12/09/23 07:52:50.30 2s3osFvU
>>69
思惑通り両親からOKを貰い、翔と一緒に近所のショッピングセンターで買い物を済ませた。
手早く済ませたつもりだったが、建物を出ると既に空は暗くなり始めていた。
決行が翌日に決まってしまった事もあり、二人はその場で解散する羽目になってしまった。
渋々家に戻ると、何と既に母親が荷造りを済ませてくれていた。
これは本当に付いて来るつもりなのではと不安が募りつつも、翌日には自分の見送りに翔の家まで付いて来るだけだった。
とは言え何が入っているのか分かったものでも無い為、結果的にもう一度自分で中身を確かめてはいる。
二度手間感は否めなかったが、案の定何に使うか分からない袋が隠されていたので徒労では無かった。
一際気になったのは、薬品の様に密封されたゴム状の輪だった。
結局、それが何だったのかは聞く機会を失ってしまったが。
(まぁ別に良いか。そんな事より…)
「どうやって海まで行くんですか? それに、ハジメさんは?」
隣で本を立ち読みしている硝子にこれからの経緯を確かめて見ると、「待ってればすぐに分かる」と一言で済まされてしまった。
そしてその数分後、確かにそれはハジメの到着と共に判明する。
「よ、お待ちどおさん」
「ふえぇ…」
余りの納得のいく結果に、思わず奇妙な声が出てしまう。
玄関先に乗用車が停車すると、中からハジメが姿を現したのだ。
しかも運転席の窓から。
「ハジメさん、免許持ってるんだ」
「おうよ。高校卒業してからすぐにな」
「でも、この家には車…」
「仕事仲間に時々運転させてもらってんだ。だから紙じゃ無いから心配すんな」
「い、いぇ…そんなつもりじゃ……」
「良いから、兎に角トランク開けてくれる? 荷物さっさと入れたいから」
得意気なハジメの前に硝子の冷たい一言が鋭く貫く。
対するハジメも「へいへい」と馴れた様子で車のトランクの解錠に移行した。
(この二人って、仲良いのか悪いのか…)
等と微妙な空気が漂ってはいたものの、迷わずに助手席に乗る硝子を一度見てしまえばその考えは邪推だとすぐに解った。
「6時半…。今から出発すれば大体昼辺りには到着出来るかしら?」
「ま、道路次第だわな。んじゃ、お前ら忘れ物無いだろうな?」
「当然!」
「はい。大丈夫です」
「そんじゃ…」
『レッツゴー!!』
その威勢の良い切り出しから5分後、レンタカーショップからハジメの免許証を預かっていると言う電話でおめおめと引き返す事になるとは誰も予想していなかった。
因みに「普通車はATに限る」。