12/09/23 07:58:45.74 2s3osFvU
>>71
翔の手を取り建物へと足を運ぶ。
学年が二つ上でも、翔の手は自分と同じ大きさしかない。
その小さな手は未だに震えが治まっていない。
(二人は車酔いだって言ってたけど、こんな症状になるものなのかな)
一見もう大丈夫に見えるが、敏感な部分で触れてしまえばその恐怖が、文字通り手に取る様に分かるのだ。
そう、“恐怖”。
自分が知る限り、翔の今の症状に近いのがこの言葉。
(そんな事二人とも気付くと思うけど、何で車酔いだって言ったんだろ…)
車の外で、ハジメと硝子は険しい顔付きで何かを話している。
踵を返し、翔を連れて建物へと入る。
室内は休憩や買い物の客で賑わっている。
まだまだ午前中ではあるが、フードコートも沢山の客で埋まっていた。
何処か落ち着ける場所を探してはみたものの、この状態で翔が休憩するには少々状況が悪いだろう。
「いっぱい、だね」
「そうだなぁ。ま、お茶だけでも飲んで行くか」
やはり給湯器の前にも人だかりが出来ているが、どうやらこちらはサイクルが速い様だ。
「僕が注いでくるよ。ちょっと待ってて」
「おう。悪いな」
「こんな時はお互い様だって。じゃあちょっと行ってくる」
最早列にすらなって無い人混みに紛れ、ハヤトは給湯器に辿り着く。
もみくちゃにされながらも二人分の紙コップを手に入れ、何とかお茶を注ぐ。
他人にお茶をかけてしまわないように細心の注意をはらい、翔の元へと戻る。
「あ、あれ…?」
およそ五分と掛かっていないというのに、元居た場所には翔の姿は無い。
「嘘、どうしたんだろ…。先輩!翔先輩!?」
だがこれだけ人だかりが出来ていると、ハヤトの声では掻き消えてしまう。
何よりお互いが小柄な為にお互いの姿が目認出来無い。
「ハヤト、どうしたの?」
「硝子先輩…。翔先輩が……」
「落ち着きなさい。貴方を見て状況は把握出来たから。わざわざサービスエリアから、何処かその辺に居る筈でしょう」
「そ、そうですね。ハジメさんは?」
「今到着先に電話してる。まだまだ時間が掛かりそうだからね。全く…」