11/11/27 16:03:36.17 cD4v9Dnd
>>308 鬼畜警報発令
調教室の扉が開き、外から光が差した。
「げえっ、球磨川副隊長にリン童参謀」
横山光輝の漫画の司馬懿仲達のような顔をして中年男性は驚愕した。まさか、この二人が出てくることになるだなんて、彼は全く
想像していなかったのだ。
「両さぁーん、まだ調教済んでなかったんDeathかー? おっそいDeathね。マッジ笑えるー」
喪服を着た少年が、ケタケタと操り人形のような乾いた笑いを浮かべた。
その横では学ランを着たショタがコキコキと首を鳴らしている。
存在自体歪められそうな凶(ま)がった空気の中、両津勘吉は生唾を飲み込み、ヴェントのもとに駆け寄って耳打ちした。
「お、おいピアス! 今すぐここに○ をかけ! でなきゃ死んじまうぞ!」
「あぁ? 何言ってんのよアンタ」
眉をひそめてヴェントが問い返すが、
「はいはい内緒話はやめてねー」
音も無く、シアンが二人の間に割り込んだ。
「両さん、もう疲れただろうから今日は休んでいいよ。参加費は後で口座に入れとくからさぁ」
この二人が出てきたということは、もう自分などいても意味はない。
そう判断した両津は軽く頭をおさえて、球磨川の方に向かった。そして軽く彼とハイタッチして、部屋を出て行った。出ていくさなか
「わしの10万円…」とつぶやきを残して。
「あ、あれ? あの眉毛野郎出て行っちまったぞ?」
「両さんじゃぁアンタは手に負えないみたいでねー。球磨川サンと調教部隊隊長との合議の結果俺たちが来たって寸法よ」
ヤギ目を輝かせて、リンドウ・シアンはポケットからテレビのリモコンを取り出した。
「…いったい何をする気な訳? 何度言われようが、私は絶対…」
ヴェントの質問を完璧に無視して、シアンはスイッチを押した。眼前に広がるスクリーンに、ハイビジョンの映像が流れる。映って
いたのは、平凡な遊園地だった。
『これは』『少年が銀色の修道女と出会う』『少し前の物語です』
いつの間にかマイクを握っていた球磨川が、弁士の様に解説を始めた。
『その日』『とある遊園地では』『新しいアトラクションが稼働しました』
少年が言い終わると、急にカメラはズームを始めた。
風船を配る着ぐるみに、落ちたパンくずを食べる小鳥。至極平凡な風景が移されていく中に、
「!!」
前方のヴェントは、その映像が何を現しているのかを知る手がかりを、「不幸にも」見つけてしまった。
「はいはーいココ注目ぅー。亜麻色の髪の可愛い女の子と、その弟さんがいますよねー」
教鞭を取り出したシアンが、パシパシと画面右端の料金所の前を差した。
「ああ…ああああ…やめろ、やめろっ…」
ヴェントの体中に生暖かい汗が流れ、血管に氷水を打ち込まれたかのように背筋が震えた。それに全く反応を示さず
球磨川は解説を続けた。
『ここに』『とっても幸運な兄妹がいました』
ニコニコとした笑みを浮かべて、球磨川は言葉のナイフを突き刺した。