11/07/21 02:42:02.66 Z7J0hI8Q
>>11
膝を組んで頬を膨らませているケビンを思わず抱き締めそうになるのをぐっと堪える。
今ここで誰かに見られると、また言い訳が面倒だ。
その上責任者である自分がこれ以上遅れる訳にもいかない。
ここは早くも最終手段に出る事にする。
「そんな事してると、もうボクご飯作ってあげないよ?」
「ふぇ!? や、やだよそんなの」
「だってケビンが来ないなら、ボクの作ったご飯はいらないって事だよね?」
「やだやだやだ! い、行くからそんな事言わないでよぉ!!」
脱兎の如くケビンは立上がり、セシルの手を取る。
「僕もちゃんと手伝うから、早く行こう!」
「はいはい分かったから。じゃあ、ケビンにはいっぱい手伝って貰うからね」
「うぅ…」
「返事は?」
「は、はい!」
少し前を駆けるケビンの後ろ姿を見て、最早イニシアチブと言う物が何よりも似合わなくなっているケビンに少し同情を覚えた。
(でも、こんな風に普通に笑ったり…出来無かったんだよね)
そう思うからこそ、今のケビンが何よりも掛け替えの無く、愛しく思える。
(このままボク達ずっと―)
「じゃあ、これから役割を分けるよ。ボクのグループは野菜を大き目に、ケビンの方は逆にちょっと小さ目に切ってね」
「どうして? 野菜毎に分担した方が良くない?」
「さっきもあったけど、大きさにも好みがあるから。それに、毎回違う大きさに切ってたら感覚が分からなくなるでしょう?」
「あ、そっか」
どうやら先刻の経験が見事に生かされていない様で、セシルは少し先の未来に一抹の不安を覚えた。
今はまだ平気な様だが、またケビンが潰れてしまわない内に進めるのが賢明な様だ。
「俺達はどうすれば良いんだ?」
「じゃあ、君達は野菜の皮剥きお願い出来るかな」
「OK了解」
「ぼくたちは~?」
今になって思うと何故この様な場所に自分達よりもずっと年下の子まで居るのだろうか。
流石に彼達に包丁を持たせる訳にも火の前に置いておく事も下手な力仕事も任せられない。
「そうだね。お兄ちゃん達が野菜の皮を切っていくから、君達はその野菜を持って来て貰う係。そして、切り終わった野菜をボウルに入れて運んでくれるかな」
『はぁ~い!』