12/04/30 07:24:02.03 PuRst49I
はいはい
それはゾンビですよw
514 :風と木の名無しさん:2011/12/13(火) 23:12:38.14 ID:J1sK4cXe
―見てはならないモノを見てしまった。
ぶわっと額に脂汗を滲ませ、その時織戸が考えたのは友の心情についてであった。
この事を知ればきっとあいつは傷付く。傷付くに違いない。世の中には知らない方が良い真実があるのだ。
だから織戸はそうっとノートを閉じ、自分のほんの気まぐれ、悪戯心が発見してしまったその劇薬物を
自分の鞄に仕舞おうとしたのである。
どこぞ人目に付かぬ場所でこのノートは処分してしまうしかない。
織戸にとって掛け値の無しの善意であり、麗しき友情の発露であった。
この世にもし神が仏がいるのであれば、この少年の日頃の不行跡を差し引いてでもこれを称し、
ささやかな加護をもって手助けしても良い場面だったろう。
大盗賊のカンダタにだって蜘蛛の糸は垂らされたのだ。
しかし織戸の前にお釈迦様のヘルプはもたらされなかった。ただ、誰にとっても不幸な結果しかもたらさないのに違いない
また別の善意、正義感が、彼の気遣いを遮ったのであった。
「あーっ!」
教室の隅でなにやらこそこそとしていた織戸。これを見咎め声を上げたのは、クラスでことさら彼に厳しいスタンスをとる
女子の一人だった。
もとより女子の間で評判の悪い彼だ。女子の誰に見咎められようと大差は無かったろうけれど、問題はこれが
周囲の注意を引いてしまったことだった。
「あんた! それ妙子のノートじゃないの!?」
皆と共に振り返らせた顔を険しくさせて、茶髪のクラスメイト、三原かなみが織戸の手元に向かって
指を突き付ける。
彼女の声はよく通るのだ。たちまち、放課後になってまだ教室に残っていた全員が織戸に視線を注ぐ。そして、また
こいつは……と言わんばかりの態度で呆れを表してみせた。
「ち、違うぞっ。これは違うっ。別に変なことを考えたわけじゃなくてだな」
「織戸……」
「違うんだ、相川! あああ、誰のためだと思って! そんな顔で俺を見るなよっ!!」
織戸と共に変態コンビと呼ばれる相川歩や下村こと『アンダーソン君』。彼らも疑うことなく織戸の有罪を信じて悲しげにし、
ため息をつく。
日頃の行いがものを言う。これは、そういう良い例だった。
そうして三原を中心とした女子たちが織戸を吊し上げにする。その傍ら、事の一方の当人、被害者であるはずの平松妙子が
何故か一人、こそこそと教室から逃げだそうとしていたのであった。