11/05/30 21:05:02.08 zqokQQry
――言ってやった。
ああ、言ってやったよ。
こいつは思い込んだら止まらないからな、これぐらい言ってやらないと駄目なんだよ。
まあこれで、俺の好感度ダウン確定だが。
…か、悲しくなんてないんだからね!
「ご、ごめんなさい、私…」
「いいんだって。わかってくれたならさ」
どうやら、説得は成功したようだ。思わずホッとしてしまう。
「そ、それよりもお兄さん…」
頬を赤らめてもじもじしているあやせ。
さては恥ずかしいのか?グフフ…。
好感度アップのチャンスだぜ!
「ん?なんだよあやせ」
優しく、好青年をイメージして語りかける。
「み、見られてますよ…」
「…へ?」
辺りを見渡す。
さっきまで普通に歩いていたのであろう、人という人が大勢、こちらを囲むようにして見ていた。
目を光らせている人達、ヒソヒソ話している人達、ヒューヒューと茶化してくる野次馬共エクストラエクストラ。
あやせが恥ずかしがっていた本当の理由を知るとともに、俺もめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
「あやせ!走るぞ!」
「え?きゃあ!!」
あやせの手を掴んで包囲網を突破する。
「大切にしろよー!」
「リア充爆発しろー!」
様々な野次が聞こえたが、気にしている余裕は全くなかった。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「もう…。飛ばし…過ぎ…です…お兄…さん…」
「ハァー…すまん…」
さっきの場所から結構離れているこの場所まで止まることなく走って来たため、めちゃくちゃ息が上がっている俺達であった。
「あ、このお店…」
「ん…?あやせ…知ってんのか?」
「桐乃とよく来るアクセサリーショップですよ」
「…ああ、ここか」
無我夢中で走っていた俺達だったが、なんの因果かこの店に来てしまうとは…。
「このお店、値段はそんなにしないんですけど、良いアクセサリーが多いんですよ」
「知ってる。来たことあるし」
「え?お兄さん、このお店来たことがあったんですか?」
「ああ、去年のクリスマスイヴに、桐乃にここで1万のピアス買わされたんだよ」
桐乃やあやせからしてみれば、1万円のアクセサリーを買うことなんて普通のことなんだろうけど、バイトもせずに親からの小遣いで生活している俺にとっては、マジ痛い出費だったんだぜ?
しかもプレゼントした(させられた)相手が、実の妹だぞ?どんな罰ゲームだよって思ったね。