【俺の妹】伏見つかさエロパロ20【十三番目のねこシス】at EROPARO
【俺の妹】伏見つかさエロパロ20【十三番目のねこシス】 - 暇つぶし2ch50:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 07:43:18.34 B4wTxXYE
↑取り敢えず
ここの住人は、低能な屑しか残っていないってことが分かったwww

51:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 07:54:22.84 0fDlVSVy
盛り上がってるように見えても本人と便乗嵐の2,3人がID変えてるだけだから無視ですよー

52:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 08:36:29.66 XfgLFJWo
荒らしはスルーが鉄則

53:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 15:39:18.32 Pm/TZ0sl
ギスギスしてる上に過疎ってんな……
投下する気も削がれる人が多いんじゃないか?

54:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 20:23:11.93 NLvb+VdS
そんなことより修羅場い話しようぜ!

55:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 20:30:49.46 kMDfsd3D
>>43
あんな適当な立て方しておいて、伸びる訳ないじゃん。
嫌がらせで立てたとしか思えんのに、そんな所に、誰が行くのよ。
信者どころか、本人すら行かんだろ。

56:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 20:34:55.36 Mexti3JW
自分では建てないくせに文句だけは一人前ですねw

57:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 20:44:19.99 kMDfsd3D
2ちゃんなんて、そんなものだろ。

58:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 21:52:48.59 57vTUzgh
>>39-48

:: /::::::::::/       `゙==彡 /:::::::::,.イ{_              ‘,:::::
:/::::: /                 /::::::/  ー===―- _     ',:::::
::::::: ′   -―==ミ、 ヽ}  /:::/           `ヽ    |::::
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59:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:02:55.52 XfgLFJWo
だれ?

60:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:04:31.64 fnUA8Up+
普段はVIPで書いてるので、エロパロのしきたりとかあまり詳しくないんだけど

・京介×桐乃
・非エロ
・IFストーリー「もしも京介が黒猫の告白を断っていたら」
・20レス程度

投下してもおkでしょうか?

61:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:08:12.20 QOhXFK0n
>>60
早く投下するんだ

62:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:09:00.47 mAzyOXXG
おk

63:1
11/06/24 22:11:28.64 fnUA8Up+
「兄貴、いる!?」

ノックの一つもなしにドアを開け放たれ、
静謐な空気を木っ端微塵にデストロイされたことに業腹を煮やす暇もなく、

「あたしの部屋に来て!」
「……いきなり何だってんだ?」
「いいから!」

俺は物凄い力で腕を引かれ、半ば引きずられるようにして桐乃の部屋に連行された。

「そこに正座」

指先には座布団。
言われるがままに正座する。
桐乃が定位置のワークチェアに座ると、もはや目線の高低差は如何ともし難く、
眼差しの鋭さはどう好意的に解釈しても実兄に向けるべきそれじゃなかった。
白状する。
俺はビビっていた。
今の状況を喩えるなら、岡っ引きに連行され町奉行の御前に座らされた罪人の図、が正しい。
誰が誰役かは言わずもがな。

「なんで黒いのをフッたの?」

と桐乃はズバリ訊いてきた。

64:2
11/06/24 22:12:40.35 fnUA8Up+
「黒猫から聞いたのか?」
「当たり前じゃん、他の誰から聞けるわけ?
 てか、話逸らさないでくれる?」
「…………」

この展開を予想していなかった、と言えば嘘になる。
しかしこの場を穏便に乗り切るためのセリフは悲しいほどに準備不足で、
また上手いかわし文句を即興で組み上げられるほど、俺の口先は器用でもなかった。

「なんでだっていいだろ」
「ハァ?何その言い方。
 あんた、黒いのにも似たようなコト言ったんだってね。
 『理由はうまく説明できないけど、付き合えない』って……バカじゃん?」
「お前にバカ呼ばわりされる謂われはねぇよ。
 黒猫はそれで納得してくれたんだから、それでいいじゃねーか」
「よくないっ!」

案の定、桐乃は可愛らしい八重歯を剥いて噛み付いてきた。

「黒いのが納得しても、あたしは納得できない!」

知ったこっちゃねえ、と返せば足蹴を食らうのは自明の理、

「なんでお前が、俺が黒猫をフッた理由を知りたがる?」
「あたしが黒いのの代わりに聞いてあげてるの!」

65:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:14:03.47 fnUA8Up+
「そうするよう、あいつに頼まれたのか?」

桐乃は視線を四方に泳がせつつ、

「そっ……それは……別に、そういうわけじゃないケド……。
 黒いのだって本当は聞きたかったに決まってるし……。
 だっ、第一、有り得なくない?
 女の子が一生懸命恋の告白したのに、まともな理由もなくフるとかさぁ?」

あんた人の気持ち考えられないの?
バカなの?
死ぬの?
桐乃が繰り出す怒濤の三連撃に、こめかみの血管がピクリと痙攣する。
だがしかし、まぁ待て、俺は誰だ?
桐乃の兄貴だ。その温厚さ菩薩の如しと謳われる好人物だ。
これくらいの暴言笑ってスルーできなくてどうするよ?

「あんた、もしかして超キモイこと考えてない?」
「何だよ、その超キモイことって」
「この前あたしに『彼氏作るな』って言ったから、
 自分も『彼女作らない』なんて誓い立ててるんじゃないの?」
「お前こそ勝手な妄想してんじゃねぇよ。
 なんで俺がお前に遠慮して、彼女を作るのを諦めなくちゃならねえんだ」

66:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:15:03.90 fnUA8Up+
「はぁ!?あんた妹に彼氏出来たらギャーギャー喚くクセに、
 自分が彼女作るのは何の問題もないとか思ってるワケ?
 どんだけ自己中なの?死んだ方がいいよ?」
「お前さっきまで、俺がそういう考え方するのがイヤだって言ってたじゃねえか!
 俺にはキモイと蔑まれるか死ぬかの二択しかねえのかよ!」

口論はいつしか怒鳴りあいに発展していたが、
お袋と親父は福引きで当てた日帰り旅行に繰り出し、終日、家には俺と桐乃の二人きり、
仲裁人の登場は期待できそうになく、
携帯も桐乃の部屋に入ってからというもの頑なに沈黙を守っていて、
誰でもいいから連絡してきてくれよ、という祈りは神への道半ばで潰えたらしい。

「……あんた、黒いののことが好きなんじゃなかったの?」

と不意に大人しい声で桐乃が言った。

「あたしがスポーツ留学してた時は、ずっと黒いのこと気にかけてたんでしょ?
 黒いのを部活に誘って、一緒にゲーム作って、友達まで作ってあげてさぁ……。
 そこまでして、黒いのに惚れさせといて、いざ告白されたら付き合えないって、おかしいじゃん」

こいつめ、ちょっとシリアスな雰囲気を醸せば、
俺がベラベラ本心を話し出すと思っているんじゃないだろうな。
とは言え、ここでつっけんどんな返しが出来るほど、俺は初志貫徹型の人間じゃあなかった。

67:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:16:10.84 fnUA8Up+
「なあ、もう一度訊くぞ。
 どうしてお前は、俺が黒猫をフッた理由にこだわるんだ?」

桐乃はぎゅっと下唇を噛み、しかし今度は目線を逸らさずに、

「あの子が……黒いのが可哀想だからに決まってんでしょ。
 電話では普段通りに喋ってたけど、黒いの、多分泣いてた。
 実際に泣き声が聞こえてきたわけじゃないけど、分かったの」

なぜ分かる、とは訊かなかったさ。
訊いたところで、友達だから、と臆面もなく言い返されていただろうからな。
そして桐乃が言うからには、黒猫が泣いていたというのは真実なんだろう。
約束の場所、校舎裏のベンチで、

『謝らないで。これは予言されていた世界の選択。
 アカシックレコードに刻まれた絶対の理、確定事象なのだから』

首を横に振った俺に、黒猫はそう言ってくれた。
声には自嘲の響きが含まれていて、表情はなぜか愉しげだった。
が、黒猫が心の裡で本当は何を思っていたのかは……今更、言葉にするまでもねえわな。

「あたし、怒らないから」

桐乃は両手を膝頭の上にのせ、固く握りしめて言った。

「兄貴が黒いのをフッた理由、ちゃんと聞かせて?」

68:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:16:46.08 fnUA8Up+
選択肢は三つある。

1.今すぐ無言でこの場から立ち去る
2.強引に煙に巻く
3.自分でもイマイチ整理できていない本心をぶちまける

1番は完全な悪手だ。
桐乃と俺の関係は悪化の一途を辿り、事態解決のために、やがて3番を選択せざるを得なくなる。
2番も妙手とは言い難い。
張りぼての嘘はすぐに見透かされてしまうだろうし、応急処置はしょせん応急処置で、
やがては3番を選択せざるを得なくなる……あれ、このゲーム最初からルート決まってね?

「すぅーはぁー」

と深呼吸をひとつ。なあに、そう気負うな京介。
ぶちまけたところで人生が終わるわけじゃない。

「俺が黒猫をフッた理由は……」

ほら、後の祭りを楽しんでやる気で言っちまえ。

「……お前だ」
「お、お前って……あたしの、こと……?」

69:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:17:42.51 fnUA8Up+
ああそうだ。その通りだ。
桐乃、お前以外の誰がいる。

「やっぱり、あたしのせいだったんだ」

桐乃は悄げた様子でそう言い、一転、俺を睨み付けると、

「さっきも言ったと思うケド……。
 あたしに彼氏を作らせない代わりに、自分も彼女を作らないとか、
 そーいう下らないルールで自分を縛るの、やめてよね。
 あたしはあんたに彼女ができようができまいがどうだっていいし、
 黒いのとあんたって厨二病と地味顔で相性良いと思うし、
 ワケわかんない女に誑かされるよか、黒いのと付き合う方がずっとマシだと思うし……。
 とにかく、ホントに余計なお世話だから……だから……」

締めさせねえ。

「余計な世話してるのは、お前の方だっつーの」
「なっ」

桐乃が再び八重歯を剥いたところで、俺は正座を崩し、傍らのベッドに腰掛けた。
普段なら「勝手に座んな!」と激怒されて然るべき行動だが、
お前と目線の高さを同じにするためだ、今くらい許してくれよ。

70:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:18:37.04 fnUA8Up+
「俺は黒猫に告白されて、嬉しかったよ。ものすげえ嬉しかった」

後輩の見目麗しい女子から、慕情の丈を告げられる。
そんな、思春期の頃からボンヤリと夢見ていた、青春の理想が叶った瞬間だった。
しかも相手は前々から好意を懐いていた黒猫だ。
正直に言う。天にも昇る心地だったね。
でもな、そんな舞い上がってる状態で、エロゲなら選択肢さえ現れない状況でも、
脳裏にはお前の姿があって、気づけば俺は、黒猫にノーを突き付けていたんだよ。
お前に『彼氏を作るな』と言った手前、俺が彼女を作るわけにはいかない?
そんな理屈をこね回している余裕が、あの時の俺にあるわけねーだろ。
俺は徹頭徹尾、直感で動いた。
その結果がコレだ。

「そ、そんなの理由になってない!
 あたしが頭の中に思い浮かんで、それでいつの間にか黒いのをフってたとか……」
「だから最初に言ったはずだぜ。
 理由は上手く説明できない、ってよ。
 でもまぁ、あれから俺なりに心を整理して、
 もしかしたらこうなんじゃねえかな、って仮説は立ててある」

他人事っぽく言ってるが、こればっかりは自分で自信が持てないのだから仕方ない。

71:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:19:41.85 fnUA8Up+
現実的には十秒、体感的にはその数倍の時間が流れ、

「……仮説って?」

と桐乃が言った。

「俺はお前のことが好きなのかもしれない。
 妹としてじゃなく、一人の女としてな」

と俺は言った。
言葉は喉元で詰まることなく、滑らかに舌と唇を経由して、部屋の空気を震わせた。
意外と抵抗なくできるモンだな。
実妹への告白もどきも。
達成感にも虚脱感にも似た感覚をしみじみと味わう俺を余所に、桐乃はぶるぶると肩を震わせていた。
実の兄貴から性的な目で見られていることを知ったんだ、感慨もひとしおだろう。
もちろん、悪い意味でだが。

「………っ……」

鼻を啜る音が聞こえた。
俯いた桐乃の目から、ぽつりと透明の雫が落ちる。
ティッシュを取って拭ってやりたいところだが、拒絶されるのは目に見えていた。
むしろ半径五メートル以内の存在を許されている今この状況が奇跡と言える。
マジキモイ、ホンットキモイ、死んで、今すぐ死んでと罵詈雑言を浴びせかけられ、
部屋に存在するありとあらゆる縫いぐるみを投げつけられた挙げ句、
鋭いパンチとキックの猛襲を浴びて這々の体で桐乃の部屋を逃げ出した俺は、
数分後に駆けつけたあやせに半殺しに遭い、
数時間後に駆けつけた両親から離縁状を突き付けられる……ところまで想定していたんだが。

72:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:20:27.99 fnUA8Up+
「……いつから?」

自主退室しようとした折だった。
蚊の泣き声レベルの声が聞こえてきたのは。

「いつから、あたしのことが好きだったの?」
「さあてな。
 お前をアメリカまで連れ戻しに行った時は、もう好きだったんじゃねえか。
 普通いねーだろ、寂しくて死にそうだから帰ってきてくれ、なんて言う兄貴なんてよ」

俺は他にも、桐乃をただの妹としてではなく、一人の女として見ていた記憶を思い出す。
好きなのかもしれない?
アホらしい。
今更保険をかけた言い方はよせ。滑稽極まりねえぞ。
俺は桐乃が好きなんだ。愛しているんだよ。
正常な恋愛の先駆けとしての、黒猫からの告白を断っちまうくらいにな。
さて突然ですがここで問題です。
実妹への恋心を自覚し、あまつさえその想いを告げた変態兄貴が、次に取るべき行動は何でしょうか?

「来年の春になったら、俺はこの家を出て行く」

答え。妹から、物理的に距離を置くこと。

「だからあと半年だけ、我慢してくれ。
 俺が大学に受かって、親父から一人暮らしの許可を貰うまで―」
「ま、待って!」

73:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:21:14.36 fnUA8Up+
桐乃は乱暴に涙の痕を拭いながら、

「一人暮らしするって、どういうこと?
 そんなの、あたし聞いてない。なんで?
 地味子と一緒に受ける大学、家からでも十分通える距離にあるじゃん。
 なんでわざわざ家を出てくの?」

おいおい、それをお前が訊くのか?

「一人暮らしすること自体は、結構前から考えてた。
 家事とか色々大変だろうけど、将来的には良い経験になるだろうってよ……。
 でも、今ちゃんとした理由が出来たんだ。
 俺はお前を怖がらせたくないし、怖がられたくもない。
 そんな関係が続くくらいなら、潔く実質的な縁を切った方がいいだろ?」

大学生になったら、何か打ち込めるものでも見つけて、お前のことは忘れるさ。
帰省もお前が家を空けてるときにするし、
お前が望むなら、二度とこの家の框を踏まないと約束してやる。

「……じゃん」
「ん、何か言ったか?」
「バカじゃん、って言ったの!
 あたしの気持ちも知らないで、一人暮らしするとか、
 あたしを怖がらせたくないとか、勝手なコトばっか言っちゃってさ」

74:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:24:55.43 fnUA8Up+
桐乃はもじもじと内股を擦り合わせながら、

「あんたは自分だけが、本当はいけない感情を持ってて、
 そのせいであたしに引かれてる、って思ってるのかもしれないケド……。
 ほ、ホントはね……あた……あたしも……」

言葉尻を切り、上目遣いに見つめてくる。
可愛い―じゃなくて、どうしてそこで口を閉じる?

「もうっ、これだからあんたは……最後まで言わなきゃ分かんないワケ?」

馬鹿正直に肯く俺。
このとき俺の脳味噌において、両思いの可能性は完全な埒外にあった。
人の機微に鈍い鋭い以前の問題である。
果たして桐乃は、首筋から顔にかけてを赤く染めながら言った。
その朱色でさえ、俺はセリフを耳にする直前まで、マイナスの感情によるものと信じていた。

「あたしもね、兄貴のことが………………好き、かも」
「は?」

今、現実に耳にできない言葉ランキング堂々の第一位が聞こえた気がしたが。

「ちゃんと聞こえた?」

夢じゃないよな。現実だよな。

75:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:25:45.06 fnUA8Up+
誇張表現の一つである『ほっぺをつねる』をリアルに実行し、
鮮烈な痛みに顔をしかめたあと、俺は桐乃が羞恥に身悶えしていることに気が付いた。
タコの縫いぐるみを胸に抱き締め、濡れた目で俺の反応を伺っている。
え、何この可愛い生き物。

「……聞こえた」

ああ、聞こえたとも。
小躍りしたい気持ちを必死で抑え、目頭に熱いものを感じ、
手をやれば熱い雫の感触、俺は自覚がないうちに泣いていた。
ついでにこんなことも尋ねていた。

「いつから?」

奇しくもそれはさっき桐乃にされた質問と同じで、桐乃はクスッと笑いつつ、

「あたしは物心ついたときから、兄貴のことが好きだったよ。
 でも、それはあくまで兄妹としての好きで、
 兄貴のことを……その……男女的な意味で好きになったのは、
 去年、兄貴がお父さんからあたしの趣味を護ってくれたときだと思う」
「全然気づかなかった」
「当たり前じゃん。ずっと、隠してたんだから。
 モデルの演技力ナメんなっつーの……なんてね?」

桐乃の言葉に角はない。
甘えるような口調は、もう何年も昔の幼い桐乃を思い出させた。

76:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:26:20.73 fnUA8Up+
「何度も兄貴に伝えようと思った。
 でも、失敗したときのことを想像したら、怖くてできなかった。
 気持ち悪がられたらどうしようって、引かれたらどうしようって……。
 ねえ、もしも兄貴が、一年前にあたしに告白されてたら……なんて答えてた?」
「その時はまだ、お前のことは生意気な妹としか見てなかったからな。
 多分、普通の兄妹でいよう、って言ってたと思う」
「そっか。じゃあ、我慢して正解だったんだ」
「でもな、もしあの時お前の気持ちを知ったところで、
 本気で気持ち悪がったり、引いたりはしなかったと思うぞ。
 むしろお前の気持ちに応えてやれない自分が、イヤになったんじゃねえかな」
「ふーん……じゃあ、どっちでも良かったんだね。
 兄貴に気持ちを伝えて、だんだん好きになってもらうのも、
 兄貴があたしのことを好きになって、気持ちを伝えて来るのを待つのも」

桐乃はしみじみと言い、昔を懐かしむような顔になって、

「あはっ、あたし、都合の良いことばっかり言ってる。
 そういうのは、今だからこそ言えることだよね。
 あんたのことが好きだって気づいた時は、自分で自分が許せなかった。
 報われない恋心なんか持ってても仕方ないじゃん、って自分に言い聞かせてた。
 でも、忘れようと思えば思うほど逆効果で、
 最近は自分でも、ワケ分かんなくなっちゃってたんだ。
 あんたに自分の気持ちを気づいて欲しいって気持ちと、
 あんたが黒いのと結ばれたら諦めがつくんじゃないかって気持ちが、ぐちゃぐちゃに入り交じって……」

楽になりたかったの、と桐乃は言った。

77:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:27:15.06 fnUA8Up+
「黒いのが告白して、あんたがそれにオーケーして、それで終わり。
 あんたがあたしのために黒いのをフるなんて、絶対有り得ないと思ってた」
「けど、これが現実だぜ」
「うん……そだね。ってか、あんたいつまで泣いてんの?」

桐乃は椅子から立ち上がり、ティッシュの箱をとって、俺の隣に腰を下ろした。

「はいコレ」
「ありがとよ」

二、三枚ティッシュを重ねて鼻をかむと、
通りのよくなった鼻孔を、桐乃の匂いがくすぐった。
隣を見れば、ライトブラウンの髪に縁取られた瓜実顔。
胸元を覆うは薄手のTシャツ、ホットパンツから伸びた足は健康的な肉付き。
これまでは極力意識しないようにしてきた桐乃の女としての部分が、
今、抗いがたい魅了の魔法でもって、俺の本能に襲い掛かる。
クソッ、鎮まれ、俺のリヴァイアサンよ。
いくら今が絶好のシチュエーションとはいえ、超えちゃいけない一線ってモンがある。

「ねえ、兄貴」
「な、なんだ」
「これからどうするか、考えてる?」
「どうするって……どうもこうもしねえだろ」

78:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:27:54.76 fnUA8Up+
桐乃は頬を膨らませると、

「これまで通りってこと?
 あたしは兄貴のことが好きで、兄貴もあたしのことが好きなのに、
 普通の兄妹のままでいるワケ?」

この子はいったい何を言っているんだろうね。
気持ちが通じ合おうが俺と桐乃が兄妹であることには変わりないだろうが。
誰かに『俺たち(あたしたち)恋人になりました☆』と報告でもするのか?
親父に言ってでもしてみろ、女のお前はともかく、俺はグーで殴られる自信があるぞ。
あやせに至っては、全てを言い終わるまでに息の根を止められている目算が高い。

「みんなには秘密にするに決まってるじゃん。
 大抵の人は、兄妹でそんなの、おかしいと思うに決まってるし。
 あたしが言ってるのは、そうじゃなくて、
 他の人が見てないところでは……こ、恋人みたいに振る舞っても問題ないよね、ってこと」
「ああ」

と肯いてみたはいいものの。

「…………」

恋人みたいな振る舞いが具体的に何を指すのか、互いに想像を巡らせ、沈黙する。
脳裏を過ぎるのは、これまで散々意識してきた、漢字四文字の禁断行為。
俺は無言でベッドから立ち上がった。三十六計逃げるにしかず。
このままなし崩し的に、というエロゲ的展開は何としても避けねばならぬ。
いやマジで。俺の心の準備的にも。

79:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:29:36.54 fnUA8Up+
「……どこ行くの?」

掠れた声が、ドアノブに手をかけた俺の後ろ髪を引いた。

「自分の部屋だ」
「ねえ、今日は遅くまで、お父さんもお母さんも帰ってこないよね?」
「ああ」
「じゃあ……」

途切れる言葉。
確実に桐乃は誘惑してきている。
振り返ったが最後、俺は本能に忠実な獣に成り下がるだろう。
心の悪魔が囁いた。
別にいいじゃねえか。何を躊躇う必要がある?
据え膳食わぬはなんとやらだ。ここで逃げれば男が廃るぜ。
俺はゆっくりと振り返り―。

「エロゲーしよっ?」

―満面の笑顔で、しすしすスペシャルファンディスクを掲げる妹の姿を見た。

「はっ」

溜息が出たね。
が、その溜息の内訳は、安堵九割落胆一割で、いつしか邪な思考は跡形もなく消えていた。
何も急ぐことはないんだ。時間ならたっぷりあるんだからな。

「やるか、エロゲー」

先に予習を済ませておくのも、悪くはないさ。


おしまい! 続くかな~?

80:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:32:24.88 ojYht9QR
GJなんだよ
良いもの読ませて頂きました
最後吹いたw

81:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:38:07.19 P7Vt15UR
GJ!
面白かったです

82:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 22:59:44.42 6lBA5h7S
面白かったよ
しっかりオチもついてたしねw
VIPで何書いてたの

83:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 23:04:52.74 qazFDCun
gj
この調子ならすぐにエロゲ的展開になるなw

84:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/24 23:08:06.85 ScMDZxxE
>>79
何これ泣いた
GJ!!

85:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 00:15:04.39 iMD4Hfmb
加奈子×京介が読みたい!!!

86:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 00:20:26.04 OkIa5F74
GJ!
王道来ましたね。オチで転けましたけど。w


87:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 00:24:38.72 Q8xUePHq
>>79
挿絵を描かせて

88:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 00:31:22.62 2yKFeylF
>>63-79
最後がよかった。
想いっきり笑えたよ。
いや、馬鹿にしてじゃなくて。
今週一週間の疲れがふきとんだぜ。


89:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 01:15:20.67 947XGAmn
>>79
なんか原作も諸々の問題片付けてこんな感じでスパッと終わったらいいなと思った
ありがとう。いいもの読ましていただきました

90:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 02:30:53.35 aFQAVsIW
SLさんに対する嫉妬が酷すぎる

91:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 03:01:28.38 +dZsve2z
SLって‥‥‥誰?

92:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 03:08:48.70 TiOzbrWx
>>79
GJ!
エロシーンを期待した自分が恥ずかしい…

93:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 05:13:18.32 e06kWRTL
>79
すごいな
キャラが原作っぽく感じられた
愛があるとこういうの書けるんだよなあ
感服しました。
また書いてよ。

>87
あんたにも期待しちゃうぜ

94:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:33:41.23 Bmk3nC4P
好評頂けたようなので
勢い余って続き書いてしまった

>>79の続き
・桐乃×京介
・微エロ
・15レス程度

投下してもおkでしょうか?

95:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:35:27.40 r07Xe3JM
>>94
今日は暑いので全裸待機しても問題ないよね?是非お願いします!

96:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:36:49.28 Bmk3nC4P
燦々と降り注ぐ灼熱の日差し。
焼けた砂浜は柔らかい白。
打ち寄せる波は透き通る青。
夏で、海だった。

「兄貴ー、こっちこっちー!」

俺がぶらぶらと散歩をしている間に着替えを済ませた妹が、
ビーチパラソルの影から飛び出してくる。
黒のビキニと白の素肌のコントラストが眩しい。

「どお、似合ってる?」
「ああ、可愛いぞ」

妹は顔を綻ばせ、波打ち際に走り出す。

「競争だよっ」

俺はジーンズとTシャツを脱ぎ(水着は元々穿いてきていた)、妹の背中を追いかけた。
結果は惨敗。
くるぶしを海水に浸し、涼に気を緩めた俺を、水飛沫の洗礼が出迎える。

「あははっ、兄貴ってば、走るの遅すぎィ。食らえっ」
「うわっ、マジやめろって……こんにゃろ」

97:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:37:30.38 Bmk3nC4P
俺は水飛沫を返しつつ、猛攻を避けつつ、妹との距離を詰めていく。
そして―。

「悪さをするのはこの手か?」
「やっ、離してよぉ。もうしないからぁ」

言葉とは裏腹に、妹は抵抗する素振りを見せない。
濡れたライトブラウンの髪が、妹の額に張り付いていた。
それを取り払ってやりながら、ごく自然に、唇を合わせた。

「んっ……はぁ……っ……」

軽く舌を絡ませる。
交わした吐息は、夏の空気よりも熱く湿っていた。
妹は銀色の橋架を指先で切りながら、

「……海の味がした」

これまた詩的なことを言う。
俺は原因を言ってやった。

「お前にさんざ海水をぶっかけられたからな」
「あはっ、それもそうだよね」

98:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:38:39.76 Bmk3nC4P
妹は無邪気に笑い、俺の胸に抱きついてくる。
普段なら優しく頭を撫でてやるところだが……露出した肌と肌の触れあいが、否応なく性欲を刺激する。
俺は……。

1.せっかく海に来たんだ。泳がなくてどうする。
2.りんこへの愛を抑えることはできない。

―ここまでエロゲ。
しすしすスペシャルファンディスクの主人公と義理の妹りんこりんの物語である。
一応訊いとくが、まさか俺と桐乃の物語だと勘違いしてたヤツはいねえよな?

「どっち選ぶの?」

と桐乃が催促してくる。
そう慌てるな。
俺は淀みなくマウスを動かし、1番を選択した。

「……………なんで?」
「そりゃあ、海に来たんだから、泳がなくちゃ損だろうが」

というのは建前で、2番からは危険な香りがプンプン漂ってくるからである。
妹と一緒にエロゲーのHシーンを鑑賞したところで、死ぬほど気まずいだけ。
一年前はそう思っていた。
が、ここ最近、特に俺たちの肩書きが兄妹と恋人(←new)に更新された一時間ほど前からは、
一年前とは別の意味で、Hシーン回避に全力をかけている俺がいる。

99:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:39:30.35 Bmk3nC4P
「でも、なんでこんなところに選択肢があるんだろうな」

大抵のファンディスクは一本道じゃないか、と素朴な疑問を口にすると、桐乃は不満げに唇を尖らせて、

「エロゲーにも色々あるでしょ?
 純愛ゲーとか抜きゲーとか。
 しすしすはどっちかって言うと純愛ゲーで、Hシーン飛ばしてる人も多いんだよね。
 そういう人に配慮したんだと思う。
 あたしには理解できないケド」

あのー、エロゲって基本、男性向けですよね?
妹萌え成分を日常描写から補給するのはまだ理解できるとして、
女のお前がHシーン見て何が楽しいんだよ。
お前もしかしてアレか、主人公に自己投影して、ヒロインを犯す気分を味わってるのか……。
と訊くまでもなく、桐乃は答えを言ってくれた。
柳眉をいっぱいに逆立てて。

「Hシーン飛ばす人は、しすしすの魅力を何も分かってない!
 だってだって、快楽に身悶えするりんこりんの表情、ホンットに超可愛いんだよ!?」

オーケー、お前の魂の叫びはとくと伝わった。
だがもうちっと声のトーンを抑えような?
家に親父やお袋がいたら、確実にすっ飛んできてたぞ。

100:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:40:17.64 Bmk3nC4P
それからしばらくは平穏な日常描写が続いた。
主人公とりんこりんは色々な場所に出かけ、夏を目一杯満喫した。
作中に漂う雰囲気的に、エンディング間近といったところで、

「もっと早くにプレイすれば良かった」

と桐乃が呟く。

「このファンディスクが発売されたのはいつなんだ?」
「先月の初めくらい、かな」
「意外だな。お前がしすしすの続編を一ヶ月も積んでたなんてよ」
「んー……色々と忙しかったからね」

リアの来日に偽装デート、コミケ遊覧に御鏡襲来と、確かにイベント盛りだくさんだったな。
でも、それとなく時間を見つけてプレイすることは出来たんじゃねえか?

「あ、あたしは……兄貴と一緒にやりたかったの。
 しすしすはたくさんあるエロゲの中でも、特に思い入れのある作品だし?」
「桐乃……」

俺はじんと来ていた。
傍から聞いてりゃトチ狂った兄妹と思われても仕方ないが、今更恥も外聞もねえ。
桐乃可愛いよ桐乃。

101:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:41:11.36 Bmk3nC4P
内心の倒錯的な愛情を紳士的な台詞に変換し、

「なかなか構ってやれる暇が作れなくて悪かった。
 でも、お前も遠慮すること無かったんだぜ」

いつもみたく部屋に飛び込んで来て、
『エロゲーしよっ!』と俺を引きずって行けばよかったんだ……。
いや、ここ最近は偽彼氏事件が尾を引いて、険悪なムードが続いていたんだっけか。
桐乃はディスプレイに視線を戻し、

「……夏、もうすぐ終わっちゃうね」

ゲーム内時間は、八月の終わり。
現実時間は、八月の半ばを過ぎたあたり。
常日頃からニブチンと叩かれてやまない俺も、このときばかりは言外の意図を察したさ。

「何言ってんだ。
 夏休みはまだ二週間近くも残ってるじゃねえか」

遊園地に海にプールに花火大会に流星鑑賞、夏の風物詩を楽しむ時間に不足はねえよ。
この主人公の受け売りみたいでイヤだが、

「行きたいところがあるなら言え。
 どこでも連れてってやる」
「どこでも?」
「ああ、どこでもだ」
「じゃあ、海がいい。
 撮影の時に使った水着、何着かもらってて、それが超可愛くてさぁ―」

102:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:41:54.76 Bmk3nC4P
桐乃の話に相槌を打ちながら、俺はマウスをクリックする。
街での買い物を終えた主人公とりんこりんは、手を繋いで帰路を歩む。
流れるはひぐらしの清音、背後に伸びる影法師は細く長く。
『いつまでも一緒だよ』と最後に互いの想いを確かめ、画面が暗転、Endの三文字がフェードイン。
佳境もなく、劇的なオチもなく……。
そんな、純愛日常モノのファンディスクにしてはありきたりの最後を予想していた。
結果から言う。
エロゲはやはりエロゲだった。
帰宅した主人公とりんこりんは、買い物袋を床に置き、一息吐いたところで見つめ合った。

『ねえ……あたしたち最近、シてなくない?(←りんこりん)』

そりゃそうだ。
Hシーンに繋がりそうな選択肢は徹底的に避けていたからな。
どうせ今回もH回避用の選択肢が用意されているんだろう、とクリックを続けると、

『あたし、もう我慢できない(←りんこりん)』
『俺もだ。好きだ、りんこ(←主人公)』

最後の最後の不可避H……だと?
おい待て、性欲に溺れるのはやめろ!
俺の心の叫びも虚しく、画面にはピンク色のエフェクトがかかり、立ち絵は美麗CGに変化する。
流石は本編で初H経験済みの二人とあって、
あれよあれよという間にりんこは生まれたままの姿に早変わり。
ゴクリ、と喉を慣らす音が重なった。

103:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:42:42.20 Bmk3nC4P
マウスにかけた指先が止まる。

「先、進めないの?」
「いいのか、進めても」

俺の本能の箍が最後まで壊れない保証はできねえぞ。
あと無意識でやってるのか知らんが、内股をもじもじと擦り合わせるのはよせ、
それ女の扇情的な仕草ランキング審査委員特別賞を受賞するレベルの仕草だから。
桐乃は平静を装っているのがバレバレの声音で、

「こ、ここからが良いトコでしょ。
 あたしに言わせれば、なんで今まで避けてきたの、って感じ」
「……分かったよ」

どうなっても知らねえからな。
俺は設定で『オートモード』を選択する。
よほど溜まっていたらしく、前戯もそこそこに主人公は挿入を開始した。

『匂い立つ雌の匂いに目眩がした。
 濡れそぼった茂みを掻き分け、秘蜜の源泉たる割れ目を探し当てる。
 軽く腰を突き出しただけで、一物はいとも容易く呑み込まれた。
 ぴっちりと絡みつく肉襞は、喩えるなら飢えた獣だ。
 一刻も早く精を絞り尽くさんと、蠕動の妙絶にて一物を攻め立ててくる。(←主人公モノローグ)』
『あぁっ……いいよっ……兄貴、もっと動いてっ……もっと激しくしてぇっ……!(←りんこりん)』

序盤からクライマックスである。

104:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:43:51.64 Bmk3nC4P
文章やCGからは目を逸らせても、如何ともしがたいのがエロボイスで、
りんこりんの艶やかな嬌声を聞かされてリアルの一物が反応しないヤツは、
聖人君子か不能者くらいだろうよ、と俺は誰ともナシに言い訳する。
つまるところ、俺は勃っていた。
それとなく片膝をついてテントを隠し、バレてないよな、と隣を見れば、
桐乃はハァハァと呼吸を荒くしてりんこりんの肢体に魅入るでもなく、
顔を真っ赤に上気させ、両手を内股に挟み込み、切なげな呼気を漏らしてこちらを伺っている。
ああ、クソ。
ただでさえ理性が飛びかけている時に、反則行為の三点セットときたもんだ。
心頭滅却すれば火もまた涼し、と故人は言ったが、そいつ結局焼死してて説得力に欠けるから困る。

「しても、いいよ?」

と不意に桐乃が言った。
目的語不在の言葉に、想像の両翼は自重を知らずに羽ばたき始める。

「兄貴も男だし、あ、あんまり我慢するのも体によくないと思うし」

それにさ、と桐乃は俯いて言う。

「さっきも言ってたじゃん。
 あたしたちの他に誰もいないときは、恋人らしいことをするって……」

105:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:44:36.48 Bmk3nC4P
親は日帰り旅行で不在。
俺たちは家に二人きり。
傍らには清潔なベッド。
恋人っぽいことをするには絶好のシチュエーションだ。
これ以上は望めない。
またしても心の悪魔が囁く。
今犯さずしていつ犯す?
心も体も準備万端、押せば倒れる脆さを晒す女を前に、逡巡はどこまでも無価値だぜ?
……応とも。
まったくもってお前の言うとおりだ。
今まで何を悩んでたんだか、自分が馬鹿らしくなってくるね。
理性よさらば。
本能よこんにちわ。
俺は桐乃に覆い被さりかけ―。

「してもいいよ……キス」

―目を瞑り、薄桃色の唇を突き出す妹の姿を見た。
え?……キス?キス、だけ?
あー……あっはっはは、そうですよね、いや、うん、分かってたよ、
恋人らしいことと言えば、チューに決まってるじゃないか、もちろん俺は最初からそのつもりだったさ。
とまあ白々しい言い訳はここまでにして、たとえキスでも、
俺たちの肩書きを鑑みれば、栄えある背徳的行為第一号には変わりない。
緊張と興奮に脳髄が痺れた。
が、次の瞬間には、俺は桐乃の唇に、自分のそれを押し当ててていた。

106:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:45:21.62 Bmk3nC4P
「んっ……」

妹とキスしている。
非現実的な現実は、不思議とあっさり飲み込めた。
舌先で閉じた唇を割り、桐乃の舌を探し当てる。

「っ……ぁ……ふぁ……」

ここまでされるのは予想外だったんだろう。
桐乃は驚きに大きく目を見開きながらも、
数秒後には、自分から舌を絡めてきてくれた。
淫靡な水音が響く。
唇と一緒に唾液を吸い、舌で口蓋を蹂躙する。
このとき既に俺の脳味噌は完全に出来上がっていて、
手は桐乃の後頭部から、着々と胸へと南下しつつあった。
ヤバイ。止まらねえ。
桐乃も止めろよ。
許すのはキスだけで、最後までするのはイヤなんじゃないのかよ。
指先が至上の弾力に触れる。

「あっ……」

さあ平手打ちしろ。渾身の力で俺を突き飛ばせ。
果たして桐乃はピクリと身動きしたのみで、
ああ、なんてこった、暴走は看過されちまった。
もはや俺を阻むものは何も無い。
俺はそっと桐乃に体重をかけ、本格的に南方侵略を開始した。

107:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:46:15.07 Bmk3nC4P
その時だった。

「ただいまー。桐乃、京介、二階にいるのー?
 お母さん帰ってきたわよー」

脳裏を過ぎるは、最悪の未来。
まぐわう息子と娘を目撃したお袋は、まず絶句し、次に親父の名を叫び、最後に卒倒するだろう。
俺たちは迅速かつ的確に行為の証拠隠滅を完遂した。
即興のコンビネーションは血の繋がりが成せる業か。
トントン。

「入るわよー?」
「は、はぁい」
「桐乃ー、京介どこにいるか知らない?……って、あんた桐乃の部屋で何してるの?」
「桐乃に勉強見てくれって頼まれてさ。
 夏休みの宿題で難しいところがあったみたいで……な、桐乃?」
「そっ、そうなの!
 理科の先生が超意地悪でさあ、有り得なくらい難しい宿題を出してきたんだよね」

お袋はジト目で俺たちの顔を交互に見遣り、

「ふぅん、桐乃が京介に宿題を手伝ってもらうなんてねえ……いつ以来かしら」

108:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:47:15.78 Bmk3nC4P
これ以上追及されたらボロが出る。
そうなる前に、と俺は訊いた。

「お袋たち、帰りは遅くなるんじゃなかったのか?」
「それがねえ、あの人、急に職場から呼び出さちゃって、
 一人で温泉を楽しむのもアレだし、帰ってきたのよ」

なるほど、さっきから親父の気配を感じないのはそのせいか。
幸いなことにお袋に長居するつもりはなかったようで、

「京介、あんた桐乃に勉強教えてあげるのはいいけど、変なことしちゃダメよ」

と釘を刺して出て行った。
俺は桐乃と顔を見合わせ、深い深い息を吐く。
お袋は冗談で言っていたのだろうが、ついさっきまで俺たちは「変なこと」の真っ最中だったのだ。

「ふふっ、危ないトコだったね」

ここで笑えるお前の胆力に感心するよ。
ピンク色のムードはどこへやら、緩慢な空気が流れる。
桐乃はおもむろに唇に人差し指の腹を当てると、

「さっきの……ファーストキスじゃなかった、って言ったらどうする?」

109:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:48:20.15 Bmk3nC4P
「別に……どうもしねえよ」

お前も中学三年生だ。
兄妹関係が冷え切っていたときに、
彼氏の一人や二人いたとしても、今更怒りやしないさ。

「ぷっ、兄貴ってば、すっごい顔が強張ってる」
「うるせえ」
「あたしのファーストキスを奪った誰かに嫉妬してるんだ?」

こいつめ、なんでこんなに嬉しそうなんだ?
俺の心をナイフで抉るのがそんなに楽しいのか。

「やっぱり忘れちゃってるんだね」

何を。

「小さい頃に、キスしたこと」

誰と誰が。

「あたしと兄貴が」

マジで?

「うん。今日みたいに、あたしと兄貴がお留守番を任されたことがあって、
 そのときに二人でテレビ見てたら、ちょうど昼ドラが流れてたの。ドッロドロのやつ」

110:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:49:17.65 Bmk3nC4P
止めろよ、当時の俺。
なぜ桐乃の目を覆って子供アニメのビデオをセットしてやらなかったんだ。

「そんなに過激なシーンは無かったよ。
 あっても、精々キスくらい。
 それでね、あたしもあんたも、その頃は全然そういうことを知らなくて、
 二人で実際にやってみない?ってことになったの」
「どっちが言い出したんだ?」
「……あ、あんたに決まってるじゃん」

怪しい。
が、今言及すべきはそこじゃない。

「それがお前のファーストキスか」
「うん。でも、あたしが言うのもなんだけど、あんなのはファーストキスのうちに入らないと思う。
 半分、遊びみたいなものだったし、あんたは次の日には忘れちゃってたし……」

なぜ恨めしげな目でこちらを見る。
俺は言った。

「それじゃあ、実質的なファーストキスはさっきの、ってことでいいのか」
「うん。そだね……それでいい」

111:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 13:50:19.17 Bmk3nC4P
桐乃はクスリと笑い、冒頭のりんこりんの台詞に準えて言った。

「……ソースの味がした」

これまた散文的なことを言う。
俺は原因を言ってやった。

「昼飯に焼きそばを食べたからな」
「あはっ、それもそうだよね」

それから俺たちは、ひとつ約束事をした。
次に恋人らしいことをするときは、事前に歯を磨いておこう、ってさ。



おしまい! 続くかな~?

112:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 14:25:18.12 +dZsve2z
GJだ、このまま続けてくれ

113:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 14:45:12.80 XKpomXpV
>>111
乙!キスの下り勃起した

もしかしてあやせ、結婚しよう書いた人?


114:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 14:50:17.25 HKkX6ACw
>一応訊いとくが、まさか俺と桐乃の物語だと勘違いしてたヤツはいねえよな?

そ、そんな奴はいないよ。全然いないよ

115:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 15:04:58.78 yqPFh7Pr
糞スレ

116:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 15:06:06.96 r6w/9VLq
なんという王道寸止めw
だがやはり王道は面白いwGJ!

117:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 15:28:30.73 sUvBrtTf
高坂兄妹キモすぎ

118:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 15:54:11.12 PByIhV3q
それ言っちゃおしまいよ

119:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 15:58:02.36 joM+Pt94
むしろ誉め言葉

120:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 16:03:07.75 4VudQLxT
>>111
続き来るのはええよ
重ねてGJ

121:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 16:08:08.31 x+xypERT
続けろ下さい

122:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 16:15:36.26 fYRyJJKU
ニュースを見るたびに腹が立つ管の笑顔。
自分の無能さやだらしなさで遅れている被災地の復興。
どんな理由でも、自分を中心に話題になっていることを楽しんでいる不謹慎な人間がこの日本のトップ。
この時期に、被災地では自殺者や疲労で死んだ年寄りまでいる中で、ニヤニヤへらへらしてられる無神経な総理。
そのことについてほとんど声を上げない日本人。


123:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 16:21:08.90 947XGAmn
続編きてた!
この自然なじらし方がまたいい感じだw
桐乃って自分の書く小説じゃすげえいきなりクライマックスなことさせてるのに
自分のこととなるとマジ純情。だがこんな桐乃もいじらしくていいなw

124:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 16:24:44.33 FFx8b/pA
GJ

125:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/25 20:05:34.12 OkIa5F74
酉付きで是非とも続けて下さい。
あまり飛ばし過ぎて、綾瀬市から目を付けられない様に…。w

126:短編『闇の中の二人』 ◆ACPRLbMxAk
11/06/26 01:57:40.59 go0laUGR
「な、何ですか、あなた! その格好は!?」

スイーツ(笑)2号の闇天使が、聖天使の衣を纏った私を見て目を丸くしている。
私はこの衣での外出も平気だし、夏休み中の高校の校門前にも出て行けた。
ふっ。違和感など有るはずも無いわ。これが千葉の堕天聖のもう一つの姿‥‥‥

「あなたも変態だったんですね? ひょっとしてお兄さんと変態プレイを!?」
「違うわ」
「うそ! 絶対に変態に決まっています! 通報しますよ!!」
「ち、違うと言っているじゃない!」

あの雄から聞いてはいたが、これが闇天使の実態ね。ああ、呪わしい。
などと考えていると、この雌の口からとんでもない言葉が出てきた。

「黒猫さん! ご相談があります!!」
「貴女のようなリア充が闇の世界の住人である私にどんな相談事かしら?」
「‥‥‥噂通りの邪気眼っぷりですね。それはともかく、実は――」

コスプレ大会の優勝賞品目当てに、この私にコスプレ大会に出場ろと言う。
優勝賞品をあのスイーツ女に贈るらしい。そして、この聖天使の衣が必要らしい。あの雄の相談と何一つ変わらぬ展開ではないの。一体何を考えているのかしら。

「このCDジャケットのコスプレでいきましょう!」
「これは歌手じゃないの。コスプレ大会ではなくカラオケ大会じゃなくて?」
「いいえ、コスプレ大会です。わたしも出場ます。似た衣装も持ってますし!」
「あ、貴女も出場るというの?」
「だってこの歌手は二人組ですよ? 黒猫さん、ひとりでできるかな?」
「フッ、貴女って凄く勝手ね。どれだけふり~すたいる♪なの?」


コスプレ大会当日の舞台裏――闇天使との最終打ち合わせ。

「髪型の似ている黒猫さんは、この帽子を被って私の左側に立ってください。
 わたしは右側に立ちますから。ほら見て下さい! そっくりじゃないですか」

姿見を見ると、確かに衣装などは似ているようにも見える。しかし顔は‥‥‥

「貴女、莫迦なの? こんな完成度の低いコスプレで勝てると思っているの?」
「大丈夫です。本物を見た人は居ないんですから。さあ! 歌い出しですよ!」
「え? イントロは? まさかアカペラで歌うの?」
「何言っているんですかぁ。この曲にイントロはありませんよ!」
「そ、そうだったわね。私としたことが、迂闊だったわ」
「さあ、歌い出しは息を吸ってください」
「注文の多い女ね。解っているわよ。何度も聴いていたのだから」

「「すぅー」」

交わした約束 忘れないよ♪  目を閉じ 確かめる♪
押し寄せた闇 振り払って進むよ♪


こうして聖天使の衣を纏った聖天使と闇天使のデュオはコスプレ大会で優勝した。
闇天使はスイーツ女に贈る優勝賞品を獲得して上機嫌だ。
さて、用も済んだから私は帰ることにするわ。“決め台詞”を拒絶してから。

「黒猫さん! 私と契約して、コスプレイヤーになってください」
「嫌よ」


短編『闇の中の二人』 【おしまい】

127:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 02:10:35.01 51KlpqZ+
スレの雰囲気が元に戻ってて嬉しい
良い書き手さんが来てくれたおかげだね

128:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 05:06:19.74 x97x6tsg
>>127
かんそうぐらいってやれよ

129:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 07:17:59.67 EPHgVbRp
作品にふれろよw

130:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 12:38:30.48 Qw9dlqMN
>>126
またあなたかw
よくもまあ、こんなにぽんぽんとネタが浮かぶ事…。(褒め言葉)

131:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 13:32:38.06 5Gw4eQpM
>>111
GJ
良かったです

132:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 23:24:35.88 pvV+JUuy
SL氏のSSが好きというわけじゃないが(はっきりいって、
京介の扱いのあまりの酷さに苛つくし)物語が完結しないのは
一番気分が悪い。
一部の馬鹿共のせいか、投稿しなくなったじゃないか。
どうしてくれる。


133:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 23:30:20.94 //h/OHHZ
それはもう一方の方でやってくれ
荒しに口実を与えるな

134:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 23:47:42.93 SRCiY1GR
>>111
上手いなぁ。
ぜひ続編を。

>>126
ネタもの得意ですね。
そしていつも短く纏められてるなぁ。

>>132
元々投稿間隔空いてたじゃん。
心配しなくても続き書き終わったらそのうち来るでしょ。
一部の馬鹿どものせいで投稿しなくなったのは普通の書き手の人。
黒猫スレにもアップロダができて書き手減ってるんだから投稿しやすい雰囲気を作ろうぜ。

135:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 23:53:11.45 dgnvExUa
GJです

136: 忍法帖【Lv=1,xxxP】
11/06/26 23:57:44.02 a5f5x8Mu
どっちにせよ投下して下さったお2りともGJどす

137:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/26 23:59:28.45 45m5wvTF
>>132
どうしてくれる()

きめえうぜえ死ね

138:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/27 00:33:45.88 CYmVkQla
はいはい煽ったら負けですよー

139:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/27 00:38:23.07 3vjmUATE
俺の負けでいいから
煽っていい?

140:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/27 00:44:34.02 vwU+TQ5f
雰囲気悪くなるから専用スレでやって

141:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/27 03:17:53.35 ep8wevRb
SLさーんまだかー

142:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/27 03:47:49.83 UJxbX3Df
あやせかわいい
加奈子もかわいい

143:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/27 08:04:42.79 ifpjChHR
SLに関する話題はこっちで
スレリンク(eroparo板)

144:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 01:39:41.10 XrDdZQwj
あやせかわいい

145:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 03:04:22.64 Uexkm7Ao
SL氏かわいい
作品も凄い

146:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 03:08:04.20 ELVOkPcl
>>126
GJ!
あやせの「あなた”も”変態~」ってセリフから察するにあやせも変態なのか?

147:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 04:31:55.05 7xR0h7+d
>>146
どう考えても京介と一緒で変態なのかって意味だと思うよ

148:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 09:22:58.03 AnoWWUcD
SLは面白いつまらない以前に内容がキチッてるからな

149:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 10:23:05.60 pVI3chW7
クソスレ化が激しすぎる…
住民減りすぎじゃね?

150:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 12:13:39.05 8xofa6dN
そもそもSSの投下が無ければ一日に数レス進むくらいが普通なわけで
週1ペースでも書き手が投下してくれれば十分だよ

151:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 15:54:07.17 6scBnsoL
俺にとってはこの流れの方が好き
もちろん、職人さんが居てのエロパロ板だが

152:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 16:36:59.19 3SaX7dky
キチガイが住み着いてるスレに職人来るわけねえだろw
ましてや平和なvipやキャラスレがあんのに

153:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 16:53:14.24 86bTOZZq
キチガイ=ID:AnoWWUcD ID:pVI3chW7 ID:Uexkm7Ao

「糞スレ」と「SL」っていう上がってもいない話題を一生懸命振りまいてスレを荒らそうとするやつのことかww

154:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 20:39:52.25 foOKnk+8
キチクn長編てもう書き手いなくなっちまったっすか(T_T)

155:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/28 23:33:46.70 uXSmE+Vy
SL66氏

156:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 00:31:28.83 gaHlN31w
あやせかわいい

157:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 03:24:46.68 Z15O9Z4o
なんでSL氏に根強いアンチがついてるのか、なんとなく分かった。

「氏が書く作品は、表現や文章のレベルが高すぎる」

中高生が読む(のがメインの)ラノベ二次創作で、これは致命的
そりゃ、反発出るわ

158:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 08:02:24.59 9EHf7rM1
語彙、表現、原作再現度、話の面白さ
全てにおいて上の書き手は存在する
残念だけど

159:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 08:02:45.05 Nv56Ruzs
なんでこのスレに粘着荒らしがついてるのか、なんとなく分かった。

「このスレの作品は、表現や文章のレベルが高すぎる」

自宅警備員が読む(のがメインの)エロパロ板で、これは致命的
そりゃ、反発出るわ

160:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 08:38:38.06 OsbqYPr8
致命的か?

161:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 08:47:45.84 fW6++OLg
頭がね

いかん、カレを擁護するスレが自演にしかみえない
ちょっと偏見すぎるかな 

162:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 08:51:52.80 gye8Oqap
加奈子はDV男にはまりそう

163:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 09:06:36.67 9Sf/0C7J
S!L! S!L!

164:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 11:28:12.20 +rbvLcSp
>>161
自演ではないと思うけど、明らかに荒らしの愉快犯ではある

普通ならこんなのに付きまとわれたら書き手本人も迷惑するだろうし、そうでなくとも、あからさまに他の書き手を見下したり
「原作を越えた!」とか言ってるレスには、本人が嗜めるような書き込みをすれば、このスレも(彼自身の評価も)多少は違うんだろうけど
彼は自分を嗜めるレスに対しては荒らし認定して噛み付くくせに、こういうのは野放しにするんだよな

迷惑どころか、ヨイショされて本気でいい気分になってるのかも知れない
ぶっちゃけ場をかき乱したいだけの愉快犯なんだから、心の底ではSLのことだって鼻で笑っているのは明白なのにな

165:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 13:04:18.12 UH/v8ogN
こっちで消えろって言われてSL専でまた叩かれてまたこっちに戻ってきた
ただの子供

166:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 14:09:57.32 fW6++OLg
おかえり('・ω・`)

167:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:16:51.54 +shN39gM
・仮題「夏祭り」
・非エロ
・あやせ×京介
・30レス程度

前後編のうちの前編になります
投下してもおkでしょうか?

168:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:22:39.10 nKtbemAK
問題ない
こちらはいつでも全裸待機で準備は万端だ

169:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:28:30.71 +shN39gM
それは例えるなら、夜空にきらめく綺羅星の一。
赫赫たる輝きは仰いだ者の目を惹きつけてやまず、
されど所有欲を懐いた者には冷ややかな一瞥を投げかける。
見渡せば、夢破れた者たちの屍の群れ。

「あやせ、今まで何人にナンパされた」
「覚えてません。
 お兄さんがいけないんですよ、わたしを30分も待たせるなんて」
「桐乃を説得するのに手間取っててな」
「それで、あの子は……?」
「電話で話したとおり、家で休ませてる。
 俺も残って看病するって言っても、
 あたしの分まで楽しんで来て、の一点張りでよ」
「わたしも同じです。
 桐乃がいないと意味ないよ、ってメールを送ったら、
 あたしの代わりに花火の写真を撮ってきて、って逆に宿題を出されちゃいました」

困り顔で目を細め、たおやかな所作で腰を上げるあやせ。
ラブリーマイエンジェルの愛らしさを表現したところで何を今更と笑われそうだが、
今夜の彼女は、持てるボキャブラリーの粋を尽くして誉めちぎらずにはいられない。
長い黒髪は後ろで一つに結わえられ、
覗く項は健康的な白、身に纏うは黒地に朝顔をあしらった湯帷子、
下駄は歩みに合わせて幽玄の音を奏で、鼻緒の赤は大人びた雰囲気に一抹の幼さを残している。
要するに何が言いたいかというとだな。

「あやせたんすげー可愛い。鼻血出そう」

170:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:29:05.14 +shN39gM
「今何か言いました?」
「浴衣、似合ってるって言ったんだよ」
「そ、そうですか?
 お兄さんなんかに誉められても全然嬉しくないですけど、
 一応は、誉め言葉として受け取っておきます」

あやせはフイと顔を背け、

「今日お兄さんと一緒に出かけるのは、桐乃に頼まれて、仕方なくですから。
 その点だけは勘違いしないで下さいね」
「へいへい」

俺のことは精々、ナンパ避けにでも使ってくれ。
お前の美貌には到底釣り合わない地味顔だが、それくらいの役には立つぞ。

「わたしはお兄さんのことが嫌いです。
 でも、卑屈なお兄さんはもっと嫌いです。
 わたしの隣を歩くなら、せめて、堂々と胸を張って下さい」

そ、そそ、それってつまり……。

「今日一日限りなら、お前の彼氏を名乗ってもいいってことか!?」

171:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:29:38.46 +shN39gM
「じゃあ、もし誰かに俺たちの関係を聞かれたら、何て答えればいい?」
「そうですね……」

あやせは人差し指の腹を唇に当て、可愛らしく小首を傾げると、

「兄妹ということにしておきましょうか」

兄妹、ねえ。

「知り合いに会った時はどうするよ?」

例えば加奈子とか麻奈実とか。
確率は極々低いと思うが、一応な。

「その時は即刻どこかに隠れて下さい。
 もしもお兄さんが隠れるのが間に合わなかった時は、
 少々面倒ですが、時間をかけて事情を説明しますから」

やれやれ、どうあっても誤解される事態は避けたいと見える。
俺との仲を色眼鏡で見られるのがそんなに嫌かよ?
俺は大歓迎なんだがな……。

「絶っ対に嫌です」

ですよねー。

172:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:30:15.14 +shN39gM
肩を竦める俺を余所に、あやせは

「もうすぐ電車が来ます」

と踵を返し、駅構内へと歩き出した。
ナンパに失敗した男どもの怨嗟の視線を背中に浴びつつ、浴衣姿の後を追う。

さて、ここらで俺とあやせがデートするに至った経緯を説明しておくか。
事の発端は数日前。
桐乃が隣町のお祭りに行きたいと言い出したことがそもそもの始まりだった。
暇を持て余していた俺は一も二もなく承諾し、経つこと数日、
俺たちの予定を聞きつけたあやせが突然の参加を意志表明、
本人曰く、前々からそのお祭りに興味があった、というのは桐乃向けの建前で、
俺が桐乃の浴衣姿に欲情して間違いを犯さないよう監視するのが真の目的なのだとか。
んなことするわけねーだろ、と力説しても馬耳東風、
あまりの信用のなさに慨嘆に暮れていた俺を蚊帳の外にして、
桐乃とあやせは仲睦まじく、祭りに着ていく用の浴衣を選んでいたっけな。
そして迎えた祭りの当日、桐乃は馬鹿みたいな高熱を出して寝込んじまった。
即日快復の見込みは薄く、祭りは生憎の一晩限り。
どうするべきか、と悩んだ俺に桐乃がかけてくれた言葉は、冒頭であやせに受け売ったとおりである。
説明終わり。

電車に揺られること十数分。
駅から出た俺たちは、しばし言葉を失った。

「大賑わいだな」
「この辺りでは、有名なお祭りですからね」

173:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:31:01.29 +shN39gM
耳を澄ませば、祭り囃子の清音が聞こえる。
遠くに見えるのは御神輿だろうか。
お面を付けた子供が「まだ帰りたくない」と泣きながら、親の手に引かれていた。

「あやせは今まで、このお祭りに来たことはあるのか?」
「小さい頃に、両親に連れられて何度か。
 でも、ここ数年は遠慮してました。
 暴走族の集会に使われたり、スリや置き引きが増えたりと、悪い噂ばかり聞くようになったので」
「一日限りになったのもそれが原因らしいな」

晩飯の席で、親父(現職の警官)が喋っていたことを思い出す。
何年か前までは、祭りは二日間に渡って開催されていた。
が、軽犯罪の温床と化すにつれて、自治体は期間の縮小を決定し、
警察は気合いを入れたパトロールを実施する運びとなったらしい。

「今日だって、お母さんを説得するのにすごく苦労したんですよ。
 悪い人に絡まれたらどうするの、ってうるさくって」
「あやせママは心配性か」
「というよりは、過保護の方が正しいですね。
 今でもわたしのことを子供扱いするんですよ?
 もう十五歳なのに……」

軽く頬を膨らませるあやせ。可愛い。

174:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:31:32.38 +shN39gM
「結局、あやせはどうやってお袋さんを説得したんだ?」
「友達のお兄さんも一緒だと言ったら、渋々納得してくれました。
 もっとも、もしお母さんがお兄さんの素性を知っていたら、
 絶対に認めてくれなかったでしょうけど」

冷ややかな目つき。たまりませんなあ。
ちなみにあやせが言った俺の素性とは、近親相姦上等の変態鬼畜兄貴のことである。
今更それを訂正する意志も元気もないとは言え、

「一応、俺はあやせのお袋さんに、保護者役を期待されているわけだよな?」
「まあ、そうとも言えますね」
「そこで、だ。
 お前の護衛を万全なものにするために、一つ俺に提案があるんだが」
「何ですか?」

俺は爽やかな笑顔で言った。

「手を繋ごう」

あやせも華やぐ笑みでこう答えた。

「嫌です。穢らわしい」

例によって例の如く、台詞と表情の不一致甚だしいなオイ。

175:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:32:18.75 +shN39gM
まあいい。

「お前が嫌なら無理強いしないが、はぐれないようにしろよ」

この歳で迷子になったら笑い者だぜ。

「お、お兄さんまでわたしを子供扱いしないで下さい。
 お互いがお互いを見失わないよう、意識していれば大丈夫です」
「心配になったら、いつでもお兄さんの腕に抱きついてこいよ。
 俺はいつでもウェルカムだ」
「わたしはいつでもノーサンキューです」

そいつは残念。
俺は誰からも必要とされない右手をポケットに仕舞いつつ、
道なりに連なる屋台骨と、それを縁取るネオンの光を眺めた。
さてと……俺たちもそろそろ、露店巡りに繰り出すとしますかね。

駅前を離れ、大通りを歩き始めることを数分。
右手からカランカランと鐘の音が鳴り響いたので振り向くと、

「やったぁ、一等賞だっ!」

と小さな男の子がはしゃいでいるのが見て取れた。
手渡された最新型の携帯ゲーム機を誇らしげに掲げ、周りの友達に自慢している。

176:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:33:35.56 +shN39gM
あやせが言った。

「へえ……きちんと当たりクジも用意されているんですね。
 三等以上の景品なんて、所詮は人目を引くための飾りだと思ってました」
「実際、ほとんどのクジ屋はハズレクジしか用意してないんだろうさ。
 けどガキの頃なんて疑うことを知らねえから、馬鹿みたいに小遣いを注ぎ込んだよな」
「仲間を見るような目でこっちを見ないで下さい」
「隠すなって、誰もが通る道だろ?
 百円玉数枚で豪華景品を手に入れる夢を見るのは」
「わたしは三回ほど挑戦したところで、無垢な子供を食い物にする仕組みに気づきましたから」

あやせ様は幼少期より素晴らしい炯眼をお持ちで。
しかし真の賢者とは最初からクジ屋に金を落とさないヤツのことで、
クジを引いちまった時点で俺とあやせは五十歩百歩の距離にあるんじゃないか、と言えば睨まれるのは自明の理、

「どうだ、試しに俺たちも引いてみないか。
 さっきの騒ぎが仕込みじゃなけりゃ、あのクジ屋は世にも珍しい優良店みたいだぜ」
「仕込み?あの男の子がサクラかもしれないと疑ってるんですか?」
「可能性はあるだろ」
「お兄さんは捻くれすぎです。
 あんなに可愛い男の子が、そんな悪事に荷担するわけがないじゃないですか」
「分かった分かった、汚れてるのは俺の心の方だ。で、どうするよ?」

あやせはしばし迷った末に、ハンドバッグから財布を取り出して言った。

「それじゃあ、一回だけ」

177:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:34:20.64 +shN39gM
列の最後尾に並び、クジ箱の前に着く頃には、
背後には先の一等賞獲得の噂を聞きつけたのか、長蛇の列が出来ていた。
クジ箱には『一回:三百円、二回:五百円』の文字。
気のよさそうな店主の「二回の方がお得だよ」の言葉を半笑いで聞き流し、
俺とあやせはそれぞれ三百円を手渡した。
まずは俺から。
箱に手を突っ込み、勘とセンスで一枚の紙片を掴み取る。
最初から当たる期待なんかしてないっての、
というようなクールな風体を装いつつ、内心では八百万の神様に祈りを捧げる。
あのう、二等の音楽プレイヤーが欲しいんですけどなんとかならないですかね?
今持ってるプレイヤーの調子がすこぶる悪いんです。
ここで当たれば新しいのを買わずに済むんです。

「ほい、兄ちゃん。残念賞だ」

クラッカー単品を拝領する。
ハハ……これで誰かの誕生日を祝ってやれるぜ。
三百円には到底釣り合わないが、夢と希望を買ったと思えば慰めにもなる。

「さあさ、次は嬢ちゃんの番だよ」
「……行きます」

あやせが袂を捲り、箱に手を差し入れる。
指先に全神経を集中させるためか、目は瞑られ、呼吸さえも止まっているように見えた。
やがて俺の倍ほどの時間をかけて、あやせは紙片を選び出した。
手渡された紙片を、店主が慣れた手つきで検める。
果たしてその結果や如何に?

178:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:37:10.45 +shN39gM
クジの中身を確認した店主の手が、ミニクラッカーの寄せ集めに伸び……その隣のハンドベルを鳴らした。
カランカラーン。

「おめでとう、特別賞だ!」

おいおいマジかよ。
特別賞なんてあったのか。
けど、展示されてる中に特別賞の札付きの景品なくね?

「ちょっと待っててくれるかい。景品は別のところに置いてあるんだ」

と言って、店主が屋台の裏手に消える。
あやせが譫言のように呟く。

「当たった……信じられない……」
「すげえな。特別賞だぜ、特別賞」

茫然自失としていたあやせも、徐々に実感が込み上げてきたのか、

「お兄さん、わたしやりました!」
「おう、やったな!」

極々自然なハイタッチを交わす。
あやせは慌てて手を引っ込めて何か言いかけ、戻ってきた店主を見て絶句した。
無理もないと思ったね。
店主が脇に抱えていたのは、星くずうぃっち☆メルルの等身大ぬいぐるみだったんだからな。

179:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:38:48.57 +shN39gM
「はいよ。大切にしてやんな」
「あ、ありがとうございます」
「ハッ、桐乃への土産を買う手間が省けてよかったじゃねえか」

と俺が言うと、あやせは困惑気味の表情になって、

「確かにあの子は大喜びするでしょうけど、
 これを持ったまま歩くのは流石に恥ずかしいので……お兄さんに預けておきますね」
「おう……」

って自然に受けとっちまったが、なんで俺?

「だって、お兄さんなら"そういう趣味の人"と思われても問題ないじゃないですか。
 むしろ白い目線が心地良いんじゃないですか?……変態」

ハイ今日の初「変態」頂きました。
って、問題あるし心地よくもないわボケ!
しかしこの縫いぐるみ、妙にディティールに凝ってるな。
遠目からだとマジに俺が児童誘拐してるように見えないこともなさそうで怖いんだが……。

「ママー、あたしもメルルのぬいぐるみほしい」

と後ろで小さな女の子が、母親に駄々をこねている。
譲ってやりたい気持ちは山々だが、
悪いな、俺の家にも一人、メルルの大きなお友達がいるんだよ。
それから俺は試行錯誤を重ね、ぬいぐるみを肩車する方法が、
一番負担がかからず、両手も自由になるという結論に達した。
道行く人の冷たい視線?知ったこっちゃねえや。
だがあやせ、お前まで俺から微妙に距離を取るのはやめてくれ。

180:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:40:21.62 +shN39gM
さて、次に俺たちが足を止めたのは、夏祭りの露店といえばコレをおいて他にない、金魚すくいの屋台である。
といってもあやせは通り過ぎる気まんまんだったようで、

「急に立ち止まってどうしたんですか?」
「金魚すくいやろうぜ」
「構いませんけど、やるならお兄さん一人でどうぞ」
「寂しいこと言うなよ。やりたくない理由は何だ?」
「大人気ないじゃないですか。あんな小さな子供たちに交じって金魚すくいだなんて……」

待ち合わせ場所で顔を合わせた時から思っていたが、
どうもあやせはまだ、祭りの雰囲気に乗り切れていない感じだな。
矜持は捨てて童心に還る、これ縁日の鉄則だぜ?

「イヤなものはイヤです」

強情だな。
しゃーねえ、諸刃ならぬ逆刃の剣になりかねんが、一丁挑発してみるか。

「お前さぁ、もしかして金魚すくいできねえの?」
「は、はぁ?」
「一匹もすくえなくて、惨めな思いをするのがイヤだから渋ってんだろ?」
「なっ、なんでそうなるんですか!?
 馬鹿なこと言わないでください。
 金魚すくいは得意……じゃありませんけど、お兄さんよりたくさんすくえる自信はあります」
「口では何とでも言えるよな」

181:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:41:45.16 +shN39gM
「くっ……分かりました。
 実際に証明すればいいんでしょう、実際に証明すれば」

おー釣れた釣れた。

「ただの勝負じゃつまらねえし、そうだな、
 多くすくえた方が、後で何か食べ物を奢るってのはどうだ?」
「の、望むところです」

硬貨を支払い、ポイと椀を受け取って、水槽の前に陣取る。
チビッ子たちよ、俺の肩に乗ったメルルに興味津々なのはいいが、
どうか俺とあやせの神聖な戦いの邪魔だけはしないでくれよな。

「それじゃ、始めるか」
「……はい」

意気込みとは裏腹のなんとも緩慢なかけ声で、火蓋は切って落とされた。
ポイを握るのは久しぶりだが、やっぱり体が覚えてるモンなんだな、

「おらよっと。一匹目」

幸先の良いスタートを切り、その後もテンポ良く二匹目三匹目をすくい入れる。
東に高坂京介ありと謳われた実力を遺憾なく発揮し、
十匹目をすくい入れたところで椀の中はいっぱいに。

182:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:42:48.19 +shN39gM
「兄ちゃんすごいな」と店主。
「わぁっ、どうしてそんなに上手いのー?」と背後の子供たち。

へっ、これも一重に練習の賜さ。
新しい椀を店主から受け取り、恐らくは数で俺に負けているあやせを煽ってやろう、と隣を見ると、

「……………」

あぁ……。まぁ、その、なんだ。

「久しぶりだもんな、初めから調子が出ねえのは仕方ねえよ」

あやせは空の椀と破れたポイを見つめて言った。

「……なんです」
「ん?」
「昔から、下手なんです。何度やっても、一匹もすくえたことがなくて。
 今のわたしになら簡単かと思ったんですけど……やっぱり、ダメでした」

微かに湿った双眸、噛み締められた下唇。
やれやれ、俺は知らず、あやせのプライドをいたく傷つけていたらしい。

「おっちゃん、ポイもう一つ」
「あいよ」

受け取ったポイを、そのままあやせに握らせる。

183:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:43:50.02 +shN39gM
「何度やったって、同じです」
「やってみなくちゃ分からねえだろ。
 それにな、物事には何でもコツがあるんだよ。金魚すくいだって例外じゃない」

あやせの右手に自分の手を添える。
あやせはぴくりと肩を震わせ、しかし、我慢してくれた。
他意がないことを直感的に悟ってくれたのかもしれねえな。

「ポイを水につけるときは、ゆっくりじゃなくて、思い切りよくだ。
 あとは金魚は追いかけるな。寄ってきてくれるのをじっと待て」
「………」
「いい位置に金魚が来たら、ポイの面の端っこですくいあげる。
 金魚が暴れないうちにな。ちゃんと聞いてるか?」
「……は、はい……」

こっちは真面目に教えてるのに、そんなに艶っぽい声を出されても困るんだが。
触れあった右手が妙に熱い。
つーか、教えるために無意識にとった体勢だが、
このあやせの背中から覆い被さるような格好、かなりヤバくね?

「あっ、お兄さん……!」
「おっ、来た来た」

タイミングよく金魚が寄ってきて、俺はあやせの右手をアシストする。
ぽちゃんと水音。椀の中には、形、色ともに良しの金魚が一匹。

184:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:45:22.44 +shN39gM
「出来たじゃねえか」
「……こんなに簡単なことだったんですね」
「だろ?さ、次は自分一人の力でやってみな」

数分後。
屋台から離れたあやせの手には、水草模様が描かれた金魚袋があった。

「酷いです。わたしを置いてきぼりにするなんて」
「他の利用客にスペースを空けてやろうと思ってな。
 で、何匹すくえたんだ?」
「四匹です。お兄さんと一緒にとったのも入れて。
 お兄さんには遠く及びませんね。
 ……そういえば、お兄さんの金魚はどこですか?」
「周りの子どもたちの椀に、一匹ずつプレゼントしてやったよ。
 どうせ持って帰っても、おふくろに『池に返してこい』って言われるのがオチだからな」

というわけで俺の成果はゼロ、この勝負はお前の勝ちってことで。

「そ、そんなの反則ですっ」

自分が不利になる反則を咎められるとはこれいかに。

「だって、お兄さんにコツを教えてもらうまで、わたしは一匹もすくえなかったんですよ?」

俺はあやせを遮り、

「勝者には豪華賞品、フランクフルトが送られます」

185:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:46:17.44 +shN39gM
「……先に屋台を離れたのは、これを買うために?」
「まあな」
「いくらしたんですか?」
「聞くな。俺だって初心者相手に賭け試合吹っ掛けたことに、罪悪感を感じてんだ」

その罪滅ぼしがコレだ。さあ、遠慮なく食え。
あやせはしばしフランクフルトを眺め、
やがて熱さを確かめるように唇を付け、あむ、と先端に齧り付いた。

「どうだ、美味いか」
「はい、とっても……あ、お兄さんも」

無垢な笑顔で俺にフランクフルトを差し出しかけ、慌てて引っ込めるあやせ。

「な、何でもありません」
「はいはい、分かってるよ」

お前も優しさも照れ性もな。
とても美味しい、という感想は本当だったようで、あやせは気持ちの良い頬張りっぷりを見せてくれる。
いやあ、実に健全な光景ですなあ。
眼福眼福。

「……お兄さん?」

おっと、考えが顔に出ていたらしい。

186:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:47:03.72 +shN39gM
「目がすっごくいやらしいです」
「気のせいだろ」
「いかがわしい妄想をしているようなら、即刻ブチ殺しますよ」
「失敬な。次にどこに行こうか考えてたんだよ」

というのはもちろん嘘で、あやせもそれを承知しているんだろうが、
右手に金魚袋、左手にハンドバッグの状態では万全の殺害ができないと判断したらしく、

「お化け屋敷……はどうですか?」

と俺の話題転換に乗ってくれた。
つーか、この祭りに来てから初めてだよな。あやせが行き先を指定したのって。

「このお祭りのお化け屋敷は、その怖さで有名なんです。
 入ったうちの二組に一組は、ゴールできずに、入り口まで引き返してくるそうです」
「詳しいな。入ったことがあるのか?」
「子どもの頃、お父さんと一緒に二回ほど」
「ゴール出来たことは?」
「……ありません」と俯き気味に白状するあやせ。

親父さんが怖じ気づいたとは思えねえし、
お化け怖さに泣きじゃくるあやせを、親父さんが肩車して引き返したんじゃないか、と想像する。

「よし、行ってみるか」

187:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:48:19.22 +shN39gM
というわけでお化け屋敷である。
見た目は打ち捨てられて久しい蒼然の廃屋、奏でるは物寂しい和楽の調べ。
一日限りの興行の割りにはえらく意匠が凝らされた造りだな。

「前の方がゴールされるまでしばらくお待ち下さいね」

と受付の女性に言われ待つこと数分、
わんわん泣き喚く小さな男の子と、その母親と思しき人が入り口から現れた。

「今年も相当怖そうですね」とあやせ。
「入る前から怖じ気づいててどうするよ」
「お、怖じ気づいてなんか……!
 わたしがゴールできなかったのは、小学校に入る前の話ですよ?」
「今はもう怖くないと?」
「当たり前じゃないですか。
 中に人が入っているお化けなんか、ちっとも怖くありません」

ほう、そいつは頼もしい。
ところでさっきから気になってたんだが、どうしてあやせは俺の背後に立ちたがるんだ?
入り口は俺たちが横に並んでも余裕がある広さだぜ?

「うるさいですね。早く進んでください」
「分かったから押すな」

俺としては隣でお化けにびくつくあやせたんを鑑賞したかったんだがな。

188:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:49:55.66 +shN39gM
消沈しつつ入り口の垂れ幕をくぐると、ひんやりとした冷気に出迎えられた。
中は狭い通路が延々と続く構造になっているようで、
等間隔に配置された蝋燭の光が、唯一の光源として正しい行く手を教えてくれる。

「なかなか良い雰囲気だな」
「…………」

進むこと数歩、最初の角を曲がってすぐのところでファーストコンタクト。
右手に包丁、ぼろぼろの服を身に纏い、ざんばら髪で顔を覆った女が、

「きひひっ」

と不気味な笑い声を響かせながら、通路の先へ走っていく。
ああ、こりゃ怖ぇわ。
ガキなら小便漏らすのを必死に我慢して、一目散に引き返しても仕方ないレベル。
だが、その怖さが夏には丁度良い。
俺はさらに歩を進め、通路の天井からだらりと垂れるろくろ首や、
壁から突き出す無数の手、右手のガラス窓にへばり付く口裂け女を華麗にスルーしていった。
そういやあやせ、お前さっきから口数が少ないが大丈夫か?

「えっ……あ、はい……大丈夫です……」

瞬きが多い。呼吸も肩でしているような感じがする。
パニックの前兆じゃあるまいな、と訝った矢先、あやせの背後に誰かが立った。
トントン、とそいつがあやせの肩を叩く。
元々振り向いていた俺には、そいつの顔―のっぺらぼう―が丸見えで、
普段なら大いに驚かせてやれと口を噤んでいるところなのだが、その時ばかりは流石に止めた。
否、止めようとした。

189:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:50:49.17 +shN39gM
「ばぁっ!」
「いやぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!」

誰何もなく、躊躇いもなく。
あやせは下手人に渾身の平手打ちを叩き込んだ。

「ぶべらっ!?」

のっぺらぼうの面が派手に吹き飛び、中の人がもんどり打って倒れる。
俺はなおも追撃にかかろうとするあやせを羽交い締めにし、

「お、落ち着け!」
「離して!離してくださいっ!
 お兄さんが邪魔で、そいつを殺せませんっ!」
「物騒なこと言ってんじゃねえよ!
 お化けが怖いからって、お化けに暴力ふるってどうする!?」
「そんなこと言ったって―きゃっ」
「わっ」

後ろに倒れ込んだところで、何かの仕掛けが作動したらしい、
通路を照らしていた蝋燭の光が一斉に消え、視界が暗幕に包まれる。
ジェットコースター的展開に、さらにあやせのパニックは悪化するかに思えたが、

「…………」

身動きが止まる。

190:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:52:35.64 +shN39gM
が、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、

「……っ……」
「ちょ、おま……もしかして泣いてんのか?」
「泣いてなんか……いませんっ……」

強がる言葉は湿っていて、耳を傾ければ、微かな嗚咽が漏れ聞こえる。
羽交い締めにしたあやせの体は、固く強張り、震えていた。

「立てるか?」

真っ暗闇の中で、首を横に振る気配がする。
俺がゆっくり立ち上がると、手を差し伸べるまでもなく、あやせは腕にしがみついてきた。
ふにふにとした柔らかい感触に狂喜乱舞するのは後回しにして、
今はこの場所から抜け出すことをが最優先だ。
亀の歩みもかくやの遅々としたスピードで、いずことも知れない出口を目指す。
恐怖音が聞こえる度、また何かに蹴躓く度、
骨が砕けるんじゃないかと思うくらいの力で腕を抱き締められたが、そこは無言でこらえたさ。
やっとの思いで出口に辿り着くと、スタッフの女性が迎えてくれた。

「お疲れさまでした」
「はは、どうも」

スタッフの女性は俺の右隣に視線を移し、生暖かい笑顔を浮かべて、

「今年は少し怖くしすぎたのかもしれませんね。
 例年に比べて、出口まで辿り着かれる方が極端に少ないんです。
 どうぞ、そちらに休憩スペースがあるので、お連れ様が落ち着かれるまでお休みください」

191:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:53:52.67 +shN39gM
入場時に預けていた荷物(あやせの金魚袋やハンドバッグ)を受け取り、
ベンチに腰掛けたところで、あやせはようやく俺の右腕を解放してくれた。

「少しは気分が落ち着いたか」

あやせは手のひらで涙を拭い、鼻を啜って、コクリと頷く。
流石にここで「お前ビビりすぎだろ」と笑う勇気は無かったさ。
のっぺらぼうくんの二の舞を演じるのはご免だしな。

「人間誰でも、これだけは絶対に無理、ってモンが一つや二つあるもんだ。
 それにな、お化けを全然怖がらないような女は可愛げがねえし、
 怖がってる演技をするような女はもっとつまらねえ、と俺は思う」
「……慰めてくれてるんですか?」
「まあな。
 でもよ、いくら怖かったからといって、お化けに暴力を働くのは反則だぜ。
 あやせがぶっ飛ばしたのっぺらぼう役の人には、後で一緒に謝りに行こうな」

あやせは悄げた様子で肯き、こんなことを訊いてきた。

「お兄さんは、お化けが怖くないんですか?」
「怖いに決まってるだろ」
「後ろからお兄さんのことを見てましたけど……全然、そんな風に見えませんでした」
「ああ、言い方を間違えたな。
 怖くて、驚かされて、同時にそれが楽しいんだよ」
「お兄さんが言うと、変態っぽく聞こえます」

お前がいつもの調子を取り戻してきてくれたようでお兄さん嬉しいよ。

192:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:54:43.67 +shN39gM
何もそんなことを夢にせんでもよかろうに。
と俺が呆れたその時、

「おーい」

と誰かが話しかけてきた。
視線を上げれば、見知った学友の顔がそこにあり、

「赤城?……って何だよその格好」
「おいおい、見て分からねえか?」

ぼろぼろの浴衣に乱れた髪、頭の後ろにかけたお面……。

「お前……まさか、さっきののっぺらぼうか?」
「ああ」
「なんでお前がお化け屋敷でお化けやってんだよ?」
「割の良いバイト探してたら、この街に住んでるヤツに紹介されてさ。
 ……なあ、このアニメキャラのぬいぐるみ、高坂のだろ?」

暴れるあやせを取り押さえたときに、肩から落っこちてたみたいだな。

「ああ、確かに俺のだ。拾ってくれてサンキューな」
「えーっと、星くずなんとかマルルだっけか?」
「違ぇよ。星くずうぃっち☆メルルだ」

193:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:55:37.55 +shN39gM
語気を強くして訂正すると、

「そ、そっか。
 とにかく、持ち主が見つかって良かったよ。俺は仕事に戻るわ」

と赤城は引き気味の笑顔で立ち去りかけ、

「待ってくださいっ!」

俺が何か言うより先に、あやせが赤城を引き留めていた。

「わたし、あなたに酷いことをしました。
 あの……、お怪我はありませんか?」

顔を近づけるあやせに、赤城は大袈裟に飛び退いて、

「心配ご無用。男の体は丈夫に出来てんだ。
 これくらい痛くも痒くもねえって」
「それでも、ごめんなさい。
 わたし、何とお詫びすればいいか……」

深々と頭を下げるあやせ。すると赤城は愉快げに笑い、

「君が俺に襲い掛かったのは、それだけ俺を怖がってくれてたってことだろ?
 お化け役冥利に尽きる、ってもんさ。
 これからはこいつを勲章だと思って仕事に励むよ」

ほっぺたの紅葉をかきながら、お化け屋敷に戻っていった。

194:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:56:12.09 +shN39gM
「気持ちのいい方ですね。
 お兄さんの友達だというのが信じられないくらい」
「二言目が余計だ。
 でもまあ、あいつは本当にイイ奴だよ。
 一目惚れしたなら紹介してやろうか」
「………わたしはそんなに軽い女じゃありません」

あやせは急に立ち上がり、往来に向かって歩き出す。
隣に並んで表情を伺えば、打って変わったむくれ顔。
いったい何があやせの機嫌を損ねたんだろうね、と訝しみつつ、
俺は自然な流れで、右腕を差し出した。

「何ですか、それ」
「いや、ほら、お前が腕を組みやすいようにな」
「余計なお世話です」
「さっきはあんなに力強くしがみついてきてくれたのにな?」

俺は痺れた右腕を軽く振って見せてやる。

「あっ、あれは足に力が入らなくて、仕方なくですから!」
「じゃあもう一回お化け屋敷に入るか」
「絶対イヤです。……お兄さんは、そんなにわたしと腕が組みたいんですか?」
「ああ。もう一度あの感触を味わいたい」
「感触?」

195:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 15:57:48.59 +shN39gM
あやせは頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、
やがて合点がいったのか顔を林檎のように赤くすると、

「もうっ、どうしてお兄さんの頭の中は、いつもいかがわしいことで一杯なんですか!?」
「相手が他の女ならこうはならない。
 あやせ、俺がお前のことを愛しているからだ」
「よく臆面もなくそんな恥ずかしいことが言えますね!
 愛を穢らわしい欲望の言い訳に使わないで下さい!
 どうせその言葉も嘘のくせにっ!」

変態っ!死ねっ!と盛大に俺を扱き下ろし、
あやせは俺を引き離さんと、ずんずん歩調を上げていく。
ちょいと調子に乗りすぎたか。お兄さん反省。
あやせを追いかけようとしたその時、携帯が鳴った。
受信メール一件。差出人は赤城。

『高坂、あの子とはいつから付き合ってるんだ?
 田村さんは知ってるのか?
 またバイトが終わったら電話する』

赤城よ、お前の勘違いが現実だったらどれだけ幸せか。
俺は苦笑して携帯のフラップを閉じ、顔を上げた。

「あやせ?」

声は、俄に大きくなった囃子の音にかき消された。
御神輿が大量の担ぎ手と奏者を伴い、行く手の十字路を横断していく。
往来が元の混雑に戻ったとき―、あやせの姿はどこにも見えなくなっていた。


夏祭り(前)おしまい! 続くよ~

196:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 16:13:03.72 +shN39gM
>>171
最後の部分が欠けてました……
丸ごと訂正


「あやせたんすげー可愛い。鼻血出そう」
「今何か言いました?」
「浴衣、似合ってるって言ったんだよ」
「そ、そうですか?
 お兄さんなんかに誉められても全然嬉しくないですけど、
 一応は、誉め言葉として受け取っておきます」

あやせはフイと顔を背け、

「今日お兄さんと一緒に出かけるのは、桐乃に頼まれて、仕方なくですから。
 その点だけは勘違いしないで下さいね」
「へいへい」

俺のことは精々、ナンパ避けにでも使ってくれ。
お前の美貌には到底釣り合わない地味顔だが、それくらいの役には立つぞ。

「わたしはお兄さんのことが嫌いです。
 でも、卑屈なお兄さんはもっと嫌いです。
 わたしの隣を歩くなら、せめて、堂々と胸を張って下さい」

そ、そそ、それってつまり……。

「今日一日限りなら、お前の彼氏を名乗ってもいいってことか!?」
「もうっ、またそうやってすぐに調子に乗る……!
 お兄さんがわたしの彼氏?
 あ、有り得ないですから。妄想は大概にして下さいね」

これくらいの暴言は慣れたモンだ。

197:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 16:22:09.94 +shN39gM
>>191の最後も欠けてました
たびたびすみません……
丸ごと訂正


入場時に預けていた荷物(あやせの金魚袋やハンドバッグ)を受け取り、
ベンチに腰掛けたところで、あやせはようやく俺の右腕を解放してくれた。

「少しは気分が落ち着いたか」

あやせは手のひらで涙を拭い、鼻を啜って、コクリと頷く。
流石にここで「お前ビビりすぎだろ」と笑う勇気は無かったさ。
のっぺらぼうくんの二の舞を演じるのはご免だしな。

「人間誰でも、これだけは絶対に無理、ってモンが一つや二つあるもんだ。
 それにな、お化けを全然怖がらないような女は可愛げがねえし、
 怖がってる演技をするような女はもっとつまらねえ、と俺は思う」
「……慰めてくれてるんですか?」
「まあな。
 でもよ、いくら怖かったからといって、お化けに暴力を働くのは反則だぜ。
 あやせがぶっ飛ばしたのっぺらぼう役の人には、後で一緒に謝りに行こうな」

あやせは悄げた様子で肯き、こんなことを訊いてきた。

「お兄さんは、お化けが怖くないんですか?」
「怖いに決まってるだろ」
「後ろからお兄さんのことを見てましたけど……全然、そんな風に見えませんでした」
「ああ、言い方を間違えたな。
 怖くて、驚かされて、同時にそれが楽しいんだよ」
「お兄さんが言うと、変態っぽく聞こえます」

お前がいつもの調子を取り戻してきてくれたようでお兄さん嬉しいよ。

「お化け屋敷に入るのは、端から恐怖体験が目的だろ。
 それを言うなら、お前はお化けが苦手なのに、どうしてお化け屋敷に行きたがったんだよ?」
「……小さな頃からの夢だったんです。
 このお祭りのお化け屋敷を踏破することが」

198:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 17:56:51.78 I7f7Y0JP

やっぱりあやせは可愛いな
続きが楽しみだ

199:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 18:43:04.78 TPPmMqwg
>>197
GJ!
続きが楽しみ

200:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 18:50:28.65 d7p5bqwz
京介が何気に女殺し
こんなならあやせも惚れてまうやろ

GJ!!

201:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 18:53:10.90 ki2PDj5G
なんだこの天使…可愛すぎてつらい
そして京介のタラシっぷりw

202:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 19:01:03.11 gaHlN31w
ほらな。やっぱりあやせなんだって

203:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 19:14:43.96 OsbqYPr8
最近あやせ続くな乙

204:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 19:38:14.17 TZwaXB8n
ここにきてあやせフィーバー
桐乃とは一体なんだったのか

205:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 19:40:15.94 9EHf7rM1
>>196>>170の訂正?

乙です!

206:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 19:52:28.52 t0vQuume
エロネタですら使えない黒猫は間違いなくただの舞台装置

207:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 19:56:01.85 TZwaXB8n
ああ?黒猫はエロネタに使う必要がないほどそれだけで価値があんだよ

208:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 20:00:08.01 7rWwSpLv
SLディスったりキャラディスったり忙しいな糞が

209:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 20:01:54.03 TZwaXB8n
加奈子が一番かわいい

210:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 20:14:50.39 OsbqYPr8
ブリジットもカワイイ

211:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 20:46:12.12 sXOKaOzA
みんなかわいい

212:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 21:09:08.15 DJwiG0X7
加奈子は男前

213:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 22:08:22.79 JS4kcvXZ
乙!
後編を期待してるよー
ちゅーぐらい期待してしまうのだがw

214:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 23:12:39.24 GDIyd/en
ラッキースケベでアナルセックス期待

215:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 23:18:13.53 wmSyW8tL
>>214
どんなラッキーだよw

216:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/29 23:57:52.60 uU6wB43o
>>195
GJ!
後編楽しみにしてるよー

217:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 00:01:18.14 YYRNS3fQ
>>195
あやせたん最高!
後編も楽しみにしています

218:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 02:48:23.84 aEQ7dO34
>>195 雰囲気がいいな。長くてもダレないし、続きが凄~く楽しみ。

219:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 03:01:55.49 Ndg3kB8D
桐乃に足を舐めさせたい

220:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 07:54:31.88 h0I4Ojry
URLリンク(fsm.vip2ch.com)

221:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 08:10:12.91 U8h55NVM
>>215
オリ主が風呂場で滑ったら一緒に入浴していたタバサの尻穴にズブリ!


という超展開を見せたゼロ魔二次SSがあったなw

222:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 16:17:19.89 KxG9KPdJ
>>220
これなんて漫画?

223:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 23:31:32.89 5GMgwUVC
SLさんなんで来ないの
このスレ見捨てられちゃったのかな・・・

224:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 23:32:17.44 aOh0HEJe
あやせかわいいのう

225:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 23:33:05.56 NEYmA7JW
確かにあやせはかわいい
だが加奈子もかわいい

226:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 23:44:50.94 7efzGgzu
久しぶりに来たらブリジットネタが無い……
仕方ないから小ネタ自給自足するか




「あの…マネージャーさん、この後ちょっといいですか?」
イベントが終わり、控室に戻ってきたブリジットが声を掛けてきた。
「ああ、お前を送ったらどこかで飯食って帰るだけだ。…そうだ、よかったら一緒に夕飯どうだ?バイト代も出たし奢るぜ」
「お…奢ってもらうなんてとんでもありません!ちゃんと自分の分はお金出します。それでよかったらご一緒させて下さい!」
ブリジットは慌てたようにパタパタと手を振りながら言うと、続けて
「私もちょうど、相談したい事があったし……。すぐ着替えてきちゃいますね」
……?なんだろう…。今、一瞬ブリジットの顔が曇ったような…。それに相談て……?

「痴漢!?」
「お、お兄さん声が大きいです!」
あれから、俺達はイベント会場を出ると、ブリジットが住んでいるマンションに程近いファミレスで食事を取る事にした。
食事を済ませ、ドリバーに食後のコーヒーを取りにいこうかと考えていると、ブリジットが神妙な顔で話し掛けてきた。
「お兄さん、ご相談したい事があります…」
その内容を聞いた結果が、さっきの俺のセリフというわけだ。俺は声を潜めながら改めて確認する。
「痴漢てあれだよな、電車とかバスで…」
ブリジットは、顔を赤らめながらコクリと頷く。
「それをブリジットは最近毎日されてる……」
コクコク
顔を俯かせさらに顔を赤くするブリジット。
何てこった…ブリジットがそんな目にあっていたなんて。あのすべすべしたふとももや、柔らかでふにふにしたお尻が痴漢に好き放題にされているなんて!許されざるよ!
「ブリジット行くぞ!」
俺は立ち上がるとレシートを掴み、開いた手でブリジットの手を握るとレジに向かった。
「あの、行くってどこに…」
「こういう話は他の人がいる所では話ずらいだろ。後はお前の部屋で聞かせてもらう!」

この後、俺はブリジットから綿密な事情聴取を行い、情況を再現しつつ対応策をアドバイスした。
その際に
『お…お兄さん……そんな所まで痴漢さんは指を入れたり……ひゃう!?』
『なんでベッドに押し倒すんですか!?電車の中にベッドはありませんよ!!ああっ!そこは今敏感になってるからダメェ…!』
ブリジットから苦情が出たような気がするが、気のせいだと思う。俺は実演を交えつつ、各シチュエーション毎の対応のしかたを教えただけだ。
だからベッドに横たわるブリジットは、実技で疲れ果て眠ってるだけだ。断じてイキ過ぎて失神してるわけじゃないぞ!



翌日、件の痴漢は捕まったとブリジットから聞いた。何でも中学生の尻を触った所を張り込み中の鉄道警察隊に捕まったそうだ。


227:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 23:52:32.75 7efzGgzu
エロいブリジットは需要ないだろうと直接描写削ったら半端な内容になった気が……orz
やはりエロは必要か
ただ以前にコスプレネタもソープネタもやったから他に思いつかないや
独占欲が肥大化した京介に奴隷調教を受けるブリジットとか誰も見たくないだろうし……

228:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/06/30 23:54:25.85 aOh0HEJe

ただエロは載せとけ

229:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/07/01 00:06:38.17 yiWIaCcD
トンでもなく見たい乙

230:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/07/01 00:40:18.26 kQgPqwW1
          ..:::´::イニ三三三三≧ミ{彧ル'
        イ=ミ^三≫:'^⌒^⌒^⌒^⌒^\
      /{{{麥}ル'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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     !::::: {i:i|:::::::i|:::;∴. / ´`ヽ _  三,:三ー二
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       l:::::::八 :::小. :::::::(`ー‐し'ゝL _  
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231:名無しさん@自治スレで設定変更議論中
11/07/01 08:42:52.43 NM26srkZ
うらやまけしからん

232:名無しさん@ピンキー
11/07/02 00:22:49.13 EaBcZuhY
これだよ、これ
このスレはこうじゃなくっちゃ

エロは難しいからなあ・・・。
いつもエロ部分で止まってシャドーボクシングを始めてしまう。

233:『似てないふたり』
11/07/02 01:54:21.64 /Izap0qo
登場人物
高坂京介 高坂桐乃 ほか

語り
高坂京介


ゆるいエロしかありませんが、やってみます。

234:『似てないふたり』
11/07/02 01:54:55.38 /Izap0qo
俺・高坂京介は今、総武線に揺られている。都内、正確にはアキバ帰りだ。
また妹のパシリ乙、と思ったそこのあんた。残念だが間違っている。
なぜなら、俺の目の前では我が妹・桐乃も一緒に電車に揺られているからだ。
そう。断じて俺はパシリではない。荷物持ち要員なだけだ。悪いか?

今日の俺は桐乃様の命を請け、渋谷での限定発売アクセサリー、
秋葉原での同じく限定発売フィギュアの買い物に駆り出されたってわけだ。
アクセサリーもフィギュアも嵩張るものではないことに気付いたのは
千葉駅から電車に乗った直後だったということが俺の迂闊さを物語っている。
まったく、桐乃のヤツ、一人で行けっての。

だが‥‥‥アキバ帰りの今、桐乃はスゲー機嫌が悪い。
限定アクセサリーも限定フィギュアも入手できなかったからである。
おまけに電車はメチャ混み。桐乃の不機嫌は頂点に達していた。

「んああああー、ムカつく!」
「オイ、うるせーぞ。大人しくしてろ」
「うっさい! マジムカツク! アクセもフィギュアも買えなかったし、
 電車は混んでるし、アンタのせいだかんね!」
「お、俺のせいかよ!?」

限定アイテムを買い損ねたのは、桐乃が出かけるのに手間取って店に着くのが
遅くなったせいだ。女というのはセットアップに時間がかかるからな。
そして電車が混んでいるのは、混んでいる時間帯だからだ。俺のせいじゃない。
まあ、桐乃の理不尽さは今に始まったことではないから、腹も立たないけどな。
とは言うものの、今日の電車はとても混んでいる。俺にとってもキツイ。
華奢な桐乃は躯を他の乗客に押し潰されそうだ。桐乃が文句を言うのも解る。
仕方ねえ‥‥‥な。



235:『似てないふたり』
11/07/02 01:55:22.81 /Izap0qo
「ちょっ! ナニすんのよ!?」
「うっせ! 黙ってろ!!」

俺は桐乃を車両の隅に押しやり、そして桐乃の前に立ちはだかった。
こうして俺が壁になってやれば、桐乃も少しは楽になるだろう。
‥‥‥のはずだったのだが、他の乗客に押されて、俺と桐乃は完全な密着状態に。

「(な! ナニしてんのよ!? アンタ!)」
「(仕方ねえだろ! 混んでいるんだからな!)」
「(ドサクサに紛れて触る気!? このシスコン!)」
「(いいから黙っとけ! こんな時くらい兄貴の言うことを聞け!)」
「(超かわゆいアタシと地味なアンタが兄妹だなんてね! 全っ然似てないし)」

他の乗客を気にしつつ小声で会話をする俺と桐乃。桐乃の香水の匂いが香しい。
そして、気がつくと俺の左手は何やら温かく柔らかいモノに触れていた。

「(こ、このスケベ!)」

桐乃が物凄い顔で俺を睨む。どうやら俺の左手は桐乃の腰に侵攻していたらしい。
そして右手は‥‥‥? ハ、ハハハハ。桐乃の背中に回っていたよ、オイ。
ん? 指先に感じるこの感触は? ハハハハ。ブラジャーの留め具ですね!
指を動かせば外せるんじゃね?

ぷちっ

そう、こんな具合にな‥‥‥


‥‥‥外しちまったよ!! 必死に言い訳するが、これは事故だからな!
ああ、この辺で桐乃が怖い。きっと悪鬼の形相の筈だと思いつつ桐乃の顔を
見ると真っ赤な顔で震えている。痴漢に遭うとこんな顔になるのだろうか。
電車が揺れる度に俺と桐乃は密着を繰り返し、段々と桐乃の躯が熱くなる。
シスコンの俺が熱くなると言うのなら解るが、何で桐乃が熱くなるんだよ。

そんな桐乃と躯を密着させていると、不埒なことを想像してしまう。
これじゃ俺が痴漢そのものじゃねえか! 畜生、千葉駅まであとどんだけだよ?
体を火照らせて震える桐乃を抱きしめた格好で、千葉駅に辿り着くまでの時間を
ただ黙って過ごすしかなかった。

‥‥‥‥‥‥



236:『似てないふたり』
11/07/02 01:55:48.84 /Izap0qo
「どうしました? 大丈夫ですか?」

俺はその声で、半分意識が飛んでいた状態から正気に戻った。
声の主である凛とした感じの女性が俺の目を見据えてこう言った。

「お手数ですが、ご足労願います」

ご足労って、こんな混んでいる電車で‥‥‥って、いつの間にか空いてるし!
俺の意識が飛んでいる間に電車は千葉駅に滑り込んでいたようだ。
そして俺の目の前には、俺の左手を腰に、俺の右手を背中に回されて
惚けた表情の桐乃が居た。

――さて、客観的に説明しよう。
混雑もしていない総武線の車内の隅に、茶髪の美少女が地味な男に追い詰められ、
両の手で抱きつかれている――
こんな感じになる。文字にすれば痴漢の現場そのものにしか見えない。

「オイ? どうした? しっかりしろ!」
「ふえ?」

桐乃は惚けた表情から復帰せず、俺の呼び掛けにも要領を得ない。
ダメだコイツ、早く何とかしないと。さもないと、とんでも無いことになる!

‥‥‥‥‥‥



237:『似てないふたり』
11/07/02 01:56:11.87 /Izap0qo
とんでも無いことになる――そんな俺の予感は的中した。
凛とした女性に俺と桐乃は千葉駅の鉄道警察隊まで連れて来られた。
桐乃は電車を降りてからここに着くまで、ずっと惚けた表情で俺のシャツの
裾を掴んだまま。おーい、正気に戻れー!
そして警察隊に着くと、俺は男性の隊員に、桐乃は凛とした女性の隊員に
それぞれ話を聞かれる。勿論、痴漢の加害者と被害者という立場でな。
まったく、冗談じゃねえよ!

「君はあの女の子に一体何をしていた?」

俺の親父を彷彿させる屈強そうな男性隊員が俺を問い詰める。
いや、元々は超満員電車でしたよ? 妹を守った結果がこうなのであって。

「大丈夫よ。何があったのか話してちょうだい」

相変わらず惚けた表情の桐乃は、凛とした女性隊員に問いかけられる。
何か嫌な予感がする。あの表情はエロゲでヘブン状態の時と似ているからだ。
もし桐乃が訳も解らず俺のことを痴漢だと証言したら一体どうなるのか?
桐乃! 嘘は言うなよ! ありもしないことを言うなよ!

「えっと‥‥‥電車の隅に押し込まれて‥‥‥腰と背中に手を回されて‥‥‥
 ブラのホックを外されて‥‥‥」

本当のことも言うな! 二人の隊員が俺を睨み付ける。最悪だ!
もしここで桐乃が「こんな人知らない」とか「逮捕して下さい」なんて
言いやがったら、俺の人生は終了するだろう。
どうせ終了するなら、いっそあやせの手で‥‥‥なんて発想が出てしまうのは、
俺の頭が混乱している証左に違いない。落ち着け俺。冷静になれ俺。

‥‥‥‥‥‥



238:『似てないふたり』
11/07/02 01:57:01.71 /Izap0qo
そうか‥‥‥冷静に考えれば俺たちって兄妹じゃないか。似てないけどな。
疚しいことなんて何も無い。正直に兄妹だと言えば大丈夫だろう。
うん、冷静になっているな、俺!

「じ、実は俺たちは――」

本当のことを言えば大丈夫。
そんな高を括っていた俺が発した言葉に、さっきまで惚けた表情だった桐乃が
突拍子もない言葉を続けた。

「恋人同士なんです!」

うぇっ!? 今、何と!? 恋人同士? 俺と桐乃が? またその展開?
困惑した俺は桐乃の真意を問おうと、桐乃の目を見た‥‥‥が、
惚けた表情から完全復帰した桐乃が俺を睨む。そして、
『アンタ、黙ってなさいよ! 殺すよ?』という声が視覚を通して聞こえてきた。
まるで蛇に睨まれた蛙のように俺の動きは完全に封じられてしまった。

「本当? 脅かされているんじゃないの? 大丈夫よ。本当のことを話して」

この凛とした女性隊員は、俺をとんでも無い鬼畜野郎だと見ているらしい。
いや、脅されているのは俺ですから!

「本当に恋人同士です! 証拠だってあります!!」
「証拠って、オマエ?」
「京介ぇ~? もしかしてぇ、まだ三回目のデートだからって照れてんのぉ?」

桐乃が悪戯っぽい表情で俺を見つめながら、甘ったるい声で話す。
うへええええぇ、キモチわりー!
それにしても三回目のデート‥‥‥だと? 偽デートの他にもあったか?




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