11/08/28 19:43:50.48 PZDlv+bx
「ふう、よかった。ちゃんと入ってたわ。さすが私!」
「ああ、…お疲れさん」
笑いをこらえながら、布団を持ち上げ、冴花にスペースを提供する。
「…滑稽に見えたかもしれないけど、スイッチが入ってなければ明日の朝ごはんが提供できなかったのよ?そのところの重要性、分かってほしいわ」
どうやら冴花はご機嫌斜めらしい。…こいつに隠し事は出来ないな。
「別にご飯がなくてもおかずがあるから大丈夫だろ?」
「ダメよ。エネルギー源であるご飯なくして朝食とは言えないわ。ちなみにうちはご飯派だからパンなんて用意してません
」
頑固スキルが発動した冴花は手に負えないので、おとなしく抵抗を止めることにした。
「まあ…冴花がいてくれたら、俺の食生活は一生安泰だろうな」
炊飯器のスイッチの重要性について語れるほどなのだ。俺の見立ては間違っていないだろう。
「そうね。今のあなたの食生活も推して知るべしだろうし。…外食ばっかりしないようにね」
「はい、気を付けます…出来るだけ」
冴花が怪訝そうな顔をしたのは気付かないふりをしておこう。
天国と地獄を両方味わった高校生活。
プロに行っても、様々な困難が俺に立ちはだかるかもしれない。
でも、この3年間で得た経験と、離れていても、ずっと俺の傍にいてくれる冴花を思えばきっと乗り越えられる。
この自信も、3年間で得られた最高の宝物の一つだ。
「なあ、冴花」
「ん、なに?」
「…これからも、よろしくな」
「…ええ、こちらこそ」
そうしてキスをして、互いに笑いあう。
俺たちの人生は、まだ始まったばかりなのだ。
互いの愛を確認しながら、秋の一夜は静かにふけていった。