11/06/29 15:57:48.59 +shN39gM
あやせは頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、
やがて合点がいったのか顔を林檎のように赤くすると、
「もうっ、どうしてお兄さんの頭の中は、いつもいかがわしいことで一杯なんですか!?」
「相手が他の女ならこうはならない。
あやせ、俺がお前のことを愛しているからだ」
「よく臆面もなくそんな恥ずかしいことが言えますね!
愛を穢らわしい欲望の言い訳に使わないで下さい!
どうせその言葉も嘘のくせにっ!」
変態っ!死ねっ!と盛大に俺を扱き下ろし、
あやせは俺を引き離さんと、ずんずん歩調を上げていく。
ちょいと調子に乗りすぎたか。お兄さん反省。
あやせを追いかけようとしたその時、携帯が鳴った。
受信メール一件。差出人は赤城。
『高坂、あの子とはいつから付き合ってるんだ?
田村さんは知ってるのか?
またバイトが終わったら電話する』
赤城よ、お前の勘違いが現実だったらどれだけ幸せか。
俺は苦笑して携帯のフラップを閉じ、顔を上げた。
「あやせ?」
声は、俄に大きくなった囃子の音にかき消された。
御神輿が大量の担ぎ手と奏者を伴い、行く手の十字路を横断していく。
往来が元の混雑に戻ったとき―、あやせの姿はどこにも見えなくなっていた。
夏祭り(前)おしまい! 続くよ~