愛するが故に無理やり…… Part7at EROPARO
愛するが故に無理やり…… Part7 - 暇つぶし2ch411:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:26:05.99 TufEdpmV

引きずられるように連れ込まれたホテルで壁に押し付けられて、リインは唇から耳へと移ったレナードの愛撫を受けていた。
逃げられないように抱きすくめられ耳に濡れた感触を受けて響く淫らな音に目をかたく閉じる。
耳朶を噛まれもう片方の耳もすり、と指でこすりあわされる。刺激は耳だけなのに体が熱くなってくる。
「私を焦らして楽しかったか?」
「そんな……」
耳元に落とされる声にぞくぞくしながらリインは否定する。焦らすどことか無関係になりたかったのが本音だ。
レナードの大きな手が脇腹から腰を撫でている。そこからレナードの欲望が熱が伝わる。
その熱に飲まれそうになり、リインはレナードの肩を押す。
「シャワー、を」
レナードが指先を握る。浴室のドアを開けリインに微笑む。
「一緒に浴びよう」
一人で、と言うリインを無視して強引に一緒に浴室に入ったレナードは、ネクタイを緩める。
「私が脱がせるか、自分で脱ぐか」
どちらもごめんだ、と言いたげに自分をにらむリインが可愛らしい。だがあまり余裕もないのも確かだった。
囲い込んでゆっくりと服を脱がしていく。スカートではないのは警戒の証だろう。ふるり、とこぼれ出た胸に口付けるとリインが
身じろぐ。乳首を口に含んで吸うと鋭く息をのむ音が聞こえた。
業務上での接触は皆無と言ってよいほどになく、リインに避けられていた期間はかなり長い。
時折見かけた姿はいつも誰かと一緒だった。視線に気付いているだろうにあの年にしては見事にそれを黙殺した。
その豪胆さ、手を出す隙を見せない冷静さをレナードは好ましく思った。
そうでなければ追い甲斐がない。
だから搦め手を使った。とりあえずは人のものに勝手に手出しをした若造を激戦地に追いやり、リインの友人達が食事の礼を言って
きたのを機に知己を得てゆっくりと外堀を埋めていった。
仕上げはリインの親友のアネット。あれはいい手駒になる。
リインを揺さぶるのにもってこいの存在だった。
枷はまだ他にもあるがこの二つでリインは自分を受け入れた。



412:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:26:40.58 TufEdpmV

強情な心とは裏腹にリインの体は柔らかい。鍛えていても男のそれとは違うさわり心地に陶然となりながら、レナードは執拗に乳首を
愛撫する。口の中で尖りゆく感触を味わう。気付くとリインが顔を赤くして口を押さえていた。
感じているらしい様子にもっと、と思うのは男の性か。
衣服を取り去り、自分も服を脱いで二人では狭いシャワーブースに収まる。シーツの上に広がる髪が好きなレナードはリインの髪の毛を
まとめて濡らさないように留意する。シャワーの湯が二人を濡らしていく。
改めて施される濃厚な口付けに、密着する体温にリインの鼓動は早くなる。
そちらに気をとられていると、体をすべる手の感触にはっとした。ボディーソープを手に取ってのことだろう。抵抗なくリインの体を
レナードの手は動き回る。大きくて熱い手のひらに包むように触れられ、その熱が伝染したようにリインも熱くなってくる。
首から鎖骨。肩から腕そして両手で手もほぐされるように泡を擦り付けられる。
特に鋭敏な感覚器官である手は執拗にもまれ指の間も強めに触れられ、指を絡められると切ない疼きが生まれてくる。
大きな手が背中を撫で下ろすその力強さに、身を委ねてもいいような安心感さえ生まれてくる。
胸をすくわれるように持ち上げられソープのせいで摩擦のない指で乳首をつままれ、リインは背をしならせて胸を突き出すような
形になってしまった。
「ここで抱いてもいいのか?」
からかいを含んだ声に我に返り慌ててかぶりを振る。レナードの手はそれ以上は胸にはとどまらず下へとおりてゆく。
「自分で洗いますから」
腰から臀部に手がうつりリインは抗う。それを無視してレナードはリインの片足を持ち上げて少し曲げた自分の膝に絡ませる。
足先を撫でられ足首から上がってくる大きな手。膝から大腿へと手がすべらされる。もう少しで付け根、というところでレナードは
今度は反対側の足に同様の行為をする。それも済んで足がおろされリインがほっとしたその時。
指がひたりと付け根に当てられた。手の平と指ですくうようにもまれる。抵抗のない指が陰核をくりくりと刺激する。
「っは、あっ……」
次いでつままれてリインは下腹部で湧きあがる疼きに思わず声を上げる。レナードの指は陰核を、その周囲をなで上げ、さする。
「中は……このままだとしみるな」
流れ続けていたシャワーの湯で手を洗い、レナードの指が再びリインの足の付け根に当てられ、膣へともぐりこむ。
「んっ、や、……あ」
軽く曲げられた指で壁をこすられリインは熱い息を抑えられない。もみこまれるように入り込んだ指は指先の点で、指全体の面で、
レナードはリインの中を洗い出すかのように掻いてゆく。円を描くようにぐるりと回されたかと思うと次には奥へと押し込められる。
湿気のせいで音の響くシャワーブースにぐちゅぐちゅと淫猥な音がした。
臀部に手を当ててもみながらリインを自分のほうに引き寄せているレナードを満足させるに十分な音、だった。



413:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:27:19.71 TufEdpmV

「前よりも濡れているな。私の指は気持ちいいか?」
羞恥で頬を染める、いや今回は少しばかり快楽も伴っているらしいリインはレナードの視線を避けるように、顔を斜めに向ける。
もう一本増やした指でゆっくりと抽送するとリインの手がレナードの腕に置かれ、離そうとするかのようにかすがるかのようにか
力がこめられる。
とろりと粘液が指から伝い中があやしく蠕動を始める。ここでイかせてもいいが、もう一つのお楽しみもあることだとレナードは
リインの中から指を引き抜いた。
リインは壁に背中を預ける。既に疲労し体が重だるい。そんなリインの体の泡をざっと流してレナードは『お願い』をする。
「私の体も洗ってくれるか?」
嫌々ながらボディーソープを手に取り、レナードの真似をして体に手をすべらせる。
意識して見た事のなかったレナードの体と感触が目の前にあり、改めて自分との違いを思い知らされる。がっしりした骨格や
鍛えられた筋肉、そして古傷。レナードが軍という苛烈な場所で生き残り過ごしてきた歴史を感じる。
大きな背中や胸、自分より太い腕や手を洗いその下へと行かなければならないリインは目のやり場に困る。
レナードの体の中心で陰茎が反り返っていた。
「先に足を」
そう言われ視界に入れないようにとかがみこんで足を洗う。手首をとられて立ち上がると陰茎に導かれる。
「ここも洗ってくれ」
触れたそれは熱くて硬くて、手を引こうとしたリインの手は大きな手に包まれて上下させられる。びくりと脈動する陰茎は
リインには目の毒だ。それでもレナードはリインの手で丹念に洗わせる。
レナードが熱い息を漏らし、自身で泡を流した。
自分でやるからと言っても聞き入れられずふかふかのバスタオルで体を拭かれたリインはバスローブを羽織らされる。
レナードも同様の姿になり抱き上げられてリインはベッドに運ばれた。



414:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:27:53.79 TufEdpmV

そらす顔を上向かされレナードと目が合う。髪はまとめていたものがほどかれてシーツに流れている。
それを掬い取ってレナードは指の間で滑り落ちる感触を楽しむ。
「―卑怯者」
低い、リインの声に戯れをやめ上からじっくりと見下ろす。敵意に満ちた瞳が実にそそるのをリインは知らない。
「大嫌いの次は卑怯者か。つくづく私は外道なようだな」
笑い混じりに感想を言って、レナードはリインの体に唇を落とす。
しっとりと温かい感触に半ば夢中で触れていく。細い骨格を代表するような鎖骨や人目に晒さないために白い胸元。しなやかで
レナードを拒絶したり、すがってきたりするわがままな手指。
じっくりと口付けて唇で食んだり、舌で舐めたりしているとうっすらとリインの体が汗ばんで、紅潮してくる。
手を重ね指を絡めると無意識に握られる。今やレナードの頭は胸にあり、その髪の毛さえリインの肌を刺激している。
吸い付かれた乳首を歯でしごかれリインは身を捩る。
逃げないリインをじっくりとレナードは追い詰めていく。息が荒くなるのをリインは我慢できない。
歯を食いしばって声を上げまいとするリインは、皮肉にもレナードの嗜虐芯を煽っている。
唐突に目の前に指が突き出されレナードを見上げると命令を下す。
「指をしゃぶれ」
意味が分からずそれでも口元に持ってこられた指に顔を背けると、唇に押し当てられる。
「咥えて、舐めろ」
一瞬噛みちぎってやろうかという衝動にリインはかられた。ぎり、と下からレナードを見据える。レナードも視線をそらさない。
緊張ただよう時間が過ぎて、先に目をそらしたのはリインの方だった。
それを承諾ととり、レナードが口をこじ開けて指をいれこむ。
「大嫌いな卑怯者に抱かれるのを選んだのは君だ。私が憎いなら私を殺せ。ベッドの上ほど無防備な場所はないからな。
私を殺せないなら私に抱かれていろ。君は私のものだ」
違うと叫びたいのに、口の中に指があるために果たせなかった。
敗北感にまみれながらリインはレナードの指に舌を這わせる。口をすぼめて指を吸い上げた。
レナードもされるままではなく、リインの口の中を押さえこすり、好きに動いている。
足を抱えられレナードの顔が付け根に埋まる。
シャワーブースでの愛撫の余韻の残るそこに口と、リインの口で濡らした指での刺激が加えられた。
リインの体が震えて、足指に力が入る。中を揺らされて陰核を吸い上げられたとき閉じたリインの目蓋の裏に光が走る。
レナードの指が内腿に食い込み尖らせた舌が膣内に入ってくる。ぬるりとした粘膜とざらついた表面が指とは違う刺激を伝える。
腰が浮き、足が震えるリインに駄目押しのようにレナードは音を響かせて溢れた粘液をすすった。
細かな痙攣がリインから生まれる。陰核を吸って軽く歯を立てた時、リインは背をしならせて硬直した。
「―っ」
声にならず、見開いた目も映したものを認識せず、ただリインは自分の中で爆発した何かにがくがくと身を震わせた。
その感覚は鋭く強くリインを押し流した。


415:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:28:26.08 TufEdpmV

ベッドに投げ出されたように沈んだリインは自分の息が荒く、喉が乾いて苦しいのに気付く。
さっき白い世界になったようなそこは何の変哲もないホテルの一室だった。
体が重くどこかに引きずり込まれそうなリインは自分の頭に腕枕をしたレナードにようやく視線を向けた。
嬉しげな、慈しむような眼差しを向けているレナードをぼんやりと見る。
「初めて達したな」
レナードの手で絶頂といわれるものを経験させられた。そのことを認識したリインはレナードの張り巡らせた蜘蛛の巣に捕らえられた
獲物の心持ちを味わった。
大嫌いといい、卑怯者となじったレナードに感じてしまった。リインは内心で己を呪う。
まだ力の入らないリインの足を抱えてレナードは挿入した。いまだ蠕動し収縮するそこはきゅうっとレナードを締め付ける。
経験の少ないきつさと絶頂を極めた後の壁の動きはレナードの脳髄に快楽を送り込む。
奥へと誘い込むような襞の動きは貪欲で、絡んでくるこの間よりも熱い内腔に溶けてしまいそうだ。
誘いを無視され期間があいたせいか、きつさは最初の頃のようなのに絡んでくる感覚は違っていてひた、とレナードに吸い付き
ざらついた前壁は往復するたびに亀頭にえもいわれぬ快感をもたらす。
すぐに果てそうになるのを我慢して、レナードはリインの腰を抱えなおしてリインを揺らす。
前回中でリインの弱そうな所を指で探し当てたが、そこを抽送のたびに刺激すると締め付けが強くなった。
リインの手が落ち着きなくシーツをつかむ。
自分にすがれとばかりにそれを引き剥がしてきつく抱きしめる。
腰を使って奥へと突き、こすりあげる。
リインの息がまた熱くなり、耳元で煽ってくる、ひときわ強く締められたときレナードはたまらず精を放った。
襞が絡んで最後まで搾り取る。互いに汗にまみれこれ以上ないほど密着して。
さすがに中では絶頂というわけにはいかなかった様だが、レナードは満足だった。
「素晴らしかった、リイン」
また一歩自分のものにしたリインに早く自分のところに堕ちてこいとばかりに口付ける。


以上続く予定



416:名無しさん@ピンキー
11/05/03 02:01:24.02 o7Yktrjc
ひたすらにGJ
相変わらずのストーカージェントルマンっぷりがたまりません

417:名無しさん@ピンキー
11/05/03 04:30:35.25 5JNto1bQ
ナイスジェントル!!
友達に代わりにって……鬼畜っぷりに磨きが掛かってきましたな
襲った奴の配置換えはグッジョブだけどw
ストーカージェントルマンパネェ

418:名無しさん@ピンキー
11/05/03 06:10:40.34 t5YTW/3m
同じくGJです!
じわじわとモノにしていく過程がたまりません。
レナード魅力的過ぎ。
続きをお待ちしております。


419:名無しさん@ピンキー
11/05/03 08:34:27.09 OLbjn1zp
GJ!
リインの嫌がり方が嫌悪に近くてゾクゾクする。
この先楽しみだな~続き待ってます!
一息ついたら、ローザのその後をちょっとだけお願いします。

420:名無しさん@ピンキー
11/05/03 09:02:19.29 X9Biuq8b
GJ
追い詰め、追い詰められ感がすごくいい
やっぱりジェントルには勝てないんだな
続きが楽しみ

421:名無しさん@ピンキー
11/05/03 10:47:21.77 8xW4LGD8
レナードの手段を選ばない描写が素晴らしい

ところで、襲う側♂と襲われる側♀は両想いのすれ違いで、最終的には結ばれずに終わりってこのスレ的にありでしょうか

422:名無しさん@ピンキー
11/05/03 14:37:04.66 AmCPtoD4
初めて、しかも不本意にいかせた時のレナードの満足気な様子に萌え

レナードのことマッドメンのドレイパーで脳内映像化して楽しんでます。
ありがとう

423:名無しさん@ピンキー
11/05/03 20:44:58.65 c8j87vjM
>>415
GJ
この調子で鬼畜っぷりを発揮して追い込んで欲しいw


>>421
別にBADエンドでも良し

424:名無しさん@ピンキー
11/05/04 02:03:59.96 5EH+5Fmj
>421
過去にいくつかあったから無問題

425:名無しさん@ピンキー
11/05/04 02:30:06.26 m8Mu7Mq2
永遠に続いていく予感のするすれ違い、みたいのも自分は好きだな。

死ぬまで愛故が続いていくと思うと胸熱

426:名無しさん@ピンキー
11/05/05 03:52:36.26 hjIbrQvN
みたいのもっつうかそのパターンはえらい頻度で話題にのぼってる訳で…
解決するパターンも別れパターンも読みたい

427:名無しさん@ピンキー
11/05/05 22:03:26.06 PfET7FZd
>>426
解決するわけでもなく、別れがくるわけでもないっていうパターン、
例えば、すれ違いや誤解、素直になれない心を抱えたまま、ずっと監禁されたり陵辱され続ける。
この関係の終わりがくる予感が未だしない・・・明日が見えない、みたいな終わり方のする話をイメージしてた。
そういうある意味曖昧?な終わり方はそんなになかったんじゃないかなって思って・・・。

職人さんたちが続きが気になるっ!っていう声に答えて完結話書いてくれたみたいなのもあると思うけど。
自分も全作品読んだわけじゃないので勘違いだったらスマソ。


428:名無しさん@ピンキー
11/05/05 22:05:09.50 vhljLe19
>>427
そういう終わり方良いな
絶望的な感じで素晴らしい

429:名無しさん@ピンキー
11/05/05 22:20:42.49 0RcAodr9
片方が一言「好き」って言えばとか簡単な事で
誤解がほぐれて幸せになれるのに
その簡単な事が言えなくてジリジリするっていうのも好きだなー



430:名無しさん@ピンキー
11/05/05 23:56:36.74 m/EcaKJT
そんなほの暗い感じもいいな。
>>419、ローザのその後って一応両思いエンドじゃね?

431:名無しさん@ピンキー
11/05/06 00:06:47.87 qLOAYt77
>>427
明らかにそれっぽいシリーズは数点程くらいしか見てないが、
続きを次の世代分まで妄想するような雑談はしょっちゅうだぞ
連載に反映されたりするし

イザ投下されるとまぁ、楽しんで読んでるんだが、今そんな増やすよりは
短編でサクッと青春の陰の部分みたいなネタでしんみりしたい時もあるって事

432:名無しさん@ピンキー
11/05/06 01:38:13.93 Oa4/91jD
まぁお前の都合で投下されてる訳じゃねーしな

433:名無しさん@ピンキー
11/05/06 02:28:02.30 zUbnnGVB
>>415
投下ありがとうございます
この二人大好きです!
続きも楽しみにしています

434:名無しさん@ピンキー
11/05/06 05:37:01.38 kzCUYiGk
>>429
まあ、好きと言えず悲惨な状態が続くのは好きかな

435: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:17:25.89 aPh4MjHJ
421です。以前このスレでお話しした「想い合っていながら最終的に結ばれない」が
完成したので投下します。前・中・後の三部です。
現代日本もの、孕ませ要素あり。エロ描写はぬるめで、全体の3割くらいです。
蛙(かわず)の夢(前)

 教会の鐘が鳴り、扉が両端から開かれるのを群衆は今や遅しと待っていた。
女性陣は目を光らせ、男性陣は祝福と、半分くらいは羨望の眼差しで。
やがて鐘が鳴り、純白のウェディングドレスに身を包んだ新婦と、その腕を組んだ
新郎が姿を現す。
「おめでとう」 「おめでとう」
 次々に祝福の言葉が飛び、夫婦は幸せそうに笑った。少し張り出した腹部を撫で、
新郎と目を合わせて手を振り上げると、花束が空を舞い、女性陣がわっと歓声を上げる。
その様を、多田明(あきら)は教会から少し離れた道路で微動だにせず見つめていた。

436: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:20:02.09 aPh4MjHJ
頭を上げた新婦の目が、一瞬明を捉えた。が、彼女はすぐに視線を
隣の夫に戻し、二度とこちらを見なかった。

「若社長!」
 秘書の田村ひとみに呼ばれ、明は振り向いた。ひとみは両手に大量の資料を抱え、顎で
押さえつけてこちらを睨んでいる。
「社長の部分はともかく、若、は余計だ」
「じゃあ次から五代目とでもお呼びいたしましょうか」
「もっと勘弁してくれ」
 田村ひとみは動じない。親子ほども年の離れた、二か月前の先代社長の急死に伴って
後を継いだ20代の小倅など、先々代社長の頃に入社し、先代社長の秘書を20年勤めた
ひとみにとっては頭に殻のついたヒヨコも同然である。
「若、の部分が取れたときが一人前の成り時です」
 しらっと言ってのけた。

437: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:22:51.85 aPh4MjHJ
「明日の会議の書類です。東京支社と大阪支社の売り上げ報告、
経理部の定例報告、システム管理部の報告書、始末書、インフラ部からの提案書、諸々。
明日の会議までに目を通しておくように、とのことです」
「ちょっと待て、明日は商談が入ってなかったか」
「その商談が延期になったと、先ほどメールにて報告いたしました。
代わりに重役会議への参加を」
「嫌がらせか」
「一人前に渡り合って経営に口を出せとは、誰も申しておりません。今は席に座って
内容を理解するのが関の山でしょう。若社長はまだ中核としての期待はされておりませんし、
いずれ中核を担う時まで会社を健全に保つのが我々の務め、と管理職役員皆様申しております」
 

438: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:25:38.40 aPh4MjHJ
多田商事は大正時代から続く総合商社で、明で五代目になる。古くは江戸時代に権勢を誇った
大店が明治に入って時流に乗り、商売を海外まで広げ、大正時代に会社として成立した。
二度の大戦もバブルも不況も逆手にとって成長を遂げ、今に至っている。旧財閥に比べれば
その規模は微々たるものだが、この地方では大きな地盤を築き、東京と大阪に支社も持つ、
地方豪族という言葉通りの存在だった。

439: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:27:49.78 aPh4MjHJ
 山と積まれた資料を前に、明はため息をついた。今夜の完徹は間違いない。
「お疲れ様です」
 由香がコーヒーを用意していた。砂糖1杯にクリームひと匙が明の好みであることを、由香は熟知している。
「参った、今夜は完徹だ」
「その資料は?」
「明日の商談が急にキャンセルになって、今度は代わりに会議に出ろ、とさ」
 机に顎を載せ、シャープペンシルを加えて明はおどけて見せる。
「では私は、厨房に夜食を頼んでまいります」
「ああ、ありがとう」

440: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:34:39.83 aPh4MjHJ
 由香の後姿を明は見送った。湊由香は明と同じ24歳、私立小学校などないこの地域では明も
地元の小学校を卒業している。由香はその頃からの同級生で、中学を卒業後に東京の私立名門校、
イギリスの大学と地元を離れていた明に対し、由香は地元の高校の頃からこの屋敷でアルバイトをはじめ、
卒業後は正式に職を得ている。由香の母親もこの屋敷で働いていたから、いわゆる親子2代だった。 
 すっかり使用人姿に違和感のない由香の背中は少しばかりさびしい。もちろん、プライベートでは昔のように
読んでくれはするが、勤務中の姿はプロそのものだ。
 小さいころは気が弱くて、いつも明ちゃん、明ちゃんなんて泣いてたのにな。
田圃畑に囲まれて、虫も蛇も蛙も日常茶飯事の環境だというのに、由香は蛙が大の苦手だった。
道の真ん中に死体が落ちているだけで立ちすくんでは動けずにいた。

441: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:38:08.15 aPh4MjHJ
―何が怖いんだよ、こんなの。
 手をつないで道を通ったことも何度もある。
「なあ、由香」
「何でしょうか」
 戻ってきた由香に問うてみた。
「蛙はまだ苦手なのか?」
「いえ、あの、その」
 途端に言葉に詰まる。言葉は丁寧だが、動揺は隠し切れていない。その横顔は相応に年をとり、幼いころには
なかった華やかさが増している。自分の贔屓目を差し引いても由香は田舎には少ない整った顔立ちで、
人気も高かった。地元に戻ったときには流石に結婚もしているだろう、という予想を裏切って
まだ結婚どころか彼氏の一人もいたことがないと知り、密かに祝杯をあげたのはここだけの話だ。
今の由香は仕事モードに入っている。以前高速道路のSAで見つけた蛙のストラップを買ってきてやろう。
どんな表情をするだろうか。

442: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:43:59.11 aPh4MjHJ
 地元企業に職を得るのは、何も使用人としてだけではない。れっきとした社員として多田商事に入社した明の同級生も何人もいる。
システム管理部の長谷実(みのる)もその一人だった。地元の公立名門校から県内の国立大学の情報学部に進学し、技術職として
就職して2年目、普段の仕事に加えて新人の育成も加わり、このところ定時に帰れたためしがない。
 実は肩をこきこきと鳴らした。
「長谷、ちょっといいか。システムに不具合が」
「はい」
「先輩、こっちのプログラムにバグが」
「ちょっと待ってろ」
 20代は仕事が恋人、というのはあながち間違っていないと実は思う。仕事の忙しさに浮いた話の一つもなく、
遊ぶところもない田舎の実家暮らしだから、給料の半分は貯金に回っている。
―ま、社会人はこんなもんか。
 頬を叩き、気合を入れ直して、実はコンピュータに向かった。おそらく、今日も残業だ。

443: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:46:36.52 aPh4MjHJ
「由香!」
 残業後の帰宅の車内から、実は窓を開けて前を歩いていた幼馴染の名前を呼んだ。由香の家から職場までは
15分、急ぐ距離ではないが、街灯の少ない田舎では猪や鹿も出る以上、安全とも言い切れない。 
「実」
「送ってってやるよ」
「ありがと」

「明はどんな感じだ?」
「社長に就任してからはすごく大変みたい。今日も大量に資料持って帰ってきてた」
「親父さん、急に亡くなったもんな」
「うん。・・・心臓発作だったって」
 二月前の盛大な葬式を、二人はまだよく憶えている。地元の名士、と言っても言い足りないくらいの人であった
先代社長の急死は地元紙に大きく取り上げられ、焼香客が門前市をなした。もともと後継ぎとして
既に明が擁立されていたから大きな混乱はなかったが、あと数年は気楽な見習いでいられただろう明の
身辺は、一転して嵐である。

444: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:48:55.17 aPh4MjHJ
「どうなるんだろうね、明ちゃん。会社も家も全部一気に継がなきゃいけないなんて」
「ま、ダメなら会社のほうは首切られるだけだろ」
「まさか」
 多田商事は上場もしている株式会社だが、変なところで田舎の因習を残していると実は思う。就職活動では
全国からいくらでも優秀な人材がエントリーするのに、半分は必ず地元出身者で構成されているのだ、
実もそれで入ったほうだから、あまり大声では言えないが。
「家はともかく、カルロス・ゴーンでも呼ぶ時代だぜ?舵取り次第と時流次第で、生き残れるかなんてわかった
もんじゃねえよ」
「まだ二カ月だもん、これからだよ」
 車は由香の家の前に着く。明じゃないが、また明日も朝っぱらから仕事が山積みだ。

445: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:52:16.39 aPh4MjHJ
「飲み会?」
 実は眉をひそめた。覚えの悪い新人に手を焼き、年寄管理職のシステムの不慣れに手を焼き、本来午前中に
終わらせる予定だった仕事を完了させた時点で既に1時を回っている。
「今そんな余裕、あると思うか?」
「まあまあ、明もあの通り忙しいだろ?社長就任後初の息抜きってことでな?」
 視線の先には明が例によって歩きまわっている。このところすっかり見慣れてしまった光景だった。
実に声を掛けてきたのは宮田で、こちらも中学校一学年二クラス時代からの同級生である。
例によって地元採用で就職し、同じ会社の人事部に籍を置いていた。どこで誰が働いているかを
把握しているから、幹事にも抵抗がない。


446: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:57:33.84 aPh4MjHJ
「高村とか山口とか、あと湊とか、この会社かあの家で働いてる奴だけでもさ」
 湊の部分が本命だろ、と軽口を返したくなって、実はやめた。自分を勘定に入れても先輩後輩同級生合わせて
8人は由香を手中に収めたがっていることを実は知っている。自分が実力行使に出ないのは、単に
「一番付き合いの長い幼馴染」の座を失いたくないからだけではない。

 いつも通りに部屋を掃除し、ベッドを整えて、由香は満足げに部屋を振り返った。
「よし、完璧」
 とはいえ、当人は帰って寝て起きてまた出るだけの部屋だから、あまり激しく汚れる部屋ではない。
その上この部屋の主が帰ってきてまだ2年、使われなかった時間のほうが圧倒的に長かった。
イギリスにいた頃は本当に帰ってこなくて、そのままイギリスに住んじゃうんじゃないかって、何度も
メールしたっけ。

447: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:00:39.78 aPh4MjHJ
 明が海外への大学の進学を見越して都内の高校に進学すると決めたとき、由香は明と離れたくないと大泣きした。
―絶対、絶対戻ってくるよね?
 思い出すだけで顔から火が出そうになる。あの時は本当に二度と帰ってこないと思っていたのだから仕方ない。
親父の会社を継ぐんだから戻ってくるよ、と何度も言い聞かされて、絶対だよ、約束だよ、と何度も由香は
念を押した。明がいなくなるなんてことは由香にはあってはならないことであり、帰りを待つためにここで
アルバイトを始めたのだった。
 家に帰ってきたときに、少しでも心休まる場所でありますように。願いはそれだけだった。


448: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:14:02.10 aPh4MjHJ
文字規制が厳しいのでちょっと中断します・・・すみません


449: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:20:47.50 /IWCGNSq
携帯から再開します

 由香も帰った夜分遅く、漸く自室に着いたところで明のスマートフォンが鳴った。着信画面には長谷実とある。
「もしもし」
「よお、お疲れ」
 電話の先は相変わらずの声だった。社内での上下関係はプライベートでは持ち込むまいと決めている。
実は明を社長と呼んで頭を下げるし、明は実をシステム管理部の長谷と呼ぶ。
「どうしたんだ、こんな時間に」
「大した用じゃないんだ。宮田が久しぶりに飲み会でもどうかって話になってさ」
「飲み会、か」
「お前も社長社長で息つく暇もないだろうし、たまにはストレス発散も兼ねて」
 言われて、明は確かにここ二カ月暇らしい暇もなかったのを思い出す。父の死を悲しむ暇もなく社長就任の大小があり、
それからは社内を歩き回る毎日だ。椅子に優雅に腰をかけて手を組む、なんてどこの話だ、と明は思う。ゴブレットで酒を飲むどころか、まともに飲んだのは由香のコーヒーくらいだ。
「宮田はお前の都合に合わせるってさ。俺もそのつもりだし、ついでに由香もお前なら誘いやすいだろ」
 ついでに、の部分に明は聞き捨てがならなかった。そこが本音だろう、と言いたいのをこらえて、
「わかった。そっちも確認しておく」
とだけ返した。

 素直じゃねえの。携帯電話を切って実は思った。連れてきたくないならいっそ宣戦布告されたほうがよほど
楽だ。そして明が素直に由香に手を出さない理由が実にはわからない。24という年齢は、
地方ではそろそろ子供の一人も生まれていておかしくない。事実、中学から付き合っていた連中の中にはそろそろ二人目が生まれるなんいうのもいる。
 由香はいずれどこぞの縁談を受けるか誰かの手を取って嫁ぐだろう、おそらく仲間内でもそれは一番早いと思われていたし諦められてもいた。が、蓋を開けてみれば結婚どころか浮いた噂の一つ
もない。独身を通す理由が、明の帰国を待っていた以外の説明がつかないのだ。
あまりもったいぶっているなら、こちらもそろそろ幼馴染の立場に甘んじる必要はないのかもしれない。
 携帯電話を充電機に立て、実は目を閉じた。



450: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:27:11.56 /IWCGNSq
「飲み会には来ない?」
 だが、周囲の思惑をひっくり返して由香の返事は欠席だった。
「その日はシフトが入っちゃって、ほかの人も予定があったりして、どうしても無理で」
 そう言って、部署のシフトを見せる。遅番の由香のほかには数人が予定に組まれ、二人が休みの予定だが、
二人とも希望休として出ている。残りもそれなりに事情があるのだろう、当主権限で強制執行は後々のことを考えると憚られた。
「じゃ、仕方ないか」
「ごめんね、実には私から伝えておくから」
「ああ・・・それから」
 明は背広のポケットを探り、SAの紙製の土産袋を取り出した。
「お土産」
 ほい、と投げてよこす。
「開けていい?」
「どうぞ」
 交通安全のお守りだってさ、と注釈もつける。果たして包みを開けると、出てきたのは蛙のストラップであった。
「明ちゃん!」
 由香は一瞬蒼白になった後、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「高速道路じゃ「無事カエル」のお守りらしいぜ?」
 まだ文句のありそうな由香が口を開こうとしたとき、1時の鐘が鳴った。休憩終了、の合図だ。
「さて、仕事仕事」

 ―明ちゃん、か。ある晩、大阪に向かうべく乗った新幹線の中で、明は由香の言葉を思い出していた。
田舎の旧家の使用人兼幼馴染という、時代錯誤も甚だしい関係だ。その上実や宮田も含め、由香に想いを寄せる連中はいくらでもいる。
 更に悪いことに、父の急死で明にはもう一つ当主としての仕事が増えた。
―早く結婚して、後継ぎを作りなさい。葬儀の際伯母に言われた言葉は、おそらく父も若かりし頃に、そして
伯母自身も母も言われ続けた言葉であろう。事実明の母は別の地方の名家の出身で、文字通り後継ぎを生むために、嫁がされてきたのだ。
 明の足元には、見合い写真がいくつも積み上げられている。どれもこれも地方の旧家に生まれ、
または東京や大阪の会社経営者の一族に生まれて東京の名門女子大を卒業した、生まれ通りに嫁ぐことを定められた令嬢たちだった。
 由香ではだめなのですか、と母に食って掛かったこともある。しかし母の答えは明瞭だった。
―家や会社のための道具になることに、あの子が耐えられると思いますか。
 母は自分が実家と嫁ぎ先、そして双方の経営する会社の取引の道具となることをよく承知していたし、事実そうでなければ利権と因習が幅を利かせる田舎の旧家では生きていけまい。
 指を咥えて由香が誰かのもとに嫁ぐのを見守り、そして自分は愛情のない結婚をして種を仕込め。
端的に言えばそういうことだ。
「クソっ」

「社長、遅いよー」
「お、社長」
 明の慰労会を名目にしていたわりに、飲み会は主役を抜きにしてさっさと始められていた。一部は既に出来上がり、顔が赤い。
「悪い、仕事が長引いた」
「じゃ、改めて明の社長就任二カ月お疲れさまってことで乾杯ー」
 かちんかちんと、あちらこちらでグラスが鳴る。ネクタイを寛げると、宮田と実が近付いてきた。
「よ、社長」
「お疲れ様ですぅ、社長」
 酒のせいか、口調はふざけ半分だ。
「湊は連れてこなかったんですか?」
「仕事が抜けられないんだそうだ」
「そこを当主の鶴の一声で、なんとか」
「無茶を言うな」
 ぐい、と明はビールを一気にあおった。
「ねーねー社長ー、お給料あげてくんないー?旦那の稼ぎが悪くってさあー」
 向こうの席では既に元同級生現使用人女子がへべれけ口調で叫ぶ。あはははは、と歓声が上がった。
「そうそう、うちもー。ここだと多田か公務員か医療関係でない限りマジ安月給でやってらんない」
「下手するとあたしのほうが稼ぎ多いんだもん、参っちゃうよぉ」
「子供作るのも考えちゃうしねー」
「産婦人科なんかじいさんのところ一つだけだし」
「ってか、うちの旦那ソッチがヘタクソなんだけどー」
「マジ?マジ?」
 酒が進むと、女子は明け透けな話に抵抗がなくなってくる。横目で見ながら、実は明の箸が進んでいないことに気づいた。
「食えよ、メシまだだろ」
「あ、ああ」
 良家のおぼっちゃまは酔っ払い方までお上品だ。顔色は赤いが、言葉は変わらない。

451: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:36:14.13 /IWCGNSq
「何考え込んでんの、社長」
「実たちは、結婚しないのか?」
「結婚?」
 宮田も実も頓狂な顔になる。
「結婚、ねえ。ま、相手がいて、状況が許せばってところかな」
「まず相手が見つからないと」
「ここに独身の妙齢女性がいるんだけどー」
 聞きつけた女子が返す。
「男にも選ぶ権利はあるし?」
「うるっさいバカ」
「そういう明はどうなんだ?」
「俺か?俺は―」
 ちらつくのは由香と、沢山の見合い写真だ。顔も名前も憶えていない。
「まだ」
「ま、今は仕事が恋人だしな」 
「そうそう」 
 酔った頭で勝手に結論付ける。
「そういえば、由香も結婚しないよねぇ」
 また女子だ。男性連の心中を見透かすような発言が続く。
「彼氏がいたってこともないみたいだし」
「高校の時にも断られた男子、結構いたよ」
「あたし、実と付き合ってるとばかり思ってた」
「違えよ」
 明の目がぐらつく。独身の由香と、跡取りを残すこととがダブった。いっそ由香との間に子供を作ってしまえば―。
 馬鹿らしい。考えかけて明はやめた。代わりにジョッキを一気に空にする。
「でも、ありかもな」
 実が横で顔を上げた。
「お、やるか?」
「それは宣戦布告的な?」
 いつまで経っても据え膳の存在に気づこうとしないなら、それを横から頂いたところで文句は出るまい。
据え膳の所有者はいまだ確定されていないのだ。
―本気か、実?思わず出そうになった言葉を明は引っ込めた。本気だろうとおふざけだろ
うと、
自分が口を出す権利はない。
 ずきりと頭痛がした。明日も昼から会議、終わったら支社からの定例報告会、取引先と
の商談と、やることは山積みだ。思い出したくないことばかりが押し寄せて、明はウイスキーの
ボトルに手を付けた。

452: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:39:54.06 /IWCGNSq
「遅いなあ、明ちゃん」
 由香は先ほどから何度目か忘れるほど時計を見上げていた。同級生との飲み会、しかも
ここからさして離れていない駅前とはいえ、既に時刻は11時を回っている。いつもならとうに由香も帰る時刻だが、
酔って帰った時に介抱する人手がいないと、との言葉で残らされているのだった。
―あんたもそろそろ結婚したらどう?
 朝、母が持ってきたのは見合い写真だった。こっちからもあっちからも貰ってるんだけど、と、あっという間に見合いの写真が積み上がる。
「まだ、結婚は」
「まだ、じゃなくて。もうそろそろ考えていいんじゃない?」
 試しに一枚を手に取ると、スーツを見た男性が畏まって座っている。28歳、年収450万、趣味は―。
「仕事が楽しいから、考えたこともないよ」
 それだけ返して、家を出た。本当は、まだ昔の夢―明ちゃんのお嫁さんになる―を、捨てきれずにいる自分がいる。
田舎で20年も暮らし、旧家の暮らしを何年もつぶさに見てくれば、釣り合わないことなど十分わかっている。まして
明の母は他所の名家から嫁いできた人だ。由香個人との仲は良いが、それだけでは旧家の当主の妻そして母は務まらないことを由香はよく知っていた。
 もう少しだけでいい。明ちゃんのそばにいたい。明が結婚したら、その時こそ自分はここを出て行こう。由香はそう決めていた。そのとき、玄関近くで物音がした。

「悪い、ここまで潰れるとは思わなかった」
 実はすまなそうに言った。明日も早いし、さあ出ようとした時点で明は既に大量の空き瓶とグラスに囲まれて
意識をなくしていた。寝息はしっかりしているし吐いてもいない、泡も吹いていないから、
命に別状はあるまいと考えて店からここまで引っ張ってきたのだった。
「由香、片方持ってくれ」
 せーの、で持ち上げて、2階の自室まで運ぶ。
「どうしたのかな、ここまで酔っ払うの、初めて見た」
 自室のベッドに横たえ、由香はため息をついた。
「こいつなりにいろいろあるんだろ。社長もだし、当主もだし」
「鞄、ここでいいか?」
 宮田が荷物を運んでくる。
「うん。ありがとう」
 二人が去ってしまうと、由香はてきぱきと明の介抱を始めた。ベルトを緩め、ネクタイを解き、ボタンを外して
体の締め付けを減らす。目が覚めた時のために水と、吐きそうになった時のために洗面器も用意した。
「・・・由香」
「明様」
 明が目を覚ました。酔いがまだ抜けていないらしく、瞳はどろりと濁っている。
「お目覚めでしたか。では私、人を呼んで」
 来ますね、と言おうとした由香の手を、明は強い力で引いた。
「・・・明様?」
 いつもと違う、と由香ははっきりと感じた。本能的に恐怖を感じて振りほどこうとし、
そのまま返す力でベッドに引きずり込まれる。間髪いれず、唇を塞がれた。
「やっ・・・」
 誰か、助けて。叫ぼうとしたところを、再度塞がれる。圧し掛かってきた体の重さに、由香はめまいがした。
酒の臭いのせいだけではない。長年想いを寄せてきた人が、自分の意思を無視して自分を抱こうとしている。
「明ちゃ、」
 明の手がブラウスの上から由香の胸を掴んだ。首筋を、舌が這う。
「由香」
 熱のこもった言葉が、今は恐ろしい。
「俺の子供を産む気はあるか」
 言われた言葉の意味が一瞬理解出来ず、由香は首を横に振った。別の何かが明の中に入り込んで、明の人格を
乗っ取りでもしてしまったか、そう思わずにいられなかった。指先は止まらずにブラウス
のボタンを外し、ブラの下に直接冷たい手が入る。力加減なしに男の手が乳房を掴んだ。



453: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:45:41.52 /IWCGNSq
 現実味のなさは明も同じだった。俺は由香相手にとんでもないことをしている、その自覚はあったが、それ以上に
由香が他の男に抱かれるのも、自分が他の女を抱くのも許せなかった。子供を作ってしまえば、誰もが由香を
諦めざるを得ない。他家からの縁談も、使用人に手を出して子供まで作ったとなれば遠のくことは確実だ。
「明ちゃん、やめて・・・っ」
 ブラのホックを外し、由香の乳房を直接食んだ。男を知らない体はそれだけで雪のように白く、情欲をそそる。
全部だ、全部欲しい。実にも宮田にも渡さない。理論はめちゃくちゃだというのに、結論と欲望は正直だ。
必死に逃げるようにして身を捩り、背を向けた由香のスカートに手を入れ、ストッキングごとショーツを降ろす。
「誰か、助け、んんっ」
 由香の言葉を片手で塞ぎ、もう片手を剥き出しになった中心部にひたりと当てると、由香の体がびくりと震えた。

 由香にとって、全ては悪夢の一言に尽きた。体の中心を押し割って入ってくる何かがある。自分の意志とは関係なしに
異物は否応なく侵入し、内側をこすり上げ、襞を広げていく。それは同時に由香の心を浸食してもいた。
ブラウス一枚残して、今まさに自分は明の欲望の玩具とされようとしているのだ。
―明ちゃんにとっての私は、子供を産ませるための、道具なの?
 明はブラウスを脱いだ。滾った欲望は既に準備ができている。頑なに向けた肩を返し、泣き崩れる由香の額に
口づけた。抵抗らしい抵抗をやめた由香は、されるがままに身を任せている。
「どうして、こん、な」
 由香にはわからない、と明は思った。明治時代に廃止されたはずの身分制度は貧富の差と家柄という形で残り、
田舎の因習と馴れ合いは根を張り、その家に生まれた瞬間から人生の全てのレールが敷かれる。自分の思い通りになることなど、何一つない。
なら、いずれ作らなければならない子供の母親だけは自分で選ぶ。どれだけ後ろ指を指されても認めさせてみせる。
 反論は聞かなかった。身動きの取れない由香の足を広げ、自らをあてがう。欲望のままに貫いた。
「やっ、いやあああああ!」
 破瓜の痛みを、由香はシーツを握りしめて耐えた。諦めきれずにいた夢も、明の幸せを
見届けてから去ろうと決めていたことも、全て崩れていく。一番の希望が一番の絶望に変わる。
痛みに指先は縋りつく先を求めているが、明の背に爪を立てるのだけはプライドが許さなかった。子供を産む道具となる運命を受け入れるのは嫌だった。
 破瓜の血が自身に絡みつくのを見て、明は噂に間違いのなかったことを確信した。侵入者を許したことのなかった入り口は熱く滑り、力加減を知らないまま明を締め付ける。
「っは・・・」
 それだけで達しそうになるのを堪え、明は深く深くへと腰を打ちつけた。
「やめて、いたっ、いやあ、いや!」
 悲鳴を上げる由香の体を抱き込み。文字通り全身で味わった。口づけ、歯を舌で割り、深く絡める。耳を愛撫し、髪を梳き、肌と肌を密着させ、待ち望んだ女の体を貪った。限界が近いことを悟り、最奥まで割入る。
「お願い、中は、や」
 それが目的である明は聞く耳を持たなかった。
「出すぞ」
「いやあっ」
 全身が震え、脈動とともに明は全てを放った。一滴も逃すまいと接合を解かず、残滓ごと注ぎ込む。その様を由香は焦点の合わない瞳で見ていた。

 言葉もなく身支度を整え、逃げるようにタイムカードを押し、息をすることも忘れて走って、転がり込むように家にたどり着いた時点で、時刻は既に一時を回っていた。
這いつくばるように部屋に戻り、ドアを閉めると、枯れたはずの涙がまた溢れてきた。声だけ殺して、由香は泣いた。

 翌日の休みを挟み、通常通り由香は出勤した。悪夢は心を苛んだが、ここを辞めたところではいそうですかと
次の仕事が見つかるわけではない。まして明はこのあたりでは強力な地盤を持つ名士だ。由香の雇用に手を回すことなど、造作もない。
由香はいつも通り、コーヒーに砂糖とクリームを一杯づつ入れて差し出した。
 その様子を内心驚きつつ、明は由香の淹れたコーヒーを飲んだ。以前より、苦い気がした。

蛙の夢(前)終わり

もともと近代西洋もので書いてたのが魔王公爵に圧倒されて急遽現代ものになったのはここだけの話。

454:名無しさん@ピンキー
11/05/09 07:39:04.80 4lNahXNg
GJ!
見た目も性格も良い女性が心身共にズタボロになるのかと思うと
股間が熱くなって勃ちますねw

でもこれバッドエンド確定なのか
期待してます

455:名無しさん@ピンキー
11/05/09 07:45:09.75 DzsivDRm
GJ!!
由香ちゃんが不憫だ
地方の閉塞感のようなものがじんわりと包囲している雰囲気がいい
バッドエンドかあ、切ない

456:名無しさん@ピンキー
11/05/09 18:15:26.74 8PZ8TGTr
グッジョブ!
まさしく好きだと言っておけば……な展開に胸熱w
これからどうやって苦しんでそしてどんな悲劇がと楽しみにしてる
しかし中世風で見てみたかったかも
でもこの地方の閉塞感もいいな~
というか自分も身分高いパワハラ系書こうとしたら
魔王のパワーに引きずられそうで現代にしようかと迷っていたよw

457: ◆h1Zp3va3xs
11/05/10 00:12:52.26 faj3XVgi
続きを投下します。
今回エロ多め。

蛙の夢 (中)

 一度箍が外れてしまえば、最早明は成り振りを構わなかった。由香の休日と遅番を把握するのは雇用者としてわけのないことだったし、
地元の産婦人科の老医師に手を回して、見返りと引き換えに由香が来院してもピルの処方をしないよう伝えるのも電話一本で話がついた。
 本社から戻り、食事を済ませてから由香の遅番の退社時間にあたる10時までが明にとっては一番都合の良い時間だった。
広い部屋の内側から鍵をかけてしまえば人は来ないし、窓を開けない限り防音の部屋から物音は漏れない。まして由香の行動は「仕事が残っている」の一言でいくらでも留め置ける。
―そう、当主との間の後継ぎを「作る」、という仕事が。
 明が鍵を閉めると、それが合図でもあるように由香は服を脱ぎ始めた。震える手でリボンを解き、
ブラウスを脱ぎ、スカートのホックを外す。
「全部脱いで」
ブラとショーツだけのあられもない姿になった由香を見て、それでも明は冷徹に言った。先月は2度事に及んだ時点で生理が来てしまった。
見合い話を断るためには、妊娠は早ければ早いほどいい。自身も上着を脱ぎ、ネクタイを外す。
生理が終わって一週間、そろそろ危険日と言えるあたりに差し掛かっている。それを由香自身よくわかっているのだろう―が、
無理に転職したところで、多田商事と取引関係にないこのあたりの企業はほぼ皆無だ。由香を雇用すれば取引を打ち切る、
と言われれば誰もが取引の継続を選ぶだろう。
 手を背に回し、ブラを外す。大きくはないが形のよい胸がこぼれ、ショーツが落ちて一糸まとわぬ姿が月明かりに浮かんだ。
そのままベッドに座らせ、明はサテンのリボンを拾い上げた。いたずらに、というよりは嗜虐心に明の眼が光ったのを由香は見落とさなかったが、
どのみちこの部屋からは逃れられない。
「後ろを向いて、手を出して」
 大人しく従うと、両手首を後ろに緩く縛りあげられる。いよいよ逃げ場がなくなったところで、明が由香の唇を塞いだ。
 全部入った。
「う、あ、やっ、いたっ・・・」
 後ろ手に縛られたまま、由香は顔を苦痛に歪めた。
「まだ、痛いか」
 体の中は裂かれるように痛み、涙ばかりが頬を伝う。かろうじて由香は頷いた。
「じきに慣れる」
「そんな、こと、うあっ」
 由香の腰を押さえると、明はゆっくりと律動を始めた。
「や、いやっ、動か、ないで・・・っ」
 自分の中で明が動いている。文字通り犯している。いまだに由香にはそれが信じられない。あの飲み会の夜以来、
自分は悪い夢を見ているのではないかと思いたくなる。が、夜毎自分を組み敷く男の顔は、まぎれもない幼馴染の顔だ。
「あうっ」
 由香の中を蠢く明が、ある一点で動きを止める。
「な、なに」
 由香は痛み以上に、体の奥が痺れるのを感じていた。二度、三度明が同じ場所を突き上げると、
その度に由香の体は跳ねるような反応を返す。
「ここが弱いのか」
「あっ、あんっ、ひあっ」
 あとはもう構わなかった。探り当てた弱点を攻めるにつれ、拒むようだった締め付けは快感を求める方向に変化していく。
熱の塊が内側をこすり上げる度、ぬるりと襞が粘ついて絡みつく。子孫を残す男の本能に、子種を受け入れる女の本能は正直だ。
脳が痛み以外の信号を伝えてくるのが、由香にとっては拷問だった。いっそ痛みだけのほうが、歯を食いしばってやり過ごせる。
受け入れがたい理性とは裏腹に、体が明を覚えこもうとしている。
「由香・・・っ」
「ふあっ、や、い、いやあああっ」
 子宮の隅々まで放たれる熱を、由香は感じ取っていた。両膝を裏から押さえこまれた由香の内側でびく、びくんと明が収縮する。
「あ・・・」
 明ちゃんは、私が好きで抱いてるんじゃない。私に子供を産ませるために出してるだけなんだ―。
歓喜する体と裏腹に、心のほうは絶望しているのかもしれなかった。

 その日、二度果ててから明は由香の手首を解いた。こすれた手首のあちこちに、擦り傷ができている。
「あ・・・」
 明は何も言わずにナイトテーブルから絆創膏を取り出し、由香の傷に貼った。
―ひどいことをするくせに、子供を作る道具でしかないのに、小さな怪我のことは気にするの。
 体はすぐには立てないほど重く、足の間からはさっき放出されたばかりの精が漏れ始めている。
先ほどまでの明と今の明が一致せず、由香は惑乱せざるを得なかった。


458: ◆h1Zp3va3xs
11/05/10 00:39:05.12 faj3XVgi
 明は重役会議の資料に見入っている。このところようやく社長業が板に付いてきた、とは古株社員の言葉だった。
「東京支社は、ずいぶん売上が良いんだな。決算に合わせて黒字にしたのかと思ったけど」
「商売相手の数が桁違いです。尤も、売上に対して人手不足のようですが」
「増員も考えるか」
「そうですね。ところで若社長、ここのところ、ずいぶん機嫌がいいようですね」
「そうか?」
 田村ひとみは社長室の机の上で売り上げ報告を眺めている明を見て言った。最初のうちは仕事に押しつぶされそうになっていたというのに、
このところ明の終了は早い。19時には必ず仕事を終了させて帰路についている。
 女でもできたかしら。
 結婚と恋愛は別物だ。社長となればなおさらであることを、ひとみは先代の頃に学んだ。明の父は明の母に「当主の妻」の役割を果たさせた後、
何度か大阪支社の女子にちょっかいを出していたことをひとみは知っている。
おそらく深い仲くらいにはなっていただろう関係に見て見ぬふりをしたのは、
こちらに戻ればそれをおくびにも出さず、ひとみ以外の誰ひとりとして匂わせることがなかったからだ。
秘書のひとみにはスケジュールの関係上感づかれざるを得なかったが、売上への影響を出さず、
妊娠沙汰にもならず、別れるときも一切こじれさせず、お終いには最後まで一人で抱えて墓の中まで持って行った。
相手の女性社員もとうに結婚し、ひとときの社長のお遊びなど昔の話だろう。そこまで徹底すれば、
いっそ天晴れというものだ。
 さて、この若社長にそれが出来るかしらね。


459: ◆h1Zp3va3xs
11/05/10 00:53:53.86 faj3XVgi
 由香をベッドの上に膝立ちにさせ、ブラウスの上から胸をつつくと、それだけで由香の体は震えた。
腰を押さえこみ、スカートのホックを外す。サテンのリボンで視界を塞がれた由香は、唇を噛んで耐えていた。スカートを膝まで落とし、
体の中心に指を滑らせる。
「んぅっ」
 布地の上から触れただけで、既に濡れているのがわかって、明はほくそ笑んだ。体はこれから自分に起きることを既に理解し、快感を与えられることを待ち望んでいる。
「こんなに濡れてるのに、嫌なのか」
 現実を受け入れようとしないのは、心だけだ。上から筋を指でなぞると、
「やあんっ」
 それだけで膝が震え始めている。ためらわず、明はショーツの中に手を入れた。
「や、そこは、だめっ」
 ダメ、と言われて引き下がるなら、今のこの瞬間はない。今の明は、由香への執着で出来ているようなものだ。
「あ、ああんっ」
 侵入した指先は薄い陰毛を撫で上げ、迷わず中心部へとたどり着く。指先の感覚だけでもそれとわかるほど、そこはしとどに濡れていた。
丁寧に襞をなぞり、触れるか触れないかの力で陰核を摘む。由香の膝は既にどうしようもないほど揺れ、息には隠しきれない熱がこもっている。愛液が滴となって腿を伝う。
「はあっ、あっ・・」
「ここは?」
「も、やだ、やめ、うああっ」
 熱く潤った泉に明は指を差しいれた。綻んだ入り口が収縮し、侵入者を食いちぎる勢いで絡みついてくる。
構わず指先を動かし、深くまで押し込んでは戻す。曲げた爪の先で軽く中を引っ掻いていく。
「あ、あ、ああっ」
 くちゅ、くちゅ、くぷ、と、由香自身信じたくない音を由香の体は出している。子供を作るため男を受け入れる行為に、
それ以上に愉悦を得ることに貪欲になっている。
「明ちゃ、あうっ」
 十分な潤いと痛みを感じない程度の綻びを確認して、明は布地から手を抜く。少ない光源の中でも、はしたないほどに濡れて粘ついているのがわかった。
「あ・・・」
 膝立ちを強いられていた由香の体が崩れる。がくがくと震える足に最早体を支える力は残っていまい。
「こっちのほうは、準備ができてるみたいだけどな」
 明は由香の後ろに座ってリボンを解くと脇の下から手を回し、着たままであったブラウスのボタンを外し始めた。
「あ、ああ」
 か弱い力で由香が明の手を追うが、先ほどの行為で既に指先に力が入っていない。
「明、ちゃん」
「何?」
「いつまで、こんな、あっ」
 ブラのホックを外して押し上げ、柔らかい乳房に指をうずめる。ピンク色の突起を指先でつまむと、そこは既に硬く存在を主張していた。
「由香が後継ぎを産むまで」
 それは既に決まったことだ、と言わんばかりの明の指先が、濡れたショーツにかかる。膝まで降ろし、むきだしのその場所の熱をわざと再確認した。
腿と腿の間に明の手を挟んでいる姿は、ひどく扇情的で淫らだ。
「私、明ちゃんの、子供を産むための、道具なの?」
 息も絶え絶えに由香は訴える。どうか違うと言って欲しい。だが、明は答える代わりに由香をうつ伏せに組み敷いた。腰だけを押さえこんで、自らの熱をあてがう。
「正確には、お前にしかできない仕事だな」
「しご、と」
「この家の後継ぎを産む事も、大切な仕事の一つだ」
「や、あああああっ」
 肘だけでも体を支えようとした由香に、明は後ろから本命の「仕事」を始めた。
「んああ、あっ」
 最初とは違う、由香の膣内の勝手を知った明は由香の敏感な部分を攻めながら、強いて最奥までは進まず半ばで動きを止めた。
「あっ、あっ、ひあっ、明、ちゃ」
 後ろから覆いかぶさって胸を掴み、乳首を指先で弄び、同時に下の抽挿を再開する。
胸への愛撫と連動するように、膣は内側からぐっと締まる。
「はあ、あ、あ、あ」
 今まで達くことを頑として拒んでいた由香の体が、初めて絶頂を迎えようとしていた。
「こっちは正直だな」
「そんな、こと、やああっ」
 最奥まで貫き、子宮壁にぶつかると、わざと入り口まで引き戻す。張り出した亀頭が由香の内側をこすり上げ、
明そのものを文字通り由香の中に刻み込んでいく。こらえきれず、由香がついに陥落を許した。
「なか、こわれちゃ、あ、あっ、あぅっ、あああああっ」
 膣壁が明を吸い込むように、逃すまいとするように動く。奥へ奥へと吸い上げるような感触だった。その流れに逆らわずに、明は滾りを送り込んだ。

460: ◆h1Zp3va3xs
11/05/10 01:02:43.88 faj3XVgi
「由香!」
 明との「仕事」を終え、着替えて帰路を急ごうとすると、ひどく懐かしい声がした。
「・・・実」
「送るよ」
「・・・ありがと」
 助手席に乗り込む由香の横顔を見ながら、実は由香に違和感を感じていた。この間会った由香はもっと幸せそうで、
もっと屈託がなかった。それが今日の由香はどうだ。
「どうした、元気ないな」
「そう?・・・いつもと変わらないよ」
 声音の端々に、今までにはなかった陰りを感じ取る。
「本当に?」
「・・・うん」
 車は、田舎の田圃道をゆっくりと進んだ。蛙の鳴き声がこだまする。明日は、雨だろうか。
「実、社長にとって従業員って、何だと思う?」
 絞り出すような声で由香は言った。
「どうしたんだよ、急に」
「いいから」
「・・・売上を上げて、地域に貢献して、雇用を作り出す。会社の役目がそれだとしたら、従業員はその手駒だろ」
「手駒、って、道具ってこと、だよね」
「そりゃそうだけど・・・明と何かあったのか?」
 ぶちまけてしまいたい気持ちと、言わずにおくべきだという気持ちとが由香の中で交錯した。実が会社のために売上を上げるための道具なら、
自分は会社のために後継ぎを作るための道具、なのだろうか。
 だが、違う。自分は社長の自宅を快適に保つ道具と言われれば納得するが、会社のために社長の子供を産む道具、と言われても受け入れられない自分がいる。
 ぱたりと由香の瞳から涙があふれ、実はあわてて車を止める。
「おい」
「・・・会社の後継ぎを産むのも、従業員の仕事の一つなのかな」
「何だよ、それ。おかしいだろ。明がそんなこと言ったのか」
 こらえていたものを押さえきれなくなり、由香は頷いた。由香に感じていた違和感と今の言葉とが、かちりと噛みあう。
「まさか」
 今日もそのための「仕事」をさせられていたというのか。言葉にするにはあまりに憚られたその部分を、
由香は正確に理解したようだった。顔を上げないまま由香は頷く。実の眼を見て話すことが、どうしても出来なかった。
 
「ああっ、あっ、あんっ」
 その夜も、制服姿で明に組み敷かれ、由香は明の出入りに身を任せていた。
馴らされた体は既に明を抵抗なく受け入れ、深く咥えこんでいる。体同士がぶつかる音が耳を打った。
 体は明を受け入れることを知っているのに、心は明を受け入れないでいた。由香が明にとって跡取りを残すための道具でしかない事実が、
妊娠させるための肉体だけが求められているのが、何よりも由香には辛かった。体はどうなってもいい。
子供が必要だから作る、明のように世襲制を強制されてきた身にとってはそれも一つの解決策だろう。
―じゃあ、私はどうなるの?
 自分が求められているのは幼馴染の湊由香、だからではなく、その卵子と子宮に過ぎない。種付けの効率を上げるために明は由香を日々抱き、
抵抗なく受け入れられるために明の肉体を由香に覚えこませているのだ。
農作業で言うなら土壌を改良して土を耕し、種を蒔いているのと変わりはない。酪農でいうなら家畜の種付け出産だ。
 何だよそれ、おかしいだろ。実の言葉が頭の中で反響した。そうだ、自分たちの関係はとんでもなく歪だ。
妊娠を目的とし、雇用を盾にした性関係の強要。田舎者の由香でもそんな馬鹿な話は聞いたことがない。が、自分たちの関係はそれに他ならない。
「はあっ、あんっ、んああっ」
 明は今日2度目の射精を迎えていた。性的な興奮や快感よりも何よりも、自分が求めているのは受胎の一言に尽きる。
腹出しや顔射といったアダルトビデオのような行為は無駄だった。フェラチオなど、論外だ。
「ひああ、あんっ、あうっ、あああっー」
 由香が達くのにあわせ、明は精を放った。果てた後も、明は体を離そうとしなかった。


461: ◆h1Zp3va3xs
11/05/10 01:30:43.19 faj3XVgi
 裏門を出ると、見慣れた車があった。
「・・・実」
「送るよ」
 
 車の中は、ほとんど無言だった。由香に肉体関係を強いる明と、幼馴染としての明と、社長としての明がどうしても一致しない。
「いつから、そうなんだ」 
「いつから、って」
 実が重い口を開いた。
「お前と明だよ。その、無理やり子供作って既成事実に持ち込もうとしてるんだろ」
 いらだち紛れに実は言う。自分ではどうにもならないことだ。だからこそ腹立たしい。
「・・・あのとき、飲み会が終わって、実たちが明ちゃんを運んできた、あの後から」
 隣で実が息を飲んだ。由香は下を向いた。感情がどうであれ、子供が出来てしまえば由香と明の関係は
一生切り離せなくなる。まして地元を離れたところで高卒の何の資格もない女が一人で食べていくだけの稼ぎを得られるとは思えなかったし、
地元に残ったところで明の手の中からは逃れられない。現に駆け込んだ地元の産婦人科はピルの処方を断ったし、
目的が目的である明は一切の避妊をしない。四面楚歌もいいところだった。
「私、本当は明ちゃんと結婚なんか出来なくてもよかったんだ。どうしても家のために他所から奥さんを迎えることはずっと昔から知ってたし、
それで明ちゃんが幸せなら、いいと思ってた。今だって正直、体なんてどうなったっていい」
「どうでもいいって、お前」
「でも違う。明ちゃんが欲しいのは私そのものじゃない。私の子宮と卵子と、それだけ。後継ぎがいれば結婚してようとしてなかろうと周りは文句を言えないから、
一番手っ取り早いのが一番近くにいた私だった」
 心の底から求めあい、自ら望んで体を許していたなら、実にもあきらめがつく。正妻になろうとなるまいと、それは由香が決めることだ。
だがそうではない。後継ぎという明の事情に、由香は最悪の形で巻き込まれている。
―こんな奴に、幼馴染を任せておけるか。
 実の内側に、憎しみに近い感情が湧きあがってきた。由香が明をずっと待っていたことも、明が由香に想いを寄せていたことも実はよく知っていた。
だからこそ永遠の二番手に甘んじるつもりでいたというのに、実際に明のやっていることは由香を心身ともに踏みにじる行為でしかない。
「何なんだよ、あいつ」
「実」
「お前、こんなにボロボロにされていいのかよ。レイプまでされて、都合のいい道具にされて、それでいいのかよ」
「・・・どうしていいか私にも分からないよ。ずっと好きだったのに、なんで、こんな、道具みたいな」
由香は泣き崩れた。実は言葉を返すことが出来なかった。明の家の事情を実は朧気に、由香は身を持って理解している。
だが、子供を作る宿命までも一方的に強いられるいわれはない。由香は生まれてからこの町で過ごし、育ち、泣き、笑い、
記憶を積み重ねて生きてきた。その全てが由香だ。肉体だけの存在ではない。
車内から見上げる空は霧が出ていて、月も星も見えない。五里霧中、それが今の由香なのだろうと実は思った。

462: ◆h1Zp3va3xs
11/05/10 01:32:12.19 faj3XVgi
蛙の夢(中)終わり。

着衣プレイは浪漫だと思います。

463:名無しさん@ピンキー
11/05/10 02:14:23.88 pIT+9/xj
素晴らしすぎる・・・それしか言えない
続き待ってます!

464:名無しさん@ピンキー
11/05/10 07:12:10.50 DRNBSjE6
アンタ……最高やGJ!!
本当に何故押し倒すときに好きだと言わなかったんだ明
そして実は二人の気持ちを知りながら誤解解いてやれよというのは酷か
すごく切ない切ないよ
これ始めに二人はくっつかないって知らずに読んでたら
すごく二人は誤解とけるんだよね!と期待して読んで
読み終わったら鬱りそうだったから初めに注意してもらえてよかったw

465:名無しさん@ピンキー
11/05/10 07:20:27.42 Ov5lPOKp
GJ!
切ないなあ
いってやれよお、明、たった一言じゃないか
と思いながらこの生殺しにwktkする矛盾

本当に最高だ


466:名無しさん@ピンキー
11/05/10 17:32:03.28 75LFMIVD
GJ!
仕事で義務か
色々重いな
続きに期待

467: ◆h1Zp3va3xs
11/05/11 00:05:25.01 jJ7Q117T
蛙の夢、完結編を投下します。
エロなし。

蛙の夢(後)

 その朝起きた時点で、既に異変は始まっていた。頭が重く、ずきずきと痛む。しゃにむに体を起こすと、今度は眩暈がした。
「由香」
「・・・何?」
「ごはん、出来てるわよ」
 母の声もいつもより遠い。ふらつく体を押さえて階段を降り、なんとか居間に向かう。
味噌汁とご飯、鮭と卵焼きの、平均的な日本の朝食だ。椅子に座ろうとしたその瞬間に、猛烈な吐き気が襲った。
「うっ」
 返す足でトイレに駆け込み、せり上がってくるものを全て吐き出す。中の消化物が全てなくなって胃液だけになると、喉の奥が焼けつくように痛んだが、
それさえも全て出してしまいたかった。
「どうしたの、由香。二日酔い?」
 何も知らない母が声を掛けてくる。が、由香は事態を確信していた。心当たりなど今更挙げるまでもない。週に二度はそのための「仕事」をさせられていたのだ。
事態を防ぐための対策もさせてもらえない産婦人科では、診断を受けたその瞬間に明に連絡が行くだろう。薬局で妊娠検査薬を買っただけでばれる田舎で、
プライバシーや個人情報という言葉は明以外には適用されない。その明は、由香の妊娠の知らせを手ぐすね引いて待っているのだ。
 朝食を押し込むようにして食べ、電車で一時間半も先の、新幹線の乗り換え駅近くにある産婦人科に駆け込む。
名前を呼ばれるまでの時間が、閻魔の裁きを待つ時間のようだった。

 止めろって言ったってなあ。実は机の上にコンビニのパンとサラダを広げて頭を抱え込んでいた。明はいつも通り社内を歩き回っているから、
何を考えているか実にはわからない。とはいえ、由香の様子が嘘とも思えなかった。由香が明を陥れようとする理由はないし、
失敗すれば由香の首が締まるような場所だ。
 男女の抜き差しならぬ関係といったところで、自分のやろうとしていることは単なる出歯亀だ。それでもあの飲み会の夜、もう少しだけ、
せめて明が目を覚ますところまであの場に留まれば、全ての悲劇は防げたかもしれない。そう考えてしまうことはどうしようもなかった。
 いっそのこと、由香を横から攫うとか―もっと馬鹿馬鹿しい。こちらの根回しがよほどうまくいかない限り、明はいくらでも周囲を追いこんで由香を追い詰めるだろう。
少なくとも、由香が彼の子供を産むまでは。産んだ後は子供を取り上げられ、地主のお手付きのレッテルを貼られるってわけだ。
 東京ならともかく、ここは世間の狭い田舎だ。明が本気を出せば、由香一人経済的にでも社会的にでも
物理的にでもどうとでも追い込める。それを恐れて、由香は泥沼の中で息も出来ずにいる。
―東京、ねえ。
 実は壁の貼り紙を見た。「東京支社、異動希望者募集。職種、年齢、経験年数不問」とある。東京支社はこのところ売り上げを伸ばしているらしい。
特にシステム管理担当者はすぐにでも誰か来られないか、と部署直々に要請を受けている。異動願いを出せば即受理されるだろう。
由香を説得して偽装結婚し、ほとぼりの冷めたところで多田を離れて転職する。由香が妊娠していようとしていなかろうと、明にばれる前に婚姻届を出してしまえば
子供は法律上自分の子供になるから、後継ぎにはできまい。よしんば明が裁判を起こそうと養育環境と養育意志とが揃っていれば、地主との癒着のない東京での裁判ならこちらに分がある。
 そこまで考えて、あほらしいと実は頭を横に振った。我ながら自己満足ばかりのいい加減な計画だ。第一、こちらに住んでいる家族が村八分を受けないとも限らない。
 それでも、由香は体をいいようにされ、心は悲鳴を上げている。自分は道具ではないと泣いている。文字通り一番近くにいながらそんなことにも気付かない明が、
実には信じられなかった。 昼休みも半分を切ろうとしたとき、携帯電話が鳴った。由香だった。


468: ◆h1Zp3va3xs
11/05/11 00:07:52.17 jJ7Q117T
「今日、産婦人科に行ってきたんだ」
 電話の向こうの由香の声は震えていた。ああ、この時がきたか、と実はぼんやりと思った。まともな避妊手段を一切封じられて、
いわゆる「中に出されて」いたのだから、今更驚きはしなかった。
「5週目、だって」
「・・・やっぱりな」
 由香は泣いているんだろう、と実は思った。言葉の端々で、しゃくり上げる声が聞こえる。妊娠そのものよりも、自分が本当に明の「道具」になってしまった、
彼のお望み通りに後継ぎを身ごもってしまった、その絶望のほうが大きいのかもしれなかった。
「お前、本当にこれでいいのか」
「よくないのは、わかってる」
「ずっと好きだった奴に、仕事の度に部屋に連れ込まれてレイプされて、そいつの思惑通りに妊娠して、思惑通りに子供を産んで、
どこにも逃げ場もなくて、これでいいなんて、お前が一番思ってないだろ」
 由香が電話の向こうで黙り込むのがわかった。先ほどのあほらしい逃亡話―自分の頭の中で練った、
計画とも呼べない計画を、実は思い出していた。
「結婚して、東京に逃げないか」
 あくまで、提案だ。由香を逃がすための提案、と、実は自分に言い聞かせていた。横から奪うためじゃない、俺は由香を道具にさせたくないだけだ。
「東京?」
「東京支社が増員を募集してる。今日希望を出せば、すぐにでも受理されると思う」
「でも」
「バカ、偽装結婚でいいんだよ。本当に夫婦になれなんて言ってない」
「本当の子供じゃないのに」
「誰にも言わなきゃ誰にもわからねえよ。母親がお前なことに変わりはないんだ」
「実に迷惑だよ」
「迷惑なんて考えてねえよ」
 もうひと押しだ、と実は考えた。子供を作られようと何をされようと、心はこちらにある。
―絶対に明には渡さない。
「このままあいつに子供を渡してお役御免でいいのか?お前は湊由香で、子供を産む道具じゃないだろ?」 
 その言葉に、由香が言葉を詰まらせる。
「多少戸籍に傷はつくけど、あいつの思惑に振り回されて終わり、なんてことはさせたくないだろ?お前の人生なんだから、
手遅れになる前に多田だろうと他人だろうと使えるものはとことん使えよ。他のことは逃げ切ってから考えても遅くないだろ」
「実は、本当にそれでいいの?私と明ちゃんのことに無関係なのを巻き込んじゃうのに」
「迷惑か?」
「迷惑なんかじゃない。全然迷惑なんかじゃないよ。けど、実はどうなるの」
 血のつながらない赤子一人のために実の人生を変えかねない。由香はそれを恐れているのだ。
 何を今更、と実は思った。一度しかない人生に、狂いも何もあるか。なら手を差し伸べないで後悔するより、
好きな女に地獄まで付き合う。それで十分だ。
「俺が自己満足でやろうとしてるんだから、それでいいんだよ。幸い資格も貯金もあるし、どうにかなるからさ」

469: ◆h1Zp3va3xs
11/05/11 00:11:32.71 jJ7Q117T
 腹が決まれば、実の行動は驚くほど速かった。電話で母に婚姻届の用紙と戸籍謄本を頼み、その日のうちに東京支社への異動希望を出し、
夜には双方の両親に挨拶をし―由香の父親には当然張り倒されたが、エコー写真を見せられれば認めざるを得ない―、翌日には婚姻届を役所に提出した。
数日後には小さなアパートに最低限の荷物で引っ越しを済ませた。
 子供を作る既成事実には、こちらも既成事実の積み重ねで対抗する。いずれ明にも情報が漏れるだろうが、婚姻届の取り消しは余程でない限り第三者には出来ない。
そして事実上夫婦として暮らしてしまえば、その取り消しを求めること自体が明によからぬ噂を立てさせる。それがわからない男ではあるまい。
 退職します、と由香が告げたのは、一週間後のことだった。明と明の母が揃った朝である。
「今まで、長い間お世話になりました」
 退職届を手渡し、深々と頭を下げる。
「淋しくなるわね」
 急な退職に、明の母が溜息をつく。
「実は結婚が決まりまして」
 最初から何もなかったかのように、努めて「仕事」の表情と言葉で、由香は告げた。
「相手の東京への転勤が決まったので、一緒に来ないか、と」
 その言葉で、明は息を飲んだ。実が東京支社に異動する、その希望を提出したのは一週間前だった。内心邪魔者が一人減る、
と喜びながら東京支社に連絡し、双方の人事担当とすり合わせて、正式な辞令が昨日出たばかりだった。
 そしてこの一週間、由香は生理を理由に明を拒んでいる。辻褄が合いすぎて、明は眩暈がした。
「先日婚姻届も出したので、実はもう湊は旧姓なんです」
 それを敢えて報告しなかったのは、すぐに退社することが分かっていたからか。
「あら、おめでとう。じゃあ、今は?」
 母がその先を促す。これ以上聞いていたくなかった。
「―長谷。長谷由香、と」

 現場担当者を捕まえて由香のシフトを確認すると、本来出社予定だった部分はすべて有給扱いとなっていた。
「月の終わりまでは居てくれないか、ってこっちもお願いしたんですけどねえ。旦那の転勤が急なのと、何より体調が良くないんだそうで」
「体調?」
 明が鸚鵡返しに言う。
「どうもこうも、結婚した女の体調が良くない理由なんて一つっきゃないでしょう」
 担当者はまだ分からないのか、と言いたげに唇をゆがめた。
「コレですよ、コレ」
 両手を腹の前で丸い形にし、上下に動かす。
「二ヶ月目だそうで」
 実君も由香ちゃんも全く隅に置けない、と笑った。
 アパートに戻ると由香は、わざと切っていた携帯電話の電源を入れた。普段はほとんど来ない明からのメールが大量に届いている。内容はどれもこれも、一度話をしたい、との件だった。
妊娠も、間違いなく伝わったことだろう。
 完全に逃げ切れるとはまだ思えなかったが、家族が村八分にされているということは今のところなかった。
周囲では由香と実ができちゃった婚をした、お前らもか、程度にしか考えられていない。明が口を挟む余地は今のところ、ない。
 明日にでも来てほしいとの東京支社をなだめ、仕事の引き継ぎを済ませ次第東京へ引っ越す算段が整っていた。
双方の実家から直接ではなくわざわざこのアパートを借りたのは、周囲に自分たちが夫婦であることを浸透させるためだけだった。
「風邪引くぞ」
「あ、うん」
 床に座り込んでいた由香を、実が見咎めた。部屋は段ボールばかりで、布団とテーブル、最低限の家電と食器のほかにはまともな家具もない。
東京に行ったら買おう、と二人で決めていた。
「ごはん、私が作るよ」
 そのまま台所に立とうとする由香を、実は止める。
「妊婦はおとなしくしてなさい」
「でも」
「いいから」
「・・・うん」
 ふと、封のされていない段ボールの中から実の衣類が覗いた。その緑色に、由香は見覚えがあるような気がした。
―なんだっけ、あの色。・・・そうだ、蛙だ。
 由香はのろのろと立ち上がり、自分の段ボールを開けた。蛙のストラップは、明がお土産にと買ってきて
由香に押しつけたものだった。これを貰ったのは三か月前だ。それまでと今との状況とは、あまりに違いすぎている。
 窓の外に、田んぼが広がる。今日は蛙は鳴いていない。きれいな月だった。
―交通安全のお守り。無事帰る、だってさ。
 もう、明ちゃんのところには帰らない。田圃めがけてふっと放ると、それっきり蛙は見えなくなる。
それを待っていたかのように、由香の携帯電話が鳴った。
 明だ。
 息を飲む由香の隣で、実が携帯電話を取り、通話ボタンを押した。

470: ◆h1Zp3va3xs
11/05/11 00:19:40.93 jJ7Q117T
「もしもし」
 受話器の向こうから聞こえた声に、明は一瞬我が耳を疑った。番号は間違いなく由香だ
が、声の相手は実だ。
「実・・!?どうして」
「どうしてもこうしてもないだろ。結婚したのをお前も知ってると思ってたけどな」
 実の声音は苛立ちの段階を通り越して、既に嫌悪感を露わにしている。
「由香は」
 お前が言えた立場か、と言いたくなるのを押さえて、実は会話を続けた。
「隣にいるよ」
「じゃあ」
「ふざけるな。俺はお前が由香に何をしたか全部知ってる。何を吹き込んで何をしようとしたか、そのために
どれだけひどい目に遭わせていたかも知ってるし、根回ししていたことも知ってる。その結果はお前ももう知ってるよな?
お前の声は聞きたくないし、聞かせたくもない」
 明は言葉を失った。自分のもとに由香を留めたくて取った行動の結果がこのザマだ。自分は由香も子供も実に攫われていく、
その未来を自らの手で手繰り寄せたのだ。
「子供だけでも取り上げようなんて思うなよ。子供は俺の子供として認知する。金も一銭も要らない。会社もいずれ転職する。
お前個人とかかわる気は二度とない」
 返答を返せずにいる明の受話器の向こうで、
「・・・少しだけ、話させて」
 由香の声がした。
「けど、お前」
「私にかかってきた電話だもの」
「俺は」
 少しの押し問答の末、実は根負けしたようだった。
「一度だけだぞ」
「・・・うん」
 
「由香」
 子供を作るのは建前に過ぎなかった、といって何になるだろう。自分は後継ぎを残すための見合い話を蹴りながら、
由香を留めるためと自分に言い聞かせながら、その実祖先と同じことを由香に強いたのだ。
―あの子が会社や家の道具になることに耐えられると思いますか。
 母の言葉は正しく由香を見抜いていた。実は自分が強いた無理を道理で破ったに過ぎない。
「俺は」
 言葉にならない。本当は由香にこそ側にいてほしかった。他の誰にも渡したくなかった。今何を言っても、もう由香には伝わるまい。
「・・・明ちゃん、私は本当に、明ちゃんが好きだった。どんなにひどい目にあわされても、明ちゃんが
私のことを本当に好きでいてくれて、それで抱いてたとしたら、それでよかった。
一生日蔭者になっても、構わなかった。子供ができようと出来まいと、ずっと側にいたかった」
 由香は感情をなくしたような、淡々とした声で言った。ああ、これが最後なんだ、と明は思った。
「けど、明ちゃんは言ってた。私が後継ぎを産むのは仕事だって。・・・私は子供を産むための道具にはなりたくなかった。
私にとっての明ちゃんは代わりのいない人だったけど、明ちゃんにとっての私はそうじゃなかった」
「由香、違う、本当は―」
 お前でなければならなかった、その言葉を、由香は途中で遮った。
「―もう遅いよ、明ちゃん。明ちゃんの一番欲しかった子供が出来て、実が全部分かった上で支えてくれるって言ってくれた時、
私、絶対に子供を明ちゃんには渡さないって決めた。明ちゃんのところには戻らない。子供のための道具にはならない。子供を多田家の後継ぎにはさせないって。
・・・それだけだよ」
 言い切って、由香は携帯電話の通話を切った。そのまま着信履歴から、明の番号を着信拒否に登録する。
これで、本当にさよならだ。
「・・・由香」
 傍らで、実がものも言わずに由香の体を抱きよせた。腕に身をまかせながら、由香は目を閉じて涙を流した。

471: ◆h1Zp3va3xs
11/05/11 00:28:31.67 jJ7Q117T
 30年以上努めた会社を数年前に定年退職後、ひとみは東京に引っ越し、退職金と貯蓄、年金を元手に通信制大学に入学した。
既に夫はこの世を去っているし、結婚した娘も東京に暮らしている。田舎の広い家で一人で日がな一日過ごす生活よりは、
娘の育児を手伝いながら興味のあることでも好きに勉強してみようか、と思ったのがきっかけだった。

 日が暮れた道を子供たちが競うようにして帰っていく。孫と同じくらいの子供たちだろうか、次々ひとみの傍らを走り抜けていく。
揃いのユニフォームはサッカー教室の後の子供たちだろう、泥だらけで、それでも飽きずにサッカーボールを蹴りながら歓声を上げる。
そのうちの一人が、昔どこかで見たことのある顔のような気がして、ひとみは目を瞬いた。
 まさか、ね。
 若社長は先代のようにはなれなかった。就任して数年で社内の女子に手をつけたとの噂がまことしやかに立ち・・・
そしてそこから立ち直ることができなかった。
 他人の空似だわ、・・・若社長の小さな頃に似てるなんて。
 
「多田商事、新社長が決定」
 夕刊の片隅に、小さな記事が写真つきで載っている。年嵩の男性の写真だった。
 明の解任が決まったとの知らせを実は宮田から知らされた。経営悪化の責任を取って辞任、が表向きの理由だったが、
実際のところは経営以上の問題で、社長の放蕩が原因だったらしい。多田だからと目をつぶってきた地元の取引先にいくつも逃げられ、
株主と役員にそっぽを向かれたとのことだった。
―旧家の嫁さんに暴力を振るって逃げられたとか、会社の金を博打に使ったとか、
本当かどうか分からないけど最近の明の噂はそんなのばっかりだ。あいつ、どうかしてるよ。
 多分、明は本気で由香を愛していたのだ。子供を作るのもそれが目的のすべてではなく、本当は由香を繋ぎとめるための手段ではなかったか、
と思う。却って由香を失い、結果自分自身まで見失うほど、深く―。今はもう実にはわからない。
「お父さん、ごはん出来たよ」
「ああ、悪い悪い」
 妻の声に、実は我に返った。
「ただいまー」
 サッカー教室が終わり、今日も汗と泥まみれになって帰ってきた息子の着替えを手伝い、2歳になる娘を抱きあげて食卓に着く。
「今日は何?」
「今日はシチュー」
「やったあ!」
 男同士、顔を合わせて歓声を上げた。その表情が、いつかどこかで見た横顔と重なって、実は幻を振り払った。

蛙の夢、終わり

お付き合い、ありがとうございました。

472:名無しさん@ピンキー
11/05/11 00:39:09.71 PMKXlYon
GJ!!
明…転落人生を送るなんて
というかもうすべてやけっぱちというか
自分と由香を引き離した家を壊したかったんだろうな
由香は転落した明の事何も思ってなさそうで更に鬱
誠氏ねのノリで実氏ねと呟いてしまったw
そしてひとみさんがさりげなくおいしいポジションだなー何もしてないのにw

473:名無しさん@ピンキー
11/05/11 00:44:23.38 NTXgODvR
>>471
グッジョブ~
>あいつ、どうかしてるよ
お前が言うなとツッコミ入れたw
由香が色々知った未来も見てみたいほど
哀しいすれ違い愛ご馳走様でした

474:名無しさん@ピンキー
11/05/11 00:48:06.40 u3mWlfkM
一言の重みですれちがいか
GJでした


475:名無しさん@ピンキー
11/05/11 01:05:20.46 13iagTL7
GJ!!
明ちゃん自業自得だが哀れ
由香ちゃんも神視点から見ると不憫だな
だがそれが良い
完結乙です

476:名無しさん@ピンキー
11/05/11 04:40:08.15 9F4y0q65
実いい人だな

477: ◆h1Zp3va3xs
11/05/12 00:49:44.04 OBcsBPGx
感想諸々、ありがとうございます。追記、補足を少し。

ひとみ女史:気がついたら出番が増えてました
由香→明:式での態度が全てかと
>どうかしてる云々:「旧家の嫁さん~」からここまでは宮田のセリフだったりします。描写不足ですみませんorz

>>456
さあそれを早く文章にするんだ

では今度こそ名無しに戻ります

478:名無しさん@ピンキー
11/05/12 02:06:39.20 rDy9jCyu
>>477 乙でした

>由香→明:式での態度が全てかと
由香は切替えが早かったんだ、意外だった。

明が一番悪いのには変わりないのだけど、実も卑怯ではあるね。
永遠の二番手でいるつもりだったけど状況が変わって、子供を引き受ければ
由香が手に入るからと偽装結婚でいいんだよ、とあくまで親切心からのように
振舞って弱っているところに付け入ってまんまと手に入れて、そのまま夫婦になったわけだから。

きちんと気持ちを打ち明けた上で明ではなく自分を選んでと言っていたらあっぱれだった。
でもそれで由香が明を選んだら悲恋にならないか。
他の男の子供を引き受けるなんて立派と言うべきなのかな。
実は成長してますます明に似てくる息子を見ていつまでもモヤモヤしつづけると良いと思う。

479:名無しさん@ピンキー
11/05/12 07:46:04.23 eC8JI9QX
>>477乙!
初めは明に感情移入して読んでいたせいで
由香の事すぐ実に乗り換えるなんてこの尻軽!
明の事そんなに好きじゃなかったのかーとか思っていたが
由香視点で読むと明に犯されながら段々と
「この人、人としてこの行動はどうよ?」と思っていって気持ちが冷めかかった所に
(由香視点では)人として立派に見える実にぐらっときちゃってもしょうがないかと思ってしまったw
自分より大事だと明に思われてる子供を取り上げて
式での由香→明の態度も好きだったからこそ許さないって愛が故に振り切る気持ちで
でも由香は自分の結婚を悲しむよりもお腹の子供見に来てるんだなと気丈にふるまって
ほかの男の子供になることこそ復讐だとおもったんだろうなと勝手に解釈した。
そうじゃなきゃ明が可哀そうすぎてw

でも実は明の友達で明の気持ち知ってたくせに
道具だと思われてると思って絶望している由香の気持ちを救いもせず
自分のものにしたんで>>478の言うとおり最低でもやもやし続けてほしい
これで実が明の友達でもないか気持ちを知らなかったんなら
別にそこまで最低だとは思わなかったんだけどw

そしてひとみさんはなにかやらかしてくれると思ったのに
ただ蚊帳の外で見てるだけで物語の核心にも触れてないのがウケたw

480:名無しさん@ピンキー
11/05/12 08:12:26.57 Mj61U9a2
>>477
冒頭の時系列が少し分からなかった
新郎新婦が実と由香だったのか
それを切なく明が見ていたところに
ひとみに書類を押し付けられた

その後はさかのぼった話だったんだ
なんか書類をおしつけられてため息ついているところに
由香がコーヒー入れたように読んでしまっていたよ

481:名無しさん@ピンキー
11/05/12 11:15:05.74 IH3oXocV
由香ちゃん的には自分は道具と思われてるんだって最後まで思ってるっぽいしなあ
最初に犯した時に好きだと言って押し倒しておけばまた違ったろうに
明は一族になんとか認めさせないとって考えで頭一杯だったんだな

>>480
行も一つ空いてるし
ひとみさんが「若社長!」って言ったとこで既に過去ジャマイカ?

482:名無しさん@ピンキー
11/05/12 18:09:50.42 IzQcB24v
是非とも幸せになってるヒロインに明の本心を知らせてほしいと妄想するけれども
明の本当の気持ちを説明され、ヒロインが去ったから明は破滅したんだとか
実は明がヒロインの事好きだと知ってたけど弱みに付け込んだとか聞いても
ラストの由香は明の事後悔するどころか
電話で明の言い分を聞かなかったことといい
実を選んだことを後悔しない強さというか酷薄さがありそうだ…
まぁ好きだったときいたのに電話ごときで諦めてしまう程
意気地無しな明が悪いんだがw

いいネトラレを有難う!いい感じで欝るよ……

483:名無しさん@ピンキー
11/05/13 16:04:34.12 WP/97MjZ
ところで、行為のきっかけや物語全体からすれば愛故でも、物語の雰囲気的はラブコメってのはありだと思う?

484:名無しさん@ピンキー
11/05/13 18:52:33.32 cfnyCWT6
そういう作品過去ログあさったら結構あるから愚問だなw

485:名無しさん@ピンキー
11/05/13 20:12:55.62 0JJl25sq
愛故だったらなんでも良い

486:名無しさん@ピンキー
11/05/13 20:20:24.62 GHJdZSI0
愛故に無理矢理なら純愛っぽくて両思いでも何でもいいw
出来ればエロコメで頼む

487:名無しさん@ピンキー
11/05/13 20:48:24.66 TtIucfCd
明るいのがみたくなるな
皆うまくて主人公が可哀想なのに感情移入しすぎるぜ!

488:名無しさん@ピンキー
11/05/13 21:49:45.69 7GElyFdF
まあ、強姦する位好きな訳だしラブコメみたいなのも見たい
鬱なのも良いが毎度寝取られても困るぞw
主人公が寝取るのも好きだけどさ

寝取られ寝取りも面白いんだけどね

489:名無しさん@ピンキー
11/05/14 00:21:19.41 mcwWBjIn
明るい愛故無理やりを目指しはしたがどうだろう

主とメイド

490:名無しさん@ピンキー
11/05/14 00:21:49.58 mcwWBjIn

「旦那様、寝酒をお持ちしました」
「ありがとう、そこに置いておいてくれ」
トレイに酒を移したデキャンタとグラスをのせて、メイドが顔を出した。主はベッドに上体をもたせ、書類を見ている。
片足はベッドの上に伸ばし、片足はベッドの下に下ろしてある。湯上りなのかパジャマにガウン姿だ。
側の卓にトレイを置いて、礼をして部屋を出ようとしたはずなのに。
「……何故旦那様の上に座らされているのでしょうか」
片手は書類を持ち、それに目を落としながらもう片方の手は、メイドの腰にしっかり回して怪しい動きで撫でている。
それをひきはがそうとしながらも、使用人はあくまで丁寧な口調を崩さない。
「いい加減、私のものになりなさい」
「ですから嫌だと申し上げているでしょう。使用人に手をつけるなど、主の風上にもおけない行為ではありませんか」
気丈な態度を崩さないメイドを、主は書類を卓に置いて見つめる。
そろいの制服なのに、きっちりと着こなしていて文句のつけようがない。それなのに覆う面積が多いのに色気が感じられる。
もう片方の手も腰に回し、腕の中に囲い込む。
「私は気にしない。主の要求に応じるのも使用人の務めではないかな?」
「そんな、理不尽、な、……むぐっ」
それ以上の文句は実力行使で封じられた。

「やっ、嫌です、旦那様」
「脱がされるのが嫌か。自分から脱ぐとは積極的で嬉しいが、男の夢として恥じらいながら脱がされてくれ」
メイドをベッドにうつぶせるように倒して、制服の上のエプロンのリボンを解き、後ろのボタンをはずしていく。
抗う手は両手首をまとめてベッドに押し付けている。
「旦那様なら、いくらでも良家のお嬢様が選べるではありませんか。それに嫌なのは服を脱ぐこと、そのものです」
「着衣でとはまたマニアックだな」
ボタンを外し、背中をあけてそこから手が前へと忍び込む。下着の上から胸を手で覆われ、メイドは硬直する。
「あっ、やめて、ください。嫌、です」
「それこそ嫌だ」
むにむにと胸をもんで中心を押し込むと、ひくりと体が動く。項をきつく吸うと綺麗な痕がついた。
胸から手を抜いてワンピース型の制服のスカートをまくり、太腿を撫で回すと慌てて閉じようとするのを膝を入れて阻止する。
「手首を押さえていては手が足りないな」
主は真面目に言い、ふと己のガウンの紐に目をとめる。しゅるりと紐を抜き去ってそれでメイドの手首を縛る。
メイドは主に体を押さえ込まれながら、それでも逃げようともがいている。
既に髪は乱れて制服は脱げかけ、スカート部分はまくれ上がっている。
涙目で手首の紐を外そうとしている姿を見て、主は目を細める。
「泣き顔も似合うとは思わなかった。沢山泣かせてあげよう」
「―それこそ、嫌です」


491:名無しさん@ピンキー
11/05/14 00:22:21.81 mcwWBjIn

ベッドにうつぶせにされて、上からのしかかられて身動きの取れないメイドは身を捩っているが、主の両手は制服の下、下着の上から
両胸をもんでいる。耳に舌を這わされて背中は主の胸が密着している。
「だんな、さま。お願いです、こんなことはやめて、後生ですから」
頬を赤らめて哀願するメイドの姿は、胸に迫るものがあるが主は意に介さなかった。
「手を縛っていては服が脱がせないな。胸はまた今度見せてもらおうか」
「またなんて、また今度なんて、ある訳ないでしょう。いい加減に、あ……っ」
主の手がお尻に触れ、ひた、と覆われ熱いその感触に思わず声が出てしまっていた。
手は下着を分け入って直接素肌にふれ、お尻をもんでいる。強くもまれて背中に力が入る。手が離れてほっとしたのに下着の中心を
こすられて、その衝撃に身がすくむ。
布越しに執拗に掻かれて、胸は相変わらずもまれているし力がどんどん抜けていく感覚に、メイドは切実に危険を感じる。
「お前はどこが感じるかな? ここかな?」
布をずらして指が中に入り込んで、その生々しい感触に背筋が粟立つ思いがした。
「……や、やだ、やだぁ……」
蕾を撫でられておののくメイドが本気で泣き出したのに、内心うろたえ舌打ちする思いで主は指を中に沈める。
狭い中を丁寧にほぐしていくが、気遣いは届かない。
それでも中は反応するように蜜がこぼれてくる。
「泣かないで、そんな意味で泣かしたくはないんだから」
「だ、って、指が気持ちわるい……」
しゃくりあげるように、言葉を紡ぐメイドをひっくり返し、下着を取り去る。
「じゃあ、指じゃないものをあげよう」
「えんりょ、します」
「まあまあ」
にこりと笑って、猛ったものをあてがい先端を沈める。
「いっ、指より気持ち悪いじゃないですか、やめて、それ以上は、ほんとに―いったああ」



492:名無しさん@ピンキー
11/05/14 00:22:54.78 mcwWBjIn

「使用人の口調とは思えないな。もう使用人としては置いて置けないか」
「そ、んなこと言ったって、ほんとうに痛い、ひいっ、押し込めないでっ」
メイドは痛みに、主も力加減など分からないままのメイドに締め付けられて双方嫌な汗をかいている。
「もう少し、力を抜いて」
「むり、そんなの無理」
「やれやれ、手間のかかる」
主は手首の紐を解いて指を絡め、耳を食んだ。舌先を耳に入れてわざと音を立てる。
「今に下もこれくらいぐちょぐちょと音をさせるようにしてやる」
メイドの注意がそれたタイミングを見計らって、主は腰をすすめて奥まで到達した。
「―ほら、入った」
「いゃ、ひど、い、どして、こんな……」
もはや片言でしかしゃべれないメイドの指に絡めた己の指に力をこめて、主は少し引いてまた中に入る。
途端にメイドが、顔をゆがめる。
「なんでっ動くんですか、じっとしていればまだ耐えられるのに」
「それは、酷というものだ」
主はまたゆるりと動く。メイドはそのたびに、泣き言を投げつけ主を拒む。
ようやく耐えられるかと思ったのに、主の動きはだんだん大きくなってきて、それとともにいつもは冷静な主の顔から落ち着きが
失われていた。眉をひそめて何かに耐えるような表情になっている。
主に手をつけられ、無理に体を繋げられてメイドはその情けなさにますます泣きたい思いになる。
唐突に主が動きをとめ背筋を震わせた。同時に中に入っていた主のものがびくびくと跳ねるような動きになったのに気付いた。

主がしばらくしてからメイドの上からどいた。大きく息をついて、主は実に満足そうに笑った。
「やっと私のものになったな」
震える手でメイドは制服を整える。身動きした途端に足の間に生じた違和感に、顔をしかめる。
主は無遠慮にそこに布をあてがって拭う。その手をメイドははねつけた。
「私は、この屋敷に勤めた時から旦那様のものです。こんなことをして確認なさる必要はありませんでした」
その言葉に主はメイドを抱きしめる。
抱きしめられながらうつむくメイドは、続く主の言葉に顔をあげた。
「お前が好きだから、愛しているから全部欲しかったんだ」
その言葉に別の意味で涙がこぼれそうになったメイドは、しかし。
「だが私はまだ満足していないので、今度は素直に抱かれなさい」
主の反省していない台詞に柳眉を逆立てる。
「一体、何を考えていらっしゃるんですか」
主は、メイドの怒りをさらりとかわした。
「お前のこと」
真っ赤な顔で振り上げたこぶしは宙でとまり、主に握りこまれた。






493:名無しさん@ピンキー
11/05/14 00:46:46.17 VhqkCRbh
GJです、メイド可愛いなw
しかしご主人様ポジティブだな、とりあえず都合良く曲解するのかw

494:名無しさん@ピンキー
11/05/14 01:36:43.82 f0St1gJl
こういうのもいいなあ~!!
GJ!
このスレでこんなほのぼの気分になれるなんて。

495:名無しさん@ピンキー
11/05/14 02:26:42.83 PUB9WZ1r
GJ! 毅然としたメイドがいいな~。
主人の余裕な態度もまたイイ。
続き待ってます!


496:名無しさん@ピンキー
11/05/14 04:24:38.61 4Obizdfp
GJ
縛ったりとかしておいて痛がられたら焦る主人ワロタ
ラスト普通に告白してるしw某ほのぼのレイプ思い出すノリと勢いだ
満更でもないけど真面目なメイドはナイス相方だと思う

497:名無しさん@ピンキー
11/05/15 20:21:04.34 wkOARRbz
行為に及ぶことを了承せざるを得ない状況を作り出すというのはこのスレ的に大丈夫?
例えばセックスしないと治らない病気を装うとか

498:名無しさん@ピンキー
11/05/15 20:23:48.92 WCUtjwAf
>>497
もーまんたい

499:456 ◆hYUCeP81shTk
11/05/17 01:02:03.94 8YTVMCWA
>>477
中世風なまま文章に起こしてみたが
書いてから477と微妙にネタかぶってたすまんorz
そして本家魔王の復活を願って。
保守代わりにこまめに投下したりしなかったり。

悲恋・ヤンデレが嫌いな方は回避してください。


500: ◆hYUCeP81shTk
11/05/17 01:02:48.30 8YTVMCWA

 とある古城を買い取り別荘にしようとしていた女が、塔の中で怪しげな人影を見た。
 初めは幽霊かと思いきやどうやらそうでもないようで、正体は若く美しい青年だった。
 不動産屋が近隣に住んでいる者に、この古城の管理を任せていたのだろう。
 この城の持ち主になるかもしれないのだが、この城のいわくありげな話などあるのかと興味本位で聞いてみた。
 すると、青年は魅力的な笑顔で語りだす。

「昔々、このあたり一帯を治めていた王様がいたんですよ、その彼のお話を一つ」

 物語はよくある―悲しい身分差の物語。
 ある落ちぶれた下級貴族の少女が、働き口を求め幼馴染の青年に頼った。
 幼馴染の青年は伯爵を父に持ち、この国の王の妹の息子で王位継承権をもつ。
 身分の差があれど、隣の領地だからという縁で少女の事をとても大事にしていた。
 そんな彼が最近悩んでいたことは、いとこの王子が教育係を次々と辞めさせていく事。
 少女は小さい頃に患った病の所為で、この国ではめったに見る事の出来ない銀の髪を持っていた。
 その目立つ外見の所為で社交の場に出ることはなく、本を読んでいる方が幸せという変わり者でもあり才女だった。
 もしかしたらそんな少女だったら、上手くいくかもしれないと王子に紹介される事となった。
 青年は王宮で少女にいつでも会えるという……下心もあることは少女には言えなかった。

 ある日王子に紹介された少女は驚いた。
 幼馴染の青年の過去の記憶の姿とうり二つの少年だったからだ。
 そのせいで、昔を思い出し青年が子供になってしまったかのように錯覚する。
 つい王子になれなれしい態度をとってしまった少女は、面接に落ちたのだと思った。

 反対に、王子は見たことのない藤色に光る白銀の髪を持ち、白い肌の華奢な少女の事を、妖精の様だと思っていた。
 そしてどんな質問にも答えてくれる知識量の多さはアルフヘイムの賢人のようにも思えた。
 しかし今までの癇癪持ちの癖で、少女に酷い態度を取ってしまう。
 
 そんな二人は長い年月を掛けて段々と仲良くなっていった。
 お互いに恋心を秘めていると気が付いた時には、王子の隣国の王女との婚姻話が水面下ですすんだ頃だった。

 賢い彼女は悟っていた……これは叶わない、叶ってはいけない恋だと。
 恋に落ちた愚かな男は心の奥底で望んでいた……彼女を手に入れたい、どんなことをしてもと。

 彼女は諦めようと思っていた。
 もしこの気持ちが通じたとしても側室の一人になるだけしかなく。
 それはこれから嫁ぐ王女の体面に泥を塗り、輿入れの妨げになると。
 王子への気持ちを振り切る為に、仕事を辞して、この経験を生かし内密に他家の家庭教師の仕事を探そうとしていた矢先。
 ところが、ある夜。
 宴で酔った王子が気持ちを抑えることが出来ず、彼女の部屋を訪れた。
 自分の婚約の事を聞かされて、いつもは飲まぬ酒を同様の為飲みすぎてしまったのだ。
 酒の勢いで、彼女の体を貪った。
 欲しくて―欲しくてたまらなかったのは、体ではなく心だったのに。

 無理矢理に。好きな人とはいえ酒臭い王子に犯された少女は。
 行為が終わり満足し、深い眠りについた王子を涙目で見つめた後に、部屋を後にした。
 そして誰もいない井戸で、体を清める。
 喜ばしいはずの行為は―初めての女の都合も考えない一方的な行為の為と、さまざまな感情がいり交り、苦痛でしかなかった。
 それを、幼馴染の青年に見られてしまう。
 部屋を訪ねたのに、夜にどこかに行こうとしている幼馴染を心配しての行動。
 青年は、どうしたらいいかわからないと泣き崩れる彼女に、自分のショックを隠し、酔った王子を青年の控室に連れて行った。
 そして彼女に言う。「これは夢だった」のだと。




501: ◆hYUCeP81shTk
11/05/17 01:06:02.75 8YTVMCWA
 次の日青年の部屋で起きた王子は夢うつつで、青年の作り上げた嘘を信じた。
 彼女に会っても態度もいつもと変わりなく冷静で、彼女を強姦した記憶は、ただの自分の都合のいい夢だと、そう思いこむ。

 一方彼女は、顔は冷静を装いながらも絶望に陥っていった。
 早く次の職を探さなければと焦るほど、あの夜の事が忘れられず、王子の事も思いきれない。
 そうだ、あんな事をされても彼女は王子の事が結局好きなのだ。
 閨の中の繰り言だとしても「愛してる」そう囁かれたのは彼女の心を十分にとらえて離さない。
 ずるずるとおそばに居る事を引き延ばしているのではないか、そう思い、尼僧になる決心をつける。
 尼になってしまえば、この思いを払しょくできるのでは。
 そんなささやかな願いは、月の物が二か月遅れ、ちょっとしたきっかけで吐き気が止まらなくなったことで彼女の望みを絶った。
 腹の中に王子の子がいる。
 それは考えてもみず、王子の第一子ということになる。聡い彼女には恐ろしい事だった。
 また彼女を心配し、気にかけていたためにそれを察した幼馴染が、相談に乗る。
 同時に信じられない言葉を吐いた。
 ―結婚しよう、と。
 王の子種は絶やすことは出来ず、堕ろすことは罪深い。
 かといって制御の出来ない市政に紛れてはどのような事になるのか。
 下手な貴族の手に渡り、王位を脅かすことになるよりは、自分の子とすればいいと。
 万一王子にうり二つでも、王子にそっくりで血のつながりのある青年なら誤魔化せると。

 彼女は、渋った。
 このような自分の為に青年の人生を変えていいのかと。
 青年は望んだ、見ているだけで何もできなかった自分が、彼女にできる最高の事。
 青年の長い説得を受け、彼女は彼のよき伴侶になろうと思った。
 子供の未来の為に。青年への恩返しの為に。

 一方王子は彼女との淫らな夢を見てから、思いは日に日に募っていた。
 彼女の態度も、自分を好きでいてくれると……うぬぼれではない切ない目で見つめられるたびに。
 酒の力を借りなくとも、何度手を出しそうになったかは知れない。
 思いを打ち明けよう。そう決心した日、授業の後に、彼女が職を辞すと言った。聞き間違えだと思った。
 よりにもよって、自分とうり二つの従兄と結婚すると。
 そしてすでに従兄の子が宿っていると。

 いつもの自分を見つめる熱のこもった切ない瞳は―。
 そう考えた瞬間に、王子の理性は脆くも崩れ去った。
 混乱する彼女を寝室に連れ込み、無理矢理拘束し、まだこちらの方は教えてもらってなかったなと下種な言葉を吐き、彼女を犯す。
 すでに使用済みなのだから、なんでもない事だろう?と。暴言を吐きながら、同時に従兄に抱かれる彼女を想像し、傷つけ、傷ついていく。
 飽きるほどやりつくし、それでもなお手放さず、監禁する。
 すぐに侍従長や父が苦言を呈すが、聞き入れない。
 下手に遊ぶよりは、妊婦と遊んだ方が安心でしょう……アンタたちは。
 そう狂気じみた言葉を吐くだけで、彼女をスケープゴートのように差し出し、隣国にばれぬように体裁を整えるのは分かっていた。
 もう、手放さない。絶対に。




「そう言って、王子は自分の持っている領地のこの塔に彼女を閉じ込めることにしたんですよ」
「それはまた、物騒な話ね……で、どうなったの?」
「え、ああ、彼女は塔から身を投げて自殺し……」
「またまた悲惨な……ってそっちも気になるけど」
「はい?」
「その幼馴染とやらはどうしたの、純愛!って感じで可哀そうなのに。
 だってずっと見てたんでしょ?その彼女の事」
「では、続きを話すとしますか。おや?もうこんな時間だ、また会った時にお話ししますよ」
「え、ちょっと!」
「ではまた今度」

続く

502:名無しさん@ピンキー
11/05/17 01:09:30.60 G8o3r9x2
GJ
淡々とした語り口が好みです

503:名無しさん@ピンキー
11/05/17 16:38:51.90 mSy6VdKF
GJです
続き気になる

504:名無しさん@ピンキー
11/05/18 03:17:30.28 O4N7dmAA
時にここの同士達はアラ・カチューというキルギスという国の風習をご存知でしょうか?
分かりやすく一言で言うならば誘拐婚でしてね。
詳しい解説を読んでいたら割とこのスレ向きのような気がするのですが・・・いかがでしょうか?


505:名無しさん@ピンキー
11/05/18 15:55:07.26 Pwsn/A/I
>>504
>誘拐婚

実にこのスレ向き
てか本邦も含め割りと世界各地に似たような風習があるな

506:名無しさん@ピンキー
11/05/18 17:59:45.45 M/pVPYYH
というか中世物とかは実際にしてなくても
噂立てられたらアウト!みたいな感じだよね
それで男が好きな女なら悪評を無くすために~とかで
無理矢理結婚にもっていくっていうの多い気がするw
(捨てられて女涙目なパターンもあるけど)

昔の昼ドラでも
酔わせて裸にしてやってないけどやったとかいわれて
他に好きな人がいたけど結婚しなきゃならなくなったとかいう泥沼話みたなぁ
今じゃそんな事ないけど貞操観念が厳しい風潮ってこのスレ向きだよね

507:名無しさん@ピンキー
11/05/18 20:11:15.17 EKYMzpLc
誘拐婚は、女や家畜を融通し合う風習があるとこで発達しやすいと思う
下手したら子供さえ産んだら帰って良し、みたいな話まであるらしいしw
穏便に済むとこだと時々交流があって、そんな事態は想定内だったりしそう

問題にしやすいのは、祭の時だけ寄り集まって相手を決めるようなケースかな…
関係ない部族が紛れ込んでたりして。これは日本でも天狗や山窩ネタでいけそう
交流のある部族間でも、詫びの一頭も無いとそこから大きな諍いに発展したり…

愛故というか、その後の周りの対応が楽しそうだと思ってしまうw

508:名無しさん@ピンキー
11/05/19 01:01:36.77 lNYhb9cV
誘拐婚調べてみたが半端ないなこれ・・・・
キルギスでは普通に行われてるってのが信じられない。

しかし、普通に好きな女がいる男にとってもヤバイ風習だよなこれ。
いつ他の男に攫われて既成事実作られて結婚されるかわかんないんだもんな。

彼女に自分は誘拐しないって約束して恋人になって、プロポーズして断られた後、
結局恋人に誘拐婚された。激怒する彼女に、
他の男が誘拐の計画をしてるっていう噂を聞いて、仕方なかったんだ!!
て言われたって話があった。
もうあっちでは普通の習慣になっちゃって、結局幸せになってるカップルもいたけど・・・

動画とか見ると女の子が本気で泣いてて、かわいそうだ。

509:名無しさん@ピンキー
11/05/19 01:08:20.41 y3qBDRiZ
まあマジな話としては一定のルールとか暗黙の了解はあるはずだから。
ネットにある動画だから信じるよ、てのもアレだし。

じゃなきゃ浚って来た女に殺されるとか下手すりゃ部族間闘争とか
リスク高過ぎてどこかで廃れるし。
それなら近所の家から普通にもらって来る方が早いし楽っていうね。

510:名無しさん@ピンキー
11/05/19 01:26:57.53 d+fE09eL
おっとい嫁じょ

511:名無しさん@ピンキー
11/05/19 07:12:19.15 tUgl5GkY
キルギスじゃない話だけど、全部合意済みなんだけど婚姻にドラマを演出するために
新郎側の男どもが攫う→新婦側親族が応戦→新婦側女性が仲裁にはいり婚姻成立、って
手順を踏むって話は聞いたことがあるよ。
「攫ってでも手に入れたかったほど価値のある女」ってことになるんだってさ。
色々だね。

512:名無しさん@ピンキー
11/05/20 01:18:36.83 chQSH7eB
キルギスでは特に貞操観念が高くて仮に相手を殺してもどこにも行けないから、泣く泣く受け入れているという話でしたね。
何故かというとその男の家でどんな事情があっても一晩過ごしてしまった場合、処女を失ったとみなされてしまうから。
そうなってしまうと公然と罵詈中傷されたり、
近所や会社でも評判が著しく落ちてその男以外との結婚が難しくなってしまうため、受け入れるしかないという。
親も嫁入りするようにわざわざ説得しに来るほどそれは酷いそうです。
出会ったばかりの相手でも浚って嫁にするという風習が、今でも根強く残っているのだから当然といえば当然ですが。
嫁を探して若い男がうろついている・・・なんてのも動画にはありましたね。
酷い場合だと道を聞いただけなのに一目惚れされて浚われてしまったというケースも。
男の嫁にするために友人や知人などが協力して、女性の周りをうろついたり調べていたり、
自称花婿達が家に押しかけてきたり。
一応犯罪行為だと国に認められては居ますが、実際に通報する人は居なくて事実上の無法地帯だとか。
しかし、この場合外人などでも浚われたりは・・・・・・しないでしょうね。
流石に同じ国の女性だけでしょうし。
最も条件さえ揃っていれば偉い人の娘でも平気で浚ってしまうわけですが。

513:名無しさん@ピンキー
11/05/20 01:54:35.78 s+lqpVI1
「拐われる娘以外」との社会的な暗黙の了解、慣習に違反していないなら認められるんだろうね
基本的に最低限の身元は調べてだろう

514:名無しさん@ピンキー
11/05/21 01:04:15.50 sIF0VHya
嫁を探しに来た男に見始められて攫われて結婚させられる……か。
よくオリジナル・二次問わず陵辱系の話にはモンスターの嫁にさせられるというシチュがありますが、
それの成人男性版というのは中々見ない気もします。
一目惚れされて攫われる若い女というのはこのスレ的には中々使えそうな設定ですね。
もしくは一目惚れされて兎に角結婚を迫られたりとかかなぁ。
いつの間にか自分を知っててストーカー気味に結婚を迫ってくる男と、
それに怯える若い女と考えると色々想像が膨らみます。

515:名無しさん@ピンキー
11/05/21 10:20:34.78 qVnhsxsF
結婚は社会的な契約関係なんだから、反社会的な行為(現代日本なら相手の
同意がない場合、近世欧州なら貴賎結婚とか)はそもそも習慣化せんわな。
事実関係はどうあれ、懲罰的なリスクは避けられないんだし。

だからこそ人間同士の場合はそこがハードルになったり、どうクリアするかに
知恵を絞ったりする話になったりするわけだが。

516:名無しさん@ピンキー
11/05/22 00:55:03.63 PYtAYaYX
公爵家の者です。

悩んだのですが、続き投下します。
属性は若妻と従者、
11レス消費予定。


517:公爵家の秘密
11/05/22 00:56:13.40 PYtAYaYX
1

 冷たい唇が掠めるように触れた。同時に、祝福の鐘が鳴る。
「―これで、お二人は正式に夫婦となられました」
 聖堂に歓声が沸いた。
 鳴り止まぬ鼓動を抑えつつ、瞼を開ける。
 紺碧の中に映る自分が見えた。離れて行く端正な顔にぼんやりと見惚れてしまう。
 ―何て素敵な人なのかしら。
 出会った瞬間に恋をした。美しい黄金色の髪に、透き通った碧眼。洗練された物腰、
優しい笑顔の少年は、まるで物語から抜け出た王子様だった。この人が自分の婚約者だ
という幸運に、どれほど感謝したかしれない。
(ジュード、私は幸せよ)
 拍手の嵐の中、長年の従者であり兄とも慕うジュードを視界の端に見つけ、微笑む。
確かに目が合ったのに、そらされた。
(もう、恥ずかしがり屋さんね)
 自然と笑みが零れる。
 こうしてユーフェミア・ハートネットはアレクシス・アディンセルの妻となった―。
 
 その日、城下町は祭りに沸いた。何しろ、領主の跡取り息子の結婚式だ。無礼講で飲めや
歌えと騒ぐことが許される。もちろん、当のアスター公爵家も賑やかだった。親族を招いて
宴会が続いたが、途中、侍女に促されて寝室へと上がる。
 湯浴みをし、香油を塗られ、大人びた新品のナイト・ドレスに袖を通す。
 ユーフェミアの胸は高鳴った。
(とうとう、アレクシスさまと―)
 どういうことをするのか、おぼろげながらには分かっている。新婚初夜、夫婦となった
男女は睦み合うのだ。それは最初痛いらしい―だが、それを我慢しさえすれば、今までに
味わったことのない幸福がやってくるのだという。
(……痛いのは、いや。でも、こればかりは……どうしようもない、のよね)
「エレーナ、ジュードはどこ?」
 ふいに不安になったユーフェミアは、一番親しい侍女に尋ねた。
 エレーナは何故か苦笑し、「さあ、お酒でも飲んでいるのでしょう」と答えた。
「会いたいわ」
「なりません、ユフィさま。今宵は特別な夜なのですから。花嫁の寝室に招いて良い男性は
おひとりだけです」
「だって……披露宴ですら見かけなかったの。私の花嫁姿の感想がほしいわ」
「……もちろん、お綺麗でしたよ。何度も私そう言ったではありませんか」
「ジュードの口から聞きたいの。兄のようなものだから」
「いけません。ユフィさまのお気持ちは嬉しいのですが、使用人相手にそのような……」
「なぜ? お義姉さまはメイドだったけれど、身分の差を乗り越えてお義父様とご結婚された
でしょう?」
「それは……」
 エレーナは口籠った。
(お義姉さまの話をすると、なぜこうも歯切れが悪くなるのかしら。素敵なお話なのに)
 もとは平民であり、父である伯爵が養女にした義姉・ステラは、アレクシスの父・アスター
公爵の妻になった。というよりも、公爵が彼女を妻にしたいがために父の養女にしたのだ。
そのため、ステラは義姉であり、義母とも言える。
「ね。それに比べれば何でもないことよ。……今日は仕方ないとしても、絶対感想を聞かせる
ように言っておいてちょうだい」
「……はい」
 エレーナは渋々頷いた。
 その間にも初夜の準備は整っていく。薄い化粧に、花を編み込んだ髪型、繊細な白のレースを
使ったナイト・ドレスは、まるでもうひとつの花嫁衣装のようだった。



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