【なんでもあり】人外と人間でハァハァするスレ7at EROPARO
【なんでもあり】人外と人間でハァハァするスレ7 - 暇つぶし2ch254:貧乏神の愛(2/2)
12/02/07 00:14:51.60 3ouhJuNl

生まれて初めて、私は自分が死んでもいいと思ったの。
神が死ぬなんてありえないことだけど、
生まれたときから一度として必要とされてこなかったこの命を、
彼の想いと引き換えに差し出そうと思ったの。


「貧乏神が人を不幸から救うには、貧乏神の『本当の涙』を与えること」


福の神が話した言葉を、私は信じたことなど一度もなかった。
他人の不幸に慣れてしまった、
卑しい神である貧乏神に、涙なんて残っている筈は無いと思っていた。
ましてや『本当の涙』などという得体の知れない液体が、
自分の目から溢れ出よう筈が無いと思っていた。


私の流した、その涙が彼の薬指に触れたその瞬間。
何が起こったのか、私には分からなかった。
ただ眩い光の中で、
何百年も縫いとめてきた朝陽が波打ち、
絹のようにゆるやかに私の身体を包んでいく。
対になってほどけていく夜の闇が、
輝く犬星を従えて彼の身体を包み、
彼の青白い肌に、生命の息吹を注いでいく。
気が付けば私は、
彼の細い身体にしがみつくようにして、
肩を震わせて泣いていたの。

「福の神」。
そう、私は福の神に「転神」していたの。
辛く苦しい試練に耐えた先に、
神が祝福を受ける説話は存在した。
でもそれが何を意味するのかなんて、
私は考えたことも無かったの。

いや、そんな事なんてどうでも良かったの。
死に逝く筈の彼が両の脚で立っていることに目を大きく見開き、
唇を小刻みに震わせ、ただ、何も言い出せずにいた、
小さな小さな存在の私。

彼はまだ荒い呼吸を懸命に抑えながら、
それでもなお澄んだ瞳をたたえ、
微笑さえ浮かべながら、私にこう言ってみせた。

「言っただろ?『君を幸せにしてみせる』って」

彼は初めて、自分の言葉が恥ずかしい事に気づいたようで、ちょっとはにかんだ。
私はそんな彼を初めて可愛いと思い、胸に預けた頭を動かして、温かい鼓動に頬をうずめた。

(了)



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