【あかほん・濱中】氏家ト全 32時間目【妹・生徒会】 at EROPARO
【あかほん・濱中】氏家ト全 32時間目【妹・生徒会】 - 暇つぶし2ch350:名無しさん@ピンキー
12/12/31 23:11:44.37 GvgnVeXd
それまでも、現役アイドルがAVをリリースする事は、頻繁に見受けられた。
だがそれらはいずれも、十八歳以上のアイドルだけが対象だった。
その頃から既に日本の若者の意識は、性にオープンな方向に傾きかけていたが、
そこには明文化されていない不文律として、「年齢制限」のようなものがあった。
十八歳未満の童貞処女達は、十八歳以上アイドルのAVを視聴し、
それによってセックスに憧れこそすれ、それはあくまでも
「自分も十八歳を過ぎたらチャンスがあるかも」という程度の憧れに留まっていた。
未経験の中高生にとって、セックスはあくまで「未来のいつか」の話であり、
「大人になっていく途中の段階のいつかの話」に過ぎなかった。
ただ単に、いつか自分にも訪れるだろうセックスに対する妄想の内容が、
一昔前より少しばかり具体性を増しただけの話でしかなかった。
それを、TBは変えてしまった。
小四、中一、高一の三人組の少女達がリリースした、処女喪失AV。
そしてその三人組が毎晩ファン達を相手に行う、握手会代わりのセックス会。
それは日本の十八歳未満の者達に、セックスを「未来のいつか」ではなく、
「今まさにこの瞬間」にも堪能して差し支えないものなのだと刷り込ませた。

無論、後押しが全く無かったわけではない。
何もTBだけの力で、こうまで日本人の意識が変わったという事はない。
各事務所のアイドル達がTBに負けじとパフォーマンスを激化させるにつれ、
ものの数ヶ月としない内に、様々な変化が芸能界に拡散していった。
それまではアイドルのプロフィールと言えば、身長や生年月日、
後はせいぜい趣味だの、スリーサイズだのが書かれていただけだったのに、
今では「好きな体位」だの「経験人数」だのが、平然と記載されている。
ミュージッ○ステーションや笑っていい○もでは、
アイドルが「今週新作AVを出しまーす」とか「私の潮噴きも収録されてまーす」とか、
番宣そのままのノリでポルノ映像の告知をお茶の間に流す始末。
流石に放送時間帯は遠慮されてはいたが、夜の二十一時を過ぎれば、
宣伝の為に前戯のシーンぐらいなら公開しても良いような風潮が出来上がった。
当然、そんな時間に早寝している中高生は少ない。
憧れのアイドルが、撮影の為に毎回違う男に抱かれているのを見て、
幻滅するファンも多少は居た一方で、期待に胸膨らます者も大多数存在した。
殊に、そのアイドル本人が
「こないだ撮影した時のお相手の汁男優さんは凄くテクニシャンでしたよぉ」だの、
「彼氏は居ますけど、男優さんのがやっぱり気の遣い方がうまくってぇ」だの、
「私なんてもう二十人と寝ましたからぁ」だの言っていれば、悪影響は嫌でも広まる。
事ここに至れば、日本の若者の意識は「セックスに寛容」どころでは済まなくなった。
もっと正確に言うなら「フリーセックスに寛容」になったのだ。
セックスとは、必ずしも恋人同士でのみ行うものではないのだと。
信頼関係のある間柄でさえあれば、異性の親友とでもヤって良いのだと。
やがてそれは
「異性の『親友』どころか、異性相手なら『ただの友達』同士でも良いんだ」と。

……それが、マサヒコを目下の所苦悩させる、
現代日本の悪習慣を形成した経緯だった。
そしてその発端となったのは間違いなく、TBの三人がリリースしたAVだった。

351:名無しさん@ピンキー
12/12/31 23:14:40.02 GvgnVeXd
「それにしたって、いくら何でも、ほんの数ヶ月でこの変化ってのは」
「アンタも細かい事をゴチャゴチャとうるさい男ねぇ。
 確かに変化自体は短期間の内の出来事に見えるけど、兆候は前からあったじゃないの」
アフターファイブの飲み屋で、レイコは井戸田の愚痴を軽く聞き流していた。
TBの三人は現在、それぞれ小五、中二、高二に進級している。
デビューしたのがおよそ一年前、AVをリリースしたのは半年程前だ。
その間にいつの間にか四月を通り越し、彼女らは一学年進級していた。
芸能界の、そして世間の変化は、確かにここ二ヶ月間に集約されているように見えるが、
何事にも準備期間というのはあるものだ。
ドラマにしろ、バラエティ番組にしろ、音楽番組にしろ、
生放送でない限りは、実際の放映日時よりかなり前に収録は終わっている。
それに、新作の楽曲やAVや本を作ったとしたところで、
何の根回しも無しにいきなり宣伝をさせて貰えるものでもない。
例えば一週間前にあるアイドルがある番組で自分の新作AVを告知したとて、
そこに至る下準備には、何ヶ月もかかっている、というわけだ。
逆算すれば、丁度TBが処女喪失AVをリリースした直後から、
ライバル達の下準備が始まっていたと見る事も出来る。
大勢のアイドルや事務所が着々と下準備を進めていた噂は、
以前から業界の中では蔓延していた。
レイコの言う通り、業界内だけでなら、そして兆候だけなら、確かにあったのだ。
そしてその下準備が整ったからか、つい二ヶ月程前から、いきなりアイドル達が、
ファンサービスの一環で「性に奔放な自分」を強調し始めた。
後は、偶像の言う事なら何でも受け入れてしまう、愚かな大衆がそれに乗っかる。

自分も戦犯の内の一人なのだという自覚があったればこそ、
井戸田はアルコールに逃げずにはいられなかった。
「見て下さいよ、社長ぉ。あそこのテーブルなんか、もう」
「何よ、ただの合コンじゃないの?」
そう言ってレイコは、井戸田の指差した方向に目を向けた。
そこでは女子大生と思しき四人組が、お相手の男達四人に対して、
「喋ってるだけじゃ体の相性分かんないし、一人一人順番にキスしてこっか!」
などと、結構大胆な事を提案して盛り上がっていた。
「いくら合コンでも、あんなあけっぴろげなの、おかしいですよ。
 どう考えても俺らのせいで、若者達の性の意識が堕落しちゃってますって」
「別に合コンなんて元々、王様ゲームとかポッキーゲームはよくあったじゃないの」
あくまでレイコは、こういうスタンスだった。
自分達の力だけで世間に影響を及ぼしたのではなく、
元から若者と言うのは、周りの雰囲気の後押しや流れに乗ってしまえば、
勝手に堕落していくものだったのだ、という主張。
自分達がTBのAVをリリースしなくても、いつか日本はこうなっていたのだ、と。
「グダグダ言ってないで、明日までにはアルコール抜いときなさいよ?
 明日もアンタには仕事が山積みなんだかんね」
「ハァ……罪悪感で一杯で、仕事どころじゃないですよ、俺は……」

352:名無しさん@ピンキー
12/12/31 23:17:57.34 GvgnVeXd
もしも井戸田ヒロキが、小久保マサヒコと出会う事があったなら。
その時はより一層、彼は罪悪感に苛まれてしまうのだろう。
特に、こんな場面を目撃してしまえば、尚更。
『はっ! あふっ、ヤン! お兄ひゃんの、キツい、よおっ……!』
『カルナぁっ……乳首ばっか、責めちゃ、ヤっ……』
『うふふ。シホのここ、もうこんなになっちゃってる』
土曜日の朝っぱらから、マサヒコはTBの処女喪失AVの鑑賞会に、
無理矢理付き合わされていた。
「なぁ、的山……。お前がこんなモン持ってる事に、今更ツッコむ気は無いけどさ。
 何でよりによって、それを俺の家で、しかもミサキや先生達まで交えて見るんだ?」
実に久方振りに、彼の部屋には往年のメンバーが揃っていた。
唯一欠けているのはアメリカに転居したアヤナくらいのもので、
仕事が休みの中村も、卒論に一区切りつけたアイも、無論ミサキもこの場に居る。
女達に囲まれてAVの無修正4Pシーンを延々見せ付けられるのは、
マサヒコにとっては生き地獄と言っても決して過分でない状況だった。
「だって私、TBの大ファンだしぃ。AVであろうと、当然コレクションするよ」
「いやだから、お前がTBのAV持ってる事については、もうツッコまないって言ったろ。
 そうじゃなくて、何でそれを、俺の部屋で大勢で見なきゃいけないんだって」
「そりゃ勿論、小久保君の為だよー。
 セックスに耐性つけなきゃ、クラスで浮いちゃうよ?」
処女のお前に言われたくねーよ、とは失礼過ぎて言えない。
第一、多分アイも処女なのだから、迂闊な事は口にすべきでない。
ミサキですら、初めてマサヒコとヤったのは、今年の五月の事だ。
「俺の記憶が確かなら、今日は夏休みに一時帰国する若田部の、
 歓迎会の打ち合わせだった筈なんだけど」
「ま、まぁまぁマサ君。時間はたっぷりあるんだし、リンちゃんの折角のお勧めなんだし」
「ちょっと待てミサキ。何でよりによって、お前が地味に乗り気なんだよ」
「え、え? いや、まぁ、その……私もTBのファンだから、興味あるって言うか……」
ミサキがTBのファンである事は、マサヒコも知っている。
ファーストシングルは予約して発売日に買っていたのも知っているし、
恥ずかしくてAVにまでは手を出せずにいた事も知っている。
なるほど、だからか……と納得出来てしまうのが、妙に悔しい。
ミサキからしてみれば、興味はあるけど買えなかったAVを視聴する、
今日は貴重にして絶好のタイミング、というわけだ。

353:名無しさん@ピンキー
12/12/31 23:19:47.06 GvgnVeXd
「うっわー……。凄いですね、血が。
 私も初めての時はこんな風になるんですかねぇ」
「ってより、大学四年生にして未だに処女ってどうなのよ、アイ」
「い、いや私はその、ほら……相手も居ない事ですし……」
「だったらセージ貸してやろうか? あいつ、私の命令だったら何でも聞くわよ?」
アイと、中村のアホが、すぐ隣で卑猥な会話を続けている。
マサヒコにとっては今すぐ席を立ちたいくらい耳障りな会話だった。
「何言ってるんですか!? 豊田先生は先輩の彼氏さんでしょう!」
「アンタも古い感性してるわね。今時はそんなの関係無くなってるんだってば。
 つーか、そもそもセージって、別に私の彼氏ってワケじゃないわよ?」
「え? そ、そうなんですか?」
「だってアタシら、とうの昔に別れてんじゃん。忘れたの?」
「いやでも、てっきりヨリを戻したんだと……」
「馬ぁ鹿。私が昔の男に未練残したり、情が戻ったりする女だと思う?
 ヨリを戻したんじゃなくて、単に再会をきっかけにセフレになっただけよ。
 ひょっとして今まで知らなかったの?」
俺達だってそんなの知らなかったよ、とマサヒコは内心で一人ごちた。
言われてみると確かに、中村とセージの関係性は、恋だの愛だのには見えない。
元担任が何だか一層情けなく見える反面、相手が中村じゃ仕方ない、と同情もする。
「あぁでも、アイはショタコンだもんね。セージよりマサのが良っかぁ」
「ちょ、せ、先輩! 何て事言うんですか!」
本当、何て事言うんだ、この痴女。マサヒコは眉間に皺が寄るのを自覚した。
「なぁ、よぉ、マサ。アンタ、アイと一発ヤってみない?」
「さて期末試験の予習でもするかな」
「コラ無視すんなボケ」
無視するに決まっている。誰が中村の思いつきに踊らされるものか。
「だだだ駄目ですよ先輩! マサヒコ君にはミサキちゃんて言う、れっきとした……」
「だから、彼氏彼女でなきゃヤっちゃ駄目、ってのがもう古いんだってば。
 今の時代、ただの友達でもパイズリくらいなら当たり前なんだって」
アンタは今の時代じゃなくても元からそうでしょ、とはマサヒコも言わない。
言えば中村のエロトークに油を注ぐようなものだと、既に分かっているからだ。
『いっぱい出たねぇ、お兄ちゃん』
画面からは、股間に白濁の筋を垂らすユーリの声が、白昼堂々流されていた。

354:名無しさん@ピンキー
12/12/31 23:21:19.51 GvgnVeXd
アヤナの歓迎会の打ち合わせは、至極簡単に終わった。
歓迎会と言っても、中村とアイは忙しいから、当日は参加出来ない。
ミサキとリンコがアヤナを連れてショッピングに出る程度が関の山で、
そうとなればマサヒコが男一人だけ混じるのも野暮な話だ。
若田部邸はまだ現存しているので、そこにミサキとリンコが迎えに上がり、
後は同い年の女子三人だけでカフェや買い物と洒落込む、という形で話は纏まった。
ほんの五分程の話し合いで終わってしまった事を考えると、
その直前に二時間もAVをダラダラ視聴させられた事は、つくづくもって無駄の極みだ。
この程度のやり取りで済むなら、最初からメールで良かったじゃん、とマサヒコは思った。

中村とアイが帰った後で、ミサキとリンコは、まだ部屋に残っていた。
「ね、ねぇリンちゃん。モノは相談なんだけど……」
「なぁに、ミサキちゃん?」
「このDVD、貸してくれないかなぁ、なんて……」
お前正気かよ、それAVだぞ、とマサヒコは思わず割り込んだ。
真面目なミサキにしては、いやに大胆過ぎる申し出だった。
だが元がTBのファンである事を考えると、無理からぬ申し出だとも思える。
「いやあの、ほらっ、こういうの、恥ずかしくて自分じゃ買えないし!」
「普通、女がAVなんか買わないだろ。中村や的山が異常なんだって」
中学生でもAVを買える時代にしては、マサヒコやミサキは、実際古風な感性だった。
ほんの二ヶ月程前までは、誰だって彼等と同じような感性だった筈なのだが。
因みにこの時、まだこっそり廊下に潜んでいた中村が、
「マサの奴、どうして私がAV持ってるなんて知ってんだ?」と囁き、
アイは「そりゃ先輩はそういうキャラですもん」と返答していた。
彼女らがどうしてまだ部屋の外の廊下に潜んでいたかと言えば、
AVを見た直後のマサヒコが触発されて、ミサキかリンコを押し倒したりしないかと、
結構無礼な期待を込めて待機していたからに他ならない。
内心では彼女らも「マサヒコが今更AVごときで勃つワケが無い」と決め込んでいたが。

355:名無しさん@ピンキー
12/12/31 23:22:58.11 GvgnVeXd
リンコは当初、一も二も無くミサキにAVを貸そう、と思った。
大事なコレクションには違いないが、ミサキの頼みだ。断る理由が無い。
何なら自宅のパソコンでダビングしてやっても良いくらいだ。
(と言っても彼女は機械オンチなので、父親に頼むと言う綱渡りをする気でいたが)

ただ、この時、リンコはある事を思いついた。
交換条件だ。
本来ならタダで貸してやっても良いのだが、この機に、頼み事をするのも良い。
うまくすれば、これはまたとないチャンスとなる。
常から常識の欠落しているリンコにとって、後先の事などは微塵も考えが及ばなかった。
「良いよ、ミサキちゃん。TBのAV、貸したげる!」
「ホント!?」
「その代わりに、あのね? ごにょごにょ」
わざとらしくミサキに耳打ちするリンコに、マサヒコは何故だか寒気がした。
その感覚はどうやら的中のようで、ややあって、ミサキが顔を真っ赤にし始めた。
「え、えぇっ!? いやリンちゃん、それはちょっと……」
「どうしてもダメぇ?」
「そりゃだって、やっぱりそういうのは、そのぉ……」
「でも中村先生も、今時は友達同士でもオッケーだって言ってたよ?」
「中村先生はそうかも知んないけど、私やマサ君はまだ、そこまで思い切れないし……あ」
思わずマサヒコの名を出してしまって、ミサキは口を噤んだ。
もう何も言わなくとも、リンコが何を提案したのか、
マサヒコにも、アイにも、中村にも分かってしまった。
「おい、ミサキ……。まさかとは思うけど」
マサヒコはミサキに聞いたのに、リンコの方が我先にと答えを返す。
「あのねぇ、小久保君。DVD貸す代わりに、私の処女、貰ってくんなぁい?」

何で俺の悪い予感は毎回必ず的中するんだ!
マサヒコは神に向かってそう毒づいた。




続く

356:名無しさん@ピンキー
13/01/01 01:19:36.62 kTfVOHPG
あけ
おめこ
とよろ

357:名無しさん@ピンキー
13/01/01 01:53:58.64 RFZhO9UP
あけ
おめこ
とよろ

358:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
13/01/01 02:54:30.14 k+kGmure
ID:GvgnVeXd氏、投下乙です。
そして

あけ
おめこ
とよろ


昨年内には投下が間に合いませんでした……。
取りあえずまだ引退しないということで、細々とやっていきたいと思います。
とにかく仕事が忙し過ぎるわけで……元旦も仕事ですわ。

では。

359:名無しさん@ピンキー
13/01/01 03:49:05.48 Vx1wn2aE
あけ
おめこ
とよろ

ピンキリ氏やまだ残っている書き手さん今年もよろしくおねがいします

360:名無しさん@ピンキー
13/01/01 12:48:53.11 prrP0B2Z
あけ
おめこ
とよろ

361:名無しさん@ピンキー
13/01/01 15:51:07.99 rtrXbL2l
あけ おめこ とよろ

362:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:39:05.32 RsQUEXj7
>>355続き

AV女優のあかほん 第七話



いろいろな要素が重なり過ぎてしまっていた。

かねてより日本の若者が性にオープンになり過ぎていた事。
かねてより中村がリンコに早く処女を捨てるよう焚き付けていた事。
かねてよりミサキがTBのAVをじっくり鑑賞したがっていた事。
そこにきて、リンコがAVをミサキに貸す代わりに、
交換条件を提示する事を思いついてしまった事。

「この展開は流石に私も読めなかったわねー」
「ちょ、あの、先輩? これ、放っておいて良いんですか?」
「良いの良いの。今回でマサが一皮剥ければ、その方が面白いっしょ」
「そ、そうかなぁ……」
そんな風にドアの向こう側で声を潜めるアイと中村にも気付かず、
マサヒコは凍りついた空気の中で、口をあんぐりと開けていた。
「……えーと。あのな、的山。お前、自分で何言ってるか分かってんのか」
「え、分かりにくかった? 私と一発ヤって、ってお願いしてるんだケド」
そうじゃない。
俺にとって分かりにくかったんじゃなく、
お前は自分で言葉の意味分かってんのか、と聞きたいんだ、俺は。
マサヒコはそう矢継ぎ早に言ったが、天然のリンコには通じていなかった。
これが通じるくらいなら、マサヒコも普段から苦労などしていない。
中学時代彼が一番対応に苦慮したのは、
実は中村でもアイでもなく、このリンコの言動なのだ。
「確かに最近の日本はTBのせいで、妙に奔放になっちまってるけどな。
 生憎俺もミサキも、まだそこまで流行に踊らされちゃいないんだよ。
 どうしてもロストヴァージンしたいなら、他を当たってくれ」
何でこんな当たり前の事をいちいち言わねばならないのか。
呆れ返りながら言ったマサヒコに、反論を試みたのは、まさかのミサキだった。
「ま、待ってよマサ君!」
「……何でミサキが割って入るんだよ」
「だって、そのぉ……こうしないとDVD貸して貰えないんなら、私は……」
「何言ってんだお前!? たかがAV借りる為に、自分の彼氏売ろうってのか!」
「売るなんて、そんな人聞きの悪い。
 私だって、相手がリンちゃんじゃなきゃ、とても」
「相手が的山だったら良いって理屈が分かんねぇよ。
 ってか、こういうのは普通、男の俺よりお前の方が拒絶すべきだろ。
 何か立場がおかしくないか?」
「そ、そうなんだけど……。正直言うと、DVDの為って、言うより、は……」
やけに口ごもるミサキの心理が、マサヒコには何となく察せた。

363:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:40:39.29 RsQUEXj7
要するに、リンコの為なのだろう。
思えば、気付くべきだった。
ただでさえリンコは、普段からマサヒコに愚痴をこぼしている。
フリーセックスが流行した昨今においても、自分だけは何故か声がかからず、
どころかクラスの男子達から異性として見られていないのだと。
こんな愚痴をこぼす間柄でも、マサヒコとリンコは、ただの友人だ。
しかしミサキは違う。
ミサキはリンコにとって、親友と言って良いくらいに距離感が近い。
同じ学校に通っていて、会う機会のずっと多いマサヒコよりも、
同性であり同窓生であるミサキの方が、リンコとは深い間柄にある。
であればこそ、平生リンコがマサヒコに対して漏らしているような愚痴は、
メールなり電話なりという形で、ミサキの方がより多く受け取っている筈だ。
マサヒコに対してすら、あれだけ愚痴っているリンコなのだから、
ミサキに対してはもっと何倍も悩みを打ち明けているに相違ない。
何で私って未だに処女なんだろう。
何で私だけ男の子達から相手にされないんだろう。
顔が可愛くないのがいけないのか、胸が小さいから駄目なのか。
そんな不平を日々受け止めるミサキの姿が、マサヒコには容易に想像出来た。
そして、こうも思うのだ。
ケータイを握り締め、「リンちゃんもいつか経験出来るよ、焦らないで」
と、親身に返信を送るミサキの姿すら、自分には想像出来ると。
「ミサキの言い分も、分からないでもないけどさ。
 俺と的山はただの友達であって、そういう事をするのは……」
「でも最近は、ただの友達でも、そのくらいは……」
「それがおかしいんだってば。今の日本がおかしいのであって、俺はマトモだ!」
男のくせに据え膳に手を出そうとしないマサヒコに、
ドアの向こうに潜んだ中村とアイは、密かに苛立ち始めていた。
「オイオイ、常時賢者モードかよ、マサの奴」
「って言うか、ちょっと雰囲気悪くなってきてるような……」

364:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:42:02.88 RsQUEXj7
アイの予測は当たっていた。
処女を貰い受けて欲しいと頼み込むリンコに、それを後押ししようとするミサキ。
頑なに拒もうとするマサヒコがそこに加われば、平和な空気は長く維持出来ない。
険悪と言って差し支えない淀みが、部屋の中を支配し始めていた。
「大体だな、ミサキ。俺は曲りなりにもお前の彼氏だぞ?
 他の女と寝る事を、よりによってお前に推奨されちゃ、
 まるで心の底から好かれてないみたいで、嫌になってくるじゃねーか」
「そういうワケじゃないよ! リンちゃんが相手だからこそ、私もこんな……」
「的山の親友だからこそ、そこは毅然とした態度で断るべきだろうが。
 俺みたいなただの友達なんかで大事な体に傷をつけず、
 いつかちゃんとした彼氏を作って、大切な思い出を作る努力をすべきだって、
 何で的山に言ってやらないんだよ」
「それは正論だけど、でも、例えば明日リンちゃんが
 見も知らぬ誰かにレイプされたらどうするの?
 どこかの誰かに無理矢理奪われるくらいなら、マサ君相手の方が、
 リンちゃんにとっても良いんじゃないの?」
「どこかの誰かにレイプされる前提で生きてる日本人なんか居るかよ!
 お前、自分がどんだけメチャクチャな事言ってるか、分かってないだろ!?」
「分かってるわよ! 何度も言うけど、リンちゃん相手だからここまで譲歩してるの!」
一階に居るだろうマサヒコの母親どころか、隣近所にまで聞こえそうな喧噪。
ちょっと仲裁に入った方が良いだろうか、と考える中村がドアノブに手をかける。
だがその時、リンコが突如として泣き出した。
「うわぁぁん! ごめんなさいぃぃぃ……」
「ま、的山?」
「リン……ちゃん……?」
まるで夫婦喧嘩を目の当たりにした幼子のように、リンコは泣きじゃくった。
否応なくマサヒコとミサキは一時休戦し、リンコを宥める事に注力し始めた。
「お、落ち着け的山」
「リンちゃんは悪くないよ、ね?」
子はかすがいと言うが、リンコは彼等二人の緩衝剤になっていた。
元はと言えば、リンコのせいで喧嘩が始まったようなものなのだが。

365:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:44:22.22 RsQUEXj7
この時、騒動にかまけて周りの物音に気付けなかったのは、
マサヒコにとってもミサキにとっても落ち度だったと言える。
すすり泣くリンコを心配するアイを余所に、中村だけが冷静だった事はおろか、
そもそも中村とアイの二人が廊下から聞き耳を立てている事自体、
部屋の中の三人の男女には気付けていなかった。
そして、中村がこっそりドアを少しだけ開けてスマフォを構え、
隙間からハメ撮りの準備を開始してしまっていた事にも。
「……くそ。一回だけだからな? 良いな? 二度とこんな事俺にさせんなよ」
「小久保くぅん……。やっぱり小久保君は優しいよぉ」
「ファイト、リンちゃん! 私も見守っててあげるから、頑張ってね!」
隠れている自分達の事は抜きにしても、ミサキはしっかり同室に居るわけで、
よくこの状況で処女のくせにセックスなんか出来るなと、中村はリンコに感心した。
変態の素養はしっかり備えているのだ、リンコも。
「くっくっく……マサを脅迫する良い材料が手に入るわね」
「先輩、悪趣味ですってば」
恩師二人と恋人に見守られる中、マサヒコは恐る恐る服を脱ぎ始めていった。
初夏の気候の中では、服を脱ぐ事はむしろ、涼しく清々しい気分ですらあった。
と言うより「気分が良い」と無理にでも思わねば、やっていられなかったのだが。
「的山。自分で脱ぐか? それとも俺が脱がせた方が良いか? ……って」
聞くまでも無かったか、とマサヒコはすぐに思い直した。
リンコはこのテの羞恥心が皆無なのか、いやに手際良く自分で脱ぎ始めている。
マサヒコの前で下着姿になる事に、何のてらいも無い様子だ。
「あー、私貧乳な上にパイパンだけど、気にしないでね、小久保君」
「まず初めに気に掛ける部分がそこなのかよ、的山は……」
ミサキと初めて寝た時は、確か下着が大人っぽくない事だとか、
腰回りの体型だとか、そういった事を気にされていたな、と思い出す。
リンコはあくまで自分の体が女として完成度が低い事を気にしているだけで、
それそのものを男に見られる事については、毛程も気にしていないらしい。
変な所で度胸があるなと感慨にふけりながら、マサヒコもミサキも、
一糸纏わぬ姿になっていくリンコを見つめつつ、時折思い出したように視線を逸らした。
「あ、そうだ。カーテン閉めてあげないと」
そんな事も忘れてしまうくらい、ミサキは平常心を失っていた。
だがそれでもマサヒコよりはマシな方で、むしろミサキに言われるまで
カーテンの事を忘れていたマサヒコの方が、余程落ち着きを失くしている。
トランクス一丁で窓際に近付いたマサヒコが、まだ一着も脱いでいないミサキと
部屋の隅で鉢合わせ、途端に気まずい表情を交わし合った。
「念の為聞くけど、お前は脱がないんだよな?」
「そりゃ、だって……今回私、何もしないし……」
当たり前ではある。
マサヒコがリンコの処女を奪うのに、ミサキが参戦する理由は無かった。
参戦しないのに、常に傍で見守り続けはするのだが。

366:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:46:51.80 RsQUEXj7
度胸があると言うよりは、天然を極めてしまっているだけなのだろう。
リンコは鞄から携帯電話を取り出すと、全裸の自分の上半身を自撮りしだした。
「お前、何やってんだ?」
「えへへー、記念撮影! 脱・処女の!」
まかり間違ってその画像が何かの経路からネットに流出でもしたらどうするのか。
多分リンコは、そこまで考えていない。
間違っても、自分が携帯電話をどこかで落として、
不心得者に拾われる可能性など、まず考えていないのだ。
リンコの性質を考えると、高確率で携帯電話の一つや二つは落としそうなのに。
「ところでセックスって、最初に何すれば良いのかなぁ? フェラチオとか?」
「処女のくせにいきなりハードル高ぇな、おい……。
 お前は無理しなくて良いんだよ、別に。俺に全部任せてれば」
言うようになったじゃないか、ちょっと前まで童貞だった分際で。
中村がそんな感想を抱く一方で、アイは両手で自分の顔面を塞ぎ、
時折指の隙間からチラチラと部屋の様子を伺い続けた。
「こんなつまらない体でゴメンね、小久保君。
 本当だったらパイズリとかしてあげるべきなんだろうケド」
「全国のカップルの内何割がそんな事してんだよ。
 ミサキにだってそんな事して貰ってな……あっ」
失言だった、とマサヒコは気付いた。
ミサキにとってパイズリとは、したくても出来ない行為なのだ。
恨めしげな目線が恋人から注がれている事は、背中越しにも伝わってくる。
「……さ、とっとと済ませるか。そこに横になれ、的山」
「ハーイ」
ジェットコースターの順番待ちの列にでも並ぶかのような、
弾んだ心持ちで、リンコはマサヒコのベッドの上に上がり込んだ。
「ところで、ねぇ、小久保君?」
「何だよ」
「男の人のおちんちんって、えっちの時、どんなタイミングで勃つモンなの?」
「ぐっ……」
リンコの指摘は、マサヒコにとって耳に痛かった。
実はこの期に及んで彼の男根は、まだ平常モードだったのだ。
「俺に聞かれても困るよ、そんなの。平均を知らないし」
ドアの向こうで中村が「普通初っ端から全開だろうが、思春期の男なら」と毒づく。
しかしマサヒコの場合、普段から必要以上に冷静過ぎるので、
余程興奮しなければ海綿体に血液が流入してくれないのだった。
ただ、百戦錬磨の中村と違い、他のメンバーからしてみれば、
男が大体どのくらいのタイミングで勃起するのかは、経験から測れない。
処女のアイやリンコにとっては勿論、マサヒコとしか経験の無いミサキもまた、
行為を開始して三十分後くらいにようやく勃起するマサヒコが、
世間一般の男の「普通」なのだと思えるのだった。
EDではないにせよ、マサヒコはまさしく、常時賢者のような男だった。

367:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:49:18.59 RsQUEXj7
半時間もすれば勃起してくれるんじゃないかな、と声をかけるミサキに、
リンコは「えー、そんなに待てないよぉ」と痴女スレスレの言葉を返す。
まるで今すぐ挿入されたがっている淫乱女そのものといった発言だが、
リンコとしては他意は無く、単にプレゼントを待ち侘びる幼児の気分だ。
「何とかして今すぐカタくさせる方法無いの?」
「そんな事言われても……さっきのTBのDVD見てても無反応だし、マサ君って」
正直言うと自分は少しさっきのAVで股間が湿ってるくらいなのに
……とは、ミサキも言わなかった。
「んじゃあ、やっぱりフェラチオするしか無いかなぁ」
「あのな的山、どうしてそういう結論に……」
「大丈夫だって! 私、中学の頃はバナナとかで結構練習してたし!」
「そんな事は聞いてな……いやお前、あの受験戦争の最中にそんな事してたのかよ」
「うん! 中村先生が、試験よりも成績よりも大事な事だからって!」
「あのクズ、教え子に何教育してんだ」
まさにそのクズが、たった今ドアの向こうから盗撮しているのだが。
「ちょ、ちょっと待ってよリンちゃん!」
「なぁに、ミサキちゃん?」
「その、フ、フェラとか……私だって、まだしてあげた事無いのに……」
一時的に彼氏を親友に貸す決心をしたミサキとて、
まだ自分がやった事の無い行為をさせるのは、流石に嫉妬するらしい。
マサヒコの唇へのファーストキスは自分が受け取ったのだから、
ペニスへのファーストキスもまた、出来れば自分が済ませてやりたい。
そう考えるのが、マサヒコの正妻としてのミサキの、当たり前の感情だった。
「わたっ、私が先にフェラするから! リンちゃんは二番目で! ね?」
「うーん。ま、いっか。頑張って、ミサキちゃん!」
「オイ、話が変な方向に」
いや、元から変な方向に転がっていたな、とマサヒコも思い直す。
それにしても、練習していたらしいリンコはどうだか知らないが、
果たしてミサキにフェラなど出来るのだろうか。

368:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:50:28.61 RsQUEXj7
そんなマサヒコの予感は、果たして的中した。
ベッドの上で仰向けになり、受け入れ準備を整えたマサヒコの足元で、
ミサキは服を全て着たまま、恐々と唇をイチモツに近付けた。
が、舐めるとか咥えるどころか、皮膚の一部にキスするだけでも
相当な度胸と根性が要るようで、実際それだけで三分は消費したろうか。
しかも勿論亀頭などではなく、陰茎の側面に口付けるだけで、この有様。
ただでさえ勃起しにくいのに、マサヒコは余計、熱が冷めていくのを感じた。
「無理すんなよ、ミサキ。どう考えても気持ち悪いだろ、ソレの見た目は」
ソレ、と言うのは勿論ペニスの事だ。
だがミサキは、この程度で臆しこそすれ、退こうとはしなかった。
「マサ君だって頑張って私のを舐めてくれたんだもん。私も頑張る」
「平然と性生活を暴露しないでくれないかな、ホント……」
それに、男がクンニをするのと、女がフェラをするのとでは、必要なファイトが違う。
男にとってヴァギナは自分を受け入れてくれる器だが、
女にとってのペニスは自分を貫く凶器のようなものだ。
その凶器を愛おしく思えるようになるには、それなりの経験と場数が要るだろう。
少なくとも、今ミサキに備わっているわけが無い境地ではあった。
「ねぇねぇミサキちゃん。私ももう小久保君のにキスして良ーい?」
「ふぇ!? あ、えっと……あ、そ、そうだね」
とりあえずマサヒコの男根へのファーストキスだけ終わって気も済んだのか、
今度はミサキは、妙にすんなりとリンコの提案を飲んだ。
そしてここからが、フェラテクばかり中村に仕込まれたリンコの、
本領発揮とも言える場面にもなった。
「いっただっきまーす!」
本来食われるのはお前の方なんだけどな、とツッコむのも気が引けて、
マサヒコは大人しくリンコに捕食される事にした。

369:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:51:49.03 RsQUEXj7
一応リンコを志望校に入学させた腕前から見ても、
あのチャランポランの中村は、意外と良い教師だったのかも知れない。
その手腕がこっちの方面でも発揮されたと考えると複雑な気持ちだが、
確かにリンコのフェラテクは、処女らしからぬ巧みさがあった。
「れろれろれろれろ……じゅぷっ、ぐじゅっ、ぶじゅっ」
尿道を舌で遠慮無く舐め回したかと思えば、次には大胆なピストン。
バナナ相手にこれを練習してきたリンコの姿を想像すると、どこか滑稽だ。
初めてでここまでやるか、と感動するミサキを余所に、リンコはヒートアップした。
「あ、勃ってきた勃ってきた!」
「そんな! もう!?」
リンコがフェラを開始して、ものの二十秒としない内に、
マサヒコのモノはエレクチオンしてきた。
ミサキが驚くのも無理は無い。
彼女はマサヒコとヤる時は基本的にまな板の上の鯉だったが、
自分から積極的になってやる事で、こんなに容易く彼氏を元気にさせられるのだと、
今ようやく気付かされたのだから、女として悔しいと思う気持ちもある。
「くぅっ……私も負けてらんない! リンちゃん、交替して!」
ミサキは負けじと、フェラに没入する事に腹を括った。
ところでこの時中村は、そんな彼等を廊下側から盗撮しつつ、
「マサの奴、感じてる割には表情も変わらんし声も出んとは、何者なんだ」
と半ば呆れ返っていた。
セージだったら、ちょっとフェラをしたら、すぐに頼り無い顔になるのに、と。
因みにアイの方はと言うと、もうさっきから殆どずっと黙りこくっていて、
場の空気と流れに気圧されっぱなしだった。
「あ、あわわ、あわ……」
「情けないわねぇ、アイは。まぁ教え子に先に脱処女されちゃ、立つ瀬も無いか」
そんな事で臆しているわけではないのだが、アイは反論の余裕すら奪われていた。
ミサキはそんな恩師達(別にミサキは中村達に勉強は教わってないのだが)を余所に、
拙いながらも懸命なフェラチオを開始した。
けれども、頑張って頬張ったり舐めたりはしているものの、
かなりの部分で遠慮と怯えが入り混じり、リンコのテクには及ばないものだった。
「うぅっ……マサ君の為、マサ君の為……」
「いや、あのな? だからな? 無理すんなって言ってん……」
「ちょっとマサ君は黙ってて!」
「……はい」
これのどこが、俺の為なものか。マサヒコはジト目で恋人を見つめた。

370:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:53:20.82 RsQUEXj7
重ねて言うが、ミサキはまだ、服を一着も脱いでいない。
突然フェラに参入はしたが、それはあくまで予定外の出来事であり、
彼女は服を脱ぐ必要も、今マサヒコと交わる必要も無かった。
それを十分弁えているから、彼女は未だにボタンの一つさえ外していなかった。
だがもうそろそろ、このままでは危ないという事だけは、自分自身で理解していた。
「マサ君……ちょっと、相談があるんだけど……」
「何だよ」
「えと、そのぉ……パンティだけ、脱いでも良い?」
ミサキはこの日、スカートを穿いて来ていた。
他の全ての被服を纏ったままでパンティだけ脱ぐのは、造作もない事だ。
ただ、何でこのタイミングでそれを要求するのかが、マサヒコには分からなかった。
今のミサキの事情を理解してやれたのは、中村だけだった。
「実は……今ちょっと、濡れてきちゃってて……下着、汚れそうなの」
なるほど、渇くまで下着は外しておきたい、というわけだ。
その事に気付いてやれなかった事を恥じるより先に、マサヒコは、
こんな事でもう濡れたのか、とミサキに感心してしまった。
まだ性感の開発されきっていないミサキは、ちょっと手マンをしてやっただけでは、
そうそう簡単には濡れたりしなかったものだが。
「……あー、うん。良いんじゃないか、別に。何か変なシチュエーションだな、もう」
ノーパンになった恋人の前で、女友達とセックスに興じる。
どんなヤリチンだって、滅多に経験しないだろう特殊性が、そこにはある。
クラスメイトにこの事を話したらば、まず間違いなく「彼女も交えて3Pしろよ!」とか
「彼女だけ放置とか可哀想!」とか言われるに決まってる。
とは言うものの、ミサキ以外の女と抱き合うだけでも覚悟の必要だったマサヒコの事、
よもやこの場で臨機応変に3Pに突入する思考には、思い至らなかった。
せいぜい「後でミサキもちゃんと相手してあげよう」ぐらいしか考えない。
兎も角ミサキは、恋人と親友(と覗き魔二人)の見ている前で、
スカートの中に両手を差し入れ、恐る恐るパンティだけを下ろしていった。
既にそこは糸を引いており、無論中村のスマフォにばっちり収められている。
マサヒコもミサキも、ドアの方に目を向ける余裕など無かった。
「んじゃ、とりあえずキスしよ! 小久保君!」
「えっ!? きっ、キスもすんのか!?」
「ま、まぁ確かに、そのくらいしないと、おかしい気もするけど」
慌てふためくマサヒコと対称的に、ミサキは割と寛容だった。
キスよりもっと凄い事をたった今やってのけていたし、
これから挿入も控えているのだから、そのくらいは……というわけだ。
たった今までこの唇に咥えられていたのだと思うと少し気色も悪かったが、
マサヒコは腹を括って、寝そべるリンコの唇にロックオンした。

371:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:54:47.11 RsQUEXj7
マサヒコとリンコのキスは、なるべく手短に済ませようとしたマサヒコのせいで、
ものの三秒としない内に終わりを告げた。
舌さえ絡めない、殆ど礼儀的なキスだ。挨拶代わりに近いと言って良い。
その代わり、愛撫はじっとりと、そしてかなり時間をかけて行われた。
ミサキと初めて交わった時の経験から、なるべく体を解してやった方が
相手の負担が少ないのだと、マサヒコが学習していたからだ。
ミサキと初めてした時は、前戯に三十分以上かかった割には、
破瓜の痛みを十分に取り除いてやれなかったものだった。
乳首を丹念に舐め回し、陰唇を柔らかく撫で回して、
マサヒコは徐々にリンコを高めてやっていった……と言えば聞こえは良いが、
実の所リンコは、ほぼ無感動にぼーっとしているだけだった。
「うーん。聞いてた程気持ち良くないなぁ」
「最初はそんなもんだよ、リンちゃん。多分だけど」
「男として自信無くなるなぁ、くそっ」
実際処女のリンコがいきなり喘ぎまくるわけはないのだが、
さっきまで喘ぎまくっているTBのAVを見ていただけに、
マサヒコは自分の技巧が及ばないものだと、どうしても考えたくなる。
彼にとっては知る由も無いが、まさしくそこはテクニックの差が関与している面も
否定は出来ず、社会人である井戸田と、高校生であるマサヒコとでは、
本来比べるのも失礼な歴然としたレベルの違いが、そこには横たわっていた。
ついでに言うと、これはリンコの体質も関わっていたのだが、
その事にマサヒコ達が気付いたのは、この直後の事だった。
「ねぇ小久保くぅん。もうそろそろ入れちゃう?」
「もう入れるのか? でも的山、まだ全然準備出来てなさそうだけど」
「多分私、今日一日頑張っても無理だと思う。
 普段から頭がボケッとしてるからか、体の方もボケッとしてるのかも」
自分で自分の事をボケとか言う人間も中々珍しい。
しかし世の中には、確かに感度や反応の遅い人間は存在する。
頭を叩かれても「痛っ」と応えるのが人より少し遅い人間。
リンコは丁度そういう手合いなので、快感への反応も人より薄いのかも知れない。
それなら破瓜の痛みも大した事は無いかも知れないと考え、
マサヒコは前戯を早々に諦めて、いよいよ挿入を決意した。

372:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:56:03.05 RsQUEXj7
そして、彼がリンコの両足を左右に広げ、中心を重ね合わせ、
先端を入口にちょっとだけ押し込んだ、まさにその時。
その瞬間にようやく、彼等は―リンコも含めて―初めて気付かされた。
リンコは決して不感症なわけではなく、ある瞬間に突然目覚めるタイプだったのだと。
「んアァんっ!」
「え、ちょ、的山?」
まだ先の方しか入れてないのに、もう痛いのか、とマサヒコは当初思った。
だが激痛に耐える者の声とは、根本的に違う事にすぐに気付く。
この声は、AVの中のシホやカルナの声と、極めて類似していた。
「ふぁ、あッ……何コレ……飛びそぉ……」
「ま、まさかリンちゃん……」
「入れられた途端に、感じ始めたのかよ?」
これは中村も予想外だった。リンコにこういう素質が隠されていたとは。
「挿入の瞬間が一番良いってのは、私も同意見だけど……。
 リンの場合、これが火付けになるなんてね」
中村の言う通り、これこそがリンコにとっての、性感発達の狼煙だった。
「なんかっ……スイッチ、入ったかもぉ……っ」
「痛くないのか、的山?」
「らいじょうぶ……それより、ねぇ、小久保君……おっぱい、触って……」
言われるがまま、マサヒコは今一度リンコの胸に手を伸ばした。
するとどうだろう、さっきまではどれだけ弄られても、
くすぐったがりもしなかった筈のリンコの体が、敏感に反応を返してくる。
「ひっ、あっ、ヤン! ンンッ、ンーっ!」
いきなり締め付けが強くなった事をマサヒコは感じ取った。
「うそ、だろ……今のでイったのか?」
見ると、リンコの股間からは、それまで一滴も流れていなかった筈の愛液が、
この瞬間を待ち構えていたかのように染み出してきた。
処女膜を破られた証の鮮血もそこには混じっているが、
そんな痛みはリンコにとって、快感を阻害するものにはならないらしい。
眼鏡の奥の瞳が、これ以上無いくらいに蕩けている。
挿入される事がリンコにとってのスイッチだったのは、どうやら事実のようだ。
「小久保くぅん……もっと、奥まで……お願ぁい……」
欲されるがままに、マサヒコは自分の強直を、より深く押し進めていった。

373:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:57:21.04 RsQUEXj7
元々女の方が、男よりも絶頂の時間が持続するとは言われている。
また、女の快感は男の快感の比ではない、という説もある。
とは言え、リンコの場合は異常だ。
先端を入れ始めたその瞬間から、その後のピストンまで含めてずっと、
リンコは休み無くイキっぱなしで、何度も失神しかけていた。
挿入開始からまだ二分かそこらで、マサヒコもまだ射精には及ばない程なのに、
リンコ一人だけが贅沢なくらいに絶頂の中でよがり狂っている。
「イクっ! あっ! イッ! んぎっ! ふぇ、はっ、ンイっ! イクッ!」
イク、ではない。
正確には、イっている、だ。現在進行形だ。
その現在進行形が、もう何分も続いている。
羨ましい体質をしているなと、中村とミサキは密かに感動した。
それとも、リンコとマサヒコの相性が良過ぎるのだろうか。
こんな状況を目の当たりにしても、中村にはまだ冷静さが十分に残っていて、
教え子達の痴態を前に、洞察する程度の事は出来るのだった。
「本来男女の相性ってのは、自分に無い物を求める本能に起因するからねぇ」
「マ、マサヒコ君とリンちゃんが、お互いに自分に無い物を持ってると?」
合いの手を打つアイに、中村は一服でもしそうなリラックスした顔で返す。
「ボケ体質を極めてるリンにとっちゃ、ツッコミ王のマサは、対極でしょ。
 自分に無い物を持ってる男の、代表格みたいなもんじゃん?
 お互いツッコミ体質のマサとミサキより、下手すりゃ相性良いかもねぇ」
「でもそれじゃ、ミサキちゃんが可哀想なんじゃ……」
「そうとも言い切れないわよ?
 リンはツッコミを求めてるけど、マサはボケを求めてないもの。
 マサにとっちゃ、同じツッコミ体質で常識人の、ミサキの方が良いのかも」
要するにリンコのマサヒコに対する相性の良さは、一方的な物というわけだ。
そう考えると、恥ずかしいぐらいにイキまくっているリンコに対し、
まだ一発も射精していないマサヒコは、中村の推測を裏付けているようにも見える。
問題は、これがこじれて三角関係にならないかどうかだが、
リンコの性格を考えると、マサヒコを欲する余りに略奪愛をしようなどとは、
未来永劫考えそうにないから、その点は安心して良さそうだった。
「リンと同じくボケ体質のアイは、ひょっとするとマサと相性良いかもねぇ」
「じ、冗談言わないで下さい先ぱ……あれ?」
言いかけたアイは、部屋の片隅に、ある変化を見咎めた。
「ミサキ……ちゃん?」

374:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:58:38.66 RsQUEXj7
目の前で乱れ狂うリンコに触発されたのか、
それとも彼氏が他の女を抱いている事に我慢ならなくなったのか、
或いは既にAV視聴とフェラで火照っていた体に限界がきたのか。
見ると、ミサキはスカートの中に手を突っ込み、よからぬ事をし始めていた。
「んっ、く……ん……あっ……」
事ここに至れば、ミサキも少し可哀想かも、と中村も思い始める。
ミサキは今、オナニーに没頭していた。
彼氏を目の前で奪われている状況で。
「こんん、なのぉ……良く、ない、のにぃ……」
中村とアイの位置からは、スカートを片手でたくし上げ、
もう片方の手で陰唇を弄ぶミサキの姿が、よく見える。
一方のマサヒコとリンコは、そちらに目を向ける余裕も無さそうだ。
その疎外感がまた、ミサキを一層惨めにしていた。
ミサキの華奢な指は、しかし下手なりにも料理を頑張ってきた苦労が滲んでいて、
爪の生え際の所々はささくれ立ち、夏場と言うのに荒れている部分も見受けられる。
料理の勉強を一時的なもので終わらせず、高校に進学してからも、
恐らくはマサヒコの為に、ずっと努力してきたのだろう。
その手が今、ミサキ自身の下の口に、中指を差し入れ始めた。
「マサ君……マサくぅん……」
せっかくパンティを脱いだのに、いやむしろ脱いでいた方がやはり良かったか、
兎に角彼女のアソコからは、粘性の液体が流れ落ちて、カーペットを汚している。
床が汚れた事はマサヒコには申し訳ないだろうが、
パンティを穿きっぱなしだったら、ミサキはこの後、
ズブ濡れの気持ち悪い下着を穿いて帰宅せねばならなかったろう。
「はっ、あっ、あっ、あっ、なかにっ、ナカに出ひてぇんっ!」
リンコは誰に指示されたでもなく、いつの間にかだいしゅきホールド状態だ。
マサヒコの方もそろそろ到達しかけているらしく、表情と呼吸が変わってきている。
「やっべ……ゴム……つけて、ねぇっ……や……」
「あふぁあ……マサ君……イキそうらよぉ……」
「ンイィッ! 気持ち良いよぉっ! 体バラバラんなるぅうっ!」
三者三様、マサヒコとミサキとリンコは、程なくして最大の絶頂を迎えた。

375:名無しさん@ピンキー
13/01/01 23:59:29.19 RsQUEXj7
こうして、リンコは名実共に、マサヒコの「二人目」となった。
経験人数二人目、ではない。
正妻たるミサキに次ぐ、セックスフレンドとしての位置付けだ。
そうなる事を望んだのはマサヒコではなく、勿論リンコだったのだが。
「セックスってすっごぉい! 小久保君、これからもバンバンヤリまくろうね!」
「いや、もうこういうのは……」
気の引けているマサヒコを後押ししたのが中村であった事は、言うまでもない。
「ふふふ、マサぁ?」
「げっ、中村!? と、アイ先生!? ずっとそこに居たのかよ!」
「観念しなさい、ヤリチン。バッチリ映像に収めてるわよ。
 これをバラ撒かれたくなかったら、リンコの要求を飲みなさい」
「え、それアンタにとって何かメリットあんの?」
「無いわよ?」
どうせまた面白半分で首を突っ込んできただけなのだろうな、とよく分かる。
「ミサキちゃんも頑張りなさいよ? うかうかしてると、リンにマサ盗られるわよ」
「そっ、そんな事!」
「あんまりイジメちゃダメですよ、先輩」
「アンタも頑張りなさいな、アイ。いつまで処女で居る気よ、天然記念物が」
「うっ……」
この後、ベッドの上の赤い染みと、部屋に充満する雌の匂いが、
マサヒコの部屋を掃除しに来た母親にバレて、マサヒコが問い詰められた事も、
やはり言うまでも無い事だった。



続く

376:名無しさん@ピンキー
13/01/03 01:33:58.88 AkyOQdS4
おつ。
久々の濱中モノが来てうれしいよ。

ピンキリ氏にも期待が。

377:名無しさん@ピンキー
13/01/07 10:43:38.17 Gdp6iRaO
おつ

この世界での津田がうらやま……不憫な目にあってる気がしてならない

378:名無しさん@ピンキー
13/02/05 06:38:57.42 XmE+ERbh


379:名無しさん@ピンキー
13/02/05 21:47:05.81 tNWaELII
そういえば生徒会三巻の七ページでコトミがベッドで寝てるけど、タカトシいるし、誰の部屋なんやろ?

380:名無しさん@ピンキー
13/02/08 10:18:20.22 6PUQrMPr
久しぶりに来てみたら過疎ってるなー
思春期初期~濱中時代の住人も氏家漫画を卒業してしまったのかな
まあでもある意味、「氏家漫画」が安定期に入ってるってことの裏返しでもあるのか

381:名無しさん@ピンキー
13/02/08 13:44:24.77 oYrsMZQ8
規制解除されたかテスト

382:名無しさん@ピンキー
13/02/08 13:50:22.28 oYrsMZQ8
ようやく解除されたか…およそ丸一年、長かった…

383:名無しさん@ピンキー
13/02/20 20:27:16.23 FlJJ2otQ
54

384:名無しさん@ピンキー
13/03/03 11:14:50.05 fiQJRz+6
コトミ「zzz…ビクッ…ハッ!た、タカ兄!今あたしの中に出した!?」

タカトシ「どういう寝ぼけ方だよ」

385:名無しさん@ピンキー
13/03/07 10:30:40.71 3c7xHXul
規制解除キタ━(゚∀゚)━!
津田の野郎JKの足を触りまくりやがって!

386:名無しさん@ピンキー
13/03/08 10:32:32.18 E872cjV5
今週はスズがエロくみえたな

387:名無しさん@ピンキー
13/03/09 03:32:43.45 4sUeFHWG
アリアはそのまま押し倒したら抱かれてたんじゃないか?w

388:名無しさん@ピンキー
13/03/29 08:24:49.91 URzngQRO
今週もスズは可愛かったな

389:名無しさん@ピンキー
13/04/02 18:08:37.26 6DhNuHlK
最近ウオミープッシュが多い気がする

390:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
13/04/05 21:05:09.32 7SGTLu9M
結局まったく投下できずに申し訳ないです。
仕事が忙しいのが悪いんだ(責任転嫁)

夏までには何とか(逃げ腰)

391:名無しさん@ピンキー
13/04/07 20:48:53.28 qquWiEBt
期待してます~!

392:名無しさん@ピンキー
13/05/09 13:15:59.22 sXFhP0MW
来週はうおみー回か

楽しみだ

393:名無しさん@ピンキー
13/06/14 08:54:06.65 OSz0WeD6
今週のは色々と妄想がはかどるなww

394:名無しさん@ピンキー
13/07/05 NY:AN:NY.AN 76ioRJPp
本気で人いないな……

この隙にスズはもらっていってかまわんな?

395:名無しさん@ピンキー
13/07/05 NY:AN:NY.AN PYNDOCva
通報

396:名無しさん@ピンキー
13/08/02 NY:AN:NY.AN wDjL4kC0


397:名無しさん@ピンキー
13/08/27 NY:AN:NY.AN xh1Ltfev
ここもさすがに過疎ったか・・・

398:名無しさん@ピンキー
13/09/25 01:38:13.75 aVtP3aLS
ほす

399:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
13/10/09 01:16:57.72 VPOCtyuE
夏までとか嘘ついてごめんなさい。
年末までには何とか(どの口が)。
何と言う一年一作……。

400:名無しさん@ピンキー
13/10/09 03:39:27.38 M4vXaw52
ピンからキリまで

401:名無しさん@ピンキー
13/10/09 12:57:24.46 1Z1osKzF
待ってますよ―

402:名無しさん@ピンキー
13/10/13 00:59:31.06 CizzTyX6
浮上

403:名無しさん@ピンキー
13/10/20 09:58:10.58 BEcdnPHs
マガスペの番外編でまたシノ会長とミサキの学年(年齢)差がややこしくなった・・・。
シノが6年生でまだ誕生日が来てなくて11歳、ミサキが4年生だけどすでに誕生日が来て
いて10歳、なら一応今までの描写と矛盾はないけれど。

404:名無しさん@ピンキー
13/10/22 18:34:16.73 XTLbHKLs
Wikiって更新されてないよね

405: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 00:57:25.37 wpM2gBZ2
お久しぶりです。2期決まりましたね。まさかですね。
久しぶりに再燃したんで書きました。
タカトシ×アリア みたいな何か。
タイトル:ガチ条先輩
・40行×11レスほどお借り。
・微エロ程度。
・キャラ違いは二次創作の華。
・キレる津田。
・やべーアリア。
・SMらしき何かの描写。

こんな話です。苦手なワードがありましたらNGをお願いします。

406: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 00:58:06.45 wpM2gBZ2
「七条先輩……お願いがあります!」

最初から変だな、とは思っていた。
何となく地に足は付いていないし、あらゆる物がぼやけて見えるのに、何故か津田タカトシの苦しそうな表情だけがハッキリと見えた。
津田は勃起していた。その有様の苦しそうな事と言ったら。想像だに出来ない筈なのに、七条は同情を覚えた。

「俺を……俺をその手に持ったムチでぶっ叩いて下さい!」

津田が身に付けていた制服を自ら引き裂き、四つん這いになって尻を向けた。
痣一つない、男の子らしからぬ可愛くて綺麗な尻だった。
自分の右手にはいつの間にか乗馬鞭が握られていた。
通常SMプレイに使われるバラ鞭は、接触面積が広いため音こそ激しいものの痛みはほぼない。
鞭で打たれている、と言うシチュエーションを楽しむために鞭打ちがある。
しかし、今手にした乗馬鞭は、馬の頑丈な皮膚の上からでも尚痛みを走らせる武器だ。
こんな物で人の皮膚を思い切り打ち付ければ、激痛とともに皮膚が切り裂かれる。
七条はその鞭を躊躇無く振りかぶって、津田の尻に強か打ち付けると、津田は恍惚の表情とともに痛みの雄叫びを上げた。
手に痺れが返ってくる。全身に痺れが伝わり、鼓動が高鳴る。
津田の尻に痣が浮かんでいる。
未踏の雪原に足跡を残したような、えも言われぬ達成感があった。
もう一度、角度を変えて打ち付ける。雄叫びは嬌声だ。何を躊躇う事があろう。

「この……薄汚い豚野郎! ケダモノ!
 鞭で叩かれて喜ぶなんて、本当に変態なんだね津田君って!
 こんな姿、スズちゃんやシノちゃんが見たら! 何て言うのかしらね!」
「そんな! こんな姿、痛っ! 見せるのは、あぁ! 七条先輩だけです!」
「私にだったら見せても! 良いって言うの!? 裸で! お尻突き出して!
 とっても痛い鞭で叩かれて! 喘いじゃう姿を!」
「はいっ! 痛! 貴方、貴方様だけです! オレが本当の自分を見せられるのは、ひゃぁ!
 会長でも萩村でも、三葉でも魚見姉さんでもなくて! 七条先輩だけですううぅぅ!」

津田の尻はもう真っ青である。七条は額の汗を拭った。
上等な絵画を描いたような気分であった。津田の言葉を、絞り出した。
私だけ。こんな破廉恥で、あられもなくて、汚らしくて変態な姿を見せるのは、私だけ。
津田の下の床が濡れている。津田は射精していた。陰茎が萎んで行く。
七条は自分の頬が邪悪に歪んで行くのを感じた。

「ねぇ……津田君だけ満足しちゃったの?」

自分の服はいつからボンテージスーツになっていたんだろう。
でもそれは些細な事だ。気にしない。

407: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 00:58:46.43 wpM2gBZ2
「貴方だけ良くなったのに……私を良くしないのは、失礼じゃないの?」

そう言って七条は自らのボンテージスーツを脱


 *


「……夢かぁ」

最初から分かっていた。別に始めて見る夢ではないのだ。
ドMと化した津田を罵倒しながらプレイに興じる夢は、幾度となく見ている。
起き上がった七条は、いつもよりも寝相が激しかったせいか、あちこちに跳ねた髪を鏡を見ながら軽く撫で付けた。
間もなくメイドの出島さんが起こしにくる。今や殆ど身内同然の間柄とは言え、あまりだらしない姿を見せたくない。

「……夢なのかぁ」

溜め息が漏れた。まだ朝だと言うのに、その表情は暗い。
今見た夢が夢であった事に、正直に言えば七条は落胆していた。
勿論津田がそんなに激しいMでない事も分かっている。
萩村や天草に比べて津田との距離が少し空いているような気も、何となくしている。
だからあんな夢を見て、それが夢だと分かって落胆するのだ。

「夢じゃなかったらいいのになぁ……」

窓に手をかける七条。窓には眠たそうな目の、いかにも無垢そうなお嬢様が映っている。
ポツリと一粒、雨が窓を叩く。空は灰色で薄暗い。今日は一日、晴れないだろう。
窓に映る女の口端がゆっくりと持ち上がっていく。
七条がその表情に気づく前に、急に降り出した豪雨が窓の女を掻き消してしまった。
背後の扉が開く。メイドの出島さんが、驚いた表情を見せた。

「おや、お目覚めでしたか。いつもよりも早いのに」
「おはよ、出島さん。……雨、凄いね」
「遠くの空は晴れております。単なる通り雨ですよ、夕立のようなものです。……ですからそう、これがホントの」
「朝勃ち?」
「……えぇ、はい」

オチを言われた出島は、露骨に肩を落としていた。


  *

408: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 00:59:30.42 wpM2gBZ2
最近、津田の元気がない。
仕事で大きなミスをした訳でもないし、テストや行事が迫っている訳でもない。
だが顔色が悪いし、溜め息が増えた。そして何より、

「今朝は上の毛も下の毛も寝癖が酷くて大変だった」
「……」

下ネタにツッコミをしてくれない。
天草は普段から津田とボケとツッコミの応酬によってコミュニケーションをとっているので、これは実に面白くない。
なによりボケた天草が滑った空気になるのが辛い。
同室で職務を進める萩村も七条も、最近は津田がツッコミに回っていたせいか、天草のボケを愛想笑いで受け流す事が多い。

「津田、最近元気がないようだが……」
「え? あ、いや……」

直接聞いてみてもはぐらかされる。

「何か悩みがあるのなら相談に乗るぞ?」
「いや、何もないですって。気にしないで下さい」

少し突っ込んでみると、こんどは堅い口調で拒まれる。
そこまで言うのなら、と作業に戻る。雑務をこなしていざ帰宅、と言う段になると、津田は一人、挨拶もそこそこに早足で帰宅路についた。
いつも一緒に帰っているのに、と三人が三人不思議がっていると、天草の携帯が震える。
津田のメールであった。

「相談したい事があります。駅前の喫茶店で。必ず一人で御願いします」

物々しいメールだった。わざわざ『一人で』と頼まれると無駄に身構えてしまう。
携帯画面を見つめて眉をひそめる天草を、七条が覗き込むように顔を近づけた。

「シノちゃん、どうしたの?」
「……あぁ、何。気にするな」
「もしかして津田君?」

鋭い。七条は悪戯っぽい顔で小首を傾げている。
「まさか」と溜め息混じりに返しながら、七条の視線から庇うように携帯電話を仕舞うと、早足で歩き出した。
背中に刺さるように鋭い親友の視線が、何故か背筋を凍らせた。


 *

409: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 01:00:58.25 wpM2gBZ2
津田とは予定通り落ち合う事が出来た。
顔を合わせて軽く挨拶程度はしたが、それきり津田は肩を落として顔を俯けた。
レギュラーコーヒーはすっかり冷めているが、口を着けられた様子もなかった。
店員に同じものを、と頼む。店員が酷く落ち込んだ津田と自分を交互に見て、足早に去って行く。
落ち込んでいる男一人と、困った顔の女が一人。邪推するには十分過ぎる。

「……なぁ、津田よ」
「は、はい」

挙動不審の一言に尽きる。目は泳いでいるし、自分のコーヒーを探して彷徨う手つきが痛々しい。
天草にとってみれば相当根深い悩みを抱えていると見抜くのは容易い事だった。
こういう類いは、貝と同じで、下手に突つくと殻に閉じこもる。
自然と話せるようになるまで、津田が相談の場と言う空気に慣れるまで待つ必要があった。

「何でもない」

頼まれたコーヒーが来た。
ミルクと砂糖に手を伸ばそうとしたが、俯いた津田を見ているとそれさえも憚られた。
ブラックで飲むコーヒーは思いの外薄く、しかし意識の切り替えには十分な苦みがある。

「……焦らなくてもいい」
「あ、その……」
「無理をして今この場で話す必要はないぞ。明日でもいいし、もっと先でもいい」
「それは会長に悪いですし……」
「私に気を遣うな。迷惑とは思っていない、むしろ」

津田の力になれると思うと嬉しい。そんな事を言いかけた口を慌てて閉じて、コーヒーを飲み下して誤魔化した。
咽せそうになる苦味と熱さを堪えると、津田はようやく顔を上げて天草を見つめ直した。

「……本当は、会長に相談するつもりもなかったんですケド」

津田はそう前置きをして、こう続けた。

「どうもオレ……七条先輩に嫌われたみたいで」
「は?」

津田の口から語られたのは、天草が予想だにしていない言葉だった。


 *

410: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 01:02:08.49 wpM2gBZ2
前兆はなかった。
少なくとも津田はそう思っている。
最初に『それ』があったのは、委員会への連絡ミスをしてしまった時だ。
そのミスで委員会の会議が予定通りに行なわれず、その後処理の作業を一人、生徒会室で行なっていた時である。
ミスは幸い津田だけで処理出来る範囲だったので他の生徒会役員には伝えていなかった。
特に萩村や会長に知られれば一言二言ではすまない説教を喰らうであろう事は明々白々だ。
……とは言えこの分では夜までかかるだろうと途方にくれていた時であった。

「あれ、津田君?」

生徒会室に現れたのは七条だった。

「今日は生徒会のお仕事お休みじゃなかった?」
「え、あ、ま、まぁ……」

慌てて机上の書類を隠そうとするが、七条は案外素早い所作で部屋に飛び込み、書類の一端を見やった。

「あれ? この委員会の会議って……」

首を傾げる七条。見られてしまった以上、隠す訳には行くまい。
それに穏やかで寛大な七条ならば、「全く、仕方ないなぁ」なんて言いながら優しく手伝ってくれるんじゃないか、と言う期待もあった。

「すみません、ちょっと連絡ミスがあったみたいで、今手直しを……」
「ふぅん……」

七条の纏う空気が変わった。口元が釣り上がった、あまり見た事のない種類の微笑みだった。
七条の優しい視線が津田を鋭く射抜く。綿飴で出来たナイフに刺されたような有り得ない違和感を覚えた。

「……でも、そんなミスがあったって、私聞いてないけどなぁ」
「あー……それは、その」
「何かあったら、まずはシノちゃんとかスズちゃんとか……後は、私とかにも言わなくちゃいけないんじゃないの?」
「は、はぁ……」

七条が机に強く手をついた。普段大きな音を立てる事も滅多にないのに。
津田は自分でも分かっていた。オレは明らかに、怯えている。

「大体、これって元はただの連絡ミスでしょ?
 もっと早く気がついてたらこんな大事になってないんだよ?
 それをここまで放っておいたのって、津田君なんでしょ?」
「あ……う」
「津田君って生徒会役員になってもう二年近いんだよ?
 未だにそんな初歩的なミスしちゃうなんて、本当に津田君って……」

411: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 01:03:17.03 wpM2gBZ2
そこで七条は身を一歩引いて、入り口まで歩いて行く。
津田は彼女の背中を眺めている事しか出来なかった。

「使えない、よね」

七条が去ってから津田はすっかり混乱し、意気消沈し、作業を終わらせる事が出来なかった。


 *


次は翌日だった。
友人達と予定が合わずに一人で学食を食べている時に、七条が現れた。
七条は級友達と一緒に居たが、こちらに気がつくと一人で食事を持ってやってきた。
昨日の事もあって二人だけで顔を合わせるのは嫌だったのだが、食事中に逃げる訳にもいかない。

「津田君、一人?」
「そうですケド……」
「他のお友達は?」

そう聞いた七条に「ちょっと都合が合わなくて」と返す前に、七条は「あ、そっかぁ!」と高らかに声を上げた。

「津田君なんかに友達がいる筈ないもんね」
「……え、ちょ」
「可哀想だけど、じゃなくて……別に、ちっとも可哀想じゃないわ。
 だって津田君って……気持ち、悪い、もんね。
 いっつも私の胸ばっかりみてるし。そんな下品な男の人に友達なんて出来ないよね」

津田は七条が吐き出す罵詈雑言に、未だに反応出来ないでいた。
しかしどうやら七条が懸命に何かを考えながら、自分の事を的確に罵っている事だけは良く分かった。
七条は津田の前の席に腰掛けた。このまま居座り続けるらしい。
残りの昼休みの間、津田はずっと、七条にそうやって罵られ続けた。


 *


「そんな事が、もう二週間……毎日顔を合わせる度に続きまして」
「完全に、嫌われている、と」

津田は話終えて少しスッキリしたのか、ようやく自分のコーヒーに手を伸ばした。

412: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 01:04:32.14 wpM2gBZ2
すっかり冷めきったそれを一口で飲み下すと、小さく溜め息を吐く。

「オレ、そんなに嫌われるような事した覚えもなくて……」
「うん。私もアリアが他人を蛇蝎の如く嫌っているのは見た事がなかったが……」

と、言うか天草には七条がそのように他人に強い悪感情を抱いているとは思えなかった。
彼女は津田の言う通り、ぶっ飛んだ言動を除けばおしとやかで穏やかで寛大な大人しい性格の持ち主だ。
人を罵倒する事なんて、それこそプレイの一貫とかでなければ……。

「津田よ、つかぬ事を訊くが」
「はい?」
「実はアリアと……付き合っていて、プレイの一貫でそう言う事をしているとかでは」
「オレ真剣に悩んでんだけど!」
「あぁ、すまん、私も少し動揺していてな……」

さすがに有り得ない。もし今のが真実だったら、天草はプレイに巻き込まれた事になってしまい、興味が無い訳ではないが御免被りたい。
だがそれなら、津田と七条の間に……少なくとも七条の方に何かしらあったのは間違いないだろう。

「……なるほど、生徒会室では話せない話だ」
「すみません、わざわざ呼び出しちゃって……」
「迷惑とは思っていないと言ったろう? アリアの方には私から聞いてみるよ。
 ……君が私に相談した事は伝えていいか? 円満な解決を目指したいから、隠し事はしたくない」
「はい、勿論です。……よろしく御願いします」

生徒会内で諍いが起きているなら、それを正すのは生徒会長の自分の役目。
申し訳なさそうに頭を下げる津田の肩を優しく叩いて励ましながら、天草は使命感に燃えていた。


 *


翌日、生徒会室には天草と七条の姿しかなかった。
他の二人には今日は生徒会室に近付かないように言ってある。

「そっかぁ……津田君がそんな事を……」

七条に津田から受けた相談の事を正直に話すと、七条は小さく呟いた。
その表情が示す感情は、憂いだ。
天草から目を逸らして、アンニュイに溜め息を吐きながら毛先を弄る仕草は様になっていたが少し憎たらしい。
居心地が悪い時の癖の様なものだろう、と天草は見当をつけた。

「なぁ、アリア。……何があったんだ」

413: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 01:06:16.54 wpM2gBZ2
「……何がって?」
「君も津田に対しては最初から好意的だった筈だろう。
 どうして今になって津田にそんなに冷たく当たるんだ?」

七条はそれには口を噤んだ。しかし、姿勢を正して肩をすぼめて居辛そうにしているのを見るに、悪い事をした自覚はあるようだ。
一先ずそれに安堵しつつ、やれやれと優しく諭すように語りかける。

「なぁ、君も津田の事を心底嫌っている訳じゃないんだろう?
 どんな理由かは見当もつかないが、津田はションボリしていたんだ。
 だからまずは、津田に事情を話して謝ろう、な?」
「えぇ! 謝るのはダメだよ! 折角今まで頑張って言葉攻めしてたのに!」
「は? 言葉攻め?」

七条はハッとして今更自分の口を押さえつけたが、もう遅い。
しっかり聞こえていた。言葉攻め、と。

「やっぱりプレイの一貫なのか!?」
「ちげーっつってんだろ!」

生徒会室の扉の外から津田の怒鳴り声が聞こえてきたかと思うと、扉が勢いよく開かれて津田が大股で肩をいからせて部屋に飛び込んできた。
どうやら表でこっそり聞き耳を立てていたようだ。
真っ直ぐに七条の元に向かい、歯を剥いて鼻息粗く顔を寄せる。
天草はマズいと直感した。これは本気で怒っている顔だ。

「つーか言葉攻めってなんですか!
 オレいつの間に七条先輩のプレイに巻き込まれてたんですか!」
「始めから、かな?」
「始めからって……じゃぁオレに対しての暴言は全部プレイだったとか、そう言う事なんですか!」
「ま、待て、落ち着け津田。一先ずアリアの意見を全部聞いてからだろ、な?」

天草が場を治める為に渾身の笑顔と共に津田を必死に宥める。
津田は未だに頭に上った血が抜けないのか、拳を堅く握ったままだ。
七条は津田の剣幕に驚いたのか、少し潤んだ瞳を丸くしている。
七条に話すように促すと、彼女はポツポツと真相を語った。
結果、この件は天草の中では史上最大級に下らない相談事であった、と言うケリがついた。


  *


七条は最近、良く夢を見る。
決まってそこに現れるのは津田だ。
そして現れる津田は大なり小なりマゾヒストで、夢で遭う度に七条にプレイを乞う。
七条は夢の中でだけだが、津田とSMプレイを楽しむようになってしまった。

414: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 01:08:04.94 wpM2gBZ2
だが、夢はいつも肝心の部分で終わってしまう。
そして次第に欲求ばかりが募って行った結果、七条は遂に行動に出たのだ。

「夢じゃなかったら、途中で中断される事もないじゃない?」

津田タカトシマゾ豚化計画が始動した。
まずは彼を言葉攻めによって自身のマゾのケを目覚めさせる。
そして言葉攻めに徐々に慣れさせて行き、最終的には七条に尻を差し出すのだ。
そんな恐ろしい計画が進攻していたのを知っているのは勿論七条だけで、実現出来ると思っていたのも無論七条だけだ。

「言葉攻めと言うか、それじゃ単なる嫌な奴だろう」

天草は下ネタをぶっ込むのも忘れて、常識的に物申した。
津田も全くの同意見だったようで、更に静まりかけていた怒りが再燃したのか、目の角度を釣り上げた。

「アンタのお陰でオレがどんだけ悩んだと思ってるんですか!」
「……うん、ごめんなさい」
「もういっそ生徒会辞めようかとか、そしたら会長になんて言おうかとか、ホントに色々考えてたんですからね!」
「反省してます……」
「あ、あのな津田。アリアもこうして謝っている事だし、なんとか許してやる訳には……」
「そんな簡単には許せません! 大体七条先輩は普段から人目を気にしなさすぎて……」

ガミガミと姑のように細かい事を説教し出した津田。
今更それを止めようとすれば、矛先がこちらにも向きかねない。
肩を落として津田の説教を大人しく聞いている七条には悪いが、天草は津田が飽き果てるまで好きに説教させてやるのが一番円満解決出来ると思われた。
……そもそも、これは七条が少しふざけ過ぎた結果なので、彼女が叱られるのは当然なのだ。

「……じゃ、生徒会室の戸締まりはよろしくな」
「あ、シノちゃん待っ」
「七条先輩、まだ話は終わってませんよ!」

生徒会室の扉を後ろ手にゆっくりと締める。
せめてもの慰めとして、ノートを千切って『関係者以外立ち入り禁止(横島先生含む)』と書いて扉に画鋲で貼付けると、天草は両耳を軽く塞いで学校を後にした。
後に津田と七条からメールが届いた。
七条からは騒がせた謝罪と、これからはもっとおしとやかな言動を心がけると言う宣言。
津田からも騒がせた謝罪と、叱り過ぎて少し泣かせてしまった七条へのフォローを頼み込んできた。
実に下らない話だったが、終わってみると無事で良かったと胸を撫で下ろす天草だった。


 *

415: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 01:09:28.16 wpM2gBZ2
「……ねぇ、七条先輩」

舌舐めずりをする津田が七条の顎、首筋を指でなぞる。
桜才学園の制服を身に着けた彼に対して、七条は裸だった。
ブレザー、ブラウス、下着も全て津田にバラバラに千切られて、ボロ雑巾の様になって部屋の隅にほおり投げられている。

「先輩ってやっぱり、頭おかしいんですよ」

顎を撫でていた津田の手が七条の頬を張った。抵抗出来ずに横たわる。
手も足も麻縄で縛られていて、身動きができない。ギャグボールを加えていて、口を利くことも出来ない。

「縄食い込んでて、半開きの口から涎垂れてて、それなのにまだ欲しそうな顔をしてる」

津田の手が七条の首にかかった。ぐいと気道を潰すように体重をかける。
息ができない。苦しくて目が回ってくる。気持ちが悪くて吐きそうだ。
しかし不思議と死の恐怖はなかった。それはこれが夢だからだろうか。

「鞭ですか? 蝋燭ですか? それとも目隠し? テープ拘束? 首輪?」
「全部!」

ギャグボールをくわえている筈なのに、ちゃんと言葉が出ている。
夢は都合の良い物だ。

「全部! 全部欲しいの!」
「全部欲しい? なら、はい」

津田は蔑むような笑いを浮かべながら、箱の中から取り出した蝋燭や鞭と言った道具を、七条の足元に置いた。
そして一際大きく高笑いをして、七条を見下ろす。

「全部先輩に上げますよ! そんな状態でそんな変態グッズ貰ってなにするんですかねぇ!?」
「そ、そうじゃなくて……」
「えー? 違うんですか? ならどうするのが正解なんですか?
 いつも勉強教えてくれるときみたいに、ほら教えて下さいよ、先輩……」

津田はねちっこく聞いてくる。絶対にこんな男ではないのは、七条にも分かっているんだが。
でも、津田にこうして虐められるのは嫌いではなかった。

「そ、その道具で……」
「道具で?」
「その道具で私をメチャメチャにして欲しいの!」

416: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 01:10:20.76 wpM2gBZ2
「良く言えました! 正解者に拍手ー!」

津田がそう叫ぶと、部屋の四方がコントの様にパカッと開いて、外の世界が露になった。
観客席が円形に何段にもずらりと並んでいる。表情のしっかりしていない、ぼやけた無個性な人間の顔が幾つも並んでいる。
しかし、自分を見て、哀れな自分を見て下劣に笑っているのは間違いなく理解出来た。
観客席の中に見知った顔が居た。天草と萩村の二人がこちらを見て顔をしかめている。
不快感を露にしているのではない。嫉妬しているんだ。七条には全てが理解出来る。ここはそう言う世界なのだから。

「さぁ……先輩。先輩が嫌って言っても止めませんからね……死ぬ程よがって下さいよ!」

津田の声に呼応して、観客達が歓声を上げた。
津田は手にした乗馬鞭を思い切り振りかぶり、七条の珠のような柔肌に向けて思い切り振り下


 *

「……夢、かぁ」

七条の欲求不満は続く。

417: ◆ZAtwiNsO4g
13/11/05 01:12:02.84 wpM2gBZ2
以上です。おめ汚し失礼しました。
アニメ始まって、また人がくるといいですね。

418:名無しさん@ピンキー
13/11/06 13:52:40.67 sGgzEeLA
久々だ!GJです

419:名無しさん@ピンキー
13/11/10 20:51:35.34 vCNJADVK
久々の投下、ありがとうございます!

420:名無しさん@ピンキー
13/11/26 02:26:43.50 ykU/9s2O
このスレ続いてたんですね。
感慨深いものがあります。氏家作品すげー。
そんなこんなで何年かぶりに投下させていただきます。
1レスばかり拝借。

タイトル:「副会長に鈴をつけ」

エロなしオチなし意味はなし
略して「え、おい」

421:名無しさん@ピンキー
13/11/26 02:28:55.69 ykU/9s2O
「―で? 何か言いたいことは?」

「……ありません」

「アンタも副会長なんだからしっかりしなさいよ」

「ごめんなさい」

「はあ……まあいいわ。ほら、さっさと終わらせちゃうわよ」

「いや、でも悪いよ。帰りも遅くなるし」

「アンタ一人に任せてたらもっと遅くなるわよ」

「じゃあ帰りは送るよ」

「おくっ……べ、別にいいわよ。方角逆じゃない」

「ついでにメシでも食ってかない?」

「買い食いは校則違反ってこの前も妹さん怒られての忘れたの?」

「言わなきゃわかんないって。オレ達二人の秘密ってことで」

「秘密……ま、まあそういうことなら付き合ってあげてもいいわ―ってすごい量じゃない」

「……今度の休みに駅前のパフェも追加で」

「ケーキセットね」

「……オゴラセテイタダキマス」

「~♪」


おわり

422:75
13/11/26 02:35:16.36 ykU/9s2O
誰と誰の会話かは察してください。

生徒会役員共のSS探してたらWikiにたどり着いたので投下させていただきました。
Wikiを読み直してみたけど実母ネタ書いてたなんて当時の自分は何考えてたんだ。
覚えている方いないとは思いますがいつぞやの75です。
次作は気が向けばということで。

423:名無しさん@ピンキー
13/12/01 21:25:36.37 cJjC0KOn
おおー、懐かしい職人さんが!
次回作も楽しみにしております。

424:いつぞやの75
13/12/11 01:20:49.66 rCe8D+A2
>>423
ありがとうございます。
ゆるーくお待ちください。

というわけでまたも1レスばかり拝借。

タイトル:「副会長の鈴が鳴る?」

あいも変わらずエロなしオチなし意味はなし、略して「え、おい」をお送りします。

425:いつぞやの75
13/12/11 01:21:43.78 rCe8D+A2
「昨日テレビでやってただけあって混んでるわね」

「どうする? 並ぶ?」

「やめときましょ。さすがに三時間も並んでられないわ」

「じゃあどこか行きたいところある? 付き合うよ」

「そうね……映画でも見てく?」

「映画かー、そういや割引してるって言ってたな」

「カップル割引って書いてあるけど」

「じゃあ通常料金で―」

「……いいわよ、別に」

「いや、でもさ」

「兄妹にしか見えないとでも言いたいのか!」

「言ってないから。嫌じゃなければカップルってことで行こう」

「……うん」

「ほら、手」

「?」

「カップルなんだろ、オレ達。だったらそれらしく手くらいは繋いでいこうぜ」

「そう……ね」

「……顔、赤いぞ」

「……アンタほどじゃないわよ」


おわり

426:いつぞやの75
13/12/11 01:30:30.30 rCe8D+A2
例によって誰と誰かは明かしません。
前回の続きのような、続きではないような。そのあたりもお任せします。
確定しているのは二人が見に行ったのは三姉妹妖譚ということくらいです。

お目汚し失礼しました。次作は気が向けばということで。

427:名無しさん@ピンキー
13/12/11 04:15:18.30 lZqARa05
GJ!

428:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
13/12/21 00:31:03.37 djeyeplN
皆さんお疲れ様です。
ものごっつい久しぶりになりましたが投下します。
直接的なエロなしでタイトルは「犬の散歩、人の散歩」です。
では。

429:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
13/12/21 00:36:34.75 djeyeplN
 犬とは散歩をする動物である。
正確には、散歩に連れていかなければいけない動物である。
人間でもそうだが、生き物とは体を動かさなければどんどんと不健康になってしまう。
で、犬の散歩にも色々とルールがある。

①無理に連れ出さない→強制すると犬が散歩そのものを嫌ってしまう。
②炎天下に散歩に行かない→犬は人間より地面に近い位置に体があるので熱され易い。
③大雨の日は散歩に行かない→水たまりので汚れる。雑菌も拾い易い。
④固定の時間に散歩に行かない→犬が慣れると最速するようになる。あくまで飼い主が『連れていく側』でなければならない。
⑤糞の後始末は必ずする→当たり前の行為。絶対厳守のマナー。

 ここら当たりが基本となるだろうか。 
まったく、生き物を飼うことは決して簡単なことではない。
ほったらかしにして良いこと、ルーズにして良いことなど一つもないのである。

 ◆ ◆ ◆

「わん」
 さて、ここに一匹の犬がいる。
陽汝学園の女子寮『ひだまり荘』の番犬、その名も『プチ』である。
 犬種はダルメシアン、ディズニー映画の「101匹わんちゃん」で有名だと言えば、どんな犬かは想像し易いだろう。
体力と持久力に優れ、猟犬や牧羊犬としておおいに活躍したと言われる。
陽気でノリが良い反面、強い警戒心を持ち、飼い主以外にはなつかないこともある。
とにかく元気で体を動かすことが大好きな為、日々の散歩は欠かせない。
 ……のだが。
どうにもこのプチ、上記の特徴に当てはまらない面がやけに目立つ。
散歩は嫌いではないが、動いている場面よりも座っているか寝ている場面の方が多い。
おかげで太って獣医に通ったこともある(まあこれはひだまり荘の住人共が間食させまくったせいでもあるが)。
警戒心は皆無ではないが、基本、寮を訪れた人間は全てウェルカム状態。
吠えたとしても喜んで吠えてたりする。
「と、言うわけで」
「何が、と言うわけでなのよ、ハナ。何なのこの集まり」
「『プチを正しく飼う為のチキチキ大会議・第一回目』を開催する、ということでいいのね」
「きゃっ、スカートに顔をつっこまないで、プチ。そんなことをしていいのは兄さんだけなんだから」
「俺、ここにいる意味なくね? プチの飼い主、俺じゃねーし」
「わんわん」
 場所はあまてら荘近くの公園。
時は放課後、夕日がぼちぼち水平線に落下していく16時半。
面子は、陽汝学園二年生女子の花園ハナ、片岡ヒカリ、山田コンスタンツ、
陽汝学園一年生女子の田隈サトリ、陽汝学園二年生男子でハナ達のクラスメイトである田隈カオル、そして件のプチの計五名と一匹。
「やー、この前学校のPC室で改めてダルメシアンがどんな犬か調べてたんだけど」
「……今頃?」
「ウィキペディアとか見てみたら、なんかプチ、全然ダルメシアンらしくないなーって」
「……今更?」
 ハナの言葉にツッコミを入れるヒカリ。
この面子だと、基本、ハナがボケのポジションになる。
と言うか、ヒカリ以外の全員が皆ボケ属性。
しかもただのボケではない、コンスタンツ、サトリ、カオルの三人は「ツッコミしているつもりがボケになっている」という、
ツッコミボケのスキル持ちなので、真っ当なツッコミタイプのヒカリとしては非常に困る場面が日々多い。
まあコンスタンツに言わせれば、カオル絡みになるとヒカリもボケ属性になるそうだが。

430:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
13/12/21 00:44:22.52 djeyeplN
「私、花園ハナとしては、はきちんとしたダルメシアンとしてプチに育ってもらいたい」
 会話の口火を切るのは、ほとんどハナの役目と言って良い。
「私としては貴女にまずきちんとした女学生として育ってもらいたい」
 そして間髪置かずにツッコミを入れるのはやはりヒカリの役目となる。
会話のスタート地点になる、すなわち、問題を持ち込むこととほぼイコール。
 ハナが何かしら事件を起こせば、
それをコンスタンツとサトリが攪拌機のごとくかき回し、
どこからか現れたカオルが別の色をつけ、
最後にヒカリが何とかツッコミでまとめるる。
これが、この面子が絡む騒動のだいたいのパターンである。
スパイスとしてあまてら荘の寮母の朝宮、生活指導員の雨雲、山伏動物病院の獣医の山伏マルミが加わることもあるが、
基本はやっぱりこの五名と一匹になる。
「兄さん、私スカートを脱ぐからプチを引き剥がして」
「何で脱ぐ必要がある」
「田隈さん、スカートを脱ぐならそこの木陰でやればバレないわよ」
「そういう話じゃない」
「俺、19時からバイトがあるから帰っていい?」
「バイト、バレたのにまだやってたの」
「ねーねー、皆ちゃんと話し合おうよー」
「ハナの言う通り……って、あれ?」
「わんわん」
 とまあ、こんな感じ。
「と言うか、ハナが『皆でプチの散歩に行こう』と言い出した時点で何かあると気づかないと」
「コンスたん……」
 ボソリとコンスタンツに呟かれて、言葉に詰まるヒカリ。
「もしかして、兄さんが来ると知ったからついてきたんですか?」
「い、いやその、あの」
 さらにサトリが追い打ちをかける。
このサトリ、カオルの妹ではあるのだが、血は繋がっておらず、義兄妹という繋がり。
で、カオルに対して『異性としての視線』を向けてたりと、ちょっと穏やかでない女の子だったりする。
ヒカリがカオルにちょっと惚れ気味なこともあって、時折ヒカリに対しての当たりがキツくなることがある。
「何、片岡、なんの話?」
「な、なんでもないっ」
 そいでもって、ヒカリの気持ちを全く気付いていないカオル。
容姿はそれなりで、三枚目っぽいが時々言動がイケメンになるという、『お約束的・伝統的な鈍感男』である。
カオル絡みになるとヒカリがツッコマれ側になる、というのはこのやり取りを見れば、まあ容易にわかるだろう。

 ◆ ◆ ◆

431:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
13/12/21 00:48:38.89 djeyeplN
「で、プチのことなんだけど」
「ダルメシアンらしくない、って話ね」
 色々と脱線したが、話が今回の集まりの本道に戻すハナとコンスタンツ。
一見良い行動に見えるが、結局騒動がぐるっと戻ってくるだけなので、ヒカリにとってはあまり喜ばしくない。
「……別に無理しなくてもいいんじゃない? 人それぞれに個性があるように、犬だって性格は一つだけじゃないのよ」
 取りあえず、至極真っ当な意見で収束を図るヒカリ。
「そうですよ。私と兄さんの関係みたいに、縛られないものがあるんです」
「ダルメシアンらしくない、っていうのもそれはそれでいいと思うけどな、俺も」
 続いてサトリ、カオルが意見を述べる。
「うーん、そうかあ……」
「プチがプチらしくあればいい、ということね」
 何か結論らしきものが出そうになっている。
つうか、脱線しなければもっと短い時間でこの集まりの目的が達成されていたであろう。
そうならなかったのは、つまりはこの面子の性格故。
「散歩のルールを守って、きちんと躾をして、そしてかわいがってあげる。これでいいんじゃないかしら」
「うん、そうだね」
 ヒカリ言葉にハナはコクリと頷く。
このあっさり加減が何ともハナらしい。
「でもあんまり嫌がってる時は無理に連れ出さない方がいいらしいぜ。体調が悪いってサインかもしれないし」
「そうね。無理矢理だと楽しめないものね。主従双方の同意とやる気があってこそだもの」
「今は冬だからいいけど、夏なんかは昼を避けるべきだとこの前テレビのアニマル番組で言ってました」
「そうね。焼けた地面で掌と膝がしらを火傷しちゃうし」
「雨の日も注意だってマルミ先生も言ってた。水たまりで汚れると感染症が怖いって」
「そうね。利点は放尿跡がわかりづらいことしかないものね」
「あと、散歩の時間も毎日同じにしちゃダメなんだってさ。こだわりになっちゃって連れてけ、って要求して吠えるらしい」
「そうね。でもまあ昼よりも人目につかない真夜中が基本だろうけど」
「あとウンチの後始末もきちんとしないとダメですよね。プチ、色んなところでしちゃうから注意ですね」
「そうね。屋外でのスカトロは目立つもの」
「あのー、コンスたん?」
 散歩のマナーについて仕入れた知識を披露しあう面々。
だがそこに、不穏なものを感じ取ったヒカリはツッコミを入れた。
その対象はコンスタンツ。
「今は散歩のことを話してるんだけど」
「そうね。散歩のことを話してるわね」
「コンスたん、別のこと言ってない?」
「いえ、散歩のことよ」
「そう聞こえないんだけど」
 眉根を寄せるヒカリ。
彼女の勘が、『また話が脱線しかかっている』と告げている。
それも、良からぬ方向に。

432:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
13/12/21 00:51:30.35 djeyeplN
「最近はネックレスに見える首輪もあるし」
「え? 何、唐突にファッションの話?」
 ヒカリの脳内レーダーが激しく反応する。
このままではヤバい、と。
「田隈君、そういうプレイに興味ある?」
「うーん、相手にキツく当たるようなプレイは俺はあんまり」
「兄さん、別にいいんですよ? そういうのが好きならいつでも私に声をかけてくれて」
「あれ、田隈君ってSよりMじゃなかったっけ」
「おい、やっぱりそーいう話になってんじゃん! プチの話じゃなかったの、プチどこいったの!?」
 ヒカリレーダー、ビンビンに振り切れる。
そう、ボケはボケでもただのボケならまだいい。
だがこの面子、下方面にボケが転がることがあるからやっかいなのだ。
「プチならそこだよ」
「いや、どこいったって所在のことじゃなくて、話の中身のことよ!」
「ヒカリ、いいの?」
「何がよ、コンスたん」
「プチ、片岡先輩のスカートの中に顔を入れようとしてますけど。もしかして寒いから潜りこもうとしてるのかも」
「ぎゃー、やめなさいプチ!」
「あ、片岡、スカート脱ぐなら俺、あっち行ってるから。見ないようにするから」
「しない! 違う! それより田隈君、プチを止めて!」

 夕暮れの公園、ぎゃいぎゃいと騒がしい五人と一匹。
「なー、コンビニでパン買ってきていいか? 何か俺、腹減ってきた」
「なら兄さん、私はミルクティーをお願い」
「じゃあ私はインスタントラーメン。夜食がきれてたので」
「田隈君、フランクフルトを注文していいかなー」
「いや、プチをどうにかしてよ!」
「わん、わん」
 『プチを正しく飼う為のチキチキ大会議・第一回目』が終了するのは、
生活指導員の雨雲先生がこの公園の前を通りかかり、彼らを叱るまで続く。
「プチ、だめだよー。はい、ちんち……じゃなかった、お座り」
「わざとやってるでしょ、ハナ!」

 犬には散歩のルールがある。
人間にも散歩のルールがある。

「ヒカリ、はい、お座り」
「何でよコンスたん! 私じゃないよ!」
「片岡先輩、お座りはきちんとM字開脚でないとダメですよ」
「だからしないって!」
「じゃーコンビニ行ってくるわ」
「田隈君、ちょっと!」
「わんわん、くん」
「プチ、ちょ、ま、そこダメーッ!」

 公共の場では、騒がないこと――。
 

F I N

433:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
13/12/21 00:54:33.36 djeyeplN
以上です。
思えば私が最初にスレに投下したのが確か2005年の1月だったか2月だったか。

……光陰矢のごとし、ですな。
では、いつかまた。

434:名無しさん@ピンキー
13/12/23 11:49:12.44 eTEdaOgI
乙です、よくぞ戻ってこられました!
ちなみにニコ動で今日1700から生徒会第1期の放送を
するそうですよ。

435:名無しさん@ピンキー
13/12/27 01:30:00.99 n730zaqE
乙です!
ピンキリ氏、相変わらず素晴らしいですね。
ぜひ再降臨を。

436:名無しさん@ピンキー
14/01/01 00:03:52.00 0rxzBbfr
あけ
おめこ
とよろ

437:名無しさん@ピンキー
14/01/01 00:10:27.30 DHgJ5dJR
あけ
おめこ
とよろ

438:名無しさん@ピンキー
14/01/01 00:14:10.83 PUGB5wss
あけ
おめこ
とよろ

439:名無しさん@ピンキー
14/01/01 00:38:11.05 jjB29CRt
あけ
おめこ
とよろ

ピンキリさんがんばってて安心した

440:名無しさん@ピンキー
14/01/01 07:16:01.83 Qt8vS/89
あけ

おめこ

とよろ

441:名無しさん@ピンキー
14/01/13 00:05:06.68 Ql2G+72y
スズものこいやあああああああああ

442:名無しさん@ピンキー
14/01/23 08:10:37.38 HwiVUXHa
久しぶりに来たけどwiki1年半くらい更新されてないね…

443:名無しさん@ピンキー
14/01/23 19:10:34.07 gCSXgiZF
スレが2年半で半分しか消費してないんだし問題ないでしょ


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