11/05/24 21:24:10.95 by50jkYi
人工灯が消えはじめ、闇がタエ子を覆う。
タエ子はひたすらに自分の涙が石畳に吸い込まれる様をみつめていた。
うつむいた視線に人影が映り、タエ子ははっとしたように顔をあげた。
それに呼応したかのようにタエ子の耳に声が飛び込んできた。
「こんなところで何をしている?」
それは良く知っている声。
「アシモフさん…?」
ぼんやりとした背の高い人影はしっかり近づいてきて、やがてその端正な顔がはっきり見える
程になった。
「どうしたんだ?こんなところで…」
タエ子は口を開こうとするが何も言えずアシモフを見上げた。
アシモフはタエ子の大きな眼に涙が浮かんでいるのを見て少し息を呑んだ。
「―泣いていたのか?」
「…………」
タエ子は無理矢理笑顔を作ろうとしたが、途中でのどが詰まる。
「…偽善ごっこでもいいの……」
そこまで言うと涙がまた勝手に溢れてきた。
アシモフはそっとその長い指でタエ子の涙を拭った。
思わず見上げたタエ子の頭を大きな手が優しく撫でた。