【友達≦】幼馴染み萌えスレ23章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ23章【<恋人】 - 暇つぶし2ch334: ◆e4Y.sfC6Ow
11/12/31 08:28:26.25 UEkwDxDe
 周囲の反対を振り切って、それでも続けた練習は無駄じゃなかった。
 支部大会での演奏は、どの団体のそれよりも素晴らしい出来だった。少なくともあたしにはそう聴こえた。
 結果発表のあの瞬間、沸き立つアッちゃん達を遠目に見たあたしも泣きたくなるほど嬉しかった。
 いっぱい、いっぱい我慢を続けて。
 色んなモノを犠牲にして。
 色んなモノを奪われて。
 それでも歌い続けたアッちゃん達の、ようやく手にした栄光だった。
 カッちゃん達のソレが世間で大騒ぎになる中、アッちゃん達は反感を買ったせいかあまり喜んだりは出来なかったようだけれど。
 けれど、訳を知る人だけは心から精一杯の祝福を贈ったのだった。
 おめでとう、アッちゃん。

   ◇

「千恵ちゃん……やったよ」
 帰ってきたアッちゃんは、満面の笑みであたしの所に来てくれた。
 だからあたしも、めいっぱいの笑顔で出迎える。
「うん、聴いてた。凄かった。泣きそうになった」
「あははは、うん……うん」
 もうそれだけでアッちゃんはちょっと涙目になっている。
「ほら、嬉しい日なんだから、そんな泣かないでよ。本当に、アッちゃんはいつまで経っても泣き虫なんだから」
「そんなことないよ。俺、千恵ちゃんよりも年上なんだよ」
「それでも、体はあたしよりもずっとおっきくなっても……それでも」
「ん……あのさ、普門館にさ……聴きに来て欲しい。俺、精一杯やるから、聴いて欲しい」
「うん、絶対に行く」
 小さな頃から捻くれ者だったあたしを、いつも気にしてくれていた男の子がやっとの思いで手にしたもの。
 それをあたしに聴かせてくれる。
 あたしにも分けてくれる。
 その栄誉に、あたしは感謝と歓喜で胸を高鳴らせるのだった。

   ◇

335: ◆e4Y.sfC6Ow
11/12/31 08:29:34.99 UEkwDxDe
 十月第三日曜。
 また反感を買い、色々あったけれど……無事にこの日を迎えられた。
 全日本吹奏楽コンクール高校の部。
 このチケットは実はかなり入手困難なのだった。大手プレイガイドで販売されているものの、あたしが手に入れられたのは本当にラッキーなだけでもあった。
 アッちゃんは「いっそ吹奏楽部に入ってくっ付いておいでよ」なんて言ってくれたけど、それはしてはいけないことの様に思えた。
 あたしはあくまで『一観客』なのだ。その辺りは弁えている。
 けれど、そうまで言ってもらえることが誇らしく、嬉しかった。
 ドキドキしながらその日を迎えて、家を後にすると
「遅かったね、千恵ちゃん」
 駅でお姉ちゃんと鉢合わせた。
「? 遅かったって……何が?」
「もう、今日アッちゃんの演奏会なんでしょ、何か凄いの」
「ッ!! お姉ちゃん!!」
 道行く人の誰もが振り返るような美少女ぶりで、目敏い人は「アレ、『南ちゃん』じゃね」なんて言うほどの目立ちぶりで。
 そんなお姉ちゃんが嬉々として振っているのは、全日本吹奏楽コンクールのチケットだった。
「嘘」
「嘘じゃないよ、南必死に頑張ったけど取れなくてね。色んな人に頼んでようやく手に入ったんだ。じゃあ行こっか、アッちゃんの本気の歌を聞けるんでしょ?」
「…………嘘」
 お姉ちゃんに手を引かれて、あたしは改札を抜けた。
 そこから普門館への道のりは、正直まったく憶えていない。

 楽器の搬入をしているらしいアッちゃん達を見つけたらしいお姉ちゃんは、何の躊躇いもなくその中へずんずんと進んでいく。
 アッちゃんはそんなあたし達をみつけるときょとんとして、そうしてから笑みを浮かべてみせた。
「え……っと、来たんだ」
 曖昧な笑みは、戸惑いからだ。
 あたしは泣きたくなるのを必死に堪える。
 お姉ちゃんは愛想良く激励の言葉なんかを掛けているが、あたしには無理だ。顔を上げることも出来そうにない。
 頭の上でお姉ちゃんが
「この子は昔から捻くれ者だから」
 なんて言っているのが聞こえる。それも間違いじゃないから、あたしは俯いてただひたすらに耐えた。
 全てが、メチャクチャに壊された気分になる。
 初めはあたし以外のアッちゃんの家族や知り合いに来てもらいたいと……そう思っていたのに。
 どうして今頃こうなったのか。
 上機嫌なお姉ちゃんは観客席でも隣で、あたしは何くれとなく話しかけられて辟易とする。
 ようやく巡ってきたアッちゃん達の演奏も、どことはなく落ち着いて聴けなかったのだった。
 初出場にして銀賞なら、上出来ではないかとあたしは思う。
 けれどお姉ちゃんはそうは思わないようだった。
「ダメだったねー」
 なんて吹奏楽部の中から目敏くアッちゃんを見つけたお姉ちゃんは声を掛けていて、あたしは死ぬ程恥ずかしい気持ちになった。

   ◇

336: ◆e4Y.sfC6Ow
11/12/31 08:30:34.71 UEkwDxDe
 それから一週間。
 甲子園の決勝戦を蹴ってまで自分達の都合を優先した吹奏楽部は全国大会で銀賞。
 そんな評価に皆が冷ややかな目を向ける中……不意にテレビの取材が申し込まれた。
 野球部ではなく、吹奏楽部に。
 どこかの大きなテレビ局が全国の中高生の吹奏楽部を取材して回っているコーナーであるらしく、甲子園で優勝した高校が普門館に出たのが気を引いたらしい。
 あたしでも知ってるようなバラエティの番組のコーナーの取材は、現金な大人達の対応をひっくり返すのには十分だったらしい。
 あっという間に吹奏楽部は『我が校の誇り』とやらに祭り上げられ、校長以下教職員は諸手を上げて取材クルーを大歓迎。
 地元のローカル雑誌やら新聞やらがそのおこぼれに預かろうと列をなす様は呆れるのを通り越して笑えた。
 その吹奏楽部といえば、野球部の天才エースの兄が居る。
 こんな美味しい材料をマスコミが見逃すはずもなく、お隣の南ちゃんともども再びあれこれと騒がしくなるのだった。
 数日後、アッちゃんまで何やら王子様扱いされ、お姉ちゃんとカッちゃんの三人で撮った写真を載せた雑誌が家に届いていた。

 あんた達にも話を聞きたいって言ってるから。
 勝手に取材を了承した母にそう言われた夜、あたしは耐えかねて家を飛び出した。
 理由なんて言葉にならない。
 とにかく腹立たしくて、悔しくて、泣きたくて……あたしは多分十年ぶりくらいに家出をした。
 それなりに用意周到に家出をしていた子供の頃に比べると、何も持たずに飛び出す辺り退化していると言えなくもない。
 もうすぐ取材が来ると叫ぶ母の声は聞こえていたけれど、そんなことはどうでも良かった。むしろクソくらえだと言いたかった。
 悔しくて、でも何も出来なくて。
 あたしはむやみやらに走って、走って、走って……気が付くと小さい頃に良く遊んだ公園に辿り着いた。
 どこをどう走ったのやら、我ながらのバカさかげんに乾いた笑いさえ出てしまう。
 見上げると星がむやみに綺麗で、何もかもがどうでも良い気分になる。
 楽しみにしていた普門館も全部台無しにされて。
 ずっと苦労してきたアッちゃん達の評価が、あの程度のことでひっくり返って。
 そんな色んなことで、胸がもやもやして、どうしようもなくなって……誰も居ないのを確認してから。
「ちょっとだけ……泣く」
 どうしてそんな事を言ったのかなんて分からない。けれどそんな宣言を小さくしてから。
 あたしは泣いた。
 いつもの指定席だったベンチに腰掛けて、町の灯りの届かない夜の闇の深い中で……誰もいないことに感謝して、すすり泣く。
 気の済むまで泣こう。
 そう思って居ると、ふと目の前に誰かの足が見えた。
 使い古されたスニーカー。
 草や泥で汚れたズボン。
 慌てていたのだろう、いい加減にベルトからはみ出たカッターシャツ。
 羽織っただけの学ラン。
 汗だくの顔。
 生まれつきのねこっ毛で、すぐにくしゃくしゃになる髪。
 その表情は見えないけれど、あたしには直ぐに誰だか分かった。

337: ◆e4Y.sfC6Ow
11/12/31 08:31:36.84 UEkwDxDe
「あ……あ、ア、ちゃ……」
「千恵ちゃん、探したよ」
「ッ! ぅ、あ……え……え゛ッ、ぇぇ」
 小さい頃から何も変わらない言葉と、優しい声で……あたしの手を握ってくれたのは……あたしの大好きな、アッちゃんだった。
 だから――
「ああぁぁッああ゛あぁッ、ッ、ッ……あああぁぁ」
「本当に、千恵ちゃんは」
 音楽に携わる人らしい、細く長い指で頭を撫でられて、抱きしめられて……あたしの涙が止まらなくなる。
 けれど……先に言わなくてはならないことがあった。
「ごめんなさい……ごめん、なさい……」
「何を謝る事があるんだよ」
「泣いて……勝手に泣いて、ごめんなさい」
「泣くのに、俺の許可なんて要らないだろ?」
「ッ、う、あああぁぁ、あああああッ」
「ほら、涙」
「だって、だって……だって! 泣くのは大事なことだからって、そう言ってた」
「…………ああ、そうだったな」
 良く憶えてるね、そんな子供の聞きかじりで言った台詞を。とアッちゃんは呟く。
 一頻り泣いて、もう涙が出尽くした頃、アッちゃんはあたしを抱きしめたまま口を開いた。
「小さい頃の千恵ちゃんは意地っ張りなのに泣き虫でさ」
「…………」
「こうして探し当てた後は、いつも気が済むまで泣いてたっけ」
「嘘、泣き虫なのはアッちゃんの……」
「俺は千恵ちゃんが泣いてばかりいるのにつられてな。どうしても可愛がられやすいお姉ちゃんの影でいつもむくれてた千恵ちゃんは一人で泣いてて」
「そうだったかな」
「俺は女の子が泣いてるのに何も出来ないのが悔しくて泣いてたよ。つられてさ」
 ずるい。
 好きな人にこんな風に抱きしめられて、そんな事を言われて――
「だから言ったんだ。意地っ張りな女の子が、泣いてる所を他の人に見せたくなくって。でもまさか今までずっと大切にしてくれてるとは思わなかったよ」
 ため息が混じる。
 見上げたアッちゃんの目には、あたしのあまり可愛くない……生意気な顔が映っている。
「あんな、子供の言ったことをさ」
「でも、あたしには大事なことだったから」
「うん……だから、ありがとう……かな?」
「ううん……あたしこそ、だよ」
 きっと目なんか真っ赤で、そうじゃなくても可愛くなんてないあたしだ。こんな風な初めてなんて、ちょっと癪ではあったけれど。
 それでも今じゃないと絶対に嫌だった。
 だから、そっと目を閉じて、アッちゃんからしてくれるのを待つのだった。

   ◇

338: ◆e4Y.sfC6Ow
11/12/31 08:32:36.07 UEkwDxDe
 普門館にテレビ取材。
 そういったアレコレで随分伸びてしまったけれど、本来アッちゃん達三年生はとっくに部活を引退して受験に専念していないといけない時期だった。
 けれど……それでも最後にもう一度だけ舞台に上がるよ。
 アッちゃんはそう言って、チケットを渡してくれた。
 いつもの舞台よりも小さい場所だけど、このチケットは本当にごく僅かの人にしか渡してないんだ。
 そんな風に言ってくれた。
 地元の小さなコンサートホールで今週末に開かれるそのステージの名前は、吹奏楽部臨時演奏会。
 サブタイトルに『お世話になった方々へ、感謝を込めて』と書かれていた。
 そのチケットは本当にごく僅かの保護者や応援し続けてくれていた地元関係者だけに配られていて、ごく私的な演奏会ということだった。
 定期演奏会なら校長や教頭辺りも顔を出すのだが、今回は学校関係者で来るのはごく一握りだ。
 アッちゃんは家族にも、お姉ちゃんにも渡さなかったようだった。

   ◇

 週末、出かける準備を早めに調えたあたしの前にお姉ちゃんが立ち塞がる。
「なんで……千恵ちゃんだけ呼ばれるのよ」
「…………」
「南だって、アッちゃんのことはずっと気に留めてたんだよ」
 吹奏楽部で頑張ってたことも、応援で頑張ってたことも、自分の部活の大会に頑張ってたことも、全部! そう数え上げる声は、ひどく高い。
 誰もが目を引く美少女の、見たこともない表情だった。
「だいたい千恵ちゃんはズルイ! ずっとずっと、お父さんやお母さんやおじさん達からまるで『期待』されないで自由にしてきて」
 自由、ねえ。と思う。
「南もカッちゃんも親の期待にずっとずっと必死に応えてきたのに! アッちゃんは南のこと分かってくれると思ってたのに! なんて千恵ちゃんなのよ!」
「あたしはね、お姉ちゃん……」
「そりゃ色々あったよ! でも悪く言う人達からアッちゃん達吹奏楽部をかばってあげてきたんだから!」
 あげてきた、ねえ。
「千恵ちゃんなんて、南達がどんなにプレッシャーの中で頑張ってきたか知らないくせに!」
 一人称が相変わらず名前の姉に、あたしは少し辟易とする。
「去年なんてカッちゃんをあっさり立ち直らせて、南が何も知らないみたいな言い方して!」
 まあ、あれはあたしが言い過ぎのきらいもあったけれど。
 それはそれとしても、お姉ちゃんはあたしが口を開く間もなく、矢継ぎ早に言い募る。
 それまでの……それこそ生まれてからずっと溜め込んできた不満を。
「南の後ろでメソメソしてるだけの癖に、美味しい所全部持ってって……千恵ちゃんの卑怯者!」
 ようやく言い終えたお姉ちゃんは、息を荒げていて……あたしはため息をついた。
「あたしはお姉ちゃん達のことなんて分からないよ。でもさ――」
「なによ!」
「でも……お姉ちゃんにも分からないよ、親に期待されないなんてことがどういうことかなんて」
「…………それは、でも――」
「お姉ちゃんが今日までどんなつもりだったかなんて知らない。知らないけどさ……アッちゃんの所へ行くのは、あたしだから。これだけは譲らないから」
 それだけを言って、あたしは家を後にした。
 向かうは地元の小さなコンサートホール。
 アッちゃんの、最後の舞台だった。

 席に着くと、隣の席は知らないおばさんだった。けれど気さくに話しかけられた。
「あら、あなた武司君の彼女さん、千恵ちゃんでしょ」
「あ、はい……」
 彼女、の部分で照れてしまう。
 そんなあたしににっこりと笑いかけてから
「熱心に見に来てたものね、今日は最後だからしっかり聴いておかないとね」
 とおばさんは言ってくれて。だからあたしも笑って頷いた。

   ◇

339: ◆e4Y.sfC6Ow
11/12/31 08:33:35.36 UEkwDxDe
 始まりはやはり耳に馴染んだ校歌。
 今年の課題曲と自由曲、マーチング用の曲、そして幾つかの定番の名曲の後……その歌が紹介される。
 この一曲に、今までのことを全部詰め込みました。
 オモチャ箱みたいな……曲です、と。
 そしてその演目が、始まる。
 最初で最後のその曲が。
 稲村譲司が、ヴァン・デル・ローストが、福島弘和が、ショスタコーヴィチが、真島俊夫が、ポール・ラヴェンダーが、ジョン・ヒギンズが……
 今日までアッちゃん達が歌ってきた全てが込められた、壮大なメドレーだった。
 あたしの知ってるアッちゃん達も、あたしの知らなかったアッちゃん達も。全部込められている。
 そして……メドレーも佳境、色々な名曲、オールディーズ、ジャズにポップス。
 ジャンルを無視した旋律が縦横無尽に駆け巡り……一つの旋律へと繋がる。そして不意にアッちゃんが立ち上がった。
「Freude, schoner Gotterfunken,Tochter aus Elysium(歓喜よ、神々の麗しき霊感よ、天上の楽園の乙女よ)」
 息を飲む。あたしでも知っている、その名曲。
「Wir betreten feuertrunken.Himmlische, dein Heiligtum!(我々は火のように酔いしれて崇高な汝(歓喜)の聖所に入る)」
 次々に立ち上がり続く歌声。演奏と、そして初めて聴く……アッちゃん達の『歌声』。
「Deine Zauber binden wieder,(汝が魔力は再び結び合わせる)」
 自然と涙が零れ落ちた。感動に……歓喜に。
「Was die Mode streng geteilt;Alle Menschen werden Bruder,(時流が強く切り離したものを。すべての人々は兄弟となる)」
 だからこの歌の名前は――
「Wo dein sanfter Flugel weilt(汝の柔らかな翼が留まる所で)」
 ベートーベン交響曲第九番第四楽章、歓喜の歌だった。

   ◇

 それからのことを話せば。
 アッちゃんは地元の大学に進学し、卒業後は大きな病院に事務員として雇われた。
 音楽の方は高校を卒業して以来趣味程度にとどめていて、あたしは少し不満だ。
 時折あの歌を歌ってくれて、それでもまあ、あたしのためにと言われるとやっぱりドキドキして嬉しくもなる辺り、現金なものだ。
 カッちゃんはその後も大活躍で大学を経てプロ選手になったけれど二年で肩を壊してリタイア、今は駅前の和食のお店で働いている。
 なかなか筋がいいらしく、頑張っているようだ。
 お姉ちゃんはと言えば大学卒業後にそこそこ大きな商社に就職、この間取引先の広告代理店勤務の男の人と結婚した。
 今では立派な奥様だ。
 あたしは……

「で、アッちゃん。あたしだって女の子だから、夢とかある訳ですよ」
「ん……分かってるよ、それは。でもさ、雨の中はどうだろう」
「雨だなんて決まった訳じゃないでしょ! はい決定! 来年六月ねー、あ、じゃあお姉さん、六月の初めの土曜に今から予約しまーす」
「そんなの空いてるわけが……」
「あ、空いてますよ、今なら」
「うあ」
 お姉ちゃんに遅れて、奥様になる予定だ。

340: ◆e4Y.sfC6Ow
11/12/31 08:36:56.81 UEkwDxDe
という訳で『stadium/upbeat』全四幕、これまでです。

今回のモトネタ
ベートーヴェン作曲『交響曲第九番第四楽章より歓喜の歌』
まあ有名な曲ですので、わざわざ紹介する必要もありませんね。

んー、このタイトルに決めていた以上年末に間に合わせるつもりでした。
間に合った……んですよね?


あーあと、本当にわけわからんオハナシで申し訳ない。

追記

後のグダグダはもうあの、グダグダなので以下の後書きにて。
URLリンク(www.dotup.org)

ここまでお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。
もう寝る!

341:名無しさん@ピンキー
11/12/31 17:56:41.84 Ote5dlrq
>>340
GJ でした。
日あるところに影があるんですよね。
影の部分にならざるを得ない方々は立派だと思います。
報われて本当によかったです。
次回作期待しております。

342:名無しさん@ピンキー
11/12/31 19:35:58.97 PE48hT0t
大晦日正月幼馴染SS期待age
>>340
GJ

343:名無しさん@ピンキー
12/01/01 04:12:24.08 Qtwn9BIV
>>340
面白かったよ。ラストが気になる話だった。
ただ、まあ、確かに「幼馴染」というもの以外に熱を感じる作品だったけれど。
良くも悪くも。

344:名無しさん@ピンキー
12/01/01 22:14:20.75 rQe+sw4p
幼馴染と姫始めとかいいよな

345:名無しさん@ピンキー
12/01/01 22:53:19.14 9TbCb59L
>>340

Gjでした。すごく良かったです。
後書きも見たかったのに、もう消えてる…。

346: ◆e4Y.sfC6Ow
12/01/04 22:40:46.29 rfle/xkv
>>345

おk、明日用語集とまとめてうpする。

347: ◆e4Y.sfC6Ow
12/01/05 21:33:47.27 c8XNkhxw
URLリンク(www.dotup.org)

後書きと後書き二発目、そして用語集。

お暇なら是非。

348:名無しさん@ピンキー
12/01/05 23:51:12.21 pyGqPmCH
>>347
今回はちゃんとDLできました。ありがとうございます。

用語集は後日ゆっくり読ませていただくとして、後書きは拝読させていただきました。
またの投下、気長にお待ちしております。乙でしあ!

349:名無しさん@ピンキー
12/01/11 20:21:18.28 xrFxT9W1
今までssとかほとんど書いたことなかったけどこのスレ見てたら段々書きたい気運が高まってきた。
ただ仕事忙しくて時間ない。年末年始にやっとくべきだったか。

350:名無しさん@ピンキー
12/01/12 13:31:46.02 OsWgoYxu
>>349
俺もだ
まずは短いのでもと書きはじめたはいいけどオチに着地出来ず、気がつけば時間ばかり過ぎていくわ
そのうち時事ネタが時事じゃ無くなって気力を失うパターン
話の設計が甘いんだろうな

351:名無しさん@ピンキー
12/01/13 18:09:31.58 h+CT2Hn0
右に同じく。
毎度毎度、筋がグダグダになって、途中でやる気をなくしてしまう。
不毛だー

352:名無しさん@ピンキー
12/01/14 17:26:05.87 gsmBvEJ0
ト書きだけでも、短くても、それが萌えるものならば委細は問わないよ。
趣味の差異はあるだろうけど。

353: ◆e4Y.sfC6Ow
12/01/14 17:53:28.02 i09bquSw
あまり萌えとかなくても書いてるのもいるしな

354:名無しさん@ピンキー
12/01/17 17:55:47.14 xdHsOQVG
あい、そう言ってくださるならば、もうちょっと頑張ってみます。
いつになるか分からないし、たとえできても、長文の連投は難しいみたいですが…

355:名無しさん@ピンキー
12/01/18 12:39:59.31 cE7lbab8
ちょっと質問。
このスレ的にはあんまり年齢差あるのは範囲外かな?
片方高校生でもう片方が24、5歳くらいの考えてるんだけど。
あんまり歳離れちゃうと幼なじみって感じがしなくなっちゃうと思って

356:名無しさん@ピンキー
12/01/18 16:14:38.67 2y3aNJAw
迷ったらとりあえず投下せよ
エロパロ板の鉄則だぜ

357: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】
12/01/18 16:26:08.69 0v/DixUm
そんな世界でもかなりNGな方の恋……嫌いじゃないぜ

358:名無しさん@ピンキー
12/01/18 21:13:12.00 L98QzBuN
年の差スレってのもあるけど、幼馴染的な内容が濃いならむしろこっちの方がいいよ

359:名無しさん@ピンキー
12/01/18 21:18:15.11 P1iTsA//
>>355
とりあえず書き終わってから>>358がいうようにどちらが適しているか内容を吟味してとうかしたらいんじゃないかな?
待ってるよ~

360:355
12/01/18 22:27:18.83 cE7lbab8
OK
とりあえず書き上げてから考えてみるわ。
投下してダメだと住民が思うならそれで止めにする。
まあ気長にお待ちください。

361:ちょっと思いついたネタ
12/01/19 00:29:59.79 D7YnI/MD
都市部から少し離れた、とある街。
その街にある女子校に通う、一人の美少女―冴木かな。
才色兼備で明朗快活、大和撫子と呼んで差し支えない彼女にも深い悩みがあった。
それは、彼女の幼馴染みの少年のことである。
少年は小学校の頃から運動が非常に苦手で、運動会や体育大会を何よりも嫌うような男の子だった。
また、かなのような美少女と幼馴染みというだけで目の敵にされたりもしていたという。
かなは少年が好きだったし、これから先も少年以外にファーストキスも処女もアナルヴァージンも捧げるつもりはない。
のだが・・・・・。


「あー!また食べてないぃ!」
「五月蝿いな、かなは・・・」

扉越しに聞こえる面倒そうな少年の声に、かなは頬を膨らませる。
朝、かなが早起きして少年のためにと作って少年の部屋の前に置いた食事に、全く手が付けられていないのだ。

「うるさいな、って・・・」
「かなみたいに、恵まれたスペックじゃないからな。俺は、一人でいいのさ」
「だ、ダメだよぅ。私、前にも言ったよね?好きで、好きで、たまらないんだって・・・保留されっぱなしなのに・・」
「俺みたいな運動音痴の頭でっかち、かなには似合わないだろ」

帰った帰った、と面倒そうな声がして、次にはゲームの音楽がかなの耳に入ってきた。
誤魔化されてばかりの日々が、ずっとずっと続くのだろうか、と、かなは不安になりながら、自分の作った料理の乗った盆を持って、自宅へと帰ったのだった。



この後、夜にかなが幼馴染みの部屋に窓から急襲、逆レイポゥから初々しいラブコメになるとかありかな?

362:名無しさん@ピンキー
12/01/19 02:09:39.30 fVzRk2eh
早く執筆作業に戻るんだ
間に合わなくなっても知らんぞー

363:名無しさん@ピンキー
12/01/19 07:22:49.60 D7YnI/MD
>>362
何に間に合わないんだよw

364:名無しさん@ピンキー
12/01/19 10:59:29.80 Q2yEt/q6
>>361
さあはやく執筆作業に戻るんだ

365:名無しさん@ピンキー
12/01/19 11:51:05.04 Qhm8zUb+
今週号のヤンジャンの岡本倫の読み切りがエロくて良かった

366:名無しさん@ピンキー
12/01/19 21:07:51.80 KBK0JxCl
あの夏で待ってるの幼なじみはどうせ踏み台だろうな

367:名無しさん@ピンキー
12/01/19 21:08:01.06 nb7t+ay5
幼なじみだったな。
俺も結構好みだった。

368:名無しさん@ピンキー
12/01/19 21:45:29.44 waIcOrJl
今期は馴染党向けの作品無いんだな

369:名無しさん@ピンキー
12/01/19 23:02:05.54 6h2lTyCC
>>355
>>360
俺は結構年の差ある幼馴染好きだな
教師と生徒とか
男女どちらが年上、年下でも良い

>>361
続きを期待したい!!

370:名無しさん@ピンキー
12/01/20 19:05:19.22 1ncUziTu
男主人公で先輩な幼馴染みが好き

371:名無しさん@ピンキー
12/01/20 23:24:59.05 h6/z9lxe
>>370

朝。生憎の曇り空だが、家を出る少女の顔は明るい。
隣の家に住む少年に朝食を作ってあげないと、と義務感が三割、朝から大好きな幼馴染みと会える幸福感七割と言った感じに別けられる感情を、表情が如実に表しているのだ。

「おはよう、けいくん♪」
「おはよう茜さん。朝からよく来たね・・・まだ眠いよ」


372:名無しさん@ピンキー
12/01/20 23:39:31.82 h6/z9lxe
>>370

朝。生憎の曇り空だが、家を出る少女の顔は明るい。
隣の家に住む少年に朝食を作ってあげないと、と義務感が三割、朝から大好きな幼馴染みと会える幸福感七割と言った感じに別けられる感情を、表情が如実に表しているのだ。

「おはよう、けいくん♪」
「おはよう茜さん。朝からよく来たね・・・まだ眠いよ」

ボサボサの髪をわしゃわしゃと掻きながら、眠たげな顔のままに少女を迎える少年を、少女―茜は誰よりも好いている。
無論、けいくんと呼ばれた少年も、茜の事を誰よりも好きだし。

「お姉ちゃんと一緒に、シャワーを浴びるかな?お姉ちゃんは構わないよぅ?」
「でも、そうするとほら・・ムラムラして、デートの前にがっつりヤッちゃうかもだし・・・でも茜さんとシャワー・・」

名残惜しそうに茜を見る瞳に、茜は母性本能を刺激されたらしく。
ニコリと笑うと、少年に抱き着いた。

「じゃあね、お姉ちゃんとけいくんの今日のデートは、けいくんのお部屋か私のお部屋でずっと一緒にいるの。いいでしょう?」
「・・でも、茜さん、欲しいのがあるって言ってたし・・・」
「なら、けいくんとたっぷりエッチして、ゆっくり休んだ後に買いに行こう?ねぇ♪」

酷く甘い誘惑に、少年は堪える術など持ち合わせてはいなかった。
そんじょそこらのグラビアアイドルより、遥かに性的に育った姉のような幼馴染みの肢体を好きに抱ける、唯一の立場にあるのだ。その許可もある。

「けいくん、大好きだよぅ♪」
「俺も、茜さんが大好きですから・・」

一枚、また一枚と服を脱ぐ幼馴染みに、少年の息子は存分にいきり立っていた・・。


こんなん?

373:名無しさん@ピンキー
12/01/20 23:43:56.56 +tNTNp3R
  <⌒/ヽ-、___
/<_/____/

    ∧_∧∩
    ( ゚∀゚)彡 つづき!はやく!
   ⊂ ⊂彡
    (つ ノ
     (ノ
   __/(___
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  <⌒/ヽ-、___
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    ∩ミヾ つづき!つづき!
  <⌒___⊃ヽ-、__
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374:名無しさん@ピンキー
12/01/21 00:37:26.72 TdZNXaXX
>>371はミスね
>>372の続きは難しいかも知れぬ



375:名無しさん@ピンキー
12/01/23 23:00:53.45 e1TPIVTo
>>374
俺達に死ねと申すか!?

376:名無しさん@ピンキー
12/01/24 00:43:01.29 RW6n54yb
投下させてもらいます
初めてなので見苦しいですが
読んでくれたらうれしいです

377:名無しさん@ピンキー
12/01/24 00:44:16.81 RW6n54yb



リンコとケンカしたとき、仲直りの場所はいつもきまっていた。

彼も人のことは言えないが、リンコも大概我の強い奴で、お互い何度も衝突を繰り返しては妥協点を見つけるに至ってきた。
もっとも、先に折れるのは大抵彼のほうだったが。

河原の土手に、制服の上からぶかぶかの黒いセーターを着た女が座り込んでいる。
「なに黄昏てんだ」
呼びかけたリンコは経一を振り返る。
「…いいの、こんなトコで油売ってて。文化祭まで近いんでしょ」
リンコは抑揚のない平たんな声を出す。
…俺と話すこともないってか。

彼は頭をボリボリと掻いて思わずため息をついた。

彼女に抱きかかえられたスケッチブックには
川のせせらぎと、雲の流れと、臨場感あふれる鴉の羽ばたきが活き活きと写されている。
「オイ、この木は枯れてないぜ」
むこう岸の大木は、紅葉を身にまとってそびえている。
だが彼女の手元の絵では、寂しそうに葉を枯らしていた。
「…こういう風景なら、紅葉が主役じゃないのか」
彼女は答えずに、ただ黙々と黒鉛を塗りたくっている。

余計な口出しだ。
それでも経一は未練がましく聞かずにはいられなかった。なぜ紅葉を枯らしたのか。
その答えを彼はもう長いこと模索してきた。



今日の放課後、数時間前の事だ、教室で彼女とその他の女子とで大喧嘩があった。
そういう悶着とはゆかりの深いリーコだから、いつもはこんな差し出がましい真似はしないのだが。
今日の彼女はいつもとは様子が違っていた。

「サッカーの試合、近いんだろ。部活行かないでいいのかよ」
彼は言った。
リンコは、沈黙を守ったまま、手元にあった小石を拾うと、川へ向かって勢いよく投げる。
波紋は、ゆっくり広がって、その形を崩していく。

「裏路地の絵、あれ」
不意に、彼女は口を開くと
「いい絵だよ」
ポツリと呟いた。
彼は突然の事に面食らった。
同時に、彼女のいいたいことに気が付いた。
「…ありがとう。よくわかったな」
「わかるよ」
その言葉は、わずかに振れ幅を持っていた。

378:名無しさん@ピンキー
12/01/24 00:44:56.78 RW6n54yb
あの絵は確かに経一の描いたものだったが、迫った文化祭へ出展する際の作者の名義は『佐々木経一』とは違う。

「…経一はそれでいいの」
「なにがだ」
「自分の絵だろ。なんで人に盗られて何もしないんだよ」
「そんなことしても、誰も喜ばないからだよ」

リンコはなぜか経一の絵を手放しに評価した。
昔からだ。
小学生の時から、彼がコンクールへ出品する気がないことも、小学生の時から散々咎められてきた。

良くも悪くも彼女の心は向こう側が見えるほど透明なのだ。
損得なんて関係ない。
許せないことは許せないし、気に入らないことはやらない。

「経一は、…狡いよね。私はいつも経一に助けてもらってるのに、経一は全部自分でしょい込んじゃう」
リンコは遠くを見据えて、その横顔は今まで見たこともないような物悲しさを秘めていた。
「俺がいつお前を助けたよ」
リンコは彼に向き直った。
経一は続けた。
「お前は強いよな。一人でなんでもできるし何にでも立ち向かえる。
 だけど、食って掛かるのは自分にかかわることだけにしろ。これは俺の問題だぜ」
リンコは驚いたように眉をしかめて、何か言おうと口を開き、すぐに閉ざされた。
「ほら、ンなことに悩んでねえで、早く部活行けよ。お前が部長なんだろう」
しばしの沈黙の後、彼女はキャンパスを畳むと不意に立ち上がった。

経一は凜子を仰ぎ見た。
彼女の瞳が彼を映している。
程なくして、彼女は背を向けずんずんと歩き去ってしまった。

その時の彼女の瞳。
これまで何度も見たことがあった。
あの納得のいかない表情。

彼女は、彼岸へ歩き出した。
いや、そうではなく、俺が歩き出したのかも知れなかった。

379:名無しさん@ピンキー
12/01/24 00:46:05.74 RW6n54yb

凜子には絵の才能がある。

小学生のころ、凜子が絵を描くようになったきっかけは、健一の絵だった。
健一は、子供にしては見たものを書き写す精度は高かったようで、度々賞などを得て、同級生からは神童などと揶揄されることもあった。
言われるままに自分が神童だとは思わなかったが、健一も褒められて悪い気はしなかった。
中でも、健一の絵をいたく評価していた凜子は、或る日彼に絵の描き方を教わりたいと言い出したのだ。

凜子は、健一とは対照的に描く対象をこれでもかというほど改変した。
そういうことは正しくと写せるようになってからにしろ、という彼の言葉も聞かず、こっちのほうがいいよ、と言っては雪の中にヒマワリが咲いていたり。
上達するにつれてそれはさらに顕著になっていき、そして健一は才能というものを知った。


健一は彼女の絵に感動してしまった。
俺には到底描けないだろうなぁ、とも思った。
この満たされない感情はなんだろう。
嫉妬ではない。恋い焦がれるような思いだ。
以来、彼が絵を描くとき、いつもリンコの絵が脳裏に浮かんで、彼は自分の絵に嫌気がさす。

俺の絵とはなんだ。
俺の絵は空っぽだ。誰の絵でもない。
佐々木経一が書いたには違いないが、作者の欄は空欄だ。
そこに誰の名前が書かれようと、俺の知ったことではない。



我が校の美術部の顧問は、文化祭に際して毎年お気に入りの生徒に自分名義の作品を作らせた。
彼女はその世界には割と名の知れた教師らしく、彼女の機嫌を損ねることはあまり得策ではなく、毎年必ず誰か犠牲になるらしい。そう先輩は口にしていた。
今年はたまたまその標的がリンコだった。
サッカー部とを兼部する彼女だが、一年時に一枚大きな絵を描いている。
誰が言ったわけでもないが、どう考えてもそうだろう。
仮にも彼女は美術教師だ。素人でもリンコの絵が突出していることはわかる。

経一は、押し入れの奥底で何年も眠っていた古びた水彩画を引っ張り出した。
俺が描いた最後の作品。
久しぶりに対面したそいつは、至らないところが目に余って、彼は見ていられなかった。

経一はリンコの絵の代替としては心もとないと思ったが、結果的にはうまくいった。
初め、もともと幽霊部員の面識もない彼が絵を持ってきたことに、その美術教師は非常に胡散臭そうに経一をねめ回した。
しかし、こと絵に関しては意外にも好印象だったらしく、彼は心にもない世辞を浴びせて、なんとか彼女から目的の言葉を引き出したのであった。


380:名無しさん@ピンキー
12/01/24 00:49:05.78 RW6n54yb

河川敷でリンコと別れた後、彼の心配をよそに涼しい顔をしてリンコは学校へ復帰した。
懸念していたクラスメートとの関係も、あの湿った険悪なムードはどこへやらずいぶん湿気のない爽やかな教室が続いていた。
彼女が絡む人間関係の大半は尾を引かないのである。
だが、あくまで大半だ。

あの日以来彼女とは言葉を交わすどころか、目線さえかわしていなかった。




「水橋先輩の様子って、どゆこと?」
机に向かっている由香はこちらを見もせず、ペンを走らせながら言う。

一週間が経過したところで、ついにリンコの沈黙に耐えきれなくなった経一は
…かなり情けない話だが、幸いリンコと同じサッカー部に属していた妹に助けを請うた。

「まあ、大したことじゃないんだよ。いつも通りならいいんだけど」
なるべく平静を装ってぼやかす。あまり内情は知られたくなかった。

妹の部屋は相変わらず殺風景で、壁一面が本棚で埋まっている。
その中に、申し訳程度にサッカーボールが一個棚に飾られていた。
あれは中学時代、リンコ率いる女子サッカー部が関東大会出場を決めた際に賞品として得たものだった。
本来なら部長の彼女がもらうべきところなのだろうが、なぜか妹が持って帰ってきたのである。
そういえば確か、あの日だけは、普段はクールというか、ダウナーな由香も顔をほころばせていた。

「喧嘩でもしたの」
「喧嘩だったら、楽なんだがなぁ」
「…?よくわかんないけど、顧問は最近水橋先輩の攻めが積極的になったって喜んでたよ」
「攻め?」
「強いよ、すごく」
腕を組んで彼は考える。
そうは言われても、リンコが積極的なサッカーをするのを、うまくイメージできなかった。
「…そっか、ありがとう。悪かったな、邪魔して」
「でもさ、私は」
礼を言って扉から半身を乗り出した時、由香が机に向かいながら言うのを聞いた。
「うん?」
「なんだか、浮世離れしてる風な、前のほうが好きだったんだ」
彼女は彼に言うというよりは、思い出すように宙を見上げ、独り呟くような遠い口調だった。
――俺もだよ
経一は声にすることなく静かに部屋を去った。



彼女のサッカーは、美しい。
ただ現実は、美しいだけでは勝てない。
上位に行くほど、
審判をだますような行為さえ勝利のためならば正当化される。
そういう血走ったプレーが求められる世界だ。

つまり、ようやくリンコは、そういう現実を見るようになったのかもしれない、ということだ。
これまで以上に彼女は強くなるだろう。
そのきかっけは紛れもなく俺が作ったのだ。それがひどく罪深いことに思えた。それがひどく無性に悲しかった。

381:名無しさん@ピンキー
12/01/24 00:52:21.30 RW6n54yb
続く。
投下終了です…


382:名無しさん@ピンキー
12/01/24 00:54:18.77 RW6n54yb
>>379
すいません
なぜか379冒頭で名前が健一に…
正しくは経一です。ごめんなさい

383:名無しさん@ピンキー
12/01/26 03:23:13.28 138g54N/
続き期待

384: ◆/pDb2FqpBw
12/01/26 20:12:26.61 9GKtKk04
wants to

@@
「なあ、お前マジなめてんの?ぶっ殺すよ。」
「え?」

私の言葉に目を見開いたまま、奴は正に言葉を無くすという体で固まった。

「いやいやいやいやいや、ねーよ。ねーよ。この場合立ち尽くすのはあたしだから。」
「え?いや、え?ふ、藤川?」

「だから。え、じゃねーよ。あたしの事なめてんのかって聞いてるんだよ。ねえホントなめてんの?喧嘩売ってる?ねえ。」

「え、・・・な、何?な、何で怒ってる」

「何じゃねーよ!だーかーら!てめーは、あたしの事なめてんの!?」
「い、いや、なめてなんかないけど・・・。」
「じゃあなんなのよこれは!」
「いやなんなのよって聞かれても。俺の家の前なんだから声は小さk」
「うっせーよ!」

怒っている時はいつもは自慢の自然な内巻きウェーブの髪型が肩に掛かって、チクチクと首を触って、殊の外うっとおしく感じられる。
私はぎりぎりと歯噛みをし、奴を睨みつけながら片手をバッグに突っ込んで髪留めのゴムを引っ掴んで後ろでぎゅいと髪を纏めた。
きちんとした自慢のウェーブがこれで台無しである。ああ、イライラする。
黒髪を重たく見せないように少しだけ綺麗に薄く染めた茶髪は、凡百の茶髪なぞと一緒にされちゃ困る逸品なのだ。
手入れは怠らない。いつでもキューティクルたっぷりである。
髪の根元に染めてない部分があったり、変な安物のヘアカラーの所為でバサバサして艶がなかったり、枝毛があったり、そんな事も無い。
ごくごく自然で、黒髪と間違えそうなレベルで少しだけ明るい茶髪。
それを実現するのにどれだけの手間が掛かるか、判っているのだろうか?ん?

385: ◆/pDb2FqpBw
12/01/26 20:13:12.41 9GKtKk04
「ねえ、あたしが優しく言ってるうちにちゃんと答えた方がいいんじゃないの?」
「いやもうすでに凄くこわいんだけど・・・」
言い終わる前に睨みつけると目の前の奴は萎れたように首を折った。
「ご、ごめん。」
「ごめんじゃわかんなくない?私は。ねえ。」

成績も良い。スポーツもそれなりにこなす。
大学も推薦でもう決まっている。
口ばっかりの奴らがあーだこーだ言ってんのとは違う。
私は自分で自分の道を切り開いてきたし、結果も出してきた。
何事にも努力してきた。こんな外見になるのにも、良い学校に入ったのも、スポーツだって、何一つ簡単に成し遂げてきた訳じゃない。
淑やかな外見の美人で成績優秀でスポーツも出来て性格も良い。
4つとも持ってるそんな高校生になる為に私は努力し、成し遂げて来たのである。
自分で言うのも何だが、私はこれはこれでそこそこ大したものなのである。

言っちゃ何だがそんな私だからそりゃあ私はモテる。困るくらいにモテる。
見た目だけ言ったって美人の母親の血を完璧に受け継いだ、100人の男が100人振り返る清楚系美女である。
サッカー部のキャプテンの人は気障ったらしい前髪をかき上げながら涙目になって私にこういったものだ。
「君に好かれてる運の良い奴はだれなんだ?」
私は申し訳なさそうな、そして少しの苦笑と侮蔑の表情を取り混ぜた完璧な顔を作りながら、こう答えたものだ。
「まだ男の人とお付き合いするとか考えられなくて。ごめんなさい。」
告白された数は数知れず。携帯のメールアドレスなんて下手に教えたらとてつもなく面倒くさいことになる、
場所が場所、時代が時代なら3万人くらいに告白されていてもおかしくない、そういう美少女である。私は。

386: ◆/pDb2FqpBw
12/01/26 20:13:57.29 9GKtKk04
その私がこんな気分に、いや、その私をこんな気分にさせる権利がいくら幼なじみで同級生とはいえ、この冴えない男にある筈がない。
そうじゃないか。

ああ、ムカムカする。
この私の努力を無碍にするという訳だ。
努力をコケにすると。そういう訳だ。

「なあ。」
「…はい。」

「あたしの事お嫁さんにするんじゃなかったのかよ。」
「いや、え?はあ?」

「どーゆーことだよ。」
ああ、駄目だ。あまりの怒りに私は泣きそうである。
「美穂子ちゃんが可愛いってどーゆーことだよてめーーーーーーー!」

387: ◆/pDb2FqpBw
12/01/26 20:14:51.33 9GKtKk04
「いや、・・・え、なんで、え?何?違うって」

「いーや、違わねー。あたしは知ってるんだからな。お前、昨日男子の間でやってた
クラスで一番可愛い女の子投票で美穂子ちゃんに1票入れただろ。」
「な、ありゃ男子の間だけの話でなんでお前そんな事知って」

「総投票22名であたしが17票で美穂子ちゃんが2票。クラス内で付き合ってるカップルが3組。おかしいだろ。美穂子ちゃんにあのロリコン下種野郎以外に誰かが投票してる。いったい誰だ?」
「ロリコン下種野郎って・・・お前・・・山本くんに失礼だろ。」
「てめー、美穂子ちゃんに1票入れただろ。それ以外に考えられねーんだよ。そういや最近良く喋ってるし、そういや1年生の時は義理チョコとかいってでっかいチョコ貰ってただろ。」

「いや、え、ええ?…な、なんかよく判んないけどしかし、はは、そんな事をお前も気にす」
呑気な事を抜かす奴の襟首を締め上げると奴はぐええ、と呻いた。

「ちげーーーーよ!あのなぁ。もう引き返せねえんだよ。
そこそこの学校でそこそこの成績を維持しながらそれでいて男好きする程度にバカっぽく見えて
誰にでも愛想が良くて隙がありながら誰からも嫌われない地味だけど可愛い子。
そーゆーのがいいならそーゆーのがいいって、先に言えよ!」

388: ◆/pDb2FqpBw
12/01/26 20:15:34.43 9GKtKk04
襟首を掴んだ左手を思い切り絞り上げ、歯を食いしばれ。と低音で奴に囁き握りしめた右手を今まさに顎に叩き込もうとした瞬間、
目の前のドアが開くのが見えて私は慌てて両手を開いた。

げほげほと咳き込みながら膝に手を当ててあえいでいる奴を尻目に一瞬で飛び切りの笑顔を作る。
「こんにちはー。おばさん。」
「?あら久しぶり。なおちゃん、元気にしてた?あら、懐かしい。久しぶりに二人でいるの見たわ。」
「やだー。学校一緒だから結構一緒にいる事も多いんですよ私たち。ねえ。ゆうくん。」
「!?・・・・・・そ、・・・そうだね。」
「あらやだ、本当に。全然この子そういう事言わないんだから。せっかく同じ高校に行ったのにって思ってたくらいなのよ。ほら、上がってらっしゃい。そんな所立ってないで。」
「いや、かあさ」
「はーい。おじゃましまーす。」

髪の毛を掴んで引きずると、ひいい。と奴は小さな声で言った。

ああ、可愛い女の子になりたい。と思う。
いや、私も何一つ自分からはせずとも好きな人が私をちやほやしてくれるのであれば可愛い女の子にもなれようとおもうのだけれど。

こいつじゃあ無理だ。

@@

389:名無しさん@ピンキー
12/01/26 21:07:16.45 YC/4yiMo
ふおおおおGJ!!!
続きあるの?
ぱんつ頭に被って待ってる!!!

390:名無しさん@ピンキー
12/01/27 02:46:45.55 XJRn7SW6
GJ
こういう健気(?)な女の子は好きだw

391:名無しさん@ピンキー
12/01/27 21:14:19.31 e3My19Nt
久々に心躍った
続き待ってる!GJ!

392:名無しさん@ピンキー
12/01/31 20:00:59.77 GwhUcdsn
アヒルの雛みたいに後ろからついて来る幼馴染み

393:名無しさん@ピンキー
12/01/31 20:27:57.87 k3KI2GL5
>>392
ずっと雛だと思っていたら、いつの間にか他の雌鳥に盗られそうに

394:名無しさん@ピンキー
12/01/31 20:59:29.66 00uv+dn0
NTRはよそにスレあるのでそちらへどうぞ

395:名無しさん@ピンキー
12/02/01 00:10:03.84 qRzEuRpU
腹黒お嬢様と苦労人執事的な幼馴染
わがままに突っ走にお嬢に振り回されつつ、年が近いからフォローに回る幼馴染
そんな王道的な話が読みたい

396:名無しさん@ピンキー
12/02/01 02:44:20.32 UKyM7p2Y
落ち込んだときには抱っこを要求するんですね。分かります

397:名無しさん@ピンキー
12/02/01 08:34:09.66 xSDhXgYG
>>396
え? 2人になったらでしょ?

398:名無しさん@ピンキー
12/02/01 20:52:12.28 p/Mgh00o
執事側が年上だと「仕方ありませんねぇ…」とか言いながら抱いてそうだなぁ。
頭撫でるのとセットで。
子供扱いに頬を膨らませそうだが。

399:名無しさん@ピンキー
12/02/02 03:38:37.94 BfFCXCDj
執拗に好意をアピールするお嬢様
好意に気づきながらも、立場上手が出せない幼馴染執事
ぶち切れたお嬢様は最終手段に打って出た

400:名無しさん@ピンキー
12/02/02 08:21:40.45 HsKrOi7A
>>399
その最終手段とは、チラリと下着を見せることだったのだ!

すいませんでした。

401:名無しさん@ピンキー
12/02/02 15:55:06.40 sOeB6xTE
一大決心でお嬢様の父親に思いの丈をぶつけたら、あっさり許嫁になったでござるの巻

402:名無しさん@ピンキー
12/02/03 23:43:11.30 q1LmKRBd
最近の執事は完璧が求められるからなぁ。
いくら完璧でもメイドガイみたいのは嫌だがw

403:名無しさん@ピンキー
12/02/04 02:41:55.87 rAKkq5Eg
幼馴染みの少年少女が仲が良いまま高校生になった。
周りも当人たちも、告白して恋人になるのは時間の問題だと思っていた。

そんなある日、少年の家に悪友たちが集まって、持ち寄ったAVの鑑賞会が開かれた。
痴漢もの、女教師もの、レイプもの、レズものと見ていく中にSMものもあった。
それを見たとき、少年は初めて自分の中にサディスティックな欲望があることを自覚してしまった。
少女のことを大切にしたいと思う気持ちと同じくらいに、少女を傷付けたい泣かせたいという欲望が溢れてくる。

このまま少女の側にいたら欲望のままに傷付けてしまう。
少年は少女に会わないように距離を置くようにした。

一方、いきなり少年が離れていった少女は当惑する。何度しかけても無視され邪険に追い返される。
しかしそれでも諦めず、少年の部屋にまで押し掛けて訳を問う少女に、少年はとうとう自分の中の醜い欲望を吐露する。

「俺はサディストなんだ。俺じゃお前を傷付けるだけなんだ」

そう言う少年に少女の答えは……?

404:名無しさん@ピンキー
12/02/04 03:08:53.40 1hQ70DbY
傷つけなきゃ膜は破れないのよ!!(迫真)

405:名無しさん@ピンキー
12/02/04 06:52:49.84 /XyiDksR
>>403
「私はマゾ女だから大丈夫だ、問題無い」

406:名無しさん@ピンキー
12/02/04 10:45:10.08 amPHR32B
SMも、結局は相互理解の産物だから、ここまでならOKとかの感覚が分かり合える幼馴染なら大丈夫…だよね?

407:名無しさん@ピンキー
12/02/04 11:12:28.41 IdsuphNw
そうそう
SMのSとはサービスのS、Mとは真心のMなんだそうな
結局お互いが楽しむ心がないと成立せんよね

408:名無しさん@ピンキー
12/02/04 12:07:41.11 9R2/2guS
幼馴染みの少年少女が仲が良いまま高校生になった。
周りも当人たちも、告白して恋人になるのは時間の問題だと思っていた。

そんなある日、少女は友人たちとパジャマパーティを開いた。
友人の1人が「兄貴のをこっそり持ってきた」と見せてくれたAVはSMものだった。
皆が「変態じゃん」「引くわ~」と笑ってる中、少女はその映像に少年に責められる自分を投影し欲情していた。
それからは、顔を合わせる度に少年に責められる妄想が生まれ、自分は変態なんだ、いやらしい女なんだと自己嫌悪に陥る。

やがて、少年が急に余所余所しくなり露骨に避けられるようになる。
自分の中のいやらしさに気付かれてしまった、嫌われてしまったと思い悩む。
だが会えない寂しさに意を決して少年の部屋を訪ねて問い詰め…

>>403に続く?

409:名無しさん@ピンキー
12/02/04 12:09:35.91 PD42Gb9F
  + / ̄ ̄ヽ
   / (●) ..(● +
   |0゚  'ー=‐' i  
    >     く
 _/ ,/⌒)、,ヽ_
   ヽ、_/~ヽ、__)

410:名無しさん@ピンキー
12/02/05 23:37:08.61 ZguGqqs3
「Untidy Peach」

「桃姉、入るぞー…………うわ……!」
1K独り暮らし用の安アパートのドアを開けると、俺の目に飛び込んで来たのはゴミの山だった。
ゴミ袋に入れてあるのはまだいい方で、そこら中にカップ麺の空き容器だの脱ぎ捨てられた服だの紙くずだのが散らかっている。
(今回は特にひどいな……)
前回掃除に来た時から2週間しか経ってないが、すでに部屋の中は足の踏み場もない。どうやったらここまで汚せるんだ?
「桃姉、生きてるかー?」
とりあえずじっとしていてもしょうがないのでゴミを掻き分けて中に進むと、奥の方から微かな声が聞こえてきた。
「ハルー……こっちー……」
見れば部屋の真ん中に鎮座したこたつに、つっぷしたままの人影がある。なんとかそちらに近づくと人影は顔を上げて恨めしそうな声を出した。
「遅いよ、ハル……あたしが死んじゃったらどーすんのよぉ……」
「人間一食抜いたくらいじゃ死なねーよ」
「……一食じゃないもん。買い置きも無くなっちゃったしお風呂にも入れてないし、ろくに寝てもいないし大変なんだから……」
「〆切前は原稿に集中したいから来ないでって言ったのは桃姉だろ」
きゅるきゅると情けなく腹の虫を鳴らすこの部屋の主に、俺は一つ大きくため息を吐いた。
「まあいいや。軽く片付けたらなんか作るよ。食ったら本格的に掃除するからな」
「ん、ありがとー。頑張ってね」
「手伝えよ!」
傍観決め込む気満々の桃姉に全力で突っ込みを入れる俺だった。

411:Untidy Peach
12/02/05 23:39:31.12 ZguGqqs3
浅井桃は俺、栗原春生にとって小さい頃から憧れの存在だった。小学校に上がる前から7歳も下の俺とよく遊んでくれたし、喧嘩で同級生に泣かされた時も慰めてくれた。
今になって考えると7つも年下の少年と精神年齢ががっちり噛み合っていたかなりアレな人なのだが、当時の俺は『優しい年上のお姉さん』にときめきまくっていた。
だが年月がたち、成長するに伴って俺はある事に気付いた。
桃姉はいわゆる『残念』な人なのだと……。
この人はまず家事が全く出来ない。料理も掃除も洗濯もダメで、放っておくと今のようなゴミ屋敷を形成してしまう。
しかもかなり面倒くさがりで、全自動の洗濯機を購入したもののほとんど使いこなせていない。
仕方なしに俺が3日に一度、遅くとも1週間に一度は様子を見に来て、家事をこなしている。
事情を知っている友達からつけられたあだ名はもちろん『通い妻』だ。ほっとけコンチキショウ。

412:Untidy Peach
12/02/05 23:41:24.19 ZguGqqs3
人が通れる程度のスペースをなんとか確保し、俺が持ち寄った食材で簡単な食事を作ると桃姉は大喜びでそれを食べ始めた。
「ん、おいしいおいしい」
空腹のせいか、やけに嬉しそうに食べ進める桃姉。それを見ているとなんとなく気恥ずかしくなってきて、俺はそこらに放置してあった文庫本を手遊びに開いた。
そこの著者近影の部分に目が止まる。理知的な容姿でスタイル抜群の美人がスーツ姿で写っていた。
著者の名前は浅井桃。つまり今俺の目の前にいる女性の事だ。
(やっぱ詐欺だよなぁ……)
一心不乱に飯を食う桃姉をしげしげと眺め、写真と現実の差に嘆息した。
桃姉は小説家をしている。デビューして四年になるがそこそこ食えていけるくらい繁盛しているようだ。
元々文才はあったのだろうが、就職したとして時間にルーズなこの人がまともな勤め先で働けたとは思わないので、ある意味天職なのかも知れない。
作品の評価は『女性らしい細やかな心理描写で奇想天外な物語を書く』というなんだかよくわからない物なのだが、若い男女の間ではなかなかに有名な作家らしい。
顔出しの時は思い切り着飾るので、世間ではこれでも美人小説家で通っている。そこら辺も人気の一因なのだろう。
(でも実際はこれだもんなぁ……)
ぼさぼさのひっつめ髪に野暮ったい大きな黒縁眼鏡、服装は高校時代のもっさりしたジャージ。放っておけば際限なく部屋を散らかし、こたつに入って年下の高校生に家事をやってもらう。
素晴らしいダメ人間ぶりだ。ダメ人間コンテストとかあったら上位入賞も夢じゃないと密かに思っている。
「何よう、人の事じろじろ見て」
俺の視線に気付いた桃姉が不満そうに口をとがらせる。俺は慌てて立ち上がり誤魔化すように言った。
「な、何でもねーよ。それより掃除するから早く食っちまえよ」
「あーい」
愛想よく返事する桃姉の笑顔が俺にはとても魅力的に見えた。
元々着飾れば美人、という程度には顔の造形は整った人だし、10年近く片恋慕を抱き続ける身としてはその笑顔にときめかずにはいられなかった。
たとえどれだけ残念だとしても、桃姉は昔から変わらず俺の大切な人なのだ。

413:Untidy Peach
12/02/05 23:42:26.01 ZguGqqs3
桃姉の実に2日ぶりとなる栄養補給が終わると、俺たちは荒れに荒れた部屋のゴミを除去しにかかった。
とはいっても主に働いていたのは俺で、桃姉自身は所在なさそうに立ち尽くしながら、時々俺の出す指示に従うだけだったが。
「じゃあこの書類は捨てていいな。こっちの段ボールの中のは?」
「うん、それもいい」
「オッケ。んじゃこっちはもういいから向こう頼む。ゴミを袋に入れるだけでいいから」
「ん、わかった………………ねーハル、この古い雑誌とかって要ると思う?」
「知らんよ……。捨てるものくらい自分で判断してくれよ」
呆れを混ぜた声で返した俺はふと妙な手応えを感じ、自分の手にしているものを見た。
色は薄いブルー。手に持っている部分は紐状になっていて、その下に三角形の部分が二つ連なっている。レースで編まれているそれは女性が胸部につける下着、いわゆるブラジャーというものだった。
「ぶっ!?」
驚愕に声にならない声を上げ、思考が一秒完全にフリーズする。再起動した俺は慌てて目を反らし、手の中のものを遠ざけるように桃姉に突きつけた。
「も、桃姉……こ、これ……!」
「えっ…………ひゃあ!?」
桃姉が普段は見せない機敏さで俺の手から下着をひったくった。見れば真っ赤になりながら涙目でこちらをにらんでくる。
「うぅ……ハルのえっち……」
「し、仕方ねーだろ。ていうかこうならないように下着くらいは自分で洗ってくれって言っといただろ」
「だ、だって暇なかったんだもん……」
元々自分が散らかしているのが原因だとわかっているからか桃姉はそれ以上追及してこなかった。
俺としてもさっき見たものをすぐに記憶から消そうとする。だが目を反らす直前に見えた「G」の表記が瞼に焼き付いて離れなかった。
(でっけぇ……)
思わずジャージの胸の辺りを押し上げる膨らみにチラチラ目が行ってしまう。
「だ、大体桃姉はだらしなさ過ぎなんだよ。いい大人なんだしもうちょっときちんとしなきゃ」
「…………」
誤魔化すようにいつも通りの文句を言ってみるが予想に反して桃姉は黙りこくってしまう。
「やっぱりそうかなぁ……」「も、桃姉……?」
「この間お母さんにもおんなじ事言われた。そんなんじゃ嫁の貰い手もないよって」
「そ、そうなんだ……」
嫁スキルは軒並み死んでるからなぁ、桃姉。にしても桃姉はまだ24のはず。社会人として働いてはいるが、結婚を急かされる歳でもないと思うが。
「お母さん、早く私に安定して欲しいんだと思う。なんだかんだ言っても小説家なんてヤクザな仕事だし」
桃姉は本人はともかく小説家としてはそれなりの評価を受けているはずだが……。まあ、親の心理からしたらあまりそんな事関係ないのかも知れない。
「えーと、誰かいい人いないの?」
こういう場合の常となるような質問を投げかけてはみたが、俺は内心このデリケートな話題を早く切り上げたかった。何が悲しくて好きな人の結婚の話題なんか聞かないといかんのだ。
「いないよー。私、男の人の知り合い少ないもん」
「えーと……合コンセッティングしてもらうとか……」
「大学の頃の友達は合コンとかしない人ばっかだし……」
「仕事先の人とか」
「担当さんは女の人だし、他はオジサンばっかだし……」
八方塞がりです、とばかりにため息をつく桃姉。俺としては男の影が全くない桃姉に少し安心したのでほっと胸を撫で下ろしていた。
と、思ったら不意討ちが飛んできた。
「いっそハルがお嫁さんに貰ってくれればいいのに」
「…………っ!!な、な、何言ってんだよ!」
自分でも驚くほど狼狽し、それだけ返すのが精一杯だった。心臓がバクバクと鳴っている。顔だけは背けたから赤くなっているのは気付かれていないはずだ。
「だって今もハルが家事してくれるから私生きてけるし。代わりに私が小説でお金稼ぐからさ」
「……んで、一生桃姉の家政婦でいろってか」
「ダメかな?」
「ダメです。そんな事よりさっさと掃除」
そっかぁ、と残念そうに笑う。本人にしてみれば恐らく冗談のつもりなのだろうが、こちらとしては心臓に悪い。
(ったく、人の気も知らないで……)
心の中でだけ悪態をついておく。冗談だとわかっていながらも、いまだ心臓の鼓動は早まったままだ。
結局その日の最後まで俺はその事を意識したまま過ごす羽目になった。

414:名無しさん@ピンキー
12/02/05 23:47:45.60 ZguGqqs3
以上
ちょっと前に歳の差カップルについてアリか聞いた者です。
一応続き書きますが上で書いたように住民が無しだと思ったらここで止めます。
続き投下するにしても遅筆なんで時間はかかると思います。

415:名無しさん@ピンキー
12/02/06 00:04:44.91 1j9nfhLP
全然アリだぜ
だがここでも良いが年の差カップルスレにいったらより喜ばれるかもしれんな
続きまってるよ

416:名無しさん@ピンキー
12/02/06 16:25:46.43 Hd1jsZT5
非常にありなのでガンガン続けてください。
男子高校生にとって24歳Gカップ女性って女神そのものですな。

417:名無しさん@ピンキー
12/02/06 17:51:56.28 DHGtBvvJ
有りなので

今すぐ書いてください

オナシャス!

418:名無しさん@ピンキー
12/02/09 09:38:23.61 VSkZSnGe
バレンタインまで一週間ないぞ!

419:名無しさん@ピンキー
12/02/09 18:38:25.55 LP/noa0B
私を食べて
と幼なじみが言っています。
どうしますか?
病院・食べる・対応に困る・立ち去る

420:名無しさん@ピンキー
12/02/09 22:06:57.32 wUJuqHL1
>>419
食べる>産院に連れて行く

421:名無しさん@ピンキー
12/02/10 11:43:32.40 ocPQ41Q+
>>420
お前天才だ

422:名無しさん@ピンキー
12/02/10 23:59:31.62 bAryp41T
「堕ろせよ」 by4月1日

423:名無しさん@ピンキー
12/02/11 21:20:46.65 f6gem0vh
幼馴染みから幼妻へ

424:名無しさん@ピンキー
12/02/12 00:01:27.38 q0rVDIRx
通い妻から内縁の妻に

425:名無しさん@ピンキー
12/02/12 00:37:47.66 Yv+z+ZlV
ちゃんと籍入れてやれよw

426:名無しさん@ピンキー
12/02/12 00:38:36.22 vtocqE4+
ある朝の教室。
クラスメイト「お、熱々ご夫婦のご登場だ!」
男「お、おはよう…」
女「…(真っ赤)」
いつもなら声高に反論してくる筈の二人の、あまりにも違う反応に、教室内がざわつく。
クラスメイト「おい、いつも通り否定しろよ?!」

とかなると、やはり関係が進んだというか、深まった感じだよね?

427:名無しさん@ピンキー
12/02/12 00:53:31.27 q0rVDIRx
>>425
だって男は○8歳にならないと籍入れられんやん?

428:名無しさん@ピンキー
12/02/12 03:59:45.07 /R7NgcdT
>>426
ぜってー何かあった・・・

429:名無しさん@ピンキー
12/02/14 00:43:42.46 ieVqxqm7
バレンタインなので小ネタを一つ

「は、はい、コレ……あげる!」
「なんだコレ?」
「き、今日が何の日かわかってるの!?チ、チョコに決まってるじゃない!」
「そうか」
「い、言っとくけど義理だからね!?変な勘違いしないでよね!?」
「そうか」
「そ、そうよ!」
「このチョコ……」
「な、何よ!」
「リボンの包装が随分独創的だな」
「そ、そうかしら?」
「うん、まるで不器用な人間が手ずから包装したかのようだ」
「へ、へぇ?き、きっとお店の人がラッピング下手だったのね」
「開けていいか?」
「ど、どうぞ……」
「……やたら黒いな。しかも焦げ臭いな」
「や、焼いて香り付けしたチョコなのよ……!」
「パク……うん……ジャリジャリして苦いな」
「び、ビターチョコよ!大人の味なのよ!」
「ごちそうさま」
「え……?全部食べたの?」
「うん、まぁとにかくありがとう」
「べ、別にいいわよ!あ、あんたなんか、どうせ幼なじみのよしみで私があげなきゃ一つも貰えないだろうし!」
「実は俺が今日貰ったチョコはお前ので14個目だ」
「え……?……あ、そう……なんだ……」
「ホワイトデーを楽しみにしててくれ」
「…………」
「ちなみに今のセリフを言ったのはお前が1人目なんだけどな」
「…………………………………えっ?」

以上

430:名無しさん@ピンキー
12/02/14 02:00:21.42 LNoGAxh5
イイヨイイヨー

431:名無しさん@ピンキー
12/02/14 14:28:04.44 SIJySSIY
男の方の性格が、
・女の反応を楽しんでいる
・ど天然で素で言っている
のどっちだろう、と思った。少女マンガだと前者、少年マンガだと後者、なのかな。

432:名無しさん@ピンキー
12/02/15 09:46:19.82 ddT9JzU8
幼馴染男が転校した先に遊びに行ったら、何か擦り寄ろうとしてる女がいた。
心中穏やかでない幼馴染女は夏休み前に何とか既成事実を作ってしまおうと奔走するが、何故か敵対してる筈の女と鉢合わせするばかり。
何時の間にか強敵(とも)と認める間柄になり、男の天然かつ鈍感ぶりを愚痴り合う。



433:名無しさん@ピンキー
12/02/15 23:57:44.35 qqqKVKTw
バレンタインが終わったから、次はホワイトデーか。
いや、その前に期末試験とか高校受験とかか。

女「心配だから、一緒に勉強するわよ?」
男「心配って、…でも、正直とっても助かる。はまり気味だったんだよ」
女「素直でよろしい」
男「へへーっ(土下座」
女「ふっふっふ、褒めなさい褒めなさい」
男「で、勉強会のおやつは何を御所望で?」
女「ダッツのバニラをよろしく」
男「承知いたしました」
女(一緒の学校行きたいからなんだけどね)


434:名無しさん@ピンキー
12/02/18 19:55:37.91 dRmLVfBx
憧れてた幼なじみのお姉さんが結婚することになり、涙を隠しながら祝福する少年
だがお姉さんの旦那が結婚後まもなく事故で亡くなってしまい・・・みたいな妄想

435:名無しさん@ピンキー
12/02/19 00:54:02.49 FYtossTR
未亡人か……背徳感と幼馴染って不思議と相性悪くないよね


と言いつつ背徳感とは無縁のまったりエロ投下
一応、>>27の続きものですが、一話完結なので未読でも支障ないかと思います。

436:寒中ティータイム
12/02/19 00:57:08.06 FYtossTR
 皆瀬那津子は暑いのも寒いのも嫌いだが、どちらかと言えば夏の方が得意だった。
根っからの冷え性と言うこともあるし、基本的じっとしている性向のせいもある。代謝を
落とせば夏なら暑さもしのげるけれど、冬場は一層いっそう凍えるだけだ。
 そんなわけだから、すっかり悴んだ手で西野家の呼び鈴を押した時、彼女の頭は人肌の
布団でいっぱいだった。五秒と待たずに返事が無いことを確認すると、預かった合鍵で
中に入る。一階には人気も火の気も無かったけれど、お目当ての学生靴はちゃんと玄関に
転がっていた。
 お邪魔します、と口の中だけで呟き、買い物袋を台所に置く。生ものは無いし、この室温
ならそのまま放置で大丈夫だろう。そう判断すると、彼女はトントンと階段を上がった。
採光の良い木造2階建てだから、上の方が少しだけ温かい。それだけに夏場は地獄と
なるのだが、今は自宅よりもよほど快適に寛げた。
 無論、リラックスできるのは気温だけが理由でもないけれど。

「亮ちゃん、いる?」
 西日の当る角部屋をノックして、那津子は言った。返事は物音一つなかったが、彼女は
それで中の様子を理解した。扉を開けると予想通り、陽だまりに敷かれた布団がこんもり
と盛り上がっている。
 勝手知ったる幼馴染の根城に、那津子はすたすたと入室した。そのまま押し入れの扉を
開くと、ハンガーを取り出し洋服を順に掛けていく。今年一番の雪の日だけに、脱ぐ物は
やたらと多かった。しばらくの間、衣擦れの音と衣装掛の金音が途切れなく続く。しかし、
丸まった布団は一向に起き出す気配が無かった。これが番犬に生まれなくて良かった
なあと、益体も無い物思いをしながら、那津子は遠赤タイツやらカイロ入り腹巻きやらを
脱いでいく。
 そうして上はババシャツ、下はショーツ一枚にまでなると、彼女はいそいそと掛け布団を
捲った。折角の暖気が逃げないように、そっと身体を滑り込ませ─
 
「んぁ? なんかさむ……っふぎゃーーっ!」
 ああ、この瞬間に限っては、冬の寒さも悪く無いな。と那津子は思った。炬燵に入った
瞬間。湯船に浸かった瞬間。そしてこの、温まった布団にもぐりこんだ瞬間の幸福感は、
何物にも替え難い。温かい布団の重みに包まれて、凍えた手足を人肌で挟んでいると、
目の前で大の男がぎゃいぎゃい悲鳴を上げていようと全くもって気にならな……
「ぎゃー!ぎゃーー!!ぎゃーーー!!!」
「うるさい」
「すみません……っていやいや、今回は普通になっちゃんが酷いよ!心臓止まるかと
思ったわ!」

 氷のような手足を首筋や太股に差し込まれ、西野亮一は割と本気の悲鳴を上げた。
先程の静かな空気は何処へやら、今や野太い慟哭が手狭な六畳間に響き渡っている。
「夏場はあれだけ人ん家に入り浸ってたくせに。やっぱり体ばっかり火照ってる奴は心が
冷たい」
「いや別に、なっちゃんが部屋に来ることに異存はないというか布団に潜り込んでくれる
なんて大歓迎ではありますが、せめてそれやる前に起こしてっ」
「呼び鈴鳴らしたけど起きなかったよ。外滅茶苦茶寒いし」
「いや、外で待たずに普通に部屋で起こせば……って普通に確信犯ですよね。普通に誤用
ですよね。はいすんません」

 ひとしきり騒いで気が済んだのか、亮一はぱたりと大人しくなった。それから、「寝返り
打つからお手てどけて」と言うと、三重ねの布団を崩さず、器用に体を反転させる。
 そうして那津子と向かい合わせに横臥した彼は、再びその冷え切った手足を自分の脇や
太股の内側にはさみ込んだ。
 ……実を言えば、先程だって大声を上げはしたものの、決して彼女の身体を押しのけ
ようとはしなかった。
「まったく、こんなに冷え切っちゃってどうしたの?」
「西佐久の先のカーブで、他県ナンバーが吹き溜まりに刺さってた。そこでバス降ろされて、
歩いて帰ったら、今度は家の灯油が空っぽ」
「うあちゃー。なんという泣きっ面に蜂」
 かわいそうななっちゃん、などと言いながら亮一は上掛けを掴んで那津子の身体を布団
の中に潜没させた。それから、自分も追いかけて潜り込んでくると、まだ冷え切ったままの
頬っぺたに自分の頬を重ね合わせる。

437:寒中ティータイム
12/02/19 00:59:40.30 FYtossTR
 馬鹿みたいとは思いながらも、那津子は訊いた。
「今さらだけど。そんなにしたら寒く無い?」
「それは、本っ気で今さらだなあ」
 くつくつと愉快そうに笑いながら、幼馴染は答えた。
「おっしゃる通り、夏場はお世話になりましたので。無料でご奉仕致しますよ」
 ふいに、温かい掌がババシャツの上から胸の膨らみを捉えた。意を得た那津子が肩を
小さく竦めてやると、反対の手が背中へ回ってホックを外す。
「早速、暖房費を取られてる気がするんだけど」
「いやいや、こうやって揉めば揉むほど温まるんだよ。知らなかった?」
「わたしゃホッカイロか何かか?」
「揉めば揉むほどカイロ役の俺が熱くなる」
「なるほど」
 思わず頷いた彼女の身体を、亮一は巧みに反転させた。後ろからの方が、胸を触り易い
のだろう。彼の温かい体にすっぽりと包まれる形になり、那津子もこれはこれで不満は無い。

 それから、おおよそ10分程度。亮一は乳房だけを手遊びに、姿勢を変えず彼女を後ろ
から温め続けた。いや、温めるという名目でひたすらおっぱいを堪能していただけかも
知れないが、ともあれ御陰様でしびれる様な冷えは収まった。
 その代わりに、今度は掛布団よりも重たい眠気が、瞼に纏わりついてきた。もちろん、
最初から眠る気で潜り込んだのではない。十分触って、相方はスイッチ入っただろうし、
ここで中断はあんまりだと彼女も思う。しかしどうにも身体がついてこない。受身でいたら
負けると思い、那津子は身体を返して彼の方へ向き直る。唇を合わせようと身体を
もぞもぞずり上げていると、上からくすくすと笑われた。
「何、お休みのキス?」
「え…なんで?」
「そりゃあ、こんだけおっぱい触ってれば相手の眠気くらい伝わるよ」
 いや、その理屈もおかしい。と思ったが、瞼を上からそっと撫でられ反論はあえなく
封じられた。
「まあ、俺も丁寧にやらずに、好き勝手揉んでたし。なごんじゃったものはしょうがない」
「……ごめん。寝てる間、自由に遊んでていいからさ」
 引っ掛かっていたブラをババシャツから抜いて、後は亮一が好きに出来る格好になると、
那津子は力を抜いて仰向けになる。上の方でごそごそやっていた亮一が、首の下に枕を
敷きこんでくれると、もうこれ以上の抵抗は出来なかった。
 全身を包む温かい人肌だけを感じながら、那津子は「ちょっとだけ」と呟いて瞳を閉じた。

    *

 感覚的には、五分かそこらしか経っていないように思う。しかし、妙にすっきりとした
頭で、小一時間は眠ったんだろうなと理解しながら、那津子はぱちりと目を開けた。
 布団の中に他人の気配は無い。もぞもぞと這い上がって首を出すと、亮一は部屋の
中にも居なかった。
 あれ、と身体を起そうとして、彼女は自分の状況に気がいった。ババシャツは臍まで
下りているものの、内側の肌着は胸の上までたくし上がっている。ショーツもしっかり抜か
れていて、布団の中を足で探ったくらいでは見つからない。あんにゃろめ、と思いつつも、
言質を渡したのは自分だったと思い出して、彼女は再び布団の中に潜り込んだ。
勝手知ったる幼馴染の部屋とはいえ、ノーパンでうろつくのは忍びない。何より、
この布団の温もりの加護を捨てて、半裸を晒す勇気は無い。
 掛け布団の下で再び視界を閉ざされる。すると自然に、心許ない股座が気になった。
太股の感覚で気付いてはいたけれど、手で確かめると思った以上に濡れている。さすがに
入れられたまま眠っていたとは思えないが、溢れるまで弄られて目を覚まさない自分に、
那津子は軽く自己嫌悪を覚えた。こうなると、気を許す関係がどうこうではなく、単純に
身体の問題ではないか。

 そんな風に悶々とすること暫し。階段の方から、ぎしぎしという木板のきしみが聞こえて
来た。妙に丁寧な踏み音だから、トレーか何かを抱えているのだろう。扉を開けてあげ
ようかと、一秒程逡巡した彼女は、やはりそのまま布団に籠ることにする。

438:寒中ティータイム
12/02/19 01:01:56.39 FYtossTR

「よいしょっと。あれ、起きてたの?」
 お尻で扉を開けた亮一は、上から布団を一瞥しただけでそう言った。元より狸寝入りが
通じる相手ではないが、少し憮然として那津子は答える。
「今さっき。紅茶で両手塞がってるのに放置でごめん」
「いや、そりゃいいけども。って、なんで布団に潜ったまま分かるのなっちゃん。エスパー?」
 素直に驚く相方には答えず、彼女は再び上方へと身体を伸ばす。視界を取り戻した時、
亮一はちょうどちゃぶ台の上に紅茶とお菓子のお盆を置いているところだった。
「頭は?」
「すっきり」
「飲み物は?」
「いる」
「ロイヤルミルクティーとカフェオレをご用意しておりますが?」
「ミルクの多い方」
「え。……いや、どっちだろ。うーん」
「じゃあお茶の方で」
「了承」
 タンブラー2つを乗せたちゃぶ台を、亮一が慎重に寄せてくる。いい加減、身体を起そう
とは思うが、しかし何も無い腰回りが心許ないのも事実である。だが、この状況で履き
直すのもアレだし、第一「ショーツ返して」と言うのも何かアレだし……と思っていると、
幼馴染は押し入れから毛布を取り出した。それをマントのように羽織り、枕側から那津子
を挟むように座り込む。
「なに?」
「人間座椅子。これで、布団とサンドイッチにすれば寒く無いよ」
「……ありがと」
 妙な用意の良さに座りの悪さを感じつつも、彼女は大人しく好意を受けた。布団をかぶ
ったまま身を起し、空いた背中を亮一と毛布で埋めてもらう。確かに、これなら暖気も
逃げないし、絶妙な背もたれもあって快適だ。だが、妙な親切には必ず裏があるのが
西野亮一の常である。この体勢、何か来るなと那津子が身構えていると、彼は意外にも
素直にタンブラーを取った。
「ほい。熱いから気を付けて」
「ん……あっちち。ほんとに熱いね」
「なっちゃんすぐ起きるとは思わなかったからさ。鍋でグラングランに沸かして、そのまま
器に突っ込んできた」
「そか。……ごめん。美味しいけど、ちょっと待ってから飲む」
「うんうん。冷めるまで待とう」
 そう言ってミルクティーを受け取ると、亮一は未練なくちゃぶ台へと戻す。それから
毛布の中で半纏を脱ぐと、両手をいそいそと娘の前に回してきた。
「ん……。する?」
「そうさね~。冷めるまで、暇だしね」
 上機嫌でババシャツの裾を上げる彼に、那津子は「はぁ」と溜息をついた。結局、
この口実が欲しかったのか。しかし、それならそれで普通にしたいと言ばいいのに。
こんな日にカイロ役をさせておきながら、求めに応じないほど薄情では無い。加えて、
今日は途中で寝落ちした引け目もある。大体、こやつは人の生理周期を勝手に自分の
携帯アプリで管理しようとするヤカラ(さすがに阻止したけれど)である。そんな男の
部屋を、安全日に訪ねて無事に出てこれたことなど一度も無い。だから、今日の彼女が
了解済みなことくらい、この幼馴染もよくよく分かっているはずなのだ。「ムラムラした」
という理由だけで押し倒しに来る相方の珍しい搦め手に、どこか腑に落ちないものを
感じつつ─
 那津子は彼の手に従って太股を開く。

「…ぅんっ…は」
 微かに開いたスリットを、亮一の中指が下から上に向かってゆっくりと撫でる。既に
幾ばくか滲みていた土手は、外側の圧力に耐え切れずにあっさりと決壊した。とろりと
溢れる蜜が、枕元に敷いたタオルケットの中に沁み込んでいく。

439:寒中ティータイム
12/02/19 01:04:10.08 FYtossTR

「時間たったけど、まだ結構濡れてるな」
「ねてる間……っん…そんなにしたの?」
「お墨付き貰ったしな。これくらい指入れもした」
「ひゃっ…ぅ……私、それでも起きなん?」
「記憶、あるか?」
「ない。それがショック」 
 素直に答えると、亮一はくつくつと楽しげに笑う。それに、少しでも嘲りの色があれば、
臍の一つも曲げてみせるところだけれど。悪戯が成功した子供のように笑われては、
こちらも溜息で誤魔化すしかない。

「いやね、最初は起こしちゃ悪いなーと思って、控えめに弄ってたんだけど。あんまりにも
いい寝息を立ててるもんだからさ。ついつい調子に乗ってパンツ脱がしちゃいました」
「……替えの下着は持って来てないし、有難うって言うべきなのか」
「いやあ、こちらこそどういたしまして」
「まあ、寝落ちした私が悪いんだから何も文句は言わないよ。でも、…ぅんっ……いっそ
のこと、そのまま始めちゃってくれれば、私だって起きたのに」
「うむ、寝込みを襲うってシチュにちょっと魅かれたのも事実ではあるんだが」
 そこでちょっと唐突に、亮一は言葉を濁して指入れしてきた。だが、彼女が振り返って
じっと見上げると、幾ばくも無く降参する。
「お前の寝顔見てるうちに、起こしたくないわエロいこともしたいわで、わやくちゃになって
……間が持たないからお茶入れに行った」
 那津子が返事をする前に、溢れた蜜が敏感な実に塗り込められる。今度は彼女も抵抗せ
ずに、大人しく亮一の腕の中で嬌声を上げた。

「はっ…きゃふっ、んんっ……!」
 話す役目を終えた口が、那津子の耳元に降りてくる。上体を後ろから抱えられている
せいか、寝転がってする時以上に逃げ場が無い。耳たぶを甘噛みされながら敏感な秘部を
撫でられると、首を竦めて快感を逃がす事すら出来なくなる。

 腰を触る手と反対の掌も、彼女の前面を絶え間なく這い回っていた。おへその下では
円を描いて、大事なところを温めるように。しかし上に登って膨らみを捕えると、動きは
一転して艶めかしくなる。裾野から山腹を広い掌低でしっかりと抱える。柔らかく浮いた
頂きの周りを、親指と人差し指が丸く包む。そこから、ちょうどカメラの絞りの要領で、
きゅっと中心へ摘ままれる。最初は撫ぜるように優しく、けれど段々に深く沈ませて、
皮下の乳腺を刺激していく。

「ん…ふぁっ!…っひう」
 身動き出来ないまま、ねっとりとした愛撫を施されて、お腹の奥に急速に熱が溜まって
いく。ついさっきまで、無表情で減らず口を叩いていたと言うのに、今はもう言葉一つ
まともに紡げない。こうも容易く高められてしまうと、自分酷く淫乱なようで、亮一相手
とは言え恥ずかしかった。いや、彼だからこそというべきか。他に試した相手もないので、
詳しいところは分からないけれど。

 と、そんな葛藤を見透かしたかのようなタイミングで、幼馴染が言った。
「なっちゃんて、寝起きだと結構エロいよね」
「なっ! やっ、ばかっ…ぁっ……ひゃううっ!」
 あんまりな物言いに、羞恥で一気に顔が火照る。しかし、那津子の反駁はクリトリスの
一撫でで封じられた。これまで、微妙に外されていた局部への責めで、溶けかけていた
腰がビクンと跳ねて沸騰する。後ろから羽交い絞めにされながらも、肩や太股が不規則に
震える。ふわふわと浮き上がる体に支えが欲しくて、自分を犯す男の腕に縋りつく。
「おっと、そんなにしなくても逃げないって」
「ちがっ…んぁ……はっ……やあぁあぁ…っ!」
「…あ……わり、ちとやり過ぎた。一回イかすな」
 そう思うなら最初からやるな、と思ったのは後の話で、那津子はポンポンとおでこを
撫でる相方の手に、涙のにじむ目元を押し付けた。後ろから押えつける力が強まって、
ほんの少しだけ安心する。自分の意思を無関係に跳ね始めた身体を、相方の力で
繋ぎ止める。

440:寒中ティータイム
12/02/19 01:07:58.30 FYtossTR

 中に二本目の指が入ってきた。体勢的に結構きつい。それでも、もう快感しか感じない。
一本が奥を、もう一本が浅瀬で九の字を作り、お腹側をぎゅっと持ち上げる。「はうっ」と
強く息を吐いたタイミングで、両手の親指が乳首とクリトリスを、同時に撫でた。
「はぁぅっ、やっ…ふあああんっ!」
 視界が涙とは別のもので曇る。固定されたはずの身体が頭の中だけでくらくらと揺れる。
なのに、押さえ付ける亮一の腕の力だけが妙にリアルで、那津子はそれに縋りつくように、
全身をぎゅっと力ませた。

   *

 完全に失神したわけではないけれど、数瞬気が抜けていたのは確かだった。しゃくり
上げていた呼吸が落ち着き、暫しして視界も戻ってくる。手足が少しジンジンしていた。
相方の腕の力に痺れたのか。はたまた単に過呼吸か。そんなことを考えているうちに、
段々と思考の焦点が像を結べるようになってきた。

 そのあたりで、那津子はようやく、直前の自分の乱れっぷりに気がついた。
「っ……!」
 ここ最近で一番激しく、それも一方的にイかされた。その事を認識すると、亮一相手でも
さすがに本気で恥ずかしい。顔を見られない姿勢なのが幸いと言えば幸いだけれど、
彼女の心情なんて幼馴染には筒抜けだろう。
 火照った頭では言葉が出なく、何を言っても負けな気がして、那津子は暫し目の前の
布団とにらめっこする。そんな彼女に、一度だけくすりと笑いかけてから、亮一はその腰を
持ち上げた。
「俺もそろそろ辛抱溜まらん。取り敢えず入れるな?」
「はえっ? ちょと、なっ!……やぅうんっ!」

 股を開かせて那津子を自分の腰に乗せると、彼はそのまま背面座位で挿入してきた。
濡れ具合は十分だったし、直前まで指入れしていた甲斐あって、姿勢の割にはスムーズに
入る。とはいえ、それは亮一の側からの感想で、達した直後の彼女の方はたまったものでは
ない。まだ敏感なところへの強過ぎる刺激で、那津子は本気の悲鳴をあげた。
「ひゃ、だめぇっ! ちょと、ちょとだけ、待ってっ……、やんっ!」
「うん、奥まで入ったらやめるから」
「いや、そじゃなくて、今がきついんだってばっ…んぁあっ!」
 体が無意識に逃げて前へ倒れる。すると亮一も追ってきて、今度は後背位の格好になった。
足場がしっかりした分、彼も動きやすいのだろう。一突き一突きがグイグイと深くまで入ってくる。
最奥をずんと突かれた拍子に、入れ初めよりずっと固くなっているのが分かって、那津子も
いい加減諦めた。ここにきて、女の方から止めることなんて不可能だ。無駄な抵抗はせず、
さっさと最後までして貰った方が早い。幸い、姿勢が姿勢だけに、激しくされても耐えるだけは
出来そうだった。刺激が強過ぎて、彼女自身は気持ちいいどころの話ではないけれど。

 だが、こんなに風にたがが外れるくらいなのだ。彼だって長くは持たないだろう。そう
腹を括って、那津子が掛け布団のカバーを握り締めた時だった。再び身体を持ち上げられ
て、元の背面座位に戻されてしまう。
「へ?……きゃんっ」
 亮一のものが彼女の体重で沈みこみ、思わず甲高い嬌声が漏れる。だが、その後は
何もなく、彼を荒い息を吐く那津子の後ろで、ゆっくりとその下腹を撫でている。

「もう出た、わけじゃ、ないよね?」
「えぇ? まさか。って、そんなのなっちゃんも分るでしょ」
「ん。だけど、何で?」
「なんでって、イったばっかで激しくしたら、なっちゃんが辛いじゃん」
「………」
「だから、取り敢えず奥まで入れるだけ入れて、あとはなっちゃんの回復をゆっくり待とうと
思った次第なんだけどなぜかとても手の甲が痛いのです那津子さま」

441:寒中ティータイム
12/02/19 01:10:28.66 FYtossTR

 それに特大の溜息で返して、那津子は右手をつねる指の力を抜いた。すると早速、
「ほらほら、飲みごろ」などと言って、亮一が件のタンブラーを持たせてくる。
「ささ、これでも飲んで落ち着いて。紅茶に罪は無いからね」
 後半は私の台詞だろう、と突っ込む気にもなれず、彼女は勧められるままにミルクティー
を啜った。確かに、飲みごろ温度でとても美味しい。無駄に数の多い亮一の趣味の中で、
数少ない実用的な技術の一つだ。特に料理上手ということも無いくせに、牛乳を扱うの
だけは上手かった。不注意にもそれをからかって、一晩中おっぱいを吸われる羽目に
なった事が、高校に入って三度ある。

「落ち着いた?」
「ん」
 そんな馬鹿な物思いをしているうちに、那津子はふと、先程の羞恥が吹っ飛んでいる
ことに気がついた。一瞬、誤魔化してくれたのかな、なんて思いが頭をかすめる。しかし
下腹を見やって、彼女はすぐにかぶりを振った。相方の「繋がったまま~」願望は
筋金入りだ。今だって、乱れた毛布を直すのにかこつけて、身体を揺すって中の反応を
楽しんでいる。紅茶やらなんやらも、これがやりたかったための仕込みだろう。
 ─まあ、そんなだからこそ、気負わないというのもあるのだけれど。


 後ろ抱きにされて繋がったまま、暫し二人は取り留めも無いことを話し続けた。
「今帰りってことは、朝からお出かけだよね。何してたの?」
「食料品の買い出し」
「えぇっ。こんな吹雪の日にわざわざ?」
「そう…っん。ちょっと、イナゲ屋には無い物が要ったから」
「最近あそこの品揃え悪いもんなあ。そのうち撤退かね」
「でも、無きゃ無いで困る、…っ…」
「特に、こんな吹雪の週末はなぁ」

 ドア越しに聞けば、およそ情事の睦言には聞こえない。けれど、二人とて重ねた肌を全
く意識していないでもない。むしろ心が寛いでいる分、性感を素直に受け止められる。

「駅前まで出たってことはデパ地下?」
「ううん、違う。南口に出来た方」
「ああ。あの。妙にオシャレってか、けばいモール」
「別にけばくは無いと思う。綺麗だし、結構いいお店あるよ…ん、ふぁっ……ぁ」
「へー。じゃ今度、時間有る時、案内して、よっとっ」
「やっ、あ、はぁっ、はぁ……んぅ…はふ。わかった」

 時折、亮介が思い出したように腰を使う。その時ばかりは、呼吸が乱れる。でも、敢えて
最後まではしなかった。興奮が一段落したら、或いは萎えかけた力が戻ってきたら、また
息が整うまで一休み。螺旋階段をくるくる回って、踊り場ごとに休憩を挟んでいる感じだ。
 無論、階段というからには、一回りごとに高みへ登っているわけなのだが。

「はぁ、ふいー。わりぃ、俺だけ人心地」
「ん。……まあ、私もそれなりに」
「ところでさ、そんな遠くまで出張して、いったい何を買ってきたの?」
「バレンタインの材料」
「………ぶふっ!!」

442:寒中ティータイム
12/02/19 01:12:32.97 FYtossTR

 突然、後ろからカフェオレを噴かれて、那津子は思わず首をすくめた。大した量では
なさそうだが、肌着がべた付くのは嫌だなあとティッシュを探す。すぐ脇のちゃぶ台の上に
見つけたが、手を伸ばすと捲られた胸まで布団の外に出てしまって寒そうだ。
「ティッシュ取って」
「ごほ、げっほ…ごめん、はい。 って、なっちゃんさあー。普通、そんなことあっさり
言う?」
「何を今さら」
「いや、そうだけど、そうなんだけどな? こう、年頃の繊細な男心としては、渡す直前
まで隠してて欲しいというか何と言うか」
「一応、最初はぼかしたよ。けど亮ちゃんが深く突っ込むから仕方なく」
「うむ、確かにそう言われると明らかに俺に非があるわけだな畜生すんませんでしたっ」

 膝に抱えた娘の耳元で囁くには、明らかに大き過ぎる声量で、亮一は饒舌に捲し立てる。
相手の頬が、こちらまで火照るくらいに紅潮しているのは、振りかえらなくても十分に
分かった。
 彼の考えることくらい、那津子には十分お見通しだ。今回も、ある程度は分かってて
やった。しかし、ここまで激しい反応は予想外で、仕掛けた側にも獲物の照れが
伝染してくる。
「しかしあれだな、こんなドカ雪の中買い出しに出た健気な娘さんをわざわざ歩いて帰ら
せるとかもう俺これから他県ナンバーの車見たら石投げるわ」
「おいやめろ」
「じゃあこの遣る方無い義憤を晴らすには一体どうすればいいんだ!」
「素直に感謝の意でも表わせば?」
「そうか、よし。………。」
「……それを下半身で示そうとする発想は、さすがにどうかしてると思う」

 けれど、そんな斜め下の誤魔化しが、本当に本気の精一杯だと分かるから。那津子は
吐いた台詞ほど、悪い気はしていなかった。中でピクピクと跳ねる亮一のものを、こちらも
力を入れて締め付ける。この流れで応えてくれるとは思わなかったらしく、彼はびっくりした
ように動きを止めた。那津子が思わずくすりとすると、後ろからも照れ笑いの気配がする。

 お互い、理由があるような無いような、そんなクスクス笑いを掛け合ってから、亮一は
彼女を抱き直した。先程、まったりと身体を揺すっていた時は、全然違う硬さの物が、
彼女の体奥を押し上げる。今度抽送を始めれば、もう最後まで止まれないだろう。座位の
ままだと出しにくいって言ってたし、またバックの格好になろうかな。そう思っていると、
亮一は意外にも一度身体を外してしまった。
「やっぱ下になって」
「え? ……うん、いいけど」
 『入れたら出すまで抜かないのがセックス』などと日々頭の悪い発言をしているやつが
珍しい。でも何だかんだ言って、正常位が一番落ち着くなぁ。中学の頃は、寝バックが
いいだの何だのと、いろんな体位に付き合わされたけど、最後は王道に戻るってことなのか。
 そんな酷い物思いに浸る彼女を、真正面から抱きしめて、亮一は言った。
「那津子。今年もわる……あり、がとう」


 それから相手に返事をする暇を与えず、彼は強い抽送を開始した。
 だから、彼女も「お礼は貰ってからでいいんじゃない?」なんて茶々を入れる事が
出来なかった。
 だから、彼女は幼馴染の背中に手を回して、自分もギュッとからだを寄せる。


「ふぁっ、ひゃぐ……んぶっ─ん、ちゅ、んんーっ」
 反動で揺れる娘の身体を上から押さえて、亮一が強引に唇を塞ぐ。那津子も引き攣る呼
吸を圧して、差し込まれた舌を必死に吸った。背骨を曲げて身を起こしかけ、体奥を突か
れるたびに失敗する。それでも、首だけは上にもたげて、健気に幼馴染の口を追い掛ける。
「んちゅ、ん、んっく─ぷはぁ、や…はぁんっ」
 しまいには亮一の方が、上体を起こして唇を離した。首に回った彼女の手首を外して、
布団の上に縫いとめる。体勢に無理が無くなると、抽送のペースがグンと上がった。

443:寒中ティータイム
12/02/19 01:16:15.38 FYtossTR

「ひゃ、あ…っくぅう!─ひゃ…あう゛っ!」
 相手の反応を楽しむのではなく、自分の終わりを目指した動き。今日は一度お預けを
食らった上に、長時間入れっぱだったこともあって、亮一は相当に焦れているようだった。
浅瀬や中間を擦り上げるような技巧は見せず、一突き一突きが一番奥まで入ってくる。
 時間をかけてたっぷり準備してもらったから、那津子は激しくされても辛くは無かった。
一緒にイくのは難しそうだが、それもそれで嫌いではない。理性を残している方が、相
手が自分にのめりこむ瞬間を、よりしっかりと感じられる。一緒に気持ち良くなってしま
うと、相手が一番の瞬間を感じる余裕が無くなってしまうのが、ちょっとばかり不満なの
だ。「一緒に果てるのが一番幸せ」なんてよく聞くけれど、気持ちいいだけがセックスじ
ゃないよなあなんて、最近の彼女は考える。
 もっとも、それはいつでも一緒に気持ち良くなる相手がいる上での、贅沢なのかも知れ
ないが。

「ひゃあ……んあ、あんっ、はううっ!」
 と、そんな彼女の雑念を責めるようなタイミングで、腰のペースがまだ一段と上がった。
15cm差もある男が、本気で身体をぶつけてくれば、辛くはなくとも十分にきつい。
瞼にはうっすらと涙が滲んで、余裕の無い幼馴染の顔がぼんやりと曇る。それを拭おうと
思っても、両手はしっかりと押さえ付けられてびくともしない。
 ここで、キスして、涙をふいてってお願いしたら、亮ちゃんは聞いてくれるんだろうか。
それとも、流されるまま最後までして、終わった後で慌てるのかな。

「ふぅうっ、あ─っ、あくっ…きゃん!」
 だがいずれにせよ、那津子の身体にそんな戯言を紡ぐ余裕は残っていなかった。一度
ギュッと目を閉じた彼女は、頭を振って眦の端から涙を落とす。そうして再び開いた瞳の
先には、望み通り、余裕の無い亮一の顔が待っていて。
 胸奥から湧いてくる、歓喜とも安堵ともつかぬ温もりに、彼女は知らず口元をほころばせた。

「……っ、なっつっ、いくぞっ」
「ひゃ、うん、やっ─はぅうううんっ」
 喉を絞るように呻いて、亮一が身体を落としてくる。終わりを悟って、意識的にか、
はたまた反射的にか、彼を包む襞がギュッと引き攣った瞬間。腰全体を震わすようにして、
亮一の強張りが傘を開いた。
 腰の動きがぴたりと止まり、代わりに挿し込まれたものが一定のリズムで脈打っている。
それが遅くなるにつれ、彼の満足がゆっくりと自分に流れ込んできた感じがして、那津子は
ふんわりと相好を崩した。

  *

 背中に回していた両手が疲れて、那津子はパタリと布団に落とした。すると、少し身じろぎ
して亮一も顔を持ち上げる。そのまま彼女に深めの接吻落とし、一度胸板で乳房を押し潰す
ようにしてから、名残惜しげに上体を上げた。
 那津子としては、単に腕が疲れただけで、もう少し乗られていてもよかったのだが。
しかし、普段よりも脱力している時間が長かったのは確かだった。

「ちょっとお疲れ?」
「いや、へばったってんじゃないんだが……まあ、何だ。焦らされた分凄かった」
「その節は本当にごめんなさい」
「いいっていいって。その分いい思い出来たんだし」
 そう言って、亮一は存分に注ぎ込んだ娘の腹を、上から満足げに撫で回す。
「あー…。いつもよりいっぱい出した?」
「お、分かるか? 中でたぷたぷになってたりすんの?」
「そんなんじゃないけど……普段より長く出てたのは分かる」
「そんなもんかぁー」

 感心したような、残念がるような、微妙な声色で感想を述べ、彼はぎゅっと腰を押し
付けた。まだ大きさを保ちながらも、芯を失いつつあるそれがピクリと跳ねる。多分、
幹の中に残っている分を、最後の一滴まで押し出そうとしているのだろう。

444:名無しさん@ピンキー
12/02/19 01:17:51.57 e8th3cV+
 

445:寒中ティータイム
12/02/19 01:18:46.00 FYtossTR

「ん……。続けてする?」
「そうしたいのは山々なんだが……あのデカタオル、下に置いたまんまでさ」
「じゃ、しょうがない。一回抜いて」
「うぐ。し、しかしだななっちゃん。俺的にはそのままでも構わないと言うか上から
タオル敷くんでも同じじゃね?」
「毛布にもつくよ。それに、布団カバー洗って叔母さんから白い目で見られるの嫌」
「……お袋とすげー仲いいじゃん。白眼視されんのは俺だけだって」

 ご近所さんとしては仲良くても、息子の女としては色々あるの。と那津子は思ったが、
相方が大人しティッシュを取ったので何も言わなかった。数枚とって手早くお尻の下に
敷き込むと、亮一は彼女の太股をしっかりと押さえて、腰をゆっくりと上げていく。
「……んっ」
 まだ結構な大きさを保っていたものが、ぬぷん、といった感じで抜け落ちる。一瞬遅れて、
股間を熱いものが伝っていくのを感じ、那津子はきゅっと目を閉じた。「自分でやるから」
という不毛な押し問答を、最後にしたのはいつだったのか。もちろん、それを忘れたら
と言って、何も感じなくなったわけではない。

 だがそんな少女の葛藤は余所に、亮一は白濁を零す秘所を熱心に眺めた。自然に溢れ
出す分が無くなると、襞の内側に指をやって、入口をグニグニと刺激する。それでも出なく
なったら、最後は中に指を入れて、耳かきのように掻き出していく。
「ゃ…ひゃ…ん……ふぁ」
 最後まで気をやったわけではないけれど、中途半端に冷めかけた身体は妙に敏感だった。
時々、我慢できず声が漏れる。それが、亮一には面白いらしく、ややしつこい感じで胎の
中身を捏ね回す。
 しかし、那津子の方はこれがあんまり好きではない。事後に大股開いて弄られるよりは、
重くていいからそのまま被さっていられる方がずっといい。そのことを、よくよく経験則で
知っている彼は、引き際をしっかりと心得て手を離した。後は手早く後始末して、自分のも
さっさと拭ってしまうと、乱れた布団をてきぱきと整える。

「さ、床の準備が調いましてございます。冷えるから入って入って」
「……はいはい。どうも、ありがとう」
 わざと声に出して溜息をつき、那津子は布団の中に身を横たえる。身体を楽にして伸び
をすると、思った以上に気持ちよかった。している時は気付かなかったけれど、変な姿勢
でいかされたり、後背座位やらバックやらで、結構筋肉を使ったようだ。
 一通りうんと伸びてから、那津子はぐたりと脱力して柔らかくなった。そんな娘の身体を、
亮一は横臥して抱き寄せる。彼女の太股に当てられたものは、既に力を取り戻していた
けれど、まずは一休憩するようだった。引き寄せる腕の力に逆らわず、頭を彼の顎の下に
収めて、那津子は言う。

「今日は泊まってっていい?」
「おう、こんな日なら大歓迎」
「………」
「あ、いやそんな、別にいつでも歓迎ですよ。危険日でも生理中でも毎日ウェルカあ痛っ」
「ありがと。まあ、今晩は亮ちゃん優先でいいからさ。明日、朝からちょっと手伝って
欲しいんだけど」
「いいですとも。何すんの?」
「チョコ作り」
「!!?」

 刹那、亮一が音を立てて固まった。同じ吃驚でも、先程の照れ隠しとは違う、本気の
唖然を体現して、あんぐりと口を開けている。
 そんな幼馴染の腕の中で、当の那津子は器用に身を捩り、ずずずとタンブラーの中身を
啜った。

446:寒中ティータイム
12/02/19 01:22:56.69 FYtossTR

「─いや、あの、那津子さん。それはいくらなんでもあんまりでは……というか、そも
そも俺ん家で作るつもりだったの!?」
「亮ちゃん家の方が台所広いし」
「いやいやいや、そんな理由でオープン過ぎるよ! バレンタインチョコを贈り先の家で
作るとか聞いたことねぇ!」
「ん。でも、同棲してたり夫婦だったら、普通にそうなるんじゃない?」
「なっ…、─。つ、つーか、さっきお袋に見せた無駄な遠慮はどうしたんだよ?」
「おばさん、甘いものには寛容だから大丈夫」
「人ん家のカーチャンあっさり餌付けしてんじゃねぇ………ていうか、俺自分で自分の
チョコ作らされるの……?」
「ずず……分かった。亮ちゃんの分は私が全部やる。でも、余った材料で友達の分も
作るから、そこ手伝って」
「それならばまあ………いやしかし………何だろう、このモーレツな理不尽感」

 この凹み具合といい、先の照れ具合といい、いささか大げさだなあと思いながら、
那津子はタンブラーを傾けた。
 無論、一介の女子高生として、イベントに盛り上がる気持ちも分からなくは無い。しかし
自分たちは、今さらそれに縋らなければいけない間柄ではないはずだ。週末の午後、
理由も無しに、肌を合せて紅茶を啜れることの方が、チョコより余程貴重だろうに。

 とは言え、さっきの「ありがとう」が妙に嬉しかったのも、また事実ではあるわけで。


「いいんだ。いいんだ。製菓業界の陰謀がどうした。俺は来年からバレンタイン撲滅
運動に参加するんだ」
「仮にも手作りチョコ貰える身でそれはどうなの」
「その事実のために俺が明々後日に受ける受難を、女子高のなっちゃんは理解して
いないんだ」
「何もそこまで悄気んでも……。分かった、じゃあ、もう一つあげるから」
「んー?」
 半眼で顔を起こした亮一に、那津子は普段の無表情のまま、努めて平然に提案する。
「三日早いけど、'わ'た'し'自'身'は、前渡しということで。」
「…へ?」
「……折角の、大丈夫な日でもあるし。今日は、何でも好きにしていいよ」

 次の瞬間、それまでの悄然とした様子が嘘のような勢いで、亮一が上に被さってきた。
普段だって相当に好き勝手してるくせに、現金というかチキンというか。そう、声に出して
言ってやろうと思ったのに、何故かふわふわとした笑いが起こって、彼女は言葉を出す
ことが出来なかった。

 知らず、幼馴染が一番欲しがる幸せそうな笑みを浮かべて、那津子は亮一の背中に
両手を回す。快感に頭を奪われる直前、せっかく入れてもらったミルクティーが冷めるのは
もったいないなぁと、彼女はただ、そんなことを考えていた。


447:寒中ティータイム
12/02/19 01:33:22.40 FYtossTR
以上です。


三日前渡しどころか四日も遅れてんじゃねーか、という批判は甘んじて受けます。
チョコだけに。

イベントに踊らされるより日々の幸せを噛みしめたい。などと嘯きつつも、
何だかんだで気にしてしまう純情な幼馴染を観察したいです。遠くから。

448:名無しさん@ピンキー
12/02/19 01:53:11.93 07AYo5YP


449:名無しさん@ピンキー
12/02/19 02:07:16.81 ZHiu29fz
ふぅ……。ふぅ…………ふぅ。



Gjっす

450:名無しさん@ピンキー
12/02/19 03:41:54.86 IZHy7RbA
ふぅ・・・・・・

テクノブレイクしちまった・・・


451:名無しさん@ピンキー
12/02/19 10:14:42.00 yibXKGu/
GJでした!
牛乳の扱いうまい→一日おっぱい吸い付きの刑の下りで
母乳プレイを想像したのは俺だけではないと信じたい

452:名無しさん@ピンキー
12/02/19 14:46:00.78 JZjWpAi1
乙ッ

453: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】
12/02/19 14:46:24.86 JZjWpAi1
sageてなかった〇刀乙。スマソ

454:名無しさん@ピンキー
12/02/21 23:35:07.98 VtvRVuqK
GJです。よろしければ「旅行計画」の続編もお願いいたします。

455:名無しさん@ピンキー
12/02/22 06:10:00.85 ihAvxQ2Z
幼馴染の年上姉妹二人にイタズラされるSS書いたけど
気付いたら幼馴染み成分薄すぎだった
どうしようコレ

456:名無しさん@ピンキー
12/02/22 06:22:18.78 kgKlMiR+
誘導先として挙げられるであろうスレは大体巡回済みなのでどこでもバッチコーイ

457:名無しさん@ピンキー
12/02/22 07:28:22.28 J+fVKsXU
>>455
おいtxtでいいからあげて

458:名無しさん@ピンキー
12/02/23 00:35:08.39 TM1aScue
>>447
ふぅ…
仕事疲れに一服の清涼剤。

459:名無しさん@ピンキー
12/02/23 12:10:28.67 eA2f/L5P
>>455
薄すぎるかどうかはこちらで確認する
だから投下カモン!


460:名無しさん@ピンキー
12/02/24 04:22:25.19 ip65vt66
>>459
ではお言葉に甘えて……
※ヘタレ、ビッチ、ヤンデレ成分を大量に含みます

ぼくには二人の幼馴染がいる。
二歳上の夏実姉と一歳上の冬華姉だ。
よく三人で遊んだ小さいころの思い出は、今でもかけがえのない宝物だ。
だが、今は……。

461:名無しさん@ピンキー
12/02/24 04:23:46.92 ip65vt66
「ちょっと! ナツ姉、何するつもり……ひゃうっ」
敏感な男性器を無造作につかまれ、情けない声が漏れる。
ナツ姉は煽情的に髪をかきあげると、サディスト全開の笑みを向けてくる。
「何って、決まってんじゃん? 今日もこのチンポに、ハッスルしてもらおうって」
「そん、なの……おかしいよ。あ、ぁ……。大体、彼氏はどうしたのさっ」
ぞくぞくと震えているぼくを尻目に、なんでもなさそうにナツ姉は言う。
「しょーがないだろ。彼とのエッチで失敗したくねーんだよ。こんな練習、一斗でしかできないし」
いつ聞いてもムチャクチャな理屈だ。
ぼくは思わず怒りを口走る。
「非常識だよ、ナツ姉は。頭おかしいんじゃないの!?」
だが、それは失敗だった。
特徴的なツリ目が、さらに持ち上がる。
かちーん、とナツ姉のスイッチが入ったのがわかった。
「あ、いや……。今のは言い過ぎ……」
「へえ、一斗のくせに、言ってくれるじゃんか? いつからあたしに意見できるほど、偉くなったのかなぁ?」
「な、ナツ姉、ごめ―」
「フユカ、押さえろ」
ぼくの謝罪も、非情な命令で遮られる。
「はーい、ナッちゃん♪」
背後からの甘い声の主に、羽交い絞めにされる。
表情こそ見えないが、フユ姉がきっと姉とは対照的な垂れ目をほころばせているのだろう。
「や、やめてよ。こんなので、ぼくが観念するわけ―」
「ふぅ――っ」
「ふぁぁぁぁぁっ!?」
唐突に、耳に息が吹きかけられた。
びくん、と反応した身体から、冗談みたいに力が抜ける。
「ふふ、カズくんったらかわいい。耳責められると、とっても素直になっちゃうのよねえ?」
「や、やめ―」
はむ、とフユ姉が耳たぶを甘噛みしてきた。
「ああ、ぁあ……っ」
まるで食べられているかのような快感に、四肢が弛緩して抵抗の意思が失くなる。

462:名無しさん@ピンキー
12/02/24 04:25:30.15 ip65vt66
しかしだらりとした全身に反抗するように、ただ一点は屹立していた。
「あらあら、興奮しちゃったのね」
「ったく一斗は、淫乱だよなぁ」
「ひ、ひどいよ……」
泣きたくなるが、泣いたって彼女たちには嗜虐心のエサなのだ。
ナツ姉が、おもむろに上半身の衣服を脱ぎだした。
「な、なにするつもり……?」
「うん? 今日はちょっと、パイズリの練習をな」
よっこらせ、としなだれかかってくる。
ツリ目の童顔の上目遣いと、アンバランスな巨乳のコラボレーション。
「…………っ」
「うは、もうバキバキじゃん? じゃ、始めるね~」
そう言って、まるでおもちゃで遊びでもするように乱暴にペニスを挟まれた。
柔らかで、温かい。
拷問のような乳圧に、おとがいを反らして女のように悶えた。
「あーっ、あぁ……っっ。だ、だめ。ナツ姉、これ……、だめっ!」
「おほっ、我慢汁でもうぬるぬるだわ。……ほ~ら、こいつを塗りこんで、滑りを良くしてやるとぉ~?」
「うぁぁぁっ。だ、だめぇぇぇっ」
もどかしい気持ちよさが、肌の下を這う毛虫のように全身を行き来する。
「舌も使ってあげなよ、ナッちゃん?」
「そうだな。……くくっ、れろぉぉぉぉ……」
「うかあぁぁっ!?」
付け根から先端へと、ねぶるように舌が這う。
研ぎ澄まされた触覚が、がくがくと腰を震わせる。
一度だけでも狂いそうなその責めが、幾度も繰り返されればどうなるか。
「ああああっ! な、ナツ姉ゆるひてっ。おかしくなるぅぅぅっ」
「……うふふ、とろとろになったカズくんの顔、かわいい♪」
「いひんだよほぉ、おかひふなっても。こへはへんひゅうなんだはらぁ」
「喋っちゃだめぇぇぇっ! くわえたまま、しゃべらないでへぇっ!」
目を見開いているのに、目の前が見えない。
ぐるぐるな視界の気持ち悪さと、ぞわぞわと沸き上がる気持ち良さの板挟み。
「あ、あ、あ――」
「んだよ、もうイきそうなのかよ? 一斗は早漏だから、いまいちあたしが上手いのかわかんないんだよな」

463:名無しさん@ピンキー
12/02/24 04:27:02.71 ip65vt66
呆れたように、ナツ姉が言う。
そこによりにもよってフユ姉が、いらぬ知恵を授けた。
「じゃあ、出しちゃったら罰ゲームでいいんじゃない?」
嗜虐的な二つの笑みと、絶望するぼくの表情。
「お、それいいな。ならあたしがいいって言う前に出したら、オシオキってことで♪」
それはもう、ほとんど死刑宣告だった。
「ゆ、許して……。許してよ……―あひぃぃっ?」
唐突に、乳首がフユ姉につねりあげられた。
「カズくん、ちくび弱いんだぁ? 女の子みたいだねえ?」
耳元に囁かれるフユ姉の吐息が、抗いがたい快楽に変わる。
本当なら痛いはずなのに、それすらも気持ちよさに昇華するみたいだ。
一方ナツ姉のパイズリのフェラチオは、休まず続いている。
「んっ、ふぅ、ぺろ、んむぅ、れろろぉ、んふっ……」
「あ、あ、あ、あ――」
壊れた人形みたいに、のどから無意識に声が出る。
ずたずたになった理性に、フユ姉がいたずらっぽく囁いてきた。
「イッちゃっても、いいんじゃないかなぁ……?」
「えっ……? で、でも―」
もうなにかを考えることなんてできない。
だが、頭のどこかでそれに抵抗する。
「イったら、とぉっても気持ちいいよ? 精液ぴゅぴゅって、したくなぁい?」
「でも……。でも……―」
「おちんぽぺろぺろしてるナッちゃんの顔に、精子かけたくないの?」
「……~~~~~~~~!」
元より、我慢なぞできるはずはなかった。
ぶるりと全身が震えると、尿道から白濁が次々と溢れる。
「わふっ!?」
ナツ姉が、突然の射精に驚きの声をあげる。
口元と顔全体に、ぼくの子種汁が蹂躙するように飛び散った。
「あ、あ……、あー…………」
気怠い解放感が、ぐったりとした身体を支配する。
最高の悦楽感。
しかしそれも、眼前の幼馴染を見るまでだ。

464:名無しさん@ピンキー
12/02/24 04:27:56.62 ip65vt66
「……オシオキ、決定だなこりゃ」
れろりと精液を舐めながら、ナツ姉が凶暴な笑みを浮かべた。
昔からぼくは、この笑みを見ると心臓と身が縮み上がる。
「ご、ごめんナツ姉。ぼ、ぼく……」
フユ姉の甘言に騙されたことを、激しく後悔する。
だがフユ姉当人は、やはりぼくの背中に胸を押しつけたまま、嗜虐的に笑うだけだ。
「なあ一斗、ひとつ訊きたいんだが―」
「あ、あ……」
「あたしが今までお前の謝罪を聞いたことがあるか?」
そう言って、ナツ姉の手が射精したての亀頭に伸びる。
「うはぁぁぁっ♪ ら、らめ、そこ、イったばかりで敏感……っ!」
ぐりぐりぐりぐり、と普段の何倍も感じてしまうそこを責められる。
しかし決して竿は刺激しない。
あくまで亀頭を、嬲るように弄られる。
「だめぇぇぇぇっ、らめだからぁぁぁっ。こんな、こんなのっ、頭ヘンになるぅぅぅぅっ!」
「知ってるカズくん? こういうの、地獄車っていうのよ。棒のとここすらなきゃ、男の子はイくこともできないんですってね?」
「心配すんなよ、一斗。今回は、暴発の危険なんてないんだから♪ あたしたちって、なんて優しいんだろうなあ?」
「あァぁぁ――っ! あぁ――っ!!」
猛烈な快感があるのに、射精感に直結しない。
炎のようなもどかしさが、ただただ身を焦がしていくだけだ。
脳が焼けつくような錯覚の中、鼓膜が二人の声をとらえる。

「いいよカズくん、好きに声出していいからね? カズくんのかわいいとこ、もっと見せて?」
「心配しなくても、途中でやめたりしないからさ。小便まき散らすまで、存分によがってな」

言葉の意味は、もはや理解できない。
だが自分が弄ばれるだけの存在なのだということは、よくわかっていた。
地獄のような天国。
いや、天国のような地獄だろうか?
ショートする思考の中、そんな愚にもつかないことをぼくは考えていた。


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