11/11/28 12:03:45.12 VrF/lP9Y
「あなたは破廉恥な人です」
彼女は涙を浮かべて僕から身体を離した。
「否定はしないよ」
「他の、人にもいつもこんな事をしているのでしょう」
「経験はある。でも、好きな相手にしかしない。これからは君にしかしない」
「だいたい、順番がおかしいです」
彼女は涙を拭った手を僕に差し伸べた。
「手も繋いだ事も無い相手に接吻なんて、正気の沙汰とは思えません。
まず、手を繋いでください。全てはそこからです」
僕は彼女の小さな、冷たい手を握り、その手を引き寄せて二回目のキスをした。
余談だが、僕と彼女の三回目のデートはドライブだった。
“他の女性を車に乗せたことがありますか?”と訊かれたので、僕は慌てて否定した。
“なら良かったです”と彼女は溜息をつく。
“あなたの運転では、乗った人は概ね吊橋効果を体験することになってしまいますからね”と。