愛するが故に無理やり…… Part7at EROPARO
愛するが故に無理やり…… Part7 - 暇つぶし2ch299:神竜の謳 Ch.11
11/03/27 15:19:41.41 tcYL7P6H
「こっ、この根性なし!こら、どこを触……」
 胸元を手で押さえられ、反射的に振り向いたケイトの唇は、まるで狙い計られていたかのように塞がれた。
即座に頭部を押さえられ、ケイトはそれを振り解けぬまま草むらへと身体を倒された。
 反論を封じる口付けは容易には解かれず、撓う身体の線をなぞるように手が下方へと這う。衣服の中に
指が忍び、肌を直に触れられる。人肌の感触に震え上がり、ケイトは堪らず蹴り飛ばしてやろうと
意気込むが、彼は瞬時にそれを察し、意外にもあっさりと拘束を解いた。
 酸素を求めて呼吸を乱すケイトを満足気に見下ろし、彼は勝ち誇った様子で笑みを浮かべている。
「わかったよ。その条件呑んでやる。ただし無期限でな」
「おま……覚えてろ……」
 ロイドに異様に高い理想像を吹き込むか、或いは如何にライラが非常識な人間であるかを説いても良い。
軽率な行動を後悔させる術はいくらでもある。
 たとえ泣き付かれても絶対に妥協しないことを心に誓い、ケイトは固めた拳を地へと落とした。


 甚大な被害を受けたラスニールの復興も、ライラの悲願成就も、双方共に相当な時間を要する。
 神竜の力によるものか、頻繁に出現していた魔物は全く姿を現さなくなっていた。ティトが気に掛けずとも、
種族間の争いは嘘のようになくなったのだ。
 しかし、彼らは決してその存在を消したわけではない。神竜の棲む森は確かに存在する。急成長を
促された木々は天高くそびえ立ち、数多の生命を抱え、侵入者を拒むようにその入口を閉ざしている。
 森は今も成長を続け、より堅固な不可侵領域を築き続けている。それ故その森は人々に畏れられ、
いつしか誰一人として近付かなくなった。

 ラスニールが落ち着きを取り戻した後も、世界は常に目に見えぬ不可思議な気配に包まれていた。
 彼らの存在が記憶から薄れて来ようとも、ふと空を見上げる度に、ケイトもティトも在りし日の
断罪の旋律を思い出す。残された深い爪痕と共に、それは永遠に二人の記憶から消えることはないだろう。

 不滅の空は未来永劫変わりなく、この世の全てを繋ぎ止める。
 今日もまた、全てを統べる天空に、命の系譜が響き渡る─


300:神竜の謳 Ch.11
11/03/27 15:19:51.45 tcYL7P6H
以上で完結です。
長らくこの場をお貸し頂き、ありがとうございました。

301:名無しさん@ピンキー
11/03/27 16:13:55.11 HsAjKke+
寂しい気もするけど、完結おめ!
超乙でした。

302:名無しさん@ピンキー
11/03/27 21:42:50.93 rk+R05NV
神竜GJでした!!ティトとセラたんが幸せになってくれて良かったです

303:名無しさん@ピンキー
11/03/28 14:47:34.81 IJ440qeD
やっと終わったか

304:名無しさん@ピンキー
11/03/28 18:50:13.54 dI16oBMN
>>300
GJ
セラたん良かった

305:名無しさん@ピンキー
11/03/28 18:51:08.24 fXOoxTgW
>>300
今までお疲れ様完結おめでとう!
ティトとセラタソがどうなるか気になるw
それにしてもロイド何故騎士団なのかと思ったらw
フラグ回収率半端ないな…青年カワイソス
またどこかで読めること期待してる

306:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:03:47.25 UFNi3dDm
視線の続きを投下する

今回は翌朝設定の亀展開

307:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:04:04.06 UFNi3dDm

背中の温かさに目が覚めるとリインは後ろから抱き込まれていた。ベッドサイドの時計では朝の早い時間だ。
背後から腕を回した男の規則正しい寝息を聞いて、昨夜からのことを思い返す。
結局また抱かれて、最後は気絶するように眠ってしまったらしかった。外が薄明るくなっていたので夜明け近かったのだろう。
眠る時まで離さない腕と自分をいいようにした手を見ながら、リインは体と同じく心も重かった。
ストーカーといってもよい執拗な視線をよこした男。そんな男に……
自分がまんまと誘惑されて魂を差し出してしまった戯曲の間抜けな人間に思える。さしずめレナードは悪魔か?
起こさないようにそっと抜け出る。途端大腿を伝う液体の感触に不快な思いを生じる。
それを拭った後ガウンを羽織って浴室へと行こうとした足を、控えめなノックが止めた。
ドアガードをしたまま細めにドアを開ける。そこにはホテルの従業員が立っていた。
「ランドリーサービスです。服が仕上がりましたのでお持ちしました」
レナードが足止めのために出したリインの服だ。ドアを開けて受け取り浴室に持って入る。
体はざっと拭かれているようだが、シャワーを浴びて今度こそ服を身に着ける。
鏡に映った顔は一晩で人相が変わってしまったような気がした。色々なことがありすぎた。―悪夢のような一夜だった。
今は自室に帰って一人になりたい。一人きりになりたい。
バッグを取りに部屋に戻るとレナードが服を身に着けてソファに座っていた。端正な姿だがどこか気だるげにも見える。
「おはよう。朝食を食べるか?」
「要りません、失礼します」
きつい口調になるリインとは裏腹に、レナードはどこまでも余裕だ。自分で用意したと思われるコーヒーを飲みながらゆったりと笑う。
「水臭いな、他人行儀で。夜通し肌を合わせたというのに」
「―よくも、そんな言い方ができますね」
だましていた上に無理やりだったのに。そんなリインの抗議をさらりとかわす。
「事実だろう。私は君を抱いた。君は私に抱かれた。違うか?」
違わない。だが、本意ではない。
リインは何も言わずに部屋を出た。エレベーターに乗りこみロビー階を押す。閉まりかけたそこにレナードがするりと入り込む。
とっさに後ずさるリインだったが、レナードは動くことはせずエレベーターは下降してロビー階で開いた。
エントランスを目指すリインにレナードは落ち着いた声をよこす。
「チェックアウトしたら送ろう」
「必要ありません、一人で帰れます」
本部や官舎からそう遠くはないので歩いても帰れる。
「いいから待っていなさい」
ロビーで声は抑えていたものの押し問答になっていた二人に、声がかかった。


308:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:04:28.29 UFNi3dDm

「おや、こんな所でお会いするとは」
レナードは即座に穏やかな表情を浮かべて声をかけてきた人物に対応する。リインがよく知っていた雰囲気だ。
本心を見せずどこまでも穏やかな軍幹部としての姿。権謀術数うずまく中を泳いでゆくための姿なのだろう。
「お早うございます。奇遇ですね」
リインは少し離れて二人のやり取りをながめた。この時にさっさと逃げ出しておくべきだった。
声をかけてきたのはリインも顔は知っている将官か佐官だった。
その人物はレナードとの会話が一段落した時、リインに目線を移す。敬礼しそうになり場所を思い出して礼をする。
「君は、確か……」
思い出そうとするかのように小首をかしげる相手にレナードが助け舟を出す。
「今年入隊した少尉です」
それで合点がいったのか、ああ、という顔になる。
「そういえば本部で見かけたような。……これは隅に置けませんな」
午前中のホテルで二人連れ、で察したようだ。レナードは穏やかな口調で受け流す。
「いや、年甲斐もなく恥ずかしいところを見られてしまいました」
「定例会議でも柔軟で斬新な発想をお持ちと感服しておりましたが、なるほど、いや羨ましい」
レナードとの年の差から年若い女と付き合っているので柔軟で斬新、言い換えれば若い発想ができるのかと皮肉めいた言い方だ。
思い切り否定したいリインだったが、それをするのは僭越かとはばかられた。
「そう言われると面映いですな。では『私達』はこれで。さあ、行こうか」
あっさりと言い、結果的に肯定するような状況に持っていったレナードはリインの背に手を当ててエントランスの方へと歩いた。
陰になる柱のところまで行ってリインは背中の手から体をはがす。
レナードは毛を逆立てた猫のようなリインの様子を見て笑いを含んだ声音になる。
「公表する手間が省けた」
頬に血の気が差すのと同時にリインはレナードの言うとおりとも思う。さっきのが将官であれ佐官であれ、きっと私的な会話などで
笑いを含んだ格好の話題にすることだろう。
レナードが一緒にロビーに来たのも計算の上だったのだろうか。ありえない話ではない。
これ以上事態をややこしくしたくない。リインはきっぱりと言い切る。
「今度こそ帰ります。送りも見送りもいりません。もう私に構わないで下さい」
だが、悪夢は夜のみならず訪れるものらしい。いや、悪魔と友達なのか。
「……リイン?」
背後から聞こえる聞き覚えのある声にゆっくりと振り向く。リインの視線の先には友人達の姿があった。
「どうして、ここに?」
「ここのランチバイキングに来たんだけど、ちょっと時間が早いからラウンジでお茶でもしようと。あの、リインにもメールを
したんだけど届いてない?」
メール……携帯は昨夜レナードとバーに行くときにマナーモードにしてバッグに入れたまま。
昨夜のことというのに、随分と前のような錯覚を覚える。それほどある意味人生を変えてしまった一夜だった。
「リインは、あの……」
背後にいるレナードを友人達は当然知っている。一緒に食事に行っていると話もしていた。
付き合っていると噂されているのを教えてくれたのも彼女達だ。
この状況からおのずと導かれる結論は……
ゆっくりと、いくぶんぎくしゃくと振り返ったリインの目の前でレナードの唇が弧を描く。
―公表する手間が省けた―さっきレナードの言った言葉が頭の中でこだまする。
レナードの笑みがいっそう深くなる。
とても優しいのにどこかに突き落とすような、引きずり込むような笑み。自分に微笑むのは悪魔のようなレナードだけ、なのか。
そこがリインの限界だった。気が遠くなり、意識が闇にのまれてゆく。


309:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:04:53.48 8QM1sxyy

友人達からレナードに目を移したリインは少し後ずさる動きを見せてその場にくずおれた。
「リイン!」
「おっと」
友人達の悲鳴に近い声が上がる中、レナードはすばやく動いて頭を打ち付けるのをとどめてリインを抱き上げた。
騒がないようにとリインの友人を制する。
「大事無い。疲れが出たんだろう。―しかしこれではもう一泊する必要があるか」
レナードの言葉をリインに近寄っていた友人達が聞きとがめる。
急いでやってきたホテルマンにレナードは依頼をする。無論側で聞いているリインの友人達にも会話は筒抜けだ。
「チェックアウトをするつもりだったが、このような次第なので延泊したい。今までの部屋は掃除をしてもらう必要があるので
空いている部屋があればそちらに入りたいのだが。至急調べて手配してくれればありがたい」
客室の状況を確認するべくホテルマンが事務室に消えたのを見ながら、レナードはリインの友人達に向き直る。
「君達、今日のことはあまり騒がないでやってくれないか? 見ての通り私と彼女は色々隔てが大きいので噂になると彼女が
気の毒だ。必要以上に目立ちたくないのでね」
真摯な口調のレナードに緊張していた友人達は、それを解いて請合う。分かっています、と。
だが集団が、特に若い女性達が秘密を守るのはとても難しいのを知っているレナードは内心では事の成り行きを予想する。
友人の一人が心配そうな顔でリインを見やる。
「大丈夫でしょうか? このところずっと視線を感じるって参っていたようでしたから」
レナードはああ、と頷く。
「その件なら承知している。今後彼女に危害を加える心配はない」
レナードの言葉にほっとした顔を見せる。いつかリインが話していた親友とやらが彼女なのだろうと見当をつける。
「ああ、それなら良かったです。あの……リインのこと、よろしくお願いします。とてもいい子なんです」
腕の中のリインに目をやったレナードは友人を見つめる。かすかに友人の顔が赤らむ。
「君達のような友人がいて、彼女は幸せものだな」
そこに先程のホテルマンが戻ってきた。どうやら部屋が確保できたらしい。新たなルームナンバーを告げられ、レナードは
リインの友人達に声をかける。
「私達はこれで失礼する。ああ、君達のランチ代を私に払わせてくれ。ルームナンバーと私の名を出せば決済できるようにしておく。
バイキングもいいが、ホテル内の好きなところで食べてくれてかまわない。ここのメインダイニングのランチは絶品だと思うが」
側にいるホテルマンが頷く。友人達もこの申し出に目が輝いている。
「いいんですか? ここのメインダイニングってすごく有名なお店ですよね」
その分値段も張るので有名だがレナードにとってそれは些細なことにすぎない。
「彼女の友人に心配をかけてしまったんだ。これくらいはさせて欲しい」
レナードの提案を受け入れて礼を言う友人達に見送られて、ホテルマンに先導されたレナードがエレベーターに消える。
残った彼女達の一人がほうっとため息をついた。
「格好いい、大人って感じ」
「リインとはちょっと年は離れているけどお似合いよね」
皆でうんうんと頷きあう。
「延泊って言っていたけど、それって昨日二人で泊まったってことだよね」
刺激の強い話題に顔を赤らめつつ、メインダイニングに行くべく彼女達はエレベーターのボタンを押した。


310:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:05:14.26 8QM1sxyy

案内された部屋に入るとホテルマンが毛布をめくってくれた。そこにリインは静かにおろされた。
「なにかございましたらフロントにご連絡ください。ホテルドクターに連絡をとります」
ホテルマンの心遣いに礼を言って、二人きりになる。顔色はやや悪いが呼吸や脈拍は安定しているのでさほど心配はしていない。
とりあえずルームサービスで食事をして、端末を使ってここでできる仕事をこなす。
その合間に予想した、いや予想以上の結果にレナードは思い出し笑いをする。
本部にほど近いホテルだ、軍関係者には会うだろうと予想していたが実に理想的な顔ぶれだった。
自分の知り合いの佐官に、彼女の友人達。これで話が、噂が広がる。
リインは軍内で既に有名なので、異性との話題は非常な関心をもって迎えられるだろう。
食事に行っていることや、ごくまれに本部内の隠れ場所のようなところで二人でいたことなども噂になっていたようなので、今回の
ことは当然の成り行きとして認識されるだろう。
これで第一段階。
次の問題点として、必ずリインが離れようとするはずだ。それをどう封じるか。
枷は多いほうがいい。だが多すぎても興をそぐ。種類と強度は吟味しないと。
これまでのリインを取り巻く環境と、今日のできごとから満足のいくシミュレーションができたのだろう、レナードは一つ頷く。
「大嫌い、か」
リインの寝顔を見ながら投げつけられた言葉を反芻する。
当然だろう。視線というストーカーまがいの行為をしてきた。リインの危機を救ったのも、休憩場所で出会ったのも偶然ではあったが
即座にその状況を組み込んで利用したのは確かだ。
その一方で相談にのり、リインを安心させ距離を縮めてきたのだから。
両者が同一人物と悟った時のリインの表情。
―驚愕と混乱と絶望、そして嫌悪、憎悪。実に多彩な感情を見せてくれた。
頭をなでて頬に手を当てる。やわらかく上質な感触を伝えてくる。肌も感度も、中も申し分ない。
体の相性は悪くはなさそうだ。素質は十分で久しぶりの行為という点を差し引いても、レナードは既に溺れそうになっている。
開発しがいのある極上の素材に胸が躍る。そこにあの気概だ。
舌を噛まれた時などぞくぞくした。美しく、抗う、誇り高い存在をどう自分好みにしていこうか、とその過程も楽しみになっている。
「……気の毒だがとことん付き合ってもらう」
とりあえずは手に入れたリインに囁く。自分なりの愛情をこめた眼差しで。



311:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:05:38.98 8QM1sxyy

リインは目をあけてしばらくの間ぼんやりとする。ここは? 確か、ロビーで友人達と……
視線を横に向けデスクで何かをしているレナードの姿を認めた途端、跳ね起きる。
「急に動くとまた倒れる。安静にしていなさい。気分はどうだ? 何か食べるか?」
「何故、また部屋に」
外の景色はさっきまでの部屋とは違うように見える。
とりあえず靴だけ脱がされた形で、服は脱がされた形跡がないのにほっとしつつ、レナードを警戒する。
「君はロビーで倒れたんだ。寝かせる必要があったので空いている部屋に入った次第だ」
思い出してリインは青ざめる。レナードの知り合いの軍人と自分の友人達に目撃されたことを。そして倒れて、部屋へ。
「これで公認、といったところか」
レナードの声に一気に体が熱くなる。公認など。
「冗談ではありません。絶対にごめんです。誰が、あなたと―」
レナードはベッドに近づき、知らず身を強張らせたリインにかがみこんで耳元に口をよせる。
内緒話をするように低くおさえた声にはかすかな笑いが含まれている。何を言い出すのかとリインは緊張する。
「冗談ではない、私は本気だ。―君の友人から君をよろしく、と頼まれたぞ」
「なん……ですって?」
顎に手をかけられて上向かされる。顔を覗き込むレナードは楽しそうだ。おおげさに頷いて続ける。
「君はとてもいい子、だそうだ。同性の友人がいるのはいいことだ。君は友人に恵まれているようだな。大事にするがいい。
まあ、とにかく何か食べなさい。もう昼に近い時間だ」
混乱しながらもリインはレナードの言葉を拒否する。このままここにいると、逃げ出せなくなりそうだった。
「いりません。離してください、閣下」
レナードが表情を消し冷たい瞳がリインを射抜く。威圧感が並ではない。
「次にいつ食べられるかは軍人であれば分からない時がある。わがままで体調を崩すなどもってのほかだ。
これ以上拒否するなら、口をこじ開けてでも食べさせる」
レナードが怒った姿は初めてで、静かな口調なのにとてつもなく恐ろしい。
すくんだリインに気付いたレナードが雰囲気を和らげる。
「消化のよいものを頼もう。好き嫌いは?」
「―ありません」



312:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:06:02.77 8QM1sxyy

再び強引に寝かしつけられリインはルームサービスが来る間、仕事をするレナードの後姿を眺めていた。
有能で人格者だというのがレナードの評判だ。その人格が著しく歪んでいるのを不幸にして知ってしまった。
だが女性にもてるという噂を聞いていたリインにはレナードの行動が解せなかった。
女性に不自由はしないはず。なら何故自分にストーカーまがいの行為をしてまで近づいたのか。
思考はドアをノックする音で霧散した。
ワゴンを変形させてできたテーブルにはフルーツとヨーグルト、パンケーキ、スープにジュース、コーヒーと盛りだくさんだ。
レナードは先に済ませたから、とフルーツを軽くつまんでコーヒーを飲んでいる。
食欲はないながらも何とか食べていく。味はさすがだったがこの状況でなければもっと美味しかっただろう。

ワゴンを室外に出したレナードが戻ってくる。リインはベッドの乱れを直して、出て行く準備を整えた。
ドア側の廊下にレナードが立っている、いや立ちふさがっている。
あれを突破して、ドアを出て、ホテルから去る。成功の可能性は笑えるほどに低いように思える。
レナードが近づいても窓側にしか逃げられないのが情けない。
「顔色がよくなった。成り行きだがもう一泊することになったんだ。ゆっくりしよう」
首を横に振り明確に拒否を伝えてもレナードには通じない。後ろに追い詰められる。
「随分嫌われたものだ。昨夜は私に応えてくれたのに。痛がって泣いて私にすがったところなど可愛かったぞ」
思い出してリインは顔が赤くなるのを感じた。自分の初めて、はこの男に……
硬い表情のままドアへと行こうとしたリインはレナードにとどめられる。
「官舎に戻ります。もう、私に構わないで下さい」
「それは無理だ。これからも関わりたいと思っている。逃げようと思うなと言ったはずだが」
手首をとられリインはまっすぐにレナードをにらむ。自分の意思は無視され結果が性行為とは到底―
「私はあなたが嫌いです、絶対に許せません。他の女性と付き合ってください」
「私は君がいいし、他の女性には興味はわかない。厄介なのに目をつけられたと思って諦めてくれ」
言われている内容はひどいが声は低く穏やかでリインの深いところを揺さぶる。



313:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:06:29.18 UFNi3dDm

話はそれまでとばかりにレナードはリインを反転させると出窓に向けて押し付け、後からスカートをたくし上げる。
「嫌、やめて、もうこんなことは嫌」
抗うリインの背後からのしかかる。手は前に回り下着の上から指を押しつける。
「大人しく、この部屋は低層階だ。あまり聞き分けがないと、ここで裸に剥くぞ」
ホテルを出入りする人の顔が識別できそうな高さだ。こちらも見られてしまう。レナードの脅しに動きが止まる。
「そう、いい子だ。私も君にそんなひどいことはしたくないのでね」
強引に割りいれられた膝でできたスペースを逃さず、下着の上からあやしく動く手指にリインは出窓に手をつく。
「―許さない」
「諦めろ」
リインの怨嗟の声をあっさりといなしてレナードはなおも指を動かす。
くすぐったい感覚が次第に疼くようなものに変わる。歯を食いしばって耐えた、つもりだった。
手が下着の中に入り込む。くちゅり、と水音がした。
その音にリインは唇を震わせた。嫌なのにどうして。体液のすべりを利用してレナードの指が陰核を指の腹でこする。
指ではじかれ身内を走るなにかにリインは背をそらした。
「やはり、君は感度がいい。全く面白い」
あくまでも興味の対象としての捉えられ方に、リインは絶対に反応を示すまいと誓う。
昨夜さんざんにレナードを受け入れた膣は指一本ならさしたる抵抗も見せなくなったようだ。だが嫌でも意識してしまうリインには
その一本がとてつもない存在感を示している。中を探るように押し、引っかき抜き差しされる。
中のある一点を掠めたときにリインはこれまでにない感覚を覚えた。それが何かよく分からないまま指がゆきすぎてほっとする。
親指で擦られている陰核の方が今はそこに血液が集まって脈打っている感じでリインの注意を引いている。
レナードは服の下から手を入れてやわやわと胸をもんでいる。服は乱されていない、それだけにその下でのレナードの振る舞いが
リインの羞恥を煽っている。
「……あ、」
吐き出す息をともに出た音にレナードがふ、と笑った気配がした。
「もっと声を聞かせてくれ。感じているのだろう?」
「ち、がう」
リインはかぶりを振る。一晩抱かれただけではしたなく反応するのは自分が許せなかった。こんな男に感じるはずなど。
窓にすがりついた手先に力をこめて自分を保とうとした。



314:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:06:57.47 UFNi3dDm

あくまでも頑ななリインにレナードは攻める手をやめない。指を増やして中を広げる。少し曲げた指先でリインの弱いところを
探していく。まだ反応は弱いながらもそこを刺激すると襞が締め付けてくる部位を探り当てた。
早くここだけでイかせてみたい。どれほど乱れることだろう、その時を想像するだけでたまらない。
陰核を小刻みに震わせる。
「や、やめ、て」
拒否するリインの語尾が弱くなっている、その様子がひどく愛おしい。
「あまり煽らないでくれ、我慢がきかなくなる」
リインの耳にレナードがベルトを緩める音がした。下着を片足から抜かれ、背後からおさえる力が増して腰をつかまれたと思うと
硬く、熱いものが入り込んできた。
「うう、くぅ……や、いや、」
ぐ、と質量のあるそれはリインの中を分け入り押し広げながら奥まで到達する。みっしりとリインの中に居座っている。
前に逃げ場のないリインにレナードが背後からついてくるそれは子宮口を刺激する。引かれるときには臓器が引きずり出されるような
気がしてリインは中を荒れ狂うような嵐に耐えた。
レナードも興奮していた。着衣のままリインを立たせて背後から貫く。視覚的にも非常に刺激的だ。
ベッドとはちがってスプリングに力が逃げない分、リインにもレナードにも与える刺激が大きい。陰茎に亀頭に当たる襞や中の形が
変わってひどく、よい。腰をつかって快楽を追う。
声は出さないながらリインの背がしなった。その途端当たる角度が変わって先端がきゅうっと締めつけられた。
「っ、うっ」
何とか衝動をやりすごしまたリインの中に自分を刻む。すりあげ、こね回し、奥を突く。
リインの膣がレナードの動きに応じて襞が絡むようになった時にレナードは精をはきだした。緩やかに蠕動し収縮するそれはひどく
気持ちよく優しく包まれているように思えた。
リインは出窓に上体を預け、そのままずるずると床に座り込む。
汗に光り紅潮した顔はひどく美しかった。いまだ落ち着かない息も耳に心地よい。
仕打ちに耐え切れなかったのか悔し涙を流している。力が入らないくせに抱きしめると抗う。
本性を晒さずに抱いていれば決して見せてはくれなかっただろう反応に、倒錯的な愉悦を感じるのだからどうしようもないと
レナードは自分に笑えてくる。
腕の中でもがくリインを決して手放さない。
まだ声も聞かせてくれない気丈なリインを早く啼かせてみたい。淫らな欲望にレナードはリインを抱きしめる手に力をこめた。


以上続く予定


315:名無しさん@ピンキー
11/03/30 00:58:59.32 ofW75mHs
GJ!!!
一瞬、仕官も友人も、ホテルで会うのを仕組んでたのかと思ったw
堕ちるのが先か、懐妊が先か、楽しみにしてます。

316:名無しさん@ピンキー
11/03/30 02:04:32.18 10zoZ9AS
これが噂のデレツンですか?
GJ!!
友人の言うとおり、
いや違う意味でも何故かお似合いに感じるよこの二人。

デレツンデレになりますように・・・

317:名無しさん@ピンキー
11/03/30 13:51:04.19 AWOUqSv+
GJです
レナードが怖すぎワロタw

318:名無しさん@ピンキー
11/03/30 23:18:23.01 Q66hwT31
GJ!
レナードさん策士すぎパネェ


319:名無しさん@ピンキー
11/03/31 23:54:57.38 sDuj9N2G
ストーカーエロジェントルマンGJ

320:名無しさん@ピンキー
11/04/01 00:35:25.69 m/t5KB/A
これリインはリインで実に犯しがいがあるんだろうなw
本気で悔しがってるのがとても可愛い

321:名無しさん@ピンキー
11/04/01 00:57:25.75 oP6jxjLi
gj!
友人達に聞こえるように連泊を強調するのに笑ったw
しかしリインがデレデレになったら興味を失うのか?ってつい思ってしまうほどの
どこまでも困難な道を行くのが好きなストイックさとドSジェントルマンぷりがパネェっすw
続くみたいで楽しみにしてます!

322:名無しさん@ピンキー
11/04/09 01:40:24.95 1GHhDQQq
そういや、公爵家の人はどこいったんだ?
なんか色々問題のある人なのか?
どいでもいいから投下してくれ。
頼む!

323:名無しさん@ピンキー
11/04/09 01:58:01.25 YOsJ8azi
震災後投下がないってことは…

324:名無しさん@ピンキー
11/04/09 02:06:43.42 E9wP9Qxf
いや、らしき人が震災後に……


325:名無しさん@ピンキー
11/04/09 06:56:34.77 e36dlbaf
さすが信者は空気読まないで話題にだせるな……

326:名無しさん@ピンキー
11/04/09 09:58:31.56 G/qh++6c
……

327:名無しさん@ピンキー
11/04/09 11:04:06.47 jyXNUBrk
書き手の状況は分からないもんだからな
来ると信じて気長に待とうぜ
あと宵闇の続きも待ってる

328:名無しさん@ピンキー
11/04/09 13:10:45.54 IuoBk7rG
ミレーユたんは今風の表現で言えばブヒれるから大好き

329:名無しさん@ピンキー
11/04/09 14:07:01.15 6IhYg40H
ブヒれるっていったい何ぞやと思ってググったら
普通に萌えるっていう意味なのか、SM系の用語かと思ったw
続き気になるといえば神山家も気になるなー
そしてぽよよんお姉さんもしつこく職人さんを待っているんだぜw

330:名無しさん@ピンキー
11/04/09 15:15:30.81 jyXNUBrk
ああ、『萌え豚』の派生語か
しかし、この呼称もエラい自虐的だな

331:名無しさん@ピンキー
11/04/11 00:33:43.05 XdCWlCe8
ブヒれるって、一瞬SMプレイの鼻フックの事かと思ったw


続き読みたいけどもう完結しちゃったっぽい作品ならあるわ

332:名無しさん@ピンキー
11/04/11 01:03:46.30 HJKlfjxM
ブヒるって元々罵倒後だった筈なのに
萌え豚共々罵倒される側が喜んで使ってるからなあw
ある意味心情をズバリ言い当ててるからなんだがw>ブヒるorブヒれる

333:名無しさん@ピンキー
11/04/12 13:13:30.88 clz5/ROp
続き待ってます…

334:名無しさん@ピンキー
11/04/12 20:54:00.87 gEIoAEXF
AGE

335:名無しさん@ピンキー
11/04/18 03:13:43.06 97nl/crm
保守

336:名無しさん@ピンキー
11/04/21 22:17:40.97 E5UPZ2wC
なんか雑談まで途切れるの珍しいな
投下待ち保守

前にも話題で出たけど
愛ゆえに無理やりだと男がヤンデレか策士みたいになっちゃうけど
それとは無縁な無理やり男を考えているんだけど難しいなー

337:名無しさん@ピンキー
11/04/21 23:17:51.30 UlA5jMkB
そういうのじゃなく普通の男や女でも、嫉妬の上激情にかられて・・・・とか
誤解や感情のすれ違いが重なって・・・・とかは過去作品に結構ある、
というか典型だと思ってたんだけど。
そしてそんな典型が一番の大好物なんだけれども!!




338:名無しさん@ピンキー
11/04/21 23:29:11.37 E5UPZ2wC
おおすまんそういえばそういうのもあるなw
っていうか言われてみれば過去作品にもあった
でも嫉妬の上激情に…は自分にはヤンデレカテゴライズだったw

339:名無しさん@ピンキー
11/04/22 00:59:08.89 JniJphmZ
まあ、ヤンデレも人により定義が果てしなく曖昧だからなw
無理矢理犯しにかかる正真正銘のヤンデレ男も激情に駆られて犯しちゃう男もどちらも良し
女の子が可哀想でエロい目にさえ会えば!!

340:名無しさん@ピンキー
11/04/22 01:28:28.40 twHFzuxG
可哀想でエロくて嫌なのに、感じちゃう!

あ…わたし、なんでこんなに感じちゃうの?
あ!駄目ぇそこはっ
ぁん、あ…なんか変な音が……
んっやめてキスしないで…
いや…だめ…なんか子宮の奥が熱く…ぁぁ…でもダメぇえ、くちゅくちゅしないでぇ
ぁぁあぁ…

てな感じお願いします。

341:名無しさん@ピンキー
11/04/23 06:17:48.03 StIHZqyO
女の子的に凄く理不尽で慰み物にされてる感じだとたまらんな
犯されてる女の子に萌える

342:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:02:28.83 UC55qLqU
では僭越ながら、不肖名無しが早速
すごく理不尽に慰み者になってる女の子ものを投下します

元々版権ものを改変し、無駄に長いのでご注意下さい
男性視点、強姦展開。苦手な御方はスルーでお願いします。

343:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:03:07.35 UC55qLqU
彼は優等生だ。
私立高校の三年生で学業成績は優秀。部活動での活躍が目覚しく
集団生活における協調性もあり、校外ボランティア活動にも貢献して

しかも彼は容姿も秀麗で人柄も良く。校内他校老若男女問わずの親衛隊がいる。
学校社会の中で欠点の見えない優等生、それが彼の評価だ。

「えっと…あの…止めて下さい…先輩」
小さな抗議の声を上げ、彼女の瞳が大きく見開かれる。
本棚へ彼女の手首を強引に抑え付けて、その柔らかい唇へ触れ合う瞬前、離した。
「どうして、いつも、こんな事するんですか」

彼女の身体をようやく解放し、彼は人の良い笑顔で言い放った。
「いつも言ってるけど、君が好きだから」
正確に言えば君の泣き顔が好きだから、内心でほくそ笑む。

その日は、赤面してその場に座り込んだ彼女を置き去りに
彼女が現在付き合ってる男、『彼氏』が呑気に眠っているカウンターを通り過ぎ
何事も無かった様には彼は図書室を後にした。

344:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:03:55.82 UC55qLqU
『彼氏』へ彼女が秋波を送った結果、二人は付き合いだした。
というのは同じ高校の生徒ならば周知の事実だ。

それを彼が知らない筈は無い、が
状況を見計らってこの様なセクハラを幾度となく彼女に行っている。
彼は他人にすぐ分る様な愚は冒さないし、彼女は行為に抵抗できない気質であり
まして他人には公言も相談も出来ない。

故に、彼女へ対する彼の行為は日増しに激化していった。

最初は青い二人へのからかい程度の感情だった。
彼女に手を出した振りをすれば『彼氏』が躍起になって止めに来る。
それが面白かったのだが、最近では大分様子が変わってきている。

345:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:04:56.61 UC55qLqU
きっかけは、図書室で独り泣いていた彼女の相談に乗った時からだ。
『彼氏』の態度が冷たい私の事が本当に好きなのか?
等の恋愛する女の子が抱える命題へ
おざなりに返事をしてやってから、ふと気付いた。

半端な年齢層の娘特有の発展途上で不安定な美貌。
そして伏し目がちで涙映えする綺麗な瞳。
この時から彼は彼女を自分の物にしたいと思った。

346:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:05:59.97 UC55qLqU
「俺が気付いてないとでも思ってんの?」
「・・・君、離して…誰かに見られたら…」
「ふーん。見せ付けてやろうよ」
「……んっ…嫌…」

あからさまに如何わしい会話が、放課後の図書室の前で聞こえて
自分に対する挑戦と受け取った彼がドアを開けようとしたら
切なく鍵が閉まっていた。

その日は図書室で『彼氏』が彼女に何をしたのかを考えながら
沸く嫉妬を胸に彼は図書室を後にした。

347:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:06:58.35 UC55qLqU
彼の性質は他人は元より家人にすら知られていない。
丁寧な口調で誰にも分け隔てなく接して言い争う事も殆どない。
人間関係で確執を持たない為、表向きの処世術。

本来の彼は、もっと自己実現に貪欲である。
思った物は必ず手に入れてきた。
天才と呼ばれ、学業と部活動で好成績を収めている由縁でもある。

それは恋愛においても変わらない。例えそれが他人の物であっても

348:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:18:40.11 UC55qLqU
放課後、閉館時間直前。図書室は人気が無く、女生徒が独りしかいない。
委員会活動で遅くなった彼女である。
彼女は学校帰りに図書室へ寄ってから帰っている。

元々放課後は人入りが少ない図書室にて
カウンターの図書委員と殆ど二人きりの気まずい雰囲気な訳だけれど
意中の『彼氏』が委員の時もあるので
彼女は少女らしい期待を胸に本を読借りしに来る事を恒例としていた。

349:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:19:01.20 UC55qLqU
ただ彼女には二つの悩みがある。
一つは、付き合っている『彼氏』が最近焦るように彼女へ関係を求めてくる。
もう一つが、とある先輩の意図の読めない接触
よく考えれば、彼女に手を出す間男へ彼氏が牽制していると解りそうな構図を
鈍い彼女は全く理解していなかった。

それが、彼を増長させて『彼氏』を焦燥させている理由なのだが

対策として彼女は、『彼氏』には自粛する様に言い聞かせて
先輩とは遭わない様に心掛けていた。

といっても、今日も図書室に独りで居るという無防備さを彼女は露呈している。
図書当番は別の人間だと調べは付けたから安心して本を選んでいた。

350:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:19:32.16 UC55qLqU
「やぁ。・・・さん」
ここに居る筈の無い人間の声、身体をビクっと怯ませて彼女は恐る恐る振り返る。
人懐こい笑顔で微笑む先輩。
「オバケでも見た様な顔して。…最近、全然逢えなかったよね」

後ろ手で図書室の鍵を掛け、部屋の灯りを消した。
既に校内巡回への対策は完了である。
それから彼はゆっくり彼女の元へ近づいていった。

室内は静寂に包まれ、互いの呼吸と外の雨音しか聞こえない。

「先輩…どうしてここに居るんですか…?」
「当番を代わってもらったのさ。だから今日は邪魔が入らないよ」

351:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:20:08.36 UC55qLqU
以前『彼氏』から先輩には独りで近づかないで、ときつく言われていた彼女。
咄嗟にカウンターの電話を使おうとした彼女は腕を掴まれ、そのまま抱すくめられた。
光源はカーテンの隙間から差し入るのみ。激しく揉み合う二人

「離して下さい!先輩、私は・・・君が好きなんです!」
そうでも言えば男が止めてくれるとでも思っているのか
彼は彼女の認識がまだ幼いと知り、それもまた愉しめると思った。

『彼氏』へ対する嫉妬が行為の起爆剤となる。
「うん知ってるよ。でもそれは今関係ないから」
「人を呼びますよ!?」
「呼んでみれば?でも誰かに見られて困るのは俺よりも、君だよ」

352:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:21:43.66 UC55qLqU
事が露見すれば、双方ともに社会的な咎めを受けて今後の生活に支障をきたすだろう。
彼自身は口八丁で誤魔化す自信がある。
先立つ学校生活の人間的評価も抜かりは無い。

学園内一角の自分と目立たぬ女生徒
果して大人達はどちらの言い分を信じるだろうか

何より、彼女が恐れているのはこの一件が『彼氏』に知られる事

悲鳴を上げる口を口で遮った筈が、唇を噛まれて彼は刮目する。
すっかり気分を害した彼は彼女の横面を張った。
「痛いじゃないか」
小気味の良い音の一拍後、頬を抑えて呆然と先輩を見上げる彼女。

353:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:22:05.96 UC55qLqU
抵抗が弱まったので、体重の軽い彼女をテーブルの上に放り投げた。
彼は彼女の胴に跨り、セーラーからリボンを抜き去り両手首を縛った。

顔を背けた首筋に顔を埋め、舌先でぬるりと感触を堪能してそのまま耳たぶを噛んだ。
「や、やめて下さい」
どうも反応がつまらない。
もっと抵抗したり泣き喚いたりする君の色々な面が観たいのに
僕を差し置いて『彼氏』が独占する事は許せない

ぐいと顎を掴んでこちらを向かせた。彼女の怯えた目が瞬く。
「可哀想に、痣にならなきゃいいけど」
赤くなった頬を撫でて、相も変わらぬ人の良い顔で語りかけた。

「君が悪いんだよ。折角優しくしてあげようとしたのに」
「悪いのは…私なの?…何で…んっ」
思うように唇を塞いだ。
逃げる舌を追っている間に制服のボタンを外して
下着をずらすと小ぶりな乳房が揺れる。
先端を抓り上げたら彼女は苦痛に顔を歪めた。

354:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:22:31.45 UC55qLqU
彼女の両手首を掴んで上体を引き上げる。学ランのチャックを下ろした。
「彼にいつもやってあげてるように頼むよ。次噛んだらグーでいくからね」
自分のものを口腔奥まで捻じ込み、彼女の頭を押さえつけて揺さぶる。
律儀に筋を沿って舐めてくるが、思った通り慣れていない。

小さな口で根元まで咥える小動物のような彼女を見下ろした。
「『彼氏』はこんな事、君にさせなかったみたいだね」

温い粘膜から自身を抜き去って、今度は指をその口に突っ込んだ。
えずく彼女に構わず、スカートの中の下着をずらし、唾液に塗れた指で下腹を愛でる。
舌で上、指で下の先端を弄ばれて彼女も耐えきれず

「嫌!…嫌。先輩。私、は・・・君が…!」
防衛本能というべき生理的な官能と
彼の類い稀なる粘着質な床の才能によって彼女は達した。

355:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:22:59.34 UC55qLqU
「嫌だって言っておきながらこれとはね。『彼氏』じゃなくても良いんだ?」
荒い呼吸に合わせて上下する薄い胸板。か細い肢体は力無く投げだされている。
望まぬ性感であってもこの艶姿。
彼女の体液に塗れたその指を、その口に再度突っ込む。

オマエの味だ

等という陳腐な台詞は、流石の彼も云う趣味は無い。

自分ではない者にここまで慣らされていたと直感した。
壊してやりたい

「悪い子だ。君は淫乱だね」
耳元で囁かれた彼の言葉で彼女の決定的な何かが切れた。

356:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:31:09.21 Sa+0JzGJ
支援

357:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:31:56.99 UC55qLqU
薄闇の中、テーブルへ滴る鮮血。瞳の縁に溜まった涙
この前の一件では『彼氏』は彼女に最後まで手を付けていなかった証明

結局、彼は果てる事なく萎えた。
その間。期待通りに泣きも抵抗もしないで、彼女はずっと天井を見ていたから

彼を視界に入れずに

彼がベルトを絞め直した後も、テーブルの上で半裸のまま放心状態の彼女。
仕方が無いので、甲斐甲斐しく彼が身支度を整えてやり
事件発覚覚悟で彼女を自宅まで送り届けた。

帰り際でも、彼女はずっと無表情で一言も喋らなかった。

358:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:32:12.97 UC55qLqU
その後。事件は表沙汰になる事無く
彼女は一ヶ月程、学校を休んだ。

やがて復学した彼女は内向的な性格に拍車が掛かり
女子生徒以外と交際しなくなっていた。

どうやら、『彼氏』とは一ヶ月の間に別れていた様である。


359:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:32:37.21 UC55qLqU
それから春がまたやってきた。

卒業式終了後
帰路へ付いた彼女を待ち構えていたのは先輩だった。

恐怖が彼女の心を縛り、彼女は震えながらも彼の方を見た。

「久しぶり。・・・ちゃん」
あの時と同じ、人懐こい微笑み

彼女は一歩も動けなかった。

あの時の行為について先輩は丁寧に謝辞を述べた。
そして最後に、彼女へ囁く

「だけどこれで、君は僕の事を忘れられない」

それを聞いた瞬間、彼女は声を殺してその場で泣き崩れた。
傍から見たら、意中の卒業生に振られた後輩の姿に映るだろう。

360:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:33:11.28 UC55qLqU
彼女の泣き顔を、彼は皮肉気に見下ろした。

自分でも酷い事をしていると思う。
でも、心を閉ざした君があの時を忘れられない限り
僕が君にとって最初で最後の男だ。

例え彼女が自分をどんなに嫌っていても
略奪と束縛と独占。彼は満足を得た。

361:名無しさん@ピンキー
11/04/23 07:34:31.46 UC55qLqU
御静聴ありがとうございました。無駄に長いです、反省します
強姦ですが愛はありますので・・・ご容赦下さい

362:名無しさん@ピンキー
11/04/23 11:12:32.39 5s57yVOv
どこに愛があるんだよ

363:名無しさん@ピンキー
11/04/23 14:25:28.90 Sa+0JzGJ
独占愛ってやつか

364:名無しさん@ピンキー
11/04/23 14:29:31.20 TuOuCNpg
ヤンデレ?

365:名無しさん@ピンキー
11/04/23 14:29:35.83 DBFMKWPQ
微妙なところだけど、あるんじゃないかな・・?
だいぶ歪みまくってるだけで。

366:名無しさん@ピンキー
11/04/23 14:30:41.92 TuOuCNpg
ageてすまない

367:名無しさん@ピンキー
11/04/23 15:29:03.02 StIHZqyO
>>361
GJ
恐ろしく歪んでるけど愛はあるなあw
その後も犯されてたりすると良い

368:名無しさん@ピンキー
11/04/23 17:49:19.53 ng8K+4O0
>>361
投下乙
好きで…でも手に入らない(手に入れる気はない?)から
一生忘れられない男になろうとする歪み過ぎている愛が素晴らしいなw

しかし彼氏は嫉妬してたぐらいなんで主人公と別れても諦めてなさそうだ

369:名無しさん@ピンキー
11/04/23 19:03:49.28 75khrvfB
独占欲>>肉欲くらいな感じに見えた
理不尽と聞いて生々しいの想像してたが、男的には筋通ってるな
そして全体的に静かな雰囲気が醸し出されているのが新鮮だった

てか男は下手したら一生、この女の年頃がストライクゾーンなのではw

370:名無しさん@ピンキー
11/04/24 06:28:32.50 XumzzzUk
皆様のご意見を今後の参考に致します。。
予想以上に好意的なご意見を頂けて多謝御礼申し上げます。
今後もヤンデレやラブコメに精進致して参ります。

>>356
支援とご感想有難うございました。

371:名無しさん@ピンキー
11/04/24 21:14:45.76 //AkIg36
グッジョブ!あんた鬼畜野郎だなw

372:名無しさん@ピンキー
11/04/25 05:41:05.32 nrMYN6r7
寒いマンセーきめえわ

373:名無しさん@ピンキー
11/04/25 07:26:49.84 CSqQxFdz
オレもそう思う

374:名無しさん@ピンキー
11/04/25 12:45:30.59 GSzX+PuY
>防衛本能というべき生理的な官能と
>彼の類い稀なる粘着質な床の才能によって彼女は達した。

アホクサ
50年ぐらい前のポルノ本でももう少しエロいぞ

375:名無しさん@ピンキー
11/04/25 16:31:50.77 PjpdweVi
ここはプロ作家様を待つスレじゃねーんだよw
仮に所々拙い部分があるとしても、好みのシチュを妄想して書いてくれりゃ十分なんだよ

>.361 GJ

376:名無しさん@ピンキー
11/04/25 16:40:58.89 PE9ykqU+
だってエロく書けねぇんだからしょーがねーだろw
じゃあお前さんが書いてみろよ

377:名無しさん@ピンキー
11/04/25 17:52:54.73 dfRLnZrz
スルースキル試験実施中

378:名無しさん@ピンキー
11/04/25 19:06:48.73 yMpf94v+
この板にはエロなしスレというものがあってだな…
あとそれ以上エロく書けないのなら、投げスレとか殴り書きスレというものもある
語りたいなら裏話スレもあるしガチ評価が欲しいなら山田スレもある


てか、この板は使い勝手の良いスレが至れり尽くせり存在してるのに
どうしてそれに気付かない書き手が増え続けるの…
この板のそういう輩を無差別のべつまくなしに案内しまくってやりたい程だ
殴り書きとか気楽でいいぞ~。レス無いけどw

379:名無しさん@ピンキー
11/04/25 20:40:36.83 CSqQxFdz
どうでもいいですよ♪

380:名無しさん@ピンキー
11/04/25 21:01:38.63 CUFEfUlt
とりあえずみんないちをよんでみるといい……よ!

381:名無しさん@ピンキー
11/04/25 23:21:09.18 KE/ZibB5
気に入らない、読む気なくした場合は全力でスルーすればいいんじゃね?
最低1レス乙なりGJなりが入ったら雑談ネタに切り替えていいと思う。
感想がつかない場合は、一日たってから切り替え。
…とすると、住み分けができていいかと。万人に受ける作品なんてないし。
とはいえ、任意規定にしかしようがないから否定的な意見に過剰反応するのもどうかと思うが。

382:名無しさん@ピンキー
11/04/25 23:26:07.15 CUFEfUlt
マジレスしようと思ったがめんどくさいのでもう一度言うが
>>1に既に書いてあるだろ

383:名無しさん@ピンキー
11/04/25 23:56:04.42 5l4PUaZc
とりあえず二次元にしか興味ないヒキニートに地味~な幼なじみが振り向いて欲しくて
髪巻いたり雑誌で見た流行ファッションで慣れないメイクをして会いに行ったら
ギャルきめえビッチとかねーよ扱いされて堪らなくなって
せっかくのお洒落や化粧もぐしゃぐしゃにしながらどうして分かってくれないのと無理やり…
っていう妄想をした

384:名無しさん@ピンキー
11/04/26 00:08:58.37 zPGSgIs9
御免なさい、381さん。そして批判的な意見を下さった皆様。冷静になれました

便所の落書きというか、酒呑みながらこういうエロくないエロ文を書く事が
が私のストレス解消法なんです。ええ年齢こいて文章で飯食える訳じゃないしね。

普段は笑>エロがモットーのエロくないエロ文書いてる者ですから
鼻ほじりながら何年も前にネタした文章について、エロくねえwとダメだしされたので
着眼点とツッこむ場所が違うだろwと大爆笑しつつうっかりレスしてしまいました。

でも正直、本当に皆様の文章も読んでみたいんですよ。
このスレはどエスには面白いので、どんどん活性化してほしいのです。
使い勝手の良いスレを知らん訳ではないですが、高尚な裏話なんてあんま考えてないのでw

申し訳ありませんでした。皆様の鋭意製作を楽しみにしておりますよ!


385:名無しさん@ピンキー
11/04/26 01:24:21.35 fYZXrUeD
うわあ…

386:名無しさん@ピンキー
11/04/26 01:29:22.51 QhZBtDmB
>>383
はやく文章にする作業に戻るんだ

387:名無しさん@ピンキー
11/04/26 03:16:37.54 dePQfisb
棲み分けできてない事を自覚できない時点で終了


しかし背伸びしたもどきとはいえ、ギャル系に逆レイプというのは
見た目的にあんまおいしくないなぁ。どんな感じか説明きぼん

388:名無しさん@ピンキー
11/04/26 08:56:33.42 yMltBvSb
>>384
みっともない

389:名無しさん@ピンキー
11/04/26 09:00:09.45 yMltBvSb
>>387
女の子が根っからの真面目っ子で
ギャル言葉や振る舞いがぜんぜん板についてなくて
とんちんかんな台詞いいながら必死で…というのは萌えかも

でもギャル系に詳しくないんで自分では書けないや

390:名無しさん@ピンキー
11/04/26 11:24:49.85 Q1bUjO/8
>>384
さすが厨スレ

391:名無しさん@ピンキー
11/04/26 13:01:23.13 2llWtvQI
>>384
すごい口惜しそうw

392:名無しさん@ピンキー
11/04/26 15:35:51.28 4rwdgYaQ
久々に香ばしいのが湧いたなw

393:名無しさん@ピンキー
11/04/26 16:15:24.56 BE+IMPAL
おや?いつもみたいに職人さんになんてこと言うんだ!って
マジギレする奴は現れないのかな?w

394:名無しさん@ピンキー
11/04/26 16:29:16.34 fYZXrUeD
フォローのしようがないだろ…

395:名無しさん@ピンキー
11/04/26 17:12:23.39 KpRT4UtW
>>387
ギャルって書いたけどage嬢みたいな髪盛りまくりの睫毛ばっさーとかじゃなくて
勉強して気合いを入れた格好+念入りにメイクをしたら普段の地味さから結構化けたんだけど
それを男に媚びてるとかスイーツ(笑)みたいに馬鹿にされて…って感じで妄想した
女の子は運動より勉強ができる真面目っ子で世話焼き、男はアニメとエロゲ好きのヒキヲタなイメージ

でも自分で書いといて何で女の子がこんなんを好きなのか分からんくなってきたw

396:名無しさん@ピンキー
11/04/26 23:35:35.25 oIrkVcA4
どうでもいいけど過去ログの「最後の初恋」良いな
萌えた

397:名無しさん@ピンキー
11/04/27 01:09:13.64 WYzbNn6Y
GJと乙の数見ればおよそどれだけの評価かわかっていいね。
長編完結させても「乙含めて」4つしかレス貰えずすぐに次の投下にかき消される作品と
投下後数日過ぎても惜しみないGJを送られる作品とじゃあ、内容のレベルも全然違う。当たり前だけどさ。

398:名無しさん@ピンキー
11/04/27 01:25:58.33 pD7fXnJr
>>383
個人的にはすげー読んでみたい設定。
逆レイプするんだけど経験ないからなかなか上手くいかなかったり…するのかな?

399:名無しさん@ピンキー
11/04/27 01:41:21.57 4CGCCAkC
おまえらが騒ぎ立ててGJするSSはことごとく俺のつぼをはずしてるからあまりあてにならない
好みの問題だろ

400:名無しさん@ピンキー
11/04/27 04:09:02.67 6btupxPB
ビッチ系とかギャル系は上手く嵌まると犯したくなる可愛い女の子になるな

401:名無しさん@ピンキー
11/04/27 11:54:57.12 L/n/JcX3
ビッチ系、ギャル系は確実にツンデレになる。そして俺得。
逆レイプも素晴らしいが

嫉妬したり振り向いて欲しくて処女の癖に男の前でビッチ系気取ってたら
男に急に逆上されてベッドに放り出されて、
え?え?嘘っ!?え?、ってあわあわして
可哀想な感じになって怖くて泣き出しちゃうとか最高だと思う。


402:名無しさん@ピンキー
11/04/27 18:59:59.55 bcq6f/hG
白々しい

403:名無しさん@ピンキー
11/04/27 19:37:22.95 S5Gl6hvm
ビッチ系は経験豊富なのよ!と誤魔化して誘惑したら
他の男とやってるんだからいいだろ!とか嫉妬して
ぷっつんきた男が場所も考えず強引に押し倒し
女の子は初めてがこんな場所で乱暴されるなんて
好きでも「嫌!」って拒んで無理やりとかお約束だが好きだw
っていうか初めてだと思わずにいたら初めてで男大喜びとか好きだw
(その前に色々とすれ違いがあるのが前提で)

>>395
そこはアレだ幼馴染でいっつも本当に困ったときには
自分を助けてくれる男の子(普段はツンツン)だったりしたらいいよ!

404:名無しさん@ピンキー
11/04/28 01:21:11.83 b1xr6qH0
ヤフチャのアダルト部屋で・・・
ryokoryoko_aroma1←家庭ではレスの欲求不満の悲しいアラフォーばばあ!
“癒しのアロマ部屋”で夜な夜な、たるんだ身体を披露してます
旦那とは、レスで浮気相手を探して今夜も公開頑張ってます!
住んでる地区は、千葉でも東京寄りなんで関東の皆さん!
溜まってる方は、是非1発抜いて貰いましょう。誰でもさせてくれるよ
昔でいう。。。 させ子です! あははは~!!!
バスケットやってる高校生の息子と中2の娘にバレたら大変だな!!!
公然わいせつ罪で訴えてやるかな! あははは~!

405:名無しさん@ピンキー
11/04/28 21:58:50.23 a7JK90fm
ヘタレ童貞でブチキレてビッチっぽい美少女を犯すのですね

406:名無しさん@ピンキー
11/04/30 03:51:39.48 O/lftgx6
長年一緒に居た幼馴染とか家族的な存在の男に犯され
身も心もずたずたにされる女の子が自分的につぼ

407:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:22:15.48 TufEdpmV
視線の続きを投下する

408:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:23:04.30 TufEdpmV

長い、長い週末が終わってリインは日常にもどった。
ようやく解放された時、軍を辞めると口走ったリインをレナードは一笑に付した。
「君は士官学校の特待生だろう? 任官義務年限があるはずだ。正当な理由なき任官拒否の罰則も知っているな?」
金銭的な免除のかわりに一定期間の軍への従事が義務とされている。途中でやめれば費用の一括返還請求がなされる。
リインの保証人は父親だ。迷惑をかけるわけにもいかないし、一括で返すには苦しい金額だ。
「当分君は軍と、私とは縁が切れない。私から切るつもりもない」
そんなリインを優しく見ながらレナードは、素晴らしい週末だった、また連絡すると言い置いて去っていった。
屈辱的な思いで病院へと行った後官舎へと戻り誰にも見られずに部屋に入ると、ベッドにもぐりこんで疲労した心身を癒すかのように
ただひたすら眠った。
週明けからリインは噂が広まったのを知った。友人や上官以外にも目撃されたのだろう。
好奇心でいっぱいなくせに、誰も正面きっては聞いてこない。友人達はうらやましいだのお似合いだの、リインにとっては
見当違いの祝福をしてくれた。二人でいた事実は事実なので否定もできない。
ただ親友のアネットだけは、塞ぎがちなリインの様子に何か感じ取っているようではあった。

リインは徹底的に一人になるのを避けた。常に誰かと、同性の人間とだが行動し休憩場所へも足を向けず業務が終われば早々に
官舎に引き上げた。女性用の官舎にこもり休日も出歩くことを極端に減らした。
視線はそれでもよこされることはあった。絡みつくようなそれをリインは無視した。
レナードもそれ以上のことはせず、元々少将と新米の少尉だ。
顔を合わせる機会もほとんどなく緊張をはらみながらも平穏に日々は過ぎた。
リインはプライベートでもレナードを無視した。交換した連絡先は変更してもすぐに突き止められる。着信や受信拒否は
万が一の業務の連絡だった場合には許される行為ではない。―ただ無視することにした。
何度か留守電に店の名と日時の連絡が入っていたが応じる気は全くなかった。

なかったことにしてしまいたかった。



409:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:23:56.90 TufEdpmV

自室にいたリインの携帯が鳴る。表示された番号は嫌でも覚えてしまったものだ。いつものように無視を決め込み留守番電話に
切り替わった。そこに落ち着いた声で伝言が入る。
「一時間待つ。君が来ないなら君の友人に代行してもらう。ただしその後の保証はできない」
店の名前が告げられて電話が切られた。
リインは少しの間意味が分からずに呆然とする。友人に代行? その後の保証? 今までの誘いにはなかった言葉に嫌な予感を
覚えつつも、どうやら無視すれば友人を巻き込むつもりらしいレナードに真意をただすべく急いで支度をして自室を出た。
店に到着すると申し付けられていたのだろう従業員に案内されて奥まった個室へ入る。
二度とかかわり合いになりたくなかったレナードが、酒のグラスを手に座っていた。
「やあ、来たな」
案内をした従業員に始めてくれ、と合図をするレナードに詰め寄る。
「あの内容はどういうことですか。私の友人とは……」
「話は後だ。まずは乾杯しよう」
レナードは新たなグラスに酒を注ぎリインに手渡す。座るように促されしぶしぶ向かいの席につく。
不本意ながらもレナードのペースに乗せられる。かなり強い酒を食前に飲まざるを得なくなったリインは苦い顔になる。
次々に運ばれる料理を砂を噛むような思いで食した。レナードから振られる話題に必要最小限に応えてリインは食事を終えた。
前はとても楽しかったレナードとの食事は、今は憂鬱な時間と化した。
味もいいのに食べた気がしなくて勿体ないと感じる。
どうにかコーヒーまでたどりついた時にレナードがおもむろに口を開く。
「先程の質問だが」
リインが答えを欲した質問。それまで努めてレナードを見ないようにしていたリインがはじかれたように顔を上げる。
途端レナードとまともに視線が合う。レナードは満足そうだった。
「やっと私を見たな。ああ何の話だったか。君の友人達と知り合いになってから色々と相談に乗ってもらっていたんだ。
何しろ年は離れているし、何故か君には避けられているし、若い女性の好みや心理など見当もつかないからな」
ぬけぬけと言うレナードにリインは怒りを覚える。
ストーカーまがいの行為の挙句さんざんに体を弄んだレナードに良い感情などかけらも持てるはずもない。
顔も見たくないのが当然だろう。切実に関係をなかったことにしたいと思っている、それなのに友人を巻き込むとは。
「友人に、何を。彼女達は関係ないでしょう」
「そうだ、私と君には『関係』があるがな」
すうっと場の空気が冷える。レナードの目が笑っていない。


410:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:25:25.97 TufEdpmV

「君の友人、アネットといったか。彼女は私に好意的なようだ。君の代わりをやってもらえたら私も楽しいかもしれない。
だが私は知っての通りのひどい男だから、彼女を壊してしまうかもしれない。
君にはストーカーへの耐性があったが、彼女はどうかな? どれくらい私の視線に耐えられるだろうか」
足を組んで、両手の指先同士をあわせてレナードは笑う。
「あなたは、どこまで……」
それ以上続けられないリインに、心外だという表情を見せる。
「ん? 私は年若い恋人に冷たくされて傷心の惨めな男だ。慰めてくれそうな優しい相手がいれば、それにすがりたくなるのが
人情というものではないか?」
リインが席を立てばレナードは迷わず友人、アネットを呼び出すだろう。そして優しい彼女ならそれに応じるはず。
「……彼女をどうするおつもりですか」
「君次第だろう。君が私の恋人だと私を安心させてくれれば、友人とやらの入る余地はない、何でもない話だ」
レナードは席を立ちリインの前にくる。座ったままリインはレナードを見上げる。
テーブルの上の両手をすくうように持ち上げ握られる。
「ああ、それから誰だったか、君を襲おうとした輩。先日移動になった先で負傷したそうだ」
地名を聞かされめまいを覚える、それは激しい局地的な戦闘になった地域で間違っても新米軍人が出張る場ではない。
レナードの意向で同僚が配置転換になったのだ、そしてリインの友人達にも同様のことが起こりうると言外に告げている。
―いや、脅している。
レナードは笑いながらアネットを、友人達を壊すだろう。それは確信に近かった。
リインはそんな未来は見たくなかった。傷つくと分かっていながらみすみすレナードの供物にはできない。
「リイン」
耳元で名を呼ばれぞくりとする。低く熱をおびた囁き。
「君は……私の恋人か?」
かがみこむレナードと一瞬視線を交錯させて、リインは目を閉じた。睫毛だけが震えてリインの心情を伝える。
唇がリインのそれに柔らかく触れて離れる。もう一度触れ、今度はだんだんと深くなる。
レナードとの口付けはリインが噛み付いた時以来だ。しかし二度と噛み付けない、抵抗できない。
リインはレナードの脅しに屈した。
無言の契約の証のように、レナードはリインの後頭部に手をやりひきつけて唇を貪る。やわらかく唇を食んで歯列にそって舌を動かし
上顎へと舌先をすべらせる。そしてリインの舌をすくうように絡めた。
「う、ん……」
思わず漏らした声にレナードの手が耳をさすって頬をなでる。その間にもリインの口中はレナードに支配されている。
縮こまるリインの舌を強引に絡めてしごく。口の中を犯される生々しい感覚にリインは震えた。
ようやくレナードが離れたときにはリインの息は上がり、瞳は息苦しさのせいか濃厚な口付けのせいか少し潤んでいた。
それでも一目でレナードを虜にしたその瞳でにらみつける。
「恋人でも、愛人でも、好きに呼べばいいでしょう」
そしてリインはレナードの腕の中に囚われた。

411:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:26:05.99 TufEdpmV

引きずられるように連れ込まれたホテルで壁に押し付けられて、リインは唇から耳へと移ったレナードの愛撫を受けていた。
逃げられないように抱きすくめられ耳に濡れた感触を受けて響く淫らな音に目をかたく閉じる。
耳朶を噛まれもう片方の耳もすり、と指でこすりあわされる。刺激は耳だけなのに体が熱くなってくる。
「私を焦らして楽しかったか?」
「そんな……」
耳元に落とされる声にぞくぞくしながらリインは否定する。焦らすどことか無関係になりたかったのが本音だ。
レナードの大きな手が脇腹から腰を撫でている。そこからレナードの欲望が熱が伝わる。
その熱に飲まれそうになり、リインはレナードの肩を押す。
「シャワー、を」
レナードが指先を握る。浴室のドアを開けリインに微笑む。
「一緒に浴びよう」
一人で、と言うリインを無視して強引に一緒に浴室に入ったレナードは、ネクタイを緩める。
「私が脱がせるか、自分で脱ぐか」
どちらもごめんだ、と言いたげに自分をにらむリインが可愛らしい。だがあまり余裕もないのも確かだった。
囲い込んでゆっくりと服を脱がしていく。スカートではないのは警戒の証だろう。ふるり、とこぼれ出た胸に口付けるとリインが
身じろぐ。乳首を口に含んで吸うと鋭く息をのむ音が聞こえた。
業務上での接触は皆無と言ってよいほどになく、リインに避けられていた期間はかなり長い。
時折見かけた姿はいつも誰かと一緒だった。視線に気付いているだろうにあの年にしては見事にそれを黙殺した。
その豪胆さ、手を出す隙を見せない冷静さをレナードは好ましく思った。
そうでなければ追い甲斐がない。
だから搦め手を使った。とりあえずは人のものに勝手に手出しをした若造を激戦地に追いやり、リインの友人達が食事の礼を言って
きたのを機に知己を得てゆっくりと外堀を埋めていった。
仕上げはリインの親友のアネット。あれはいい手駒になる。
リインを揺さぶるのにもってこいの存在だった。
枷はまだ他にもあるがこの二つでリインは自分を受け入れた。



412:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:26:40.58 TufEdpmV

強情な心とは裏腹にリインの体は柔らかい。鍛えていても男のそれとは違うさわり心地に陶然となりながら、レナードは執拗に乳首を
愛撫する。口の中で尖りゆく感触を味わう。気付くとリインが顔を赤くして口を押さえていた。
感じているらしい様子にもっと、と思うのは男の性か。
衣服を取り去り、自分も服を脱いで二人では狭いシャワーブースに収まる。シーツの上に広がる髪が好きなレナードはリインの髪の毛を
まとめて濡らさないように留意する。シャワーの湯が二人を濡らしていく。
改めて施される濃厚な口付けに、密着する体温にリインの鼓動は早くなる。
そちらに気をとられていると、体をすべる手の感触にはっとした。ボディーソープを手に取ってのことだろう。抵抗なくリインの体を
レナードの手は動き回る。大きくて熱い手のひらに包むように触れられ、その熱が伝染したようにリインも熱くなってくる。
首から鎖骨。肩から腕そして両手で手もほぐされるように泡を擦り付けられる。
特に鋭敏な感覚器官である手は執拗にもまれ指の間も強めに触れられ、指を絡められると切ない疼きが生まれてくる。
大きな手が背中を撫で下ろすその力強さに、身を委ねてもいいような安心感さえ生まれてくる。
胸をすくわれるように持ち上げられソープのせいで摩擦のない指で乳首をつままれ、リインは背をしならせて胸を突き出すような
形になってしまった。
「ここで抱いてもいいのか?」
からかいを含んだ声に我に返り慌ててかぶりを振る。レナードの手はそれ以上は胸にはとどまらず下へとおりてゆく。
「自分で洗いますから」
腰から臀部に手がうつりリインは抗う。それを無視してレナードはリインの片足を持ち上げて少し曲げた自分の膝に絡ませる。
足先を撫でられ足首から上がってくる大きな手。膝から大腿へと手がすべらされる。もう少しで付け根、というところでレナードは
今度は反対側の足に同様の行為をする。それも済んで足がおろされリインがほっとしたその時。
指がひたりと付け根に当てられた。手の平と指ですくうようにもまれる。抵抗のない指が陰核をくりくりと刺激する。
「っは、あっ……」
次いでつままれてリインは下腹部で湧きあがる疼きに思わず声を上げる。レナードの指は陰核を、その周囲をなで上げ、さする。
「中は……このままだとしみるな」
流れ続けていたシャワーの湯で手を洗い、レナードの指が再びリインの足の付け根に当てられ、膣へともぐりこむ。
「んっ、や、……あ」
軽く曲げられた指で壁をこすられリインは熱い息を抑えられない。もみこまれるように入り込んだ指は指先の点で、指全体の面で、
レナードはリインの中を洗い出すかのように掻いてゆく。円を描くようにぐるりと回されたかと思うと次には奥へと押し込められる。
湿気のせいで音の響くシャワーブースにぐちゅぐちゅと淫猥な音がした。
臀部に手を当ててもみながらリインを自分のほうに引き寄せているレナードを満足させるに十分な音、だった。



413:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:27:19.71 TufEdpmV

「前よりも濡れているな。私の指は気持ちいいか?」
羞恥で頬を染める、いや今回は少しばかり快楽も伴っているらしいリインはレナードの視線を避けるように、顔を斜めに向ける。
もう一本増やした指でゆっくりと抽送するとリインの手がレナードの腕に置かれ、離そうとするかのようにかすがるかのようにか
力がこめられる。
とろりと粘液が指から伝い中があやしく蠕動を始める。ここでイかせてもいいが、もう一つのお楽しみもあることだとレナードは
リインの中から指を引き抜いた。
リインは壁に背中を預ける。既に疲労し体が重だるい。そんなリインの体の泡をざっと流してレナードは『お願い』をする。
「私の体も洗ってくれるか?」
嫌々ながらボディーソープを手に取り、レナードの真似をして体に手をすべらせる。
意識して見た事のなかったレナードの体と感触が目の前にあり、改めて自分との違いを思い知らされる。がっしりした骨格や
鍛えられた筋肉、そして古傷。レナードが軍という苛烈な場所で生き残り過ごしてきた歴史を感じる。
大きな背中や胸、自分より太い腕や手を洗いその下へと行かなければならないリインは目のやり場に困る。
レナードの体の中心で陰茎が反り返っていた。
「先に足を」
そう言われ視界に入れないようにとかがみこんで足を洗う。手首をとられて立ち上がると陰茎に導かれる。
「ここも洗ってくれ」
触れたそれは熱くて硬くて、手を引こうとしたリインの手は大きな手に包まれて上下させられる。びくりと脈動する陰茎は
リインには目の毒だ。それでもレナードはリインの手で丹念に洗わせる。
レナードが熱い息を漏らし、自身で泡を流した。
自分でやるからと言っても聞き入れられずふかふかのバスタオルで体を拭かれたリインはバスローブを羽織らされる。
レナードも同様の姿になり抱き上げられてリインはベッドに運ばれた。



414:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:27:53.79 TufEdpmV

そらす顔を上向かされレナードと目が合う。髪はまとめていたものがほどかれてシーツに流れている。
それを掬い取ってレナードは指の間で滑り落ちる感触を楽しむ。
「―卑怯者」
低い、リインの声に戯れをやめ上からじっくりと見下ろす。敵意に満ちた瞳が実にそそるのをリインは知らない。
「大嫌いの次は卑怯者か。つくづく私は外道なようだな」
笑い混じりに感想を言って、レナードはリインの体に唇を落とす。
しっとりと温かい感触に半ば夢中で触れていく。細い骨格を代表するような鎖骨や人目に晒さないために白い胸元。しなやかで
レナードを拒絶したり、すがってきたりするわがままな手指。
じっくりと口付けて唇で食んだり、舌で舐めたりしているとうっすらとリインの体が汗ばんで、紅潮してくる。
手を重ね指を絡めると無意識に握られる。今やレナードの頭は胸にあり、その髪の毛さえリインの肌を刺激している。
吸い付かれた乳首を歯でしごかれリインは身を捩る。
逃げないリインをじっくりとレナードは追い詰めていく。息が荒くなるのをリインは我慢できない。
歯を食いしばって声を上げまいとするリインは、皮肉にもレナードの嗜虐芯を煽っている。
唐突に目の前に指が突き出されレナードを見上げると命令を下す。
「指をしゃぶれ」
意味が分からずそれでも口元に持ってこられた指に顔を背けると、唇に押し当てられる。
「咥えて、舐めろ」
一瞬噛みちぎってやろうかという衝動にリインはかられた。ぎり、と下からレナードを見据える。レナードも視線をそらさない。
緊張ただよう時間が過ぎて、先に目をそらしたのはリインの方だった。
それを承諾ととり、レナードが口をこじ開けて指をいれこむ。
「大嫌いな卑怯者に抱かれるのを選んだのは君だ。私が憎いなら私を殺せ。ベッドの上ほど無防備な場所はないからな。
私を殺せないなら私に抱かれていろ。君は私のものだ」
違うと叫びたいのに、口の中に指があるために果たせなかった。
敗北感にまみれながらリインはレナードの指に舌を這わせる。口をすぼめて指を吸い上げた。
レナードもされるままではなく、リインの口の中を押さえこすり、好きに動いている。
足を抱えられレナードの顔が付け根に埋まる。
シャワーブースでの愛撫の余韻の残るそこに口と、リインの口で濡らした指での刺激が加えられた。
リインの体が震えて、足指に力が入る。中を揺らされて陰核を吸い上げられたとき閉じたリインの目蓋の裏に光が走る。
レナードの指が内腿に食い込み尖らせた舌が膣内に入ってくる。ぬるりとした粘膜とざらついた表面が指とは違う刺激を伝える。
腰が浮き、足が震えるリインに駄目押しのようにレナードは音を響かせて溢れた粘液をすすった。
細かな痙攣がリインから生まれる。陰核を吸って軽く歯を立てた時、リインは背をしならせて硬直した。
「―っ」
声にならず、見開いた目も映したものを認識せず、ただリインは自分の中で爆発した何かにがくがくと身を震わせた。
その感覚は鋭く強くリインを押し流した。


415:名無しさん@ピンキー
11/05/03 00:28:26.08 TufEdpmV

ベッドに投げ出されたように沈んだリインは自分の息が荒く、喉が乾いて苦しいのに気付く。
さっき白い世界になったようなそこは何の変哲もないホテルの一室だった。
体が重くどこかに引きずり込まれそうなリインは自分の頭に腕枕をしたレナードにようやく視線を向けた。
嬉しげな、慈しむような眼差しを向けているレナードをぼんやりと見る。
「初めて達したな」
レナードの手で絶頂といわれるものを経験させられた。そのことを認識したリインはレナードの張り巡らせた蜘蛛の巣に捕らえられた
獲物の心持ちを味わった。
大嫌いといい、卑怯者となじったレナードに感じてしまった。リインは内心で己を呪う。
まだ力の入らないリインの足を抱えてレナードは挿入した。いまだ蠕動し収縮するそこはきゅうっとレナードを締め付ける。
経験の少ないきつさと絶頂を極めた後の壁の動きはレナードの脳髄に快楽を送り込む。
奥へと誘い込むような襞の動きは貪欲で、絡んでくるこの間よりも熱い内腔に溶けてしまいそうだ。
誘いを無視され期間があいたせいか、きつさは最初の頃のようなのに絡んでくる感覚は違っていてひた、とレナードに吸い付き
ざらついた前壁は往復するたびに亀頭にえもいわれぬ快感をもたらす。
すぐに果てそうになるのを我慢して、レナードはリインの腰を抱えなおしてリインを揺らす。
前回中でリインの弱そうな所を指で探し当てたが、そこを抽送のたびに刺激すると締め付けが強くなった。
リインの手が落ち着きなくシーツをつかむ。
自分にすがれとばかりにそれを引き剥がしてきつく抱きしめる。
腰を使って奥へと突き、こすりあげる。
リインの息がまた熱くなり、耳元で煽ってくる、ひときわ強く締められたときレナードはたまらず精を放った。
襞が絡んで最後まで搾り取る。互いに汗にまみれこれ以上ないほど密着して。
さすがに中では絶頂というわけにはいかなかった様だが、レナードは満足だった。
「素晴らしかった、リイン」
また一歩自分のものにしたリインに早く自分のところに堕ちてこいとばかりに口付ける。


以上続く予定



416:名無しさん@ピンキー
11/05/03 02:01:24.02 o7Yktrjc
ひたすらにGJ
相変わらずのストーカージェントルマンっぷりがたまりません

417:名無しさん@ピンキー
11/05/03 04:30:35.25 5JNto1bQ
ナイスジェントル!!
友達に代わりにって……鬼畜っぷりに磨きが掛かってきましたな
襲った奴の配置換えはグッジョブだけどw
ストーカージェントルマンパネェ

418:名無しさん@ピンキー
11/05/03 06:10:40.34 t5YTW/3m
同じくGJです!
じわじわとモノにしていく過程がたまりません。
レナード魅力的過ぎ。
続きをお待ちしております。


419:名無しさん@ピンキー
11/05/03 08:34:27.09 OLbjn1zp
GJ!
リインの嫌がり方が嫌悪に近くてゾクゾクする。
この先楽しみだな~続き待ってます!
一息ついたら、ローザのその後をちょっとだけお願いします。

420:名無しさん@ピンキー
11/05/03 09:02:19.29 X9Biuq8b
GJ
追い詰め、追い詰められ感がすごくいい
やっぱりジェントルには勝てないんだな
続きが楽しみ

421:名無しさん@ピンキー
11/05/03 10:47:21.77 8xW4LGD8
レナードの手段を選ばない描写が素晴らしい

ところで、襲う側♂と襲われる側♀は両想いのすれ違いで、最終的には結ばれずに終わりってこのスレ的にありでしょうか

422:名無しさん@ピンキー
11/05/03 14:37:04.66 AmCPtoD4
初めて、しかも不本意にいかせた時のレナードの満足気な様子に萌え

レナードのことマッドメンのドレイパーで脳内映像化して楽しんでます。
ありがとう

423:名無しさん@ピンキー
11/05/03 20:44:58.65 c8j87vjM
>>415
GJ
この調子で鬼畜っぷりを発揮して追い込んで欲しいw


>>421
別にBADエンドでも良し

424:名無しさん@ピンキー
11/05/04 02:03:59.96 5EH+5Fmj
>421
過去にいくつかあったから無問題

425:名無しさん@ピンキー
11/05/04 02:30:06.26 m8Mu7Mq2
永遠に続いていく予感のするすれ違い、みたいのも自分は好きだな。

死ぬまで愛故が続いていくと思うと胸熱

426:名無しさん@ピンキー
11/05/05 03:52:36.26 hjIbrQvN
みたいのもっつうかそのパターンはえらい頻度で話題にのぼってる訳で…
解決するパターンも別れパターンも読みたい

427:名無しさん@ピンキー
11/05/05 22:03:26.06 PfET7FZd
>>426
解決するわけでもなく、別れがくるわけでもないっていうパターン、
例えば、すれ違いや誤解、素直になれない心を抱えたまま、ずっと監禁されたり陵辱され続ける。
この関係の終わりがくる予感が未だしない・・・明日が見えない、みたいな終わり方のする話をイメージしてた。
そういうある意味曖昧?な終わり方はそんなになかったんじゃないかなって思って・・・。

職人さんたちが続きが気になるっ!っていう声に答えて完結話書いてくれたみたいなのもあると思うけど。
自分も全作品読んだわけじゃないので勘違いだったらスマソ。


428:名無しさん@ピンキー
11/05/05 22:05:09.50 vhljLe19
>>427
そういう終わり方良いな
絶望的な感じで素晴らしい

429:名無しさん@ピンキー
11/05/05 22:20:42.49 0RcAodr9
片方が一言「好き」って言えばとか簡単な事で
誤解がほぐれて幸せになれるのに
その簡単な事が言えなくてジリジリするっていうのも好きだなー



430:名無しさん@ピンキー
11/05/05 23:56:36.74 m/EcaKJT
そんなほの暗い感じもいいな。
>>419、ローザのその後って一応両思いエンドじゃね?

431:名無しさん@ピンキー
11/05/06 00:06:47.87 qLOAYt77
>>427
明らかにそれっぽいシリーズは数点程くらいしか見てないが、
続きを次の世代分まで妄想するような雑談はしょっちゅうだぞ
連載に反映されたりするし

イザ投下されるとまぁ、楽しんで読んでるんだが、今そんな増やすよりは
短編でサクッと青春の陰の部分みたいなネタでしんみりしたい時もあるって事

432:名無しさん@ピンキー
11/05/06 01:38:13.93 Oa4/91jD
まぁお前の都合で投下されてる訳じゃねーしな

433:名無しさん@ピンキー
11/05/06 02:28:02.30 zUbnnGVB
>>415
投下ありがとうございます
この二人大好きです!
続きも楽しみにしています

434:名無しさん@ピンキー
11/05/06 05:37:01.38 kzCUYiGk
>>429
まあ、好きと言えず悲惨な状態が続くのは好きかな

435: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:17:25.89 aPh4MjHJ
421です。以前このスレでお話しした「想い合っていながら最終的に結ばれない」が
完成したので投下します。前・中・後の三部です。
現代日本もの、孕ませ要素あり。エロ描写はぬるめで、全体の3割くらいです。
蛙(かわず)の夢(前)

 教会の鐘が鳴り、扉が両端から開かれるのを群衆は今や遅しと待っていた。
女性陣は目を光らせ、男性陣は祝福と、半分くらいは羨望の眼差しで。
やがて鐘が鳴り、純白のウェディングドレスに身を包んだ新婦と、その腕を組んだ
新郎が姿を現す。
「おめでとう」 「おめでとう」
 次々に祝福の言葉が飛び、夫婦は幸せそうに笑った。少し張り出した腹部を撫で、
新郎と目を合わせて手を振り上げると、花束が空を舞い、女性陣がわっと歓声を上げる。
その様を、多田明(あきら)は教会から少し離れた道路で微動だにせず見つめていた。

436: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:20:02.09 aPh4MjHJ
頭を上げた新婦の目が、一瞬明を捉えた。が、彼女はすぐに視線を
隣の夫に戻し、二度とこちらを見なかった。

「若社長!」
 秘書の田村ひとみに呼ばれ、明は振り向いた。ひとみは両手に大量の資料を抱え、顎で
押さえつけてこちらを睨んでいる。
「社長の部分はともかく、若、は余計だ」
「じゃあ次から五代目とでもお呼びいたしましょうか」
「もっと勘弁してくれ」
 田村ひとみは動じない。親子ほども年の離れた、二か月前の先代社長の急死に伴って
後を継いだ20代の小倅など、先々代社長の頃に入社し、先代社長の秘書を20年勤めた
ひとみにとっては頭に殻のついたヒヨコも同然である。
「若、の部分が取れたときが一人前の成り時です」
 しらっと言ってのけた。

437: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:22:51.85 aPh4MjHJ
「明日の会議の書類です。東京支社と大阪支社の売り上げ報告、
経理部の定例報告、システム管理部の報告書、始末書、インフラ部からの提案書、諸々。
明日の会議までに目を通しておくように、とのことです」
「ちょっと待て、明日は商談が入ってなかったか」
「その商談が延期になったと、先ほどメールにて報告いたしました。
代わりに重役会議への参加を」
「嫌がらせか」
「一人前に渡り合って経営に口を出せとは、誰も申しておりません。今は席に座って
内容を理解するのが関の山でしょう。若社長はまだ中核としての期待はされておりませんし、
いずれ中核を担う時まで会社を健全に保つのが我々の務め、と管理職役員皆様申しております」
 

438: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:25:38.40 aPh4MjHJ
多田商事は大正時代から続く総合商社で、明で五代目になる。古くは江戸時代に権勢を誇った
大店が明治に入って時流に乗り、商売を海外まで広げ、大正時代に会社として成立した。
二度の大戦もバブルも不況も逆手にとって成長を遂げ、今に至っている。旧財閥に比べれば
その規模は微々たるものだが、この地方では大きな地盤を築き、東京と大阪に支社も持つ、
地方豪族という言葉通りの存在だった。

439: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:27:49.78 aPh4MjHJ
 山と積まれた資料を前に、明はため息をついた。今夜の完徹は間違いない。
「お疲れ様です」
 由香がコーヒーを用意していた。砂糖1杯にクリームひと匙が明の好みであることを、由香は熟知している。
「参った、今夜は完徹だ」
「その資料は?」
「明日の商談が急にキャンセルになって、今度は代わりに会議に出ろ、とさ」
 机に顎を載せ、シャープペンシルを加えて明はおどけて見せる。
「では私は、厨房に夜食を頼んでまいります」
「ああ、ありがとう」

440: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:34:39.83 aPh4MjHJ
 由香の後姿を明は見送った。湊由香は明と同じ24歳、私立小学校などないこの地域では明も
地元の小学校を卒業している。由香はその頃からの同級生で、中学を卒業後に東京の私立名門校、
イギリスの大学と地元を離れていた明に対し、由香は地元の高校の頃からこの屋敷でアルバイトをはじめ、
卒業後は正式に職を得ている。由香の母親もこの屋敷で働いていたから、いわゆる親子2代だった。 
 すっかり使用人姿に違和感のない由香の背中は少しばかりさびしい。もちろん、プライベートでは昔のように
読んでくれはするが、勤務中の姿はプロそのものだ。
 小さいころは気が弱くて、いつも明ちゃん、明ちゃんなんて泣いてたのにな。
田圃畑に囲まれて、虫も蛇も蛙も日常茶飯事の環境だというのに、由香は蛙が大の苦手だった。
道の真ん中に死体が落ちているだけで立ちすくんでは動けずにいた。

441: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:38:08.15 aPh4MjHJ
―何が怖いんだよ、こんなの。
 手をつないで道を通ったことも何度もある。
「なあ、由香」
「何でしょうか」
 戻ってきた由香に問うてみた。
「蛙はまだ苦手なのか?」
「いえ、あの、その」
 途端に言葉に詰まる。言葉は丁寧だが、動揺は隠し切れていない。その横顔は相応に年をとり、幼いころには
なかった華やかさが増している。自分の贔屓目を差し引いても由香は田舎には少ない整った顔立ちで、
人気も高かった。地元に戻ったときには流石に結婚もしているだろう、という予想を裏切って
まだ結婚どころか彼氏の一人もいたことがないと知り、密かに祝杯をあげたのはここだけの話だ。
今の由香は仕事モードに入っている。以前高速道路のSAで見つけた蛙のストラップを買ってきてやろう。
どんな表情をするだろうか。

442: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:43:59.11 aPh4MjHJ
 地元企業に職を得るのは、何も使用人としてだけではない。れっきとした社員として多田商事に入社した明の同級生も何人もいる。
システム管理部の長谷実(みのる)もその一人だった。地元の公立名門校から県内の国立大学の情報学部に進学し、技術職として
就職して2年目、普段の仕事に加えて新人の育成も加わり、このところ定時に帰れたためしがない。
 実は肩をこきこきと鳴らした。
「長谷、ちょっといいか。システムに不具合が」
「はい」
「先輩、こっちのプログラムにバグが」
「ちょっと待ってろ」
 20代は仕事が恋人、というのはあながち間違っていないと実は思う。仕事の忙しさに浮いた話の一つもなく、
遊ぶところもない田舎の実家暮らしだから、給料の半分は貯金に回っている。
―ま、社会人はこんなもんか。
 頬を叩き、気合を入れ直して、実はコンピュータに向かった。おそらく、今日も残業だ。

443: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:46:36.52 aPh4MjHJ
「由香!」
 残業後の帰宅の車内から、実は窓を開けて前を歩いていた幼馴染の名前を呼んだ。由香の家から職場までは
15分、急ぐ距離ではないが、街灯の少ない田舎では猪や鹿も出る以上、安全とも言い切れない。 
「実」
「送ってってやるよ」
「ありがと」

「明はどんな感じだ?」
「社長に就任してからはすごく大変みたい。今日も大量に資料持って帰ってきてた」
「親父さん、急に亡くなったもんな」
「うん。・・・心臓発作だったって」
 二月前の盛大な葬式を、二人はまだよく憶えている。地元の名士、と言っても言い足りないくらいの人であった
先代社長の急死は地元紙に大きく取り上げられ、焼香客が門前市をなした。もともと後継ぎとして
既に明が擁立されていたから大きな混乱はなかったが、あと数年は気楽な見習いでいられただろう明の
身辺は、一転して嵐である。

444: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:48:55.17 aPh4MjHJ
「どうなるんだろうね、明ちゃん。会社も家も全部一気に継がなきゃいけないなんて」
「ま、ダメなら会社のほうは首切られるだけだろ」
「まさか」
 多田商事は上場もしている株式会社だが、変なところで田舎の因習を残していると実は思う。就職活動では
全国からいくらでも優秀な人材がエントリーするのに、半分は必ず地元出身者で構成されているのだ、
実もそれで入ったほうだから、あまり大声では言えないが。
「家はともかく、カルロス・ゴーンでも呼ぶ時代だぜ?舵取り次第と時流次第で、生き残れるかなんてわかった
もんじゃねえよ」
「まだ二カ月だもん、これからだよ」
 車は由香の家の前に着く。明じゃないが、また明日も朝っぱらから仕事が山積みだ。

445: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:52:16.39 aPh4MjHJ
「飲み会?」
 実は眉をひそめた。覚えの悪い新人に手を焼き、年寄管理職のシステムの不慣れに手を焼き、本来午前中に
終わらせる予定だった仕事を完了させた時点で既に1時を回っている。
「今そんな余裕、あると思うか?」
「まあまあ、明もあの通り忙しいだろ?社長就任後初の息抜きってことでな?」
 視線の先には明が例によって歩きまわっている。このところすっかり見慣れてしまった光景だった。
実に声を掛けてきたのは宮田で、こちらも中学校一学年二クラス時代からの同級生である。
例によって地元採用で就職し、同じ会社の人事部に籍を置いていた。どこで誰が働いているかを
把握しているから、幹事にも抵抗がない。


446: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 00:57:33.84 aPh4MjHJ
「高村とか山口とか、あと湊とか、この会社かあの家で働いてる奴だけでもさ」
 湊の部分が本命だろ、と軽口を返したくなって、実はやめた。自分を勘定に入れても先輩後輩同級生合わせて
8人は由香を手中に収めたがっていることを実は知っている。自分が実力行使に出ないのは、単に
「一番付き合いの長い幼馴染」の座を失いたくないからだけではない。

 いつも通りに部屋を掃除し、ベッドを整えて、由香は満足げに部屋を振り返った。
「よし、完璧」
 とはいえ、当人は帰って寝て起きてまた出るだけの部屋だから、あまり激しく汚れる部屋ではない。
その上この部屋の主が帰ってきてまだ2年、使われなかった時間のほうが圧倒的に長かった。
イギリスにいた頃は本当に帰ってこなくて、そのままイギリスに住んじゃうんじゃないかって、何度も
メールしたっけ。

447: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:00:39.78 aPh4MjHJ
 明が海外への大学の進学を見越して都内の高校に進学すると決めたとき、由香は明と離れたくないと大泣きした。
―絶対、絶対戻ってくるよね?
 思い出すだけで顔から火が出そうになる。あの時は本当に二度と帰ってこないと思っていたのだから仕方ない。
親父の会社を継ぐんだから戻ってくるよ、と何度も言い聞かされて、絶対だよ、約束だよ、と何度も由香は
念を押した。明がいなくなるなんてことは由香にはあってはならないことであり、帰りを待つためにここで
アルバイトを始めたのだった。
 家に帰ってきたときに、少しでも心休まる場所でありますように。願いはそれだけだった。


448: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:14:02.10 aPh4MjHJ
文字規制が厳しいのでちょっと中断します・・・すみません


449: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:20:47.50 /IWCGNSq
携帯から再開します

 由香も帰った夜分遅く、漸く自室に着いたところで明のスマートフォンが鳴った。着信画面には長谷実とある。
「もしもし」
「よお、お疲れ」
 電話の先は相変わらずの声だった。社内での上下関係はプライベートでは持ち込むまいと決めている。
実は明を社長と呼んで頭を下げるし、明は実をシステム管理部の長谷と呼ぶ。
「どうしたんだ、こんな時間に」
「大した用じゃないんだ。宮田が久しぶりに飲み会でもどうかって話になってさ」
「飲み会、か」
「お前も社長社長で息つく暇もないだろうし、たまにはストレス発散も兼ねて」
 言われて、明は確かにここ二カ月暇らしい暇もなかったのを思い出す。父の死を悲しむ暇もなく社長就任の大小があり、
それからは社内を歩き回る毎日だ。椅子に優雅に腰をかけて手を組む、なんてどこの話だ、と明は思う。ゴブレットで酒を飲むどころか、まともに飲んだのは由香のコーヒーくらいだ。
「宮田はお前の都合に合わせるってさ。俺もそのつもりだし、ついでに由香もお前なら誘いやすいだろ」
 ついでに、の部分に明は聞き捨てがならなかった。そこが本音だろう、と言いたいのをこらえて、
「わかった。そっちも確認しておく」
とだけ返した。

 素直じゃねえの。携帯電話を切って実は思った。連れてきたくないならいっそ宣戦布告されたほうがよほど
楽だ。そして明が素直に由香に手を出さない理由が実にはわからない。24という年齢は、
地方ではそろそろ子供の一人も生まれていておかしくない。事実、中学から付き合っていた連中の中にはそろそろ二人目が生まれるなんいうのもいる。
 由香はいずれどこぞの縁談を受けるか誰かの手を取って嫁ぐだろう、おそらく仲間内でもそれは一番早いと思われていたし諦められてもいた。が、蓋を開けてみれば結婚どころか浮いた噂の一つ
もない。独身を通す理由が、明の帰国を待っていた以外の説明がつかないのだ。
あまりもったいぶっているなら、こちらもそろそろ幼馴染の立場に甘んじる必要はないのかもしれない。
 携帯電話を充電機に立て、実は目を閉じた。



450: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:27:11.56 /IWCGNSq
「飲み会には来ない?」
 だが、周囲の思惑をひっくり返して由香の返事は欠席だった。
「その日はシフトが入っちゃって、ほかの人も予定があったりして、どうしても無理で」
 そう言って、部署のシフトを見せる。遅番の由香のほかには数人が予定に組まれ、二人が休みの予定だが、
二人とも希望休として出ている。残りもそれなりに事情があるのだろう、当主権限で強制執行は後々のことを考えると憚られた。
「じゃ、仕方ないか」
「ごめんね、実には私から伝えておくから」
「ああ・・・それから」
 明は背広のポケットを探り、SAの紙製の土産袋を取り出した。
「お土産」
 ほい、と投げてよこす。
「開けていい?」
「どうぞ」
 交通安全のお守りだってさ、と注釈もつける。果たして包みを開けると、出てきたのは蛙のストラップであった。
「明ちゃん!」
 由香は一瞬蒼白になった後、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「高速道路じゃ「無事カエル」のお守りらしいぜ?」
 まだ文句のありそうな由香が口を開こうとしたとき、1時の鐘が鳴った。休憩終了、の合図だ。
「さて、仕事仕事」

 ―明ちゃん、か。ある晩、大阪に向かうべく乗った新幹線の中で、明は由香の言葉を思い出していた。
田舎の旧家の使用人兼幼馴染という、時代錯誤も甚だしい関係だ。その上実や宮田も含め、由香に想いを寄せる連中はいくらでもいる。
 更に悪いことに、父の急死で明にはもう一つ当主としての仕事が増えた。
―早く結婚して、後継ぎを作りなさい。葬儀の際伯母に言われた言葉は、おそらく父も若かりし頃に、そして
伯母自身も母も言われ続けた言葉であろう。事実明の母は別の地方の名家の出身で、文字通り後継ぎを生むために、嫁がされてきたのだ。
 明の足元には、見合い写真がいくつも積み上げられている。どれもこれも地方の旧家に生まれ、
または東京や大阪の会社経営者の一族に生まれて東京の名門女子大を卒業した、生まれ通りに嫁ぐことを定められた令嬢たちだった。
 由香ではだめなのですか、と母に食って掛かったこともある。しかし母の答えは明瞭だった。
―家や会社のための道具になることに、あの子が耐えられると思いますか。
 母は自分が実家と嫁ぎ先、そして双方の経営する会社の取引の道具となることをよく承知していたし、事実そうでなければ利権と因習が幅を利かせる田舎の旧家では生きていけまい。
 指を咥えて由香が誰かのもとに嫁ぐのを見守り、そして自分は愛情のない結婚をして種を仕込め。
端的に言えばそういうことだ。
「クソっ」

「社長、遅いよー」
「お、社長」
 明の慰労会を名目にしていたわりに、飲み会は主役を抜きにしてさっさと始められていた。一部は既に出来上がり、顔が赤い。
「悪い、仕事が長引いた」
「じゃ、改めて明の社長就任二カ月お疲れさまってことで乾杯ー」
 かちんかちんと、あちらこちらでグラスが鳴る。ネクタイを寛げると、宮田と実が近付いてきた。
「よ、社長」
「お疲れ様ですぅ、社長」
 酒のせいか、口調はふざけ半分だ。
「湊は連れてこなかったんですか?」
「仕事が抜けられないんだそうだ」
「そこを当主の鶴の一声で、なんとか」
「無茶を言うな」
 ぐい、と明はビールを一気にあおった。
「ねーねー社長ー、お給料あげてくんないー?旦那の稼ぎが悪くってさあー」
 向こうの席では既に元同級生現使用人女子がへべれけ口調で叫ぶ。あはははは、と歓声が上がった。
「そうそう、うちもー。ここだと多田か公務員か医療関係でない限りマジ安月給でやってらんない」
「下手するとあたしのほうが稼ぎ多いんだもん、参っちゃうよぉ」
「子供作るのも考えちゃうしねー」
「産婦人科なんかじいさんのところ一つだけだし」
「ってか、うちの旦那ソッチがヘタクソなんだけどー」
「マジ?マジ?」
 酒が進むと、女子は明け透けな話に抵抗がなくなってくる。横目で見ながら、実は明の箸が進んでいないことに気づいた。
「食えよ、メシまだだろ」
「あ、ああ」
 良家のおぼっちゃまは酔っ払い方までお上品だ。顔色は赤いが、言葉は変わらない。

451: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:36:14.13 /IWCGNSq
「何考え込んでんの、社長」
「実たちは、結婚しないのか?」
「結婚?」
 宮田も実も頓狂な顔になる。
「結婚、ねえ。ま、相手がいて、状況が許せばってところかな」
「まず相手が見つからないと」
「ここに独身の妙齢女性がいるんだけどー」
 聞きつけた女子が返す。
「男にも選ぶ権利はあるし?」
「うるっさいバカ」
「そういう明はどうなんだ?」
「俺か?俺は―」
 ちらつくのは由香と、沢山の見合い写真だ。顔も名前も憶えていない。
「まだ」
「ま、今は仕事が恋人だしな」 
「そうそう」 
 酔った頭で勝手に結論付ける。
「そういえば、由香も結婚しないよねぇ」
 また女子だ。男性連の心中を見透かすような発言が続く。
「彼氏がいたってこともないみたいだし」
「高校の時にも断られた男子、結構いたよ」
「あたし、実と付き合ってるとばかり思ってた」
「違えよ」
 明の目がぐらつく。独身の由香と、跡取りを残すこととがダブった。いっそ由香との間に子供を作ってしまえば―。
 馬鹿らしい。考えかけて明はやめた。代わりにジョッキを一気に空にする。
「でも、ありかもな」
 実が横で顔を上げた。
「お、やるか?」
「それは宣戦布告的な?」
 いつまで経っても据え膳の存在に気づこうとしないなら、それを横から頂いたところで文句は出るまい。
据え膳の所有者はいまだ確定されていないのだ。
―本気か、実?思わず出そうになった言葉を明は引っ込めた。本気だろうとおふざけだろ
うと、
自分が口を出す権利はない。
 ずきりと頭痛がした。明日も昼から会議、終わったら支社からの定例報告会、取引先と
の商談と、やることは山積みだ。思い出したくないことばかりが押し寄せて、明はウイスキーの
ボトルに手を付けた。

452: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:39:54.06 /IWCGNSq
「遅いなあ、明ちゃん」
 由香は先ほどから何度目か忘れるほど時計を見上げていた。同級生との飲み会、しかも
ここからさして離れていない駅前とはいえ、既に時刻は11時を回っている。いつもならとうに由香も帰る時刻だが、
酔って帰った時に介抱する人手がいないと、との言葉で残らされているのだった。
―あんたもそろそろ結婚したらどう?
 朝、母が持ってきたのは見合い写真だった。こっちからもあっちからも貰ってるんだけど、と、あっという間に見合いの写真が積み上がる。
「まだ、結婚は」
「まだ、じゃなくて。もうそろそろ考えていいんじゃない?」
 試しに一枚を手に取ると、スーツを見た男性が畏まって座っている。28歳、年収450万、趣味は―。
「仕事が楽しいから、考えたこともないよ」
 それだけ返して、家を出た。本当は、まだ昔の夢―明ちゃんのお嫁さんになる―を、捨てきれずにいる自分がいる。
田舎で20年も暮らし、旧家の暮らしを何年もつぶさに見てくれば、釣り合わないことなど十分わかっている。まして
明の母は他所の名家から嫁いできた人だ。由香個人との仲は良いが、それだけでは旧家の当主の妻そして母は務まらないことを由香はよく知っていた。
 もう少しだけでいい。明ちゃんのそばにいたい。明が結婚したら、その時こそ自分はここを出て行こう。由香はそう決めていた。そのとき、玄関近くで物音がした。

「悪い、ここまで潰れるとは思わなかった」
 実はすまなそうに言った。明日も早いし、さあ出ようとした時点で明は既に大量の空き瓶とグラスに囲まれて
意識をなくしていた。寝息はしっかりしているし吐いてもいない、泡も吹いていないから、
命に別状はあるまいと考えて店からここまで引っ張ってきたのだった。
「由香、片方持ってくれ」
 せーの、で持ち上げて、2階の自室まで運ぶ。
「どうしたのかな、ここまで酔っ払うの、初めて見た」
 自室のベッドに横たえ、由香はため息をついた。
「こいつなりにいろいろあるんだろ。社長もだし、当主もだし」
「鞄、ここでいいか?」
 宮田が荷物を運んでくる。
「うん。ありがとう」
 二人が去ってしまうと、由香はてきぱきと明の介抱を始めた。ベルトを緩め、ネクタイを解き、ボタンを外して
体の締め付けを減らす。目が覚めた時のために水と、吐きそうになった時のために洗面器も用意した。
「・・・由香」
「明様」
 明が目を覚ました。酔いがまだ抜けていないらしく、瞳はどろりと濁っている。
「お目覚めでしたか。では私、人を呼んで」
 来ますね、と言おうとした由香の手を、明は強い力で引いた。
「・・・明様?」
 いつもと違う、と由香ははっきりと感じた。本能的に恐怖を感じて振りほどこうとし、
そのまま返す力でベッドに引きずり込まれる。間髪いれず、唇を塞がれた。
「やっ・・・」
 誰か、助けて。叫ぼうとしたところを、再度塞がれる。圧し掛かってきた体の重さに、由香はめまいがした。
酒の臭いのせいだけではない。長年想いを寄せてきた人が、自分の意思を無視して自分を抱こうとしている。
「明ちゃ、」
 明の手がブラウスの上から由香の胸を掴んだ。首筋を、舌が這う。
「由香」
 熱のこもった言葉が、今は恐ろしい。
「俺の子供を産む気はあるか」
 言われた言葉の意味が一瞬理解出来ず、由香は首を横に振った。別の何かが明の中に入り込んで、明の人格を
乗っ取りでもしてしまったか、そう思わずにいられなかった。指先は止まらずにブラウス
のボタンを外し、ブラの下に直接冷たい手が入る。力加減なしに男の手が乳房を掴んだ。



453: ◆h1Zp3va3xs
11/05/09 01:45:41.52 /IWCGNSq
 現実味のなさは明も同じだった。俺は由香相手にとんでもないことをしている、その自覚はあったが、それ以上に
由香が他の男に抱かれるのも、自分が他の女を抱くのも許せなかった。子供を作ってしまえば、誰もが由香を
諦めざるを得ない。他家からの縁談も、使用人に手を出して子供まで作ったとなれば遠のくことは確実だ。
「明ちゃん、やめて・・・っ」
 ブラのホックを外し、由香の乳房を直接食んだ。男を知らない体はそれだけで雪のように白く、情欲をそそる。
全部だ、全部欲しい。実にも宮田にも渡さない。理論はめちゃくちゃだというのに、結論と欲望は正直だ。
必死に逃げるようにして身を捩り、背を向けた由香のスカートに手を入れ、ストッキングごとショーツを降ろす。
「誰か、助け、んんっ」
 由香の言葉を片手で塞ぎ、もう片手を剥き出しになった中心部にひたりと当てると、由香の体がびくりと震えた。

 由香にとって、全ては悪夢の一言に尽きた。体の中心を押し割って入ってくる何かがある。自分の意志とは関係なしに
異物は否応なく侵入し、内側をこすり上げ、襞を広げていく。それは同時に由香の心を浸食してもいた。
ブラウス一枚残して、今まさに自分は明の欲望の玩具とされようとしているのだ。
―明ちゃんにとっての私は、子供を産ませるための、道具なの?
 明はブラウスを脱いだ。滾った欲望は既に準備ができている。頑なに向けた肩を返し、泣き崩れる由香の額に
口づけた。抵抗らしい抵抗をやめた由香は、されるがままに身を任せている。
「どうして、こん、な」
 由香にはわからない、と明は思った。明治時代に廃止されたはずの身分制度は貧富の差と家柄という形で残り、
田舎の因習と馴れ合いは根を張り、その家に生まれた瞬間から人生の全てのレールが敷かれる。自分の思い通りになることなど、何一つない。
なら、いずれ作らなければならない子供の母親だけは自分で選ぶ。どれだけ後ろ指を指されても認めさせてみせる。
 反論は聞かなかった。身動きの取れない由香の足を広げ、自らをあてがう。欲望のままに貫いた。
「やっ、いやあああああ!」
 破瓜の痛みを、由香はシーツを握りしめて耐えた。諦めきれずにいた夢も、明の幸せを
見届けてから去ろうと決めていたことも、全て崩れていく。一番の希望が一番の絶望に変わる。
痛みに指先は縋りつく先を求めているが、明の背に爪を立てるのだけはプライドが許さなかった。子供を産む道具となる運命を受け入れるのは嫌だった。
 破瓜の血が自身に絡みつくのを見て、明は噂に間違いのなかったことを確信した。侵入者を許したことのなかった入り口は熱く滑り、力加減を知らないまま明を締め付ける。
「っは・・・」
 それだけで達しそうになるのを堪え、明は深く深くへと腰を打ちつけた。
「やめて、いたっ、いやあ、いや!」
 悲鳴を上げる由香の体を抱き込み。文字通り全身で味わった。口づけ、歯を舌で割り、深く絡める。耳を愛撫し、髪を梳き、肌と肌を密着させ、待ち望んだ女の体を貪った。限界が近いことを悟り、最奥まで割入る。
「お願い、中は、や」
 それが目的である明は聞く耳を持たなかった。
「出すぞ」
「いやあっ」
 全身が震え、脈動とともに明は全てを放った。一滴も逃すまいと接合を解かず、残滓ごと注ぎ込む。その様を由香は焦点の合わない瞳で見ていた。

 言葉もなく身支度を整え、逃げるようにタイムカードを押し、息をすることも忘れて走って、転がり込むように家にたどり着いた時点で、時刻は既に一時を回っていた。
這いつくばるように部屋に戻り、ドアを閉めると、枯れたはずの涙がまた溢れてきた。声だけ殺して、由香は泣いた。

 翌日の休みを挟み、通常通り由香は出勤した。悪夢は心を苛んだが、ここを辞めたところではいそうですかと
次の仕事が見つかるわけではない。まして明はこのあたりでは強力な地盤を持つ名士だ。由香の雇用に手を回すことなど、造作もない。
由香はいつも通り、コーヒーに砂糖とクリームを一杯づつ入れて差し出した。
 その様子を内心驚きつつ、明は由香の淹れたコーヒーを飲んだ。以前より、苦い気がした。

蛙の夢(前)終わり

もともと近代西洋もので書いてたのが魔王公爵に圧倒されて急遽現代ものになったのはここだけの話。

454:名無しさん@ピンキー
11/05/09 07:39:04.80 4lNahXNg
GJ!
見た目も性格も良い女性が心身共にズタボロになるのかと思うと
股間が熱くなって勃ちますねw

でもこれバッドエンド確定なのか
期待してます

455:名無しさん@ピンキー
11/05/09 07:45:09.75 DzsivDRm
GJ!!
由香ちゃんが不憫だ
地方の閉塞感のようなものがじんわりと包囲している雰囲気がいい
バッドエンドかあ、切ない

456:名無しさん@ピンキー
11/05/09 18:15:26.74 8PZ8TGTr
グッジョブ!
まさしく好きだと言っておけば……な展開に胸熱w
これからどうやって苦しんでそしてどんな悲劇がと楽しみにしてる
しかし中世風で見てみたかったかも
でもこの地方の閉塞感もいいな~
というか自分も身分高いパワハラ系書こうとしたら
魔王のパワーに引きずられそうで現代にしようかと迷っていたよw

457: ◆h1Zp3va3xs
11/05/10 00:12:52.26 faj3XVgi
続きを投下します。
今回エロ多め。

蛙の夢 (中)

 一度箍が外れてしまえば、最早明は成り振りを構わなかった。由香の休日と遅番を把握するのは雇用者としてわけのないことだったし、
地元の産婦人科の老医師に手を回して、見返りと引き換えに由香が来院してもピルの処方をしないよう伝えるのも電話一本で話がついた。
 本社から戻り、食事を済ませてから由香の遅番の退社時間にあたる10時までが明にとっては一番都合の良い時間だった。
広い部屋の内側から鍵をかけてしまえば人は来ないし、窓を開けない限り防音の部屋から物音は漏れない。まして由香の行動は「仕事が残っている」の一言でいくらでも留め置ける。
―そう、当主との間の後継ぎを「作る」、という仕事が。
 明が鍵を閉めると、それが合図でもあるように由香は服を脱ぎ始めた。震える手でリボンを解き、
ブラウスを脱ぎ、スカートのホックを外す。
「全部脱いで」
ブラとショーツだけのあられもない姿になった由香を見て、それでも明は冷徹に言った。先月は2度事に及んだ時点で生理が来てしまった。
見合い話を断るためには、妊娠は早ければ早いほどいい。自身も上着を脱ぎ、ネクタイを外す。
生理が終わって一週間、そろそろ危険日と言えるあたりに差し掛かっている。それを由香自身よくわかっているのだろう―が、
無理に転職したところで、多田商事と取引関係にないこのあたりの企業はほぼ皆無だ。由香を雇用すれば取引を打ち切る、
と言われれば誰もが取引の継続を選ぶだろう。
 手を背に回し、ブラを外す。大きくはないが形のよい胸がこぼれ、ショーツが落ちて一糸まとわぬ姿が月明かりに浮かんだ。
そのままベッドに座らせ、明はサテンのリボンを拾い上げた。いたずらに、というよりは嗜虐心に明の眼が光ったのを由香は見落とさなかったが、
どのみちこの部屋からは逃れられない。
「後ろを向いて、手を出して」
 大人しく従うと、両手首を後ろに緩く縛りあげられる。いよいよ逃げ場がなくなったところで、明が由香の唇を塞いだ。
 全部入った。
「う、あ、やっ、いたっ・・・」
 後ろ手に縛られたまま、由香は顔を苦痛に歪めた。
「まだ、痛いか」
 体の中は裂かれるように痛み、涙ばかりが頬を伝う。かろうじて由香は頷いた。
「じきに慣れる」
「そんな、こと、うあっ」
 由香の腰を押さえると、明はゆっくりと律動を始めた。
「や、いやっ、動か、ないで・・・っ」
 自分の中で明が動いている。文字通り犯している。いまだに由香にはそれが信じられない。あの飲み会の夜以来、
自分は悪い夢を見ているのではないかと思いたくなる。が、夜毎自分を組み敷く男の顔は、まぎれもない幼馴染の顔だ。
「あうっ」
 由香の中を蠢く明が、ある一点で動きを止める。
「な、なに」
 由香は痛み以上に、体の奥が痺れるのを感じていた。二度、三度明が同じ場所を突き上げると、
その度に由香の体は跳ねるような反応を返す。
「ここが弱いのか」
「あっ、あんっ、ひあっ」
 あとはもう構わなかった。探り当てた弱点を攻めるにつれ、拒むようだった締め付けは快感を求める方向に変化していく。
熱の塊が内側をこすり上げる度、ぬるりと襞が粘ついて絡みつく。子孫を残す男の本能に、子種を受け入れる女の本能は正直だ。
脳が痛み以外の信号を伝えてくるのが、由香にとっては拷問だった。いっそ痛みだけのほうが、歯を食いしばってやり過ごせる。
受け入れがたい理性とは裏腹に、体が明を覚えこもうとしている。
「由香・・・っ」
「ふあっ、や、い、いやあああっ」
 子宮の隅々まで放たれる熱を、由香は感じ取っていた。両膝を裏から押さえこまれた由香の内側でびく、びくんと明が収縮する。
「あ・・・」
 明ちゃんは、私が好きで抱いてるんじゃない。私に子供を産ませるために出してるだけなんだ―。
歓喜する体と裏腹に、心のほうは絶望しているのかもしれなかった。

 その日、二度果ててから明は由香の手首を解いた。こすれた手首のあちこちに、擦り傷ができている。
「あ・・・」
 明は何も言わずにナイトテーブルから絆創膏を取り出し、由香の傷に貼った。
―ひどいことをするくせに、子供を作る道具でしかないのに、小さな怪我のことは気にするの。
 体はすぐには立てないほど重く、足の間からはさっき放出されたばかりの精が漏れ始めている。
先ほどまでの明と今の明が一致せず、由香は惑乱せざるを得なかった。


458: ◆h1Zp3va3xs
11/05/10 00:39:05.12 faj3XVgi
 明は重役会議の資料に見入っている。このところようやく社長業が板に付いてきた、とは古株社員の言葉だった。
「東京支社は、ずいぶん売上が良いんだな。決算に合わせて黒字にしたのかと思ったけど」
「商売相手の数が桁違いです。尤も、売上に対して人手不足のようですが」
「増員も考えるか」
「そうですね。ところで若社長、ここのところ、ずいぶん機嫌がいいようですね」
「そうか?」
 田村ひとみは社長室の机の上で売り上げ報告を眺めている明を見て言った。最初のうちは仕事に押しつぶされそうになっていたというのに、
このところ明の終了は早い。19時には必ず仕事を終了させて帰路についている。
 女でもできたかしら。
 結婚と恋愛は別物だ。社長となればなおさらであることを、ひとみは先代の頃に学んだ。明の父は明の母に「当主の妻」の役割を果たさせた後、
何度か大阪支社の女子にちょっかいを出していたことをひとみは知っている。
おそらく深い仲くらいにはなっていただろう関係に見て見ぬふりをしたのは、
こちらに戻ればそれをおくびにも出さず、ひとみ以外の誰ひとりとして匂わせることがなかったからだ。
秘書のひとみにはスケジュールの関係上感づかれざるを得なかったが、売上への影響を出さず、
妊娠沙汰にもならず、別れるときも一切こじれさせず、お終いには最後まで一人で抱えて墓の中まで持って行った。
相手の女性社員もとうに結婚し、ひとときの社長のお遊びなど昔の話だろう。そこまで徹底すれば、
いっそ天晴れというものだ。
 さて、この若社長にそれが出来るかしらね。



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