12/01/05 00:54:27.95 AwuSLiQX
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梅雨も開けた盛夏の強い日差しも軒に遮られて差し込んではこない。
よく晴れて清々しい天気だが、それでも耐え切れない暑さを少しでもしのげるように
蝉の羽のように薄い生絹の単ばかりを着、すっかり熱も引いて
床上げの済んだネコ娘は襖の開け放たれた部屋で風に当たっていた。
蒸し暑い空気を拭うように肌に風が抜けるのが心地よい、
目を瞑って風に身をまかせていると、耳に入ってきたのは聞きなれた声。
「鬼太郎!」「もう、すっかり、いいんだろう?」
鬼太郎が日差しの強い軒下に立っていた、日の光を背にして
全体が濃い影になっているので表情は見えないが、
優しい鬼太郎は会わずにいた間もきっと心配してくれていたのだろう。
「ゴメンね、せっかく来てくれたのに」
「熱が出てたんだろ、仕方ないさ」
そんなことより、大丈夫なら少し歩かないかい と誘われて、ネコ娘も日差しの下へと歩み出た。
※※※
木陰を、水辺を二人で他愛もない話をしながら歩くうち、ネコ娘はあの奇妙な熱のことも、
その間は会わせてもらえなかった事も忘れて明るい笑顔を浮かべていた。
視界が開けると、日差しと木陰とが混じり合う誰もいない美しい浅瀬が姿を表す、
この森はどこも美しいのだが、その中でもネコ娘のお気に入りの場所の一つだ。
水辺へ踏み込んで手を振る鬼太郎を追いかけて着物の裾をめくって水辺へ駆け込むと、
腹を紅色に染めた魚たちが体をきらめかせながら足元を逃げていった。