12/09/23 07:51:32.19 2s3osFvU
>>68
「翔は小さい時に一回会っただけだから覚えてるかどうかは分からないが、俺の従弟が旅館の息子でな。さっきそいつからメールで連絡来たんだ。夏休みの残り数日空いてる部屋が出来たから泊まりに来ないかって」
「旅館?」
「そ。おまけにそいつ、近場の海で海の家の手伝いやってるらしいから飯も困らないそうだ」
「すっげぇ。海かぁ…」
海の家があると言う事は、恐らく砂浜なのだろう。
もう翔の瞼には雄大な海原が広がっているのかも知れない。
「ハヤトも一緒に行くだろう?」
「え…良いんですか?」
「なに言ってんだよ。当たり前に決まってるだろ。元々お前と一緒にって話だったんだからさ」
「ありがとう、翔先輩…。じゃあハジメさん、お言葉に甘えて御厄介になります」
ぺこりとハヤトはハジメに頭を下げる。
(お父さんとお母さん、多分許してくれるよね)
若干不安にはなったが、結局はさして問題にはならないだろう。
なにしろいつまで経っても子供心が抜けないような両親なのだから。
寧ろ自分達も連れて行けとすら言い兼ねない。
「じゃあ残りはあいつだけか」
「あいつ…? あぁ無理。今部活で合宿中」
「そうか。だったらどうしようも無ぇな。つー訳だ。二人ともちゃんと準備しておけよ」
「りょーかい」
「はい。ありがとうございます」
軽く頷き、ハジメはゆっくりと扉を閉めた。
「海かぁ。久しぶりだなぁ」
「僕も楽しみ。ところで、あいつって?」
「あぁ、オレの幼なじみ。ま、無理なもんはしょうがないさ。その分オレ達が楽しもうぜ?」
「うん、そうだね」
この時ハヤトが“あいつ”と言う言葉を気に留めなかったのは、まだ翔と出会ってからの日数が僅かばかりに少なかったからだろう。もう少し後であれば、気になって仕方が無いに決まっている筈だ。
「そうと決まれば、まずは買い物だな」
「何で?」
「だって、オレ水着持ってないんだもん」
「学校のは?」
「海でか?」
「………僕も一緒に行く」