12/03/31 08:22:12.77 xHlukchD
間違えて送信してしまった。
>>505
何か語り手の走馬灯というか、死の間際の幻みたいだと思ってしまったw
508:名無しさん@ピンキー
12/04/12 19:22:18.99 K7Ie3xYe
過疎ってるので小ネタをひとつ
「春だなー」
「春だねー」
「桜の季節だなー」
「桜の季節だねー」
「今年も同じクラスだったなー」
「同じクラスだったねー」
「毎年毎年代わり映えしないなー」
「でも私はクラス発表って好きだよ」
「そうなの?なんで?」
「また今年も一年同じクラスで過ごせるってわかった時が嬉しいんだもん」
「そんなもんかー。でも家じゃいつも一緒だし、違うクラスになっても普通に会いに行くと思うぞー」
「うーん、それもそうかな……」
「だろー」
「そうだねー」
「……」
「……」
「……」
「晩ごはん何にしよっか?」
「トンカツ食いたいな」
「いいよー、じゃあ材料買いに行くから一緒に行こっか」
「おー」
新年度っぽいネタにしようとしたらいつの間にか熟年夫婦の会話になってた…
509:名無しさん@ピンキー
12/04/12 20:26:04.30 d3VZlTFP
石川遼が幼馴染みと婚約したそうな
親としては結婚させたくなくて、とりあえず納得させるためにそんなことにしたのかな
510:名無しさん@ピンキー
12/04/18 19:29:23.37 kq9sPg+D
残り25kb・・・人によってはそろそろ新スレ待機、なのか
511:ちょいと早いかもしれんが
12/04/19 11:52:49.92 7x+/whBa
次スレ
つスレリンク(eroparo板)
512:名無しさん@ピンキー
12/04/19 11:54:50.38 7x+/whBa
前スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ23章【<恋人】
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22代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ22章【<恋人】
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21代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ21章【<恋人】
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20代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ20章【<恋人】
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14代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ14章【<恋人】
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13代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ13章【<恋人】
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12代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ12章【<恋人】
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11代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ11章【<恋人】
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10代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ10章【<恋人】
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9代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ9章【<恋人】
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8代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ8章【<恋人】
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7代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ7章【<恋人】
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6代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ6章【<恋人】
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5代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ5章【<恋人】
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4代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ4章【<恋人】
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3代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ3章【<恋人】
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2代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ2章【<恋人】
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初代スレ:幼馴染みとHする小説
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513:名無しさん@ピンキー
12/04/19 12:01:25.62 7x+/whBa
御免なさい
まちがえた……
514:名無しさん@ピンキー
12/04/24 00:16:45.31 HT4cD+nA
>>513
スレ立て乙、ドンマイw
新年度に新スレも立たったとだし、在庫で埋めにかかりましょう。
高校生もの、エロなし短編で4レス(くらい)
515:ハーレム・テンプレート
12/04/24 00:21:54.15 HT4cD+nA
冷静に考えてみると、『ハーレム展開』というのは、言うほど非常識なことではなない
のかも知れない。
立で食う虫も好き好きとは言え、一人の女を惚れさせるような魅力が、別人に全く無効
というのは、あまり無い。カッコいい人は誰からみてもカッコいいのが普通だ。そして、
常にモテまくってる怪しいフェロモン男でもない限り、女が男に惚れる瞬間は、そう言う
カッコいいところを見せた時だと、私は考える。
だから、今まで見向きもされなかった男が、ある一定期間だけやたらモテる、所謂
「モテ期」というものを、最初からフィクションと断じるのもいかがなものか。
「ちょ、ちょっと聞いてくれ美和子。部活の後輩と同級生の委員長と生徒会の先輩から
いっぺんに告白された」
「落ち着いて、さとし君。ラノベの読み過ぎよ」
「正直俺もそれを疑った。だがお前の反応からして白昼夢でもなさそうだ」
ノックも無しに高二女子の部屋へ闖入してきた狼藉者に対して、私は宿題から目を
上げずに対応した。机のガラスコップに映った姿が制服だから、学校帰りそのままだろう。
頬がすっかりに紅潮しているのは師走の寒風に煽られたら、だけでも無いらしい。
「或いは罠、か?」
「最近、人の恨みを勝った覚えは?」
「無い。八方美人が俺の信条だぞ」
「そういう風見鶏君が嫌いな人も多いからねぇ。主に私とか」
「なっ! 美和子お前、まさか俺の学校の女子に工作をっ!」
「してない。つか出来るかそんなこと。あんたの学校行ったの、こないだの文化祭で
2回目よ」
つい2週間前のことだ。自分の学祭は一応真面目に参加しているが、他校に行ったのは
初めてだった。聡史からお客様扱いされるのは、どこか不思議な感じがした。
「そういえば、文化祭で一肌脱いだって言ってたじゃない。それがらみじゃないの?」
「脱いだったって、そりゃ人が足りないからあっちこっちヘルプのお願いはしたけど、
そこまで陰湿に嵌められる覚えはねえ」
「罠から離れなさいよ。惚れられる要素は?」
言われて、初めてその可能性を考えたかのように、八條聡史は黙考する。
「模擬店の裏方でかかりきりだったんだから、女の子に受けるような事はしてねえよ。
よそのクラスへの挨拶って名目で当番を時短したから、委員長はまず無いと思う。
生徒会も、先生に猫被ってゴリ押ししちまったし。後輩の親父さんに仕事頼んじまったのも、
彼女本人にしてみれば面白くは……あ、あれ? 恨まれる要素満載じゃね?」
「ふむん」
「え、ちょ、マジで? マジで罠なのこれ!?」
あたふたと騒ぐ幼馴染を横目に、私は一旦宿題を片した。しばらくは勉強に
ならなさそうだ。
実は、この一件に関して、私もいくらかは事情を知っていた。およそ半月前の文化祭で、
聡史は八面六臂の活躍をしたのである。
舞台はクラス出店の模擬店だった。出し物を決めないと帰れない放課後のHR。男子の
誰かが適当に言った「メイド喫茶!」という案は女子の「キモい」の合唱で回避された。
しかし、他に案が出ることも無く、結局件の委員長は「喫茶店」を採用せざるを得なくなった。
だが、そんなやる気の無いクラスに飲食店の出店はハードルが高過ぎた。言いだしっぺの
男の子は最初だけ無駄に張り切った後、見事な投げっ放しジャーマンで逃亡した。
開催二日前に生徒会が検分した際には、出店不能との判を出された。
そこからリカバリをかけたのが、聡史だったのだ。
516:ハーレム・テンプレート
12/04/24 00:23:59.51 HT4cD+nA
前述の通り、八条聡史は、自他共に認める八方美人である。とにかく顔が広い。
先生受けもいい。交友関係は浅く広くが基本であり、信用は自分を相手に合せることで築く。
要するにパシりである。絶対の信頼を得ることは少ないが、皆から便利な人間であるとは
思われている。そうしてあっちこっちに小さな恩を沢山売っている。必要があらば媚び諂う
ことだって辞さない男だ。人によっては、必要が無くてもやっている様に見えることもあり、
私ですらそう感じることもある。そして、実際、そうやって誰からも好かれるのが好きなのだと、
彼自身認めている。
そんな人物だから、確かに嫌っている人間は少ない。無論、そういう手合が駄目な少数
の人間からはゴキブリの如く嫌われていたりもするが、あくまで大勢に影響ない範囲である。
だが、それが男性的な魅力に繋がるかと言うと、普段の高校生活では難しい。
しかし、こんな時に限っては彼の人脈が光った。作業に足りない頭数は三学年問わず
あらゆるところから掻き集め、生徒会は容赦なく担任の虎の威を借りて攻めを落とし、
事態を泥沼化させていた衛生管理責任者まで、部活の後輩の親御さんを拝み倒して
連れてきてしまったのだ。
その結果、出し物は滞りなく行われた。十分な人数が集まったから、誰かが無理をする
ということも無く、ある者は適度に頑張り、ある者は適度にサボり、悲劇が生まれない
代わりに、ヒーローも生まれなかった。
おかげで、終わってみれば、直前に騒いだ割には大したこと無かったな、と言うのが
参加者一般の感想であった。聡史にしても、当日はゆっくりと「お世話になった人の
挨拶回り」を決め込んでいたから、彼を「サボり組」の方に思う人も多かった。
本人からして、そう認めていた。
但し、騒動の渦中にいたものには、聡史の風見鶏の本当のところが見えて来たのだろう。
「まあ、罠にせよ罠じゃないにせよ、今後の身の振り方次第でさとし君の残りの学園生活が
決まるわけね。バラ色か、茨かは知らないけれど」
「いやいやいや、この流れどう見ても茨じゃえか。どうしよう美和えもん!」
「……きみはじつにばかだな。ひとまず座ったら?」
「お…おう」
言われてようやく、部屋の入口を離れた聡史は、花柄のシーツに遠慮もなく腰を下ろす。
私も勉強用のメガネを外すと、椅子を回して彼の方に向き直った。
「じゃあ、順番に行きましょうか。まず、さとし君はその娘達のことをどう思ってるの?」
「正直、人を罠にかけるような子には思えない」
「あーもう、そのネタいいから」
「よくないよ! 一番大事なとこだよ!」
「何慌ててるのよ。罠だったら、大人しくピエロになっておいて、後で被害者ぶれば済む
話でしょう。こんなの、さとし君の常套手段じゃない」
「え……あれ?」
「つまり、どっちにしてもさとし君に必要なのは、三つの告白が本物だったと仮定して、
どうやって三者とも顔の立つ対応をとるか。違う?」
「そ、そうだよな。俺としたことが、何で気付かなかったんだろう」
つまり、無意識にテンパってしまうほどの相手、ということか。
「じゃあ、次の問題ね。本命役にはどの娘を選ぶ?」
「いや、次って。最初の設問にも答えられてないというか、そんな段階で選ぶも
何もだな……」
「断りずらい娘がいるんでしょう」
「いや、まあ、無碍に断りづらいという意味では全員というかそもそも告られたことが
初めてなのにどうしたらいいか分からないといいますか」
これは重症だ。私は眠気覚ましのどくだみ茶で喉をうるおし、努めてゆっくりと
声を出す。
517:ハーレム・テンプレート
12/04/24 00:27:08.27 HT4cD+nA
「その三人の中で、今まで気になってた娘は居るの?」
「正直言って、三人とも今まで意識したことは無かったんだ」
ほう。
「まあでも、今回無理を通すにあたって、それなりに話す機会はあったよ。
部活の後輩はさ、学校ではハキハキ明るいんだけど、家では親父さんと絶賛冷戦中だっ
たりするんだよ。まあ、愚痴を聞く限りパパは娘可愛さに暴走中。娘も娘で昔は家族大好
きっ子だったんだけど、なまじ仲良過ぎただけに反抗期を抉らせちゃってさ。ちょっとした
切っ掛けさえ有れば元通りなんだけど、いい人同士逆にそれが出来ない状態でなぁ。
馬鹿というか何と言うか、でもほんとに理不尽なほどいい娘で、腹黒い俺には眩しいというか
なんというか」
……ほほう。
「生徒会の先輩は、これがまたあったま固くってさー。会長の方針は厳し過ぎるとか、
専横が過ぎるとか思ってるくせに、会計の自分が言うことじゃないとか言ってずっと腹に
貯めてんだよ。おまけに、生徒会自体は一丸じゃなきゃいけないとか言って、いざ動くと
なると、その指示を率先して徹底すんの。お前は何時の藩士じゃっつー感じだよ。今回の
生徒会攻略の一番の壁だった。まあ、人間関係が軽薄な俺の対極にいるような奴だな。
よくそんなことやってられるなあと、ついつい気になって目がいっちゃうんだけど」
………………。
「委員長は、表面上は俺とよく似たタイプ。社交性があるというか、顔が広くて、誰とでも
話せる奴だな。でも、その先が問題でさあ。人脈なんて頼ってナンボ、寧ろこっちから
頭を下げてこそ太くなるもんだってのに、なぜかそこで生真面目に責任とか考え始めるん
だよ。お返し出来ないのにお願いなんか出来ないとか愚痴愚痴さあ。そこは逆だってのに。
こっちが先にお願い事してるから、向こうも気軽に頼ってくれるようになるんじゃないか。
何でそこが分かんないのとか思うと、もどかしくてもどかしくて目が離せないんだよ。
同族嫌悪、とは違うんだけども、ついつい手と口を出さずには…
……って、あの、美和子さん?」
「もうさ、三重婚してラノベ主人公らしく刺されればいいよ」
「ちょ、人が恥を忍んで正直に相談してんのにそりゃないよ! つか、最近のラノベの
主人公って刺されるの!?」
何だか、こめかみの部分が痛くなってきた気がしたので、私は一旦机に身体を戻した。
ベッドの上で手足をバタつかせる幼馴染を尻目に、コップのどくだみ茶を一気飲みする。
……苦い。
「で、返事のタイミングについてだけど。私に相談に来たってことは、取り敢えず保留は
出来てるのよね?」
「あ……ああ。まあ、向こうも突然で悪いって言ってくれてさ」
「まあ、そう言えばそうね。全員が全員、功を焦るタイプとも思えないけど」
「功って、あのな……。まあ、何だか、今の時期が重要みたいだぞ。最後に告白してきた
後輩が、『遅れを取るわけには』とか言ってたし。そういう占い的なジンクスでも有るんじゃ
ないか?」
……なるほど、お互い戦況もよく理解済みか。それでも勝負に打って出る辺り、覚悟も
生半可なものではないだろう。
彼女たちには、明確な動機がある。加えて、それぞれが聡史に対する明確な切り口を
持っている。条件は互角、となれば先手を取ろうとするのは道理と言えた。同じイベントで
フラグ立てした彼女たちには、時間という要素が等しく足りていない。
その要素だけ無条件に勝てるのは、幼馴染キャラの特権だ。
「……いかん、ラノベの読み過ぎなのは私かも知れない」
「えと、あのー、美和子さん? 先程から貴女には珍しく、意味不明なお言葉が多いの
ですが……」
518:ハーレム・テンプレート
12/04/24 00:31:07.57 HT4cD+nA
ただ、彼女らが聡史の八方美人の理由を、この短期間でどこまで理解したのかについては、
はっきり言って疑問だ。後輩・会計は、父親との和解・会長への反旗といった、個人的事情
におけるインパクトが大き過ぎる。委員長についても、自分が責任の真っただ中にいた分、
助けてくれたことに気がいって、どう助けたかについては気にする余裕が無いのではないか。
そうでなくても、彼の信念を理解するのは常人には難しい。
好きな人に、一人二人に、いい顔をするのは誰にでも出来る。だが、十人、百人、
会う人万人となれば話は違う。
ただ単に、気に入らない奴もいるから大変、という次元では無いのだ。ちょっとした親切
であっても、ただ愛想良くふるまうだけで合っても、その対象が200人、300人となれば、
する方の側は"ちょっとした"こととは言えなくなる。誰に対しても「小さな親切」を送り続ける
人生の労苦は生半可な物では無い。そんな生き方を続けるには、大きな覚悟が必要だ。
聡史にはそれがある。人間、一人では誰も助けられないという覚悟。例えどんなに信頼
できる仲間でも、その日、その時、必要な場所にいなければ、何の役にも立たないという
悔恨に裏打ちされた覚悟だ。
私と聡史の、深い脛の傷の上に根付いたそれを、学祭イベント如きでポっと出の
新キャラに理解されてたまるもんですか─
「美和子、美和子ったら。……おい、大丈夫か、みーちゃ」
「へぁっ? ごめん、さっ……とし君」
いけない、私としたことが完全に気を飛ばしていた。変な声出ちゃった。
「ええと、何を話していたんだっけ?」
「や、だから俺の三者告白についてだな、どう対処すべきかという情けない相談の最中で
……大丈夫?」
「平気よ、悪いわね。ちょっと、根詰めて勉強してたから眠くって」
反射的に机の上のコップを煽ると、どくだみ茶のティーバッグがペトリと顔に降ってきた。
そう言えば、さっき飲み干したんだった。
素知らぬ顔で鼻下にティッシュをあてがいながら、私は深呼吸して気を落ち着ける。
しかしまあ、後輩・先輩・同級生、それぞれ部活に生徒会に委員長か。よくもこれだけ
綺麗に揃ったものだ。具体的な話を聞いて少し現実味が出て来たものの、やはり作り物
めいた感触が拭えない。もちろん、聡史の話を疑っているというのではない。その渦中に
自分が入っていくという実感が持てないのだ。
要するに、自分は少し気圧されているのだろう。押し返すには、ちょっとした開き直りが
必要だ。なるほど、件の後輩ちゃんの言葉は、こんな心境から飛び出したのか。
519:ハーレム・テンプレート
12/04/24 00:33:10.70 HT4cD+nA
「まあ、大体事情は分かりました。確かに、いきなりこんな漫画みたいな状況に陥れば
混乱するのも無理無いわ」
「おお……さすが美和子。分かってくれると思ってたよ! ……して方策は?」
「あまり真面目にならないことよ。こんなふざけた状況なんだもの、常識的に考えてるほうが
無理が出るわ。物語の主人公にでもなったつもりで、役に入って楽しめばいいじゃない」
「えー……。いや、うん。美和子の言いたいことは分かるよ? けど、当事者的には、
目の間に現実の人間関係が有るわけで、そう簡単に吹っ切れないというか……」
「ゲームと割り切るには、まだインパクト不足ってわけね」
出来るだけ、何気ない風を装って、私は椅子から立ち上がった。案の定、彼は膝にのせ
たこぶしを見つめ、下向きにウンウン唸ったままだ。
「じゃあ、さらにお約束っぽくしてみましょうか。生徒会に部活っ娘にクラス委員。ここへ
焦った幼馴染も参戦してくるってシナリオはどう思う?」
芝居がかった台詞と芝居がかった動作で、私は彼の隣りに腰を下ろした。そうしなければ、
とてもじゃないが声音を平調に保つことなど出来なかっただろう。
二人の重みでスプリングが沈み、自然と肩が触れ合った。回転の早い彼の頭が、
その台詞を咀嚼する寸前、私はここ一番の笑顔で上目遣いに布告する。
「好きです、さっちゃん。私と付き合って下さいませんか?」
今や混乱の極地にある幼馴染の顔は、思った通りに愉快で、やっぱりちょっとかわい
そうだった。ごめんなさい、さとし君。遅れをとった三面作戦となれば、さすがの私も手段を
選んではいられない。だが乱戦にして地力の勝負となれば、年季の違いを見せてくれる。
そんなわけだから、さっちゃんはせめて、このテンプレ染みたハーレム状態を楽しんで。
なんてことを思いながらは、私は彼の腕にそっと身体の前を押し付けた。
520:名無しさん@ピンキー
12/04/24 00:36:18.91 HT4cD+nA
以上です。
幼馴染キャラの敗北理由の多くが、天然さ・純真さ・鈍感さが裏目にでた結果だと思うのです。
というわけで権謀術数系幼馴染でした。
「腹黒パワー、幼馴染が持つと距離の近さに駆け引きの上手さが備わり最強に見える」
521:名無しさん@ピンキー
12/04/24 00:38:55.31 EsexaK3N
リアルタイムで遭遇するとは…
一度でいいから翻弄されてみたかったぜ
522:名無しさん@ピンキー
12/04/24 01:17:15.24 w0p53nu+
素晴らしい
乙
523:名無しさん@ピンキー
12/04/24 22:31:58.36 GIzFIXI6
素晴らしい
ラノベ的な設定とてんほの良さを逆手に取ったような作品だ
524:名無しさん@ピンキー
12/04/24 22:34:55.26 UXxHSmRL
聡史にしてみればポルナレフ状態だな
525:名無しさん@ピンキー
12/04/25 00:44:36.27 x+1FWhDH
ハンサムな聡史はこの状況を打開するアイディアがひらめく
仲間が来て助けてくれる
助からない。現実は非情である
526:けやきとそらまめ ◆NVcIiajIyg
12/04/25 01:40:37.32 ZtcS5VBL
1
新緑の季節が待ち遠しいのか葉桜は白い花弁を今日も散らす。
夜更けの桜を眺める役得もじきに終わってしまうらしい。
細い三つ編みを垂らした支岡くぬぎはアパートメントの小窓から目を逸らした。
ベランダ側の大窓から桜が見えるのなら良かったけれど、残念ながら西側のベランダ前には隣のアパートがどんと立っている。
塗装が剥げた赤い壁と、いつでもカーテンがかかっている窓しか見えない。
カーテン向こうの灯りに一瞬、意識を向けてから天井を見上げる。
昔、この部屋の主とパジャマパーティをしたときに見立てて遊んだ模様は今も変わらずそこにあった。
そこで、ひとつ溜息をつき。
くぬぎは葉擦れのような涼やかな声で、この部屋の主の少女の名を呼んだ。
「ちお。あんた今日は全然身が入ってないじゃない。いったいどうしたの」
ちお、と呼ばれた少女はローテーブルに打つ伏した頭をずりりと起こして、ベッドに座る幼馴染に顔を向けた。
妙に切ない瞳である。
「ちょっと。そんな目しないでよ。新歓の部活紹介、ちゃんと決めようっていったのはちおの方で」
「くぬちゃんは頭いいよね?」
「……せ、成績がいいだけっ。そんなこと言っても何も出ないわよ。それとこれとは、」
やや赤い頬で言い返していたくぬぎを、じいっと見つめて、遠藤千緒はおもむろに立ち上がった。
肩ほどの柔らかな髪がふわりと広がりまた落ち着く。
「くぬちゃんっ!」
ベッドまで突進して三つ編みに顔がつくほどにじり寄る。
「助けて!!」
「え、う!?……な、なに。宿題とか……?」
「干してたぱんつがなくなったの!!」
くぬぎは十数秒ほど絶句した。
「ま……待って待って。干してたっていうのは、どこに」
幼い頃から遊びにきていたくぬぎには、このアパートには室内に物干し場があり、おばさんが洗濯物はかならずそこに干していることくらい知っていた。
それがなくなったとすれば―泥棒、の仕業ということすらありえるわけなのだが。
質問の意味を正確に理解したのか、千緒が湯気が立つほど真っ赤になって首を振る。
「ベランダに干してた……」
「アホかあんたはッ!!!」
「き!」
思わず怒鳴って幼馴染の頭を叩くと謎の悲鳴をあげられた。
「ベランダって、ベランダってあんたちょっと羞恥心がないの?!」
「くぬちゃん怖い……」
「怒りもするよ!」
ベランダに隣接する隣のアパート(メゾンドけやき)と、このアパート(コーポそらまめ)のベランダ間にはほとんど隙間というものがない。
当然乗り移ることも可能だし、メゾンドけやき側がカーテンを開ければベランダの洗濯物など丸見えだ。
北側の外壁にはエアコンの室外機や配線やなんやらが張り出していて外から入る隙間もない。
更に南側は別のビルの裏壁でありこちらも外部からの侵入はできない。
必然的に、犯人がいたらこのアパートか隣のアパートの住人となる。
「風で飛ばされた、ってことはないの。一階の庭に落ちていたりしなかった?」
「……なかった…」
「ああそう分かった。分かった分かった。なくなったのはいつ?」
はぁと三つ編みに指を絡めて肩を落として聞きながら、くぬぎはベッドから脚をおろした。
そのままベランダ側まで歩いて行ってカーテンごと窓の桟を横にを引く。
靴が一足置けるくらいの狭いベランダに踏み出して、向かいの窓をカンカン叩く。
やや強めに延々と。
「三島。三島兄弟ー。ちょっと、ねえ、顔貸しなさい」
深緑のカーテンがややあって開き、同い年頃の少年が二人、顔を出した。
くぬぎは、二人を順繰りに見つめてから、こほんと咳払いをし。
涼しい声で厳かに告げた。
「あんたたちのどっちか。ちおのパ……、ん…洗濯物、盗ったでしょ」
527:けやきとそらまめ ◆F7/9W.nqNY
12/04/25 01:58:17.99 Figh4FRi
2
「……は?」
三島恭平は隣家からの突然の詰問に、口をぽかんと開けることしかできなかった。
窓の外、向かいのアパートから顔を出してこちらを見据えているのは、よく知った幼馴染みの少女、支岡くぬぎだった。
無遠慮に窓を叩かれ、近所迷惑になるので仕方なく応対すると、いきなり盗人呼ばわりである。わけがわからない。
「何よその目は」
気の強そうなくぬぎの目つきが、さらに剣呑なものになる。ちょっと思っていたことが顔に出てしまっていたらしい。
「お前は何を言ってるんだ」という内心の声を、恭平は気取られないように打ち消す。
「こんばんは。突然どうしたの、くぬぎちゃん?」
隣にいた弟の純也が、小首をかしげて少女に問いかけた。恭平とは双子なのだが、二卵性のためかあまり似ていない。
無愛想な恭平とは違って、純也は人当たりがいい。そのせいか、くぬぎの強気な物言いも純也に対しては
柔らかくなる。それが恭平には少しおもしろくない。
「いや、その……ちおがベランダにパ……洗濯物を干してたらしくて、それがなくなって困ってるの」
「……洗濯物?」
純也はもう一度首をかしげると、隣の兄に目を向けた。恭平は顔をあわせずに答える。
「知らん。そもそもここしばらく、窓を開けた覚えがない」
偉そうに言うことじゃないよ、と純也は苦笑いをする。
「換気のために、起きたときに一度窓を開けたよ。15分くらいかな。でもそれだけ。昼はいなかったから知らない」
「俺もいなかった。帰ってきたのはたしか夕方の5時ごろだったか。そのあとテレビ観て飯食って、
部屋に戻ってきたのはさっきだ」
「ぼくも同じような感じかな。朝はそもそも洗濯物なんて干してなかったと思うけど」
すると、くぬぎの後ろから遠藤千緒が、真っ赤になった顔をおずおずと出して、こちらを覗いてきた。
「こんばんは、ちおちゃん」
「う、うん。こんばんは」
のんきに挨拶などをしている弟を尻目に、恭平は単刀直入にもう一人の幼馴染みに訊ねた。
「洗濯物って、ベランダに干してたのか?」
「……ん」
小さくうなずく。くぬぎが睨んできたが、恭平とてセクハラをするつもりは毛頭ない。
それに、質問する側もこれで結構気まずいのだ。
「身に覚えがないのに、一方的に犯人扱いされちゃたまらないからな。ちょっと訊くだけだ。我慢してくれ」
「……うん」
今度は幾分はっきりとうなずいた。隠れていたくぬぎの背中から出てきて、ベランダの正面に立つ。
背は千緒の方がずっと低い。くぬぎも決して大きいわけではないが、小動物のように小柄な千緒と比べると、
背が高く見える。とても同学年とは思えない。
「いつ干した?」
「えっと、昼の2時くらいに……」
「なくなったことに気づいたのは?」
「夕方には取り込もうと思って、ちょっと外に出てたの。だけど帰ってきて、6時くらいに窓を開けたら
どこにもなかった。物干しごとなくなってたから、最初はお母さんが取り込んだのかと思ったんだけど、
訊いても知らないっていうし、下にも落ちてないし、どこ行っちゃったんだろうってもうわかんなくなっちゃって……」
次第に声量が小さくなっていく千緒の様子に、恭平は何も言えない。女性の衣類は男性よりもずっと
デリケートなものだろう。加えて千緒は思春期真っ只中の女の子だ。同年代の男子に洗濯物をどうこうと
話題にされて恥ずかしくないわけがない。それを言うなら同年代の男子が住む部屋の真正面に洗濯物を
干すことがすでにおかしいが、千緒は昔から恭平と純也に対してだけは気を許しきっている節があり、
警戒心皆無だったりするので、恭平はその行動を特に不可解だとは思わなかった。家族ぐるみでの付き合いがあるので、
半分は家族のような意識なのだろう。
恭平個人としては、そう割り切れるものでもないが、それはともかく。
「物干しって、あの洗濯バサミがたくさんついてるやつか?」
「うん……」
物干しごとなくなったとなると、風で飛ばされたという線はほぼ消える。鳥や動物が持って行ったというのも考えにくい。
ということはやはり人為的な行為によるものと考えていいだろう。平たく言えば誰かが盗んだのだ。
恭平は違う。純也も違うと言っている。ならばどこかのコソ泥の仕業か。
いや、と恭平は思い直す。周りの立地と角度的に、この位置の洗濯物を確認できる場所は恭平たちのいる部屋しかない。
ベランダの足場が邪魔になって、下からは見えないだろう。