愛するが故に無理やり…… Part7at EROPARO
愛するが故に無理やり…… Part7 - 暇つぶし2ch517:公爵家の秘密
11/05/22 00:56:13.40 PYtAYaYX
1

 冷たい唇が掠めるように触れた。同時に、祝福の鐘が鳴る。
「―これで、お二人は正式に夫婦となられました」
 聖堂に歓声が沸いた。
 鳴り止まぬ鼓動を抑えつつ、瞼を開ける。
 紺碧の中に映る自分が見えた。離れて行く端正な顔にぼんやりと見惚れてしまう。
 ―何て素敵な人なのかしら。
 出会った瞬間に恋をした。美しい黄金色の髪に、透き通った碧眼。洗練された物腰、
優しい笑顔の少年は、まるで物語から抜け出た王子様だった。この人が自分の婚約者だ
という幸運に、どれほど感謝したかしれない。
(ジュード、私は幸せよ)
 拍手の嵐の中、長年の従者であり兄とも慕うジュードを視界の端に見つけ、微笑む。
確かに目が合ったのに、そらされた。
(もう、恥ずかしがり屋さんね)
 自然と笑みが零れる。
 こうしてユーフェミア・ハートネットはアレクシス・アディンセルの妻となった―。
 
 その日、城下町は祭りに沸いた。何しろ、領主の跡取り息子の結婚式だ。無礼講で飲めや
歌えと騒ぐことが許される。もちろん、当のアスター公爵家も賑やかだった。親族を招いて
宴会が続いたが、途中、侍女に促されて寝室へと上がる。
 湯浴みをし、香油を塗られ、大人びた新品のナイト・ドレスに袖を通す。
 ユーフェミアの胸は高鳴った。
(とうとう、アレクシスさまと―)
 どういうことをするのか、おぼろげながらには分かっている。新婚初夜、夫婦となった
男女は睦み合うのだ。それは最初痛いらしい―だが、それを我慢しさえすれば、今までに
味わったことのない幸福がやってくるのだという。
(……痛いのは、いや。でも、こればかりは……どうしようもない、のよね)
「エレーナ、ジュードはどこ?」
 ふいに不安になったユーフェミアは、一番親しい侍女に尋ねた。
 エレーナは何故か苦笑し、「さあ、お酒でも飲んでいるのでしょう」と答えた。
「会いたいわ」
「なりません、ユフィさま。今宵は特別な夜なのですから。花嫁の寝室に招いて良い男性は
おひとりだけです」
「だって……披露宴ですら見かけなかったの。私の花嫁姿の感想がほしいわ」
「……もちろん、お綺麗でしたよ。何度も私そう言ったではありませんか」
「ジュードの口から聞きたいの。兄のようなものだから」
「いけません。ユフィさまのお気持ちは嬉しいのですが、使用人相手にそのような……」
「なぜ? お義姉さまはメイドだったけれど、身分の差を乗り越えてお義父様とご結婚された
でしょう?」
「それは……」
 エレーナは口籠った。
(お義姉さまの話をすると、なぜこうも歯切れが悪くなるのかしら。素敵なお話なのに)
 もとは平民であり、父である伯爵が養女にした義姉・ステラは、アレクシスの父・アスター
公爵の妻になった。というよりも、公爵が彼女を妻にしたいがために父の養女にしたのだ。
そのため、ステラは義姉であり、義母とも言える。
「ね。それに比べれば何でもないことよ。……今日は仕方ないとしても、絶対感想を聞かせる
ように言っておいてちょうだい」
「……はい」
 エレーナは渋々頷いた。
 その間にも初夜の準備は整っていく。薄い化粧に、花を編み込んだ髪型、繊細な白のレースを
使ったナイト・ドレスは、まるでもうひとつの花嫁衣装のようだった。


518:公爵家の秘密
11/05/22 00:57:01.29 PYtAYaYX
2

「お時間です」
 それを合図に、エレーナを含む四人の侍女が部屋を辞する。
「つつがなくお過ごしになられますよう」
 そして入れ替わりに―アレクシスが姿を見せた。
 アレクシスは濃紺のガウンを肩にかけ、その下は部屋着だった。湯浴みをしたのか、金髪は
湿っており首筋に張り付いている。今までに見たことのない艶めいた姿に、ユーフェミアの心臓は
今にも飛び出しそうだった。
(この方は……私とひとつしか違わないのに、どうしてこのように大人びていらっしゃるのかしら……)
「レディ・ユーフェミア」
 ふたりきりになった寝室で、最初に言葉を発したのはアレクシスだった。
「……はい」
 緊張のあまり、声が震える。
「こちらへ」
 招かれた先は寝台だった。顔を真っ赤に染め、ごくりと唾を飲み込み、ユーフェミアは歩き出す。
「そう怯えなくていい」
 広々とした寝台に上がると、アレクシスは言った。
「何もしない。……疲れている。俺は寝る」
 ―え?
「だから君も寝るといい」
 そう告げると、アレクシスは布団の中に身体を潜り込ませ、横になった。
 ユーフェミアが呆気に取られていると、彼は反対側に顔を向け、瞼を閉じたようだった。
(……もしかして、気を遣ってくださって?)
 どういうつもりなのか、まったくわからない。
 半時もすると確かな寝息が聞こえてきた。新床の夫は、本当に眠ってしまったようだった。
 ホッとしたような、残念なような、複雑な気持ちだ。けれど、初めて男性と同じベッドに寝るだけで
ビクビクしている自分には、ちょうど良かったのかもしれない。
 手を伸ばせば彼の金髪に手が届く。そんな距離に胸を弾ませ、ユーフェミアは眠れぬ夜を過ごしたが、
結局明け方近くに眠りに落ちた。
 目覚めた時にはアレクシスの姿はなかった。少し寂しかったが、仕方がない。きっと忙しいのだろう。
彼はこの秋から跡取りとしての仕事を覚え始めたばかりなのだ。だからあまりかまってあげられないかも
しれない、と言われていたことを思い出し、ひとりきりの寝台でため息をつく。
(いいの。きっと、これでいいのだわ。ゆっくりで……)
 ―だって、私は彼の妻なのですから。
 ユーフェミアは焦ってなどいなかった。一目で恋に落ちた人を夫とできた喜びで胸がいっぱいだった。
これから、時間はたっぷりある。彼と一緒にいる時間は、死がふたりを分かつまで続くのだ。少しずつ、
彼の妻らしくなっていけばいい。
 この時、ユーフェミアはそう思っていた。

519:公爵家の秘密
11/05/22 00:57:47.49 PYtAYaYX
3

 結婚して一週間が経ち、一月が経ち、二か月が経った。未だにアレクシスはユーフェミアに触れようとは
しなかった。そのことを不思議に思わないわけではないが、そもそも、共に寝台で横になるのだって週に
一度なのだ。そしてアレクシスは成人して一年も経たない。ユーフェミアだってまだ十五だ。
(……きっと、気遣って下さっているの)
 ―自分があまりに幼いから。
 ユーフェミアは幼少時から美しいと言われ慣れているものの、自分の華奢な体型では子どもを産めないのでは
ないかと侍女たちが噂をしているのを聞いたことがあり、それをずっと気にしていた。
 おそらく、自分に対する美しいという賛辞は、人形に対するそれと同じなのだろう。殿方は胸や尻の豊かな
女性を好むものらしい。残念ながら、そのどちらもユーフェミアにはないものだった。女性としての魅力はまた
別の話なのだ。
(魅力的な女性になるまで、アレクシスさまは待って下さっている)
 ユーフェミアはそう信じていた。
 また、この頃、公爵邸ではある重大事を控え、慌ただしくなっていた。
 義母となったステラの出産が近づいていたのだ。
 それなのに、その夫である公爵は何でも国王陛下直々の命を賜り、隣国へ使者として派遣されることになって
しまった。半年は戻れないらしく、義父である公爵はユーフェミアにもわかるほど不機嫌だったが、不承不承
出かけていった。
 ユーフェミアはステラを気の毒に思い、度々部屋を訪れた。
 ステラを見舞う度、ユーフェミアはいつも彼女の美しさに魅せられた。腹部は膨らみ命を生み出さんと準備を
整えつつあるのに、その面はひどく儚げで悩ましい。肌を露出しているわけではないのに、どうしてだか匂い立つ
ような色香を放っているのだ。ただ、無理をしているように微笑むのが不可解だったが、公爵が不在、しかも初の
出産で不安になっているのだろうとエレーナは言った。

 そして雪の散らつく夜、ステラは無事に女児を産んだ。
 金の髪に青い瞳をした、美しい赤子だった。

 ユーフェミアは毎日のようにステラと赤ん坊に会いにいった。無垢な赤子を抱く度、ユーフェミアは癒された。
と同時に、自分も子どもが欲しいと強く願うようになった。
 ―それなのに、アレクシスはもう滅多なことでは一緒に寝てくれなくなってしまっていた。
「ねえ、ジュード。私は、女としての魅力がないのかしら?」
 教会に寄付をしに行った帰路で、ユーフェミアは幼馴染の従者に何とはなしに問いかけた。
「……何をおっしゃいます。ユフィさまほど素晴らしい女性はおりません」
 一見冷たそうに見られがちな黒髪の青年は淡々と答えた。ユーフェミアは苦く笑う。
「そう、きっと私は、お前がそう言ってくれるとわかっていて尋ねたのだわ」
 この従者が決して嘘をつくような真似をしないこと、そして自分を盲目的に甘やかしてくれることをわかっていて、
尋ねたのだ。少しでも慰めがほしくて、わかりきった問いかけをした。
「あなたは、そのままで魅力的です」
「……ありがとう。ジュード」
 だが、アレクシスの無関心ともいえる態度は、少しずつユーフェミアを蝕んでいった。

520:公爵家の秘密
11/05/22 00:58:30.91 PYtAYaYX
4

 ―どうして。
 どうして一緒に寝てくれないの。
 こんなに良い妻であろうと努力しているのに。
 早く子を、と周囲から囁かれるのに。
 私が幼いから? 女として魅力がないから? 私のことがお嫌いだから?
 それでもユーフェミアは明るく振る舞う。社交の場で微笑み、教会に通い、精一杯身を飾る。
 しかし、肝心のアレクシスは留守を任され仕事が忙しいと、ふたりで話す暇もない。
 ―私はあなたの妻なのに、どうして。
 心の叫びは行き場をなくし、目に見えない形でユーフェミアを追い詰めて行った。
「アレクシスさま……」
 夜、ひとりきりの寝台で、ユーフェミアはすすり泣く。
 この地の冬は、故郷のそれよりも厳しい。寒さが身に染みる。
 誰か、温めてほしい―アレクシスさま……。
 最後に彼がこの部屋に訪れたのは、一月前だ。夫婦らしく寄り添うことはなく、まるで義務のようにただ横たわって
いただけだったけれど―それでもいい。それだけでもいいから、一緒にいてほしい。
 でも、本当は―名前を呼んでほしい。口付けてほしい。抱きしめてほしい。
 胸が苦しかった。じんわりと高ぶってくる熱。まだその正体を知らぬ若い乙女は、ただ夫恋しさに焦がれる。
 貞淑な妻は、夫にわがままを言ってはならない。その教えをきっちりと守っているユーフェミアは、このやるせない
思いをどうやってアレクシスに伝えれば良いかわからなかった。ただ毎夜、寂しい、恋しいと泣くことしかできない。
「……どうして……」
 ユーフェミアは広過ぎる寝台から起き上がり、暖炉の前のソファの上にうずくまった。
「どうして……一度も触れて下さらないの……? 私は……真実、あなたの妻になりたいのに……」
 炎の踊る姿を見つめながら、ひとり呟く。
「どうして……」
 また頬を涙が伝った。肩を揺らし、孤独に耐える。
 ―本当は、わかっていた。どうしてアレクシスが来ないのか。結婚して半年は経つのによそよそしいのか。
「彼は……私を愛していない」
 言葉にしてみると、なんと陳腐な台詞だろうか。
 いつかは、と希望を持ち続けて半年。まだ半年、と自分を慰めることも、もう疲れてしまった。
 貴族の結婚に愛がないのはよくあることだが、ユーフェミアはアレクシスを愛してしまった。
 だからこそ、余計に辛い。
 妻であるのに、いまだ身体は清いまま。女として求められすらしない。
 ―それならば、私は、いったい何のために嫁いできたのだろう。
 何のために、生まれてきたのだろう……。

521:公爵家の秘密
11/05/22 01:00:33.72 PYtAYaYX
5

 そして翌日、朝食の席でユーフェミアは倒れた。
 ジュードに抱きかかえられ部屋に戻され、医者を呼ばれた。エレーナが真っ青になりながら駆けつけてきて、何かを
飲まされたことは覚えているが、その後すぐに眠りに落ち、目覚めると夜になっていた。
「ユフィさま」
 ベッドの傍にいたのはジュードだった。
「ジュ……」
 名前を呼ぼうとしたが、掠れて上手く声が出せない。黒髪の従者は「無理はなさらないでください」と告げた。
細められた眼差しで、どんなに彼が自分のことを心配してくれていたかわかる。
「お水です」
 無骨な腕で背中を抱えられ、上半身を起こされる。グラスの水を飲むことすら億劫だったが、ゆっくり時間をかけて
飲み下した。
「何か、他に欲しいものは」
 頭を振る。
「医師とエレーナを呼んで参ります」
「……や!」
 立ち上がろうとしたジュードの服の裾を引っ張る。
「いか……で。ど……もいかな……」
 途中、けほけほと咳きこみながら、それでも目に涙を溜めて訴える。
「もう……とりは―いやなの……!」
 それは心の底からの叫びだった。
 ジュードの瞳がわずかに熱を帯びる。やがて彼は、椅子に坐し、厳かに言った。
「かしこまりました」
 ユーフェミアの質の悪い風邪は一週間ほど続いた。アレクシスが何度か顔を出したらしいが、眠っていた時なので
記憶はない。けれど、一日一回はステラがお見舞いに来てくれた。気を使ってか短時間の訪問だったが、ユーフェミアは
それがとても嬉しかった。そしてエレーナとジュードは付きっきりで看病してくれた。特にジュードはいつ寝ているのか
不思議なくらいなほどだった。
 医者からもう大丈夫ですと告げられると、ユーフェミアはまずステラとその愛娘に顔を見せに行った。久しぶりに
赤子と対面できる喜びに胸は弾んだ。
「奥さま、ユーフェミアさまがお目通りを希望いたしております」
 ジュードが低い声で告げると、中から侍女の声が慌てたように「お待ちください」と答返ってきた。
 いくらか待って、ようやく迎え入れられる。そしてユーフェミアは思いがけない人物の姿を目にした。
「アレクシスさま……」
 アレクシスが幼子を胸に抱いて微笑んでいた。
 刹那、ユーフェミアの胸に激しい感情のうねりが吹き荒れた。
 見たこともないような表情で赤子を抱く夫。忙しいといって昼間に見舞いに来ないのは何故。妹の顔を見る時間は
あっても、妻の顔を見る暇はないというの。ひどい。ずるい。どうして。
(そんな心から嬉しそうな顔を、私には一度だって見せてくれないのに―)
「身体は良いのか」
 ユーフェミアの姿を認めると、アレクシスの瞳は他人を見るそれになった。
「ええ」
 声が強張る。
「そうか」
「……お義姉さまは、どちらに?」
「席を外している」
「では、出直しますわ。ごきげんよう」
 ユーフェミアは踵を返し、ジュードとエレーナを引き連れて部屋を辞した。アレクシスは引き止めなかった。
つう、と一滴、ユーフェミアの頬を涙が伝った。

522:公爵家の秘密
11/05/22 01:02:30.62 PYtAYaYX
6

「ユフィさま、このままでよろしいのですか」
 自室に籠り、晩餐にも顔を出さないユーフェミアを心配してエレーナが言った。
「……何のこと?」
 寝台に伏せったままユーフェミアはとぼけてみせた。
「アレクシスさまのことです」
「…………」
「僭越ながら、あの方の振る舞いは、ユフィさまの夫として相応しくないと言うほかありません。ユフィさまはもっと
愛されて当然なのですよ。多くの殿方がユフィさまに夢中で、求婚者も数え切れないくらいおりましたのに……
いくら公爵家の跡取りだからといって―」
「あの方を悪く言わないで!」
 ユーフェミアは思わず声を張り上げた。
「あの方は―私の夫です」
「……申し訳ありません」
 出過ぎた真似をいたしました、とエレーナは頭を下げた。
 一瞬、エレーナに全て心情を打ち明けてしまおうかという誘惑に捉われる。けれど、一度も夫婦になっていないことを
話すのは、相手が同性のエレーナであっても気が引けた。
「今日はもういいわ。下がりなさい」
 そうしてユーフェミアはひとりになった。エレーナが作ってきてくれた果実酒で喉を濡らし、窓の外の月を眺める。
 しばらくして―ノックが響き、予期せぬ人物が姿を現した。

「……本当に身体はもういいのか?」
 アレクシスだった。ユーフェミアは驚きながらもこくりと頷く。
「そうか」
 気まずい沈黙が続く。
 どうして彼がここにいるのかわからなかった。
 しかし、こんなことはもう―滅多に起こらない気がする。
 寝台から降り、ガウンを床に落とす。
「……ユーフェミア?」
 何がユーフェミアをそうさせたのはわからない。多少、酔っていたせいかもしれない。
 だが、明確な目的をもって、ユーフェミアは薄絹の衣を脱ぎ去った。
「私はあなたの妻です」
 涙を目に溜め、ユーフェミアは驚く夫の胸に飛び込み、自分の身体を押しつける。
「だから……どうか……」

523:公爵家の秘密
11/05/22 01:03:16.29 PYtAYaYX
7

 突然の出来事に呆気に取られていたアレクシスの、冷たい唇に自分のそれを重ねる。よくわからないが、わからない
なりに何度も何度も繰り返す。アレクシスは身体を押しのけようとしたが、ユーフェミアも二つの細腕を首の後ろで
交わらせ、必死に離れまいとする。彼の服に乳房とその頂が触れ、擦れる度に、むず痒いような心地よいような不思議な
刺激を感じた。
 しかし、慣れない口付けで先に酸素が足りなくなったのはユーフェミアだった。頭がくらくらして、はあっと大きく
息をついた瞬間、肩を掴まれ引きはがされる。
 ふたりはしばらく、言葉もなくただ呼吸を繰り返していた。
(呆れられたかしら……でも……それでもいい……)
 ユーフェミアの視界に映るアレクシスは、眉間にしわを寄せ、ひどく苦しそうな顔をしていた。彼が何を思いどう
感じているのかはわからない。恋しい夫との距離は、月よりも遠いように思われた。
「……すまない。あなたがこんなに思い詰めていたとは」
 発せられた夫の声は、いつもとは違っていた。
「だが俺は……あなたとは……。すまない。ドレスや宝石や……望むものは何でも与えよう。愛人を持ってもかまわない。
だが、やっぱり、これだけは―」
 苦痛に満ちた声。俯きこちらを見ようともしないアレクシスに、ユーフェミアはくってかかった。
「―どうして。どうしてですの!?」
「すまない」
 アレクシスは踵を返す。
「待って。待ってください……!」
 とても納得できなかった。恥を忍んで、死にそうな思いをして、こんなはしたない真似に出たのに。
「待って……! 私の何がお気に召さないのですかっ? 直します、悪いところは直しますから……! お願い、
アレクシスさま……っ」
 追いすがるユーフェミアの腕を、アレクシスは乱暴に振りほどく。
「―君が悪いわけじゃない。……すまない」
 そうしてアレクシスは出て行った。
 ひとり残されたユーフェミアは自失する。
「……うっ」
 肩が震える。視界が滲む。
「う、ふふ、ふふふ……っ」
 天井を仰ぎ、少女は笑い声とも泣き声とも判別のつかない悲鳴を上げる。
 ―なんて滑稽。なんて惨め。
 やがてそれは、狂気じみた高笑いへと変わった。
「……ユフィさま、お嬢さまっ! ―失礼いたします、お嬢さ……っ!?」
 ただならぬ気配を聞きつけ、寝室へと踏み込んできたのはジュードだった。実直な侍従は床に裸で伏せる
主人の姿を見つけ、硬直する。
(……もう、どうでもいいわ。全部……)
 ユーフェミアは笑い続けた。

524:公爵家の秘密
11/05/22 01:04:09.95 PYtAYaYX
8

 月の光が差し込む部屋の床に、白い身体をさらけ出し、泣きながら笑う主人の姿を見て、ジュードは固唾を呑んだ。
 ほとんど無意識に、扉を閉めて施錠する。
 始めて目にするユーフェミアの裸身は、何度も想像したそれよりはるかに幻想的だった。
 抱きしめたら折れてしまいそうな腕、まだ成長途中のささやかな膨らみ、いつもより乱れた銀の髪。腰には余分な
肉など少しも付いておらず、臀部も丸みを帯びているが随分と小ぶりだ。ほっそりとした足はまだ少女そのものと言って
いい。
 さらに視線は、本来ならば決して拝めないはずの場所にまで到達する。
 秘められた丘は無毛だった。たまにそういう体質の女がいるとは聞いていたが、実際に見るのは初めてだった。
ただ縦に筋があるだけのそこに、幼女趣味とそしられても仕方のない衝動を覚える。
(ユフィ……さま……)

 ジュードは鍛冶屋の三男だった。しかし、三男とはいえ、姉が四人もいる。日々の生活は苦しく、ひもじかった。
 そんな彼に伯爵家の使用人という仕事が舞い込んできたのは、ジュードが九つの時だった。父が伯爵家の警備兵の
剣を修理したのが縁でそういう話になったらしいのだが、一も二もなく幼い彼はその仕事を引き受けた。無口な少年は、
とにかく必死に働いた。そして「お嬢様のお相手」という子守りもそのひとつだった。
 お嬢様、ユーフェミア・ハートネット伯爵令嬢は、当時一歳。乳母よりもメイドたちよりも、何故かジュードを
気にいってしまった。そしてそれは彼女が成長しても変わらなかった。
 ユーフェミアは美しく成長した。あどけない笑顔、甘えた仕草、可愛らしい声。いつしかジュードは、自分が抱いては
ならない感情を抱いていることに気がついた。それらを追い払うため、誘ってきた町娘と戯れ、娼館に通ったこともある。
だが、結局どれも長続きしなかった。当然だ。
自分が懸想している相手は、極上の美姫であるのだから。
 ユーフェミアの結婚が決まった時、ジュードはいっそ死んでしまおうかと思い詰めた。彼女の傍にいられないのなら
意味がないと本気で思ったのだ。だが、幸いにも嫁ぎ先に連れて行く数少ない従者の中にジュードは選ばれた。
 彼女が他の男のものになるのを見るのは心臓をえぐり取られるよりも辛いが、それでも彼女の傍にいられるなら―。
 そんな葛藤を隠し、ジュードはアスター公爵家へとやってきた。
 ユーフェミアの夫となる男は、成人を迎えたばかりの少年だった。容姿に恵まれ才気煥発、しかも公爵家の跡取り息子だ。
ろくでもない性格をしていたら許さないと息巻くジュードの予想を裏切り、少年は穏やかで礼儀正しく、文句のつけようもない。
さらに、認めたくはないが、肝心のユーフェミアが少年に心奪われてしまったようだった。
(もとより身分違い。叶うはずもなかった。これでいい―)
 そう己に言い聞かせたが、結婚式の夜はさすがに耐えがたく、抜け出して城下の娼館で闇雲に女を抱いた。愛する女と
同じ髪の色の娼婦を相手に、ただただ虚しさが募った。
 だが、結婚してもユーフェミアは変わらなかった。結婚した女というのは―男を知った女というのは、大なり小なり
雰囲気が変わるものだ。だというのに、ユーフェミアは違った。
(貴族の使用人として培った観察眼も、惚れた女には通用しないということか)
 始めはそう思っていたのだが、ふとした瞬間にユーフェミアがひどく寂しげな顔をすることにジュードは気づいた。
それは想う相手に嫁いだ新妻のする顔ではない。やがてそれは、月が経るにつれ、重くなっていった。

525:公爵家の秘密
11/05/22 01:04:53.74 PYtAYaYX
9

「ねえ、ジュード。私は、女としての魅力がないのかしら?」
 教会に寄付をしに行った帰路で、ユーフェミアがぽつりとそう言った時、ジュードの心は震えた。
 ―アレクシスと上手くいっていないのだ。
 そう直感し、仄暗い喜びが沸き上がる。
「……何をおっしゃいます。ユフィさまほど素晴らしい女性はおりません」
 何も気づかぬふりをして、いつものように淡々と返す。出てきた言葉は、もちろん本心だ。彼女以外の女なんて、
虫けらほどの価値もない。
「そう、きっと私は、お前がそう言ってくれるとわかっていて尋ねたのだわ」
 ユーフェミアは眉尻を下げて笑う。そんな風に憂いを帯びた様子でさえ麗しい。
「あなたは、そのままで魅力的です」
 万感の思いを込めて、ジュードは言った。
「……ありがとう。ジュード」

 それ以降もユーフェミアとその夫との溝が埋まる様子はなかった。侍女のエレーナが「最近アレクシスさまのお渡りが
ないの」と零すのを聞き、相変わらず無関心な態度のアレクシスを見ていれば、彼がユーフェミアを愛していないことは
容易く察せられた。
 ジュードは複雑だった。愛していないのに結婚したのか、とアレクシスを憎む一方、彼の心がユーフェミアに向いて
いないことに安堵する。愛のない結婚は貴族間では当たり前だし、自分がアレクシスをどうこう言える立場ではないことは
わかっているのだが、つい険を込めて彼を見てしまう。
 義母ステラが女児を産み落とすと、ユーフェミアは寂しさを紛らわすためか、赤子にしょっちゅう会いに行くようになった。
(お可哀想なお嬢様……)
 赤子を抱いて笑うユーフェミアを眺めながら思う。
 ―もし自分がアレクシスだったら、決してあんな顔をさせないのに。
 それからしばらくして、ユーフェミアは風邪で倒れた。
 ジュードはエレーナとともにつきっきりで看病した。エレーナを寝せても、ジュードは片時もユーフェミアの傍を離れなかった。
それはジュードだけの特権だった。幼い頃から世話をしているので、周りの人間は誰もそれを不思議に思わない。
ジュードがどんな思いで彼女を見ているのか、知る者はひとりもいなかった。
 熱に浮かされ、ユーフェミアは「ひとりにしないで」と泣く。「ここにいます」と何度も告げる。自分を求め甘えてくる
ユーフェミアが愛しかった。そして憎かった。彼女が倒れたのは、心因性のものだと知っていたから。彼女がここまで思い詰める
原因であるアレクシスに嫉妬し、自分の想いに気づきもしない残酷な彼女を恨んだ。
 ジュードは徐々に歪んでいった。
 そして―

526:公爵家の秘密
11/05/22 01:05:41.99 PYtAYaYX
10

 夕食を取らないユーフェミアを心配して、彼女の部屋へと向かい、尋常ではない声が聞こえて踏み込んでみれば―
そこには焦がれた女が裸で座り込んでいた。
(自分に都合の良い夢なのか、これは?)
 クラクラする頭を押さえ、一欠片残った理性に従い、上着を脱いでユーフェミアの肩に着せる。
「ふふ、はは、あはは……っ」
 だがユーフェミアはそれすら気づく様子がない。
「お嬢様」
「ふふっ、馬鹿よね、ふふふ……」
「お嬢様」
「ふっ、ははは……」
「ユフィさま!」
 耐えかねてジュードはユーフェミアを抱きしめた。
「いったい……何が……」
「ドレスでも宝石でも何でも頂けるけれど、愛してはくれないのですって……愛人を持ってもいい、とまでおっしゃって……」
 ユーフェミアは自分自身に言い聞かせるように呟く。
「どうして? 私はあの方の妻なのに―」
 涙を浮かべ、ユーフェミアはジュードを見つめた。
 プチッと糸が切れる。
 長年編み続けて太く長くなっていた糸が、いとも容易く切断された。
 ジュードはため息をつくと、ユーフェミアを抱きあげ、寝台に寝かせた。
 そしてそのまま華奢な身体に覆いかぶさり、首筋に吸いつく。
「……ジュード……?」
 ユーフェミアはまだ状況が理解できていないらしく、しゃくりあげながらジュードの名を呼んだ。それが一層
ジュードの熱を高ぶらせる。
「え……? 何……あっ」
 小ぶりだが形の良い美乳を優しく手で包む。もう片方の手はへその当たりを撫で、ゆっくりと脚へ伸びて行く。
「や、やだ……ジュード、やめなさい」
 かまわず胸元に顔を埋め、その可憐な桃色の先端を口に含む。
「―やっ、いやっ!」
 びくりとユーフェミアの身体が震えた。舌で突き、唇を使って吸いつき、歯を当て甘噛みしてやると、その度に
びくんびくんと跳ねる。肉付きが薄いせいか、極めて感度良好だ。
「いや、やあっ、やめなさ……お願い、やめて!」
 やっと置かれた状況を認識したユーフェミアが抵抗する。
「ジュード!」
「あなたが悪いんですよ」
 ちゅ、と音を立てて桜桃の実から口を離し、ユーフェミアを見下ろして言う。
「ずっと……ずっとあなたのことを見守ってきたのに……」
「ジュード……?」
「あなたは私の気持ちに気づきもしない……!」
「…………え?」
「……お寂しいのでしょう? 私が、慰めて差し上げますから……」
「どうし―んむぅっ」
 可愛らしい唇を塞ぐ。息もつかせぬ激しい口付けは、ユーフェミアから抵抗する力を奪っていった。その機を見逃さず、
ぐったりと寝台に沈んだ身体のあちこちに口付けを降らせていく。
「もう……やめて……」
 息も絶え絶えにユーフェミアが懇願する。その言葉が、表情が、より一層劣情を煽るとも知らず。
 ジュードは夢中でユーフェミアに自分の印を刻んでいった。服の上からは見えない場所に、次々と赤い花が咲いていく。
「っつ……!」
 ユーフェミアの肌は白く、きめ細かく、まるで最高級の絹のようだった。どこを触ってもつるつるとしており、瑞々しい。
白魚のような脚を指の一本一本まで舐めつくし、くるぶし、ふくらはぎ、膝の裏、太股へと愛撫を施していく。
 その合間にもユーフェミアは泣きながら身をよじり、やめて、いや、と繰り返していたが、それを聞き入れるつもりなど
全くなかった。
「美しい……私のユフィ」
 やがて脚の付け根、なだらかな丘に辿り着く。子どものようなそこを無骨な指で開かせる。わずかに湿ってはいるが、
男を迎えるにはまだ潤いが足りていないようだった。

527:公爵家の秘密
11/05/22 01:06:51.01 PYtAYaYX
11

「いやあっ」
 小さな悲鳴を上げるユーフェミアの頬にキスしながら、指で溝をなぞる。可愛らしい蕾をすぐに見つけ、親指で優しく
押しつぶし、中指は秘められた泉を探る。
「何をするの……っ、あっ」
 発見した蜜壺は指を入れただけで窮屈に感じるほどだった。第二関節まで沈めると、ユーフェミアは悲鳴を上げた。
「っやああっ」
 あまり使いこまれていないのだろう。微笑を浮かべながらジュードは指で襞を味わった。
「どうしてお前が……あうっ! いやっ」
「まだわからないのですか?」
 どこまでも無垢で残酷な少女に、女の最も感じるところを責め立てる。
「いや、あ、あ、……何、これ、や、ひあっ」
 与えられる快感にユーフェミアは跳ねた。執拗に陰核と膣口をいじり続けた結果、水のような蜜が漏れ出る。段々と
大きくなるその音と、手を濡らしていく液体は、準備が整いつつあることを示していた。
「やあっ……! やめて……っ!」
(ああ、もう……!)
 本来、ジュードは女が求めてくるまで焦らし続けるのだか、今は長年想い続けた少女を前に余裕がなくなっていた。
一旦手を止め、性急に着ているものを脱ぎ去る。ユーフェミアと同じく一糸まとわぬ姿になったジュードは、逃げようと
後ずさるユーフェミアを捕まえ、大きく足を開かせた。
「いやっ、離してっ」
 羞恥に顔を真っ赤にさせる彼女はひどく扇情的だった。晒された彼女の秘所は、まるで生娘のように初々しい色を
していた。
「ユフィ……」
「いやっ、恥ずかしい……! 離して! お願い、いつものジュードに戻って……!」
「いつも……? いつも私は思っていましたよ。あなたとこうしたいと」
「嘘……そんなの嘘よ……」
 もう待てなかった。長い銀髪を振り乱し怯えるユーフェミアを気遣いながらも、ジュードはいきり立った自分自身を
秘裂にあてがう。
「や……いや……! 助けて、誰か……! 助けて、アレクシスさまぁっ!」
 ユーフェミアは必死に腰を引いて逃れようとする。挙句の果てに、他の男の名を呼んだ。カッとなったジュードは、
意地の悪いことを囁く。
「あなたを愛していない方に助けを求めても、無駄ですよ」
「―っ!」
 ユーフェミアはぼろぼろと大粒の涙を零し、動きを止めた。その隙にジュードは挿入を開始する。
「ユフィ……!」


528:公爵家の秘密
11/05/22 01:09:44.82 PYtAYaYX
12

 だが、結合はなかなか上手くいかなかった。先端が入り奥へ進もうとすると、肉の弾力につるりと押し返されてしまう。
今までこんな不手際をしたことはなかったのに、まるで初めての少年のようだ。苦戦を強いられ、もどかしく思いながらも、
できるだけゆっくりと己を沈めていく。
「い―っ!!」
 ユーフェミアは声にならない叫びを上げる。やっと入った彼女の中は狭かった。多少強引に押し進み、途中に違和感を
覚えつつも、何とか根元まで埋め尽くす。
「ああ……っ」
 ジュードは歓喜に震えた。
 今、確かに彼は、ユーフェミアと一つとなった。
 何も生えていないなだらかな丘が自分のものを咥えこんでいる景観は、倒錯的な官能に満ちていた。
まるで幼子のような人妻を、慈しみ育て上げた掌中の珠を、無残に犯している。その興奮と満足感は、
どんな女を抱いた時にも得られなかったものだった。
 ユーフェミアは顔をしかめ、苦痛に耐えているようだった。その顔が快楽に堕ちる様が見たくて、ジュードは腰を振り始めた。
「ああ、ユフィ、ユフィ……!」
 身体を密着させ、温もりを感じながら、とろけるような快楽を貪る。硬い蜜壺をこじ開け、慣らしていく。
加減を間違えれば壊してしまいそうな身体だ。奥まで入れる度、自分の矛がユーフェミアの腹を突き上げるのが見える。
 ユーフェミアはシーツを握りしめ泣いていた。こちらの顔を見ようともせずただ嗚咽するだけの彼女に、苛立ちが募る。
「すごい締め付けです。あなたも気持ちいいでしょう?」
「…………」
 強情な女だ。もっと鳴かせようと、ジュードは繋がったまま彼女の上半身を起こし、自分はその下になった。
「……やっ」
 ユーフェミアは抗議の声を上げた。その細腰を掴み、重力を使って自分に打ちつける。
「いやっ!」
「良い眺めです」
 不安定な体勢になり、白い手がジュードの胸に置かれた。ユーフェミアの腰を掴んで円を描くように回し、時には
下から突き上げる。
「いや、あ、い……ああ、あっ!」
 たまらず少女は叫ぶ。人形のように整った顔に未知への恐怖が見て取れた。恐らくこの体位は初めてなのだろう。
「大丈夫、すぐに良くなります……」
「……もう、いや。抜いて……あ、あっ、うう!」
 絶え間ない刺激に、ユーフェミアの銀髪が揺れる。声を出さないよう、眉を寄せ、唇を噛んでいる顔も、
あどけなく可愛らしい。


529:公爵家の秘密
11/05/22 01:10:22.86 PYtAYaYX

13

「いつまで我慢できますか?」
「……っ、ん、う……っ」
 繋がったまま彼女の腰を浮かせ、抜けるぎりぎりのところで落とす。
「んあっ」
 前後左右に回転させ、自分の上で踊らせる。
「……う、っ……や、あっ」
 下からの振動も忘れない。
「ひああっ」
 ジュードは思うままユーフェミアを追い詰めていった。再び押し倒し、うつ伏せにして尻を高く上げさせ、犯す。
「こんなの……いやあ……っ」
「とても魅力的ですよ。もっといやらしく鳴いてください」
 屈辱的で卑猥な格好を強いられたユーフェミアは、シーツに顔を埋めて耐えていた。泣き声だけでも十分に
そそられるのだが、彼女にそんなことを知る由もない。
 ジュードは激しく腰を打ちつけた。寝台は軋み、結合部は淫らな水音を響かせる。
「……っ、あ、ああっ」
 深窓の姫君も、さすがに耐えきれず声を上げた。手塩にかけて育てた少女を犯している。その悦びにジュードは
ますます勢いづく。
「ああ、ユフィ……!」
 限界が近づいていた。最初の体勢に戻り、大きく股を開かせ、自分を穿つ。足と足を絡ませ、手を繋ぎ、
口付けながら高みへと向かう。
「ああ、あ……っ、うっ、あ、あ、あ」
「ユフィ、私のユフィ。もっと、もっと……」
 昇り詰める寸前、外か中か迷う。だがジュードは本能に従った。
 全てを放ち、一つになったまま余韻に浸る。
「愛しています―」
 睫毛に乗る雫を払い、額に口付け、愛を告げる。
 それがユーフェミアに届いたどうかは、わからなかった。放出の途中で彼女は意識を失っていた。
 しぼんだ自分を引き抜くと、とろとろと白い液が漏れ出した。そしてそれに赤い色が混じっているのに気づいた
ジュードは、その意味するところに茫然とする。
(まさか……馬鹿な)
 暗くてわからなかったが、良く見ればシーツにも赤い染みがある。
 ―ユーフェミアは処女だったのだ。
(どういうことだ?)
 普通ならありえない。家や血筋を絶やさぬよう、愛のない結婚でも夫婦は交わる。それは義務だ。ユーフェミアと
アレクシスが何度か同じ寝台で過ごしたのは知っていた。当然、経験があるものとばかり思っていた。
(どうして―?)
 愛しい女の髪を梳きながら、ジュードはしばらく考え込んでいた。

530:名無しさん@ピンキー
11/05/22 01:11:33.25 PYtAYaYX
つづく

予想より2レス多くなってしまいましたが、以上です。


531:名無しさん@ピンキー
11/05/22 01:23:24.92 CM+pfviM
お帰りなさい!GJ
続き読めてよかったステラ視点だと心構えしていたら
まさかの婚約者視点……だと
そしてアレクシスも結婚しちゃうなんて
益々ステラ奪還が難しくなりそうだけど
アレクシスはステラに一途すぎてほっとしたが
妻としてはつらいな、でもユーフェミアも幸せになって欲しい。

500の続き投下しに来たんだがこっちは明日にすることにする
それにしてもかぶらなくてよかったリロってよかったw

532:名無しさん@ピンキー
11/05/22 01:25:01.36 NMZO5fL0
新章と言っていいのかな?
ステラたんに引き続いて不幸な子だ、ユーフェミアたん…

愛憎絡まりまくりの世界がたまりません。GJ。

533:名無しさん@ピンキー
11/05/22 01:26:14.73 NMZO5fL0
>>531の続編も楽しみにしてる。連レス失礼。

534:名無しさん@ピンキー
11/05/22 01:36:25.73 +7JSPwgg
続きが気になりますなー
ユーフェミアはとばっちりを受けた感じで気の毒だね

535:名無しさん@ピンキー
11/05/22 01:50:46.88 YlXWl+Uj
ステラの子供の父親は誰かと問いたい
DNA鑑定のしようもないから無理だろうけど

ともあれGJ
ごちそうさまですた

536:名無しさん@ピンキー
11/05/22 02:10:13.30 CM+pfviM
>>533

>>535
金髪ってあったから普通にアレクシスだと思ってしまっていたw

537:名無しさん@ピンキー
11/05/22 12:48:25.83 Yp98GBHI
こうやって有名作家気取りが増えていくんだな

538:名無しさん@ピンキー
11/05/22 16:45:43.30 FNW/Rn6a
>>530
待ってました!!
すげー面白かったよGJ

>>531
続き楽しみにしてます!

539:名無しさん@ピンキー
11/05/22 19:14:00.81 c3mx58UB
tst

540:名無しさん@ピンキー
11/05/22 20:20:49.28 3ji91Iml
自サイトに完全版上げてるんだしいちいちこっちに投下しなくてもいいのに
以前のゴタゴタで絡まれるの分かりきってるだろうにさ

541:名無しさん@ピンキー
11/05/22 21:23:48.62 /Tw+HE8K
職人の個人サイトチェックしてんのか?
きめえ
ストーカーかよ

542:名無しさん@ピンキー
11/05/22 21:26:15.41 fp491qJ/
サイト載せててこっちに載せる意味あるのか?
大人気(笑)だから?
「迷ってた」くらいならやめて欲しい
実際、別作家さんの投下を妨げてるわけだし

543:名無しさん@ピンキー
11/05/22 21:40:54.83 9YjnAljw
>>530
ユーフェミアたん可愛いGJ
続き待ってる

544:名無しさん@ピンキー
11/05/22 21:58:27.05 UvskGICo
アホか。
たまたま投下のタイミングがかちあって後にするって言ってるだけじゃん。
投下のタイミングがかちあうかもしれないから投下すんななんて言ったら誰も投下できなくなる。

545:名無しさん@ピンキー
11/05/22 22:00:45.85 TlVUZEwU
個人サイトまでチェックしてるとはファンの鑑だな…
自分はそこまでできないからここに落としてくれる方が助かる

546:名無しさん@ピンキー
11/05/22 23:22:31.39 /E6gc0J/
またこの流れ? 面倒だしどうでもいいからやめてよ。

547: ◆hYUCeP81shTk
11/05/22 23:59:11.56 CM+pfviM
投下予告して色々とすまなかったです。次は自重します。
タイトルをつけ忘れていることに気が付いたので追加。
>>500-501の続き。悲恋・ヤンデレ注意。

548:ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk
11/05/23 00:01:02.85 CM+pfviM


「あ、まってたんだから」
「……また会えるとは思わなかった」
 男が少し驚いた顔をした。しかしその表情はどことなく嬉しそうだ。
「続きが気になるの」
 女は自分でも不思議だったが、気が付いたら自然とこの塔に来ていたのだ。
 気になるのはこの塔の謂れなのか、話の内容なのか、それとも―。

「では、約束通りに会えたのだから続きを話そうか」



 彼女は初めの頃は王子に犯されながら、酷い言葉を投げ掛けられて思考を放棄し悲しみに暮れた。
 拒否すれば腹の子を堕すぞと、盾に取られ。
 無理矢理言うことを聞くしか無く、その状況を人形のように受け入れる事しかできなかった。
 ―腹の子は貴方の子供と、何度言いかけたかはしれない。
 時が経つに連れ、思考する事が戻ってくると、彼女は気が付いた。
 王子は彼女への愛するが故の失意で、彼女を酷く詰り求めている事に。
 気が付いた瞬間、彼女は王子のすべてを赦した。
 でも、このままではいけないと……王子に愛され、愛しているからこそ。
 こんな関係は今は些細な歪でも、王子の輝かしい未来に破滅を招く程の歪みになると考える。
 彼女は決心した。
 王子の為なら、なんだってできる。どんなに罪深い事でも。
 どんな手を使っても逃げようとした、愛する人を騙してでも。
 王子に従うふりをして油断を誘う。
 騙し、自分が無事にげ通せ王子がそれを知ったときの事を思うと、胸を裂かれるような行動だったが決心は鈍らなかった。
 自分を王子の手持ちの領地にある塔に閉じ込めるようにそれとなく誘導し、そして身柄を移された。
 彼女は思い出したのだ。
 その場所は城の書架で埋もれていた誰も知れないような文献に記された、隠し通路があると。

 従順になっている彼女に気をよくしたのか日に日に王子は上機嫌になる。
 塔の中の見張りは少なくなり、巡回の時間の間隔が長くなった。
 監禁されている事実にさえ目を瞑れば、まるで恋人同士のような時間が流れる。
 従順な振りが"振り"でなくなりそうな曖昧な感覚に陥りそうになる。
 これがひと時の事ではなく永遠に続けばいいのにと思っていても、ついにその日は来た。
 王子が隣国の姫君を迎える事になったのだ。
 しぶる王子を彼女は説得し、迎えに向かわせる。
 
 逃げる時がきた。失敗すれば死を選ぼうという程の決意。
 自分の存在自体が害悪なのだと。腹の中の子に詫びながら彼女は静かに決心した。
 全ての罪はあの宴の夜に、酔った王子を拒みきれなかった自分の所為なのだから。

 一方幼馴染の青年は、急に自分の前から姿を消した彼女を必死で探していた。
 初めは、彼女はやはり思い直して独りであてもなく飛び出したのかとおもえど、彼女の私物は何も動かした形跡がなくそれは不自然だった。
 すぐに王子の周辺が緊張を強いられ、何か問題を隠していることに気がつく。
 従兄弟が青年を徹底的に避けた事で、それは確信にかわった。
 彼女を救い出そうとしても隙がなく、近づくことすらできない。

549:ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk
11/05/23 00:02:07.43 CM+pfviM
 しかし、幸運で皮肉な事にも、彼女を邪魔だと思う王や侍従達の協力を取り付けられた。
 彼らは初めは婚約者が決まった王子の結婚前の遊びだと、すぐにやるだけやったら飽きると思っていた。
 しかも相手は絶対に王子の子供を身篭ることは無く、生まれは卑しくなく身寄りのない身分が低くどうにでもなる女。
 そして、結婚もしていないのに身籠った、身持ちの悪い女だ。
 一時の閨の指導だと割り切れば、許されることだったが。
 この関係を、妃を迎えても続け、そして妃よりも尊重すると。
 時が経つにつれて、王子の彼女への異常な執着心がうかがえてくる。

 流石にまだ妃も迎えていない、こちらの方が国としては格下で平伏して王女を娶る立場。
 妃として迎えるまえから愛人を囲うとなると体裁が悪いと慌てたし、更に彼女の相手は王妹の息子だと発覚した。
 降嫁したとはいえど、王は妹とは仲がよい。いや甘いと言ってよかった。
 その息子が遊びではなく、妻として迎える前提での関係と主張すれば、密かに母子共々葬り去る事も出来ない。
 そんな焦慮する彼等にも、転機が訪れた。
 隣国の王女との婚儀が速まったのだ。
 青年はそのゴタゴタに紛れ彼女を助け出そうと、王子の出立日にそれを実行に移すことにした。

 脱出は奇跡的な大成功だった。
 偶然が重なり合い、こちらの息の掛かっていない警備の者十数名は、塔の裏手の川に彼女が身を投げたと取り違えた。
 彼女は惜しみなく長く美しい髪を切ると、それを持たせ死体を持ち帰れなかったと、青年の息の掛かった者に報告させる。

 そして数週間後。
 侍従達が身代わりとなる死体をどこからか連れて来る。
 それはどこからどうやって手に入れたのかは不明だったが。それは知らないほうがいいことだ。
 
 王子は初めは彼女が死んだことを信じようとはしなかったが。
 次々と希望を打ち砕くようにされる報告。
 彼女が残した遺書とも取れる書き置き。
 それを何度も繰り返し読むと、自らの愚かさで完全に彼女を失ってしまったと、やっと理解した。
 彼女を失った当初は、何故自分を置いて逝ってしまったのか……と。
 怒りと悲しみとやりきれなさで荒れた王子。
 しかし時が経ち、何度も読み返す彼女の言葉に、そして塔にきてからの彼女の王子としての品位を落とさぬようにとの気の使い方が思い出される。
 彼女が命を賭してまでに自分に立派なこの国の王になるようにと、望んでいた書き置きが胸に強く響く。
 ―彼女の最期の授業を、生徒らしく実行しろということか。
 ある時期から彼女の誇れる男になろうと、王子はそれこそが彼女への愛の証かと気がついた。

 一方、彼女は救い出されてからは王子と青年への申し訳なさに悩んでいた。
 自分が生きてあの塔から救い出されたのは、青年の未来の妻だったからと侍従たちから散々聞かされる。
 でも一度ならともかく、彼女は何度も凌辱され、受け入れ、喜びさえしていた。
 そんな不潔な自分が、誠実な幼馴染の妻になれるはずもなかった。
 腹の子さえ居なかったら、本当にあのまま自らの命を絶っていただろう。
 そのどうしたらいいかわからないやりきれなさを、青年がまるで真綿に包むような優しさで、辛抱強く解きほぐす。
 それが打ちひしがれ、枯れはてた彼女の心に水を注ぐ。
 二度目の求婚はかなりの時間をかけて成された。



550:ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk
11/05/23 00:02:36.56 CM+pfviM

 すでに彼女は別人として生きる事を侍従たちから強いられていた。
 別の貴族の養子になり名前も変わり、目立つ髪も染め、人前に出ない事が義務づけられる。
 万が一王子に会わないようにと、青年は地方に小さな領地を拝領した。
 都にいれば、国の中枢を動かすほどの身分を持ち、それが義務だった青年。
 だが、今回の事で王子から遠ざけられたからと、笑う。
 それを見て、申し訳なさに消え入りそうになるが、それも笑って許してくれる。
 幸せだから、と笑ってくれる。
 そんな青年は愛妻家の地方の一領主として、民に愛された。

 そうしているうちに臨月を迎え、子を産んだ。
 女の子で―王子にそっくりだった。
 その子も自分の子のように慈しんでくれる青年を見。
 子供が喃語で「ととさー」と青年を慕い、笑いあう頃には、王子の賢王としての活躍も遠い領地にも届くほどだった。
 絵に描いた幸せに包まれ、やっと王子を思いきれると、彼女は思った。
 これでいいのだ、これで。

 そう彼女が幸せを感じる頃には、国の情勢が変わり、国境で小競り合いが続く。
 青年も一領主として、領民と戦に参加することになった。
 戦に赴く青年に無事に帰ってきてと、青年を初めて自分から抱きしめる。
 結婚してもいまだに二人の間は清い仲だった。
 彼女からの初めての接触に、青年は必ず生きて帰って来ると、誓う。
 帰ってきたら―身も心も貴方の本当の妻になりますと、彼女は長年待ち続けてくれた夫にやっとの事で言った。

 戦地に赴いてから、思わしくない報告だけがもたらされた。
 僻地の領地では情報の伝達も遅い。
 身を切られるような思いの中、彼女には子供だけが支えで、不安になる心を耐えた。
 そんなある日、戦がこの国の勝利で終わったと、夫が無事帰ってくるとの報告に彼女はやっと安堵する。
 夫の帰りを指折り数えて待つ中、やっと夫の乗った馬が城内に入ったとの知らせを受け。
 人前に出るときは顔を隠すという約束を忘れて、彼女は夢中になって子供を抱いて走った。
 歓迎をする領民に囲まれ、それを片手をあげ応える馬に乗った夫に駆け寄る。
 ―しかし、その足は、夫の顔を見ると、魔法にかかったように止まった。
 


「ちょっと!彼女は塔から身を投げたって貴方言わなかった?」
「人の話しは最後まで聞かないと。せっかちなのが君の悪い癖だね、ジュリア……ああ、もう時間だ」
「もう、また?時間って何なのよ?」
「まぁ。また……次に会えた時にでもわかるよ、全てね」






551:名無しさん@ピンキー
11/05/23 00:10:03.62 8aQ7Vm1w
笑顔動画を見てたら、谷山浩子女史のヤンデレ曲が個人的にツボに入ったので、
これで愛故とか書いても大丈夫でしょうか

552:名無しさん@ピンキー
11/05/23 00:39:15.63 8aQ7Vm1w
リロードしてなかったら投下が(汗)
>>548->>550 GJ
そして次回wktk
最初の会話とこの悲恋がどうつながるのか楽しみだ

553:名無しさん@ピンキー
11/05/23 01:30:44.83 h3f/zw6U
>>550
今回も続きが気になる引き
続き待ってる

554:名無しさん@ピンキー
11/05/23 10:37:01.91 JCD1K80J
なんか批評家気取りばっかで
職人潰してばっかのスレになっちまったな

555:名無しさん@ピンキー
11/05/23 15:05:56.29 2NZV4JGP
愚痴ならば愚痴スレヘ
場外乱闘をやらかしたいなら誤爆(絡み)スレヘどうぞ

556:名無しさん@ピンキー
11/05/23 16:14:26.44 kVeu+mZm
愚痴スレや誤爆スレに書き込むのはかまわんが、スレ名出すなや、ウザいわ

557:名無しさん@ピンキー
11/05/23 17:28:45.83 gq+igbws
愚痴スレ

558:名無しさん@ピンキー
11/05/23 18:29:46.58 +uCW1AqC
腐女子の実態晒しあげ

559:名無しさん@ピンキー
11/05/23 19:36:38.64 qwMj1FAi
覚え立ての単語を使いたいだけなのかもしれんが
意味間違ってるから失笑するしかできんな>558

560:名無しさん@ピンキー
11/05/23 20:32:33.70 +uCW1AqC
チュプの方がいいか?

561:名無しさん@ピンキー
11/05/23 20:49:17.34 28DMkVwK
ふふ

562:名無しさん@ピンキー
11/05/23 22:14:33.22 4n+7KXuM
でって言う

563:名無しさん@ピンキー
11/05/24 19:36:50.02 VC7aUJDl
で、愛するが故に無理やりな話を再開していいものかね

564:名無しさん@ピンキー
11/05/24 20:54:54.50 gdM2nfBN
確執を解決するために幼い娘を嫁に差し出す・・・ねぇ
人質的な強制結婚か・・・

565:名無しさん@ピンキー
11/05/24 21:32:24.62 VC7aUJDl
それが何がどうなって愛するが故に無理やりなのかKwsk

566:名無しさん@ピンキー
11/05/24 22:04:07.90 PSZvRtd7
娘の夫は娘に心を寄せるが娘は心を開かず、すれ違った挙げ句の果てに無理やり、まで想像したので
誰か文章にしてくれたら嬉しい

567:名無しさん@ピンキー
11/05/25 00:46:22.67 foSuEzsM
>>565
TVを見ていたらそんな風習を話していたんで何か妄想に使えないかと思って呟いてみた。
で、思いついたのは権力者がその娘に一目惚れして嫁にするために罠に嵌めるという、
水戸黄門などの時代劇にでもありそうな展開。
けど水戸黄門ってスレ的に中々使えそうな状況やってるんだよな。
悪代官がただの欲望塗れだから余り意識されないが。
想い合ってる男女を引き裂いて嫁にしようとしたり、未亡人を陥れて嫁入りさせようとしたり・・・・・・ets。
こういう強制結婚を欲望だからではなく、恋慕故にと置き換えると中々良いなぁと感じてね。

568:名無しさん@ピンキー
11/05/25 01:34:19.11 qe50318d
あの手のテンプレ的悪代官とか和製中世モドキファンタジーの悪い権力者は
どう考えてもこのスレ向きだな
本気で好きだけど悪い奴なんで女には嫌われ怖がられ
でも権力はあるからな、無理矢理犯りやすい
邪魔者の正義の味方がいなけりゃ勝つる

569:名無しさん@ピンキー
11/05/25 02:37:31.79 o7SED4dy
しかしロマンスは邪魔がないと盛り上がらない矛盾、いやさお約束。

570:名無しさん@ピンキー
11/05/25 05:33:48.76 qe50318d
まあ、確かにそうだよな
悪が勝つ方向を期待したいがやっぱり討伐されて
男側的には悲恋も悪くないか……

571:名無しさん@ピンキー
11/05/25 07:39:50.42 JR0FcLSP
まさにそんな悪代官(奉行?)が出てくる小説最近読んだw
好きになった材木問屋?の小町娘を手に入れるため借金漬けにして
父親自殺で娘を無理やり正妻に。
結婚した当初は強姦してたけど娘は無理矢理されてるため苦痛しか感じずに
嫌がる反応ぐらいしかしなくて乱れない。
娘が嫌がると喜んで乱暴されるから、諦めて淡白な反応しか返さなくなって
つまらんといい昔からいる側室といちゃいちゃする
その関係を見ていた悪代官の手下が
正妻にするぐらいその娘にドS的に惚れてるなぁと思うってのが
全体の1、2ページしかなかったけど萌えたw
因みに娘は生まれる前から?の幼馴染の許嫁に助けてもらって逃げ、悪は滅びたw

572: ◆h1Zp3va3xs
11/05/25 18:36:34.03 1RcF+Wcl
江戸時代の話の流れを読まずに投下

六回に分けて投下します。
非処女・ヤンデレ・人死に・穴兄弟要素を含みます。バッドエンドです。
エロ描写は(愛故以外も含めて)全体の半分くらい?
タイトルおよび全体の構想はショパンの曲から。BGMにしていただけると陰鬱さ倍増。


雨だれ<1> まだ愛故描写なし。

 真夜中に携帯電話が鳴った。絵理は明かりのない部屋で手さぐりして腕を伸ばした。
傍らで眠っていた男が気配に気づいて目をさます。裸の体に毛布を巻いて、絵理は携帯電話を取った。
「もしもし?」
「絵理?起きてた?」
 電話の向こうは母だった。
「ううん、寝てた。どうしたの、こんな時間に」
 携帯の時計によれば、時刻は既に12時を回っている。常識的に考えて電話の時間ではない。
「お隣の英(ひで)ちゃん、憶える?」
「・・・憶えてるけど、どうかした?」
 憶えてる、どころの話ではない。二度と思い出したくなかった。
「今日、亡くなったそうよ」
 その言葉に、絵理は母には気付かれないよう胸を撫で降ろした。朗報だったら聞きたくなかったが、
一番待ち望んでいた知らせだった。
「そう」
「明後日お通夜で明々後日お葬式だそうよ。急だけど、帰ってこられる?」
「そうね、なんとかしてみる」
「わかったわ、遅くにごめんなさい」
 それだけ言って、電話は切れた。
「どうした?」
「幼馴染が死んだって。明後日お通夜で明々後日お葬式だけど、帰ってこられるかどうかの確認」
 ベッドに横たわったままの男の隣に絵理は潜り込んだ。
「幼馴染の訃報の割には、淡々としてるんだな。仲が良かったんじゃないのか?」
「まあね。幼馴染っていったって、田舎の幼馴染はきれい事だけじゃ済まないから・・・
これでもいろいろあったのよ」
「へえ。たとえば、こんなことも?」
 男はそれと分かるように体を密着させてくる。
「それは別の男」
 絡んできた腕を解かないまま、絵理は体を任せた。目を閉じる直前、部屋の隅に置かれたピアノが目に入った。

573: ◆h1Zp3va3xs
11/05/25 18:39:29.45 1RcF+Wcl
 星明学園中高では毎年全校対抗の合唱コンクールがあり、中・高から一クラスづつ優勝クラスには
NHKコンクールの都大会に参加する権利が与えられる。
大学までの一貫教育だから受験がない分部活動や学校行事に力を入れるのがこの学校の方針で、
数年前にはそれが功を奏して念願の全国大会に駒を進めたこともある。
「鐘が鳴る 鳩が飛び立つ 広場を埋めた群衆の叫びが聞こえる 歌を 歌をください」
 音楽室は高校も含め3つあるが、この時期はどの教室も朝から晩まで歌声が途切れることがない。
ピアノもフル稼働している。
「陽が落ちる 油泥の渚 翼なくした海鳥の呻きが聞こえる 空を 空をください」
 この曲は、序盤と終盤はあまり分岐が多くない。問題は中盤だ。
「こだまして 木々が倒れる」
「ストップ」
 本田絵理は歌いかけの声を止めた。
「男子の今の入りかた、頭の「こ」の部分が聞こえない。もういちどちゃんと指揮者の合図を確認して、
女子に頼りすぎだから自分が主旋律になると自信がなくなるでしょう」
「はいっ」
 序盤は難易度の低いピアノの伴奏が終盤になるにつれて難易度が上がり、自信をなくしていく。
一度全体を通して確認しておくか、と絵理は思った。

 絵理は音大を卒業し、非常勤講師を2年経て今年から常勤の専任講師になったばかりだった。この学校は生徒の意識が高く、
行事にも勉強にも真面目な子供たちが多い。私大の付属に多い「付属上がりのバカ」も少なく、保護者の意識も高いから、我ながらいい職場に恵まれたものだ。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
 職員室に入ると、先ほどまで受け持っていた3-Bの担任が声を掛けてくる。
「どうですが、うちのクラスは」
「女子はかなりいい感じです。が、男子が頼りないですね。
しっかりパートリーダーになれるのが一人いるとだいぶ変わるんですが」
 大会に出る以上校外の評判にかかわり、ひいては来年の志願者数に直結するだけに、合唱コンクールは教師の査定に影響する。
少しでも良い出来で優勝したい、望めるなら都大会を勝ち抜いて出世したいと、
音楽教員以上に深く関わる担任たちは休日と朝、放課後全てを返上して本番に臨む。
「B組の田中瑞穂ですが、今度伴奏の指導をするので本人に伝えておいてください」
「わかりました」
 用件を済ませて絵理は校長に向きなおった。
「申し訳ありませんが校長、地元にて不幸が発生したので明後日と明々後日だけお休みを頂戴できると助かります」
「不幸?」
「はい。よりによってこの時期に」
「できればNoと言いたいところだがね」
「すみません」


574: ◆h1Zp3va3xs
11/05/25 18:42:12.40 1RcF+Wcl
 主任の佐藤先生と相談してOKが出れば、という条件をクリアし、絵理は連休を手に入れた。
「ずいぶん急ねえ」
「すみません、夕べ訃報が届いたもので」
 佐藤先生はため息をつく。
「明々後日は2-Eと1-Dの土曜練の依頼が入ってたけど」
「担任の先生方にはお話ししてあります。代わりにお土産をせがまれました」
「もう少し時期をずらしてくれればよかったんだけどねえ」
「ハタ迷惑な時期に死んでくれたと思いますよ」
「人が死ぬ時期ばかりは選べないもの。まして本田先生のご実家は地方でしょう?」
「一度葬式に顔を出さないと何年も陰口を叩かれるような田舎です」
 そのあたりの感覚は、23区以外の土地に住んだことのない佐藤先生には理解しがたいものらしい。
「想像できないわ」
 いっそそれくらい縁の薄い場所なら良かったのに、と内心絵理は思った。
 翌日、放課後の指導を石井先生に交代してもらった絵理は大荷物を抱えて東京駅に向かった。
東京駅まで一時間、東京駅から新幹線で二時間、更に単線のローカル線で四十分。
乗り換えの回数は決して多くないのに、そういえば成人式と法事以外の理由では一度も帰っていなかった。
大学時代はバイトと授業を理由に、就職後は仕事と副業を理由に(私立の非常勤講師の給料は安い)。
 それ以上に、英ちゃんのせいだ。窓の外を流れだしたビル街を見ながら、絵理はため息をついた。


575: ◆h1Zp3va3xs
11/05/25 18:47:32.50 1RcF+Wcl
 絵理は幼馴染で隣人の佐野敏幸(としゆき)と向かい合っていた。敏幸の目の前には大量の参考書が積まれ、
絵理の目の前には世界史の教科書が広げられている。
「1789年6月17日、第三身分を中心に憲法制定国民議会成立」
「6月20日、テニスコートの誓い」
「では7月14日、バスティーユ牢獄に押し入る前に民衆が立ち寄ったのは?」
「廃兵院」
 世界史では校内で追随を許さないと言われる敏幸は、なんなく答えて見せた。
「じゃ、知ってるか?マリー・アントワネットの昔の音楽の家庭教師」
「モーツァルトじゃなくて?」
「そっちはプロポーズして振られたほうだろ。正解はグルック」
「あ」
 音楽にはまるで興味がないくせに知識の点ではなぜそういう細かいところまで知っているのか、
絵理には敏幸の脳がわからない。一度脳みそを割って中を調べてみたいほどだ。
「敏ちゃんの頭の中ではどこからどこまでが世界史で、どこからが文化史なのかわかんない」
「全部世界史だろ。日本も含めて」
 それくらいの頭でなければ、普通科の学年トップはつとまらないのかもしれない。2年生の期末テストでは世界史と現代文で満点、
本人いわく苦手という生物、英語も八割は取っている。唯一数学が六割どまりだ。
「敏ちゃん、もう志望校は決めた?」
「今のところは早稲田か慶応の法学部。本格的に司法試験目指すつもりだから。絵理は?」
「まだはっきりは決めてないんだけど、桐邦音大か国崎音大のピアノ科かな。
プロは難しいと思うけど、教職を取って先生を目指そうと思って」
 敏幸と絵理はどちらもN高の生徒だった。春休みを挟んで、四月から三年生になる。N高はこのあたりでは並ぶもののない進学校で、
地元では唯一の音楽科があり、浪人を含めるとほぼ全員が大学に進学する。
敏幸は普通科、絵理は音楽科でトップを取っていた。
「N大の教育学部は?一番近場の国立だろ?」
「あそこはセンター重視で実技のウェイトが低いし、実技の授業数が少ないから。
敏ちゃんだって法学部がないから受けないって言ってたじゃない」
「それに、絵理は一人暮らししたいって言ってたしな」
 ぐい、と敏幸は絵理の体を引き寄せた。腕の中に抱き込み、指先を撫でる。そのまま、手首に口づけた。
「実家通いじゃ、安心してこんなことも出来ない」
「敏ちゃん」
 絵理が敏幸にはじめて体を許したのは、高校に入って最初の夏休みだった。それから一年半になる。そろそろ
親にも弟にも邪魔されない環境が欲しいと思うのは男の必然だ。
「東京の大学に入ったら、一緒に暮らすか」
「無理だよ。音大生は学生会館か寮しか選択肢がないって先輩が言ってた」
「丁度いいだろ、こういう音が漏れないんだし」
 冗談めかして敏幸は言う。
「んもう、変態」
「変態で何が悪い」
 そのまま敏幸は服の下に手を差し込み、絵理の胸に手をやった。小さいころは俎板だったというのに、
よくここまで自分好みのFカップに育ったものだ。いや、育てたというべきか。
 押し倒して事に及ぶ間も、敏幸は絵理の指に気を遣うことを忘れない。知識ではなく経験で、絵理はそれを
よく知っていた。


576: ◆h1Zp3va3xs
11/05/25 18:57:40.73 1RcF+Wcl
 地元の駅からN駅までは、ローカル線で四十分かかる。N駅は地元で唯一の都会で、同時に新幹線の乗り換え駅も兼ねている。
この路線は田舎にしては進学校が集中しており、入試レベルも進学率も高い。
 それを支えているのが地元の旧家であり大地主、兼名士である多田家だった。N駅前に多田商事の本社と
東京、大阪に支社を構え、雇用と経済を生み出している。このあたりで多田と取引のない地元企業は皆無だ。
 地元の駅前に聳え立つ瀟洒な洋館が多田の本家で、絵理の母は昔から家政婦として働いている。
絵理が東京の音大を視野に入れられるのも、その雇用があってこそだ。
 駅前から山のふもとに見えるその洋館に頭を下げると、敏幸がやってきた。
「いつものお礼か?」
「うん」
「よくやるな」
「いいじゃない」
「絵理姉(ねえ)、おはよ」
「英ちゃん、おはよう」
 英ちゃんこと英幸(ひでゆき)は敏幸の二つ年下の弟で、今年からN高校の一年生になる。
「敏ちゃんの学ランもこんなにきれいだったのに、どうすればここまでボロボロになるんだか」
 絵理は敏幸のブレザーをつついた。あと一年もつかどうか怪しい。
「うるせえな」
「英ちゃんは何か部活入るって決めた?」
「ううん、まだ」
「うちは運動部は強くないけど、文化部は結構盛んだよ」
「そうなの?」
「合唱部とか科学部とか、大会にも出てるみたい。英ちゃん合唱部だったし、どうかなっ
て思って」
「ふうん」
 道の向こうから、駅に向かって数人の女子がやってくる。
「佐野っちおはよー」
「絵理、今の課題曲何?」
 英幸が女子の制服を見比べた。絵理のセーラー服のタイは赤だが、他の女子は緑だ。
「どうしたの?」
「襟姉の制服って、他の人と違うの?」
「ああ、普通科はタイが緑で、音楽科は赤なの」
 ローカル電車が入ってきた。通学時間だけあって既に社内は缶詰だ。指先が押されないように守りながら、絵理は電車に割って入った。

 普通科と音楽科は教室が一緒だが、音楽科には防音の音楽室がある。通常の授業が終わってからここで弾いていくのが絵理の日課だった。
今の課題はショパンの「英雄ポロネーズ」で、後半のオクターブ連打が
難しい分弾きごたえがある。窓を叩く音がして、絵理は振り返った。カーテンを開ける
と、敏幸だ。
「もう帰るの?」
「ああ。受験勉強」
 そう言って赤本を取り出す。「早稲田大学法学部 入試過去問題」絵理には100年かかっても解けそうにない。
「何の曲弾いてたんだ?」
「ショパン。聞いたことくらいあるでしょ」
「太田胃散の」
「それもあるけど、革命とか、幻想即興曲とか」
 そう言って、絵理はピアノの前に座る。
「こんなのとか」
 一曲弾き始めた。
「何だっけ、この曲。英なら結構クラシック聞いてるんだけどな」
「雨だれって、タイトルくらいは聞いたことない?」
 言われてみれば確かに、正確に刻むリズムが雨音を連想させる曲だ。出だしはやさしい通り雨のようだが、
次第に重苦しく陰鬱な表情になってくる。
「暗っ」
「計算とか一切しないで、いかにも感覚で作ったって感じ」
「ピアノの詩人ってか」
「そうそう」


577: ◆h1Zp3va3xs
11/05/25 19:03:42.87 1RcF+Wcl
「どうしたの?二人とも」
 そこに英幸が通りかかる。
「英ちゃん」
「何か面白い部活でもあったか?」
「そうだね。文化部だと天文部とか」
「運動部は?」
「運動部は明日見てみようと思って。今、雨だれ弾いてなかった?」
「お前、耳いいな」
「ちょうど英ちゃんがクラシック好きとかって話してたところだったんだよ」
 続きを弾き始める。
「そうそう、隣からよくピアノの音が聞こえて、それでピアノ曲は憶えた。小犬のワルツとか、トロイメライとか、
月の光とか」
 ついていけんと言うように、敏幸が頭を横に振る。彼にとってはピアノの曲はどれもこれも同じように聞こえるらしい。
太田胃散=ショパンはウィキペディアからの知識である。
「同じ腹から生まれた兄弟なのに、何を間違えればこんなに違うんだか」
「それよりそろそろ行かないと、次の電車逃すと45分待ちだよ」
「うお、やべっ」
 兄弟が時計を見やった。
「じゃあね」
「じゃあな」
 二人が去ると、絵理はカーテンと窓を閉めた。
「さて、練習練習」

 夕食も終わり、敏幸は居間で過去問を解いていた。傍らでは父が野球中継を見ている。
「あんた、テレビのついてる中でうるさくないの?」
 母が声をかけるが、敏幸は知らぬ顔だ。
「全然」
 現代文と古文はほぼ満点だが、漢文が足を引っ張る。英語はセンターと早稲田では傾向がまったく違い、
早稲田でかなりを取れてもセンターでは得点が落ちる。
 隣家からは、かすかにピアノの音が聞こえてきた。
「あ、悲愴」
 弟が顔を上げる。ピアノ曲なんざ敏幸には聞き分けがつかない。5分も聞けば欠伸が出るが、
弟にとってはそうでないらしい。
「・・・絵理姉って、彼氏とかいるのかな」
 ふと英幸が言った。
「兄貴、知ってる?」
「知らね」
 わざと敏幸は言った。知らないも何も自分だが、秘密にしておこうと決めたのは両方の合意だった。狭い田舎や
校内でやっかみや誤解やあらぬ噂を巻き起こしたくない。もし別れるようなことがあっても墓の中まで口外しないと決めた。
「あっそ」
 それだけ言って、英幸は自室の二階へと上がった。次は、世界史だ。



578: ◆h1Zp3va3xs
11/05/25 19:07:57.23 1RcF+Wcl
「えりちゃん、ピアノひいて」
 小さいころの思い出は、いつも絵理と兄との3人だ。あまり運動が得意でなく、本に浸っているほうが好きだった
英幸は、それゆえに家の中で過ごすことのほうが多い子供だった。兄も似たようなもので、家の中は子供らしいボールよりも絵本のほうが多い有様だった。
 そのうちに隣家の絵理がピアノを習い始め、どうやら才能もあったらしくめきめきと腕を伸ばしていった。
そのピアノを聞くのが英幸の趣味になり、同じ目線で話がしたくなってピアノ曲を聴きあさるようになった。それが恋愛感情に変わるのに、時間は必要なかった。
 隣家からは、相変わらずピアノの音が聞こえる。ベートーヴェンの「月光」第三楽章だ。少しだけ窓を開けて英幸は電気を消した。
月の狂気を楽譜に落としたような、不安定で激しい曲だ。低くうねっては駆けあがり、たたみかけるように主題が繰り返される。
―こんなにきれいな曲を弾くのに、兄貴には股を開くんだ。
 兄と絵理の関係を知ったのは二月前だ。公立の推薦入試とインフルエンザの流行が重なり、大事を取って三年生だけが臨時休校となったのだ。
仕方なしに自宅に戻ると、兄の靴の他に革靴がある。誰か来ているのだろうか、そう思って階段を上がろうとし、足が止まった。
「ん、や、あんっ」
 押し殺したような喘ぎ声が英幸の耳を正確に射た。
「敏ちゃん・・・はあんっ」
「絵理・・・っ」
 聞き間違いもしない、兄の声だった。
「や、そんなとこ、触っちゃ・・・」
 物音を殺して、居間に取って返した。知らず知らずのうちに股間は否応なく反応し、存在を主張してくる。
両親は普段から共働きで、夜まで帰ってこない。英幸の偶然さえなければ、確かに誰にも邪魔されない絶好の状況だった。
聞きたくない気持ちと本能とが交錯した。
「あんまり、動か、ないで」
「無理。すげー気持ちいい」
 ぎち、ぎちとベッドの軋む音がする。音を出さずに階段をのぼり、自室に駆け込むと、英幸は膨らんだジッパーを降ろした。
兄の部屋からはそれとわかる水音が聞こえてくる。右手が怒張を握りしめ、知らず知らずのうちに摩擦を始めていた。
「ん、んん、はあっ」
 言葉もなく喘ぐ絵理の嬌声が、既に限界に近いことを告げていた。痛いほどに膨れ上がったそれを強くこすり上げ、英幸は倒錯した絶頂を迎えた。
 何食わぬ顔で今帰ったような素振りをした英幸を、何もなかったかのような表情で絵理と敏幸は迎えた。
彼女は相変わらず「幼馴染のお姉さん」の表情をしていたが、英幸にはそれが張り付けた仮面のようにさえ思えた。
 二月前を思い出して、英幸はほくそ笑んだ。誰のものでもないと信じていた彼女が、既に文字通り兄のものであると
知ったときの絶望たるや、誰にも分るものではない。そして二人は、自分にさえその関係を隠しているのだ。
 二人がその関係を周囲に隠しているなら、それを利用してしまえばいい。
普通科と音楽科のトップが不純異性交遊など、田舎の高校にとっては絶好のスキャンダルだ。学校どころか地元にさえいられまい。
―さあ、どうしようか。窓を閉めて、英幸は目を閉じた。

雨だれ<1>、終わり。
合唱曲「聞こえる」は中学時代に実際に歌った歌だったりします。

579:名無しさん@ピンキー
11/05/25 20:30:12.55 M9JlyIMt
田舎

580:名無しさん@ピンキー
11/05/25 20:46:43.81 JR0FcLSP
投下乙!
ヒロインに死んでほっとしたといわれてる
英ちゃんが何をしたのかすごく気になるw
ヤンデレの独りよがりほど悲しいものはないな…
全六話続き楽しみにしてます

581:名無しさん@ピンキー
11/05/26 00:13:02.10 gZw08Ppa
英ちゃん何しやがったのw
続きに期待

しかし多田さん家のある地方かあ
閉鎖的環境で圧迫感バリバリなんだな
ヤンデレとか性犯罪とかと実にマッチする

582: ◆h1Zp3va3xs
11/05/26 11:29:51.99 D0ng/Tsg
続き投下します

雨だれ<2> 愛故入ります

「結局天文部に入ったんだと、あいつ」
 本田家の居間で参考書を広げながら敏幸が言う。
「ふうん」
 絵理はドイツ語の辞書を手渡した。音楽科で必修のドイツ語は他の外国語と並んでライバルの多い英語より難易度が低いことが多いため、
うまくすればセンター試験のいい抜け穴になる。
「天文部かあ、あんまりぴんと来ないけどね」
「運動部みたいに上下関係が面倒でなくて、理系でも文系でも役に立つことが多いからだそうだ。
実際古代ギリシャ史とギリシャ神話、地学と天文は直結するしな」
 そう言って、イヤホンを耳に当てる。ベートーヴェンの第九番交響曲、第四楽章の合唱部分、
いわゆる「歓喜の歌」だ。発音と文法と単語を一気に覚えこむのに歌が一番効率が良い、
と聞いて試す気になったらしい。どこぞの高校では卒業式に言語で全校合唱だという。
「Freude, schoner Gotterfunken,Tochter aus Elysium Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum」
「音が外れてる」
「うるせ」
「普段歌ってないからだよ」
「文法はともかく、発音は分かりやすいんだな」
「音楽の先生によると、文法は難しくても発音は日本人に合いやすいんだって」
 耳は悪くないんだから、もっと音楽に興味を持てばいいのにと、絵理は心の中だけで呟いた。

 その英幸は、敏幸が家に帰った時点で居間で眠りこけていた。入学して一月、
ようやく日々の生活にも慣れてきたところで進学校としての勉強量が本領を発揮してきたらしい。
周囲には参考書が散らばっている。
「制服くらい脱げっての」
「仕方ないんじゃない?さっきまでずっと参考書と首ったけだったんだもの。
まして兄がトップなら弟もトップを狙え、みたいな期待があるんでしょ」
「そんなもんかねえ」
 周囲に散らばっている参考書の中には、星座図鑑やギリシャ神話と言った敏幸にはなじみのない文献が
転がっている。遊び半分で読み始めると、小さな頃に聞かされた星座の神話もいくつか混じっていた。
 ゼウスの好色ぶりといい寝取りといい、愛人やその子供を容赦なく手に掛けるヘラといい、
ずいぶん自分勝手で好き放題な神様ばかりだ。成人向けゲームにでも置き換えればさぞ修羅場だろう。
古事記によれば天皇家も昔は散々無茶をやらかしていたから、神様が人間になっただけでどこの王家もそのあたりは変わらないらしい。
 修羅場、ねえ。
―絵理姉って、彼氏とかいるの?
 弟の言葉をふと敏幸は思い出した。英幸は絵理のピアノで音楽教育を受けたようなものだ。
全く興味のない敏幸と違い、ピアノはほとんど弾けないが一度憶えた曲は忘れず、歌を歌えば音程も外さない。
中学時代の合唱部では、音感と声の良さを武器にソロパートもつとめていたと聞く。
―まさか、な。
 一瞬思い浮かんだ嫌な予感を、敏幸は否定した。もしそれが現実だったとしても、
絵理が英幸相手に首を縦に振らないことを、敏幸はよく知っている。
それに、幼馴染の居心地の良いぬるま湯のような関係から気まずさを感じる関係に転じるリスクを英幸が取るとは思えなかった。
 本を元に戻して敏幸は階段を上がり始めた。受験生には、やることが山ほどあった。


583: ◆h1Zp3va3xs
11/05/26 11:34:01.97 D0ng/Tsg
 中間も終わり、五月も後半に入ったころだった。絵理は練習室のカーテンの隙間から外の様子を伺い、
時計の時間を確認して楽譜を閉まった。あと十分で学校を出れば、待ち時間を殆ど挟まずに電車に乗れる。
 敏幸はとうに下校していた。今頃は過去問でも解いている頃だろうか。
―そういえばあの人、ドイツ語の勉強とか言って第九聞いてたっけ。
 戯れに、右手で主旋律を弾いて左手で和音をつける。思えば逸話の多い曲だ。
作曲者の生前はまともに評価されなかったとか、日本での人気に対して海外ではあまり歌われないとか、
あげくCDのサイズはこの曲が収まるかどうかを基準にしているとか。
 扉を叩く音がした。敏幸は既に下校しているはずだから、
この時間に残っているとしたら天文部の英幸だろうか。それとも、他の音楽科の誰かや先生だろうか。

 果たして、扉の向こうにいたのは英幸だった。部活帰りだろうか、荷物を抱えている。
昔は自分より小さかったのに、いつの間に追い越されたのか絵理には不思議でならない。
絵理の身長は高くないほうだが、敏幸と英幸は170センチを超えている。
同じ田舎育ちで同じ店で売ってる食べ物を食べてきたのに、どうしてここまで違うかな。
「どうしたの?」
「少し話があるんだけど、いい?」
「いいよ」
 絵理は英幸を招き入れた。扉のカーテンを閉め、鍵をかけた。

 英幸はドアの前に荷物を置き、傍らの椅子に座った。絵理の荷物をまとめるのを待っているようだった。
作業を終え、絵理がピアノの椅子に座る。 
「絵理姉に、聞きたいことがあるんだけど」
「・・・何?」
「彼氏っているの?」
 どきりと絵理の胸が鳴った。敏幸と付き合うようになってから、この問いに対しては全てNOで返している。
下手に勘ぐられたりあらぬ噂をたてられたりするのが面倒だからだ。好きな人はいる、とだけ、
嘘の中に真実を交えて返してきたし、実際それで問題が起こったことはなかった。が、相手が相手だ。
「好きな人は、いるけど」
「誰?」
 英幸の目つきが、いつにない真剣身を帯びてくる。
「いや、それは、その」
 まさかあなたのお兄さんと既に深い仲です、なんて言えるわけがない。英幸が椅子を蹴って立ち上がり、
絵理は思わず後ずさった。壁に退路を阻まれ、咄嗟に絵理は言葉を濁した。
「他校に」

584: ◆h1Zp3va3xs
11/05/26 11:47:45.10 D0ng/Tsg
「嘘つき」
 途端、英幸が絵理に覆いかぶさるように囁いた。
「英ちゃん・・・?」
 絵理の体を壁に押し付け、セーラー服のタイの結び目に指をかける。
「普段兄貴とどんなセックスしてるの?」
 その言葉に、絵理の顔がさっと赤らんだ。言葉を返せずにいる絵理の腿に手をやり、スカートをたくし上げる。
「・・・っ!」
「こんなのとか?」
「英ちゃ、んっ」
 英幸は強引に唇を奪い、赤いタイを解いた。押し返そうとする
絵理の両手を掴んでひねり上げ、両手首を後ろ手で縛る。
「普通科の優等生と音楽科の優等生が揃って淫行してました、なんてばれたら謹慎じゃ済まないよね?」
「・・・英ちゃん」
 セーラー服の前合わせのファスナーを降ろす。
「絵理姉の、嘘つき」
―もう、許してあげない。わざと聞こえるように、英幸は耳元で言った。
ファスナーを降ろすと、セーラー服の上からでもその膨らみの大きさが分かるバストが現れる。
クラスの男子がそういえば言っていた。音楽科三年の本田先輩の生乳はどんなもんか、と。
ピアノの演奏よりそちらに意識が行って仕方ない、なんていう正直者もいた。
「いやあっ」
 ホックをはずし、直接その感触を確かめる。男の手でも余るその胸は丸く、ピンク色の突起がその存在を主張している。
「放して・・・っ」
「絵理姉がいけないんだ、俺に隠れて兄貴とセックスなんかするから」
「そんなこと、んっ」
 乳房を食みながら、英幸はスカートの中に手を差し入れた。足と足の間を指先でなぞると、
童貞の英幸でもそれとわかるほど布地は湿り気を帯びている。ぐらりと絵理の足が揺れたのを、英幸は見逃さなかった。
「濡れてる。普段からシてるからこっちは敏感なんだ」
「違・・・っ」
 布地を分けて、英幸の指が直接割れ目に割り入った。ぬめる襞をかき分け、
蕾を探り当ててきゅう、と摘む。
「うあっ」
 絵理の視界が滲んだ。半分遺伝子が同じなだけあって、敏幸の指先と英幸の指先は殆ど同じ形をしている。
なまじ敏幸の体を知る絵理にとっては拷問だった。自分を何度も抱いた手と、
自分を今犯している手は同じ感触を伝えてくる。目を閉じれば、
敏幸に抱かれているような錯覚さえ覚えてしまう。
「やめて、英ちゃん」
 絵理の膝が震えている。やめる気など、毛頭なかった。既に下半身は早く熱を放出させろと訴えている。
「兄貴とのセックスはどうだった?こんなこともしたの?」
「や、やだ」
 パンティを膝まで降ろすと、そこは既に滴っていた。愛液が腿を伝い、
本能と理性が戦っていることを教えている。
指先を差し入れると、待ちかねていたかのようにずぶ、と音を立てて沈み込んだ。
その感触に思わず首を横に振る絵理に、英幸はほくそ笑んだ。
「大丈夫、兄貴とのことは黙っててあげる。でも、兄貴にも俺とのことは内緒だよ?」
 片手で絵理を責め立て、もう片手でベルトを降ろして、英幸はポケットから銀の包みを取り出した。
「あ・・・あ」
 絵理の中から指を抜き、濡れた手でコンドームを付ける。諦めなのか、体が言うことをきかないのか、
既に絵理は立っているだけで精いっぱいだった。両腿を愛液が伝い、一部はハイソックスにまで達している。
足首に下着が引っかかり、はだけた胸がうっすらと汗ばんでいる様は淫らで美しい光景だ。
その体を密着させ、逃れられないように片足を掲げて英幸は絵理の中に自身の滾りを押し進めた。
「いやあ、あ、ああっ」
 悲鳴を上げた唇とは裏腹に、体は英幸を飲みこみ、受け入れることに貪欲だ。
散々兄の体で「学習」してきたのだろう、快感を求めて腰が動き始めている。

585: ◆h1Zp3va3xs
11/05/26 11:56:21.65 D0ng/Tsg
―敏ちゃんじゃない、と頭では分かっている。が、体は止まらない。
敏幸との行為に慣れた体が異物を飲み込み、もっともっと快感を得ようと求めている。
乳房を愛撫する指先の感覚が、声が、律動のリズムが、何もかもが敏幸と違うようで似通っている。
「いや、やめて、やめっ、ああっ」
「兄貴とどっちが大きい?」
「はなし、ひあっ」
 繋がった部分がぐちゅりと音をたてた。奥まで挿入し、内側の感覚を楽しむように先端まで引き戻す。
角度を変えて再突入すると、それに合わせて腰が揺らいだ。
 処女ではなく、快感を知ってしまっている。その求め方も得方も知っている。だがそれは敏幸との時間のためだけだった。
英幸に体を奪われて脅されるために敏幸に抱かれていたわけではない。
 先ほどから壁に押し付けられている手が、体と壁に挟まれてずきりと痛んだ。
英幸は構わずに絵理の両足を抱え、
深く挿入してくる。
「いやあっ」
 せめてこの時間が早く終わってほしいと、それだけを絵理は願った。悪夢ならいっそ早く覚めてほしい。
 英幸の体が絵理の奥底でどくりと震えた。ああ、射精だと絵理は半分瓦解した脳の奥で感じていた。

「また明日ね、絵理姉」
 身支度を整え、絵理の手首を解いて、何もなかったかのように英幸は言った。
絵理は茫然としたまま立つことすら出来ずにいた。昨日までの幼馴染と目の前の雄とが一致しない。
体を立たせようと英幸が引いた手を、絵理はせめてもの矜持で払いのけた。
「はなして」
「そろそろ先生が見回りに来るよ。さっきの時点で練習室を使ってたのは絵理姉だけだったし」
「いいから、帰って!」
 はだけたままのセーラー服をかきよせ、絵理は英幸を見ずに行った。同じ空間にいるのさえ厭わしかった。

 英幸の足音が遠ざかって、絵理ははじめて声を上げて泣いた。敏幸との関係を悪いと思ったことは一度もない。
好きになって、その延長上で体を許した。それだけだ。
弟がその関係をもとに絵理を強請るなど、誰が信じるだろうか。
 外は既に真っ暗で、風がざわざわと吹き始めている。どれだけ電車を待つことになっても、
英幸と同じ電車には乗るまいと絵理は決めた。

雨だれ<2>、終わり

ギリシャ神話、旧約聖書あたりはNice boat.ってLVじゃないほどHR・NTRの宝庫。

586:名無しさん@ピンキー
11/05/26 16:51:29.66 5zn/mHAh
ギリシャ神話で印象深かったのは、ダナエ姫と黄金の雨の話だな
旧約聖書だとディナの話

587:名無しさん@ピンキー
11/05/26 19:03:02.63 XL9RRd4S
GJ
ヒロインと英ちゃんは未来がわかっているけど
敏幸は生きてるのか死んでるのか気になる
そして多田家はご健在な頃なのかw
こんな人の目につきそうなところで
ゴムとか手に入れられなさそう…
と思ったけどきっちり避妊してるのは偉いw


自分がギリシャ神話ですごく心に残ってるのはテーセウスかな
アリアドネを捨ててこいつはヒデェやと思っていたら
その後アリアドネの妹と結婚。
その妹はアフロディーテーの力で義理の息子を好きになって
義理の息子からフラれると義息子に乱暴された!って言って自殺して
それを信じたテーセウスは息子を殺したとか・・・ドロドロすぎるぜw

588:名無しさん@ピンキー
11/05/26 19:35:36.38 kLBlnIii
フェードルの話か
女→男の愛故か、たぎるな

アポロンもエコー?だかに迫ってたな

589:名無しさん@ピンキー
11/05/26 19:38:12.83 408h5IJx
GJ!ここから英ちゃんが死んでほっとしたと言われる位
何をしでかすか、絵理の心がどう揺れ動くか期待


>>587
テーセウスのドロドロはすごいよな
息子と嫁の仲を勘違いした後も新しい嫁にゼウスの娘を求めて
子供のヘレンを誘拐したりやる事が滅茶苦茶だw
でもアリアドネの場合は、アリアドネに惚れたディオニュソスがテーセウスに
アリアドネ捨てていけやと命令した説もある
そっちだったらちょっと可哀想w

590:名無しさん@ピンキー
11/05/26 20:19:07.74 pWdf03tw
このスレ的にはアンドロマケーあたりがツボると思う。
トロイ王の長子ヘクトルの寡婦。国が滅んだ後
幼い我が子を城壁から投げ落としたネオプトレモス(アキレウスの息子)の奴隷にされ、
ギリシャに連行されて三人の子を生む。
この内の一人が後にペルガモン(=旧トロイ地方)の初代王となった…らしい。
大分うろ覚えだから細部違ってたらすまない。

確かラシーヌが彼女をネタに戯曲を制作してた筈…
とwiki覗いてみたらオレステス(ヘレネの甥)→ヘルミオネ(ヘレネの娘)
→ネオプトレモス→アンドロマケー→亡夫という片思い連鎖な超鬱展開だった…


591:名無しさん@ピンキー
11/05/26 21:02:37.53 fhSgyeUV
イリアスからは外れるけど、以前どこかで見た ヘレネ→ヘクトル には萌えたなあ。
パリスより兄ちゃんに惚れるだろJKってネタレスだったけど。

……ここって女の方が襲っちゃっうネタもいいんだよね?

592:名無しさん@ピンキー
11/05/26 22:44:00.19 XL9RRd4S
いいですとも!w
過去にもあったよ

>>589
自分が初めてみたテーセウスの話が
アリアドネを連れて行ったら船が難破するとか言われて
すまない!心苦しいが……とか言って寝ているアリアドネを島に置き去り
嘆き悲しむアリアドネを純情おじちゃんなバッカスが見つけて
動物たちやらと一緒に慰めている間に二人は夫婦になった話
だったんでそのイメージが強くて。
でもそのバッカスだったら愛ゆえなヤンデレおじちゃんになれるなw

>>590
ググったらフェードルとアンドロマケーが
一緒になった本売ってるんだな!
本当にあらすじこのスレ向きのツボだぜ
つーかオレステスが切なすぎる男だ…

593:名無しさん@ピンキー
11/05/26 23:25:44.74 408h5IJx
>>592
ディオニュソスはヘラに呪われたり自分を認めない人間を狂わせたりしてたから
ヤンデレぽい青年をイメージしてたよ
だからアリアドネとの話も勿論このスレに沿った展開を妄想してたw
まだテーセウスを諦めきれず気丈に振る舞い、相手が神だからと恐れを抱きながら
心ではディオニュソスを拒絶するアリアドネを見て
テーセウスに嫉妬しながらアリアドネを何度も強引に抱くディオニュソスとかなw
陽気なおじちゃんバージョンだったら優しく相手が心を開くまで待ってくれるんだろうな

あと神話でこのスレに合った話だとハデスとペルセフォネも大好きだw

594:名無しさん@ピンキー
11/05/26 23:44:58.63 gBIVUaG1
ハデスはデメテルどこいったってなるなw

595: ◆h1Zp3va3xs
11/05/27 00:12:39.01 npLyO6jC
続き投下します

雨だれ<3> 

―今日一日、英ちゃんに会いませんように。
 そう祈るのが絵理の日課となった。家を出るときは出来るだけ物音をたてずに、
電車が到着するギリギリのタイミングで、家でピアノを弾くときは真ん中のペダルで音を小さくして、
窓もカーテンも閉めた。
敏幸には受験勉強の邪魔にならないようにと言い訳をしてごまかしたが、
要は英幸に自分の気配を悟られたくないのが本音だった。
帰りの遅くなりやすい天文部の下校時間より一本早く電車に乗り、
家に帰ってから弾く。最近帰りが早いと先生は首を傾げたが、その理由を正直に言えるものではない。
練習時間と練習環境さえ確保できれば良かった。
 大抵はそれで上手くいった。家のアップライトは学校のグランドピアノに比べれば音質も響きも落ちるが、
指の感覚は一緒だからだ。だが、計算が狂うこともあった。

 外は叩きつけるような雨が降っていた。
「・・・っ、いやあ・・・」
 制服の中を英幸の手が動き回る。
「最近会わなかったね。どうしたの?家で練習でもしてた?」
「英ちゃんには、関係、ない・・・っ」
「家のピアノよりこっちのほうが音がいいって、前は言ってたのに?」
 グランドピアノの蓋に手をつかされ、絵理は唇をかみしめた。
ブラジャーはとっくに外され、制服の中で胸が泳いでいる。背中から覆いかぶさるようにして
英明は絵理の行動を封じていた。
 制服をたくしあげ、背中から胸までを露出させると、その様は淫靡で美しい。
垂涎の的の胸も兄が育てたと知らされれば面白くはないが、今その恩恵を最も受けているのは自分だ。
「どうして、こん、な」
「俺と兄貴とどう違うの?何で兄貴はよくて俺はダメなの?」
「敏ちゃんは、関係、なっ・・・」
「俺が絵理姉のことをずっと好きだったって、知らないでしょう」
 スカートに手を伸ばし、片方の脇からパンティを降ろす。
「や、いやあっ」
「その絵理姉と兄貴が深い仲だって俺が知ってたことも、絵理姉は知らなかった」
 自分の怒張が膨らんでいくのを英幸は感じていた。あの日から自分はどこかおかしくなってしまったのかもしれない。
だが、歪んだ欲望を満たしてくれるのは絵理だけであることも英幸は知っていた。
「その上絵理姉も兄貴も、揃って嘘をついた。絵理姉に彼氏はいないって」
 スカートを降ろし、露わになった絵理の臀部を撫でた。固く閉じた足の間に指を入れて泉の状態を確認する。
指先を軽く曲げて内側を引っ掻くと、絵理の体が面白いように跳ねた。
「だから決めたんだ。俺は二人を許さない。どんな手を使ってでも
絵理姉を俺のものにしてみせるってね」
「だからって、こんな」
 胸も尻も隠れていない今の絵理は、文字通りあられもない姿だ。
写真でも撮れば高値で売れるだろうが、楽しむのは自分一人でいい。
「もうこんなになってるのに?」
 抜いた指先はとろりと愛液が光っている。足先も震えている。腰のくびれを掴み、
英幸は有無を言わせずに滾った欲望でその場所を貫いた。
「いや、いやあああっ」
 コンドームは今日は準備していない。文字通りの生の感触は溶けそうに熱くぬめり、
それだけで射精を促しかねないが、ここで妊娠させては元も子もない。
兄と絵理が別れるまで事の露見は避けたかった。
「お願い、放して・・・っ!」
 ピアノに縋りつき、絵理は逃れようと必死に身を捩った。その指先を、英幸が後ろから捉えて掴んだ。
体を密着させるごとに、怒張は奥へ奥へとのめりこんでいく。ピアノが時折絵理の乳房をこすり上げ、
冷たい感触に絵理はますます混乱した。
「絵理姉の中、すごいね。熱くて溶けそう。このまま出したいくらいだ」
「助けて、誰か・・っ」
 内側を存分に楽しみ、絵理が抵抗する気力をなくしたところで英幸は自身を抜いた。
精は、真っ白な背に出した。    


596: ◆h1Zp3va3xs
11/05/27 00:19:13.71 npLyO6jC
 絵理は闇の中をひた走っていた。白い影が追ってくる。逃げても逃げても、執拗に迫っては絵理を捉えようとする。
影は英幸の顔をしていた。誰か、助けて。そう叫ぼうとした手を影が塞ぐ。
―誰か・・・誰か!
 チャイムの音で絵理の眼が覚めた。全身ひどい汗で、頭も重い。季節外れの熱が出たからと、
学校を休んだのを絵理は思い出した。期末試験が既に終わっていたのが幸いだった。
 胸の間を汗が滴って落ちる。その感触に、絵理は身震いした。
数日前に英幸に準備室で行為を強要されたばかりだった。その手の感覚がいまだに全身から消えないでいる。
 チャイムが再び鳴った。時計は正午を指していた。まだ母は帰ってくるまい。
用心のため、チェーンを外さずにドアを開けた。
「大丈夫か?」
 敏幸だった。全身から力が抜けて絵理はへたり込んだ。

 台所を借りて敏幸がお粥を作るのを、絵理は黙って見ていた。家事は女性の仕事、という概念は田舎ではまだ根強いが、
なかなかどうして敏幸の後姿には違和感がない。卵と鮭を使い、ネギを載せた粥はどちらかというと雑炊のような気もしたが、
些細なことだった。
「ほら」
「ありがと」

 音楽科の先生から預かった課題や友人から預かったノートを見つつ、絵理はぼんやりと座っていた。
敏幸はこれまた受験生の性で、単語帳とにらめっこしている。センターはドイツ語、私大の入試は英語にすること
でセンター試験の外国語のリスクを下げる方向らしい。
「どうせ大学に入ったら嫌でもやらなきゃならないんだから、
教師がいるいまのうちにやっておいたほうがまだ楽」だそうだ。
 絵理は横になり、胡坐をかいた膝に頭だけ載せた。邪魔をする気はなかったが、
少しでいいから触れていたかった。
「どうした?」
「・・・ごめん、少しだけこうしてていい?」
 一番近くにいてほしい人と一番近くにいてほしくない人は兄と弟なのだ。
同じようで違い、違うようで似ている。
「最近、元気ないな。何か音楽科で嫌なことでもあったのか?」
「受験が近くなって、緊張してるだけだよ」
 音大の推薦入試は秋だ。2月の終わりの敏幸よりずっと早く、準備期間も短い。
合否が出た後の期間は長いから、そこは敏幸とは逆だ。
「ピアノのことはよく分からないけど、今更怖気づくような腕じゃないだろ。
普段だって毎日何時間も練習してるんだし」
「うん・・・ありがとう、敏ちゃん」
 指先を撫でる敏幸の指が優しくて、絵理は目を閉じた。好きで隠しごとをしているわけではない。
むしろいっそぶちまけてしまいたいような気持になる。が、自分の弟が自分の幼馴染を脅していると聞かされたところで、
信じられるだろうか。どちらも信じ切れず、どちらも疑いきれない。それが人情だ。
「敏ちゃん、あたしたち、何で付き合い始めたんだっけ」
「なんだよ、いきなり」
 敏幸は顔を紅潮させた。ごほんとわざとらしく一つ咳をする。
「そんな昔のこと、覚えてねえよ。・・その、幼馴染から、なんとなく」
 男子中学生らしい理由の「胸」もさることながら、ピアノの腕前のほうで既に絵理は校内では有名な存在だった。
美人で知られていた一つ下の湊由香とはまた違う理由で男子を引き付けた。
誰かに先取りされるのが嫌で、自分だけのものにしたくて、敏幸は絵理を手に入れたのだ。憶えていない敏幸ではない。
 初恋は成就しないと世には言う。成就するだけ自分は幸せなのかもしれない。
けれど、その成就しなかった痛みを凶器に変えてまで強いられるいわれはない。
 遠からず、この優しい手を手放さなければならない時が来る。それが、絵理には何よりも辛かった。



597: ◆h1Zp3va3xs
11/05/27 00:24:44.72 npLyO6jC
 夏休みに入ると、敏幸は予備校の夏期講習と学校の夏期講習とに一日中家を空けることとなる。
早慶受験者にはよくある夏休みだった。逆にいえば、絵理の安全圏がなくなるという意味でもあった。
 練習室にいては、文化祭の準備を理由に登校した英幸に見つかりかねない。家にいればピアノの音で感づかれる。
かといって練習しないわけにはいくまい。推薦入試はすぐそこなのだ。
 音楽科の友人を誘って、合同練習することもあった。母か父のどちらかが休みの日は家で練習を続けた。
あるいは、普通科の教師相手に座学や面接の対策をすることもあった。とにかく、
英幸と顔を合わせようと二人きりになる状況を作らなければいい。
 綱渡りのような努力は、それでも功を奏した。文化祭での音楽科の有志で発表する「ラプソディ・イン・ブルー」の伴奏も担当することとなり、
昼の学校で一人きりで練習する機会すらなくなると、絵理は胸を撫で降ろした。
「ここのところ絵理、毎日学校来てるけど、大変じゃない?」
「音楽科の文化祭での演奏でしょ?ほぼ休日返上じゃん」
「好きでやってることだから、気にならないよ」
 緑のスカーフの普通科の友人に混じって、絵理は毎日登校した。普通科は午前中に受験対策があり、
人によっては午後から駅近くの予備校で衛星授業を受けるのだという。絵理は午前中に文化祭の練習を入れ、
午後には座学の指導を受けるようにしていた。音楽科の生徒は座学に力を入れる人間が少ないとは
普通科の教師の嘆きだったから、その点でも絵理の評判は上がった。一人でいる時間を少なくできれば、目的は問わなかった。
 休みないという点以外は不満のない日々を乗り越え、10月の文化祭も無事終了した頃、
絵理は桐邦音大の合格通知を受け取った。


598: ◆h1Zp3va3xs
11/05/27 00:32:30.55 npLyO6jC
「お疲れ」
 敏幸が言う。英幸は、天文部の合宿で今日は帰らないと聞いていた。
「毎日ピアノ漬けで休みなしだったけど、でも楽しかった」 
「楽しかったんだろ?それで合格なら言うことないな」
「敏ちゃんは?」
 見ろ、とばかりに模試の結果を見せる。早慶希望者だけを対象にした模試でも、堂々のB判定だった。
「浪人はしなくて済みそうだ」
 文化祭が無事に終わり、大学にも合格した。が、もう一つだけ懸案が残っている。
今まで逃げ続けてきた英幸の件だった。顔を合わせるのも嫌だが、それでもいつかは対決しなくてはならなかった。
「ん」
 敏幸が唇を重ねてくる。唇で受け止め、絵理はそのまま敏幸の首に腕を回した。
「こっちも最近ご無沙汰だったしな」
「受験生のくせに」
「たまには休息も必要だってことだよ」
 絵理の服の中に敏幸の手が入ってきた。絵理は抗わずに身を任せた。目を閉じると英幸と錯覚しそうで、
違うと絵理は自分に言い聞かせた。今自分を抱こうとしているのは敏幸であり、
英幸ではない。敏幸は絵理が本気で嫌がるような真似は一度もしたことがない。
 外は肌寒くなってくる季節だというのに、既に肌は汗ばんでいた。愛撫など、殆ど必要ないほどに絵理は濡れていた。
「好き、敏ちゃん、好き・・・っ」
「知ってる」
 向かい合って座ったまま、下から敏幸が貫いてくる。絵理は夢中になって名前を呼んだ。
腰に足をからめ、素肌の胸を隙間なく合わせ、お互いの境界さえ忘れてしまいたかった。
体の内側の凹凸すらぴったりと合わせるような、ゆるやかな律動だった。
 これがセックスなんだと、絵理はぼんやりと思った。満ち足りるような、自分が自分でなくなるような、
体と体の交歓を、皮肉にも英幸と関係を持たされたことではっきりと理解した。
 勝手を知った体は、お互いの絶頂の迎え方もよく知っている。敏幸が絵理の急所を攻めてくるときは、
自身も絶頂が近い時だ。体の内側も外側も敏幸の熱で満たされ、ほとんど同時に絶頂を迎えながらも、
自分たちに残された時間がそう長くないことを絵理は悟っていた。

雨だれ<3> 終わり 
ショパンの他にはリストも好きですが、その娘のコジマがNTRの当事者と知って吹いた。

そしてこのスレのギリシャ神話の盛り上がり方にも吹いたwww

599:名無しさん@ピンキー
11/05/27 19:12:47.11 ixu3ApPE
ギリシャ神話はこのスレの内容に即したおいしいネタがたくさんあるからね
だから人気なんだね

そういえばどっかの神話で女を連れ去ってれいぽうして
女の親が怒ったりするけど、結局は女は自分を連れ去った男をすきになるって言う話があったなあ
女を連れ去った男は愛するが故に無理やり…てこと?

600:名無しさん@ピンキー
11/05/27 20:22:17.36 xVQK7RVi
600

601:名無しさん@ピンキー
11/05/27 21:30:12.99 M82O599b
サビニの女の略奪かね、ローマ建国譚の

602:名無しさん@ピンキー
11/05/27 22:18:29.25 LTsi2gPr
>>598
GJ
敏ちゃんの動向も気になるw
つか冒頭見ると絵里ちゃんすっかり擦りきれてる?感じだな
あんな感じで性行為してるの知ったら英ちゃんはショック受けそうw
死んでしまったようだが

神話系は良いネタがゴロゴロ転がってるからね

603: ◆h1Zp3va3xs
11/05/28 00:21:53.92 XHaPwW+1
続き投下します

雨だれ<4>

 受験生から解放されてしまうと、まだ受験生である音楽科の生徒に練習室の優先権が移る。
大学から課題は出されていたが、幸い敏幸の受験勉強に付き合ってから夜に家で練習しても、間に合うレベルだった。
「1937年、スペイン内戦にて破壊された小都市は」
「ゲルニカ」
「ではスペインの何州か」
「バスク地方」
 例によって絵理は敏幸の世界史対策に付き合っていた。11月になると、雨でも降らない限り
天文部はほぼ毎日観測になる。それも絵理にとっては都合がよかった。
「沖縄戦の一般的な期日を述べよ」
「1945年3月26日上陸、6月23日牛島満中佐の自決により終結。通称アイスバーグ作戦」
 そこまで聞いてない、という突っ込みは、心の中だけでした。
どこがどんな風に出題されたとしてもおかしくないのだ。
「ではベトナム戦争で使用されたといわれる枯葉剤、主な成分は」
「ジクロロフェノキシ酢酸とトリクロロフェノキシ酢酸」
「原発事故の起こったウクライナのチェルノブイリ、一説には聖書になぞらえて何と呼ばれるか」
「ニガヨモギ」
 得意のくせに細かな知識の確認をやめないのは、単に他の科目よりも世界史が好きだからだ。
絵理のピアノと一緒である。
「ただいま」
 玄関から聞こえた声に、絵理は身を竦めた。なるべく聞かないようにしていた声だった。
「おかえり」
「・・・英ちゃん」
「どうしたの、絵理姉」
 夏休み前までのことなど、何もなかったように英幸は笑った。逃げまわって予定を詰め込んだ分、
ピアノの腕前が更に上がったのは皮肉と言っていい。
「絵理姉、合格おめでとう」
「・・ありがとう」
「こっちの大学に進学するとばっかり思ってた」
「今日の観測は?」
「先生の出張で、ミーティングだけで終わり」
 敏幸の見えないところで、絵理にだけ見せた英幸の笑みに、絵理は息が止まるような思いがした。



604: ◆h1Zp3va3xs
11/05/28 00:25:16.68 XHaPwW+1
 俺とのことを兄貴にばらされたくないよね、と耳打ちして数日後、英幸は絵理を自室に引っ張り込んだ。
普通科だけの冬休み直前模試の日だった。
「絵理姉と会うのも夏休み前以来だね。もしかして、避けられてたとか?」
「・・・」
「兄貴の受験勉強に付き合って、そのままこういう事もしてたんだ?」
「痛・・・っ」
 両手首を頭の上で拘束し、私服のネクタイで縛る。
「兄貴と絵理姉が一緒にいるだけで俺がどれだけ嫉妬してたか分かる?こんなに好きなのに、
絵理姉は俺のことを見ようともしない」
 ベッドに押し倒し、英幸は絵理に圧し掛かった。セーターをたくしあげ、
ブラウスのボタンを一つづつ外す。あごのラインを指先でなぞり、唇に触れた。
「んっ」
 被さるように唇を塞ぐ。舌が歯列を割って入り、口の中の奥まで侵入してくる。指先がブラの内側に侵入し、
乳首を押し上げた。
「絵理姉の体は柔らかいね。どこもかしこも、真っ白で、何にも知らないような色で、
吸いつくような感触で」
「やっ・・・」
 日に当たっていない肌は白く、青い血管がうっすらと透き通ってさえいる。指でゆっくりとその感触を味わうと、
英幸は絵理のジーンズのボタンに手をかけた。
「英ちゃん、腕、痛い」
「絵理姉が暴れるからいけないんだ。こうでもしないと、絵理姉の視界に俺は入れてさえもらえない」
 圧し掛かったまま英幸はジーンズを降ろした。パンティのクロッチを押し広げ、指先を侵入させる。
「いやあっ」
 こうして嫌がる絵理を無理やり抱いている瞬間だけが、自分を絵理に認識してもらえる瞬間だ。
下着を足首まで降ろし、足を体で押さえこんで、英幸はその場所に舌を這わせた。
「や、いや、いや」
「絵理姉が学校のどこにいても、すぐに分かるよ。音楽科のスカーフは、よく目立つからね」
 片手で胸の感触を楽しみ、舌先で襞を割る。こちらは経験がないのだろう、跳ね上がる絵理の体を見る度、
英幸は歪んだ恍惚が己の中を満たしていくのを感じていた。自分が兄以上に彼女を知っている、
その最初であるという何かを刻み込みたかった。
 伸ばしたままの片手に目が行く。兄が育てたらしい巨乳は、形も大きさも申し分がない。
自らの下半身を露出し、英幸は絵理にまたがった。下半身を解放された絵理がうっすらと目を開けたのもつかの間、
絵理の胸に自らの怒張を挟み込む。その様に、絵理が思わず目をそむけた。
 見たくもないものが自分の胸の間から鎖骨にかけて鎮座している。それは既に熱を持ち、存在を主張しているのだ。
きつく目を閉じてふるふると首を横に振る絵理を見ずに、英幸は両胸を掴み上げて自らを動かし始めた。
「すごいね、絵理姉のおっぱいは。すごく気持ちいい」
 絵理は歯を食いしばった。胸の谷間をこすり上げていく怒張は、ますますその膨らみを増していく。
「ほら、もう、出る・・・っ!」
 目も口も堅く閉じた絵理の頬に鎖骨に胸に、熱い何かが飛び散った。英幸は下半身の希望に従って出るに任せ、
出しつくしてから傍らのタオルで絵理の体を拭き始める。
「や、もう、こんなの、いや」
 絵理は泣きそうになりながら懇願した。英幸の部屋の匂いは、皮肉なほど敏幸の部屋のそれと似ている。
なじみのある感覚が、悪夢によって上書きされていくようだった。
「まさか絵理姉の胸で抜けるとは思わなかった。俺がいつもどうやって抜いてたか知ってる?」
 わずかに英幸はカーテンを開けた。窓の向こうは、見慣れた絵理の家だ。


605: ◆h1Zp3va3xs
11/05/28 00:30:24.53 XHaPwW+1
「ここの窓を開けると、絵理姉のピアノの音がよく聞こえてくるんだ。
その音で抜くのが、一番気持ちよかった」
 英幸は茫然としたままの絵理の体を返した。今日はコンドームを用意している。腰を掴んで自らの股間にあてがい、
深々と押し入った。
「ふあ・・・っ」
 もはや絵理は叫ぶ気力もなく、押し出される息だけが彼女の感情を伝えている。
「今絵理姉と繋がってるのは俺だよ。兄貴じゃない。分かる?」
「あ、あ、あ」
 絵理の体を枕に押し付け、英幸は腰を押し進める。内壁が、吸いつくようだ。
掴んでいる腰をぐいと引きよせ、接合を深くする。
「東京に行って、何も知らなかったようなふりをして兄貴とセックスできる?
もし兄貴と結婚したとしても俺は一生絵理姉に執着する。子供はどちらの子供が生まれるかな」
「はあ、あ」
―ごめんね、敏ちゃん。大好きだよ。でも、一緒にはいられない。
 煮え滾る意識の中で、絵理は声に出さずに呟いた。
海老のように反った腰が痛み、指先が虚空を掴んだ。

 夏休み前に見たきりだった悪夢を、絵理はまた見るようになった。
夢の中で英幸の形をした影が追ってくる。それは絵理の口を塞ぎ、服を破り、有無を言わせず体を引き倒した。
 別の夢を見ることもあった。迷路の奥へ奥へと逃げる絵理を、英幸が悠然とした足取りで追ってくる。
遠くに敏幸の声が聞こえるが、出て行けば英幸に捕まってしまうから、出ていけない。
 早く上京して実家から出てしまえば、悪夢は終わる。その気持ちだけが絵理を奮い立たせていた。
 冬休みになると、今度は引っ越しの準備が迫ってきた。家の中で息を潜めていたかったが、そうもいくまい。
 冬休みの自由講習の合間を縫って何度か上京し、揃える必要のあるものとそうでないものをリストアップし確認していく。
親が隣にいて英幸に遭遇しない新幹線は、絵理にとって数少ない安全な寝床だった。
 佐野家は、絵理にとって既に安全な場所ではなくなっていた。一歩入るだけで本人の在宅とは無関係に英幸の気配を感じ取り、体が震えた。
 敏幸に付き合っていた受験勉強も、英幸と顔を合わせる可能性を少しでも下げたくて、
本田家の居間で何人か普通科や音楽科の友人を集めて行うようになった。
もともと敏幸は雑音をまるで気にしないタチだから、ピアノが鳴っていようとCDが鳴っていようと
予備校の衛星授業のビデオが流れていようと知ったことではない。
「佐野っち世界史教えてくんない?」
「代わりに数学教えろよ」
「あたし数学佐野っちより悪いんだけど」
「本田は下宿先もう決めたのか?今ピアノの持ち込み可の部屋探してるんだ」
「だったら、こことか」
「お、なかなかいい感じじゃん・・・って、女子寮かよ」
「あ、ごめんー」
「絵理、景気づけにノリのいい曲一曲弾いてよぉ」
 静かなほうが絵理には怖かった。一人で出かけるのも極力避けた。誰かと話していれば、
英幸のことを思い出さずに済む。両親のどちらかが家にいれば、英幸が突然来訪しても顔を合わせずに済む。
卒業式までの二カ月をやり過ごしてしまえば、あとは上京してしまえる。
 怖がってばかりではこの関係は終わらないことも知っている。けれど、顔を合わせるのも声を聞くのも嫌だった。
顔で敏幸と笑いながら、心では英幸と似ていないところを必死で探している。
 絵理が台所で飲み物を準備していると、友人の笑い声が響いた。
「音楽科ってさあ、みんな爪短いよね。ピアニストって優雅なイメージがあるけど、
頓詰まってささくれてる」
「そりゃ、長かったら演奏できねえよ」
「そういや俺、小学校に入ってから絵理とボール系の遊びしたことないな」
 敏幸が言う。
「そうなの?」
「下手に突き指でもさせたり折ったりしたらピアノ弾けなくなると思うとさ、なんか怖えもん」 
「あ、それは言えてるかもな。うちの親も俺がピアノ始めてから、
野球とかドッジボールとか全然しなくなった」
「指一本でも感覚って変わるもんなの?」
「当たり前だろ。ピアニストは指が生命だぜ?」
「あー、だからあんたサッカー部だったんだ」
「そういうこと」


606: ◆h1Zp3va3xs
11/05/28 00:33:16.15 XHaPwW+1
 センター試験を境に、世間は本格的な受験シーズンに突入する。絵理は朝まだ暗い中を
始発の電車で受験に向かうクラスメイトを何度か見送った。何校か予定を詰めて受験する友人は、
都内に共同でウィークリーマンションを借りたという。朝夕を外で食べてもホテルより安く、新幹線の利用回数も少なくて済む。
 家に帰って二度寝し、英幸が登校したであろう時間を見計らってピアノを弾いた。
引っ越しの作業も少しづつ進めていたから、部屋の中はダンボールで足の踏み場もなくなっている。
 敏幸の受験も、間近に迫っていた。センター試験では結局思ったほどドイツ語で取れず、
生物で失敗したが、国語と世界史の高得点を盾にセンター利用の滑り止めを一校確保した。
「んじゃ、いっちょやってきますか」
 明日から本番だという日の夕方、絵理は敏幸を友人と一緒に地元駅のホームで見送った。
都内のホテルに宿をとったという。
「大丈夫だよ、敏ちゃんなら」
「爆死したら骨は拾ってあげるから」
「ありがたくねえなあ」
「先生たちからお守り預かってきたよ。法学部なら東大の文一受けてほしかったって嘆いてた」
「俺センターで大コケしたから今更無理だっつの」
 ローカル線が入線してくる。どうやらこの駅で折り返しらしく、電車は全ての乗客を吐き出した。
「がんばれー」
「がんばって」
「おう」
 逆方向に向かう電車を待つという友人と別れ、絵理は足早に踵を返した。
が、その腕が止められる。絵理の表情が凍った。
「ただいま」
 学校帰りの英幸だった。

雨だれ<4> 終わり  
ヤンデレの言葉責めって難しい(´・ω・`)


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