純愛スレ『其の6』at EROPARO
純愛スレ『其の6』 - 暇つぶし2ch50:しっぽのおうじさま
11/11/13 10:39:43.47 SH0wvvXU
「ティアラちゃんッ。僕こと好き? 愛してるッ?」
 思わず聞いてしまう。彼女の口から聞けなければ不安になってしまう。
『好きだよ、大好きッ。世界中の誰よりも、世界中のどんなことよりも愛してるよ。ペイン君もあたしのこと好き?』
 そしてティアラも応える。彼女も訪ねる。
「愛してるのよ! 僕だって―僕だって、君のことが大好きなのよ!!」
 ペインも応えた。声の限りに、想いの限りにその気持ちを―紛う方なき己の『愛』をただ、ありのままに
ティアラへと伝えた。
 そうして、どちらかが求めるでもなく二人は再び体を重ねる。
 言葉を交わしたのは、それが最後であった。
 自分達の今の様を、人は『刹那的』だとか、『一時の感情に流されて』云々などというのかもしれない。
 しかし、それが一瞬であっても悠久のものだとしても、人が誰かを愛する瞬間に抱く気持ちの真剣さそれには
変わりは無いのだ。
 愛し合う二人はそんな想いの元、『現在(いま)』という刹那を永久(とわ)に分かち合って生きていた。
 だから二人はただ互いを求め合った。愛する以外に―もはやそうすることに言葉や意識などは必要なかったから。
 互いは求めるままに求め、求められるままに応え―心を、体を、やがては夜(とき)ですらをも共有する。
 愛し逢えたことが嬉しくて、そんな一体感がいとしくて、二人は互いの名を呼び合いながら―そんな『愛の名(うた)』を奏で合いながら、

 いつまでも抱きしめ逢うのだった。





51:しっぽのおうじさま
11/11/13 10:39:57.54 SH0wvvXU

【 10 】

 時は絶え間なく流れ続ける。
 それこそは老いも若きも、富も貧も性別も、もはや生物の垣根すらなく平等に全てへと流れ、与えられるものである。
 そして命ある生き物にとってのそんな時間とは、けっして無限ではないのだ。
 物が腐るとき、物が朽ちたとき、老いさらばえたとき―そして『別れ』のその時に、人はそれが限られたもので
あったことを知り後悔するのだろう。
 そんなことを、ペインは帰りの身支度をしながら考えていた。
 支度とは言っても、もともと肩掛けカバンひとつだけの荷物では五分もせずに終わってしまう。それでも
その作業を延々と、未練たらたらに長引かせているうちに、ついそんなことを考えてしまった。
「ふう……」
 もうこれ以上、支度のしようがなくなってしまってペインは小屋の中を見渡す。
 石畳の床にレンガ造りの暖炉、飾り気の無い角材を組み合わせただけのテーブルに椅子が二脚と、そして今
自分が帰り支度をしているベッドがこの部屋の調度の全てであった。―初めてここに来た時と何も変わっていない。
 しかしペインの中では大きな変化があった。
 面と向かって『それは何か?』と問われては答えるに難いが―単にそれは『愛することの尊さ』、そして
『自分探しの答え』と言って間違えは無い。
 そしてそんな風に自分を変えてくれた女性(ひと)こそ―
『おーい、ペインくーんッ。何してるのー?』
「んあッ? あ、はーいなのねーッ」
 突然のティアラの声に我に返る。
 そう。その声の主こそ、彼女・ティアラこそが自分を変えてくれた―成長させてくれた女性(ひと)であった。
 自分を見送ってくれる為に彼女はすでに外に出ている。
 実のところ、すでに出立の予定は三日も遅れているのだ。
 これより前に出立の準備をしていた時には、そのことごとく彼女が隣にいた。そしていざ別れの段になり、
『最後の思い出に』と口付けを交わし、そうしてさらに『これまた最後の思い出に』と抱きしめ合う内に
ムラムラとして行為に及び、夜を向かえ、そして帰れなくなった。……そんなことがもう三日も続いている。
 故に今日はペインの出立を前に、先に彼女が小屋の外に出たというわけであった。


52:しっぽのおうじさま
11/11/13 10:40:10.74 SH0wvvXU
「はああぁ~……」
 改めて小屋を見渡し、もう一度ため息をつく。思い起こせば、たかだか二週間ほどの滞在でしかなかったにも拘らず、
もはやここは他人の家のような気がしなくなっていた。
 二脚ある椅子のひとつは後ろ足の片方が僅かに短い為、座るのにコツがいる。目の前のテーブルは中央にある窪みのせいで、
いつもキレイに拭くことが出来ない。暖炉は奥行きが狭い為、火の起こし方が悪いとすぐに煤を出す等々―
あまりにも彼女との生活が楽しすぎたがゆえ、ここでの記憶の全てはどれもが鮮明に心に残ってしまっているのであった。
 それでもそれを振り払い、
「―さよなら。また帰って来るからね」
 ペインはようやくカバンを肩に掛け、小屋を出た。
『あぁ、やっと出てきた。何してたの?』
 小屋の前には、そんな自分に振り返り声を掛けてくれるティアラの姿があった。
―あぁ……すごくキレイなのね。
 振り返る彼女の金の髪が、生まれたばかりの朝陽を浴びて僅かに赤く、その色を透けさせていた。
 もとよりミルクドラゴンの特徴として挙げられる、背を覆う『赤い鱗・体毛』は彼女にも僅かながら受け継がれて
いるのだ。しかしながら、空を駆けていた頃には陽射しや風雪から身を守るために強く色素を帯びた赤いそれも、
地に根付いて生きるようになっては不要となり、今のティアラのようにすっかり抜け落ちてしまっているのだった。
『ん? どうしたの?』
「―えっ? あ、いや、なんでもないのねッ」
 彼女の声にまたも我に返る。今日はずっとこんな感じだ。
 そして、別れの時は訪れてしまった。
『さて、と。そろそろ出ないと、麓に着く前に日が暮れちゃうよ』
「うん……そうなのね」
『元気でね。また会いに来てよ。あたしはずっとここにいるからさ』
「……うん」
『良かったー、晴れて。今日はあんなに山が遠くまで見える。気をつけて帰ってね』
「………」
 ティアラの見送りを受けて、ペインは一歩を踏み出す。あとは笑顔で『さよなら』を言って歩き出すだけだ。
 しかし―
「………行けない」
 立ち止まってしまった。


53:しっぽのおうじさま
11/11/13 10:47:33.71 SH0wvvXU

「このまま行くだなんて―僕は出来ないのよ」
『ペイン君?』
「ティアラちゃん、行こう! 僕と一緒に―」
 振り返るペイン。
 しかしその言葉を遮るように、

『ゴメンね。あたしは行けない』

 ティアラは、ただそれだけを告げた。
 そう告げてくる顔は、微笑んでいた。
 あまりにそれを告げる彼女の顔が晴れ晴れとしていて―ペインは、それ以上何も言えなくなってしまった。思わずうつむいてしまった。
『ゴメンね、本当に。君のことが嫌いな訳じゃないんだよ?』
 そう笑いながら彼女も言葉を付け足す。
『前にも言ったと思うけど、あたしは『この山』のミルクドラゴンだもの』
「あぁ……」
『それにここには幸せな思い出がいっぱいあるの。家族で暮らした思い出や―それから大好きな君と過ごした思い出が。
そんな思い出がある限り、あたしはこの山が好き。だからここに居たいの』
 そうであった。
 その答えは、以前にも聞いたことであった。そしてその答えからペインは、『自分の在り方』を発見することが出来たのだ。
「―君からそれを聞いて、僕は僕なりの答えを見つけたのよ」
『答え?』
「うん。たとえどんなに過酷な土地に住んだって、そこを愛している『気持ち』が消えない限り―その場所は消えない。
例え地図から消えたって、いつまでもその場所は心の中に在り続ける。そんな想いがある限り、そう想い続けられる限り―
人は幸せなのよ」
『………』
「僕の国は、そんな国民達がいてくれる素晴らしい国だったのね、今まで気付けなかったけど。―そして僕は、
そんな国をもっと幸せな国にしたいと思ったのね。ううん、絶対にしてみせるのよ」
 その想いを遂げられた日には―
 その時はこそ―
「君を迎えに来るのね。この山以上の―素敵な思い出をいっぱい作ってあげるから」
『ペイン君……』
 ペインは再びティアラを迎えに来ることを誓ってみせた。


54:しっぽのおうじさま
11/11/13 10:47:51.66 SH0wvvXU
 けっして大きくはないその体を、胸を張って約束してみせるペイン。その時ティアラにはしかし、そんなペインの姿が
どんな王様よりも立派に見えた。そしてそんな彼の作る国と自分の未来とやらを見たいと思った。
『わかったよ。それじゃ、君が自分で認められる立派な王様になった時には迎えに来てね。お妾さんでも、
小間使いでもなんでもいいからさ』
「第一婦人で迎えるのよッ!」
『もー、奥さんは一人(あたし)だけじゃないの?』
 そうしてこの日、初めて二人の間に笑い声が上がる。
「じゃあ、本当にこれで……」
 そういってペインはティアラへとしばしの別れを告げようとする。
『うん、わかった。たまには遊びに来てね、歓迎するよ♪』
「もちろんなのねッ! この山の前を通る時には必ず寄るし、寝る時だってこっちには足を向けないのね」
『大げさだなぁ、君も』
「んふふふ。じゃあ、『さ―」
 そして最後の締めくくりに『さよなら』を言おうとしたその瞬間―そんな言葉を遮るように、ティアラの口付けがペインの唇を奪った。
 そんな一瞬の出来事に目を丸くするペインへと、
『さよならは言わないで。―「いってらっしゃい」ッ』
 そう言って微笑むティアラの笑顔に涙が浮かんだ。
 その瞬間、ペインも悟る―彼女もまた、この別れを惜しんでいたことを。
 だからペインも、
「うん―いってきます。またね、ティアラちゃんッ」
『さよなら』は言わなかった。『またね』といって、笑ってみせた。

 そうして山を下るその中、ペインは何度も振り返ってはティアラに手を振った。彼女もいつまでもそこに立って、
そんなペインを見送ってくれた。
 緩やかに山を迂回しながら降りていくとやがてはそんなティアラの姿も見えなくなった。それでも振り返り、
過ぎ去ったそこにペインは彼女の面影を思い描く。
 そうして何度目かに振り返ったその時、切れた視界の山の彼方に抜けるような青空が見えた。
 それに気付いて、改めて見上げる空には―
 ふと見上げた初夏の空には、伸ばす手に触れてしまえそうなほどの青が一面に溢れていた。
「あぁ……あんなに空が青い」
 この山を登っていた時には、こんな空の青さが疎ましくも思えた。しかし今はそんなことなど微塵も感じない。
なぜなら心はこの空と同じくらいに―否、それ以上に晴れ渡っているのだから。
「ミルクドラゴンの女の子、最高だったのね♪」
 そんならしくも感傷的になってしまっている自分が恥ずかしくなって、それを誤魔化すようにペインは呟いた。
 そうしてもう一度、ティアラのいる村を望むようにして空を見上げる。


 青空には竜によく似た雲が一筋―北の彼方へ飛んでいくのが見えた。




                  【 おしまい 】


55:しっぽのおうじさま
11/11/13 10:49:36.93 SH0wvvXU

以上で終わりになります。
スレをまたいで長々とスイマセンでした。
そして最後まで付き合って下さったスレのみなさんは本当にありがとうございます。
スレ汚し失礼しました。


56:名無しさん@ピンキー
11/11/16 14:29:41.58 t0Z12A4b
>>55
GJでした! 前スレ途中で終わってたので気になってました
異種間ものなのにらぶらぶで、おもしろかったです!

57:名無しさん@ピンキー
11/11/16 21:08:42.03 ZPL3Nx36
>>56
ありがとうございます!
そういって頂けると投下した甲斐がありました~。
次回また機会があります時はどうかよろしくお願いします

58:名無しさん@ピンキー
11/11/20 04:00:03.78 GvnQkZ4f
純君と愛ちゃんの恋愛

59:沢井
11/11/23 23:16:54.24 Y99oS3Jk
>>55
おお、異種姦ものは珍しい。GJです。ペイン君の甘いしゃべり方がまあ可愛いこと(マテ
・・・え?なにさりげなく参加してんだって?・・・すいませんでしたぁあああああああっ!!!
三月の地震でパソコンが(物理的に)限界に達しまして、中に入っていた文章データがすべておじゃんになり、創作意欲を喪失しておりました。
現在以前の自分の作品を読んで感覚を取り戻している途中です。年明けからコトヒラを再開できればいいかなぁと思っております。

60:名無しさん@ピンキー
11/12/07 09:47:26.45 eBmSFXRt
コトヒラ待機保守

61:名無しさん@ピンキー
11/12/20 20:55:35.03 jZJ53Gtg
保守

62:名無しさん@ピンキー
11/12/29 01:42:02.43 GlWUr2NI
至近距離純愛(お隣幼馴染み的な意味で)

63:名無しさん@ピンキー
11/12/29 01:45:03.53 sZsBcSoZ
hai

64:名無しさん@ピンキー
12/01/03 14:27:07.06 fpDQPuL9
ほしゅ

65:名無しさん@ピンキー
12/01/31 20:02:40.17 GwhUcdsn
>>62
事件の起こりようが無いな

66:名無しさん@ピンキー
12/02/08 22:46:39.27 Wy2+y+lB
バレンタインデー編があるっていってたから待ってるんさ、二年くらい

67:名無しさん@ピンキー
12/02/16 13:46:02.06 zGMLMG+C
うぉしゅ

68:名無しさん@ピンキー
12/03/01 22:21:00.46 OcF75PjG
ほす

69:名無しさん@ピンキー
12/03/17 10:13:37.40 N9BTZMil


70:名無しさん@ピンキー
12/03/22 19:35:49.57 z6x94R3I
続きが来るまで5年でも10年でも待つさ

71:名無しさん@ピンキー
12/03/23 22:06:11.84 7WDC8cVY
続き待ってます

72:名無しさん@ピンキー
12/04/01 10:32:12.99 0aSLiWOd
ほしゅしてるのって俺だけ?

73:名無しさん@ピンキー
12/04/04 22:33:21.07 BGjMv2tu
いやいや

74:名無しさん@ピンキー
12/04/09 00:16:37.05 0daE4yHH
いやいやいや

75:名無しさん@ピンキー
12/04/26 21:51:23.00 siz84U3J
ほす


76:名無しさん@ピンキー
12/05/11 01:04:20.18 Gv0s+0pL
保守

77:名無しさん@ピンキー
12/05/22 01:21:35.13 zB4Y4ZIE
ほしゅ

78:名無しさん@ピンキー
12/06/06 06:24:47.84 SW4uw+hx
ほす


79:名無しさん@ピンキー
12/06/19 22:05:51.33 dz9mM2jF
純君と愛ちゃんの純愛

80:名無しさん@ピンキー
12/06/28 23:41:02.56 SZqNBHy0


81:名無しさん@ピンキー
12/07/14 20:42:58.34 nJQXRArL


82:名無しさん@ピンキー
12/07/21 01:54:21.90 ysEmKzfc
保守

83:名無しさん@ピンキー
12/08/03 04:52:16.51 D5QctO6n


84:名無しさん@ピンキー
12/08/15 22:31:13.75 KgROVFTb


85:名無しさん@ピンキー
12/09/10 22:30:12.46 32mokE0F


86:名無しさん@ピンキー
12/09/15 00:03:17.35 fUYy8iU2


87:名無しさん@ピンキー
12/09/25 06:11:39.54 mK2FwxUS


88:名無しさん@ピンキー
12/09/29 01:00:13.71 dXsCFmGz


89:名無しさん@ピンキー
12/10/16 18:55:35.79 82mQ5MQt


90:名無しさん@ピンキー
12/10/17 06:20:19.11 6ZHTZwKL


91:名無しさん@ピンキー
12/12/01 15:13:32.55 G4qbmUnR


92:名無しさん@ピンキー
12/12/17 20:04:43.75 PNMgT2Pg


93:名無しさん@ピンキー
13/01/14 08:59:34.98 H5Nk0kvw
誰かいる~❓

94:名無しさん@ピンキー
13/01/19 00:43:12.69 uvUoUXs8
ほしゅ
続き書いてくださる神はどこですか?

95:名無しさん@ピンキー
13/03/23 04:22:50.89 XkTIZXLH


96:名無しさん@ピンキー
13/05/09 14:12:23.76 2Ln+mcJo
保守

97:名無しさん@ピンキー
13/07/04 NY:AN:NY.AN J5Ee4ibu
遠距離純愛

98:名無しさん@ピンキー
13/09/08 01:01:18.55 m6iHnh24
保守

99:名無しさん@ピンキー
13/11/15 11:02:54.59 rbcezRiq
ここってやっぱり、住民の殆どが女なのか?

100:名無しさん@ピンキー
13/11/16 02:16:00.68 l0Xc9bqo
おっさんがいないとでも思ったか!

101:名無しさん@ピンキー
14/03/21 23:57:37.63 rEvtz4+V
純愛


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