お姫様でエロなスレ14at EROPARO
お姫様でエロなスレ14 - 暇つぶし2ch100:名無しさん@ピンキー
12/02/25 18:11:46.29 y0vOGOs9
は11歳の王女の面前で国王夫妻を生き埋めに処し、 王女の二の腕に「罪人」の刺青を入れ、家紋に×印の首輪と手錠を鎖で繋いで晒し者にした後に奴隷とする事を望んでいます。

なんという……

101:名無しさん@ピンキー
12/02/25 18:31:26.40 xqkRWB++
3回やってみたら
奴隷 売春婦 慰み者 がでてきたw

102:名無しさん@ピンキー
12/02/25 22:55:55.09 BSAtR+43
読み応えがあって勉強になるな~素晴らしい!!
続編待っています!!!

103:名無しさん@ピンキー
12/02/26 12:34:27.71 VekI7L5c
>>102
早速続編を作ってみました。文字制限があるので結構難しい。
要望があれば随時反映させて頂きます。

王国を乗っ取って王女を地下牢に監禁してみたー
URLリンク(shindanmaker.com)

104:名無しさん@ピンキー
12/02/26 12:58:17.63 vbxyfvDI
水を差すようだか、続編期待されてるのはSSの方なんじゃ…。

105:名無しさん@ピンキー
12/02/26 14:56:44.08 av3pmZ8l
投下します。

ユゥとメイリン8
注意:非エロ
6レスの予定

「話さなきゃならないこと」が多すぎて、前回「メイリンの頑張ったこと」
まで辿りつきませんでした。今回やっとその話が展開できます。

106:ユゥとメイリン8 1/6
12/02/26 14:58:46.06 av3pmZ8l

……。

……………………………。

「えっ、と、父さん??」
思ってもいなかったことを言われて戸惑う。でもメイリンは、確かに僕の父さんの名前を
口にした。ウォン・フェイと。
混乱する僕に構わず、メイリンは話を進める。
「フェイは、生き残った親族との面会を条件に、すべての罪状を認め、首長権の相続にも同意した。
他の親族には、既に蒲州で面会した。あとはユゥだけ。
だからユゥは、父上に会わねばならない。」
「待って─僕、父さんは、あの戦で死んだとばかり…。」
「敵将を生きて捕らえるのも、戦略のうちだ。たとえ相手が討ち死にするつもりでも。
わたしの父上に、手抜かりはない─。」

けれど、僕の父の生存はいままで機密扱いだったのだと、メイリンは語った。だから、僕の家族の
安否を告げるときも、父さんのことはさりげなくはぐらかしたのだと。
「ユゥの兄弟達は、残念ながら亡くなっていた。長兄は捕らえられて獄中死、次兄は戦いの中で死んだ。
ウォン家の長男は、捕らえられたあと、シン国から与えられる食事を摂ることを虜囚の辱めとして
拒否し、飢えて死んだそうだ。
これは、今回の蒲州行きでやっとわたしにも知らされた。いままでは、二人の安否すら
知らされなかった。」
少しだけ、メイリンが今朝、食事が喉を通らなかった理由がわかった気がする。メイリンは、こんな
話題を胸に抱えたまま、元気に食事が出来る女の子ではないのだ。

「ウォン・フェイは……処刑されるために、生かされた。
父上は仰った。責任を取る者が、必要なのだと。
フェイはそれを理解し、納得した。そして生きた。
彼が罪人として死ぬことで、残った民への処遇は寛大になる。」
それを僕に告げるメイリンも、充分に辛そうだった。けれどまだまだ話は続く。
「フェイの罪状は、強硬派として開戦し、徒(いたずら)に同胞の血を流したこと。度重なる交渉の席で、
我が国の譲歩にもかかわらず強硬な姿勢を崩さず、すべて決裂へと持ち込んだこと。ひいては蒲州の
民の命をも軽んじたこと。
そして最終的に、穏健派であった自らの義兄を手に掛けてまで、開戦に踏み切ったこと。
我が国への協力者ではあったが自らの縁者でもあった者を手に掛けたことが、結局は朝廷側の怒りを
買った。処刑すべしとの意見が大勢を占め、フェイにやり直す機会は与えられなかった。」
「えっ……? 父さんが、誰を手に掛けた……?」
「スウ・カオは、おまえの母、スウ夫人の兄だな。フェイにとっては、義兄にあたる。」
「スウ伯父さんが?! そんな、伯父さんは、毒草に当たって死ん──」
戦の前にもたくさんの人が死んだ。飢えで、飢えに伴う病で、食糧として食べた、慣れない野草で。
誰もが、生きていくのに必死だった。
スウ伯父さんは、胸を掻きむしって事切れているのを発見されたのでは、なかったか。そんな
ことはあの頃はもう珍しくもなく、飢えのために誤って食べてはいけない草を食べたのだろう、
と言われた。
でも、あのときそう言ったのは、父さんではなかっただろうか?

「スウ家は旧家として発言権を持ち、穏健派として我が国と通じていた。わたしもよくその名を
耳にしていたので、殺されたと聞いたときには残念だった。」
「何かの間違いじゃあ……」
「残念ながら、証拠はうちの鼠さんがちゃんと持ち出してきた。
フェイがスウ・カオに差し入れた饅頭の中から、猛毒の草の根が見つかっている。」


107:ユゥとメイリン8 2/6
12/02/26 15:01:23.20 av3pmZ8l

えっ? ねずみが? 持ち出して???
変な顔をした僕に、メイリンは苦笑して説明してくれた。
「ああ、『鼠さん』というのは、我が家では間諜の隠語でな。これに対して『猫さん』は現地での
協力者のことを指す。スウ・カオは長い間、我らに協力する『猫さん』であった。」
「……そっか。」
僕は力なく笑った。あまりに多くのことを聞き過ぎて、何がなんだか分からない。
「何を、どう考えていいのか、分からない……。頭の中が、ぐちゃぐちゃで。」
「何も考えずともよい。」
メイリンはふんわりと笑った。
「ただ、聞いたことを忘れないで。そうすればいつか、心の中に落ちてくる。考えるのは、
それからでよい。
明日にはユゥは、父と対面せねばならぬ。
心をまっさらにして、あちらの側の言い分を聞いてやるべきだ。」
僕も笑い返そうとして、ふと止まる。
「えっ? 明日?!」
「そう明日。おまえの父もわたしも忙しくて、使える日は、あまりなかった。
もうおまえたちには時間が残されていない。フェイは三日ののちに、処刑される。」


その日はその後、どうやって過ごしたのか記憶にない。用事を言いつけられた覚えもないから、
ぼんやりと過ごしてしまったのかもしれない。夜さえも、寝ていたのか起きていたのか曖昧で、
闇の中何度も目を開いたような気もするし、すべてが夢の中だったような気もした。
それでも、父さんと会わなければならないこと、父さんの処刑が迫っていることは結局
夢ではなく、夜は必ず明けてしまうのだった。
どんなに迷っても、苦しくても。


     *      *

次の朝は、早くに起こされた。
メイリンの侍女達と、邸の下男たちに囲まれ、口に詰め込まれるようにして朝食を取らされた。
それからがしがし洗われたり、顔のあちこちに剃刀を当てられたり、髪を引っ張られたり
切られたり、あちこち小突き回されたりしているうちに…なんか、着替えさせられていた。

「おお、なかなかに映えるな。髪も伸ばさせておいて、良かった。結うのには足りたようだ。」
僕の出来上がりを見に来たメイリンも、いつもより華やかに装っていた。
色みは抑えられているが、いつもより上質な生地の襦裙、細やかな仕上がりの裾の刺繍。髪飾りの
ひとつひとつも、しっとりと密やかに品のある輝きを放っていた。
僕の方は…明らかに絹製の、ゆったりとした濃紺の袍。髪はぎゅっと高く引き絞られて、
シン国人がするように結われている。

「あの……、なに、じゃなかった、何でしょうか僕のこの服装は。」
「ふむ、これから行く獄舎の責任者は、法務機関である大理寺の長であり、刑部の中でもきっての
堅物、大理卿どのだ。
ユイウ兄様も刑部ではあるが、兄様とは比べ物にならん厳格ぶりだ。
失礼があってもいかんが、舐められてもいかん。
官僚というのは人をみかけで判断するからな、姿形だけでも、整えておかねば。」
僕の装いを上から下まで丹念に眺めて、メイリンは嬉しそうに目を細める。
「これならば問題ないだろう、よく似合っているよ、ユゥ。」
なんだかよく分からないけど、メイリンに褒められるのは気恥ずかしい。顔が熱くなる。
「…髪が上に引っ張られて、変な顔になってる気がする。」
「そんなことはないよ。大丈夫、すぐに慣れる。……まあ父上様だけは、結い髪がお嫌いで、
すぐにほどいてしまわれるのだが、普通の人間はちゃんと毎日、そうして結っているのだから。」
そういえばメイリンの『父上』だけは髪を結わずに、横でゆるく束ねているだけだった気がする。
他はどこへ行っても、きちんと撫でつけているかどうかの違いはあるけど、シン国の大人は大体、
高い位置に髷を作って結い上げている。
「……なんか、変な感じ。」


108:ユゥとメイリン8 3/6
12/02/26 15:03:24.06 av3pmZ8l
突然高い服を着せられて、髪を油で撫でつけられて、居心地の悪い思いをしたけれど、面会場所
まで行くのに馬車の中に招き入れられて、吃驚した。
「あの、僕とかは、馬車の後を歩いて付いていくものじゃないの。」
「ふふ、馬鹿を申すな。そんな正装で馬車の後を徒歩で歩かせたら、汚れてしまうし、悪目立ち
してしまうであろ。」
揺れる馬車の中で、メイリンはそう言って鈴のような声でころころと笑う。
薄い簾の向こうに馬と人がいるのは分かっているけど、狭い馬車の座席でメイリンと二人っきりで、
膝を突き合わせるのは、ひどく場違いみたいで緊張する。
「ユゥ、これからいく場所では、とにかく堂々としていること。きょろきょろしてはならぬ。
こんなところは、見慣れすぎて飽きた、というくらいの態度で居るのだ。」
「どういう態度か、想像もつかないよ!!」
メイリンは時々無茶を言う。どんな場所かも全く分からないのに、どうやって見慣れたような態度を
取れというのだろう。
「では、わたしを見て、わたしに倣えばよい。」
メイリンは、落ち着き払い、背筋をぴんと伸ばして言った。確かに、メイリンはいつも堂々としている。
「……いきなり言われても、自信ないよ……」
僕は少し目を伏せた。どうすればメイリンくらい堂々としていられるのか、考えたこともないし、
そんな風にしようと思ったこともない。
「心配ない、そうしていても、それなりに貴公子然として見えるよ。」
メイリンに褒められて、益々身の置き所がなくなる。きっと僕の緊張をほぐそうとしてお世辞を言って
くれてるのだと思うが、むしろ逆効果だ。

「それから今日は、他にもユゥの親族が来るぞ。ウォン・カイだ、おまえの叔父の。」
「……カイ叔父さん?」
「そう、カイが新たな首長として、フェイの後を継いだ。いまは、手続きのために王都に来ている。」
カイ叔父さんは、父さんの弟だ。父さんの後を継ぐのは、シン国の用意した全く別の人かと
思ったけれど、なんだ、割と普通にカイ叔父さんが継ぐのか。
「カイは、フェイによる義兄殺害の一件を知って、フェイと同じ強硬派から、穏健派へと鞍替えした。
カイの鞍替えにより、桂花の民に対する戦後処理が一気に進んだ。
あとは……、落ち着き先も、良いように決まれば良いのだが。」
メイリンは覗き窓を開けて外を見た。間もなく目的地に着くらしい。
「そう、それから、今日のユゥは、わたしの従者ではなく、桂花の民の首長の親族だ。そのように、
堂々と振舞え。わたしのことは、メイリンと呼ぶこと。これは、『命令』。」
メイリンがこんなにはっきりと迷わずに、僕に命令するのは滅多にないことで、僕は更に緊張する。


目的地の建物は、壮大で堅牢な、シン国の国力を誇示するかのような建物だった。
僕が王都に来たばかりの頃なら、この大きさにさぞ吃驚しただろうと思う。でも、この盛陽に来て
四月(よつき)あまり、それなりにこの都市の大きさ、壮麗さにも慣れてきたところなので、メイリンの
言った通りに平静さを保つことができた。というか、メイリンがあまりに自然に堂々と振舞うので、
僕はその陰に隠れているだけで済んだ。
そして通されたのは、落ち着いた調度品の並ぶ、明らかに接客用の部屋。
そしてそこには、カイ叔父さんが座っていた。

「叔父さん…!」
カイ叔父さんは、シン国中枢機関の張りつめた空気の中で、そこだけ桂花山の空気を纏っているように、
僕たちの民族の、見慣れた服でそこにいた。叔父さんはこの王都に来てから、初めて会う同郷の民だ。
けれどカイ叔父さんは、僕に応えるより先に、メイリンに対して膝を突き、胸の前で拱手して、
シン国式の臣下の礼を取った。
「南山[ナンシャン]郡主様……!!」
皇帝の娘は公主と呼ばれるが、メイリンの父上の爵号は国王であるので、メイリンは成人すれば郡主と
呼ばれるお姫様である。そう聞いたことはあったが、まだ邸ではメイリンを『郡主様』と呼ぶ人たちは
いなかった。
「まだ決まってもおらぬのに。そのような物言いは控えよ。」
臣下の礼を取る叔父さんと、それを当然のように受けるメイリン。メイリンが身分の高いお姫様だと
いうことは知っていても、二人がどういう知り合いなのか分からない。
「いえ、今朝方、決定が下りました。貴女が正式に南山郡主様です。
報告を受け取っておられないのなら、おそらく行き違いになったのでしょう。」
「……そうか、決まったか。それはめでたい。」
メイリンは悠然と頷いた。

109:ユゥとメイリン8 4/6
12/02/26 15:05:24.98 av3pmZ8l

「どういうこと?! 叔父さん、メイリンを知ってるの?! 決まったって、何のこと?!」
僕の良く知っているはずの二人が、僕の前で、僕の知らない話をしている。それだけで、なんだか
凄く不安になる。
「ユゥ、久しぶりだ。立派になった。見違えたよ。」
叔父さんは穏やかに言った。
「我々は敗けた。それは知っているだろう。
だがシン国は寛大にも、我らを臣民として、迎え入れてくださる。
私は名目上、兄さんの跡を継いだけれど、既に首長という役目は形式だけのものだ。
ここに居られるチェン・メイリン様がこれから、我々の新しい領主様になる。」

「メイリンが……!! 領主様?! 僕たちの?!」
僕は驚いた。それはそれは驚いた。
だってシン国の領主というのは、偉そうでふんぞり返ってて、領民から搾り取ることしか考えていない
ようなおじさんがなるものだと思っていた。メイリンとは、似ても似つかない。
「いつから……!! どうして、僕に、教えてくれなかったの……!!」
そしてそんな重大なことを、叔父さんは知っていて、僕は知らなかった。ひどく疎外されたような、
悲しくて、苦しい気持ちになって、混乱する。

「ユゥ、落ち着いて。
決まってもいないことを、そう簡単に、吹聴できるはずがなかろう? 決まらなかったら…その、
恥ずかしいではないか。大体ユゥは昨日は途中から呆けてしまって、あまり話は出来なかったし。
わたしもこの話を聞いたのは、父上に呼び出されてからだ。
諾、と答えた途端にあちこち引き回されたり、計画を立てるために幾晩も徹夜を強いられたり。
父上の怖ろしさの一端を、垣間見てしまったよ。」
メイリンは僕を宥めるように優しくそう話す。そうだ、メイリンが帰って来たのは、ほんの一昨日だ。
一昨日会って、許されたばかりだというのに、僕はなんて欲張りなんだろう。メイリンのことを、
何もかも知っていたいだなんて。
「あ……、ごめんなさい…。ただメイリンが昨日の朝、『よい報せから』なんて言ったから、それほど
よい報せがあるなら、先に教えて欲しかったというか。
決まっても決まらなくても、とびきりのよい報せだと思うし。」

「ユゥは、わたしが領主になること、よいことだと思う?」
「思う! 思うよ!!! メイリン以上にいい領主様なんて、到底思いつかない!!!」
メイリンの父上はシン国朝廷の中でも抜群に桂花の民に詳しいのだと、メイリンは言った。
それなら、その娘のメイリンだって、他のどんな偉い人達より遥かに僕たちの事情に詳しいと思う。
実際にいろんなことを深く知っているし、僕たちのことを馬鹿にしたこともない。それに頭だっていいし、
一度言ったことはやり遂げる誠実さだって持っている。

「……よかった。」
メイリンはそれまでの堂々とした、凛々しい表情をふっと緩めて、ほんわりと頬を染めた。
なにこの可愛さ。どうしてこんな場面で壊滅的に可愛くなるんだろう。メイリンの可愛さは、
いつだって暴力的だ。
僕はなすすべもなく、その表情に見蕩れた。

「仲が良いのは宜しいですが、私の存在を、忘れちゃいませんかねえ……?」
カイ叔父さんが、横からそろそろと口を挟む。
「わ、忘れてませんよ?! 叔父さんのことは、一瞬たりとも忘れてません!!」
他人の存在が無ければ、この手がどんな不埒なことをしでかしていたか分からない。何しろこの手に、
もう手枷は嵌っていないのだから。
「わたしも、忘れておらぬよ、カイ。」
メイリンはさっと先程の取り澄ました顔に戻って応えた。本当にメイリンは、落ち着いてる。


110:ユゥとメイリン8 5/6
12/02/26 15:07:53.86 av3pmZ8l

「姫様は我々の人数だけでなく、家族構成や持病の有無などもきめ細やかに調べられて、新領地である
南山地方の測量も指揮され、詳細な計画書をお書きになった。それがシン国の朝廷にも、陛下にも
認められたのでしょう。」
カイ叔父さんがそう褒めると、メイリンはどんよりと暗い表情になり、溜息をついた。
「ああ……あれは悪夢のような、忙しさだった……。
兄上様たちも必要な数字を出すところまでは手伝ってくださるのだが、重要な決断はわたしが
すべきだと……。そしてひたすら駄目出しをなさるのだ。何度、直しの朱墨で真っ赤になった書類を
突き返されたことか……。
いざというときの兄上様たちの厳しさは、ユゥも知っておるであろ? わたしはもう、心身共に、
満身創痍であるよ…。」

「もしかして、それがメイリンの『頑張ったこと』?」
「頑張った…ふむ、今回の頑張りは、盛陽学院の入試の何倍も頑張ったな…。
わたしにも多少は、体力と経験が身についていたということか。
しかし何と言ってもまだまだ若輩者。それが故に、わざわざ領地経営の計画などを奏上書として
したためねばならなかったのだ。」
「でも、それが認められたんでしょ?」
僕の言葉に、メイリンは顔を曇らせた。
「それはどうだか…。父上は、計画書の仕上がり具合を、『三割だ』と仰った。
それでも通ったということは、もう時間が無いと判断されたのであろう。
南山地方は名前はよいが、実際は山の南にあるだけの、広大な湿地と草原だ。これから入植し、
開墾する作業が待っている。
雪融けの時期は早いし、春の種蒔きの時期までにそこそこの準備を整えるには、いつまでも計画書を
こねくり回している時期でもないということかも知れぬ。
ならばカイ、すぐに移動の準備を始めなければ。スウ夫人に手紙を書いて、皆に支度するようにと。」
「え、か、母さん?」
スウ夫人は、僕の母の名だ。僕の身内の名が、また突然出てきて吃驚する。
「そう、カイを王都に呼ぶ間、留守を任せている。頼りになるよ、前首長夫人は。
そして……ユゥ。」
メイリンの大きな瞳がぴたりと僕を見据えた。自然と背筋が伸びるような、強い眼差しで。
「はいっ!」
「わたしが南山に赴任したら、ユゥには、わたしの補佐をしてもらいたい。
桂花の民とシン国の間に共通の知識基盤がなかったこと、その結果どうなったかは、もう話したな?
双方の習俗、考え方を深く知り、仲立ちをする人材が、是非とも必要なのだ。
桂花の民は既に、シン国の臣民となった。これからは互いに、折り合ってゆかねばならぬ。
わたしの意志を皆に伝え、皆の願いをわたしに伝える。
そういう役を、ユゥにやって欲しい。できる? ユゥ。」

メイリンの傍で─
なにか、メイリンと一緒に居られる理由を与えられること。それが、僕の願いだった。
一方で故郷への想いも経ち難くあって。
迷って、引き裂かれそうだった。

なのに、メイリンはすごい。いつだって、僕の想像を軽々と越える。
こんなにすごくて、素晴らしい女の子が他に居るだろうか?
でも僕は欲張りだから、更なる願いを口にする。

「……ずっと傍に、いてもいい?」
そうするとメイリンはにっこりと魅力的に笑って、頷いてくれる。
「うん、いてくれないと困る。」

幸せだ。
幸せすぎて、死んでしまいそうなくらい。


111:ユゥとメイリン8 6/6
12/02/26 15:09:54.44 av3pmZ8l

「あの…、僕は、結局役に立たなかったのかと、思ってた…。
戦が起きた理由を、いつか答えてくれと言われたのに、いつの間にかメイリンは僕よりずっと深く、
ずっと広く、何もかも把握してるし。
僕が居た意味も、宙に浮いたまま、消えてしまったのかと思った。」
メイリンは大きな瞳をくるりとさせて、また笑う。
「ユゥが居た意味がないなんて、そんなこと、あるはずないよ。
ユゥはもうわたしに、いろんなことを、教えてくれたでしょう?
故郷と故郷の皆を、大事に想っていること。いつだって家族の身を、案じていること。
ユゥたちが多くを望まず、故郷の山と共に生きてきたこと。
そして森の匂い。ユゥたちの信じる、目に見えない山の神々の息遣い。そういうものを崇めて、
大切にしていること。
以前から父上はわたしに、『貴族の妻になるのが嫌なら、地方領主にしてあげる。』と仰っていた。
でも具体的に、今回の話が持ち上がったのは、急なこと。
成人すればいつかは王都を離れて、遠い土地を治めるものと思っていたけれど、こんなに急に、
若いわたしに持ちかけられた話を受けようと思ったのは、ユゥの一族のこと、誰かがちゃんと
引き受けるべきだと思ったから。」

メイリンは、自分にお鉢が廻った来たのは、朝廷側の事情もあるのだと言う。
借金を抱えた、言葉も禄に通じない異民族を、分散させていろんな土地に割り振るには、
費用と手間がかかる。
その点、今回の戦の最大の功臣の娘であり、皇族であるメイリンが領主となるなら、色々と面目も、
言い訳も立つ。
メイリンの父上が功績の報賞として新たな領地を賜り、それを譲り受けた娘が地方領主になる。
皇族を領主に据えることで、準直轄領としての体裁が整い、征服した民族を移住させる先としても
体面が保てる。

「わたしが女であり、若輩者であるがゆえに、朝議でも散々に紛糾したらしいが…結局はよい代案が、
出なかったのであろうな。」
僕はあまりのことに、もう声も出なかった。
こんなに凄くてかっこいい女の子を相手に、惚れずに居られるだろうか。
無理です。絶対無理。
だから僕は間違ってないし、他にどうしようもない。
もう僕の一生を、君に捧げる。ずっと傍に居る。
誰が、なんと言っても。


メイリンの目がはっと見開かれ、何か別のものを捉えた。
「大理卿どの」
僕は振り返って一瞬、彫像が立っているのかと思った。それほどに、踵から脳天まで鉄の芯が
通っているかのような真っ直ぐな立ち姿。鷹を思わせる鋭い眼光と、いかめしく刻まれた皺。
真一文字に引き結ばれた口。
どうやら、彼がメイリンの言っていた大理卿らしい。たとえ厳格な人物だと前もって聞かされて
いなかったとしても、この人物がとてつもなく厳格であるということは、疑いようもなかった。





     ─続く─

112:名無しさん@ピンキー
12/02/26 15:12:49.00 av3pmZ8l
以上です。

今回はあと一話続けて投下の予定ですが、まだ仕上がっていないので、多分、一週間後くらいに
また来ます。

113:名無しさん@ピンキー
12/02/27 00:36:11.43 lxL10KN9
続ききてたー!
全裸でお待ち申し上げます。

114:プラゴミ@就活中
12/02/27 12:45:24.02 JEfwTKIs
URLリンク(www.nicovideo.jp)

俺の作った動画です
評価よろ

115:名無しさん@ピンキー
12/02/27 21:01:11.96 tf/bmo63
いつも続き楽しみにしてます。

116:名無しさん@ピンキー
12/02/28 21:28:24.15 m3RHYy2l
そうかジントだ

117:名無しさん@ピンキー
12/02/29 11:59:46.43 CProsRdx
>>116
メイリンと呼ぶがよい

118:名無しさん@ピンキー
12/03/04 19:57:05.46 L9qpMpmg
投下します。

ユゥとメイリン9

注意:非エロ
設定説明回は今回で終了。
8レスの予定。

119:ユゥとメイリン9 1/8
12/03/04 19:59:27.92 L9qpMpmg

「お待たせしましたかな、チェンの姫君」
大理卿は深く地に響くような声でそう言った。
「いや、大理卿殿を万が一にもお待たせしては失礼に当たると思い、早めに来て待ち合わせて
おったのです。話をしながらゆるりと待たせていただきました。」
メイリンの方も背筋を正して、完璧に作りこまれた笑顔を浮かべて応える。
手の中にはいつの間にか書状が用意してあって、メイリンはそれをくるりと広げた。
「本日の面会のことは、既にお聞き及びのことと存じますが、これがその許可証です。」
「聞いている。こちらが最後の面会人─囚人の、御子息か。なるほど、面影がある。」
鋭い視線を向けられて、僕は小動物のように竦みあがってしまう。平然としているメイリンが
不思議なくらいだ。

「─では、ついて来られよ。」
大理卿は僕にだけそう声を掛けると、真っ直ぐの姿勢のまま踵を軸にくるりと向きを変えた。
「えっ? 僕だけ? メイリンとカイ叔父さんは?」
このおじさんと僕だけとか、突然言わないで欲しい。
「わたしたちはおまえの付き添いだ。面会はおまえだけ。後で迎えに行くから、しっかり─
その、別れを惜しんでくるといい。」
メイリンは最後のほう、少し言いにくそうに言葉を濁した。カイ叔父さんは無言で僕を見送った。
僕は戸惑いながら、後姿までいかめしい大理卿について、長く暗い廊下を歩いた。

暫くして、木の扉がいくつも並ぶ建物に入り、そのうちの扉の一つで足を止める。
扉には閂がかかり、錠がつき、開閉できる小窓がついていた。
そばに居た衛兵が大理卿から鍵を受け取り、錠を開けて閂を外す。
「ウォン・フェイ。貴殿の待っていた、面会人だ。」
衛兵が扉を開くのと同時に、大理卿は声を掛けた。
扉が開いて、僕ははっと息を飲む。

あまりに何もない房室、まっすぐな壁、まっすぐな天井。粗末で小さな寝台に、小さな
卓と椅子。卓の上には、わずかな書物。そして、父さんがいた。
白髪ばかりになった髪、血色がくすんで皺の増えた顔、丸まった背中、細く痩せた手足。
ほんの数ヶ月でひとまわり以上小さくなったように見える父の姿に、しばし絶句する。

「では、わたしはこれで。面会時間は半刻。終わりはまたお知らせする。」
高官である大理卿が立ち会うのはここまでのようだ。
僕は茫然としたまま、扉が閉まる音と、規則的な足音が遠ざかるのを聞いていた。

「しばらく見ないうちに、大きくなったな、ユゥ。」
久しぶりの再会で泣くなんてみっともないと思いながらも、僕はこみ上げる涙を止める
ことが出来なかった。
父さんはもっと強く、生命力に溢れた人ではなかっただろうか?
もっと近寄り難く、猛々しい人ではなかっただろうか?
こんなに弱々しく、ぼくに微笑みかける人ではなかったはずなのに。

父さんを見て、僕がどれだけあの邸で恵まれていたのかが分かる。
あの邸に来てから、飢えたことなど、なかった。むしろどんどん体を動かして腹を減らし、
たくさん食べるように強要されたほどだ。飢饉の故郷ではとても贅沢だったその行為。
そうすることで、強い体を造っておくようにと。
書物も学問も経験も、潤沢に与えられた。メイリンの語る言葉を理解できるように。
メイリンの兄上達は言葉はきつかったけれど、結局のところ、本当に酷いことはされなかった。
邸の使用人の皆も、ひとり遠くからやってきた僕のことを、何かと気遣ってくれた。習慣の違い、
言葉の違い、食べ物の違い。あらゆる違いに戸惑う僕を、彼らは受け入れて、温かく接して
くれたのではなかっただろうか。

120:ユゥとメイリン9 2/8
12/03/04 20:01:42.77 L9qpMpmg

「…大きくなった。背も伸びたかな。」
父さんはもう一度そう言って、僕の肩を叩いた。その手のひらの軽さと弱々しさも、ひどく切ない。
「あ、あのね、父さん。」
僕は沈黙に耐えきれなくなってようやく口を開いた。
「僕たちの領主様が決まったの、聞いた? 生き残った皆、まとめて面倒見てくれるって。」
「聞いたとも。やはりあの姫君に決まったのだな。」
「…メイリンを知ってるの?」
「蒲州で労役中の皆に会いに行くとき、あの姫君に同行させて戴いたのだよ。
なかなか肝の据わった娘だ。あの若さで領主になって、周りの大人にいいように翻弄されなければ
よいが……。」
父さんまでメイリンを知っていて、しかも褒めてくれるので、僕は悲しい気分も忘れ、なんだか
嬉しくなってしまう。

「大丈夫だよ。メイリンの父上っていうのが、シン国のすっごく偉い人なんだ。あっ、そういえば
母上の方もすっごく偉い人だった……。だから、きっとメイリンをまわりから守ってくれる…!
それにメイリン自身も、すっごく頭がいいし、頑張りやさんだし、言ったことは守るし、
邸の皆からもとても好かれてるんだ。
僕のことも、桂花の民だからって一度も馬鹿にしたことはないし、本当にいろんなことを知ってる。
若くたって、メイリンはいい領主様になるよ!」
父さんは目を細めて言った。
「おまえは、あの姫君に、惚れておるのか。」

「はああっ?!」
完全に、不意打ちである。かっと顔が火照るのが分かる。
「どうしてそんな話になるの?! いまそんな話、してなかったよね?!
父さんって、そんな話、する人だったっけ?! 本当に本物??!!!」
落ち着け、落ち着け僕。
僕がメイリンを好きでも、何の問題もない。メイリンは僕たち一族のために色んなことをして
くれたし、これから僕たちの、領主様になるんだし、何よりメイリンは、……メイリンなんだもの。
「はは、ははははっ!!!」
気がつくと、父さんは思い切り破顔して笑っていた。
「おまえは、相変わらず、嘘が吐けない…」
随分と痩せて生気のない顔だったけれど、笑うと以前に戻ったような気になる。
父さんがいて。兄さん達もいて。母さんと、ユイと、僕がいて。
飢えていても、窮乏しても、何とかそうやって暮らしていけると思っていた。
でも、そんな未来図は永遠に失われた。
兄さん達は既に居ない。父さんも、間もなく死ぬ。

「どうして……。」
もうほとんど時間は残されていないのに、こんな話をするのは嫌だった。でも、いま聞かなければ、
もう二度と聞くことは出来ない。
「…沢山の人が死んでしまうような戦を、しなければならなかったんだろう…。
兄さん達も死んで、伯父さんも、父さんも死んで、敵も味方も、沢山の人が死んで……。どうして
そんな戦を、してしまったの?
シン国は、ぼくたちに死ねと言ったわけでは、なかったんでしょう? ただ山を下りろと言った
だけだった。」


121:ユゥとメイリン9 3/8
12/03/04 20:03:43.63 L9qpMpmg

父さんは、静かに言った。
「私が、すべて悪かったのだよ。」
すべてを諦めたような、静かな目をして。
「そうじゃない、僕が聞きたいのは、そんなことじゃなくて…!」
メイリンはなんと言ったっけ。心をまっさらにして……。
「…父さんの言い分を、聞かせてよ。」
僕はまっすぐに父さんを見た。
「父さんには、父さんなりの、正しさがあったはずなんだ。
それが分からないと、僕はこの先ずっと、大悪人の息子なのかと、迷わなきゃいけない!」
父さんは、罪を背負って死ぬ。父さん自身は既に納得しているのだろう。
でも、僕たちはこの先も生きる。僕もユイも母さんも、それから父さんを首長としてきた皆も。
生きるためには、物語が必要だ。戦勝国であるシン国に、断罪するための悪人が必要なのと同じように。

「……甘い言葉は、刃よりも恐ろしい。」
父さんは、かすれた声で語った。
「前朝スイの頃から、この中華の国は、異民族に対して寛容な政策を取ってきたことは儂等も
知っている。そして山奥の、辺境の、様々な『クニ』が、独立を棄て、高い文化と高い技術力を
求めて巨大な国に帰順した。」
前朝のスイ国も、いまのシン国も、異民族を受け入れ、文化も技術も惜しみなく与えてきたのだ
という。
けれど、大帝国と国交を持った小さな『クニ』のほとんどは、次々と国力を失い、国としての体裁を
失っていったのだと。土地は荒れ、若く力のあるものから去り、かつてそこに、独自の歴史と文化を
持った『クニ』が存在したという記録すら残せぬままに、多くの辺境の『クニ』が大国に吸収されて
消えていった。

「富は、低きより高きに流れる。」
かの国と交流を持った『クニ』は、大国の大きさと文化の高さに圧倒され、触発されて、それまでより
多くを望むようになってしまう。よく効く薬を、便利な道具を、或いは美しい宝飾品を、なめらかな絹を、
あるいは華やかな衣服を。
人は誰しも愚かで、何もなければそれなりに暮らすことが出来ても、一旦豊かさを知ってしまえば、
欲は際限なく湧いてくる。
シン国の文化も技術も豊かさも、桂花山のそれより圧倒的に高い。悲しいほどに。もしも門戸を開いて
しまえば、僅かな富も人も、急速に流れ出してしまうだろう─それが、父さんたちの考えだった。

「シン国と交流を持たないという取り決めは、長いあいだ、ウォン家を含む五大家の総意であった。」
父さんの言葉で、僕は首長という立場がけして絶対的なものではないことにふと思い至る。一握りの
人間が決めていたのだとしても、たった一人が決めていたのではない。そして父さんだって協議の
結果に従ったのだ。

「なのに、その中でひとり、義兄さんだけが……独断で、シン国に通じた。義兄さんはそのときの
五大家の中でも年長で、儂もまた、教えを請う立場だったのに。」
父さんはそこで、少し沈黙した。
「多分……少し分かる、と思う。そのときの父さんの気持ちは。
怒りで自分を見失うときだってある。それが正しいことじゃないと分かっていたとしても。」
真っ黒で正しくない感情が噴き出して、どうにもならなくなることもあると、僕はもう知っている。
常に自分を律していても、むしろそれだからこそ、どろどろとした暗い気持ちが少しずつ
溜まってしまうことも。


122:ユゥとメイリン9 4/8
12/03/04 20:05:44.73 L9qpMpmg

「でも、父さんは伯父さんと、仲が良かった。」
「そうだな……、だからこそ、よりにもよって義兄さんが儂等を騙し、裏切って敵国と通じているなどと、
信じたくはなかった。だから…。」
「本当に、シン国のいう通り、父さんがやったの。」
僕はまだ信じたくはなかった。父さんが身内を殺したなんて、全部嘘ならいいのにと思った。むしろ
戦が起こったことも、僕たちが敗けたことも、父さんが死ぬことも全部嘘だったらいいのに。
「義兄さんを除いた協議の上ではあったが、毒を盛ったのは儂だ。あのころはもう、皆が正気を
失っていた。
しかし、見届けるほど肝が据わっていたわけでもなかったな…怖かったのだ。義兄さんの死に顔は、
儂を非難し、罵倒しているようだった。」
僕はほとんど見せてもらえなかったけど、伯父さんの苦悶を浮かべた死に顔は、一瞬見ただけでも
印象に残っている。僕はそのとき、毒草と間違うような草でさえ口にしなければならない僕らの
現状─このどうしようもない窮状、飢えを憎んでいるのだと思ったけれど。

「父さん、伯父さんはきっともう怒ってないよ。
僕たちは結局、山を下りることになったし、シン国に受け入れられて、生きてゆく…伯父さんの
言ったとおりに、なったんだもの。」
大した根拠もなかったけれど、気休めにしか過ぎなかったけれど、僕はそう言った。
「ずっと、考えていた…あのとき、義兄さんの忠告を聞いておけば、儂は息子達を失わずに
済んだのかと。
儂等は、門戸を開いて大国に吸収され、取るに足らない蛮族として消え去るよりも、闘って、
我等の民がここにいた証を歴史に刻むことを望んだ。
しかし、結果はどうだ。人が死んだ、敵も味方も。それだけだ。
儂等が下した決断も、儂等が愚かであったことの証明にしかならなかったのだろうか。」
父さんの、以前よりも落ち窪んだ目が、僅かに涙で濡れていた。
「僕は…シン国で、歴史を学んだよ。」
僕はなにか─父さんに何か言ってあげたくて、必死に言葉を探す。
「中華の国には、そりゃあ長い歴史があるんだ。
そして、あんなに凄い学問があって、あんなに賢い人たちが沢山いるのに、あの国は賢い選択だけを
しているわけじゃない。どうみてもおかしなことをして、国全体が上手く行かなくなって、何度も
国が斃れたり、興ったりを繰り返しているんだ。
スウフォン様は─あ、僕に歴史を教えてくれた人だけど─こう言ったよ。
『間違わないことが重要なんじゃない、間違いから学び続けることが重要なんだ』
って。だから…」
僕はそこで言葉に詰まった。何を言っても、父さんにやり直しが許されているわけではない。

「あの姫君が、おまえのことを、褒めていたよ。戦のときのおまえは、よい働きをしたと。
おまえのおかげで、多くの民が、臣民として受け入れられたのだと 。」
僕はまた泣きそうになった。死んでも屈することなかれ、という言葉に従わず、一度は裏切り者と
呼ばれたはずの僕がそんな風に言われるのが、いいことか悪いことかに関係なく、無性に悲しかった。
桂花の民は、完全に敗けたのだ。あのころ僕らが寄って立っていた論拠も何もかもすべてが、
脆くも崩れ去った。
「皆がやり直せるのは、おまえのおかげだ…。」

「僕たちは、生きるよ。桂花山を失っても、シン国の民になっても、僕たちは、僕たちだ。
何を遺していけるのかは分からないけど……まずは頑張って、生きてみる。」
父さんはまた微笑んだ。その静かさが、悲しかった。
「母さんと、ユイを頼む。そして、残った皆のことも。」
「大丈夫だよ。カイ叔父さんも居るし、新しい領主様も居る。きっと、上手くいく…。」
上手くいっても、その先を父さんが見ることはないけれど。それはとても、悲しいけれど。


123:ユゥとメイリン9 5/8
12/03/04 20:07:47.69 L9qpMpmg

「あの姫君か。おまえは、いたくあの姫君を信頼しておるのだな。」
「へ、変な勘繰りは、しないでくれる?! 別に可愛いからとか女の子だからとか、そういうのを
抜きにして、メイリンは皆に好かれてるし、頭もいいし、メイリンが引き受けたのならちゃんと
やるって、そう思うだけだから!
それに例え僕がメイリンを好きでも、悪いことなんかない。心は、いつだって自由なんだから…!!」
父さんの顔に浮かんでいるのは、怒りでも非難でも戸惑いでもなかった。ただ何もかもの事情を
受け入れたように、静かに笑んでいた。
「ならばおまえが、助けてあげなさい。おまえは長じれば、兄達を助け、補佐する役につくはず
だった。代わりにあの姫君を助けて差し上げればよい。」
「……言われなくとも、そうするよ。」
メイリンは、いつだって僕に優しくしてくれた。そのメイリンの、役に立ちたい。
ずっと傍に居て、彼女のために、何かしてあげたい。


静寂を破るように、外から足音が聞こえた。
がちゃり、と鍵を開け、閂を外して入ってきたのは、さっきとは違う若い官吏と、その後にメイリンと
カイ叔父さん。
一番初めに口を開いたのはメイリンだ。
「名残惜しかろうが、時間だ。話はできたか。」
父さんとこうしていられる時間は僅かで、もう終わる。僕はどれだけのことを話せば終わりにできる
のか、分からなかった。しかし問いは僕に向けられたものではなかった。
「はい、姫様。─いえ、郡主様。おかげさまで。有難うございました。」
迷わずそう応える父の声に、また泣きそうになる。父はいま、何を思ってこんなにはっきりと終わりを
告げられるのか、この数ヶ月、何を考えて生きてきたのか。
「任命の件、聞いたのか。わたしがおまえの同胞達を引き受けることになった。最後におまえに報せる
ことが出来て、よかった。」
「おめでとうございます。」
父は拱手してシン国式の礼を取った。その姿も、僕の記憶している父とは違っていて、ひどく切ない。

「フェイの死後は、最終的に、埋葬が許可されている。すぐには無理だが、ほとぼりが冷めてからなら、
フェイの希望通り、桂花山に移すこともできるだろう。
ここにいる二人のどちらかが、いずれおまえの骨を故郷に連れ帰ってくれる。わたしが、必ず
そのように取り計らう。」
「有難うございます。」
死後、だなんて。
まだ父さんは、ここにいて、息をしているのに。
政治的な事情については、理解していた。シン国の方にも人的、経済的な被害が出ていて、敵国の
誰かを処罰して見せないと収まりがつかないこと、父さんが既にその事情で納得していることも。
ただ、そういう事情とは全く別に家族への情が存在していて、それが誰にも─父さんにさえも、
掬い上げてもらえなくて、行き場のない感情を持て余すような感じだった。
それからメイリンと叔父さんは父さんと何か二言、三言ほど話していた。
「ユゥ、最後にまだ話しておきたいことはある? 処刑当日の立会いを、フェイは望まないから、
これが最後になる。」


124:ユゥとメイリン9 6/8
12/03/04 20:09:50.61 L9qpMpmg

処刑─。
言葉の一つひとつが、僕を打ちのめす。
最後に一体何を言えば、納得して別れられるというのだろう。
何か、言わなければ。そう思うほどに、喉はつまり、涙が滲んだ。
「泣くな。おまえはもう、一人前の男なのだから。」
父さんの声が響く。分かってる、泣いてる場合なんかじゃない。
「郡主様、桂花の民のこと、よろしくお願いします。」
父はメイリンに向き直って言った。
「それから、私の息子のことも。この通り、頼りない息子ですが。」
「ユゥとカイに、助けてもらわねばならぬのは、わたしの方だ。心配ない、ユゥの優しさも情の篤さも、
長所であるよ。」
メイリンの言葉を聞いて、父さんは声を立てて笑う。
ああ、父さんはいま笑えるんだ…と、それを聞いて思う。
「もう、おまえも行きなさい。今日は会えてよかった。」
ぽん、と父さんが手のひらを僕の頭に乗せた。その細さと軽さに、また涙が出てきてしまう。
「僕も……、会えてよかった。」
漸く最後に、それだけが言えた。
同行した官吏が、入り口を示す。もう出ろということだろう。


長い廊下を戻って来た道を戻り、馬車に乗る段になって、泣いた顔のままメイリンと差し向かいに
座らねばならないのか─というか、思い切り泣いているところを見られていたことに気付き、
慌てて顔を背ける。
そんな僕を、横に座るよう招き入れて、メイリンはこう言う。
「ごめんね。」
なめらかな手をそっと重ねられて初めて、僕は自分の手が震えていたことを知った。
「今日のことは、大人の都合のため、フェイのためで、ユゥの気持ちは考えられていなかった。
ユゥには、辛かったかもしれない。フェイの生存が機密だったせいで、ユゥには心の準備をする
期間すら、与えられなかった。」
「メイリンの所為じゃ、ないよ……。」
やめて、もうやめて。そんな風に言われると、また泣きたくなるから。
メイリンの前で、これ以上の醜態を晒したくはないのに。
「涙を恥じる必要はない。」
なんとか泣くのを堪えようとする僕に、メイリンは静かに言った。
「親の死に際して涙を零さぬ者がいれば、そ奴が恥じればよいのだ。」
それから、すっと軽く寄りかかってくる。横から寄りかかるメイリンを支えようとすると、僕のほうも
安定が取れて楽になるんだな、と思った。
「……疲れた?」
メイリンがそう訊く。
疲れた。疲れていた。もうこれ以上動けないくらい。
地の底に潜って、帰ってきたような疲労だった。
声を出すのも辛くて、ゆっくりと頷く。
寄り添うメイリンは僕の顔を見ていなかったが、体の動きで分かったみたいだった。

メイリンは、ちょっとずるいと思う。
こんな時にこんな風に、傍に居てくれるなんて。
持て余す感情も、メイリンだけがそっと掬い上げてくれるなんて。
どれだけ僕の心を占めれば気が済むんだろう。
もうメイリンの傍で頑張って頑張って、「ユゥがいないと何も出来ない」くらいに言わせないと、見合わない。

それから馬車が邸につくまでの間、僕は静かに泣き続けた。
泣いている間もずっとかたわらのメイリンは柔らかくて温かくて、最後のほうは何で泣いてるんだか
分からなくなってきたくらいだ。馬車を降りる頃には、気持ちは大分軽々としていた。


     *     *


125:ユゥとメイリン9 7/8
12/03/04 20:11:52.00 L9qpMpmg

帰ってすぐから、邸は大忙しだった。メイリンが、正式な任命を受け、地方領主になることが決まって
その準備に追われた。メイリンはもう学院に通う必要はなかったが、手続きやらで何かと毎日のように
外出した。
僕の方はといえば、出立のための荷造りとか、必要な人員の手配とか、道中の資財と宿の確保とか、
慣れないことを任されて忙しかった。
勿論僕に大人数での移動はおろか旅の経験があるわけもなく、いちいち家令のツァオ氏や、他の旅慣れ
した使用人に聞かないと分からないのだった。
これって二度手間なんじゃないんですかと訊いたら、「次からはおまえ一人でやるんだ」とツァオ氏に
怖い目で睨まれた。
何だかんだ言って仕事を任されるのは嬉しかったし、忙しいのも有難かった。余計なことを考えずに済むから。

それでも、メイリンと大理寺に出かけた二日後の昼、メイリンの房室に呼ばれた。
目を閉じて手を合わせるメイリンを見て、刑が執行されるのはこの日の正午だと言われたことを思い出す。
故郷でのやり方とは違うけれど、ここではそうするのが言いような気がして、メイリンに倣って手を
合わせ、静かに父のために祈った。

その数日後には、朝廷での任命式があって、メイリンを金糸銀糸の刺繍の衣と、ありったけの宝飾品で
飾り立てるために、侍女たちが朝から大騒ぎだった。
僕も忙しくしていたのであまり顔をあわせなかったが、ユイウ様とスゥフォン様も、勿論旦那様も
帰っていらしていて、妹の晴れ姿を楽しみに何度も見に来ていた。
普段あまり飾らないメイリンの周りに集まって、こっちがいい、あっちが似合うという話は
本人よりも周りが盛り上がっていたけれど、なんか分かる気がする。
着飾ったメイリンは、名工の手による良く出来たお人形みたいだ。理想的を形にしたような
姿かたちで、どんなに派手な装飾品も似合ってしまうし、地味にすれば元々の美しさが際立つ。
手をかけることそのものが楽しい……、と侍女達は大はしゃぎだった。
任命式のために煌びやかに装ったメイリンを見て、きれいだとかかわいいだとかよりも先に、誇らしい
気持ちで一杯になる。
僕よりもひとつ歳下なのに、大人ですら怯む難しい役を買って出た。
僕の好きになったのはこんなに凄い女の子です。そう声を大にして言いたい気分だった。
まあもちろん、口に出したりはしないけど。

そんな風に忙しくしていたから、メイリンの寝室に呼ばれないのは、単に忙しいからだ、と自分に
言い聞かせた。メイリンは相変わらず優しいし、細やかに気を遣ってくれるし、目が合えば笑いかけて
くれるし、皆に見えないところでそっと手も繋いでくれる。
だから、寝室に呼ばれることが無くなって、毎日使用人部屋で寝ていても、嫌われているわけじゃ
ないはずだ……と必死で考えたかった。
でも、ひと月ほど前、メイリンが蒲州に行く前に僕がしたことを思えば、やはり遠ざけられても
仕方がないのかな、と思ったりもする。許す、とは言われたものの、もっと何か言い訳したほうが
良かったんじゃないのか。それともメイリンにとっての『遊び』の期間はもう、終わってしまったのか。

そんなもやもやを抱えていたある日の午後、メイリンが息せき切ってやってきた。
「どうしようっ、ユゥ!!」
眉根を寄せて、いかにも切羽詰った表情で僕を見上げる。眦にはうっすら涙も浮かんでいて、
彼女の憂いを取り除くためなら何でもしてあげたい気分になる。
「……どうしたの?」
「ちちうえが、父上様が、ユゥを、任地の南山に連れて行ってはいけないって、仰るの!!」
メイリンは、いまにも泣きそうな声でそう言った。




     ─続く─

126:名無しさん@ピンキー
12/03/04 20:13:54.60 L9qpMpmg
すみません数え間違い、全部で7レスで終了でした。申し訳ない。


>>116,>>117
ぐぐってみたら、この作品に関係するネタだったのですね。
星界シリーズのジントですか。確かにちょっと似てます。
姫様の世界は広いです。


設定説明回の間、なんかユゥ君はおあずけをくらっていました。
がんばれ少年。
毎回、次こそはサクサク書けたらいいなあ、と思うのですが、やはり遅いようです。
では、また書けた頃にまた来ます。

127:名無しさん@ピンキー
12/03/04 21:03:54.14 cKGAhMoc
GJ.今回も楽しんで読ませていただきました。
次回、更新も楽しみにしています。

128:名無しさん@ピンキー
12/03/05 05:09:01.63 fPDVwkKN
乙~

129:名無しさん@ピンキー
12/03/08 10:03:19.12 MFwWJNYK
gb!!続きが気になる!!

130:名無しさん@ピンキー
12/03/15 11:30:29.67 pK3gOYRw
>>61
炎天下の鉱山で、両足に10ポンドずつの鉄球を付けて日没から日の出までの
約15時間強制労働なんてのもいいかもしれない。

131:名無しさん@ピンキー
12/03/17 00:43:41.88 t9oGhWbU
いぬのおひめさまって続きないんですかね?

132:名無しさん@ピンキー
12/03/23 03:22:38.09 VIrt1f9m
幼少から幼なじみだった隣国の王子のもとに嫁いだ姫
初めて会った時から一目惚れで、とても優しい魅力的な王子で
愛を語り合った人だったが
結婚初夜、連れて来られた夫婦の寝室は拘束具と責め具で埋め尽くされていた
卑猥な刺青を掘られクリ皮を切除されニプルピアスを施され
何リットルも浣腸されて噴水のごとく脱糞させられ
精液にまみれた食事を与えられ
秘薬で全身の性感を高められ
そうして生まれ変わった姫だが対外的には公表されず
しかしその絶頂で潤んだ瞳は愛ゆえと
疼く子宮に震える足は緊張ゆえと
民草は実際を知らず好意的に解釈してゆく

133:名無しさん@ピンキー
12/03/31 06:39:20.69 kUqkLdH8
攻め落とした国の王女を国民全員の眼前で陵辱して、その様子に国中の男が欲情しているのを見せつけたい。愛すべき国民達が自分へ欲望の眼差しを向けるのを見せて、雄への恐怖をちらつかせたい。
そしてその夜に国中の女を城に集め、男達と王女に対しては「今夜一晩、王女が娼婦の格好をして広場に拘束された状態で放置される」旨を周知する。
王女の手前平静を装うが、遠まわしに「王女を一晩好きにしてよい」との命令に歓喜する男達。国民の敬愛への信頼と大多数の雄への恐怖に揺れる王女。

134:名無しさん@ピンキー
12/03/31 09:33:43.12 RNgzMzam
>>133
戦火スレでお待ちしております


135:名無しさん@ピンキー
12/04/01 10:15:03.29 041lquo8
割とよくあるパターンだな

136:名無しさん@ピンキー
12/04/03 10:17:43.84 J9Qztoec
わざわざ戦火スレまで行かんでいいし

137:名無しさん@ピンキー
12/04/09 01:04:02.23 D1IYoTij
>>130
ノースリーブワンピースは薄汚れ、素足に履いた靴は穴が開いて底が擦り切れ、
手枷と足枷と首輪を付けられて、過労死寸前までこき使われる王女ちゃんが
可哀想萌え(;´Д`)ハァハァ

138:名無しさん@ピンキー
12/04/13 07:51:26.31 gsr6g7Lz
>>137
リョナスレでお待ちしております

139:名無しさん@ピンキー
12/04/13 12:05:07.97 5pVz9hPb
平安お姫様ってここでOK?

140:名無しさん@ピンキー
12/04/13 17:35:32.80 ROijMtxj
おけおけ

141:名無しさん@ピンキー
12/04/24 18:29:25.63 0rvTmcLl
まとめでロウィーナ様とアルフレッド読んで萌え萌えなんだけど、もう更新されてないのかな…

142:名無しさん@ピンキー
12/05/03 22:38:38.23 nomNk9Oa
>>141
残念ながらないんだよ・・・

自分もいまだに待ってるんだけど

143:名無しさん@ピンキー
12/05/08 17:51:11.32 c34o3efH
いろいろ続きを待ってます

144:名無しさん@ピンキー
12/05/08 18:34:12.73 p1yWlDI5
色々ってなんだ!

オススメあるなら、最近ここを知った俺に教えてくれ

145:名無しさん@ピンキー
12/05/08 23:11:43.80 FSQLKxZg
保管庫の作品を片っぱしから読めばいいと思うよ
好みもあるし

個人的にはいぬのおひめさま、ガルィア王室繁盛記、
中華の国の物語シリーズが好きだけど
どれも長いからなぁ・・・。

146:名無しさん@ピンキー
12/05/09 12:16:35.57 wQOYvbrX
>>145のあげてる話もどれも好きだ
保管庫の「姫とお見合い」とかも好きだなー
メインの話はこのスレじゃないけど兄夫婦も良かった

147:名無しさん@ピンキー
12/05/09 15:18:01.00 ax87Zf36
>>145
そこら辺はやはり鉄板だよねえ
どれも味があってすばらしい

148:名無しさん@ピンキー
12/05/11 07:29:08.01 XM6M5+qB
マチルド姫、可愛くて一途で好きだw
そして兄夫婦も好きだぁ~馴れ初めはあんなんだけど、兄貴性格悪ぃけど、
読んでいくうちにそこすらも魅力的に見えてしまう不思議。

あと天然なセシリア姫になんだいいつつ引きずられているエルドのカップルもイイ。

149:名無しさん@ピンキー
12/05/16 21:09:47.87 lmZbp6p0
頼むから淫乱姫のやつの続きを書いてくれ
あれの雰囲気が好きすぎるのに

150:名無しさん@ピンキー
12/05/18 16:09:35.04 vj//riqp
137の続き書こうか?


151:名無しさん@ピンキー
12/05/23 02:11:29.10 jcuX2sXm
>>149
淫乱姫ってどれ?

152:名無しさん@ピンキー
12/05/27 00:30:57.67 SMD9afyG
エルドとセシリアの続きを…

153:名無しさん@ピンキー
12/06/09 14:22:00.27 hGRsxqRX
ローランとアグレイアの話好きだ。
あの作者さん他にも何か書いてないのかな

154:名無しさん@ピンキー
12/06/10 21:06:18.09 hnbWeZmG
俺もあれ好きだった
おもえばこのスレも長寿スレの一員になったね

155:名無しさん@ピンキー
12/06/11 09:39:41.47 6xOusAT9
>>153
ローランとアグレイアの作者さんはイヴァンナタリーの作者さんと同じ
このスレの豆知識な

156:名無しさん@ピンキー
12/06/12 14:44:00.66 TdM8ttdH
イヴォット(貴族と平民)、アーデルハイト、ユーリアンも好きだなぁ

157:名無しさん@ピンキー
12/06/15 18:01:08.43 AH4Cxf8g
お姫様ペロペロ

158:名無しさん@ピンキー
12/06/16 13:49:55.17 L+uqNkSK
>>155
ありがとう。見つけましたので、ゆっくり読みます。

159:名無しさん@ピンキー
12/06/16 20:05:34.19 gUGcePgS
イヴァンナタリーのエロな新作をいつまでも待ってる…

160:名無しさん@ピンキー
12/06/16 22:55:50.20 MOF9RsSX
同士よ…
あの作者さんのもう一人の姫の話も
待ってるんだ
ローランとアグレイアの話も何回読んでも良い

161:名無しさん@ピンキー
12/06/17 11:13:23.31 xbbQGOEY
長女次女末っ子の話はあるけど気の弱い三女の話はないもんなー
自分もずっと待ってる

スレ違うけどサディアスとクロードの話も好きだった

162:名無しさん@ピンキー
12/06/19 22:39:33.27 dz9mM2jF
ロリいお姫様純愛ものでおススメのSSありますか?

163:名無しさん@ピンキー
12/06/24 18:22:30.06 V/1Z2yJC
>>161
サディアスとクロードってなんだっけ
読んだことある気がするが思い出せない

164:161
12/06/24 21:15:41.29 OMAnmyBJ
>>163
男装少女スレにある
イヴァンの衛兵長と副官(男装の女)の話

165:名無しさん@ピンキー
12/06/24 23:24:44.12 V/1Z2yJC
あ、あれか
とんとん

166:名無しさん@ピンキー
12/06/27 21:44:28.94 VEzhFQKu
URLリンク(mimizun.com)

このスレ見ると、読者(42番)のリクエストからわずか二日後に
書き出しているんだね、サディアス編。
筆の早さも、勢いも、完成度もすごいな…!

167:名無しさん@ピンキー
12/06/28 00:33:58.12 OOUuPTEf
あのころは板全体に人がいたなあ

168:名無しさん@ピンキー
12/06/28 01:28:57.78 vGhCAjH0
この流れでは投下しにくいかもしれないが、もちろん完全新作もお待ちしております

169:名無しさん@ピンキー
12/07/03 01:50:52.07 ddIdbOZw
ロリ姫がいい

170:名無しさん@ピンキー
12/07/03 08:57:35.60 9KcggBjl
>>169
お付きの騎士に抱っこされてるのとかいいですね

171:名無しさん@ピンキー
12/07/03 20:11:18.37 drYjBdNg
では、流れを読まず投下します。

ユゥとメイリン10
8レスの予定

172:ユゥとメイリン10 1/8
12/07/03 20:13:19.00 drYjBdNg

……。

……………………………。

………………………………………………………………えっ?

「任地の南山[ナンシャン]に連れて行けないって、どういうこと? メイリンは僕に、ずっと一緒に
居てもいいって、言ったよね? 僕との約束を、破ったりしないよね?」

メイリンは、一度言ったことを簡単に覆したりしない。でもメイリンが最大の敬意を払っていて、
絶対的に信頼し、服従している『父上様』が、任地に僕を同伴してはいけないと言ったのなら、
一体どうするのだろう。心の中に不安が広がる。押しつぶされそうになりながらメイリンを見た。
メイリンは僕の言葉に戸惑うように瞳を揺らし、それからそっと目を伏せる。
「それは……その……、父上様の仰ることにも、一理ある。父上様が仰っているのは、ユゥを
今のままで連れて行ってはいけないということなの。それはまあ、わたしも少しはそう思っていたし……」
メイリンは長い睫を揺らして頬を染めた。もじもじと指先を組んだり外したり、せわしなく動かしている。

ん?

なんだろうこの感じ?

僕は思っていたのと少し違うメイリンの反応に、違和感を覚える。
「……あとは、ユゥの選択に、委ねられている。わたしだってユゥと共に行きたい。
だから……ね? 分かるでしょう。お願い……。」
メイリンは潤みを帯びた大きな目を上げて、まっすぐに僕を見つめた。その目に見つめられるだけで、
彼女の望むことならなんだって叶えてあげたくて堪らなくなる。
でも、一体何をお願いされるようなことがあるんだろう? 僕に言うことを聞かすなら、ただ命令すればいい。
奴隷である僕に選択権があるなんて、ここに来てから聞いたことも考えたことも無い。
なんだか、難しい質問に答えろと言われて、その答えのための知識をまるきり持っていない場面のような
気分だ。相手の望む答えを見つけなきゃと思っているのに、頭の中は空回りするばかりで、手がかりの
一つすら見つけられない。

「なんのこと? 言って。僕はいつだって、メイリンの言う通りにする─。」
メイリンは悲しげにふるりとかぶりを振った。
「それじゃあ、駄目なの。ユゥ自身が決めて、ユゥの意思で選ばないとだめ。」
違和感が更に大きくなる。僕の意思で決める? メイリンが突然何を言い出したのかが全く分からない。

メイリンはほとんど泣きそうだった。切なげに切実に、僕が何かの選択を─メイリンの望む選択を
─するのを待っている。なぜそんな表情をするのだろう? メイリンのために出来ることがあるなら、
僕は何もかもその通りにするのに。
「どうして?ユゥ。いつもみたいに、焦らして意地悪しているの? ずっと一緒に居てくれるって言ったのに。
それともやっぱり、わたしのことが嫌いなの。」
メイリンの大きな瞳の端に、ぷわっと涙の粒が盛り上がった。
そんなわけない。メイリンが嫌いなんて、ありえない。
さっきから何かが噛みあっていなかった。なのにメイリンはひどく混乱して、傷ついてさえいる。
「あの…ね、メイリン。落ち着いて聞いて。君のために、なんでもしてあげたい。どんなことでも。
でも、今求められているものが、なんなのか分からないんだ。奴隷である僕に、なんの選択が
許されているのかも。」


173:ユゥとメイリン10 2/8
12/07/03 20:15:20.84 drYjBdNg

「……どれい?」
メイリンは一瞬、大きな目を更に大きく見開いた。
「ユゥはわたしの従僕でしょ? なんで奴隷なの?」
急に問い返されて僕は戸惑う。
「えーと、そのふたつの違いが分からない……」
「刺青も焼印も押されてないのに、何で奴隷なの? 逃げ出して良民に紛れたら、分からなくなるじゃない。」
彼女は、奴隷と言うのは固定された身分で、消えない印をつけて所有された人たちのことだと言う。
「ユゥは捕虜。身柄はこの家で預かり、わたしが使うことを許されている……いまは。」
僕は頭を抱えた。そう説明されても、何が違うのか分からなかった。
「だからぁ、奴隷じゃなくて捕虜なんだから、何年かすれば放免されるでしょ。」
放免─?
もちろん聞いたことも無かった。ずっと何かしら踏みつけられて生きてゆくのだと思っていた。
それが故郷の人々を助けてもらった代償なのだと。
「じゃあ……万が一、今回一緒に行けなかったとしても、何年かして放免されたら、メイリンの任地に行ける?」
僕は少しほっとする。二度と会えなくなるわけじゃないんだったら、何とか耐えられるかもしれない。
でもメイリンは、僕の言葉を聞いた途端にきゅっと眉を寄せて思いっきり拗ねた顔をした。
「そんなこと……! わたしの……を断ったユゥを、わたしの領地に受け入れるはず、無いじゃない…!!」

…………………………………………………………………………………えっ?
なんかすっごい空耳を聞いたような気がする。
きっとそれは僕の願望とか妄想とかで出来ているに違いない。だってあまりに都合が良すぎる。
「いま、なんて言ったの、メイリン?」
メイリンは顔を真っ赤にして拗ねている。
「ユイウ兄様から聞いたでしょ。確かに伝えたって、そう言ってたもん。」
「聞いてない、聞いてないよ。誓って言うけど、それを匂わせるようなことは、一言だって聞いてない。」
もし欠片ほどでもそれを思わせるようなことを言われたら、僕は天まで舞い上がっていたに違いない。
「だって兄様が、何度もよぉく言って聞かせたって。」
「僕がいつも言われていたのは、『妹は誰にでも優しい』、『お前はただの下僕』、『勘違いするな』、
『身分を弁えろ』。それだけだけど。」
「だって…、だって…、兄上様が、女の方からそんなことを直接言うのははしたないって言って……。
自分がちゃんと伝えたから、お前は黙ってろって……!!!」
メイリンは少しずつ僕の言ったことを聞いてくれているようだった。真っ赤なまま目を見開いてぷるぷる
震えている。

「一言も聞いてないよ。命を賭けてもいい。」
だからもう一度言って、と言おうとしたとき、メイリンはもう風のように駆け出していた。
「どういうこと?! どういうことなの?! 兄上様!! ユイウ兄様─!!!!」
ふわりと風に靡く裳裾を翻し、凄い速さで回廊を駆け抜けてゆく。


暫く茫然としていた僕は、ユイウ様が昼間は出仕していて邸の中にはいないことを思い出す。こんな
中途半端な空耳を聞いたまま放っておかれるのは御免だ。
なんか、メイリンの口から、求婚、という言葉が出ていたような。ただの願望かもしれないけど。

僕はメイリンが外出の用意をしたのかと思って、馬車の様子を見るため厩に先に行ってみた。それから
門番にも聞いてみた。どちらにもメイリンは来ていないようだった。メイリンが外出するようなら、
引き止めて、せめて僕に報せて欲しいと頼んでそこを離れた。
それからメイリンの房室にも行ってみたが、やはりメイリンの影は無かった。


174:ユゥとメイリン10 3/8
12/07/03 20:18:36.25 drYjBdNg

なんとなく、僕は邸の南側に足を向けた。いつかメイリンが言っていたのだ。一人になりたいときそこへ行くと。
北向きの庭園には、まだ僅かに残雪があった。けれど南向きの庭にはもう雪は無く、代わりに白い梅の花びらが
残雪のように地面を彩っていた。
清冽な香りの中、梅園の一角に、大き目の庭石が配置されている場所がある。そうっと足音を殺して近づくと、
庭石の向こうにメイリンの細い編み髪が見えた。膝を抱えて座り込んでいる。
「メイリン。」
僕が声を掛けると、彼女はびくっと肩を震わせた。
「何で泣いてるの。」
メイリンは目を真っ赤にして泣きはらしていた。ひっく、としゃくりあげる声が聞こえる。
「もう、いいもん。ユゥだって、いきなり言われても困るだろうし。」
はっきり聞く前からいきなりいいもんとか言われても困る。まだ返事をする暇さえ与えられていない。
メイリンの顔を覗き込むように、僕は腰を下ろす。泣きはらした顔も、やけに可愛い。
「まだ聞いてない。」
「ユゥはいつだってわたしに、つれないもん。一緒にいるのは良くても、結婚するのは嫌なんだ。
わたしが、我儘だから?」
妙な方向に考えが暴走してるみたいだ。どうしてそこで泣いてるのか、訳が分からない。メイリンと
結婚するのを嫌がる男なんて、いるはずないのに。

「メイリンに、我儘なところなんてないよ。」
メイリンは、いつだって優しくて、思い遣りがある女の子だ。邸の使用人たちだってそう言っている。
「じゃあ、じゃあ、わたしと、結婚する?」
「する。」
もちろん即答した。考える必要が、あるとは思えなかった。むしろメイリンが泣く必要が分からない。

メイリンはそこで、いきなり飴を貰った子供のように顔を上げる。
「本当? 嫌々じゃない? わたしが、自分の領地に受け入れないって言ったから。」
もう涙は止まっている。まったく女の子は変わり身が早い。
「嫌がる理由が無いよ。」
「だって、ずっと返事、くれなかったし。」
「聞いてないものには、返事のしようが無いよ。」
メイリンはだって、と口を尖らせる。そのさますら、食べてしまいたいほど可愛い。
「あのさ、そういう種類の伝言をユイウ様経由で伝えようとしても、永遠に伝わらないと思うよ。僕だって、
妹がそういう状況だったら、伝えたって言って死んでも伝えないと思うし。」
あのユイウ様が、可愛い妹のメイリンからの結婚の打診なんてことを、どんな理由があっても僕に
伝えるとは思えなかった。というか、突然の話で全く実感が湧かない。
メイリンは、だって兄上様が二人とも、ちゃんと伝えてあるって言ったもの! と何度も繰り返す。
どうやら、メイリンと兄君たちの間では、メイリンからの求婚の申し入れは伝えたものの、僕が迷って
返事を引き延ばしているという話になっていたようだ。
どうして僕がそんな勿体ないことをするものか。冗談もいい加減にして欲しい。
そしてメイリン自身は、女性がそういうことを言い出すのははしたない、というしきたりに渋々従って
直接問いただすのは控えさせられていたらしい。普段の積極性からは考えられないが、婦人学とか
持ち出され、「婦女子のはしたない行為は最も嫌われる」と言いくるめられてたとかなんとか。


175:ユゥとメイリン10 4/8
12/07/03 20:20:48.59 drYjBdNg

「すぐに返事が来ない時点で、変だって思わないの。」
「だって、ユゥの考えてることなんか何ひとつ、分からない。」
メイリンはぷっと柔らかそうな頬を膨らませる。
「はじめてなんだもの。家族以外の男の子と仲良くなるのも、仲良くなりたいと思ったのも、その……、
そういうこと、したのも、ぜんぶ。」
メイリンが可愛すぎて気が遠くなりそうだった。生まれておよそ十七年間、家族以外の女の子に
縁の無かった僕には、いつだってメイリンは刺激が強すぎる。
「だから、ユゥの考えてることなんか、ぜんぜん、わかんない。」
ぎゅっと膝を抱きかかえて丸くなっているメイリンのこめかみに、強引にくちづけた。もっとこっちを
向いて欲しい。僕の理性は今にも弾け飛びそうだった。
「メイリン、したい……ねえ、いい?」
「あっ……、だめ」
メイリンは僕の口にぺたりと手のひらをつけて押し戻そうとした。労働を知らない彼女の手のひらは、
白くてなめらかだ。その指には、うっすらと剣だこがあるけれど。それもまた可愛らしい。
僕はその手を逃がさないよう自分の手を重ね、やわらかな手のひらをちゅっと音を立てて吸いたて、
舌を出して舐めしゃぶった。こんなやり方で今の僕が押し留められるはずがない。
「どうして? 僕の妻になってくれるんでしょう? そしたら君は、僕の、僕だけのものでしょう?」
自分で言ってて、頭のどこかが焼き切れそうだった。これで否定されたら、急転直下で死ねそうだ。
メイリンはおずおずと次の言葉を唇に載せた。

「だって……喪中、だもの。」
「……っっ!!」

雷で打たれたような衝撃だった。なぜ拒まれてるのだろうとしか考えなかった自分を恥じる。死者を
弔うための禁欲期間。そういう習慣は、もちろん僕たちの習慣の中にも一応ある。
父の死は国に決められた死で、突然に知らされ見届けることすら許されなくて、実感の無い、遠くに
たなびく煙でしかなかった。父のためになにひとつ、葬式はおろか、異郷の中で服喪することすら
出来なかったけど、確かに僕は肉親を亡くしたのだ。
「……僕の、ため?」
そんな中で、メイリンだけは、一緒に祈ってくれたじゃないか。
メイリンはこくりと頷く。
「ユゥの父上の喪中にはしたないことして、嫌われたくないし。」
嫌う。嫌うって。一体どこからそんな発想が出てくるんだろう。
分からないのはメイリンの方だ。
そしてメイリンは、いつだって上手に僕の理性を壊す。
「一体いつまで、我慢すればいいの。」
「えっと……?」
メイリンは眉を寄せて考え込む。
「父に対する服喪期間は、二年……?」
「無い無い無いないないないっっっっ!!!!!」
思わず大声を出してしまった。出たメイリンの曖昧性知識。
「それは確かシン国の公職の規定であって、ものに応じてもっと色々な解禁期間が、あるでしょう。」
二年とか、生き物としての生理の限界を軽く凌駕している。
メイリンは小首を傾げる。
「じゃあ、四十九日?」
「それも、長すぎ。」
そんなに長く待たされてたまるか。


176:ユゥとメイリン10 5/8
12/07/03 20:23:05.90 drYjBdNg

「僕らのクニでは、七日経つと家の中から死者の魂が離れるって言って、そのとき一通りの喪が
あけるんだけど、それでどう?」
「ユゥがいいなら、それでいい。」
メイリンは素直に頷いた。
「七日、もう経ってるよね。」
僕は心の中で日数を数えた。正確に言うと、今日の正午で丸七日。こういう場合は当日から起算するから、
昨日の夜で喪が明けた計算になる。しまった半日損した。

メイリンの顎を軽く持ち上げると、今度は抵抗しなかった。桜桃のような美味しそうな唇に、僕のそれを重ねる。
貪って、全部食べてしまいたい。いつもより性急に深く口付け、メイリンの柔らかい舌を、甘い口中を味わう。
こうしてメイリンに触れるのは、一体どのくらいぶりだろう。衣から立ち昇るかぐわしい香りに、
その体の細さと柔らかさに、唇の甘さに陶然とする。こうして唇を合わせているだけで、うっかりすると
達してしまいそうだ。

「あ……こんなところで、それ以上は、だめ……。」
メイリンは僕の腕の中で体をくねらせた。その視線はとろんと蕩けて、濡れて艶めいている。僕を押し返そうと
する腕の力はとても弱くて、まるで誘っているかのようだ。
「ふた月も、君に触れてなかった。これ以上焦らされたら、死んでしまいそう……」
メイリンは大きな瞳をしばたかせて、不思議そうに聞く。

「ユゥも、そういうこと、したくなるの?」
「なっ……!!」
何言ってるの。あどけなくさえ見える表情で、何てこと言い出すの。
「だって、誘うのも命じるのも、いつも、わたしだけだった。」
メイリンは少し拗ねたようにそう言う。
「あ……、ぼっ……!!」
あるじはメイリンで、僕はその下僕だった。そういう決まりだったでしょう。僕はあまりのことに、
口をぱくぱくさせるばかりだ。
「別に、ユゥから誘ってはだめ、なんて言ったことないし。」
何言い出してるの。どうしてこの期に及んで、そんなこと言うの。健全な若い男の性欲嘗めてんの。
めちゃくちゃにされたいの。それとも僕をめちゃくちゃにしたいの。
メイリンはいつも上手に僕を壊す。

「君が好き、好き、すき。欲しい、欲しい、ちょうだい─!」
力の加減も何もかも忘れて、思いっきり彼女の身体を抱きしめた。華奢なメイリンの感触と香りが僕の全身を
満たす。彼女のほっそりとした両腕がゆっくりと僕の背中を撫でて、ぎゅっと抱き返してくれたときには、
なぜだか泣きそうになった。もしかすると本当は、泣いてしまっていたかもしれないけど、そんなことは
もう憶えていない。
メイリンの裙の合わせ目をより分けて足の付け根をまさぐると、そこはすでにしっとりと熱く濡れていて、
僕の指を迎え入れた。
少し湿り気の残る梅園の下草の上に彼女を押し倒す。ちょっと恥らうような表情を見せたけれど、それ以上の
抵抗はもう無かった。

爆発寸前の僕は余裕もなく、綺麗に着飾ったメイリンの襟元を緩めることもなしに、脚を開かせた。
慌しく自分のそれも取り出して、潤みの中心に押し当てる。充分に濡れていても、久しぶりのそこは、
記憶よりもずっと狭かった。
「ひっ……! いっ……! あ、あぁ……!!」
僕に貫かれてメイリンは、激しく身悶えた。桜色の衣に包まれたままの胸が、大きく上下している。
まるいその膨らみに誘われるように手を伸ばし、それから捏ね回すように揉みしだいた。
頬には、うっすらと涙の跡がある。ばかみたいだ。僕がつれなくて泣いちゃうなんて。僕はいつだって
君に夢中じゃないか。こんなにも。
僕は舌を出して、薄い塩の味がする涙の跡を舐め上げる。メイリンの悲しいことは全部、僕が食べてあげたい。


177:ユゥとメイリン10 6/8
12/07/03 20:25:07.65 drYjBdNg

「痛い? メイリン。」
僕の方は沸き上がる快感と多幸感に、気が遠くなりそうだ。僕の問いかけにメイリンは、ぎゅっと閉じていた
目をうっすらと開く。
「さいしょ……だけ。いまは……いたく、ない。」
動かずにいられたのは、その辺までが限界だった。僕の中で少しでも長く愉しみたい気持ちと、早く頂点を
極めたい気持ちがせめぎあっていたけど、どちらもメイリンの魅力には勝てるはずも無かった。
「メイリン、君の中……、すごく、キツい……。気持ちよくて、もう出ちゃいそう……。このまま、
中に出して、いい?」
「だめっ……、任地についたら、たくさん……することがある……。まだ、だめ。」
激しく突き上げられる中でも、メイリンはそこのところはきっぱりしていた。『まだ』ってことは、
『そのうち』があるってことだ。僕はそれだけで満足して頷き、最後までメイリンを責め立てる事に集中する。
限界は、すぐに来た。

「あぁっ、ユゥっ、ユゥっ!」
高く細い声に耳朶を擽られながら、彼女が纏ったままの下衣の中に精を吐き出した。


     *     *

柔らかな日差しが二人を包み、早春の風が汗ばんだ肌を柔らかく撫でていた。
「あ…あ…、こんなところでは、駄目だって言ったのに……。」
恥ずかしげにそう抗議するメイリンは、それでも僕の腕の中に抱かれたままでいる。
丸く小さな白梅の花弁がいくつも舞い降りる頃になっても、離れるのが勿体なくて身体を動かすことが出来ない。
「だめ、って言う割には、いつも結局は許してくれるよね、メイリンは。」
「もう。ユゥはいつもずるい。」
僕の言葉に、メイリンはぷっと頬を膨らます。
「ずるいのはメイリンだ、いつだって。」
きっと僕は、メイリンのためなら炎の中にさえ飛び込んでゆくのだろう。ともかくずるい。可愛いのは、
それだけでずるい。
「僕はメイリンが、好きなだけ。」
いつもなら恥ずかしいこんな台詞も、肌を合わせているうちはするっと口に出せてしまう。きっと、
メイリンの肌が暖かくて、気持ちがいい所為だ。

メイリンは僕の衣の襟の辺りをもじもじと弄びながら、頬を染める。
「あ、あのね、ユゥ。わたしと結婚するって言ったの、嘘じゃない、よね?」
「そっちこそ。」
取り消されたくないのは僕のほうだ。
「えっと……、わたしがユゥの家に嫁ぐのではなくて、ユゥがわたしのところに、婿入りしてもらうことに
なるの。いい?」
「ああ、そういえば、そういうことに、なるだろうね。」
細かいことは考えてなかったけど、実際にはメイリンはこの国の皇族のすっごいお姫様なんだから、僕の方が
メイリンに合わせることになるのだろう。
「それから、領主はあくまでわたしで、ユゥはその夫。……でも、ユゥのこと大切に、するから。」
「僕は君の傍にいて、君の手助けをしてあげる……そういうこと?」
メイリンが南山の領地を得たのも、メイリン自身が頑張ったからだ。そのことについて異論は無かった。
メイリンは嬉しそうな表情で、うんうんと頷く。
「うん、そういう、こと。」


178:ユゥとメイリン10 7/8
12/07/03 20:27:08.45 drYjBdNg

それから急に体を起こして、神妙な顔で言う。
「そして、これはとっても大切なことだけど、ユゥは、わたしの他に妾を置いてはだめ。」
「めかけ?」
「二番目以降の、妻のこと。」
僕はちょっと考えた。妻と言うのは大抵、一人なものではないのか。
「僕ら桂花の民の間では、一人なのが普通だと思うけど。」
「違うもん! ユゥの一族の男たちも、みんなこっそり妾を持ってるの! わたしちゃんと、調べたんだから!
でも駄目! ユゥはだめ!」
メイリンは顔を真っ赤にして叫んだ。メイリンはいつも、妙なことに詳しい。
「……ユゥが他の女の人ともするなんて、わたし、耐えられないもの……。」
急にしおらしくなって俯くメイリンを、僕は危うく押し倒すところだった。僕はメイリンのくるくると
良く変わる表情に弱いみたいだ。
「そんな風に言われたら、どんな約束をするより効きそうだ。ねえ、メイリンの方は?」
「わたし?」
メイリンは自分に話題が振られることなど、予想もしていないようだった。
「メイリンの方は、他の夫を持つつもりなの。」
「まさか。生涯たった一人の夫に仕えることこそ女のよろこび。母上がいつもそう仰ってる。貞節を
守ることは、当然のつとめ。」
メイリンは薄めの胸を張って言った。
「つまり、メイリンには僕だけで、僕にはメイリンだけ。そういうこと?」
「そう、そう、そういう、ことなの。」
僕の言葉にメイリンは、ぱあっと花がほころぶように笑う。

でも、なんだろう。何かがひっかかる。何かを、ずっと前に言ってたような……?
「そうだ、確かメイリンは『そういう普通は嫌いだ』って言ったんじゃ、なかったっけ?」
随分前のことだ。僕とメイリンが初めて会った夜に、メイリンがそう言った。僕はえらく酔狂なお姫様だと
思ったんだっけ。
「それはっ……! だって、ちゃんと選ぶためには、多少の試しは、許されるべきっ……!!」
メイリンはかっと顔中を朱に染める。
「『ものは試し』?」
たしかあのとき、メイリンはそう言った。
「そう、そうっ!! 試してみて、わたしが気に入り、ユゥが気に入れば、夫にしていいって、そういう約束、
だったもの!!」

はあ?!
そんなおいしい話、聞いてないし。断じて、聞いてない。
「わたしはすぐに、気に入ったと伝えた……。でも、ユゥからの返事は、ずっとなくて。」
メイリンはぷっと頬を膨らます。
「だって聞いてないんだから、仕方ないよ。僕が聞いてたのは、『勘違いするな』とか、『身分を弁えろ』
とか、あと『メイリンはいずれ、相応しい家格の男に嫁ぐ』とかもあったっけ。」
そのときの気持ちを思い出して僕は少し、溜息をつく。
─あれは全く、かなりの拷問だった。
「だからずっとメイリンのことは、好きになっちゃいけない女の子だと思ってた。」
それでも、好きで仕方がなかった。綺麗で可愛くて、すっごいお姫様なのに思い遣りがあって優しくて、
でも危なっかしくて、いつも目を離せない。
「メイリンは、僕のものにはならないんだって……。今の関係も、すぐに終わってしまうものなんだって、
思ってた。だから、あんなこと。」
「あんなこと?」
メイリンは澄んだ瞳で聞き返す。僕は少し恥ずかしくなった。
「その……メイリンが、邸を空けて遠くへ行く前、僕は君に乱暴した……!」
あれこそひどい暴走だ。ひとりで何もかも抱え込んで、自分だけで何かを終わらせようとした。
「何もかも、終わらせたかった。僕自身さえも。叶わないなら、これ以上好きになりたくなかった。君に
嫌われてしまいたかった。そして君だけに、罰されたかった。」


179:ユゥとメイリン10 8/8
12/07/03 20:29:29.36 drYjBdNg

メイリンは僕の話を聞くと、きゅっと形のよい眉を寄せた。
「あの、馬鹿兄……!」
メイリンが、敬愛してやまない兄上のことを悪し様に言うのをはじめて聞いた気がする。
「ユゥのことを、散々悪く言っておいて……!! 自分が、嘘を吐いて話を混ぜてたんじゃないか……!!」
予想外の怒りの矛先に、僕はちょっと戸惑う。
「蒲州でもしつこく、やめておけとか、あいつにその気はないんだとか!! 鬱陶しいったら!! わたしには、
ちゃんと伝えたから黙って待てとかきつく言ってきて……、ああ、騙されたー! だーまーされたー!」
いつか仕返ししてやるー!!とか、大層な剣幕である。
可愛いくて最強な妹を怒らせたユイウ様のことが、少しだけ心配になる。うん、勿論自業自得だけど。

「ねえユゥ、じゃあもしわたしの申し入れが正しく伝わっていたら、もっと早く返事をくれた?」
「間違いなく。」
メイリンはそれだけでは満足せず、もっと踏み込んだ答えを求めてくる。
「いつ頃には、くれた?」
「メイリンの方は、いつ頃返事したの。」
「うんとね、ユゥの手枷を、外した日には。」
僕はぶっ、と噴き出した。思ったより随分、早かった。それは僕の憶えている限り、この邸に来て
三日目のことだ。
「決断が、早いんだね。」
僕は憶えておこうと思った。メイリンは、いざという時には決断がとても早いお姫様だ。
「だって、なんだかいいと思ったんだもの。一緒にいて楽しいし、お喋りしても楽しいし。」
メイリンはそこできゅっと唇を噛む。
「でも、ユイウ兄様は、ユゥは桂花の民の男だから、自分のクニを滅ぼした軍師の娘に対して、
わだかまりがあるんだって言ったの。父上様も、ゆっくり待ってあげなさいって。だからわたし、
ずっと待ってたの。」

うわあ、なんというまことしやかな嘘。確かにそういう気持ちがあったことは否定しない。本当に
メイリンの兄上は、僕のことをよく観察してる。
「確かにそういう風にも思ってはいたけど、メイリンから夫にしてもいいって言われてたら……見境なく、
即答してたと思うよ。結局は誰も、メイリンの魅力には勝てないもの。」
「他の誰も、必要ない。わたしは、ユゥだけでいい。」
メイリンは、極上の笑みを浮かべて言った。そんなところに、やっぱり勝てないと思う。
考えてみると、初めから負け通しだ。そしてそれも、悪くないと思ってしまうあたりが、すっかり参って
いるっていうんだろう。
それも仕方がない。だって、メイリンは、メイリンなんだもの。





     ─続く─

180:名無しさん@ピンキー
12/07/03 20:32:01.06 drYjBdNg
以上です。

年度末からの生活激変により、自分的にはいいところで滞ってました。
落ち着いてきたので続き。今回は数日後に次まで投下します。

181:名無しさん@ピンキー
12/07/03 20:34:50.47 w+D+Y7/W
リアルタイムで乙
 ユウくんの方も可愛いから、本当このシリーズ好き

182:名無しさん@ピンキー
12/07/03 22:27:32.37 W9fIay8Z
お疲れ様です。続きお待ちしておりました。素晴らしい。

183:名無しさん@ピンキー
12/07/04 20:18:52.74 2ohD6Bz+
しばらく来なかったから心配してた乙!

184:ひつまぶし
12/07/04 22:43:34.14 RWjtnmLN
某国に、一人の姫がいた。
古の神話の女神のごとき美貌、天使のごとき慈愛、そして戦神のごとき勇猛。
全てを兼ね備えたその姫を、人々は称え、その物語に酔いしれていた。
『ラヴィリス姫』、その人に。
――たった一人を除いては。

ラヴィリスの率いる蛮賊討伐の軍が帰路に立ち寄った村は、酷く寂れていた。
村人の影はほぼなく、一人の青年が畑仕事に勤しむ姿があるだけ。
その青年に、ラヴィリス姫が声をかけた瞬間である。

「出ていってくれ!」

青年の怒声に、ラヴィリスは酷く困惑した。
その青年の無礼に、副官が首をはねるかと聞いてきたが、ラヴィリスは首を横に振って見せた。

「国のお偉いさんがたに蛮賊討伐の依頼をして、六年だ!六年無視して、つまらないパーティや何やらにうつつを抜かしてたやつらが、来るな!」
「六年だと?つい最近のことと聞いたが・・・」
「おまえらのことなんざ、知るか!蛮賊に畑を荒らされ、村の仲間や家族はみんな殺された!生き残ったのは俺一人だ!」

ラヴィリスが副官に目線を寄せると、副官は仰々しく頷いた。

「恐らく、貴族の一人―少し前に粛正として処刑された方が、握りつぶしていたかと」
「知らないと言ってるだろう!ともかく、出てけ!貴族様に、俺の苦労なんて分からないんだろうが!出ていけ!」
「一つ聞く。お前、一人で村を立て直すことが叶うと思っているのか?」

副官の挑発的な声に、青年は一層声を荒げた。

「叶うか叶わないかじゃねぇよ!俺はな、この村に生まれ、この村で育ち、この村で恋人も作った!役に立たないお偉いさんに依頼して馬鹿を見るなら、一人でやって死んだほうがマシだ!」
「恋人、とな?」

ラヴィリスの声に、青年の声が、今度は沈む。

「蛮賊に殺された。慰みものにされて、その後・・・・」

青年の声色が、闇に染まる。
ラヴィリスには分かる。
復讐心に満ちた、その声の色と重さを。

「そうか。すまなかったな。我々は城へ帰投する――行くぞ!」

ラヴィリスの号令の元、騎馬隊が整列したまま、村と呼ぶには余りに寂しい場所を駆け抜ける。
ラヴィリスは、知らなかった。
自身が戦で華々しく戦い、日頃は不自由なく満たされた日々を送る中でも、青年のような者もいるのだと。

(救いたいな―彼を)

ラヴィリスに宿った小さな想いが、後に彼女の未来を定めることになるのだが―今はまだ、誰もそれを知らなかった。

続かない。

185:名無しさん@ピンキー
12/07/05 01:06:18.12 GVMVvdrb
GJ!!続き読みたいです。

186:続・ひつまぶし
12/07/05 07:47:01.86 86sqaJg4
ラヴィリス姫が城下町に着くと、住人たちはこぞってラヴィリスの姿を見に、遠くに近くに集まる。
そして、その視線にも種類があることを、ラヴィリスは理解している。
純粋な憧憬、ラヴィリスへのやっかみ、恋慕や愛欲の類いなど、浴びることにもなれたような視線ばかりではあるが。

(―あの男の眼は、違ったな)

寂しさと切なさと敵意の混じった視線でラヴィリスを貫いた、あの寒村の青年を思い出すたび、ラヴィリスは何とも言えない感情が湧き出すのを知覚している。
そも、騎士団を率いるようになってからの、『国のため』『人々のため』『平和のため』という建前を覆しかねない感情に、困惑しているのはラヴィリス自身だ。

(一番救いたいもの――見つかった)

父たる国王に、かの寒村と、そこに住む青年の救済を申し出よう。
喝采で送る民衆に手を振ることも忘れて、ラヴィリスは小さく決意したのだった。

―そして二週間後。
ラヴィリスは、単身寒村へと向かった。
両親は納得していたものの、軍を公に動かすだけの大事とは認められず、結果ラヴィリスが一人で向かい、青年と正面から話し合うことにしたのだ。
最も、ラヴィリスとてその心積もりだったことに変わりはないため、嬉々として名馬に鞭を振るい、疾風のごとき速さで城を、城下町を出たのだった。

「・・・・なんだ?」
「なんだとは、挨拶だな。私は君と話をしたくて来たんだ」

ラヴィリスが村に到着した時、青年は一人で畑に何かの種を蒔いていた。
挨拶への返答がつれない言葉だったことに、ラヴィリスは全く戸惑いもせず、言葉を紡ぐ。

「率直に言おう。君を、私の執事として雇いたい」
「―は?」
「文字通りだ。この村を国の保護下で再度生き返らせたい、そしてその代償に、君には私の執事として働いて欲しい」

ラヴィリスの声色に嘘偽りはない。
となると、今度は青年が困惑する番だった。

「あんた、国の偉いさんか?」
「そう。王家継承の第一候補にして唯一の王女、ラヴィリスだよ」
「・・・・そうかい、からかいに来たのか?」

青年の表情に、失望の色が広がる。
村を立て直したいのは、青年の全霊をかける夢だったのだろう。
しかし、来たのは軍を率いるが能の娘ひとり。
確約されているわけでもない契約を結ぶほど、青年は愚かではない。のだが―

「からかいではないよ。私は君を必要としているんだ」


続くか分からない

187:名無しさん@ピンキー
12/07/05 20:32:37.96 GVMVvdrb
続きキター!!超うれしいです。更に期待してます。

188:名無しさん@ピンキー
12/07/06 20:21:11.96 ASIMD2xO
投下します。
ユゥとメイリン11
6レスの予定

189:ユゥとメイリン11 1/6
12/07/06 20:23:12.72 ASIMD2xO

僕はその後、メイリンの下肢を拭くために寝室まで運んであげた。もちろん綺麗に拭き清めるため、寝台に
座らせて上から順に脱がしてあげる。
「あの……ね、ユゥ。拭くだけなら、ちょっとめくって拭いて、汚れたとこだけ替えればいいような?」
「だめだめ、そんな適当なことしちゃ。メイリンはお姫様なんだから。それとも、男の精液を身体につけた
まま過ごす趣味でもあるの。」
僕は順調に帯をはずしながら言った。着替えはいつも見ているのだから、脱がすのは簡単だ。上着を脱がせて、
さっきは着付けた上からしか触れなかった胸の線をなぞる。
「そこ、は、……関係ない、と思う……。」
「黙って。大人しくしてないと、拭いてあげないよ?」
少し触ってあげただけで、柔らかな胸の先端は、下着の上からでも分かるくらいにぷっくりと尖ってくる。
その先端を摘まんでゆっくりと弄ると、メイリンはたまらず甘い声を上げた。
「あんっ……、だめ、さっきした、ばかりなのに……。」
「しっかり反応してるのに、またそんなこと言うんだ。いつだって、メイリンの『だめ』は、『悦い』って
意味なんだから。」
僕が笑みを含んだ声でそう告げると、メイリンは真っ赤になって口をぱくぱくさせる。

「そうだ、いつも初めには、こうしてあげる約束だった。」
僕はメイリンの顎を軽く持ち上げて、噛み付くように激しくくちづけた。少しも逃がさないように、きつく
抱きしめる。合わせた唇から、唾液をまとめて送り込むと、メイリンはびくりと身体を震わせて、大した
抵抗もせずにそれを飲み下した。甘い、甘い唇。綺麗に並んだ真珠のような歯も、その奥に隠れている
柔らかい舌も、もう全部僕のものだ。
くちづけが終わっても、しどけなく開いたままの唇を指でなぞり、唇の端から零れた唾液を拭い取ってあげる。
とろんと蕩けたような瞳で僕を見上げるメイリンは、この上もなく扇情的だ。
「メイリン、僕を気に入ってくれたってことは、夜伽の方も、気に入ってくれた?」
まあ何を試すかといって、そっちの相性を試すってことだったんだろうな。それだけでも充分過ぎるほど、
ぶっとんだ上流階級だと思うけれど。
「よ……夜は、少し、意地悪だと思った……。」
「ふうん? 意地悪くされるのが、好きなんだ?」
僕がからかうようにそう訊くと、メイリンは更に耳朶まで真っ赤になる。
「そういうこと、言ってるんじゃ、なくて……」
まあ、なんと答えてもたっぷり苛めてあげるけれど。メイリンはそもそも、可愛すぎるんだ。あれだけ煽って
おいて、一回で終わるわけがない。嘗めるな。若い男の健全な性欲、嘗めるな。

下帯も裙も順に脱がせて、下着に手をかける。一番下に着た単(ひとえ)の衣は、べっとりと白濁で濡れて
太ももに貼りついていた。ゆっくりとメイリンを裸に剥きながら、ひどい臭気を放つそれをむしろ白い肌に
塗りこめるように指でなぞる。
「これ……気持ち悪かった? すぐに、拭いてあげるからね?」
一糸纏わぬ姿になったメイリンは、じっとしてないと拭いてあげないと言うと、美しい肢体を明るく陽光に
照らされながら、神妙に待っていた。
初めて会った夜も完璧な美しさだと思ったけれど、男を知ったその身体は、よりいっそう艶めいて美しさを
増している。
ふっくらと量感と柔らかさが加わって、男の手を誘うように揺れる胸のふたつの膨らみ。その頂で薔薇色に
色づいて、肌の美しさに彩を加える赤い果実。少しずつくびれてきた腰、そのせいで一層強調されるように
なったまるいお尻。すっきりと伸びる細い脚は、感じてくるといつだってきゅっと僕に絡むのだ。
乾いた布と、湿らせた布を交互に使って、メイリンのきめの細かい柔肌をそっと拭いてあげる。メイリンは
この白濁の処理には割と神経質だから、丁寧に拭く。


190:ユゥとメイリン11 2/6
12/07/06 20:25:37.11 ASIMD2xO

メイリンの肌は、近くで見てもとても綺麗だ。いつもきっちりと衣で隠された素肌は、抜けるように白いのに
ほんのりと健やかに赤みがさして、触ると釉をかけた陶磁器のようにすべすべで、なのに温かくて柔らかくて、
こんなに触り心地のいいものは他にないとさえ思う。
「ここも拭いてあげなきゃね。」
当然のように、僕はメイリンの脚を開かせた。芳醇な雌の匂いが立ち昇る。
「そこはっ! 拭かなくて、いいと思う!!」
真っ赤になって抵抗するメイリンを、僕は優しく押さえ込む。
「どうして? ほら、濡れてる……。」
水滴をひとつずつ拭くときのように、清潔な布の端を尖らせて持ち、その先端でそっと触れる。ひくつく
花芯から溢れる蜜は糸を引くばかりで、布の先だけで何度触れてあげても一向に減ってゆかない。
ただその微かな刺激に、花弁が喘ぐように揺れるだけだ。
「ユゥ、だめ、だめ……っ!!」
「邪魔をしちゃ駄目だって、言ったよね? じっとしてて。」
メイリンがあんまり秘所を手で覆い隠そうと暴れるので、もうひとつ手拭いを持ってきて、後ろでくるくると
巻き付けて両の腕を優しく縛める。
「こんなに明るいところで、そんなとこ、みないで……! 恥ずかしい……!」
メイリンは両腕の自由を奪われ、身悶えて抗議する。でももちろん、脚は閉じさせてあげない。
僕は彼女の脚をいっぱいに開かせて、その秘密の部分を存分に鑑賞した。

「大丈夫、とっても綺麗だよ。」
それは偽らざる、素直な感想だ。メイリンの大切な部分が、僕に反応して揺れるのは、特にうっとり
するほど綺麗な光景だった。
確かに宵闇に揺れる蝋燭の炎の灯りと違って、陽の光の射す今は、複雑な肉の襞の陰まで余すところなく
見える。白い肌の中心でひくつく花芽は快感を求めて勃ち上がり、赤黒い血の色を思わせる花弁を開くと
中は鮮やかな桃色の肉で、蜜を滴らせながら僕を誘っている。
「いやらしい花みたいだ。」
僕はまた布の先でその花に触れた。今すぐその蜜をすすりたて、溢れる蜜壷の中に指を遊ばせたくて
堪らなかったが、もうそんなに急ぐ必要はない。
だってメイリンは、これからずっと僕の傍に居てくれるんだから。
布の先で触れるたびに、その花は恥ずかしげに震えた。花弁を指で広げ、もっとその蜜を吸い取ろうと
するほどに奥から溢れ出て、滴って夜具までを濡らす。

「そんなので……っ。つついてばかり、いないで……。わたし、おかしくなっちゃう……。もっと
ちゃんと、触って……。」
とうとうメイリンが先に音を上げた。もちろん僕にも異存はない。
「いつでも君の、望むままに。僕に、どうしてほしい?」
「あ……、ユゥのそれを、挿れて欲しい……。」
僕の一物は衣の中で、準備万端だった。というか先程精を放ったにもかかわらず、ほとんど萎えていない。
「今日は、性急なんだね、メイリン。」
そう言う僕のほうも限界だった。相手を焦らすときには、自分もまた焦らされている。早くメイリンと
ひとつになりたくて堪らない。
帯を解いて衣を脱ぎ捨て、天を向いた自分の一部を握る。ゆっくりと綺麗に濡れた花の中に埋め込むように
進めると、メイリンのそこは、熱く僕を包み込んで嬉しそうに歓迎してくれた。

「──っっ!!」
一気に奥まで捻じ込むと、メイリンは声にならない悲鳴を上げて身体をしならせた。仰け反った喉が
苦しげに呼吸を求めるのを、陶然として見つめる。軽く達してしまったみたいだ。
さっきもいったばかりなのに、なんて感じやすい、素敵な身体をしてるんだろう、メイリンは。
細い腰を抱き寄せて、反った身体を続けざまに何度も突き上げると、細い身体はがくがくと震えて、
繋がったところは僕を一層締め付ける。震えが治まってくったりするまで、何度でも何度でも、
そうしてあげた。



191:ユゥとメイリン11 3/6
12/07/06 20:28:06.02 ASIMD2xO
     *     *

「ね……、ユゥ。腕、ほどいて。ぎゅって、したい……。」
とろとろに蕩けた表情で、しばらくぐったりとしていたメイリンは、漸く甘えるようにそう言った。
「ぎゅっとして欲しい。」
メイリンの腕に巻いた布は、それほど強く結んだわけでもなく、抱き合ったままでも簡単に解けた。
自由になった細腕はたちまち僕の背を抱く。僕はまた嬉しくて泣きそうになった。
「メイリン……君が好き。」
僕もメイリンをきつく抱きしめた。言いようのない幸福感で満たされる。身体は溶け合ってひとつに
混じり合ってしまいそうで、僕の一部はまだメイリンの内で包まれている。これ以上の完璧が
あるだろうか。この完璧さの終わりをもたらす快感すら、今は憎かった。

どのくらい、そうしていたのだろう。それはほんの少しの間のようでもあり、永遠のようでもある。
この時間を途切れさせたくはないのに、何かに突き動かされるようにゆるゆると動き始めてしまう。
気の遠くなりそうな快感の中で、僕をこんなにも突き動かしてしまうものは何なんだろうとか、
うっすらと考える。
「んんっ……、好き、ユゥ……。」
メイリンがまたきゅっと抱きついてくる。その瞬間、なんだか分かった気がした。
僕を突き動かすもの。それはこの可愛い暴君、メイリンだ。
メイリンだけが、いつも僕をおかしくさせる。
メイリンが、いつも僕を支配する。
いつだって君に優しくして、微笑む顔が見たいのに、意地悪して泣きそうになるのも見たい。頑張って
びっくりさせたいし、驚かせたいし、死ぬほど笑わせたりもしたい。
でもこんな風に、快感でとろとろに蕩けた表情も、格別だ。

ああ、僕を支配するのが君なら、仕方がない。だって、メイリンなんだもの。
最高の時間はずっとは続かない。でも終わりを恐れる必要もない。
今日も明日も明後日も、君は僕のものなんだから。
僕はすっかり観念して、快感の命ずるままに身を委ねる。腰の動きは意識せずとも自然に速まっていった。
メイリンは僕にぴったりと抱きついて、揺らされるたびに可愛い嬌声を上げる。
「メイリン、気持ちいい?」
「気持ちいい……。」
「僕にこうされるの、好き?」
「ユゥにされるの、好き……。」
メイリンはうわごとのように繰り返しているだけなのに、その言葉はどうしてこんなにも僕の下半身を
直撃するように響くのだろう。いつだってメイリンは可愛い凶器だ。僕を上手に壊す。僕は熱が
せり上がってくるのを感じて、一層強く腰を振りたくる。
「あぁっ!! あっ、ユゥ、好き、好きっ!!」
メイリンは掠れかけた声で叫んだ。僕は残ったなけなしの理性でメイリンから僕の分身を引き抜くと、
白い腹の上に欲望の飛沫を浴びせた。


     *     *

192:ユゥとメイリン11 4/6
12/07/06 20:30:12.42 ASIMD2xO

「あの……ね。ユゥが意外と……その、男女の閨の営みが好きなことは分かったけど、その……
そういうことは、わたし以外としちゃ、駄目だからね。」
褥で単を羽織ながら僕に身体を拭かれて、メイリンはまたしてもそんなことを言い出す。僕は思わず
転びそうになった。
「それはさっき、約束したんじゃなかったっけ?」
「でもでもっ!! ユゥはそんなに、女の身体には興味がないと思ってたし……。以前読んだ本に、
男は欲望が大きいほど多くの女性を侍らせたがるって、書いてあった……!!」
「……ぷっ。」
僕は思わず吹き出した。メイリンの変に偏った知識はいつも怪しげな本からだ。しかもそんな
怪しげな知識で、泣きそうなくらい真面目に心配している。
「メイリンって、馬鹿なの。」
僕はこんなにメイリンを見ていて、こんなに夢中なのに。どうして他の女のこととか考える
余裕があると思うんだろう。
「ば、馬鹿っ……?!」
メイリンは大きな目を更に大きく剥いて、真っ赤になる。それもまた可愛い。
「だってあんまり馬鹿なこと、心配してるし。なんて言うんだっけ、こういうの。……鈍い?」
「ど、どうしてそんなっ……父上様と同じようなこと、言うの?」
「……言われてたんだ。」
少なくとも、僕の気持ちはメイリンの兄上達には筒抜けだった。多分、周りの使用人の皆にも
だだ漏れだったに違いない。気付いてないのは、メイリンだけだ。

「おまえは母親に似て、色恋に鈍いねって。でも、人の心なんて、目に見えないもの。」
メイリンは拗ねて口を尖らせた。メイリンは他のことならかなりの聡さを見せるのに、こと
色恋に関しては多分壊滅的に鈍感だ。

「メイリンはさ、侍女とかついてるのに、そういう話、しないの。」
「わたし付きの侍女は皆、母上様がお選びになっているので……、男女のこととか、はしたない
話は一切、厳禁なの。」
それで変な本から変な偏った知識つけてるのか。もっと自然にそういう話題に慣れさせておいた
方がいいのに。
「僕が君に夢中なことくらい、どっから見ても丸分かりだと思うけど。」
言ってて恥ずかしい。結局分かりやすい、単純な奴だよな、僕って。

「わたし、男の人から好かれたこと、ないもの。」
メイリンがとんでもないことを言い出すので僕は座ったまま転がりそうになった。無い無いないない。
それは無い。
「まさか。」
僕はメイリンの頭のてっぺんから脚の爪先までをまじまじと見た。情事のあと薄衣を纏っただけの
彼女は、しっとりとした色気を湛えて、息を飲むほどに妖艶だ。
「母上のお客の高官とかが、二番目の妻にならないかと言ってきたこととかならあったけど……、
三十ほど年上のおじさんだったし、ひどく酔ってるみたいだったから、頭から水をかけて差し上げた。
その後その人は出入り禁止になったみたいで、二度と会わなかったけど。」
出入り禁止とか生ぬるい。僕がそこにいたら、メイリンにそんなことを言う奴は、もっと酷い目に
あわせてやるのに。
「メイリンの行ってた、学問所とかは? あそこは同い年くらいの男が、わんさかいたじゃないか。」
「あそこにいるのは、ぜんぶ学友。第一いいとこの坊ちゃん達なんだから、皇族であるチェン家の
気位の高い娘とどうこうなろうなんて変わり者はいないの。皆自分と同じか、ちょっと家格の低い
くらいの、大人しくて従順な娘を許嫁に貰ってる。」
僕は理解できなかった。こんな可愛い女の子がそばに居て、心を奪われない奴が居るなんて。


193:ユゥとメイリン11 5/6
12/07/06 20:32:15.17 ASIMD2xO

「いつか、一緒に居た奴は?」
「いつか?」
「僕が君を、初めて迎えに行った日、一緒に居た奴。」
メイリンはうーん、と眉を寄せた。全く思い出せないらしい。いつも比較的仲の良い数人と、講義の
内容について喋りながら迎えを待つから、その中の誰かだろうと言った。
「第一ねえ、学院の皆は、兄上様が恐いの、卒院してからまで、無駄に目を光らせてるんだもの。
それから父上様も、上流階級の間ではちょっとした有名人でね、ほとんどの学院生は、恐がって
近寄ってこないの。」
比較的仲の良い数人は、皆それぞれに可愛い許婚の居る『安全な』学友なのだそうだ。
そういえばユイウ様達が、メイリンには悪い虫がつかないよう目を光らせていた、と言っていたっけ。
多分、摘まんで棄てられた悪い虫も、それなりに居たんだろうな。ご愁傷様。

「それに、わたしみたいに何にでも首を突っ込んで、解決したがる娘は、嫌われるの。女のくせに、
我儘だって。」
「それは、我儘じゃないよ。」
僕は自信を持って言った。
「メイリンの、優しさだ。それを我儘だなんて言う人達のことは、放っておけばいい。」

僕はメイリンの横に座り、細い肩を抱いた。
「つまりメイリンは、圧倒的に経験が足りないんだね。そして生身の男のこともよく分かってない。」
メイリンは大きな瞳をくるくるさせる。
「ん? んー? そう、かも?」
「じゃあ、初心(うぶ)なメイリンに、色々教えてあげなきゃね。」
僕はメイリンのうなじに、ちゅっとくちづけた。彼女は小さくひゃっと声を上げる。
「え、えっと……。」

「メイリンはさ、僕のここが硬くなる現象、今まで何だと思ってたの。」
僕はメイリンのほっそりした手を取って僕の股間を触らせた。そこはまた硬さを取り戻しつつある。
彼女は真っ赤になって急いで手を引っ込めた。
「それは……、男は女が誘えば、相手が誰でもそうなるって……。」
「僕は多分、一度くらいなら何とかなるかもしれないけど、次からは無理だな、試してみたことないけど。」
「でもユゥは、わたしがご主人様だから、命令だから夜伽に応じてるって、いつもそう言ってた。」
きょとんとした目をして、メイリンは僕を見上げる。
「それは……、そう言ったかもしれないけど。」
ああくそ、まだ言わなきゃいけないのか。鈍いって大変だ。
「要は、好きだからしたいとか言っても駄目だと思ってそう言ってただけ!! どうせしたかっただけだよ!!」
言わせんな恥ずかしい。
「メイリンを目の前にして、好きだなー可愛いなー、とか考えると、すぐこうなるの!!」
今だって飽きずにそんなことばっか考えてますよ! 悪い?! だって仕方ないだろ、健全な男なんだから!!
「……いつから?」
「いつから?! 最初っからに決まってるだろ!! メイリンは最初っから可愛いんだから!! 自覚ないの?!」
メイリンは変な形に唇を引き結んで、ぷるぷる震えていた。その目に涙の雫が盛り上がる。
うわ、なんでそこで泣く。
「……そんなこと、一回も言わなかった……!」
「言ったよ!! 可愛いって。」
確か可愛いとは言った。睦言の最中とかに。言ったはず。
「聞いてないよう……!!」
メイリンは真珠のような涙の粒を零す。ああはい負け負け。僕の負けです。泣かれると弱い。
僕は優しくメイリンの頭を撫でてあげる。


194:ユゥとメイリン11 6/6
12/07/06 20:34:16.00 ASIMD2xO

「じゃあ、これから憶えて。僕はメイリンが好きで、可愛くて、なんでもしてあげたいの。分かった?」
メイリンはしゃくりあげながら、僕を上目遣いで睨む。まだ納得してないらしい。
「こんなに可愛いのに不安になっちゃうなんて、メイリンはちょっと考えすぎだと思うんだ。
頭でばっかり考えてないで、体も動かした方がいいよ。」
「体を? 動かす?」
メイリンは軽く首を捻っている。本当に、分かってないなあ。
「僕がどのくらい君を好きか、疑いようもないくらい、分からせてあげる。」
僕は彼女への愛しさをたっぷり込めて言った。
メイリンが息を飲むより、僕が彼女を捕まえる方が早かった。愛情を込めてぎゅっと抱きしめる。
「離れていた時間の分も、たっぷり、僕を君の中に刻み込んであげるね。」
「あの……、あの……、あんまり酷く、しないで……。」
メイリンは可愛らしく震える。
「勿論。大好きな君を、うんと優しく、苛めてあげる。」
僕はメイリンをどんな風に啼かせてあげるか、幾通りも想像した。それは例えようもなく甘美な頭の
使い方だった。


そして僕達はそれから次の朝まで、二人きりで甘い甘い時間を過ごした。




     ─続く─


195:名無しさん@ピンキー
12/07/06 20:36:16.85 ASIMD2xO
以上です。
メイリンの逆光源氏計画なのは一部の人にはバレバレでしたね。
さっさと展開させてしまえばいいのに、予想外に時間かかってすみません。
今回は以上です。また書けたらまた来ます。

追伸:保管庫の管理人様、拙作を含む保管作業ありがとうございました。

196:名無しさん@ピンキー
12/07/06 21:25:48.18 g8GU84St
>>195
乙ですの!

というわけで、自分も続きをば。

197:続々・ひつまぶし
12/07/06 22:14:55.22 g8GU84St
ラヴィリスの声に、青年はため息をついた。
その溜め息一つさえ、ラヴィリスは気に入った。

「もう一度言う。私の執事として、共に居て欲しい。願わくば、執事を超えた、私の伴侶となって欲しいんだ」

ラヴィリスの猛る情熱は、隠しようが無かった。
青年はもう一つ溜め息を着くと、優しく笑んだ。

「理由は聞かない。だが、俺は君を知らない。知ろうとも思わない。権謀渦巻く場所に行くつもりもない」
「つれないな。だけど、私だって子供の使いで来ているんじゃないんだよ」

初めて見た青年の笑みを、ラヴィリスは胸に刻んだ。

「初めてなんだ。今まで、何不自由無く暮らしてきたのは事実さ。だけど、そんなものを全て捨ててでも、私は君が欲しいんだ」

初めての感情だった。
誰もに可愛がられ、敬われ、大事にされていた彼女に向けられた、生の感情そのままの怒声。
同時に、自分の無知を痛感もした。
そして、ラヴィリスは知った。
自分に真っ直ぐな感情をぶつけてくれる存在が、両親以外にいなかったことを。
真っ直ぐな感情をぶつけられることの、嬉しさを。
世間知らずを理解した姫がその喜びを思慕にすり替えるまで、時間はかからなかった。

「幸い私は未だ乙女の身だ。君の好みに開発してくれてもいい。縛られようと、如何な羞恥を与えられようと、君の奴隷にされようと構わない。望むなら、喜んで切り刻まれよう。だから、私を受け入れて欲しいんだよ」
「そういう問題じゃあないんだ」

青年の制止に、ラヴィリスは頷く。

「俺には、恋人がいたと言ったな。そして彼女が死んだことも」
「あぁ、確かに聞いている」
「つまり、君は永劫一番になることはないんだ。俺の中でね」
「だが、二番にはなれるのだろう?」
「一番ではないけどな」

青年が意地悪げに笑う。
ラヴィリスがそれに微笑み返す。

「恋人、伴侶とまではいかなくても。この村の再興を私にも手伝わせて欲しい」
「苦難の道だぜ。報われもしない努力の日々だからな」
「苦難結構じゃないか。城で本を読むよりも、戦場で采配を振るうよりも、学ぶことがありそうだ」

青年が、怒りだけの人でなくて良かったと、ラヴィリスは呟く。

「君の名前を聞きたいな。私はラヴィリス。ラヴィリス=エル=エリシアスだ」
「俺はセフィラスだよ」

二人が手を繋ぐ。
確固とした絆がひとつ、生まれた証だった。




続く?次があれば次辺りに濡れ場を入れたいなぁ

198:名無しさん@ピンキー
12/07/08 00:36:06.48 4XyQHFu2
>>195
GJ
心理描写が秀逸だね

199:名無しさん@ピンキー
12/07/08 01:18:41.46 Ps0fOCTp
>>195

純愛はいいのう

200:名無しさん@ピンキー
12/07/08 08:42:20.69 2ld6A3Qn
>>197
gj!
姫様の今後が気になる

201:さらばひつまぶし
12/07/09 07:36:16.90 wVe0vPRm
セフィラスは夜明けが好きだ。
なんとも言えぬ爽やかな気分になれる上に、涼やかだし。
大地を耕し、大地と共に生きてきたセフィラスだからこそ、夜明けの素晴らしさは人一倍理解していると自負している。

―が、今はそれどころではない。
全裸にエプロン、それも布地を限りなく減らした薄い品を身に着けたラヴィリスが、セフィラスの肉槍に奉仕している。

「んう、んん、んんん・・・♪」
「気持ちいいよ、ラヴィ・・」
「んふ・・ぅん・・・っ♪」

姫の豊満な、ともすれば巨乳を越え、爆乳と呼ばれそうな乳肉に挟まれ、更に先端を口内で愛撫される感触は、毎度のことながら極上の快楽である。
何よりも、人々が敬い憧れる戦女神の淫乱を知るのが自分一人と言うのは、ひどく誇らしいことだ。
セフィラスがグッとラヴィリスの頭を掴み、その暖かな口内を犯すと、ラヴィリスは自らの口に突き立てられた肉で快楽を求める。

「射精すぞ、ラヴィ!」
「ん、ん、んんぅっ♪」

紅潮したラヴィリスの頬が、縦に動こうとする。
それだけでセフィラスは理解し、ラヴィリスの喉に灼熱を射ち出した。
ビュク、ビュク、と勢い良く射たれる度に、ラヴィリスの細い喉が動き、飲み干そうとする。
10秒か、20秒かの射精の後、最後の一射分を口内でかき混ぜ、味わい、満足げに飲み干したラヴィリスは、姫と呼ばれていた頃には想像も出来ぬ淫靡な笑みを見せていた。

「おはようセラ。朝一はやはりセラのミルクに限るな」
「おはようラヴィ。・・全く、君が淫乱なのは恋人付き合いの頃から解っていたけど、こう毎朝毎晩とは思わなかったよ」
「仕方ないだろう?処女だった私の初めてを月夜の下で奪ったのは、セラ、君だよ?あんなに気持ち良くて幸せなこと、私は知らなかった」
「俺も、君が淫乱だとは思わなかったがね。野外で尻穴を犯されて、放尿しながら絶頂したり、それを嫌がるどころか大好きになるなんてさ」
「普通にセックスするのも気持ち良くて好きだし、私が上に乗るのも好きだよ。犬のように首輪を付けられて、四つん這いで犯されるのもいい。尻穴を犯されるのも、大好きだよ」
「とんだ変態姫だ」
「私をそうしたのは、セラ、君だよ?」

二人とも全裸のまま、時折キスなどをしながら語り合う。
二人が初めて交わってから、いつも性交の後はこうやって語り合っていた。


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