12/02/04 17:59:22.25 x3ZTfpCe
>>224
そういえば昔々、まだ小学生に行くや行かぬやの頃、こんな話を読んだ。
以下、うろ覚え。
ある時、人間の女性に一目ぼれした鬼がいた。
鬼は農家を訪ね、「娘さんをください」と頼み込んだ。
突然の求婚に驚く娘の家族。
娘の親は鬼などに大事な娘を嫁入りさせるわけにはいかないから、
炒った豆を鬼に渡すとこう言った。
「この豆から芽を出させることが出来たら、娘を嫁にやろう」
もちろん、炒り豆は死んでいるから、芽など出ようはずも無い。
ところが娘を愛する純粋な鬼は、一生懸命、
炒った豆から芽が出るように世話をする。
雪の日も、土が雪に埋もれないよう、一生懸命世話をする。
他の村人からどんなに奇異の目で見られても、
鬼は気にも留めずに、世話を続ける。
その後、とうとう鬼は、旅に出ることを決意する。
娘を諦めたのではない。
「この世界のどこかには、炒った豆の芽の出し方を知っている人がいるかもしれない」
そう思って、炒り豆の芽の出し方の教えを請うために旅に出ることにしたのだ。
旅立とうとする鬼に、声をかける一人の人間。
それは、笠と蓑をかぶり、杖を持った例の娘。
娘は鬼に微笑みながらこう言った。
「あなたほど私を愛して下さる方なら、きっと私のことを幸せにしてくれるだろうといって、親が結婚の許しを出してくれたのです」
驚き、そして喜ぶ鬼。
そうして二人は連れ添って旅立つのだった…的な。
あれは昔話だったのかなあ…。すごく感動したんだけど。
詳細知ってる人、いる?
230:名無しさん@ピンキー
12/02/04 20:18:26.25 QUSVcJJa
>>230
イイハナシダナー
ちとスレチかもしれんが某所より甜菜
772 名前:可愛い奥様[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 22:39:05.50 ID:2yK+QhKc0
929 名前:Trader@Live![sage] 投稿日:2012/02/03(金) 02:01:47.23 ID:lZNJpby2
節分なんてどうせどうせ彼氏が鬼役になって彼女に豆ぶつけられながらも
「ガオー」
とか襲いかかって
「キャーww」
とかいちゃついて
「鬼の金棒だぞー!」
とかやって一物突っ込んで腰カクカク振って
「種はーうちー種はーうちー」
「ダメダメーそとそとーwww」
とかやんだろ。けっ
231:名無しさん@ピンキー
12/02/05 01:56:18.20 ZBlR1msF
>>230
それ自分も聞いたことあるよ
昔節分にまつわる話として読み聞かされた
ただ自分が聞いた話は、230の話の、鬼が炒った豆を懸命に世話するってところまでで
「こうして知恵をはたらかせて、鬼から身を守りました。
以来鬼から身を守るために炒り豆を使うようになりました」
的な感じの終わり方だった。
もう少しいろいろあって長かったような気もするが。
幼心にも、そんなに鬼が想ってくれるなら娘は結婚してもよくないか
むしろしろよ!と思っていたから、230の話を読んですごく嬉しくなった!
今思えば、そんな昔からすでに異種族萌えが発露してたんだな……
232:名無しさん@ピンキー
12/02/05 02:11:46.47 fex4v4dB
>>232
そうそう、ぐぐっても説話しか出てこない。
それをベースにした創作だったのかなあ…。
多分1980年~1983年の間、一応書店で取り寄せ可能な、
非常に発行部数の少なそうな投稿系(?)の本に載ってて、
この話自体にはちゃんと可愛らしいイラストも描いてあった。
他にも面白い話はあったんだけど、当時の記憶がかなりごっちゃになってしまっている。
もし親父がその本を捨てていなければ、実家に帰ったときにでも探してみたいなあ。
233:名無しさん@ピンキー
12/02/05 06:08:34.73 SFdVnh2A
この前見たテレビでは「魔を滅する」から「魔滅」、つまりマメと読んで、って言ってたんだが
234:名無しさん@ピンキー
12/02/05 08:09:28.83 sG66mXV7
>>227
こういうノリ大好きだw
ありがとうGJ!
保管庫にある変態AIの話とかもすげー好きなんだよなぁ
またいつかああいうの書いて欲しい
235:名無しさん@ピンキー
12/02/05 08:20:09.73 Grts7ToQ
うむ 変態にいいようにされる女の子は萌える
人外は人間より性欲強いイメージがある
236:名無しさん@ピンキー
12/02/05 08:48:36.76 sG66mXV7
「……そろそろ…出る」
「お…鬼は、外ぉ…っ!」
「………うっ」
「はい交代ですね…失礼します」
「あぁああ……入ってる…福のが、はぁっ…入ってる…」
「気持ちいいですか?動きますね」
「うん…うん…あっ、あん、あ」
「さっきまで鬼のをあんなにくわえ込んでいたのに、もう僕のを締め付けて…いやらしい人ですね」
「やだぁ…いじわる、言わ、言わない、で…」
「おい、口借りるぞ」
「んぅぅ……ん、ん、んぅ」
「さすが鬼の金棒は違いますね。
もう復活ですか」
「こいつがどこもかしこも気持ちいいのが悪い」
「本当に……あなたの膣内は最高ですよ」
「んんん、ん、んん」
「またイくぞ……っ」
「ぷぁっ……あ、あぁ」
「は……っ!
……飲んでもくれないのか」
「お、鬼は、そと、なのぉ…」
「僕もそろそろイきそう、です…」
「私も、私も、もう、イく……!」
「中に出しますよ…」
「うん、うん、中に…福は中に、ちょうだい……っ!」
「イきますよ……はぁ、イく……っ!」
「あ、あ、あぁああぁ……っ!」
「(差別だ……)」
鬼×人は好きなんだが
自分で書いて福ってなんだかよくわからん
237:名無しさん@ピンキー
12/02/05 10:51:05.43 R7jnB2SC
福と聞いて普通に福の神で再生された件
柔和な恵比寿に優しく愛されるもよし、ガチムチ毘沙門天に激しく愛されるもよし
でも、神様じゃスレチになっちゃうかな
238:名無しさん@ピンキー
12/02/05 10:55:41.84 Q95ztN5i
そんなあなたにこんなスレ
世界の神話でエロパロ創世4.5
スレリンク(eroparo板)
239:名無しさん@ピンキー
12/02/05 20:04:34.35 Grts7ToQ
>>237
鬼に金棒で噴いたw
そして歳の数だけ豆を食べられるんですね分かります
240:903 ◆AN26.8FkH6
12/02/06 01:44:08.23 tR8C7iR+
お久しぶりです、魔女と使い魔の人狼でいちゃいちゃするだけのを落とします
ラノベファンタジーくさいのと長めなので
駄目な人は「魔女と狼」でNGワードよろ。エロは多分後半あたり
241:魔女と狼 1
12/02/06 01:44:52.02 tR8C7iR+
そこは殺風景な部屋だった。白い壁と白い床と黒い扉で構成されたその部屋には
真ん中に一つだけ白いソファがぽつんと置いてあるのみだ。
ソファの上には女が転がっている。真っ白な長い長い髪と真っ白な肌と灰色の目を持つ
女は作り物のように綺麗に整った顔をしている。まだ年若く、少女と言ってもいい年頃だった。
皺のよった白い修道女のようなやぼったい白い服を着て、女はソファの上に転がっている。
横たわる、ではなく転がっている、としかいいようのないだらしの無い格好である。
服の裾はまくれ上がり、長い足が二本投げ出されている。髪は床まで落ち、
胸元は大きく開いていて肌が見える。
女はソファの上で身じろぎしながらぐだぐだと転がり、ソファから転がり落ちて「うー」とか「あー」とか呻いた。美しい顔に乱れた白髪がかかり、その様子も無駄に
美しい。女はなおもぐだぐだと転がり、ついには履いていた白いブーツを両方とも
脱ぎ散らかした。
いつもの事だが、酷い様子だ。部屋の隅に気配なく幽鬼のように佇んでいたもう一人は
思った。思ったが、いつものように黙っていた。2mを越す巨体を黒い鎧で包んだその顔は
鎧に負けないくらいに黒かった。一切の艶が無い漆黒の毛が顔を覆い尽くし、
鎧の下まで続いているのだろうと思わせた。獣の顔である。狼の風貌であった。
その異形の風貌の上から兜が目を覆い尽くし、瞳の色は見えない。伸びる鼻面には
何の表情も浮かんではいなかったが、内心の声が聞こえたのだろうか、
女は床に転がったまま人狼の方をジロリと睨みつけた。
「なによぉ」
「何も言ってない」
「なにか言いたそうじゃない」
「……今、一つだけ言うとするなら」
「やっぱりあるんじゃない、何?」
「下着が見えてるぞ、主人」
「みせてんのよ」
「しまいなさい」
人狼の言葉を鼻で笑い、女はだらしない格好でだらしない態勢のまま言い放った。
「使い魔ごときが主人に忠告するなんて500年早いわ」
元から主に何か言ったところでその言葉が聞き入れられた試しのない使い魔は
口を閉じた。彼女と長く付き合っていくコツは会話のキャッチボールを期待しない事だ。
242:魔女と狼 2
12/02/06 01:47:10.79 tR8C7iR+
白銀の悪魔、白の魔女、氷の乙女などと呼ばれ、世界でも稀有な魔女の一人で
あるところのリ・ルーリェ・ベリアレスは外見だけは美しい乙女だ。冷酷にして残忍、
氷の心に情は無く、愛を知らない孤高の乙女などと吟遊詩人は詠う。
しかし現実は残念極まりない。彼女には魔術以外に稀有な才能があった。
どんなに整った部屋でも、あっという間に混沌渦巻くゴミ溜めに変える才能だ。
魔術でやっているのかと思うぐらいの早業で散らかす。驚異的に整理整頓能力がなく、
ずぼらでいいかげんでだらしない。のが、リ・ルーリェであった。
平気でゴミ部屋でくつろぐ氷の乙女のだらしない姿を吟遊詩人共に見せてやりたいと
常々使い魔、グラドは考えてきた。主人に仕えて数百年。人狼の騎士として名高い
グラドウルフェルであったが、ゴミ溜めから主人の下着を拾って洗濯し、
そこらへんに開きっぱなしで放置されていた貴重な魔術書を閉じてそこから勝手に
召喚されていた魔獣を追い払い、栄養価を考えて一日三食きっちりと食事を作って
無理やりに食べさせる姿は涙ぐましいものである。
数百年の闘争の後、ごろごろするならこの部屋にしろ!とようやく妥協させたのが
この何も無い部屋であり、他の部屋は半分があいかわらずのゴミ部屋だった。
寝室など目も当てられぬ。気がつくとよく有機物の散らばる寝台は、グラドがいなければ
三日もたたぬ内に新たなる生命を生み出していることだろう。たまに生えるのだ、
謎のキノコとか。そうでなくとも毎日片付けても半日で混沌になる。
何故こうも散らかすのかグラドには理解できないが、何故彼が部屋を綺麗にするのか
リ・ルーリェには理解できない。どうせ散らかるなら無駄な努力ではないかと彼女は思い、
混沌の坩堝と化す事がわかっていても、少しでも人間らしい生活を保とうと
彼は悲痛な使命感に突き動かされている。
数百年の時を共に過ごしても合致しないかみ合わなさは、
もはや冗談かなにかのような致命的なほどのすれ違いだった。
「めんどくさいわ……やっぱりどう考えてもめんどくさいのよ」
盛大にめくれたスカートの裾を直そうともせず、下着が見えているのも気にせずに
白の魔女は転がりながらブツブツと言った。
「大体、四大魔女なんか呼ばなくてもいいじゃないのよ、あの小僧。
ちょっと聖剣抜けるからっていばっちゃってさ」
修道女のような禁欲的な服に似合わぬ黒いレースで飾られた紐のごとき小さな下着と
白い腹が見え、そこから伸びたすらりと長い脚がバタバタと空中を蹴った。
243:魔女と狼 3
12/02/06 01:49:04.30 tR8C7iR+
「超めんどい……今の内に聖堂壊しに行こうかしら……集まる場所が無かったら
執り行えないもの……。あ!いいこと考えたわ、グラド!お前、私に化けて出席なさい!
そうよ、それがいいわ、私天才だわね!!」
「聖剣王が一発で見破る上に、地脈の竜の封印儀式に貴方がいないせいで儀式失敗したら、
この大陸が沈むが」
「正論ばっかり言ってお前はそれでいいの?!
人生、正論だけじゃ渡っていけないのよ!!」
「意味がわからない上に聖剣王を小僧って、何年前の話だ。
あの男が聖剣抜いたのが46年前、ちなみに前回の封印の儀式が83年前だぞ主人」
「うるさい犬」
「狼だ主人」
「禿げて破裂しろ」
グラドはため息をついた。最近主人はずっとこんな感じである。
原因はわかっている。聖剣王に会いたくないのだ。
聖剣に選ばれたちっぽけな少年は、今や広大な帝国を統べる王であり、
地脈の竜が一匹を打ち倒した最強の剣士でもあった。成り行きで少年と共に
旅をしてきた白い魔女は少年に恋をしていたが、少年が選んだのは別の女性だった。
稚拙な恋だった。好意を誰かに向ける事に慣れていなかった魔女の恋情は少年に
多大な嫌がらせという形でしか表されなかったし、幼い少年はそんな魔女の恋心に全く
気がつかなかった。当然の結果といえよう。傍から見ていて随分やきもきしたが、
結局はそんな終り方で、今でも主人は剣聖王に会うと変になる。彼からすれば
大切な仲間であり、友人だろうが、彼女にしてみればそんなポジションなど
いらなかったのだろう。欲しかったのは……。
「何か今日の夕食でリクエストはあるか?」
ごろごろとだらしなく転がる主人にグラドが声をかけると、薄い灰色の目が少し丸くなった。
「なによ、好きなものでも作ってくれるっていうの?じゃあカスタードチェリーパイと
ミルフィーユとクロテッドクリームたっぷりスコーンとオレンジピールの入った
ブランデーケーキとカスタードシューの山でも作りなさいよ」
「………………今日、だけな」
「えっ本当に?本当に作る気?じゃあジンジャークッキーも焼いてシナモンドーナツも
つけなさい、あとミルクプリンとカラメルケーキとえーとえーと」
「絶対に食べきれないからもうそこらへんで止めてくれ」
「食べ切ってみせるわよ、白の魔女見くびるんじゃないわよ犬」
「狼だ主人」
「うるさいわね、お前は私の犬よ。ほらお手」
差し出された小さな手のひらに、無骨な手を重ねると、今度こそ真ん丸になった
灰色の目がグラドを見ていた。
244:魔女と狼 4
12/02/06 01:49:47.13 tR8C7iR+
「他はどうする。犬らしく靴でも舐めるか?」
「やあね、なんかお前が私の言う事を大人しく聞くと気持ち悪いわ」
一体どうしろと。息をするように理不尽なセリフを吐く主人を受け流し、グラドは
部屋を退出しようとした。夕食の準備である。使い魔というよりはもはや主夫であった。
獣の顔に浮かぶ厳しい表情はリクエストされた菓子類のレシピを思い浮かべ、
城内の食料庫の中身と照らし合わせている為だ。
「足は舐めないの?」
部屋を出る寸前に、そんな声がかかった。振り返ると、転がったまま、
白い素足を見せて笑っている魔女と目が合う。いや、眼前を覆っている兜の為に
グラドの眼は見えていないが、確かに視線は絡み合った。捲れ上がったままの
スカートから見える白い腹と黒いちっぽけな下着、そしてそこから伸びる足は確かに
扇情的であり、挑発的であった。白く長い髪が乱れて、蜘蛛の巣のように床に広がっている。
グラドはゆっくりと主の下へ戻った。転がっている魔女の右足首を無造作に掴むと、
跪いて足の裏に舌を這わせ、ゆっくりと舐めた。わざとだろうか、ピチャピチャと
音高く響く足元と、跪いている使い魔の様子に魔女はニンマリと猫のように笑った。
左足を使い魔の腹へ伸ばし、ギュウギュウと踏みつける。左足はそのまま下へ
降りていき、彼のやや硬さを増してきた股間の上をなぞり、そして革のズボンの上から
それを踏みつけた。
「!!」
「続けなさいよ」
男であれば当然の痛みに人狼は悲鳴を噛み殺したが、魔女は気にする事も無く左足で
使い魔の腹を突いた。またピチャリピチャリと音を立てて、ざらついた肉厚の舌が
白い足の指を舐めていった。丹念に嘗め回される足の指の股をなぞり、薄い爪先の上を
赤い舌が滑り、尖った犬歯が滑らかな肌に触れる。魔女は、時折左足で人狼の股間を
軽く踏みつけながら、楽しそうな笑みを浮かべてその様子を見ていたが、ふいに
「もういい」と舐めさせていた右足を引いた。人狼の唾液に濡れた素足は、そのまま
ぶらりと空中で止まる。
捲れあがったままのスカート、そこから伸びる白い脚を見せたまま、ルーリェは
人狼に向かって商売女のように人差し指をまげて招いた。人狼は、音なき咆哮を上げて
少女へ飛び掛った。
245:魔女と狼 5
12/02/06 01:54:12.15 tR8C7iR+
白い壁と白い床と黒い扉で構成された何もない部屋。部屋の中央には白いソファが
あって、その白いソファの上には人が二人。ソファの上で犬のように四つん這いになって、
後ろから貫かれているのは白い魔女だった。愉悦の声を上げながら、鎧を着たままの
使い魔にあられもなく犯されている。白い修道女のようなやぼったく白い法衣は胸元も
はだけられ、形の良い豊満な白い乳房が腰の動きに合せて揺れていた。
薄桃色に色づいた先端を乳房ごと掴まれ、また声が上がる。
「はひっぁッヒィ……ッアッ」
まるで盛りのついた雌犬だ。主人はこうして時折使い魔を誘う。後ろから犬のように
主を犯しながら、人狼は少女の胎に埋めた己のペニスを引き抜いた。それがすべて
抜け切る寸前まで引き抜いてから、今度は腹を突き破らんばかりに勢い良く腰をぶつける。
人とも犬のとも違う、長大な陰茎が膣いっぱいまで押し込まれ、子宮口を叩いてまた
魔女に嬌声を上げさせる。陰茎は人に似ている。だが、根元から亀頭まで幾つも
ふくらんだ瘤が、人狼の性器を人の形から遠ざけている。グロテスクなそれは赤黒く
膨張しており、魔女の蜜でテラテラと凶悪にぬめっていた。
足の間から毟り取られた黒い小さな布が、魔女の愛液でぐっしょりと濡れそぼり、
ソファの端に引っかかっていた。あれを、あとで選択しなければならない。主人の
今纏っている服もだ。ふと主婦じみた、もはや呪いのように浸透した所帯じみた思考が
使い魔の頭によぎるが、そんな人狼の考えに気がついてか、魔女が首を後ろに向け、
白い手で獣の頭を引き寄せた。鼻先の長い獣人の貌は、人間と上手に口付ける事が
できない。人狼は、鼻先をずらし、大きな口を少女の唇に合せて噛み付くように重ねた。
先ほど自分の足を舐めていた人狼の舌を、魔女は躊躇いも無く受け入れ、
自ら獣の口の中に舌を這わせてきた。
繋がっている結合部からは泡立った愛液と精液の混合物が滴り落ち、人狼が腰を
打ち付ける度にそこら中に飛び散っており、その様子はまたもや人狼にのちの後始末を
思い起こさせ、少しばかり陰鬱な気持ちにさせた。
清楚な白い服の下には黒くて小さな下着。好きな少年に想いを打ち明けることも
できないのに、人外の使い魔と平気で寝る。嗜虐に喜びを感じ、被虐される事を愉しむ。
相反する主の矛盾の性質は、使い魔に苦い感覚をもたらす。長い付き合いだ、
主人が求めるなら何だってしてきた。欲を求めるなら満たそう、それが食であれ色であれ。
だが、主人は欲を満たしたいのではなく罰を受けたいのではないかと、
人狼は思わずには居られなかった。
246:魔女と狼 6
12/02/06 01:55:28.12 tR8C7iR+
どろどろに融けた結合部から、ペニスを引き抜く。
「ちょっ何やって……ッ」
文句を言おうとした魔女の髪を掴み、鼻先にペニスを突きつけた。自身の蜜と精液に
塗れたそれで、彼女の白い頬を小突いてやると、一瞬顔をしかめたが、そのまま素直に
唇を開く。そこに無理やり突っこむ。フェラチオなどという生やさしいものではなかった。
喉奥まで突き上げるように人狼のペニスが突っ込まれ、気管をふさがれた魔女の喉が
ぐぼ、と変な風に鳴った。窒息する寸前で引き抜き、そしてまた喉奥まで犯す。
暴れる女の身体を押さえつけ、髪を掴んだままそうやって何度も何度も魔女の咽頭で
ペニスをしごく。痙攣する喉の筋肉が性器を包んで律動する。射精しないよう、人狼は
何度か息を吐いた。
これも全て、魔女が望んだことだった。ひどい事なさい。うんと酷いこと。その方が
気分出るもの。魔女はよくそういって求める。犬みたいに四つん這いで後ろから
犯されるのも、こうやって無理やり口を犯されるのも、魔女が望んだ「ひどい事」だ。
魔女の口からペニスを引き抜くと、涙目で口や鼻から涎や鼻水を流して苦しそうに
咳き込む少女と目が合った。そのまままたその身体に乗り上げる。今度は正常位から、
足を掴んで無理やり開かせると、そろそろ限界の近い性器を股座に捻じ込んだ。
「ひぎ…ッあッやァ……ッ!」
悲鳴。身を捩る女の両脚を掴んだまま、人狼は大きく腰を打ちつけた。
肉が当たる音が部屋中に響く。ぐぽっと粘膜から空気が漏れる音がする。
涙で汚れた顔がまた、蕩けてきて、魔女が両手を人狼の頭に回してきた。
先ほど己の性器を捻じ込んだ唇に、また口付ける。舌が絡む。
ねえ、ひどい事しなさいよ。
それはつまり、罰だろうか。彼女は罰を受けたいのだろうか。
獣に犯された人間の母の胎から産み落とされた、醜い獣人。魔に穢された女だと
母を殺した村人達を皆殺しにし、魔物と呼ばれた人狼を打ち倒した魔女は、晴れ晴れと
「私の犬になりなさい」と言い放った。
「それがお前の罰よ。私が生きる限りお前は私に従う犬になるの。私を守り、
私に尽くして生きなさい。どう、楽しいでしょ?」
正直言うと綺麗好きの彼にはまさしく地獄だった。だが、母を亡くした後、初めて
安らぎを得る事が出来た居場所でもあった。主人が健やかであれ、満たされて幸せであれ。
それだけが人狼の望みだった。だけど主人は好きな男と結ばれる事も無く、
こうして怪物にその身を犯されて罰を受けている。何故。
魔女の身体を押しつぶすように、獣人は身を乗り出しながら腰のストロークを
早めていく。飛び散る泡が、白い腹や太腿を汚していく。粘膜と粘膜が擦りあわされ、
一撃を深く穿っていく人外の性器はついに少女の狭い子宮口をこじ開け、最奥まで犯した。
「あ、ああっおなか、おなか当たってるっ
「わかるか」
掠れた声で人狼が囁く。
「子宮まで入った」
「や、やだっおねがい、待っ……ッ」
その言葉を待たず、重い突きが魔女を串刺しにした。悲鳴の中から隠しきれない愉悦が
滲み、きれぎれの音になり、三度魔女の唇を塞ぎながら人狼は限界の近いペニスで、
魔女の子宮壁をどすんと突き上げた。絶叫。ぎゅうと膣が痙攣し、搾り取るかのように
人狼のペニスが引き絞られ、熱い絶頂が駆け上がってくる。
「やっやぁアああああぁ……ッ!!!」
「うぐゥ…ッ!」
魔女の子宮内に直接、人狼の膨大な精液が流し込まれる。互いにしがみ付きながら、
魔女と人狼は互いに快楽に押し流されていった。
247:魔女と狼 7
12/02/06 01:58:25.19 tR8C7iR+
ドプリドプリとまだ出ている。腹の中の熱を感じながら、魔女は人狼にしがみ付いた
まま、「あ」と何かを思い出したように呟いた。
「どうした主人」
「赤ちゃんできちゃうとか言おうと思ってたのに忘れてたわ」
「……そうか」
「何よ、もう賢者タイム?お前淡白すぎない?」
「……主人の方が淡白だと、思うが」
「何でよ」
「情事の後でどうしてこうまで人を萎えさせる事ができるんだ。天才か」
「あら褒めても何も出ないわよ」
「褒めてない!」
情交が終ったあとの魔女はあきれるぐらいにいつもの魔女だ。多分このあとは風呂の
用意をしろだとか新しい服を用意しろだとか食事はまだかとか言い出す。
「あ、あとセックス中に何か他のこと考えるの止めなさいって言ってるでしょ、もぐわよ」
「……申し訳なかった、もがないでくれ」
魔女ならやりかねない。まだ魔女の胎に埋まったままの性器が、少しばかり
柔らかくなった気がする。
「いまのところ、お前とするのが一番いいから許してあげる」
ちゅ、と音を立てて頬に口づけしてきた魔女は、涙や涎などで汚れていた顔を
ごしごしと擦った。
「いいのか?」
「いいわよ?何、私がよくなかったとか言ったらもぐけど」
「そうじゃなくて……」
もごりと口ごもる人狼の兜に、こつりと顔をぶつけたきた魔女はニヤリと笑った。
248:魔女と狼 終
12/02/06 01:59:06.50 tR8C7iR+
「お前は本当いっつもどうでもいい事で悩むわよね。男にちょっとひどいことされるの
好きなのよ、私。こんなひどい事されちゃう私かわいそうって思いながらするの、
楽しいわよ?罰とかなんなの、馬鹿なの?」
「!ひ、人の思考を読んだのか!」
「魔女だもん」
「魔女だもん、じゃなくて……!!」
「お前がどうでもいい事ばっかり考えてるのが悪いんでしょ。私の頭は覗かせないけど」
魔女は使い魔に抱きついたままヒヒヒと淑女らしからぬ笑い声を上げた。
その顔に苦笑が浮かぶ。
「ま、あいつの事はちょっとアレよ、ほら、別にもうどうのってないというかさあ……。
魔女って長寿でしょ。いまさらどうこうじゃないけど、一緒にいられないのって
キツいし色々考えちゃって。なんか、年取ったアイツ見てると、あとどれくらいで
いなくなっちゃうのかと考えちゃうし、どうしても、ね」
「……」
「この前孫が生まれたって喜んでたけど、私考えたら、あいつに結婚のお祝いも
言ってないのよね。子供おめでとうもまだよ。それなのに一足とびで孫おめでとうとか
言えるかっていうか本当馬鹿かっていう。アイツがね。私じゃないわよ、あの野郎がよ」
「……」
「もうあれかしらね、私も赤ん坊抱えていけばお互いおめでとうとか素直に
言えるのかしら……ふむ、これいい考えじゃない?」
「いいやちっとも!」
慌てて首を振るグラドに、リ・ルーリェは嫌な笑いを浮かべながら「もう1回する?」
などと聞いてきて、その身体を押しのけようとしたらますますしがみついてきた。
何の、というか誰の赤ん坊なのか考えたくもない。
この綺麗な顔をしてだらしなくて寂しがり屋で純真で淫靡で性悪な魔女は、
多分人狼が思っているよりも色々な何かを抱えていて、きっとそれは今のように
気まぐれに見せてきたり全く見せなかったりするよりもはるかに大きく、それら全てを
知る術は哀れな人狼にはないのだ。はぐらかせて見せた聖剣王への想いも、
この先も続く長い生への思いも、きっとこの先全て彼女を知る事は出来ない。
だけど多分、この先も彼女の生が続く限り、グラドは側に居るのだろう。
それは、罰にしては悪くない。
「最強の魔女と人狼の血を引く混血児とか……やっぱ産むなら最強な子よね」
なにやら魔女がブツブツと呟いていたのは聞こえない事にした。
249:名無しさん@ピンキー
12/02/06 09:08:19.99 qmEM9BXp
>>242-249
GJ
質がすごく高い。
退廃的であって厨二を引きずったところもいい。
続編強く希望
250:名無しさん@ピンキー
12/02/06 10:10:58.57 1SZPctfO
>>242-249
うおおGJ
こじれた感じの主従関係がドツボすぎて滾ったぜ
251:名無しさん@ピンキー
12/02/06 14:51:57.18 5xiXnXur
>>241
GJ‼
被虐趣味入ってる主とか好き過ぎてやばい
お互い色々持て余してる感じがぐっとくるね
252:名無しさん@ピンキー
12/02/06 22:04:53.50 QbRk85HL
石の花も魔女と狼もGJGJ
いいもの見させてもらった
そして鬼物ネタもーーー妄想が滾る
>>237が意外と嫌いじゃないぜw
最近貧乏神がときめいて福の神になるエロ見ちゃったから特にw
253:貧乏神の愛(1/2) エロは無いが後悔していない
12/02/07 00:05:02.79 Vysn3djO
私は悲しい貧乏神。
神などと名乗っても、崇める人などいやしない。
関わる人を破産させてしまう、忌まわしの存在。
そう。
そうやって、
もう何百年も孤独に生きてきたの。
幸薄い陰を落とした、憂いの横顔に偽りの恋を覚えて、
言い寄った男は何人もいた。
「こんな私にも出来ることがあるかもしれない」と、
恋という人間同士の精神の繋がりに、身を賭した事は何度もあった。
そしてそんな男達を、
何人も借金と言う名の地獄に堕としては罵倒を浴びせられ、
その度に「もう恋なんてしない」と心を閉ざした。
* * *
同じ貧乏神なのに、
どうしてあの娘は笑って生きていけるの?
派手な衣装を身に纏って、愚かな男たちに分不相応の貢物をさせては、
菜種油のように金を搾り取り、使い物にならなくなるまで利用する。
骸となった男達を野に打ち捨てては、
また新たな、仮初めの恋に身を投じて、永遠の春を謳ってる。
私にはそんな事はできないの。
一生独りで、
夜の闇と朝の光を縫い合わせる内職に身をやつして、
たった独りで生きていくの。
* * *
そう、そうなの。
そう決めていたの。
なのに。
なのに、あの人は私に触れてしまった。
私に恋をしてしまった。
痩身の白い素肌に、澄んだ瞳をまっすぐに浴びせて、
「いつか君を幸せにしてみせる」と、世間知らずな愛で私を揺さぶった。
「私は貧乏神なのよ」と、
「あなたみたいな人間を何度も何度も不幸にしてきたのよ」と、
渾身の力で叫んだのに、
稚拙な言葉で詩という名の愛を紡いでは歌い、
自ら貧困の螺旋階段を下りていった。
* * *
貧困の果てに肺結核に冒された彼の手を、私は初めて握ってみた。
やせ衰えた腕は、前にも増して細くなっていたけれど、
気丈にも握り返すその力は、むしろ生に溢れていて、
私の悟りの心を俗世に引き戻そうと、強く強く導こうとする。
今際の際にありながら、なお気丈に振舞う彼を見て、
何百年か振りに、私の瞳が揺れていく。
彼は咳き込みながらも私に言う。
「こんなところで、僕が死ぬわけ無いだろ」
「君を幸せにするまで、死ぬわけが無いだろ」
254:貧乏神の愛(2/2)
12/02/07 00:14:51.60 3ouhJuNl
生まれて初めて、私は自分が死んでもいいと思ったの。
神が死ぬなんてありえないことだけど、
生まれたときから一度として必要とされてこなかったこの命を、
彼の想いと引き換えに差し出そうと思ったの。
「貧乏神が人を不幸から救うには、貧乏神の『本当の涙』を与えること」
福の神が話した言葉を、私は信じたことなど一度もなかった。
他人の不幸に慣れてしまった、
卑しい神である貧乏神に、涙なんて残っている筈は無いと思っていた。
ましてや『本当の涙』などという得体の知れない液体が、
自分の目から溢れ出よう筈が無いと思っていた。
私の流した、その涙が彼の薬指に触れたその瞬間。
何が起こったのか、私には分からなかった。
ただ眩い光の中で、
何百年も縫いとめてきた朝陽が波打ち、
絹のようにゆるやかに私の身体を包んでいく。
対になってほどけていく夜の闇が、
輝く犬星を従えて彼の身体を包み、
彼の青白い肌に、生命の息吹を注いでいく。
気が付けば私は、
彼の細い身体にしがみつくようにして、
肩を震わせて泣いていたの。
「福の神」。
そう、私は福の神に「転神」していたの。
辛く苦しい試練に耐えた先に、
神が祝福を受ける説話は存在した。
でもそれが何を意味するのかなんて、
私は考えたことも無かったの。
いや、そんな事なんてどうでも良かったの。
死に逝く筈の彼が両の脚で立っていることに目を大きく見開き、
唇を小刻みに震わせ、ただ、何も言い出せずにいた、
小さな小さな存在の私。
彼はまだ荒い呼吸を懸命に抑えながら、
それでもなお澄んだ瞳をたたえ、
微笑さえ浮かべながら、私にこう言ってみせた。
「言っただろ?『君を幸せにしてみせる』って」
彼は初めて、自分の言葉が恥ずかしい事に気づいたようで、ちょっとはにかんだ。
私はそんな彼を初めて可愛いと思い、胸に預けた頭を動かして、温かい鼓動に頬をうずめた。
(了)
255:名無しさん@ピンキー
12/02/07 21:39:45.67 /hnQdigL
>>254 255
おおおお!!イイハナシダナー!!GJ!
256:名無しさん@ピンキー
12/02/11 21:57:10.11 Bma440m4
保守
257:名無しさん@ピンキー
12/02/16 22:44:54.82 3hhnGKDx
>>254-255
GJいい話をありがとう
愛は勝つだなぁ・・・
自分の中での最高の人外×人間は
ランスのレイ×メアリーアンだったりする
エロどころか純愛プラトニック路線だけどw
258:名無しさん@ピンキー
12/02/16 23:08:56.39 2I3MFNGX
>>258
また渋いところをwwwwそういう人嫌いじゃない
259:名無しさん@ピンキー
12/02/17 13:08:50.97 dbDfTv/E
はーとふる彼氏 涼太×ひよこ
完全版、ガイドブック、ホリデースターのネタバレあります
NGは「死が僕らを分かつまで」でお願いします
260:名無しさん@ピンキー
12/02/17 13:13:41.21 dbDfTv/E
一羽きりになってしまってしばらく経った後、僕はひよこと一緒に暮らすようになった。
でも、ホモ・サピエンス保護区で鳥が暮らすことは容易に許可されなかったし、学園側からも難色を示された。
ひよこが人類の親善大使として抜擢されていることから、最終的には僕たちの同棲が認められた。
ジャッカルの群れと縄張り争いをしたり、素手で郵便ポストを引っこ抜く彼女を敵に回すと、ろくなことにならないってわかったみたい。
それから、間もなく。
漆原さんのお店で、ラブさんとアザミさんの結婚式が行われ、僕とひよこもお招きにあずかった。
ちょっと緊張しながら出席した式は、身内やごく親しい友人だけのとても温かくていいお式だった。
アザミさんが投げたブーケをひよこがフライングキャッチし、次はお前らだな、とからかわれたのが恥ずかしかったけど。
僕もいつかはこうしてひよこと結婚するのかな、なんて漠然と考えていた。
素敵だった式も終わり、僕とひよこは家に帰った。
相変わらずひよこの家はワイルドだけど、これでも住めば都。
僕は、押入れから引っ張り出してきた父さんの形見のスーツを脱いで、ハンガーにかけた。
学園のブレザーも似たようなものだけど、やっぱりこういう服は脱いだ時の解放感がひとしお大きい。
お風呂に入って、くつろいで羽を伸ばそう。そう思った時だった。
「待って、涼太」
突然、僕は温かいものに抱きしめられた。これは、ひよこの体?
「ちょ、ちょっとひよこ、どうしたの?」
「どうしたの、じゃないよ。涼太、好きだよ……」
いつの間にか裸になっていたひよこに、あっという間に押し倒された。
体力800オーバーの彼女に、腕力ではかなうわけもない。
僕のくちばしや鼻こぶに、キスの雨が降り注いだ。
基本的に、鳥類はあんまり仰向けになることがない。
もしなることがあるとすれば、それはむりやりそういう姿勢を取らされるか、意識を失うか、命を失う時だけ。
本能的に恐怖を感じた僕は、ひよこに組み敷かれながら必死にもがいた。
はっきりとは覚えてないけど、しばらく僕たちはもみ合いを続けていたように思う。
気がついたとき、ひよこは泣きそうな顔をして僕を見下ろしていた。
「涼太は私のこと、嫌いなの?」
今にも泣き出しそうなひよこの口から出た言葉を、僕はすぐさま打ち消した。
「好きだよ、ずーっと前から。巣から落ちた、幼い雛の僕をひよこが助けてくれた、あのときから」
その言葉をきいたひよこは、なぜか激しい感情を露わにする。
「嘘!じゃあ、なんで私と交尾しないの!」
きつい言葉とは裏腹に、ひよこは目に涙を浮かべていた。
261:死が僕らを分かつまで
12/02/17 13:18:50.57 dbDfTv/E
……そうなのだ。僕とひよこは同棲こそしているものの、交尾をしたことはなかった。
せいぜい、抱きしめあうか、くちばしでひよこの唇をついばむのがやっとのレベルで。
もちろん、交尾したくなかったかと言えば嘘になる。
僕だって、一鳥前のハトだ。交尾だってできる。たぶん。……その、経験はまだないけど。
だけど、僕は鳥類、ひよこは人類。
種の違いもさることながら、僕が彼女との交尾をためらっているのは、以下の理由からだった。
ハトの寿命は、だいたい10年から20年。それに対して、人類の寿命は50年以上。かつては、100年以上生きる個体も珍しくなかったと聞いている。
僕とひよこは、同い年の17歳。
つまり何をどう計算しても、一緒にいられるのはあと数年。
短い時間で去る運命の僕より、ずっと連れ添うことができる人類のほうが彼女にふさわしいんじゃないか?
それにひよこは、激減してしまった人類の貴重な女性だ。子供を産めることや高い身体能力も、人類の男からは魅力的に映るだろう、と思う。
だから、僕はひよこを抱けずにいた。
でも、それは体のいい言い訳。本当のところは、交尾するのが怖かったんだ。
ひよこは僕だけを見ていてくれたのに、僕の方は逃げていた、というだけ。
僕が逃避して現実を見ないことで、ひよこをどれだけ不安にさせ、また傷つけてきたか。
彼女の涙を見たことで、それを改めて思い知らされた。
それを償うためには、ひよこの気持ちを受け入れること。
すなわち、交尾することなんだ。
「ひよこ、ごめんね」
なんとか起き上った僕は、両翼でひよこをきつく抱きしめた。もう二度と離さない、という決意を込めて。
「僕は君と違ってハトだし、一生連れ添うことはできないかもしれない。でも、それでもひよこが好きだ。その、……よかったら、交尾しよう、か」
僕は首をすくめ、何度も瞬きしながらそう囁いた。もし僕が人類なら、目だけじゃなくきっと顔全体が真っ赤になってたと思う。
「その言葉、待ってたぜよ!」
光の速さでひよこの涙は引っ込み、ばっちこいとばかりに目が輝いている。
早い、早いよひよこ。こういうことは、もっと情緒やムードを高めていく努力が必要なんじゃないのかなあ……。
これが本当の肉食系女子?
僕は些細な疑問を封じ込め、何とかそういう雰囲気に空気を変えるべく場所を寝室に移動して行動を開始した。
ハトの交尾は、普通は求愛行動から始まる。
人類の交尾は、キスから始まることが多いらしい。
とりあえずは、人類のやり方に準じてやっていこうかな。
痛みを感じさせない程度に、ひよこの唇をついばんだ。何度も、何度も。
僕が大きくくちばしを開くと、ひよこがそこへ吸いついて舌を絡めてきた。
唾液が流れ落ちるのも構わずにむさぼりあっていると、猛然と僕はひよこを征服したい衝動に駆られた。
バイトではよく女装させられるけど、僕はノーマル以外の何物でもないし、好きな女の子を自分のものにしたいのって、生物として当然の欲求だと思うんだ。
僕は、ひよこの体をベッドに倒し、両翼で愛撫し始めた。
262:死が僕らを分かつまで
12/02/17 13:23:45.69 dbDfTv/E
狩猟民族のひよこは、やや小柄で筋肉質な体つきだけど、やはりつくべきところにはきちんと脂肪がついている。
風切り羽の先端で、ひよこの乳房を円を描くようにして軽くなでた。
ギュッと目をつぶって、体を固くして声を上げないように我慢している姿が可愛い。
小ぶりな胸だけど、きっと柔らかいんだろうなあ。素肌を触れないのがちょっと悔しい。
人類は、ここから雛に与えるミルクが出るなんて不思議な感じがする。
僕たちハトも、雛にピジョンミルクって物を与えて子育てするけど、それは消化管から分泌するものだし……。
って、まだ子育ての事を考えるのは早すぎるよね。
思い切って、くちばしでひよこの乳首をつついてみた。
「ひゃうっ!」
声をこらえきれなくなったひよこは、高い声をあげてのけぞる。
痛みを感じない程度にごく軽くついばんだだけだったんだけど、既に硬くなってた乳首には刺激が強かったみたい。
「ごめん、痛かった?」
「痛くはないけど、なんか、変な感じ……」
そう答えるひよこの瞳が熱を帯びて潤んでいる。
これが、人類が言うところの感じる、ってやつなのかな。
僕はもっと、ひよこのあげる声が聞きたくなった。
僕は、ひよこの秘所に右翼をあてがってみた。なんだか、湿った感触がする。
羽が濡れるのも構わず、ひよこの熱い泉をかき回し続ける。
「ああっ……!」
普段とは全く違う甘い声を上げるひよこに、すごく興奮してきた。僕も、もう限界だ。
「ひよこ、足を開いて」
「う、うん……」
ひよこのそこは、すでに熱く潤い、ヒクついて僕を誘っている。
「怖いの?」
「ううん。そ、そんな、こと、ないよ」
僕は、ひよこの体がかすかに震えているのに気が付いていた。言葉とは裏腹に、やっぱり怖いんだ。
でも、もう止まらないし、止まれない。
僕は、仰向けのひよこに覆いかぶさって、総排泄口から伸びてきたモノを、そろそろと挿入した。
ペニスがある鳥類は、カモやハクチョウ、ダチョウなど一部に限られていたんだけど、なぜか僕たちが巨大化したころからそれが普通になった。
その時、遺伝上の突然変異が激しかったらしいけど、それとどう関わっているかは分からない。
「……ひよこの中、狭くて、熱くて……。すごいね」
「……あぁ、ばかぁ……!」
僕とつながったひよこの顔は、きつく眉根を寄せて痛みに耐えているようだ。
……まったく、強情なんだから。
「大丈夫?痛いなら、抜くけど」
「だい、じょうぶ……」
僕はそのままの体勢で、右翼の風切り羽をひよこの耳、のど元、肩口、胸元へ順番に這わせてみた。
筋肉の緊張が少しでも取れるように、ひよこも、快感を感じられるように。
263:死が僕らを分かつまで
12/02/17 13:30:44.20 dbDfTv/E
普通、僕たち鳥類の交尾は、総排泄口をくっつけあって、雄が雌に精液をかけて終わる。
天敵に襲われる危険のあったころは、一分以内で終わる交尾が理にかなっていたんだろうけど……。
でも、そういう恐れがない今となっては、もっとじっくりと楽しみたいよね。
両翼でひよこを抱きしめた僕は足を支えにして、ゆっくりと体を揺らしてみた。
「痛くない?」
「う、ん……」
痛みが薄れたのを確認した僕は、動きを少し早めてみた。それに伴って、かすかにいやらしい音が響き始める。
密着させていた体をわずかに離し、律動しながらひよこの乳首をついばんでみた。
快感が高まった今では、ちょっとぐらいきつくつついても痛くはないみたい。……それどころか。
「どう?」
「ああぁぁっ……!」
突然、ひよこは僕の名前を呼びながら腰を前後に振りはじめた。こんな風にされると、僕の方が持たないよ。
「ひよこ?どうしたの?」
「涼太、涼太、りょう、たぁ……」
ひよこは僕の声なんか耳に入らないのか、僕の名前をうわごとのように叫び続ける。
「……そんなに、気持ちいい?」
「すごい、よぉっ……、いっ……、いぃぃっ……!」
ひよこの中は、僕らが動くたびいやらしい音を立て、ペニスに絡みついてやんわり締め付け、吐精を促している。
でも我慢しなきゃ。ひよこより先にイクわけにはいかない。
しっとり汗をかいたひよこの体を抱きしめ、僕は必死に射精感をこらえながら動いていた。
……それから、どれぐらいの間、僕たちはもつれあっていたんだろう。
汗にまみれたひよこを抱きしめている僕の羽毛も濡れている。
つながったところはもっとすごくて、粘度の高い体液でぐちゃぐちゃだ。
僕は快感の嵐に翻弄されながら、こんなにまでも深く、激しくつがえる相手と出会えたことを幸せに思っていた。
「……僕も、いい、よ、ひよこ、好きだ……!」
「あぁ……、あぁ……!も、もう……、だめぇ……!」
ひよこがひときわ高い声をあげた、と思うと、腰の動きが止まり、体全体がぎくぎくとけいれんしている。
その時、とりわけ強い締め付けを感じた僕は、もう我慢できなくなった。
「僕も、イク……!イクよ……!」
「来て、涼太……」
まだひくついている温かいひよこの中に、 僕は精液を吐き出した。
出す最中も中のヒクつきは止まらず、普通の鳥類なら感じることのない最高の悦楽を得ることができた、と思う。
僕は、ひよことつがいになって、きっと素敵な巣を作ろうと誓った。
あれから僕とひよこは、正式に婚約した。
婚約、といっても、単に学園を卒業したら結婚しよう、って約束したにすぎないけど。
僕は相変わらずバイト三昧、ひよこは狩りに出てはうどんを食べる日々が続いている。
そうそう、ひよこが今年のマメンタインには手作りコーンを送るんだ、って張り切ってトウモロコシを植えてたよ。
それが楽しみでもあり、ちょっと不安でもあるけど。
限りある命だからこそ、僕はひよことの日々を大事にして生きていきたい。
……いつまで、一緒にいられるかなんて、それは、誰にもわからないけど。
そんな何の変哲もない日々を送る僕に、ある日手紙が届いた。
どこにでもありそうな白い封筒には、差出人の名前がない。
ひよこが言うには、爆発物や毒物のにおいはしないそうだから、とりあえず開けてみることにした。
「一般的に、長命な動物は成長が遅い傾向にあります。
そして、動物の寿命は心拍数と関係があるという説を知っていますか?
心拍数の多い動物は寿命が短く、少ない動物は寿命が長い。
以前のハトの心拍数は108~250回/分でしたが、巨大化した今は大体60~90回/分と少なくなりました。
この心拍数は、人類のものとほぼ同じです。
あくまでも仮説に過ぎませんが、これが何を意味するものか説明する必要はないでしょう。
追伸
鳥類と人類がつがって同じ種になってしまえば、争いもなくなるかもしれませんが、どうでしょうか。
S・Ⅰ」
<終>
264:名無しさん@ピンキー
12/02/17 13:38:12.22 dbDfTv/E
以上です
NGワードの入れ忘れすみません
そして、もあさんごめんなさい
265:名無しさん@ピンキー
12/02/18 14:26:41.74 dJsdwJkA
GJ!
ハッピーエンドでよかったです!
266:名無しさん@ピンキー
12/02/18 18:07:35.77 DBmyqFVX
はーとふるでここまでとはすげえ…
267:名無しさん@ピンキー
12/02/21 21:02:08.14 0yPGiGNh
age保守
268:名無しさん@ピンキー
12/02/22 01:45:09.57 +OUjb1cQ
人外×少女をひとつ書きたいんだが誰かリクエスト頼む
269:名無しさん@ピンキー
12/02/22 03:01:28.49 yyGTSnrv
今話題のウルみゆおなしゃす
270:名無しさん@ピンキー
12/02/22 15:16:56.35 +OUjb1cQ
>>270
できたらオリジナルでオナシャス
じゃあ狼獣人×少女書く
271:名無しさん@ピンキー
12/02/22 21:11:46.67 MRMabW1+
ぐぐった、ウルみゆ萌えたw
はーどっかにレイ×メアリーアンもないだろうかー
wiki説明だけで萌えすぎる
>>271
全裸待機で期待してる!
272:名無しさん@ピンキー
12/02/23 02:55:25.42 hYgcdkNn
遅レスだけど
>>186
今はまってるドS人間(♀)×鳥系人外(♂)で想像したらめちゃくちゃたぎった
ありがとう
273:名無しさん@ピンキー
12/02/23 14:12:08.63 G0I8Bn2L
話題のって日曜朝のやつか
5人シリーズの時敵の怪人達が主人公達(蝶)の天敵って設定に滾ってた
虫×少女堪らん
274:名無しさん@ピンキー
12/02/23 20:40:01.73 iaWrYox3
ブンビーさんとピンクに最終回で萌え殺された
敵とは下手にイチャイチャしないのが良いなー
275:名無しさん@ピンキー
12/02/23 21:22:47.19 3eVUN9Um
ウルみゆ見たらコレクターユイのシンクロ(ウォーウルフ)思い出したわ
あれは獣人×人萌えも、AI×人萌えもできる貴重なキャラだった…
276:名無しさん@ピンキー
12/02/23 23:29:04.70 Ag1C+lGZ
>>230が実家で見つかったらしいと連絡が入った。
ちょっと週末見てくる。
277:名無しさん@ピンキー
12/02/23 23:34:11.25 RVQTnDeX
>>277
報告おながいします
278:名無しさん@ピンキー
12/02/24 17:58:48.85 Fos2KqYe
日本の昔話は人外の存在を許容するのが多いよな
婆さんが亡くなった後、自棄になって「鬼は内」って叫びながら豆を撒く話は思い出すだけで……
279:名無しさん@ピンキー
12/02/24 18:55:52.93 RsK3F8G+
竹取物語は、広義の「人外」に該当する?
280:名無しさん@ピンキー
12/02/24 20:12:26.89 FoEAHqR0
宇宙人…?
281:名無しさん@ピンキー
12/02/25 20:33:41.58 DL+DMHSG
>>230 の結果を話す。多少記憶違いもあったので、最初から。
出典は「子ども世界」(けやき書房)の第95号、昭和57(1982)年6月1日発行。
タイトルは「鬼と、いり豆」(雑誌内の「日本の鬼ども」という連載コーナーの54回目の話)
ぶん:山下清三、え:中村景児
以下、端折って話す。
「ごめんください」といって、突然鬼があらわれました。
応対したお母さんが用件を尋ねると、
「おたくの娘さんを、おれの、およめさんにしていただけないでしょうか」
お母さんはちょっと考えて、台所から煎ったそら豆を3つ、鬼に渡しました。
「この豆が、芽を出すことがあれば、娘をお嫁にさしあげましょう」
こうやって、鬼の申し出を断ったお母さんでしたが、鬼は真顔で
「芽を出したら本当に娘をお嫁にくださるのですね。そうしたら早速畑にまいてみます」
別のそら豆でごまかすことを恐れたお母さんは、
「私の家の畑でまいてください。水や肥料を与えても結構です」
お母さんの見ている前で、鬼はそら豆をうえました。
それから鬼は毎日現れ、水や肥料をやり、草むしりをしました。
春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が来てもそら豆は芽を出しません。
それでも鬼は世話を諦めず、雪をのけては藁をかけて、そら豆を守ります。
みかねた近所の人が、鬼に言いました。
「そら豆はもう死んでいるのだから、おやめなさい」
「芽を出してくれないと、お嫁さんに来てもらえないのです」
「それはそうですが、出来ない事は出来ないのです」
鬼は悲しそうに帰っていったが、それでもあきらめません。
どこかの村には、煎り豆から芽を出すことを知っている人がいるかもしれない。
明日からは何処までもその人を探して歩いてみようと思いました。
夜が明けて、鬼は旅支度を整えました。
ところが戸をあけると、そこには件の娘が立っているではありませんか。
「どうしたのですか、これは」
「あなたのところにお嫁に行くようにと、お母さんが言ってくださったのです」
「本当にそうおっしゃったのですか」
「本当です」
娘はにっこりして、
「お母さんは、あなたを見ていて、あなたの心が分かったのです。
この世で一番私を大事にしてくれるのは、あなたより他にいないから、
あなたの所に行くが良いと言って下さったのです」
雪がどんどん降り始めました。
「風邪を引くといけない。早く家に入りなさい」
鬼は、もう大喜びでありました。
(おわり。たぶん)
282:名無しさん@ピンキー
12/02/25 21:40:51.36 WQlKTViv
>>282
心の中に、言葉に出来ない幸福感が湧き出してきた
穏やかな気分になる話だなー
283:名無しさん@ピンキー
12/02/26 07:06:52.66 JH09NrNu
節分と豆 心の鬼を豆で追う
URLリンク(www.ryoutan.co.jp)
母親的には可愛い娘を鬼の嫁にはやれないが、
冬から春にかけてまでは同衾することを許した形なんだろうか。
284:名無しさん@ピンキー
12/02/26 19:28:31.58 82v05dDL
>>282
これは素敵なハッピーエンド昔話だな
このまま村に住んで結婚して子供作って仲良く暮らしていくんだろうな…
と思えるエンドで凄く幸せな気分になった
285:名無しさん@ピンキー
12/02/27 09:24:48.55 IMwyJGUj
プリキュアの鬼と黄色、狼と桃色が気になるこの頃
286:名無しさん@ピンキー
12/02/28 15:21:24.62 SWjvooVV
ピクシブの新人まに氏のもんむす姦には期待している
287:名無しさん@ピンキー
12/02/28 23:16:18.25 NfWT4mbp
うわあああ、どうしよう!
なんかここんとこぴくしぶで美女と野獣やら人外×人間(少女)がなんか多いと思っていろいろ検索・漁ってたら、
読む鈍器こと境界線上のホライゾンになんか竜(正確には半竜)と女子の素敵カップル(夫婦)がいると聞いて、
ついそのカップル(夫婦)中心の巻をあまぞんでぽちってきたよー!
怖い、鈍器恐い・・・・。
288:名無しさん@ピンキー
12/02/28 23:26:40.67 KpEBtEma
ここってぴくしぶの話題OKなの?
289:名無しさん@ピンキー
12/02/29 07:09:58.00 xkFBGbgO
普通に悪いだろう
こんなとこで名前出されて可哀想に…
290:名無しさん@ピンキー
12/02/29 10:19:02.99 j5iA2taL
>>288
ウルキアガと成実さんのことかー!
いいよねこの二人
他に分かりやすい異種ップルは少ないけど人外キャラは豊富だから
気が向いたら他の巻も読むことをお勧めする
291:名無しさん@ピンキー
12/03/01 03:43:12.22 XG0QlJAY
>>276のせいでコレクターユイドハマりしてしまったじゃないかどうしてくれる
全部見たらシンユイで何か書くかもしれない
292:冬眠な彼氏殿とぽかぽかな彼女さん 1 ◆DC//ihYmPg
12/03/04 17:07:58.53 aqU4Rwut
彼氏殿はトカゲである。正確にはドラゴンとか龍とかそこらへんのファンタジーなアニマルらしいのだが、火も吹かんし空も飛ばんのでトカゲでよかろうという奴である。
トカゲと言っても四足歩行なそのまんまのトカゲではない。人間の体にまんべんなく鱗をはっつけて、頭をトカゲのそれに挿げ替えて、尻にぶっとい尻尾を生やした、トカゲ人間だ。
正式名称、ミシューフシ。直立歩行の恐竜と言うのがわかりやすいかもしれない。
なんで人間の私がそんなんとつきあってるのと言われると大変困るのだが、まあ、勢いと言うしかない。人生そんなものである。ましてや華の高校生。十代なんて勢いがすべてだ。
「おはよー」
私が手を振ると、彼氏殿は片手を軽く上げてそれに応えた。冬も半ばの通学路にはまばらに雪が降り積もっている。
寒いと動きが鈍くなってほっとくとお亡くなりになってしまう彼氏殿は待ち合わせ場所のコンビニからのそのそ出てきた。
鮮やかな新緑の鱗。鋭い赤褐色の瞳。人間の声帯では名前が発音できなくて、あっちも発音が難しくて片言な、私の自慢の彼氏殿。
「行こか」
「ハイ」
ただでさえでかい図体をしてるのに着膨れして更に大きくなった彼氏殿は頷くなり最大速度で歩き出した。当然、私では追いつけない。
「彼氏殿早いっすよ」
「サムイ。シヌ」
「彼女置いてくんですか」
「シヌッテ」
「愛の為に命捧げないんすか」
「ハナシベツデス」
めんどくさくなったのか、彼氏殿は私をひょいと片手で抱きあげると脇に抱えた。そのままわしわし歩いていく。歩幅だけで私の身長くらいあるんじゃないだろうか。
「彼氏殿彼氏殿」
「ナンデショウ」
「大変申し訳ないんですがこれだと後ろにぱんてぃー大公開なので別の持ち方がいいです」
さすがにストッキングとペティパンツくらいは履いてますけどね。あったかいし。フシュ、と息を吐いた彼氏殿は、しばし思案の後にお姫様だっこしてくれた。
いぇーい世間の皆さま見てますか私今彼氏にお姫様だっこされてますよー、とちょっと叫んでみたくなる。そんなことしたら照れた彼氏殿にぶん投げられそうだから、しない。恥ずかしいし。
押し付けられた彼氏殿の鞄は重い。中には貼るほっかいろが大量に詰まっていた。待ち合わせ場所のコンビニは彼氏殿の為に毎日大量のほっかいろを準備してくれているらしい。ありがたいことだ。
そういえば、と私は下を見る。小学生くらいはころんと入りそうな巨大なクーラーバッグ。
「そういえば今日のお弁当なあに?」
「ブタ」
「また?」
「マタ」
クーラーバッグの中身はごろんとまるごとブタ、らしい。全力で爬虫類の彼氏殿は寒くてかつ栄養が足りなかったりすると冬眠の後に永眠してしまうそうな。
だからこうして冬になるとクーラーバッグに丸焼きにした動物の肉を詰めて持ってくる。そうして昼休みになるとストーブの横を陣取ってバリバリグシャグシャバキバキゴクンと豪快に食う。
あーんとかしてみたいなあ、と思わないでもないけれど、うっかり手を喰われでもしたら責任取って結婚してもらうしかない。それはそれで、とは思うけれど、人肉の味を覚えさせるのはちょっとなーとも思う。
「ね」
「ハイ」
「冬眠、しないでね」
「キヲツケテマス。キョウリョクシテクダサイ」
「してますよ」
彼氏殿の目がきろりと私を睨む。何か言いたげだったので、ぎゅっと抱きついてやった。
「湯たんぽ」
「ハア」
「あったかい?」
「トクニ」
こういう機微がわからんのが彼氏殿の欠点である。がぶりと鼻面に噛みついてやると彼氏殿はフシュッと鳴いた。
「ぎゅっとしてると歩きにくい?」
「ダイジョウブ」
「よかった」
白い雪の上に彼氏殿の足跡が続いていく。
293:冬眠な彼氏殿とぽかぽかな彼女さん 2 ◆DC//ihYmPg
12/03/04 17:12:47.90 aqU4Rwut
そして、放課後。
今日は生徒をいたぶることに人生をかけている感がある数学教師がフルパワーな宿題を出してきた。教科書を読んで出来るような内容じゃないから、真面目にやってくる奴なんてごく一部だ。
妹の彼氏だとかいう軟体生物はすらすら解けるらしい。漬物にでもされてしまえ。
翻って、彼氏殿は数学が致命的に苦手である。正直他の科目も私と接戦を繰り広げているくらいだが、数学だけは常に最低ラインをのたのた這いまわっている。
そんなわけで、彼氏殿はどんよりした目つきで黒板を眺めていた。放課後の教室で私と彼氏殿二人きり。私たちの他には時折べこんと音を立てるストーブがあるきりだ。
「そんな、面倒な課題だからってそんな落ちこまなくても」
「ハア。イヤダナア」
「ほら、脱いで脱いで」
どんよりしている尻尾をまたいで、彼氏殿の服を剥いでいく。八枚重ね。後四枚重ねていれば十二単になったのにな、と思いながら脱がせていく。
「あ」
また溜息をついた彼氏殿の歯に昼間の豚肉がひっかかっていた。骨ごとばりばり食える彼氏殿の牙は尖っていて大変恐ろしい。人間だってばりばり行けてしまうだろう。
「彼氏殿」
「ハイ」
「ちょっと口あけててね。肉取るから」
素直に口をぱかんと開ける彼氏殿。毒々しい赤色をした口の中に、細い舌がちょろんと乗っかっている。ちなみにこれ、引っ張ると大変伸びる。面白いくらい伸びる。引っこ抜きたくなるくらい伸びる。
加えて、この舌は私にぽかぽか殴られようが車に撥ねられようが平気の平左衛門な彼氏殿にダメージを与えられる数少ないポイントなので重宝している。牛タンならぬトカゲ舌。
いつもお世話になってます、と口の中で呟いて、あたしは牙の隙間に挟まった肉を取った。ちなみにこれはミシューフシの間でかなり親しい間柄だけに許される親愛表現、らしい。
「んふふ」
見せつけるように食べてやる。フシュシュシュと彼氏殿の鼻が鳴った。興奮しておられるようである。目つきがけだものですぞ彼氏殿。
いちゃいちゃムードだった教室のドアが引き開けられたのは、そんなときだった。
「お前ら、何やっとる!」
山口。世界史担当の、暑苦しいおっさんの見本みたいな教師だ。年中ジャージのなんだかいちいちめんどくさい人で、彼氏殿も私も素行不良で目をつけられている感がある。
「なにって……」
私が口ごもると、山口はむふーっと鼻の穴を広げた。
「どうして服を脱がしとるんだ」
「ああいや、ほっかいろ貼らないと帰る途中で冬眠しちゃうんです」
ねー、と彼氏殿に言う。彼氏殿はこくこく頷いた。動きが変に子供じみていて、なんかかわいい。
「本当にか? いかがわしいことしとらんだろうな」
「誰が来るかもわからんのに教室でそんなことしませんよ」
「校外でもか?」
じろりと睨まれる。鬱陶しいおっさんだが、すぐセクハラだーとか言われてしまうような今の時代、そこまで踏み込んでくる山口は頑張っている先生だと思う。だから少しだけ敬意は払っているつもりだ。
「不純異種交友など許さんからな!」
山口今ちょっとうまいこと言った。しかし屈するわけにはいかんのだ。
「違います先生。私たちはあくまでも青春の一ページとして、お互いを高めあうために初々しく交流しているのであります」
「嘘こけ」
あっさり一蹴されたので、彼氏殿にバトンタッチ。
「カノジョトハキヨイオツキアイヲサセテイタダイテマス。セケンニハジルヨウナコトハイッサイシテオリマセン」
「う、ううん……」
ぎらんと彼氏殿の縦長瞳孔が闖入者を睨む。肉食動物の気迫に圧されたか、山口は黙り込んだ。
それにしても彼氏殿、トカゲ面に胡坐をかいていけしゃあしゃあと嘘をつく奴である。なんだかんだ言って若い男女なのでやりまくりです。
この間一月分のバイト代をまるごと使って県内ラブホ制覇ツアーとかしました。性春の一ページ。私今ちょっとうまいこと言った。後で彼氏殿に言おう。
「……あんまり悪い影響を与えるなよ」
なぜか私に念押しして山口は出て行った。失敬な。確かになんも考えてない彼氏殿を堕落させたのは認めないでもないが、私に酒の嗜みを教えたのは彼氏殿である。
294:冬眠な彼氏殿とぽかぽかな彼女さん 3 ◆DC//ihYmPg
12/03/04 17:13:19.59 aqU4Rwut
なんとなく、白けた。ストーブがべこんと鳴った。ぺたぺたと彼氏殿の鱗にほっかいろを張り付けていく。それにしても大きな背中だ。
「ね」
「ハイ」
「冬眠しないでね」
「ドウシタンデス? サイキンソレバカリ」
「……そうかな」
「ハイ」
脇にぺたぺた。
「だってね」
首にぺたぺた。
「冬眠しちゃったらさ」
尻尾にぺたぺた。
「さみしいじゃん」
おしまい。
彼氏殿はきょとんとしていた。
「サミシイ」
「……」
「サミシイ」
「……」
「サミシイ」
「繰り返さなくていいです!」
彼氏殿はフシュシュシュフシュシュと大笑いしていた。殴っても、びくともしない。
「サミシ、サミシイッテ」
「やかましい! かば焼きにしてしまうよ!」
ばたばたしている尻尾を踏みつける。あーもう顔真っ赤。よほど面白かったのか、彼氏殿はまだ笑っている。
蹴っ飛ばそうとしたところで、がしっと抱き締められた。
「ユタンポアルカラダイジョウブデス」
彼氏殿の体はぽかぽかしている。ほっかいろだけじゃないぽかぽか。だから私も、ぎゅってした。
295:冬眠な彼氏殿とぽかぽかな彼女さん ◆DC//ihYmPg
12/03/04 17:16:13.50 aqU4Rwut
おしまい。
はちゅうるいまじはちゅうるい。
296:名無しさん@ピンキー
12/03/04 21:38:57.77 QL5uVT5M
GJ
ほのぼのしてていいな
297:名無しさん@ピンキー
12/03/05 01:41:01.67 /VckBtSH
全くもう…リア獣は末永く幸せになれと…GJ!
298:名無しさん@ピンキー
12/03/07 02:56:13.77 SnqLS1NM
乙!
ほのぼのしてて萌えた
爬虫類いいよなあ
299:名無しさん@ピンキー
12/03/09 00:04:59.49 +5Br+MbB
爬虫類マジカワイイ。
末永く爆発してくれ。
300:名無しさん@ピンキー
12/03/11 05:06:55.76 +P8w9YXn
素晴らしいんだが妹の彼氏の軟体動物氏が気になって夜も眠れず昼寝しそう。
301:名無しさん@ピンキー
12/03/12 06:33:29.76 BEcX979i
>>301
問に対する解の終わりに、二重に斜め線を書く彼氏さんに違いない
302:名無しさん@ピンキー
12/03/12 14:24:47.53 0N1z64XR
急に妄想が来たので
今ハ昔、京ヨリ東へ下ル男アリケリ。
「あー、ヤリてえなあ。それにつけても女のほしさよ。しかし女どころか、見渡す限り大根畑で人っ子一人いやしねえ。
……待てよ?大根、か。こりゃあ面白いことになるな」
「な、何なんですかあなた。私はまだこの畑で成長途中なんです」
「ふうん、その割には葉っぱがすごいことになってるじゃねえか」
「やめてください!引っこ抜かないで!」
「おやおや、嘘はいけないぜ?こんなにも食べごろになってるってのに」
「ひどい……」
「おとなしくしてりゃ痛い目には合わせねえよ。さあ、水できれいに洗うんだ」
「つめたいっ!やだぁ……!」
「ほら、お前の白い肌があらわになってきたぜ?なかなかそそられるな」
「そんなにじろじろ見ないで……。ダメっ、穴なんかあけられちゃ、私……!」
「さすが90%以上が水分なだけはあるな、もうグチョグチョだぜ。おまえみたいな淫乱にはこの棒をくれてやらなきゃ、な!」
「らめえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「ふう、これで全部入ったぞ。どうだ、俺のをくわえこんだ感想は。ん?」
「しゅごいぃぃぃ、あなたのおちんぽしゅごいのぉぉぉぉ」
「 いやだいやだと言いながら、この淫乱はほしくてたまらなかったんだろう?まったく……」
「あぐうぅぅぅ、ひいぃぃぃ、いいぃぃぃぃっ!」
「 ほら、こんなにいやらしい汁をいっぱい垂らして。もっと気持ちよくしてほしいか?」
「してぇぇぇぇぇ、お願いぃぃぃぃ」
「だったら、どうしてほしいかきちんと言ってみろ」
「あ、あなたの、おちんぽぉぉぉぉぉ、もっとぉぉぉ、ズボズボしてくださいぃぃぃ」
「お前は、本当に仕方のない淫乱だな。ほら、ほら!」
「あひいぃぃぃぃぃっ!イクうぅぅぅぅぅぅぅ!」
「……大根のくせして、こんなに締めつけやがって。俺も、そろそろ、ヤバい……!」
「らめえぇぇぇぇっ!ミルクなんかかけられたらぁぁぁぁぁぁ、大根シチューになっちゃううぅぅぅぅぅ!」
「なれよ、なっちまえよ。そうなったらおいしく調理してやる。うっ・・…!」
「ひぎいぃぃぃぃっ!また、イッちゃう、イッちゃうぅぅぅぅぅ!」
大根ハ男ニ食サレタトノミ伝エラレタルトカヤ。
民明書房刊 蒟蒻物語集~新事実!オナホは千年前から存在した!~
303:名無しさん@ピンキー
12/03/12 14:29:45.03 0N1z64XR
原典確認したら蕪ですたwww勘違いサーセンwww
304:名無しさん@ピンキー
12/03/13 15:46:46.11 jvP/9Xgo
オナホはこんにゃくに限るな
読んでるだけでちんこ痒くなってきたw
305:名無しさん@ピンキー
12/03/14 01:09:55.94 A+8isVKb
ゴムなしでヤるのは毒サソリ/毒グモとヤるくらいあぶねーぞ、という海外のエイズ予防の広告
男×サソリ URLリンク(i.imgur.com)
女×クモ URLリンク(i.imgur.com)
306:名無しさん@ピンキー
12/03/14 06:48:10.97 duWrJaQO
>>306
さそりの交尾は独特なんだよな
人間に例えると凄まじくアブノーマル
307:名無しさん@ピンキー
12/03/14 15:49:25.25 YU9JUH6M
婚姻ダンス…
308:名無しさん@ピンキー
12/03/14 16:32:25.70 dInwEBlf
>>306
とてもラブラブに見えてあまり啓発になってないと思います
309:名無しさん@ピンキー
12/03/14 18:27:28.17 b/m5jjou
双方合意の上なら問題ないよねえ
バッドエンドだけど、プラトニックだけど道ならぬ恋を阻まれた二人が、最初で最後の心中エッチをする、って妄想した
毒で死んじゃうからプラトニックを貫いていたけど、引き裂かれて生きるくらいなら、みたいな
310:名無しさん@ピンキー
12/03/14 20:58:57.09 PqECV6no
ぎいい
311:名無しさん@ピンキー
12/03/20 06:44:29.89 yfctMfTr
どつかに触手♀いねぇかなぁ…
312: ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:23:46.31 hRnX0rML
時期遅れの雛祭りネタで、しかも長くてマジすいません。
雛人形×人間女子、百合ありです。
NGは「ももまくら」でお願いします。
313:ももまくら 1/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:26:14.96 hRnX0rML
雛人形をしまうのが遅れると婚期が遅れる、等と申します。
このお話をする前に調べてみたのですが、どうやら旧暦の桃の節句の後は、
すぐ雨の多い季節になるので人形が傷まないように、という意味が込められていたようです。
または、すぐに片づけをしない、だらしのない娘は嫁き遅れる、とか。
最初に私にその話をしてくれたのは、母方の叔母でした。
こんなに綺麗なのだから、ずっと飾っておきたいという私を彼女は笑ったものです。
“お嫁に行けなくなっちゃうわよ、私みたいに”
年齢を感じさせない、不思議な雰囲気だった彼女は、その後にこう、付け加えました。
“雛人形は、持ち主の不幸を全て引き受けてくれるそうよ。
だから、もしも悲しかったり辛い事があったら、お人形に相談してごらんなさい。
きっと、何とかなるわ
……まあ時々、おいたが過ぎるときもあるけれど”
今思うと、叔母はあの雛人形たちについて何かを知っていたのではと思うのですが、
時が経っては知るすべがありません。
私の家にあった雛人形は母の家から伝えられたもので、全部で五段飾りでした。
お雛さまとお内裏さま、三人官女に五人囃子、右大臣に左大臣、それに箪笥や牛車の調度品。
世の中には七段飾りや八段飾りといったもっと大きな雛飾りもあるのでしょうが、
当時の私には五段飾りで十分、天にも届くほど大きく見えたものです。
今私が住んでいる小さなアパートには、とうていあれを飾るような場所はありません。
ささいな事が、後で考えれば大きな事のきっかけになっていた、という事があります。
今思えば、その年の雛祭りの宴が行われなかったのは、きっかけだったのです。
子供だった私はそれに気付かず、
ただ友達や親類が集まる、ささやかな宴が行われなかった事を不満に思っていました。
父親は仕事で夜遅くまで戻らず、母親も体調が優れず、
一人でぽりぽり雛あられを食べるだけの節句は、実にむなしいものでした。
こんな大事な時くらい、お父様だって帰ってきてくれればいいのに。
お母様だってすぐいらいらして、部屋に籠もってしまうし、
何だか私って、親に愛されていない子供みたい。
本気でそう思った訳ではないのですが、
夜中に布団に潜って考える事というのはどうしても膨らんでしまうものです。
314:ももまくら 2/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:28:11.20 hRnX0rML
私は、これをお雛様に相談してみたらどうかしら、と思いつきました。
もちろん、本気でお雛様になんとかしてもらおうと思った訳ではありません。
夜中、月の光が射す下で、お雛様に自分の窮状を訴えかける“美少女”
という絵面に酔っただけの事でした。
それに叔母への話の種になりますし、まあお節句に何もないなんて可哀想、
叔母さんと一緒にデパートにでも行きましょうか、なんて事になるかもしれません。
そんな、下心を持って私は雛人形の前に立ったのでした。
襖を開ける前、私は奇妙な音がしているのに気付いていました。
かちかちと、硬いものをぶつけ合わせるような音。
さらさらと、布のすれる音。
ちりちりと、金属が触れ合う音。
何の音だろう、もしネズミだったら嫌だなあと思いながら襖を開けます。
どこもおかしい所はありません。
赤い雛壇の上に、整然と人形たちが座し、障子から入る月の光に照らされています。
しいんと、何の音も聞こえません。
気のせいだったのかしら、と私は部屋に入り、襖を閉め、雛壇の前に正座しました。
さて、お願いをしなくちゃ、と見ると
先ほどと違うのです。
私の方を向いていたはずの、お雛さまとお内裏さまは、
互いに向かい合って顔が触れ合わんばかりの距離に近づいています。
しかも、二体とも、かちかちと音を立てて動いているのです。
私は恐れよりも、これは何をしている所なのだろうと疑問を抱きました。
もしかして、お雛さま同士でキスをしている所なのかしら、とどきどきします。
しかし、彼らは本当にあと少しで届かないのです。
日頃おだやかな笑みを浮かべているはずの彼らが、
切なげな潤んだ視線を交わしているのを見ると胸がつぶれるような心地がしました。
早く、早くキスしてしまえばいいのに、と思って二体を見ると、どうも邪魔があるようなのです。
315:ももまくら 3/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:29:57.64 hRnX0rML
お雛さまの十二単がもこもこと蠢いて、中に誰か入っているのが解ります。
十二単の端からは袴を履いた足がのぞき、まるで獅子舞の足のようです。
でも十二単の下と言えばスカートの下と同じです。
そんなところに顔をつっこまれて、お雛さまは恥ずかしくないのかしら。
お雛さまの頬は日頃よりもずっと赤かったので、やっぱり恥ずかしかったのかもしれません。
お内裏さまの方はと言えば、狩衣姿の公達に足を捕まえられています。
左大臣か右大臣か……確か、若い方なので右大臣です。
蛙のように足を広げたお内裏さまの太股を右大臣はつかんで持ち上げています。
組体操みたい。
でも、なんで腰をお内裏さまのお尻にぶつけているのかしら。
かちかちかちかち音がしているけど、お内裏さまは痛くないのかな。
時々、びくんっとお内裏さまの身体が跳ねているから、やっぱり痛いんじゃないかなあ。
身体が跳ねていると言えばお雛さまの方もそうで、
立て膝の姿勢が崩れて、びくびくと身体を震わせています。
お雛さまが大きく口を開けてあえぎ、胸をゆさゆさと揺らしました。
硬くて動かないはずの胸が動く事にも驚きましたが、
苦しげに胸元を開こうとしているのが気になりました。
お雛さまは病気なのかもしれません。
時々、胸が苦しいと言って押さえている母の姿が重なります。
大変、お薬とかお水を持ってこなくちゃ、と思った時には、
お雛さまは自分の胸を大きく開いていました。
真っ白な二つの小山の上に、ぽっちりと桃色の点が乗っています。
もう両親と風呂に入る年でもなかった私にとって、久方ぶりの他人の裸でした。
自分の裸とも、着せかえ人形の裸とも全然違います。
むっちりと柔らかげで、触ったらどんなに気持ちがいいだろうと思うような裸です。
その上、お雛さまは自分の両胸を手に取り、ぷにゅぷにゅと弄び始めました。
必死に、泣きそうな顔で乳房を揉み絞るお雛さまを見ていると、
何故か私の胸までがむずむずしてしまいます。
一心に伸ばしていたお内裏さまの首が、お雛さまの胸に届きました。
お雛さまは一際大きく体を震わせます。
大きく口も開いているのですが、声は漏れません。
もしかしたら、お人形の声は小さすぎて人間には聞こえないのかもしれないと私は思います。
316:ももまくら 4/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:31:20.36 hRnX0rML
それよりびっくりしたのは、
お内裏さまがそのまま、お雛さまのおっぱいをちゅうちゅう吸っているところです。
お内裏さまって、赤ちゃんだったのかしら?
とてもそんな風には見えないし、端正なお顔のお内裏さまが、
赤ちゃんみたいな事をしているところを見るのは、とてもいけない事のような気がします。
お雛さまの方は真っ赤な顔で眉をしかめていて、
最初はこんな恥ずかしい事をされるのを嫌がっているのかと思ったのですが、
お内裏さまが吸いついていない乳首をこりこりと自分でいじっているところを見ると、
どうやら嫌という訳でもないようです。
おっぱいの先がむずむずして、かゆくて、吸ってもらわないとどうにもならないような感じなのかしら。
そして、私の幼いおっぱいも、そのような痒みに身をよじり始めているのです。
お雛さまが激しく身をよじり、重い十二単を払い落とします。
その衣の下から、白髪頭が見えました。
どうやらこれは左大臣です。
胸も尻もむき出しになり、もうわずかな薄物が腰回りにまとわりついているだけのお雛さまのふとももを、
左大臣は両手で抱えて開いています。
顔は、ぴったりとお雛さまの足のつけねに押しつけているので見えません。
長く伸びた白い髭が、わずかに上下してるのが見えるだけです。
あんな場所に顔をつけていて、臭くないのかな。
私は自分がそんな場所の臭いを嗅がれる事を考えるだけで、恥ずかしくなってしまいました。
それに、左大臣のお髭のようなふわふわしたものでくすぐられたら、
我慢できなくて、おしっこを漏らしてしまうかもしれません。
その証拠に、お雛さまの内ももはてらてらと膠を塗ったかのように光っています。
透明な、とろりとした水飴のようなものが、後から後からお雛さまのお尻から流れ出て、
左大臣の髭を、脱ぎ散らした華麗な着物を、赤い雛壇を濡らしていきます。
かつかつと鳴る音が更に激しくなりました。
右大臣の腰がお内裏さまのお尻を叩く音です。
お内裏さまも右大臣も真っ赤で苦しそうな顔をしています。
そもそも、どうして主人である側のお内裏さまがお尻を叩かれているのか全く解りません。
お雛さまの腰にしがみつき、乳房に吸いつきながらも、
お内裏さまはお尻を突き上げるように右大臣の腰にぶつけます。
その拍子にはらりとお内裏さまの袴が落ちました。
317:ももまくら 5/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:32:57.00 hRnX0rML
そこに見えたものが何なのか、最初私は解りませんでした。
赤黒い、棒のようなものがお内裏さまの腰から突き出しています。
私の小指の先ほどの長さと太さしかないのですが、
お人形の身体に付いていると、ずいぶん不釣り合いで、大きく見えます。
お雛さまの、小さな白い手が、棒を握りました。
途端に、甘酒のような、白くてどろどろした汁が噴き出し、お雛さまを汚します。
大変、絶対に濡らしても汚してもいけないはずのお雛さまが、べちゃべちゃになってしまうなんて。
そんな私の心配を余所に、お雛さまとお内裏さまは抱き合い、
互いの身体を、着物を、髪を、白い汁で塗りたくっています。
明日、お母様になんて言えばいいのでしょう。
お人形同士が抱き合っていたら白い汁が出た、なんて言い訳で納得してもらえるでしょうか。
お雛さまたち四体の人形が雛壇の最上段で横たわり、
私が座る場所から何をやっているのかよく解らなくなってから、私は溜息をつきました。
これではとても“お人形に相談をする”どころではありません。
下の段に目を移してみれば、三人官女も二人しかおらず、身体をくっつけあってじゃれているようです。
日頃澄まし顔をした彼女たちが、
女学生のように身体をぶつけあったりほっぺたをくっつけたりしているのにも驚きましたが、
互いの袴をまくりあっているのは流石にやりすぎのような気がします。
長くて白い足を絡め合い、頬を桜色に染めて、戯れるニ体を見て、
そう言えばもう一体はどこにいるのだろうと疑問に思います。
仲間外れにされていたら、何だか可哀想です。
その下の段を見たとき、私は驚いて声を上げる所でした。
五人囃子がそろって袴を脱いで、お尻をまるだしにしていたからです。
私は彼らが背中を向けていてちょっとほっとしました。
いくら人形のものとはいえ、男の人のあれを直視する勇気は無かったのです。
五人囃子は、最初三人しかいないように見えました。
三人が中心を囲み、二人がその輪の中にいるようです。
その向こうに、長い黒髪と着物がゆさゆさと揺れています。
一体なにをやっているのかしら、と私は少し伸び上がりました。
318:ももまくら 6/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:34:08.12 hRnX0rML
私は今度こそ、押し殺した声をあげてしまいました。
三人官女の最後の一人は、その下の段にいたのです。
それと気付かなかったのは、並び立つ五人囃子に囲まれていたからでした。
しかも、三人官女は、いじめられているのです。
着物は完全に脱がされて裸になっていますし、四つん這いにされて、お尻を鷲掴みにされています。
そのお尻に五人囃子の一人が腰をかつかつと叩きつけていました。
その上、もう一人の五人囃子は三人官女の頭をつかみ、自分の腰に押しつけています。
何かを三人官女の口に押し込んでいるようです。
やがて、前と後ろの五人囃子はびくんと身体をふるわせ、
それぞれの腰からまた甘酒のような液体を吐き出しました。
甘酒とはまったく違う、磯臭いような匂いが広がります。
五人囃子が三人官女から離れ、私は彼らの腰にあるものを見てしまいました。
赤黒い棒がだらんと垂れ、白い汁にまみれています。
そのときになってやっと、私はそれがおちんちんである事に気付きました。
おちんちんである、という事は、あの白い汁はおしっこです。
三人官女の顔も髪も白く汚れ、半開きになった口元から飲みきれなかった白濁汁が伝っています。
女の子におしっこを飲ませるなんて。
あまりに酷過ぎます。
その間にも、次の五人囃子が三人官女の前に立ち、後ろで足を広げます。
後ろの五人囃子が自分のおちんちんを手に取り、三人官女の足の間にずぶずぶと差し込むのを見て、
怒るより前に呆然としてしまいます。
恥ずかしい話ですが、私はその頃、女陰の存在を知らなかったのです。
下半身にあるのはおしっこの場所と、お尻の穴だけだと思っていた私は、
ぬめぬめと輝く桃色の器官を見ても最初、それが自分にもあるものとは想像もできませんでした。
おちんちんが入っていく度に、官女はきこえぬ声でうめき、身体を震わせます。
私には傷口にものを差し入れていくように見えました。
こんな、酷い事は止めさせなければいけません。
私はぱっと手を伸ばすと、三人官女の身体をつかみました。
手のひらの中に、お人形の温かく、柔らかな身体があります。
まるで生魚のようにぬめり、もがく感触を気味悪くも思ったのですが、
そんな事を言ってはいられません。
なおもかじりつく五人囃子を弾き飛ばします。
彼らはきいきいと怒っているようですが、声は聞こえません。
319:ももまくら 7/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:35:27.49 hRnX0rML
私は自分の両手のひらに三人官女を包み込み、そっとのぞき込みました。
白い、瓜実顔の三人官女は、眉をわずかに寄せ困ったような顔で私を見つめています。
髪の毛はくしゃくしゃで白い汁がついていますし、衣を一枚だけ羽織って、
恥ずかしそうに足の付け根を手で隠しています。
「も、もう大丈夫だからね」
私の言葉にも、彼女は悲しそうな顔をして首を振ります。
私は足下をぴょんぴょん跳ねる五人囃子たちを叱りつけました。
「こんな事して、恥ずかしくないの!
うちのお人形が、こんな酷い事をするなんて、許さないから!」
途端に、私の足がさっと払われます。
あっと思った時には、仰向けに倒れていました。
かろうじて手を高く差し上げて、三人官女を押し潰す事は避けられましたが、
畳に打ちつけた頭がちかちかします。
その伸ばした手首を、つぅっと細い糸がくくりました。
手のひらの中から三人官女がこぼれて、ぽろりと私の鼻の上に落ちます。
磯のような、チーズのような嗅いだ事のない匂いに鼻をひくつかせると、
官女は泣きそうな赤い顔をしました。
しまった、人の匂いを嗅ぐなんて、お行儀の悪い事だったな、と思っている間にも、
私の身体には幾重にも細い糸がかけられ、気付いた時には畳に完全に磔になっていました。
しかも、足を組んだ形で縛られて、蛙の足のような無様な姿です。
「なにするの! 離しなさい!」
そう叫んで身体を反らせても、糸は切れる様子がありません。
私の視界の隅に、五人囃子の一人が立ちました。
何かを言っているようですが、唇をぱくぱくさせているだけで、私には解りません。
ただ、私の顔の上の官女が、それに興奮した様子で言い返しているのは解ります。
「……何を言っているの?」
そう尋ねると、官女は困った、泣きそうな顔でのぞき込みます。
視界の端の五人囃子が去り、私は自分のわき腹をくすぐられるような感触に驚いて顔を上げました。
官女が転げ落ちそうになって、かろうじて私の首元につかまります。
首を曲げて見える範囲では、五人囃子の一人が、私の腹に這い上がっていました。
彼が、大きく手を振ります。
同時に、私の腰で布がよじれました。
「だ、だめっ、やめてっ」
彼らは、綱引きのように力を合わせて、私の下着を脱がせているのです。
320:ももまくら 8/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:36:41.59 hRnX0rML
私の声もむなしく、下着はずり下げられてしまいました。
完全に脱ぐ訳でもなく、ももの半ばにひっかかったままの下着は、
まるで用を足す時のようで落ち着かない気分になります。
五人囃子たちは私の身体に上がってきて、ボタンをひとつずつ外していきます。
もうパジャマは腕にひっかかるばかりで、私の身体を隠すものは何もありません。
私のふくらみ始めた胸を、しげしげと官女が眺めていたり、
ぽっこりした腹の上で五人囃子が飛び跳ねたり寝ころんだりしていても、
止める事も隠す事も出来ないのです。
余程“はずかしいからゆるして”と言おうかとも思いました。
でも、私は何も悪い事はしていません。
それで謝るなんて、絶対に嫌です。
泣きそうになるのを、じっと目を瞑って我慢していた私は、
腰に当たる温かな濡れた感触に思わず悲鳴を上げてしまいました。
おもらしをしてしまったのか、と思うような温かい液体がじょぼじょぼと私の股を濡らします。
見れば、朱塗りの銚子から甘酒のような白く濁った液体が、私の股に注がれているのです。
もし、桃の節句の宴が行われていたら、それで甘酒を飲んでいたはずの銚子でした。
五人囃子たちは自分の身体より大きな銚子を持ち上げて、それを私の足の付け根にあてがっています。
自分の身体が白くてどろどろしたものに汚されていく事に、私は改めて嫌悪を感じました。
銚子の口が私の身体を探り、差し込まれます。
感じたことのない痛みに、私は声をあげました。
そんな場所、今までトイレットペーパー越しにしか触った事はありません。
それを、こんなよく解らないものを押し込まれて、しかも甘酒を流し込まれてしまっているのです。
同時に私は、自分の身体に“穴”があるという事に気付いて驚いていました。
こんなところに、穴があったんだ。
ここに、甘酒がどんどん、どんどん入っていく。
おなかが、たぷたぷになる。
甘酒はお酒だから、あんまり飲んじゃいけないのに。
きっと、酔っぱらっちゃったんだ。
身体がほかほかして、ふわふわして、おしっこの場所がすごく熱いのです。
321:ももまくら 9/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:37:55.39 hRnX0rML
「あ、あふれ、ちゃう」
声がかすれて、今までの自分の声と全然違います。
「あまざけ、あふれちゃう、こぼれちゃうよう」
こぼれないよう、腰を持ち上げてから、何でそんな事を心配しているのかと不思議に思いました。
それにもう、甘酒は畳一杯にこぼれて、私の尻の下も、背中もぐっしょり濡れてしまっているのです。
「あついぃ、おしりが、よっぱらっちゃったぁ」
舌が回らなくて、甘えたような声なのが恥ずかしく、私は泣きそうになりました。
そんな私の顔を、大丈夫ですよ、という風に
官女が撫でてくれます。
でも、どうしよう。
今まで、酔っぱらった事なんて、ない。
どうすれば、元にもどるの。
私は、自分の身体がまっぷたつになるような感覚に声を上げました。
「あっ、なに、いまの、なに」
痛い訳ではないのです。
私の内ももの薄い皮膚が、左右に引っ張られているのでした。
私の小指より小さな手が何本も、私の身体を左右に広げようとしているのです。
私は首を曲げて、自分の下半身で行われている事を伺おうとしました。
彼らはもう銚子を床に置き、今は私の身体を左右に開き、私の“穴”を大きく広げています。
私は自分の身体に、こんなに大きな空洞があったのかと驚いていました。
なみなみと、甘酒を注ぎ込まれたと思ったのに、まだ足りないと喉を鳴らすように下腹が蠢きます。
私は、この空洞を塞いで、一杯にして欲しいという事しか考えられなくなりつつありました。
その穴を更に広げられたら、飢えは増すばかりです。
「ひ、ひろげ、ないでぇ」
私の言葉とは逆に、彼らはなおも私の中心を引き裂いていきます。
「だめ、まんなかが、からっぽに、なっちゃう、からっぽなの、くるひぃよぅ」
まわらぬ言葉と共に、唇のはしから涎がこぼれます。
それを、官女がちゅうっと吸うものですから、恥ずかしさは増すばかりです。
322:ももまくら 10/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:40:01.26 hRnX0rML
首を曲げると、五人囃子は右脚にニ体、左脚にニ体、中央に一体と並んでいます。
左右の五人囃子は私の身体を引っ張っているとして、中央は何をしているのでしょう。
ただ、私の身体を観察しているのでしょうか。
考えてみれば、私は自分のそこを、じっくり見た事などありません。
自分より先に、他人にそこを見られてしまったのです。
それは、もしかして、ものすごく恥ずかしいことなのではないでしょうか。
「は、あぁっ、あうぅんんっ」
そう考えた途端、身体の奥から、とろりとした何かが流れ出します。
尿意に似た、しかしそれよりもっと緩やかで、深く身体を痺れさせる感覚に私は恐怖しました。
「は、あ、なに、とま、って、おもらし、やだぁ」
私の意志は身体にとどかず、こぽこぽとそれは、身体の中心からこぼれていきます。
左右の五人囃子たちは、両手をやわやわと開いたり閉じたりして、私の中心を揉み始めました。
もう私は息をはあはあと荒げ、身体をよじるばかりです。
苦しくて、恥ずかしくて、そして身体の飢えを満たしたくて、もう何も考えられません。
自分の股の間に、手鏡がしつらえられたのも、気付くまで大分時間がかかりました。
昼間、自分の顔を映して澄まし顔をして見せた手鏡は、
ぐちゃぐちゃになった私の身体の中心を映しています。
この、桃色の、ぬるぬるしたのが、私の身体?
唇のようにぽってりした肉を五人囃子たちは無造作につかんで広げています。
その奥の、さらに濃い桃色の穴奥からは、白く泡だった汁が、こぽり、こぽりと流れ落ちてきます。
私の穴の前に五人囃子が立ちます。
かがみこんで穴をのぞく五人囃子は、おもむろに顔を穴に押し当てました。
「あぁっ」
それまで感じた中で、最も強い衝撃が私の身体を襲います。
「か、かお、くっつけないで、やめて」
私の制止を聞かず、五人囃子は押し当てた顔をぐちゅぐちゅと左右に振ります。
私はこらえきれずに腰を揺らしましたが、かじりついた五人囃子は離れません。
股を襲った、裂けるような激痛と圧迫感に、私は悲鳴をあげました。
五人囃子は、私の中に、入ってこようとしているのです。
323:ももまくら 11/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:41:46.88 hRnX0rML
「や、やあっ、やだぁっ、こわいぃっ、やめてぇっ」
悲鳴を上げる私を、五人囃子だけではなく、全ての雛人形が見守っています。
「あ、あぅっ、たすけてぇっ」
お雛さまもお内裏さまも、右大臣も左大臣も三人官女も、黙って私を眺めるだけです。
何でこんなに意地悪なんだろう。
私、この人形たちに嫌われるような事したのかな。
ぼろりと流れた涙を、小さな手が拭いました。
あの三人官女が、私の頬に立って涙を拭っているのです。
彼女は私の頬をぽんぽんと叩くと、私の身体の下の方に向かいます。
私は首を曲げ、自分の身体を見下ろしました。
下腹が人形の頭でぽっこりと膨らんでいるのが解ります。
ごりごりと私の中心を頭が通っていくと同時に、
小さな手が私の膣内をかき回していくのが何ともおぞましく思えます。
しかも股の間では、まだ小さな脚がばたばたと振り回されているのです。
中からこぼれる汁は赤い色が混じり、私は自分の身体が傷つけられたのだと知りました。
このまま、身体に穴を開けられて死んでしまうんだ、と気が遠くなります。
三人官女はそんな、汗と汁と血にまみれた私の身体の上をすたすたと歩いていきました。
三人官女は五人囃子が身体を突っ込んでいる箇所の少し上に着くと、私の方を向いて腰を下ろしました。
何故か、びりっとした感覚が私の身体を走ります。
私は一瞬痛みを忘れて、三人官女を見つめました。
官女は薄物をまとったきりで、豊かな胸も、薄い毛の生えた股も全てむきだしです。
官女の腰を下ろした先は、私のまだ毛の生えていない股ぐらの、その先端につんと尖った部分でした。
今となっては、もちろんそこが何なのかわかるのですが、
膣の存在すら知らなかった当時の私には無理な話です。
ただ、その薄桃の膨らみを、官女が自らの腰とふとももで柔らかく愛撫し始めたら、
私は何も考えられなくなってしまいました。
それまでの痛みすら、私の頂点を高ぶらせる刺激のように思えて、
爪を畳に食い込ませて、身体を反らせます。
むっちりしたももで私の肉芽を圧迫していた官女は、やがて腰を上げて唇をつけました。
お人形の唇ですから、小指の爪の先より小さいはずですが、熱い針で刺されたようで私は声を上げます。
苦しく、痛く、熱く、官女の顔にべちゃっとした私の陰部が当てられているのが申し訳なくて
泣く私を慰めるように、官女はそこをさわさわと撫でます。
324:ももまくら 12/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:42:55.45 hRnX0rML
細い指がぽってりした肉の蕾を開き、私はそこに小さな豆のようなものがある事を初めて知りました。
そこに官女がちゅうっと口をつけるものですから、
私はもう身体の他の場所の事など考えられなくなってしまいます。
官女は口からすうっと涎を私の豆に落として、それを丁寧に手でまぶします。
冷たい小さな手にこね回される度に、私の豆は赤く膿んで膨れ上がるように思いました。
私の豆が、官女の涎をたっぷり浴びて、つやつやと輝きます。
桜色に頬を染めた官女に、上目遣いに見つめられて私はどきりとしてしまいました。
たしかに官女は綺麗なお人形でしたが、こんなに綺麗だったでしょうか。
綺麗だけど、お雛さまに比べれば地味で、目立たない人形だったはずです。
それが、人目見るだけでどきどきして、ぎゅっと抱きしめたいような人形になってしまったのです。
雛壇なんかに飾らず、自分の机の引き出しにそっとしまっておきたいと、私は思ってしまいます。
官女が何かを問うように私の顔を見上げた時には、
私はもう何がなんだか解らなくなってしまっていました。
何をされてもいい、とがくがく首を縦に振る私に官女はふんわりと微笑み、
自らの女陰を私の豆に合わせました。
その後の事は、断片的にしか覚えていないのです。
私の腰の上で、髪や胸を振り乱す官女と、まるで身体がつながって、
あそこから生えているように思えた事や、
自由になった右手で、撫でさすると指先に歯形をつけられた事、
私の中を代わる代わる休みなく、人形たちが押し入り、小さな手で襞の隅々まで探っていった事や、
私の乳首を他二人の官女がくりくりとこねあげ、どちらが固く出来るかを競っていたり、
私の痴態を余所に、お雛さまとお内裏さまと左大臣右大臣は行為に没頭していて何だか腹が立った事、
などがせいぜいで、後は絶え間なく襲い来る絶頂に頭を真っ白にしてよがり狂っていただけでした。
何度も、何度も、もう無理だと言ったのに、その度に私の豆を官女の女陰がきゅうっとしめつけます。
そして彼女が、泣きそうな顔で首を振るとき、私は我慢できなくて腰を何度も何度も突き上げていました。
障子から射す月の光が、私の身体を白く照らしました。
腹の上には官女がうつ伏せに横たわって、長い黒髪を広げています。
私の視線に気付いた官女は、顔を上げて微笑み、私のおへそを優しく撫でてくれました。
その晩で覚えている事は、それが最後です。
325:ももまくら 13/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:44:30.28 hRnX0rML
翌朝、白々とした朝の光に目覚めた私は、慌てて辺りを見回しました。
雛人形の前で力尽きたはずなのに、気付いたら自分の寝床で、衣服に乱れもありません。
夢だったのでしょうか。
確かに決して現実ではありえない有様でしたが、夢と片付けるにも生々しく、
私はしばらく寝床の中で呆然としておりました。
ふと、指先の痛みを感じて、私は右手を見つめます。
右手の人差し指の先に、小指の爪よりも小さな歯型と、
針で刺したような大きさしかない十本の指跡が、くっきりと残っておりました。
私は慌てて飛び起き、両親に挨拶する前に雛人形の間に走ります。
部屋の前に立つと何だか怖くなり、私はそうっと襖を開けてのぞきこみました。
雛壇の上のお人形たちは、何もありませんでしたよ、と言わんばかりのすまし顔です。
確か、夜最初に覗いた時もそうだった、と私は忍び足で部屋に入り込みます。
中央に立ち、雛壇の前に正座しても、なんら変わった様子はありません。
白濁液にまみれていたはずのお雛さまもお内裏さまも、まったく穢れのない姿ですし、
どの人形も脱ぎ散らかしていたはずの衣服をきちんと着こんでいます。
私は念のため、お雛さまの十二単をつついてみましたが、
かちかちと硬く爪を跳ね返して、到底脱げそうには見えません。
私は昨日交わった、あの三人官女……右側でお銚子を手にして立っている人形を見つめました。
彼女も他の人形と同じく、何も起こらなかったようなすまし顔です。
ただ、髪の毛がほんの少し乱れていて、私はちょっとどきどきしながら整えてあげました。
寝巻きのまま雛壇に向かい合っている私を母親がとがめ、私は後ろ髪をひかれるような思いで部屋を出て、その日一日、何も手に付かず、雛人形の間をちらちら眺めながら過ごしました。
夜、両親が寝静まってから、私は忍び足で雛人形の間に向かいます。
襖を開けて外から見ると何の変わりもないのですが、雛壇の正面に座ると光景は一変しました。
326:ももまくら 14/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:48:36.03 hRnX0rML
相変わらずの遊びを続けるお内裏さまたちと、
身体をくっつけあってくすくす笑いあっている二体の三人官女、
そして、五人囃子と最後の三人官女はと言えば……
しょんぼり肩を寄せ合っている五人囃子の前に官女は立ち、がみがみと叱り付けているようです。
官女は私に気付くとぽっと頬を染め、私の前に引っ立てるように五人囃子を連れてきました。
私は自分の前で土下座をする五人囃子たちと、それを睨む官女を見て、
どうやら彼女は人形たちにいじめられていた訳ではなく、立場が下という訳でもないと気付いて、
ほっとしたり、では昨日やられていた事は合意の上であるのかとちょっと呆れたりもしました。
三人官女が目を潤ませ、背伸びをして私を見つめます。
私は彼女を掬い上げて、顔の前に持ってきました。
彼女の紅い頬を見ていると、自分の頬も熱く、紅くなっていくのを感じます。
官女はちょっと目を逸らしてもじもじした後、ちゅうっと小さな唇で、私の唇に口付けました。
小さな唇は熱く、酔わせるようで、
私が官女の着物を脱がせて全身に舌を這わせるまで、さして時間はかかりませんでした。
そんな風に十日ほどが過ぎて、叔母がまた、私の家にやってきました。
雛人形の片付けを手伝うためです。
叔母は“この子達に会うのも、久しぶりねえ”と笑いながら、手際よく人形を薄紙でくるみ、
箱に収めていきます。
本当はお手伝いしなくてはいけない私は、じっと箱の中の彼らを眺めていました。
箱の中にあの三人官女が、お雛さまが、
あんな事があったにも関わらず、何となく仲直りをしてしまった五人囃子が消えていきます。
叔母は、私の頬を撫でて微笑みました。
“この子達も、ずっと外ではしゃいでいたら疲れちゃうわよ。お休みさせてあげないとね”
私の頬がちょっと痩せていたのも、恥ずかしさに真っ赤になっていたのも、
叔母は気付いていたのでしょうか。
そして、また桃の節句がおとずれました。
私が夜訪れたのは、いつも雛人形を飾っていた部屋ではなく、物置代わりの部屋でした。
この部屋に雛人形たちは仕舞われているのです。
その年は、節句の宴は行われず、そして、雛人形たちも飾られませんでした。
327:ももまくら 15/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:51:43.57 hRnX0rML
私は記憶を頼りに自分がすっぽり入るほどの大きさの箱を探り当て、
その横にそっと腰を下ろします。
「ねえ」
当然、返事などはありませんが、私は言葉を続けます。
「私、あなたたちと、お別れしなくちゃいけないの」
しん、と冷たく埃っぽい部屋に声が響きました。
「お父さまの会社が、駄目になってしまったの。
去年からずっと頑張っていたけど、どうしても無理だったそうよ。
このお家も、あなたたちも、別の人に売るしかないのですって」
私はつん、とした鼻をすすり、努めて剛い声を出します。
「私も……別の、お家に引き取られる事になったわ」
私は、次の言葉を口に出すのを躊躇いました。
口にしたら、恐ろしい懸念が現実になってしまうように思えたのです。
「私、お父さまとお母さまがけんかしているのを聞いてしまったわ。
私を引き取る人は“評判のよくない”人なのですって。
そんなところに私をやるなんて“身売りも同然”だって、お母さまが、
お父さまは“じゃあ、家族で首をくくれとでも言うのか”って、怒って」
声が震えます。私は流れそうになる涙を必死に堪えました。
「私、もう知ってるわ。
身売りって、あなたたちとした事を、知らない人や嫌な人ともさせられる、って事でしょう?
でも、もう一つ、知っている事もあるの」
私は、掌を箱に当てます。
「あなたたちとした事は、本当は大好きな人としかしちゃいけない事で、
しかも、それを最初に、大好きな人と出来る、というのはとても、素晴らしい事なんでしょう?
私は、初めてを、あなたたちと、したわ。
大好きな、あなたと。
だから、もう大丈夫って事よね?」
顔を押し当てた箱に、涙の跡が付きます。
私はそのまま、夜を箱の隣で過ごしました。
母は私が落ち込みの余りにそんな奇行をしたと思い、ずっとおろおろしていましたが、
私は平静に、そしてその前よりもずっと立ち直っていたと思います。
なぜなら、箱の向こうでは、ずっと彼らの笛や、鼓が奏でられていたのですから。
あの日、私の頬を撫でてくれたのと同じ手が、
ずっと箱の向こうから撫でていてくれたのを感じていたのですから。
もう大丈夫だ、と私は考えました。
それから長い時が経ち、私が次に、あの人形たちと再会したのは、勤めていたお屋敷でのことです。
328:ももまくら 16/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:56:47.51 hRnX0rML
その時の気持ちを、なんと言い表せばいいのでしょうか。
再会の喜びと、彼女たちがもう自分のものではない絶望とがない交ぜになって、
私は思わず涙を流してしまいました。
襖の向こうでは、かつてと同じように人形たちが愛らしい姿で座しています。
ほんの一度でいい。
触りたい。
撫でたい。
連れ去ってしまいたい。
胸の中で荒れ狂った嵐を押さえ、私は目元を拭います。
「何故泣いているの」
襖の向こうから響いた声に、私は考える事なく答えてしまいました。
「そのお雛さまは、むかし、わたしが持っていた……」
その辺りではっと気付きます。
これは、決して、一介の女中である私が口にしていい事ではありません。
「……私が持っていた物に似ていて、懐かしくなってしまいました。
お見苦しいところをお見せして、申し訳ありません」
すっと襖が開き、そこに立っているのは華やかな振り袖の少女です。
下働きの私は初めて顔を合わせたのですが、この家のお嬢さまである事は見当がつきました。
つややかな黒髪に、小さな白い顔。
きつい表情をのぞけば、雛壇のお雛さまの一人と見違えるような、整った顔立ちをしています。
お嬢さまは冷たい顔で私を見やった後、ぽつりと呟きました。
「そうね。あれは、あなたの雛人形かもしれないわ」
女中を始めてから知った事なのですが、人は自分の周りしか見えないし、聞こえないものなのです。
仕事を始める前は、お屋敷暮らしのお嬢さまや奥さまをうらやんだりするのでは、
と密かに心配しておりましたが、
日々の暮らしに追われていてはもう別の世界の住人にしか思えませんし、特にくやしいとも思いません。
そして向こうも、私の事を気付いてもいないのです。
だからと言って、こういう話を耳にしてしまった時、何事もなく忘れるのは難しいものでした。
“立派なお雛さまだったわね”
“お雛さまは、ね”
“我が家に代々伝わる、なんて言うから、笑いをこらえるの、大変だったわ。成金のくせに”
“そういえば、あのお雛さまって、もしかして……”
かつての私も、彼女たちと同じだったのかもしれません。
雛祭りの宴の後、笑いさざめくご令嬢たちの背を眺めながら、何ともうそ寒い気持ちがしたのです。
329:ももまくら 17/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/25 23:58:24.44 hRnX0rML
雛人形の間に足を運んだのは、何故か胸がざわついた為でした。
襖を細く開けると、夕闇にお雛さまの白い顔が点々と浮かび上がっているのが見えます。
気のせいだった、と胸をなで下ろした私はすぐに気付きました。
白い顔が、一つ足りません。
あの、右側の三人官女だけがいないのです。
私はすっかり取り乱して、襖を開け放ってしまいました。
同時に、ひっと息を飲む声が耳に届きます。
襖の影に、お嬢さまが立っていたのです。
お嬢さまの手には三人官女が握られ、今にも叩きつけられようとしていました。
お嬢さまも、まさか私に見つけられようとは思っていなかったのでしょう。
目を大きく見開いて、まじまじと私を見ておりました。
「あの、お嬢さま。何をなさっているのでしょう?」
私の問いで、ようやくお嬢さまは我に返られたようです。
綺麗な顔を歪めて、唇を笑みの形にして答えられました。
「何って、これからお人形を壊すところよ」
「お止め下さい!」
血の気が引いた私の前で、お嬢さまが嘲笑います。
「女中風情が生意気を言うのね。これは私のものよ。壊しても構わないでしょう?」
「で、でも」
私は涙ぐんでいたかも知れません。
でも涙でぼやけた視界でも、お嬢さまの目からぽろぽろ涙がこぼれているのが解りました。
「それとも、あなたも、どうせ私のものじゃないって笑うの?
私だって、こんな人形、欲しくなかったわ!
それを、お父様が買ってきて、家に伝わるものですなんて言うのよ。
そんな嘘、誰も信じる訳ないのに!
こんな、こんな恥ずかしい思いするくらいなら」
私はそっと、お嬢さまの手を握ります。
その手から三人官女がぽろりと落ち、畳に転がったのを気にかけなかった訳ではないのですが、
私はお嬢さまの瞳から目を離しませんでした。
「お嬢さま」
私の声に、お嬢さまはびくりと身体を震わせました。
「この子たちは、あなたのお人形です。
壊したいとおっしゃられるなら、私には止める事は出来ません。
ですが、きっと、この子たちはそれを望みません。
もっと、お嬢さまにお仕えしたいと思っているはずです」
330:ももまくら 18/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/26 00:00:00.19 VjNtyqwY
「そんなわけ、ない」
お嬢さまは俯いて目をそらします。
「お高くとまって、わたしを見下してる」
「いいえ」
気がついたとき、私はぎゅうっとお嬢さまを抱きしめて、耳元に囁きかけていました。
「どうか、どうか一晩、お考えください。
きっと、この子たちがお嬢さまを好いているとお分かりいただけるでしょうから」
自分でも、何故そんな事を言ったのか解らないのです。
でも、そうするべきだと思いました。
もしかしたらそれは、私の足下に転がった三人官女が、私にやらせた事だったのかも知れません。
私が身体を離すと、お嬢さまは三人官女を掴んで乱暴に雛壇に置き、
一度私を睨んでから部屋を出ていきました。
私はため息をつきます。
これで、ここでのお仕事は駄目になってしまったようです。
また次のお勤めを探さなければいけません。
「あなたたちが雇ってくれないかしら」
そう言いながら私は、三人官女の乱れた髪を直し、綺麗に向きを直して部屋を出ました。
翌朝、朝食の支度を終え、お膳を出そうとしたところで、女中頭から声をかけられます。
お嬢さまのお呼びだ、と言われれば見当はつきました。
深呼吸をしてから、お嬢さまの部屋の扉をノックします。
お嬢さまはまだ寝間着のまま、着替えてもいませんでした。
私の顔を、わずかに涙をためた赤い顔でにらみます。
ああこれは、悪いことになってしまったかも、と私は内心青くなり、
あの悪ガキの五人囃子は捨ててしまった方がいいのかも、と心の中で毒づきました。
「あの」
お嬢さまは真っ赤な顔で口ごもり、私たちはしばらく黙ったまま向かい合います。
「ど、どこか、お加減の悪いところはございますか?」
私はとんちんかんな事を言っていると思いつつも、他に言葉が見つかりません。
「べ、べつに! ど、どこも悪くないわ!
いつも通りよ」
お嬢さまはつっかえながらも言い返します。
「あと、痛いところもないし、そ、それに、わたしだって、あれくらい、知ってたわ!」
「知ってた?」
私の問いに、お嬢さまの顔は更に赤くなります。
「と、とにかく、何でもないって話よ。解ったらでてって!」
解ったかと言われれば何も解らない気はしますが、私は一礼し部屋を辞そうとします。
331:ももまくら 19/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/26 00:03:38.38 hRnX0rML
「待って」
お嬢さまの小さな手が、私のスカートを掴みました。
俯いたまま口を開きます。
「ねえ、あなたの、ときは」
声が小さく、よく聞き取れません。
お嬢さまはやがて、やけになったように叫んでから、扉を閉めました。
「やっぱり、あんな人形大嫌い!
今日、じゃなくて、明日には仕舞い込んでちょうだい!」
そんな風にして、その年の節句は過ぎました。
付け加えるなら、結局お嬢さまの命令で雛人形を仕舞うのは何度も延期され、
三月の中旬を過ぎてからになった、ということ位でしょうか。
次の年も、その年とさして変わりませんでした。
節句の宴は盛大に執り行われ、
ご主人さまは変わらずに我が家に伝わる雛人形だと語って密かに失笑を買っていました。
変わったのは、お嬢さまがもはやそれを気にしていなかった事と、
私がお嬢さまのお側仕えになっていた事です。
何故か私はお嬢さまに気に入られていると見られており、そのお役目を授けられる事になりました。
気に入られている訳でも、相性が良い訳でもなく、
お嬢さまは私に対しては気まずくて強く出られないだけなのでしょう。
お気に召さなければ、いつでもお役目をお解き下さいと申し上げたのですが、
人に弱みを見せるのを嫌うお嬢さまは私を睨むだけでした。
その年も、お雛さまをしまうのは中旬を過ぎてからでした。
その次の年、お雛さまを飾る私の背に、お嬢さまは声をかけました。
「ずっと、これを飾っておければいいのに」
振り向く私に、初めて出会った時より背が伸びて、美しくなられたお嬢さまは笑いかけます。
「雛人形をしまうのが遅れると、婚期が遅れるのでしょう?
だったら、ずっと出しておきたいわ」
お嬢さまに、縁談が来ているのです。
相手は、二十も年上でした。
お嬢さまは、右端の五人囃子の頭を撫でます。
何故か、お嬢さまのお気に入りはこの子でした。
私は“お気に入り”が被らなかった事を喜ぶべきか、ちょっと悩んだりもしたのです。
「雛人形って、何で飾るのかしら。
こんなもの、ただ綺麗で楽しいだけなのに。
飾っていい事がある訳でもないのにね」
お嬢さまの笑みは苦いものでした。
「お人形が不幸を引き受けてくれるなんて、嘘ばっかり。
大体、あなただって、そうでしょう?
こうして、わたしなんかに、こき使われているんだから」
332:ももまくら 20/24 ◆vpePLp7Z/o
12/03/26 00:05:10.54 VjNtyqwY
「いいえ」
私を見つめるお嬢さまは、初めて出会った時のような、きつい瞳をしていました。
「負け惜しみなの?」
「違います」
私はほう、と息をついてから、話し始めました。
「父の家業が失敗してしまった時、私は身売りをさせられる寸前でした。
そうでなければ、思い詰めた父は心中をしていたかもしれません。
でも、私は女中とは言え自由の身ですし、両親も元気に暮らしています」
「それが、雛人形の力だと?」
皮肉っぽく笑うお嬢さまを、私はまっすぐに見つめます。
「たまたまかも知れませんね」
私はふっと笑いました。
「私は、身売りされるならされるで、黙って耐えようと思っていました。
でも、あの子たちと別れた後に、少し考えが変わったのです。
もっと、自分の好きなように、思い切ってみようかな、と。
だって、あの子たちって、まるっきり好き勝手じゃないですか。
お雛さまとお内裏さまは変態だし、五人囃子はお猿みたいだし、他の子たちも似たようなものだし。
なのに、私だけが難しい顔で泣きべそをかいているなんて、馬鹿みたいで。
それで、両親に言ってしまったんです。
どうせ身売りするなら、出来るだけ高く売れる所にして欲しい。
そこで私は売れっ姐になって、家も会社も、何もかも取り戻してみせる、と。
両親は真っ青になって泣き出してしまいましたが、逆に冷静さを取り戻したみたいです。
結局、被害を最小限にして事業を畳んで、田舎で暮らしています。
私の方はこうして奉公して、現在に至る、という訳です」
私は震えるお嬢さまの手を包み込みました。
「私が子供の頃、言われた事があります。
困った事があったら、お人形に相談してごらんなさい、と。
この子たちに、そういう物事を解決する力があるのかは解りませんが、
私の時は、良い方に変わりましたから」
お嬢さまはじっと、少し頬を染めて私を見上げていました。