてきた・・・。」
ハートマークを形作っていた花をすくいあげると、綾子の上に降らせる。
「ゃだ・・・はずかし・・・ん・・・。」
照れる綾子を花ごと抱き込んで、深いキス・・・。綾子も甘く応え、ふたりは官能的な
キスを繰り返しながら裸の身体をからみあわせた。
 滝のようなスコールはおさまったが、雨はしとしととした降りに変わっている。
雨に降り込められた二人だけの静かな部屋に、次第にたかまる綾子のあえぎが溶けて
いった。

「あや・・・もうこんなにして・・・。」
「ぁ・・・ゃぁあっ・・・!」
細い足首をつかんで広げ、蜜をこぼす花の中心に口づける。いつもなら焦らすところ
なのに、今日の祐一はなんだか性急だった。
「だめ・・・も・・・きちゃ・・・来ちゃぅうっ・・・。」
花芯を吸いたてると、綾子があっけなく達した。つかんでいた脚を離してやると、
綾子は無意識に背中を丸め、自分の腕で震える身体を抱きしめていた。まだ余韻の
覚めやらぬ身体を抱き起こして這わせ、いきなり後ろから侵入する。
「ぁ・・・あ――!」
綾子が悲鳴をあげてシーツをつかみ、、かろうじてハート形を保っていた花々を
撒き散らした。祐一は凶暴な衝動にかられ、綾子の腰をつかんで振りまわした。
「・・・ひぁっ・・・ぁあっ!」
啼き声をあげる綾子の汗ばんだ背中におおいかぶさり、花芽に指をあてがう。
「ぃやっ・・・いや・・・あ―。」
わざと指は動かさずに、腰をつよく振りたてる。綾子のなかが祐一を烈しく絞り
あげた。

138:セント・オブ・ラヴ 7
12/05/17 11:29:24.53 9wWRTxCZ
「・・・ぁっ・・・あ・・・っ。」
つよく吸着していた肉根を引き抜かれ、綾子が達したばかりの身体をびくびくと
震わせた。腰をつかんで引き寄せられ、熱帯の花々をつかみしめた綾子の指が
それに引きずられた。
「・・・ゃっ・・・まっ・・・て・・・。」
そのままベッドの端まで引きずられ、抱き上げられる。身体中に絶頂感がどよもし
ていて、どこへ運ばれるともわからぬまま、リネンの冷やりとした感覚に気づくと、
そこはあのブランコの上だった。
「・・・やってみたかったこと、その2・・・かな・・・。」
綾子を抱き下ろすと、片方の脚を背もたれに引っかけ、大きく開かれた中心部に
身を沈める。
「だっ・・・だめっ・・・・・・ぁ――!」
休む間もない攻撃に、綾子は戸外で抱かれる羞ずかしさを感じる暇もなかった。
「ぁっ・・・あっ・・・ふぁっ・・・ちゃ・・・ゅうちゃ・・・ん。」
突き上げられるたび、涙でぼやける視界にうつるプルメリアの白い花が、ゆらゆらと
揺れる。祐一は片足を地面に着け、綾子を責めるリズムに合わせてブランコを
揺らしていた。
「・・・キス・・・して・・・ゆうちゃ・・・。」
祐一が綾子を抱き起こし、ふたりはぴったりと抱きあってキスを深めた。
「・・・ぁあっ・・・・・・また・・・っちゃ・・・。」
あえいで唇を離した綾子が泣きそうな声で再びの到達を告げる。祐一は地面に
つけた足を離した。揺れるブランコの上で、ふたりの激しい動きが早まり、やがて
がくりと止まった。
 愛しいリズムを刻みつづける綾子のなかへ、祐一は永遠とも思えるエクスタシー
の証しを注ぎつづけた。

139:セント・オブ・ラヴ 8
12/05/17 11:30:07.20 9wWRTxCZ
「・・・なんか、ダメになっちゃいそう・・・。」
紗のとばり越しに、もの憂げにまわるシーリングファンをみつめながら、綾子が
つぶやいた。この甘い香りの垂れ込める部屋で、午後じゅうを祐一と裸で過ごした。
こんな自堕落な一日の過ごし方はバカンスでなければできないだろう。          
「このカーテンに籠ってると、際限なく出来ちゃいそうな気がするんだよな・・・。」
「・・・ぁん。」
祐一の指が、弄られつくして過敏になっているピンク色の突起をつまむと、綾子が
甘い鼻声をあげた。
 あれからシャワーを浴びて、ベッドで惰眠をむさぼった後、目覚めたふたりは
またどちらからともなく求めあい、悦楽のかぎりをつくした。
「で、でも、もう夜だよ?・・・ご飯食べに行こ!」
甘い余韻を振り払うように、綾子がいたずらなゆびを払いのけた。
「うん・・・何か食べないと死にそうだ。・・・綾子に全部吸い取られちゃったからな。」
「もぉ~・・・すぐそういうこと言う・・・。」
激しく愛された後の気だるい身体を引き起こして、綾子が身支度を始めた。さっき
剥ぎ落とされたドレスを身に着ける綾子を、祐一は寝たまま見守っている。
「・・・あやこ・・・。」
「・・・ん?」
目顔で呼ばれ、綾子が祐一の上にかがみ込んだ。目と目があってキス・・・。
「・・・愛してる。」
唇が離れた後、じっと目を見ながら祐一が言った。突然の告白に、綾子は胸が
苦しくなってただ大きな瞳で祐一をみつめた。祐一は真剣な表情だ。
「うん・・・私も・・・愛してる・・・。」
やっとそれだけ言うと、綾子はまた口づけた。日はとっぷりと暮れ、空には
満点の星がまたたいている。ふたりは空腹も忘れ、長いこと唇を重ねたまま
お互いの鼓動を感じていた。

140:セント・オブ・ラヴ 9
12/05/17 11:30:58.12 9wWRTxCZ
「ふたりっきりで南の島かぁ・・・いいなぁ~。」
綾子に見せられた旅行の写真に、遥香がため息をついた。
「いいっすよねぇ~。」
紗絵も、ほおづえをついて遠くを見るような瞳をした。
 旅行から帰って来てしばらく経ったある夜。綾子はアルバイト時代の友達ふたりと
居酒屋で会っていた。
「ふ・・・ふたりっきりって言っても、パックツアーだよ。」
「でも、オプショナルツアーとか取らなきゃ、ずっとフリーで、団体行動なんて
 しなくていいんでしょ?」
「うん・・・クルーズで小島に行ったくらいで、あとは基本ビーチやホテルで
 まったりしてたね。」
「うわ~、素敵・・・これならどこへも行かずにずっとホテルにいてもいいよね。」
青い海、松明に照らされたテラスレストラン、シックでエキゾチックな客室・・・。
「ん・・・何これ?」
小さなフォトアルバムのページをめくっていた遥香が、素っ頓狂な声をあげる。
「え・・・どれ?・・・う・・・。」
天蓋から垂れる透けるカーテンに囲まれたベッドの上に、ピンクと白の花で描かれた
大きなハートの写真。
「こ・・・これは照れるっす・・・佐々木さんからのプレゼントっすか?」
「ち・・・違うよ・・・。ツアーの人たちに、結婚半年だって言ったら、ガイドさんが
 『ハネムーンならそう言ってくれなきゃ困る!』って、部屋替えられちゃって・・・。」
「で、行ってみたらこうなってた、と・・・。」
「き・・・きれいだから撮っといたんだけど、写真抜いとくの忘れた・・・。」
「乱しちゃう前に、写真に撮っておいた、と・・・。」
「もぉ~・・・すぐそっちに持ってくんだから・・・。」
実際、これらの花々はその後すぐ祐一と綾子のしとねとなってしまったわけだから、
このふたりの言うことは図星なわけだけれど、図星なだけに羞ずかしくてたまらない
綾子だった。

141:セント・オブ・ラヴ 10
12/05/17 14:21:23.12 28DGmkLW
「あ・・・お、お土産あるよ、おみやげ!」
綾子は、慌ててバッグから小さな精油のびんを二つ取り出してふたりに渡した。
「『セント・オブ・ラブ』・・・これ、アロマオイル?」
「うん・・・お部屋に焚いてあったの。すごくいい香りなんだよ。」
「・・・へえ・・・なんか癒されるっす・・・。」
さっそくフタを開けて匂いをかいでみた紗絵が、うっとりと目を閉じた。
「ふうん・・・イランイラン、ベルガモット、ローズ、ネロリ・・・ね。」
難しい顔をして成分表を読んでいた遥香が、ちょっと意地悪な顔で聞いた。
「綾子・・・さあ、これ他にも誰かにあげた?」
「え?あ・・・うん、ルームメイトだった子と・・・会社の子達と・・・。」
「・・・そんなに?」
「ごめん・・・でも、本当にいい香りだからみんなにも、と思って・・・。」
みんな同じお土産と言うのが気に入らなかったのかと、綾子はあせった。
「あ・・・そういう意味じゃなくって・・・ただこれ・・・。」
遥香が瓶に貼られた花の絵を指さしてニヤリとする。
「媚薬っていうか・・・催淫効果のあるアロマなんだよね・・・。」
「・・・え!?」
「インドネシアじゃ、これの花びらを新婚カップルのベッドに撒くそうだよ。
 ハネムーナー用の部屋に焚いてあったんでしょ?。」
「・・・うん。」
「綾子ったら、毎日この香りぷんぷんさせて歩いてたわけだ。・・・わかる人には
 わかったと思うよ~。」
「うわ~ん、どうしよう・・・これ、親にもあげちゃったよ。」
そう言えば、あの時のふたりはちょっと異常だった・・・。思い当たることが
あり過ぎて、綾子は顔から火が出る思いだった。

142:セント・オブ・ラヴ 11
12/05/17 14:22:25.60 28DGmkLW
「・・・そう言われてみると、なんかエロい気分になってきたっす。」
紗絵がほんのり上気した頬を両手ではさんだ。
 綾子は真っ赤になってしょげている。遥香はちょっと気の毒になって
フォローにまわった。
「ま、まあ・・・便利だよね。これ寝室に焚いとけば、サインになるもんね。」
「イエスorノー 枕っすか?」
「・・・サエ、あんたオヤジすぎ・・・。」
どんどん下世話になる話題に、綾子はますますいたたまれない。
「あたし・・・今、あんま彼氏と会えなくて・・・。」
いつも独特の世界を生きている紗絵が、ちょっとしみじみ言い出した。
「ウチの彼、今長野なんすよ・・・農業やりたいって言い出して。」
「あのマジシャンの彼?」
「遥香さん・・・ミュージシャンっす・・・。いや、それはやめて、逆にやたらと
 地に足が着いたこと言い出して・・・。アイツが落ち着いたら、あたしも
 いずれ田舎暮らししようかなと思って、製パン習い始めたんすけど。」
「へえ~・・・えらいねえ。」
「めったに会えないんでつらいんすけど・・・今度会う時、コレ使ってみるっす。
 お土産ありがとう、綾子さん。」
とぼけた紗絵の口から出たド直球の発言に、年嵩のふたりはなんだか毒気を
抜かれてしまった。

「・・・はぁあ・・・いいなあ、二人とも。使うアテがあってさ。」
前の彼氏と別れて一年以上相手がいない遥香が、大きなため息をついた。
「あ・・・ごめんごめん、綾子。別にそーいう目的ばっかりじゃなくて、リラックス
 するのにもいいみたいだし、私も使ってみるよ。」
「そうっすね・・・他にもらった人たちも、そんなに深く考えないっすよ、きっと。」
「そうそう。いい雰囲気になるくらいで、それ以上の効果なんて、ねぇ。」
二人は綾子を慰めようと、かわるがわるフォローした。しかしそれはそれで、
綾子を凹ませた。
(でも・・・すっごい効いちゃった人たちもいるんですけど・・・。)
綾子は複雑な気持ちが顔に出ないよう、努力して微笑をうかべた。
「・・・飲み物、空になってるよ。たのもっか?」
次々に脳裏によみがえってくる官能の記憶を必死で封じ込めながら、綾子は
冷静さをよそおってドリンクメニューを開いた。

143:名無しさん@ピンキー
12/05/18 08:59:03.77 dNs7BRjJ
>>132
ハート形の花びらとかブランコとか新婚が過ぎる!w
だがそれがいいww
媚薬に南の島の開放感で大胆な二人に萌えでGJでした

144:名無しさん@ピンキー
12/05/18 16:40:46.73 JdRBlei6
>>132
夏の島ktkr!GJです!
リゾートの開放感いっぱいのHにドッキドキでした♡
ハネムーンベビー出来ちゃうんじゃないのか、これはw

145:名無しさん@ピンキー
12/05/19 10:49:39.53 LPt2b8rH
>>132
愛する二人のリゾートGJ!
シャワーもいちゃいちゃしながら浴びたんだろうなぁ…w
内実に不覚にもワロタw

今日のゲゲゲはえいやっがかわいすぎた…
狐耳狐しっぽふみちゃんハァハァ

146:名無しさん@ピンキー
12/05/21 15:33:49.23 SnRq+XpH
132です。
われせん見直してきたら・・・orz orz orz
南国リゾートは結婚一周年の旅行だったのですね・・・。
いちせんとわれせん、服装や、短い期間に放送されたので
一ヵ月後くらいに思ってました。
保存とかしてなくてウロで書いたもので、大間違いしてしまいました。
申し訳ありません。

147:名無しさん@ピンキー
12/05/22 10:40:27.36 5nGr+i3C
われせんはウェブで見れるんだね、今日オープンのスカイツリーもまだ建設中だ(懐)
ドンマイ!>>146


148:名無しさん@ピンキー
12/05/23 23:12:16.20 YXllx6qP
小判に変えてください!ケンカとキャンディーなんて!ケンカの翌日の違いを見ると
小判のあとは本当に二人の間に特殊な交渉があったんだろうなぁと思えてしまう…w

149:名無しさん@ピンキー
12/05/24 20:49:49.69 zQqzUVN+
ガリ版いちゃいちゃと爪切りいちゃいちゃが同居してる今日は神回でしたな…

150:名無しさん@ピンキー
12/05/24 23:57:36.88 g1tqMzRl
ガリ版の原稿を取ろうとしたゲゲの長い腕が
ふみちゃんに伸びたときはドキムネでした。
そうはならないとわかってるけど、あそこで二人して倒れこまないかとか・・・。

151:名無しさん@ピンキー
12/05/25 21:00:53.77 hITy/x0i
今更、店に入り損ねたペアルックのカップルが気になったw
同じ毛糸とか布を使ったペアルックなゲゲふみとかあっても良かったんじゃないかな!w

152:名無しさん@ピンキー
12/05/26 08:40:06.53 YQGbqOO7
「結婚して一年になります」な二人がまぶしすぎる…

153:ももの花 1
12/05/27 15:00:03.11 cPzDbMVD
「うーーーーん・・・。」
薬局の店頭でクリームのびんを手にとって、フミエは考え込んでいた。
(100円あれば・・・。ちくわがいっぱい買えるなあ・・・お肉だって・・・。)
このクリームの値段で買える食品が次々と頭に浮かんでフミエを悩ませる。

 フミエは安来の実家で暮らしていた独身時代も、そんなに贅沢な暮らしを
していたわけではなかった。酒屋の商売はうまくいっていても、父の源兵衛の
市会議員選挙にお金もかかる。何より戦争中のことをよく覚えている人々の
暮らしは、戦後十何年経った今も質素だった。
 それでも娘時代は化粧水や口紅くらいはつけたものだ。けれど、茂と結婚して
東京に来てから、フミエは化粧品と言うものをいっさい買ったことがなかった。
 月に一本漫画を描いて出版社に持って行けば三万円、大卒のサラリーマンより
恵まれた収入・・・それが見合いの時の触れ込みだった。けれど現実はそれとは
ほど遠く、原稿料は時に半額になったり、一円ももらえなかったり・・・。
『金が入ったときくらいはぜいたくをせんといかん。』
いくら爪に火をともすように倹約しても、フミエと全く経済観念がちがう茂は
せっかくもらった原稿料で嗜好品を買ってしまったりする。
 貯金というものは一切なく、フミエが嫁入り道具を揃えるために実家から
持たせてもらった金もみんな生活費に消えた。米屋や公共料金の支払いもたまり、
その日その日をどう食べていくかで精一杯の暮らしでは、化粧品など買う余裕は
とてもなかった。

(チヨちゃん・・・私が100円のクリームひとつ買うのにさえ、こげに悩むなんて
 思っとらんのだろうなあ・・・。)
つい先日、懐かしい人がフミエを訪ねて来てくれた。幼馴染のチヨ子に会うのは
結婚式の前日に、大塚の尼子姫のお堂で別れて以来だった。

154:ももの花 2
12/05/27 15:01:05.05 cPzDbMVD
「フミちゃん、いつもこげに洒落た店でコーヒー飲んどるの?一月に三万円も
 収入があって夫婦二人なら、ようけお金貯まるねえ。」
フミエはすずらん商店街にある喫茶『再会』にチヨ子を案内し、コーヒーを
飲みながらおしゃべりをした。喫茶店でコーヒーを飲むなど、今のフミエにとっては
とんでもない贅沢で、この店に入るのも初めてだった。
「私なんか世間並みの年齢で結婚したのはいいけど、結局平凡な勤め人の
 おかみさん・・・はずれくじ引いたかなぁ。」
仲良し4人組みのひとり、節子が未来の大学教授夫人、フミエだって売れっ子
漫画家と結婚して花の東京暮らし・・・羨ましそうに語るチヨ子を、フミエは
複雑な思いでみつめた。
 フミエは結婚する前、チヨ子の夫が勤める会社の新製品の販促会の手伝いを
したことがあった。チヨ子の夫は優しそうだったし、縁談もダメ、仕事もダメで
行き詰っていたフミエには、夫の役に立てるチヨ子が心底うらやましかった。
「よく言う・・・。でも、ええだんな様じゃないの。東京にも連れて来てくれて。」
まあね・・・と苦笑いしたチヨ子は、多少垢抜けない感じではあるけれど、きれいに
パーマをかけ、精一杯おしゃれをしている。フミエも一張羅のワンピースを着て
髪を巻いているけれど、これは昨夜カーラーで巻いたもので、パーマをかける
お金などなかった。

(毎月決まった日に決まったお給料をもらえる生活って、どげな感じなんだろう?)
三海社と言う出版社の社長が茂の漫画を気に入り、本を出してくれることになった。
だが、せっかく前借りできた原稿料の内かなりの額を、茂は高価なカレーの缶詰や
チョコレートなどに使ってしまった。骨身を削って漫画を描き、お金を稼いでいる
のは茂なのだから、好きなものくらい食べてほしいとは思うけれど・・・。

155:ももの花 3
12/05/27 15:02:15.32 cPzDbMVD
「・・・なあ、そろそろ行こうや。」
チヨ子が急にそう言ってバッグを取り上げた。フミエは何のことやらわからなかった。
「・・・どこに?」
「お宅拝見だが。フミちゃんの新居。新居も見んで帰っては、松ちゃんにも節子にも
 怒られるわ。」
ウチに来る・・・?あのボロ家に?フミエはパニックになった。考えてみればチヨ子が
そう考えるのは当たり前のことなのだが、フミエはとっさに嘘をついて断った。
「ご・・・ごめん。今日は、ちょっと・・・。うちのひとが、家で仕事しとるの。い、今
 ようけ注文が来とって、大忙しなのよ。人が来たら集中できんて、嫌がるけん。」
茂が家で仕事をしているのは本当だが、彼は別に神経質ではない。仕事に没頭すると
話しかけても気づかないほどなのだ。
「ふうん・・・残念だなあ。」
チヨ子は少々不満そうだったが、納得したようだ。主婦歴も長くなると、亭主にも
いろいろなのがいるということを知っているからだろうか。
 はるばる安来から出て来て、せっかくの旅行中、時間を割いて来てくれたのに、
家にも寄ってもらえなかった・・・。フミエは申し訳なさでいっぱいだった。        

「コーヒーおごってもらった上に、お土産までいただいて、悪かったね。」
「・・・そのケーキすっごくおいしいけん、早めに食べてね。」
せめてものお詫びに、フミエは自分では食べたこともない洋菓子を買ってチヨ子に
持たせた。コーヒーにケーキ・・・痛い出費だ。
 駅まで来ると、チヨ子は向き直って礼を言った。
「ほんなら帰るわ。・・・今日は忙しいとこ、あーがとね。」
「チヨちゃんこそ・・・遠いとこわざわざ来てくれて・・・だんだん。」
チヨ子はフミエの手をとって握手しようとして、その荒れ加減にちょっと驚いた。
「あれ・・・フミちゃん、こげに手ぇ荒らして。」
フミエがびくりとして引っ込めようとした手を、チヨ子はやさしく包んだ。

156:ももの花 4
12/05/27 15:03:10.45 cPzDbMVD
「だんな様においしい物いっぱい作っとるけんでしょう?・・・尽くすのもええけど、
 おさんどんばっかりしとらんで、ちっとはおしゃれもせんといけんよ。」
「え・・・う、うん。」
フミエはちょっとホッとした。同い年でももう子供のいるチヨ子の手は柔らかくて
あったかく、実家の母を思い出して涙が出そうになる。
「ほれ・・・ささくれが引っかかって伝線しとる・・・。」
チヨ子が目ざとくフミエのストッキングの伝線を見つけた。
「あら・・・いやだ。」
今気づいたように言ったが、フミエは本当は家を出る前から知っていた。伝線して
いても、これしか履いていけるものがなかったのだ。
「そうだ、ええものがあるよ・・・ももの花、言うハンドクリーム。昔から、桃の葉が
 おむつかぶれやあせもにええと言うでしょう?そのエキスが入っとるけん、
 お肌にええのよ。薬屋さんで売っとるけん、そげに高いもんでもないし。」
「へえ・・・ももの花・・・。」
フミエはなぜだか、チヨ子がフミエの嘘を見抜いているような気がした。

「安来に帰った時は、連絡してね。・・・赤ちゃんできたら、なかなか来られんよ。」
なぜわかってしまったのだろう・・・そればかりを考えていたフミエは、急に出て来た
『赤ちゃん』という言葉に、過剰反応してしまった。                 
「ぅ・・・わ、私、まだそげなこと・・・。」
言葉につまって真っ赤になったフミエを、チヨ子はあきれて見つめている。
 ひとつに溶けあい、気が遠くなるほど愛されるたび、フミエの中に残される痕跡。
注がれているのを感じながら(いつ実を結んでもおかしくないなあ・・・。)と、
まだしびれている意識の中でフミエは時おりぼんやりと考えていた。
 世間の人が気やすく口にする『赤ちゃん』という言葉に、あの甘く激しい秘め事が
直結しているなど、結婚前はあまり考えたこともなかった。

157:ももの花 5
12/05/27 15:04:00.23 cPzDbMVD
「やぁだ、フミちゃん!そげに赤うなって・・・こっちまで恥ずかしくなるが。」
チヨ子に思い切り背中をどつかれ、フミエはたたらを踏んだ。
「可愛いねー、新婚さんは。そうかそうか、そげにだんな様のこと好きなんだね。
 フミちゃんはオクテだけん心配しとったけど、良かったわ・・・。」
しどろもどろに言い訳するフミエを後に、チヨ子は手を振って改札口に消えて行った。

(チヨちゃん、相変わらずぽんぽん言うけど、私のこと心配してくれとる・・・。)
小学生時代、ろくに言い返すことも出来ないフミエに代わっていじめっ子に
立ち向かってくれた頃と、チヨ子は全く変わっていない。
(それなのに、私・・・嘘言うてしもうて・・・。)
悄然と歩く姿を、こみち書房のキヨに呼び止められ、入ってお茶をごちそうになる。
「なんだい・・・女ってのはね、昔の友達に会ったら誰だってちょっとは見栄を張る
 もんだよ。」
キヨのいつもながら歯切れのいい言い切りに、少しは救われたものの、フミエの
後悔はそれだけではなかった。
(遠いところ来てくれたチヨちゃんに、家にも寄ってもらえんだった。それに・・・。)
フミエの胸がチクリと痛んだ。
(私・・・はずれくじ引いたと思っとるんだろうか?)
ふと思い出したチヨ子の言葉を振り払うように、フミエは頭をふるふると振った。
汗だくで漫画を描く茂の鬼気迫る背中にうたれ、声もかけられなかったあの暑い日。
あの時、フミエはちょうど訪れた戌井に
『あげに精魂込めて描いたものが、人の心を打たんはずないんです。売れても売れん
 でも、もうかまわんような気がします。』
そうしみじみと語った。しかし、貧乏のふた文字は、時として人を迷わせる。
フミエは、お金がないばかりに茂への想いすら揺れ動く自分が情けなかった。      

 ・・・だが、その後フミエを待ち受けていた嵐は、フミエのそんな小さな感傷をふき
飛ばすくらい激しいものだった。

158:ももの花 6
12/05/27 15:04:59.54 cPzDbMVD
「この家はどげなっとるーーーっ!!」
フミエが家に戻ると、小さなボロ家の中には、突如襲来した人間の形をした台風が
吹き荒れていた。酒屋組合の視察旅行で上京した父の源兵衛が、何の予告もなく
調布の村井家を急襲したのだ。
 貧しい家、下宿人、風呂を借りに来る兄一家・・・それに質屋通い。フミエが手紙では
おくびにも出さなかった夫婦の暮らしぶりに、源兵衛は驚愕した。
「手紙には体裁のええことばっかり書いてよこしおって・・・。」
父の怒りの前に、フミエは源兵衛の上京を知らせに来てくれた姉の暁子とふたり、
ただただ縮こまって頭を下げるのみだった。
「土曜日、帰る前にもういっぺん来るけんな。お前やちがどげな考えでやっとるのか、
 本当のところをちゃんと聞かせてもらう。村井さんにも家にいてもらえ。ええな?」
三日後の再来襲を予告し、源兵衛は去って行った。

「土曜日の再上陸に向けて、万全の備えをせねばならんな。」
茂は新しく三海社から出た新刊を前に上機嫌で、今日の源兵衛の怒りっぷりを
聞かされても、くよくよと嘆くフミエと違ってどこかのんきだった。
「始めのうちにみっともないとこ見られたら、それ以上印象悪くはならん。
 ありのままを見てもらえばええ。」
「・・・ほんなら、境港のご両親にも、ホントのところを話してくださいね。」
自分がどんな気持ちでやりくりし、実家への手紙に愚痴さえ書かないでいるか・・・
この人は全然わかってくれとらん・・・。フミエは腹が立ってきた。
「キャンディーなんか送って。よっぽど儲かっとるみたいに・・・。」
「たかがキャンディーで、何言っちょる!」
やっと前借りできた原稿料で高価な食品を買い込み、あまつさえその一部を
境港に送れと言った茂。・・・先日の憤りがよみがえり、フミエはつい言わなくて
いいことまで言ってしまった。

159:ももの花 7
12/05/27 15:06:11.50 cPzDbMVD
 次の朝。昨夜のいさかいが尾を引いて、二人の間にはぎこちない空気が流れていた。
そこへ戌井に連れられてこみち書房のみち子が村井家を訪れた。
 手ひどい失恋以来、全く来なくなってしまった太一を呼ぶために、茂に店に来て
会ってやってほしい、と言う。戌井の提案で、それなら読者のつどいとしてサイン会を
開こうと言う話になった。
「お父さんに、水木さんの活躍ぶりをアピールできる、太一君も無理なく来られる、
 しかも、新刊の宣伝にもなって・・・一石二鳥どころか、一石三鳥ですよ!」
土曜日は父が来るから・・・と言う夫婦に、戌井は読者に囲まれた茂を見せれば
源兵衛も安心するからと力説した。茂もフミエも半信半疑ながら賛成し、それぞれが
準備にかかった。
 サイン会開催のビラを茂がガリ版できり、フミエが印刷し・・・源兵衛再上陸への
備えという共通目標のためにに忙殺されるうち、いつの間にか気まずい空気は消え、
ふたりはいつものように笑い合っていた。

 サイン会当日。茂の前に行列が出来るほど人が集まり、フミエもビラ配りや甘酒の
サービスなどに奮闘し、会は大成功に思えた。しかし・・・。
「さっきの客の行列は、サクラでなーか!つまらん小細工しおって。」
客を集めようと、みち子が景品の貸本の無料券を配ったことがばれ、源兵衛は怒りを
爆発させた。
「一生懸命働いて、それでも貧乏なら、堂々と貧乏しとったらええんだ。それを
 まわりの人まで巻き込んで、ええ風に見せようとする、お前やちの考えが
 わしは気にいらん!」
茂夫婦のせいではないと、口ぐちに謝るみち子や戌井にかまわず、源兵衛は婿に
矛先を向けた。
「茂さん・・・あんたはもっと堂々とした男だと思っとった。娘が何を頼んだかしらんが、
 こげな小細工に手を貸すとは・・・。」
それまで黙っていた茂はなんの言い訳もせず、頭を下げた。
「どうも、すまんことしまして・・・。」
源兵衛は、それでもまだ茂をなじり続けた。
「ええ男に嫁がせたと思っとったが、わしの間違いだったかのう。」
シンとしずまり返る店内。さっき無料券を手に店を訪れたアベックも、ただならぬ
雰囲気に恐れをなして帰って行った。

160:ももの花 8
12/05/27 15:07:02.77 cPzDbMVD
「・・・そげなこと、言わんで。」
皆が押し黙る中、フミエの静かな声がひびいた。
「お父さんは何も知らんけん、そげな風に思うんだわ。うちの人は小細工なんか
 せんですよ・・・。」
茂のマンガは、確かに売れない。恐ろしすぎて子供が熱を出すと苦情が来るし、
版元も原稿料の支払いを渋る。おかげで夫婦の生活は、いつも風前のともしびだ。
けれど、フミエは知っている。左肩で原稿を押さえ身体を曲げて、熱気がたち
のぼって見えるほど集中して漫画を描いている茂の背中・・・。
「夫婦ですけん。うちの人が精魂込めて描いとるとこ、一番近くで見とるけん。」
フミエはいつしか、父から守るように茂に寄り添っていた。
「・・・うちのひとは、本物の漫画家ですけん!」
おとなしくて言いたいこともろくに言えなかった娘の、思いがけない反撃・・・。
夫の腕を取って父と対峙したフミエの顔は、悲壮でありながらも美しかった。

 季節外れの台風は小さな見栄や思惑を吹き飛ばし、あとにはすべての枯葉を
落としてすっくりと立った大木のような真実だけが残った。

 貧乏ではあるけれど、精一杯生きていて、周囲の人々にも恵まれている娘夫婦の
暮らしぶりに得心し、源兵衛は帰途についた。フミエは久しぶりに父と連れ立って
駅まで歩いた。
「化粧品でも、買えやい。」
源兵衛が、ちり紙に包んだ小さな四角いものを渡した。紙幣が透けて見えている。
「・・・だんだん。」
フミエはじんわりと嬉しかった。あの厳格な父が『お母さんには内緒だぞ。』
と言ってこづかいをくれるなんて・・・。
「なあお父さん・・・お金はないけど、私、毎日笑って暮らしとるよ。」
「・・・そげか。」
台風一過の晴天のような静かな晴れやかさで、源兵衛は安来に帰って行った・・・。

161:ももの花 9
12/05/27 15:08:15.68 cPzDbMVD
(エイッ・・・買おう!)
フミエはがま口を開いて百円札を取り出した。
 父がくれた小遣いは、千円札が二枚・・・。けれど、それは公共料金の支払いや
食費にたちまち消えるだろう。
「これ・・・ください。」
「はいよ・・・ああ、ももの花。これ、発売以来すごい人気でねえ。これからの季節、
 乾燥するから、手荒れにゃもってこいですよ。」
薬局の主人は、愛想よく笑いながら商品を紙袋に入れた。

 数日経ったある夜。
「・・・ん?なんか、手がスベスベしとる・・・。」
口づけられ、ゆかたの襟元から肌をさぐられ・・・これから二人たかまっていこうと
しているさ中にふと手を取られ、フミエはドキリとした。
「気持ち、ええな・・・。」
その手をほおにこすりつけ、唇を這わせる。くすぐったく、もどかしく、フミエは
火がつき始めたのに放ったらかされた身体をもじもじと悶えさせた。
「ええ匂いもするな・・・。」
こうなっては、しかたもない。フミエは少し息をはずませながら謝罪した。
「・・・すんません。あの・・・私、いらんもの買うてしもうて・・・。」
「ん・・・なんだ?出し抜けに。」
茂は何事かと手を離した。フミエは乱れた襟元を直しながら立ち上がると、
姫鏡台の引き出しに入れてあった白いガラスびんを取り出した。
「これ・・・です。」
女の化粧品などに全く興味のない茂は、けげんな顔でフミエを見ている。
「父が・・・この間、帰り際に、その・・・お小遣いをくれまして・・・。」
父から小遣いをもらって、それを黙っていたのもちょっと心ぐるしい。
「『化粧品でも買え。』と言うて・・・。それであの・・・生活費に使わんといけんと
 思いながら、手が荒れとったもんで、これ買うてしもうたんです。」        
なんでもよく観察する茂は、白いびんにピンクのふたの容器をためつすがめつ
見ている。

162:ももの花 10
12/05/27 15:09:32.00 cPzDbMVD
「ふうん・・・いくらするもんだ?」
「・・・百円、です。」
「・・・ひゃくえん?」
茂は拍子抜けしたように素っ頓狂な声で聞き返した。                
「仰々しく謝るけん、どげに高価いもんかと身構えとったら・・・たった百円か?」
「あ・・・あなたは、二百円もするカレーやお菓子平気で買うけんそう言われるけど、
 百円あったら豚コマがいっぱい買えるんですよ!ちくわだって・・・。」
謝っていたはずなのに、なぜか矛先は茂に向かっていた。
「またそれか・・・。なしてそげにみみっちいことばっかり言うんだ!」
これではこの間のけんかの続きになってしまう。茂は黙ってフミエを抱き寄せた。

「・・・続きをしてほしいのか、してほしくないのか、どっちだ?」
「・・・っ・・・つづき、って・・・んん・・・。」
返事を待たず唇を奪い、前で結んだ帯を解く。首筋を舌でなぶりながら手を取り、
てのひらを指でくすぐる。
「親父さんがくれた小遣いなら、あんたが好きに使ったらええ。」
「・・・んは・・・ぁ・・・ん」
くすぐったさと快感に身をよじるフミエの裸身が、脱げかけの浴衣の上で踊った。
「俺も、使ってみてもええか?」
茂はびんのふたを器用に片手で開けると、白いクリームを指先に取った。
「・・・ひゃっ・・・!」
冷たい感触にフミエは思わず小さく叫んだ。下着の前からしのび込んだ指が、
熱くうずき始めた花芽にひたりとクリームをなすりつけたのだ。
「脱げ。」
手を差し入れられたまま、フミエは下着に手をかけた。脱ごうとするたび
腰が動いて、ぴっとりと指を当てられた部分が勝手に感じてしまう。フミエは
快感に耐えながら、腰をよじってなんとか下着を脱ぎ終えた。                   
「こげに熱くしとるけん、溶けてしもうたな・・・。」 
「・・・ぁあっ!」
ぬるり、と指が動かされ、フミエが声をあげて腕にしがみついた。

163:ももの花 11
12/05/27 15:10:28.35 cPzDbMVD
「ちょっこし、手伝え・・・。」
しがみついた手を放させ、指をとって花芽に押し当てる。
「ぃや・・・。」
いやがる指を親指で押さえつけ、一番長い指をフミエの奥に挿し入れる。      
「・・・ゃっ・・・ぁあ・・・。」
「離すな・・・よ・・・。」
前の部分はフミエにまかせ、挿入れた指を深める。のけぞったフミエの乳の
先端を口に含んでつよく吸った。
「ひぁ・・・だっ・・・だめっ・・・!」
「自分で、快うしてみい。」
「・・・ぃや・・・おねがい・・・あなたが・・・。」
自分で弄ることには忌避感があるらしく、フミエは泣きそうな声で懇願した。
「しょうがないな・・・。」
茂は深めた指を少し浅くし、フミエの指を親指で押しながら動かした。
「ゃ・・・っ!ぁ・・・ぁあ―――!」
いつしかフミエの指もともに動き、本能のままに腰が揺れた。悲鳴とともに、
フミエの内部が茂の指を断続的にしめつけた。愛らしい反応を楽しんでから
そっと指を抜く。フミエは前を手で覆ったまま、身体を丸めて余韻に震えた。
「ええ匂いだ・・・。」
蜜にまみれた指を、悲鳴の形に開いたままの唇に差し込んで、舌をなぶる。
「女が、ええ匂いをさせとるのは、ええもんだ・・・。」
口づけながら、大きく開かせた両脚の中心をぐいと侵す。
「んぁっ・・・ぁ―――っ!」
フミエは腰を弓なりに反らせ、枕から頭を落として髪を振り乱した。茂が
手を伸ばして枕を拾いあげ、ぐっと突き上げてフミエの腰を上げたままにすると、
その下にあてがった。
「ぃや・・・ぃ、ぃゃあ・・・っ!」
腰が上がったままになり、より茂を受け入れやすくなった蜜壷を、逞しい肉根が
容赦なく出入りする。
 快いところに引っかかるのか、フミエは半狂乱で茂の背に爪を立てた。
「―――!」
名を呼ぶことはおろか、叫ぶことさえ出来ぬほど急激に追い上げられ、フミエは
水を求める魚のように大きく口を開いたまま、ただびくびくと身を震わせた。

164:ももの花 12
12/05/27 15:11:54.14 cPzDbMVD
「・・・ん。」
開けっ放しでカラカラになった口に、濡れた舌がしのびこんで渇きを湿した。
しびれるような絶頂感は少しおさまったが、そのまま唇をむさぼりあっている
と、まだしっかりと楔を打ち込まれたままの結合部からとめどなく快感が
湧き上がってくる。
「んは・・・ぁ・・・はぁ・・・ゃ・・・ぁあっ・・・!」
つながったままの腰を引き上げられ、臀の下には枕の代わりに茂の大腿が差し
込まれた。右手をつかまれ、膝の上に引き起こされる。
「・・・はぁ・・・は・・・ぁ・・・だめ・・・。」
今きざまれたばかりの絶頂が、身体じゅうに鳴り響いている。震えながら涙を
こぼすフミエのおとがいを優しくあげて、唇を重ねた。
「んっ・・・ふ・・・ぁ・・・ぃ、や・・・。」
茂がまた手を取り、ふたりが繋がっている部分に指で触れさせる。張りつめた
雄根に押し広げられた狭い入り口を指でぐるりとなぞらせ、蜜に濡れた真珠を
ぐっと押しつぶす。
「・・・ひゃっ・・・ゃ――っ!」
フミエの内部が茂をきゅううっと締めつける。
「なあ・・・挿入れられるって、どげな感じだ?」
耳に囁かれた唐突な質問にフミエは戸惑った。
「・・・ど、げな・・・って・・・。」
口で言うなんて、出来そうにない。たまらなく埋めてほしくなっている空隙を、
愛する人にすき間なく満たされる瞬間の、たとえようもない幸福・・・。
 黙っているフミエに焦れたように、臀をつかまれて引き寄せられる。より深く
うがたれ、奥を突かれて、もう何も考えられなくなる。
「だめ・・・だめぇっ・・・そんなに、しちゃ・・・。」
ぞくぞくと身体をわななかせ、フミエは必死で茂の肩にすがりついた。
「だけん・・・今、どげなっとるか、聞かせえ・・・。」
「・・・きもち・・・よくて・・・。」
「快えのは、わかっとる。」
フミエの内部のなまめかしい運動が、頂きが近いことを直接教えている。

165:ももの花 13
12/05/27 15:12:42.88 cPzDbMVD
「・・・も・・・いっぱいで・・・しあ・・・わ・・・せ・・・。」
身も心も苦しいほど満たされていることを、フミエはやっとの思いで伝えた。
「そげか・・・。なら、もっといっぱいにしてやる。」
茂は少し微笑んでフミエの唇を唇でふさぐと、つかんだ腰をがしがしと自分に
打ちつけた。
 くぐもった歓喜の叫びが茂の中に吸い取られていく。フミエは自分の中に噴きあがる
熱情の滾りを感じていた。                       

「ぁ・・・。」
強くいだき合っていた腕を解かれ、そっと横たえられる。茂が自分の中から
出て行く感覚に総毛だちながら、たまらなく寂しく思ったとたん、汗ばんだ
胸に抱きこまれる。
「・・・今日は『好きだ。』と言わんのだ、な・・・。」
まだ少し息を切らせながら、茂がそんなことを聞いた。、
「この間は、すき好きと熱に浮かされたように言うとったのに。」
「・・・!」
絶句したフミエの顔が、みるみる紅潮した。
『この間』とは、こみち書房での読者のつどいで茂をなじった父の源兵衛に、
フミエが立ち向かった日のことだ。
 自分の夢に向かって一心不乱に漫画を描いている茂・・・その努力を否定された。
そう思ったとたん、言葉が出ていた。その一喝に家中のものがすくみあがるほど
怖い父に向かって懸命に訴えるうち、自然と身体が動いて茂に並び、守るように
腕を取り寄り添っていた。
 生活の苦しさゆえに見えなくなっていた想いが、源兵衛の来襲によって
鮮明によみがえった。それは台風一過の朝、風雨に洗われた木々の緑が目に
まぶしく輝いているのに似ていた。
 その夜、ふたりは想いを確かめ合うように激しく愛し合った。剥き出しになった
心ごと抱かれ、フミエは涙を流しつづけた。身体の底からこみあげてくる想いを
どうしてよいかわからず、それを『すき』と言う言葉に託さざるを得なかった。
満たされれば満たされるほどせつなくて、フミエは何度も『好き』と繰り返した・・・。

「そ・・・そげに軽々しく言うとっては、真実味がないですけん。」
あまりしょっちゅう口に出しては、意味がうすれるような気がする。まして
情交のさ中の睦言では・・・。
「ほーぉ、真実味、とな・・・。」
「もぉ・・・。あ、あなたこそ・・・そげなこと一度も言うてくれたことないじゃ
 ありませんか!」
「む・・・。」
思わぬ反撃に、茂はたじたじとなった。フミエはなおも言いつのる。
「私にばっかり言わせて・・・。いっぺんくらい言うてくれたって・・・。」         
その時、下の方で間の抜けた音が鳴り響いた。

166:ももの花 14
12/05/27 15:13:37.65 cPzDbMVD
「ま・・・。人が真剣に怒っとるのに・・・!」
フミエは腕の中から抜け出すと、下敷きになった浴衣を引っ張り出して着直し、
自分の布団に戻って掛け布団を引っかぶる。                   
「まあまあ、そげに怒るな・・・。」
茂は悪びれもせずにフミエの布団にもぐり込んだ。フミエが背を向ける。
「・・・匂いが移るけん、こっちに来んでごしない!」
実のところ、茂の屁は音は派手だがあまりくさくはない。
「女房ならこのくらい我慢せえ。」
笑いながら、そっぽを向いたフミエの肩を抱いて振り向かせ、無理やり口づける。
「あんたがいじめるけん、せつのうて屁が出たぞ・・・。」
本当に、このひとは・・・。力が抜けてフミエも笑うしかなかった。茂は絶対に
口に出しては言わないつもりらしい。
(でも、本当は、わかっとるの・・・。)
言葉にせずとも通じ合う気持ち・・・。こうして肌と肌をかさね、唇を合わせるだけで
お互いの想いが流れ込みまじり合う気がする。身体がつながると、快感の大波に
押し流されて、ただ茂を感じること以外どうでもよくなってしまうのはちょっと
問題のような気もするけれど・・・。
(けど、それでもええの・・・。夫婦って、だけんうまくいくんだわ。)
ケンカをしても、仲直りのあと愛される時はすべてを許してしまう。何も問題が
解決したわけではないのだから、そんな茂をちょっとずるいと思うけれど。

 先に眠ってしまった茂に浴衣を着せかけ、掛け布団で肩を包んでやってから、
また腕の中に戻った。ここが自分の居場所だと思える場所があるのは、なんて
素晴らしいことだろう。
(今度もしチヨちゃんに会えたら、本当のこと言おう。・・・貧乏しとることも。
 そして・・・お金はないけど、私しあわせだよって・・・。)
あたたかい腕の中で、そんなことを考えながら、フミエも眠りにおちていった。

167:名無しさん@ピンキー
12/05/28 12:10:32.16 2tpisXCc
>>153
ゲゲさんのSっぷりがたまらんGJ!
ふみちゃんの中の人と握手したけど、あんなに細いのに暖かくて柔らかくて、
それ以来ちょいちょい手に関する妄想してたので個人的にはそれもツボでした
ペアルックカップルとか好きだって言いたい時に屁をするって本スレのネタにニヤリとしたw

168:名無しさん@ピンキー
12/05/29 05:58:18.48 ISRSKCKR
>>153
GJ!
新婚時代はやっぱりたまらん!
100円のクリームを買ったのを謝るフミちゃん、健気で可愛いよー。
Sの茂さん、素敵ー。
最後の屁のくだりは茂さんらしくて、笑ってキュン萌えしました(*´∀`*)


169:名無しさん@ピンキー
12/05/30 23:54:06.09 6sFgf7vZ
>>153
ハンドクリーム謝っちゃうふみちゃんかわいい
『女がええ匂いをさせとるのはええもんだ』からしげーさんらしい愛の告白の雰囲気が漂っててものすごいツボw
GJでしたー

170:名無しさん@ピンキー
12/05/31 23:09:03.67 1VKs3HeV
ふみちゃんのはるこへの嫉妬から安堵
フライング眼鏡w
渋々ながらも信頼して原稿を渡すしげぇさん
悔し泣きといちゃいちゃコーヒーw
もうこの夫婦ほんと神すぎる

171:名無しさん@ピンキー
12/06/01 22:37:18.66 X9qXgbI4
γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ
γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ  γ⌒ヽ γ⌒ヽ
l<`Д´>l<`Д´>l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>  l<`Д´>l<`Д´>
γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ
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γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ
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l   l γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ  γ⌒ヽ  γ⌒ヽ γ⌒ヽ  l   l
ヽ_,,ノ l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´> l<`Д´>l<`Д´> ヽ_,,ノ
     l   l γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ  l l   l
     ヽ_,,ノ l<`Д´>l<`Д´>l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>ノヽ_,,ノ
         l   l  γ⌒ヽ γ⌒ヽ γ⌒ヽ l   l
         ヽ_,,ノ  l<`Д´>l<`Д´> l<`Д´>_,,ノ
               l   l l   l  l   l
               ヽ_,,ノ γ⌒ヽ  ヽ_,,ノ
                   l <`Д´>
                   l   l
                   ヽ_,,ノ

     な~まぽ~  な~まぽ~  た~っぷり~  な~まぽ~

 な~まぽ~ なま~ぽ たっぷり な~まぽ~が や~ってく~る

172:名無しさん@ピンキー
12/06/02 18:16:58.15 0RvUFpkg
御懐妊キター!
来週は映画デートもあるし楽しみすぎる

173:名無しさん@ピンキー
12/06/03 23:15:07.34 jkjFl93h
>>153
GJ!
新婚はやっぱりええもんだ

174:名無しさん@ピンキー
12/06/04 21:37:01.12 afeuObiS
妊娠がわかった時のふみちゃん、ほんとかわいいんだよなぁ


175:名無しさん@ピンキー
12/06/05 19:11:04.29 FBLEa/Ib
あんなにイヤがってたのに生まれたらデレデレなんだもんなぁ…w
ふみちゃんが嫁に来たときも似たようなもんだったし、マジツンデレ

176:名無しさん@ピンキー
12/06/05 19:58:02.18 HFuB3+Y8
抱っこしてたなあ、あれは良かった。
ええシーンや。

177:奪還 1
12/06/06 10:15:45.75 CELfuUh0
(寒いな・・・。)
フスマを開けると、小さな寝間の空気は、二人の人間が寝ているとは思えないほど
冷え切っていた。薄闇の中、布団に座って藍子に乳をやっているフミエの後ろ姿の
肩の細さに、茂は胸をつかれた。
「・・・藍子、起きたのか。」
生まれたばかりの赤子の泣き声はまだ弱々しく、階下で仕事に没頭していた茂の耳には
届かなかったらしい。
 振り向いたフミエは少し微笑んで、口に人差し指を当てた。茂は入り口に一番近い
自分の布団にそっともぐり込むと、手枕をして母子の姿を眺めた。
 んっく、んっく・・・時おり泣きしゃっくりに身体を震わせながら、赤子は貪欲に乳を
むさぼっている。恐ろしいほど小さな存在でも、その身体は生命そのもののような
エネルギーを発しているようだった。身を刺すように寒く貧しいこの部屋の中で、
つつましい母子のいる場所だけがほんの少し温かだった。
(・・・にしても、寒すぎる・・・。)
茂は手枕をしていた手を引っ込め、肩まで布団にもぐった。藍子を寝かしつける時に
つけてあったストーブの暖気は、年の瀬の冷え込みにとっくに消え去っていた。
 フミエが子供を抱いて退院して来た昨日。茂は、普段は夜しか焚かないストーブを
つけ、部屋をぽかぽかに暖めて母子を迎えてくれた。茂の思いがけない思いやりに、
フミエは驚きながらも幸福そうに微笑んだ。
・・・だが現実は、そんなに毎日灯油を景気良く焚くわけにはいかなかった。

 お腹がいっぱいになった藍子が、乳首から口を離した。小さな頭を肩に乗せて
げっぷをさせてから、フミエは赤ん坊をそっと小さな布団に寝かせ、寝息をたて
始めるのを確認してから静かに自分の布団に戻った。
「・・・!」
眠っているとばかり思った茂がむくりと起き上がってフミエの後ろに入り込み、
自分の掛け布団を合わせ目に重ねた。フミエがちょっとドキッとして身を固くする。

178:奪還 2
12/06/06 10:16:33.10 CELfuUh0
「何をモジモジしとる・・・お前が考えとるようなことはせんぞ。」
後ろからフミエを包み込みながら、脚に脚をからめ、大きな足でフミエの冷えた
足先をこすった。                                  
「こげに冷えて・・・夜中に起きる時はなんぞ羽織っとれ。赤ん坊っちゅうのは
 夜中でも腹を減らすけん、たまったもんではないな。」
「もうちょっこし大きうなったら、夜中もミルクを作ってやらんといけんでしょうね。
 うるさくするかもしれませんが、堪忍してごしない。」
「そげなことはええが・・・台所に立つんなら、なおのこと冷えるな。」
大晦日の冷気は、貧しい家の羽目板の隙間やささくれた畳の間からもしみこんでくる
ようだった。茂はフミエを抱く腕に力をこめた。
「俺がここに寝とる時は、遠慮なく入ってきたらええぞ。」
「え・・・。でも、起こしたら悪いですけん。」
「そげなことで起きる俺ではなーわ。・・・まあ、時々は別の気を起こすかも
 知れんけどな。」
「ぁ・・・。」
茂の手が浴衣の襟の合わせ目からすべりこんで、なめらかな胸肌を温かく包み込んだ。
フミエは小さな声を上げて少し身じろいだが、大きくて温かい手はそれ以上何もせず、
ただフミエの冷えた肌を温めつづけた。
「あったかい・・・だんだん、お父ちゃん。」
フミエは安心したようにその手に自分の手を重ねて、しあわせそうに目を閉じた。

(やっとこれで元通り・・・いや、元通り以上・・・か。)
フミエが赤ん坊を抱いてこの家に帰ってきたのはつい昨日のことだった。茂は腕の中で
やすらぐ妻と、傍らの小さな布団ですやすやと眠る娘をみつめた。
(戻ってきた・・・俺の手の中に。)
半年と少し前、同じようにフミエを腕に抱き、失いかけたものの大きさに慄然とした
夜のことを、茂は思い出していた。

179:奪還 3
12/06/06 10:17:23.83 CELfuUh0
『シバラク コチラデ スゴス』
子供のお祝いに招いてくれた姉の家に出かけたフミエから届いた電報は、角の立たない
表現ながら、当分帰って来ない・・・つまりは『家出します。』という意味だった。
「なんだこれは・・・あいつ・・・帰って来んつもりか?」
茂はいまいましげに舌打ちして、紙片を放り投げた。
「勝手にせえ!」
心あたりがないわけではない。昨日『子供ができました。』と伝えた時の、フミエの
思いつめたような表情・・・。それは、普通の暮らしができている夫婦だったら、妻が
夫に妊娠を告げる時の表情ではなかった。フミエも、今の村井家が子供の誕生を
手放しで祝える状況になどないことは重々わかっているのだろう。
『子供は、大変だぞ・・・。』
それでも、喜んでくれるかもしれないと言う一縷の望みをかけていただろうフミエに、
茂が困惑顔で発した言葉は、あまりに冷たかった。

「あげな身体で家出して・・・どげするつもりだ?」
行き先は姉の家とわかってはいるものの、フミエは普通の身体ではない。その身を
案じると共に、別の不安も頭をもたげてくる。
(まさか・・・ここを出て行くつもりじゃなかろうな?)
フミエは元来、おとなしくて引っ込み思案で、茂には従順な妻だ。けれど、
一年半近く一緒に暮らしてみて、ここぞと言う時には自分の意思をつらぬく強さが
あることに茂は気づいていた。
(あの親父さんに、啖呵きったりしたんだもんなあ・・・。)
今までどんな貧乏暮らしでも、驚くべき忍耐力で茂について来たフミエが、いきなり
家出と言う手段に出たのは、姉にそそのかされたにしても、よほどの覚悟と
思わざるを得なかった。
(あいつは、俺に・・・惚れとる。)
自分で言うのも面映いが、茂にはそう言い切れる自信があった。日々の暮らしの中で、
フミエが捧げてくれる献身、信頼・・・そして夜、ひとつに溶けあうたび、言葉では
言わずともその身体がフミエの深い想いをあますところなく語っていた。

180:奪還 4
12/06/06 10:18:18.67 CELfuUh0
(だが、子供の命のためなら、ためらわず俺を捨てるかもしれん。)
そんな予感があった。茂を愛していないのではない。せっかく授かった命を
殺すようなまねが出来るフミエではないのだ。茂と別れることがどんなに苦しくても、
命がけで子供を守ろうとするに違いない。
(いざとなれば、安来に帰ってでも・・・。)
いったん嫁した女が、実家に帰るのは恥・・・フミエも安来の両親もそう思っているだろう。
だが、孫の命がかかっているとなれば、母親は元より、あの頑固そうな父親も進んで
救いの手を差しのべるだろう。
 故郷を離れる日、茂にすがりつかんばかりにしてフミエのことを頼んだ母親。
こみち書房での読者のつどいで、人気があるように見せかけたと茂をなじる父に
立ち向かってくれたフミエ・・・。あの時、フミエの真剣さに納得し、もう一度茂を
信じてくれた岳父は、身ごもった娘を突き放した自分のことをどう思うだろうか・・・。

「俺は、何をしとるんだ?・・・仕事なぞしとる場合ではないぞ!」
茂はがばと立ち上がると、なけなしの銭を数えた。
「・・・足りん!」
部屋を見回し、目についたものをかき集めて風呂敷に投げ入れた。
 茂は包みを引っつかむと玄関を飛び出した。下駄を鳴らし、商店街のはずれの
質屋を目指して走った。
・・・今にも手からすりぬけようとしている女房を奪還するために。

「はぁい。」
てっきり義姉の暁子が応対に出て来るものと思っていたのに、茂が押した呼び鈴に
応えて玄関のドアを開けたのは、フミエだった。
「あなた・・・・・・。」
フミエはかなり驚いたようで、それ以上言葉も出ずに茂をみつめている。電報を打った
のはつい数時間前・・・文面からただならぬものを感じたとしても、茂のような男がこうも
早く迎えに来るとは、思いも寄らなかったに違いない。

181:奪還 5
12/06/06 10:19:14.63 CELfuUh0
「あら・・・村井さん・・・。」
義姉の暁子が遅れて玄関に出てきた。茂はこのひとが苦手だった。可愛い妹を、
茂があまり大事にしていないと思っているのは明らかで、フミエに代わって村井家の
生活のおかしな点をぐいぐい突っ込んでくる義姉なのだ。
(・・・これじゃあまるで、若気のあやまちとかそげな感じだが。)
茂とフミエはれっきとした夫婦なのに、まるで十代の若者が他家の娘を孕ませて
謝罪に来たかのような後ろめたさだ。 
「どうも・・・お世話になりまして。」
茂は暁子に向かってぼそぼそとつぶやくと、袋にも入れない裸のまま、バナナを
にゅっと突き出した。
「これ、土産です。」
そして、これで用が済んだと言わんばかりにフミエの方に向き直り、
「おい、帰ろう。」
と、言った。
「村井さん、あのねえ・・・。」
暁子が何か言いたげに話しかけてきた。
「帰るぞ。」
暁子に一礼だけして、茂はせつなげな顔で立ちつくしているフミエをうながした。

 フミエが慌ててまとめて来た風呂敷包みを、茂はひったくるように受け取ると、
さっさと歩き出した。
「姉ちゃん、ごめんね。また連絡するけん・・・。」
フミエがすまなそうに姉に謝る声を後ろに聞きながら、茂は振り返りもせずに歩いていく。
フミエが小走りに追いついて、並んで歩き始めた。ふたりとも、何か言わなければと
思いつつ、歩きながらする話題でもない気がしていた。
 子供たちの歓声がにぎやかな公園に入り、すわり心地のよさそうなブランコに
並んで腰かける。先に口を開いたのは、フミエだった。
「勝手して、すんません。・・・迎えに来てくれるとは、思わんだった。」
俺を、どれほど非情な男と思っとるんだ・・・そう思いながら茂は、ただうん、うんと
うなずくばかりだった。

182:奪還 6
12/06/06 10:20:02.28 CELfuUh0
「バナナなんて買う余裕、よくありましたね。」
茂はポケットを探ると質札をつまみ出し、ひらひらと振った。
「一六銀行から借りてきた。つきあいも長いけん、多めに貸してくれたぞ。」
フミエが苦笑する。固かった二人の間の空気が、少しゆるんだ。
「・・・大変なのは、わかっとります。今でも苦しいし・・・不安ですけど。」
フミエが意を決したように話し出した。落ち着いた口調だ。
「なんとかなると思うんです。・・・あなたも私も、遅い結婚でしたけど、こげして
 子供を授かりましたけん・・・せっかく授かったんですけん、大事にしたいんです。」
一呼吸置いて、フミエははっきりと口にした。
「私・・・産みます。」

『産ませてください。』ではなく『産みます。』・・・そう言いきったフミエには、
フレアースカートの細い腰のどこにも、お腹に子供を宿している様子など見えなくても、
もう母親になる女の強さがにじんでいた。
 この女にはかなわない・・・いや、女全般にかなわないというべきか・・・。茂は
思わず微苦笑した。
「・・・映画でも見て帰るか?」
真剣な話をしているのに、またこのひとは・・・強い意志をやどしたフミエの表情が、
少しくもる。
「せっかく二人で出てきたんだけん、まっすぐ帰ったらもったいない。今のうちだけんな。
 ・・・子供が生まれたら、二人で外には出られんぞ。まあ、今までもそろって出かけた
 ことなぞなかったか・・・ははは。」
照れ隠しなのか何なのか、茂の一風変わった表現方法には慣れているはずのフミエが、
あきれ顔で茂を見ていた。

183:奪還 7
12/06/06 10:20:56.22 CELfuUh0
「いきなり聞いたんで、びっくりした・・・子供のこと。男には心の準備がないけんなあ。」
それは、半分本当で、半分言い訳だった。
 茂がいくら変人と言っても、男と女が交われば子が出来ることくらいは承知している。
ましてや二人は夫婦で、一年半にわたって濃密な愛を交わしてきているのだ。
(ありていに言うと、忘れとった・・・。)
手を伸ばせばいつもそこにいるフミエを愛で、悦楽をつくしたのち精を放つ・・・その度に
子供が出来るかもしれない・・・などと考えることはなかった。
(だけどこいつは、ちゃんと子供のことも考えとったんだな・・・。)
生きることに精一杯で、子供のことなど念頭になかった。出版社の倒産に原稿料の不払い、
貸本漫画業界はお先真っ暗という現実が茂の頭上に重くのしかかっていた。
『子供は、大変だぞ・・・。』
だからどうしろ、とまでは言っていない。だが、子供の父親である男からこう言われたら、
それはお腹の子をなきものにしろと言われたのと同じなのではないか。
『心の準備がなかった。』茂はそう言い訳することしかできなかった。

「金がないところに子供が出来て、これからどげなるか俺にもわからんが・・・。」
フミエとちゃんと向き合って話している内に、茂はだんだん本当になんとかなるような
気がしてきていた。
「まあ・・・なんとかなるだろ。」
ちょっと勢いをつけてブランコを後ろへこぐと、子供のように飛び降りた。
「・・・はい!」
フミエが嬉しそうにうなずいた。
「ほれ・・・食うか?」
茂がポケットから、黄色いバナナを取り出した。フミエが微笑んで受け取ると、
魔法のようにもう一本を取り出し、ブランコに二人ならんで座って食べた。暁子に
手渡した土産から、ちゃっかり二人分抜いておいたのだ。

184:奪還 8
12/06/06 10:21:53.24 CELfuUh0
 商店街にある名画座には、男性好みの映画の二本立てがかかっている。
「あっちで、ヘップバーンの映画やっとりますよ。」
恋愛ものを見たいフミエの意見など全く意に介さず、さっさと入っていく茂の後を、
フミエはブツブツ言いながらついて行った。
 ところが『戦争映画なんて、胎教にわるい。』と気乗りしていなかったのに、いったん
見始めるとフミエは、主人公たちが苦境に陥るたび手に汗を握り、ついに任務を遂行する
ラストシーンでは茂の肩を揺すり、拍手せんばかりの熱狂ぶりを見せた。
(こいつが戦争映画でこげにコーフンするとはな・・・。)
茂はあっけにとられ、肝心な場面を見るのも忘れて、となりで画面に見入っている
フミエの生き生きとした顔を眺めた。
(産む、と決まってホッとしたのかもしれんな・・・。)
茂に妊娠を告げた時の、思いつめたような顔・・・投げつけられた冷たい言葉・・・そして家出
・・・妊娠がわかってからのこの数日間、身重の身体でどんなに不安だっただろうか。
 なんとなくいとしい思いで、茂は無邪気に喜ぶフミエの横顔をみつめた。

 その日の夕食。フミエはせめてもの祝いのしるしに赤飯を炊いた。
「・・・なんだこれ?普通の飯じゃなーか。」
「もち米は、ぜいたくですけん。節約お赤飯です。」
「まぁ・・・こういうもんは、祝う気持ちが大事だけんな。」
赤飯まで、節約か・・・。子供を産めることになって心を弾ませているようでも、
やはり締まり屋だ・・・いや、子供を産むからこそ、今まで以上にしっかりしないと
いけないのだろう。経済状況は何も好転したわけではないのだから。
「おい・・・大事にしぇよ。」
フミエが心からうれしそうに微笑んだ。茂はちょっと情けなかった。こんな時男は、
『大事にしろよ。』
と言ってやるくらいしか能がない。
(あとは俺が、どげな仕事でもして稼ぐけんな・・・。)
こみあげるものを紛らすように、茂は赤飯をかきこみ、勢いあまってちょっとこぼした。

185:奪還 9
12/06/06 10:50:47.19 CELfuUh0
 その夜。つわりもひどくないし大丈夫だと遠慮するフミエを早々に寝かせ、茂は
また仕事部屋にこもっていた。ただでさえ〆切りがせまっていたのに、フミエを迎えに
行くために半日つぶしてしまったのだ。
「・・・これからは、今まで以上に働かねばならん!」
生まれてくる子のため、一円でも多く稼ごうと、鬼気迫る勢いでペンをはしらせた。
 描き疲れ、ふと気になって、ポイと捨てたフミエからの電報を拾い上げた。
『シバラク コチラデ スゴス』
『しばらく』という表現に、これを打った時のフミエの逡巡が表れている。茂と暮らす
家を出るなど、今まで考えてみたこともないフミエだろうに、そうせざるを得ないほど
絶望させてしまったのは茂だった。
(もう戻って来んかもしれん・・・。)
そう考えると居ても立ってもいられなくなって、男の沽券も何もなくフミエを取り戻しに
家を飛び出した。そのくせ義姉の家の玄関で『帰るぞ。』と言ったきり、フミエが話し
出すまで黙っていた。本当は、フミエが素直について来なければ、さらってでも連れ戻し
たいほど焦りを感じていたのだが。
 ふと自分の右手を広げて見た。フミエがこの指のすきまからするりと抜け出した気が
したあの時の喪失感・・・。その手をぎゅっと握ると、茂は立ち上がって仕事部屋を出た。

「もう、寝たか・・・?」
うす暗い寝間に敷かれたふた組のせんべい布団のうちひと組に、フミエが眠っている。
その寝顔が少しやつれて見えるのは、つわりのせいか、ここ数日の心労のせいか・・・。
いとおしい思いで乱れた髪をすいてやると、何事かつぶやきながらフミエが横を向いた。
粗末な布団は幅も小さく、現れた背中に茂はそっと身を寄せてかたわらに横になった。
「ん・・・ぁ・・・あ・・・なた?」
フミエが目を覚まして身じろいだ。茂は何も言わず後ろから包み込む。波打つ髪に
顔を差し入れ、首筋に口づける。フミエがすこし身体を固くした。

186:奪還 10
12/06/06 10:51:40.54 CELfuUh0
「わ・・・私・・・あの・・・。」
「わかっとる・・・何にもせんよ。」
ふたりの夜はいつもこんな風にして始まることが多かった。ふかい眠りから起こされ
ても、フミエは嫌な顔をしたことがなかった。はじめの内は夢うつつながら、次第に
とろかされ、たかまり・・・最後は一緒に果て、ともに夢に落ちるしあわせを、これまで
あたり前のように享受してきたのだ。
 だが、今フミエのお腹の中には新しい命がやどっている。今までのように激しく
抱いたり、つよい快感を与えることが母体と胎児にとって好ましいとは思えない。
どんなに欲しくても、フミエの身体が元通りになるまでは我慢しなければなるまい。

 フミエがくるりと寝返って茂の方を向き、くるおしげにしがみついて来た。
たった二日だけれど、ふたりの心が離れ、ひと晩を別々に過ごした。茂がこんなに
早く連れ戻してくれるとは、フミエは予想もしていなかったのだろう。わだかまりは
解け、こうしてフミエはまた茂の腕の中にいる。自分の身体とお腹の子によくないと
理屈ではわかっていても、フミエもひとつになることを求めているのかもしれない。
「・・・そげにしがみついたら、くるしいが・・・。」
「ぁ・・・す、すんません。」
あわてて腕の力をゆるめ、顔をあげたフミエの唇を、茂の唇が求めた。深く口づけて
から唇を離すと、フミエが大きく呼吸をして、身をふるわせた。涙でいっぱいの瞳に
吸い寄せられるように重ねる口づけは、次第に深く激しくなり、フミエが熱っぽい身体を
妖しくこすりつけてくる。
「いけん・・・お腹の子に障る。」
茂もはちきれそうな想いを抑えながら、柔らかいフミエの身体をそっと押しやった。
「でも・・・。」
しなやかな手が、隠しようもなく欲望を顕している前をそっと包み込む。
「う・・・。」
『何もしない。』と言いながら、離れがたく抱擁しあううち、身体は素直にフミエを
つよく求め、硬く張りつめていた。                          
「駄目だ・・・止まらんようになってしまうけん。」
こみあげる欲望を抑えながら、フミエの手をそっとはずさせる。

187:奪還 11
12/06/06 10:52:28.27 CELfuUh0
「でも、私・・・。」
フミエのうるんだ瞳が近づいて、また唇をふさいだ。
「せめて、あなたに・・・ふれたいんです。」
唇を離し、真剣なまなざしで請われると、茂もたじろぎながらもうなずいた。
 フミエは浴衣の襟を割ると、胸に顔をうずめた。そのまま手を下へ伸ばし、下着の
上から怒張をそっと撫でる。
「見んで、ね・・・。」
起き直り、はらりと垂れた長い髪の間から羞ずかしそうにそう言うと、下着に手をかけた。
くっ、と勃ちあがったものを手で包み、いとおしげに口づける。
 根元からはじめて、すみずみまでを唇が這い、時おり舌がちろちろと舐める。
熱い口の中へ呑みこまれ、上下にしごかれる。やわらかく嚢を揉まれると、快感に
腰が自然に突き上がった。
「お・・・まえは・・・感じたらいけんぞ・・・。」
身体を心配する言葉も耳に入らぬように、フミエは夢中で口の運動に集中している。
「もう・・・離せ。・・・射精(で)る・・・っ。」
熱いものがせり上がって来る感覚におそわれ、起き上がってフミエを制した。
「・・・こら・・・はな、せっ・・・。」
これまで、放たれたものを当たり前のように受け入れてきたフミエは、肩を押され、
いぶかしげに口を離した・・・とたん、その顔に白濁がぱっと散った。
「早こと・・・離せと言うたのに!」
茂はあわてて枕紙をひっつかみ、自らの熱情の凝りにまみれたフミエの頬や頤を
ごしごしと拭いた。
「いた・・・そ、そげにこすったら、痛いですが・・・。」
「のんだら、いけん。今は・・・だめだ。」
腹の子を汚してしまうようで、常のようにその口の中に放つことができなかった。
 フミエはゴシゴシこすられて紅くなった頬を手で庇っている。その手をつかみのけて
唇を奪い、めちゃめちゃに貪った。フミエも激しく応えながら、下からぎゅっと抱き
しめてくる。
 月もない夜。今のふたりの暮らしのように先が見えない暗闇の中で、いちどは
失いかけ、やっとの思いで取り戻したぬくもりを、ふたりはいつまでも確かめ
あっていた・・・。

188:奪還 12
12/06/06 10:53:41.57 CELfuUh0
(あれから、半年あまりか・・・。)
あの時と同じようにその腕の中にフミエを抱き、感慨にふけっていた茂は、ふと手の中の
丸みがわずかに変化していることに気づいた。
 赤子を持った今限定なのかもしれないが、フミエの薄い胸もそれなりの量感をたたえ、
乳を与えたあとなので柔らかく、しっとりと茂の手に馴染んでいる。
さわりごこちの良さに、思わず指に力が入った。フミエが身じろぐのがわかる。甘い髪の
匂いに誘われるようにうなじに鼻を寄せて息を吸い込んだ。
「あ・・・あなた・・・あの・・・。」
フミエがもじもじと身をよじり、後ろから抱いている茂の腰から自分の腰を離した。
「こら・・・なして離れる?」
言いながら茂は、自分が極大になった雄根をフミエの腰に押しつけていたことに気づいた。
フミエが妊娠してからは身体を気遣って一度も交合していない。フミエのお腹が大きく
なり始めてからは、口淫もさせなかった。
(相当、たまっとるな・・・。)
ご無沙汰のうえに、フミエを取り戻したという安心感のなせるわざだろう。もちろん、
もっと完全に取り戻したいという欲求もある。                     
 腕の中のフミエも、心なしか熱を帯びたように肌が熱くなり、少し乱れた呼吸を
落ち着かせようと大きな吐息をついた。
「す・・・すみません。私・・・まだ、ちょっこし・・・。」
フミエが、震える声で言った。産後間もない身体で交接することが、産褥婦にとって
とても危険であることは、もちろん茂だって理解している。
「わかっとるよ・・・お産したばっかりだけんな。ここまで我慢したんだけん、あと
 もうちっとぐらい辛抱できーだが。」
フミエはもじもじと向き直り、うるんだ瞳で茂をみつめた。自然に唇がかさなり、
ぎゅっと抱きしめあう。
 ややあって、茂がさも『いいことを教えてやろう。』という感じで言った。
「あのな・・・あんた、ちょっこしだけ、立派になったぞ。」
「え・・・何がですか?」
茂は黙って浴衣の身八ツ口から手を入れ、少し量感を増した乳房を掌でつつんだ。
「まあ、今だけだろうけどな。」
「・・・ぃやだ・・・もぅ!」
ちょっと怒ってにらむ顔に、茂は笑いながらまた口づけた。
「さあ・・・もう寝れ。また藍子に起こされるかもしれんけん、今のうちに寝とけ。」
フミエは微笑んでうなずくと、茂の胸に顔を寄せた。

「ゴーーーーン。」
どこか遠くで、鐘の音がする。新しい年がもうすぐそこまでやって来ていた。
「お・・・除夜の鐘か・・・。」
「ほんと・・・。何もお年とりらしいことできんでも、新しい年は来るんですね・・・。」
「除夜の鐘は、百八の煩悩を払ってくれると言うな・・・。」
フミエが、身体を震わせて笑いをこらえた。今まさに煩悩の塊とも言うべきものを
もてあましている茂の口から『煩悩』と言う言葉を聞こうとは・・・。
「なんだ・・・何がおかしい?・・・・・・ま、ええか。初笑いだ。」
何がツボにはまったのか、腕の中で身体を震わせつづけるフミエがたまらなく
いとおしくて、ギュッと抱きしめながら、なんだか泣きそうになる。
「ええ年になると、ええですねえ・・・。」
ようやく笑いやんだフミエの目にも涙が浮かんでいる。
 年があらたまる時、ひとは新しい年への希望をいだかずにはいられない。新しい
命を迎え、貧しくさむざむしいこの小さな家にも、温かな灯がともったようだった。

189:177
12/06/06 10:55:21.47 CELfuUh0
妊娠を告げられた時の態度には、本放送時も再放送時も『しげるヒドス 』の声多数。
でも、光の速さで迎えに来たのは、フミちゃんに家出されてかなり焦ったんでしょうね。

家出から戻った時と退院した時の2度とも、その夜はフミちゃんを腕の中に取り戻して
茂はさぞかしホッとしたのでは・・・と言うお話ですが、二重構造でわかりにくかったら、
ごめんなさい。

ふたりで見た映画は、ググったら放送当時専スレがあって、
『フミちゃんが大ウケしている場面は、BGMによると主人公側が窮地に陥る場面。』
と言うレスがあって、マニアってすごいと思いました。
でも、DVDだとちゃんと大団円のシーンの効果音になってる・・・補正したのかな?

190:名無しさん@ピンキー
12/06/07 15:41:26.18 bM/8Y1AY
>>177
おお、ナイスタイミング投下乙!GJ!
ご奉仕の後でしげーさんがふみちゃんの顔を力任せに拭くの、萌えましたw
映画デートシーンにそんな裏があったなんて…w

191:名無しさん@ピンキー
12/06/08 09:29:16.52 1bWiEIHE
>>177
GJです!
フミちゃんの身体を思って、我慢する茂さんに萌えました。
勝手にせぇからのバナナまでに至る描写も補完されてて良かった!
あんなに焦って…、フミちゃんの事大好きなんですねw


192:名無しさん@ピンキー
12/06/09 22:21:09.53 2lZz+PwG
集金脱走デートとか青海波を預けるとかクリスマスの朝とか、今週も萌え死ぬと思ったよ…
藍子誕生おめでとう!

>>177
GJ!
我慢するしげぇさんももちろん萌えだけど、我慢できないふみちゃんがエロい!

193:名無しさん@ピンキー
12/06/10 21:15:43.47 yG/miBlr
梅雨入りしたので、ずぶ濡れの綾子さんをタオルでごしごし拭いて身体で暖めるゆうあやを妄想
ずぶ濡れなゲゲさんは来週だっけか

194:名無しさん@ピンキー
12/06/11 19:27:53.43 CZTQEi80
家計簿の方ではふみちゃんがずぶ濡れでした

195:名無しさん@ピンキー
12/06/12 22:39:28.56 7fmijR66
>>194
家計簿、そんなオイシイ出来事があったのか!
ついつい読み逃してしまう…

今日のひなたぼっこは家族萌え的にも夫婦萌え的にも最高だった

196:名無しさん@ピンキー
12/06/13 21:44:07.28 N3L2AJPr
一昨日は帰宅いちゃいちゃ
昨日はひなたぼっこいちゃいちゃ
今日はエアひな祭りで怒涛すぎる

197:名無しさん@ピンキー
12/06/14 00:58:16.66 zIPp2sJE
眠り込んだ布美枝を足元からゆっくり写すカメラワークがエロちっくだった

198:名無しさん@ピンキー
12/06/14 16:26:27.92 oiNFiNtf
>>194
その後コーヒー飲んでシミジミ語り合ったのは本当なのに(原作にあり)
なぜかふみちゃんがおねだり(性的な意味じゃないよw)した話になってて
肩透かしでした。テレ臭いのかな?

199:名無しさん@ピンキー
12/06/14 23:56:44.68 DizxnbMU
会社で「名代ささきのせんべい」と書かれた箱をハケーン!
残念ながら空箱だった…そりゃそうだな、ゴミ箱にあったんだしorz 
けど一瞬でも血が滾った自分はやっぱりゲゲゲ・いちせんにまだどっぷり漬かってるんだと自覚w
ググってみると、東北のほうのせんべい屋さんみたいだた

200:名無しさん@ピンキー
12/06/15 20:29:54.26 tgzMrXMQ
>>199
すごい!同じひらがなで同じせんべい屋なのか!
それは思わず反応してしまうなw

201:名無しさん@ピンキー
12/06/16 18:32:08.18 bPzVyv8R
>>197
あのカメラワークは自分も大好きだw

202:名無しさん@ピンキー
12/06/17 16:36:08.13 o5sHXFAY
ふみちゃんの中の人が某お昼の長寿番組にゲストで出てて
ちょっと天然なドジして顔真っ赤にしてて
ふみちゃんや綾子さんでいろいろ妄想してしまった

203:名無しさん@ピンキー
12/06/19 20:01:59.87 4G3rOlKt
昨日今日と萌え成分低めでおあずけくらってる気分…

204:秘すれば花 1
12/06/20 15:32:46.25 Iy7KiC66
「やれやれ・・・えらい本降りになってきたな・・・。」
梅雨の晴れ間、茂はお気に入りの小さな神社までスケッチに来ていた。ぽつりと落ちて
きた雨は、最初はたいしたことはなかったのに激しくなるばかりで、そろそろ夕暮れ時
というのにいっこうにやむ気配がない。
「おー、いっぱいおるおる・・・。」
座っていた階段から腰をあげ、お堂の下に避難したものの、所在無さにヤツデの葉に
這うカタツムリをみつめて時を過ごしていた。

「ああ良かった・・・おられて。」
聞きなれた声に顔をあげると、そこにはフミエがたたずんでいた。傘の下から微笑んで、
茂に畳んだ傘を差し出す。
(迎えに来てくれたのか・・・。)
茂はちょっと嬉しかったけれど、照れくさくて何も言わずまたヤツデに目を戻した。
「あら・・・でんでん虫。」
フミエはそんな茂に慣れているのか、一緒にうれしそうにカタツムリを眺めた。
「腹へったなぁ。・・・帰るか。」
「はい。・・・あ、あら?」
フミエは茂のために持ってきた傘を差そうとしたが、黒い色も褪せ、骨もまがった傘は
なかなか開こうとしない。
「あ・・・。」
バリッと音がしてやっと開いた傘は、少なくとも三箇所が縦に布が裂け、とても傘の
用を足さないものだった。
「・・・こっちは使い物にならんのだ。」
雨降りに二人で外出したこともないので、もう一本の傘がすっかりダメになっている
ことに、フミエは気づいていなかった。

205:秘すれば花 2
12/06/20 15:33:30.22 Iy7KiC66
「困ったわ・・・。」
途方にくれているフミエが手に持っている傘を、茂がついと手に取った。
「・・・帰るぞ。」
「は・・・はい。」
フミエはあわてて使い物にならない傘をくるくるとまとめると、茂が差す傘に入った。
「ま、待って・・・もうちょっこし、ゆっくり歩いてごしない。」
「お・・・すまんすまん。」
そう言いながらも、すぐまた早足になってしまう茂に、しかたなくフミエはプラプラ
揺れている袖口をつかんで、小走りについていく。

「あ・・・卯の花、咲いとる・・・。」
雨に打たれてしなっている白いつぶつぶの花に、フミエが足を止めた。行き過ぎそうに
なって、茂が歩を止め、傘を差しかける。
「そう言や、おからの炊いたの食いたいな・・・。」
「もぉ・・・食べることばっかり・・・。」
そう言いながら、サンダルばきで出てきてしまったフミエは、足元に目を移した。
「あら・・・夏椿も。」
「ん・・・?どこだ?」
水たまりに、たくさんの白い花が椿と同じように花の形のまま落ちている。フミエは
どこに咲いているのかと上を見上げるが、なかなかみつからない。
「あ・・・あそこ・・・。でも、よう見えませんねえ。」
さまざまな雑木が重なって繁っているなかに、高いところにぽつぽつと白い椿に
似た花が、夢の中のようにけむって見えた。
「シャラの花って、せっかくきれいに咲いとるのに、落ちてみんと咲いとることが
 わからんのですよねえ。」
フミエは地面に落ちている花の中から、まだきれいなものをいくつか拾ってエプロンに
とった。
(落ちてみんと咲いとることがわからん花・・・か。)
普段は花のことなど気にも留めない男だが、雨に濡れた緑一色の中に浮かぶように
咲いている白い花は、明け方の夢のようなさびしさを茂の心にのこした。

206:秘すれば花 3
12/06/20 15:34:13.78 Iy7KiC66
「あの・・・お茶、はいりました。」
夜。仕事をしていると、フスマが開いて浴衣姿のフミエが入ってきた。
「ちょっと蒸し暑いですね・・・窓、開けましょうか?」
茶碗を置いて立ち上がろうとするフミエの手を、茂はつと手をのばしてつかんだ。
「え・・・。」
引っ張られてぐらりと茂の方に傾いた身体を胸で受け止め、首筋に顔を埋める。
湯上りのフミエの匂いと、たちのぼる茶の香り・・・ふたつの異なる香りを鼻腔いっぱいに
吸い込むと、腕の中のフミエがふるっと身体をふるわせた。
「・・・・・・。」
しばらくそのまま香りをたのしんでいた茂は、溶けていいのか固まっていいのか
わからぬというようにすくんでいるフミエに気づいてふっと笑った。
「・・・近所じゅうに聞かせてもええんなら、窓を開けてもええけどな。」
声をあげさせるようなことを、これからあんたにする・・・そう予告されて、フミエの
細い身体がさっと熱を帯びる。はだけた浴衣の襟元を顔で割って、唇を胸肌に
這わせると、肌理のこまかい肌には小さな汗の粒が浮かび始めていた。
「・・・っふ・・・ぁ、あっ・・・。」
脇に手を入れてうながし、膝立ちさせると、目の前にある紅く色づいた実をつよく
吸った。帯を解いて浴衣を剥ぎ、フミエの手を導いて下着を落とさせる。
「・・・んふぅ・・・っあ・・・んん・・・。」
唇を強く吸いあいながら、立てた膝の間を割る。フミエの手をつかんで内腿をつたい
落ちる愛液を自らの手に確かめさせ、指先をつまんでぐっと花蕾を押させた。
「ふぁうっ・・・ん・・・だめっ・・・。」
「手を・・・とったらいけんぞ。」
そう言いおいて、後ろにまわした手で臀をつかみ、いちばん長い指を蜜壷にしずめる。
「んぁぅっ・・・だ、め・・・もぅっ・・・。」
フミエが腰をよじらせてもう片方の手で茂の肩にすがった。荒い息が肩口に当たり、
あふれ出す涙が茂の胸を濡らす。立て膝をしていられないほど感じている女の様子に、
男の中心が痛いほど張りつめた。

207:秘すれば花 4
12/06/20 15:35:04.44 Iy7KiC66
「カチャ・・・カチャ・・・。」
ベルトをはずす音、衣ずれの音・・・やがてフミエは自らの蜜にまみれた手をとられ、
熱く息づく屹立を握らされた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・っは・・・。」
これから迎え入れるものの大きさ、硬さ・・・与えられる狂乱の予感につらぬかれ、
フミエは少し怖じたように腰を引いた。
「んん・・・っふ・・・んむ・・・んぅ・・・。」
口づけながら腰を抱き寄せ、手を添えて定めた目標に、フミエの濡れそぼった秘口を
あてがうように腰を持ち上げさせる。
「・・・っは・・・ぁ・・・はぁ・・・ぃや・・・い、やぁっ・・・。」
切迫した息遣いに、泣きそうな調子が加わり始めた。先端が少しもぐったところで大腿を
つかんだ手がぐっと引き下ろされ、フミエの狭い入り口に漲りきった雄芯がめりこんだ。
「っあ・・・しげ・・・さ・・・ぁ・・・ぁあ―――!」
初めて結ばれてから半年・・・何度受け入れさせたかわからないほどなのに、最初に
挿入れられる時、フミエはいつも少し苦しそうにする。そんなフミエをいたましく思う
気持ちと、欲望のままに突き進みたい気持ちとが相半ばするのもいつものことだった。
「・・・はぁ・・・ぁあ・・・ぅン・・・。」
根元までずっくりと突き入れ、フミエの濡れた貝がぴったりと雄芯を包み込む感触を、
目を閉じて心ゆくまで味わった。あぐらをかいたひざの上に、大きく脚を開いて座る形で
下からつらぬかれているフミエは、茂の肩に顔をうずめて抱きつき、身体を固くして
きつく目を閉じている。
「とって喰われるわけじゃないんだ・・・もうちっと気ぃ楽にしろ。どっちかっつーと、
 あんたの方が喰っとるんだけんな。」
そんな軽口をたたきながら、必要以上に力の入っている指をはがし、顔をあげさせる。
下がり眉になりながら無理して微笑んだ唇に、ふかく口づける。

208:秘すれば花 5
12/06/20 15:35:59.66 Iy7KiC66
「・・・ふぁ・・・ぅ・・・ん・・・。」
緊張していた身体がゆるみ、フミエの舌が甘く応えてきた。羞ずかしそうに茂を
見あげてくる瞳も、とろけそうに甘い。                        
「・・・っん・・・っふ・・・ゃ・・・くすぐっ・・・たいっ・・・!」
茂の大きな手にひざこぞうを撫で回され、フミエが身体を揺らした。
「・・・!・・・ぁあんっ・・・!」
動いた途端に深く感じてしまい、腰を揺らしてまた身悶える・・・快楽の連鎖におちいり、
フミエの腰はわれ知らずみだらな運動に踊った。
「・・・っふ・・・も・・・ぁっ・・・ぁああ―――!」
絶頂につらぬかれるフミエを抱きとめてやると、細い身体は腕の中でゆらりと溶けて
ぐったりとのけぞった。
「・・・っだ・・・め・・・おねがい・・・。」
フミエの脚を肩にかつぐようにしてのしかかり、ぐっと結合を深めなおす。顔の横に
伸びた長い脚がこきざみに震え、その間にあるフミエの顔が涙でぐしゃぐしゃに
なっているのが見える。
「おねがい・・・だめ・・・だめぇっ・・・。」
何がお願いで何が駄目なのか・・・フミエにももうわからないのかもしれない。涙声の
懇願にかまわずさらに深く穿ち、えぐり、奥に叩きつけた。
「・・・ゃっ・・・ぁっ・・・ぁあっ・・・!」
身体の隅々までを侵す快美に、高く掲げられた足の指がなまめかしく折り曲げられる。
やがて解き放たれた二本の脚は茂の脚にからみつき、ゆさゆさと揺さぶりをかける
強腰の動きにみだらに寄り添った。
「・・・っ・・・っぁあ、あ―――!」
耳に注ぎ込まれる啼き声とともに、茂を押しつつむ秘肉もが幻の悲鳴をあげているかの
ようにくるおしく締めつけた。柔らかくきつく、雄をからめ取る花園の中へ思うさま
ぶち撒けると、茂ももろ共に真っ白な陶酔へと堕ちていった。

209:秘すれば花 6
12/06/20 15:36:59.28 Iy7KiC66
 ややあって、茂は身体を起こした。見下ろせば脱がされた浴衣や帯が広がる中に、
フミエの白い身体がぐったりと横たわっている。
(こげな風情を、どっかで見たような・・・?)
茂の脳裡に、水たまりに散らばった白い花の哀しい美しさがふと浮かんだ。
(こいつも・・・こげなとこで咲いとるんで、ええんかな・・・?)
 愛され、満たされることを知って、フミエは娘の頃からは想像もつかないほど
艶冶な表情を見せるようになっていた。人の訪ねてくることもあまりない、この陋屋の
小さな部屋で、愛されるたびつつましい美しさを増していくフミエは、高い木の上に
目立たない清楚な花をつけるあの夏椿に似ていた。             
(俺しか見とらん、こげな寂しい場所で・・・。)
自分だけが知っている、誰にも気づかれぬ場所でひっそりと咲いている花・・・。      
「きれいだ・・・な。」
うす闇の中でぼうと浮かび上がるような白い肌に、思わず口に出ていた。
「・・・?」
フミエがまだ夢うつつのようなまなざしを向けた。茂はあわててつけ加えた。
「・・・花、飾ったんか・・・。」
仕事机の上に、深めの小皿に水を張ってシャラの花がいくつか浮かべてあった。
「ええ・・・。」
フミエが気だるげに起き上がり、ゆっくりとした動作で散らされた浴衣を羽織った。
情交のあとのなまめいた肌にかかる黒髪がぬれぬれとして、精を吐いたばかりの男に
再び息を呑ませるほど艶めかしかった。
「なんだかかわいそうで・・・。せっかく咲いても雨にうたれて散ってしまうなんて。
 他の季節に咲けばええものを。」
雨に落ちたシャラの花を、せめてこうして飾ってやる心根がいじらしい。しどけなく
すそを乱したまま横ずわりに座り、花をみつめるフミエの清艶な美しさが、うす暗い中で
かすかに白い光を放つ花にかさなる。

210:秘すれば花 7
12/06/20 15:37:55.28 Iy7KiC66
「そげかな・・・。」
この花が雨の中咲いていたこと、フミエに拾われて今ここにあること・・・それを
『かわいそう。』と言う言葉でかたづけたくない気持ちが、茂の中に急にわき起こって来た。

「・・・雨の季節に咲く花は、雨の中で咲くようにできとるんだ。だけん、雨の中でも
 あげにきれいに咲ける・・・。」
およそ花などに興味のなさそうな茂が、予想外に熱心に語るのを、フミエは不思議
そうに、でも嬉しそうに聞いていた。
「そげですね・・・。卯の花腐(くた)しの雨と言うけれど・・・ご本人たちは、雨が好き
 なんですよね、きっと・・・。」
花に目を留めたまま、フミエがたった今愉悦をきざまれたばかりの身体をあずけてくる。
茂は背中ごと抱きしめて、幼子をあやすように少し身体を揺すった。浴衣の布いちまいを
通して伝わりあう愛の記憶がふたりを満たした。

 互いのぬくもりを味わいながら、ふたりはしばらく何も言わないでいた。フミエは
身体にまわされた大きな手に自分の手を重ね、幸せそうに瞳を閉じている。
「・・・また降ってきたな・・・。」
重ねた手を弄びながら、耳に囁く。熱い息に身じろぎながら、フミエがつぶやいた。
「でも、誰にも見てもらえんのはやっぱりかわいそうかもしれん・・・雨の中で上を向いて
 歩いとる人はおらんですもん。」
「誰も気づかんからこそ、みつけた人間の心にはつよくのこるんじゃないかな。
 ・・・そげ思わんか?」
ほほえんで半ば身体を返して振り向いてきたフミエの、やわらかい唇をつつみこむ。
次第につよくなる雨の音に閉ざされたこの小さな家で、想いあう二人の小さなしあわせを、
白い花はしずかに見守っていた。

211:名無しさん@ピンキー
12/06/20 21:12:36.82 qPKlpfRJ
素晴らしい…
放送終了して時間が開いてもこんなに良いSSが見られるなんて、
本当にこの作品はみんなに愛されているんだなあ

212:名無しさん@ピンキー
12/06/21 06:39:44.29 rqTLjCTC
>>204
この季節にぴったりな、しっとりして艶かしいSS、GJです!
いつも良質な作品をありがとうございます、職人様。

213:名無しさん@ピンキー
12/06/21 23:36:49.50 a0oDOCu2
黒ずんだバナナを咥えるフミちゃん

214:名無しさん@ピンキー
12/06/22 21:11:06.03 v4ofU0xF
>>204
GJ!
相合い傘に萌え、自慰的な二人の行為に悶えました
得に相合い傘なのにうっかり自分のペースで歩くゲゲさんとそれに小走りについてくふみちゃんがツボでした…

215:名無しさん@ピンキー
12/06/23 23:15:12.85 g6fujO7+
今日はあらゆる方面で神回だった…
自分的に気になるのはあの美尻についてたパーツw

216:名無しさん@ピンキー
12/06/24 00:10:25.32 BIj5gk94
風邪ひいたフミちゃん色っぽい

217:名無しさん@ピンキー
12/06/25 23:38:46.08 DnrmLkjj
境港にはちょっと顔を出せばいいはイカルの性格の強烈さからくるしげーさんの優しさ説が目から鱗ですごいきゅんとした

218:名無しさん@ピンキー
12/06/26 22:58:26.04 j0Ctzp1a
>>215-216
あの色っぽさで尻に触ったんだから、模型の後は間違いなく…だよな!

219:名無しさん@ピンキー
12/06/28 17:56:59.19 V3LeRO2g
本放送のこの頃はやきもきしてた人多かったんだろうなぁ…
自分は見はじめたの遅かったけど、そういう心配をしないで見れて良かったw

220:名無しさん@ピンキー
12/06/29 10:24:30.97 fDQpO/Lf
今日、実家で藍ちゃんに添い寝する姿が無駄に色っぽかった~

221:名無しさん@ピンキー
12/06/30 07:59:56.82 OoPg75jj
フミちゃんて、綺麗な瞳が印象的だけど
あのポッテリした唇が、かなり色っぽい…

本人は全然意識してないところで、ゲゲをムラムラさせてそうw

222:名無しさん@ピンキー
12/07/01 17:49:33.82 7owEaoat
>>221
ゲゲさんは冬に乾燥してるからって理由でちゅーすればいいな!

自分はふみちゃんは脚が好きですw

223:名無しさん@ピンキー
12/07/02 20:21:08.51 gNnsC2KP
ゲゲふみ共に手が好きだ

224:名無しさん@ピンキー
12/07/03 00:40:38.37 i6KoOq8g
うなじペロペロ

225:名無しさん@ピンキー
12/07/04 20:59:29.59 oN9KcMy2
>>221
ゲゲふみだと化粧もあんまりできないけど、
ゆうあやだったらグロスとかつけたらゆうちゃんが大変な事になっちゃうわけですねw

226:名無しさん@ピンキー
12/07/05 00:02:31.57 SFCJ/Lf6
アシスタントの相沢君?の仲人の時だったか
黒い留め袖に髪を結ってお化粧したフミちゃん…
めちゃくちゃ色っぽい~

227:同床異夢 1
12/07/06 10:04:44.58 SH+XQmdz
「お父ちゃん・・・境港から、またお手紙が来とりますよ。」
「また、藍子を見せに来いと矢の催促か・・・。」
フミエが手渡した実家からのハガキをよく読みもせず、茂は机の上に放り投げた。
『藍子の成長はいかがですか?気候も良くなったことだし、一度里帰りして孫の顔を
 見せてください。そちらが来るのが無理ならこちらから行ってもかまいません・・・』

 元々筆マメな絹代だが、藍子がお腹にやどった時からは妊婦の心得、生まれてからは
育児の知恵と、降るようにハガキが来るようになった。
「孫なんぞ兄貴のところにも光男のところにもようけおる。珍しくもないだろうに。」
茂はそんな風に言うが、フミエには義父母の気持ちもわかる。
(しげぇさんのこと、人一倍心配してごしなさるんだわ・・・。)
婚礼の日の夜、酔いつぶれて寝てしまった茂のいない食卓で、義母の絹代は茂が
復員して来た時のハガキを見せてくれた。
『茂を、よろしくたのみますね。あげな息子だけど、仲良くやってごしなさいね。』
姑に深々と頭を下げられて、フミエは恐縮して頭を畳にこすりつけ、絹代はそれを
見てさらに頭を下げ・・・舅の修平に笑われたものだ。
 茂を心配するあまり、絹代が嫁にかけてくる重圧には閉口するが、それだけ情の
深い人なのだと思う。親が子を思う気持ちは、変人ぞろいの茂の両親も、フミエの
実家の両親も同じなのだ。

「俺だって、親に孫の顔くらい見せてやりたいが・・・先立つモノがない。」
本当のことを言うと、フミエだって里帰りしたくてたまらなかった。父の源兵衛には
藍子が出来る前、視察旅行のついでに寄ってくれたので会えたけれど、なつかしい
母や兄弟にはもう三年以上も会っていないのだ。
「それに・・・ヘタにゆっくり話でもして、うちの経済状態がつぶさにわかってみろ。
 とたんに『灯台もりになれ!』が始まるけんな。」
飄々としてひとの思惑など意に介さない風に見える茂だが、こと両親に対してだけは
よく見せようとするところがある。それもこれも、兄弟の中で自分が一番両親に
心配をかけてしまったと言う自覚があるからだろう。『身体髪膚コレヲ父母ニ受ク。
敢ヘテ毀傷セザルハ孝ノ始メナリ』と言う教育を受けてきた世代である。

228:同床異夢 2
12/07/06 10:05:51.41 SH+XQmdz
『灯台もりになれと言われたら困るから、貧乏していることを親に知られては
 ならない。』
結婚以来、茂の口から何度この話を聞かされただろう。境港からの便りに返事を書くのは
フミエの仕事だが、貧窮生活のことは絶対に漏らしてはならないから、当たり障りのない
話題をそのつど搾り出すのに骨が折れることこのうえなかった。
「いつもそう言われますけど、灯台もりってそげに簡単になれるもんなんですか?」
フミエはずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。結婚する前、実在の灯台もりの
妻が書いた手記を元にした映画を見たことがある。
(身体も使う仕事だけど、機械もいっぱい出て来たし、機械オンチのお父ちゃんに
 出来るのかなあ・・・?)
茂の才能と努力を尊敬しているけれど、彼の得意分野は芸術にあり、科学には
ないことくらいフミエにもわかる。茂にベタ惚れのフミエでも、そこらへんの眼は
冷静なのだった。
「・・・わからん。だが、イトツというのは妙に世渡りが上手でな、どこにどういうツテが
あるかわからん。だけん、油断は禁物だ。」
なれるかどうかも何も、なりたくないのだ。
『灯台もりは大変な仕事だぞ。寝たいときに寝ることもできん。』
この世の中、寝たいときに寝ることが出来る仕事の方が少ないのだけれど、茂にとって
睡眠は人生における最重要項目のひとつなのだ。
「とにかく!境港にはいつもどおり適当なことを言ってのらりくらりと逃げておけば
 ええ。くれぐれもよろしくたのんだぞ。」
またしても無事息災のたよりをでっちあげなければならない。出るのはため息ばかりの
フミエだった。

「しげるーーっ!おるか?!邪魔するぞ!」
そんなある日。まだ早朝というのに、茂の兄の雄一が血相を変えて飛び込んできた。
 何度手紙を出してもさっぱり里帰りしてこない茂一家に業を煮やし、境港の義父母が
上京して来るという。茂と雄一は手を取り合わんばかりに嘆きあった。冗談ではなく、
イカルの上京と言うのは、この兄弟にとって会社の倒産よりも恐ろしい災いらしかった。

229:同床異夢 3
12/07/06 10:06:41.58 SH+XQmdz
 どこに泊めるか、誰がもてなすか、芝居くらいは見せなくては・・・突然の襲来の
布告に、兄弟はしぶい顔を寄せ合って頭を抱えた。この義兄も、会社勤めをしている
とはいえ、二人の子を抱えて茂に負けず劣らずいつもピーピーしているのだ。
「二人で出て来られたら、被害は甚大だぞ・・・。」
両親が出て来たら気も遣うし金も使う・・・腕組みして考え込んでいた雄一が、ハタと
ひざをたたいた。
「藍子とフミエさんだけでも、境港に送り込め。・・・ええな!」
雄一はいい厄介払いが出来たとばかりに腰を上げ、さっさと家に帰ってしまった。
あとには、里帰りしようにも旅費の工面などまったくつかない茂とフミエが、困惑顔で
残された。
「お米買うお金にも不自由しとるのに、汽車賃なんて無理だわ・・・。」
またしても米びつの底が見えている。フミエは米に指を入れてのの字を書きながら
ため息をついた。

 数日後。夕暮れ時に帰ってきた茂を、フミエはろうそくの灯りで出迎えた。
「なんだ、また、通電止められたのか?」
「すんません・・・。さっき電気代の集金の人がみえたんです。」
フミエは覚束ない足取りで歩くようになった藍子の手の届かないところにろうそくを
置き、暗い中で夕食の支度をつづけながら話した。
「お米が無うなってしもうて・・・これ以上ツケでは買えんけん、お支払いして帰って
 きたとこで、電気屋さんにバッタリ会ってしもうて・・・。」
「しょうがないな・・・明日一六銀行に行って来るか。」
世間と言う名の荒海をわたるオンボロ船のようなふたりの暮らしは、小さな藍子が
加わった後も相変わらず凪ぐ日の方が少なくて、こんな会話は日常となっていた。

「なあ・・・考えてみるか?灯台もり・・・。」
「ええっ・・・?」
ろうそくの灯りだけで摂る夕食。黒いひじきがますます黒く、うまいまずいどころか
何を食べているのかさえわからなくなりそうな侘しさだった。もそもそと食べていた
茂が、箸を置いて急に意外なことを言い出した。                     
「だ、だって、あなた・・・あげにいやがっておられたのに。」
「だがな・・・このままここで飢え死にすることを考えれば、贅沢は言っとられん。」

230:同床異夢 4
12/07/06 10:07:35.80 SH+XQmdz
(飢え死に・・・。)
フミエはぞっとした。日本はとうに敗戦の痛手から立ち直り、世の中はオリンピック
景気に湧いているというのに、この家では平和な現代にはほとんど聞かれなくなった
この言葉がりっぱに現実感をともなって存在していた。
「・・・俺たちはええ。だが、藍子がかわいそうでな。」
茂の仕事の妨げになるのではと心配していた藍子は、いつも機嫌よくひとりで遊び、
何でも食べ、よく眠る、まったく手のかからない子だった。
『家貧しうして孝子出(い)づ。』とは良く言ったものだ。まだ頑是無い幼子ながら、
(まるで私たちが苦労しとるのを知っとるみたい・・・。)
フミエは嬉しいようなせつないような気持ちで、眠る藍子を見やることもしばしば
だった。
「灯台員ならば、食いっぱぐれることはないだろう。」
「昔、灯台もりの映画がありましたねえ。」
「ああ・・・デコちゃんの出たやつか。俺も見たな。」
茂が主演女優を愛称で呼んだのがちょっと気になり、フミエは目を見張った。
「あら、珍しい・・・あなたが女優さんをアダ名で呼ぶなんて。でも、灯台もり役の
 俳優さんもステキでしたよね・・・。」
「なんだ、あげな長い顔が好きか。」
「あなたこそ・・・本当は、あげな小柄でグラマーな人がええんですね。」
いつも、お前ぐらいがちょうどええ、と言ってくれるのは優しい嘘だったのかしら
・・・フミエはちょっと悲しくなる。
「な、何を言っとる・・・俺は真面目な話をしとるんだぞ。」
生きるか死ぬかの話をしていると言うのに、なんとなくのんきな方向へ話がそれて
いくのはこの夫婦によくあることではあるけれど、『灯台もり』と言う言葉の持つ、
漠然としたロマンチックな響きのせいもあるかもしれなかった。

「そう言えば・・・戦争中でもまったく食べ物には事欠いておらんようでしたね。」
「海のそばで魚には不自由せんし、ましてや今は戦時中ではないけん、給料さえ
 もらえば食うに困ることはないからな。」
「でも・・・漫画はもうええんですか?」
「うむ・・・。」                                     
このひとに漫画をあきらめることなど出来るのだろうか・・・?去年の冬、フミエが風邪を
引いて鼻紙を買うお金さえなかった時、一度だけ『漫画やめて、映画の看板描きにでも
なるか?』と茂が弱音を吐いたことを思い出す。
(あの時のお父ちゃんの寂しそうな顔・・・。)
映画の看板描きならまだしも絵を描く仕事だが、灯台もりは全然お門ちがいではないか。

231:同床異夢 5
12/07/06 10:08:28.17 SH+XQmdz
「ええんだ・・・。非番の日もあるけん、ヒマな時に絵を描けばええ。元々俺は、好きな絵で
 手っ取り早く金になるけん紙芝居や貸本漫画を描くようになったんだからな。」
「あなたがそう言われるんなら、私はどこへでもついて行きますけど・・・。」
「まあもうしばらく食っていく手立てを考えてみて・・・どうにもいけんとなったら、
 イカルに手紙書いてみるか。」
二人はそれぞれ千々に乱れる想いを抱えながらぼそぼそと夕食を終えた。

「おーい、ろうそく持ってきてくれ!」
食後もろうそくの灯で漫画を描いていた茂は、ろうそくが尽きそうになっているのに
気づいて大声でフミエを呼んだ。
「もう、これしかないんです・・・。」
二階で藍子を寝かしつけていたフミエが、燭台を持って仕事部屋のフスマを開けた。
「なして買い置きしておかんのだ・・・。」
不平を言ってはみたけれど、買い置きしてない理由はわかっている。
「しかたない。明日早起きして描くことにして、今夜はもう寝ちまうか・・・。」
最後の灯りが消える前に、ふたりは二階に上がった。

「灯台いうのは、みんな最果てにありますねえ・・・。」
「まあ、灯台が町なかにあっても意味ないからな。」
布団に並んで横たわり、ふたりはまた灯台もりの話をしていた。
「どこへやられるかわからんのは、かなわんなあ・・・。」
映画では、北海道の原野の果てから、九州の離れ小島まで、主人公夫婦は日本中の
辺境をたらいまわしにされていた。過酷な自然と闘いながら灯台を守る暮らしの中で、
台員とその家族たちはさまざまな辛酸を舐める。
 けれど、世間から忘れ去られたような場所だからこそ、そこに暮らす夫婦はみな、
助け合って仲睦まじく暮らしていた。
『世間の人は、私たちがこんな所で苦労をしていることなんか知らないでしょうね。』
『お前の苦労は俺が知っている。俺の苦労はお前が知ってくれているじゃないか。』
病の床に臥し、遠くの町にいる子供のことを思いながら死んでいく妻に、夫がかけた
セリフが印象に残っていた。
(どげな苦労しても、一番近くにいる人がわかってくれたらそれでええんじゃない
 かしら・・・。)
そんなことを考えながら、フミエはいつしか眠りに落ちていった。

232:同床異夢 6
12/07/06 10:09:21.38 SH+XQmdz
(こげなことなら、もっと早ことなっとったらよかったなあ・・・。)
夢の中で、茂は灯台もりになっていた。
 どこか知らないが、温かい南国の海辺の陽光の中で、茂は満ち足りた気分でのびをした。
絶海の孤島に立つ灯台に波しぶきが寄せる風景をキャンバスに描きながら、フミエの作る
夕食を待っているところだ。
(しかし、海と灯台ばっかり描くのにも飽きたなあ・・・。今度本土に帰ったら、
 用紙を買うて、また漫画描いてみるのもええかもしれん。)
趣味で漫画を描こうなどと思えるのも、衣食住ともに足りている余裕からだった。
「お・・・荒れてきたな。」
西の方から黒い雲が湧き出し、ぽつりぽつりと降り出した雨が次第に激しさを増してくる。
茂はあわてて油絵の道具をしまい、官舎へと歩き出した。
(今日の晩メシは何だろうな・・・朝釣った魚かな?)
のんきなことを考えながら官舎の玄関を入って、茂は凍りついた。
「・・・フミエ!おい、どげした?!」
通り土間に、フミエが倒れている。大きなお腹を守るように両手で抱えてぐったりと
横たわる姿に血の気がひいた。
「しっかりせえ・・・産み月はまだ二ヶ月も先でなーか!」
油絵の道具を放り出し、フミエを板の間に担ぎ上げる。
「いた・・・急にお腹が痛うなって・・・。」
風雨が古い官舎の下見板の壁に叩きつけている。無線で助けを呼んだけれど、この嵐
では来てもらえそうにない。
「こうなったら、俺がとりあげてやるけん!」
茂は覚悟を決め、痛みにうめくフミエの腰をさすってやった。ずっとつきっきりで
励まし、陣痛が遠のいた隙に湯を沸かし、出産の準備を整える。
「がんばれよ・・・何も心配せんでええからな。映画でも雪で産婆が間に合わんで、
 ダンナがとりあげとったんだけん。」
 けれど、陣痛は次第に弱まり、いっこうに子供が生まれてくる気配はなかった。
「あなた・・・私、なんだかもうダメなような気がするんです・・・。」
長びくお産に、フミエの体力はもう限界に来ていた。
「何を言うとる?気をしっかり持て!」
手を握ってやったが、痛みの強い時に万力のような力でにぎり返してきたその手には、
もう力がこもっていなかった。

233:同床異夢 7
12/07/06 10:10:22.74 SH+XQmdz
「おい、しっかりしろ!フミエ・・・!」
茂は絶望的な気持ちで、次第に蒼ざめていくフミエの顔をみつめた。
「死んだらいけん!お産で死ぬと産女(うぶめ)という妖怪になるぞ!」
だが、何を言っても、もう冥界のふちに足を踏み入れているようなフミエには届かない。
「・・・藍子は!藍子はどげするんだ?お腹の子は?・・・死ぬな!」
茂は声を嗄らして叫んだ。
「死ぬなーーーーーっ!!」

 とたんに目が覚めた。あまりに現実感を伴う夢に、一瞬今自分がどこにいるかわから
なかった。飛び起きて見回すと、隣りにはフミエ、その向こうには藍子が眠っている。
「夢・・・か。」
大きく安堵のため息をつく。心臓はまだドキドキしていて、いやな汗をかいていた。
 今の大声で起こしてしまったのではと、フミエの寝顔を見る。暗くてよくわからないが、
なんだかうなされているようだった。
「ぃゃ・・・ぅ・・・ぃゃ・・・。」
近づいてよく見ると、フミエは悲しそうに顔をゆがめ、いやいやをするように首を横に
振っている。
(悪い夢でも見とるのか?・・・まさか俺と同じ夢か?)
「おい・・・どげした?おい・・・。」
肩を揺すり、声をかける。フミエがうなされるのをやめ、ゆっくりと目を開けた。
「・・・ぁ・・・あなた・・・タコは?」
「・・・タコぉ?」
意表をつく言葉に、茂はかなりずっこけた。
「どげな夢見とるんだ、お前は・・・。」
あきれている茂の顔を、フミエが下からガッチリと掴んで生存を確かめるように
まじまじと見た。
「な・・・何をそげに見とる?」
「あんまり本当のような夢で・・・あなたがタコに食べられてしまったとばっかり・・・。」
フミエは安心したように、ちゃんと生きている茂の頭を胸に抱きしめた。
「よ、よせ・・・くるしいが。勝手に俺を殺さんでくれ!」
茂は苦しがって、手を放させようとフミエの胸の先端をきゅっとつまんだ。

234:同床異夢 8
12/07/06 10:11:20.51 SH+XQmdz
「ゃ・・・ん。」
甘い声を漏らした唇を奪い、深くむさぼる。口腔内を愛撫しながら乳首をさらに弄ぶと、
鼻にかかった声をあげ、甘く応えてきた。
「・・・目ぇ、覚めたか?」
「・・・はぁ・・・は、はい・・・。」
唇を離すと、フミエはもう少し火が点いた身体を小刻みに震わせながらうなずいた。
「化けダコの夢でも見たか?」
フミエの溶けかけた表情がびくりと締まって、真剣な顔でみつめ返す。
 本人にとっては現実と紛うばかりの恐ろしい夢だったのだろう。茂は笑いをこらえ
ながらフミエの夢の話を聞いた。
「あなたが灯台もりになられて・・・最初はよかったんです。お給料はもらえるし、
 食べるものには事欠かんし・・・。赴任地も暖かい南国の海辺でした・・・。」
俺の夢と同じだ・・・茂は不思議に思い、次第に話に引き込まれていった。

 灯台の灯をまもり、非番の日は絵を描くおだやかな暮らし・・・。茂の釣ってきた魚が
食卓をにぎわし、庭に生えている夏みかんの木にたわわに実がみのる。
「藍子、お手伝いできる?・・・ほぉら。」
フミエがはさみで切り取った夏みかんを渡すと、藍子が真剣な表情で小さな両手に
余る大きな果実を大切そうにかごに入れる。幸せなひととき。ぽつり、と雨のしずくが
小さなほおに落ちた。
「あら、降ってきた・・・大変、シーツ干しっぱなし!藍子、おうちに入ってなさい。」
藍子を官舎の中に入れると、フミエは大急ぎで洗濯物を取り込んだ。大きなシーツを
取り払った向こうに、灯台に迫り来る真っ黒な雨雲が見えた。
 官舎の中では茂がゴム引きの雨合羽を着て出かけようとしている。
「ガイな嵐だ・・・灯を守らんといけん!」
「で、でも・・・大丈夫なんですか?」
「この嵐に灯が見えんだったら船が座礁してしまう。そうしたら俺もクビだ!」
雨が下から降ってくるような暴風雨の中、茂は岬の突端にある灯台に向かった。 

235:同床異夢 9
12/07/06 10:12:33.61 SH+XQmdz
『はははははは・・・。』
フミエは自分の目を疑った。荒れ狂う海の上に、着物姿で背に琵琶の袋を背負い、
杖をついた巨大な座頭が現れたのだ。
「おと、お父ちゃん・・・行っちゃダメ!!」
茂が灯台に向かって走っていく突堤に大波が叩きつける。滝のような雨と波しぶきで、
茂にはこの怪異は見えていないのだろうか。
巨大な座頭はその手を突堤の上の茂に近づけた。どこからともなくべんべんと鳴り出した
琵琶の音が不吉に響いている。
「お父ちゃん!あぶない!!」
座頭の手が一歩及ばないところで、茂は海中から伸びてきた触手に巻き取られて宙に
浮かんだ。
「きゃあああ―――!!」
 嵐の中に走り出て叫び続ける母親の様子のただならなさに恐れて、官舎に取り残された
藍子も泣き叫んでいる。
『あとから来といてなんじゃ・・・その人間はわしのじゃぁ!』
座頭が触手を打とうとして振り下ろした杖に、別の触手が巻きついて引っ張り合いに
なる。座頭は杖を放り出して化け蛸に組みつき、蛸はありったけの触手で座頭を締めつけた。
巨大な怪物二体の組んずほぐれつの格闘に巻き上がる水しぶきは灯台よりも高く、
フミエにはもう何も見えなくなった。
「・・・お父ちゃん?・・・お父ちゃんは?!。」
わずかの間気を失っていたのか、気づけばもう妖怪の姿は無く、波は静かになり、
黒雲さえはるか遠くに去り始めていた。だが、茂の姿はどこにもない。化け蛸に
つかまったまま海底に引きずり込まてしまったのだろう。
 フミエは海に走り込み、何事も無かったかのように青く凪いでいる水面をたたいた。
「・・・いや!・・・いや!・・・いやあああ!!」

236:同床異夢 10
12/07/06 10:13:45.71 SH+XQmdz
そこで茂に揺り起こされたのだ。
「お前、よう海座頭なんぞ知っとるな。」
「・・・海座頭と言うんですか?あれ・・・。」
「俺の本で見たのか?」
「いいえ・・・あなたの本棚にある本は、あなたの漫画しか読んだことありません。
 古い本の妖怪の絵は、おどろおどろしくて怖いんですもの。」
「ふうむ・・・なら、なんで知っとるんだろうな?」
「わかりません・・・昔、おばばに聞いたのかも・・・。」
そう言ったものの、おばばからそんな話を聞いた覚えはなかった。フミエはちょっと
身の毛がよだつような気がして、茂にしがみついた。
「ようわからんが、またおばばがお前を助けてくれたのかも知れんな。いくら貧乏
 しとるからと言って、今更よう知りもせん灯台もりなんぞになってもうまくいかんぞ、
 と教えてくれたのかもしれん。」
腕の中で震えるフミエの細い身体をぎゅっと抱きしめる。抱き返してくるフミエの
唇を舌でなぶりながら浴衣のすそを割り、下着の中に手をしのばせる。
「・・・な・・・なしてそげなるんですか?」
「こわい夢見たと言うけん、慰めてやっとるんじゃないか。」
文句を言いながらも、先ほどの口づけでフミエの花はとうに蜜をたたえていた。
「んは・・・ぁ・・・ゃ・・・。」
蜜にまみれた指をぬるりと前に滑らせる。いたずらな指を核心からずらそうとフミエが
大きく腰をよじった。
「ん・・・?こっちの方がええのか?」
後ろの方にずらされた指を、わざと意地悪く秘裂の中へ挿し入れる。
「ち、ちが・・・ぁあ・・・っや・・・ぁっ・・・だめ―――!」
指をふかめ、他の指を花蕾に押し当てる。特に動かさなくても、責め具を呑みこまされた
腰は勝手に踊り、いとも簡単に達してしまう。
 指を抜き取って弛緩した身体をそっと自分の上に抱き上げる。上になったフミエが、
涙に濡れた目を閉じて唇を重ねてきた。
「んっ・・・ふぅ・・・ん・・・。」
むさぼりあいながら下着を引きおろすと、フミエはもどかしそうにすっかり脱ぎ去った。
手をつかんで硬起した雄芯を握らせ、臀をつかんで引き寄せる。フミエはあえぎながら
握らされたものを自らへと導いた。                             
「見たら、だめ・・・。」
手でつかんで挿入れるさまを見られぬよう、茂の目を片手で覆う。笑ってその手をつかみ
のけ、早くしろと言いたげに腕を引っ張った。
 羞恥と欲望に目のふちを紅く染めながら、自らを責める凶器を迎え入れていくフミエを
見ないでおく手はない。

237:同床異夢 11
12/07/06 10:14:42.18 SH+XQmdz
「は・・・っぁ・・・ん・・・ぁあ――。」
甘くせつなく啼きながらすべてをおさめると、フミエはほぉっとひとつ息をついた。
(熱い・・・な・・・。)
茂を包む肉身も柔肌も、吐息をもらす唇も、全てが熱く息づいている。
(当たり前、か・・・。)
バカな夢を見たものだ、と苦笑しながら、それでも腕の中で刻々と体温を失っていった
身体の感触を思い出して心が冷える。目を閉じて、熱くてきついフミエの内部に自身が
押しつつまれている感覚だけに身をまかせた。

 フミエの手が帯を解いて襟の合わせをくつろげ、素肌に手を滑らせてくる。
「ぁあ・・・しげぇ・・・さん・・・。」
今、自分をつらぬいている器官の力強さを思えば、さっき見た悲劇は悪夢にすぎないと
確信出来そうなものなのに、フミエは裸の胸にほおを押しつけ、体温と鼓動を確かめず
にはいられなかった。
(よかった・・・夢で・・・。)
生命の匂いを嗅ぐようにすうっとふかく息を吸い込み、愛する人のぬくもりを味わう。
「・・・っゃ・・・ぁんっ・・・!」
いつまでたっても動かないフミエに焦れて、茂が下から突き上げた。フミエはびくりと
頭をあげて跳ね起きた。追い討ちをかけるようにいく度か打ち込まれ、走りぬける快感に
身悶える。あえぎながら身体を前に傾け、懸命に茂の上で腰を波打たせ始めた。
「ぁ・・・ぃ・・・っぁ・・・あんっ・・・!」
フミエの動きと絶妙にずらされた突きが下からうねるように加えられる。嵌まりあった
部分が上下するたび導き出されるしたたりが、茂の下腹を濡らした。
「・・・っも・・・だ・・・ぁあ・・・―はぁ―は・・・。」
小さな到達がいくつも訪れながら、全き解放にはいたらず、フミエは広い胸に倒れ込んで
荒い息を吐いた。                              
 ぐんなりと緩んだ身体を抱いたまま、茂が起き上がった。立てた左膝にフミエを
もたせかけると、お互いの脚を交差させ、腰を入れて斜めの結合を深める。
「・・・っ!っ――ぁあ・・・!」
深すぎる繋がりにあえいで、膝にもたれたフミエが身体をよじった。のがさぬように
大腿で押さえこみ、浮かせた腰を何度か突き入れる。


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