【妖怪】人間以外の女の子とのお話29【幽霊】at EROPARO
【妖怪】人間以外の女の子とのお話29【幽霊】 - 暇つぶし2ch408:キキーモラの人
12/09/09 20:09:19.91 mtYFXiVx
 「で、そっちはいいとして、あの子達の仲の進展具合はどうなのよ?」
 顔全体に「ワクワク」という擬音を貼り付けたような表情で、夕食の席で妻のゲルダに問われ、ケインは苦笑する。
 「ヲイヲイ。そのテの噂話に詳しいのは主婦の特権だろうが。むしろ俺の方が聞きたいぞ」
 「まー、そりゃ、そーなんだけどねー」
 苦虫を半匹くらい噛みかけたような微妙な顔つきになるゲルダ。
 「微笑ましいというか、カマトトってゆーか……」

 ひとつ屋根の下に、互いにそれなりに好感を抱いている男女ふたりが数ヵ月共に暮らしていれば、いわゆる「男女の仲」になっても別段おかしくはない。
 なのだが……最初の出会いが出会いだったせいか、ジェイムズとピュティアは、半年経った今も、非常に遠慮勝ちな距離を保っていた。
 無論、一緒に暮らしている以上、「着替え中にドアを開けて慌てて謝罪」、「ベッドに起こしに来たら、男の生理現象がニョッキリ」、「水仕事で濡れた服が透けてドッキリ」といったハプニングはあるにはあったが、そこから先に進まないのだ。
 初心で微笑ましいと言えないコトもないが……。

 「すみません、ご主人さま、お疲れのところを買い物につきあっていただきまして」
 「なんの、力仕事は男の領分さ。それに、ピュティアさんにはいつも家のコトをやってもらってるから、たまには恩返ししないと」
 隊商(キャラバン)によって村の広場で開かれている市場に、ふたりは連れ立って来ていた。
 辺境にほど近い村ではあるが、それでも半年に一度くらいのペースで、このような十数人単位の小規模な隊商が訪れ、この辺りでは手に入らない物品を購入する機会があるのだ。
 警備隊は安月給だが一応固定の現金が支払われる上、ここ数年はジェイムズが人に貸している畑も豊作でそれなりの地代が入っているので、慎ましい暮らしながらそれなりに蓄えはできている。
 「そんな! 私こそ、お世話になりっぱなしで……」
 紙袋を抱えたまま、申し訳なさそうに頭を下げかけたピュティアが、"路面の一部が濡れていた"せいか、つるりと足を滑らせる。
 「あっ!」
 「おっと!」
 素早く手にした荷物を置き、彼女の身体を抱きとめるジェイムズ。さすがに慌てていたせいか、力の加減ができず、彼女の身体を自らの腕の中にすっぽり抱きかかえるような姿勢になっていたが……。

 「よしよし、そこでブチュッといきなさい、ブチュッと!」
 「いや、デバガメみたいなコトはやめようぜ、ゲルダ」
 物陰から、部下にして弟子でもある少年達の様子を、隊長夫妻がうかがっている。
 「ああっ、何でそこで手を離すのよ! ピュティも、もっと積極的に!」
 「無責任に煽るなって。そもそも、あそこに氷張ったのお前の仕業だろ。アイツが助けるのが間に合ったからいいものの、転んで頭でも打ったら危ないじゃないか」
 「妖精─それも"地"に属するキキーモラが、転んで頭ブツケたくらいでどうにかなるモンですか! あ~、もぅじれったいわねぇ」
 (お前は、知り合いにやたらと見合い話を斡旋するオバちゃんか)
 溜め息をつきながら、そんな感想を抱いたものの、さすがに口には出せない。
 女性に年齢を感じさせる単語、とくに「オバちゃん」なんて言葉は禁句なのだ。さすがに夫婦生活が長い(とある事情から、このふたり、見かけの倍は生きてるのだ)ので、そのくらいは彼も理解している。

409:『つくしんぼ通信~彼女はキキーモラ~』(後編1)
12/09/09 20:10:00.12 mtYFXiVx
 「あの年頃の少年少女って言ったら、逢う度にキスだの抱擁だのを繰り返して、そこから先の一線をいかに越えるか、互いに色々模索してるモンでしょーが!」
 「いや、まぁ、確かにそれはそうだけどな」
 妻のエキサイトっぷりを「どうどう」とケインはなだめる。
 「ま、あのふたりは、なまじ一緒に暮らしているぶん、「家族」って気持ちが強いのかもな。こういうコトは自然に任せるのが一番いいと思うんだが」
 「そりゃね、わたしだって、あのふたりが人間同士、あるいは妖精同士なら、こんなに気を揉まないわよ。でも……」
 妻の言いたいことは、ケインにもわかった。
 おそらく、ふたりの姿に、在りし日の自分達の不器用な恋愛を重ねているのだろう。
 「はぁ……仕方ない。ちょうどいい機会だから、ちょいと爆弾投下してみるか」
 王都から届いたある手紙の文面を思い出して、ケインは久々にかつての上司の手を借りることを決意するのだった。

  * * *  

 土を踏み固められた10ヤード四方くらいの小さな広場─警備隊の訓練場で、ジェイムズは、久々に隊長のケインとの「真剣勝負」を取り組んでいた。
 これは文字通り、木製などの練習用ではなく、本物の武器で打ち合う形式の試合を指す。無論、殺し合いではなく寸止めするルールだが、普通の練習に比べて格段に危険性は高い。
 もっとも、警備隊付き修道女のシビラとケインの妻ゲルダも立ち会っているので、仮に負傷しても魔法ですぐに癒すことは可能だが。
 「どうした? 来ないのか?」
 しかも、ケインに至っては、本来の得物である長槍を手にしているという気合いの入りようだ。
 最近では、彼から3本に1本程度はとれるようになったとは言え、それらはすべて剣対剣での話だ。ただでさえ、剣対槍では後者が有利だと言うのに、一体隊長は何を考えているのだろう?
 そう思いつつ、ジェイムズもここは引く気はない。
 「本当に隊長から3本中1本でも取れたら、給料上げてくれるんでしょうね?」
 ─まぁ、そういうコトだ。
 「うむ。男に二言は無い。ま……」
 ニヤリと笑った次の瞬間、あり得ない踏み込みの早さでケインの槍が、正眼に構えたジェイムズの剣を下から叩いて、少年の腕ごと大きく上に跳ねあげていた。
 「流石に槍を手にした状態でヒヨッコに負ける気はないがね─コレでまずは1本だ」
 完全に無防備になった少年の頬を、冷たい槍の穂先がピタピタと撫でる。

410:『つくしんぼ通信~彼女はキキーモラ~』(後編1)
12/09/09 20:10:38.11 mtYFXiVx
 「くっ……!」
 温厚とは言えジェイムズも、警備隊所属の兵士である以上、武人のハシクレ……という自負がある。遅まきながら、少年らしい負けん気に火が点いたようだ。
 すぐさま跳び退って再び剣を構える。
 その姿からは、先程までは感じられなかった殺気にも似た気合いが立ち昇っているのがわかった。
 そこからのジェイムズの動きは目を見張るようだった。
 上段からの打ちおろし、左から右の横薙ぎに続いて右斜めに袈裟掛け、その真逆に下からの切り上げ、さらには連続の三段突き……と剣術の教科書に載せたいくらい見事な動きで、ケインを防戦一方に追い詰める。
 ─いや、そう思えたのだが。
 「前に教えただろ。理に適った動きは強力だけど、その分読みやすいって」
 わずか半呼吸の隙を突かれて(いや、おそらくは最初からそれを狙っていたのだ)、あっさり逆転される。
 「ふむ……見込み違いか。どうやら、まだ応用編をものにできていなかったかな?」
 クルリと回した槍で、トントンと自分の肩を叩いている隊長を見て、少年兵は唇を噛んだ。
 最初から敵わないだろうことは正直理解していた。
 けれど、このまま一矢も報いないで終わるのは、目をかけてくれた隊長本人に対しても、自分自身のなけなしのプライドに対しても─そして、こっそりゲルダさんの背後から見学しているピュティアへの見栄の面からも、我慢ならない。
 彼女の心配そうな姿を目にした瞬間、脳内のどこかでがカチリと何かがズレたような気がした。
 スーッと深呼吸をすると、パチリと剣を腰の鞘に納める。
 「ん、どうした? 降参か?」
 「はは、まさか……僕なりに奇策を弄してみようかと思いまして」
 そのまま左手で鞘ごと腰から外し、右手を剣の柄にかける。
 相応の知識がある者が見れば、それは東方の剣技で言う「居合」の型と似ていることがわかったろう。無論、ケインにもその知識はある。
 「ほぅ……おもしろい。だが、付け焼刃でそれができるかな?」
 ニィと男臭い笑みを口元に浮かべたケインが、それでも先程よりも慎重に槍を構える。
 できるはずがないとは思う反面、この若者ならやらかしてくれるんじゃないか、と期待する部分があった。
 「勝負ッ!」
 鋭い呼気とともに裂ぱくの気合いをもってそのまま踏み込むジェイムズと、それを迎え撃つケイン。
 そこにいる誰もが、その姿を予想したが……。
 「……え?」
 少年は、踏み込みかけた姿勢のまま、強引に足を止めていた。
 優れた武人は、相手の次の動きを自然と予測し、それに対応し、凌駕するべく動く。
 ケインも当然、その「優れた武人」の範疇に入る存在だ。まして、彼もまた「妖精眼(グラムサイト)」持ちであり、人の気の流れなど手に取るようにわかる。
 しかし、この場合、それが裏目に出た。

411:『つくしんぼ通信~彼女はキキーモラ~』(後編1)
12/09/09 20:11:13.52 mtYFXiVx
 いや、正確には少年が足を止めようとした瞬間それを察知し、すぐさまソレに対応しようとしたのだが……。
 槍の間合いの半歩外から放たれたジェイムズの「居合」もどきが、予想外の結果をもたらしたのだ。
 居合とは、刀を鞘で滑らせることによって本来の抜刀速度以上のスピードで放たれる抜き打ちの斬撃だ。西方の剣技しか知らない者からすれば、特に初見だと魔法か手品のように見えるが、原理的には神速の抜刀術、それに尽きる。
 とは言え、確かに長剣や大剣の大ぶりな動きに慣れた者からすれば、そのスピードは脅威だ。
 しかし、ケインは本物の東方剣士と撃ち合った経験もあり、その速度への対応も十分に可能だと自負していたのだが……。

 Q.片刃で緩く剃りのあるカタナでも難しい居合を、両刃で肉厚の長剣で実行できるものか?
 A.無理。

 そう、ジェイムズは、神速の抜刀術を仕掛けようとしていたのではない。
 そう見せかけて、そのまま剣を振り抜き、鞘を飛ばして来たのだ。思わずそれを槍で弾いて隙ができたケインの懐に入り込む。
 剣に対する槍の優位の7割は、その間合いの広さにある。強引に近づくことで、その差を少年は埋めようとしたのだ。
 その試みは半ば成功したかに思えたが……。
 「ふぅ~、あっぶねぇ」
 咄嗟に槍から利き手を離したケインが抜いた短剣で、ジェイムズの渾身の一撃は受け止められていた。
 「くうっ! これでも届きませんか」
 「生憎、これでも前大戦経験者でね。生き汚いのが身上だからな。とは言え、70点ってところか。ギリギリ合格だな。
 ─辺境第23警備隊隊員、ジェイムズ・ウォレス!」
 「は、はいっ!」
 姿勢を正したジェイムズに、ケインは思いがけない言葉を告げた。
 「貴殿を王国軍第八戦士団の正隊員推薦する─来月から、いっぺん王都まで行って来い」
 「……へ?」

-つづく-
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#まぁ、ありきたりですが、じれったい恋人未満をくっつけるには、別離を演出するのが早道ってコトで。

412:名無しさん@ピンキー
12/09/09 23:47:51.22 CxOvD3vv
ワッフルワッフル

413: ◆7BaqS26D87fW
12/09/11 03:43:19.31 nh33P/nV
「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇を投下させていただきます。
11レスあります。本当に長々と申し訳ないです…

414:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:43:55.80 nh33P/nV


第6話 キツネくんとタヌキさん


目が合った途端、彼女の愛らしいケモ耳がぴょこんと立ち上がる。

「キツネくん…」

ヒメに対して怯え、震えていた表情が一変する。
頬を紅潮させ、優しい頬笑みを浮かべる。
「好きなコがいる」苦し紛れに言い放った言い訳。
でもそう言い放った時、脳裏に浮かんでいたのは…彼女の顔。
頭で考えたんじゃない。それは心で感じた、俺の本心。
優柔不断な俺は、あんな切っ掛けでも無ければ、
自分の気持ちに気付く事もできなかったんだ。
頭部のケモ耳が、ピクピクと動く。その様が愛らしく思える。

そう、彼女はタヌキだ。

彼女が怯え恐れる九尾の狐…ヒメ。
しかし彼女も同様…ヒトならざる者なのだ。
俺は、目を逸らす。逸らしてしまった。

「…あ」

落胆の…声。見なくてもその表情の変化は解る。
その時。

「ま、まてまてまてーーーー!」
「ヒ、ヒトミ!?」

ヒメの前に立ちはだかり、睨みつける。

「試練ですって?何をさせようって言うの?
 何をすれば…あんたはキツネくんから手を引くの?」
「…お前が試練を受けて立つと?」
「いけない!?私は…キツネくんが」

一瞬の躊躇。しかし。

「キツネくんが好き。一番、好き」
「ヒトミ…!?」
「キツネくんも、きっと…きっと私を!」

ヒメがにやりと笑う。

「ほぅ…キツネくんの想い人が自分だと、言い切れる自信が?」
「…ええ」

…この期に及んで。
俺は何をしている?俺がすべきは。俺が言うべきは。
俺が好きなのは、誰なのか。
いま、はっきり言うべきなんじゃないか?

なのに、俺は…俺ってヤツは。臆病者の、卑怯者だ。
俺は、一番好きなコに、好きだって言うのが…怖いんだ。

だって、彼女は。
ヒトじゃ、ない。

415:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:44:42.42 nh33P/nV
「で?何をさせようって言うの?」
「あはん♪そうねぇ…愛し合う二人の絆を見せて欲しい所ね」

先程までの威圧感溢れる「狐の女王」の姿は成りを潜め、
俺を誘惑する時の悪戯っぽい、でも艶のある目つきと態度。

「きずな…?どうやって…?」
「そうねぇ私の目の前で…Hするとか」

はぁ?

「で、出来るかー!!」

ふざけてる!このメギツネ、ふざけてやがる!?
そんな事出来るわけないだろ、人前で、その…するなんて!

「や、やってやろうじゃないの!」

こらこらこらーーーーーーーーーーーーーー!!

「ヒ、ヒトミ!?」
「あはん?出来るの?今すぐ?私はいつでもいいわよ~」

ぐっと詰まるヒトミ。無理するなっての!
しかしヒトミは。

「あ、あすの夜!!待ってなさい!」
「え、ちょ、あの…!!」

目が据わってるーーー!?
俺は心臓が爆発しそうで言葉が出ない。
ヒトミと、その、する?ヒメの、目の前で?
なにその露出羞恥プレイ!?その、刺激が強すぎて眩暈がしますーーー!
ヒトミはヒメを、そして俺を睨みつけ、踵を返す。

「あ、明日の夜だからね!忘れないでよ!」

と、捨て台詞を残し走り去った。

「やだーあのコ、本気?あはん、面白いモノが見れそうねぇ~
 他人のする所見るのなんては・じ・め・て♪」

ちょっと、ヒメさん!?あなたの性癖ってどんだけ懐が深いんですか!?

「ヒ、ヒトミさん…キツネ、くん…」

事の展開についていけないのか、タヌキさん、オロオロ。

「明日の夜が楽しみね♪じゃ、おやすみ~」

ざざっ…!

「うわっぷ!?」

またも風が吹き荒れ、ヒメはその風と共に姿を消した。

416:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:45:18.69 nh33P/nV
「キツネくん…わ、私…」
「おねえちゃん…?」

タヌキさんが、俺を見ている。頭部にはケモ耳。
傍らには仔猫ちゃん。こちらも頭部にケモ耳。

「キツネくんは…やっぱり…ヒトミさんが…」
「タヌキさん…」
「私じゃ…やっぱり…ダメ…ですか…」

今の俺には…返す言葉が無い。
ついさっき、目を逸らしてしまったから。

タヌキさんの…耳から。
彼女は人間じゃない。とても可愛いのに。

…俺は彼女が、好きなのに。

でも。

「あ!おねえちゃん!」

踵を返し走り去るタヌキさん。仔猫ちゃんが後を追う。
俺は一人取り残され…誰を追う事も出来なかった。

※ ※ ※

長い長い夜がようやく終わって。

翌日。今日は祝日。
しかし俺は、朝から何をする気も起きないでいた。
日が高く昇っても何をするでもなく過ごしていると…
ヒトミが訪ねてきた。

「ヒトミ…」
「ん、入っていい?」
「あ、ああ…」

部屋に入ってきたヒトミはしかし無言で。
張りつめた空気。
その空気に耐えきれず、俺は、
言うべき言葉も見つからないまま言葉を発していく。

「あ、あの…」
「…」
「本気じゃ、ない、よな?」
「…」
「なんていうか、その…えと…」

再び、沈黙。しかし。

「ヒ、ヒトミ…!」
「キツネくん」

意を決したように、ヒトミが口を開く。

417:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:46:04.48 nh33P/nV
「夜まで待ってたら…あいつが来ちゃうから」
「え?」

あいつって、ヒメの事か。

「ちょ、ヒ、ヒトミ!?」

い、いきなり!ヒトミは立ちあがり、その…!
きていた服を脱ぎ出した!

「ま、まて!ヒトミ…!あ、あいつの…
 ヒメの口車に乗せられちゃダメだぞ!?」
「違うわ、別に…あいつにしろって言われたからじゃない」
「…え?」
「キツネくん」

にっこりほほ笑んで。

「…誕生日おめでとう。一日遅れたけど、私からのプレゼント、受け取って」
「プレゼント?」
「うん」

…って、ま、まままま、まさか!?
あのベタな台詞を!?

「プレゼントは…私」

うわーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
すっかり服を脱ぎ捨てたヒトミが俺に抱きついて来た。
腕の中に、生まれたままの姿のヒトミがいる。

「ヒ、ヒヒヒヒヒ、ヒトミ、さん!?」
「私を…あげる」
「いや、その、あの」

しどろもどろ。事の展開についていけない。

「あいつに言われたからじゃない。見せるつもりもない。
 でも、私は…キツネくんが好きだから。だから、
 たとえ…キツネくんの心が誰に向いてても」
「…え?」
「キツネくんが…タヌキさんの事、好きなの、解ってる。
 解っちゃったもん。でも、だから」

ヒトミの身体が…震えてる。その目から、涙が零れる。

「こんな事しても無駄かもしれない。でも。でもでもでも…!お願い…私を…見てよ…!」
「お、おれ…おれは…!」

ドキドキしてる。昂奮してる。
このままヒトミを…抱いてしまいたいと思う。
その欲望を否定できない。でも。

418:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:46:50.14 nh33P/nV
「ダ…ダメだって!」
「キツネくん…!」

それはもう、とんでもない自制心が必要だった。
ヒトミは可愛い、魅力的だ。おまけに…その、裸で迫られて。
ああ、正直に言おう。むちゃくちゃ昂奮してる。
ああ、勃起してるとも!むちゃくちゃしたいよ、やりたいよ!
バカだと思う。むちゃくちゃしたいくせに。やせ我慢して。
だらだら汗かいて、勃起させて我慢汁たらしてるくせに!

「か、かっこつけるつもりはないけど、でも!」

でも!でも…!!

「やっぱりダメだよ…俺、いまの気持ちのまま、ヒトミを抱くなんて出来ないんだ」
「キツネ、くん…?」
「ごめん、ヒトミ。こんな事させて…ごめん。俺は…俺はタヌ…」
「言うなーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

ぱあああああん!!と、激しく頬を張り倒された。

「…ってー…」
「解ってるよ!解ってたよ!」
「ヒ、ヒトミ…」
「言われなくたって…知ってるよぉ…」

ぼろぼろと涙をこぼして。子供みたいに泣きじゃくるヒトミ。

「キツネくんのバカーーーーーーーーーーーーーー!!」

※ ※ ※

ヒトミは泣きじゃくりながら服を着て、部屋を出て行った。
その間、二度と、俺の顔を見る事は無かった。
俺もヒトミにかける言葉を持たない。持てなかった。

「なかなか面白い見世物だったわねぇ」
「!!」

窓辺に、巫女服の美女。ヒメ。

「いつの間に…」
「あはん、彼女が来る前からいたわよ?」

…気配を消し、姿を消す事なんて朝飯前って事か。

419:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:47:35.94 nh33P/nV
「悪趣味だな」
「必死の思いでやってきた女の子を
 あんな風に振っちゃう貴方のが悪趣味(ハート)」
「…それだってお前のせいじゃないか!」
「違うと思うけどなー」
「な、なに?」

ヒメがひらりと、まるで重力を感じさせない動きで舞い、俺の脇に立つ。

「女の子が涙を見せるのは、全部、男が悪いの」
「い、一方的すぎるだろ!?」
「ううん、女の子を泣かしたら、全部、男が悪いの」

…なんなんだ、こいつは。
俺を誘惑し、ヒトミを扇動し、男を非難する。

「ま、それはともかく」
「くあ…!」
「んふ♪こんなにしておきながら、よく我慢できたわねぇ?」

こ、股間を撫でさすりながら舌舐めずりするなー!

「ほらぁ昨日の続き、しよ?してあげる」
「だ、だめだってばーーーーーーーーー!」

再び、理性を総動員。自分で自分をほめてやりたい。
しなだれかかるヒメを突き放す。

「やん」

立て続けの誘惑に、俺は耐えきった。

「…そんなにあのタヌキが良いわけ?」
「…え?」
「女の子にあそこまでさせておきながら拒み、
 私程の美女を拒む程…あのタヌキがいいの?」
「お、おれは…」
「ふん!もう時間なんて無いのに」
「…え?」

時間が、無い。
それとても不吉な予感を呼び起こさせた。

「…どういう、事だ?」
「タヌキが、ケモノが人の姿になる。
 それにどれくらいのエネルギーが必要だと思うの?」

…そんな事、考えたことも無かった。

「長くないのよ、あのタヌキ」

なにその設定!?聞いてないよ、伏線も無かったし!

「…あ!」

420:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:48:21.80 nh33P/nV
『後はキツネくんが、私の気持ちに答えてくだされば』
『私、もう何も思い残すことはありません…』

あの時の言葉…思い残す事がないって…死期が近いみたいな言い方。

「長くないって…どういう事だ!ま、まさか…い、いのちが!?」
「さぁ?直接聞けばいいじゃない。フン!」
「ヒ、ヒメ!待って!」
「私を振った男に教えてなんかやらないわよ!べーーーーっだ!」

…子供か!似合わないぞ、そういうの!
とにかく思わせぶりな捨て台詞だけを残して、ヒメは消えた。
残された俺の脳裏には、ヒメの言葉がぐるぐると飛びまわる。
時間なんて無いのに時間なんて無いのに時間なんて無いのに
時間なんて無いのに時間なんて無いのに時間なんて無いのに…

どういう事だ?
タヌキさんは…どうなるっていうんだ?

※ ※ ※

俺は思わず飛び出していた。
目指すは田貫家…タヌキ理事長の、タヌキさんの、家。

「タヌキさん!」
「キツネ、く…ふああああ!」

き、緊張感の無いあくび。

「ね、眠いの?」
「あ、あのその…昨夜は寝付けなかったもので…」

…そうか、それも俺のせいだったな。

「あ…」
「ちょ…!」

突然、タヌキさんがふらつく。俺は慌てて支える。

「ご、ごめんなさい、えへへ」
「い、いや…」

ほんとうに、ただの寝不足なのか?それとも…

「タヌキさん…あの…」

ヒメの残した言葉…時間が無いって言葉の意味。
その事についてタヌキさんに尋ねようとした、その時。

「にゃー」

足元に擦りよる一匹の仔猫。
こんな時に…って、あ、あれ?
この猫…も、もしかして!?

「こ、仔猫ちゃん!?どうして…猫の姿に?」
「んにゃー」

悲しげな泣き声。この声、この姿。
間違いない!この仔猫は…!!

421:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:52:46.91 nh33P/nV
タヌキさんも気付いたらしい。顔面蒼白で仔猫を見つめる。

「今朝から姿が見えないと思ったら…!も、戻れないんですか?」

これか?これなのか?ヒメが言っていた「時間が無い」という言葉の真意。
時が来れば…仔猫ちゃんが…タヌキさんは…元の姿に戻ってしまう!?

力の…限界。そういう事、なのか…!?

そして、仔猫ちゃんの様子を見てタヌキさんは動揺している。
と言う事は、彼女自身も気付いてない。
いつか、時が来れば。元の姿に戻ってしまう事を…?

いや、待て。じゃあ理事長はどうなんだ?

タヌキさんの伯父にあたる、元タヌキ。
学園の理事長という職につくにはそれ相応の時間が必要だったはずだ。
あの人もいつか時が来れば狸に戻るのか?それとも…

元の姿に戻らずにすむ方法があるのか?

「タ、タヌキさん!伯父さんは…理事長は!?」
「え?あ、あの…お仕事で…しばらく家をあけると…ご出張だそうですわ」

くそ、こんなときに…!

どうする?その時は突然来るのか?
それとも…今度タヌキになったら戻れなくなるとか、
変身できる回数に制限があったりするのか?
ルールが、法則が解らない!

「タヌキさん…最近、タヌキの姿になった?」
「も、もうなりませんわ!私、人間ですのよ?(ぷぅ!)」

といいつつ耳が飛び出す。

「あ、あら?おかしいですわね?えいっえいっ」

戻らない…戻せない、のか?

「こ、困りましたわね…」

もし…もしも。
このままタヌキさんが…元の狸に戻っちゃうとしたら。
俺に何が出来る?俺は…何をすればいい?

「…ちょっと待ってて!」

俺は辺りを見回し、帽子屋を発見。
タヌキさんに似合いそうなのをひとつ。
タヌキさんの元に戻ってそれを差し出す。すると。

「まぁ…」
「ど、どうしたの!?」
「う、嬉しいんですわ…キツネくんからの…初めてのプレゼントですもの」

んと、投げ売りで千円しなかったんだけど。

「そういう問題じゃありません!」

422:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:53:33.31 nh33P/nV
なんで怒られるんだよぉ

「えへ…えへへ…えへへ…」

帽子をかぶり、にやけるタヌキさん。
まぁ…なんというか、そんなに喜んでもらえて嬉しいよ。

ケモ耳は帽子にすっぽり包まれ、外からは見えなくなった。
タヌキに戻ってしまうかもしれないタヌキさんに
俺が出来る事なんて…この程度の事なのかもしれない。

でも。
後悔したくないから。今出来る事をしよう。

「…行こう」
「ど、どこへですか?」
「タヌキさんの行きたい所。行ってみたい所。
 昨日、言ってたじゃないか、デート、しよう」
「ま、まあ…」

タヌキさんが驚いてる。ちょっと、唐突だったかもな。

「で、でも…あ、あの…ヒトミ、さんは…そ、それにあの、仔猫ちゃんも…九尾が…」
「…いいんだ」

残酷かも知れない。でも。

「今は…ヒトミの事も、仔猫ちゃんの事も…ヒメの事も、全部、どうでもいい」
「キ、キツネくん…?」
「俺は今、タヌキさんとデートしたいんだ」

タヌキさんの頬が真っ赤に染まる。

「…ホントですか?」
「ほんとほんと!」

精いっぱい、明るく。内心の不安を気取られないように。

「じゃ、じゃあ!」
「ほい?」
「私!うみが見たいです!」
「海…まだ寒いよ?」
「でも、私見た事ないんですもの!」

少し離れた塀の上で。

「にゃー」

小さな仔猫がひと声鳴いて、さっと身をひるがえした。
あっという間にその姿を見つけ出す事はできなくなった。

※ ※ ※

423:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:54:26.07 nh33P/nV
という訳で、海。

「まぁまぁまぁ!これ全部水ですの?すごいすごいすごーーーい!」

海からの風に飛ばされないように、帽子を押さえて波打ち際ではしゃぐタヌキさん。

あの耳さえなければ、ホントにただの…ただの可愛い女の子。
俺の理想を体現したかの容姿で、俺に好意を寄せてくれている。
これ以上、何を望む事がある?彼女の気持ちに答えない理由なんてあるか?

…彼女は人間じゃない。だけど。

「キツネくん!えいっ!」
「うわぷっ!?」

楽しそうに笑いながら、タヌキさんが波打ち際でジャンプ。
飛び散った塩水のしぶきが俺を襲う。

「あはは!水しぶきくらいでそんなに慌てなくてもいいじゃありませんかー」
「いや、ただの水じゃなくて…しょっぱいんだぞ!?」
「え?しょっぱい?」

しゃがんで、海水を指先に付けて、その指をぺろりと。

「んひゃっ!?な、なんですのこれ…お塩、効き過ぎですわ!?」

…料理じゃないんだから。

「ぷっ」
「あー!お笑いになりましたね!?えいっ!えいっ!」
「うわ!?だ、だから!しょっぱいってば!」

タヌキさんが盛大に海水をこちらに飛ばしてくる。

「こ、この!お返しだ!」
「きゃっ!?」
「こら!逃げるなー!」

まだ夏の遠い季節。
人気の無い海岸で。逃げるタヌキさんを追う。
これまで追い掛けられてきたから、追うのは新鮮な気がするな。

そう。タヌキさんはずっと俺を追いかけてきてくれた。
タヌキの姿を捨てて人間になってまで、俺の傍にいようとしてくれた。

だから、今度は。

俺が彼女を追いかける。俺が彼女を捕まえる。
なんて物思いにふけっていた隙をつかれた。

「…とぉ!」
「うわっ!?」

逃げていたタヌキさん突然、反転。
俺に飛びかかってきた。バランスを崩して転倒。

「わぷっ!?」

砂にまみれて海岸を転がる。

424:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:55:11.61 nh33P/nV
「タ、タヌキさん!?」
「あはは!つーかまえたっ!」

にこにこと笑うタヌキさん。頭から帽子が落ちていた。
ケモ耳がぴょこぴょこと動いている。
彼女はタヌキだ。人間じゃない。
だけど。

俺はようやく自分の心に正直になれる気がした。

俺は。

俺は、彼女が大好きなんだ。

※ ※ ※

彼女とすごす時間はいつだって輝きに溢れていた。
彼女の笑顔は俺を幸せにしてくれる。
ちょっと常識はずれな所だって(元タヌキだから仕方ない)
彼女のチャームポイントのひとつだ。

俺は西日さす浜辺をゆっくりと歩いていた。
後ろからタヌキさんが付いてきてくれている。
俺は立ち止まり、振り向かず、話し始めた。

「タヌキさん」

返事は無い。

「今日は…とても楽しかった」

俺は、ようやく、素直に俺の気持ちを口にする事ができた。

「いや、タヌキさんが俺の前に現れてくれてから…
 毎日がすごく楽しかった。君と一緒にいる時は…いつも」

迷いはもう、無い。

「俺は。俺はタヌキさんが…!」

振り向いた。そこにいるはずだったのに。

「…え?」

タヌキさんがいない。
いたはずの場所…そこには、タヌキさんの服が、服だけが落ちていた。

「タヌキ、さん…?」

俺の呼びかけに応えるかのように、落ちていた服がもぞもぞと動く。
そして、そこからひょっこりと愛くるしい顔を見せたのは。

一匹のタヌキ。

茶色い毛皮を身にまとった、ただの狸。
その毛が、夕陽を浴びて金色に輝いているのを俺は呆然と見ていた。


(後篇に続く)

425:「キツネくんとタヌキさん」第六話・前篇
12/09/11 03:57:18.07 nh33P/nV
次の後篇で終わります。ご容赦のほどm(_ _)m

426:名無しさん@ピンキー
12/09/11 04:19:11.38 kPF0A5U7
おふたかたともぐじょーぶー!
まー厳密に言ったらヒトミたん人間だけど
ヒト同士の絡みでは前スレで投下された「月下奇人」の例もあるし、
(※人間ヒロインが"マミー"にえっちないたずらされたりしつつ
最終的に人間な彼氏とえちする展開。(注:ホラーゲーム二次創作らしい)
ヒロインが超能力を持っていたりと人外ぽい?面はあるが)
そのつまり、この際まとめて投下しちゃっていいんじゃないかと。

427: ◆7BaqS26D87fW
12/09/11 14:55:50.65 nh33P/nV
>>426
ありがとうございます。
でも、まぁ、スレ違い気味のSSで何レスも消費するのもなんですし。

てなわけで、コソーリ つ URLリンク(renaisim.x.fc2.com)

428:名無しさん@ピンキー
12/09/15 11:19:26.25 KGoeeq5y
そうか!ヒロインの中で1人だけ人間だから ヒト ミなのか!

初体験で手枷目隠しプレイ ハァハァ


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