【量産機】新世紀エヴァンゲリオン【8号機】at EROPARO
【量産機】新世紀エヴァンゲリオン【8号機】 - 暇つぶし2ch650:冒険中年
11/09/13 20:25:50.33 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-06

アスカは本部内に宛がわれた自室で、ひとり燃えていた。

「アタシが次の使徒を一人でチョイチョイッと倒して見せてやれば済む事よ!」
「トップエースはアタシだって事をサードやミサトに思い知らせてやるわ!」
「そうすれば加持さんも、アタシを認めてくれる!」
(アタシを女として見てくれるかもしれない!)

最後の一言を口にする事無く、アスカは枕に顔を埋めた。
まるでそれが誰か男の胸ででも有るかの様に。



第七の使徒が現れたのは、その翌日の事だった。



「アスカっ!待ちなさい!無人ヘリの攻撃が先よっ!」

海岸線に進出しての迎撃戦。
アスカはミサトの制止を振り切って、ヒトデを前衛的にデザインし直した様な風体の使徒に突撃する。

「シンジ君!援護して!!」

指揮車に居るミサトの指示で、初号機の抱えるパレットガンが火を吹く。
ちなみに発射されているのは、通常の徹甲弾と榴弾の混合である。
劣化ウラン弾では着弾時の爆煙で視界が損なわれる事と、
やはり環境に対する影響が少なくない、と言う事で使用は当面控えられる事になったからだ。
ATフィールドを中和した上でも、余程の至近距離でなければ牽制程度にしか使えないと判明した事も大きい。

シンジの正確な射撃が使徒の動きを止める。
それを見逃すアスカでは無い!

「てやあああああああああああっ!!」

アスカの駆る弐号機が宙を舞い、
振り上げたソニックグレイブが、第七の使徒を文字通り真っ向唐竹割りに真っ二つに切り裂いた!

「どう?サード。見たでしょ?アタシの腕前。戦いは華麗に美しくよ!」

アスカはシンジに誇らしげに言った。
アスカの得意のポーズを弐号機がとっている。
しかし、この時弐号機は使徒の死骸に背を向けていたのだ。


だが、ミサトもシンジも気が付いた。使徒が、まだ死んでなどいない事に。
「アスカっ!後ろよっ!!」
「惣流さん!まだ動いてるっ!!」

真っ二つになった使徒が文字通り二体に分裂して復活したのだ。

「何よ!インチキしないでよ!!」
アスカは声を上げた。



651:冒険中年
11/09/13 20:29:07.67 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-07

二体になった使徒にはエヴァの攻撃は何も通用しなかった。
切っても突いても刺しても、すぐに再生した。
再生して反撃してきた。
シンジもアスカも疲労と焦りから、使徒に追い詰められていった。

そして、アンビリカルケーブルを切られた初号機も弐号機も次々沈黙していった。
とてもみっともない有り様で。


最早これまでとミサトはエヴァを回収するとUN軍に依頼してN2爆弾の使用を決意した。
使徒に対しての決定打にはならぬ事、数日後には復活してくるのは承知の上で。



閃光が煌めいた。



それから数時間後 ブリーフィングルーム

赤木リツコ博士の短くも屈辱的なコメントの添付された戦闘記録映像を延々と見せられ、
無駄に長い冬月の叱責、ゲンドウの止めの一言を浴びせられたシンジとアスカには、さらなる試練が待ち受けていた。

使徒に惨敗を喫したシンジとアスカに、加持が考案した、ある作戦の為の特訓が課される事になったのだ。
その特訓とは…………
シンジを絶句させ、アスカに「そんな無茶な……」と言わしめるものだった。

それから三日が過ぎた。





652:冒険中年
11/09/13 20:30:27.20 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-08

第壱中学校2-Aの教室では、ひとりの少女が憂いを秘めた眼差しで空を見上げていた。

(シンジ…今日も来ないわ。携帯も電話も通じないし。まさか…何かあったんじゃ???)

何日も学校に現れないシンジに気を揉むヒカリ。
授業も聴いておらず、号令も1テンポ遅れている。声にも張りが無い……

トウジもケンスケも同じくシンジを心配している。

実はレイも休んでいるのだが、
彼女が何日も続けて休むのはさして珍しい事では無いので、さして重大な事とは思われていない。

ケンスケが重い口を開く。
「委員長…実はさ、またエヴァが、シンジが戦ったみたいなんだ、海岸の方で。」
「詳しい事は判らないけどN2兵器も使われたらしい。」

「何やて!!」
声を荒げるトウジ。

「そんなっ!!!!」
ヒカリは目の前が真っ暗になった。
脳裏にN2爆弾に吹き飛ばされ四散するシンジの無残な姿が浮かぶ。
ヒカリは真っ青になって、しゃがみ込んでしまった。
(どうしよう……もし…シンジに何かあったら、わたし生きていけない……)

「いいんちょ、しっかりせいや!」
「とにかく後で、シンジの家に行ってみようやないか。」

トウジの提案で放課後に皆でシンジの家を訪問する事になった。





653:冒険中年
11/09/13 20:32:36.46 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-09

放課後 葛城家・玄関前にて

一行は葛城家に辿り着いた。

ヒカリの震える指がインターホンに伸びる。
(もし、シンジがいなかったら……もしひどいケガをしたって言われたら……もしシンジが……)
覚悟を決めたヒカリの指がボタンを押した。

ぴんぽーん!とドアの奥で音がした。

ぱたぱたと足音がした……

ぷしゅっとドアが開いた。

「え?」
悲壮な覚悟を決めていたヒカリの黒い円らな瞳は、今小さな点になっていた。

「はーい、ってアンタは…」
出てきたのは、あの時の亜麻色の髪に紺碧の瞳の美少女だった。

「あなたはあの時の…」
(でも、どうして、この子がいるの?)
ヒカリには、何故この美少女が此処にいるのか理解できない。

(誰や?この女。) 
(さあね?俺も知らないよ。)
トウジとケンスケはアスカと面識が無いので、更に混乱している。
その中でアイコンタクトだけで会話するとは流石は、悪代官と悪徳商人の仲であると言えよう。

「サード!アンタにお客さんよ。」
心の中で、アスカの美貌が、ちゃあーんす!とばかりに歪む。
(コケにしてくれたサードにひと泡吹かせてやるわ!)



654:冒険中年
11/09/13 20:33:58.71 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-10

「ヒカリ…トウジにケンスケ……」
アスカに呼ばれて出てきたシンジであるが、
この状況をどうやって説明したらいいものか、一瞬だが言葉に詰まってしまった。

それを見逃すアスカではない!
「アタシたちねぇ♪今一緒に暮らしてんのよぉ❤それはそれはもう、深―く愛し合ってるのォ❤ねえ、ダーリン❤」
アスカが小悪魔の笑みで、シンジが何も言えないでいるうちにとんでもない事を言ってくれた。

「シンジ!!一体どういう事なの!!」
即座に反応したヒカリはシンジに詰め寄った。だが、守秘義務の事もあるし、どう言えばいいか判らない。

トウジとケンスケは重大な事に気が付いた。
シンジと見知らぬ美少女は同じデザインのレオタードを着ているのだ。
間の悪い事に、それが口に出てしまった。
「「ぺ、、ぺあるっく…」」
「「いやーんな感じ…」」
「「やっぱり!同棲か?」」
見事なユニゾンだ!
当然ヒカリの耳にも届いてしまう。

「そ、そんな、同棲だなんて、ふけつよおおおおおおおお!!」

「ヒカリ 誤解だよ!」

「五回も六回も無いわっ!!一回でも浮気したら許さないわっ!!」

泣きわめくヒカリに胸倉を掴まれるシンジ。
突然の事に呆然とするトウジにケンスケ。

アスカは小悪魔のいや、魔女の笑みを浮かべて楽しそうに四人を見比べていた。





655:冒険中年
11/09/13 20:35:37.64 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-11

「あら、みんな、いらっしゃい。楽しそうね。」と能天気な声がする。
ミサトが加持とレイを伴って帰って来た。

ミサトが状況を説明し、初対面の面子を紹介する事で、何とか騒ぎを鎮める事が出来た。

エヴァが使徒に惨敗した事と、三日後に復活すると予想される、
使徒に対する新戦法の為の特訓とその為の期間限定合宿だという、この状況を。

新戦法とは分離合体再生する使徒に対して二つのコアに対しての2点同時加重攻撃。
その為にはエヴァ二体の攻撃のタイミングを完璧に合わせる必要がある。
その為にはパイロット二名の完璧な、体内時計をも同調させたユニゾンが必要である。
その為の特訓という訳なのだが……
(ネルフの守秘義務って?というツッコミは、この際無しである。)

「それやったら早うに言うてくれたら良かったのに。」
「委員長なんか真っ青になったり、泣いたり喚いたりで大変だったんですから。」

「それで、シンジと惣流さんの特訓は上手く行ってるんですか?」

ケンスケをじろり、と、ひと睨みしたヒカリがミサトに訊いてみる。
アスカが言った事はたちの悪い冗談で、此処に居るのはあと3日の期間限定と判って少しは落ち着いた様だが。
でも、ひとつ屋根の下で、自分は到底及ばぬ金髪碧眼の美少女が、シンジと寝食を共にするなど、
本当は堪らなくイヤなのだ。到底容認不可なのだ。
だが、あと3日の辛抱であり、ミサトも一緒なのだから間違いは起きるまいと自己暗示を掛けまくって、
何とか堪えているヒカリなのである。

「それがね……」

そこには……
【ツイスター】を改造したような一見ゲームの様な特訓用メカに挑んでいるシンジとアスカの姿があった。
ヘッドホンで音楽を聴きながらゲーム盤上を表示された位置に手足を動かしていくものらしい。
音楽に合わせるのも勿論だが左右2名のプレーヤーの動きが合うことの方が重要な設定の様だ。
(これも加持の考案である。製作は勿論ネルフ技術部。)
シンジはチェロを奏でるくらいだから音感もリズム感も悪くない筈。更にネルフでの訓練に励む日々を送っている。
だが、エヴァに関する訓練を10年も積んでいるアスカの華麗でしなやかな動きには付いていけないのだ。
もっとも、自分に付いて来るのが当たり前というアスカの姿勢にも大きな問題があるようだが。
皆が来てからだけでも数回繰り返しているのだが、すぐに【エラー】が表示されゲームが止まってしまうのだった。

「……見ての通りなのよ。」
ミサトの言葉を合図に大きな溜息をつく一同。

「当り前でしょ!このアタシにサードが付いて来るなんて到底不可能よ!」

両手を腰に当て誇らしげに胸を張るアスカに、加持は不敵な笑みを浮かべると、
ゲーム盤の上でへたり込むシンジの汗をタオルで拭いているヒカリに声を掛けた。

「ヒカリちゃん、試しにシンジ君とやってみてくれないか?」


656:冒険中年
11/09/13 20:37:20.71 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-12

「えっ!わ、わたしがですか?」
困惑するヒカリ。

「か、加持さん!!」
アスカは驚愕の眼差しで加持を見詰める。
(アタシをシロウトとのサードの恋人と比べるって言うの?加持さん!!)

だが、加持の目は真剣だ。
「ヒカリちゃん、君なら大丈夫さ。」
そう言って、ヒカリを促した。

「ヒカリ、ごめんね。巻き込んでしまって……」
「いいのよ、シンジの役に立てるなら。わたし、嬉しいの。」と、
ふたりの世界に入り掛けたところでアスカが、ごほん!と咳払いした。

現実に戻って来たシンジとヒカリは向かい合って手を握り、呼吸のタイミングを合わせる。
合ったところで「ミサトさん!お願いします。」とシンジが声を掛け、ゲームはスタートした!
初めは、やはり呼吸が余り合わずに【エラー】となってしまっていた。

(ほら、ごらんなさい。)とばかりに、アスカは余裕の笑みすら浮かべていた。

だが、ゲームを繰り返す度に、次第に、ぴたりと揃うふたりの動き。
アイコンタクトを繰り返し、ほとんとミスをする事無く62秒のゲームを終える事に成功した。
表示された得点も思いの外の高得点に驚愕する一同。
特にアスカは、
(信じられない)
(そんなバカな)
(何かの間違いよ)
(うそよ)
という表情を浮かべている。

「ブラボー!シンジ君、ヒカリちゃん。」
「こりゃ、もしヒカリちゃんがエヴァに乗れたら、迷わずシンジ君と組ませるよな、葛城?」
加持は、ぱちぱちと拍手でシンジとヒカリを称え、ミサトとアスカに交互に意味深な視線を投げ掛ける。

それは異常なほどのプライドと拘りを持ち、エヴァを操るアスカには到底聞き捨てならない事だった。

「何よ、これ!!もう、やってられないわ!!」
激昂して飛び出していくアスカ。どこか泣いている様にも見えた。



657:冒険中年
11/09/13 20:39:04.19 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-13

「シンちゃん、お願い!!」
ミサトはすぐさまシンジにアスカを追わせる。

「わたしも行きます!」
ヒカリも飛び出して行った。

レイも何を思ったか、無言ですたすたと出て行く。


「ちょっと薬が効きすぎたかな?」
と苦笑いしている加持。

「どうしてくれんのよ!加持!」
「このままじゃ人類滅亡よ!!」
ミサトは睨みつけた。
「鈴原君!相田君!留守番頼むわっ!!」と、
言い捨てて加持の襟首を掴むと、彼を引き摺る様にして出かけて行った。
その脳裏には、(やっぱりこいつの案なんかに縋るんじゃなかったわ!)という思いが沸き起こっていた。

取り残されたトウジとケンスケ、それにペンペン。
「なんでワイらだけこうなるんや?」
「さあてね…サブキャラだからだろ…」

「くええええええっ」
ペンペンが一声鳴いた。



近くのコンビニにアスカは居た。

「弐号機パイロット…そこに居たのね…」
レイはペットボトルコーナーの前にしゃがみ込むアスカの後ろに立つ。

「何だ…ファーストか……」
「何も言わなくてもいいわよ…どの道、アタシにはエヴァに乗るしかないのだから……」

「私もあなたと同じ…エヴァしか無かった…でも…碇くんと洞木さんが違うものをくれた…」

「違うもの?」

「友達という絆……それはとてもとても温かいもの……」

「友達?絆?何?」

「なってみればわかる……」





658:冒険中年
11/09/13 20:40:41.95 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-14

夕陽の綺麗な公園。
そこは、かつてシンジがヒカリに告白した場所。
同時にファーストキスの思い出の場所。

その場所で、アスカはコンビニで買い込んだ山の様なサンドイッチを自棄食いしていた。
食べてはウーロン茶で流し込んでいる。

レイは「肉キライだから」と辞退したのだが、ポテトサラダサンドと野菜サンドを押し付けられ
ちびちびと食べて、ウーロン茶をちびちびと飲んでいた。
そしてレイは友達になる事をアスカに強引に約束させられてしまったのだ。

「友達は強引になるものではないわ……弐号機パイロット……」

「あーっ、もう、うっさいわね!これは重大な決定事項よ!変更不可なのよ!!」
「それにアタシの事はアスカって呼びなさいって言ったでしょう!レイっ!」

「判ったわ……弐号機パイロット……いえ…アスカ…」


サンドイッチがもう少しで無くなる頃、シンジとヒカリはやっと公園に辿り着いた。

「「惣流さん、ここにいたんだ。」」と見事なユニゾンを披露する。

アスカは、紺碧の瞳をふたりに向ける。

「何よ、そこまで見せつけたい訳?」
「どうしようもない軟弱者ね、アンタ達。いいわ、このアタシが鍛え直してあげるわっ!」
「傷付けられたプライドは10倍にして返すのがアタシの主義よ!」

「??」
シンジとヒカリには意味不明だ。唖然としている。

「何よ!判んないの?アンタ達、ばかァっ?じゃあ判り易く言ってあげるわ!!」
「この完全無欠の人類史上最高の天才美少女のアタシが、特別にアンタ達の友達になってあげるって言ってるのよ!」
「涙を流して感謝しなさい!!」

兎に角、友達になりたがっているらしい事だけはシンジとヒカリもわかった。
((ならいいんじゃない?))と目で会話する。

「アンタ、名前は?」

「洞木ヒカリよ。」

「ヒカリね。アタシはアスカでいいわ。」

「アンタもアスカって呼びなさい、バカシンジ!」
「そうと決ったら帰って特訓よ、特訓!!」
「レイっ!アンタも来るのよっ!」

という訳でいささか強引だが、
ここで、4人に、いや、シンジとヒカリのカップルとアスカ、レイとの間に奇妙な友情が生まれた。



659:冒険中年
11/09/13 20:42:27.73 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-15


「アスカらしいわね。」
「そうだな。」

そのやり取りを見ていたミサトと加持は、この作戦の成功を確信した。
ミサトも何故か昔の事など、どうでもいい様に思えてきた。

「ところで葛城、シンジ君とヒカリちゃん、どこまで行ってるんだ?」
「そりゃ…イクトコまでよ……」
「なるほどな、だからか…じゃあ、アスカともシテもらうか?シンジ君に。」
「バカな事言わないで!血の雨が降るわ!それこそ人類の危機よ。さっきも見たでしょ、ヒカリちゃん嫉妬深いのよ!」
「冗談だって。それと、ちゃんと避妊はさせてるんだろうな?あの歳でパパとママなんてドラマのネタだぜ。」
「それは大丈夫よ。リツコが薬用意してくれたから。
もし、そんな事にでもなったらネルフの責任だって大騒ぎしてネルフで検査までして薬作ったのよ。」
「へえ~リっちゃんがねえ~。手回しのいいこって……」
加持の目が微かに輝いたのをミサトは見逃さなかった。
加持は、(この俺に調べてくれって事だな。)と理解した。そして、それは間違っていなかった。



ヒカリとレイを巻き込んでのシンジとアスカの友情?の特訓が始まった。

時に怒鳴り、時に怒り、時に泣き、そして時に笑い合い、特訓は続いた。
それは旧世紀、それも70年代の『青春ドラマ』の様だった。

アスカは初めての友人たちとの触れ合いを楽しんでいた。

シンジも同じだった。恋人であるヒカリや、トウジ、ケンスケ、レイとは違う、
このアスカという新たな友人との触れ合いを楽しめるようになった。

すると、ユニゾンの特訓は大きく前進を見せる。

まず、【エラー】で停止する事が無くなった。

そして、得点もどんどん上昇して行く……

ミサトも加持もご機嫌だ。

一方、シンジとアスカのユニゾンの完成度がどんどん高まるにつれて、
ヒカリは自分の中の嫉妬の心がどんどん大きくなっていくのを感じた。
(わたしってイヤな子なのかな…でも……)
もう少しの辛抱だと我慢する事にした。





660:冒険中年
11/09/13 20:46:41.18 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-16

その晩の事、

ヒカリもレイも帰宅し、現在、ミサトは鼻歌交じりに入浴中。

アスカはバスタオル一枚だけの姿で亜麻色の髪にドライヤーを掛けている。
ヒカリには悪いと思うが、シンジは気になって仕方が無い。
「ねえ、早く服を着なよ。」

「何よ、ならこっち見なきゃいいでしょ、エッチ!」
そう言ったアスカの顔が、また小悪魔に変わった。
「ねえ、見たいの?なら…見せてあげようか?」
悪戯っぽい光を宿した紺碧の瞳がシンジを見詰めている。

「い、、いいよ、見たくないよっ」

「アタシ、プロポーションに自信あるんだヨ…ヒカリには内緒にしてア・ゲ・ル……」
アスカはタオルに手を掛けた。

「や、やめろ!取るな!」

シンジの声を合図にするかのように、はらり!と落ちていくバスタオル。

だが、実に残念な事に、
アスカはバスタオルの下に肩紐の無いチューブトップとホットパンツをしっかりと身に着けていたのである。

「ぎゃはははは……おっかし~アンタ耳まで真っ赤にしちゃってさ、ホントにからかい甲斐のあるヤツ!」
高笑いのアスカ。布団の上を転げ回っている。

たちの悪い冗談に引っ掛けられたシンジは、ぷいっとアスカに背を向けた。



661:冒険中年
11/09/13 20:48:54.29 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-17

数分後、ジュースを二つのグラスに入れたアスカがシンジに声を掛けた。
「さっきはごめんね。」とジュースを手渡して。

「ねえ、シンジ、アンタ、ヒカリと付き合ってんでしょ?ヒカリのどこが好きなの?」
アスカは、この前から訊きたかった事を訊いてみた。それをなぜ訊きたいのかは、はっきりと理由は判らなかったが。

「え?そ、その…まあ…ん…そうだね…可愛くて、優しいところかな。」
「この街に来るまで、友達がひとりも居なかった僕に優しくしてくれて、友達になってくれたんだ。
それで気が付いたら恋人になってくれていた。また、アスカに怒られるかもしれないけど、
僕はヒカリを護りたいからエヴァに乗るんだ。こんな事言うのはちょっと恥ずかしいけど。」
「でも、初めて会った時から好きだったのかもしれない。」

その時のシンジの顔は、アスカが見た事も無い程清々しいものだった。

「ふ~ん……そうなの。ごちそうさま。」
そう言ったアスカは、ごろん!と横になった。
もうひとつ訊きたい事があった筈なのに、アスカはそれをシンジに訊く事が出来なかった。


そして、夜中、

ミサトの鼾で目が覚めてしまったシンジに聞こえてきたのは、
寝言で啜り泣くアスカの声だった。

「ママ……ママ……」

加持の言った『アスカはずっと独りで生きてきた』という言葉が思い出された。
と言う事は、アスカの両親はもうこの世には居ないのだろうか?しかし、簡単に訊ける話では無い

シンジは、取り敢えず今は忘れてしまう事にした。
当面必要なのはユニゾンを完成し、第七の使徒を倒す事なのだから。





662:冒険中年
11/09/13 20:51:08.27 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-18

翌日も友情の特訓は続き、シンジとアスカのユニゾンは夕刻になり、やっと完成した。
使徒の復活と決戦は明日の朝である。ギリギリのタイミングと言っていい。

ほっとした一同に重大な事が発覚した。
ミサトが明朝7時の作戦準備の為に、本部に泊まり込みを余儀無くされたのだ。

「じゃあ…今夜はシンジと二人きりなのね!うふっ!❤」
アスカは、再び小悪魔の笑みを浮かべてシンジとヒカリを交互に見る。

シンジは、げんなりと項垂れ、ヒカリの華奢な両肩はワナワナと震えた。

「アタシ、シンジに求められたら、全てを捧げちゃうかもよ?」

その一言にヒカリは、
「わたしが一緒に泊まるわっ!!と高らかに宣言した。

レイも「…私も……」と呟いた。


葛城家のリビング
ひとりの少年と3人の少女が並んで寝ていた。
シンジ、ヒカリ、アスカ、レイの順で。
シンジとレイは早々に眠ってしまったが、ヒカリとアスカは中々寝付けなかった。

「ねえ…ヒカリ…起きてる?」
寝付けないアスカはヒカリに声を掛けてみた。
もぞもぞしているから、まだ起きているに違いないと思ったのだ。

「何?」

「ヒカリはバカシンジの何処がいいわけ?」
昨夜のシンジと同じ質問をしてみる。

「強いところ、それに優しいところ、そして優しくて強いところ」
そうヒカリは応えた。

「強い?優しい?シンジが?アタシにはわからないわ。」
【優しい】は認めてやるのも吝かではないが、【強い】とは、一体何の話だ?とアスカは思った。

「そうかもね。」
「確かにシンジはケンカとかは弱いと思う。でもね、前にわたしが街で変な人に絡まれた時に助けてくれたの。
周りの人はみんな見て見ぬ振りでいたのにね。身体の大きな男の人だったのに、シンジは相手を殴って、
その隙にわたしを連れて逃げてくれたのよ。自分が弱くてまともにケンカしたら私を護れないって知ってたから。
自分が弱い事を知ってるから強いのよ、シンジは。」
「あ、これウチのお父さんの受け売りだけどね。」
「でも、初めて会った時から好きだったのかも知れないわ。」

ヒカリの顔も、昨夜のシンジと同じ様に清々しく見えた。
アスカにはヒカリが、薄暗い部屋なのに何故だか眩しく見えた。

663:冒険中年
11/09/13 20:52:50.84 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-19

「そうなんだ。ごちそうさま、ヒカリ。」
シンジもヒカリも同じ様な事を言うのね、と思ったアスカも同じ様に返していた。
アスカは昨夜シンジに訊けなかった事を訊いてみる事にする。何故訊けなかったのかは、まだ解らないが。
「で、アンタ達、どこまで行ってるの?」

「ええっ!」
ヒカリが赤くなっているかどうかは常夜灯の元では良く判らないが、とにかく狼狽しているのは確かな様だ。

「言っちゃいなさいよ、大丈夫、みんな寝てるんだし。」

「わかったわ………」
「わたし…もうシンジのものなの。何度も愛してもらってるわ…」
アスカの追撃に観念したヒカリは事実を吐露した。婉曲的な表現だが。

「…………」
アスカは言葉に詰まった。



「そう…もうシちゃったんだ……」
何故だか暫く言葉が出て来なかったアスカが、やっとの事でそう呟いた時には、もうヒカリは寝息を立てていた。


アスカはヒカリが寝ているのを再度確認して、シンジの部屋に行ってみた。
中には自分のとヒカリのとレイのバッグがある。
自分のは数日前に持ってきたもの、ヒカリとレイのものは彼女達が急遽取りに行ったものだ。

そして、机に椅子、それにベッド。

「このベッドでシタのね。」
たぶんそうなのだろう、とアスカは思った。
中学生がラブホテルなど行く筈も無いし、この何日かで聞いたところではヒカリには姉と妹が居るそうだがら、
ヒカリの家という可能性も低い。
面白そうだから、このままなし崩し的に、この家に居座ってやろうかと思ったのだが、
ここでシンジとヒカリが絡み合っていたのかと思うと、少し考えてしまう。


ふと、小悪魔の様に悪戯っぽい笑みがアスカの美貌に浮かぶ。

「やっぱり、アタシって冴えてるわね。」

しかし、なぜ自分が、それに拘るのかは彼女の鋭敏かつ明晰な頭脳をもってしても、
その時点では理解出来ていなかった。


ともかく名案を思い付いたアスカは布団に戻ると、すぐに眠りに落ちて行った。


664:冒険中年
11/09/13 20:54:28.51 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-20

そして翌朝となった。

MAGIの予測通りに復活した第七の使徒は、
UN軍や無人ヘリ隊の攻撃を悠然と受け流して第三新東京市に侵攻してきた。

AM07:00 作戦は開始された。
前回の戦いで初号機と弐号機を翻弄した第七の使徒は、見事なユニゾンを見せる両機に逆に翻弄される。
ミサトの指揮する無人ヘリや兵装ビルからの的確な援護射撃も加わり、
使徒は苦し紛れに無意味な分裂合体を繰り返すが、それも空しく、どんどん追い詰められていった。

そして、

「わあああああああああああああああっ!!」
「たあああああああああああああああっ!!」

空中高く舞い上がった濃紫と真紅、二体のエヴァのフライングドロップキックが、
コンマ001秒のずれも無く二つのコアに決り、第七の使徒はその衝撃に耐えきる事が出来ずに爆発、四散した。
数日の猛特訓を必要とした大作戦は、予定通りの僅か62秒で終了した。

(ただ、使徒の爆発の影響で市の外れにある廃棄寸前のマンション群が一斉に倒壊した事だけが予定外だった。
しかし、住人は全員外出中だったので人的被害がゼロだった事は不幸中の幸いだったと言えよう。
同地区はこれを機に再開発が開始される事になった。)

「やったわ!ばんざーい!ばんざーい!!」
ミサトは加持と手を取り合って喜んだ。
数年前のわだかまりは、もう何処かへと消えていた。

その様子をリツコは複雑な表情で見詰めていた。



シェルターの中で轟音を聞いたヒカリは、シンジとアスカの勝利を確信した。
少しだけではない嫉妬を覚えながらも、アスカに、もう会う事が無いのかと思うと少々寂しい気もした。

大卒であり、才能溢れるアスカはリツコの指導の元で技術者としての養成を受けながら、
パイロットの任務に就く予定だったからである。
宿舎も市内の職員宿舎だと聞いていた。

シンジも同じだった。
この数日間振り回されっ放しだったが、これでエヴァでの実験や訓練、
それに実戦の時しか顔を合わせる事は無いのかと思うと、少しだけ寂しい気がした。(ヒカリには極秘だが。)

ただ、少々気になったのは、作戦終了後のデブリーフィングの後で、
アスカとレイが何か意味深な視線を自分にチラチラと投げ掛けながら、
ミサト、リツコそれに加持と何やら話し合っていた事だが、
一刻も早くヒカリに逢いたいシンジは早々に本部を後にしてしまった。

彼は、これを後々後悔する事になる。





665:冒険中年
11/09/13 20:56:42.64 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-21

さらにその数日後の事………

第三新東京市立第壱中学校 AM08:30

亜麻色の髪を靡かせた転校生が2-Aにやって来た。

「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしくお願いします。」

日独のクォーターでありながら容貌は何処か東洋的であり、
その紺碧の瞳に亜麻色の髪、白い肌とプロポーションは西洋的という美少女。
笑顔を振り撒く彼女の周りには、たちまち人の輪が出来た。

シンジもヒカリも驚きの余り声も出なかった。
アスカが第壱中学に、しかも2-Aに転入して来る事など、何一つ知らされていなかったのだ。
ミサトもリツコも加持も、誰も何も教えてくれなかった。

「「だ、大卒のアスカが、どうして?」」
シンジとヒカリは悪い夢でも見ているかの様だった。

「そうね、日本の中学校っていうとこにも行ってみたかったし、アンタ達と一緒だと面白そうだからってトコかしら?」
「よろしくね、シンジ、ヒカリ。」

小悪魔の笑みを浮かべ、亜麻色の髪を靡かせて、悪戯っぽい光を宿した紺碧の瞳の主が、シンジとヒカリに微笑んだ。

「「お、面白そうって……」」
シンジとヒカリは顔を見合わせ、大きな溜息を吐いた。


そしてこの二人は……

「のう、相田屋。」
「何でございます?鈴原お代官様。」
「美しい“おなご”よのう。」
「流石はお代官様、お目が高い。」

再びトウジがニヤリと笑い、ケンスケの眼鏡が再び怪しく光った。
浪花の商人(あきんど)とカメラオタクががっちりと握手を交わす。

「売れるぞ、これも売れるぞ!」
「そうや!もうひと儲け出来るで!!写真にあの性格はあらへんからの!!」

そう、猫の毛皮を数十枚着こんだ虎だろうが小悪魔だろうが、猫に写ってくれればそれで良いのだ。

ケンスケは愛用のデジタル一眼レフのスイッチを入れた。
謎の資金で新たに購入した愛機は輝いている。装着されているレンズも以前の物より1ランク上だ。
描写力も素晴らしい。
きっと傑作が撮れるに違いない。

だが、今回はケンスケの機材もトウジのジャージも新品になる事は無かった。
代わりに、アスカがヒカリやレイ、他の女子生徒をファーストフードや甘味処へと誘う姿が頻繁に見受けられる様になった。
これは彼女たちの交友と友情を深めるのに大きな役割を果たした、と後に語られている。
だが、アスカはその資金の出所を語る事は一切無かったという。

トウジとケンスケに大きな誤算があったのは間違い無かろう。
悪代官と悪徳商人の野望は潰えたのだ。


666:冒険中年
11/09/13 21:01:18.51 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-22

そして、シンジとヒカリにも、それは降り掛かって来た。

シンジとヒカリは久々に共に過ごそうと手を繋いで葛城家へと戻って来た。
ミサトも早く帰って来ると言っていたので肌を合わせる事は出来ないだろうが、
ふたりでゆっくり会話を楽しんで唇を合わせる事くらいは出来るだろう。
シンジとヒカリは、数人の引っ越し業者のスタッフと入れ違いにエレベーターに乗った。

中で微笑みを交わすふたり。

エレベーターを降りる。そして部屋に向かって歩いて行くと……
葛城家のドアの前に二つの人影を見つけて、シンジとヒカリの足がピタリと止まり、身体がビシッと硬直した。
人影は、二つとも見慣れた第三新東京市立第壱中学校の女子生徒の制服を着ていた。

一つめは蒼銀のシャギーの入ったボブの髪に、真紅の瞳
二つめは腰まで届きそうな長い亜麻色の髪に、紺碧の瞳

そんな容姿を持った人物はごく限られていた。
勿論、綾波レイと惣流・アスカ・ラングレー、二人だけである。

「お帰り!シンジ、遅かったじゃない。いらっしゃい、ヒカリ。」
「碇くん、お帰りなさい。洞木さん、いらっしゃい。」
アスカはいつもの小悪魔の笑みで、レイは僅かに、はにかんでいた。

「「え?アスカ、綾波さん、い、今なんて言ったの?」」
驚愕と動転の極みにいるシンジとヒカリは、絶妙のユニゾンを披露していた。

「アタシ、このマンションに住む事になったからよ。」
「私も、このマンションに住むの。前の部屋、壊れたから。」

「「ま、まさか、この部屋?」」


667:冒険中年
11/09/13 21:03:43.16 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-23

「アンタ達、ばかァ?~この部屋じゃないわよ。」
「私はそれでも良かったけど……」

「ここのマンションにある1DKの部屋よ。」
「そう、その部屋。」

「「ええっ」」

「アタシは702よ。」
「私は701。洞木さんが、この前、五階も六階も駄目だと言ったから七階にしたの。」

「「そ、そんな……」」

「それからね、アタシ達お料理出来ないでしょ、そしたらミサトがね、『ならウチに来て食べればいいわ』って言ってくれたから、よろしくね、シンジ。ヒカリも偶にはお料理しに来てくれるんですって?よろしくね、ヒカリ。」
「碇くん、洞木さん、よろしく……」

「「な、何で……」」

「アタシ、ピーマンとカボチャはキライだから。それと、ドイツ料理なんて言わないけど偶には洋食も出してよね!」
「私、肉と生の魚、きらい……好きなものは“ニンニクラーメン・チャーチュー抜き…お願い…」

「「こうなるの??」」

「ねえ、荷物の整理手伝ってくれるわよね?シンジ?ヒカリ?」
「碇くん、洞木さん、手伝って……」

こうして、ひと時の逢瀬を夢見たシンジとヒカリは、哀れにもアスカとレイの部屋に連行されて行くのであった。
ヒカリは、あの日の予感が現実のものになってしまった事を心から嘆いた。
(この事だったのね……あの悪い予感…)




668:冒険中年
11/09/13 21:07:14.63 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-24

ほぼ同時刻・ネルフ本部内・ミサト執務室


ミサト、リツコ、加持が談笑している。
学生時代からの馴染みである彼らは、きっと昔もこうやってつるんでいたのだろう。

「へえ、アスカがねえ~自分から言ったのかい?中学校に行きたいって?」
「そうなのよ。余程シンジ君やヒカリちゃんが気に入ったのね。
初めは『大卒のアタシに中学校なんて冗談じゃないわ!』って大騒ぎしてたのに。」
「“女を変えるのは男”ということよ、ミサト。レイも変わってきたわ。最近シンジ君絡みの質問や相談されるもの。」
「まさかアスカも?レイも?」
「こりゃあ、まさしくシンジ君の『才能』だな。将来が楽しみだ。」
「加持、あんた、まさかシンジ君にヘンな事、教えて無いでしょうね?」
「おいおい、俺は何もしてないよ。きっと血筋だよ。司令の。」
「きっと、これから苦労するわよ、ヒカリさん。シンジ君は、誰かさんと違って自覚が無いもの。」
「おいおい、リっちゃんは俺を誤解してないか?」
「いいえ、私は、極普通に正確に分析しているつもりよ。」
「あたし、アスカはウチに住まわせようと思ったのになあ……」
「シンジ君を物置に押し込めてかい?」
「仕方が無いでしょ、他に部屋無いんだから。」
「知ったんだろ?シンジ君とヒカリちゃんがどこまで行ってるのか……」
「そうでしょうね……」
「そっか、なら住めないわよね。シンジ君とヒカリちゃんの寝た部屋になんて……
それにしてもレイの住んでた部屋が使徒の爆発で吹っ飛ぶなんてね。不可抗力とは言え、レイも災難ね。」
「葛城、本当に不可抗力だと思うのか?」
「どういう事よ?」
「アスカとレイが謀った、と言う事でしょ?加持君の言いたいのは。」
「そう言う事。しかも今となっては、その証明も出来ないしな。」
「でも良かったわね。ミサトのマンション、空き部屋ばかりで。」
「ほんと不思議よね。あんないいトコなのに。ウチの隣でも良かったんだけど、
アスカとレイが言ったのよ。相部屋はいやだってね。」
「それはそうよ。シンジ君に関係する事以外、あの二人は『水と油』だもの。
シンジ君の存在無しでは、エヴァでの連携も難しいでしょうね。」
「シンジ君が人類存亡の鍵を握るってか?何かアニメの主人公みたいだな。」
「「………………………」」

そこで3人の会話は途切れた。





669:冒険中年
11/09/13 21:09:48.29 dUbKRtPS
シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実-25

ほぼ同時刻・ネルフ本部司令室


「碇、いいのか?レイを外に出して。」
冬月はレイの転居をあっさりと認めたゲンドウの裁定に疑問を投げ掛けた。

「前の場所はもう無いのだ。仕方あるまい。それに…もうダミーは完成した。問題無い。」
いつもの様に顔色一つ変わる事は無い。



ゲンドウが冬月に無言で書類を手渡した。

「いきなり何だ、この書類は?」

「マルドゥック機関の報告書だ。」
それは、見せ掛けだけの、もっともらしい体裁の書類だった。

「何だと!四人目を使うというのか?!」
勿論、冬月も誰が適格者を選び出しているのかは知っている。

「そうだ。」

「しかし、エヴァはもう無いぞ。」

「問題無い。もうすぐ手に入る。」
ゲンドウはいつものポーズで口元を歪める。

冬月は、嫌な予感を覚えながらも、恐るおそる書類を開いた。
内容を見るなり、大きく天を仰いだ。

「こ、この子は!!」
(ユイ君、君は、この悪魔に魂を売った男と、その男に力を貸してきた私を許してくれるかね?)
(シンジ君……君は絶対に許さんだろうな……)


冬月はしばらく口を開く事が出来なかった。



【シンジとヒカリの物語 拾壱話 予感と現実  終了】


670:冒険中年
11/09/13 21:11:49.59 dUbKRtPS
拾壱話……投下させていただきました。

皆様、いろいろなコメント、ありがとうどざいます。

671:名無しさん@ピンキー
11/09/13 21:12:13.09 PjTcF6Tl
相変わらずの長編おつ

672:名無しさん@ピンキー
11/09/13 21:40:47.56 6ZNZvXhk
キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!
今回も読ませる作品、ナイスでした

673:名無しさん@ピンキー
11/09/13 22:02:30.60 iE62BjFK
乙です。加持キター!!!
リツコさんの薬が気になってたまらない

674:名無しさん@ピンキー
11/09/14 00:02:37.65 IZ+M6wku
乙です
貞アスを持ってきたのは良い計算と思う
(庵アスは多分制御不能だからw)
ここから一気に参号機事件に跳ぶのかな?

675:名無しさん@ピンキー
11/09/14 19:10:34.69 i1uPNpGj
一人しか書いてる人がいないのか

676:名無しさん@ピンキー
11/09/14 19:20:34.66 S5Gu8Sjs
長いよ
長編やりたいならブログなりホームページなり作ってそこでやりなよ

677:名無しさん@ピンキー
11/09/14 19:49:01.24 qp1fZdGj
最近投下ないしいいんじゃないかな。確かに長編過ぎな気もするけど

678:名無しさん@ピンキー
11/09/14 23:21:10.83 00RiL1O7
冒険中年氏を全力で支持する
だからこそ途中で連載投げ出されて未完でモヤモヤするのだけは嫌だよ

679:名無しさん@ピンキー
11/09/14 23:39:54.76 M2q6xazl
楽しいですよね。ヒカリがちょっと可哀想だけど。
加持好きなので出演嬉しい

680:名無しさん@ピンキー
11/09/15 23:18:01.80 Msa5SNuT
長編おkだな。書ける実力のある人で完結してくれるなら大歓迎
大丈夫だ。長いと言ってる方も読んでるから。頑張るのだ!


681:名無しさん@ピンキー
11/09/15 23:43:05.07 VAs5P5Jx
自分も支援します。エロ抜きで面白いよ~

682:冒険中年
11/09/16 20:44:46.44 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-01

『俺は、君に俺の経験を語る事しか出来ない。
後は自分で考えて行動するんだ。
誰も君に強要はしない。
自分で考え、自分で決めろ。
君には君にしか出来ない、君になら出来ることがある筈だ。
今の自分が何を為すべきなのか。
今の自分に何が出来るのか。

まぁ、後悔のないようにな。』


シンジは、ある男の言葉を噛み締めて聞いた。
そして日々思考を巡らし、色々な場所に足を運んだ。
忙しい最中、時間を見つけては…

「よし、ここなら良い……」

「ここで、こうして……」

「あと、必要な物は……」


そして今日を迎える……



某月某日 PM04:00 第三新東京市立第壱中学校

シンジは、ヒカリを伴って音楽室に入った。
入ってすぐに中からカギを掛ける。
そして、更に準備室に招き入れて、同様にカギを掛けた。

「ねえ、シンジ、チェロを聴かせてくれるのなら、音楽室の方がいいんじゃないの?」
「それにチェロ、どこにあるの?ここには無いみたいだけど。」

ヒカリは少し不安になって、シンジに話し掛けた。

「大丈夫さ、チェロならちゃんとあるよ。」
シンジは、にこにこと微笑むと、ヒカリを背後から抱き締めた。


683:冒険中年
11/09/16 20:47:13.48 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-02

「え?何するの、シンジ!」

ヒカリは、急な事に驚いて声を上げる。

「ヒカリが、僕のチェロさ。」
シンジは抱き締めたヒカリの身体を弄り始めた。
腰に回された手が競り上がり、胸の膨らみを包む。
「ね?チェロと同じ形をしてるよ、ヒカリの身体……」

「ああ…い、いやよ、こんなところで、触らないで……声でも聞かれたら…」

口では拒みながらも、セックスを、性の歓びを知っているヒカリの身体は、
シンジの愛撫から逃れようとはしない。
アスカとレイが葛城家のあるマンションに住み付いて?からというもの、すっかり御無沙汰なのだ。
ヒカリにだって性欲はある。

「音楽室は完全防音さ、聞こえやしないよ。」
包んだ手が、膨らみを揉んだ。

「はうっ…人が…人が来るわぁ……」

「カギが内側から二つも掛けてある。大丈夫さ。」
シンジは制服のジャンパースカートの両脇からするりと手を入れて、
真っ白なブラウスの上からヒカリの乳房を揉みしだく。

「ああっ……いやああ…ここじゃ…いやぁよ……」

「ほら…良い音色のチェロでしょ?ヒカリは。」
ヒカリの耳元で囁きながら、シンジの指先はブラウスの膨らみの上をなぞり、
ブラの中の乳首を探り出してコリコリと刺激する。

「そんな……ああん…だめ、だめよぅ…人が来ちゃう!」

「来ればいいさ、見せてあげようよ、ヒカリの感じてるところ。」
シンジは、ブラウスの小さなボタンに手を掛けた。

「ああっ…やだぁ!このヘンタイ!」

「ヒカリを悦ばせる為だったら、僕はヘンタイにだってなるよ」
ボタンがひとつずつ外され、真っ白なブラウスの中から白いブラジャーと白い胸元が見えてくる。



684:冒険中年
11/09/16 20:48:41.98 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-03

「やあっ…シンジがヘンタイなんて…ああっ!」

「今日のヒカリはヘンタイの僕に、ここで、音楽準備室で犯されるんだよ……」
ブラジャーが強引に擦り上げられて、ヒカリの可愛らしい乳房が、ぷるんと出てきた。
シンジの指先がピンクの乳首を摘む。摘んで転がす。

「あああっ!あううっ!」

「僕の大好きな音色だよ…ヒカリ。」
シンジは襟元のリボンを解き、ジャンパースカートの肩をブラウスから外す。
ブラウスも、ぐいっと開いて、ヒカリの細い首筋に唇と舌を這わせた。

「だめっ…そこ…よわいの…あああ……」

「知ってるよ。だからさ…」
シンジは、首筋を強めに吸った。
ちゅうっ、と音を立てて。

「ああ……」

ヒカリの足元がふらついた。
シンジはヒカリの前に回り込んで抱き締める。
抱き締めたまま、壁にヒカリを押し付けた。
そして唇を奪う。
乱れた胸元を弄り、乳房を揉みしだき、指先で乳首を弄んだ。

(犯される……また、シンジに犯される……わたし…)

ヒカリの秘めたレイプ願望が、頭を持ち上げる。

(いい……きもちいい…どうしてなの……)


『いいか、シンジ君。
女って奴は周囲の状況の変化には敏感な生き物だ。
だから、【普通、セックスしない様な場所】とか、【誰かに見られるかもしれない場所】での行為には、
異常に燃えたりするものなんだ。
いい例が【青姦】とか【カーセックス】さ。
まあ、リスクも高いから、君には勧めないけどね。
だが、君の身近にだって、そんな場所はある筈だよ。
良く周りを見てみるんだ。きっと見つけられる。君なら……』

シンジのこころの中でも、あの男の言葉が蘇っていた。



685:冒険中年
11/09/16 20:50:47.11 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-04



「ああ…いやぁ……だめぇ…ううっ……」

シンジはヒカリの胸に顔を押し付け、
ぺろぺろと、左右の乳房を舐め、ちゅうちゅう、と音を立てて両方の乳首を吸い立てた。
ヒカリは拒否の声を上げながらも、その手はシンジの頭をぐいぐいと押さえ付けている。
まるで求めているかの様に。

「そこは…いやぁ……」

ヒカリがまた声を上げた。
シンジの右手がスカートの中に入って来たからだ。
ヒカリの一番敏感な場所を目指して、手は太股の内側をなぞり上げていく。

「やめてぇ…だめぇ……」

「あああああっ!」

どうやらその場所に辿り着いた様だ。

「あれ?ヒカリ、湿っぽいよ。ひょっとして濡れてるの?」
シンジは胸元から顔を上げてヒカリの顔を見た。

「いやぁぁ…言わないで…」

「でも、ヒカリの身体は嫌がって無いみたいだよ。どっちが本当なの?」
まるで誰かのセリフの様なシンジの物言い。

「ぁああ…あぁあ……ああぁ…」

ヒカリは応える代わりにシンジの愛撫に身を任せ、歓びの声を上げた。

「ぁう…ぁぅ……ぁふっ…んぁあああ……」

くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…

ヒカリのスカートの中から聞こえるイヤらしい音。
シンジの手が下着の中へ滑り込んだらしい。
そして指は、蜜が溢れる花びらの隙間に出入りを繰り返しているに違いない。

「ああ……あはっ…んぅ……いやァ…もう………」



686:冒険中年
11/09/16 20:52:48.23 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-05

ヒカリの両の手は、シンジの逞しくなってきた両肩をしっかりと掴んでいる。
しなやかな指先はカッターシャツを通して肩に食い込んで、恐らくは爪痕を付けているだろう。
シンジの愛撫に震え続けるヒカリの胸元や乳房にも愛された痕跡が記されている。
ふたりとも当分の間、家庭での服装や風呂、体育の授業の着替え等には細心の注意を払わねばなるまい。

くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…

シンジの指は、まだ蠢きを止めない。
すると、ヒカリの身体の震えが激しさを増してきた。

「だめっ……もう…いや…あふっ……ああ……い……ク…」

がたがた、ぶるぶる、と、まるで悪寒の様だ。

くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…

「イ……く…イ……くぅ…あああああ……いく…イク…イクうっ!!」

シンジの指の技だけで高みへと追いやられたヒカリは、ぐったりとしてシンジに身を預けた。

「ハア…はあ……ゆび…指でなんて……いや……いやなのに…いいの…とても…」

ヒカリは乱れた息のままシンジの肩に顔を埋めている。

「素敵だよ、ヒカリの感じてる顔や声…ビデオに撮りたいくらいだ。」
シンジはヒカリの汗と髪の芳香を吸い込みながら囁いた。

「やだよ…そんな…ヘンタイみたいなこと…………」

シンジは応える代わりにヒカリの濡れた下着をゆっくりと引き下げる。

「やだ……脱がさないで…」

ヒカリの拒絶は言葉だけだ。
抵抗もしない。
シンジはするすると下着を足元まで引き下ろすと左右の足先を持ち上げて抜き取ってしまった。
机の上にあるヒカリの鞄の上に置く。
白い下着が、あの部分が濡れているのが良く解る。

「ヒカリ、ほら、こんなに濡れてるよ。」
シンジは下着を指差した。
アドバイスをくれた、あの男は『彼女の顔の前に持って行き、見せ付けるんだ』と言ってくれたのだが、
シンジは、ちょっと可哀そうかなと思って、アレンジしたのだ。


687:冒険中年
11/09/16 20:54:59.55 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-06

「いやっ!見ないで!見ないで!!」

ヒカリの円らな瞳は涙で濡れていた。
シンジは今のヒカリの様子から、自己の判断が正しかった事を確信した。

「ごめんね、ヒカリ、ちょっと待ってね。」
シンジは制服のズボンもトランクスも脱ぎ捨てた。
もちろん股間のモノは隆々といきり立ち、天を見上げている。
そして、イったばかりで、ぼうっとしているヒカリの手を取った。

「……どうするの?」

「ヒカリも、ずっと立ってたから疲れたでしょ、だから少し座ろうよ。」
シンジは、スツールタイプの椅子を見つけると自分が先に腰掛けた。

「わたしは……どこに座ればいいの?」

「僕の上だよ。さっきはヒカリが僕のチェロになってくれたから、今度は僕がヒカリの椅子になってあげる……」
シンジはヒカリの手を引いて招き寄せる。
「さあ、僕を跨いで、スカートを捲り上げて……」

「これでいい?」

ヒカリは何かに魅入られた様にシンジの言う通りに、彼を跨ぎ、スカートの裾を持ってするすると捲り上げた。
スカートの中から白い太股が現れ、更にはまだ薄い漆黒の草むらと濡れそぼる花びらも見える。

「ゆっくりと腰を下ろして…そう、そうだよ……」
シンジは下りてくる花びらの合わせ目にいきり立つモノを向けた。
もう少しだ。
ぬるり!とする感触。先端が触れた。

「あ!」

ヒカリが声を上げた。
ずぶずぶとヒカリの花びらの奥に呑み込まれて行く。

「ああっ!」
「当たってる……」

ヒカリは大きく仰け反り、シンジは、抱き締める様にして支えた。
ヒカリもスカートを放してシンジにしがみつく。
ふたりの身体は更に密着した。


688:冒険中年
11/09/16 20:56:56.69 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-07

「あああああ……いい…いいわ!」

「奥まで…ああ……入って…あうっ……当たってる……」

シンジが何か言う前に、ヒカリの本能が自ら腰を上下させていた。

ぬちゅ…にちゃ…にゅるる…じゅる…

ふたりの粘膜が触れ合うイヤらしい音がする。
普段はベッドの軋む音で聞こえないイヤらしい音が。

にゅるる…じゅる…ぬちゅ…にちゃ…

「ほら、ヒカリのスカートの中でイヤらしい音がしてるよ。」

「あん!ああん…言わないで……ああ…」

…じゅる…ぬちゅ…にちゃ…にゅるる…

ヒカリの細い腰が上に跳ね、下に沈む。

シンジも突き上げる。

その度毎に、ヒカリは快楽の塔の階段を駆け上がるのだ。
シンジが時折思い出した様に、揺れる乳房や跳ねる乳首に悪戯をする。

「あん!…あふっ…ああぁぁ……」

その行為もヒカリを追い立てるのだ。
そして…………とうとう…………

「ああっ!もうっ!だめェっ!」

「い、イ…いくっ……イクぅっ…………」

「僕もイクよっ!ヒカリ!!」
シンジも限界が近い様だ。
「一緒にイこう!ヒカリ!」

「ああ……いく…いっちゃう…………イっちゃううううううううっ!!!」

ヒカリが遂に快楽の塔を登り切り、高みへと達した。


689:冒険中年
11/09/16 20:59:42.18 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-08

「くううっ!」
シンジも小さく呻いて、自分に跨るヒカリの花びらの奥へ欲望の噴流を打ち上げた。

その時だった。

「もう…………わたし……………………」

ヒカリの全身から力と魂が抜け落ちた様に、シンジにもたれ掛ってきた。
どうやら気を失ったらしい。

シンジは、自身もイったばかりでトロンとしていたのだが、
寸でのところで気が付いてヒカリの身体を抱き留める事が出来た。


『男が女を守る。これは当然の事だ。
守って守り抜いて、自分の子を産んでもらわなければならないからな。
シンジ君、君は立派にヒカリちゃんを守ってる。実に大したもんだ。中々大人だって出来はしない。
でもな、それだけじゃ駄目なんだ。男は女を悦ばせてやらなきゃならない。
そう…【セックス】でね。
そうしないと、いつの間にか、腕の中から居なくなってしまう……

……実に厄介な生き物だよ、女って。』


気を失ったヒカリを抱き締めるシンジに、また、あの男の言葉がリフレインした。


2、3分だったのか、もっと長かったのか判らない。
シンジの腕の中でヒカリが、やっと目を覚ました。

「大丈夫?」
とろんとしているヒカリの顔を覗きこむ様に、シンジが声を掛けた。
まだ、精を放って小さくなったが、シンジのモノはヒカリの【中】にある。

「わたし……どうしたの?」

ヒカリの声にシンジが応えた。

「その…僕と一緒にイったら…気を失ったみたいになったんだ……」

「そうなの……よかったのよ……」



690:冒険中年
11/09/16 21:02:25.26 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-09

「え?」

「とってもよかったの……ものすごく…きもちよかった……でも……」

「でも?」

「でも、ものすごく恥ずかしかったわ……こんな場所で…スルなんて……」

ヒカリの円らな瞳から大粒の涙がぽろぽろと零れる。

「ごめんね…ヒカリ………僕、ヒカリに…悦んで欲しかったんだ……最近シテなかったから…」
シンジは、少々やり過ぎたのかなと思い、ヒカリに詫びた。

「きもちよかったわ…よかったけど、こんな…誰かに見られるかも…………しれないトコで…」
「恥ずかしかった…とても恥ずかしかったわ…………」

不意にヒカリの顔付きが変わった。

「わたしに、こんな恥ずかしい事させて…………責任取ってもらうわっ!」

それは、以前に『一回でも浮気は許さない』と言われた時と同じ表情だった。

「えっ?せ、責任って……またアイス?」

「そんな事じゃ済まさないわよ。わたしの家に来て正式に挨拶して!
お父さんとコダマお姉ちゃんと妹のノゾミに会って、わたしと付き合ってるって言ってちょうだいね!
そうしてくれたら許してあげてもいいわ……ねえ、し・ん・じ……」
「あと……アイスもお願いね!そう一カ月で許してあげる。」

ヒカリは途端に表情を再び一変し、ニコニコと微笑んだ。

だが、シンジの目にはアスカを遥かに凌駕する小悪魔の笑みに見えた…
彼は後に近しい友人二人にその様に語ったという。


シンジは、ヒカリが身繕いする間に、どこに用意してあったのか、
ティッシュやらウェットティッシュ、消臭剤、ガムテープ等を動員し、その場の証拠隠滅を図った。
きれいになり過ぎずに痕跡を巧みに消して行く様は、妙に手慣れていたと、ヒカリは後に姉に語っている。
まるで、誰かの教えを受けたかの様だとも。


ヒカリが「お父さんがシンジに会いたがってるから、来週、家に来て。」と、シンジに告げたのは翌日の事だった。

シンジは覚悟を決めた。



691:冒険中年
11/09/16 21:05:11.27 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-10

その二日後の事

ネルフ本部内・ミサト執務室 PM06:30

「よう!葛城、そろそろあがりだろ?一杯飲みに行こうぜ。いい店見つけたんだ。
そこはな、パスタを山盛りに出してくれるんだぜ。いいワインも揃ってるし。」

「ありがとう。丁度良かったわ。あたしも、あんたに会いたかったの。来てくれて嬉しいわ。」

能天気に自分を誘いに来た加持を、ミサトはかつて見せた事も無い様な笑顔で出迎えた。

加持は、瞬時にその笑顔の奥に何か不吉なものを感じたが、時既に遅し、彼の退路は断たれていた。
ドアはロックされてしまっていたのだ。ミサトだけが知る16桁の暗証番号を入れない限り開ける事は不可能だ。

「そりゃ光栄だな。」
加持は努めて冷静を装った。

「ねえ…ちょっち訊きたい事があるんだけど……」
「これ、保安部からの報告書。これによれば、三日前、シンジ君は16:04にヒカリちゃんを連れて中学校の音楽室に入った。
そして出てきたのは17:32。一体何をしていたと思う?加持君?」

「何だよ、俺に解る訳ないだろう?」
加持は、そう言いつつも、愛弟子の戦果を内心とても喜んだ。
(やったな!シンジ君。音楽室とは考えたな。流石だ。やはり君には才能がある!)

だが、その僅かな表情の変化を見逃すミサトでは無い。

「音楽室には窓も無いし、しかも完全防音。保安部の連中にも解らなかったそうよ。
何してたのかしらね?シンジ君とヒカリちゃんは……一時間半も…音楽室で…ふたりきりで……」
「特殊監査部の、あんたの意見を訊きたいのよ。腕利きなんでしょ?」

「さあてなぁ…歌でも歌うか、楽器の練習でもしてたんじゃないのか?場所から考えれば…」
加持には、シンジがヒカリと言う楽器を奏で、ヒカリが女の悦びを唄う光景が浮かんでいた。

だが、その僅かな表情の変化を見逃すミサトでは無い。

「あたしはね、シンジ君とヒカリちゃんが何か【いけない事】をしていた様に思えてならないのよね。」
「それに、誰かが、【音楽室】を使う様に入れ知恵したんじゃないか?ってね。」
「ねえ?か・じ・く・ん……」

加持にはそのミサトの微笑みが悪魔の様に見えた。


692:冒険中年
11/09/16 21:07:33.26 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-11

そして、その恐怖が、一瞬だけ彼から冷静さと思考力を失わせた。

「お、俺は何もシンジ君に言って無いよ、音楽室を使えなんて。自分で考えろって、あ!しまった!!」

もう遅かった。血の気が失せて行くのが自分でも判る。

「やっぱり、あんただったのね!純真なシンジ君にヘンな事を教えてるのは!!」
「ゆっくりと時間を掛けて訊き出してやるわ!!」
「夜は…これから…長いんだ・か・ら……」

加持は、言葉を発する事も出来ずに、全身から冷や汗が流れ落ちるのを感じていた。


その数分後、ネルフ本部から特殊監査部・加持一尉の姿が消えた。
翌日の早朝、彼のアパートの前で青いスポーツカーから転がり落ちる様に降りて来る姿を目撃されるまでの間の
加持一尉の行動は本部でさえも把握できていない。
また、ほぼ同時刻に作戦本部・葛城一尉も姿を消していたので、何らかの関連があるとの見方が強い。

そして、その日から加持一尉は、勤務中も何処か疲れた表情を見せる様になった。
対照的に葛城一尉は、とても元気に勤務に励み、一時は荒れて見えた肌も前にも増して艶々としていた。


そんなある日、実験の為に本部を訪れたシンジは、自販機で煙草を買うリツコに話し掛けた。
「あの、リツコさん、ちょっといいですか?」

「何かしら?」

「この頃ミサトさん、凄く機嫌がいいですね?」
「それに、何と言うか、綺麗になった様な気がするんです。ミサトさんに何かあったんでしょうか?」

「さあ、良く解らないけど?それがどうかしたの?」

リツコには、勿論その理由は解っている。
それが、事更に騒ぎ立てたり、あれこれ詮索する筋合いの無い事も。

「いや、あの、もし何かいい事があったのなら、お祝いとかしてあげた方がいいのかなって思ったんです。」

リツコが意味深な笑みを浮かべた。

「ねえ…シンジ君…"A secret makes a woman woman."って判るかしら?」

「えーっと、『ひとつの秘密は一人の女を女にする』ですか?」
シンジは自身の拙い英語力を総動員してみた。

「直訳は、そうね。本当の意味は『女は秘密を着飾って美しくなる』よ。アメリカのある女優の言葉…」
「ということはね『女が生きて行くには秘密が必要』と言う事なの…覚えておくといいわ。」
リツコの切れ長の目が意味深に光る。


693:冒険中年
11/09/16 21:11:37.97 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-12

「あの……リツコさんも、そうなんですか?」
シンジは意味も判らないうちに反射的に訊き返してしまった。

「随分はっきりと訊くのね?シンジ君…ええ、勿論その通りよ。多分ヒカリさんもね。」
不躾なシンジの質問にもリツコは動じる事は無い。

「え?ヒカリに秘密なんて、そんな……」
ヒカリの名が出た事でシンジの方が動揺してしまう。

「あら?さっきも言った筈よ。秘密の無い女なんか居ないわ。じゃあ、もうひとつ教えてあげるわね……」
「男はね、女の秘密を覗いてはいけないの。そしてね、男は女に秘密を持ってはいけないのよ…解るかしら?」
先程の意味深な光はより強さを増していた。

「よく解らないです。」

「シンジ君が、もう少し大人になれば…解るわ……」

それだけ言うと、リツコはシンジから離れて行った。
煙草の匂いを消すためなのだろうか?多少きつめの香水の香りを残して。


「……………………」
シンジはリツコの言う事が良く解らない。
余計な事に口を出すなとでも言いたいのだろうか?と言う事は何となく分かった気がする。

だが、ヒカリに秘密があるなんて思いたくもなかった。


更に四、五日が無事に過ぎていった。


夕食の為に葛城家を訪れたアスカは、ミサトから意外な事を聞かされた。
ちなみにレイはエヴァ零号機の改修後のテストの為にリツコに呼ばれ、本部に居る。

「え~?出前取るの?じゃ、アタシ、あの店のハンバーグ定食ね!」
と言いつつ、アスカは「シンジはどうしたのよ!」とミサトに尋ねた。

「シンちゃんならヒカリちゃんのお家よ!」


694:冒険中年
11/09/16 21:15:06.54 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-13

ミサトは電話のボタンを押しながら応える。

「何よ!シンジの奴、自分だけヒカリにご馳走になろうってえの?アイツってば!」
途端にアスカの機嫌が悪くなる。

「違うわ。何でもヒカリちゃんのご家族に正式に挨拶するとか言ってたわよ。」
電話を終えたミサトがリビングに入って来た。

「え?それって……どういう事なの?」
更に顔色が悪くなる。

「あ~ら気になるの?アスカ?」
ミサトの目がニンマリと笑う。

「別に……バカシンジがヒカリと何をしようとアタシには関係ないわよ!」
無理にいきがって見せる。

「婚約の挨拶かもよ?日本の法律じゃ男は18、女は16にならないと結婚は出来ないけど、婚約は違うから。」
「婚約なら年齢に制限は無いから、今のシンジ君とヒカリちゃんでも出来るのよ。」
「『あと4年たったらお嬢さんを僕に下さい。』とか言いに行ったんじゃないの?」
「もう~シンちゃんたら、やるわね!」
ミサトは、今夜シンジが洞木家に招待されたのは、その為では無い事は勿論知っている。
アスカの気持ちも何となく解っている。
ただ、日頃、小生意気なアスカをからかってみたかったのだが……

695:冒険中年
11/09/16 21:16:57.95 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-14

「…………………………」

アスカは、デリバリーされてきたハンバーグ定食の味が解らなかった。
それに、半分しか食べられなかった。
「あれは、冗談だってば。」というミサトのフォローも聞こえなかった。

「あちゃ~マズったわね。どうしよう?」という表情のミサトに見送られて、
アスカは、とぼとぼと自室の702号へと戻った


今やっと解った。

何故、ここに住む事に拘ったのか
何故、シンジとヒカリの関係が気になったのか
何故、街で助けられた時にシンジにあんな態度を取ったのか
何故、初日のお茶会でシンジをあれ程罵倒したのか
何故、ユニゾンの特訓が楽しかったのか

何故、シンジとヒカリが婚約と聞いてこれ程動揺しているのか

「アタシ…好きなんだ……シンジの事。」
「ヒカリとシテるのに。婚約するのに。」
「アタシはヒカリと友達なのに……」

「どうしよう……」

「アタシ…どうすれば………」


初めての感情、それは加持に対して想ってきたのとは全く別の感情である事に、
アスカの明晰な筈の頭脳は、フリーズしてホワイトアウトしていた。
やがてそれはブラックアウトとなり、アスカは深い眠りへと落ちて行く。
本人の自覚の無い涙を流して。





696:冒険中年
11/09/16 21:18:54.63 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-15

少し時計を戻して、第三新東京市の旧市街。
庭付き一戸建てが並ぶ住宅街の一角にシンジは居た。

インターホンに伸ばす手が少し震える。

(逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ……逃げちゃ駄目だっ!)

指がボタンを押した。
賽は投げられた…………


「こんばんは、あの僕、いや、私は碇シンジと申します。宜しくお願いします。
学校ではヒカリさんに大変良くして頂き、また学校以外でも仲良くして頂いています。
今日はお招き頂きましてま、誠に有り難うございます。」

これが碇シンジの洞木家訪問の際の第一声だった。
苦心して文章を考え、ミサトにも見てもらい、練習までしたのだ。
それでも慣れない言葉は使いにくい。

緊張しきったシンジの挨拶は、洞木家の面々には好印象を与える事が出来た様だ。

「シンジさん…お父さんに、コダマお姉ちゃん、そして妹のノゾミよ。」
ヒカリが家族を紹介する。

「君がシンジ君か。君の話はいつもヒカリから聞かされているよ。
先日はヒカリを助けてくれてどうもありがとう。
本来なら、こちらからお礼に伺うべきところを大変失礼しました。どうか許して下さい。」

早速ヒカリの父が語り出した。
見るからに温厚そうな風貌のヒカリの父は、シンジを子供扱いする様子は無い。
シンジを一人の男として、男同士の会話を望んでいる様だ。
彼が尊敬する加持と同じに。

「いえ、そんな、あの、わ、私は当然の事をしたまでで……」

「本当に、そう思うのかね?ヒカリの話だと周りに通行人は大勢いたそうじゃないか。
誰もが見て見ぬ振り。まあ皆自分や家族に責任があるから係わり合いにはなりたくないだろう。
だが、警官を呼ぶ、警察に電話をするくらいは出来た筈だ。しかし、誰もそれをしなかった。」
「しかし、君は勇気を振るって君の手でヒカリを救い出してくれた。」
「父親として、これほど嬉しい事は無い。シンジ君、本当にありがとう。」

ヒカリの父は深々とシンジに頭を下げた。


697:冒険中年
11/09/16 21:21:27.79 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-16

「あ、あの、とんでもないです。」

父親ほどの年齢の他人に、そうされた経験の無いシンジは恐縮するばかりだった。

「君は悪者を殴ってヒカリを助け出した後、すぐにヒカリの手を引いて逃げ出したそうだね?
それは何故だか教えてもらえるかな?」

「私では、まともに闘ったら勝てないと思ったからです。負けたらヒカリさんを護れないと思いました。
だから逃げられる内は逃げようと思ったんです。」

ヒカリの父の問いにシンジは率直に答えた。あの時はそれしかないと思ったから。

「そうか、やはり私の思った通りだったな。実はね、そこが一番気に入ったのだよ。
シンジ君、君は自分が弱い事を、悪者には勝てない事を知っていたのに勇気を出してくれたのだ。
自分が弱い事を自覚出来ている人間は、実は強いのだよ。
私は君が気に入ったよ、シンジ君。ヒカリをよろしく頼むよ。」

ヒカリの父は笑顔で右手をシンジに差し出した。

「は、はい、ほ、洞木さん」

シンジは、ややどもりながら、その手を握った。
温かい手だった。
ヒカリ達洞木三姉妹は、この手に引かれて生きてきたのかと思うと、シンジは羨ましく思った。
自分には、そんな記憶の欠片すら無いのだから。


こうしてシンジは洞木家の面々と対面し、ヒカリの父や姉のコダマ、妹のノゾミにも
『ヒカリの恋人』として晴れて認められる事になった。

このあと、ヒカリが腕によりを掛けて作った料理で食事をしながらの歓談となった。
テーブルいっぱいに並んだヒカリの料理は、いつもより更に美味しく感じられた。

シンジは、『娘のボーイフレンドと酒を酌み交わすのが夢だった。』という、ヒカリの父の願いで、ビールを初めて口にした。
ほんのひとくちだけだったが、その時のシンジには、その苦い味さえ心地良いものだった。
ミサトが毎日浴びる様に呑む気持ちも何となく分かった。

シンジとヒカリは、ミサトとリツコの時と同じくコダマとノゾミに根掘り葉掘り訊かれてしまい、
ふたりの馴れ初めから告白の言葉や場所や情景、デートの場所、
更にファーストキスを済ませている事まで、すっかり白状させられていた。
ヒカリの父は苦笑し、コダマはニヤニヤと笑い、ノゾミは目を輝かせて聞いていた。

『その先』の事についてはヒカリとコダマが『当分の間は極秘』という打ち合わせが事前に出来ていたので、
話題となる事は無かった。それは実に懸命な判断だった。
『ファーストキスは済ませている』と言った時、ヒカリの父の表情が一瞬だけ著しく変わった事を、
シンジも洞木三姉妹も忘れる事は無いだろう。

シンジもヒカリも洞木家の人たちも、そのひとときをこころから楽しんだ。
皆、しあわせを感じていた。
特に家族や兄弟姉妹を知らないシンジにとっては、まるで夢の様な時間だった。
シンジはヒカリを羨ましく思った。
そして、ヒカリを護る為には、ヒカリの家族をも護らねばならない事も感じていた。




698:冒険中年
11/09/16 21:24:00.69 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-17

宴の終わりに、ヒカリの父が唐突に切りだした。

「君はネルフのロボット、エヴァンゲリオンのパイロットをしているそうだね……」

ヒカリの父もネルフ関連企業の中堅社員であるから、ある程度の事は知っている。と言っても極表層部分でしかないが。
「エヴァンゲリオン」と「使徒」の名前位は知っている。

「はい……」

「ヒカリを悲しませない様に、命は大切にしてくれ…」

「その積りです。そうでないとヒカリさんや皆さんを護れませんから。」

「頼むぞ、シンジ君。それが君の責任だよ。」

ヒカリの父は再び右手を差し出した。

シンジは黙ってその手を握り締めた。

ヒカリは勿論、コダマもノゾミも、その光景をうっとりと見ていた。

シンジは再度その手の温かさを感じながらも、
実父であるゲンドウと握手出来る日が来ればいいな、と、こころの何処かの片隅で思った。





699:冒険中年
11/09/16 21:26:44.22 rn62y7i9
シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任-18

シンジが一家に見送られて帰宅してから、父はヒカリに語り掛ける。

「シンジ君は【いい男】だな。ヒカリのライバルも結構多いんじゃないのか?」

「うん……」
ヒカリは言葉を濁しながら、自分を遥かに凌駕するアスカとレイの美貌と肢体を思い浮かべた。

「いるらしいわよ~。それもとびっきりの美少女が二人も!」
「オトコって美少女には弱いのよねぇ……」
コダマが割って入る。

「それってほんとなの?コダマお姉ちゃん?」
「ヒカリお姉ちゃん、失恋の大ピンチ!」
ノゾミも会話に入って来た。

「ひどいわ!コダマお姉ちゃん、ノゾミまで…」

激昂するヒカリを、まあまあと宥めて父はまた語る。

「彼が外見だけで女性を選ぶ様な軽い男では無い事は、私にも良く解ったし、
ヒカリ、お前が一番良く解っているだろう?」

父の言葉に、ヒカリは黙って頷いた。

「シンジ君はパイロットだ。これまでもそうだったろうが、きっとこれからも辛く苦しい戦いを強いられるだろう。
それに、彼はヒカリや私達を守るといってくれたが、そうとばかりもいくまい。
他の誰か、例えば、その美少女達の為に命を掛け、身体を張らねば成らぬ時もあるに違いない。
その時、ヒカリは取り乱すことなく彼を信じて支えてあげて欲しい。そういう女性になって欲しい。
これは私の願いであると同時に、彼を愛し、彼から愛される、ヒカリ、お前の責任だと私は思う。」

「わかったわ、お父さん。ありがとう。」
父の言葉に、ヒカリは少し赤くなりながら、もう一度頷いた。

「きゃ~愛し愛されるですって、どうもごちそうさま、ヒカリ!」

冷やかすコダマに父は話を振った。

「そういうコダマは、いつ頃ボーイフレンドを私に紹介してくれるのかな?」
「随分と待たせてくれるが……」

「わ、私は理想が高いから……」

「コダマお姉ちゃん、そういうの【負け惜しみ】って言うんでしょ?」
言葉を濁したコダマにノゾミがツッコミを入れる。

「何ですって!待ちなさい!ノゾミっ!」
激怒したコダマは、逃げるノゾミを追い掛ける。

父とヒカリは微笑んで、それを見ていた。

使徒と言う名の謎の怪獣が襲い来る街、第三新東京市。
明日をも知れぬこの街で、父と三人の娘達は、しあわせだった。



【シンジとヒカリの物語 拾弐話 責任  終了】


700:冒険中年
11/09/16 21:29:07.43 rn62y7i9
拾弐話…投下しました。

皆様、数々のコメント、本当にありがとうございます。

701:名無しさん@ピンキー
11/09/16 21:32:56.88 qRccLuLj
おつう

702:名無しさん@ピンキー
11/09/16 21:37:50.67 r+y/mKpG
キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!
GGGGGJJJJJJ!

703:名無しさん@ピンキー
11/09/16 23:22:38.44 AKW6Ztff
乙。エロパロなのにエロがあるとモヤモヤするのは何故だ?!

704:名無しさん@ピンキー
11/09/17 00:46:10.08 VK4VDXRA
次回作よろw


705:名無しさん@ピンキー
11/09/17 01:41:56.58 i0UY8dwu
恋愛小説っぽいなあ。
ミサト微妙に扱い悪い。

706:名無しさん@ピンキー
11/09/17 02:04:54.15 UI02ZlYU
葛城家でsexするのは図々しい

707:名無しさん@ピンキー
11/09/17 04:42:55.02 2DfPLvDv
>>727

708:名無しさん@ピンキー
11/09/17 05:26:38.72 B3gLOmDM
ミサトさんはちゃんとラブホでセックスしてるのに

709:名無しさん@ピンキー
11/09/17 18:23:42.42 ueoJM1X5
アラサーの加持の吹き込み通りのセックスがシンジにできるわけない。ヒカリがチェロは気持ち悪い。初々しい感じが似合うだろ。
一気に冷めた。

710:名無しさん@ピンキー
11/09/17 20:32:47.70 yp+QOwi9
アスカ→シンジとか話膨らませすぎたかな。途中経過飛ばして最後だけ〆てくれ。

711:名無しさん@ピンキー
11/09/17 22:06:32.39 wW4SFSSs
嫌がらせコメ酷いな
だが何言われようとSS書いてる奴が一番偉いんだ
ネチネチとあちこちチクチク重箱の隅にケチ付ける奴の事は気にせずマイペースでやってくれ

712:名無しさん@ピンキー
11/09/17 22:46:39.68 g9CTiOB4
乙です
微妙に計算ずくなのか、天然なのか分らない加持さんの動向が気になるw
しかし、この世界だと一番割を喰うのはアスカだよな、やっぱり
病まずにレイとの友情を育んでいってほすぃ

ただまあ、人大杉な気はする

713:名無しさん@ピンキー
11/09/17 23:14:45.06 jTivUycD
投下してる人が一番エライって訳じゃないと思うが。中年さんは人柄よさそうで支援するが。

まあ長編本編分岐ならエヴァ板でやった方が良かったかも。
それなら神扱いだった気がする

714:名無しさん@ピンキー
11/09/18 01:22:40.42 qiijAH28
俺も他スレでは書き手だが偉いなんて思ったことねえよ。
ジコマンだし。読んでくれたことに感謝だよ。

冒険氏の最初から読ませてもらった。楽しいよ。けどせめて3回くらいでまとめた方がいいかと。

次の投下人もいるかもしれない

715:名無しさん@ピンキー
11/09/18 16:45:51.09 PVj125Wp
SS本編より感想の方が面白いw

716:名無しさん@ピンキー
11/09/18 20:38:59.63 r/MMBdhm
エロいらないから他でやると良い

717:名無しさん@ピンキー
11/09/18 22:17:11.64 MqECI4XQ
前はもっと大人な住人の集まるスレだったのになあ
まだ大学生は夏休みだっけか?
読み手様多すぎ

718:名無しさん@ピンキー
11/09/18 23:07:38.90 dBCR+s3F
作品としては好きだけどさすがに板違いな気がする

719:名無しさん@ピンキー
11/09/19 00:44:12.69 ZB5G7QHs
軍曹投下で荒れた気がする。あれは黒歴史

720:名無しさん@ピンキー
11/09/19 01:21:57.84 N2E1nJE2
軍曹の人の自己陶酔っぷりは…
そいつが今のSSに嫌がらせレス付けてるんじゃね?

721:名無しさん@ピンキー
11/09/19 01:35:34.05 lCQFvQDg
>>738
>>727->>729みたいに失敗してID変えなくてもいいのに変えちゃう必死君とか
荒らしな皆さんが目立つだけで、本来の住人は静観してんじゃないのかな

>>740->>741
スレの雰囲気悪くしようと必死だな…

長編言っても、20~30話くらいで終わるなら、このまま続けてくれればいいと思う
それ以上になりそうなら、エロ分離してエヴァ板などに投下しなおして、エロ部だけこっちに投下するとかね

722:名無しさん@ピンキー
11/09/19 08:06:38.10 B7e4gNil
ここで爽やかなエロを一発投下待つ!

…最近寒くて寒くて…北国で全裸ネクタイはつらい

723:名無しさん@ピンキー
11/09/19 08:28:50.27 SC8LhPvC
>>742
訳わからんけどアンカーはマトモにうってくれ。初心者?

724:名無しさん@ピンキー
11/09/19 15:22:32.57 aS7vvp/c
>>742
こういう奴って何と戦ってんだ?

725:冒険中年
11/09/19 15:50:19.10 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-01

あれから二か月が過ぎた頃のお話

ヒカリは、最近イライラする事が多くなった。

シンジと家族との顔合わせは、実に理想的に済ませる事が出来たヒカリだったが、
その後が全く上手く行かない。

一緒に行けると楽しみにしていた修学旅行も、シンジは戦闘待機命令で行けなかった。
(これはアスカもレイも同じだったが)
一緒に泳ぐ時に見せようと、シンジには内緒で選んだ水着も無駄になった。
シンジに見てもらえるならと、大冒険して選んだというのに、
その水着は修学旅行では日の目を見る事無くタンスに仕舞い込まれる事になった。

最近、シンジのネルフでの訓練や実験が多くなってきた。きっと戦いが激しくなってきたのだろう。
一週間のうち、授業をきちんと朝から6時間目まで受けるのは二日くらいだ。
大抵は午前中で早退だが、一日中休みというのも珍しく無くなった。

今日は訓練も実験も無いという事で葛城家に遊びに行けば、
アスカとレイのどちらか一方、または両方がリビングに屯して?いるのだ。
彼女達は自分の部屋には、ほとんど寝に帰る位である。
これではまるで『同居』ではないか。
同じマンションに住んでいて、シンジと同じにネルフの、そしてミサトの監督下にあるから仕方が無いのだが。

登校して来るのもシンジはアスカとレイと一緒なのだ。(下校はスケジュールの違いから余り一緒では無い様だが。)
どうやら保安上の理由と言うことらしい。
つまり、シンジは恋人であるヒカリよりもアスカやレイと一緒にいる時間の方が圧倒的に長い。

それに、自分の知らない、知ることが出来ないネルフでのシンジの姿を知っているのだ、アスカもレイも。
自分より遥かに美しい少女達。
シンジはわたしを選んでくれた、そう思っても、
自分とシンジは愛し合う恋人同士、そう思っても、
自分はシンジに身もこころも愛されている、そう思っても、
アスカもレイも自分の大事な友達、そう思っても、
父との約束があろうとも、
やはり悔しいし、悲しいし、つらい。
もっとシンジと一緒に居たい、抱かれたい。



726:冒険中年
11/09/19 15:53:07.47 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-02

まだ終わる様子は無い、使徒と呼ばれる怪獣との戦いの為に、
ヒカリは何回も父や姉妹と共にシェルターに避難した。
或る時などは、第三新東京市から50kmも離れて避難する事を命令された。
また或る時には全市が停電に見舞われる事もあった。
丸一日、シェルターの中から出られない事もあった。
その度にヒカリは、自分や家族の事以上にシンジの身を案じてきた。(アスカやレイの事も勿論心配したが。)
元気な顔を見るまで生きた心地がしない事も多いのだ。
シンジは(アスカもレイも)、守秘義務と言う事で多くは話してはくれないが、
それが決して楽なもの、簡単なものでは無い事くらいは何となく判る。
きっと身も心も削る様な、薄氷を踏む様な戦いなのだろう。

しかも、その戦いでヒカリが、シンジに出来る事は何も無いのだ。
あるとすれば、美味しいお料理を作ってあげるとか、
シンジと肌を合わせ身体を重ねて、疲れた身体とこころを慰める事だろうか。
だが、それすら、機会が殆ど無い。

経口避妊薬の為の検査でネルフ本部に呼ばれる時は、シンジと一緒だけれど、送られる時はひとりだ。
シンジはそのまま訓練や実験に行ってしまうから。
いつかの保安部の女性が、送ってくれる。
「よかったわね。彼とうまくいって……」
別れ際にそう言われて、ヒカリは頬を赤くした。

でも、薬を毎日飲んでも、自分をシンジに捧げる機会が無い。
飲む度に思うのだ。『シンジに抱かれたい』と。
いつかの様に恥ずかしい事でもいいから抱かれたい。

シンジは、『ヒカリが居てくれるから、僕は闘えるんだ。』、そう言ってくれる。
それは、とてもうれしい、堪らなく嬉しい。

だからこそ、シンジの為に何かしてあげたいのだ。


「ネルフでのシンジの事は、このアタシに任せなさいよ。」
「碇くんは私が守るもの。」

そう言うアスカやレイの言葉さえも、

「ネルフでは、シンジと一緒に楽しくやってるわ。とっても楽しい事してね……」
「碇くんが私を望めば、私は拒まない。それはとてもとても嬉しい事……」

そう言われている様な気がして堪らなくなる時がある。

特に、アスカのシンジへの視線。
何かを秘めた様な視線が、とても気になる時も多い。

こんなに嫉妬深い女だなんてと、自分がイヤになる時もある。



727:冒険中年
11/09/19 15:55:47.78 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-03


わたしもシンジと一緒にネルフに行きたい
わたしの知らないシンジを知りたい
わたしもエヴァに乗りたい
乗ってシンジと一緒に戦いたい
わたしもシンジを守りたい

ヒカリのこころにそんな秘めた想いが渦巻いていた。
そして、その秘めた想いをシンジは知る由も無い。



夜、ベッドに入るとシンジの笑顔が浮かぶ。シンジとの情事の様子が浮かぶ。
するとヒカリは、いつの間にか、パジャマの前を開けて乳房を揉み、乳首を弄るのだ。
切ない声を上げて。

右手が下着の中へ潜り込み、最も敏感な部分を弄る。

この手は自分のじゃない、シンジの手だ。ヒカリはそう思う事にした。

そして、いつの間にか達したヒカリは、夢の世界へと落ちていった。



そこでヒカリは見た。

裸のシンジに絡み付く二人の美少女。勿論彼女達も裸だ。
一人は、腰まで届きそうな長い亜麻色の髪に、紺碧の瞳、それに歳に不相応な豊満な肢体。
もう一人は、蒼銀のシャギーの入ったボブの髪に、真紅の瞳、それにスレンダーだが美しいラインの肢体。
肌は二人とも雪の様に真っ白だ。
声が聞こえてくる。

「どう?アタシのこのカラダ。すごいでしょ?全部シンジのモノよ…アンタの好きにしていいわ。」
「碇くん、私とひとつになりましょう…それはとてもとても気持ちの良いことなの…」

ヒカリは声を限りに叫んだ。

「やめて!シンジ!わたしはここよ!こっちに来て!わたしを愛して!!お願いよぅっ!!」

だが、その声はシンジには届かない。
シンジは笑顔で二人の美少女を両手に抱き、代わる代わる口付けをする。
そして美少女達のしなやかな手がシンジの下腹部に伸びて……
シンジの手も美少女の胸へ、下腹部へと伸びる……

美少女達は、シンジと交互に交わり、交互に歓びを唄い、交互に悦びの高みへと達していく。
シンジの精を胎内に注がれて美少女達はうっとりとして………




728:冒険中年
11/09/19 15:58:34.27 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-04


「いやああああああああああああああああああああああああああ……」

ヒカリは自分の悲鳴で夢の世界から戻ってきた。
びっしょりと汗をかき、動悸はまだ治まらない。
時計を見るとAM04:46。
少し早いが、起きてしまおう、起きてシャワーを浴びよう。
そう思ったヒカリはベッドから起き出すと着替えを持って浴室に、のろのろと向かった。
熱くて強いシャワーを頭から浴びる。
イヤな夢を洗い流したかったから。



その数時間後、ネルフ本部は突然の喧騒に包まれていた。
北米第一支部が消滅したという情報に、ミサトやリツコも驚きを隠せなかった。
原因は無数に推測されたが、最も有力なものは、
「S2機関搭載の為のエヴァ参号機の改造中の事故ではないか?」というものだった。
数千の命が一瞬に何の痕跡も残さずに失われた事に、誰もが恐怖した。

そして日本時間での昼食前には、遺された四号機は本部に移送される事が決定した。

だが、その一連の事は、シンジ達パイロットに知らされる事は一切無かった。



「エヴァ四号機は来週には届く。予定通りにな……」
昼も薄暗い司令室で、ゲンドウが笑みを浮かべた。

「碇、まさか……」
冬月はその表情に感じるものがあった。

「その通りだよ…冬月…」

「お前という男は…数千人の人間の命を……」

「些細な事だよ、そう思わんか?セカンドインパクトに比べれば……」

冬月は今更ながら恐怖を感じた。目の前の碇ゲンドウという男に。





729:冒険中年
11/09/19 16:00:21.67 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-05


そして午後。

ミサトはリツコの研究室にいた。

「四号機が来るって本当なの?」
リツコの煎れたコーヒーを飲みながらミサトは言った。

「そうよ。厄介払いってところかしらね。」
リツコもコーヒーを飲む。

「四号機、大丈夫なんでしょうね?真っ平よ、“消滅”なんて。」

「大丈夫よ。四号機は通常型だから。ただ向こうの独自規格の部品も多いから、
実際の運用にはかなりの交換と調整が不可欠だけど。」

「来たとして、パイロットはどうすんのよ?」

「四人目を使うわ。」

「見つかったの?フォース・チルドレンが?ちょっと、タイミング良過ぎない?」

「判らないわ。私もさっき碇司令から知らされたばかりだもの。」
そう言ってリツコは一通の書類をミサトに渡した。
親友を欺かねばならない罪悪感は何処かに置き忘れた。

「ええっ!」
書類を見たミサトの顔から血の気が引いていく。
「寄りにも寄って、この子なんて……どうして?」

「マルドゥック機関の調査の結果だもの。仕方が無いわ。それに私達にはこういう子達が必要なのだから。」
「面接には、明日私が行くわ。」
リツコは淡々と語る。

ミサトはリツコに返す言葉が無かった。
(偽善者ぶるのは止めなさいって事ね……)
(今、わかったわ…あの検査の目的が………)





730:冒険中年
11/09/19 16:02:29.94 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-06

その頃、第壱中学校2-Aでは……

その日、シンジは訓練の為に早退していった。
アスカとレイは、今日は訓練も実験も無いと言うことだったので、
放課後、ヒカリは誘われて一時間ほどファーストフードでの他愛無いおしゃべりに付き合った。
ほとんどしゃべっているのはアスカだけだったが。
ヒカリは、あのイヤな夢のお陰で、二人と視線を合わせるのが少し辛かった。



シンジも、ヒカリに逢えない、抱く事の出来ない状況にもどかしさを感じていた。
加持の言葉がリフレインする。
だが、激しくなる一方の使徒との戦い。
前回も僅かな隙をつかれて使徒に、使徒のディラックの海に呑み込まれるという大ピンチに陥ったのだ。
その事は当然ヒカリには話していない。話せる訳が無い。
守秘義務である事以上に、大好きなヒカリを心配させたくないから。
(マグマの海に沈んで行こうとするアスカを助ける為に、
標準装備の初号機で浅間山の火口から飛び込んだ事も話していない事も同じ理由からである。)

運良く初号機の暴走に助けられたものの、あと数分で死んでいたかもしれないという恐怖は、
シンジを更なる訓練へと駆り立てていた。

もっと強くならねば、使徒に勝てない。
そうでなければ、ヒカリを護れない。
そうしなければ、ヒカリの父との約束も果たせない。


その思いがシンジを突き動かしていた。





731:冒険中年
11/09/19 16:04:22.53 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-07

その晩、ミサトは加持と逢って、いや密会していた。
そこはラブホテルと呼ばれる類の建物の一室。
情事を終えての寝物語の様な会話。

「やはり、そうだったのか……」
「やはりって、あんた知ってたの?四人目の事。」
「おれも、今朝知ったところさ。」
「そうなの……シンジ君達にどう言ったらいいのか判らないわ。」
「すぐに知らされる。葛城は何もしなくていいさ。」
「そうね…それがいいかもね……ところで…マルドゥック機関て何なの?」
「何も無いさ。」
「どういう事よ?」
「存在しないのさ、そんなもの。」
「それって、一体どういう事よ?」
「どうもこうも、碇司令本人って事だ。」
「まさか………リツコも?」
「それは……どうかな?」
「じゃあ、あの検査は何?」
「済まない、詳しい事はまだ判らないが、関係は大有りだろうな。」
「やっぱりね……」
「後はコード707だよ。」
「それってシンジ君の学校の事でしょ?それがどうかしたの?」
「ヒントさ……」




「ところで、あんた…『アルバイト』やめてもらえないかしら?」
「何の事だ?」
「惚けても無駄よ、みんな知ってるわ。それこそ司令もリツコもね。」
「バレバレって訳か…」
「日本の内務省、それともうひとつ係わってるみたいね?」
「何でもお見通しか…ネルフも中々やるな。」
「今なら引き返せるわ。」
「碇司令は俺を利用してる、まだ大丈夫さ。」
「何がしたいのよ。」
「真実が知りたい。」
「何の?」
「セカンド・インパクト、ゼーレ、エヴァンゲリオン、そしてネルフ、その他諸々ってところかな…」
「死ぬわよ。」
「構わないさ。」


「死なないでね。」
「考えておくよ。」


加持はミサトをもう一度組み伏せた。
ミサトも抵抗する事無く、加持の愛撫を受け入れる。

男の荒い息遣いと女の悦びの声、それにベッドの軋む音が聞こえた。





732:冒険中年
11/09/19 16:09:15.68 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-08

その翌日、再び第壱中学校2-Aでは……

今日、シンジは訓練の為、朝から休み。
ヒカリは隣の空席を見詰めては溜息をつき、悶々としていた。
(シンジに逢いたい………)
そばかすの残る可愛らしい顔に、そう書いてあるのは誰の目にも明らかだった。

そして昼休み。
アスカとレイは訓練の為に揃って早退して行った。

そんな時だった。

「2-Aの洞木ヒカリさん、至急校長室まで来る様に。」というアナウンスで呼び出されたヒカリが、
恐るおそるドアを開けると、そこには見知った女性が座っていた。
だが、その表情は以前に合った時とは別人のようだった。校長の前だからだろうか?

「洞木ヒカリさんね。私はネルフ本部技術部E計画責任者、赤木リツコです。宜しくお願いしますね。」

ヒカリはリツコの前に座る様に促された。
ヒカリを正面に見据えたリツコは、何通かの書類をファイルから取り出した。

「率直に言うわね。洞木ヒカリさん、あなたエヴァに乗って見る気はありませんか?」

「わ、わたしがですか?エヴァに?乗れるんですか?」
ヒカリは漠然と望む事はあっても現実的に予想などしなかった事態に驚愕し狼狽した。

「ええ勿論よ。詳しい事は秘密ですが、エヴァのパイロットを選抜するある機関のコンピューターが、
あなたを選んだのです。ですから間違いありません。」
リツコは熱心にそう言いながら、自分は大嘘吐きだなと思った。
パイロットを選ぶのはコンピューター等では無いのだ。

「でも、わたし……運動とか苦手で、武道の経験もありません…ケンカも嫌いですし…」
ヒカリは不安に思う事を吐露する。

「それは大丈夫。あなたも良く知っている碇シンジ君、彼もそうだったわ。
余り詳しい事はここでは言えないけれど、彼は今ではネルフの誇るエースパイロットよ。」
リツコは初心者の成功例として、ヒカリの良く知る、いや心から愛するシンジの事を持ち出した。
これは嘘では無い。暴走などに助けられたケースもあるが、
彼の実績は長年訓練を積んできたアスカやレイのそれを遥かに凌駕するのだ。
ネルフで異論を挟むものは居ないだろう。

「本当ですか?エースって?シンジは余り話してくれないから……」

「そうね、守秘義務もあるし、彼の性格でしょうね。シンジ君は余り自慢話をする人では無いでしょう?」

「はい。」
ヒカリはシンジがエースだと聞いて、まるで自分の事の様に嬉しかった。



733:冒険中年
11/09/19 16:11:18.38 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-09

「彼は本当によく頑張っているわ。アスカとレイのサポートもあるけれど、まだまだ彼には助けが必要なの。」
「だから、シンジ君と親しいあなたに彼の傍に居て助けて上げて欲しいのよ。」
いつの間にかリツコの表情は、ヒカリの知っているリツコに戻っていた。
ヒカリはアスカとレイの名が出た時、ぴくりと身体が動いた。

「ネルフとしてだけでなく、私からもお願いするわ。ミサトも同じ気持ちよ。」
これは嘘だな、とリツコは心の奥底で自嘲した。親友はただ真っ青になって絶句しただけではないかと。

「シンジ君の傍に居て、一緒に戦ってあげてちょうだい。」
「シンジ君もきっと喜んでくれるわ。」
これも嘘だ。大嘘だ。シンジの性格を考えたら、愛する恋人が危険を冒す事など望む筈が無い。
ましてやエヴァに乗って使徒と戦うなど……
そう思いながらもリツコは、こう言わねばならない。彼女の愛する男の希望を、いや野望を叶える為に。

ヒカリは、ずっと考えていた。
リツコが、パイロットの待遇やら義務やら責任の話に移ってからは余り聞いていなかった。
余り興味の無い事だったから。

怪獣は確かに怖い。
戦うのも怖い。
ケンカもスポーツも苦手だ。

だが、それはシンジも同じではないか
恐怖に耐えて何度も怪獣に勝っている。
エヴァに乗ってだけでなく生身でも暴漢から自分を救ってくれた。

今度は自分の番だ。
エヴァに乗って一緒に戦って
シンジを怪獣から守ろう

ヒカリは、アスカとレイというエヴァに乗って戦う美少女達の存在によって
この何カ月も焦りや嫉妬を嫌と言うほど感じさせられてきた。
シンジに抱かれ、肌を合わせる様になってからもだ。
友人である彼女達を信用しない訳では無いし、全部自分の想い過ごしなのかもしれない。
だが、自分がエヴァに乗れば総て解決する筈だ。
自分が知らないネルフでのシンジの顔も知る事が出来るに違いない。

ヒカリは決意した。
決意したヒカリはリツコに宣言した。

「わたしはエヴァに乗ります。乗ってシンジと一緒に戦います。」

その顔はとても晴れやかな笑顔だった。

「ありがとう、ヒカリさん。」

ヒカリは、笑みを浮かべるリツコの求めるままに何通かの書類にサインしていく。



734:冒険中年
11/09/19 16:13:27.90 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-10

その場では何の発言も許されていない校長は心の中で天を仰いでいた。
ヒカリの葛藤や秘めた想いなど知る筈もない彼は、
彼女が赤木リツコという得体の知れぬ女の巧みな誘導に乗せられてしまったとしか見えなかった。
まるで風俗か水商売の道にでも、いや、もっとたちの悪い道へと堕とされて行く様に見えたのだ。
そして彼は“魔女”とはこういう女の事を言うのだなとも思い、またこの“魔女”に踊らされ、さらわれていく、
洞木ヒカリと言う気真面目で家庭的な可愛らしい少女の無事を心から祈るのだった。

「ではヒカリさん、どうもありがとう。ご家族には今夜ネルフの人事担当者が伺いますから、
それまでは誰にも言わないでくださいね。それからクラスメートにも当分秘密にしてください。」

「シンジ達にもですか?」

「ええ、彼らには明日の訓練の時に紹介するから、それまでは秘密にして下さいね。
守秘義務はもう発生しているのだから。訓練は明日からだから、そのつもりで。」
そう言いながらリツコはヒカリに一枚のカードを手渡した。
それはいつか見た事のある、綾波レイのカードと同じデザインだった。


「校長先生、急な事で申し訳ありませんが宜しく御手配お願い致します。」

如何にもそれと判る愛想笑いを浮かべたリツコが校長室を出てからヒカリも校長室を出た。
授業に戻ってからも、何も聞いて居なかった。


そして夜、リツコの予告通りにネルフの担当者がやって来た。
ヒカリの父は、その担当者と口論に成り掛けたが、結局は折れざるを得なかった。
ヒカリ自身が、エヴァに乗る事を望んだ事もあるが、特務機関ネルフの権限はそこまで強大だったのだ。

尚も心配する父と姉妹にヒカリは笑って応えた。
「大丈夫。シンジも戦っているからわたしにも出来る。」と。

だが、彼女にもひとつの疑問はあった。
例のIDカードの件である。
(今日IDカードを持って来たと言う事は、わたしがOKするという確信があったと言う事?)
だが彼女はそれを口にする事は無く、忘れる事にした。
このカードさえあればシンジの傍に居られるのだから。



そして翌日の訓練の時刻を迎える。


735:冒険中年
11/09/19 16:17:11.04 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-11

「みんな知っていると思うけど、彼女がフォース・チルドレン、洞木ヒカリちゃんよ!」
「みんな仲良くね!」
ミサトの明るい声がブリーフィングルームに響いた。

プラグスーツを着たヒカリがそこに居た。
彼女のスーツはピンクと白。デザインはシンジの物に良く似ていた。
ミサトかリツコが気を利かせたのであろうか。

「フォース・チルドレン、洞木ヒカリです。皆さん、宜しくお願いします!」
少し恥ずかしそうだが、大きな声で元気よく挨拶するヒカリ。

純白のスーツのレイ
真紅のスーツのアスカ
青と白のスーツのシンジに視線を送る。
シンジのスーツが自分のものと色違いで似たデザインである事に、ヒカリは嬉しくなった。
(シンジとお揃いだわ…)とにこやかに微笑んだ。

だが、余りの事にシンジもアスカも、レイですら動揺を隠せなかった。

「ミサトっ!エヴァも無いのにどうしてパイロットが要る訳?」
やや興奮気味にアスカがミサトに質問、いや詰問した。

「近日中に四号機がアメリカから輸送されて来るわ。彼女にはそのパイロットをやってもらいます。」
ミサトは平然とアスカを軽く往なした。

スーツの胸元に印された『04』と背中に大きく印された『4』の数字は、
ヒカリが四号機のパイロットである事を主張している。
ちなみに、レイは『00』と『0』、シンジが『01』と『1』、アスカは『02』と『2』である。
もっとも、長い亜麻色の髪に隠されて、アスカの『2』の数字が見える事は、殆ど無いが。

「じゃあ、何でヒカリなのよっ!」

「エヴァのパイロットはマルドゥック機関の調査によって選ばれているの。私達の知るところでは無いわ。」
「これはあなた達も同じなのよ。」
今度はリツコが応えた。これでは欺瞞を通り越して最早道化だなと思いながら。

「わ、分かったわよ……」
渋々アスカは納得してみせた。
アスカは、別にヒカリを嫌っているのでは無い。
嫉妬と言う、決して表に出してはいけない想いは別にして、
ヒカリのキャラが、『エヴァ』と『戦い』に似合わないと思っただけである。

シンジもそれは同じだった。
だが、シンジは何も言えなかった。


736:冒険中年
11/09/19 16:21:32.32 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-12

レイ、アスカと握手を終えたヒカリが自分に握手を求めてきた時、シンジは、やっと口を開いた。

「ヒカリ……僕は…」

「何も言わないで…わたしシンジを守りたかったの…」

ふたりの世界に入り掛けたシンジとヒカリをミサトとアスカの声が現実に引き戻した。

「シンジ君!ヒカリちゃん!すぐ訓練に入るわ!時間が無いの。四号機が来るのは来週よっ!!」

「こうなったらビシビシ鍛えてやるわっ!アタシが訓練付き合うわ!いいわね、ミサト!」
「レイっ、アンタも来るのよ!!」

アスカはヒカリとレイを引き摺る様に訓練場に向かって行った。

シンジは言葉も無く見送るだけだった。
『シンジを守りたかったの』という言葉、その秘められていたヒカリの想いに今の今まで気付く事は無かった。
いつかリツコに言われた『ヒカリにも秘密がある』とはこの事だったのかと思いながら。



ヒカリの訓練が始まった。
基礎体力訓練、LCL注水訓練、格闘訓練(今は主に受け身)や、座学(エヴァの武装等に関する知識等)、
実際にエヴァに搭乗する前に必要な訓練は山ほどあるのだ。
これはシンジ達の訓練や実戦の結果からフィードバックされたものも多い。
付け焼刃的だが、機体到着後の調整と起動試験が済めば、若干の訓練で実戦に投入される。
『子供達を誰も死なせたくない』、それが教官たちの共通の思いだった。
学校を休む形で行われた連日の訓練は、余り運動などした事の無いヒカリには、皆きつい訓練だった。
胃の中の物を戻しそうになったりする事は何度もあった。
シンジに送られて家に戻っても、家事をするどころか食事を摂る事すら出来ずに寝てしまう事もあった。
だが、ヒカリは耐え抜いた。シンジと戦いたい、シンジを守りたい、シンジと一緒に居たい、その想いで。



737:冒険中年
11/09/19 16:23:59.23 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-13


数日後、四号機が到着した。
しかし途中、太平洋上で奇妙な積乱雲に遭遇した事など報告すらされなかった。
当然、その中で何かが四号機に付着した事にも気付く筈も無い。


「あれか!四号機って。意外ね、真っ白なんて。」
四号機の空輸に先行する形で松代の実験場に来ていたミサトは空を見上げて言った。

「そうね。星条旗でもプリントされてるかと思ったわ。」
リツコもそれにならった。

「でも白ならいいかもね。」

「何が?」

「ヒカリちゃんに似合うかなって……」

「そうね……なら四号機で良かったかもね、参号機は真っ黒だったそうだから。」
自分に、もしエヴァが宛がわれるなら間違いなく参号機だな、とリツコは思った。

輸送機に吊り下げられている四号機の姿は十字架に磔にされている様に見えた。
だが、それがこれから起こる事の不吉な前兆であったなどと思ったのは、全てが済んでからの事だった。



それから二日掛けて機体の検査と必要な部品の交換と調整が入念に行われ、
いよいよ明日はパイロットを搭乗させての起動試験となった。
太平洋上で付着した“何か”が素体の奥深くに潜り込んでいる事などスタッフの誰もが、
いやリツコでさえ気付く事は無かった。





738:冒険中年
11/09/19 16:30:05.72 MtH1PbJb
申しわけありません!12と13の間に以下の文章を挿入してお読みください。
大変失礼しました!!



シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-12.5

辛い訓練の中でも嬉しい事はある。

シンジと極稀にだが、訓練が一緒になる事があるのだ。
初体験の朝に見たのとも違う戦士としての凛々しい顔。

(シンジってあんな顔もするんだ……)

ヒカリは胸がドキドキするのを抑えられなかった。

それにエヴァを初めて見られた事。
シンジに案内されてケージを見て回った。
濃紫の巨体に双眼に一本角のエヴァ初号機。

「これがシンジのエヴァなのね……」
ヒカリは目を輝かせて初号機を見上げる。

「そう、これが僕の初号機。あっちがアスカの弐号機。その向こうが綾波さんの零号機。」
シンジの言った通りに視線を動かすと真紅の機体にに四ツ眼の弐号機、紺碧の機体に単眼の零号機の姿があった。

「初号機の隣のケージが空いてるから、きっとそこにヒカリの四号機が来るんだね。」
「四号機ってどんなのか、楽しみだね。」
笑顔を向けてくれるシンジに、ヒカリも笑顔で返した。

彼らのずっと後ろでアスカが険しい目で見詰めているのに気付く事は無かった。





739:冒険中年
11/09/19 16:32:27.67 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-14

ネルフ本部……
明日は四号機の起動試験と言う事でヒカリは軽めの訓練となり、それも早めに切り上げられた。

そして、シンジとヒカリは共に居た。
ここはパイロットの控室。
アスカもレイも帰宅しているので、ここに居るのはふたりだけ。
いつもの制服姿に戻っている。

「いよいよ明日だね…」

「うん…」

「がんばってね……」

「うん……」

「きっと…成功するよ……」

「うん………」

語り掛けるシンジに返って来るのは生返事ばかりだった。

「どうしたの?」

「怖いのよ…やっぱり怖いの。」
ヒカリの顔は強張っている。

「平気だよ、ミサトさんやリツコさんたちがちゃんと準備してくれているし。それに…」

「それに?」

「臆病で弱虫の僕に出来てる事だから、大丈夫、ヒカリなら出来るよ。」
シンジはヒカリに微笑みかけた。
ヒカリもがんばって微笑み返した。

「ねえシンジ…」

「何?どうしたの?」

「抱いて……」

シンジはヒカリを抱き締めた。ヒカリの身体は微かだが震え続けている。

「そうじゃなくて、抱いて欲しいの……」

「え?ここで?」

「お願い、シンジ。怖くて堪らないの……」



740:冒険中年
11/09/19 16:35:07.92 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-15

「い…いいよ……」

シンジは控室のカギを掛けるとヒカリをソファに寝かせた。
ここには常夜灯など無いから明るいままだ。
だが、今のふたりにはどうでも良かった。

ヒカリの着ているものを総て脱がすと自分も総て脱ぎ捨てる。
シンジは震えるヒカリに挑みかかった。

「抱いて!わたしをめちゃくちゃにして!!」

全身に指と舌と唇と掌をじわじわと這わせる。唾液を丹念に塗り付け、丁寧に擦り込む様に。

「ああっ!」

手指に始まったその行為は腕へと続き、
乳房や乳首、腹、恥丘だけでなく肩、背中、腰、尻と進み、足の指の間まで及んだ。

「ああ…いいわ…ああ…」

シンジの大好きなヒカリの声。

「それ…すきなの!もっと…もっとしてぇっ!!

その声はシンジの『オス』を呼び覚まし、ヒカリは『メス』となって応えた。
瑞々しい肌に玉の汗が浮かび、ヒカリの花びらは蜜を溢れさせた。

「もうっ、来てっ!シンジ!」

「わたしを突き刺して!!」

ヒカリの切ない声に、シンジはいきり立つモノを濡れそぼる花びらへと突き刺した。

「ああああああああっ!!」

ヒカリの歓びの声にシンジはすぐさま腰を打った。全身の力を込めてヒカリを打ち据えた。

「もっと!もっとよ!もっとめちゃくちゃにして!!」

ソファが、ぎしぎしと苦しむ。



741:冒険中年
11/09/19 16:37:49.88 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-16

「ああん!あん……あふっ…んンっ!」

シンジの汗がヒカリの肌の上に落ちて、ヒカリの汗と混ざった。

そして……

「もうっ…いくっ!いっちゃうううううううう……」

ヒカリが歓びの高みに達した時、シンジもヒカリの奥底に精を放った。

やがてふたりの息が静かに整った時……

「シンジ…ありがとう。これでもう…大丈夫……」

「ヒカリ……」

ふたりは、再び抱き締め合った。


シンジとヒカリが寄り添う様に帰宅した後、
マヤはモニターの記録を全て削除した。彼女の瞳からひとすじの涙が零れたのを知る者はいない。



そして、翌朝、家族に見送られて保安部の車に乗り込んだヒカリを、シンジは少し離れた場所から見送っていた。







742:冒険中年
11/09/19 16:40:46.48 MtH1PbJb
シンジとヒカリの物語 拾参話 なつかしい声 あたたかな声-17



ヒカリは実験場に着くと、笑顔のミサトとリツコに出迎えられた。

「ヒカリちゃん、おはよう!今日は宜しくね♪」
「おはよう、ヒカリさん。今日は頼むわね。」

「ミサトさん、リツコさん、おはようございます。今日は宜しくお願いします。」
ヒカリも元気よく挨拶して笑顔を見せた。

「ヒカリちゃん、昨夜は良く眠れた?」

「はい。シンジが……とても優しくしてくれたから……」

「そう、良かったわね。」

少し顔を赤くして話すヒカリの様子で、昨夜何があったのかを察する事が出来たが、
ミサトもリツコもそれを口にする事はしなかった。



起動試験は間もなく開始され、運命の時を迎えた。

ヒカリが搭乗後、白銀の機体は、すんなりと起動に成功しホッとした一同だったが、
起動直後に異常が検知され、急遽電源が落とされた時はもう遅かった。
大爆発が起こり、ミサトもリツコも激しい爆風に煽られて意識を失った。



暴走する白銀のエヴァ…四号機
田畑や村々を踏み潰して迫って来る。
夕陽を浴びて輝くその機体は血の様に赤く見える、




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