【量産機】新世紀エヴァンゲリオン【8号機】at EROPARO
【量産機】新世紀エヴァンゲリオン【8号機】 - 暇つぶし2ch882:名無しさん@ピンキー
11/09/28 17:16:14.89 1tTsDieY
このスレはやっぱりSS本編よりも感想のほうが格段に面白いな

883:名無しさん@ピンキー
11/09/28 20:56:25.61 KhUN7v+H
はやく投下してくれ。次でまとめで。専業慰安婦様お待ちしております

884:名無しさん@ピンキー
11/09/28 21:04:25.76 VxoIfdU+
そんな職業はねえよw

885:名無しさん@ピンキー
11/09/28 22:11:17.60 Z5SiK0cm
この流れいつまで続くの?

886:名無しさん@ピンキー
11/09/28 22:14:59.56 oTSL4XdY
無論、作品が投稿されるまで

887:冒険中年
11/09/28 22:28:26.52 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話+後日談 一挙投下します。

今回、いよいよ“彼”が登場します。
ですが、“彼”には今回損な役回りを演じてもらいます。
誤解しないで頂きたいのですが、私は“彼”が嫌いな訳ではありません。
もう一人割りを食ってる“彼女”もです。


888:冒険中年
11/09/28 22:29:54.09 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-01

第拾四の使徒殲滅から約一週間後の事


ネルフ本部・司令室

「初号機の覚醒とS2機関の取り込み、ゼーレにはどう言い訳なさる御積りですか?」

「初号機は暴走中だった……イレギュラーな事さ…事故だよ、単なるね。」

「もし“ゼーレ”がパイロット二人の尋問を求めてきたら……どうされます?」

「その時はその時だ。そう…葛城三佐か赤木博士にでも代理に立ってもらおう。
サード及びフォースのパイロット両名は……そうだな……重度の精神汚染で療養中だ。」

「良い御判断と思います。では、その様に……」

「ああ………宜しく頼む…」

二人の男の会話は、そこで終わった。



その頃、『療養中』と言われたふたりは、主が残業で戻れぬ葛城家のシンジの部屋に居た。
やっと検査入院と尋問に近いリツコとミサトの審問から解放されたのだ。

まだ日は高いというのに、既に数度の愛の行為を終えて、ベッドの中で余韻に浸るふたり。

「ねえ…シンジも何も思い出せないの?」
シンジの腕を枕に寝ていたヒカリがシンジの胸板に顔を埋める。

「うん、ヒカリと同じさ。それに信じられないよ、僕達が初号機に取り込まれたなんて。」
シンジはヒカリを抱き締めた。

「そうよね。それで、すぐに戻ってきたなんて言われてもね。」

「怖くない?エヴァに乗るのが。」

「うん…少しだけ。でも、シンジと一緒なら大丈夫。」

「ありがとう…ヒカリ……」
シンジはヒカリの身体をもう一度組み伏せた。

ヒカリはシンジを笑顔で受け入れると、また悦びの声を上げた。

そして、その声はしばらく止む事は無かった。
空腹に耐えかねたペンペンがシンジの部屋の襖を叩くまで。





889:冒険中年
11/09/28 22:31:27.54 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-02

第拾四の使徒殲滅から約一ヶ月後の事


某国某所

暗く、何も無い空間に、ぼうっと妖しく光る強化ガラスの円筒形の水槽。
その中に漂う全裸の少年。

「タブリス…目覚めよ…タブリス……我々のシナリオの要たる存在……」

虚空から聞こえてくる声。
男の声。
しかも若くは無い。
はっきり言えば老人の声。

「何だい?ボクの出番はもう少し先の筈だったんじゃないの?」

少年の瞼が開かれると真紅の瞳が現れた。

「事態は常に推移している。」
「エヴァシリーズに生まれいずる筈の無いS2機関。」
「それを自ら使徒を喰らう事で手に入れたエヴァ初号機。」
「これは我々“ゼーレ”のシナリオには想定外の事。」
「この修正、容易ではない。」
「左様…だからなのだよ…」
「碇の狂わせた時計を再び我らの元に戻す為に。」
「貴様の出番も繰り上がったのだ。」

どうやら老人は一人では無い様だ。

「そう…分かりましたよ。で。何時出掛ければ良いのかな?」

「今すぐだ。」

「それは…また急な事だね。」

「そう…事は急を要するのだ。」

「では、その様にするよ。それがボクの使命らしいからね……」

少年は不敵に笑った。





890:冒険中年
11/09/28 22:33:43.88 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-03

セカンド・チルドレン・惣流・アスカ・ラングレー、彼女は今、悶々とする日々を送っている。

同僚であるサード・チルドレン・碇シンジに対する淡い、いや、熱い想いを自覚してしまった、あの日からずっとだ。

殊に、浅間山での作戦でマグマの中へ沈んで行くしかない大ピンチを、
シンジに間一髪、救われてからは余計に想いが募る一方であった。
しかし、シンジの気持ちが決して自分に向く事は無いのも解っている。

保安上の理由と称して、登下校を可能な限り共にする様にミサトに提案したのは自分だ。
だが、教室に着くなり、シンジはヒカリの元へと行ってしまう。
(席がヒカリの隣だから仕方ないのは解っているが。)
成層圏から落ちて来る使徒を受け止めた時も、シンジはヒカリに宛てて遺書を書いていた。
シンジが使徒に呑み込まれた時も、入院して目が覚めるまで枕元に一睡もせずに付き添った。
なのに、うわ言でシンジが口にするのはヒカリの名前ばかり。
(シンジが目覚めた時に礼だけは言われたが。)

しかも、シンジとヒカリは、クラス公認どころか学校公認?のカップルで、更にヒカリの家族公認である上に
(シンジを問い詰めてヒカリの自宅訪問は婚約の為ではない事を確認してホッとした。)、
既にイクトコロまで行ってる間柄なのだ。

何処をどう見ても自分は少女漫画の【横恋慕キャラ】である。


《一発必殺大逆転の方法》…そんなもの有りはしない。有ったら苦労しない。

思い切って告白でも、と思ったりもするが、ミサトの立てる作戦より勝算の薄い事に賭ける勇気も無い。
それに、玉砕したらシンジの傍に居る事さえ叶わなくなる。

決して人前で顔に出す事はしないが、自室に戻ると、出てくるのは溜息ばかり。
「天才美少女が聞いて呆れるわね。」とか「報われない恋って正にこの事ね。」という、
ネガティブな、自分らしくないセリフばかり。




891:冒険中年
11/09/28 22:35:02.69 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-04

その上アスカは、エヴァのパイロットとしての実績も思う様に残せていない、と感じている。
シンジとレイという同僚パイロット達との交流と友情を得てからは、
来日当初の様に単独での戦果に拘っている訳では無いが、やはり気になるのだ。
使徒殲滅の[貢献度A]の判定はいつもシンジばかりだと言う事が。

更にヒカリがフォース・チルドレンに選抜され、初号機に一緒に乗る様になった。
しかも、お揃いの青と白、「01」と「1」を付けたプラグスーツを着て。
アスカが(レイもだが)、丸で手も足も出なかった第拾四の使徒を、一方的に叩きのめして倒した。
シンジとヒカリの初号機でのタンデムシンクロの実力を見せつけられてしまったのだ。
しかも、その初号機はイレギュラーとはいえ、使徒からS2機関を取り込んだ。
エヴァンゲリオンの致命的欠陥、活動限界も今は無い。
正に“天下無敵のシンジ様ヒカリ様初号機様”ではないか。
自分との差は開く一方……

公私共に悩み続けるアスカのシンクロ率は徐々にではあるが、低下傾向にあった。


「ママ……アタシどうしたらいいの…ママ……」


ベッドに伏し、亡き母を想い、縋るアスカ。
閉じられた瞼に流してはならない涙が滲んだ。


そして、その翌日に行われたシンクロテストでも前回より更に成績は芳しく無いものだった。

がっくりと肩を落としているアスカに、誰も言葉を掛けられない。
シンジもヒカリも……レイでさえも。

四人が帰った後

ミサトとリツコが険しい顔で話している。

「困ったわね…アスカ……」
「シンクロ率もそうだけど、それより………」
「元気が無いのがね………」
「原因は判ってるのに解決法が無い……」
「ええ、まさかシンちゃんとヒカリちゃんに頼む訳にもいかないし……」
「そうね…………」
「『シンちゃんをアスカに貸してあげて』なんて……」
「ほんとね…………」


美女二人の溜息だけが残った。





892:冒険中年
11/09/28 22:37:57.25 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-05

その翌日、本部へと向かう道、シンジとヒカリは、いつもの様に手を繋いで歩いていた。
他愛もない会話をして、時折、お互いの顔を見る。
微笑む。
それを繰り返す。

そして、それはそんな時の事。

使徒との戦闘の流れ弾で破壊された小学校の傍を歩くシンジとヒカリに、ピアノの旋律が聞こえてくる。

「シンジ……」
「うん…行ってみよう。」

その方向に歩いて行くと、瓦礫の中に何故か輝くグランドピアノがあった。
そして、ピアノを弾いているのは少年、それも見た事も無い少年である。
アッシュグレーの髪にレイと似た真紅の瞳の少年。
しかも壱中の制服を着ている。

少年は一心にピアノを弾いていた。

「上手いな。」
「上手ね。」
シンジとヒカリは演奏の邪魔にならぬ様に耳元で囁き合った。

弾き終わると、少年はシンジとヒカリに微笑みながら話し掛けてきた。

「ねえ、君達、もし知ってたら今の曲、何て言うのか教えてもらえるかな?」
「さっき街で聴いたのだけれど曲の名が判らなくてね。」

「第九だと思うよ。べートーベンの。」
シンジが答えると、ヒカリも頷いた。クラシックは苦手なヒカリにもその位は判る。


893:冒険中年
11/09/28 22:39:15.77 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-06

「そう……第九って言うの…ありがとう。」

「君、楽譜も無しに今の演奏を?」

「まあね…ボクには難しい事じゃないよ。」

「凄いんだね。君は。」

少年はシンジの言葉には答えなかった。

「音楽はいいねえ。君達リリンの生み出した文化の極みだね。」

その代わりに意味不明の言葉を紡ぎ、さらに脈絡の無い言葉を続けた。

「君達、仲が良いんだね。さっきからずっと手を繋いでいる。」

突然、初対面の相手に言われて、シンジもヒカリも赤くなった。

「あ、いけない。もう行かないと。ボクには大切な用事があるのを忘れるところだったよ。」
「また会えるといいね。」
そう言いつつ、その少年はシンジとヒカリの前から去って行った。

シンジもヒカリも言葉も無く、その少年を見送っていた。
しっかりと手を繋いで。





894:冒険中年
11/09/28 22:40:55.67 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-07

「フィフス・チルドレン、渚カヲルです。宜しくお願いします。」

その日、あの水槽の、そして先刻ピアノを弾いていた少年は、突然ネルフ本部に現れた。
しかも日本の中学生、いや、壱中の制服姿で。
その表情には、一切の緊張感など感じられず、ニコニコというよりニヤニヤとした笑みまで浮かべている。

自分達が、その存在を預かり知らぬチルドレンが存在した。
しかも委員会からの通達からすぐに本部に現れた。

その事実に、
そして、司令室に通されてきた少年の姿を見て、ゲンドウも冬月も驚愕の中に居た。
流石に二人とも顔に出す事はしなかったが。

「渚君と言ったね。遠いところをよく来てくれた。」
「我々は君を歓迎する。」

そう言った冬月は渚カヲルと名乗った少年と笑顔で握手を交わした。
ゲンドウは何も言わずデスクの上で、いつものポーズのままだ。

「作戦指揮官の葛城三佐の処へ行きたまえ。詳しくは彼女から説明させるから。」

「分りました。ではご案内を宜しくお願いします。」

その少年、渚カヲルは彼を案内して来た職員に連れられ、司令室を後にした。
不敵ともとれる笑みを残して。

冬月は、渚カヲルが立ち去るのを確認してから、ゲンドウに話し掛けた。
先刻の笑顔から表情を一転強張らせて。

「碇、あの少年は委員会が、いや、ゼーレが直接に送り込んで来た……」

「分っている。奴は老人達の間諜だ。」

ゲンドウの顔色が変わる事は無い。

「ならばどうする?」

「どうもせんよ、好きにさせておくさ。そのうちボロを出す。」

「今色々と嗅ぎ回られるのは拙いのでは無いのか?」

「問題無い…奴に分る位の情報なら既にこっちから流してある。彼の手でな……」

ゲンドウはいつもの様に口元を歪めた。





895:冒険中年
11/09/28 22:42:12.05 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-08

数分後 ミサト執務室

アッシュグレーの髪にレイと似た真紅の瞳の少年は、
どこか薄ら笑いを浮かべている様に見える。
美形と言える風貌だけに余計に不気味だ。

「君が渚カヲル君ね。司令から話は聞いてるわ。もっとも、ついさっきだけどね。」

ミサトは少年の雰囲気に何か嫌なものを感じながら、作り笑いを浮かべる。

「折角来てくれたのに悪いのだけれど、あなたに乗ってもらうエヴァは今無いわ。」
「それに追加の機体が配備される予定も無いの。当分は予備パイロットと言う事ね。」

渚カヲルは先刻からの薄ら笑いを浮かべてミサトに応えて見せた。
ミサトの話を早速小馬鹿にする様に。

「それは…急いで来たのに実に残念な事ですね。」
「でも…それなら、先輩方の誰かにアクシデントがあってリタイアする事になれば、
ボクもすぐにエヴァに乗れると言う事なんですよね?葛城三佐。」

「渚君!口を慎みなさい!!冗談にしてはタチが悪過ぎるわ!!」

意味深な笑みを浮かべる渚カヲルにミサトは顔色を変え、声を荒げた。


「怒らせてしまったのなら謝りますよ。何せボクは思った事を自由に口にしてしまうタチなものですから。」

「これから気を付けるのね、渚君。私の命令に従えないなら、今すぐにでも帰ってもらう事になるわ。」

余り悪びれる様子も無く言葉だけの謝罪をする目の前の少年にミサトは厳しい目を向ける。

「以後気を付けますよ。ボクも今送り返されたりしたら、老人達に叱られますからね。」

「老人達って?」

「いや、ボクの育ての親の様な人達ですよ。」

「ま、いいわ、付いてらっしゃい。みんなに紹介するわ。丁度訓練の時間だから。」


渚カヲルはミサトに連れられ、エヴァ各機のあるケージへと向かった。





896:冒険中年
11/09/28 22:44:58.59 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-08

「みんな、紹介するわ。フィフス・チルドレン、渚カヲル君よ。仲良くしてあげてね。」
ミサトの声も表情もアスカやヒカリを紹介した時とは何処か違っている。

「フィフス・チルドレン、渚カヲルです。宜しくお願いします。」

漆黒のプラグスーツを纏い、アルカイックスマイルを浮かべて挨拶する少年の顔を、
四人のチルドレン達は見詰めていた。
特にシンジとヒカリは驚きの視線で。

渚カヲルは、その視線をものともせずに握手を交わしていく。

「ファースト・チルドレン…綾波レイ…宜しく。」

「アタシがセカンド・チルドレン、惣流・アスカ・ラングレーよ。よろしく。」

「やっぱりまた会えたね。」
渚カヲルはシンジとヒカリを見ると、更に嬉しそうに微笑んだ。

「僕はサード・チルドレン、碇シンジです。よろしく、渚君。」

「わたしはフォース・チルドレン、洞木ヒカリです。よろしく、渚君。」

ふたりが挨拶を終えると渚カヲルは話を続けた。
「しかし、君達プラグスーツまでお揃いとはね。」
「余程仲がいいのか、それとも一緒にエヴァに乗るとでも言うのかい?」


「それはこれから説明するわ。」
ミサトが割って入った。
「エヴァの説明と一緒にね。」



897:冒険中年
11/09/28 22:46:17.79 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-09

「奥からレイの零号機、アスカの弐号機、一番手前がシンジ君とヒカリちゃんの初号機よ。」
ミサトの視線の先には紺碧、真紅、そして濃紫のエヴァンゲリオン各機が並んでいる。

「え?初号機は複座?エヴァは皆、単座では無かったのですか?葛城三佐。」
渚カヲルは疑問を口にする。彼の得ていた情報ではそんな事は無かった筈であるから。

「ええ、初号機は最近改造されたのよ。シンジ君とヒカリちゃんが一緒に乗る為に。」

「そうなんですか……」
と一拍置いた渚カヲルは、また彼としては当然の事を口にする。
「では、他の二機のどちらかを同じ仕様に改造すればボクも乗せてもらえますね?」

「残念だけど、今その予定は無いの。ごめんなさいね、渚君。」
「詳しい事はともかく、一緒に乗るのは色々難しい条件があるのよ。」

「いえ、ボクは弐号機に乗れたらなって思っただけですから。ボク、赤い色が大好きなんですよ。」

そう言って不気味にニコニコと笑う渚カヲルにアスカは焦りを感じた。
アイツはアタシの代わりに来たのだと。
全く必要も根拠も無い焦りを。


後日に行われた各種テストで、渚カヲルはエヴァ各機、特に弐号機との高い親和性を伺わせるデータを示した。

更に大きくなるアスカの焦り。
「このままでは弐号機をアイツに取られるかもしれない……」




898:冒険中年
11/09/28 22:48:15.00 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-10

そんな折に第拾伍の使徒が衛星軌道上に出現する。

「総員、第一種戦闘配置!対空迎撃戦用意!!」

「目標は衛星軌道上に停滞中。映像で確認しました。最大望遠です!」

光で出来た鳥の様な姿は、優雅な美しささえ感じさせる。


初号機はS2機関取得後の調査が不充分の為に出撃見合わせと成り、弐号機と零号機の出撃となる。


「これをミスったら、多分弐号機を降ろされる。きっとアイツが、フィフスの奴が……」
それだけではないだろう、とアスカは思う。
(ひょっとしたら、ドイツへ送り返されてしまう??)
それは嫌だ。
もう少しだけ、もう少しだけでもシンジを見て居たい。


使徒は衛星軌道から降りて来ようとはしない。

「焦れったいわね!サッサと降りて来なさいよ!一発で仕留めてやるわ!」
アスカは弐号機にポジトロンライフルを構えさせた。

「今度のは大丈夫よ。」
リツコにそう言われて持たされた、そのライフルは前回の事故原因を徹底究明し、改善と改良がなされたものだ。
射程も威力も以前のものの比では無い。コードで電力供給されるから数回の発射は可能だ。(発射速度は遅いが。)
だが、衛星軌道となるとどうだろうか?

後で出撃して来るレイの零号機の持つポジトロンスナイパーライフルの方が射程は長いらしい。
(発射速度はさらに遅いらしいが。)

アスカの紺碧の瞳がスコープのど真ん中に使徒の姿を捉えた。

「さあ、降りてらっしゃい…そうしたらアンタを終わりにしてあげるから……」

その時だった!
使徒がいきなり怪光線を放った!
そしてその光線が地表に、いや弐号機だけに降り注いだ!

「いやあああああああああ!!」



899:冒険中年
11/09/28 22:49:50.75 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-11

「使徒の指向性兵器なの?!」
悲鳴をあげて苦しむアスカの姿にミサトは動揺する。

「いいえ!熱エネルギー反応無し!!」

「パイロットの心理グラフが乱れていきます!精神汚染が始まります!!」

「まさか…心理攻撃?!使徒がアスカの、人間の心を探ろうとでもいうの??」
青葉とマヤの報告にリツコは考えを巡らせる。


「アタシのナカに入って来ないで!!」


使徒の怪光線を浴びたアスカは、逃げる事も、ライフルのトリガーを引く事も出来なかった。
その心の奥底深くに仕舞われていた筈の記憶が、全て洗い浚い掘り起こされていく。


「アタシのココロを覗かないで!!」


母のこと

狂った母のこと

父のこと

義母のこと

母の自殺のこと

母による絞殺未遂のこと 

エヴァの特訓のこと

そして、

加持への憧れのこと

初めての友人レイのこと


そして今一番大きなもの シンジへの想い
同じくらいに大きなもの ヒカリへの嫉妬




900:冒険中年
11/09/28 22:51:21.71 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-12

その嫉妬の心が、アスカと同じ形になってアスカに語り掛けてきた。

〈アンタはシンジの事好きなんでしょ?〉

「なんでアンタがそんな事を!」

〈分かるわよ、アンタはアタシ、アタシはアンタだもの。〉
〈残念だったわね、あの時もう少し、いや、もう1秒早く撃ってたらヒカリを殺せたのに。〉
〈ヒカリを殺してシンジをアンタだけのモノに出来たのに。〉

「そ、そんな事!」

〈そんな事考えた事も無いって言うつもり?だめよ!嘘ついても。〉
〈言ったでしょ?アタシはアンタなんだから。〉
〈ヒカリを殺せないなら、他に方法はひとつ…〉
〈ねえアンタ…もっと勇気を出してそのカラダでシンジを誘惑しなさいよ……〉
〈夜にベッドに忍び込んで、アンタの自慢のそのカラダをアゲればイチコロよ……シンジなんて…〉

「な、何を言うのよ……」

〈アンタ、ばかあっ?そんな事も出来ないの。〉
〈ヒカリは出来たのに?カラダを使ってシンジを落としたのに?〉
〈あの、ガキっぽいカラダを使ってさ……〉
〈意気地無し………〉

「い、イヤ……」

〈そんな事も出来ないなら、アンタはヒカリには勝てないわ!絶対に!〉
〈天下無敵の美少女も地に落ちたわね!〉

「言わないで!!」

〈あはははははははははははははははははははは………………………………〉

「これ以上アタシのココロを犯さないで!!」

〈あはははははははははははははははははははは………………………………〉



「コンチクショ――――っ!!!」

アスカは、やっとの事でトリガーを引いた!
だが、アスカの苦し紛れの反撃は使徒に届かない。
使徒の直前でライフルの放った陽電子の奔流は闇に消えてしまう。



901:冒険中年
11/09/28 22:53:06.52 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-13

「陽電子消滅!」
「駄目です!射程外です!!」

「レイは!零号機のライフルはまだなの!!」
日向と青葉の報告にミサトがヒステリックに叫ぶ!

「最終段階です!強制集束機作動中!!」
「地球自転及び動誤差修正0.03!薬室内圧力最大!全て発射位置!!」
青葉のコールにも余裕は全く感じられない。

「いきます!!」
レイは逸る心を押さえて、ゆっくりとトリガーを引く。

ずばああああああああああああっ!!

ポジトロンスナイパーライフルの一条の光が伸びる!虚空に浮かぶ使徒に向かって!!

ぱきいいいいいいいいいいいいいいんん!!

しかし、レイの渾身の一撃も命中はしたものの、使徒の強力なATフィールドに弾かれてしまった。

「駄目です!出力が足りません!!」

「出力は最大だと言うのに…………」
リツコの顔が強張る。

「アスカっ!撤退しなさい!命令よ!!」
ミサトがマイクに、モニターに向かって叫ぶ!!

「いやよ!ここで撤退なんて、死んでもイヤよっ!!」

ミサトの撤退命令も無視してアスカは、その場に留まった。
と、言うより動けなかったのだ。
ココロがイタくて……アタマがイタくて……………




902:冒険中年
11/09/28 22:55:04.08 fqFraUhP
シンジとヒカリの物語 終話  終幕のシ者-14

「何やら面白い事になってきたね。」
苦しむアスカの様子がモニターに映るのを見て、
漆黒のプラグスーツの渚カヲルは、さも嬉しそうに言った。

「何が面白い事なんだよっ!」
「そうよ!ひどいわっ!」
激怒したシンジと激昂したヒカリが、渚カヲルに掴みかからんばかりに迫った。

「父さん!出撃させて!!」
「司令!お願いします!!」
シンジもヒカリも揃ってゲンドウをじっと見る。お揃いのプラグスーツと同じに。

「無駄だよ、アスカさんと同じ目に遭うだけさ。」
「君達はそんな事も分らないの?シンジ君?ヒカリさん?」
渚カヲルは冷笑を浮かべていた。

「やってみなきゃわかんないだろ!」
「そうよ!その通りよ!」
ふたりは、もう一度渚カヲルを睨みつけた。

その時、司令席からの声。

「サード、フォース、それにフィフス、出て失せろ!戦闘の邪魔だ!」

サングラスを外し、そう言い放ったゲンドウの目はシンジとヒカリを交互に見ていた。
何か意味深な視線。


ふたりはスタッフに追い出される様に発令所を出ると、見詰め合った。
もう、渚カヲルの事など眼中に無い。

「ヒカリ、アスカを助けたい。力を貸して!」
「勿論よ、シンジ!」
シンジもヒカリも脇目も振らずに初号機を目指してケージに走った。



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