煩悩の十二国記*十四冊目at EROPARO
煩悩の十二国記*十四冊目 - 暇つぶし2ch235:浩瀚×陽子 1/4
11/02/26 14:00:28.95 KkW1+KlU
麒麟が嫌いだった。
当たり前のように王の側に侍り、己は王の為にいるという存在が嫌いだった。
先の女王が麒麟に狂い国を荒らした。荒れていく国、政、官、民…苦しんでいる物はたくさんあった。
その中でただ一人の苦しみに失道という病の名が付いた。
麒麟だから名が付いた。それだけで他の物にはただ荒廃という名が付いた。
そして、女王が王位から身を引いた。
麒麟の失道という病は消えた。だが、荒廃は残る。
麒麟は天の意志以上以下でもない。
だが…暗い胸の内で呟く事が増えた。
慶国の麒麟は無能である、と…。

新しい王が登極した。赤い髪の女王だった。女王というだけで、民も官も諦めた顔をした。だが…不思議だったのが、なにもかも一度諦めたという顔をしてみせたのが女王だった事だった。
雁の王の力を借り、己の手で囚われていた麒麟を救った。先の王とは違いどんなに自信が溢れた女王かと思っていただけに…興味が湧いた。
何も出来ない。誰も相手にしない。女王の自信の無さは、政を、権力を金を己の物にせんとする官の付け込む隙になった。
その横にやはり、あの麒麟がいた。
それでいいのかと、聞いてみたいとふと思った。
前の女王と同じ事を繰り返すのかと。

「冢宰を引き受けてもらいたい」
内乱の後だった。赤い髪の娘は緑の瞳に強い光を湛えてそう己に告げた。
無意識に身体に震えが走った。その傍らに立つ麒麟を見た。これで、同じ高さに立つ事が出来る。無表情な麒麟は一度視線を合わし、逸らした。
「受けてくれるな」
女王の右手にいるのが麒麟なら、左手に立つのが冢宰。
浩瀚は深く頭を下げた。

面白く、不思議な女王だった。身の回りにはまるで頓着せず、動きやすい格好で王宮を走り回っていた。
見苦しい。威厳が。近くに寄れない官が影で聞こえるように囁く。だが、そんな悪意にも頓着しなかった。
自分ができることしかできない。まず、自分の足で立つしかないんだ。
泰麒が夜の闇に消えたと聞いた時、なにか深く考え込んでそう呟いた女王に頷く事しか出来なかった。

最初はただの偶然だった。書簡を片付けようと手を伸ばした先に主上の指があった。
「申し訳ない」
「いや、すまない」
互いに慌てて手を放した為、巻かれた書簡が机から落ち床に転がった。



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